JP2023155675A - クリープ防止機能を備えた転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】クリープの抑制部材を備えた転がり軸受を、ハウジングへ容易に挿入できるようにするとともに、厳密な寸法管理を要することなく、クリープ防止の信頼性を確保できるようにする。【解決手段】外輪1と内輪2の間に転動体3が配置され、はめあい面の円周上の溝4に、クリープの抑制部材を備えた転がり軸受において、クリープの抑制部材としての弾性体5は、はめあい面である外輪1の外径面1aからの突出部5aとヌスミ部5bの両方を有するようにインサート成形して、溝4に固着する。転がり軸受10をハウジングに挿入する際、弾性体5の突出部5aの撓みがヌスミ部5bで弾力的に吸収され、弾性体5が溝4から外れたり、剪断作用で切れたりする現象が防止される。【選択図】図1
Description
この発明は、はめあい面の摩耗による不具合が生じないようにクリープを防止する機能を備えた転がり軸受に関するものである。
通常、内輪が回転する転がり軸受の場合、転がり軸受の外輪とハウジングの内径は、正すきま(すきま嵌め)で組み付けられる。その状態で回転荷重が外輪に作用すると、はめあい面に相対回転(クリープ)が発生し、これに伴い、はめあい面が摩耗して、芯ずれ、摩耗粉、振動等の不具合が発生する場合がある。
このため、はめあい面に弾性体を設け、弾性体がハウジングの内径面に圧接した状態とし、弾性体とハウジングの内径面との間の摩擦により、クリープを防止しようとする対策を講じた転がり軸受が提供されている。
例えば、図6に示すように、外輪51と内輪52の間に転動体53が配置された転がり軸受60において、従来の一般的なクリープ防止対策は、外輪51に形成された円周上の溝54にOリングからなる弾性体55を嵌め込むだけのものである。
ところが、このような転がり軸受60では、図7に示すように、ハウジング70に挿入する際、弾性体55がハウジング70と外輪51の外径面との間に挟まって、溝54から外れたり、切れたりする恐れがある。また、弾性体55は、変形させながら溝54に装着されるため、弾性体55の外径寸法d2(図6参照)が安定しないという問題がある。
また、図8に示すように、転がり軸受60として、外輪51に設けられた円周上の溝54に樹脂56をインサート成形し、外輪51と樹脂56とを一体化したものも考えられているが、このように樹脂56を成形した構造では、樹脂56の弾性率が小さいため、樹脂56の外径寸法d3の精度を厳しく管理する必要があり、製造工程や検査工程における負担が大きくなるという問題がある。
なお、特許文献1には、外輪に設けられた円周上の溝に、断面形状が楔状の弾性体を嵌め込んだ転がり軸受が提案されており、この楔状とは、実施例によるとY字状又はV字状を意味している。ところが、このような断面形状の弾性体では、やはり外径寸法が安定せず、また、インサート成形で外輪と一体化することもできない。
また、特許文献2には、外輪に設けられた偏心溝に、欠円環状でその一部に外方への突出部を有する弾性体を嵌め込んだ転がり軸受が記載されているが、この弾性体は完全な円環状ではなく、インサート成形で外輪と一体化することもできない。
また、特許文献3,4には、外輪の外径面及び両側の幅面を樹脂製の絶縁被覆で覆い、その絶縁被覆の外径面に円周方向に延びる突部を設けた転がり軸受が記載されているが、この構造は、電食が問題となる箇所に使用される転がり軸受に適用されるものであり、一般的なものではない。
上記のように、従来のOリング等の弾性体を溝に嵌め込むタイプの転がり軸受では、ハウジングへ挿入する際、弾性体が溝から外れたり、切れたりすることがある。また、樹脂を溝にインサート成形するタイプの転がり軸受では、樹脂の弾性が小さいため、転がり軸受をハウジングへ挿入する際、樹脂が削れる可能性がある。このように、いずれのタイプの転がり軸受もハウジングへ挿入する際には、注意が必要である。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、クリープの抑制部材を備えた転がり軸受を、ハウジングへ容易に挿入できるようにするとともに、厳密な寸法管理を要することなく、クリープ防止の信頼性を確保できるようにすることである。
上記の課題を解決するため、この発明は、外輪と内輪の間に転動体が配置され、はめあい面の円周上の溝に、クリープの抑制部材を備えた転がり軸受において、
前記クリープの抑制部材としての弾性体は、前記はめあい面である外輪の外径面又は内輪の内径面からの突出部とヌスミ部の両方を有するように、前記溝に固着されているものとしたのである。
前記クリープの抑制部材としての弾性体は、前記はめあい面である外輪の外径面又は内輪の内径面からの突出部とヌスミ部の両方を有するように、前記溝に固着されているものとしたのである。
これにより、転がり軸受を嵌合対象物であるハウジング等に挿入する際、弾性体の突出部が大きな弾性限界内で柔軟に撓んで、その撓みがヌスミ部で吸収されるので、弾性体が溝から外れたり、剪断作用で切れたりする現象が防止される。
また、外輪が回転する転がり軸受の場合に、内輪の内径面をはめあい面として固定側の軸に挿入する過程においても、内輪の内径面の溝に固着した弾性体が溝から外れたり、剪断作用で切れたりする現象が防止される。
前記弾性体は、インサート成形することにより前記溝に固着すれば、はめあい面の溝にしっかりと固着することができ、突出部を自由な形状として、締め代やはめあい面圧の最適化を図ることができる。
或いは、前記弾性体は、前記溝に接着剤により加硫接着しても、はめあい面の溝にしっかりと固着することができ、突出部を自由な形状として、締め代やはめあい面圧の最適化を図ることができる。
また、前記弾性体のヌスミ部により前記はめあい面から凹んだ空間の容積が、前記弾性体の前記はめあい面からの突出部の容積以上の大きさを有するものとすれば、弾性体の変形が全て吸収されるので、弾性体の溝からの逸脱や切れが確実に防止される。
また、前記弾性体の嵌合対象物への接触面は、前記はめあい面に対して傾斜し、その傾斜角が30°以下となるようにすると、転がり軸受をハウジング等に挿入する際、大きな抵抗を受けることなくスムーズに挿入でき、弾性体が溝から外れたり、剪断作用で切れたりする現象が抑制される。
また、前記弾性体の嵌合対象物への接触面は、前記嵌合対象物への挿入方向に対して、方向性を有する形状とすれば、弾性体の寸法が小さくても、弾性体の突出部の撓みがヌスミ部で十分に吸収される。
また、前記弾性体の突出部の嵌合対象物への接触面は、前記転がり軸受の軸方向中央部で最大径となる曲面状とし、その曲率半径を5mm以上とすれば、転がり軸受の軸方向の寸法が小さく、はめあい面に溝と弾性体を1本しか設けられない場合でも、接触面がテーパー状である場合と同様、弾性体の突出部の撓みがヌスミ部で吸収される。
この発明に係る転がり軸受は、ハウジング等に挿入する際、弾性体の突出部の撓みがヌスミ部で弾力的に吸収されるので、弾性体の溝からの逸脱や切れを防止しつつ、ハウジングへ容易に挿入することができる。
また、弾性体の寸法精度を厳密に管理することなく、クリープトルクを容易に管理することができ、クリープ防止の信頼性を確保することができる。
(第1実施形態)
図1に示すクリープ防止機能を備えた転がり軸受10は、外輪1と内輪2の間に転動体3として玉が配置されたものである。外輪1のはめあい面である外輪1の外径面1aの円周上には、溝4が2本並行するように形成され、各溝4には、クリープの抑制部材としての弾性体5がそれぞれ設けられている。
図1に示すクリープ防止機能を備えた転がり軸受10は、外輪1と内輪2の間に転動体3として玉が配置されたものである。外輪1のはめあい面である外輪1の外径面1aの円周上には、溝4が2本並行するように形成され、各溝4には、クリープの抑制部材としての弾性体5がそれぞれ設けられている。
弾性体5は、外径側に転がり軸受10の軸方向の両端寄りの部分から中央部へかけて大径となるように、山形状に対をなす傾斜面が形成され、各傾斜面の小径側の端部が切り欠かれた断面形状とされている。
これにより、弾性体5は、外輪1の外径面1aから外側へ突出した突出部5aと、内側へ凹入したヌスミ部5bの両方を有するものとされている。
転がり軸受10の製造に際して、弾性体5は、インサート成形されて溝4に固着されており、その成形と同時に外輪1と一体化されている。
この弾性体5の材質は、転がり軸受10の使用温度に合わせて、NBR(アクリルニトリル・ブタジエンゴム)、ACR(アクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)のいずれかを基本とするが、その他のゴム材を使用してもよい。
このような転がり軸受10は、図2に示すように、外輪1の外径面1aがはめあい面となるようにハウジング20に挿入する過程において、クリープの抑制部材としての弾性体5の突出部5aが弾性限界内で柔軟に撓んで、その撓みがヌスミ部5bで吸収される。
このため、弾性体5が溝4から外れたり、剪断作用で切れたりする現象が防止され、ハウジング20へ容易に挿入することができる。
また、弾性体5の寸法精度を厳密に管理することなく、クリープトルクを容易に管理することができ、クリープ防止の信頼性を確保することができる。
そして、弾性体5をインサート成形により、成形と同時に溝4に固着したので、溝4にしっかりと固着することができ、突出部5aを自由な形状として、図2に示す締め代tやはめあい面圧の最適化を図ることができる。
なお、弾性体5は、溝4に接着剤により加硫接着しても、溝4にしっかりと固着することができ、インサート成形の場合と同様の効果を得ることができる。
(第2実施形態)
次に、図3に示すクリープ防止機能を備えた転がり軸受10においても、はめあい面である外輪1の外径面1aの円周上に2本並行するように形成された溝4には、クリープの抑制部材としての弾性体5がそれぞれ設けられている。
次に、図3に示すクリープ防止機能を備えた転がり軸受10においても、はめあい面である外輪1の外径面1aの円周上に2本並行するように形成された溝4には、クリープの抑制部材としての弾性体5がそれぞれ設けられている。
この弾性体5のハウジング20への接触面は、外輪1の外径面1aに対して一方向へ傾斜しており、その傾斜角αが30°以下となるように設定されている。
傾斜角αをこのような範囲に設定すると、転がり軸受10をハウジング20に挿入する際、大きな抵抗を受けることなくスムーズに挿入でき、弾性体5が溝4から外れたり、剪断作用で切れたりする現象が抑制される。
また、弾性体5のヌスミ部5bにより外輪1の外径面1aから凹んだ空間の容積Fは、弾性体5の外輪1の外径面1aからの突出部5aの容積E以上の大きさを有する設定とされている。これにより、弾性体5の変形が全て吸収されるので、弾性体5の溝4からの逸脱や切れが確実に防止される。
なお、この実施形態では、弾性体5のハウジング20への接触面が方向性を有する形状となっているため、転がり軸受10のハウジング20への挿入方向が限定される。
しかしながら、このような形状により、転がり軸受10の軸方向における弾性体5の寸法が小さくても、外輪1の外径面1aから凹んだ空間の容積Fを十分に確保できるので、弾性体5の突出部5aの撓みがヌスミ部5bで十分に吸収され、弾性体5の溝4からの逸脱や切れを抑制する効果が確実に得られる。
(第3実施形態)
次に、図4に示すクリープ防止機能を備えた転がり軸受10においては、はめあい面である外輪1の外径面1aの円周上に1本のみ形成された溝4に、クリープの抑制部材としての弾性体5が設けられている。
次に、図4に示すクリープ防止機能を備えた転がり軸受10においては、はめあい面である外輪1の外径面1aの円周上に1本のみ形成された溝4に、クリープの抑制部材としての弾性体5が設けられている。
弾性体5の突出部5aのハウジング(図示省略)への接触面は、転がり軸受10の軸方向中央部で最大径となる曲面状とされ、その曲率半径Rは、5mm以上とされている。
このようにすれば、転がり軸受10の軸方向の寸法が小さく、外輪1の外径面1aに溝4と弾性体5を1本しか設けられない場合でも、接触面がテーパー状である場合と同様、弾性体5の突出部5aの撓みがヌスミ部5bで吸収され、弾性体5が溝4から外れたり、剪断作用で切れたりする現象が抑制される。
(第4実施形態)
なお、上記第1乃至第3実施形態では、外輪1の外輪1の外径面1aがはめあい面となる場合について例示したが、図5に示すように、外輪1が回転する転がり軸受10において、内輪2の内径面2aを固定側の軸30へのはめあい面とする場合には、内輪2の内径面2aの円周上に形成した溝4に弾性体5を設け、弾性体5が内輪2の内径面2aからの突出部5aとヌスミ部5bの両方を有するものとしてもよい。
なお、上記第1乃至第3実施形態では、外輪1の外輪1の外径面1aがはめあい面となる場合について例示したが、図5に示すように、外輪1が回転する転がり軸受10において、内輪2の内径面2aを固定側の軸30へのはめあい面とする場合には、内輪2の内径面2aの円周上に形成した溝4に弾性体5を設け、弾性体5が内輪2の内径面2aからの突出部5aとヌスミ部5bの両方を有するものとしてもよい。
なお、弾性体5は、第1実施形態と同様の断面形状のものを図示しているが、第2実施形態や第3実施形態と同様の断面形状のものとしてもよい。
このような転がり軸受10の内輪2を軸30に挿入する過程においても、弾性体5の突出部5aが弾性限界内で柔軟に撓んで、その撓みがヌスミ部5bで吸収されるので、弾性体5が溝4から外れたり、剪断作用で切れたりする現象が防止される。
(その他)
ところで、上記のような弾性体5を固着する溝4は、転がり軸受10の軸方向の寸法や使用状況に応じて、3本以上並行するように形成してもよい。また、溝4は、円周に沿った直線でなくてもよく、溝4の幅は、円周上で変化してもよい。さらに、溝4の底部の径は、円周上で変化してもよい。
ところで、上記のような弾性体5を固着する溝4は、転がり軸受10の軸方向の寸法や使用状況に応じて、3本以上並行するように形成してもよい。また、溝4は、円周に沿った直線でなくてもよく、溝4の幅は、円周上で変化してもよい。さらに、溝4の底部の径は、円周上で変化してもよい。
また、上記各実施形態では、転がり軸受10として、転動体3が玉である玉軸受を例示したが、ころ軸受においても、クリープの抑制部材としての弾性体5の形状及び固着に関して、同様の構造を適用できる。
1 外輪
1a 外径面
2 内輪
2a 内径面
3 転動体
4 溝
5 弾性体
5a 突出部
5b ヌスミ部
10 転がり軸受
20 ハウジング
30 軸
1a 外径面
2 内輪
2a 内径面
3 転動体
4 溝
5 弾性体
5a 突出部
5b ヌスミ部
10 転がり軸受
20 ハウジング
30 軸
Claims (7)
- 外方部材である外輪と内方部材である内輪の間に転動体が配置され、はめあい面の円周上の溝に、クリープの抑制部材を備えた転がり軸受において、
前記クリープの抑制部材としての弾性体は、前記はめあい面である外輪の外径面又は内輪の内径面からの突出部とヌスミ部の両方を有するように、前記溝に固着されていることを特徴とする転がり軸受。 - 前記弾性体は、インサート成形により前記溝に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
- 前記弾性体は、前記溝に接着剤により加硫接着されていることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
- 前記弾性体のヌスミ部により前記はめあい面から凹んだ空間の容積が、前記弾性体の前記はめあい面からの突出部の容積以上の大きさを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の転がり軸受。
- 前記弾性体の嵌合対象物への接触面は、前記はめあい面に対して傾斜し、その傾斜角が30°以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の転がり軸受。
- 前記弾性体の嵌合対象物への接触面は、前記嵌合対象物への挿入方向に対して、方向性を有する形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の転がり軸受。
- 前記弾性体の突出部の嵌合対象物への接触面は、前記転がり軸受の軸方向中央部で最大径となる曲面状とされ、その曲率半径が5mm以上となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の転がり軸受。
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