JP2023167235A - 帆走装置 - Google Patents

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JP2023167235A
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直人 荒木
Naoto Araki
繁光 青木
Shigemitsu Aoki
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Abstract

【課題】操船者の煩雑な操作を必要とすることなく、高い揚力を連続して発生させ、且つ、船体の左右への傾きをより抑制することができ、大型化が可能な帆走装置を提供する。【解決手段】帆走装置は、空中翼140と軸支部31と水中翼34,35と連動機構とを備える。空中翼140は、翼型の断面を有する。軸支部31は、船体に対して空中翼140を左右に傾動可能に軸支する。水中翼34,35は、船体の左右それぞれに設けられ、前後に姿勢変化が可能な翼部341,351を有する。連動機構の左側ワイヤー32は、空中翼140と左側水中翼34とを連結し、空中翼140が右側に傾動した場合に当該傾動に連動して左側水中翼34の翼部341を前傾姿勢とする。連動機構の右側ワイヤー33は、空中翼140と右側水中翼35とを連結し、空中翼140が左側に傾動した場合に当該傾動に連動して右側水中翼35の翼部351を前傾姿勢とする。【選択図】図3

Description

本発明は、帆走装置に関し、特に空中翼および水中翼を備える帆走装置に関する。
特許文献1には、空中翼および水中翼を備える帆走装置が開示されている。特許文献1に開示の帆走装置は、前後2本のビームによって連結された左右の船体を有するカタマラン構造の船体に対して設けられており、前ビームの中央部から上方に延びる支柱と、支柱の上端で軸支されたアームと、アームの上端に固定された空中翼と、アームの下端に回動可能な状態で結合され、水中に配置された水中翼と、を備えている。
特許文献1に開示の帆走装置では、空中翼が飛行機の翼のような翼型の断面形状を有するので、例え向かい風が吹いている場合にもアームの姿勢を調整することで船舶を帆走させることができる。また、水中翼がアームの下端に結合されているので、空中翼に風を受けた場合に船体が左右に傾くのを抑制することができる。
特開昭56-28094号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の帆走装置では、高い揚力を得ながら船体の左右への傾きを抑制しようとする場合、操船者による煩雑な操作が必要となる。即ち、上記特許文献1に開示の帆走装置を操作する操船者は、船体に対して吹く風の向きと強さを感じとった上で経験則に基づいてアームを前後左右に傾動させることによって、できるだけ高い揚力を発生させることができる空中翼の姿勢と、船体の左右への傾きをできるだけ抑制することができる水中翼の姿勢とをバランスさせながら操船する必要がある。
また、大型化を行う上で空中翼と水中翼を一本の支柱で繋いで配置することは構造的に実現が難しく、空中翼と水中翼を個別に制御することも難しい。
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、操船者の煩雑な操作を必要とすることなく、高い揚力を連続して発生させ、且つ、船体の左右への傾きをより抑制することができ、大型化が可能な帆走装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る帆走装置は、空中翼と、軸支部と、水中翼と、連動機構と、を備える。前記空中翼は、翼型の断面を有する。前記軸支部は、船体に対して前記空中翼を左右に傾動可能に軸支する。前記水中翼は、前記船体の左右それぞれに設けられ、前後に姿勢変化が可能な翼部を有する。前記連動機構は、前記空中翼における傾動姿勢に応じて、前記左右それぞれの前記水中翼の姿勢を変化させる。そして、本態様に係る帆走装置において、前記連動機構は、前記空中翼が右側に傾動した姿勢をとる場合に、少なくとも左側の前記水中翼の翼部は、当該翼部の前縁が後縁よりも下方に位置する前傾姿勢をとり、前記空中翼が左側に傾動した姿勢をとる場合に、少なくとも右側の前記水中翼の翼部は、当該翼部の前縁が後縁よりも下方に位置する前傾姿勢をとる、ように、前記空中翼の傾動姿勢に応じて左右の前記水中翼における前記翼部の姿勢を変える。
上記態様に係る帆走装置では、空中翼の傾動姿勢に応じて左右の水中翼が前傾姿勢をとるように、空中翼と水中翼とを連動させる連動機構を備えているので、風の向きに応じて空中翼の傾動姿勢が規定されれば、これに連動して左右の水中翼の少なくとも一方が前傾姿勢をとる。よって、上記態様に係る帆走装置では、上記特許文献1に開示の帆走装置のように、風の向きと強さに応じて空中翼の傾動姿勢と水中翼の前傾姿勢とを操船者がバランスをとりながら操作を行わなくても、空中翼と水中翼の連動に機械的な相関性と適当な調整を加えることが可能になり、連続的に高い揚力を発生させ、且つ、船体の左右への傾きをより効率的に抑制することができる。
なお、水中翼が前傾姿勢をとる場合には、翼部に対する水流抵抗により当該水中翼が配設されている側を下方に向けて引き下げる力が生じ、これにより船体の左右への傾きが抑制される。また、左右の水中翼は水平面に対して45度の角度でV字型に翼部が配設されており、引き下げる力と同時に横方向への力も生じる。この横方向の力は空中翼に生じる船体を横滑りさせようとする力に抵抗し船体の横滑り移動を抑える効果を生む。
上記態様に係る帆走装置において、前記連動機構は、左側ワイヤーと右側ワイヤーとを有してもよい。前記左側ワイヤーは、前記空中翼と前記左側の水中翼とを連結してもよく、前記空中翼が右側に傾動した場合に当該傾動に連動して前記左側の水中翼の翼部を前記前傾姿勢としてもよい。前記右側ワイヤーは、前記空中翼と前記右側の水中翼とを連結してもよく、前記空中翼が左側に傾動した場合に当該傾動に連動して前記右側の水中翼の翼部を前記前傾姿勢としてもよい。
上記態様に係る帆走装置では、連動機構が左側ワイヤーと右側ワイヤーとを有するので、空中翼が右方に傾いた状態では左側ワイヤーを介して左側の水中翼が前傾姿勢をとるように姿勢変化し、逆に、空中翼が左方に傾いた状態では右側ワイヤーを介して右側の水中翼が前傾姿勢をとるように姿勢変化する。このため、上記態様に係る帆走装置では、空中翼と左右の水中翼のそれぞれとを2本のワイヤーで連結するという簡易な構成で、空中翼の姿勢と左右の水中翼の姿勢とを調節して連動させることができ、特許文献1のように空中翼と水中翼を直結した構造より高い制御性を実現できる。
上記態様に係る帆走装置において、前記連動機構は、左側アクチュエータと右側アクチュエータとを有してもよい。前記左側アクチュエータは、前記空中翼の傾動に連動して駆動するように設けられてもよく、前記空中翼が右側に傾動した場合に前記左側の水中翼の翼部を前記前傾姿勢としてもよい。前記右側アクチュエータは、前記空中翼の傾動に連動して駆動するように設けられてもよく、前記空中翼が左側に傾動した場合に前記右側の水中翼の翼部を前記前傾姿勢としてもよい。
上記態様に係る帆走装置では、左側の水中翼における翼部の姿勢を前傾姿勢に変化させる左側アクチュエータと、右側の水中翼における翼部の姿勢を前傾姿勢に変化させる右側アクチュエータとを連動機構が有するので、例えば、大型船などにおいて、空中翼が配された箇所と水中翼が配された箇所とが離れているような場合でも、空中翼の傾動姿勢に連動させて水中翼における翼部の姿勢を変化させることができると共に、連動を相関的に制御することで空中翼の揚力を安定して維持できる。
上記態様に係る帆走装置において、水平風向計と、傾動アクチュエータと、制御部と、をさらに備えてもよい。前記水平風向計は、前記船体の左右方向から吹く風の風向きを検出してもよい。前記傾動アクチュエータは、前記空中翼を左右に傾動させてもよい。前記制御部は、前記水平風向計からの風向きに関する情報を取得し、取得した風向きに応じて前記傾動アクチュエータを制御してもよい。
上記態様に係る帆走装置では、水平風向計から取得した水平方向の風向に関する情報に基づいて傾動アクチュエータを制御する制御部を備えるので、操船者が風の向きを感じとって経験則に基づいて空中翼の傾動姿勢を設定しなくても、制御部によって最大の揚力を得ることができる空中翼の傾動姿勢が自動的に設定される。よって、上記態様に係る帆走装置では、船舶を自動で帆走させるような場合に有用である。
上記態様に係る帆走装置において、迎角風向計と翼弦アクチュエータとをさらに備えてもよい。前記迎角風向計は、前記空中翼の翼弦線に対する風向きを検出してもよい。前記翼弦アクチュエータは、前記空中翼の翼弦方向を変化させてもよい。そして、上記態様に係る帆走装置において、前記制御部は、前記迎角風向計からの風向きに関する情報を取得し、取得した情報に応じて前記翼弦アクチュエータを制御してもよい。
上記態様に係る帆走装置では、制御部が迎角風向計からの翼弦線に対する風向きに関する情報を取得し、当該取得した情報に基づいて空中翼の翼弦方向の制御(迎角制御)も行うので、強い揚力を連続して得ることができる空中翼の姿勢を自動で設定することができる。
上記態様に係る帆走装置において、前記迎角風向計は、風向計本体と羽根とを有してもよい。前記羽根は、前記風向計本体に対して前記空中翼の翼長方向の左右それぞれに取り付けられるとともに、前記空中翼の前縁に配置され、且つ、前記翼長方向に沿った軸廻りに回動可能に構成されて、前記前縁に向けて吹く風の風向きに応じて回動してもよい。そして、上記態様に係る帆走装置において、前記風向計本体は、前記羽根の回転角に応じて前記翼弦線に対する風向きを検出してもよい。
上記態様に係る帆走装置では、迎角風向計が風向計本体に取り付けられた2枚の羽根を有し、2枚の羽根が空中翼の前縁に配置されているので、空中翼が左右の何れかに傾動姿勢をとっている場合にも2枚の羽根の何れか一方に対して吹く相対的に強い風によって風向計本体が翼弦線に対する風向きを正確に検出することができる。よって、上記態様に係る帆走装置では、強い揚力を連続して得ることができる空中翼の迎角を正確に設定することができる。
上記の各態様に係る帆走装置では、操船者の煩雑な操作を必要とすることなく、高い揚力を連続して発生させ、且つ、船体の左右への傾きをより抑制することができ、船体の大型化を図ることが可能である。
第1実施形態に係る帆走装置の構成を示す平面図である。 帆走装置の構成を示す正面図である。 空中翼の傾動姿勢と水中翼の翼部との連動関係を示す正面図であって、(a)は空中翼が右側に傾動した姿勢をとる場合、(b)は空中翼が左側に傾動した姿勢をとる場合とそれぞれ示す。 空中翼の姿勢を変化させる傾動サーボモータおよび翼弦サーボモータの配設形態を示す側面図である。 第1実施形態に係る帆走装置の制御構成を示すブロック図である。 船体コンピュータが実行する航行制御方法を示すフローチャートである。 第1実施形態に係る船体コンピュータが実行する帆走制御方法を示すフローチャートである。 船体コンピュータが実行する迎角制御方法を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る帆走装置の制御構成を示すブロック図である。 左側水中翼駆動部の配設構成を示す側面図である。 第2実施形態に係る船体コンピュータが実行する帆走制御方法を示すフローチャートである。
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の構成および作用・効果を説明するための例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
[第1実施形態]
1.帆走装置1の構成
第1実施形態に係る帆走装置1の構成について、図1から図4を用いて説明する。
先ず、図1に示すように、本実施形態に係る帆走装置1が設けられる船体10は、主船体11と、2つのアウトリガー船体12と、デッキ13とを備えるトリマラン構造の船体である。アウトリガー船体12の各後端部には、舵15,16が設けられている。左舵15と右舵16とは、連結シャフト17によって連結されており、舵サーボモータ18の駆動に呼応して互いに連動して回動するようになっている。また、主船体11の後部には、エンジン等を有する推進装置19が設けられている。船体10は、無風時や港内航行時には推進装置19を用いて航行される。
次に、図1および図2に示すように、帆走装置1は、空中翼ユニット14と、軸支部31と、左右の水中翼34,35と、左右のワイヤー32,33とを備える。空中翼ユニット14は、翼型の断面を有する空中翼140と、空中翼140の長手方向の中央部分に連結され、下方に延びる翼アーム141とを有する。図4に示すように、空中翼140は、翼アーム141の上端部に連結されており、矢印C1で示すように前縁140aが後縁140dよりも下方となるように前傾したり、逆に矢印C2で示すように後縁140dが前縁140aよりも下方となるように後傾したりできるように回転可能に連結されている。
軸支部31は、デッキ13上における左右方向の中央部から上方に向けて延びるように形成されている。なお、軸支部31は、船体10の前後方向における中央部よりも前方の部分に配設されている。
図2に示すように、空中翼ユニット14の翼アーム141は、軸支部31に対して、当該軸支部31の上部に設けられた回転軸31a周りに傾動可能に軸支されている。図4に示すように、回転軸31aは、船体10の前後方向に沿うとともに、後方から前方へと行くのに従って下方から上方へと緩やかに傾いて配されている。なお、回転軸31aについては、傾くことなく前後方向に延びていてもよい。
図2に戻って、水中翼34と水中翼35とは、左右対称に配設されている。以下では、左側に配設された水中翼34を左側水中翼と記載し、右側に配設された水中翼35を右側水中翼と記載する。
図2の拡大部分には、船体10の前後方向における中央部よりも前方側の部分に配設された左側水中翼34を、右側から側面視した状態で拡大して示す。図2の拡大部分に示すように、左側水中翼34は、デッキ13の下部に取り付けられ、左側のアウトリガー船体12に対して右側(左右方向の内側)に配設されている。左側水中翼34は、翼ベース340と、翼部341と、バネ342と、ブラケット343とを有する。翼ベース340は、船体10の前後方向に沿って延びる部材であって、デッキ13から下方に間隔を空けた状態で配設されている。翼ベース340は、デッキ13から下方に延びるように設けられたブラケット343を介してデッキ13の下部に取り付けられている。翼ベース340は、ブラケット343に対して前後方向の中間部で取り付けられており、図2の拡大部分における紙面に垂直な方向(船体10の左右方向)に延びる回転軸340c廻りに回転可能となっている。翼部341は、翼ベース340に対して斜め下方に延びるように接合された板形状(翼形状)の部材であり、翼ベース340と一体に回転軸340c廻りに回転可能に形成されている。バネ342は、デッキ13の下部と翼ベース340の前端部340bとの間に配設されている。バネ342は、例えば、コイルバネであって、左側水中翼34に対して水流による力だけが作用している場合には、左側水中翼34が水流抵抗により回転しないように姿勢を規制する。
なお、図示を省略しているが、右側水中翼35についても、左側水中翼34と同じ構成をもって形成されており、配置形態が上述のように左右対称となっている。
左側ワイヤー32は、翼アーム141における軸支部31に取り付けられたドラム状の巻き取り器(図示を省略。)に一端が接合され、複数のプーリ37,39を経由して他端が左側水中翼34における翼ベース340の後端部340aに接合されており、巻き取り器の径とワイヤーの取り付け位置により空中翼140と水中翼34の連動を調節できる。
右側ワイヤー33も、翼アーム141における軸支部31に取り付けられたドラム状の巻き取り器(図示を省略。)に一端が接合され、複数のプーリ38(一部のプーリの図示を省略。)を経由して他端が右側水中翼35における翼ベースの後端部に接合されており、巻き取り器の径とワイヤーの取り付け位置により空中翼140と水中翼35の連動を調節できる。
なお、本実施形態では、左側ワイヤー32および右側ワイヤー33とプーリ37~39とにより、空中翼140の姿勢と水中翼34,35の姿勢とを連動する連動機構が構成されている。
図1に戻って、帆走装置1は、水平風向計20,21と、GPS(全地球測位システム)22と、電子コンパス23と、通信装置24と、船体コンピュータ(制御部)25とをさらに備える。水平風向計20は、船体10におけるデッキ13上の左方の部分に配設されており、水平風向計21は、船体10におけるデッキ13上の右方の部分に配設されている。左右の水平風向計20,21は、船体10の左右方向から吹く風の風向きを検出し、風向きに関する検出情報を船体コンピュータ25に出力する。なお、本実施形態では、水平風向計20と水平風向計21とは、左右対称に配設されている。以下では、デッキ13上の左側に配設された水平風向計20を左側水平風向計と記載し、デッキ13上の右側に配設された水平風向計21を右側水平風向計と記載する。
GPS22は、船体10の位置を検出し、検出した測位情報を船体コンピュータ25に出力する。電子コンパス23は、船体10の船首の方位を検出し、検出した方位情報を船体コンピュータ25に出力する。通信装置24は、基地局から進路指示を受信したり、基地局に対して測位情報を送信したりする。
船体コンピュータ25は、船体10の航行制御を実行するコンピュータである。船体コンピュータ25は、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有して構成されている。船体コンピュータ25は、メモリに予め格納されたファームウェア等を実行することにより、船体10の航行制御を実行する。
図1および図4に示すように、空中翼140の前縁140aには、当該前縁140aの中間部分から前方に延びるブラケット41が接合されている。そして、ブラケット41の先端部分には、迎角風向計26が取り付けられている。図1に示すように、迎角風向計26は、風向計本体27と、羽根28,29と、連結軸30とを有する。風向計本体27は、例えば、ロータリーエンコーダを有し、回転軸に連結軸30が連結されている。
左側羽根28は、連結軸30の左側の端部に接合されており、右側羽根29は、連結軸30の右側の端部に接合されている。連結軸30は、空中翼140の前縁140aに沿うように配設されており、左側羽根28と右側羽根29とは、空中翼140の前縁140aから前方に略同じ間隔を空けて配されている。風向計本体27では、風による左側羽根28および右側羽根29の姿勢変化により空中翼本体140の翼弦線140eに対する風の向きを検出し、船体コンピュータ25に送信する。なお、図4に示すように、空中翼本体140の翼弦線140eとは、前縁140aと後縁140dとを結ぶ線を指す。
図4に示すように、帆走装置1は、傾動サーボモータ(傾動アクチュエータ)40と翼弦サーボモータ(翼弦アクチュエータ)36とをさらに備える。傾動アクチュエータ40は、回転軸31a廻りに空中翼140を回転させるサーボモータである。傾動サーボモータ40は、船体コンピュータ25からの指令信号に基づいて駆動する。具体的に、傾動サーボモータ40は、図3(a)に示すように、空中翼140が右端140cが下方となるように空中翼140を右側に傾動した姿勢としたり、図3(b)に示すように、空中翼140の左端140bが下方となるように空中翼140を左側に傾動した姿勢としたりする。
図4に戻って、翼弦サーボモータ(翼弦アクチュエータ)36は、翼アーム141の上端部に配設された回転軸(図4の紙面に直交する向きに延びる軸であって、船体10の左右方向に延びる軸)廻りに、矢印C1,C2で示すように空中翼140を回転させるサーボモータである。なお、図4では詳細な図示を省略しているが、翼弦サーボモータ36の出力軸は、翼アーム141の上端部における上記回転軸に平行となるように配されている。空中翼140は、翼弦サーボモータ36の駆動により、当該空中翼140の翼弦方向(翼弦線140eが延びる方向)が調整される。
2.空中翼140と水中翼34,35との連動
空中翼140と水中翼34,35との連動について、図2および図3を用いて説明する。
図3(a)に示すように、水平風向計20,21の検出結果より、矢印B1で示すように船体10に対して左方から風が吹いている場合には、船体コンピュータ25が傾動サーボモータ40に指令信号を送出して空中翼140を右方に傾動させる(矢印A2)。これにより、空中翼140に船体10を前進させるとともに船体10の左側を浮かせようとする強い揚力が発生する。空中翼140が右側に傾動した姿勢となると、それに伴って矢印A3で示すように左側ワイヤー32が連動して引き上げられる。そして、図2の拡大部分に示すように、左側ワイヤー32の動きによって、左側水中翼34における翼ベース340の後端部340aが上方に引き上げられ、矢印A6で示すように翼部341の前縁341bが後縁341aよりも下方となる前傾姿勢をとる。これにより、前方から翼部341に向けて流れる水流A7は、翼部341の主面に沿って流れが変更される(矢印A8,A9)。この結果、船体10の左舷側に対しては、下方に向けた力が生じ(矢印A10)、船体10が右方に傾くのが抑制される。
なお、本実施形態では、図3(a)のように空中翼140が右側に傾動した姿勢をとる場合において、右側水中翼35は当該右側水中翼35が有するバネの作用によって姿勢変化しないように動きが制限される。
一方、図3(b)に示すように、水平風向計20,21の検出結果より、矢印B2で示すように船体10に対して右方から風が吹いている場合には、船体コンピュータ25が傾動サーボモータ40に指令信号を送出して空中翼140を左方に傾動させる(矢印A1)。これにより、空中翼140に船体10を前進させるとともに船体10の右側を浮かせようとする強い揚力が発生する。空中翼140が右側に傾動した姿勢となると、それに伴って矢印A4で示すように右側ワイヤー33が連動して引き上げられる。そして、右側ワイヤー33の動きによって、右側水中翼35における翼ベースの後端部が上方に引き上げられ、翼部351の前縁351bが後縁351aよりも下方となる前傾姿勢をとる。これにより、前方から翼部351に向けて流れる水流は、翼部351の主面に沿って流れが変更される。この結果、船体10の右舷側に対しては、下方に向けた力が生じ(矢印A11)、船体10が左方に傾くのが抑制される。
なお、本実施形態では、図3(b)のように空中翼140が左側に傾動した姿勢をとる場合において、左側水中翼34は当該左側水中翼34が有するバネ342(図2の拡大部分を参照。)の作用によって姿勢変化しないように動きが制限される。
3.帆走装置1における制御構成
帆走装置1における制御構成について、図5を用いて説明する。
図5に示すように、船体コンピュータ25には、水平風向計20,21と、迎角風向計26と、GPS22と、電子コンパス23と、通信装置24とが信号接続されている。水平風向計20,21、迎角風向計26、GPS22、および電子コンパス23からは、船体コンピュータ25に対して各種信号が入力されるようになっている(SIG1~SIG5)。また、船体コンピュータ25と通信装置24との間では、適時に送受信可能となっている。
また、船体コンピュータ25は、傾動サーボモータ40および翼弦サーボモータ36と信号接続されているのに加え、舵サーボモータ18および推進装置19にも信号接続されている。
船体コンピュータ25は、水平風向計20,21、GPS22、電子コンパス23からの各種信号SIG1,SIG2,SIG4,SIG5に基づいて、傾動サーボモータ40に指令信号SIG6を送出する。また、船体コンピュータ25は、迎角風向計26からの信号SIG3に基づいて、翼弦サーボモータ36に指令信号SIG7を送出する。
また、船体コンピュータ25は、GPS22および電子コンパス23からの信号SI4,SIG5と、通信装置24を介した進路指示情報に基づき、舵サーボモータ18に指令信号SIG8を送出する。
なお、船体コンピュータ25は、無風時や港内航行時などにおいては推進装置19に対して駆動信号SIG9を送出する。この場合には、船体10は、帆走ではなく推進装置19で航行されることとなる。
4.船体コンピュータ25が実行する航行制御
船体コンピュータ25が実行する航行制御について、図6から図8を用いて説明する。
先ず、船体コンピュータ25は、水平風向計20,21、迎角風向計26、GPS22、電子コンパス23、および通信装置24から各種情報を取得する(ステップS1)。そして、船体コンピュータ25は、通信装置24を介して取得した進路情報を基づいて、進行方位をセットする(ステップS2)。なお、進行方位のセットに際しては、天候や安全に関する情報などを加味することとしてもよい。
進行方位をセットした船体コンピュータ25は、水平風向計20,21、迎角風向計26、GPS22、および電子コンパス23からの各種情報に基づいて船体10が航行する進路が帆走可能であるか否かを判断する(ステップS3)。船体コンピュータ25は、帆走が可能であると判断した場合には(ステップS3:YES)、帆走制御を実行する(ステップS4)。
一方、船体コンピュータ25は、帆走が不可能であると判断した場合には(ステップS3:NO)、推進装置19に駆動指令信号SIG9を送出する(ステップS5)。なお、帆走が不可能な状況とは、上述のように、無風時や港内航行時、あるいは通信装置24を介して遠隔コントロールの信号を受けた時などである。
図7に示すように、帆走制御の実行において、船体コンピュータ25は、水平風向計20、21からの信号SIG1、SIG2に基づいて、進行方位(船体コンピュータ25にセットされた進行方位)に対して正面から風が吹いているか否かを判断する(ステップS11)。本実施形態では、風が正面から吹いていると判断した場合には(ステップS11:YES)、空中翼140を左側に傾けるように傾動サーボモータ40に指令信号SIG6を送出する(ステップS12)。この場合の進行方向正面とは、船首がその方向を向いている状態では空中翼140に揚力が生み出せない方向の範囲のことを示す。空中翼140を左側に傾けることで風を受ける面積に非対称性が生じるので船体10は風圧により左方向に回頭し、風に対して空中翼140が揚力を発生可能な方向に船首を向けることができ、風上への推進力を得ることができる。同様に、空中翼140を右側に傾けた場合は、船体10は右方向に回頭し揚力を発生可能な方向に船首を向けることもできる。ステップS11でYESとなる進行方位に向かうためには、GPS22、電子コンパス23からの信号SIG4、SIG5を船体コンピュータ25で判断して空中翼140を左側に傾ける信号と右側に傾ける信号SIG6を適当な移動量の毎に交互に送り、ジグザグな経路を描いて進行方向へ向かう。なお、空中翼140を左側に傾けた場合には(ステップS12)、上述のように、連動して右側水中翼35が前傾姿勢をとる(図3(b)を参照)。
船体コンピュータ25は、ステップS11においてNOと判断した場合には、次に水平風向計20,21からの信号SIG1,SIG2に基づいて、進行方位に対して右側から風が吹いているか否かを判断する(ステップS13)。船体コンピュータ25は、風が右側から吹いていると判断した場合には(ステップS13:YES)、空中翼140を左側に傾けるように傾動サーボモータ40に指令信号SIG6を送出する(ステップS12)。このように空中翼140を左側に傾けた場合にも(ステップS12)、連動して右側水中翼35が前傾姿勢をとる(図3(b)を参照)。
次に、船体コンピュータ25は、ステップS12の実行に続いて、迎角の設定を行う(ステップS16)。
図8に示すように、船体コンピュータ25は、迎角風向計26からの迎角に関する情報を取得し(ステップS21)、当該取得した情報に基づいて揚力が最大となる迎角を算出する(ステップS22)。そして、船体コンピュータ25は、算出した迎角となるように翼弦サーボモータ36に指令信号SIG7を送出する(ステップS23)。
図7に戻って、船体コンピュータ25は、ステップS13においてNOと判断した場合には、次に水平風向計20,21からの信号SIG1,SIG2に基づいて、進行方位に対して左側から風が吹いているか否かを判断する(ステップS14)。船体コンピュータ25は、風が左側から吹いていると判断した場合には(ステップS14:YES)、空中翼140を右側に傾けるように傾動サーボモータ40に指令信号SIG6を送出する(ステップS15)。そして、船体コンピュータ25は、ステップS15の実行に続いて、上記同様に迎角の設定を行う(ステップS16)。なお、空中翼140を右側に傾けた場合には(ステップS15)、上述のように、連動して左側水中翼34が前傾姿勢をとる(図3(a)を参照)。
船体コンピュータ25は、ステップS14にいてNOをと判断した場合には、空中翼140を左右に傾けることなく水平にした上で(ステップS17)、迎角を負の角度にするよう翼弦サーボモータ36に指令信号SIG7を送出する(ステップS18)。ここで、迎角を負の角度にするとは、空中翼140の前縁140aが下方となり、後縁140dが上方となるように倒立させた状態を指す。これにより、追風帆走時に適した横帆状態を作り、進行方位に対して後方から吹く風で大きな推進力を得て帆走することができる。なお、この場合においては、左右の水中翼34,35がともに前傾姿勢をとらない状態となる。
5.効果
本実施形態に係る帆走装置1では、空中翼140の傾動姿勢に応じて左右の水中翼34,35が図2および図3に示すような前傾姿勢をとるように、空中翼140と水中翼34,35とを連動させる連動機構を備えているので、風の向きに応じて空中翼140の傾動姿勢が規定されれば、これに連動して左右の水中翼34,35の少なくとも一方が前傾姿勢をとる。よって、帆走装置1では、上記特許文献1に開示の帆走装置のように、風の向きと強さに応じて空中翼の傾動姿勢と水中翼の前傾姿勢とを操船者がバランスをとりながら操作を行わなくても、空中翼140と水中翼34,35の連動に機械的な相関性と適当な調整とを加えることが可能となり、連続的に高い揚力を発生させ、且つ、船体10の左右への傾きを抑制することができる。
なお、図2および図3を用いて説明したように、水中翼34,35が前傾姿勢をとる場合には、翼部341,351に対する水流抵抗により当該水中翼34,35が配設されている側を下方に向けて引き下げる力が生じ、これにより船体10の左右への傾きが抑制される。また、翼部341、351は水平面に対して45度の角度でV字型に配設されており、引き下げる力と同時に横方向への力も生じる。この横方向の力は空中翼に生じる船体10を左右へ横滑りさせようとする力に抵抗し船体10の横滑り移動を抑える効果を生む。
また、本実施形態に係る帆走装置1では、連動機構が左側ワイヤー32と右側ワイヤー33とを有するので、空中翼140が右方に傾いた状態では左側ワイヤー32を介して左側水中翼34が前傾姿勢をとるように姿勢変化し、逆に、空中翼140が左方に傾いた状態では右側ワイヤー33を介して右側水中翼35が前傾姿勢をとるように姿勢変化する。このため、帆走装置1では、空中翼140と左右の水中翼34,35のそれぞれとを2本のワイヤー32,33で連結するという簡易な構成で、空中翼140の左右への傾動姿勢と左右の水中翼34,35の姿勢とを調節して連動させることができ、上記特許文献1に開示の帆走装置のように空中翼と水中翼とを直結した構造よりも高い制御性を実現することができる。
また、本実施形態に係る帆走装置1では、水平風向計20,21から取得した水平方向の風向に関する情報SIG1,SIG2に基づいて傾動サーボモータ40を制御する船体コンピュータ25を備えるので、操船者が風の向きを感じとって経験則に基づいて空中翼の傾動姿勢を設定しなくても、船体コンピュータ25によって最大の揚力を連続的に得ることができる空中翼140の傾動姿勢が自動的に設定される。よって、帆走装置1では、船舶を自動で帆走させるような場合に有用である。
また、本実施形態に係る帆走装置1では、船体コンピュータ25が迎角風向計26からの翼弦線140eに対する風向きに関する情報SIG3を取得し、当該取得した情報SIG3に基づいて空中翼140の翼弦方向の制御(迎角制御)も行うので、空中翼140が左右に傾動姿勢をとっている状態に関わらず連続的に強い揚力を得ることができる。
また、本実施形態に係る帆走装置1では、迎角風向計26が風向計本体27に取り付けられた2枚の羽根28,29を有し、2枚の羽根28,29が空中翼140の前縁140aに配置されているので、空中翼140が左右の何れかに傾動姿勢をとっている場合にも2枚の羽根28,29の何れか一方に対して吹く相対的に強い風によって風向計本体27が翼弦線140eに対する風向きを正確に検出することができる。よって、帆走装置1では、強い揚力を得ることができる空中翼140の迎角を正確に設定することができる。
以上のように、本実施形態に係る帆走装置1では、操船者の煩雑な操作を必要とすることなく、高い揚力を発生させ、且つ、船体10の左右への傾きを抑制することができる。
[第2実施形態]
1.帆走装置1の構成
本実施形態に係る帆走装置1の構成について、図9および図10を用いて説明する。なお、以下では、上記第1実施形態に係る帆走装置1との差異点を主に説明する。よって、以下で説明を省略する部分については、上記第1実施形態に係る帆走装置1と同じ構成を採用することとする。
図9に示すように、本実施形態に係る帆走装置1は、水中翼34,35の姿勢変化を実行する水中翼駆動部42,43を備える。左右の水中翼駆動部42,43は、船体コンピュータ25と信号接続されており、船体コンピュータ25からの指令信号SIG10,SIG11に基づいて駆動する。即ち、本実施形態に係る帆走装置1では、空中翼140の傾動姿勢と水中翼34,35の前傾姿勢とを連動させる連動機構として、船体コンピュータ25と左右それぞれの水中翼駆動部42,43とを信号接続する通信経路(図示を省略。)と、水中翼駆動部42,43とにより構成される機構が採用される。
図10に示すように、左側水中翼駆動部42は、左側サーボモータ(左側アクチュエータ)420と、ギアボックス421と、ボールねじ422とを有する。左側サーボモータ420は、デッキ13に固定され、船体コンピュータ25からの指令信号SIG10を受信して駆動する。ギアボックス421は、所定のギア比で左側サーボモータ420の回転を変換し、ボールねじ422を上下動させる(矢印D1,D2)。ボールねじ422は、下端が水中翼34における翼ベース340の後端部340aに連結されている。
水中翼34の翼ベース340は、ボールねじ422の上下動に伴ってブラケット343に対する連結箇所である中間部の回転軸340c廻りに回転可能となっている。そして、水中翼34の翼部341は、ボールねじ422が矢印D2のように上昇された場合に矢印D4で示すように前傾姿勢をとり、船体10の左側に下方に向けた力を生じさせ(矢印D6)、船体10が右方に傾くのが抑制される。
ボールねじ422が矢印D1のように下降された場合には、水中翼34の翼部341が矢印D3で示すように後傾姿勢をとり、船体10の左側に上方に向けた力を生じさせる。
なお、本実施形態においても、左右の水中翼34,35は左右対称で設けられている。そして、図示を省略する右側水中翼駆動部43についても、左側水中翼駆動部42と同じ構成を有する。即ち、右側水中翼駆動部43は、右側サーボモータ(右側アクチュエータ)と、ギアボックスと、ボールねじとを有する。
ここで、図10では、翼ベース340の前端部340bにバネ342を取り付けた構成を示しているが、バネ342については必ずしも必要な構成ではない。
2.船体コンピュータ25が実行する帆走制御
本実施形態に係る帆走装置1において、船体コンピュータ25が実行する帆走制御について、図11を用いて説明する。なお、船体コンピュータ25が実行する航行制御の内、帆走制御を除く部分については、上記第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
図11に示すように、帆走制御の実行において、船体コンピュータ25は、水平風向計20、21からの信号SIG1、2に基づいて、進行方位に対して正面から風が吹いているか否かを判断する(ステップS11)。本実施形態においても、風が正面から吹いていると判断した場合には、空中翼140を左側に傾けるように傾動サーボモータ40に指令信号SIG6を送出する(ステップS12)。空中翼140を左側に傾けた場合には(ステップS12)、それと連動して右側水中翼35が前傾姿勢をとるように、右側水中翼駆動部43に指令信号SIG11を送出する(ステップS41)。これにより、空中翼140が左側に傾動姿勢をとるのと連動して、右側水中翼35の翼部351が前傾姿勢(前縁351bが後縁351aよりも下方となった姿勢)となる。さらに、船体コンピュータ25は、揚力が最大となるように迎角の設定を行う(ステップS16)。迎角に設定方法については、上記第1実施形態と同じである。
なお、上記第1実施形態と同様に、空中翼140を左側に傾けることで風を受ける面積に非対称性が生じるので船体10は風圧により左方向に回頭し、風に対して空中翼140が揚力を発生可能な方向に船首を向けることができ、風上への推進力を得ることができる。同様に、空中翼140を右側に傾けた場合は、船体10は右方向に回頭し揚力を発生可能な方向に船首を向けることもできる。ステップS11でYESとなる進行方位に向かうためには、GPS22、電子コンパス23からの信号SIG4、SIG5を船体コンピュータ25で判断して空中翼140を左側に傾ける信号と右側に傾ける信号SIG6を適当な移動量の毎に交互に送り、ジグザグな経路を描いて進行方向へ向かう。
船体コンピュータ25は、ステップS11においてNOと判断した場合には、次に水平風向計20,21からの信号SIG1,SIG2に基づいて、進行方位に対して右側から風が吹いているか否かを判断する(ステップS13)。船体コンピュータ25は、風が右側から吹いていると判断した場合には(ステップS13:YES)、空中翼140を左側に傾けるように傾動サーボモータ40に指令信号SIG6を送出する(ステップS12)とともに、右側水中翼35の翼部351が前傾姿勢(前縁351bが後縁351aよりも下方となった姿勢)となるように右側水中翼駆動部43に指令信号SIG11を送出する(ステップS41)。そして、船体コンピュータ25は、ステップS41の実行に続いて、迎角の設定を行う(ステップS16)。
船体コンピュータ25は、ステップS13においてNOと判断した場合には、次に水平風向計20,21からの信号SIG1,SIG2に基づいて、進行方位に対して左側から風が吹いているか否かを判断する(ステップS14)。船体コンピュータ25は、風が左側から吹いていると判断した場合には(ステップS14:YES)、空中翼140を右側に傾けるように傾動サーボモータ40に指令信号SIG6を送出する(ステップS15)とともに、左側水中翼34の翼部341が前傾姿勢(前縁341bが後縁341aよりも下方となった姿勢)となるように左側水中翼駆動部42に指令信号SIG10を送出する(ステップS42)。そして、船体コンピュータ25は、ステップS42の実行に続いて、上記同様に迎角の設定を行う(ステップS16)。
船体コンピュータ25は、ステップS14にいてNOをと判断した場合には、空中翼140を左右に傾けることなく水平にした上で(ステップS17)、迎角を負の角度にするよう翼弦サーボモータ36に指令信号SIG7を送出する(ステップS18)。これにより、追風帆走に適した横帆状態を作り、進行方位に対して後方から吹く風で大きな推進力を得て帆走することができる。さらに、船体コンピュータ25は、ステップS18に実行とともに、左右の水中翼34,35が水平(前縁341b,351bが後縁341a,351aと平行な姿勢)または後傾姿勢(前縁341b,351bが後縁341a,351aよりも上方となる姿勢)となるように左右の水中翼駆動部42,43に対して指令信号SIG10,SIG11を送出する(ステップS43)。左右の水中翼34,35を水平または後傾姿勢となることによって、空中翼140に後方から風を受けて帆走する場合においても船体10の前方への転倒を抑制することができる。
3.効果
本実施形態に係る帆走装置1では、空中翼140の傾動姿勢に応じて左右の水中翼34,35が図2および図3に示すような前傾姿勢をとるように、空中翼140と水中翼34,35とを連動させる連動機構を備えているので、風の向きに応じて空中翼140の傾動姿勢が規定されれば、これに連動して左右の水中翼34,35の少なくとも一方が前傾姿勢をとる。よって、帆走装置1では、上記特許文献1に開示の帆走装置のように、風の向きと強さに応じて空中翼の傾動姿勢と水中翼の前傾姿勢とを操船者がバランスをとりながら操作を行わなくても、空中翼140と水中翼34,35との連動を相関的に制御することで空中翼140で得られる揚力を安定して維持することができ、且つ、船体10の左右への傾きを抑制することができる。
なお、図2および図3を用いて説明したように、水中翼34,35が前傾姿勢をとる場合には、翼部341,351に対する水流抵抗により当該水中翼34,35が配設されている側を下方に向けて引き下げる力が生じ、これにより船体10の左右への傾きが抑制される。また、翼部341、351は水平面に対して45度の角度でV字型に配設されており、引き下げる力と同時に横方向への力も生じる。この横方向の力は空中翼に生じる船体10を左右へ横滑りさせようとする力に抵抗して、船体10の横滑り移動を抑える効果を生む。
また、本実施形態に係る帆走装置1では、左側水中翼34における翼部341の姿勢を変化させる左側サーボモータ(左側アクチュエータ)420と、右側水中翼35における翼部351の姿勢を変化させる右側サーボモータ(右側アクチュエータ)とを連動機構が有するので、例えば、大型船などにおいて、空中翼140が配された箇所と水中翼34,35が配された箇所とが離れているような場合でも、空中翼140の傾動姿勢に連動させて水中翼34,35における翼部341,351の姿勢を変化させることができる。また、左側水中翼34の翼部341を左側サーボモータ420を含む左側水中翼駆動部42で姿勢変化させ、右側水中翼35の翼部351を右側サーボモータを含む右側水中翼駆動部43で姿勢変化させるので、図11のステップS43のように、左右の水中翼34,35の翼部341,351をともに水平または後傾姿勢とすることも可能であって、空中翼140に後方から風を受けて帆走する場合に船体10が前方に転倒するのを抑制することも可能である。
また、本実施形態に係る帆走装置1でも、水平風向計20,21から取得した水平方向の風向に関する情報SIG1,SIG2に基づいて傾動サーボモータ40を制御する船体コンピュータ25を備えるので、操船者が風の向きを感じとって経験則に基づいて空中翼の傾動姿勢を設定しなくても、船体コンピュータ25によって最大の揚力を得ることができる空中翼140の傾動姿勢が自動的に設定される。よって、帆走装置1では、船舶を自動で帆走させるような場合に有用である。
また、本実施形態に係る帆走装置1でも、船体コンピュータ25が迎角風向計26からの翼弦線140eに対する風向きに関する情報SIG3を取得し、当該取得した情報SIG3に基づいて空中翼140の翼弦方向の制御(迎角制御)も行うので、強い揚力を連続して得ることができる空中翼140の姿勢(左右への傾動姿勢)を自動で設定することができる。
また、本実施形態に係る帆走装置1でも、迎角風向計26が風向計本体27に取り付けられた2枚の羽根28,29を有し、2枚の羽根28,29が空中翼140の前縁140aに配置されているので、空中翼140が左右の何れかに傾動姿勢をとっている場合にも2枚の羽根28,29の何れか一方に対して吹く相対的に強い風によって風向計本体27が翼弦線140eに対する風向きを正確に検出することができる。よって、帆走装置1では、強い揚力を得ることができる空中翼140の迎角を正確に設定することができる。
以上のように、本実施形態に係る帆走装置1でも、操船者の煩雑な操作を必要とすることなく、高い揚力を発生させ、且つ、船体10の左右への傾きを抑制することができる。
[変形例]
上記第1実施形態では、ワイヤー32,33を含む連動機構を採用し、上記第2実施形態では、水中翼駆動部42,43および通信経路を含む連動機構を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ピボットジョイントとロッドとの組み合わせで構成された連動機構を採用することも可能である。
また、本発明では、水中翼34,35の翼部341,351を姿勢変化させる機構として、サーボモータの他にも空圧アクチュエータや油圧アクチュエータなどを採用することも可能である。さらに、リニアサーボモータ等のリニアアクチュエータを採用することも可能である。
なお、図10では、翼ベース340の前端部340bにバネ343を連結した構造を示したが、本発明では、アクチュエータで水中翼34,35を駆動する場合にバネ342は必須の構成ではない。
上記第1実施形態および上記第2実施形態に係る各帆走装置1では、水平風向計20,21と傾動サーボモータ40と船体コンピュータ25とを備えることとしたが、本発明では、これらは必須の構成ではない。また、上記第1実施形態および上記第2実施形態では、左右に水平風向計20,21を備える構成としたが、本発明では、少なくとも1つあれば上記同様の効果を得ることが可能である。
上記第1実施形態および上記第2実施形態に係る各帆走装置1では、迎角風向計26および翼弦サーボモータ36を備えることとしたが、本発明では、これらは必須の構成ではない。また、迎角風向計26が2つの羽根28,29を有することも必須の構成ではない。
上記第1実施形態および上記第2実施形態に係る各帆走装置1では、船体10の左側に1つの水中翼34を備え、右側に1つの水中翼35を備えることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。船体の左右それぞれに複数の水中翼34,35を備えるとの構成を採用することも可能である。
上記第1実施形態および上記第2実施形態に係る各帆走装置1では、1つの空中翼140を備えることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。1つの船体10に複数の空中翼140を備える構成を採用することも可能である。
上記第1実施形態および上記第2実施形態に係る各帆走装置1では、水中翼34,35が常時船底から水中に没した構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、推進装置19により航行する際には水中翼34,35が船底内に収容される構成を採用することも可能である。これにより、推進装置19での航行時における水流抵抗の軽減を図ることができる。
上記第1実施形態および上記第2実施形態に係る各帆走装置1では、水中翼34,35における翼ベース340,350の前端部340b,350bにバネ342を連結することとしたが、翼ベースの後端部340aにバネ342を連結し、連動機構を翼ベース340,350の前端部340b,350bに取り付けることも可能である。
上記第1実施形態および上記第2実施形態に係る各帆走装置1では、トリマラン構造の船体10に適用する例を示したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、単胴船や双胴船などに適用することも可能である。
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、特に言及しなかったが、船体10が帆走している状態において、水流により発電可能な発電装置を設けることも可能である。このような発電装置としては、例えば、特開2019-108046号公報に記載された装置を採用することができる。
1 帆走装置
10 船体
14 空中翼ユニット
20,21 水平風向計
25 船体コンピュータ(制御部)
26 迎角風向計
28,29 羽根
31 軸支部
32 左側ワイヤー
33 右側ワイヤー
36 翼弦サーボモータ(翼弦アクチュエータ)
40 傾動サーボモータ(傾動アクチュエータ)
42 左側水中翼駆動部
43 右側水中翼駆動部
140 空中翼
140e 翼弦線
341,351 翼部
420 左側サーボモータ(左側アクチュエータ)

Claims (6)

  1. 翼型の断面を有する空中翼と、
    船体に対して前記空中翼を左右に傾動可能に軸支する軸支部と、
    前記船体の左右それぞれに設けられ、前後に姿勢変化が可能な翼部を有する水中翼と、
    前記空中翼における傾動姿勢に応じて、前記左右それぞれの前記水中翼の姿勢を変化させる連動機構と、
    を備え、
    前記連動機構は、
    前記空中翼が右側に傾動した姿勢をとる場合に、少なくとも左側の前記水中翼の翼部は、当該翼部の前縁が後縁よりも下方に位置する前傾姿勢をとり、
    前記空中翼が左側に傾動した姿勢をとる場合に、少なくとも右側の前記水中翼の翼部は、当該翼部の前縁が後縁よりも下方に位置する前傾姿勢をとる、
    ように、前記空中翼の傾動姿勢に応じて左右の前記水中翼における前記翼部の姿勢を変える、
    帆走装置。
  2. 請求項1に記載の帆走装置において、
    前記連動機構は、
    前記空中翼と前記左側の水中翼とを連結し、前記空中翼が右側に傾動した場合に当該傾動に連動して前記左側の水中翼の翼部を前記前傾姿勢とする左側ワイヤーと、
    前記空中翼と前記右側の水中翼とを連結し、前記空中翼が左側に傾動した場合に当該傾動に連動して前記右側の水中翼の翼部を前記前傾姿勢とする右側ワイヤーと、
    を有する、
    帆走装置。
  3. 請求項1に記載の帆走装置において、
    前記連動機構は、
    前記空中翼の傾動に連動して駆動するように設けられ、前記空中翼が右側に傾動した場合に前記左側の水中翼の翼部を前記前傾姿勢とする左側アクチュエータと、
    前記空中翼の傾動に連動して駆動するように設けられ、前記空中翼が左側に傾動した場合に前記右側の水中翼の翼部を前記前傾姿勢とする右側アクチュエータと、
    を有する、
    帆走装置。
  4. 請求項1から請求項3の何れかに記載の帆走装置において、
    前記船体の左右方向から吹く風の風向きを検出する水平風向計と、
    前記空中翼を左右に傾動させる傾動アクチュエータと、
    前記水平風向計からの風向きに関する情報を取得し、取得した風向きに応じて前記傾動アクチュエータを制御する制御部と、
    をさらに備える、
    帆走装置。
  5. 請求項4に記載の帆走装置において、
    前記空中翼の翼弦線に対する風向きを検出する迎角風向計と、
    前記空中翼の翼弦方向を変化させる翼弦アクチュエータと、
    をさらに備え、
    前記制御部は、前記迎角風向計からの風向きに関する情報を取得し、取得した情報に応じて前記翼弦アクチュエータを制御する、
    帆走装置。
  6. 請求項5に記載の帆走装置において、
    前記迎角風向計は、
    風向計本体と、
    前記風向計本体に対して前記空中翼の翼長方向の左右それぞれに取り付けられるとともに、前記空中翼の前縁に配置され、且つ、前記翼長方向に沿った軸廻りに回動可能に構成されて、前記前縁に向けて吹く風の風向きに応じて回動する羽根と、
    を有し、
    前記風向計本体は、前記羽根の回転角に応じて前記翼弦線に対する風向きを検出する、
    帆走装置。
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