JP2023170553A - 圧電材料用組成物および圧電材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】高電圧の印加、延伸処理等を行わない場合であっても圧電特性を付与することが可能であり、圧電材料に引張応力および/または曲げ応力が付与された際の高い圧電性と、伸縮性とを有する圧電材料を提供する。【解決手段】フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を含有し、該ポリマー(b)および該架橋剤(c)は、水酸基含有ポリマー(b1)およびイソシアネート基含有架橋剤(c1)であるか、または、イソシアネート基含有ポリマー(b2)および水酸基含有架橋剤(c2)である、圧電材料用組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、圧電材料用組成物および圧電材料に関する。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF/TrFE))等のフッ素系重合体は、優れた圧電特性を有する圧電材料として用いられている。この圧電材料は、例えば圧電センサー、トランスデューサー、および、赤外線焦電センサーなどの種々の圧電素子に用いられている。
例えば特許文献1~3には、ポリフッ化ビニリデンを含む圧電体が記載されている。
特開2008-304558号公報 特開2011-192665号公報 国際公開第2020/012660号
フッ素系重合体を含む材料を圧電体として使用する場合、通常、分極処理が行われる。例えば特許文献1には、ポリフッ化ビニリデンを含む材料を延伸することによって分極処理し、該材料に圧電特性を付与することが記載され、特許文献2には、ポリフッ化ビニリデンを含む材料に比較的高い電圧を印加することによって分極処理し、圧電特性を付与することが記載されている。
しかし、圧電材料の用途によっては、圧電特性以外の他の材料特性の観点から、延伸されていない材料であることが求められる場合がある。また、高電圧を印加して圧電特性を付与する場合、印加された高電圧が圧電性以外の他の材料物性に影響を与え得るため、該圧電材料が用いられる用途によっては、圧電特性以外の他の材料特性を満足しない場合がある。
また、被服や医療用センサーなどの用途への圧電材料の応用が進むにつれて、例えば圧電フィルムなどの圧電材料の表面が押されるなどすることにより該圧電材料に対して圧力が付与された際の圧電性のみならず、圧電材料に引張応力や曲げ応力が付与された際の圧電性も求められている。特許文献3には、柔軟性、伸縮性に優れると共に、延伸処理等を行わない場合であっても圧電特性を有する圧電材料が記載されているが、引張応力や曲げ応力が付与された際の圧電性については、十分とはいえず、さらなる向上に対する要求が存在する。また、このような圧電材料には柔軟性や伸縮性も求められる。
したがって、本発明の目的は、高電圧の印加、延伸処理等を行わない場合であっても圧電特性を付与することが可能であり、圧電材料に引張応力および/または曲げ応力が付与された際の高い圧電性と、伸縮性とを有する圧電材料を提供するための圧電材料用組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、圧電材料用組成物に含まれる種々の成分について鋭意検討を行った。その結果、ウレタン結合を含む架橋ポリマーを含む圧電材料を用いることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の好適な態様を含む。
〔1〕フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を含有し、
該ポリマー(b)および該架橋剤(c)は、水酸基含有ポリマー(b1)およびイソシアネート基含有架橋剤(c1)である、および/または、イソシアネート基含有ポリマー(b2)および水酸基含有架橋剤(c2)である、圧電材料用組成物。
〔2〕フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を含有する剤を含む、少なくとも1剤式の圧電材料用組成物であるか、
フッ素系重合体(a)およびポリマー(b)を含有する第1剤と、架橋剤(c)を含有する第2剤とを含む、少なくとも2剤式の圧電材料用組成物であるか、
フッ素系重合体(a)および架橋剤(c)を含有する第1剤と、ポリマー(b)を含有する第2剤とを含む、少なくとも2剤式の圧電材料用組成物であるか、または、
フッ素系重合体(a)を含有する第1剤と、ポリマー(b)を含有する第2剤と、架橋剤(c)を含有する第3剤とを含む、少なくとも3剤式の圧電材料用組成物である
〔1〕に記載の圧電材料用組成物。
〔3〕フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量に基づく、フッ素系重合体(a)の量は60~99質量%であり、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量は1~40質量%である、〔1〕または〔2〕に記載の圧電材料用組成物。
〔4〕フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量は、圧電材料用組成物の固形分に基づいて80質量%以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔5〕水酸基含有ポリマー(b1)は、0.01mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の水酸基価を有する(メタ)アクリル系ポリマーであり、
水酸基含有架橋剤(c2)は、0.01mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の水酸基価を有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔6〕イソシアネート基含有架橋剤(c1)はブロックポリイソシアネートである、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔7〕水酸基含有ポリマー(b1)の水酸基と、イソシアネート基含有架橋剤(c1)のイソシアネート基との当量比(水酸基:イソシアネート基)は、0.5:1.5~1.5:0.5であり、
水酸基含有架橋剤(c2)の水酸基と、イソシアネート基含有ポリマー(b2)のイソシアネート基との当量比(水酸基:イソシアネート基)は、0.5:1.5~1.5:0.5である、
〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔8〕フッ素系重合体(a)の重量平均分子量は100,000以上である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔9〕フッ素系重合体はフッ化ビニリデン系重合体である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔10〕フッ素系重合体(a)は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合であり、該共重合体におけるフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量は、全構成単位の量に基づいて55~90mol%である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔11〕〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物から形成してなる圧電材料。
〔12〕フッ素系重合体(a)、および、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)を含有する、圧電材料。
〔13〕架橋ポリマー(d)は、ポリマー(b)に由来する構造と、架橋剤(c)に由来する構造とを少なくとも含み、該ポリマー(b)および該架橋剤(c)は、水酸基含有ポリマー(b1)およびイソシアネート基含有架橋剤(c1)である、および/または、イソシアネート基含有ポリマー(b2)および水酸基含有架橋剤(c2)である、〔12〕に記載の圧電材料。
〔14〕フッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)の合計量に基づく、フッ素系重合体(a)の量は60~99質量%であり、架橋ポリマー(d)の量は1~40質量%である、〔12〕または〔13〕に記載の圧電材料。
本発明によれば、高電圧の印加、延伸処理等を行わない場合であっても圧電特性を付与することが可能であり、圧電材料に引張応力および/または曲げ応力が付与された際の高い圧電性と、伸縮性とを有する圧電材料、および該圧電材料を製造するための圧電材料用組成物を提供することができる。
ヒステリシスロスの算出方法を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。なお、本明細書において「~」で示される数値の範囲は、その上限と下限とを含む。
本発明の圧電材料用組成物は、フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を含有し、該ポリマー(b)および該架橋剤(c)は、水酸基含有ポリマー(b1)およびイソシアネート基含有架橋剤(c1)である、および/または、イソシアネート基含有ポリマー(b2)および水酸基含有架橋剤(c2)である。本発明者らは、フッ素系重合体(a)と、特定のポリマー(b)と、特定の架橋剤(c)とを含む圧電材料用組成物を用いて圧電材料を形成することで、フッ素系重合体(a)とウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)とを含む圧電材料が得られ、それによって、延伸または高電圧の印加による分極処理、および/または、他の化合物の添加などを行わない場合であっても、圧電特性が発現されると共に、圧電材料に引張応力および/または曲げ応力が付与された際の高い圧電性と、伸縮性とを有する圧電材料が得られることを見出した。なお、本発明の圧電材料は、該圧電材料の用途において求められる材料特性を満足する限り、延伸処理、比較的高い電圧での分極処理、および化合物の添加等の圧電特性を発現・向上させるための従来技術が適用されたものであってもよい。
本発明の圧電材料が、延伸または高電圧の印加による分極処理、化合物の添加等を行わなくとも圧電特性を発揮する詳細な理由は明らかではないが、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)と、フッ素系重合体(a)とが相溶し、それぞれの構成単位中の双極子同士が静電的に相互作用する。このため、圧電材料に外力が加わって伸縮する際は、比較的柔軟なポリマー(d)の変形にフッ素系重合体(a)が追随することで比較的硬いフッ素系重合体(a)も変形しやすくなる。これにより、伸縮に伴うフッ素系重合体(a)の電位の変化が大きくなり、比較的大きな電荷を取りだすことができると推測される。また、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)を含む圧電材料により、圧電材料に引張応力および/または曲げ応力が付与された際の高い圧電性と、伸縮性とのいずれもが達成されると考えられる。圧電材料が高い伸縮性を有することで、継続して大きな電荷をとりだすことができる。なお、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)は、架橋構造部分にウレタン結合を含む。
本発明の圧電材料用組成物は、フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を含有する。
〔ポリマー(b)および架橋剤(c)〕
本発明の圧電材料用組成物はポリマー(b)および架橋剤(c)を含有し、該ポリマー(b)および該架橋剤(c)は、本発明の一態様において、水酸基含有ポリマー(b1)およびイソシアネート基含有架橋剤(c1)であり、本発明の別の一態様において、イソシアネート基含有ポリマー(b2)および水酸基含有架橋剤(c2)である。水酸基含有ポリマー(b1)が有する水酸基と、イソシアネート基含有架橋剤(c1)が有するイソシアネート基は、加熱により反応してウレタン結合を形成する。その結果、圧電材料用組成物を用いて形成された圧電材料には、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)が含まれる。また、イソシアネート基含有ポリマー(b2)が有するイソシアネート基と水酸基含有架橋剤(c2)が有する水酸基も同様に、加熱により反応してウレタン結合を形成する。その結果、圧電材料用組成物を用いて形成された圧電材料には、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)が含まれる。いずれの場合においても、ウレタン結合は架橋構造部分に含まれる。
圧電材料用組成物が水酸基含有ポリマー(b1)およびイソシアネート基含有架橋剤(c1)を含む場合、圧電材料用組成物は1種類の水酸基含有ポリマー(b1)を含んでいてもよいし、2種以上の水酸基含有ポリマー(b1)を含んでいてもよい。また、該組成物は、1種類のイソシアネート基含有架橋剤(c1)を含んでいてもよいし、2種以上のイソシアネート基含有架橋剤(c1)を含んでいてもよい。
圧電材料用組成物がイソシアネート基含有ポリマー(b2)および水酸基含有架橋剤(c2)を含む場合、圧電材料用組成物は1種類のイソシアネート基含有ポリマー(b2)を含んでいてもよいし、2種以上のイソシアネート基含有ポリマー(b2)を含んでいてもよい。また、該組成物は、1種類の水酸基含有架橋剤(c2)を含んでいてもよいし、2種以上の水酸基含有架橋剤(c2)を含んでいてもよい。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるポリマー(b)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは100,000以上、特に好ましくは150,000以上である。ポリマー(b)の重量平均分子量が上記の下限値以上であると、圧電材料の強度や耐久性を高めやすい。ポリマー(b)の重量平均分子量は、本発明の効果を得やすい観点から、好ましくは500,000以上、より好ましくは800,000以上、さらに好ましくは1,000,000以上であってもよい。また、ポリマー(b)の重量平均分子量は、ポリマーの製造し易さの観点からは、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,500,000以下、さらに好ましくは1,400,000以下である。なお、ポリマー(b)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。測定条件等の詳細は実施例に記載するとおりである。
(水酸基含有ポリマー(b1))
水酸基含有ポリマー(b1)としては、少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。好ましくは、水酸基含有ポリマー(b1)は、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーである。
本発明の好ましい一態様において、水酸基含有ポリマー(b1)が水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーである場合、該(メタ)アクリル系ポリマーとしては、式(I):
Figure 2023170553000001
〔式(I)中、
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、
は、少なくとも1つの水酸基を有する、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
ここで、
における、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、および前記フェニルアルキレン基におけるアルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよく、
における、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、および前記フェニルアルキレン基におけるアルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよく、
m1は1以上の整数であり、n1は0または1以上の整数である〕
で表される(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。本明細書において、式(I)中の基Rを有する構成単位を「構成単位M1」とも称し、式(I)中の基Rを有する構成単位を「構成単位N1」とも称する。この態様において、(メタ)アクリル系ポリマーは、1種類または2種類以上の構成単位M1のみを有するポリマーであってもよいし、1種類または2種類以上の構成単位M1と、1種類または2種類以上の構成単位N1とを有するポリマーであってもよい。また、(メタ)アクリル系ポリマーは、構成単位M1に加えて、構成単位M1およびN1とは異なる別の構成単位をさらに有していてもよい。
式(I)中のRは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、これらの基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された基であってもよい。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子であり、より好ましくはフッ素原子および/または塩素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。式(I)中のRは、好ましくは水素原子、フルオロ基、またはメチル基である。
の具体例としては、水素原子、フルオロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ジフルオロエチル基、モノフルオロエチル基およびモノクロロメチル基等が挙げられるがこれに限定されない。
式(I)中のRは、(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、(3)フェニル基、または、(4)炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、ここで、Rにおける、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、および前記フェニルアルキレン基におけるアルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよい。
炭素数1~6のアルキル基、および、炭素数1~6のアルコキシ基におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2である。炭素数1~6のアルキル基およびアルコキシ基におけるアルキル鎖部分は、直鎖状または分枝状のいずれであってもよい。
式(I)中のRが、(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基である場合、該アルキル基の炭素数は、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系ポリマーを製造するための原料モノマーの製造性の観点から、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。本明細書において、アルキル基は直鎖状または分枝状のいずれでもよい。アルキル基の例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、イソアミル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-オクチル基等が挙げられる。素数1~10のアルキル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、炭素数1~10のアルキル基の少なくとも1つの水素原子は、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい。上記式(I)中のRは、圧電特性を高めやすい観点から、好ましくは1~10個のハロゲン原子を有する炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、より好ましくは2~10個のハロゲン原子を有する炭素数2~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、さらに好ましくは3~8個のハロゲン原子を有する炭素数3~8の直鎖状または分枝状のアルキル基、さらにより好ましくは3~8個のハロゲン原子を有する炭素数3~6の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す。
該アルキル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、該アルキル基の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよい。
少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基は、好ましくは、1~10個のハロゲン原子を有する炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは1~10個のハロゲン原子を有する炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは1~10個のハロゲン原子を有する炭素数2~8のアルキル基、さらにより好ましくは1~10個のハロゲン原子を有する炭素数3~6のアルキル基であってよい。このような基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ジフルオロエチル基、モノフルオロエチル基、オクタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基、ジフルオロプロピル基、モノフルオロプロピル基、オクタフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロブチル基、ペンタフルオロブチル基、テトラフルオロブチル基、トリフルオロブチル基、ジフルオロブチル基、モノフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ヘキサフルオロペンチル基、ペンタフルオロペンチル基、テトラフルオロペンチル基、トリフルオロペンチル基、ジフルオロペンチル基、モノフルオロペンチル基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、およびモノクロロメチル基からなる群から選択される基が挙げられる。
少なくとも1つの水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換された炭素数1~10のアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基を主鎖とし、該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換された基である。主鎖となるアルキル基部分の炭素数が1~10であれば、アルキル基全体としての炭素数は10を超えていてもよい。このようなアルキル基の例としては、例えば2-エチルヘキシル基等が挙げられる。なお、アルキル基全体としての炭素数が10を超えない基の場合、該基は、炭素数1~10の分枝状のアルキル基の定義にも包含される基である。
少なくとも1つの水素原子が炭素数1~6のアルコキシ基で置換された炭素数1~10のアルキル基は、好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基で置換された炭素数1~6のアルキル基である。かかる基の例としては、例えばメトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシブチル基が挙げられる。
上記に述べたアルキル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよい。例えば、式(I)中のRは、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、前記アルキル基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-で置換された基であってよい。このような基としては、例えば式(f):
Figure 2023170553000002
〔式中、
rおよびsはそれぞれ独立して1~3の数を表し、
Xはメチル基を表し、
式(III)中の少なくとも1つの水素原子が、炭素数1または2のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい〕
で表される基が挙げられる。該基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換されていてもよい。このような基としては、好ましくはトリフルオロメトキシエチル基、およびトリフルオロメトキシプロピル基等が挙げられる。
式(I)中のRが、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基である場合、炭素数3~6の脂環式構造としては、例えばシクロヘキサンが挙げられる。炭素数3~12の脂環式炭化水素基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、炭素数3~12の脂環式炭化水素基の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、ハロゲン原子、炭素数1または2のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよい。
少なくとも1つの炭素原子が酸素原子(-O-)で置換された、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3の脂環式炭化水素基の1つの炭素原子が酸素原子で置換されたエポキシ基、炭素数4の脂環式炭化水素基の1つの炭素原子が酸素原子で置換されたオキセタニル環、炭素数5の脂環式炭化水素基の2つの炭素原子が酸素原子で置換されたジオキソラン環、炭素数6の脂環式炭化水素基の2つの炭素原子が酸素原子で置換されたジオキサン環などが挙げられる。なお、これらの環上の水素原子は、炭素数1または2のアルキル基で置換されていてよい。このような基としては、具体的には、3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートなどが挙げられる。
上記式(I)中のRが、(3)フェニル基である場合、フェニル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよい。フェニル基の少なくとも1つの水素原子、特にパラ位の水素原子が、炭素数1~4(好ましくは1または2)のアルキル基で置換され、該炭素数1~4のアルキル基の水素原子がハロゲン原子で置換されている基は、伸縮性や柔軟性といった圧電材料の特性を向上しやすい観点で好ましい。
フェニル基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基は、その少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換された基であってもよい。Rが当該基である場合、圧電材料の伸縮性や柔軟性といった圧電材料の特性を向上しやすい。
式(I)中のRが、(4)炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基である場合、アルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよいし、フェニル基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてもよい。
フェニルアルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が-O-で置換されたフェニルアルキレン基としては、式(g):
Figure 2023170553000003
〔pおよびqはそれぞれ独立に2または3である〕
で表される基、および、該基のアルキレン部分およびフェニル基部分の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換された基が挙げられる。上記の基に含まれる少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。Rが上記の基である場合、伸びや柔軟性といった圧電材料の他の特性を向上させやすい。
上記に述べた、場合によりアルキレン基上の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基等で置換されていてもよい、および/または、フェニル基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよい、フェニルアルキレン基は、その少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換された基であってもよい。Rが当該基である場合、伸びや柔軟性といった圧電材料の他の特性を向上しやすい。
式(I)中のRは、少なくとも1つの水酸基を有する、(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、(3)フェニル基、または、(4)炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、ここで、Rにおける、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、および前記フェニルアルキレン基におけるアルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよい。このような基としては、式(I)中のRについて上記に例示した基において、さらに少なくとも1つの水酸基を有する基が挙げられる。
炭素数1~6のアルキル基、および、炭素数1~6のアルコキシ基におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2である。炭素数1~6のアルキル基およびアルコキシ基におけるアルキル鎖部分は、直鎖状または分枝状のいずれであってもよい。
式(I)中のRにおける水酸基の数は、特に限定されないが、上述したフッ素系重合体(a)とポリマー(d)との相溶性(以下、単に相溶性という)を高めやすい観点からは、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
式(I)中のRが、少なくとも1つの水酸基を有する、(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基である場合、該アルキル基の炭素数は、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系ポリマーを製造するための原料モノマーの製造性の観点から、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。アルキル基の例としては、式(I)中のRについて上記に述べた基であって、さらに少なくとも1つの水酸基を有する基が挙げられる。
水酸基で置換された炭素数1~10のアルキル基の例としては、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシn-プロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシn-ブチル基、ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシtert-ブチル基などが挙げられる。
水酸基および炭素数1~6のアルコキシ基で置換された炭素数1~10のアルキル基としては、例えば炭素数1~6のヒドロキシアルコキシ基および炭素数1~6のアルキル基を有する基、具体的にはヒドロキシメトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシプロピルオキシプロピル基等が挙げられる。
上記アルキル基の中で、相溶性の観点から、場合により炭素数1~2のアルコキシ基で置換された、水酸基で置換された炭素数1~6のアルキル基が好ましく、場合により炭素数1~2のアルコキシ基で置換された、水酸基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
式(I)中のRが、少なくとも1つの水酸基を有する、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基である場合、炭素数3~6の脂環式構造としては、例えばシクロヘキサンが挙げられる。炭素数3~12の脂環式炭化水素基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、炭素数3~12の脂環式炭化水素基の少なくとも1つの水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1または2のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよい。
少なくとも1つの水酸基を有する、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基の例としては、少なくとも1つの水酸基をさらに有する、式(I)中のRについて上記に述べた基が挙げられる。
式(I)中のRが、少なくとも1つの水酸基を有する、(3)フェニル基である場合、フェニル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、少なくとも1つの水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよい。フェニル基の少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換され、少なくとも1つの水素原子、特にパラ位の水素原子が、炭素数1~4(好ましくは1または2)のアルキル基で置換され、該炭素数1~4のアルキル基の水素原子がハロゲン原子で置換されている基は、伸びや柔軟性といった圧電材料の他の特性を向上しやすい観点で好ましい。
フェニル基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基は、その少なくとも1つの水素原子が、水酸基、およびハロゲン原子で置換された基であってもよい。Rが当該基である場合、圧電材料の伸びや柔軟性といった圧電材料の他の特性を向上しやすい。
式(I)中のRが、少なくとも1つの水酸基を有する、(4)炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基である場合、アルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよいし、フェニル基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてもよい。
水酸基を有する、アルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が-O-で置換されたフェニルアルキレン基としては、少なくとも1つの水酸基をさらに有する、式(I)中のRについて上記に述べた基が挙げられる。
式(I)中のm1およびn1は、式(I)で表される(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる、式(I)中の基Rを有する構成単位M1と、式(I)中の基Rを有する構成単位N1の繰り返し数を表し、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる構成単位M1のモル数、および、構成単位N1のモル数を表す。m1は1以上の整数であり、n1は0または1以上の整数である。(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる全構成単位の総モル数に対する、構成単位M1と構成単位N1のモル数の合計の割合(全構成単位の数に対するm1およびn1の合計の割合)は、相溶性、および、得られる圧電材料の柔軟性および伸縮性を高めやすい観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、とりわけ好ましくは90%以上、とりわけより好ましくは95%以上である。該割合の上限は100%以下である。
式(I)で表される(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる、式(I)中の基Rを有する構成単位M1のモル数の、該(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる構成単位M1と構成単位N1との合計モル数に対する割合は、相溶性の観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、とりわけ好ましくは95%以上、とりわけより好ましくは98%以上、きわめて好ましくは99%以上である。該割合の上限は、得られる圧電材料の柔軟性および伸縮性を高めやすい観点から、好ましくは99.9%以下、より好ましくは99.8%以下、さらに好ましくは99.7%以下である。なお、上記の割合は、m1/(m1+n1)×100の式により算出される。
本発明の好ましい一実施形態において、式(I)で表される(メタ)アクリル系ポリマーは、式(I)中のR、RおよびRが、次の基を表すポリマーである:
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、
は、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、好ましくは1つの水酸基を有する炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、
ここで、Rにおける前記アルキル基は、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、
における前記アルキル基は、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよい。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるポリマー(b)が、水酸基含有ポリマー(b1)である場合、水酸基含有ポリマー(b1)は、0.01mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の水酸基価を有する(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。水酸基含有ポリマー(b1)の水酸基価は、より好ましくは0.1mgKOH/g以上90mgKOH/g以下、さらに好ましくは0.2mgKOH/g以上80mgKOH/g以下である。本発明の一実施形態において、水酸基含有ポリマー(b1)の水酸基価は、さらにより好ましくは50mgKOH/g以下、30mgKOH/g以下、20mgKOH/g以下、10mgKOH/g以下、5mgKOH/g以下等であってもよい。なお、水酸基含有ポリマー(b1)の水酸基価は、水酸基含有ポリマー(b1)1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法に基づいて測定された値として定義される。水酸基含有ポリマー(b1)の水酸基は、水酸基含有ポリマー(b1)を合成する際に使用する単量体(構成単位)の使用量、ひいては水酸基含有ポリマー(b1)の構造や、NMR測定の化学シフトおよびピークの積分値等から計算で求めることも可能である。
(イソシアネート基含有ポリマー(b2))
イソシアネート基含有ポリマー(b2)としては、少なくとも1つのイソシアネート基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。好ましくは、イソシアネート基含有ポリマー(b2)は、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系ポリマーである。
本発明の好ましい一態様において、イソシアネート基含有ポリマー(b2)がイソシアネート基を有する(メタ)アクリル系ポリマーである場合、該(メタ)アクリル系ポリマーとしては、式(II):
Figure 2023170553000004
〔式(II)中、
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、
は、少なくとも1つのイソシアネート基を有する、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
ここで、
における、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、および前記フェニルアルキレン基におけるアルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル基の少なくとも1つの水素原子が、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよく、
における、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、および前記フェニルアルキレン基におけるアルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよく、
m2は1以上の整数であり、n2は0または1以上の整数である〕
で表される(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。本明細書において、式(II)中の基Rを有する構成単位を「構成単位M2」とも称し、式(I)中の基Rを有する構成単位を「構成単位N2」とも称する。この態様において、(メタ)アクリル系ポリマーは、1種類または2種類以上の構成単位M2のみを有するポリマーであってもよいし、1種類または2種類以上の構成単位M2と、1種類または2種類以上の構成単位N2とを有するポリマーであってもよい。また、(メタ)アクリル系ポリマーは、構成単位M2に加えて、構成単位M2およびN2とは異なる別の構成単位をさらに有していてもよい。なお、イソシアネート基含有ポリマー(b2)におけるイソシアネート基は、イソシアネート基(-N=C=O)であってもよいし、ブロック化イソシアネート基であってもよい。ブロック化イソシアネート基のブロック化剤としては、イソシアネート基含有架橋剤(c1)に関して後述するものが挙げられる。
式(II)中のRに関しては、式(I)中のRに関する記載が同様に当てはまり、Rに関する好ましい態様は、Rについても同様に好ましい。
式(II)中のRに関しては、式(I)中のRに関する記載が同様に当てはまり、Rに関する好ましい態様は、Rについても同様に好ましい。
式(II)中のRは、少なくとも1つのイソシアネート基を有する、(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、(3)フェニル基、または、(4)炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、ここで、Rにおける、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、および前記フェニルアルキレン基におけるアルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル基の少なくとも1つの水素原子が、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよい。このような基としては、式(I)中のRについて上記に例示した基において、さらに少なくとも1つのイソシアネート基を有する基が挙げられる。
炭素数1~6のアルキル基、および、炭素数1~6のアルコキシ基におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2である。炭素数1~6のアルキル基およびアルコキシ基におけるアルキル鎖部分は、直鎖状または分枝状のいずれであってもよい。
式(II)中のRにおけるイソシアネート基の数は、特に限定されないが、相溶性の観点からは、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
式(II)中のRが、少なくとも1つのイソシアネート基を有する、(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基である場合、該アルキル基の炭素数は、上記式(II)で示される(メタ)アクリル系ポリマーを製造するための原料モノマーの製造性の観点から、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。アルキル基の例としては、式(I)中のRについて上記に述べた基であって、さらに少なくとも1つのイソシアネート基を有する基が挙げられる。
イソシアネート基で置換された炭素数1~10のアルキル基の例としては、例えばイソシアナトメチル基、イソシアナトエチル基、イソシアナトn-プロピル基、イソシアナトイソプロピル基、イソシアナトn-ブチル基、イソシアナトイソブチル基、イソシアナトtert-ブチル基などが挙げられる。
イソシアネート基および炭素数1~6のアルコキシ基で置換された炭素数1~10のアルキル基としては、例えば炭素数1~6のイソシアナトアルコキシ基および炭素数1~6のアルキル基を有する基、具体的にはイソシアナトメトキシエチル基、イソシアナトエトキシエチル基、イソシアナトプロピルオキシプロピル基等が挙げられる。
上記アルキル基の中で、相溶性の観点から、場合により炭素数1~2のアルコキシ基で置換された、イソシアネート基で置換された炭素数1~6のアルキル基が好ましく、場合により炭素数1~2のアルコキシ基で置換された、イソシアネート基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
式(II)中のRが、少なくとも1つのイソシアネート基を有する、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基である場合、炭素数3~6の脂環式構造としては、例えばシクロヘキサンが挙げられる。炭素数3~12の脂環式炭化水素基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、炭素数3~12の脂環式炭化水素基の少なくとも1つの水素原子は、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1または2のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよい。
少なくとも1つのイソシアネート基を有する、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基の例としては、少なくとも1つのイソシアネート基をさらに有する、式(I)中のRについて上記に述べた基が挙げられる。
式(II)中のRが、少なくとも1つのイソシアネート基を有する、(3)フェニル基である場合、フェニル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、少なくとも1つの水素原子は、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてよい。フェニル基の少なくとも1つの水素原子がイソシアネート基で置換され、少なくとも1つの水素原子、特にパラ位の水素原子が、炭素数1~4(好ましくは1または2)のアルキル基で置換され、該炭素数1~4のアルキル基の水素原子がハロゲン原子で置換されている基は、伸びや柔軟性といった圧電材料の他の特性を向上しやすい観点で好ましい。
フェニル基の少なくとも1つの水素原子が、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基は、その少なくとも1つの水素原子が、イソシアネート基、およびハロゲン原子で置換された基であってもよい。Rが当該基である場合、圧電材料の伸びや柔軟性といった圧電材料の他の特性を向上しやすい。
式(II)中のRが、少なくとも1つのイソシアネート基を有する、(4)炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基である場合、アルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよいし、フェニル基の少なくとも1つの水素原子が、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/またはシアノ基で置換されていてもよい。
水酸基を有する、アルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が-O-で置換されたフェニルアルキレン基としては、少なくとも1つのイソシアネート基をさらに有する、式(I)中のRについて上記に述べた基が挙げられる。
式(II)中のm2およびn2は、式(II)で表される(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる、式(II)中の基Rを有する構成単位M2と、式(II)中の基Rを有する構成単位N2の繰り返し数を表し、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる構成単位M2のモル数、および、構成単位N2のモル数を表す。m2は1以上の整数であり、n2は0または1以上の整数である。(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる全構成単位の総モル数に対する、構成単位M2と構成単位N2のモル数の合計の割合(全構成単位の数に対するm2およびn2の合計の割合)は、相溶性の観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、とりわけ好ましくは90%以上、とりわけより好ましくは95%以上である。該割合の上限は100%以下である。
式(II)で表される(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる、式(II)中の基Rを有する構成単位M2のモル数の、該(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる構成単位M2と構成単位N2との合計モル数に対する割合は、得られる圧電材料の柔軟性の観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、とりわけ好ましくは95%以上、とりわけより好ましくは98%以上、きわめて好ましくは99%以上である。該割合の上限は、得られる圧電材料の伸縮性の観点から、好ましくは99.9%以下、より好ましくは99.8%以下、さらに好ましくは99.7%以下である。なお、上記の割合は、m2/(m2+n2)×100の式により算出される。
本発明の好ましい一実施形態において、式(II)で表される(メタ)アクリル系ポリマーは、式(II)中のR、RおよびRが、次の基を表すポリマーである:
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、
は、少なくとも1つのイソシアネート基を有する炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、好ましくは1つのイソシアネート基を有する炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、
ここで、Rにおける前記アルキル基は、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、イソシアネート基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよく、
における前記アルキル基は、少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよい。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるポリマー(b)が、イソシアネート基含有ポリマー(b2)である場合、イソシアネート基含有ポリマー(b2)のイソシアネート量(NCO含量)は、0.01%以上35%以下であることが好ましい。水酸基含有ポリマー(b1)のNCO量は、より好ましくは3%以上30%以下、さらに好ましくは6%以上25%以下である。イソシアネート基含有ポリマー(b2)のNCO含量は、イソシアネート基含有ポリマー(b2)の構造から算出してもよく、JIS K 1603-1:2007等に準拠して求めてもよい。
(他の構成単位)
ポリマー(b)は、水酸基またはイソシアネート基を有する構成単位の他に、他の構成単位を含有していてもよい。他の構成単位としては、例えばカルボキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アリール基含有モノマー、スチレン系モノマー、窒素原子含有モノマー、脂肪酸ビニルエステル系モノマー、ベタインモノマーなどに由来する構成単位が挙げられる。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、クロトン酸などが挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基の炭素数が1~8であるアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
アリール基含有モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリートなどのアリール基の炭素数が6~12であるアリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
窒素原子含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。
脂肪酸ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
ベタインモノマーとしては、例えば、N-アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタインなどのN-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジメチルアンモニウムアルキル-α-スルホベタインなどのスルホベタインモノマーなどが挙げられる。
(イソシアネート基含有架橋剤(c1))
イソシアネート基含有架橋剤(c1)は、水酸基含有ポリマー(b1)が有する水酸基と反応し、架橋剤として作用する成分であり、2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有するポリイソシアネートであるか、または、2個以上のブロックされたイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートである。ポリイソシアネートおよびブロックポリイソシアネートの例は、特に限定されず、ウレタン樹脂の製造に一般的に用いられるものを使用してよい。イソシアネート基含有架橋剤(c1)のイソシアネート量(NCO含量)は、0.01%以上35%以下であることが好ましい。イソシアネート基含有架橋剤(c1)のNCO量は、より好ましくは3%以上30%以下、さらに好ましくは6%以上25%以下である。イソシアネート基含有架橋剤(c1)のNCO含量は、イソシアネート基含有架橋剤(c1)の構造から算出してもよく、JIS K 1603-1:2007等に準拠して求めてもよい。
ポリイソシアネートの例としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート 等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1、4-シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族トリイソシアネートとしては、トリフェニルメタン-4,4’,4’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、および/またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。ポリイソシアネートは、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートとして、市販のポリイソシアネートを使用してもよい。市販のポリイソシアネートとしては、例えば、旭化成ケミカルズ社製のデュラネート(登録商標)シリーズ、大栄産業(株)製の「ブロネート1901」等が挙げられる。これらの製品は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ブロックポリイソシアネートの例としては、上記のポリイソシアネートのイソシアネート基がブロック剤との反応により保護された化合物が挙げられる。ここで、ブロックイソシアネート基は、常温では安定であるが、加熱によりイソシアネート基を生成することが可能な基であれば特に限定されないが、例えば、イソシアネート基をブロック剤と反応させることにより保護した基が挙げられる。ブロックイソシアネート基は、脱保護の容易さ、ウレタン構造形成の容易さ、フッ素系重合体(a)を結晶化する際の温度と近づける観点から、40~150℃の熱によりイソシアネート基を生成する基であることが好ましい。
ブロックポリイソシアネートは、例えば、上記のポリイソシアネートのイソシアネート基がブロック剤との反応により保護された化合物であり、ブロック剤としては、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、活性メチレン化合物、ピラゾール化合物、メルカプタン化合物、イミダゾール系化合物、イミド系化合物等が挙げられる。これらの中でも、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、活性メチレン化合物、ピラゾール化合物から選ばれるブロック剤が好ましい。ブロックポリイソシアネートの具体例としては、特開2014-238438号の段落[0144]~[0146]に記載のものが挙げられる。
ブロックポリイソシアネートとして市販品を使用してもよい。市販品としては、ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、旭化成株式会社製の、デュラネートSBN-70D、SBB-70P、SBF-70E、TPA-B80E、17B-60P、MF-B60B、E402-B80B、MF-K60B、及びWM44-L70G、三井化学株式会社製のタケネートB-882N、Baxenden社製の7960、7961、7982、7991、及び7992など)、トリレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学株式会社製のタケネートB-830など)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネ-ト系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学株式会社製のタケネートB-815N、大榮産業株式会社製のブロネートPMD-OA01、及びPMD-MA01など)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学株式会社製のタケネートB-846N、東ソー株式会社製のコロネートBI-301、2507、及び2554など)、イソホロンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、Baxenden社製の7950、7951、及び7990など)が挙げられる。
本発明の圧電材料用組成物に含まれる架橋剤(c)が、イソシアネート基含有架橋剤(c1)である場合、イソシアネート基含有架橋剤(c1)のイソシアネート量(NCO含量)は、0.01%以上35%以下であることが好ましい。イソシアネート基含有架橋剤(c1)のNCO量は、より好ましくは3%以上30%以下、さらに好ましくは6%以上25%以下である。イソシアネート基含有架橋剤(c1)のNCO含量は、イソシアネート基含有架橋剤(c1)の構造から算出してもよく、JIS K 1603-1:2007等に準拠して求めてもよい。
(水酸基含有架橋剤(c2))
水酸基含有架橋剤(c2)は、イソシアネート基含有ポリマー(b2)が有するイソシアネート基と反応し、架橋剤として作用する成分であり、2個以上の水酸基を有するポリオールである。ポリオールの例は、特に限定されず、ウレタン樹脂の製造に一般的に用いられるものを使用してよい。ポリオールの例としては、例えば、脂肪族ポリオール、芳香族ポリオールが挙げられる。水酸基含有架橋剤(c2)が有する水酸基の数は、好ましくは2~5個、より好ましくは2~4個、さらに好ましくは2~3個である。
本発明の圧電材料用組成物に含まれる架橋剤(c)が水酸基含有架橋剤(c2)である場合、水酸基含有架橋剤(c2)は、0.01mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の水酸基価を有することが好ましい。水酸基含有架橋剤(c2)の水酸基価は、より好ましくは0.1mgKOH/g以上90mgKOH/g以下、さらに好ましくは0.2mgKOH/g以上80mgKOH/g以下である。本発明の一実施形態において、水酸基含有架橋剤(c2)の水酸基価は、さらにより好ましくは50mgKOH/g以下、30mgKOH/g以下、20mgKOH/g以下、10mgKOH/g以下、5mgKOH/g以下等であってもよい。なお、水酸基含有架橋剤(c2)の水酸基価は、水酸基含有ポリマー(b1)と同様にして決定することができる。
(ポリマー(b)の製法)
本発明の圧電材料用組成物に含まれるポリマー(b)は、通常、モノマー成分を重合させることによって得ることができる。モノマー成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のうち、ポリマー(b)の製造性の観点から、塊状重合法および溶液重合法が好ましい。
モノマー成分を溶液重合法によって重合させる際には、溶媒が用いられる。溶媒としては、非水系有機溶媒が好ましい。非水系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系有機溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ―ブチロラクトンなどのエステル系有機溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩化物系有機溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、100~1000質量部程度であることが好ましい。
モノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤のなかでは、ポリマー(b)に熱履歴を残さないようにする観点から、光重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体などが挙げられ、所望により2種以上を併用してよい。
光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,1’-ビイミダゾール、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシフェニルビニル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ジtert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-2-オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス〔2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニルチタニウム〕などの光ラジカル重合開始剤、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシフェニルビニル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4’-ジtert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどの光カチオン開環重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱重合開始剤としては、例えば、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の量は、当該重合開始剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、0.01~20質量部程度であることが好ましい。
モノマー成分を重合させる際には、得られるポリマーの分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどのチオール基を有する化合物;次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、当該連鎖移動剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、0.01~10質量部程度であることが好ましい。
モノマー成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気中であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中であってもよい。
モノマー成分を重合させる際の温度は、特に限定がなく、通常、5~100℃程度の温度であることが好ましい。モノマー成分を重合させるのに要する時間は、重合条件によって異なるので一概には決定することができないことから任意であるが、通常、1~20時間程度である。
重合反応は、残存しているモノマー成分の量が20質量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存しているモノマー成分の量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
以上のようにしてモノマー成分を重合させることにより、本発明の圧電材料用組成物に含まれるポリマー(b)を得ることができる。
〔フッ素系重合体(a)〕
本発明の圧電材料用組成物は、上記のポリマー(b)および架橋剤(c)に加えて、フッ素系重合体(a)を含有する。フッ素系重合体とは、フッ素系モノマーの単独重合体または共重合体であり、フッ素系重合体(a)としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系モノマーの単独重合体;フッ化ビニリデンモノマー、ヘキサフルオロプロピレンモノマー、トリフルオロエチレンモノマー、テトラフルオロエチレンモノマー、およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマーからなる群から選択される2種類またはそれ以上のモノマーの共重合体;ならびに、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。本発明の圧電材料用組成物は、1種類のフッ素系重合体(a)を含有してもよいし、2種以上のフッ素系重合体(a)を含有してもよい。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるフッ素系重合体(a)の重量平均分子量は、特に限定されないが、圧電材料の圧電特性を向上しやすい観点から、好ましくは100,000以上、より好ましくは150,000以上、さらに好ましくは180,000以上、さらにより好ましくは200,000以上、とりわけ好ましくは300,000以上である。重量平均分子量の上限は特に限定されず、例えば2,000,000以下程度であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは700,000以下、さらに好ましくは500,000以下である。重量平均分子量は、公知の方法により測定できる。
フッ素系重合体(a)は、好ましくはフッ化ビニリデン系重合体であり、より好ましくはポリフッ化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体からなる群から選択される重合体であり、さらに好ましくはフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体である。
フッ素系重合体(a)は、圧電材料の圧電特性を向上しやすい(例えば、圧電定数d31やd33を高めやすい)観点から、好ましくはフッ化ビニリデン系重合体である。フッ化ビニリデン系重合体とは、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を少なくとも含む重合体であり、フッ化ビニリデンのホモポリマーであるポリフッ化ビニリデンであってもよいし、フッ化ビニリデンとフッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
フッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、ヘキサフルオロプロピレンモノマー、トリフルオロエチレンモノマー、テトラフルオロエチレンモノマー、およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー等が挙げられる。
フッ化ビニリデン系重合体に含まれるフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量は、圧電材料の圧電特性を高めやすいと共に、耐熱性、耐変形性の良い圧電材料を得やすい観点から、全構成単位の量に基づいて、好ましくは55mol%以上、より好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは75mol%以上であり、80mol%以上、さらには85mol%以上であってもよい。また、該構成単位の量の上限は100mol%以下であればよい。
本発明の好ましい一実施形態において、フッ素系重合体(a)はフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体である。該共重合体は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位と、トリフルオロエチレンに由来する構成単位とを少なくとも含む共重合体である。フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体におけるフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量は、圧電材料の圧電特性を向上しやすい(例えば、圧電定数d31やd33を高めやすい)と共に、耐熱性、耐変形性の良い圧電材料を得やすい観点から、全構成単位の量に基づいて、好ましくは55mol%以上、より好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは75mol%以上であり、80mol%以上、さらには85mol%以上であってもよい。また、上記フッ化ビニリデンに由来する構成単位の量は、圧電材料の圧電特性を向上しやすい観点から、全構成単位の量に基づいて、好ましくは90mol%以下、より好ましくは86mol%以下である。
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体におけるトリフルオロエチレンに由来する構成単位の量は、圧電材料の圧電特性を向上しやすい観点から、全構成単位の量に基づいて、好ましくは10mol%以上、より好ましくは14mol%以上である。また、上記トリフルオロエチレンに由来する構成単位の量は、耐熱性の良い圧電材料を得る観点から、全構成単位の量に基づいて、好ましくは45mol%以下、より好ましくは30mol%以下、さらに好ましくは25mol%以下、特に好ましくは20mol%以下である。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるフッ素系重合体(a)がフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体である場合、該共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲において、フッ化ビニリデンに由来する構成単位およびトリフルオロエチレンに由来する構成単位の他に、フッ化ビニリデンおよび/またはトリフルオロエチレンと共重合し得る他のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。耐熱性と圧電特性に優れる圧電材料を得やすい観点から、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体におけるフッ化ビニリデンに由来する構成単位およびトリフルオロエチレンに由来する構成単位の含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは93質量%以上、最も好ましくは95質量%以上であり、フッ化ビニリデンおよび/またはトリフルオロエチレンと共重合し得る他のモノマーに由来する構成単位の含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは7質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。また、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体におけるフッ化ビニリデンに由来する構成単位およびトリフルオロエチレンに由来する構成単位の含有率は、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下であってよく、フッ化ビニリデンおよび/またはトリフルオロエチレンと共重合し得る他のモノマーに由来する構成単位の含有率は、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上であってよい。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるフッ素系重合体は、例えば特許文献1に示される組成および分子量からなるものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。市販されているフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の例としては、例えばPIEZOTECH社製「FC20」、「FC25」、「FC30」が挙げられる。
市販されているフッ化ビニリデン重合体の例としては、例えばシグマアルドリッチ社製「ポリ(ビニリデンフルオリド)」、アルケマ社製「KYNAR741」挙げられる。
〔圧電材料用組成物〕
本発明の圧電材料用組成物に含まれるポリマー(b)の量は、圧電材料の圧電特性を向上しやすい観点から、圧電材料用組成物に含まれる固形分の総量に基づいて、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。また、本発明の圧電材料用組成物に含まれるポリマー(b)の量は、相溶性の観点からは、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらにより好ましくは12質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下である。
本発明の圧電材料用組成物に含まれる架橋剤(c)の量は、圧電材料の圧電特性を向上しやすい観点から、圧電材料用組成物に含まれる固形分の総量に基づいて、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.08質量%以上、さらにより好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.15質量%以上であり、0.2質量%以上であってもよい。また、本発明の圧電材料用組成物に含まれる架橋剤(c)の量は、得られる圧電材料が高い柔軟性や伸縮性を有する観点からは、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下、とりわけ好ましくは0.8質量%以下である。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるフッ素系重合体(a)の量は、圧電材料の圧電特性を高めやすい観点から、圧電材料用組成物に含まれる固形分の総量に基づいて、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは85質量%以上である。また、本発明の圧電材料用組成物に含まれるフッ素系重合体(a)の量は、圧電材料の圧電特性を向上しやすい観点および上記特定のポリマー(b)等による効果を発揮させやすい観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは97質量%以下であってもよい。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるフッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量は、圧電材料用組成物の固形分に基づいて、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、その上限は100質量%以下である。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるフッ素系重合体(a)の量は、フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量に基づいて、好ましくは60~99質量%、より好ましくは70~98質量%、さらに好ましくは80~97質量%である。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量は、フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量に基づいて、好ましくは1~40質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは1~20である。
本発明の圧電材料用組成物が水酸基含有ポリマー(b1)とイソシアネート基含有架橋剤(c1)とを含有する場合、該組成物に含まれる水酸基含有ポリマー(b1)の水酸基と、イソシアネート基含有架橋剤(c1)のイソシアネート基との当量比(水酸基:イソシアネート基)は、架橋反応を促進させる観点から、好ましくは0.5:1.5~1.5:0.5、より好ましくは0.7:1.3~1.3:0.7、さらに好ましくは0.8:1.2~1.2:0.8、さらにより好ましくは0.9:1.1~1.1:0.9である。
本発明の圧電材料用組成物が水酸基含有架橋剤(c2)とイソシアネート基含有ポリマー(b2)とを含有する場合、該組成物に含まれる水酸基含有架橋剤(c2)の水酸基と、イソシアネート基含有ポリマー(b2)のイソシアネート基との当量比(水酸基:イソシアネート基)は、架橋反応を促進させやすい観点から、好ましくは0.5:1.5~1.5:0.5、より好ましくは0.7:1.3~1.3:0.7、さらに好ましくは0.8:1.2~1.2:0.8、さらにより好ましくは0.9:1.1~1.1:0.9である。
本発明の圧電材料用組成物に含まれるフッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)の構造やその量は、例えば、赤外分光装置(IR)、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて分析することができるが、これに限定されない。原料の仕込み比から、これらの量を算出してもよい。本発明の圧電材料に含まれるフッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)についても同様である。例えば、圧電材料に含まれるフッ素系重合体(a)の構造や架橋ポリマー(d)の構造を決定した後、圧電材料からそれらを公知の手法で分取する、または、同じ構造のポリマーを準備し、上述の分析方法等により分析することで、圧電材料を構成するフッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)の構造や量を分析してよい。
本発明の圧電材料用組成物は、フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)以外の材料(以下、他の材料という)を含有してもよい。他の材料としては、後述するさらなるポリマー(例えば後述のポリマー(e))、架橋促進剤、溶媒、フッ素系重合体(a)およびポリマー(b)以外の重合体やエラストマー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤(界面活性剤)等の添加剤、熱伝導性フィラー、導電性フィラー等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの成分のうちの1種類をさらに含有してもよいし、2種類以上を組み合わせて含有してもよい。
圧電材料用組成物に含まれ得るさらなるポリマーとしては、フッ素系重合体(a)およびポリマー(b)とは異なる他のポリマー、例えばハロゲン原子を有するポリマー(ポリマー(e)とも称する)が挙げられる。ポリマー(e)としては、国際公開第2021/210426号に記載されるような、次の式(e):
Figure 2023170553000005
〔式中、
e1は、水素原子、または、炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRe1の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
e2は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
ここで、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、
前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基および前記アルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、
前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル環上の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよく、
e2の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
ただし、Re1および/またはRe2の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている〕
で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。圧電材料用組成物がポリマー(e)をさらに含有する場合、圧電定数d33をより高めやすい。圧電材料用組成物がポリマー(e)をさらに含有する場合、その含有量は、圧電材料用組成物の固形分に基づいて、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
圧電材料用組成物に含まれ得る架橋促進剤は、ウレタン結合を形成する、水酸基含有ポリマー(b1)とイソシアネート基含有架橋剤(c1)との架橋反応、または、イソシアネート基含有ポリマー(b2)と水酸基含有架橋剤(c2)との架橋反応を促進することができる架橋促進剤であることが好ましい。このような架橋促進剤としては、ウレタンポリマーの製造に使用されるような公知の架橋剤、例えば、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物などのアミン系触媒、金属系触媒などが挙げられる。市販されている架橋促進剤の例としては、例えばマツモトファインケミカル株式会社製のオルガチックスシリーズ、例えばオルガチックス150、ネオスタンU-100等が挙げられる。圧電材料用組成物が架橋促進剤をさらに含有する場合、その含有量は、圧電材料用組成物の固形分に基づいて、好ましくは0.0005~10質量%、より好ましくは0.001~1質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
圧電材料用組成物に含まれ得る溶媒は、フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および該架橋剤(c)を溶解できる溶媒であれば特に限定されないが、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等である。
本発明の圧電材料用組成物は、本発明の好ましい一実施形態において、
(1)フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を含有する剤を含む、少なくとも1剤式の圧電材料用組成物であるか、
(2)フッ素系重合体(a)およびポリマー(b)を含有する第1剤と、架橋剤(c)を含有する第2剤とを含む、少なくとも2剤式の圧電材料用組成物であるか、
(3)フッ素系重合体(a)および架橋剤(c)を含有する第1剤と、ポリマー(b)を含有する第2剤とを含む、少なくとも2剤式の圧電材料用組成物であるか、または、
(4)フッ素系重合体(a)を含有する第1剤と、ポリマー(b)を含有する第2剤と、架橋剤(c)を含有する第3剤とを含む、少なくとも3剤式の圧電材料用組成物である。
架橋剤(c)がイソシアネート基含有架橋剤(c1)であり、イソシアネート基含有架橋剤(c1)がブロックポリイソシアネートである場合、本発明の圧電材料用組成物は上記(1)~(4)のいずれであってもよい。また、ポリマー(b)がイソシアネート基含有ポリマー(b2)であり、該イソシアネート基がブロック化剤で保護されている場合も、本発明の圧電材料用組成物は上記(1)~(4)のいずれであってもよい。
架橋剤(c)がイソシアネート基含有架橋剤(c1)であり、該イソシアネート基がブロック化剤で保護されていない本発明の一実施形態においては、本発明の圧電材料用組成物は、該組成物の貯蔵安定性を向上させやすい観点から、水酸基含有ポリマー(b1)とイソシアネート基含有架橋剤(c1)とを別々の剤として製造し、使用直前にこれらを混合することが好ましい。この観点からは、本実施形態においては、組成物の貯蔵安定性を向上させやすい観点から、本発明の圧電材料用組成物は上記(2)~(4)のいずれかであることが好ましい。
ポリマー(b)がイソシアネート基含有ポリマー(b2)であり、該イソシアネート基がブロック化剤で保護されていない本発明の別の一実施形態においては、本発明の圧電材料用組成物は、該組成物の貯蔵安定性を向上させやすい観点から、イソシアネート基含有ポリマー(b2)と水酸基含有架橋剤(c2)とを別々の剤として製造し、使用直前にこれらを混合することが好ましい。この観点からは、本実施形態においては、組成物の貯蔵安定性を向上させやすい観点から、本発明の圧電材料用組成物は上記(2)~(4)のいずれかであることが好ましい。
本発明の圧電材料用組成物は、フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を、場合により溶媒等の他の成分と共に混合することにより製造することができる。
本発明の圧電材料用組成物は、特に限定されないが、例えばフッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)、ならびに必要に応じて溶媒を、必要に応じて加熱しながら混合し、溶媒にフッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を溶解させて製造してよい。また、これらの成分の一部を別の組成物とし、2剤式以上の製剤としてもよい。さらに、圧電材料用組成物の形態は液体に限定されず、特に、2剤式以上の製剤の場合は、各剤の少なくとも一つがペレット状やフィルム状等の固体であってもよい。
〔圧電材料〕
本発明の圧電材料用組成物を用いて、本発明の圧電材料を製造することができる。本発明は、本発明の圧電材料用組成物から形成してなる圧電材料も提供する。
本発明の圧電材料はフッ素系重合体(a)、および、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)を含有する圧電材料であり、好ましくは本発明の圧電材料用組成物から形成される。
ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)は、ウレタン結合を架橋構造部分に含むポリマーである限り特に限定されないが、本発明の圧電材料用組成物に関して記載したポリマー(b)に由来する構造と、架橋剤(c)に由来する構造とを少なくとも含むポリマーであることが好ましい。ポリマー(b)に由来する構造と、架橋剤(c)に由来する構造とを少なくとも含むポリマーは、好ましい一態様において、水酸基含有ポリマー(b1)とイソシアネート基含有架橋剤(c1)との反応生成物であり、別の好ましい一態様において、イソシアネート基含有ポリマー(b2)と水酸基含有架橋剤(c2)との反応生成物である。いずれの場合においても、水酸基とイソシアネート基が反応することによって、架橋ポリマー(d)におけるウレタン結合が形成される。
本発明の圧電材料に含まれるフッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)の合計量は、圧電材料の総量に基づいて、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、その上限は100質量%以下である。
本発明の圧電材料に含まれるフッ素系重合体(a)の量は、圧電材料の圧電特性を高めやすい観点から、圧電材料の総量に基づいて、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは85質量%以上である。また、本発明の圧電材料に含まれるフッ素系重合体の量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすい観点および架橋ポリマー(d)による効果を発揮させやすい観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは97質量%以下であってもよい。
本発明の圧電材料に含まれる架橋ポリマー(d)の量は、引っ張り応力および伸び率の観点から、圧電材料の総量に基づいて、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、圧電性の観点から、圧電材料の総量に基づいて、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。
本発明の圧電材料に含まれるフッ素系重合体(a)の量は、圧電材料の圧電特性を高めやすい観点から、フッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)の合計量に基づいて、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは85質量%以上である。また、本発明の圧電材料に含まれるフッ素系重合体の量は、圧電材料の圧電特性を高めやすい観点および架橋ポリマー(d)による効果を発揮させやすい観点から、フッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)の合計量に基づいて、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは97質量%以下であってもよい。
本発明の圧電材料に含まれる架橋ポリマー(d)の量は、引っ張り応力および伸び率の観点から、フッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)の合計量に基づいて、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、圧電性の観点から、フッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)の合計量に基づいて、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。
本発明の圧電材料の製造方法は特に限定されず、目的とする圧電材料の形状や用途等によって適切なものを選択することができる。例えば、本発明の圧電材料用組成物を塗布して乾燥させた後、熱処理し、フッ素系重合体(a)を結晶化させることにより圧電特性を発生させて製造してよい。他の例としては、フッ素系重合体(a)と、ポリマー(b)を構成するモノマーと、架橋剤(c)と、必要に応じて溶媒とを混合する工程と、前記モノマーを重合させてポリマー(b)を得る工程と、フッ素系重合体を結晶化させると共にポリマー(b)と架橋剤(c)とを架橋反応させ圧電特性を発生させる工程を含む圧電材料の製造方法が挙げられる。他の例としては、ポリマー(b)と、架橋剤(c)と、フッ素系重合体を構成するモノマーと、必要に応じて溶媒とを混合する工程と、前記モノマーを重合させて前記フッ素系重合体を得る工程と、フッ素系重合体を結晶化させる共にポリマー(b)と架橋剤(c)とを架橋反応させ圧電特性を発生させる工程とを含む圧電材料の製造方法が挙げられる。
本発明の圧電材料用組成物を基材上に塗布し、乾燥し、熱処理により結晶化させて圧電特性を発生させることにより、本発明の圧電材料を製造することができる。ここで、例えば上記の乾燥工程および/または熱処理による結晶化工程において、ポリマー(b)と架橋剤(c)とが架橋反応するような温度まで加熱するか、または、別途熱処理による架橋工程を行うことによって、ポリマー(b)と架橋剤(c)とが架橋反応し、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)が形成される。圧電材料を効率的に製造しやすい観点からは、熱処理により結晶化させる工程において、同時に架橋反応を行うことが好ましい。
例えば本発明の圧電材料が圧電膜である場合、本発明の圧電材料用組成物を基材表面上に塗布してよい。例えば本発明の圧電材料が圧電ワイヤーである場合、本発明の圧電材料用組成物を、銅線の様な導電性の線材、例えば導電性材料からなる単線に、公知の方法で塗布してよい。
塗布された本発明の圧電材料用組成物を乾燥する方法は特に限定されず、大気圧条件下または減圧条件下等において、溶媒が蒸発するような温度で加熱して乾燥させてよい。例えば15~80℃の温度で乾燥を行うことが好ましい。
本発明の圧電材料を製造する際の熱処理の温度は、好ましくはフッ素系重合体(a)のキュリー点以上融点以下である。この段階で架橋を行う場合には、架橋反応が起こる温度以上、例えば60~150℃、好ましくは100~150℃の温度で熱処理を行うことが好ましい。加熱時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは2時間以上である。このような熱処理を行うことにより、フッ素系重合体(a)を結晶化させ、圧電特性を発現させることができる。
本発明の圧電材料の他の製造方法の一例としては、圧電材料用組成物を押出成形する方法、インフレーション成形する方法、射出成型する方法等が挙げられる。
本発明の圧電材料は、圧電膜、圧電ワイヤー、圧電ブロック(塊)であってよい。本発明の圧電材料は、残留分極が大きいため、単位体積あたりに貯蔵可能な電気的エネルギーが大きく、例えばセンサーの部材などへの利用が可能となる。
本発明の好ましい一態様において、本発明の圧電材料は、高い圧電特性を有することに加えて、耐熱性にも優れている。この態様における本発明の圧電材料の特徴を活かしやすい観点からは、圧電材料はタッチセンサー、加速度センサー、振動センサー、超音波センサー等のセンサーの部材、歪みゲージの部材、トランスデューサーの部材等として特に適している。なお、圧電材料の耐熱性を評価する方法としては、示差熱熱重量同時測定装置により1%重量減少温度を測定する方法が挙げられる。上記評価方法において、1%重量減少温度が、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である圧電材料は、耐熱性に特に優れているといえる。
本発明の圧電材料の残留分極は、十分な圧電特性を得やすい観点から、好ましくは30mC/m以上、より好ましくは40mC/m以上、より好ましくは50mC/m以上、より好ましくは60mC/m以上、さらに好ましくは70mC/m以上、さらに好ましくは80mC/m以上、さらに好ましくは90mC/m以上、さらに好ましくは100mC/m以上である。残留分極は高いほどよく、その上限は特に限定されないが、例えば200mC/m以下であってよい。残留分極の測定は、例えば電圧振幅200MV/mであり、周波数0.01Hz又は0.1Hzの三角波交流を印加する条件で行ってよい。
本発明の圧電材料の圧電定数d31は、圧電材料に曲げ応力や引張応力が付与された際の十分な圧電特性を得やすい観点から、好ましくは13pC/N以上、より好ましくは14pC/N以上、さらに好ましくは15pC/N以上である。圧電定数d31の測定方法は、実施例に記載する通りである。
本発明の圧電材料の圧電定数d33は、圧電材料に圧力が付与された際の十分な圧電特性を得やすい観点から、好ましくは15pC/N以上、より好ましくは18pC/N以上、さらに好ましくは20pC/N以上である。圧電定数d33の測定方法は、実施例に記載する通りである。
本発明の圧電材料の伸び率は、圧電材料の伸縮性を生じやすい観点から、好ましくは長方形状(例えば5mm×60mmの長方形)に裁断したフィルムを測定試料として測定した際に、好ましくは5~500%、より好ましくは10~250%、さらに好ましくは15~100%である。伸び率の測定方法は、実施例に記載する通りである。
本発明の圧電材料のヒステリシスロスは、圧電材料の伸縮性を生じやすい観点から、好ましくは長方形状(例えば5mm×60mmの長方形)に裁断したフィルムを測定試料として測定した際に、好ましくは35%以下、より好ましくは32%以下、さらに好ましくは30%以下である。ヒステリシスロスの測定方法は、実施例に記載する通りである。
本発明の圧電材料のヤング率は、圧電材料の伸縮性および柔軟性を高めやすい観点から、好ましくは長方形状(例えば5mm×60mmの長方形)に裁断したフィルムを測定試料として測定した際に、好ましくは1.5GPa以下、より好ましくは1.3GPa以下、さらに好ましくは1.2GPa以下である。ヤング率の測定方法は、実施例に記載する通りである。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、特記しない限り、例中の「%」および「部」はそれぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。具体的には、フッ素系重合体(a)またはポリマー(b)をテトラヒドロフランに溶解させて得た0.05~0.1質量%溶液を測定試料として用いた。測定条件は次の通りである。
機器:東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel GMHHR-H
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.5mL/分
温度:40℃
検出器:RI
分子量標準:標準ポリスチレン
(水酸基価)
JIS K1557に基づいて測定を行った。
〔製造例1:ポリマー(b1)の調製〕
エチルアクリレート(東亞合成(株)製)10.012質量部、4-ヒドロキシブチ
ルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)0.072質量部、及び重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド〔BASF社製、商品名:IrgacureTPO〕0.012質量部を混合することにより、重合開始剤を含有するモノマー成分を得た。
得られたモノマー成分を透明ガラス製の成形型(縦:100mm、横:100mm、深
さ:2mm)内に注入した後、当該モノマー成分に照射線量が0.60mW/cm2とな
るように紫外線を照射し、モノマー成分を2時間塊状重合させることにより、ポリマー(b1)を得た。ポリマー(b1)における単位m1に対する単位n2のモル比〔n2×100/m1〕は0.5である。また、ポリマー(b1)の重量平均分子量は1,370,000であり、水酸基価は2.8mgKOH/gであった。
〔製造例2:ポリマー(x)の調製〕
エチルアクリレート(東亞合成(株)製)10.012質量部及び重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド〔BASF社製、商品名:IrgacureTPO〕0.0063質量部を混合することにより、重合開始剤を含有するモノマー成分を得た。
得られたモノマー成分を製造例1と同様にして重合させることにより、ポリマー(x)を得た。ポリマー(x)の重量平均分子量は2,530,000であり、水酸基価は0mgKOH/gであった。
〔製造例3:ポリマー(e)の調製〕
(1)3,3,3-トリフルオロプロピルメタクリレート(3FPMA)の調製
還流冷却器、水分離器、空気導入管、温度計および撹拌器を備えた容量1Lのガラス製五つ口フラスコ中で、3,3,3-トリフルオロプロパノール25.0g、メタクリル酸18.9g、およびN,N-ジメチル-4-アミノピリジン5.36gを、ジクロロメタン200gに溶解させ、氷浴上で撹拌しながら1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩44.1gを添加し、10時間撹拌を続けた。得られた反応混合物を水で洗浄し、濃縮した後、減圧蒸留を行うことにより精製して、3,3,3-トリフルオロプロピルメタクリレート(3FPMA)21.9gを無色透明液体として得た(GC純度;99%,収率;55%)。
Figure 2023170553000006
(3FPMAのH-NMR(CDCl、ppm):1.95(3H,t)、2.44-2.59(2H,m)、4.38(2H,t)、5.58-5.62(1H,m)、6.13-6.14(1H,m)
(2)(メタ)アクリル系ポリマー(e)(Poly-3FPMA)の調製
ガラス容器に上記で得られた3FPMA22.1gを加え、重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド〔BASF社製、商品名:IrgacureTPO〕0.22gを溶解することにより、重合開始剤を含有するモノマー成分を得た。
上記で得られたモノマー成分を透明ガラス製の成形型(縦:100mm、横:100mm、深さ:0.5mm)内に注入した後、当該モノマー成分に照射線量が1.0mW/mとなるように紫外線を照射し、モノマー成分を塊状重合させることにより、p-3FPMAを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量(Mw)を測定したところ,224,000であった。
Figure 2023170553000007
〔実施例1:圧電材料用組成物1および圧電材料1の製造〕
(1-1)
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体a1(P(VDF/TrFE)a1、VDF:TrFE=85:15(モル比)、重量平均分子量:43.5万)25.00g、溶媒としてシクロペンタノン(日本ゼオン(株)製) 、175.00gをフラスコ内にて混合し、50℃で加熱溶解させることで溶液を得た。
(1-2)
製造例1で得たポリマー(b1)8.07g、架橋剤(c1-1)としてのデュラネートMF-K60B(ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート)、0.41g、架橋促進剤としてのオルガチックスZC150、0.0027g、および、溶媒としてシクロペンタノン、72.08gを、栓をしたフラスコ内にて混合した。
(1-3)
(1-1)で調製した溶液32.96gと(1-2)で調製した溶液4.51gをフラスコ内にて混合し、表1に示す質量比の圧電材料用組成物1を製造した。
(1-4)
上記のようにして製造した圧電材料用組成物1を、ギャップが1.0mmの市販のアプリケーターを用いて市販のガラス板に塗布した。これを65℃で1時間加熱した後、さらに140℃で1時間乾燥させた後、室温まで徐冷した。膜の厚みを測定したところ、40μmであった。次いで、抵抗加熱式の真空蒸着機(RVC-2-ICP, 株式会社理研社製)を使用し、気圧2×10-4 Pa以下にて金を加熱蒸発させ、電極を形成し,電極を兼ね備えた圧電材料用組成物1を得た。このようにして得た材料の電極間に電界振幅200MV/m、周波数0.01Hzの三角波交流を高電圧装置(松定プレシジョン株式会社製,HEOPS-1B30)を用いて印加して分極処理を行い、圧電材料1を得た。圧電材料1の圧電定数d31および圧電定数d33を次の方法で測定した。また、ヤング率、伸び率、およびヒステリシスロスを次の方法で測定した。得られた結果を表1に示す。
〔圧電定数d31およびd33の測定〕
各圧電材料膜の圧電定数d31およびd33は、圧電定数測定装置(リードテクノ製、品名:LPF-02)を用いて測定した。
具体的には、以下の手順により測定を行った。
(圧電定数d31
(1)膜を測定子で測定長さが(8~15mm)となるように挟持した。
(2)測定子から膜に加わる荷重を1Nに設定し、静置した。
(3)1Nの力を加えた際に発生した電荷量Aを測定した。
(4)測定子から膜に加える荷重を3N増加させ、測定子から膜に加える荷重が4Nとなるように設定した。
(5)4Nの力を加えた際に発生した電荷量Bを測定した。
(6)測定子から膜に加える荷重を3N減少させ1Nとした。
(7)上記の(3)~(6)を4回行い、2~4回目に測定した電荷量AおよびBの測定値の差分(A-B)の平均値を各実施例、比較例に係る膜の電荷量とし、この平均電荷量を評価面積(膜の厚さ×膜の長さ(測定子間距離))と測定荷重(3N)で除することにより、各実施例、比較例に係る膜のそれぞれの圧電定数d31を算出した。
(圧電定数d33
(1)膜を測定子で挟持した。
(2)測定子から膜に加わる荷重を1Nに設定し、静置した。
(3)1Nの力を加えた際に発生した電荷量Aを測定した。
(4)測定子から膜に加える荷重を3N増加させ、測定子から膜に加える荷重が4Nとなるように設定した。
(5)4Nの力を加えた際に発生した電荷量Bを測定した。
(6)測定子から膜に加える荷重を3N減少させ1Nとした。
(7)上記の(3)~(6)を4回行い、2~4回目に測定した電荷量AおよびBの測定値の差分(A-B)の平均値を各実施例、比較例に係る膜の電荷量とし、この平均電荷量測定荷重(3N)で除することにより、各実施例、比較例に係る膜のそれぞれの圧電定数d33を算出した。
[ヤング率、伸び率の測定]
5mm×60mmの長方形状に打ち抜くことにより、試験片を得た。得られた試験片を引張り試験機〔(株)エー・アンド・デイ製、品番:Tensilon RTG-1310〕のチャック間距離が40mmとなるように取り付け、5mm/minの引張り速度で試験片が破断するまで引張り荷重を加える操作を行ない、ヤング率及び伸び率を測定した。なお、上述で得られたフィルムの伸び率は、式:〔フィルムの伸び率(%)〕=〔破断時の試験片の長さ(mm)-試験片の元の長さ(mm)〕÷〔試験片の元の長さ(mm)〕×100に基づいて求めた。得られた結果を表1に示す。
[ヒステリシスの測定]
ヒステリシスについて、その評価指標となるヒステリシスロスを導きだした。詳細には、上述の試験片及び引張試験機を用い、下記測定を行い、得られたグラフを用いて、ヒステリシスロスを算出した。測定は、試験片に対し、12.5%伸びまで引張り荷重を加える操作(チャック間距離を40mmから45mmにする操作)と12.5%に達した試験片を0%まで戻す操作(45mmのチャック間距離を40mmまで戻す操作)(いずれも50mm/min)を1サイクルとして2サイクル行い、2サイクル目の測定結果のグラフからヒステリシスロスを算出した。なお、データの保存間隔は0.1秒で記録した。
図1を用いてヒステリシスロスの算出方法を詳細に説明する。図1はヒステリシスロスを説明するためのグラフである。横軸はフィルム伸びを表し、縦軸は標準化応力を表している。標準化応力は各時間における応力の観測値をフィルム伸びが100%の時の応力の観測値で除した値である。ヒステリシスロスは図1において点線(往路)と実線(復路)とに囲まれる領域についてその面積を算出した。ヒステリシスロスが小さいほど追従性が良いことを示す。面積は次のように算出した。まず、ひずみ1(フィルムの伸び 100%)時における応力をσAとして、時間tにおける標準化応力Zを次の式に基づいて求めた。[時間tにおける標準化応力Z]=[時間tにおける応力σ(MPa)]÷[ひずみ1における応力σA(MPa)]。また、ある時間tにおけるフィルムの伸びをεとする。ある時間t-1から次の時間(0.1秒後)tに変化するときに、SS曲線、直線Z=0、直線ε=εt-1,直線ε=εに囲まれた面積を、台形の面積に近似して以下の式で求めた。
[時間t-1からtに変化したときの台形の面積S]=(Zt-1+Z)×(ε-εt-1)÷2
最後に、2サイクル目の開始から終了までに得られるSの総和を求め、これをヒステリシスロスとした。得られた結果を表1に示す。
〔実施例2~5および比較例1~7〕
圧電材料用組成物の組成を、表1に示す組成に変えたこと以外は実施例1と同様にして、圧電材料を調製した。得られた圧電材料について同様の測定を行った結果を表1に示す。なお、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体(a2)として、P(VDF/TrFE)a2(VDF:TrFE=80:20(モル比)、重量平均分子量:20万)を用い、架橋剤c1-2としてヘキサメチレンジイソシアネートを用いた。
Figure 2023170553000008
実施例1~5に記載の本発明の圧電材料は、延伸処理等を行わない場合であっても圧電定数d31が高く、圧電材料に引張応力および/または曲げ応力が付与された際の高い圧電性を有する材料であることが確認された。また、伸び率が高く、ヒステリシスロスが低いことから、該材料は伸縮性を有すると理解される。これに対し、共重合体(a)を含有するものの、本発明の架橋ポリマー(d)を含有しない比較例の圧電材料は、圧電定数d31が十分ではないか、ヒステリシスロスが高すぎるために伸縮性が十分な材料であるとはいえないものであった。

Claims (14)

  1. フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を含有し、
    該ポリマー(b)および該架橋剤(c)は、水酸基含有ポリマー(b1)およびイソシアネート基含有架橋剤(c1)である、および/または、イソシアネート基含有ポリマー(b2)および水酸基含有架橋剤(c2)である、圧電材料用組成物。
  2. フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)を含有する剤を含む、少なくとも1剤式の圧電材料用組成物であるか、
    フッ素系重合体(a)およびポリマー(b)を含有する第1剤と、架橋剤(c)を含有する第2剤とを含む、少なくとも2剤式の圧電材料用組成物であるか、
    フッ素系重合体(a)および架橋剤(c)を含有する第1剤と、ポリマー(b)を含有する第2剤とを含む、少なくとも2剤式の圧電材料用組成物であるか、または、
    フッ素系重合体(a)を含有する第1剤と、ポリマー(b)を含有する第2剤と、架橋剤(c)を含有する第3剤とを含む、少なくとも3剤式の圧電材料用組成物である
    請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  3. フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量に基づく、フッ素系重合体(a)の量は60~99質量%であり、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量は1~40質量%である、請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  4. フッ素系重合体(a)、ポリマー(b)および架橋剤(c)の合計量は、圧電材料用組成物の固形分に基づいて80質量%以上である、請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  5. 水酸基含有ポリマー(b1)は、0.01mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の水酸基価を有する(メタ)アクリル系ポリマーであり、
    水酸基含有架橋剤(c2)は、0.01mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の水酸基価を有する、請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  6. イソシアネート基含有架橋剤(c1)はブロックポリイソシアネートである、請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  7. 水酸基含有ポリマー(b1)の水酸基と、イソシアネート基含有架橋剤(c1)のイソシアネート基との当量比(水酸基:イソシアネート基)は、0.5:1.5~1.5:0.5であり、
    水酸基含有架橋剤(c2)の水酸基と、イソシアネート基含有ポリマー(b2)のイソシアネート基との当量比(水酸基:イソシアネート基)は、0.5:1.5~1.5:0.5である、
    請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  8. フッ素系重合体(a)の重量平均分子量は100,000以上である、請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  9. フッ素系重合体はフッ化ビニリデン系重合体である、請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  10. フッ素系重合体(a)は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合であり、該共重合体におけるフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量は、全構成単位の量に基づいて55~90mol%である、請求項1に記載の圧電材料用組成物。
  11. 請求項1~10のいずれかに記載の圧電材料用組成物から形成してなる圧電材料。
  12. フッ素系重合体(a)、および、ウレタン結合を含む架橋ポリマー(d)を含有する、圧電材料。
  13. 架橋ポリマー(d)は、ポリマー(b)に由来する構造と、架橋剤(c)に由来する構造とを少なくとも含み、該ポリマー(b)および該架橋剤(c)は、水酸基含有ポリマー(b1)およびイソシアネート基含有架橋剤(c1)である、および/または、イソシアネート基含有ポリマー(b2)および水酸基含有架橋剤(c2)である、請求項12に記載の圧電材料。
  14. フッ素系重合体(a)および架橋ポリマー(d)の合計量に基づく、フッ素系重合体(a)の量は60~99質量%であり、架橋ポリマー(d)の量は1~40質量%である、請求項12または13に記載の圧電材料。
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