JP2023172383A - 組織写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラム - Google Patents

組織写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】金属材料の組織写真の視野数を適切かつ効率的に評価できる組織写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラムが提供される。【解決手段】組織写真評価方法は、金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程(S11)と、複数の組織写真での相を分類する相分類工程(S12)と、分類された相の定量値を算出する定量値算出工程(S13)と、定量値の偏差を算出する偏差算出工程(S14)と、偏差に基づいて複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程(S15)と、合否を出力する出力工程(S17)と、を備える。【選択図】図2

Description

本開示は組織写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラムに関する。本開示は、特に、金属材料の組織写真を対象とする写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラムに関する。
一般に、鉄鋼を含む金属材料は、同一の組成を有していても、光学顕微鏡又は電子顕微鏡レベルのスケール(例えばmm~μmのスケール)における金属組織に特性が強く依存する。
例えば、高強度鋼板の開発において、固溶強化元素の添加による固溶強化方法、析出強化元素の添加による析出強化方法等の組成を変える方法が用いられる。また、これらの方法の他に、同一組成で熱処理条件を変えることで、最終的な金属組織を変化させる方法が用いられることもある。
このように、高強度鋼板の開発などにおいて、組成の制御のみならず、金属組織の制御が重要となる。そのため、金属材料を光学顕微鏡又は電子顕微鏡等で観察し、その金属組織を定量評価することが重要となる。例えば特許文献1は、電子顕微鏡で観察するための観察試料の作製方法について開示する。
鋼板等の金属材料に対して、公知の研磨方法及びエッチング方法等の試料調整を実施した後に、電子顕微鏡等の公知の撮影装置で金属組織の観察を行うと、一般的には相ごとにコントラストが異なるため、各相を分類できる。例えば、鉄鋼材料においてフェライト相及びパーライト相からなる代表的な鋼板を公知の方法で試料調整した後、光学顕微鏡で撮影すると、フェライト相が灰色のコントラスト、パーライト相が黒色のコントラストで観察される。そのため、フェライト相とパーライト相とを分類することができる。このような手法で金属組織の観察を実施して、観察の結果をフィードバックすることによって開発が行われている。
特開2009-287941号公報
ここで、金属材料を新たに開発するような場合に、金属組織を適切に評価する必要がある。しかし、金属組織を観察する際の適切な視野数が不明であることが多い。このような場合に、従来、観察者の主観によって視野数が定められていた。そのため、不十分な視野数の組織写真を用いて金属組織を評価する場合があり、金属組織を適切に評価できず、金属組織と材料特性の相関を誤って解釈するおそれがある。誤った解釈の相関関係に基づいて製造プロセスを決定すると、所望の特性の製品を製造できないおそれがある。また、誤った解釈を避けようとして、観察者が必要以上の視野数の組織写真を撮影して作業効率が低下することがある。
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、金属材料の組織写真の視野数を適切かつ効率的に評価できる組織写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラムを提供することにある。
本開示の一実施形態に係る組織写真評価方法は、
金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出工程と、
前記定量値の偏差を算出する偏差算出工程と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、
前記合否を出力する出力工程と、
を備える。
本開示の一実施形態に係る組織写真評価方法は、
金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出工程と、
前記定量値の偏差を算出する偏差算出工程と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、
前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出工程と、
前記統計値を出力する出力工程と、
を備える。
本開示の一実施形態に係る組織写真評価方法は、
金属材料の少なくとも2以上の視野について2以上の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出工程と、
前記定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する倍率決定工程と、
前記代表撮影倍率に該当する前記複数の組織写真について、前記定量値の偏差を算出する偏差算出工程と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、
前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出工程と、
前記統計値を出力する出力工程と、
を備える。
本開示の一実施形態に係る組織写真評価装置は、
金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
前記合否を出力する出力部と、
を備える。
本開示の一実施形態に係る組織写真評価装置は、
金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出部と、
前記統計値を出力する出力部と、
を備える。
本開示の一実施形態に係る組織写真評価装置は、
金属材料の少なくとも2以上の視野について2以上の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
前記定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する倍率決定部と、
前記代表撮影倍率に該当する前記複数の組織写真について、前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出部と、
前記統計値を出力する出力部と、
を備える。
本開示の一実施形態に係る撮影装置は、
上記の組織写真評価装置によって取得される前記複数の組織写真を撮影する。
本開示の一実施形態に係るプログラムは、
コンピュータを、
金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
前記合否を出力する出力部と、
として機能させる。
本開示の一実施形態に係るプログラムは、
コンピュータを、
金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出部と、
前記統計値を出力する出力部と、
として機能させる。
本開示の一実施形態に係るプログラムは、
コンピュータを、
金属材料の少なくとも2以上の視野について2以上の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
前記定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する倍率決定部と、
前記代表撮影倍率に該当する前記複数の組織写真について、前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出部と、
前記統計値を出力する出力部と、
として機能させる。
本開示によれば、金属材料の組織写真の視野数を適切かつ効率的に評価できる組織写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラムを提供することができる。
図1は、本開示の一実施形態に係る組織写真評価装置を備える組織写真評価システムの構成例を示す模式図である。 図2は、本開示の一実施形態に係る組織写真評価方法の処理を示すフローチャートである。 図3は、本開示の一実施形態に係る組織写真評価装置を備える組織写真評価システムの構成例を示す模式図である。 図4は、本開示の一実施形態に係る組織写真評価方法の処理を示すフローチャートである。 図5は、本開示の一実施形態に係る組織写真評価装置を備える組織写真評価システムの構成例を示す模式図である。 図6は、本開示の一実施形態に係る組織写真評価方法の処理を示すフローチャートである。 図7は、実施例で用いられた組織写真を例示する図である。 図8は、相分類工程を経た図7の組織写真を示す図である。
以下、図面を参照して本開示の実施形態に係る組織写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラムが説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。以下の実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
[第1実施形態]
(組織写真評価システム)
図1は、第1実施形態に係る組織写真評価装置10を備える組織写真評価システム1のブロック図である。組織写真評価システム1は、組織写真評価装置10と、撮影装置30と、を備える。組織写真評価装置10は、入力部11と、出力部12と、演算部13と、を備える。演算部13は、相分類部14と、定量値算出部15と、偏差算出部16と、視野数合否判定部19と、を備える。
(撮影装置)
撮影装置30は、組織写真評価装置10によって取得される金属材料の複数の組織写真を撮影する。撮影装置30は、例えば光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡であるが、金属材料の組織を撮影する機能を有する装置であれば、これらに限定されない。
(組織写真評価装置)
組織写真評価装置10は、撮影装置30によって撮影された金属材料の複数の組織写真を評価するための処理を実行する。ここで、金属材料は、鉄鋼材料又は複数の金属相を有する金属材料である。組織写真評価装置10が実行する評価は、複数の組織写真の視野数の評価を含む。複数の組織写真の視野数の評価とは、金属組織を定量評価するのに十分な視野数が得られているかについての評価である。組織写真評価装置10は、直接的に組織評価まで行ってよいし、組織写真の性質を決定してよい。決定される組織写真の性質は、例えば視野数の合否である。本実施形態において、組織写真評価装置10は、組織写真の視野数の合否を決定する。ここで、視野数は、異なる視野を有する組織写真の数を意味する。視野数と組織写真の数とが異なってよいが、本開示の実施形態において、組織写真がそれぞれ異なる視野を有し、視野数は撮影された金属材料の複数の組織写真の数に等しいとして説明する。
(入力部)
入力部11は、複数の組織写真を評価する処理に必要なデータを取得する、組織写真評価装置10の入力インターフェースである。本実施形態において、入力部11は、金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する。複数の組織写真のデータ形式は、TIFF、BMP等の一般に使用されている画像のデータ形式であってよい。
(出力部)
出力部12は、組織写真の性質(例えば決定された合否及び後述の統計値など)を出力する、組織写真評価装置10の出力インターフェースである。出力部12は、組織写真の性質などの情報を、他の装置などに送信してよい。また、出力部12は、組織写真の性質などを、各種ディスプレイなどの表示装置に表示させてよい。本実施形態において、出力部12は、複数の組織写真の視野数についての合否を出力する。
(演算部)
演算部13は、複数の組織写真を評価するための演算を行う。また、演算部13は、組織写真評価装置10の全体を制御する制御部としての機能を備えてよい。演算部13は、1つ以上のプロセッサであってよい。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。
上記のように、本実施形態において、演算部13は、相分類部14と、定量値算出部15と、偏差算出部16と、視野数合否判定部19と、を備える。相分類部14、定量値算出部15、偏差算出部16及び視野数合否判定部19の機能はソフトウェアによって実現されてよい。例えば演算部13がアクセス可能な記憶装置に、1つ以上のプログラムが記憶されていてよい。記憶装置に記憶されたプログラムは、プロセッサである演算部13によって読み込まれると、演算部13を相分類部14、定量値算出部15、偏差算出部16及び視野数合否判定部19として機能させてよい。
(相分類部)
相分類部14は、複数の組織写真での相を分類する。相分類部14が実行する処理の詳細については後述する。
(定量値算出部)
定量値算出部15は、相分類部14によって分類された相の定量値を算出する。定量値及び定量値算出部15が実行する処理の詳細については後述する。
(偏差算出部)
偏差算出部16は、定量値算出部15によって算出される定量値の偏差を算出する。偏差算出部16が実行する処理の詳細については後述する。
(視野数合否判定部)
視野数合否判定部19は、偏差算出部16によって算出された偏差に基づいて、複数の組織写真の視野数について合否を判定する。視野数合否判定部19が実行する処理の詳細については後述する。
ここで、組織写真評価装置10は、特定の装置に限定されないが、一例としてコンピュータで実現され得る。コンピュータは、例えば市販されている汎用的なものを使用できる。コンピュータは、例えばメモリ及びハードディスクドライブなどの記憶装置、CPU及び入出力装置を備える。演算部13はCPUで実現されてよい。演算部13によって読み込まれるプログラムは記憶装置に記憶されていてよい。また、入力部11及び出力部12は入出力装置で実現されてよい。
(組織写真評価方法)
図2は、本実施形態に係る組織写真評価装置10が実行する組織写真評価方法の処理を示すフローチャートである。概要として、組織写真評価方法は、金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、分類された相の定量値を算出する定量値算出工程と、定量値の偏差を算出する偏差算出工程と、偏差に基づいて複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、合否を出力する出力工程と、をこの順で行う。ここで、組織写真評価方法は、視野数合否判定工程において、合格しなかった場合(すなわち不合格の場合)に、入力工程で取得される組織写真を追加した上で、これらの工程を再度実行する。
(入力工程)
入力工程は、入力部11が金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する工程である(ステップS11)。
組織写真は、公知の方法によって金属材料(試料)の表面を研磨等する試料調整を行った後、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡等の公知の撮影装置によって撮影することが好ましい。試料調整は、一般的には、荒研磨を行い、その後仕上げ研磨を実施する。荒研磨及び仕上げ研磨は公知の方法で実施されてよい。公知の方法による荒研磨は、例えば、紙に砥粒を塗布した市販の紙ヤスリ(エミリー紙など)を用い、肉眼レベルで見える傷を除去する研磨である。また公知の方法による仕上げ研磨は、0.05μm-2μmの研磨剤を用いて、試料が鏡面になるまで実施される研磨である。研磨剤は、ダイヤモンド、シリカ等の公知の研磨剤を使用できる。光学顕微鏡にて10-500倍の倍率で観察時に研磨傷が目立たなくなるまで鏡面研磨が実施される。研磨傷が多く残っていると、相分類工程において相分類を行う際の誤差の要因となるため可能な限り傷が残らないよう研磨を実施することが望ましい。鏡面研磨の実施後に、相のコントラストを明確にするため、ナイタール等によるエッチングが実施されてよい。エッチングをしなくても相分類ができる試料を対象とする場合などに、エッチングは省略されてよい。
組織写真の視野数は少なくとも2以上とする。視野数が多いほど、撮影倍率ごとの相の定量値のばらつきが減る。視野はランダムに決定することが好ましい。また、視野を少しずつ変えながら連続で撮影することによって、2以上の視野が得られてよい。また、プログラムで乱数を利用することなどにより、自動で視野を決定する機能を撮影装置30が備える場合に、そのような機能を利用してよい。
組織写真の撮影倍率は、特定の倍率に限定されず、目的とする組織を観察できる倍率であればよい。例えば、フェライト相とマルテンサイト相からなるDP鋼(Dual Phase鋼)を観察する場合に、500倍から3000倍の範囲で撮影倍率を選定することが好ましい。例えば、めっき鋼板のめっき層を観察する場合に、1000倍から5000倍の範囲で撮影倍率を選定することが好ましい。
(相分類工程)
相分類工程は、相分類部14が複数の組織写真での相を分類する工程である(ステップS12)。
組織写真は、一般的に各相のコントラストが異なるため、相分類が可能である。例えば組織写真で相の識別が行われ、各相を異なる色等でラベリングして分類が行われる。相分類は、肉眼で相を識別して手塗で分類してよく、画像輝度値の二値化を用いて分類してよく、高度な画像解析手法により分類してよい。可能な限り精度よく分類できる手法を適用することが好ましい。
ただし、手塗による相分類は客観性に欠ける。そのため、二値化又は高度な画像解析手法を用いることが好ましい。以下に例示する、高度な画像解析手法を用いることがさらに好ましい。
高度な画像解析手法は、撮影した組織写真より各相の領域を複数指定した後、指定した領域の像の輝度値より特徴値を演算し、演算した特徴値からN値化を繰り返すランダムフォレストモデル、ニューラルネットワークモデル又はサポートベクターマシン等の手法を用いて分類を行う。特徴値は、以下の8つの具体例(C1~C8)のうちの1つ以上を用いることが好ましい。
(C1:恒等特徴値)
恒等特徴値は、組織写真の輝度値そのものを示す特徴値である。
(C2:Mean特徴値)
Mean特徴値は、組織写真の所定の範囲における輝度値の平均値を示す特徴値である。すなわち、Mean特徴値は、組織写真の各相から所定の範囲「(画素数x)×(画素数y)」を取り出し、その中の輝度値を平均化したものである。「画素数x」及び「画素数y」は、同一のサイズでよく、異なるサイズでよい。また、「(画素数x)×(画素数y)」の領域が長方形である必要はなく、組織写真が球状の形状である場合、球状の領域にすることが好ましく、複数の画素数x、yについて算出してよい。「画素数x」及び「画素数y」の下限は、例えば組織写真に含まれるノイズよりも大きく、かつ金属組織の複数の相のうち、結晶粒径が小さい方の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。上限は、画素の範囲を大きくしすぎると、粒界の影響又は隣接する他相の影響を受けることがあるため、結晶粒径が大きい方の結晶粒径の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。
ここで、「組織写真に含まれるノイズ」とは、例えば組織写真の中で輝度値が急に高くなるような部分を示している。そして、「画素数x及びyをノイズより大きく」するとは、ノイズの幅より大きくすることを示している。
(C3:Gausian特徴値)
Gausian特徴値は、組織写真の所定の範囲において、中心に近いほど重みを大きくした輝度値の平均値を示す特徴値である。すなわち、Gausian特徴値は、組織写真の各相から所定の範囲「(画素数x)×(画素数y)」を取り出し、中心の画素ほど重みを大きくした平均値を取り出したものである。「画素数x」及び「画素数y」は、同一のサイズでよく、異なるサイズでよい。また、「(画素数x)×(画素数y)」の領域が長方形である必要はなく、組織写真が球状の形状である場合、球状の領域にすることが好ましく、複数の画素数x、yについて算出してよい。「画素数x」及び「画素数y」の下限は、例えば組織写真に含まれるノイズよりも大きく、かつ金属組織の複数の相のうち、結晶粒径が小さい方の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。上限は、画素の範囲を大きくしすぎると、粒界の影響又は隣接する他相の影響を受けることがあるため、結晶粒径が大きい方の結晶粒径の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。
(C4:Median特徴値)
Median特徴値は、組織写真の所定の範囲における輝度値の中央値を示す特徴値である。すなわち、Median特徴値は、組織写真の各相から所定の範囲「(画素数x)×(画素数y)」を取り出し、その中の輝度値から中央値を取り出したものである。「画素数x」及び「画素数y」は、同一のサイズでよく、異なるサイズでよい。また、「(画素数x)×(画素数y)」の領域が長方形である必要はなく、組織写真が球状の形状である場合、球状の領域にすることが好ましく、複数の画素数x、yについて算出してよい。「画素数x」及び「画素数y」の下限は、例えば組織写真に含まれるノイズよりも大きく、かつ金属組織の複数の相のうち、結晶粒径が小さい方の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。上限は、画素の範囲を大きくしすぎると、粒界の影響又は隣接する他相の影響を受けることがあるため、結晶粒径が大きい方の結晶粒径の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。
(C5:Max特徴値)
Max特徴値は、組織写真の所定の範囲における輝度値の最大値を示す特徴値である。すなわち、Max特徴値は、組織写真の各相から所定の範囲「(画素数x)×(画素数y)」を取り出し、その中の輝度値から最大値を取り出したものである。「画素数x」及び「画素数y」は、同一のサイズでよく、異なるサイズでよい。また、「(画素数x)×(画素数y)」の領域が長方形である必要はなく、組織写真が球状の形状である場合、球状の領域にすることが好ましく、複数の画素数x、yについて算出してよい。「画素数x」及び「画素数y」の下限は、例えば組織写真に含まれるノイズよりも大きく、かつ金属組織の複数の相のうち、結晶粒径が小さい方の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。上限は、画素の範囲を大きくしすぎると、粒界の影響又は隣接する他相の影響を受けることがあるため、結晶粒径が大きい方の結晶粒径の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。
(C6:Min特徴値)
Min特徴値は、組織写真の所定の範囲における輝度値の最小値を示す特徴値である。すなわち、Min特徴値は、組織写真の各相から所定の範囲「(画素数x)×(画素数y)」を取り出し、その中の輝度値から最小値を取り出したものである。「画素数x」及び「画素数y」は、同一のサイズでよく、異なるサイズでよい。また、「(画素数x)×(画素数y)」の領域が長方形である必要はなく、組織写真が球状の形状である場合、球状の領域にすることが好ましく、複数の画素数x、yについて算出してよい。「画素数x」及び「画素数y」の下限は、例えば組織写真に含まれるノイズよりも大きく、かつ金属組織の複数の相のうち、結晶粒径が小さい方の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。上限は、画素の範囲を大きくしすぎると、粒界の影響又は隣接する他相の影響を受けることがあるため、結晶粒径が大きい方の結晶粒径の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。
(C7:Derivative特徴値)
Derivative特徴値は、組織写真の各相から所定の範囲「(画素数x)×(画素数y)」を取り出し、そのうちの端の画素に対してx方向及びy方向の微分値を計算したものである。「画素数x」及び「画素数y」は、同一のサイズでよく、異なるサイズでよい。また、「(画素数x)×(画素数y)」の領域が長方形である必要はなく、組織写真が球状の形状である場合、球状の領域にすることが好ましく、複数の画素数x、yについて算出してよい。「画素数x」及び「画素数y」の下限は、例えば組織写真に含まれるノイズよりも大きく、かつ金属組織の複数の相のうち、結晶粒径が小さい方の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。上限は、画素の範囲を大きくしすぎると、粒界の影響又は隣接する他相の影響を受けることがあるため、結晶粒径が大きい方の結晶粒径の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。
(C8:Derivative加算特徴値)
Derivative加算特徴値は、上記のDerivative特徴値に対して、上記のMean特徴値、Gaussian特徴値、Median特徴値、Max特徴値及びMin特徴値を演算することにより、Derivative特徴値を畳み込んだものである。「画素数x」及び「画素数y」は、同一のサイズでよく、異なるサイズでよい。また、「(画素数x)×(画素数y)」の領域が長方形である必要はなく、組織写真が球状の形状である場合、球状の領域にすることが好ましく、複数の画素数x、yについて算出してよい。「画素数x」及び「画素数y」の下限は、例えば組織写真に含まれるノイズよりも大きく、かつ金属組織の複数の相のうち、結晶粒径が小さい方の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。上限は、画素の範囲を大きくしすぎると、粒界の影響又は隣接する他相の影響を受けることがあるため、結晶粒径が大きい方の結晶粒径の1/2未満の大きさが含まれる範囲とすることが好ましい。
ここで、高度な画像解析手法により画像を解析する場合、正確な解析のために境界部(外周部)を切り捨てる処理が行われてよい。
(定量値算出工程)
定量値算出工程は、定量値算出部15が相分類部14によって分類された相の定量値を算出する工程である。定量値として、例えば以下の(1)~(6)の少なくとも1つが算出される。
以下に説明される具体例のうち、定量値(1)~(5)は、分類を行い、特定した相の各結晶粒に対して算出するため、1枚の組織写真に対しても複数の数値が得られる。また、以下に説明される具体例の他に、組織写真を数値化できるパラメータがある場合は、そのパラメータが用いられてよい。
(1)面積率
面積率は、各組織写真において、特定した相の各結晶粒の面積と組織写真全体の面積の比を求める。各結晶粒の面積率は下式に従い算出される。
Figure 2023172383000002
ここで、fは各結晶粒の面積率である。Aは各結晶粒の面積である。Asumは組織写真全体の面積である。また、特定した相について、各結晶粒の面積率の総和を算出することで、組織写真一枚当たりの特定した相の面積率が算出される。
(2)楕円体サイズ
楕円体サイズは、各組織写真において、特定した相の各結晶粒の形状を楕円近似することで算出される。楕円体サイズは、近似した楕円体の長径、短径及びアスペクト比の少なくとも1つである。また特定した相について、各結晶粒の楕円体サイズの平均値を算出することで、組織写真一枚当たりの特定した相の平均の楕円体サイズが算出される。
(3)フェレー径
各組織写真において、特定した相の各結晶粒の界面から直線を描いた後、その直線距離が最大となるフェレー径が算出される。また、各結晶粒で算出したフェレー径の平均値を算出することで、組織写真一枚当たりの特定した相の平均のフェレー径が算出される。
(4)平均径
各組織写真において、特定した相の各結晶粒の面積を求め、その面積の平方根を取ることで、結晶粒の平均径が算出される。また、特定した相について、各結晶粒で算出した平均径から平均値を算出することで、組織写真一枚当たりの特定した相の平均の平均径が算出される。
(5)真円度
各組織写真において、特定した相の各結晶粒の面積と周長を求めることで、各結晶粒の真円度が下式に従い算出される。
Figure 2023172383000003
ここで、Cは真円度である。Sは面積である。Pは周長である。結晶粒が真円のとき、真円度は1.0となる。逆に、結晶粒の形状が円から離れるほど、真円度は1.0より小さくなる。また、特定した相について、各結晶粒で算出した真円度から平均値を算出することで、組織写真一枚当たりの特定した相の平均の真円度が算出される。
(6)数密度
各組織写真において、特定した相の結晶粒の数を数え、結晶粒の数を組織写真全体の面積で割ることにより、組織写真一枚当たりの数密度が算出される。
定量値としては、(1)~(6)の1つ以上を用いることが好ましく、2つ以上を用いることがより好ましい。特に、視野数について合否を判定する場合に、(1)の面積率を含む定量値を用いることが好ましい。
(偏差算出工程)
偏差算出工程(ステップS14)では、視野ごとに偏差が算出される。偏差算出部16は、特定した相について、全ての視野の組織写真の定量値iについて、平均値Nを算出する。また、偏差算出部16は、特定した相について、視野jの組織写真の定量値iについて、平均値μijを算出する。偏差算出部16は、視野jの組織写真の定量値iの平均値μijを、全ての視野の組織写真の定量値iの平均値Nで割って、視野jの規格化された定量値iである(μij/N)を算出する。さらに、偏差算出部16は、定量値iの偏差の平均値を算出する。偏差の平均値は、「それぞれの規格化された定量値iより1を引いた値の絶対値」の和を視野数(組織写真の枚数)で割ることにより算出され、下式で示される。
Figure 2023172383000004
ここで、Sは定量値iの偏差の平均値である。nは視野数(組織写真の枚数)である。
また、以下において、規格化された定量値iは「規格化」を冒頭に付す表記がされる。例えば「規格化面積率」は、上記の偏差算出工程で規格化された面積率を意味する。同様に、「規格化フェレー径」、「規格化真円度」はそれぞれ規格化されたフェレー径、規格化された真円度を意味する。
(視野数合否判定工程)
視野数合否判定工程(ステップS15)は、視野数合否判定部19が定量値iの偏差に基づいて組織写真の視野数の合否を判断する工程である。視野数合否判定部19は、まず偏差算出部16が算出した偏差の平均値Sに基づいて組織を適切に評価可能な視野数(組織写真の枚数)であるかどうか(合否)を判断する。例えば視野数合否判定部19は、各定量値の偏差の平均値Sがすべて閾値以下であるとき、十分な視野数であるため合格と判定し(ステップS16のYes)、組織写真の追加の撮影を行わない。閾値は一例として0.1であるが、特定の値に限定されず、例えば対象とする金属の種類などに応じて設定されてよい。例えば視野数合否判定部19は、各定量値の偏差の平均値Sが1つでも閾値より大きいと、各定量値のずれが大きく、定量値と材料特性との関係を正確に把握できなくなるため、不合格と判定する(ステップS16のNo)。不合格と判定する場合に、視野数合否判定部19は、入力工程で取得される組織写真を追加した上で、処理を入力工程(ステップS11)に戻して、一連の処理を再度実行させる。
(出力工程)
視野数合否判定部19が合格と判定した場合に(ステップS16のYes)、出力工程が実行される(ステップS17)。出力工程は、出力部12が視野数の合否を出力する工程である。ここで、図2のフローチャートの例において、合格の場合にだけ出力工程が実行されるが、所定回数の不合格の後にも出力工程が実行されてよい。例えばステップS16からステップS11に戻る処理が所定回数(一例として5回)繰り返された後に、視野数合否判定部19が不合格と判定した場合には、不合格であることを出力する出力工程が実行されてよい。
このように、本実施形態に係る組織写真評価装置10が実行する組織写真評価方法によって、金属材料の組織写真の視野数を適切かつ効率的に評価できる。評価の結果がフィードバックされることによって、観察者の主観によらない、金属組織を観察する際の適切な視野数が決定される。また、観察者が視野を変えながら不必要に多くの組織写真を撮影することがなくなるため、作業の効率化を図ることができる。
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る組織写真評価装置10を備える組織写真評価システム1のブロック図である。本実施形態に係る組織写真評価装置10は、組織写真評価を行うにあたり、相の定量値に基づく統計値を出力する。このような統計値が出力されることによって、組織写真評価装置10の外部において、組織写真評価装置10によって実行された評価についての検証又は二次的な合否判断などが可能になる。本実施形態に係る組織写真評価装置10は、第1実施形態に係る組織写真評価装置10の構成要素を含み、さらに統計値算出部20を備える。重複説明を回避するため、第1実施形態と異なる構成が以下に説明される。
(統計値算出部)
統計値算出部20は、相の定量値に基づいて統計値を算出する。本実施形態において、統計値算出部20は、入力部11に入力された複数の組織写真の全ての定量値に基づいて統計値を算出する。統計値は例えば平均値、中央値、標準偏差などを含んでよいが、特定のものに限定されない。本実施形態において、統計値算出部20は、視野数合否判定部19が合格と判定した場合に統計値を算出する。ただし、このような場合に限定されず、統計値算出部20は、所定回数の不合格の後に統計値を算出してよい。また、出力部12は、統計値算出部20によって算出された統計値とともに合否を出力してよい。
また、本実施形態において、入力部11は、第1実施形態と同じく、金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する。記憶装置に記憶されたプログラムは、プロセッサである演算部13によって読み込まれると、演算部13を相分類部14、定量値算出部15、偏差算出部16、視野数合否判定部19及び統計値算出部20として機能させてよい。
(組織写真評価方法)
図4は、本実施形態に係る組織写真評価装置10が実行する組織写真評価方法の処理を示すフローチャートである。概要として、組織写真評価方法は、金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、分類された相の定量値を算出する定量値算出工程と、定量値の偏差を算出する偏差算出工程と、偏差に基づいて複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出工程と、統計値を出力する出力工程と、をこの順で行う。ここで、組織写真評価方法は、視野数合否判定工程において不合格と判定された場合に、入力工程で取得される組織写真を追加した上で、これらの工程を再度実行する。
入力工程(ステップS21)、相分類工程(ステップS22)、定量値算出工程(ステップS23)、偏差算出工程(ステップS24)及び視野数合否判定工程(ステップS25)は、それぞれ第1実施形態の同じ名称の工程と同じである。第1実施形態と同じく、視野数合否判定工程で合格でないと判定された場合に(ステップS26のNo)、処理が入力工程(ステップS21)に戻って、一連の処理が再度実行される。
(統計値算出工程)
視野数合否判定工程で合格と判定された場合に(ステップS26のYes)、統計値算出工程(ステップS27)が実行される。本実施形態の統計値算出工程において、統計値算出部20は、定量値算出工程で算出された各定量値の全ての視野についての平均値及び標準偏差を算出する。
統計値算出工程の実行後に、出力工程が実行される(ステップS28)。出力工程は、統計値算出部20によって算出された統計値を出力する工程である。ここで、上記のように、出力工程では統計値とともに合否が出力されてよい。
このように、本実施形態に係る組織写真評価装置10が実行する組織写真評価方法によって、金属材料の組織写真の視野数を適切かつ効率的に評価できる。評価の結果がフィードバックされることによって、観察者の主観によらない、金属組織を観察する際の適切な視野数が決定される。また、観察者が視野を変えながら不必要に多くの組織写真を撮影することがなくなるため、作業の効率化を図ることができる。さらに、統計値が出力されることによって、組織写真評価装置10の外部において、組織写真評価装置10によって実行された評価についての検証又は二次的な合否判断などが可能になる。
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係る組織写真評価装置10を備える組織写真評価システム1のブロック図である。本実施形態に係る組織写真評価装置10は、視野数を評価する前に代表撮影倍率を決定する。本実施形態に係る組織写真評価装置10は、第2実施形態に係る組織写真評価装置10の構成要素を含み、さらに倍率決定部17を備える。重複説明を回避するため、第1実施形態、第2実施形態と異なる構成が以下に説明される。
本実施形態において、入力部11は、金属材料の少なくとも2以上の視野について2以上の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する。つまり、第1実施形態、第2実施形態とは異なり、撮影倍率が決定されていない状態で、入力部11が複数の組織写真を取得する。ここで、撮影倍率の水準数が多いほど、得られる撮影倍率と撮影倍率ごとの相の定量値との関係の精度が向上し、適切な撮影倍率を決定しやすくなる。組織写真の撮影倍率は3以上が好ましい。組織写真の撮影倍率は5以上がより好ましい。撮影倍率はランダムに選定することが好ましい。
(倍率決定部)
倍率決定部17は、定量値算出部15によって算出された定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する。倍率決定部17が実行する処理の詳細については後述する。
ここで、記憶装置に記憶されたプログラムは、プロセッサである演算部13によって読み込まれると、演算部13を相分類部14、定量値算出部15、偏差算出部16、倍率決定部17、視野数合否判定部19及び統計値算出部20として機能させてよい。
(組織写真評価方法)
図6は、本実施形態に係る組織写真評価装置10が実行する組織写真評価方法の処理を示すフローチャートである。概要として、組織写真評価方法は、金属材料の少なくとも2以上の視野について2以上の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、分類された相の定量値を算出する定量値算出工程と、定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する倍率決定工程と、代表撮影倍率に該当する複数の組織写真について、定量値の偏差を算出する偏差算出工程(第2偏差算出工程)と、偏差に基づいて複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出工程と、統計値を出力する出力工程と、を行う。ここで、組織写真評価方法は、視野数合否判定工程において不合格と判定された場合に、入力工程で取得される組織写真を追加した上で、これらの工程を再度実行する。
入力工程(ステップS31)、相分類工程(ステップS32)及び定量値算出工程(ステップS33)は、それぞれ第2実施形態の同じ名称の工程と同じである。
(倍率決定工程)
倍率決定工程は、倍率決定部17が定量値算出部15によって算出された定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する工程である(ステップS34)。
上記のように、特定した相の結晶粒の定量値は面積率を含むことが好ましい。倍率決定部17は以下のように撮影倍率を決定できる。
ある撮影倍率の組織写真について、面積率が10%を超える結晶粒が2個以上存在する組織写真が、入力工程で取得したその撮影倍率の組織写真の総数の1/3を超えるとき、倍率決定部17はより小さな撮影倍率を採用する。面積率が10%を超える結晶粒が2個以上存在する組織写真は、組織写真の境界部(周辺部)において結晶粒の見切れが生じたり、撮影する結晶粒の数が少ないことによって結晶粒の大きさの分布を正しく評価できなかったりするためである。また、総数の1/3を超えることは、一部の例外的な組織写真についての特徴でなく、その撮影倍率の組織写真における傾向であることを示す。
また、ある撮影倍率の組織写真について、面積率が最も大きい結晶粒が組織写真の全体に対して3%未満である組織写真が、入力工程で取得したその撮影倍率の組織写真の総数の1/3を超えるとき、倍率決定部17はより大きな撮影倍率を採用する。面積率が最も大きい結晶粒が組織写真の全体に対して3%未満である組織写真は、小さな結晶粒が多く、適切に結晶粒の形状を評価できないためである。また、総数の1/3を超えることは、一部の例外的な組織写真についての特徴でなく、その撮影倍率の組織写真における傾向であることを示す。
倍率決定工程において、倍率決定部17は、条件A及び条件Bを満たす撮影倍率を代表撮影倍率とする。条件Aは、ある撮影倍率の組織写真について、「面積率が10%を超える結晶粒が2個以上存在する組織写真が、入力工程で取得したその撮影倍率の組織写真の総数の1/3を超えない」ことである。また、条件Bは、ある撮影倍率の組織写真について、「面積率が最も大きい結晶粒が組織写真の全体に対して3%未満である組織写真が、入力工程で取得したその撮影倍率の組織写真の総数の1/3を超えない」ことである。
ここで、倍率決定工程の条件A及び条件Bにおける面積率の上限値(10%)と下限値(3%)は一例であり、対象とする金属材料の結晶粒の大きさ及び形状が適切に評価できる数値であればよく、限定されるものでない。倍率決定工程の条件で用いられる定量値は、本実施形態において面積率であるが、例えば楕円体サイズ又はフェレー径などであってよい。また、各結晶粒の形状又は数が材料特性に大きな影響を与える場合に、倍率決定工程の条件で用いられる定量値は例えば真円度又は数密度であってよい。本実施形態においては、一般に相の面積率が材料特性に影響を与えるケースが多いため、面積率を用いる例を説明した。
(第1偏差算出工程)
ここで、条件Aと条件Bの両方を満たす撮影倍率が2水準以上存在することがあり得る。このような代表撮影倍率の候補が複数ある場合に(ステップS35のYes)、本実施形態において第1偏差算出工程が実行される(ステップS36)。第1偏差算出工程は、偏差算出部16が定量値算出部15によって求められた定量値の偏差を算出する工程である。ここで、撮影倍率ごとの定量値の偏差を算出する第1偏差算出工程と区別するために、第1実施形態及び第2実施形態のような視野ごとの偏差算出工程は第2偏差算出工程と称される。
偏差算出部16は、代表撮影倍率の候補である撮影倍率ごとに、各定量値の標準偏差を算出する。標準偏差の最も小さい撮影倍率が代表撮影倍率として決定される。ここで、定量値によって標準偏差の大小の順番が異なる場合に、重要視される定量値の標準偏差が小さい撮影倍率を代表撮影倍率として決定されることが好ましい。例えば、DP鋼板では面積率が最も機械特性に影響すると考えられる。そのため、面積率の標準偏差が最も小さい撮影倍率が代表撮影倍率として決定されることが好ましい。また、定量値算出工程で算出された全ての定量値の偏差を算出する必要はない。例えば金属材料の特性に与える影響が小さい定量値については、偏差が算出されなくてよい。
第1偏差算出工程が実行された場合に、再び倍率決定工程が実行される。2回目の倍率決定工程において、倍率決定部17は、既に選択した代表撮影倍率の候補の中から、偏差算出部16によって算出された偏差に基づいて、最終的な1つの代表撮影倍率を決定する。
1つの代表撮影倍率が決定された場合に(ステップS35のNo)、第2偏差算出工程が実行される(ステップS37)。第2偏差算出工程は、第2実施形態の偏差算出工程(ステップS24)と同じである。また、視野数合否判定工程(ステップS38)、統計値算出工程(ステップS40)及び出力工程(ステップS41)は、それぞれ第2実施形態の同じ名称の工程と同じである。ここで、視野数合否判定工程の合否に応じた分岐(ステップS39)は、第2実施形態のステップS26と同じである。
このように、本実施形態に係る組織写真評価装置10が実行する組織写真評価方法によって、金属材料の組織写真の視野数を適切かつ効率的に評価できる。評価の結果がフィードバックされることによって、観察者の主観によらない、金属組織を観察する際の適切な視野数が決定される。また、観察者が視野を変えながら不必要に多くの組織写真を撮影することがなくなるため、作業の効率化を図ることができる。さらに、統計値が出力されることによって、組織写真評価装置10の外部において、組織写真評価装置10によって実行された評価についての検証又は二次的な合否判断などが可能になる。また、倍率決定部17の処理によって、金属材料の複数の組織写真から客観的かつ効率的に代表倍率を決定することができる。
(実施例)
以下、本開示の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。実施例では、上記の第1実施形態に係る組織写真評価装置10による組織写真評価方法が行われた。
フェライト相及びマルテンサイト相からなるDP鋼板を荒研磨し、ダイアモンドペーストを用いて仕上げ研磨を実施後、ナイタールでエッチングが施された。その後、電子顕微鏡を用いて、1000倍の撮影倍率でランダムに2つの視野の組織写真が撮影された。撮影された複数の組織写真が取得された(入力工程)。図7は得られた組織写真の一部を示す。ここで、白色のコントラストを示す相がマルテンサイトであり、黒色のコントラストを示す相がフェライトである。
次に、得られた組織写真について、上記の高度な画像解析手法の1つであるランダムフォレストモデルを用いて、フェライト相とマルテンサイト相とが2値化画像として分類された(相分類工程)。図8は、相分類工程を経た図7の組織写真を示す。ここでは、黒色がマルテンサイト相、白色がフェライト相で表示されている。
次に、得られた2値化像をもとに各組織写真のマルテンサイト相について、定量値として、各結晶粒の面積率、フェレー径及び真円度が算出された(定量値算出工程)。
次に、各組織写真の定量値について、規格化が行われて、偏差及び偏差の平均値が算出された(偏差算出工程)。表1は、視野ごとの算出値を示す。ここで、視野数合否判定における閾値として0.1が用いられた。真円度の偏差の平均値は0.1以下である。ただし、面積率及びフェレー径の偏差の平均値は0.1を超えており、2視野では本試料の組織を適切に評価することができないと判定された。つまり、視野数合否判定において不合格との判定が示された(視野数合否判定工程)。ここで、表1、後述の表2及び表3において、フェレー径は、組織写真一枚当たりの平均のフェレー径を示す。
Figure 2023172383000005
そこで、視野数合否判定工程において合格となるまで、視野が異なる組織写真の追加撮影を行って、上記の分類工程、定量値算出工程、偏差算出工程を繰り返し実施した。表2は、視野数が全部で3つである場合の結果を示す。また、表3は、視野数が全部で9つである場合の結果を示す。
Figure 2023172383000006
Figure 2023172383000007
視野数が全部で3つである場合に、面積率及び真円度の偏差の平均値は0.1以下となった。しかし、フェレー径の偏差の平均値が0.1を超えており、2視野では本試料の組織を適切に評価することができないと判定された。つまり、視野数合否判定において不合格との判定が示された。
視野数が全部で9つである場合に、全ての定量値の偏差の平均値が0.1以下となり、視野数合否判定において合格との判定が示された。したがって、組織写真評価装置10によって、本試料について9視野を撮影することで適切に組織を評価できることが示された。
ここで、比較例の従来手法として、同じ試料について観察者の主観によって視野数が定められた。比較例では、観察者が10視野で組織を評価できると判断した。ただし、比較例では10視野を超える数の撮影を行っており、撮影及び判断までに長時間を要した。本装置では効率的な撮影ができており、判定も瞬時に完了している。
このように、本実施例において、金属材料の組織写真の視野数を適切かつ効率的に評価することができた。この結果、材料特性との相関を客観的に考察でき、効率的な材料開発が期待される。また、鉄鋼材料又は複数の金属相を有する金属材料の評価において、各相の定量値を適切に評価できるため、効率的な鉄鋼材料又は複数の金属相を有する金属材料の開発が期待される。
以上のように、本実施形態に係る組織写真評価方法、組織写真評価装置、撮影装置及びプログラムは、金属材料の組織写真の視野数を適切かつ効率的に評価できる。
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
1 組織写真評価システム
10 組織写真評価装置
11 入力部
12 出力部
13 演算部
14 相分類部
15 定量値算出部
16 偏差算出部
17 倍率決定部
19 視野数合否判定部
20 統計値算出部
30 撮影装置

Claims (13)

  1. 金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出工程と、
    前記定量値の偏差を算出する偏差算出工程と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、
    前記合否を出力する出力工程と、
    を備える、組織写真評価方法。
  2. 金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出工程と、
    前記定量値の偏差を算出する偏差算出工程と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、
    前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出工程と、
    前記統計値を出力する出力工程と、
    を備える、組織写真評価方法。
  3. 金属材料の少なくとも2以上の視野について2以上の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力工程と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類工程と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出工程と、
    前記定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する倍率決定工程と、
    前記代表撮影倍率に該当する前記複数の組織写真について、前記定量値の偏差を算出する偏差算出工程と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定工程と、
    前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出工程と、
    前記統計値を出力する出力工程と、
    を備える、組織写真評価方法。
  4. 前記出力工程は、前記統計値とともに前記合否を出力する、請求項2又は3に記載の組織写真評価方法。
  5. 前記定量値は、面積率、楕円体サイズ、フェレー径、平均径、真円度及び数密度の少なくとも1つである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組織写真評価方法。
  6. 金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
    前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
    前記合否を出力する出力部と、
    を備える、組織写真評価装置。
  7. 金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
    前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
    前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出部と、
    前記統計値を出力する出力部と、
    を備える、組織写真評価装置。
  8. 金属材料の少なくとも2以上の視野について2以上の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
    前記定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する倍率決定部と、
    前記代表撮影倍率に該当する前記複数の組織写真について、前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
    前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出部と、
    前記統計値を出力する出力部と、
    を備える、組織写真評価装置。
  9. 請求項6から8のいずれか一項に記載の組織写真評価装置によって取得される前記複数の組織写真を撮影する、撮影装置。
  10. 前記撮影装置は光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡である、請求項9に記載の撮影装置。
  11. コンピュータを、
    金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
    前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
    前記合否を出力する出力部と、
    として機能させるための、プログラム。
  12. コンピュータを、
    金属材料の少なくとも2以上の視野について所定の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
    前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
    前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出部と、
    前記統計値を出力する出力部と、
    として機能させるための、プログラム。
  13. コンピュータを、
    金属材料の少なくとも2以上の視野について2以上の撮影倍率で撮影された複数の組織写真を取得する入力部と、
    前記複数の組織写真での相を分類する相分類部と、
    分類された前記相の定量値を算出する定量値算出部と、
    前記定量値に基づいて代表撮影倍率を決定する倍率決定部と、
    前記代表撮影倍率に該当する前記複数の組織写真について、前記定量値の偏差を算出する偏差算出部と、
    前記偏差に基づいて前記複数の組織写真の視野数について合否を判定する視野数合否判定部と、
    前記相の定量値に基づいて統計値を算出する統計値算出部と、
    前記統計値を出力する出力部と、
    として機能させるための、プログラム。
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