JP2023162618A - 芳香族ポリエーテルケトン成形体、及びその製造方法 - Google Patents

芳香族ポリエーテルケトン成形体、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】芳香族ポリエーテルケトン成形体の更なる性能の向上を実現可能な技術を提供する。【解決手段】芳香族ポリエーテルケトン成形体は、本体部と、上記本体部を被覆する表層部と、を具備する。上記本体部及び上記表層部のいずれでも、赤外分光光度計による測定によって、波数1295~1340cm-1の範囲に表れるピークAと、波数1265~1295cm-1の範囲に表れるピークBと、を含む赤外吸収スペクトルが得られる。上記ピークAの強度A'の上記ピークBの強度B'に対する比率A'/B'が上記表層部において上記本体部よりも高い。【選択図】図2

Description

本発明は、各種部品に利用可能な芳香族ポリエーテルケトン成形体、及びその製造方法に関する。
産業機械分野では、軽量化の観点などから金属部品から樹脂成形体への代替が求められている。このような樹脂成形体の製造には、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に代表される、特に優れた耐熱性及び機械的強度を有するスーパーエンジニアリングプラスチックが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
特開2011-111091号公報
樹脂成形体では、タクトタイムの短縮のために成形後の金型の急冷が必要となるが、金型の急冷によって結晶化の進行が妨げられやすい表面近傍の強度の低下が生じやすくなる。樹脂成形体の表面近傍の結晶化を充分に進行させるためには、樹脂成形体に対して更にアニール処理などの熱処理を施すことができる。
しかしながら、樹脂成形体に熱処理を加えることによって、タクトタイムが長くなることに加え、多大な電力が必要となるため、樹脂成形体の製造コストが増大する。また、熱処理時の樹脂成形体には、全体にわたる収縮による大きい寸法変化が生じる。このため、熱処理による寸法変化を加味した金型等の設計が必要となる。
以上のような事情に鑑み、本発明は、芳香族ポリエーテルケトン成形体の更なる性能の向上を実現可能な技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る芳香族ポリエーテルケトン成形体は、本体部と、上記本体部を被覆する表層部と、を具備する。
上記本体部及び上記表層部のいずれでも、赤外分光光度計による測定によって、波数1295~1340cm-1の範囲に表れるピークAと、波数1265~1295cm-1の範囲に表れるピークBと、を含む赤外吸収スペクトルが得られる。
上記ピークAの強度A'の上記ピークBの強度B'に対する比率A'/B'が上記表層部において上記本体部よりも高い。
この芳香族ポリエーテルケトン成形体では、表面を構成する表層部において、表層部の内側の本体部よりも、結晶化度が高められている。これにより、この芳香族ポリエーテルケトン成形体では、表層部において高い機械的強度が得られるため、摩耗の進行及び欠けの発生を抑制することができる。
この一方で、この芳香族ポリエーテルケトン成形体では、結晶化度が高められていない本体部において衝撃吸収性が維持されるため、表層部に加わる衝撃が本体部に吸収される。これにより、この芳香族ポリエーテルケトン成形体では、表層部に局所的に大きい応力が加わりにくくなるため、損傷の発生を更に抑制することができる。
上記芳香族ポリエーテルケトン成形体は、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルケトンの少なくとも一方で形成されていてもよい。
上記芳香族ポリエーテルケトン成形体は、添加剤を含む芳香族ポリエーテルケトンで形成されていてもよい。
上記芳香族ポリエーテルケトン成形体は、摺動部材として構成されていてもよい。
上記芳香族ポリエーテルケトン成形体は、ギヤ部材として構成されていてもよい。
本発明の一形態に係る芳香族ポリエーテルケトン成形体の製造方法は、赤外分光光度計による測定によって、波数1295~1340cm-1の範囲に表れるピークAと、波数1265~1295cm-1の範囲に表れるピークBと、を含む赤外吸収スペクトルが得られる成形体を作製する工程と、上記成形体の表面に電子線を照射する工程と、を含む。
上記電子線を照射する工程では、上記成形体の表層部における上記ピークAの強度A'の上記ピークBの強度B'に対する比率A'/B'を増大させてもよい。
上記電子線を照射する工程では、上記成形体を加熱してもよい。
これらの構成では、電子線の照射によって、芳香族ポリエーテルケトン成形体の表面を構成する表層部のみについて選択的に結晶化度を高めることができる。
以上のように、本発明では、芳香族ポリエーテルケトン成形体の更なる性能の向上を実現可能な技術を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る樹脂成形体の製造方法を示すフローチャートである。 上記樹脂成形体の赤外吸収スペクトルの一例を示す図である。 電子線の照射線量による比率A'/B'の変化を示すグラフである。 上記樹脂成形体をギヤ部材として構成した例を示す平面図である。
[芳香族ポリエーテルケトン成形体の説明]
本発明は、芳香族ポリエーテルケトンで形成された樹脂成形体である芳香族ポリエーテルケトン成形体に関する。芳香族ポリエーテルケトンは、ベンゼン環、エーテル、及びケトンにより構成された樹脂であり、典型的には、優れた耐熱性及び機械的強度を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
なお、本発明の樹脂成形体を形成可能な芳香族ポリエーテルケトンには、PEEK以外にも、例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが含まれる。また、本発明の樹脂の成形体を形成する芳香族ポリエーテルケトンは、複数種類がブレンドされた構成であってもよい。
また、本発明の樹脂成形体は、添加剤を含む芳香族ポリエーテルケトンで形成されていてもよい。樹脂成形体では、添加剤を用いることによって更なる性能の向上を図ることができる。本発明で利用可能な添加剤としては、例えば、繊維状充填剤、非繊維状充填剤、固体潤滑剤などが挙げられる。
繊維状添加剤としては、例えば、炭素繊維、ナノカーボン(カーボンナノチューブやカーボンナノワイヤ)、ガラス繊維などが挙げられる。非繊維状充填剤としては、例えば、グラファイト、マイカ、タルク、アルミナなどが挙げられる。固体潤滑剤としては、例えば、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、テトラフロロエチレン/パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。
本発明では、樹脂成形体を構成する芳香族ポリエーテルケトンの結晶化度をコントロールすることで、樹脂成形体の性能の向上を図る。本発明の一実施形態では、芳香族ポリエーテルケトンの結晶化度を赤外分光光度計による測定によって得られる赤外吸収スペクトルから把握する。
具体的に、赤外吸収スペクトルは、赤外分光光度計によって波数を連続的に変化させながら吸光度を測定することで、波数を横軸とし、吸光度を縦軸とするグラフとして得られる。本実施形態に係る樹脂成形体の吸光度の測定は、少なくとも1265~1340cm-1を含む波数の範囲で行う。
芳香族ポリエーテルケトンの赤外吸収スペクトルには、波数1295~1340cm-1の範囲に表れるピークAと、波数1265~1295cm-1の範囲に表れるピークBと、が含まれる。芳香族ポリエーテルケトンでは、結晶化度が高いほどピークBに対してピークAが相対的に高くなる。
したがって、芳香族ポリエーテルケトンの結晶化度は、ピークAの高さとして得られる強度A'のピークBの高さとして得られる強度B'に対する比率A'/B'によって評価することができる。つまり、芳香族ポリエーテルケトンでは、比率A'/B'が大きいほど結晶化度が高く、比率A'/B'が小さいほど結晶化度が低いことがわかる。
図1は、本実施形態に係る樹脂成形体の製造方法を示すフローチャートである。まず、本実施形態に係る製造方法のステップS01では、原料樹脂を用意する。ステップS01で用意する原料樹脂としては、例えば、芳香族ポリエーテルケトンのペレットや粉末などとして構成された市販品を用いることができる。
次に、ステップS02では、ステップS01で用意した原料樹脂を成形する。原料樹脂の成形には、例えば、射出成形や押出成形などの公知の成形方法を利用可能である。ステップS02では、成形後に原料樹脂の成形体を取り出す前の段階で金型を急冷することで、タクトタイムを短縮することができる。なお、ステップS02では、金型から取り出した原料樹脂の成形体に切削加工や研削加工などの形状を修正するための加工を加えてもよい。
そして、ステップS03では、ステップS02で得られた原料樹脂の成形体の表面全体に対して電子線を照射する。これにより、原料樹脂の成形体では、表面に入射する電子線によって表面近傍を構成する芳香族ポリエーテルケトンにおける非晶性の部分の結晶化が促進され、表面近傍の結晶化度が高められる。
これにより、ステップS03では、電子線の照射によって結晶化度が高められた表層部と、表層部よりも内側に位置し、電子線の照射の影響を受けない本体部と、を有する樹脂成形体が得られる。ステップS03後の樹脂成形体では、表層部に被覆された本体部においてステップS02の直後の結晶化度が維持されている。
図2は、本実施形態に係る樹脂成形体における表層部及び本体部の赤外吸収スペクトルの一例を示している。表層部の赤外吸収スペクトルは、例えば、樹脂成形体の表面の吸光度の測定により得られる。本体部の赤外吸収スペクトルは、例えば、樹脂成形体を切断して本体部を露出させた断面の吸光度の測定により得られる。
図2には、表層部の吸収スペクトルが破線で示され、本体部の吸収スペクトルが実線で示されている。ピークBの強度B'は表層部と本体部とで同等であるのに対し、ピークAの強度A'は表層部において本体部よりも高い。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体では、強度A',Bの比率A'/B'が表層部において本体部よりも大きい。
樹脂成形体では、仮に全体にわたって加わるエネルギの履歴が均一であれば、表層部及び本体部から同等の吸収スペクトルが得られるはずである。この点、本実施形態に係る樹脂成形体では、ピークAのみが表層部において本体部よりも高くなっていることから、表層部のみにおいて結晶化度が高められていることがわかる。
特に、ステップS02の直後の原料樹脂の成形体では、上記のように金型が急冷される際に、金型に隣接する表層部の結晶化が充分に進行せずに非晶性の部分が多く残存することが多い。この点、本実施形態では、ステップS03において表層部の結晶化を充分に進行させ、更には表層部の結晶化度を本体部よりも高めることができる。
本実施形態に係る樹脂成形体では、表層部の結晶化度を高めることで、外部から大きい応力が加わりやすい表面近傍の機械的強度を高めることができる。これにより、本実施形態に係る樹脂成形体では、表層部で構成される表面近傍における摩耗の進行や欠けの発生を抑制することができる。
また、本実施形態に係る樹脂成形体では、電子線の照射の影響を受けない本体部における衝撃吸収性が維持されるため、表層部に加わる衝撃が良好に吸収される。これにより、本実施形態に係る樹脂成形体では、表層部に局所的に大きい応力が加わりにくくなるため、損傷の発生を更に効果的に抑制することができる。
このように、本実施形態に係る樹脂成形体では、電子線を照射することで、本体部の機械的強度を高くすることなく、表層部のみの機械的強度を高めることができる。これにより、本実施形態に係る樹脂成形体では、表層部と本体部との相乗作用による損傷の発生の抑制効果が得られる。
また、本実施形態に係る樹脂成形体では、電子線の照射によって結晶化度を変化させる部分を表層部のみに限定し、その大部分を占める本体部の結晶化度を変化させない。このため、この樹脂成形体では、成形後における結晶化の進行による収縮量が小さく留まり、成形直後の形状からの寸法変化を小さく抑えることができる。
本実施形態に係る樹脂成形体における表層部の厚みは、用途などに応じて適宜決定可能である。例えば、表層部による上記の作用をより確実に得る観点から、表層部の厚みを50μm以上とすることが好ましい。この一方で、本体部による衝撃吸収性をより有効に得る観点から、表層部の厚みを700μm以下に留めることが好ましい。
樹脂成形体における表層部の厚みは、電子線の照射条件を変化させることによって様々にコントロール可能である。但し、表層部の厚みを大きくするためには大掛かりな設備が必要となるため、大掛かりな設備を用いずに製造コストを低く抑える観点からも、表層部の厚みを700μm以下に留めることが好ましい。
図3は、ステップS03において電子線の照射線量を変化させた際の表層部の比率A'/B'をプロットしたグラフである。なお、図3のいずれのプロットのいずれにおいても、その他の電子線の照射条件、及び原料樹脂の成形体の構成を共通とした。また、図4における照射線量ゼロのプロットは、電子線を照射しない条件を示している。
図3に示すように、電子線の照射線量を50kGy以上とすることで、上記のような結晶化の促進効果が得られやすくなることがわかる。この一方で、電子線の照射線量が大きすぎると、芳香族ポリエーテルケトンの分子鎖の分解が進行してしまう。このため、電子線の照射線量は200kGy以下に留めることが好ましい。
また、ステップS03では、原料樹脂の成形体を加熱しながら電子線を照射することが好ましい。これにより、樹脂成形体では、表層部の機械的強度を向上させる作用が更に得られやすくなり、例えば、破壊特性をより一層向上させることができる。電子線の照射時の原料樹脂の成形体の温度は、例えば、200℃以上とすることが好ましい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、表面に応力が集中しやすい部品への応用に特に適している。このような部品としては、例えば、ギヤ部材やシールリングやスラストワッシャーや軸受けなどの摺動部材が挙げられる。摺動部材として構成された樹脂成形体では、損傷の発生の抑制に加え、摩擦損失の低減も図ることができる。
図4には、本実施形態に係る樹脂成形体の摺動部材としての応用例としてギヤ部材が示されている。ギヤ部材では、外周に沿って連設された複数の歯Tの歯元部に応力が集中しやすいが、本実施形態に係る樹脂成形体として構成することで歯Tの欠けの発生を効果的に抑制することができる。
[実施例及び比較例]
(概略説明)
上記実施形態の実施例及び比較例について説明する。実施例1~8及び比較例1,2では、樹脂成形体のサンプルを作製し、各サンプルについて評価を行った。実施例1~8ではいずれも原料樹脂の成形体に対して電子線を照射したのに対し、比較例1,2ではいずれも原料樹脂の成形体に対して電子線を照射しなかった。
実施例1~3,5~8及び比較例1,2ではいずれも、原料樹脂としてPEEKを用い、具体的にダイセル・エボニック製の「ベスタキープ(登録商標) 4000G」を用いた。また、実施例4では、原料樹脂としてPEKを用い、具体的にビクトレックス製の「VICTREX(登録商標) HT」を用いた。また、実施例5では、原料樹脂に20重量%の炭素繊維と10重量%のPTFEとを添加剤として含ませた。
(実施例1~5)
実施例1~5ではいずれも、室温において電子線を照射した。また、実施例1~3では、相互に異なる照射線量で電子線を照射した。具体的に、実施例1では照射線量を50kGyとし、実施例2では照射線量を100kGyとし、実施例3では照射線量を200kGyとした。また、実施例4では照射線量を100kGyとし、実施例5では照射線量を200kGyとした。
実施例1~5ではいずれも、原料樹脂の成形体に対する電子線の照射には、岩崎電気製の「EC300/30/30mA」を用いた。実施例1~4における電子線の照射条件としてはいずれも、加速電圧を290kVとし、ビーム電流を6.3mAとし、搬送速度を8m/minとした。
実施例1~5に係るサンプルではいずれも、上記で説明した構成以外を共通とした。また、比較例1に係るサンプルとしては、実施例1~3に係るサンプルにおける電子線を照射する前の原料樹脂の成形体を用いた。実施例1~5及び比較例1に係るサンプルの表層部及び本体部について赤外分光光度計で吸光度の測定を行った。吸光度の測定は、JASCO製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT/IR-4600」を用いてGeレンズによるATR法で行った。
吸光度の測定で得られた各赤外吸収スペクトルから比率A'/B'を算出した。表1には、実施例1~5及び比較例1について表層部及び本体部の比率A'/B'が示されている。比較例1では比率A'/B'が表層部と本体部とで等しかったのに対し、実施例1~5ではいずれも比率A'/B'が表層部において本体部よりも高かった。
次に、実施例1~5及び比較例1に係る各サンプルについて、摩耗特性の評価のために、耐摩耗試験を行った。耐摩耗試験には、新東科学製の往復摺動型摩擦摩耗試験機「TRIBOGEAR TYPE-14」を用いた。耐摩耗試験では、各サンプルの形状を10mm×80mm×0.1mmの短冊状とした。
また、各サンプルの耐摩耗試験ではいずれも、円錐形の圧子(サファイヤ製、内抱角90°、先端曲率半径0.05mm)を用い、荷重を150gfとし、摺動速度を300mm/minとし、移動距離を10mmとし、その他の条件も共通とした。各サンプルについて、100μm以上の摩耗の有無によって「OK」及び「NG」を判定した。
表1には、実施例1~5及び比較例1について、往復回数(10往復、20往復、30往復、40往復、50往復)ごとの結果が示されている。表1に示されるように、実施例1~5に係るサンプルではいずれも、50往復まで良好な結果が得られ、40往復以上において「NG」となった比較例1に係るサンプルよりも高い耐摩耗性が得られた。
次に、実施例1~3及び比較例1に係る各サンプルについて、破壊特性の評価のために、引張試験を行った。引張試験には、島津製作所製の「AGX」を用いた。引張試験では、各サンプルを、JIS K7139(2009)に準拠したA12型のダンベル形状とした。各サンプルの引張試験ではいずれも、引張速度を10mm/minとし、その他の条件も共通とした。
その結果として、表1には、実施例1~3について、比較例1に対する破断強度の変化率(%)が示されている。表1に示されるように、実施例1~3のサンプルではいずれも、比較例1に係るサンプルよりも破断強度が高く、表層部の作用によって高い破断強度が得られていることがわかる。
次に、実施例1~3及び比較例1に係る各サンプルについて、破壊特性の評価のために、引裂き試験を行った。引裂き試験には、島津製作所製の「AGX」を用いた。引裂き試験では、各サンプルを10mm×80mm×0.1mmの短冊状(1mmノッチ有り)とした。各サンプルの引裂き試験ではいずれも、引張速度を10mm/minとして、その他の条件も共通とした。
その結果として、表1には、実施例1~3について、比較例1に対する引裂きストロークの変化率(%)が示されている。表1に示されるように、実施例1~3のサンプルではいずれも、比較例に係るサンプルよりも引裂きストロークが大きく、表層部の作用によって大きい引裂きストロークが得られていることがわかる。
次に、実施例1~3及び比較例1に係る各サンプルについて、摺動部材としての摩擦特性の評価のために、摩擦試験を行った。摩擦試験には、新東科学製の往復摺動型摩擦摩耗試験機「TRIBOGEAR TYPE-14」を用いた。摩擦試験では、各サンプルの形状を10mm×80mm×0.1mmの短冊状とした。
また、各サンプルの摩擦試験ではいずれも、球形の圧子(SUS製、φ4mm)を用い、荷重を100gfとし、摺動速度を600mm/minとし、移動距離を20mmとし、その他の条件も共通とした。また、各サンプルにおける圧子を摺動させる摺動面の潤滑のために、グリス(スミテックF931)を用いた。
その結果として、表1には、実施例1~3について、比較例1に対する動摩擦係数の変化率(%)が示されている。表1に示されるように、実施例1~3のサンプルではいずれも、比較例に係るサンプルよりも動摩擦係数が低く、表層部の作用によって摺動部材としての高い摺動特性が得られていることがわかる。
次に、実施例1~3及び比較例1に係る各サンプルについて、ギヤ部材としての疲労特性を評価するために、歯車疲労試験を行った。歯車疲労試験では、各サンプルの形状をギヤ形状とした。各サンプルの歯車疲労試験では、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、相手材と噛み合った状態で回転駆動させた。
また、各サンプルの歯車疲労試験ではいずれも、回転速度を2000rpmとし、トルクを6N・mとし、その他の条件も共通とした。回転駆動時の各サンプルと相手材との間の潤滑状態は、ドライとした。各サンプルについて、20万回回転させた後の歯の欠けの有無によって「OK」及び「NG」を判定した。
表1には、実施例1~3及び比較例1について、歯車疲労試験の結果が示されている。表1に示されるように、実施例1~3に係るサンプルではいずれも歯の欠けが発生しなかったのに対し、比較例1に係るサンプルでは歯の欠けが発生した。これにより、実施例1~3では、ギヤ部材としての高い疲労特性が得られることがわかる。
Figure 2023162618000002
(実施例6~8)
実施例6~8では、電子線の照射時のサンプル温度を実施例2から変化させた。具体的に、実施例6ではサンプル温度を200℃とし、実施例7ではサンプル温度を250℃とし、実施例8ではサンプル温度を300℃とした。また、実施例6~8ではいずれも、実施例2と同様に、電子線の照射線量を100kGyとした。
つまり、実施例6~8では、サンプル温度が室温である実施例2に対し、サンプルを加熱している点で電子線の照射条件が異なる。実施例6~8に係る各サンプルについて、破壊特性の評価のために、引張試験を行った。引張試験の条件は、上記の実施例1~3及び比較例1と同様とした。
その結果として、表2には、実施例2,6~8について、比較例1に対する破断強度の変化率(%)が示されている。表2に示されるように、サンプルを加熱しながら電子線を照射した実施例6~8のサンプルではいずれも、実施例2に係るサンプルよりも高い破断強度が得られていることがわかる。
Figure 2023162618000003
また、比較例1に係るサンプルに300℃での熱処理(アニール処理)を施すことにより比較例2に係るサンプルを作製した。つまり、比較例2に係るサンプルでは、原料樹脂の成形体を300℃まで加熱している点で実施例8に係るサンプルと共通するが、電子線を照射していない点で実施例8に係るサンプルと異なる。
比較例2に係るサンプルについて、実施例8と同様の引張試験を行った。表3には、実施例8の破断強度が比較例2に対する変化率(%)で示されている。表3に示されるように、サンプルを加熱しながら電子線を照射した実施例8に係るサンプルでは、単に加熱しただけの比較例2に係るサンプルよりも高い破断強度が得られていることがわかる。
Figure 2023162618000004
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、本発明では、芳香族ポリエーテルケトン成形体の表層部の結晶化度を高めるための手法が電子線の照射に限定されない。表層部の結晶化度を高めるための他の手法としては、例えば、レーザー照射、UV照射、エキシマ照射、プラズマ照射、コロナ照射、フレーム処理、薬品処理などが挙げられる。

Claims (8)

  1. 本体部と、前記本体部を被覆する表層部と、を具備し、
    前記本体部及び前記表層部のいずれでも、赤外分光光度計による測定によって、波数1295~1340cm-1の範囲に表れるピークAと、波数1265~1295cm-1の範囲に表れるピークBと、を含む赤外吸収スペクトルが得られ、
    前記ピークAの強度A'の前記ピークBの強度B'に対する比率A'/B'が前記表層部において前記本体部よりも高い
    芳香族ポリエーテルケトン成形体。
  2. 請求項1に記載の芳香族ポリエーテルケトン成形体であって、
    ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルケトンの少なくとも一方で形成されている
    芳香族ポリエーテルケトン成形体。
  3. 請求項1に記載の芳香族ポリエーテルケトン成形体であって、
    添加剤を含む芳香族ポリエーテルケトンで形成されている
    芳香族ポリエーテルケトン成形体。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の芳香族ポリエーテルケトン成形体であって、
    摺動部材として構成される
    芳香族ポリエーテルケトン成形体。
  5. 請求項4に記載の芳香族ポリエーテルケトン成形体であって、
    ギヤ部材として構成される
    芳香族ポリエーテルケトン成形体。
  6. 赤外分光光度計による測定によって、波数1295~1340cm-1の範囲に表れるピークAと、波数1265~1295cm-1の範囲に表れるピークBと、を含む赤外吸収スペクトルが得られる成形体を作製する工程と、
    前記成形体の表面に電子線を照射する工程と、
    を含む芳香族ポリエーテルケトン成形体の製造方法。
  7. 請求項6に記載の芳香族ポリエーテルケトン成形体の製造方法であって、
    前記電子線を照射する工程では、前記成形体の表層部における前記ピークAの強度A'の前記ピークBの強度B'に対する比率A'/B'を増大させる
    芳香族ポリエーテルケトン成形体の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の芳香族ポリエーテルケトン成形体の製造方法であって、
    前記電子線を照射する工程では、前記成形体を加熱する
    芳香族ポリエーテルケトン成形体の製造方法。
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