JP2023171981A - ダイバーティングエージェント、これを用いた坑井の亀裂の一時閉塞方法、及びさらなる亀裂の形成方法 - Google Patents

ダイバーティングエージェント、これを用いた坑井の亀裂の一時閉塞方法、及びさらなる亀裂の形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023171981A
JP2023171981A JP2020177767A JP2020177767A JP2023171981A JP 2023171981 A JP2023171981 A JP 2023171981A JP 2020177767 A JP2020177767 A JP 2020177767A JP 2020177767 A JP2020177767 A JP 2020177767A JP 2023171981 A JP2023171981 A JP 2023171981A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diverting agent
crack
pva
resin
polyvinyl alcohol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020177767A
Other languages
English (en)
Inventor
修作 万代
Shusaku Bandai
泰広 平野
Yasuhiro Hirano
祐哉 金森
Yuya Kanemori
健二 古井
Kenji Furui
恵人 池端
Keito Ikehata
智貴 大西
Tomoki Onishi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2020177767A priority Critical patent/JP2023171981A/ja
Priority to PCT/JP2021/039173 priority patent/WO2022085796A1/ja
Priority to US18/137,085 priority patent/US11939855B2/en
Publication of JP2023171981A publication Critical patent/JP2023171981A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • EFIXED CONSTRUCTIONS
    • E21EARTH DRILLING; MINING
    • E21BEARTH DRILLING, e.g. DEEP DRILLING; OBTAINING OIL, GAS, WATER, SOLUBLE OR MELTABLE MATERIALS OR A SLURRY OF MINERALS FROM WELLS
    • E21B43/00Methods or apparatus for obtaining oil, gas, water, soluble or meltable materials or a slurry of minerals from wells
    • E21B43/25Methods for stimulating production
    • E21B43/26Methods for stimulating production by forming crevices or fractures
    • E21B43/267Methods for stimulating production by forming crevices or fractures reinforcing fractures by propping
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C09DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • C09KMATERIALS FOR MISCELLANEOUS APPLICATIONS, NOT PROVIDED FOR ELSEWHERE
    • C09K8/00Compositions for drilling of boreholes or wells; Compositions for treating boreholes or wells, e.g. for completion or for remedial operations
    • C09K8/60Compositions for stimulating production by acting on the underground formation
    • C09K8/62Compositions for forming crevices or fractures
    • C09K8/66Compositions based on water or polar solvents
    • C09K8/68Compositions based on water or polar solvents containing organic compounds
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C09DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • C09KMATERIALS FOR MISCELLANEOUS APPLICATIONS, NOT PROVIDED FOR ELSEWHERE
    • C09K8/00Compositions for drilling of boreholes or wells; Compositions for treating boreholes or wells, e.g. for completion or for remedial operations
    • C09K8/60Compositions for stimulating production by acting on the underground formation
    • C09K8/84Compositions based on water or polar solvents
    • C09K8/86Compositions based on water or polar solvents containing organic compounds
    • C09K8/88Compositions based on water or polar solvents containing organic compounds macromolecular compounds

Abstract

【課題】水圧破砕法を用いる掘削工法において、坑井の亀裂の閉塞時間の持続性を向上させつつ、容易に除去できる、ダイバーティングエージェント(DA)を提供する。【解決手段】パウダー状のポリビニルアルコール系樹脂(P1)と、ペレット状のポリビニルアルコール系樹脂(P2)を含有するDAで、グアーガムの0.6質量%水溶液にDAを加えて濃度が6質量%の混合液を調製し、混合液を23℃で30分間分散させて分散液を得て、分散液をスリット状排水部を備えた加圧脱水装置を用いて0.4MPaの圧力で加圧脱水し、時間の平方根xに対する積算脱水量yを求め、散布図から回帰直線を求める。次に、スリット状排水部のDAによる閉塞を、P2のスリットへの架橋により形成された孔隙へのP1の吸着による塞栓として閉塞過程の移流方程式に吸着項rを導入し、移流方程式が前記回帰直線と一致する吸着係数kcを求め、kcが0.01以上、1以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、ダイバーティングエージェント(Diverting Agent)及びこれを用いた坑井の亀裂の閉塞方法に関し、更に詳しくは、水圧破砕法を用いる掘削工法の施工時に用いられるダイバーティングエージェント、該ダイバーティングエージェントを用いて坑井の亀裂を一時的に閉塞する方法、及び亀裂を閉塞させた状態で坑井内に充填されたフラクチャリング流体を加圧することによる亀裂の形成方法に関する。
石油やその他の地下資源の採取のために、地下の頁岩(シェール)層に高圧の水を注入して亀裂を生じさせる水圧破砕法が広く採用されている。水圧破砕法では、まず、ドリルで垂直に地下数千メートルの縦孔(垂直坑井)を掘削し、頁岩層に達したところで水平に直径十から数十センチメートルの横孔(水平坑井)を掘削する。
次いで、水平坑井中でパーフォレーション(Perforation)と呼ばれる予備爆破が行われる。このような予備爆破により、坑井から生産層に穿孔を開ける。この後、この坑井内にフラクチュアリング流体を圧入することにより、これら穿孔に流体が流入し、これら穿孔に負荷が加えられることにより亀裂(フラクチャ、fracture)を生成させ、かかる亀裂から頁岩層にある天然ガスや石油(シェールガス・オイル)等を回収する。
このような手法によれば、亀裂の生成により、坑井の資源流入断面が増大し、効率よく地下資源の採取を行うことができる。
水圧破砕法では、既に生成している亀裂をより大きく成長させたり、さらに多くの亀裂を生成させたりするために、既に生成している亀裂の一部をダイバーティングエージェントと呼ばれる添加剤を用いて一時的に閉塞し、この状態で坑井内に充填されたフラクチュアリング流体を加圧することにより、他の亀裂内に流体が浸入していき、これにより、他の亀裂を大きく成長させるあるいは新たな亀裂を発生させることができる。
ダイバーティングエージェントは、上記したように亀裂を一時的に閉塞するために用いられるものであり、一定期間はその閉塞状態を維持し、その後、天然ガスや石油等を採取する際には消失している材料が使用される。例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸等の加水分解性樹脂や、ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂をダイバーティングエージェントとして使用する技術が種々提案されている。
特に、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂は、加水分解性樹脂と比較して消失までの時間が短く、ケン化度や重合度、変性種、及び変性度の設計により、閉塞時間や溶解速度の制御が容易であることから、ダイバーティングエージェント材料として期待が大きい。
例えば、かかるポリビニルアルコール系樹脂を含有するダイバーティングエージェントにおいては、亀裂を閉塞させる時間と、その後の溶解速度を制御する方法として、特許文献1では、特定の加圧脱水試験を行い、加圧時間の平方根に対する積算脱水量をプロットし、最小二乗法によって回帰直線y=ax+bを引いたときの傾きaが特定値以下とする方法、及びかかる方法によるダイバーティングエージェントが提案されている。
国際公開第2020/166595号
特許文献1ではさらに、ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、所望の閉塞、溶解特性を有するダイバーティングエージェントを容易に得る手段として、種々の形状や特性を有するポリビニルアルコール系樹脂を組み合わせて用いることを提案しており、例えば、ペレット状ポリビニルアルコール系樹脂と粉末状ポリビニルアルコール系樹脂を適宜組み合わせた例を提示している。
しかしながら、頁岩層の特性や亀裂のでき方はさまざまであり、種々の亀裂に適合するダイバーティングエージェントを設計・検討する過程で、特許文献1に記載の加圧脱水試験において、より広幅のスリットを用いた場合、パウダー状ポリビニルアルコール系樹脂とペレット状ポリビニルアルコール系樹脂との組み合わせによって、亀裂の閉塞性に関する効果が異なることが判明した。
すなわち、本発明は亀裂の大きさや構造に関わらず、優れた一時閉塞性が得られるダイバーティングエージェントの設計方法、及びダイバーティングエージェントの提供を目的とするものである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、パウダー状のポリビニルアルコール系樹脂と、ペレット状のポリビニルアルコール系樹脂とを含有するダイバーティングエージェントであり、
その特定条件による加圧脱水試験による加圧時間の平方根に対する積算脱水量のプロットから最小二乗法によって得られた回帰直線y=ax+bに対し、
ペレットとパウダーによる亀裂の閉塞現象の数値シミュレーションから導かれる移流方程式に、パウダーの吸着を想定した吸着項を導入し、かかる項中の吸着係数kcを調整することで、上記回帰直線と移流方程式を一致させた場合の
kcが特定数値範囲であるダイバーティングエージェントが、閉塞性に優れ、特に種々の条件の亀裂にも対応可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
パウダー状ポリビニルアルコール系樹脂とペレット状ポリビニルアルコール系樹脂による亀裂の閉塞現象は、ペレット状ポリビニルアルコール系樹脂による亀裂への架橋と、それにともなう孔隙の形成、さらにかかる孔隙へのパウダー状ポリビニルアルコール系樹脂の吸着による塞栓という二つのステップによって進行するものと推測される。
かかる閉塞現象を数値シミュレーションする場合、通常は孔隙へのパウダー分散液の流入と流出、蓄積を勘案すれば良いが、ポリビニルアルコール系樹脂を用いるダイバーティングエージェントにおいては、ポリビニルアルコール系樹脂が分散媒である水との接触により、表面がわずかに溶解したり、ポリビニルアルコール系樹脂が水を吸収して膨潤したりすることで、表面に粘着力が生じ、これが孔隙へのパウダーの吸着のドライビングフォースとなることが考えられる。
そこで、ペレット状ポリビニルアルコール系樹脂とパウダー状ポリビニルアルコール系樹脂による亀裂の閉塞現象を数値シミュレーションした移流方程式に、パウダー状ポリビニルアルコール系樹脂の吸着を想定した吸着項を導入した式を用い、これと実際の加圧脱水試験によって得られる式との乖離の程度が大きいもの、換言すれば、吸着項中の吸着係数を調整することで、両方の式のフィッティングを試み、両式が一致する場合の吸着係数を求め、その値が大きいものが、パウダー状ポリビニルアルコール系樹脂の吸着度合いが大きい、すなわち、閉塞現象に対する寄与が大きく、良好な閉塞特性を有することを見出したものである。
すなわち本発明は、以下の(1)~(5)を特徴とする。
(1)パウダー状のポリビニルアルコール系樹脂(P1)と、ペレット状のポリビニルアルコール系樹脂(P2)を含有するダイバーティングエージェントであって、
グアーガムの0.6質量%水溶液に前記ダイバーティングエージェントを加えてダイバーティングエージェントの濃度が6質量%の混合液を調製し、前記混合液を23℃で30分間分散させて分散液を得て、前記分散液をスリット状排水部を備えた加圧脱水装置を用いて0.4MPaの圧力で加圧脱水し、時間の平方根xに対する積算脱水量yを求め、横軸に前記時間の平方根xを、縦軸に前記積算脱水量yをとったグラフにプロットした散布図から最小二乗法により算出された下記式(A)で表される回帰直線を求め、
Figure 2023171981000001
(式(A)中、yは積算脱水量(g)、xは加圧開始から経過した時間(分)の平方根、a及びbは回帰直線の傾きと切片を表わし、0<x≦2である。)
次に、かかる加圧脱水装置におけるスリット状排水部のダイバーティングエージェントによる閉塞を、ペレット状ポリビニルアルコール系樹脂(P2)のスリットへの架橋によって形成された孔隙への粉末状ポリビニルアルコール系樹脂(P1)の吸着・充填による塞栓と推定し、かかる孔隙への閉塞過程の数値シミュレーションに用いる移流方程式に、下記式(B)で表される吸着項rを導入し、
Figure 2023171981000002
(式中、kcは反応係数、Φはペレットによって形成される孔隙の孔隙率、Cは粉末状ポリビニルアルコール系樹脂の濃度)
次に、かかる移流方程式が式(A)と一致する反応係数kcを求め、
得られたkcが0.01以上であることを特徴とするダイバーティングエージェント。
(2)坑井に生成された亀裂を一時的に閉塞する方法であって、前記ダイバーティングエージェントを、坑井内の流体の流れに乗せて閉塞したい亀裂に流入させることを特徴とする坑井の亀裂の閉塞方法。
(3)前期の坑井の亀裂の閉塞方法によって亀裂が一時的に閉塞された状態で、坑井内のフラクチャリング流体を加圧する新たな亀裂の形成方法。
本発明のダイバーティングエージェントは、坑井の様々な条件の亀裂に対して十分な閉塞性を有するものである。加えて、閉塞時間の持続性も有し、さらにその主成分であるポリビニルアルコール系樹脂は水溶性であるため、閉塞後は水に溶解し容易に除去される。
したがって、本発明のダイバーティングエージェントは、天然ガスや石油等の掘削作業で行われる水圧破砕法に好適に用いることができる。
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施形態の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
なお、本明細書において、「ポリビニルアルコール」は、「PVA」と略記することがある。
本発明のダイバーティングエージェントは、パウダー状のPVA系樹脂(P1)と、ペレット状のPVA系樹脂(P2)を含有し、
グアーガムの0.6質量%水溶液に前記ダイバーティングエージェントを加えてダイバーティングエージェントの濃度が6質量%の混合液を調製し、前記混合液を23℃で30分間分散させて分散液を得て、前記分散液をスリット状排水部を備えた加圧脱水装置を用いて0.4MPaの圧力で加圧脱水し、時間の平方根xに対する積算脱水量yを求め、横軸に前記時間の平方根xを、縦軸に前記積算脱水量yをとったグラフにプロットした散布図から最小二乗法により算出された下記式(A)で表わされる回帰直線を求め、
Figure 2023171981000003
(式(A)中、yは積算脱水量(g)、xは加圧開始から経過した時間(分)の平方根、a及びbは回帰直線の傾きと切片を表わし、0<x≦2である。)
次に、かかる加圧脱水装置におけるスリット状排水部のダイバーティングエージェントによる閉塞を、ペレット状ポリビニルアルコール系樹脂(P2)のスリットへの架橋によって形成された孔隙へのパウダー状ポリビニルアルコール系樹脂(P1)の吸着・充填による塞栓と推定し、かかる閉塞過程の数値シミュレーションに用いる移流方程式に、下記式(B)で表される吸着項rを導入し、
Figure 2023171981000004
(式中、kcは吸着係数、Φはペレットによって形成される孔隙の孔隙率、Cは粉末状ポリビニルアルコール系樹脂の濃度)
次に、かかる移流方程式が式(A)と一致する吸着係数kcを求め、
得られたkcが0.01以上であることを特徴とするダイバーティングエージェントである。
すなわち、本発明のダイバーティングエージェントは、
a.パウダー状とペレット状の少なくとも2種類のPVA系樹脂を含有し、
b.閉塞挙動の実測結果と、PVA系樹脂の吸着性を考慮したシミュレーションとを比較し、
c.両者のフィッティングのためにシミュレーション式中の吸着項(吸着係数kc)を調整し、
d.得られた吸着係数kcが特定の値である、
ことを特徴とするものである。
以下、本発明に用いられるPVA系樹脂、これを含有するダイバーティングエージェント、ダイバーティングエージェントの閉塞挙動の実測方法、閉塞挙動のシミュレーション方法、について順次説明する。
〔PVA系樹脂〕
まず、本発明で用いるPVA系樹脂について説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位と未ケン化部分の酢酸ビニル構造単位を有するものである。
本発明では、PVA系樹脂として、未変性PVA系樹脂の他に、ポリビニルエステル系樹脂の製造時に各種モノマーを共重合させ、これをケン化して得られる変性PVA系樹脂や、未変性PVA系樹脂に後変性によって各種官能基を導入した各種の後変性PVA系樹脂等を用いることができる。かかる変性は、PVA系樹脂の水溶性が失われない範囲で行うことができる。また、場合によっては、変性PVA系樹脂を更に後変性させてもよい。
本発明で用いられるPVA系樹脂のケン化度(JIS K 6726:1994に準拠して測定)は、通常、60~100モル%のものが用いられる。かかるケン化度が低すぎると水溶性が低下する傾向がある。
ケン化度は、亀裂等の隙間に対する閉塞性の観点から、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上がより好ましい。また、上限は99.8モル%以下が好ましく、より好ましくは99.5モル%以下である。
PVA系樹脂の平均重合度(JIS K 6726:1994に準拠して測定)は、通常、100~3500である。平均重合度は、小さすぎると溶解しやすくなり閉塞性が発揮できない傾向があり、平均重合度が大きすぎると溶解速度が遅く一定時間経過後の溶解が難しくなる傾向があるため、閉塞性の持続と一定時間経過後の溶解性の観点から、200~2500であることが好ましく、特に300~2000がより好ましい。
本発明で用いられるPVA系樹脂は、4質量%水溶液粘度が、通常、2~85mPa・sであるものが用いられ、より好ましくは2.5~80mPa・s、更に好ましく3~75mPa・s、特に好ましくは3.5~70mPa・sである。かかる粘度が低すぎると本願の効果がでにくくなる傾向があり、高すぎると閉塞解除後に溶解したPVA系樹脂の亀裂壁等への粘着力が高くなり、除去が困難になって、原油等の回収に影響をおよぼす可能性がある。
なお、PVA系樹脂の4質量%水溶液粘度は、PVA系樹脂の4質量%水溶液を調製し、JIS K6726:1994に準拠して測定した20℃における粘度である。
PVA系樹脂の融点は、140~250℃であることが好ましく、より好ましくは150~245℃、更に好ましくは160~240℃、特に好ましくは170~230℃である。
なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)で昇降温速度10℃/minで測定した値である。
本発明において、PVA系樹脂は、官能基が導入された変性PVA系樹脂を用いてもよく、官能基の選択や導入量などを調整することで、PVA系樹脂の水溶性挙動を制御することが可能である。
かかる官能基を導入したPVA系樹脂としては、例えば、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂や、エチレン変性PVA系樹脂が好ましく、特に、ペレット状PVA系樹脂を得るための溶融成形性に優れる点で、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂が好ましい。
このような側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂としては、例えば、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂、側鎖にヒドロキシアルキル基構造単位を有する変性PVA系樹脂等が挙げられる。中でも、特に下記一般式(1)で表される、側鎖に1,2-ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(以下、「側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂」と称することがある。)を用いることが好ましい。
なお、1,2-ジオール構造単位以外の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位である。
Figure 2023171981000005
(式(1)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
上記一般式(1)において、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R~Rは、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば炭素数1~4のアルキル基であってもよい。当該アルキル基としては特に限定しないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が好ましく、当該アルキル基は必要に応じてハロゲノ基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で、単結合であることが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。
かかる結合鎖としては、特に限定されず、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基等の炭化水素基(これらの炭化水素基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等で置換されていてもよい。)の他、-O-、-(CHO)-、-(OCH-、-(CHO)CH-、-CO-、-COCO-、-CO(CHCO-、-CO(C)CO-、-S-、-CS-、-SO-、-SO-、-NR-、-CONR-、-NRCO-、-CSNR-、-NRCS-、-NRNR-、-HPO4-、-Si(OR)-、-OSi(OR)-、-OSi(OR)O-、-Ti(OR)-、-OTi(OR)-、-OTi(OR)O-、-Al(OR)-、-OAl(OR)-、-OAl(OR)O-等が挙げられる。Rは各々独立して水素原子又は任意の置換基であり、水素原子又はアルキル基(特に炭素数1~4のアルキル基)が好ましい。また、mは自然数であり、好ましくは1~10、特に好ましくは1~5である。結合鎖は、これらのなかでも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは-CHOCH-が好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2-ジオール構造単位における特に好ましい構造は、R~Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である。
PVA系樹脂が変性PVA系樹脂である場合、かかる変性PVA系樹脂中の変性率、すなわち共重合体中の各種モノマーに由来する構造単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、官能基の種類によって特性が大きく異なるため一概には言えないが、0.1~20モル%であることが好ましい。
例えば、PVA系樹脂が側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂である場合の変性率は、0.1~20モル%であることが好ましく、より好ましくは0.5~10モル%、更に好ましくは1~8モル%、特に好ましくは1~3モル%である。かかる変性率が高すぎると、坑井の亀裂を一時的に閉塞できなくなり、低すぎると一定期間後の溶解性が悪化する傾向がある。
なお、PVA系樹脂中の1,2-ジオール構造単位の含有率(変性率)は、ケン化度100モル%のPVA系樹脂のH-NMRスペクトル(溶媒:DMSO-d、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができる。具体的には1,2-ジオール構造単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出することができる。
なお、かかる側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂は、公知の製造方法により製造することができ、例えば、特開2002-284818号公報、特開2004-285143号公報、特開2006-95825号公報に記載されている方法を用いることができる。
次に、PVA系樹脂がエチレン変性PVA系樹脂である場合の変性率は、0.1~15モル%であることが好ましく、より好ましくは0.5~10モル%、更に好ましくは1~10モル%、特に好ましくは5~9モル%である。かかる変性率が高すぎると水溶性が低下する傾向があり、低すぎると溶融成形が困難となる傾向がある。
本発明で用いられるPVA系樹脂の一般的な製造方法としては、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合し、得られたポリビニルエステル重合体をケン化して製造する方法が挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等が挙げられ、価格や入手の容易さの観点で、酢酸ビニルが好ましく用いられる。
ビニルエステル系樹脂の製造時にビニルエステル系モノマーとの共重合に用いられるモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、そのモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド;アリルトリメチルアンモニウムクロライド;ジメチルアリルビニルケトン;N-ビニルピロリドン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン[1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル]エステル;ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシアルキレンビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン等のポリオキシアルキレンアリルアミン;ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレンビニルアミン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類あるいはそのアシル化物等の誘導体を挙げることができる。
また、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-ヒドロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-3-ヒドロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4,5-ジヒドロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジヒドロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、グリセリンモノアリルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、2-アセトキシ-1-アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパン、3-アセトキシ-1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジメチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン等のジオールを有する化合物などが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーの重合又はビニルエステル系モノマーと共重合モノマーとの重合は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより行うことができる。なかでも、反応熱を効率的に除去できる溶液重合を還流下で行うことが好ましい。
かかる重合で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4の脂肪族アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、好ましくは炭素数1~3の低級アルコールが用いられる。
得られた重合体のケン化についても、従来より行われている公知のケン化方法を採用することができる。すなわち、重合体をアルコール又は水/アルコール溶媒に溶解させた状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行うことができる。
前記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートを用いることができる。
通常、無水アルコール系溶媒下、アルカリ触媒を用いたエステル交換反応が反応速度の点や脂肪酸塩等の不純物を低減できるなどの点で好適に用いられる。
ケン化反応の反応温度は、通常20~60℃である。反応温度が低すぎると、反応速度が小さくなり反応効率が低下する傾向があり、高すぎると反応溶媒の沸点以上となる場合があり、製造面における安全性が低下する傾向がある。なお、耐圧性の高い塔式連続ケン化塔などを用いて高圧下でケン化する場合には、より高温、例えば、80~150℃でケン化することが可能であり、少量のケン化触媒も短時間、高ケン化度のものを得ることが可能である。
本発明で用いられるPVA系樹脂は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。PVA系樹脂を2種類以上用いる場合としては、例えば、ケン化度、平均重合度、融点などが異なる2種以上の未変性PVA系樹脂の組み合わせ;未変性PVA系樹脂と変性PVA系樹脂との組み合わせ;ケン化度、平均重合度、融点、官能基の種類や変性率などが異なる2種以上の変性PVA系樹脂の組み合わせ;溶融成形により製造したPVA系樹脂と溶融成形せずに得られたPVA系樹脂の組み合わせ、形状や平均粒子径などが異なるPVA系樹脂の組み合わせ等が挙げられる。
本発明においては、PVA系樹脂はパウダー状のものと、ペレット状のものを併用して用いられる。
パウダー状PVA系樹脂(P1)としては、平均粒子径が200~2000μmのものが一般的であり、好ましくは300~1500μm、さらに好ましくは400~1000μmのものが好ましく用いられる。
なお、かかる平均粒子径は、乾式ふるい分け試験方法(JIS Z 8815:1994参考)の方法により測定することができ、本明細書において、粒子径とは、乾式ふるい分け試験方法で粒径別の体積分布を測定し、積算値(累積分布)が50%になる粒子径のことである。
かかる平均粒子径が大きすぎると、亀裂の閉塞が完了するまでに長時間が必要になる場合があり、逆に小さすぎると分散液の粘度が上がりすぎて取扱いが困難になる場合がある。
ペレット状PVA系樹脂(P2)としては、その形状は、特に限定されないが、例えば、球状、楕円球状、ペレット成形体(円柱状、板状、立方体状、直方体状、角柱状、多角面体状等)等が挙げられる。
特に溶融成形によって容易に製造が可能な、円柱状、および球状のペレット状PVA系樹脂が好ましく用いられる。
かかるペレット状PVA系樹脂の大きさは、坑井内の亀裂の大きさ、ペレットの形状等を考慮して適宜調整すれば良く、亀裂が大きい場合は大型のペレットを、小さい場合は小型のペレットを用いれば良いが、通常、外径が0.1~5mmの範囲であるものが用いられる。かかる大きさ(直径、長さ、平均粒子径)が大きすぎると閉塞までに時間がかかる傾向があり、小さすぎると塞栓効果が低下する傾向がある。
具体的に、ペレット状PVA系樹脂が円柱状ペレットである場合、その平均粒子径は、軸方向と直交する断面の直径が0.5~5mmであることが好ましく、より好ましくは1~4.5mm、更に好ましくは2~4mmである。また、長さ(軸方向の長さ)は0.5~7mmであることが好ましく、より好ましくは2~6mm、更に好ましくは3~5mmである。
また、ペレット状PVA系樹脂が球状ペレットである場合、その平均粒子径(直径)は、0.5~5mmであることが好ましく、より好ましくは1~4.5mm、更に好ましくは2~4mmである。
本発明におけるパウダー状PVA系樹脂(P1)とペレット状PVA系樹脂(P2)の含有比は、通常、P1:P2(質量比)で90:10~20:80の範囲で用いられ、好ましくは85:15~30:70、特に好ましくは80:20~35:65である。かかるペレット状PVA系樹脂(P2)の含有比が少なすぎると、亀裂へのペレット状PVA系樹脂の架橋が不十分となり、良好な孔隙が形成されず、亀裂の閉塞が十分に達成されない可能性があり、逆にペレット状PVA系(P2)の含有比が大きくなりすぎると、亀裂へのペレット状PVA系樹脂の架橋によって形成された孔隙へのパウダー状PVA系樹脂(P1)の吸着・充填が不十分となり、十分に亀裂が閉塞されない可能性がある。
なお、さらに異なる形状、大きさのPVA系樹脂を併用し、3種類以上の平均粒子径の異なるPVA系樹脂粒子を任意の割合で混合してもよい。
〔ダイバーティングエージェント〕
本発明のダイバーティングエージェントは、上記したPVA系樹脂(パウダー状PVA系樹脂、及びペレット状PVA系樹脂)を含有する。PVA系樹脂の含有量は、ダイバーティングエージェント全体に対して、50~100質量%であることが好ましく、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。かかる含有量が少なすぎると、本発明の効果が得られにくくなる傾向がある。
本発明のダイバーティングエージェントには、本発明の効果を阻害しない範囲で、PVA系樹脂以外に、例えば、砂、鉄、セラミック、その他の生分解性樹脂などの添加材(剤)を配合することができる。
かかる添加材(剤)の配合量は、ダイバーティングエージェント全体に対して、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
ダイバーティングエージェントは、本発明のPVA系樹脂と必要により他の添加材(剤)とを均一に混合することにより作製することができる。
〔ダイバーティングエージェントの閉塞挙動〕
本発明は、前述のとおり、パウダー状PVA系樹脂(P1)と、ペレット状PVA系樹脂(P2)を含有するダイバーティングエージェントであって、その加圧脱水装置による亀裂の閉塞挙動の評価において、特定の閉塞特性を示すものである。
<亀裂の閉塞挙動の実測>
まず、かかる加圧脱水装置による亀裂の閉塞挙動の解析手順について説明する。
まず評価に用いるダイバーティングエージェントをグアーガムの0.6質量%水溶液に加えてダイバーティングエージェントの濃度が6質量%の混合液を調製し、前記混合液を23日℃で30分間分散させて分散液を得て、前記分散液をスリット状排水部を備えた加圧脱水装置を用いて0.4MPaの圧力で加圧脱水し、時間の平方根xに対する積算脱水量yを求め、横軸に前記時間の平方根xを、縦軸に前記積算脱水量yをとったグラフにプロットした散布図から最小二乗法により算出された下記式(A)で表される回帰直線を求め、
Figure 2023171981000006
(式(A)中、yは積算脱水量(g)、xは加圧開始から経過した時間(分)の平方根、a及びbは回帰直線の傾きと切片を表わし、0<x≦2である。)
かかる加圧脱水装置としては、例えば、Fann Instrument社の「HPHT Filter Press 500CT」(商品名)等を挙げることができる。
かかる式(A)における傾きaは、小さいほど時間あたりの脱水量が少ない、すなわち水が流れにくくなっている状態を示すものであり、坑井の亀裂に対して十分な閉塞性とその持続性の指標となるもので、好ましくは100以下、さらに80以下、特に50以下であるものが好ましく用いられる。一方、下限値は特に限定されないが、通常0より大きくなる。
また、式(A)中、切片bは傾きaにより定まる変数である。加圧した瞬間にある程度の脱水が起こり、これによりダイバーティングエージェントが最適配置となって加圧脱水装置のスリットを閉塞することができる。前記を踏まえたうえで、切片bとなる加圧開始0分における脱水量は、特に限定はされないが、400g以下であることが好ましく、300g以下がより好ましい。
<閉塞挙動のシミュレーション>
次に、本発明において、ペレット状PVA系樹脂の亀裂への架橋によって形成された孔隙への、パウダー状PVA系樹脂の吸着・充填による閉塞挙動について説明する。
まず、下図のようにパウダー状ポリビニルアルコール系樹脂の分散液が流出入する3次元の微小なグリッドを考える。
(図1)
Figure 2023171981000007
グリッドに対し濃度の外部的な影響がないと考えると物質収支は式(1)
Figure 2023171981000008
・・・(1)
と書くことができる。
ここで、min、moutは流体の流入量、および流出量であり、mは蓄積量を表している。また、式(1)は図にもとづいて、
Figure 2023171981000009
・・・(2)

と書くことができ、ここで両辺をΔxΔyΔzΔtで割ると、
Figure 2023171981000010
・・・(3)



と書くことができる。ここでΔx、Δy、Δz、Δtを限りなく0に近づけると式(3)は、
Figure 2023171981000011
・・・(4)

と書くことができ、これが一般的な移流方程式である。
前述のとおり、ダイバーティングエージェントの閉塞はペレット状PVA系樹脂が亀裂上に堆積する架橋(Bridging)の過程と、かかる架橋によって形成された孔隙にパウダー状PVA系樹脂が吸着し、これを充填することで閉塞性が向上する塞栓(Plugging)の二つの過程からなると考えている。本発明では塞栓の過程についてさらに注目しパウダー状PVA系樹脂の孔隙への吸着の割合を定式化することを目指す。この式を吸着項とよび、本発明では以下の式のように表されると仮定する。
Figure 2023171981000012
・・・(5)

ここでrは吸着の割合であり、kcは吸着係数、Φは孔隙率を示している。つまりパウダー状PVA系樹脂の吸着の割合は孔隙率が小さい場所ほど高く、濃度が高ければ高いほどより吸着すると仮定している。
式(4)に対し吸着項を導入すると
Figure 2023171981000013
・・・(6)

と書くことができ、これを本発明における移流方程式とする。
<実測結果とシミュレーション結果のフィッティング>
次に、前述したダイバーティングエージェントの閉塞挙動の実測結果に基づく式(A)と、シミュレーションに用いた移流方程式(6)のフィッティングを行う。
かかるフィッティングは、移流方程式(6)中の吸着項r中の吸着係数kcを適宜調整することで行えばよい。
なお、吸着項r中の孔隙率Φは、ダイバーティングエージェント中のペレット状PVA系樹脂(P2)を容積既知の容器に充填し、さらにかかる容器を飽和させるのに必要な水の体積を求め、これらの値から求めることができる。
かかる式(6)と移流方程式(A)をフィッティングさせる際には、本件では閉塞過程のみを検討するものであるため、式(A)における初期脱水量については考慮せず、カーブを平行移動させてからフィッティングを行った。
フィッティングにおいては、式(6)中のkcを適宜変化させ(孔隙率Φは先の方法で得られた値を用い)、実験値である式(A)のカーブと、計算値である式(6)のカーブが一致するkcを導き出した。
本発明のダイバーティングエージェントは、かかる方法で導き出されたkcの値が0.01以上であることを特徴とするものである。さらに、かかるkcは、0.02以上であることが好ましく、特に0.03以上、殊に0.05以上であるものが好ましく用いられる。また、かかるkcの上限値は特に定めるものではないが、通常、1以下のものが用いられる。
かかるkcが小さすぎると、ダイバーティングエージェントの閉塞性が低下する傾向がある。
かかるkcを調整する方法としては、使用するPVA系樹脂の化学的特性(ケン化度、重合度、変性種、変性度、熱処理度、等)、PVA系樹脂の物理的特性(粒子径、大きさ、形状、等)、PVA系樹脂の組み合わせ(ペレットとパウダーの配合比、等)を調整する方法が挙げられ、特に、これらを複数組み合わせて調整することで本発明の要件を満たすダイバーティングエージェントを得ることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量を基準とする。
(製造例1:パウダー状PVA系樹脂(PVA1)の製造)
還流冷却器、滴下装置、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル20部(全体の20%を初期仕込み)、メタノール32.5部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン0.40部(全体の20%を初期仕込み)を仕込み、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、沸点に到達した後、アセチルパーオキサイドを0.093部投入し、重合を開始した。さらに、重合開始から0.4時間後に酢酸ビニル80部と3,4-ジアセトキシ-1-ブテン1.60部を11時間かけて等速滴下した。酢酸ビニルの重合率が92%となった時点で、ヒドロキノンモノメチルエーテルを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
ついで、上記溶液をメタノールで希釈し、固形分濃度を55%に調整して、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウム2%メタノール溶液(ナトリウム換算)を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して12ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、ケーキ状となった時点で粉砕した。その後、中和用の酢酸を水酸化ナトリウム1当量あたり0.3当量添加し、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、側鎖1,2-ジオール構造単位を含有するパウダー状PVA系樹脂(PVA1)を得た。
得られたPVA1はパウダー状であり、乾式ふるい分け試験方法でふるい分けし、積算値が50%になる粒子径を算出した。PVA1の平均粒子径は、750μmであった。
また、PVA1のケン化度は、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、99.3モル%であった。また、平均重合度は、JIS K6726:1994に準じて分析を行ったところ、450であった。
また、PVA1中の前記式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量(変性率)は、H-NMR(300MHz プロトンNMR、d-DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、1.0モル%であった。
(製造例2:パウダー状PVA系樹脂(PVA2)の製造)
水酸化ナトリウム2%メタノール溶液(ナトリウム換算)を酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して10ミリモルとなる割合で加えてケン化した以外は製造例1と同様の方法により側鎖1,2-ジオール構造単位含有パウダー状PVA系樹脂粒子(PVA2)を得た。
得られたPVA2はパウダー状であり、平均粒子径750μm、ケン化度98.9モル%、平均重合度450、変性率1.0モル%であった。
(製造例3:パウダー状PVA系樹脂(PVA3)の製造)
水酸化ナトリウム2%メタノール溶液(ナトリウム換算)を酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化した以外は製造例1と同様の方法により側鎖1,2-ジオール構造単位含有パウダー状PVA系樹脂粒子(PVA3)を得た。
得られたPVA3はパウダー状であり、平均粒子径750μm、ケン化度98.5モル%、平均重合度450、変性率1.0モル%であった。
(製造例4:ペレット状PVA系樹脂粒子(PVA4a~4d)の製造)
上記製造例1において、仕込みの酢酸ビニルを100部、メタノールを32.5部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを4部とし、重合反応において酢酸ビニルの重合率が91%となった時点で重合を終了した以外は製造例1と同様の方法により側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂(PVA4)を得た。
得られた側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂(PVA4)のケン化度は99.0モル%、平均重合度530、変性率2.0モル%であった。
上記で得られた側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂粒子(PVA4)を押出機に投入し、さらにステアリン酸マグネシウム500ppmと12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム500ppmと酸化防止剤(ADEKA社製「AO-60」)3000ppmを混合し下記の条件で溶融混練し、空冷させることにより凝固させた後、カッターを用いてカッティング(ストランドカッティング方式)し、乾燥させることでペレット状の側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂(PVA4a~4d)を得た。なお、押出時のダイス径、およびカッティング時のカット長を調整することで、各種サイズのペレットを得た。
(溶融混練条件)
押出機:テクノベル社製 15mmφ L/D=60
回転数:200rpm
吐出量:1.2~1.5kg/h
押出温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=90/170/200/215/215/220/225/225/225℃
(実施例1~6、比較例1~2)
粉末状PVA系樹脂(PVA1~3)を30%、ペレット状PVA系樹脂(PVA4a~d)を70%の割合で均一に混合して粒子混合物を得た。
各例のPVA系樹脂の特性を表1に示す。
Figure 2023171981000014

<加圧脱水試験>
各例の粒子混合物を分散させた分散液の脱水量を、Fann Instrument社の加圧脱水装置「HPHT Filter Press 500CT」を用いて測定した。
グアーガムの0.6質量%水溶液に粒子混合物を加えて、前記粒子混合物の濃度が6質量%となる混合液を調製した。この混合液を23℃で30分間撹拌し分散させて分散
液を得た。
次に、上記加圧脱水装置の排水部のスリットを3mm幅、あるいは4mm幅に設定し、1MPaの圧力を加えて加圧脱水した。
加圧開始(0分)から5分後までの0.5分毎の脱水量を測定し、時間の平方根xに対する積算脱水量yを求めた。横軸に前記時間の平方根xを、縦軸に前記積算脱水量yをとったグラフにプロットした散布図から、最小二乗法によって下記式(A)で表わされる回帰直線を算出した。
Figure 2023171981000015
(式(A)中、yは積算脱水量(g)、xは加圧開始から経過した時間(分)の平方根、a及びbは回帰直線の傾きと切片を表わし、0<x≦2である。)
<移流方程式とのフィッティング>
本発明で用いる移流方程式(6)と前述の式(A)とのフィッティングを、移流方程式(6)中の吸着項r中の吸着係数kcを適宜調整することで行った。なお、吸着項r中の孔隙率Φは、使用したペレット状PVA系樹脂を容積既知の容器に充填し、かかる容器に水を充填して容器を飽和させ、それに必要とした水の体積から算出した。
<閉塞性の評価>
各例で用いたダイバーティングエージェントの吸着係数kcと、その加圧脱水試験による結果を表2に示す。
Figure 2023171981000016

表2の結果より、吸着係数kcが0である(すなわち、実測結果とシミュレーション結果が一致する)比較例1、および2は、スリット幅が3、および4mmという比較的大きい亀裂を想定した加圧脱水試験において、透水係数、初期脱水量が大きく、亀裂の閉塞性が不十分なものであった。
一方、ペレット状PVA系樹脂(P2)のサイズを各種調整し、吸着係数kcの値が0.01以上であった実施例はいずれも、良好な亀裂の閉塞性を示した。

Claims (3)

  1. パウダー状のポリビニルアルコール系樹脂(P1)と、ペレット状のポリビニルアルコール系樹脂(P2)を含有するダイバーティングエージェントであって、
    グアーガムの0.6質量%水溶液に前記ダイバーティングエージェントを加えてダイバーティングエージェントの濃度が60質量%の混合液を調製し、前記混合液を23℃で30分間分散させて分散液を得て、前記分散液をスリット状排水部を備えた加圧脱水装置を用いて0.4MPaの圧力で加圧脱水し、時間の平方根xに対する積算脱水量yを求め、横軸に前記時間の平方根xを、縦軸に前記積算脱水量yをとったグラフにプロットした散布図から最小二乗法により算出された下記式(A)で表される回帰直線を求め、
    Figure 2023171981000017
    (式(A)中、yは積算脱水量(g)、xは加圧開始から経過した時間(分)の平方根、a及びbは回帰直線の傾きと切片を表わし、0<x≦2である。)
    次に、かかる加圧脱水装置におけるスリット状排水部のダイバーティングエージェントによる閉塞を、ペレット状ポリビニルアルコール系樹脂(P2)のスリットへの架橋によって形成された孔隙へのパウダー状ポリビニルアルコール系樹脂(P1)の吸着による塞栓と推定し、かかる閉塞過程の数値シミュレーションに用いる移流方程式に、下記式(B)で表される吸着項rを導入し、
    Figure 2023171981000018
    (式中、kcは吸着係数、Φはペレットによって形成される孔隙の孔隙率、Cは粉末状ポリビニルアルコール系樹脂の濃度)
    次に、かかる移流方程式が式(A)と一致する吸着係数kcを求め、
    得られたkcが0.01以上、1以下であることを特徴とするダイバーティングエージェント。
  2. 坑井に生成された亀裂を一時的に閉塞する方法であって、請求項1に記載のダイバーティングエージェントを、坑井内の流体の流れに乗せて閉塞したい亀裂に流入させることを特徴とする坑井の亀裂の一時閉塞方法。
  3. 請求項2の坑井の亀裂の閉塞方法によって亀裂が一時的に閉塞された状態で、坑井内のフラクチャリング流体を加圧する新たな亀裂の形成方法。
JP2020177767A 2020-10-23 2020-10-23 ダイバーティングエージェント、これを用いた坑井の亀裂の一時閉塞方法、及びさらなる亀裂の形成方法 Pending JP2023171981A (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020177767A JP2023171981A (ja) 2020-10-23 2020-10-23 ダイバーティングエージェント、これを用いた坑井の亀裂の一時閉塞方法、及びさらなる亀裂の形成方法
PCT/JP2021/039173 WO2022085796A1 (ja) 2020-10-23 2021-10-22 ダイバーティングエージェント、これを用いた坑井の亀裂の一時閉塞方法、及びさらなる亀裂の形成方法
US18/137,085 US11939855B2 (en) 2020-10-23 2023-04-20 Diverting agent, method for temporarily filling fracture in well using same, and method for further forming fracture

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020177767A JP2023171981A (ja) 2020-10-23 2020-10-23 ダイバーティングエージェント、これを用いた坑井の亀裂の一時閉塞方法、及びさらなる亀裂の形成方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023171981A true JP2023171981A (ja) 2023-12-06

Family

ID=81290653

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020177767A Pending JP2023171981A (ja) 2020-10-23 2020-10-23 ダイバーティングエージェント、これを用いた坑井の亀裂の一時閉塞方法、及びさらなる亀裂の形成方法

Country Status (3)

Country Link
US (1) US11939855B2 (ja)
JP (1) JP2023171981A (ja)
WO (1) WO2022085796A1 (ja)

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102344788B (zh) * 2010-11-18 2013-07-31 中国石油天然气股份有限公司 一种可控破胶的水平井分段压裂用暂堵剂及其制备方法
CN111527182B (zh) 2017-12-28 2022-12-13 三菱化学株式会社 转向剂和使用其的坑井的龟裂的堵塞方法
CN113454128A (zh) * 2019-02-13 2021-09-28 三菱化学株式会社 转向剂和使用了其的坑井的龟裂的堵塞方法
CN113412285A (zh) 2019-02-13 2021-09-17 三菱化学株式会社 转向剂及使用其的坑井的龟裂的堵塞方法

Also Published As

Publication number Publication date
US11939855B2 (en) 2024-03-26
US20230258066A1 (en) 2023-08-17
WO2022085796A1 (ja) 2022-04-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7342362B2 (ja) ダイバーティングエージェント及びこれを用いた坑井の亀裂の閉塞方法
JP7326741B2 (ja) ダイバーティングエージェント及びこれを用いた坑井の亀裂の閉塞方法
US11898090B2 (en) Diverting agent and method of filling fracture in well using the same
US11674073B2 (en) Diverting agent and method of filling fracture in well using same
JP7471859B2 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂及び地下処理用目止め剤
US11891569B2 (en) Diverting agent and method of filling fracture in well using the same
JP2023171981A (ja) ダイバーティングエージェント、これを用いた坑井の亀裂の一時閉塞方法、及びさらなる亀裂の形成方法
US20210309910A1 (en) Diverting agent and method of filling fracture in well using same
WO2020138251A1 (ja) ダイバーティングエージェント及びこれを用いた坑井の亀裂の閉塞方法
WO2020166597A1 (ja) ダイバーティングエージェント及びこれを用いた坑井の亀裂の閉塞方法