JP2023152303A - トレーニング方法および教習具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 多種多様な姿勢の水泳初心者を対象に、水中における呼吸困難などによる溺れるという恐怖心を早期に克服させ、多人数に対して効率よく水泳を指導できる水泳トレーニング方法を提供することを目的とする。【解決手段】 教習者が自ら腹横筋などを収縮させて腹周りを凹ませるステップと、教習者が自ら凹ませた腹周りの骨盤上部から第10肋骨下までを、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具を伸ばしながら巻き締めて覆うステップと、前記教習具の縮む力で前記腹周りの凹ませた状態を維持しながらトレーニングするステップとを備えることを特徴とする。【選択図】図1

Description

この発明は、多種多様な姿勢の水泳初心者を対象に、水中における呼吸困難などによる溺れるという恐怖心を早期に克服させ、多人数に対して効率よく水泳を指導できる水泳トレーニング方法及び教習具を提供することを目的とする。
水難事故防止の目的もあり、小、中、高学校の体育授業で水泳について十分時間をとって、児童、生徒に教えたいが、授業時間不足、水泳指導教師不足や老朽化した学校のプール廃棄など、様々な問題が発生し困窮している。
泳げない人の多くは、短時間で不十分な水泳指導を受けたままで終わり、特に、水中で呼吸困難に陥り溺れるという恐怖心を持った場合には、その恐怖心は一生涯ついてまわり忘れず、水泳に対する嫌悪感、抵抗感となりやすい。
このような背景があるので、水泳を指導する教師の多くは、短時間でいかにして効率よく水泳授業を行うにはどうすればよいかと悩み、ほとんど泳げない人、泳げる人を問わず、限られた時間の授業で、基礎的な水泳力を身につけられる指導方法は無いものかと模索している。
特許文献1には、水泳初心者の場合、腹筋及び背筋の筋力が不足していることから、自らの感覚により浮心位置と重心位置を近づけ水中で水平姿勢を保つ困難を解決するため、泳者の重心位置並びに水中における蹴伸び姿勢の伏し浮き状態にある泳者の浮心位置及び浮力を測定して泳者情報とし、この泳者情報に基づいて、泳者の身体に浮力を与えるバランサーを取り付けることにより、重心位置と浮心位置の差を調節可能とした水泳のトレーニング方法及び泳者情報測定装置が記載されている。
特許文献2には、腰の部分にヒモで固定するヘルパーと呼ばれる浮力材では、クロールに適用すると頭が沈みやすく、息継ぎが困難であり、ひもで身体にくくり付けるためズレや腹部へのくい込みなどがあり、快適でなく好ましい水中姿勢を保てない欠点を解決するため、板状の独立発泡材料からなる浮力材を用い、着用者の浮心を考慮して、上半身用の浮力材よりも下半身用の浮力材の浮力が大きいか同等になるように水着に取り付けたクロール練習用水着が記載されている。
特許文献3には、水泳初級者が陥りやすい問題点である、「水中において浮力と重力により発生する回転力を受け、骨盤3が左右の上前腸骨棘の点を結ぶラインを中心に回転し、骨盤3が後傾して脚腰部が沈んだ姿勢になりやすい。」ことを改善するため、水中での伏臥位姿勢で、骨盤3の左右の上前腸骨棘を結ぶラインを中心にして、骨盤3を前傾させる方向に回転モーメントを作用させる位置に浮力材を配置して、初級者でも骨盤3が前傾したストリームラインを維持しやすくすることについて記載されている。
特許文献4には、余り泳ぐことの出来ない者が水泳練習をしようとして浮き具を使用する場合、浮き具によって両手の自由な運動ができず、両手両腕を自由に動かそうとすれば浮き具の使用ができず、浮き具に頼ろうとすれば手が動かせないといった問題を解決するため、幅広のベルトに浮き具の浮力体であるフロートを身体ウエスト部分の前面と背面に位置するように取り付けて身体のウエスト部分のくびれに捲着する手段を講じたフロート付ベルトについて記載されている。
特許文献5には、高齢者、初心者や身障者のための練習用水泳パットとして、人間の胴体部に対応する緩やかなカーブのU字状に形成した4つの角を丸くした長方形の浮揚パット部の中央部に幅広のゴムバンド部を入れ、浮揚パット部の外側の切れ目にゴムバンド部を交互に繰り返し差し込んで、両端の面ファスナー部で一体化した練習用水泳浮揚パットについて記載されている。
特許文献6には、収納部に収納された膨張部に気体を注入して体積を増加させ、着用者の腹部を前方から後上方に押圧して、前腹部に位置する腹直筋に反発力を働かせ、腹直筋に繋がる腹部のインナーマッスル( 特に、腹横筋、内腹斜筋) に収縮力を働かせて、着用者の腰部のインナーマッスルを鍛錬することができ、着用者の腰痛の予防効果を図ると共に、着用者の腰椎の安定性を向上させ、腰痛を持つ着用者への除痛効果を得るサポーターについて記載されている。
特許文献7には、筋肉をトレーニングするために、水中において所定の加圧力を使用者の四肢の特定部分に付与して使用者の筋肉の血流を止めることなく制限するため、特定部分に巻き付けられるように構成された伸縮性を有する第一帯状部材と、第一帯状部材の一方の端部に接続された第二帯状部材と、第一帯状部材の内部に配置され特定部分の周囲の長さに相当する特定の長さを有するガス袋と、第一帯状部材の他方の端部に接続されたバックルと、第一帯状部材の表面の少なくとも一部に設けられた第一面ファスナーと、第二帯状部材の表面の略全体に設けられた第二面ファスナーを備えた水中トレーニングベルトについて記載されている。
特許文献8には、胸郭周りの筋肉を鍛えるため、矩形であり縦方向の長さが腹部の上部から胸部を覆う伸縮可能なトレーニング用バンドを用意し、このトレーニング用バンドを負荷がかかるよう腹部の上部から胸郭を覆い伸張した状態で胸郭に巻き付けて固定し、腹部の上部から胸郭を覆った前記トレーニング用バンドの負荷に対抗するように呼吸を行うトレーニング方法について記載されている。
特許第5801795号公報 特許5855347号公報 特許第5977184号公報 特開2002-65894号公報 実用新案登録第3231436号公報 特開2013-094336号公報 WO2018-092202号再公表公報 特許第6377874号公報
井福裕俊ほか、「小学生高学年の立位姿勢とその特徴」熊本大学教育学部紀要第66号267-272,2017 吉田直記ほか、「効率的な泳ぎには内蔵の頭側への異動が関与」東北大学大学院医学系研究科東北大学病院2020年12月17日Press Release資料 森山進一郎ほか、「水泳時の腹部引き込みおよび体幹群の随意同時収縮はパフォーマンスに影響するか?」機関番号12604課題番号15K16466科学研究費助成事業研究成果報告書平成30年6月4日
特許文献1乃至特許文献8、並びに非特許文献1乃至非特許文献3のいずれも、泳げない水泳初心者が水中における呼吸困難などによる恐怖心を早期に克服し、効率よく水泳を身につけるために必要な本質な課題について認識し解決しているとは言えない。
特許文献1に記載された水泳トレーニング方法は、バランサーの種類及び取付位置を変える毎に泳者の情報を求め、重心位置と浮心位置が鉛直線上により近づく条件を見出して、この条件に近いバランサーを泳者に取り付け、水泳の練習を繰り返し行えばバランス感覚を覚え、バランサーを取り外した後でも水平姿勢のバランスを保つことができるとし、自転車に乗れない者が補助輪付きの自転車で平衡感覚のバランスを習得して補助輪無しの自転車でも乗れるようになるのと同じと記載している。
しかしながら、これは、陸上でのトレーニングの話であって、水中のトレーニングには適用できない。水中という特殊環境では、水泳初心者の多くが水中で呼吸できない苦しみや水を多量に飲んで苦しむなどして溺れ、恐怖心を抱く。この水中で溺れるという恐怖心を克服するのは容易ではない。呼吸できないことは生命に直結するだけに、自転車乗りのように、陸上で補助輪を外してバランスがとれなくて感じる不安とは比較できないくらい困難であり、簡単には克服できない。
特に、浮力を与えるバランサーをいきなり取り外した場合、呼吸できず水を飲んでしまい溺れるという可能性が極めて大きい。この失敗した場合の苦しみが恐怖心となって水泳初心者の頭の中を渦巻く。恐怖心が頭の中に浮かぶと、身体は硬直して自由に動かせなくなり水泳トレーニングは出来なくなる。
したがって、水泳トレーニングにおいては、いかにしてこの溺れるという恐怖心を克服するかが問題であるが、特許文献1は、このような水中ならではの呼吸困難という課題の存在を認識しておらず、解決手段について全く開示していない。
さらに、非特許文献1に、「近年の子どもの体力低下は著しく、活動的で体力のある子と非活動的で体力のない子への二極化傾向が生じており深刻であり、姿勢の乱れが目につき、姿勢が悪いと身体のバランスが崩れ、心身の不調が現れる、特に、学校現場では、児童生徒に落ち着きがない、授業に集中できない、椅子に長い時間座ることができない、学力や運動部活動で成果が出ないなど悪影響が大きく、解決すべき重要な課題となっている。」と報告されているように、多くの児童、生徒の身体は異常を来している。
具体的には、多くの児童、生徒は、水泳トレーニングの基本となる骨盤姿勢に異常を来している。図13に示すようなケンダルらの方法(2006年)に従い、A理想型、B後弯-前弯型(骨盤前傾)、C平背型(骨盤やや後傾)、D後弯-平坦型(骨盤後傾)E軍人型(骨盤前傾)の5分類の立位姿勢のどの分類に何名が該当するか測定した結果について、「196名中、良い姿勢は理想型と軍人型を合わせて44名(22%)しかおらず、不良姿勢と呼ばれる後弯-前弯型、平背型および後弯-平坦型が152名(78%)を占める」と報告している。異常な姿勢の多数の児童生徒に対し、特許文献1記載の方法で水泳トレーニングすることは、時間的、費用的にとても困難である。
なぜなら、姿勢が悪い児童、生徒の重心位置並びに水中において蹴伸び姿勢の伏し浮き状態にある泳者の浮心位置及び浮力を測定することは容易でない、仮に、測定して得られた泳者情報に基づいて、泳者の身体に浮力を有する取外し可能なバランサーを取り付け、重心位置と浮心位置の差を調節可能にしようとしても、さらに多くの時間を要する。ましてや、バランサーを個別に用意することは到底実現不可能である。
特許文献2に記載されたクロール用水着を着用した場合、「浮心を基点として自然と体が浮き、概ね水平で左右対称の正しい水中姿勢を保ち易くなる。」と効果を記述していながら、その下の行には、「胸や背中に浮力材を配置すると身体が回転( ロール) し易くなり、正しい水中姿勢を保つことが困難となってします。」と効果を否定する記述がされている。これは、浮力材の取り付け位置によって効果が異なり、特許文献1同様、浮心と重心がそれぞれ異なる大勢の児童や生徒一人一人に十分に対応することができないという欠点があることを示している。
ところが、[発明の効果]の欄には、「泳げない7名に対して本発明の水着を着用させてクロールの練習をしたところ、7日目( 週2日×1時間の練習) には5名が25m以上をクロールで泳げるようになった。そのうち2名は浮力材を外した状態で50m以上泳ぐことができた。クロールの習得( 25m完泳) 期間は、一般的にスイミングクラブでは平均約20ヶ月( 週1~2日×約1時間の練習) かかると言われており、それに比べて極めて短期間で習得できることがわかる。」と記述されているだけで、なぜ、2名が浮力材を外した状態で泳げるようになったか全く説明されていないので、効果があるか疑わしく、他の5名は依然として泳げないままである。
さらに、「ある程度向上した時には浮力材1 4 , 1 6 の浮力を下げ、例えば、厚手( t = 1 5 m m ) の浮力材を薄手( t =1 0 m m ) のものに入れ替え、完全に習得できた時点で浮力材14、16を外すように指導することが好ましい。より具体的には、最初は厚さt=15mmの浮力材( 浮力: 上半身用0.41kg×2、下半身用0.45kg×2)を使用し、その後、厚さt=10mmの浮力材( 浮力: 上半身用0.27kg×2、下半身用0.3kg×2)を使用する。最終的には浮力材なしで泳げるようになることが指導の目的であり、浮力材を減らしていくことで段階的に泳げるように導いていく仕組みとなっている。」と記述されているが、このような指導法では、指導する児童や生徒の数に対応させて厚さの異なる浮力材を用意しなければならず、大勢の児童や生徒一人一人の泳力、体形、骨盤前傾、骨盤後傾などに応じて適切に取り外し交換する指導を行うことは、到底実現不可能である。
特許文献3に記載された水着は、浮力材で、水中において直接骨盤に前傾方向への回転モーメントを作用させ、骨盤が前傾したストリームラインを水泳初級者に習得させることができるとしているが、図12に示すように、人の姿勢、背骨や骨盤の傾きは多種多様であり、少なくとも5種類のパターンがあり、もともと骨盤前傾の人の場合、骨盤だけを単純に前傾させると反り腰になって好ましくない。しかも、浮力材に依存した水着なので、この水着を着用しない場合には、水中で沈むという恐怖心に打ち勝つことはできず、身体に無用な力が入って硬直して下半身が沈み、ストリームラインの基本的な動作すら身につけることはできない。
なお、「浮力材は収納部や係止具等を用いて着脱自在形式としてもよい。そうすれば、練習や目的に合わせて浮力の条件を適宜設定できるし、ストリームラインを維持できるように上達しても、浮力材を外して水着をそのまま利用することができる。」と記述されているが、これは水着のことであって水着無しにどのようにして泳げるようになるのかについては一切書かれていない。
特許文献4に開示されているフロート付ベルトは、胸骨下部と骨盤上部とのくびれ部分にフロートを密着して装着するので、身体障害者であって、ビート板や浮き輪を使用するより両手を使える利点はあるが、特許文献1記載のバランサー同様に、このフロートを外し、フロート無しの状態で、どのようにして浮き、呼吸し、泳げるのかついては一切記述がない。
特許文献5には、高齢者、初心者や身障者のための練習用水泳パットとして、人間の胴体部に対応する緩やかなカーブのU字状に形成した4つの角を丸くした長方形の浮揚パットを用いているが、これまた特許文献1乃至特許文献4と同様な問題点を有しており、この浮揚パットを外した場合、水中で恐怖心に打ち勝って、どのようにして浮き、呼吸し、泳げるのかついては一切記述がない。
特許文献6に記載されているサポーターは、着用者の腹筋を鍛錬し、着用者の腰痛の予防効果を得るとあるように、専ら陸上において使用するものであり、水中での使用、水泳特有の呼吸法については何ら言及されていない。しかも、膨張部への気体の注入に伴って着用者の腹部側に膨張部を膨張させる板状の支持部によって膨張部が着用者の腹部に対して前方に膨張することを抑制し、着用者の腹部を効率よく押圧すると記載されていることから明らかなとおり、支持部が胴体の動きを規制するので、水泳のように、水中で身体を自由に動かし、バタフライのようにお腹を凹ませたり、屈曲させ、手足を往復運動させたり、柔軟に姿勢を変える運動には全く適さない。
特許文献7に記載されている水中筋力トレーニング用ベルトは、水中での加圧筋力トレーニングに最適なベルトと称しているが、水中において静止状態で、手や足の特定部分に所定の加圧力を付与して筋肉をトレーニングするに役立っても、水泳には不適当である。水泳は、胴体を屈伸させたり、手足を往復運動させたり、柔軟に姿勢を変える運動なので、固定されていたのでは泳ぐことができない。しかも、水泳特有の溺れないという課題について全く言及されていない。
特許文献8に記載されているトレーニング方法は、姿勢改善効果、体幹トレーニング効果、及び、各種スポーツにおけるパフォーマンス向上効果を奏することが可能としているが、このトレーニングに用いるバンドは、伸縮性を有する素材により形成されていると記載されているだけで、水泳や水中での使用については何ら記載がなく、水中における呼吸困難などによる恐怖心を早期に克服させ、多人数に対して効率よく水泳を身につけさせるものではない。
水泳における呼吸は、図14の(A)、図15の(A)で示すような胸式呼吸と図14の(B)、図15の(B)で示すような腹式呼吸との両方を合わせもつような図14の(C)、図15の(C)に示す水泳独特な呼吸法(以下、水泳式呼吸と称する。)を行う。つまり、水泳においては、吸気時に収縮する筋肉は外肋間筋、吸気補助筋、横隔膜9を働かせるが、呼気時に働く筋肉は内肋間筋と腹筋で、腹筋の働きが大である。
このような普段の呼吸の仕方とは異なる水中ならではの水泳式呼吸を水泳初心者に時間をかけて覚えさせることさえ容易でないのに、この水泳式呼吸とは異なる特許文献8記載のトレーニング方法を教えたのでは、水泳初心者は、一体全体どんな呼吸をすればよいかわからなくなり混乱し、水泳をマスターすることは到底困難である。
以上述べた特許文献1乃至特許文献8並びに非特許文献1乃至非特許文献3のいずれにも 図13に示した5つの姿勢に代表される多種多様な姿勢の水泳初心者である教習者を対象に、水中における呼吸困難などによる溺れるという恐怖心を早期に克服させ、多人数に対して効率よく水泳を身につけさせる水泳トレーニング方法および教習具について開示しているとは言えない。
限られて時間、限られた費用で効率よく水泳を教えるためには、先ず、一番大切なことは、水に対する恐怖心、嫌悪感、抵抗感を少なくし、水に溺れさせないことである。係る課題を解決し溺れさせないためには、十分な浮力がある「教習具は有った方がよい」が、教習具に頼らずに本当に水中で泳げるようになるためには、「教習具は無い方がよい」ということになる。
このように、「教習具は有った方がよい」と「教習具は無い方がよい」という相反する条件下で、水中で呼吸出来なくて溺れるという恐怖心を抱かせず、費用と最小限の時間で泳げるように指導するという矛盾問題を解決する必要がある。この発明は、このような従来の水泳トレーニングの根本的問題を解決する水泳トレーニング方法および教習具を提供することを目的とする。
本発明では、前記目的を達成するため、以下のような解決手段を提供する。
第1の特徴に係る発明は、教習者が自ら腹横筋などを収縮させて腹周りを凹ませるステップと、教習者が自ら凹ませた腹周りの骨盤上部から第10肋骨の下までを、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具を伸ばしながら巻き締め装着するステップと、前記教習具の縮む力で前記腹周りの凹ませた状態を維持しながらトレーニングするステップとを備えることを特徴とする。
第2の特徴に係る発明は、教習具の縮む力で凹ませた教習者の腹周りが、安静状態の腹周りの3%~20%短くなるように締めることを特徴とする。
第3の特徴に係る発明は、教習者の腹周りを引き締める教習具の腹側表面の浮力が、背中側表面の浮力より大きいように形成されることを特徴とする。
第4の特徴に係る発明は、教習具の縮む力で腹周りを凹ませた状態を維持しながら、横隔膜等を収縮させて下部胸郭を大きく拡げて水面上で息を吸うステップと、前記教習具の縮む力で腹周りを凹ませた状態を維持しながら水中で息を吐くステップとを交互に行うことを特徴とする。
第5の特徴に係る発明は、陸上で教習者が自らの意思で腹横筋などを収縮させて腹周りを凹ませ、第10肋骨の下から骨盤の上部にかかる腹周りを、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具で巻き締めるステップと、腹周りを前記教習具で巻き締めた状態で水中に入るステップと、水中で腹周りに水圧が加わる状態にした後に、再度、教習者が自ら腹横筋などを収縮させて腹を凹ませ前記教習具を締め直すステップと、水中で腹周りを前記教習具で巻き締めた状態でトレーニングを行うことを特徴とする。
第6の特徴に係る発明は、腹周りを教習具で締めつけて水中で水平姿勢をとる第1の水平姿勢トレーニングを行うステップと、該第1の水平姿勢トレーニングに続き腹周りの前記教習具による締めつけを緩めて、水中で水平姿勢をとる第2の水平姿勢トレーニングを行うステップとを交互に行うことを特徴とする。
第7の特徴に係る発明は、腹周りを教習具で絞めつけて水中で水平姿勢をとる第1の水平姿勢トレーニングを行うステップと、該第1の水平姿勢トレーニングに続き腹周りから前記教習具を取り外し、水中で前記教習具無しに腹横筋などを締めながら水中で水平姿勢をとる第2の水平姿勢トレーニングを行うステップとを交互に行うことを特徴とする。
第8の特徴に係る発明は、教習者の骨盤上部から第10肋骨の下までの腹周りを巻き締める浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具であって、前記教習具を装着しない前記教習者の安静時の腹周りの長さより、前記教習者の腹周りに前記教習具を装着したときの腹周りの長さが、3%~20%縮まるように引き締めることを可能とする伸縮率の教習具である。
第9の特徴に係る発明は、前記教習具の外観形状が長さ500mm~1000mm、幅80mm~250mm、厚さ2mm~8mmであることを特徴とする。
第10の特徴に係る発明は、腹周りを締めるインナーレイヤーと、インナーレイヤーと連結され、インナーレイヤーとは反対方向から腹周りの部位を締めつけ、インナーレイヤーの外側に設けられた面ファスナーと噛みあい固定されるミドルレイヤーと、ミドルレイヤーと連結され、ミドルレイヤーとは反対方向から腹周りの部位を締めつけ、ミドルレイヤーの外側に設けられた面ファスナーと噛みあい固定されるアウトレイヤーとを備え、前記インナーレイヤー、ミドルレイヤー、アウトレイヤーを重ね合わせそれぞれのレイヤーの収縮する力を協働させて腹周りを締めつけることを特徴とする教習具である。
第11の特徴に係る発明は、インナーレイヤーの先端には、非収縮性の細長のベルトの一端が固定され、このベルトの他端はミドルレイヤーに取り付けられたバックルに通されて面ファスナーによってミドルレイヤーに一端に固定され、ミドルレイヤーの一端側を引っ張るとバックルを支点として、インナーレイヤーを引張り、両レイヤーが協働して腹周りを巻締めることを特徴とする。
第12の特徴に係る発明は、非収縮性の細長のベルトの根本は末広がりに形成され、柔軟性が有る前記インナーレイヤーの先端に固定されていることを特徴とする。
以上のように、本発明に係るトレーニング方法及び教習具によれば、子供、大人を問わず、泳げない水泳初心者である教習者に対し、教習具でドローイン状態を維持させながら、水中で呼吸困難となって溺れるという恐怖心を早期に克服させ、教習者が自分の意思で頭と身体をコントロールして、ドローイン、水泳独特の呼吸方法、ストリームライン泳法を体感して覚えるようにしたので、短期間で効率よく多人数のトレーニングを指導することができる。
本発明に係る教習具を教習者の腹周りに装着した説明図。 教習者の水中での姿勢と重心及び浮心との関係を示す説明図。 教習具を装着しドローインした状態の呼吸説明図。 教習具を装着しドローインしない状態の呼吸説明図。 教習具を装着せずドローインした状態の呼吸説明図。 教習具を装着せずドローインしない状態の呼吸説明図。 教習具を装着しドローインした状態と教習具を装着せずドローインした状態との水面からの位置と、骨盤の傾き、肺、消化器官の形状を比較した説明図。 教習具装着の有無、ドローイン、吸気、呼気の各ステップとトレーニング場所との関係を説明したフローチャート。 教習具の外観斜視図、正面図、背面図。 教習具を装着する手順を説明した説明図。 弾性発泡体の引張り力サイクル試験による荷重計測値と伸び量と締め付け力との関係を示す説明図。 ケンダルらの方法による姿勢分類を示す説明図。 胸式呼吸、腹式呼吸、水泳式呼吸それぞれの吸気状態を示す説明図。 胸式呼吸、腹式呼吸、水泳式呼吸それぞれの呼気状態を示す説明図。
以下、図面を用いて本発明に係るトレーニング方法とそれに用いる教習具について説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
非特許文献3に記載されているように、教習者1にとってはドローインによる効果が期待できない。本出願人は、その理由としては、教習者1の水中での行動および心理を分析し、教習者1が自らドローインを行う動作を十分に認識し自覚して行えるようにした。
本発明は、水泳初心者である教習者1が、自ら意識して、腹横筋7などの側副筋を収縮させて腹周り2を凹ませる(以下、ドローインと称する。)動作は、腹横筋7などの側腹筋が内臓の胃、小腸、大腸などの消化器官9を締め付けるコルセットの働きをすると共に、これらの側腹筋を収縮させることによって、消化器官9を頭側へ移動させて重心も頭側へ移動させることが出来るようにしたものである。さらに、ドローイン動作は、腹を凹ませることにより、横隔膜10は頭側に上がり、この状態で、下部胸郭が左右に広がるような意識を持って肺全体に空気を吸い込むと下部胸郭が左右に広がり、肺8の下側(骨盤側)に空気が貯まり、浮心の位置を足側に移動させることが出来るため、身体の重心と浮心とが近づき水中で水平に浮きやすくなる。
ドローインを維持し続けた状態でする呼吸法は、競泳選手など水中での練習時間が長い泳者でないと身に付けることは難しいとされている。なぜならば、陸上では、ドローイン状態を維持し続けた状態での呼吸は不自然な呼吸である。しかし、水中における運動である水泳において、肺8に空気が多い状態で行う呼吸は、より大きい浮力が得られる為、水中では大変有利に働くので好ましい。
陸上での一般的な呼吸と水中における水泳式呼吸との違いについて説明する。
呼吸は肺8自らの力で膨らんだり縮んだりするのではなく、周りにある筋肉の活動によって行われている。代表的な筋肉が外肋間筋と横隔膜10であり胸式呼吸と腹式呼吸が連動して行われている。
陸上での一般的な呼吸では、空気を吸う時は、外肋間筋が収縮して胸腔が広がり横隔膜10が収縮して骨盤3側に移動して空気を取込む(吸う)。空気を吐く時は、外肋間筋が弛緩して胸腔が狭まり横隔膜10が弛緩して頭側に移動して空気を排出する(吐く)。
これに対し、水中における水泳式呼吸では、ドローインすることにより横隔膜10が頭側に移動した状態で、外肋間筋が収縮して胸腔が広がり、横隔膜10を収縮させず骨盤3側に移動させずに空気を取込み(吸う)。外肋間筋が弛緩して胸腔が狭まり横隔膜10を弛緩させず頭側に移動させずに空気を排出する(吐く)。肺8に空気が多く残り、浮力が大きい呼吸である。
水泳初心者1の中でも幼児や小学生は、知識として胸式呼吸、腹式呼吸の違いを理解できないことが多く、このような場合は、自然体として安静時は胸式呼吸と腹式呼吸との連動であることが多いと考えられる。子供達にドローインを指導する場合は、呼吸法を気にさせると無意識で腹を凹ませてしまい、ドローイン状態が変化しやすい。したがって、子供達の場合は、無意識に自然体としてドローイン状態を再現できるように、繰り返しトレーニングすることを通じて水泳式呼吸を教えることが大切である。これは、子供に限らず大人についても同様なことが言える。
ドローインを繰り返しトレーニングすることにより、横隔膜10は頭側に上がり、骨盤3の底筋群も頭側に持ち上がって骨盤3が安定する。この状態で肺8全体に空気を吸い込むと下部胸郭が左右に広がり、肺8の下側(骨盤3側)に空気が貯まり浮心の位置が足側に少し移動し、さらに教習具6の浮力により浮心と重心が限りなく近づいてくる。
教習者1の臍を中心とした腹周り2の長さについて、スイミング教室の幼児と小学生計10人について実測した結果を表1に示す。
[表1]は、年齢、男女の区別、身長、日常生活における自然体で立ち姿での腹周り2の長さ、ドローインした場合との長さとの違いを示している。
本発明では、水泳初心者にとって、いかにドローインすることが大切であるかを身体で十分に自覚できるように、先ず、水泳初心者自らがドローインして、このドローイン状態の維持を自覚させる。その後、水中で溺れると考える意識の入る余地を無くすため、浮力があり、伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具6を身体に装着させ、第二の腹横筋、第二のコルセットとして身体で感じとらせると共に、教習具6の浮力によって、重心と浮心とを近づけ溺れる心配を無くした。
そのため、水泳初心者が腹横筋7などの側腹筋を収縮させる意識が無くなっても、教習具6の縮む力で腹周り2を引き締め、ドローイン状態を維持すると共に水泳初心者の身体に浮力を与えるので、溺れる心配はなくなり、水中でも慌てずにゆっくり呼吸することが出来、前記の矛盾問題を解決出来る。
本発明のトレーニング方法として使用する教習具としては、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具であれば素材は天然ゴム、合成ゴムなどどのような素材であっても良いが、弾性発泡体としては、クロロプレンゴムに空気を含有させたいわゆるウエットスーツに用いられる素材が望ましい。
本発明に係るトレーニングとして水泳トレーニングを行う場合は、先ず、第1ステップとして、陸上にて、図1に示すように、教習者1である水泳初心者は、自らの意思で腹横筋7などを収縮させて腹周り2を凹ませてドローインする。
次に、第2ステップとして、このドローイン状態を保ちながら、臍を中心とした腹周り2の骨盤3の上部に相当する水着4の上から第10肋骨5の下迄の部分を、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具6を両手で引き延ばしながら、背中背骨付近を中心として腹周り2に巻き付けるようにしっかり締めて身体に装着する。
第3ステップとして、ドローイン状態を保ちながら、教習具6で腹周り2を覆い装着した状態で、様々なトレーニングを行う。
図1における(A)は教習者1の正面から見た模式図、(B)は教習者1の側方から見た模式図、(C)は教習者1を正面から見た写真、(D)は教習者1が、腹周りを凹ませてドローインした状態で、教習具6を腹周り2に装着しようとしている写真である。図1(D)に示すように、自らの意思で腹横筋7などを収縮させて腹周り2を凹ませてドローイン状態にするステップS1と、このドローイン状態の腹周り2を保ちながら、骨盤3上部から第10肋骨5下までの部分を、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具6を伸ばしながら引き締めて覆い装着するステップS2と、教習具6の縮む力でドローイン状態を維持しながらトレーニングするステップS3とを備えることが本発明の特徴である。
したがって、教習具6としては、教習具6を引張り伸ばして教習者1の腹周り2に巻き付けたときの、教習具6が収縮しようとする締め付ける力は、教習者1が自らの意思でドローインしなくても、腹周り2の長さがドローインした状態とほぼ同じような長さになるように、伸張させた教習具6が縮もうとする収縮力を有することが望ましい。
この収縮力の具体的な目安としては、教習具6の縮む力で凹ませた教習者1の腹周り2の長さが、安静状態の腹周り2の長さの3%~20%短くなるような収縮力を有していることが望ましい。
教習者1が自らの意思で腹横筋7などの側腹筋を収縮させて腹周り2をドローイン状態にすることによって、教習者1は頭だけでなく身体全体でドローインを自覚できる。さらに、教習具6で腹周り2をきつく締め、腹周り2をドローイン状態にすることによって、教習者1がドローインすることを忘れたり、意識が薄れたとしても、教習具6の収縮力がドローイン状態を維持すると共に教習者1へ浮力を与えてくれるので身体が沈むのは抑えられる。
教習者1が自らの意思によって腹周り2をドローイン状態にし、さらに教習具6を装着してこのドローイン状態を維持することによって、教習具6の内側にある教習者1の身体内の消化器官9は、全体的に頭側に移動することになる。
次に、教習者1の水中における動作について図2を用いて説明する。(A)は、教習者1が脱力状態で「伏し浮き」をした場合、肺8の中の空気によって肺8の部分が浮き、浮心は肺8の部分にあり、頭、腕、脚が沈む状態を示している。重心は骨盤3付近にある。
しかしながら、水泳初心者の多くは、水中では溺れるという恐怖心のため、力が入って身体全体が硬直してこのような脱力状態にはならず、伏し浮きは出来づらい。水泳初心者に対しては、先ず初めに、この脱力状態になったとき肺8の部分が浮くことを身体全体で感じてもらうことが必要である。
図2の(A)の伏し浮き状態を実感させて後に、手足を伸ばした挙上、伸脚した状態が(B)の姿勢である。この姿勢になると重心は頭方向に移動する。この姿勢から、ドローインすると骨盤3が後傾し、消化器官9が前方に移動し重心が頭方向へ少し移動する。この姿勢が(C)のストリームライン泳法のスタート状態である。
ところが、水泳初心者1にあっては、水中で呼吸できなく溺れるという恐怖心のため身体が硬直し、身体のバランスを崩すような無理な力が働きやすく、不必要にもがいて苦しみ、体力を消耗させて溺れる。そこで、水泳初心者である教習者1に対しては、教習具6を腹周り2に装着し、ドローインした状態で肺8全体に空気を吸い込むと下部胸郭が左右に広がり、肺8の下側(骨盤3側)に空気が溜まる呼吸トレーニングを行う必要がある。水中におけるストリームライン状態の姿勢での教習者1の動作状態については図3~図7を用いて説明する。
教習者1が教習具6を装着して、水中でドローインした状態で息を吸った際の肺と消化器官9の状態を図3の(A)に示す。水中でドローインした状態で息を吐いた際の肺と消化器官9の状態を図3の(B)に示す。両方とも、ドローイン状態なので骨盤3は後傾であり、頭、肺、腰それぞれの一部が水面WLから出ているが、(A)の息を吸った状態の方が、肺8は膨らみその空気と教習具6の浮力によって身体全体が浮き、水面WLと点線で示した胸の第10肋骨5付近表面の接線の位置WDとの差d1の方が、(B)の息を吐いた状態の水面WLと位置WDとの差d2より短く身体が浮き、教習具6は腹を凹ませている分、腹側表面はWDより身体中心側にある。消化器官9の位置は(B)の方がより大きく頭側に移動している。この状態で、手足をゆっくり動かすことが出来れば、ストリームライン泳法で前進することが出来る。
教習者1が教習具6を装着し水中でドローインしない状態で、息を吸った際の肺8と消化器官9の状態を図4の(A)に示し、息を吐いた際の肺8と消化器官9の状態を図4の(B)に示す。両方とも、教習具6で腹周り2を巻き締めているが、図3のドローインしたときの骨盤3と比べると図4のドローインしたときの骨盤3は前傾である。腹周り2の長さは、ドローインしない分長くなり、吸気時には横隔膜10の働きで若干膨らみ、呼気時には吸気時より萎んだ外形となっている。
頭、肺、腰それぞれの一部は、水面WLから出ているが、(A)の息を吸った状態の方が空気を吸っただけ肺8は膨らみ、その空気と教習具6の浮力によって身体全体が浮き、水面WLと点線で示した肺8の第10肋骨5付近表面の接線の位置WDとの差d1の方が、(B)の息を吐いた状態の水面WLと位置WDとの差d2より短く身体が浮いている。両方とも教習者1自らドローインしていないので腹周り2が膨らみ、その膨らみに応じて教習具6は柔軟性があるので膨らんでいる。教習具6の腹側表面は点線で示した胸の第10肋骨5付近表面の接線の位置WDに近い位置、或いは超える位置まで腹周り2が膨らんでいる。消化器官9は、(B)の方が肺8の容積が縮んだだけ頭側に移動している。
教習者1が教習具6を装着して、図3、図4で示すように、ドローインした場合、ドローインしない場合のどちらの状況下でも水中で楽に呼吸できるようになり、水中で溺れるという恐怖心や水に対する抵抗感がなくなったら、次のステップに移行する。
つまり、教習具6の縮む力によって腹周り2をドローイン状態になるように締め付けていたのを止め、締め付け具合を徐々に緩め、締め付けを緩めた状態でも、教習者1が自ら意思で腹横筋7など収縮させてドローイン状態を維持し続けることが出来るかを試してみて、出来るようであれば、さらに緩め、出来なければ締め直すことを繰り返し、教習具6の締め付け具合とドローイン状態、水中での身体の浮き具合との関係を頭で理解し、身体で十分対応できるように水中における呼吸トレーニングを繰り返す。
教習者1が教習具6を緩めて装着しても水中で十分呼吸できるようになったら、次に、教習具6を装着せずに、水中でドローインした状態で、息を吸った際の肺8と消化器官9の状態を図5の(A)に示し、息を吐いた際の肺8と消化器官9の状態を図5の(B)に示す。両方とも、教習具6で腹周り2を巻き締めていないので、教習者1に対し教習具6から浮力は与えられず、その分、教習者1の身体は水面WLより水中へ沈んでいる。浮力は肺8に吸い込まれた空気の量によって定まる。
骨盤3は、図3のドローインした状態の骨盤後傾の姿勢より若干骨盤3は、前傾するが後傾が保たれている姿勢となり、腹周り2は教習具6を装着しドローインしない状態より若干太めの腹周り2の寸法となっている。この教習具6なしに、図5に示すように、教習者1が自らの意思で腹横筋7を収縮させてドローイン状態にして、吸気する(A)の状態と、呼気する(B)の状態とを十分行えるようになれば、この教習者1は教習具6なしにドローインが出来るように学習したしたことになり、教習具6無いために水中で溺れるという恐怖心を克服していると言える。
図6は、教習者1が、教習具6無しにドローインをしないで、水中で呼吸する状態を示している。図5の吸収具無しにドローインしている場合と比べて、腹周り2が水中のWDの点線より下方へ出っ張り身体全体が水中へより一層沈んでいる。息を吸った場合は肺8が膨らみ、浮力を身体に与えるが、息を吐くにしたがい肺8は萎まリ消化器官9が下方へ下がっている。
図7は、図3(A)の教習具6を装着してドローインした状態と、教習具6の装着を緩めドローインした状態と、図5(A)の教習具6を外して装着せずにドローインした状態とを、交互に繰り返す水泳トレーニングを行う場合の水中における身体の浮き沈み状態の違いを比較した図である。どちらもドローイン状態しているが、教習具6を装着した場合の方が身体に教習具6の浮力が加わり、浮きやすいことが判る。
この図7から、教習具6を腹周り2にしっかり巻きつけて締めた場合と、教習具6による腹周り2の締め付けを緩めた場合と、教習具6を腹周り2から外した場合とのそれぞれの違いを身体全体で体感することにより、自分で意識を集中しコルセットの働きをする腹横筋7を収縮させ腹を凹ませてドローイン状態にしたときの浮力の感じ方と、教習具6を腹周り2に装着し教習具6が第2のコルセットとして働き腹横筋7と協働して腹周り2を凹ませてドローイン状態にしたときの浮力の感じ方との違いを身体全体で体感すると共に頭でも理解することができる。
また、ドローイン状態、ドローインしない状態、それぞれにおける吸気、呼気を身体で体感することによって、水中で浮くこと、水中で身体のバランスとること、水中で手足を動かすとどうなるかを身体で覚えると共に頭でも理解することを繰り返しトレーニングすることで確実に覚えることが出来る。
したがって、水中で溺れるという恐怖心が頭に浮かぶ余地を無くなり、自らの意思で腹横筋7等の側腹筋を収縮させてドローインすることも自由に出来るようになり、ドローインして蹴伸びし、浮心と重心を近づけて浮き、ゆっくり落ち着いてストリームライン泳法をトレーニングすることが出来、自信を持って泳げるようになる。
教習者1がトレーニングに疲れてドローインする集中力を失ったとしても、教習具6が腹周り2を締め付けているのでドローイン状態は維持されると共に、この教習具6が腹周り2を締め付ける感触を身体が感じ取って、再びドローインすることを思い出させ、意識を集中させて腹横筋7を収縮させるという相乗効果も期待できる。
さらに、教習具6は、骨盤3の上部から臍を中心とする腹周り2を覆い、ドローイン状態になるまで腹周り2強く締め付けるので、非特許文献1に記載されているような姿勢が悪い大勢の児童生徒の姿勢を矯正するコルセットの働きもしているので、水泳上達だけでなく、姿勢の矯正にも役立つ。これは、児童生徒だけでなく大人についても同様なことが言える。
図8は、実施例として、この発明によるトレーニングを行う場所と各トレーニングのステップを示す図であり、トレーニング場所と、教習具装着の有無、ドローイン、吸気、呼気の各ステップの関係を説明したフローチャートである。
図8の(A)は、プール脇、教室、家庭など、陸上でのトレーニングを行う場合を示している。STARTから始まり、教習者1が自ら腹横筋7などを収縮させて腹周り2を凹ませるステップS1と、教習者1が自ら凹ませた腹周り2の骨盤3の上部から第10肋骨5の下までを、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具6を伸ばしながら引き締めて覆うステップS2と、教習具6の縮む力で腹周り2の凹ませた状態を維持しながらトレーニングするステップS3とを備えている。
ステップ1とステップ2の順序は逆であっても構わない。要するに、ステップ3を行う前に、教習者1自らの意思によって腹横筋7等の側腹筋を収縮させて、おおよその臍を中心とする腹周り2を凹ませ、この凹ませた腹周り2に教習具6を引き伸ばしながら引き締めて面ファスナーで固定すればよい。次に、ドローイン状態で呼吸するトレーニングを行う。息を吸い込むステップS3-1と息を鼻から吐くステップS3-2を必要な回数だけ継続して行う。この順序も逆でもよい。必要回数行ったら終了し、ENDとする。
この図8の(A)のドローインステップ、腹周り2へ教習具6を巻き付け締めるステップ、教習具6を腹周り2に巻き付けて締めドローイン状態を維持しながら行う呼吸トレーニングのステップから成るトレーニングは、陸上で行うことが出来、小スペースでいつでも実践可能な基本トレーニングであり、時間や場所の制約を受けない。したがって、従来の水泳授業での水泳プールを使用可能な期間だけの水泳トレーニングと異なり、基本的なドローインや呼吸トレーニングを行う絶対的な時間不足の問題を解決することが出来る。
図8の(A)の陸上における基本的なトレーングを終えた後、(B)のドローイン時の呼吸トレーニングS5-1、S5-2を行う。STARTから始まり、教習者1が自ら腹横筋7などを収縮させて腹周り2を凹ませるステップS1と、教習者1が自ら凹ませた腹周り2の骨盤3の上部から第10肋骨5の下までを、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具6を伸ばしながら巻き締めて覆い装着するステップS2は、(A)と同じである。
図8の(B)が(A)と異なるのは、家庭や銭湯において、水やお湯の入った浴槽の中に教習者1が入るステップS4-1と、浴槽の中で水圧を受けながら、教習具6を水中で締め直すステップS4―2と、その後の浴槽での水圧を受けながら、ドローイン状態で、呼吸するトレーニングを行う。水面から顔を出して息を吸い込むステップS5-1と水中で息を鼻から吐くステップS5-2を必要な回数だけ継続して行う(S5-3)。この順序は逆でもよい。ステップS5-3を必要回数行ったら終了し、ENDとする。
このトレーニングは、家庭でも、いつでも実践できるので、従来の水泳授業での水泳プールを使用可能な期間だけの水泳トレーニングと異なり、基本的なドローインや呼吸トレーニングを行う絶対的な時間不足の問題を解決することが出来る。
図8の(C)が(A)や(B)と異なるのは、学校の水泳授業やスイミングスクールでの水泳トレーニングとしてプールを使用し、ストリームライン泳法までのトレーニングを行う点が異なる。
教習者1が、水泳プールに入るステップS6-1と、プールの中で水圧を受けながら、教習具6を水中で締め直すステップS6-2と、その後の浴槽での水圧を受けながら、ドローイン状態で、呼吸するトレーニングを行う。水面から顔を出して息を吸い込むステップS7-1と水中で息を鼻から吐くステップS7-2とストリームライン泳法のトレーニングを行うステップS7-3を必要な回数だけ継続して行う(ステップS7ー4)。この順序は入れ替えてもよい。ステップS7-4を必要回数行ったら終了し、ENDとする。
ステップS7-4を必要回数行い、教習具6を腹周り2に装着して行うトレーニングを十分身に付け、自信を持てるようになったら、次のステップS8へと進む。プールから出て陸上で行っても、水中で行ってもよいが、ステップ8では、教習具6の各レイヤーをどちらの場所で緩めてから、ドローイン状態で呼吸するトレーニングとして、水面から顔を出してドローイン吸気ステップS9-1を行い、次に水中で鼻から息を吐きながらドローイン呼気ステップS9-2を行い、続いてドローイン状態で手足をゆっくり伸ばし、ストリームラインS9ー3を行う。これらを必要な回数だけ継続して行う。(S9ー4)この順序を入れ替えてもよい。ステップS9-4を必要回数行ったら終了し、ENDとする。
ステップS9-4を必要回数行い、教習具6を緩めて腹周り2に装着して行うトレーニングを十分身に付け、自信を持てるようになったら、次のステップS10へと進む。ステップ10では、先ず始め、教習具を6腹周り2に装着していないので、その分身体が水中に沈むが、息を吸ってからドローイン状態で身体の力を抜いて脱力状態で顔を水中に漬ければ、肺8に入った空気によって十分浮くことが出来る。この脱力した状態で呼吸するトレーニングとして、水面から顔を出してドローイン吸気ステップS11-1を行い、次に水中で鼻から息を吐きながらドローイン呼気ステップS11-2を行い、続いてドローイン状態で手足をゆっくり伸ばし、ストリームラインS11ー3を行う。これらを必要な回数だけ継続して行う。(S11ー4)なお、この順序は適宜入れ替えてもよい。ステップS11-4を必要回数行ったら終了し、ENDとする。
この(C)のトレーニングは、(A)のトレーニング、(B)のトレーニングを段階的に十分行って、自信をつけてから行うので、いきなり教習具6を腹周り2に装着しないで泳ぐのとは違い、心理的に自信と余裕を持って行うので、水中で慌てて溺れるという危険性は防げる。しかも、少しでも不安に感じた場合には、即座に、一つ前のス教習具6を緩めて装着してトレーニングをするステップや二つ前のステップの教習具6をしっかり腹周り2に巻き締めて装着してトレーニングに戻ってトレーニングすることが出来るので、教習者1は安心してトレーニングを続けることが出来る。
また、(C)のステップのトレーニングは、水泳プールでなければ実施できない内容に絞って集中して実施できるので、従来の水泳授業での水泳プールを使用可能な期間だけ、全てのトレーニング項目を一気に教え指導する水泳トレーニング方法と異なり、ドローイン状態での浮き伏しやストリームライン泳法を十分時間をかけてじっくり指導することが出来る。
したがって、学校のプールを廃棄したため水泳授業が困難となった場合でも、プールでなければ出来ない(C)のトレーニングのみ、公営プール、私営プールを利用してトレーニングすることも可能となり、プールが無くて水泳授業が出来ないという課題を解消することが出来る。
本発明によるトレーニング方法で使用する教習具6は、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具6であれば、前述した通り、天然ゴム、合成ゴムなどどのような素材であっても良いが、弾性発泡体としては、クロロプレンゴムに空気を含有させたいわゆるウエットスーツに用いられる素材が望ましい。
具体的には、独立気泡構造からなる厚みが2.0mm~8.0mmゴム素材が候補として挙げられる。この素材は、本発明の目的を達成するために必要な浮力があり、柔軟性、伸縮性もあるので、この生地を外観形状が長さ500mm~1000mm、幅80mm~250mmに裁断し、両端部に面ファスナーを縫い付けて、両端部を重ね合わせ教習者の腹周りで係止できるようにすればよく、トレーニングの上達段階に応じて締め付ける力を変えるだけで済み経済的である。
非特許文献3に記載されてある通り、水泳初心者である教習者1が自らの意思で腹周り2を凹ませてドローイン状態にすることは容易でないので、水泳初心者である教習者1が教習具6を用いてドローイン状態にする場合でも、教習者1が自らの腕の力で腹周り2を教習具6で巻き締める場合の腕に力が入り易い方向と引き締める方向とは異なるので容易でない。
そこで、最適な締め付け力を発揮する教習具6構造としては、図9の(A)乃至(D)に示す構造が好ましい。この教習具6は、教習者1の身体に装着後、ドローイン状態では、外表面の凹凸が少なく身体形状をなぞった流線形の滑らかなフォルムとなる。教習者1の肋骨(あばら骨)に接する点線上よりお腹が凹んだ位置に教習具6が装着され、消化器官9を上方へ持ち上げるように、骨盤3の上部(腸骨)から肋骨の最下部第10肋骨5の下側の腹周り2を締め付け固定できる。
教習具6は、教習者1が、教習具6を装着しないときの安静時の腹周り2の長さより、教習者1の腹周り2の長さが3%~20%縮まるように、教習者1が一人で教習具2を腹周り2に巻き締め付けることを可能とするために、伸縮性、柔軟性に富み、身体形状に合ったフォルムを呈する長手状のラバー製素材を、図9の(A)に示すように、インナーレイヤー11、ミドルレイヤー12、アウターレイヤー13の3層構造で形成している。腹周り2を締め付けた後に各レイヤーを固定するためには、凹凸の組み合わせから成る面ファスナーを用いている。面ファスナーの凹凸は、どちらが凹みでどちらが凸であってもよい。この実施例では、一方の対の組合せを示しているが、入れ替えて逆にしてもよい。
インナーレイヤー11、ミドルレイヤー12、アウターレイヤー13による締め付けを教習者1が一人でもしっかり腹周り2を締め付け、ドローイン状態を保つことが出来るようにするため、インナーレイヤー11の他端中央には伸縮性を有しないベルト14を設け、バックル15を支点として、ベルト14とバックル15とが滑車の原理で働くように形成されている。
つまり、ミドルレイヤー12を片手で引っ張っただけで、その動作と引っ張られた力は、ベルト14を介してインナーレイヤー11に伝わり、一緒にインナーレイヤー11も引っ張られるように構成されているので、インナーレイヤー11の引っ張る方向とミドルレイヤー12の引っ張る方向とが反対方向であり、教習者1の利き腕の違いによる腕の力を入れやすい方向と違う方向に引っ張る場合でも、滑車の原理で少ない力で十分締め付けることが出来る。
しかも、伸びないベルト14を引っ張ったとき、ベルト14からの局所的な力がインナーレイヤー11の接続個所に加わって破断しないようにするため、このベルト14の根本は、末広がりの形状の補強部14aで補強され、インナーレイヤー11の幅方向に力が分散するように取り付けられる。伸縮しないベルト14が引っ張られても、伸縮するインナーレイヤー11の幅全体に均等に力が加わり破断することがなく、各レイヤーを引き伸ばして腹周りに巻き付けたときの教習具6の反作用で生じる引き締め力が、そのままベルト14による局所的な喰い込み力となって腹周り2に喰いこむことによる苦痛を教習者1に感じさせることが無く、柔軟性のあるインナーレイヤー11の内面全体がクッションの働きをしながら腹周り2に接してソフトに締め付けることが出来る。つまり、線で接した締め付け力は強く苦痛を教習者1に感じさせるが、面で接した締め付け力は穏やか押圧力であり教習者1に苦痛を感じさない。
教習具6を使用する場合、後述するように、図10に示す(A)から(H)の順番で、教習具6を教習者1の腹周り2に巻き付けて締め、最終的に(H)のドローイン状態を維持するようにしっかり腹周り2を教習具6で強く巻き締める。このように教習具6を腹周り2に引き伸ばしながら巻き付けると腹周り2の横幅長さは、W1からW2を経てW3へと引き締められ、奥行き幅は、D1からD2を経てD3へと引き締められる。
先ず、教習者1の臍付近の腹周り2の断面を(A)のように示す。消化器官9を守るように腹横筋7が両側からコルセットの役割を果たしている。教習者1が自らの意思によって腹横筋7を緊張させると腹周り2は凹んでドローイン状態となる。
このドローイン状態を維持しながら、教習具6のインナーレイヤー11の端に取付けられたベルト14のインナーレイヤー11側寄りの部分を左手で握り、右手でミドルレイヤー12の端部を握り、背中の背骨と一致する位置に背骨マーカー20が来るように、背骨マーカー20が背骨に触る感触で左右の位置を確かめながら背骨マーカー20を背骨に当接させて(B)の状態にする。
次に、右手でミドルレイヤー12に取り付けてあるバックル15を握りながら、左手でベルト14をバックル15に通して(C)の状態にする。
バックル15に通したベルト14の内側の端に縫い付けられている面ファスナー(凹)24をミドルレイヤー12の内側に縫いつけられている面ファスナー(凸)22に重ね合わせ、両者を噛み合わせて固定する。ミドルレイヤー12の表面にあるひきて17を掴んで左方向へ矢印方向の力を加えて引張り、左手でインナーレイヤー11のひきて18を握ってバックル15に近づける矢印方向の力を加えて引張り、(D)の状態にする。
右手でミドルレイヤー12の端を矢印方向に強く引っ張るとベルト14は真っすぐに伸び、バックル15を支点として滑車の原理でインナーレイヤー11を直接手で引っ張った以上の力でインナーレイヤー11を引っ張り伸ばすことが出来る。このとき、インナーレイヤー11に縫い付けられているベルト14は同時に強く伸ばされ、ピンと真っすぐに伸びた(E)の状態となる。
インナーレイヤー11全体の縮む力でお腹を強く締め付けた状態で、インナーレイヤー11外側の面ファスナー(凹)16とミドルレイヤー12の内側の面ファスナー(凸)22とを噛み合わせながら腹周り2をインナーレイヤー11で覆う。ミドルレイヤー12を引っ張ることでベルト14を滑車の原理で、インナーレイヤー11はさらに引っ張られ、(F)で示すようになり、左手をインナーレイヤー11から離すことが出来るようになる。このとき、腹周り2は、インナーレイヤー11とミドルレイヤー12とでドローイン状態になるようにしっかり巻き締められる。
インナーレイヤー11とミドルレイヤー12とによって腹周り2を引き締める力をさらに強固にするため、(G)に示すように、アウターレイヤー13の端部を右手と左手の両手で握り時計回りの方向へ力を加えることで、引き締めをさらに強固に行えるようになる。
(A)から(G)までの手順でインナーレイヤー11、ミドルレイヤー12、アウターレイヤー13の3つで教習者1の腹周り2の正面側を引き締め、ミドルレイヤー12でインナーレイヤー11を覆った後に、ミドルレイヤー12の端部のひきて17を手で引っ張り伸ばしながら、ミドルレイヤー12の外側の面ファスナー21(凹)とアウターレイヤー13の内側の面ファスナー23(凸)とを噛み合わせアウターレイヤー13で全体を覆って固定する。
このように、教習具6は、伸びないベルト14とバックル15の力を活用し、伸びるインナーレイヤー11、ミドルレイヤー12、アウターレイヤー13の3つのレイヤーの協働した縮む力で、ドローイン状態における教習者1の骨盤3の上部の水着の上をしっかり締め、骨盤3の姿勢を適切な姿勢へと矯正、維持し、(H)に示すように、腹周り2の正面側を互い違いの方向から引き締めるので、教習者1が水中で激しく動いても教習具6は腹回り2から外れることなく、しっかり腹周り2の正面側を引き締め、ドローイン状態を維持することが可能である。
このように、教習具6の腹側をインナーレイヤー11、ミドルレイヤー12、アウターレイヤー13による三層構造とし、教習具6を教習者1が教習具6を装着したとき、腹側表面部分の浮力が、背中側表面部分の浮力より大きいように形成することにより、伏し浮きの姿勢では教習具6の総浮力が同じ腹側と背中側が同じ構造の教習具と比べると、水中に沈んでいる腹側の浮力が背中側より大きくなるので、身体全体を腹側からより押し上げられる。その感触により精神的にも安心感をより大きく持つことができる。
また、教習具の腹側を三層構造にすることにより、腹を凹ませドローインを維持する引き締め力も、教習具6の総引き締め力が同じ腹側と背中側が同じ構造の教習具6と比べると、腹側の引き締め力が背中より大きくなるため装着感は快適にドローインに必要な引き締め力を得る事ができる。
なお、教習具6を装着したとき、腹側表面部分の浮力が、背中側表面部分の浮力より大きければ、前記のような三層構造でなく、三層構造ではあるが、ベルト14が無い場合や、二層構造、二層構造でベルト14が無い場合でも、同様の作用効果を奏する。
教習具6の締め付け力の度合いを確認するために、インナーレイヤー11の外側に第1の定規25を設け、ミドルレイヤー12の外側に第2の定規26を設けてあり、ミドルレイヤー12の外側の先端に第1の矢印27が設け、アウターレイヤー13の外側の先端に第2の矢印28が設けてある。教習具6の締め付けの度合いは、第1の矢印27と第2の矢印28とが、第1の定規25と第2の定規26のどこを示しているにより確認することが出来る。
すなわち、教習具6を腹周り2に強く巻きつけて締めた場合と、教習具6による腹周り2の締め付けを緩めた場合と、教習具6を腹周り2から外した場合とのそれぞれのトレーニングにおける教習具6による締め付け度合いを各定規における各矢印の位置によって確認でき、トレーニングの習熟度合いを知ることが出来る。
ところで、教習具6は、伸びるインナーレイヤー11、ミドルレイヤー12、アウターレイヤー13の3つのレイヤーを協働させ、伸びないベルト14とバックル15の力を滑車の原理で活用し、伸びる部分の反作用としての縮む力でお腹をしっかり締めるので、締め付け力の算出は容易でない。
そこで、教習具6で実際に使用する弾性発泡体ゴムのサンプルとして測定した結果を図10に示す。
(A)は、「引張り力のサイクル試験による荷重計測値」を示す。測定条件は、つかみ幅200mm、長さ150mm、厚さ3mmの素材を、温度20℃、湿度65%RH、試験速度100mm/minである。25mm毎に250mmまで伸張する際に必要な力と、250mmから25mm毎の収縮する際に必要な力を「引張り力のサイクル試験」により荷重を計測した。
(B)は、「弾性発泡体の伸び量と締め付け力との関係」である。ゴムの物性から伸張する力と収縮する力は同一では無いので収縮する力=締付け力となる。図11で示した「弾性発泡体の伸び量と締め付け力の関係」は、10mm幅換算の荷重(Kg)である。
教習具6の理論上の締付け力の定義と締め付け力は、教習者1の腹回り2の円周を「W1」、ドローイン状態の腹回り2の円周を「W2」とし、図9(B)で示す教習具6の長手方向の長さを、インナーレイヤー11の先端からミドルレイヤー12のバックル15までの長さを「In」とし、ミドルレイヤー12の先端からインナーレイヤー11の取付位置までの長さを「Mi1」とし、アウターレイヤー13の先端からミドルレイヤー12の面ファスナー21の端までの長さを「Ou1」とすると、腹周り2の円周「W1」75cmの教習者1がドローインして約7%腹部をドローインした腹周り2の円周「W2」69.75cmの場合での、Mサイズの教習具6の理論上の締め付け力は、インナーレイヤーの締付け力(5.2Kg)+ミドルレイヤーの締付け力(1.3Kg)+アウターレイヤーの締付け力(2.4Kg)の合計となるので、総合計は、8.9Kgとなる。
つぎに、教習具6の浮力について説明する。
教習具6の浮力については、アルキメデスの原理に基づき下記の方法で計算した。
物体の浮力の計算式は、浮力= 体積×流体の密度×重力加速度となる。物体の浮く力は、浮力-重力である。
教習具6の浮く力は、浮力=教習具6の体積×重力加速度×(水の比重‐教習具6の密度となる。
教習具6で使用する弾性発泡体の密度は、266.66(Kg/m3)である。教習具6が、Mサイズの体積は、0.000618 (m3)であり、浮く力は4.44[N]となる。
人の密度は、おおよそ920[Kg/m3]~1060[Kg/m3]と言われている。筋肉質なタイプは浮きづらく、中肉体質なタイプは浮き、肥満体質なタイプはかなり浮きやすい。
理論的には、体重60Kgのやや筋肉質タイプ(密度970と仮定)の人を、肺に残留空気が2000cc残った状態で、水に浮かせる場合に必要な補助浮力は5.1Nとなる。
参考までに、500mlの空のペットボトルの浮力は約4.6(N)であるので、Mサイズの教習具6の浮力は、500mlの空のペットボトルの浮力と同じ位と考えてよい。
このようなドローイン状態で、図10に示す(A)から(H)の順番で、教習具6のインナーレイヤー11、ミドルレイヤー12、アウターレイヤー13それぞれを引き伸ばしながら、教習者1の臍を中心とした腹周り2の骨盤3の上部から第10肋骨5の下までを巻き締めて覆うと、教習具6の各レイヤーが引き伸ばしの反作用として収縮し、全体として8Kgを超える締め付け力で腹周り2を巻き締め付け覆う。この教習具6を腹周り2に装着し強く巻き締めることで、教習者1の意識がドローインを維持することを忘れても、教習具6の締め付け力によって引き締められ、ドローイン状態は引き続き維持されると共に、教習者1は絶えず教習具6を意識せざるを得なくなる。
教習具6を腹周り2に巻き締め装着した状態で教習者1がプールの水中に入ると、教習者1は身体全体が水圧を受ける。この水圧により身体が引き締まり教習具6はその分緩むことがあるので、緩んだときには再度水中で教習具6を引き締め直す。
水中では、教習具6は4(N)もの浮力を有し、教習者1を水中で十分浮かせることが出来るので、教習具6でひとたび巻き締めてしまえば、教習者1のドローイン状態を維持するという意識が薄れ集中力が無くなったとしても、水中で溺れるという恐怖心は大幅に軽減される。
前述した通り、ドローインしただけで、消化器官9、横隔膜9は頭側に上がり、骨盤底筋群も頭側に持ち上がって骨盤3が安定する。
教習者1が、プールの水中でドローイン状態を保ちながら、手を伸ばし拳上することにより、手の重さの分だけ重心の位置は頭側に移動する。
しかも、教習者1は、教習具6 を第10肋骨5の下から骨盤3の上部の位置に装着しているので、ドローイン状態が維持され、消化器官9が頭側に移動すると共に、教習具6自体の浮力により浮心はより一層重心に近づく。
本発明によるトレーニングでの浮心と重心の移動のメカニズムについて説明する。
本発明は、水泳初心者である教習者1が、自ら意識して、腹横筋7などの側副筋を収縮させて腹周り2を凹ませる(以下、ドローインと称する。)動作は、腹横筋7などの側腹筋が内臓の胃、小腸、大腸などの消化器官9を締め付けるコルセットの働きをすると共に、これらの側腹筋を収縮させることによって、消化器官9を頭側へ移動させて重心も頭側へ移動させることが出来るようにしたものである。さらに、ドローイン動作は、腹を凹ませることにより、横隔膜10は頭側に上がり、この状態で、下部胸郭が左右に広がるような意識を持って肺全体に空気を吸い込むと下部胸郭が左右に広がり、肺8の下側(骨盤側)に空気が貯まり、浮心の位置を足側に移動させることが出来るため、身体の重心と浮心とが近づき水中で水平に浮きやすくなる。教習者1は、この水中で水平に浮いた姿勢を身体全体で十分体感し、小脳に運動を記憶することができる。
教習具6がドローイン状態を保つ絞め付け力と自分の力で水平に浮く姿勢を手助けする浮力を有しているので、教習具6を装着していれば水中であっても姿勢を保持して極端な下半身の沈みがなく、水面から顔を出したとき肺8全体に空気を吸い込むことができるようになる。
ドローインを保持した状態での吸気時は、横隔膜10が弛緩して頭側に移動した状態で、外肋間筋が収縮して胸腔が広がり横隔膜10が収縮させず骨盤3側に移動させずに下部胸郭を広げて空気を吸う。(図13(C)参照)
ドローインを保持した状態での呼気時は、外肋間筋が弛緩して胸腔が狭まり横隔膜10が弛緩させず頭側に移動させずに空気を吐く。
(14(C)参照)。
このように水泳式呼吸をすると骨盤3は安定し、良い姿勢を保つことも出来るため、浮いた状態を保持し、無理な無駄な力を使わず楽に泳げ、ストリームライン泳法として手で掻いた後の伸びの姿勢がよくなり進みやすくなる。
このようにして教習具6を装着して、水泳式呼吸法のもとに泳げるようになったら、教習具6の各レイヤーの引き締めを緩めて泳いで身体バランスの変化を体感し、再び、教習具6をしっかり引き締めて泳ぐなどを繰り返し、教習具6を装着して自信を持って泳げるようになったら、いよいよ教習具6を取外してドローイン状態でストリームライン泳法のトレーニングを行う。
教習具6を身体から取外し、教習具6を装着して覚えた水泳式呼吸法のもとに、ストリームライン泳法で泳いで身体バランスの変化を体感し、不安を感じたり、再確認したくなったら、再び、教習具6の各レイヤーをしっかり引き締めて泳ぐ、教習具6の各レイヤーを緩めて泳ぐなどを繰り返し、最終的に教習具6を装着しないでも自信を持って泳げるようになれば本発明によるドローイン泳法をマスターしたことになる。
実際に本発明により教習具6を腹周り2に装着してトレーニングした水泳初心者である5歳から57歳までの教習者22名それぞれに、教習具6を装着して水泳トレーニングしたときの感想を述べてもらった。
未装着の場合、装着した場合、装着して泳ぎトレーニングした後に未装着で泳いだ場合の3つ状態それぞれについての感想は、[表2]に示すように、水中で溺れるという恐怖心を感じたとの感想は無く、教習具を装着したことと泳ぎとの関係を的確に理解した感想であり、教習具6を装着してトレーニングした効果を全員実感している。
1 教習者(水泳初心者)
2 腹周り
3 骨盤
4 水着
5 第10肋骨
6 教習具
7 腹横筋
8 肺
9 消化器官
10 横隔膜
11 インナーレイヤー
12 ミドルレイヤー
13 アウターレイヤー
14 ベルト
14a 末広がり補強部
15 バックル
16 面ファスナー(凹)
17 ひきて
18 ひきて
19 面ファスナー(凸)
20 背骨マーカー
21 面ファスナー(凹)
22 面ファスナー(凸)
23 面ファスナー(凸)
24 面ファスナー(凹)
25 第1の定規
26 第2の定規
27 第1の矢印
28 第2の矢印

Claims (12)

  1. 教習者が自ら腹横筋などを収縮させて腹周りを凹ませるステップと、教習者が自ら凹ませた腹周りの骨盤上部から第10肋骨の下までを、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具を伸ばしながら巻き締めて覆うステップと、前記教習具の縮む力で前記腹周りの凹ませた状態を維持しながらトレーニングするステップを備えることを特徴とするトレーニング方法。
  2. 前記教習具は、教習者の臍の腹周りの長さが、安静状態の腹周りの長さより3%~20%短くなるように、引き締める収縮力を有することを特徴とする請求項1記載のトレーニング方法。
  3. 前記教習具の腹側表面部分の浮力が、背中側表面部分の浮力より大きいように形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のトレーニング方法。
  4. 教習具の縮む力で腹周りを凹ませた状態を維持しながら横隔膜等を収縮させて下部胸郭を大きく拡げて水面上で息を吸うステップと、前記教習具の縮む力で腹周りを凹ませた状態を維持しながら水中で息を吐くステップとを交互に行う呼吸トレーニングを行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかの1に記載のトレーニング方法。
  5. 地上で教習者が自ら腹横筋などを収縮させて腹周りを凹ませ、凹ませた腹の第10肋骨の下から骨盤の上部にかかる腹周りを、浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具で巻き締めるステップと、腹周りを前記教習具で巻き締めた状態で水中に入るステップと、水中で腹周りに水圧が加わる状態にした後に、再度、教習者が自ら腹横筋などを収縮させて腹を凹ませ前記教習具を締め直すステップと、水中で腹周りを前記教習具で巻き締めた状態でトレーニングを行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかの1に記載のトレーニング方法。
  6. 腹周りを教習具で締めつけて水中で水平姿勢をとる第1の水平姿勢トレーニングを行うステップと、該第1の水平姿勢トレーニングに続き、腹周りの前記教習具による締めつけを緩めて、水中で水平姿勢をとる第2の水平姿勢トレーニングを行うステップとを交互に行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの1に記載のトレーニング方法。
  7. 腹周りを教習具で絞めつけて水中で水平姿勢をとる第1の水平姿勢トレーニングを行うステップと、該第1の水平姿勢トレーニングに続き腹周りから前記教習具を取り外し、水中で前記教習具無しに腹横筋などを締めながら水中で水平姿勢をとる第2の水平姿勢トレーニングを行うステップとを交互に行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかの1に記載のトレーニング方法。
  8. 教習者の骨盤上部から第10肋骨の下までの腹周りを巻き締める浮力と伸縮性と柔軟性とを有する弾性発泡体から成る長手状の教習具であって、前記教習具を装着しない前記教習者の安静時の腹周りの長さより、前記教習者の腹周りに前記教習具を装着したときの腹周りの長さが、3%~20%縮まるように引き締めることを可能とする伸縮率の教習具。
  9. 前記教習具の外観形状が長さ500mm~1000mm、幅80mm~250mm、厚さ2mm~8mmであることを特徴とする請求項8記載の教習具。
  10. 腹周りを締めるインナーレイヤーと、該インナーレイヤーと連結され、インナーレイヤーとは反対方向から腹周りの部位を締めつけ、インナーレイヤーの外側に設けられた面ファスナーと噛みあい固定されるミドルレイヤーと、該ミドルレイヤーと連結され、ミドルレイヤーとは反対方向から腹周りを締めつけ、ミドルレイヤーの外側に設けられた面ファスナーと噛みあい固定されるアウトレイヤーとを備え、前記インナーレイヤー、前記ミドルレイヤー、前記アウトレイヤーを重ね合わせ協働させて前記腹周りを巻き締めることを特徴とする請求項8又は請求項9記載の教習具。
  11. 前記インナーレイヤーの先端には、非収縮性の細長のベルトの一端が固定され、このベルトの他端は前記ミドルレイヤーに取り付けられたバックルに通されて面ファスナーによって前記ミドルレイヤーに一端に固定され、前記ミドルレイヤーの一端側を引っ張ると前記バックルを支点として、前記インナーレイヤーを引張り、両レイヤーが協働して前記腹周りを巻き締めることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の教習具。
  12. 前記非収縮性の細長のベルトの根本は末広がりに形成され、柔軟性が有る前記インナーレイヤーの先端に固定されていることを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の教習具。
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