JP2023152866A - Fe-Cr合金、Fe-Cr合金の製造方法、Fe-Cr合金の中間品およびFe-Cr合金の中間品の製造方法 - Google Patents

Fe-Cr合金、Fe-Cr合金の製造方法、Fe-Cr合金の中間品およびFe-Cr合金の中間品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性を損なうことなく、腐食環境下であっても優れた耐食性を発揮できるFe-Cr合金を提供する。【解決手段】第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金を採用する。【選択図】図1

Description

本発明は、Fe-Cr合金、Fe-Cr合金の製造方法、Fe-Cr合金の中間品およびFe-Cr合金の中間品の製造方法に関し、特に、耐食性に優れたFe-Cr合金およびその製造方法に関する。
ステンレス鋼をはじめとするFe-Cr合金は、優れた耐食性を有するため、海洋環境や化学プラント等の腐食環境用の部材として広く適用されている。近年、希少金属の価格が高騰しており、Fe-Cr合金においては、省合金化かつ更なる耐食性の向上が望まれている。
ここで、Fe-Cr合金の耐食性は合金量のみではなく、表面皮膜の影響も受けることが知られており、表面皮膜制御の観点から耐食性の向上を図ったステンレス鋼が種々検討されている。
特許文献1には、金属を150℃以上の高温水中で処理して表面に腐食抑制のための保護皮膜を形成する方法であって、複数の試料を用い、それぞれ処理時間を変えて保護皮膜形成処理を行い、形成された保護皮膜のそれぞれの電気容量を検出し、各試料の電気容量を比較して最低値から再び上昇する時点又はその付近の時点を検知し、その処理時間がそのときの処理液及び処理条件における最適浸漬処理時間として把握し、該条件下における保護皮膜形成処理を終了する金属表面に保護皮膜を形成する方法が記載されている。
特公平5-70715号公報
しかし、特許文献1に記載の形成方法によって得られた保護被膜を有する金属は、原子力プラントにおける配管等における放射性イオンの蓄積を防止するためになされたものであり、たとえば高濃度の塩化物が付着するような腐食性が高い環境下での使用が想定されたものではなく、必ずしも満足な耐食性は確保されていなかった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、Fe-Cr合金として耐食性を損なうことなく、腐食環境下であっても優れた耐食性を発揮できるFe-Cr合金、Fe-Cr合金の製造方法、Fe-Cr合金の中間品およびFe-Cr合金の中間品の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、
表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、
前記酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金。
[2] 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、
表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、
前記Fe-Cr合金の前記表面における硫化物系介在物の数密度が100個/mm以下であり、
前記酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金。
[3] 前記Mott-Schottkyプロットの0V超0.6V以下の範囲の電位領域に現れるピーク状の波形から求められるドナー濃度が5.0×1020/cm未満である、[1]に記載のFe-Cr合金。
[4] 前記Mott-Schottkyプロットの0V超0.6V以下の範囲の電位領域に現れるピーク状の波形から求められるドナー濃度が5.0×1020/cm未満である、[2]に記載のFe-Cr合金。
[5] 前記酸化皮膜の外観をCIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のLが50以上、aが2.0以下、bが12以下である、[1]乃至[4]の何れか一項に記載のFe-Cr合金。
[6] 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有する酸洗後のFe-Cr合金に対して、
前記Fe-Cr合金の表面に少なくとも前記第1成分元素を濃化させる濃化処理と、
前記Fe-Cr合金の表面を酸化する酸化処理と、を順次行う、Fe-Cr合金の製造方法。
[7] 前記濃化処理が、
露点が-60℃超-30℃未満の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理、
温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理、
または、温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理、の1種または2種以上であり、
前記酸化処理が、
大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である、[6]に記載のFe-Cr合金の製造方法。
[8] 前記濃化処理が、
露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理であり、
前記酸化処理が、
大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である、[6]に記載のFe-Cr合金の製造方法。
[9] 前記濃化処理が、
露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理と、
温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理または温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理の1種または2種と、を行う処理であり、
前記酸化処理が、
大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である、[6]に記載のFe-Cr合金の製造方法。
[10] 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、酸洗処理と、少なくとも前記第1成分元素を表面に濃化させる濃化処理とがなされたFe-Cr合金に対して、表面を酸化する酸化処理を行う、Fe-Cr合金の製造方法。
[11] 前記酸化処理が、
大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である、[10]に記載のFe-Cr合金の製造方法。
[12] 前記濃化処理が、
露点が-60℃超-30℃未満の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理、
温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理、
または、温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理、の1種または2種以上である、[10]または[11]に記載のFe-Cr合金の製造方法。
[13] 前記濃化処理が、露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理である、[10]または[11]に記載のFe-Cr合金の製造方法。
[14] 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、
表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、
前記Fe-Cr合金の前記表面における硫化物系介在物の数密度が100個/mm以下であり、
前記酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、0V超0.6V以下の範囲の電位領域に、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金の中間品。
[15] 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有する酸洗後のFe-Cr合金に対して、
前記Fe-Cr合金の表面に少なくとも前記第1成分元素を濃化させる濃化処理として、露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理を行う、[14]に記載のFe-Cr合金の中間品の製造方法。
[16] 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有する酸洗後のFe-Cr合金に対して、
前記Fe-Cr合金の表面に少なくとも前記第1成分元素を濃化させる濃化処理として、
露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理と、
温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理または温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理の1種または2種と、を行う、[14]に記載のFe-Cr合金の中間品の製造方法。
[17] [14]に記載のFe-Cr合金の中間品に対して、
大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上を行う、Fe-Cr合金の製造方法。
本発明によれば、Fe-Cr合金として耐食性を損なうことなく、腐食環境下であっても優れた耐食性を発揮できるFe-Cr合金、Fe-Cr合金の製造方法、Fe-Cr合金の中間品およびFe-Cr合金の中間品の製造方法を提供できる。
Fe-Cr合金の酸化皮膜のMott-Schottkyプロットを示すグラフ。
以下、本実施形態のFe-Cr合金の一実施形態について詳述する。
本実施形態では、後述する表面処理が施されていない状態の母材表面に存在する皮膜を不働態皮膜と言い、表面処理によって不働態皮膜の組成を調整したものを酸化皮膜と言う。
本発明者らは、Fe-Cr合金の耐食性を向上するべく検討した。一般に、不働態皮膜を有するFe-Cr合金の腐食は、Feの酸化反応が進行することによって引き起こされる。Feの酸化反応は、鉄のイオン化(Fe→Fe2+)と、Feのイオン化に伴って生じた電子が不働態皮膜を通じて腐食電流として流れることによって生じる。本発明者らは、Fe-Cr合金において、腐食電流の発生を極力防止することによって、Feの酸化反応を抑制することを検討した。
Fe-Cr合金の不働態皮膜は、一般に、外層側のFeを主体とする酸化物層と、内層側のCrを主体とする酸化物層とから構成されることが知られている。FeとCrは、不働態皮膜において複合酸化物を形成している。FeとCrの複合酸化物は、n型半導体として機能する。一方、不働態皮膜の下地である地鉄は金属であるから、Fe-Cr合金の表層には、金属/n型半導体の接合界面が形成されているといえる。このような金属/n型半導体の接合界面では、金属側からn型半導体である不働態皮膜に電子が流れることが可能であり、腐食電流が発生しやすい状態にある。
そこで、本発明者らは、不働態皮膜を改質することによって、n型半導体とp型半導体とのpn接合が形成された酸化皮膜を得ることを試みた。すなわち、酸化皮膜の外層側にn型半導体の性質を有する酸化物を形成し、内層側にはp型半導体の性質を有する酸化物を形成することで、酸化皮膜中に、n型半導体/p型半導体のpn接合を形成することを試みた。一般に、pn接合において、電子は、p型半導体からn型半導体に向けて流れない性質を持つ。このような酸化皮膜、すなわち、内層側にp型半導体の性質を有する酸化物が配置され、外層側にn型半導体の性質を有する酸化物が配置された酸化皮膜は、内部にpn接合が存在するために、腐食電流が抑制される。このような酸化皮膜を備えたFe-Cr合金は、母材のFeの酸化反応が抑制されて腐食が抑制されることを本発明者らは見出した。
n型半導体の性質を有する酸化物としては、鉄酸化物を主体とする酸化物を例示できる。また、p型半導体の性質を有する酸化物としては、Cr酸化物や、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の酸化物を例示できる。
このような酸化皮膜を形成するために本発明者らが更に検討したところ、酸洗により不働態皮膜が形成されたFe-Cr合金に対して、濃化処理および酸化処理をこの順で行うことで、耐食性に優れたFe-Cr合金が得られることを見出した。濃化処理とは、Fe-Cr合金に含まれるCrを不働態皮膜に濃化させる処理、またはFe-Cr合金に含まれる元素であって、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素を不働態皮膜に濃化させる処理である。また、酸化処理とは、濃化処理後の不働態皮膜を酸化させる処理である。
本実施形態のFe-Cr合金は上記の知見に基づいてなされたものある。
以下、本実施形態に係るFe-Cr合金およびその製造方法について詳述する。
本実施形態に係るFe-Cr合金は、第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、表面に酸化皮膜を備え、酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金である。
<母材>
本実施形態のFe-Cr合金は、Crを5.00~30.00質量%含有し、第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有する。母材としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼あるいはオーステナイト・フェライト2相ステンレス鋼のいずれであってもよい。
本実施形態のFe-Cr合金は、酸化皮膜中に一定量以上のCrを含有させる必要があるため、第1成分元素であるCrの含有量は母材中において5.00質量%以上とする。一方、酸化皮膜中、特に皮膜表層部にCrが濃化すると耐食性に有効なFe量が十分に確保できず上記範囲内の酸化皮膜の形成が困難となる結果、耐食性が劣化するおそれがあるため、母材のCr含有量は30.00質量%以下とする。
また、本実施形態のFe-Cr合金は、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる第2成分元素を含有してもよい。第2成分元素は、具体的には、Si,Ti,V,Mn,Zn,Ge,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Pb,Ag,Sn,Hf,Ta,W,Re,Os,IrおよびPbのうち1種または2種以上である。Fe-Cr合金は、これらの第2成分元素を合計で0~10.0%含有してもよい。母材中に第2成分元素が合計で0~10.0%含有する場合、酸化皮膜中に第2成分元素が含有されるようになり、これにより、酸化皮膜の内層側にp型半導体の性質を持つ酸化物層を形成できるようになる。第2成分元素が合計で10.0%を超えると、耐食性に有効なFe量が十分に確保できず上記範囲内の酸化皮膜の形成が困難となり、耐食性が劣化するおそれがある。また、これらの第2成分元素は、Fe-Cr合金の各種の特性、例えば、引張強度、加工性、耐孔食性等の耐腐食性等を改善できる。
また、本実施形態のFe-Cr合金は、第1成分元素および第2成分元素以外の元素、例えば、C、Mn、Ni、Ti、N等の元素を含んでもよく、また、不純物量レベルのP,S、Oを含んでもよい。
Fe-Cr合金の残部は、Fe及び不純物であってもよい。
Fe-Cr合金の母材の好適な組成は、以下の通りである。
質量%で、Cr:5.00~30.00%、C:0.001~0.100%、Si:0.005~5.0%、Mn:0.001~8.00%、Ni:0.001~40.0%、Mo:0.001~10.0%、Ti:0.001~1.0%、Nb:0.001~1.0%、N:0.001~0.50%であり、残部がFeおよび不純物からなる組成。
上記のとおり、Fe-Cr合金の母材の組織としては、オーステナイト系、フェライト系などのいずれでもよいが、酸化皮膜の成膜性向上のためには母材中の介在物量は低いほうがよい。
<酸化皮膜>
本実施形態に係る酸化皮膜は、上述したように、内層側にp型半導体の性質を有する酸化物が配置され、外層側にn型半導体の性質を有する酸化物が配置された酸化皮膜である。しかしながら、本実施形態の酸化皮膜は、厚みが数ナノメートル程度であるため、酸化皮膜の断面を露出させて顕微鏡観察する等の解析手段によって、内層及び外層の状態を直接把握することが困難である。そこで、本実施形態の酸化皮膜は、Mott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形が観察されるものとする。
図1には、酸洗後の母材に対して各種の処理を行うことによって得られたFe-Cr合金の皮膜のMott-Schottkyプロットを示す。図1には、酸洗ままのA材(比較例)、酸洗後に水素雰囲気中で焼鈍したB材(比較例)、酸洗後に大気中で焼鈍したC材(比較例)、および酸洗後に水素雰囲気中での焼鈍および大気中での焼鈍を行ったD材(本発明例)のMott-Schottkyプロットを示す。
図1に示すように、A材、B材およびC材は、0V超0.6V以下の範囲の電位領域において、1つのピーク状の波形が認められる。一方、D材は、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、1つずつのピーク状の波形が観察される。図1にピーク位置を矢印で示している。なお、図1では、C材のピークが大きいために、図からはみ出ている。
また、Fe-Cr合金の酸化皮膜について深さ方向の元素分布分析を行うと、A材及びB材においては、皮膜中にFe、Cr及び酸素が検出され、FeとCrの複合酸化物が存在することが示唆される。また、C材およびD材は、大気中焼鈍がされたことにより、Feが酸化されてFeの酸化物が多く形成されていることが示唆される。これらFeとCrの複合酸化物や、Feの酸化物は、n型半導体の性質を持つとされている。図1において、0V超0.6V以下の範囲に現れる大きなピーク状の波形は、このn型半導体の性質を有する酸化物に対応するものと推測される。
他方で、D材について皮膜の深さ方向の元素分布分析を行ったところ、他のA材、B材及びC材に比べてD材は、皮膜の母材側の領域に、Crや第2成分元素が多く濃化していることが観察された。これらは、酸化物として存在していると推測されるが、このような酸化物は、p型半導体の性質を持つとされている。図1において、-0.4V以上0V以下の範囲に現れる微小なピーク状の波形は、このn型半導体の性質を有する酸化物に対応するものと推測される。
本実施形態のFe-Cr合金の酸化皮膜は、外層側にn型半導体としての性質を有する酸化物が配置され、内層側にp型半導体としての性質を有する酸化物が配置されたものとなっていると推測されるため、Mott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形が観察されると推測される。よって、本実施形態のFe-Cr合金の酸化皮膜は、内部にpn接合を有する半導体としての性質を備えた皮膜となり、腐食電流を抑制して耐食性を向上させることができるようになる。
Mott-Schottkyプロットの測定方法は以下の通りである。30℃、0.1モル/LのNaSO水溶液を電解液とするインピーダンス測定を行い、その測定結果に基づきMott-Schottkyプロットを作成する。具体的には、測定用の試験片として、本実施形態のFe-Cr合金からなる金属板または線材を適当なサイズに切り出して、酸化皮膜表面を試験面とする。例えば、金属板の場合は、縦10mm、横10mmのサイズに切り出す。また、電解液として、濃度0.1mol/LのNaSO水溶液を用意する。電解液の温度は30℃とする。電解液中の溶存酸素はアルゴンまたは窒素を通気して除いておく。
測定機器として、ポテンショスタットと、周波数特性分析器(FRA)とを用意する。FRAから正弦波をポテンショスタットに入力し,ポテンショスタットは正弦波を直流電圧に重畳させて試験片に印加する構成とする。また、ポテンショスタットは応答信号の電圧と電流の情報をFRAに送るように構成し、FRAにてインピーダンス値を算出するようにする。
そして、上記の試験片を作用極とし、対極を白金電極とし、参照極を銀-塩化銀電極とする電気化学セルを構成する。
参照極基準でポテンショスタットにより電位(E)0.80Vを中心とし、振幅0.01V、測定周波数f=1Hzの条件で電位操作し、1秒後のインピーダンスを測定して、試験片(作用極)と対極との間の容量Cを求める。インピーダンスの虚部ZImからC=1/(2πfZIm)の式により容量Cを計算し、更に1/C(単位:(F・cm-2-2)を計算する。このようにして、0.80Vの電位(E)における1/Cを計算する。
同様の測定を、0.80Vから-1.00Vまで、0.05Vピッチで電位(E)を変化させて行う。このようにして、0.80V、0.75V、…-0.95V、-1.00Vの各電位において、1/Cを求める。
次に、電位(E)を横軸とし、1/Cを縦軸とする座標平面上に、測定データをプロットして、Mott-Schottkyプロットを得る。
そして、Mott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形の有無を確認する。
なお、-0.4V以上0V以下の範囲に現れるピーク状の波形は、0V超0.6V以下の範囲に現れるピーク状の波形に重なって、確認しにくい場合がある。このような場合は、一般的な波形分離処理を行うことによって、ピーク状の波形の存在を確認してもよい。波形分離処理においては、ピーク形状を、ローレンツ形、ガウス形、およびこれらの混合形として近似してもよい。
ところで、Fe-Cr合金には、不純物としてS(硫黄)が含まれる場合があるところ、このS(硫黄)は、第2元素であるMnと化合して硫化物系介在物であるMnSを形成する。MnSが合金表面に存在すると、その箇所において腐食電流が流れやすくなり、MnSが孔食発生の起点になりうる。
そのため、本実施形態のFe-Cr合金は、表面における硫化物系介在物の数密度が100個/mm以下であることが好ましい。表面における硫化物系介在物の数密度が100個/mm以下であれば、合金表面における孔食の起点が少なくなり、表面における錆の発生量が少なくなり、Fe-Cr合金の耐食性が更に向上する。特に、湿潤環境における耐食性が向上する。
硫化物系介在物は、MnSの他に、CaSを挙げることができる。これらの硫化物系介在物の合計が100個/mm以下であればよい。より好ましくは、硫化物系介在物の数密度が80個/mm以下であるとよい。硫化物系介在物の数密度を100個/mm以下にするには、濃化処理において-60℃以下の還元性雰囲気において焼鈍することで、硫化物系介在物を還元させるとよい。
表面における硫化物系介在物の数密度を100個/mm以下にする場合のFe-Cr合金のS含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、0.050%以下でもよく、0.020%以下でもよく、0.015%以下でもよい。
また、本実施形態の酸化皮膜は、Mott-Schottkyプロットの0V超0.6V以下の範囲の電位領域に現れるピーク状の波形から求められるドナー濃度が5.0×1020/cm未満であることが好ましい。酸化皮膜は、主に、Fe系酸化物・水酸化物からなる。本実施形態では、酸化皮膜においてFe系酸化物・水酸化物に由来するドナー濃度を低減させることで、耐食性をより向上させることができる。この効果を発揮させるためには、ドナー濃度を5.0×1020/cm未満とする。より好ましくは4.0×1020/cm以下または3.0×1020/cm以下とする。ドナー濃度の下限は特に限定しないが、例えば0.01×1020/cm以上、0.1×1020/cm以上、1.0×1020/cm以上または1.5×1020/cm以上としてもよい。
ドナー濃度の測定方法は、上記のようにして得たMott-Schottkyプロットにおいて、0V超0.6V以下の範囲に現れるピーク状の波形のうち、ピークトップ位置よりも0V側のプロットの直線部の傾きSを求める。そして、下記(1)式よりドナー濃度NDを求める。本実施形態に係る酸化皮膜のMott-Schottkyプロットには、0V~0.4Vの間に傾きが正になる直線部が存在するので、この直線部の傾きをSとする。直線部の傾きSは、Mott-Schottkyプロットにおいて、0.05Vピッチの2点を結ぶ直線の傾きが最大となる2点を選び、その2点と前後2点を含む合計4点のプロットについて最小二乗法を用いて線形近似した直線の傾きとする。
S=2/(q・ε・ε・ND) …(1)
なお、式(1)において、εは、酸化皮膜の比誘電率であって本実施形態ではε=12とする。εは、真空の比誘電率である。qは、電荷素量であって本実施形態ではq=1とする。
また、本実施形態の酸化被膜は、酸化皮膜の外観をCIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のLが50以上、aが2.0以下、bが12以下であることが好ましい。Lが50以上、aが2.0以下、bが12以下であることにより、酸化被膜による着色がなく、Fe-Cr合金本来の外観を呈することができる。Lは50.0~80.0、aは0.0~3.0、bは0.0~12であってもよい。L、aおよびbは、JIS Z 8781-4:2013に規定されるL表色系におけるL、aおよびbとする。
次に、本実施形態に係るFe-Cr合金の製造方法について説明する。
本実施形態のFe-Cr合金は、基本的には鋼を製造する一般的な工程を適用して製造される。例えば、真空誘導溶解炉などの電気炉で所望の化学組成を有する溶鋼とし、AOD(Argon Oxygen Decarburization)炉やVOD(Vacuum Arc Degassing)炉などで精練する。その後、連続鋳造法または造塊法で鋼片とし、次いで、熱間鍛造や熱間圧延、熱延板の焼鈍(溶体化熱処理)などを施す。薄板を製造する場合(例えば、3mm程度の厚さの鋼板)には、前述の溶体化熱処理後に、冷間圧延を施し、次いで、再度、冷延板焼鈍(溶体化熱処理)を施す。
熱延板の焼鈍または冷延板焼鈍の後に、酸洗を施す。具体的には、水温が30~80℃とされ、かつ、硝酸:20~120g/L及びふっ酸:10~80g/Lを含有する硝ふっ酸溶液(酸洗液)に、焼鈍板を15~120秒間浸漬する。これにより、Fe-Cr合金の焼鈍板表面に不働態皮膜が形成される。なお、酸洗条件はこの条件に限定されるものではない。
また、本発明を適用可能なFe-Cr合金は、焼鈍後に酸洗を施した鋼材であればよく、板状鋼材、線状鋼材、管状鋼材等の制約はない。板状鋼材の場合は、熱延板、熱延焼鈍板、冷延板、冷延焼鈍板のいずれであってもよい。
次に、酸化皮膜の形成方法について説明する。酸化皮膜が上記範囲を満たすFe-Cr合金を製造するためには、前述の酸洗後のFe-Cr合金に対し、以下の濃化処理及び酸化処理を順次行う。
(濃化処理)
濃化処理では、Fe-Cr合金の表面に、少なくとも第1成分元素を濃化させる。より詳細には、酸洗処理によって形成された不働態皮膜に、第1成分元素(Cr)を濃化させる。酸洗処理によって形成された不働態皮膜には、主に、FeとCrよりなる複合酸化物が含まれており、濃化工程では、このような不働態皮膜に対して第1成分元素(Cr)を濃化させる。なお、Fe-Cr合金の表面に第2成分元素が含まれている場合の濃化工程では、Fe-Cr合金の表面に、第1成分元素に加えて、第2成分元素も濃化される。
濃化処理は、具体的には、還元雰囲気焼鈍処理、硝酸電解処理または硝酸浸漬処理の1種または2種以上である。これらの処理の内、いずれか1種のみを行ってもよく、2種以上を行ってもよい。2種以上を行う場合の処理の順番は特に限定されない。2種以上の濃化処理を行う場合は、少なくとも還元雰囲気焼鈍処理を必ず行うようにしてもよい。
還元雰囲気焼鈍処理は、露点が―30℃未満の水素含有雰囲気、真空雰囲気、炭酸ガス雰囲気またはアルゴン雰囲気等の還元雰囲気において焼鈍を行う処理である。水素含有雰囲気の露点は、-60℃超、-30℃未満の範囲にしてもよい。還元雰囲気中で焼鈍を行う理由としては、不働態皮膜の厚みを過剰に成長させないまま、少なくとも第1成分元素(Cr)を濃化させるためである。
還元雰囲気焼鈍処理のその他の条件としては、還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる条件である。
加熱温度が1000℃未満では、Cr等の濃化が進まず、p型半導体としての性質をもつ酸化物が少なくなり、腐食電流を遮断できないおそれがある。加熱温度が1200℃を超えると、Cr等の濃化が過剰に進み、これにより、p型半導体としての性質をもつ酸化物が形成されず、腐食電流を遮断できないおそれがある。より好ましい加熱温度は1050~1150℃、または1070~1120℃とする。
また、加熱炉内の滞留時間は5~30分間とする。滞留時間が5分未満では、Cr等の濃化が進まず、p型半導体としての性質をもつ酸化物が少なくなり、腐食電流を遮断できないおそれがある。滞留時間が30分を超えると、Cr等の濃化が過剰に進み、これにより、p型半導体としての性質をもつ酸化物が形成されず、腐食電流を遮断できないおそれがある。滞留時間は、より好ましくは7~20分間、または8~15分間とする。
還元雰囲気焼鈍処理は、主に、不働態皮膜に、第1成分元素(Cr)及び第2成分元素を濃化させる場合に採用される。
合金表面における硫化物系介在物の個数密度を100個/mm以下にするには、濃化処理において、露点―60℃以下の水素含有雰囲気による還元性雰囲気焼鈍を必須とする。温度および加熱時間については、上記と同様に、1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる条件とすればよい。また、硫化物系介在物の個数密度を100個/mm以下にするために、還元性雰囲気焼鈍とともに、硝酸電解処理または硝酸浸漬処理の1種または2種を行ってもよい。
露点―60℃以下の水素含有雰囲気による還元性雰囲気焼鈍を行うことで、第1成分元素(Cr)及び第2成分元素を不働態皮膜に濃化させながら、合金表面に存在する硫化物系介在物の一部を還元させて消失させることができ、硫化物系介在物の個数密度を減少させることができる。
硝酸電解処理は、温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う。硝酸電解浴は、例えば、濃度20.0~40.0%の硝酸を含む水溶液とする。カソード電流密度は例えば、0.5~5.0A/dmの範囲とする。
硝酸電解処理における硝酸電解浴の温度が35℃未満または電解時間が0.4分未満では、Cr等の濃化が進まず、p型半導体としての性質をもつ酸化物が少なくなり、腐食電流を遮断できないおそれがある。一方、温度80℃超または電解時間1.6分超では、Cr等の濃化が過剰に進み、これにより、p型半導体としての性質をもつ酸化物が形成されず、腐食電流を遮断できないおそれがある。
硝酸電解処理は、主に、不働態皮膜に、少なくとも第1成分元素(Cr)を濃化させる場合に採用される。
硝酸浸漬処理は、温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する。硝酸浴は、例えば、濃度20.0~40.0%の硝酸を含む水溶液とする。
硝酸浸漬処理における硝酸浴の温度が35℃未満または浸漬時間が50分未満では、Cr等の濃化が進まず、p型半導体としての性質をもつ酸化物が少なくなり、腐食電流を遮断できないおそれがある。一方、温度70℃超では、Cr等の濃化が過剰に進み、これにより、p型半導体としての性質をもつ酸化物が形成されず、腐食電流を遮断できないおそれがある。浸漬時間の上限は特に設ける必要はないが、たとえば120.0分以下としてもよい。
硝酸浸漬処理は、主に、不働態皮膜に、少なくとも第1成分元素(Cr)を濃化させる場合に採用される。
濃化処理がなされたFe-Cr合金は、濃化処理前のものと比べて、不働態皮膜中におけるFe酸化物の含有量が減少する一方で、Cr酸化物または第2成分元素の酸化物が増加した皮膜になる。
(酸化処理)
酸化処理は、Fe-Cr合金の表面を酸化する処理であり、より詳細には、濃化処理後のFe-Cr合金を酸化することで、不働態皮膜中のFe酸化物を増加させる。酸化処理は、大気焼鈍処理、オゾン水浸漬処理、中性電解処理の1種または2種以上である。これらの処理の内、いずれか1種のみを行ってもよく、2種以上を行ってもよい。2種以上を行う場合の処理の順番は特に限定されない。
大気焼鈍処理では、大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる。温度が250℃未満または滞留時間が40分未満では、Feの酸化が進まず、これにより内層側でのFeの濃化が不十分になり、p型半導体としての性質をもつ酸化物が少なくなり、腐食電流を遮断できないおそれがある。温度が350℃超または滞留時間が80分超では、Feの酸化が進み過ぎてしまい、内層側でのFeの濃化が過剰に進み、これにより、p型半導体としての性質をもつ酸化物が形成されず、腐食電流を遮断できないおそれがある。大気焼鈍の温度は、300℃以下でもよい。
オゾン水浸漬処理では、水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬する。水温35℃未満、溶存オゾン濃度が0.8mg/L未満または浸漬時間が40分未満では、Feの酸化が進まず、これにより内層側でのFeの濃化が不十分になり、p型半導体としての性質をもつ酸化物が少なくなり、腐食電流を遮断できないおそれがある。水温75℃超、溶存オゾン濃度が1.2mg/L超または浸漬時間が120分超では、Feの酸化が進み過ぎてしまい、内層側でのFeの濃化が過剰に進み、これにより、p型半導体としての性質をもつ酸化物が形成されず、腐食電流を遮断できないおそれがある。
中性電解処理は、水温35~80℃、pH4.5~7.5の中性水溶液中において、0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する。
中性電解処理において、pH4.5~7.5の中性水溶液としては、例えば、硝酸ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、イオン交換水、水道水、工業用水、自然海水などを用いることができる。
中性電解処理において、電位領域を0.8~1.0V vs SHEとした理由は、酸化皮膜の最表面側の領域に、Feの酸化物を多く形成させるためである。しかしながら、電解電位が高すぎると、Feの酸化が進み過ぎてしまい、内層側でのFeの濃化が過剰に進み、これにより、p型半導体としての性質をもつ酸化物が形成されず、腐食電流を遮断できないおそれがある。。一方、電解電位が低すぎると、Feの酸化が進まず、これにより内層側でのFeの濃化が不十分になり、p型半導体としての性質をもつ酸化物が少なくなり、腐食電流を遮断できないおそれがある。そのため、電位領域は0.8~1.0V vs SHEとする。
中性水溶液のpHは4.5~7.5とする。pHが低すぎると酸化皮膜の厚さを十分に確保できない上、皮膜の最表面側の領域のCr量が過剰となって相対的にFe量が低下し、Feの酸化物を十分に増加させることが難しくなり、その結果、耐食性が劣化するおそれがある。従ってpHは4.5以上とする。好ましくは5.0以上である。また、中性水溶液のpHが高すぎても、Fe量が低下して耐食性が劣化するおそれがあるため、pHは7.5以下とする。好ましくは6.5以下である。
中性電解処理において、水温が35℃未満または処理時間が40分未満では、Feの酸化が進まず、これにより内層側でのFeの濃化が不十分になり、p型半導体としての性質をもつ酸化物が少なくなり、腐食電流を遮断できないおそれがある。一方、水温が80℃超または処理時間が120分超では、Feの酸化が進み過ぎてしまい、内層側でのFeの濃化が過剰に進み、これにより、p型半導体としての性質をもつ酸化物が形成されず、腐食電流を遮断できないおそれがある。
本実施形態の製造方法では、濃化処理によって、不働態皮膜中のFeを減少させる一方で、Crおよび第2成分元素の合計割合を増加させる。次いで、酸化処理を行うことにより、母材に含まれるFeを酸化させて皮膜中のFe酸化物が増大させる一方で、濃化処理によって濃化されたCrおよび第2成分元素を酸化しつつ皮膜中に残存させる。Fe酸化物は主に、皮膜の外層側において増加し、一方、Crおよび第2成分元素の酸化物は、皮膜の内層側に残存するようになる。その結果、外層側に形成されたFe酸化物は、n型半導体としての性質を持つようになる。一方、内層側に形成されたCrおよび第2成分元素の酸化物は、各元素の原子価の価数が高いために、p型半導体としての性質を持つようになる。これにより、酸化皮膜の内部には、外層側のn型半導体と母材側のp型半導体とによるpn接合が形成され、腐食電流がpn接合によって遮断される。これにより、腐食の発生が抑制されるようになる。
また、濃化処理において、還元雰囲気焼鈍における雰囲気の露点を制御することで、合金表面の硫化物系介在物の個数密度を減少させ、これにより、孔食の起点が少なくなって腐食の発生がより抑制されるようになる。
なお、本実施形態の製造方法における濃化処理および酸化処理は、単一の事業者または一箇所の事業所においてなされる必要はなく、例えば、ある事業者または事業所において濃化処理がなされたFe-Cr合金を、別の事業者が入手し、入手したFe-Cr合金に対して、先の事業所とは異なる事業所または先の事業所と同じ事業所にて酸化処理を行ってもよい。すなわち、Crを5.00~30.00質量%含有し、第2成分元素を0%以上含有し、酸洗処理と濃化処理とがなされたFe-Cr合金に対して、別の者が表面を酸化する酸化処理を行う形態であってもよい。
この場合、濃化処理としては、還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理、温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理、または温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理の1種または2種とする。還元雰囲気焼鈍処理における還元雰囲気の露点は、-60℃以下でもよく、-60℃超-30℃未満でもよい。
還元雰囲気の露点を-60℃超-30℃未満とする場合は、表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、0V超0.6V以下の範囲の電位領域に、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金の中間品が得られる。
また、還元雰囲気の露点を-60℃以下とする場合は、表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、表面における硫化物系介在物の数密度が100個/mm以下であり、酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、0V超0.6V以下の範囲の電位領域に、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金の中間品が得られる。
次いで、製造された中間品に対して、中間品の製造者とは別の事業者が、先の事業所とは異なる事業所または先の事業所と同じ事業所にて、酸化処理を行う。酸化処理は、大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である。
以上説明した製造方法によって、本実施形態に係るFe-Cr合金を製造することができる。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
表1に示す化学成分を有するステンレス鋼を真空誘導溶解炉にて溶製し、鋳造した。その後、1200℃に均熱し、次いで熱間鍛造した。厚さ6mmまで熱間圧延し、焼鈍・酸洗を施した。その後、厚さ1mmまで冷間圧延し、更に冷延板焼鈍、酸洗を順次施した。なお、冷延板焼鈍後の酸洗では、硝酸:60g/L及びふっ酸:30g/Lを含有する水温60℃の硝ふっ酸溶液(酸洗液)に、冷延焼鈍板を40秒間浸漬した。
酸洗後、得られた冷延鋼板に対し、表2A~表2Cに示す条件で、濃化処理(第一処理)を行い、続いて、表3A~表3Cに示す条件で酸化処理(第二処理)を行った。
ただし、比較例25は、濃化処理を行わず大気焼鈍処理のみ行った。また、比較例26は、濃化処理および酸化処理のどちらとも行わず、湿式#600研磨仕上げとした。
表2A~表2Bに記載したように、発明例1~31および比較例1~27のうち、濃化処理において還元雰囲気焼鈍を行った場合の露点は、-60℃超-30℃未満の範囲とした。
また、表2Cに記載したように、発明例32~41は、濃化処理において還元雰囲気焼鈍を行った場合の露点は-60℃以下の範囲とした。発明例40、41は、第2処理(酸化処理)を行わない中間品とした。
また、表3A~表3B中の「0.1ml/L硫酸ナトリウム水溶液」は、いずれもpH4.5~7.5の中性であった。
濃化処理及び酸化処理後の鋼板表面上の酸化皮膜について、Mott-Schottkyプロットを作成した。Mott-Schottkyプロットの作成手順は以下の通りとした。
測定用の試験片として、濃化処理及び酸化処理後の鋼板を、縦10mm、横100mmのサイズに切り出し、酸化皮膜表面を試験面とした。また、電解液として、濃度0.1mol/LのNaSO水溶液を用意した。電解液の温度は30℃とした。電解液中の溶存酸素はアルゴンまたは窒素を通気して除去した。
測定機器として、ポテンショスタットと、周波数特性分析器(FRA)とを用意し、FRAから正弦波をポテンショスタットに入力し,ポテンショスタットは正弦波を直流電圧に重畳させて試験片に印加する構成とした。また、ポテンショスタットは応答信号の電圧と電流の情報をFRAに送るように構成し、FRAにてインピーダンス値を算出するようにした。
そして、上記の試験片を作用極とし、対極を白金電極とし、参照極を銀-塩化銀電極とする電気化学セルを構成した。
参照極基準でポテンショスタットにより電位(E)0.80Vを中心とし、振幅0.01V、測定周波数f=1Hzの条件で電位操作し、1秒後のインピーダンスを測定して、試験片(作用極)と対極との間の容量Cを求めた。インピーダンスの虚部ZImからC=1/(2πfZIm)の式により容量Cを計算し、更に1/C(単位:(F・cm-2-2)を計算する。このようにして、0.80Vの電位(E)における1/Cを計算した。
同様の測定を、0.80Vから-1.00Vまで、0.05Vピッチで電位(E)を変化させて行った。このようにして、0.80V、0.75V…、-0.95V、-1.00Vの各電位において、1/Cを求めた。
次に、電位を横軸とし、1/Cを縦軸とする座標平面上に、測定データをプロットして、Mott-Schottkyプロットを得た。
そして、Mott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形の有無を確認した。結果を表4に示す。
表4Aおよび表4Bにおいて、ピーク数「1」とあるのは、-0.4V以上0V以下の範囲においてピーク状の波形が観察されず、0V超0.6V以下の範囲においてピーク状の波形が1つ観察されたことを意味する。
ピーク数「2」とあるのは、-0.4V以上0V以下の範囲においてピーク状の波形が1つ観察され、0V超0.6V以下の範囲においてピーク状の波形が1つ観察されたことを意味する。
ピーク数「3」とあるのは、-0.4V以上0V以下の範囲においてピーク状の波形が1つ観察され、0V超0.6V以下の範囲においてピーク状の波形が2つ観察されたことを意味する。
また、Mott-Schottkyプロットのうち、0V超0.6V以下の範囲に現れるピーク状の波形であってピークトップ位置よりも0V側のプロットの直線部の傾きSを求め、上記式(1)より酸化皮膜中のドナー濃度Nを求めた。測定したMott-Schottkyプロットには、いずれも、0V~0.4Vの間に傾きが正になる直線部が存在するので、この直線部の傾きをSとした。直線部の傾きSは、Mott-Schottkyプロットにおいて、0.05Vピッチの2点を結ぶ直線の傾きが最大となる2点を選び、その2点と前後2点を含む合計4点のプロットについて最小二乗法を用いて線形近似した直線の傾きとした。
式(1)において、ε=12とした。εは、真空の比誘電率である。qは、q=1とした。
表4A~表4Cにおいて、ドナー濃度が5.0×1020/cm未満であった場合を「○」と記載し、ドナー濃度が5.0×1020/cm以上であった場合を「×」と記載した。
更に、発明例32~39については、酸化皮膜を形成後の合金表面における硫化物系介在物の個数密度を測定した。具体的には、まず、鋼板表面を観察するために、鏡面仕上げを行った。次いで、観察面において、S(硫黄)を含有する介在物をSEM-EDSで分析することにより、硫化物系介在物を特定した。円相当直径1.0μm以上で、Sが5%以上含まれている介在物を硫化物系介在物とした。100mm以上の観察領域において、硫化物系介在物の個数を計測した。計測した介在物の個数を、観察領域の面積で除することで、硫化物系介在物の個数密度を計測した。結果を表4Cに示す。
また、耐食性の評価は、湿潤環境における耐食性として、自動車規格JASO M 609の複合サイクル試験、すなわち35℃の雰囲気温度で5%NaClの塩水を2時間噴霧する塩水噴霧工程、雰囲気温度60℃、相対湿度20~30%に4時間保持する乾燥工程、雰囲気温度50℃、相対湿度95%以上で2時間保持する湿潤工程を1サイクルとする乾燥―湿潤の繰り返し試験を300サイクル実施した後、JIS G 0595:2004に規定されるステンレス鋼の表面さび発生程度評価方法に準拠して、腐食の外観評点であるRN値(RN:レイティングナンバー)を求めた。RN値が7以上を合格とした。なお、このRN値は1~9の値であり、9が最も腐食が軽微であるが、さび面積率としては約0.01%と、極僅かにさびが発生している評点である。本評価では、さびが全く観察されない、つまりさび面積率が0%のRN値を10として評価した。
更に、酸化被膜の外観を色差計により評価して、CIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のL、a、bを求めた。表4において、Lが50以上、aが2.0以下およびbが12以下を満足する場合を「○」とし、Lが50以上、aが2.0以下およびbが12以下を満足しない場合を「×」とした。
表2A~表4Cから明らかなように、本発明を満たす製造方法によって得られた鋼板(発明例)はいずれも、優れた耐食性を発揮することができた。特に、鋼板表面における硫化物系介在物の個数密度を小さくした発明例32~39は、特に優れた耐食性を発揮した。
なお、発明例32~39において、還元雰囲気焼鈍処理とともに、温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理または温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理の1種または2種を行った場合にも、優れた耐食性を発揮したことを確認した。
Figure 2023152866000002
Figure 2023152866000003
Figure 2023152866000004
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Figure 2023152866000009
Figure 2023152866000010
Figure 2023152866000011

Claims (17)

  1. 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
    第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、
    表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、
    前記酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金。
  2. 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
    第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、
    表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、
    前記Fe-Cr合金の前記表面における硫化物系介在物の数密度が100個/mm以下であり、
    前記酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、-0.4V以上0V以下の範囲の電位領域と、0V超0.6V以下の範囲の電位領域とにおいて、それぞれ、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金。
  3. 前記Mott-Schottkyプロットの0V超0.6V以下の範囲の電位領域に現れるピーク状の波形から求められるドナー濃度が5.0×1020/cm未満である、請求項1に記載のFe-Cr合金。
  4. 前記Mott-Schottkyプロットの0V超0.6V以下の範囲の電位領域に現れるピーク状の波形から求められるドナー濃度が5.0×1020/cm未満である、請求項2に記載のFe-Cr合金。
  5. 前記酸化皮膜の外観をCIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のLが50以上、aが2.0以下、bが12以下である、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のFe-Cr合金。
  6. 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
    第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有する酸洗後のFe-Cr合金に対して、
    前記Fe-Cr合金の表面に少なくとも前記第1成分元素を濃化させる濃化処理と、
    前記Fe-Cr合金の表面を酸化する酸化処理と、を順次行う、Fe-Cr合金の製造方法。
  7. 前記濃化処理が、
    露点が-60℃超-30℃未満の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理、
    温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理、
    または、温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理、の1種または2種以上であり、
    前記酸化処理が、
    大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
    水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
    または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である、請求項6に記載のFe-Cr合金の製造方法。
  8. 前記濃化処理が、露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理であり、
    前記酸化処理が、
    大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
    水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
    または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である、請求項6に記載のFe-Cr合金の製造方法。
  9. 前記濃化処理が、
    露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理と、
    温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理または温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理の1種または2種と、を行う処理であり、
    前記酸化処理が、
    大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
    水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
    または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である、請求項6に記載のFe-Cr合金の製造方法。
  10. 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、酸洗処理と、少なくとも前記第1成分元素を表面に濃化させる濃化処理とがなされたFe-Cr合金に対して、表面を酸化する酸化処理を行う、Fe-Cr合金の製造方法。
  11. 前記酸化処理が、
    大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
    水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
    または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上である、請求項10に記載のFe-Cr合金の製造方法。
  12. 前記濃化処理が、
    露点が-60℃超-30℃未満の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理、
    温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理、
    または、温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理、の1種または2種以上である、請求項10または請求項11に記載のFe-Cr合金の製造方法。
  13. 前記濃化処理が、露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理である、請求項10または請求項11に記載のFe-Cr合金の製造方法。
  14. 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
    第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有し、
    表面に酸化皮膜を備えるFe-Cr合金であって、
    前記Fe-Cr合金の前記表面における硫化物系介在物の数密度が100個/mm以下であり、
    前記酸化皮膜に対するMott-Schottkyプロットにおいて、0V超0.6V以下の範囲の電位領域に、少なくとも1つのピーク状の波形が観察される、Fe-Cr合金の中間品。
  15. 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
    第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有する酸洗後のFe-Cr合金に対して、
    前記Fe-Cr合金の表面に少なくとも前記第1成分元素を濃化させる濃化処理として、露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理を行う、請求項14に記載のFe-Cr合金の中間品の製造方法。
  16. 第1成分元素として、Crを5.00~30.00質量%含有し、
    第2成分元素として、酸化物または水酸化物を形成する際に原子価が4価以上になる元素の1種または2種以上を合計で0~10.0%含有する酸洗後のFe-Cr合金に対して、
    前記Fe-Cr合金の表面に少なくとも前記第1成分元素を濃化させる濃化処理として、
    露点が-60℃以下の還元雰囲気とされた温度1000~1200℃の加熱炉内を5~30分間滞留させる還元雰囲気焼鈍処理と、
    温度35~80℃の硝酸電解浴に0.4~1.6分間のカソード電解を行う硝酸電解処理または温度35~70℃の硝酸浴に50分以上浸漬する硝酸浴浸漬処理の1種または2種と、を行う、請求項14に記載のFe-Cr合金の中間品の製造方法。
  17. 請求項14に記載のFe-Cr合金の中間品に対して、
    大気雰囲気とされた温度250~350℃の加熱炉内を40~80分間滞留させる大気焼鈍処理、
    水温35~75℃で溶存オゾン濃度0.8~1.2mg/Lのオゾン水中に40~120分浸漬するオゾン水浸漬処理、
    または、水温35~80℃でpH4.5~7.5の中性水溶液中において0.8~1.0V vs SHEの電位を40~120分間印加する中性電解処理、の1種または2種以上を行う、Fe-Cr合金の製造方法。
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