JP2023150612A - 昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料およびルツボ - Google Patents
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Abstract
【課題】SiC単結晶に取り込まれる黒鉛粒子の量を抑制し、ひいては、黒鉛粒子の含有量が少ないSiCウエハを製造する。【解決手段】下記式(1)によって求められる評価指数Kが、1~10×108ms2/kgである、昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料。【数1】TIFF2023150612000007.tif20168ただし、式(1)における各記号は、以下の値を意味する。μは、通気率[m2]:JIS R2115に規定する試験方法によって得られる値 pは、黒鉛化度[-]:X線回折分析によって得られるd002を用い、下記式(2)によって得られる値 p=(3.44―d002)/0.09 ・・・(2) dは、平均粒子径[m]:昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料の断面から観察される任意の粒子10個の粒子径の平均値 ρは、真密度[kg/m3] gは、重力加速度[m/s2]【選択図】なし
Description
本発明は、昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料およびルツボに関する。
SiCは、Siに比べて、絶縁破壊電界、電子飽和速度、熱伝導率などの値が大きく、パワーデバイスに適用する上で優れた特性を有しているため、より高耐圧、高速動作、低オン抵抗のデバイスへの適用が期待されている。
SiCの単結晶ウエハを得る方法として、昇華法(改良Lely法)、溶液法、高温CVD法などが知られている。昇華法は、SiCの粉末原料を2000℃程度の高温で加熱・昇華させ、不活性ガス雰囲気中を輸送後、低温部に設置された種結晶上に再結晶化させることにより塊状の単結晶を育成する方法である。昇華法は、大型のSiCバルク単結晶が得られやすいので広く用いられている。
昇華法では、SiCの粉末原料から単結晶を得るまでのプロセスを1つのルツボ内で行い、ルツボや、その他部材から脱落したパーティクルが、単結晶SiCの中に取り込まれ不純物となる。黒鉛製のルツボなどを用いた場合には、カーボンのパーティクルが、インクルージョンとしてSiCに取り込まれる。このようなインクルージョンの発生を防止するため様々な工夫が行われている。
特許文献1は、金属炭化物で被覆された黒鉛ルツボを用いることにより、結晶欠陥や、インクルージョンの少ないSiC単結晶の製造方法を開示している。また、特許文献2は、原材料の上に多孔体を配置し、原料粉末から先にSiが昇華することによって残る炭素粉が舞い上がることを抑制し、SiC単結晶中に黒鉛の微粒子が取り込まれて発生するインクルージョンを防いでいる。
特許文献1では、黒鉛のルツボの表面に金属炭化物の被覆を施すものであり、融点または分解温度の高い耐熱性金属を用いているが、多くはレアメタルであり、コストの上昇を引き起こす原因となり得る。また、特許文献2は、原料粉末の表面を多孔体のような被覆部材で覆うように、装置または構造上の工夫であり、ルツボの黒鉛材料自体の特性に対する検討は行われていない。
本発明では、前記課題を鑑み、SiC単結晶製造に適した昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料およびルツボを提供することを目的とする。
本発明の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料は、下記式(1)によって求められる評価指数Kが、1~10×108ms2/kgである。
ただし、式(1)における各記号は、以下の値を意味する。
μは、通気率[m2]:JIS R2115に規定する試験方法によって得られる値
pは、黒鉛化度[-]:X線回折分析によって得られるd002を用い、下記式(2)によって得られる値
p=(3.44―d002)/0.09 ・・・(2)
dは、平均粒子径[m]:昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料の断面から観察される任意の粒子10個の粒子径の平均値
ρは、真密度[kg/m3]
gは、重力加速度[m/s2]
μは、通気率[m2]:JIS R2115に規定する試験方法によって得られる値
pは、黒鉛化度[-]:X線回折分析によって得られるd002を用い、下記式(2)によって得られる値
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dは、平均粒子径[m]:昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料の断面から観察される任意の粒子10個の粒子径の平均値
ρは、真密度[kg/m3]
gは、重力加速度[m/s2]
本発明の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料によれば、評価指数Kが、1~10×108ms2/kgの範囲にあることにより、ルツボからの黒鉛粒子の脱落を抑制し、得られたSiC単結晶に取り込まれる黒鉛粒子の量を抑制することができる。
本発明の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料は、以下の態様であることが好ましい。
前記平均粒子径dが、50~100×10-6mである。
平均粒子径dが50~100×10-6mであることにより、黒鉛粒子の上昇を抑制し、SiC単結晶に取り込まれる黒鉛粒子の量を抑制することができる。
前記黒鉛化度pが、0.80~0.95である。
黒鉛化度pが0.80~0.95であることにより、黒鉛の結晶のエッジ面の露出を少なくすることができるので、反応性を抑制することができる。
本発明のルツボは、上記記載の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料により構成される。
本発明のルツボによれば、黒鉛粒子の含有量を抑えたSiC単結晶およびSiCウエハを製造することができる。
本発明の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料は、評価指数Kが、1~10×108ms2/kgの範囲にあることにより、ルツボからの黒鉛粒子の脱落を抑制し、得られたSiC単結晶に取り込まれる黒鉛粒子の量を抑制し、ひいては、黒鉛粒子の含有量が少ないSiCウエハを製造することができる。また、評価指数Kが、1~10×108ms2/kgの範囲にある黒鉛材料により構成されたルツボを用いることにより、黒鉛粒子の含有量を抑えたSiC単結晶およびSiCウエハを製造することができる。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して 適用することができる。
図1は、SiC単結晶を製造するためのSiC単結晶製造装置の一実施形態の断面図である。SiC単結晶製造装置100は、ルツボ10と、ルツボ10を覆う加熱部20とを備えている。SiC単結晶製造装置100は、いわゆる昇華法により、SiCの粉末原料から、単結晶のSiCを成長させ、製造するための装置である。
ルツボ10は、基材が黒鉛製である黒鉛ルツボである。ルツボ10は、底面2、側壁3、上面蓋部4に取り囲まれた内部空間を有している。SiC単結晶製造用黒鉛材料の原料M1が、底面2の上の内部空間に配置される。原料M1は、たとえばSiCの粉末原料である。側壁3は、底面2と一体形成され、底面2の縁部から高さ方向に突出している。
上面蓋部4は、側壁3の上縁に対し取り外し可能な構成を有している。本実施形態においては、結晶設置部4aが上面蓋部4の中央から突出し、種結晶としてのSiC単結晶M2が結晶設置部4aに設置される。結晶設置部4aを下向きにした状態で、上面蓋部4を側壁3の上縁に対し取り付けることにより、SiC単結晶M2が内部空間の上面に配置される。なお、SiC単結晶M2は、結晶設置部4aのない上面蓋部4に直接設置されてもよい。
加熱部20は、ルツボ10の外周を覆っている。加熱部20はどのような部材でもよく、特に限定されないが、ヒータ、高周波誘導コイルなどを使用することができる。加熱部20に高周波誘導コイルを使用する場合、コイルとルツボ10とを磁気的に結合させ、コイルに流した高周波の電流を、ルツボ10の抵抗発熱として消費させることによって発熱させる。高周波誘導コイルを使用する場合、高周波誘導コイル自体が発熱してルツボ10を温めるわけでないので、コイルの消耗を抑え長期間使用することができる。ルツボ10および加熱部20の具体的な構成は、実施形態のものには限定されない。
加熱部20により加熱した原料M1は、SiとCがそれぞれ昇華ガスとなってルツボ10の内部空間内に充満する。昇華ガスとなったSiとCは、他の部位より低温になるように制御された結晶設置部4a上の種結晶であるSiC単結晶M2上に、過飽和となって凝集し、単結晶のSiCが成長する。
図2に示すように、上記過程において、Siの昇華ガスが、ルツボ10の側壁3などの内壁と反応し、ルツボ10の構成材料としての黒鉛の消耗が生じることによって黒鉛の粒子Pが発生する。大きな黒鉛粒子はそのままルツボ10の底面2に落下し、SiC単結晶の品質に影響を与え難いものの、小さな粒子は、昇華ガスの流れに乗って上昇し、種結晶であるSiC単結晶M2の表面に付着し、SiC単結晶M2に取り込まれることがある。SiC単結晶M2に取り込まれた黒鉛粒子は、最終生産物であるSiC単結晶およびSiCウエハの中で異物となり得るとともに、結晶の乱れを引き起こし得る。よって、SiC単結晶における黒鉛粒子の含有量を極力少なくすることが、SiCウエハを製造する上で重要な課題である。
SiC単結晶およびSiCウエハにおける黒鉛粒子の含有度合いを左右するファクタには、Siの昇華ガスと黒鉛材料の反応性に基づく発生量と、黒鉛粒子の運ばれやすさの指標である輸送性とが存在する。以下、発生量と輸送性について、順に説明する。
(発生量)
黒鉛粒子がルツボ10内に発生する主たる原因は、Siの昇華ガスが、ルツボ10を構成する黒鉛材料を消耗させ、黒鉛材料の組織を浸食するためである。そして、浸食の結果発生する黒鉛粒子の発生量は、黒鉛材料とSiの昇華ガスとの反応性に対し、正の相関を有する。黒鉛材料と、黒鉛材料を浸食するSiとの反応は、例えば以下の式(3)ように表現される。
黒鉛粒子がルツボ10内に発生する主たる原因は、Siの昇華ガスが、ルツボ10を構成する黒鉛材料を消耗させ、黒鉛材料の組織を浸食するためである。そして、浸食の結果発生する黒鉛粒子の発生量は、黒鉛材料とSiの昇華ガスとの反応性に対し、正の相関を有する。黒鉛材料と、黒鉛材料を浸食するSiとの反応は、例えば以下の式(3)ように表現される。
2C(s)+Si(g)→SiC2(g) ・・・(3)
この反応では、Siは気相であり、黒鉛材料の通気率(気体透過率)が高いほど、黒鉛材料の内部にSiが浸透し、Siとの反応性が高くなる(反応しやすくなる)。また、黒鉛材料を構成する黒鉛の粒界におけるCがSiと反応し、SiC2のガスとして脱離していくので、粒子の脱落の原因を引き起こす。
さらに黒鉛材料は、その黒鉛化度に比例して、Siとの反応性が低下する。よって、黒鉛粒子の発生量と、黒鉛材料の通気率または黒鉛化度との間には、以下の式(4)、(5)によって表される比例関係が成立する。
[発生量] ∝ [通気率] ・・・(4)
[発生量] ∝ e-[黒鉛化度] ・・・(5)
[発生量] ∝ e-[黒鉛化度] ・・・(5)
なお、黒鉛化度は、アレニウスの式の活性化エネルギーEaに影響するパラメータであるため、発生量はe^[黒鉛化度]-1に比例する。黒鉛化度は、X線回折分析によって分析することができる。
上記式(4)、(5)をまとめると、発生量について、以下の式(6)の比例関係が成立する。ここで、μは黒鉛材料の通気率、pは黒鉛材料の黒鉛化度である。
[発生量] ∝ μ・e-p ・・・(6)
ここで、μは通気率[m2]であるが、JIS R2115に規定する試験方法によって得られる値である。また、pは黒鉛化度[-]であるが、X線回折分析によって得られるd002を用い、下記の式(7)によって得られる値である
p = (3.44―d002)/0.09 ・・・(7)
(輸送性)
黒鉛粒子の運ばれやすさの指標である輸送性は、黒鉛粒子がルツボ10内において、種結晶であるSiC単結晶M2の方向に、上昇して運ばれる傾向の度合いである。言い換えると、黒鉛粒子の輸送性は、SiおよびCの昇華ガスに対抗して、黒鉛粒子が落下できるかどうかである。輸送性は、黒鉛粒子の重量と相関し、以下の式(8)によって表される比例関係が成立する。
黒鉛粒子の運ばれやすさの指標である輸送性は、黒鉛粒子がルツボ10内において、種結晶であるSiC単結晶M2の方向に、上昇して運ばれる傾向の度合いである。言い換えると、黒鉛粒子の輸送性は、SiおよびCの昇華ガスに対抗して、黒鉛粒子が落下できるかどうかである。輸送性は、黒鉛粒子の重量と相関し、以下の式(8)によって表される比例関係が成立する。
dは黒鉛粒子の平均粒子径[m]であるが、昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料の断面から観察される任意の粒子10個の粒子径(長径)の平均値から得ることができる。ρは真密度[kg/m3]、gは重力加速度[m/s2]である。
以上を総括すると、黒鉛材料の評価は、以下の式(9)によって求められる評価指数Kによって行うことができる。評価指数Kは、発生量の決定因子である式(6)と、輸送性の決定因子である式(8)の積によって求められる。
黒鉛材料の評価指数Kが、1~10×108ms2/kgの範囲にあれば、ルツボ10からの黒鉛粒子の脱落が抑制され、得られたSiC単結晶に取り込まれる黒鉛粒子の量を抑制し、ひいては、黒鉛粒子の含有量が少ないSiCウエハを製造することができる。また、評価指数Kが、1~10×108ms2/kgの範囲にある黒鉛材料により構成されたルツボ10を用いることにより、黒鉛粒子の含有量を抑えたSiC単結晶およびSiCウエハを製造することができる。
さらに、黒鉛材料は、平均粒子径dが、50~100×10-6mであることが望ましい。平均粒子径dが50~100×10-6mであることにより、黒鉛粒子の上昇を抑制し、SiC単結晶に取り込まれる黒鉛粒子の量を抑制することができる。
また、黒鉛材料は、黒鉛化度pが、0.80~0.95であることが望ましい。黒鉛化度pが0.80~0.95であることにより、黒鉛の結晶のエッジ面の露出を少なくすることができるので、反応性を抑制することができる。
(実施例)
まず、実施例1の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料を用いて、図1に示すような内部に円柱状の内部空間が設けられた実施例1のルツボを準備した。次に、ルツボの内底部に原料として粉末状態のSiC粉末原料を充填した。SiC粉末原料の粉末粒子の粒径は、150~800μmであった。
まず、実施例1の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料を用いて、図1に示すような内部に円柱状の内部空間が設けられた実施例1のルツボを準備した。次に、ルツボの内底部に原料として粉末状態のSiC粉末原料を充填した。SiC粉末原料の粉末粒子の粒径は、150~800μmであった。
さらに、結晶設置部に種結晶であるSiC単結晶を設置し、昇華法により、6インチのSiCインゴット(単結晶)を結晶成長させた。作製されたSiCインゴットにおける黒鉛粒子の含有量、いわゆるカーボンインクルージョン密度を測定した。カーボンインクルージョン密度は、SiCインゴットを400μm程度にスライスおよび研磨した後、透過型光学顕微鏡を用いて、観察する体積中に存在するインクルージョン個数を数えて求めた(3視野平均)。なお、インクルージョン個数は、昇華レートに比例して増加するため、結晶成長試験の際の昇華レート(kg/s)で除して正規化し、昇華レートの影響を排除して比較した。なお、図4~図8の観測視野は674×506μmであった。
実施例1において、評価係数Kは2.6ms2/kg、インクルージョン指数は2回の試験を行い、それぞれ9.4×106個s/kg、1.6×106個s/kgであった。以下、実施例2および比較例1~3の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料を用いてルツボを作成し、実施例1と同様の手法にて、各種値を測定した。以下の表1および表2は、各実施例および比較例の数値を挙げている。なお、インクルージョン指数はインクルージョン密度を昇華レートで除して得た。
図3は、実施例および比較例の評価指数Kとインクルージョン指数との関係を示すグラフである。評価指数Kとインクルージョン指数との間には、相関関係が存在することが理解される。
図4は、実施例1のSiC単結晶をスライスして観察した光学顕微鏡写真である。図5は、実施例2のSiC単結晶をスライスして観察した光学顕微鏡写真である。
実施例のSiC単結晶においては、黒鉛粒子の含有が少ないことが観察される。
実施例のSiC単結晶においては、黒鉛粒子の含有が少ないことが観察される。
図6は、比較例1のSiC単結晶をスライスして観察した光学顕微鏡写真である。図7は、比較例2のSiC単結晶をスライスして観察した光学顕微鏡写真である。図8は、比較例3のSiC単結晶をスライスして観察した光学顕微鏡写真である。
比較例のSiC単結晶においては、実施例に比べて、黒鉛粒子の含有が多いことが観察される。
比較例のSiC単結晶においては、実施例に比べて、黒鉛粒子の含有が多いことが観察される。
2 底面
3 側壁
4 上面蓋部
4a 結晶設置部
10 ルツボ(黒鉛ルツボ)
20 加熱部
100 SiC単結晶製造装置
3 側壁
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10 ルツボ(黒鉛ルツボ)
20 加熱部
100 SiC単結晶製造装置
Claims (4)
- 前記平均粒子径dが、50~100×10-6mである、請求項1に記載の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料。
- 前記黒鉛化度pが、0.80~0.95である、請求項1または2に記載の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の昇華法SiC単結晶製造用黒鉛材料により構成されるルツボ。
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