JP2023149746A - 電荷輸送性組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機光電変換素子の電荷輸送性薄膜の形成に好適な電荷輸送性組成物およびその製造方法を提供する。【解決手段】例えば、有機光電変換素子における電荷輸送性薄膜を形成するための電荷輸送性組成物であって、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体からなる電荷輸送性物質と、水を含む溶媒とを含み、組成物中の隔膜ガルバニ電池式酸素センサーを用いて測定される溶存酸素濃度が5.2mg/L以下である電荷輸送性組成物。TIFF2023149746000032.tif2138(R1およびR2は、R1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよい、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されている炭素数1~40のアルキレン基である。)【選択図】なし

Description

本発明は、電荷輸送性組成物およびその製造方法に関する。
電子素子、特に、有機光電変換素子は、有機半導体を用いて光エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスであり、例えば有機太陽電池が挙げられる。
有機太陽電池は、活性層や電荷輸送性物質に有機物を使用した太陽電池素子であり、M.グレッツェルによって開発された色素増感太陽電池と、C.W.タンによって開発された有機薄膜太陽電池とがよく知られている(非特許文献1、2)。
いずれも軽量・薄膜で、フレキシブル化可能である点、ロール・トゥ・ロールでの生産が可能である点など、現在主流の無機系太陽電池とは異なる特長を持っていることから、新たな市場形成が期待されている。
さらに有機薄膜太陽電池は、既存のシリコン系材料を使用した光電変換素子と比較して、低照度においても高い光電変換効率を示すこと、素子の薄化および画素微細化が可能であること、カラーフィルターの性質を兼ね備えることが可能であること等の特長から、太陽電池用途だけでなく、イメージセンサーをはじめとする光センサー用途としても注目されている(特許文献1、2、非特許文献3)。以下、有機太陽電池(色素増感太陽電池および有機薄膜太陽電池)に加えて、光センサー等の用途を含んで有機光電変換素子(以下OPVと略す場合もある)と総称する。
有機光電変換素子は、活性層(光電変換層)、電荷(正孔、電子)捕集層、および電極(陽極、陰極)等を備えて構成される。これらの中でも、正孔捕集層は活性層で生成した正孔を電極へと抽出する役割があり、活性層-正孔捕集層間のエネルギー障壁を小さくすることで、効果的に行うことができる。
従来の有機光電変換素子の活性層には、電子供与性有機材料(p型有機半導体)として共役系化合物、電子受容性有機材料(n型有機半導体)としてn型の半導体特性を有する共役系化合物C60などのフラーレンやフラーレン誘導体を使用した活性層(以下、FA活性層と略す)が用いられてきた。
これらFA活性層に対しては、上記の観点に加え、量産プロセスを考え、塗布型の正孔捕集層であるPEDOT/PSS等の水分散性高分子有機導電材料が広く用いられており、例えば、Qun Wanらによって、光電変換効率(以下、PCEと略す)が約11%を示すことが報告されている(非特許文献4)。しかしながら、FA活性層はPCEが実用化レベルに到達していないだけでなく、理論限界に近づいていることもあり、活性層の開発が進められてきた。
そこで近年、新規なn型有機半導体として、フラーレンやフラーレン誘導体ではない非フラーレンアクセプター(Non-Fullerene Acceptor:以下、NFAと略す)と呼ばれる新材料が開発され、これを使用したNFA活性層が開発された。NFA活性層は光電流の増加や電池電圧の向上などにより、FA活性層を用いた場合よりも高いPCEを示す。実際、Jianhui Houらによって、NFA活性層を用いることでPCEが18%を示すことが報告されている(非特許文献5)。
一方で、これらの高いPCEを示す有機光電変換素子は正孔捕集層に、量産化に不利とされる蒸着型の正孔捕集層であるMoO3が広く用いられている。これは新規活性層のHOMO-LUMOの準位が従来活性層よりも深く、PEDOT/PSSのイオン化ポテンシャル(以下、Ipと略す)との間にエネルギーギャップが生じたためである。そのため、深いIpを有する塗布型の正孔捕集材料が求められている(非特許文献6)。
このように、有機光電変換素子の性能向上の観点から、PCEを向上させることが多く試みられてきたが、有機光電変換素子が長期的に使用されることを考慮すると、素子の耐久性(耐光性、耐熱性)の向上も重要な課題である。
特開2003-234460号公報 特開2008-258474号公報
Nature, vol.353, 737-740(1991) Appl. Phys. Lett., Vol.48, 183-185 (1986) Scientific Reports, Vol.5:7708, 1-7 (2015) Adv. Funct. Mater., vol.26, 6635-6640(2016) Adv. Mater., vol.32, 1908205(2020) Sol. RRL, 2000749(2021)
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光電変換素子の電荷輸送性薄膜の形成に好適であり、特に、有機光電変換素子の正孔捕集層として用いた場合には、得られる素子の耐久性を大きく向上させ得る電荷輸送性組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定の繰り返し単位を含有するポリチオフェン誘導体と、水を含む溶媒とを含み、かつ溶存酸素濃度が特定範囲に調整された電荷輸送性組成物が、有機光電変換素子における電荷輸送性薄膜の形成に好適であり、特に、有機光電変換素子の正孔捕集層として用いた場合には、得られる素子の耐久性を大きく向上させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の電荷輸送性組成物およびその製造方法を提供する。
1. 有機光電変換素子における電荷輸送性薄膜を形成するための電荷輸送性組成物であって、
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体からなる電荷輸送性物質と、水を含む溶媒とを含み、
上記組成物中の隔膜ガルバニ電池式酸素センサーを用いて測定される溶存酸素濃度が5.2mg/L以下である電荷輸送性組成物。
Figure 2023149746000001
(式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]p-Re、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよく、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、Reは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。)
2. 上記R1およびR2が、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]p-Re、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよい、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されている炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、上記Reが、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である(ただし、R1およびR2は、少なくとも一方がスルホン酸基またはスルホン酸塩基であるか、-O-Y-O-である。)1の電荷輸送性組成物。
3. 上記R1およびR2が、R1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yが、エーテル結合を含んでいてもよい、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されている炭素数1~40のアルキレン基である1または2の電荷輸送性組成物。
4. 上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体が、式(1-4)または式(1’-1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体である1~3のいずれかの電荷輸送性組成物。
Figure 2023149746000002
(式中、Ryは、炭素数1~6のアルキル基、またはフッ素原子を表す。式(1-4)中、Mは、水素原子、Li、NaおよびKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(RS3またはHNC55を表す。RSは、互いに独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。)
5. さらに、電子受容性ドーパント物質を含み、上記電子受容性ドーパント物質が、下記式(2)で表されるアリールスルホン酸およびヘテロポリ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む1~4のいずれかの電荷輸送性組成物。
Figure 2023149746000003
(式中、Aは、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、2~4価のパーフルオロビフェニル基を表し、lは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦l≦4を満たす整数であり、qは、BとXとの結合数を示し、2~4を満たす整数である。)
6. 上記電子受容性ドーパント物質が、上記式(2)で表されるアリールスルホン酸およびヘテロポリ酸を含む5の電荷輸送性組成物。
7. 上記ヘテロポリ酸が、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸およびケイタングステン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む5または6の電荷輸送性組成物。
8. 上記溶媒中の有機溶媒の含有量が、10質量%以下である1~7のいずれかの電荷輸送性組成物。
9. さらに、界面活性剤を含む1~8のいずれかの電荷輸送性組成物。
10. 1~9のいずれかの電荷輸送性組成物から得られる電荷輸送性薄膜を備える電子素子。
11. 上記電子素子が、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池および光センサーからなる群より選ばれる有機光電変換素子である10の電子素子。
12. 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体からなる電荷輸送性物質と、水を含む溶媒とを含む電荷輸送性組成物の製造方法であって、
上記各成分を含む混合物中の隔膜ガルバニ電池式酸素センサーを用いて測定される溶存酸素濃度を5.2mg/L以下になるまで低減させる脱溶存酸素処理工程を含む電荷輸送性組成物の製造方法。
Figure 2023149746000004
(式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]p-Re、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよく、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、Reは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。)
13. 上記電荷輸送性組成物が、さらに電子受容性ドーパント物質を含み、上記電子受容性ドーパント物質が、下記式(2)で表されるアリールスルホン酸およびヘテロポリ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む12の電荷輸送性組成物の製造方法。
Figure 2023149746000005
(式中、Aは、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、2~4価のパーフルオロビフェニル基を表し、lは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦l≦4を満たす整数であり、qは、BとXとの結合数を示し、2~4を満たす整数である。)
14. 脱溶存酸素処理工程を、不活性ガスバブリングまたは減圧脱気により行う12または13の電荷輸送性組成物の製造方法。
本発明の有機光電変換素子の電荷輸送性組成物は、市場で安価に入手可能な、あるいは公知の方法で簡便に合成できるポリチオフェン誘導体からなる電荷輸送性物質を用いて製造可能なだけでなく、それから得られる薄膜は、光電変換素子の正孔捕集層として用いた場合において、素子の耐久性を大きく向上し得る。特にNFA活性層と組み合わせて用いられた場合には、得られる電荷輸送性薄膜が有する深いIpによりNFA活性層とのエネルギーギャップを低減し、素子の高電圧化を実現し得る。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の電荷輸送性組成物(以下、単に「組成物」と表記することもある。)は、有機光電変換素子における電荷輸送性薄膜を形成するための電荷輸送性組成物であって、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体からなる電荷輸送性物質と、水を含む溶媒とを含み、上記組成物中の隔膜ガルバニ電池式酸素センサーを用いて測定される溶存酸素濃度が5.2mg/L以下であることを特徴とする。なお、本発明において、「固形分」とは電荷輸送性組成物の全成分のうち、溶剤以外のものの総称である。
Figure 2023149746000006
式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]p-Re、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよく、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、Reは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。
炭素数1~40のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコサニル基、ベヘニル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基等が挙げられる。本発明においては、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。
炭素数1~40のフルオロアルキル基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~40のアルキル基であれば特に限定されないが、その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、1,1,2-トリフルオロエチル基、1,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,2,2,2-テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、1-フルオロプロピル基、2-フルオロプロピル基、3-フルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,2-ジフルオロプロピル基、1,3-ジフルオロプロピル基、2,2-ジフルオロプロピル基、2,3-ジフルオロプロピル基、3,3-ジフルオロプロピル基、1,1,2-トリフルオロプロピル基、1,1,3-トリフルオロプロピル基、1,2,3-トリフルオロプロピル基、1,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3-トリフルオロプロピル基、2,3,3-トリフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1,2,2-テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3-テトラフルオロプロピル基、1,2,2,3-テトラフルオロプロピル基、1,3,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,3,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロピル基、1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
炭素数1~40のアルコキシ基としては、その中のアルキル基が直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、c-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキソキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、n-エイコサニルオキシ基等が挙げられる。
炭素数1~40のフルオロアルコキシ基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~40のアルコキシ基であれば特に限定されないが、その具体例としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、パーフルオロメトキシ基、1-フルオロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、1,1-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、1,1,2-トリフルオロエトキシ基、1,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ基、パーフルオロエトキシ基、1-フルオロプロポキシ基、2-フルオロプロポキシ基、3-フルオロプロポキシ基、1,1-ジフルオロプロポキシ基、1,2-ジフルオロプロポキシ基、1,3-ジフルオロプロポキシ基、2,2-ジフルオロプロポキシ基、2,3-ジフルオロプロポキシ基、3,3-ジフルオロプロポキシ基、1,1,2-トリフルオロプロポキシ基、1,1,3-トリフルオロプロポキシ基、1,2,3-トリフルオロプロポキシ基、1,3,3-トリフルオロプロポキシ基、2,2,3-トリフルオロプロポキシ基、2,3,3-トリフルオロプロポキシ基、3,3,3-トリフルオロプロポキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロプロポキシ基、1,1,2,3-テトラフルオロプロポキシ基、1,2,2,3-テトラフルオロプロポキシ基、1,3,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,3,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロポキシ基、1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、パーフルオロプロポキシ基等が挙げられる。
炭素数1~40のアルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコサニレン基等が挙げられる。
炭素数6~20のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基およびナフチル基が好ましい。
炭素数6~20のアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、アントラセノキシ基、ナフトキシ基、フェナントレノキシ基、フルオレノキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
スルホン酸基およびスルホン酸塩基としては、下記式(S)で表される基が挙げられる。
Figure 2023149746000007
(式中、Mは、水素原子、Li、NaおよびKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(RS3またはHNC55を表す。RSは、互いに独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。)
Sの炭素数1~6のアルキル基としては、上記アルキル基において例示した基と同じものが挙げられる。
また、RSが置換基を有するアルキル基である場合の当該置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
炭素数1~6のアルキル基としては、上記アルキル基において例示した基と同じものが挙げられる。
炭素数1~6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ等が挙げられ、炭素数6~20のアリール基の具体例としては、フェニル、トリル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル基等が挙げられる。
特に、置換基としてはヒドロキシ基が好ましく、ヒドロキシ基を有するアルキル基の具体例としては、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも、RSとしては、水素原子、炭素数1~3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましい。
上記Mは、水素原子、アルカリ金属、NH(RS3が好ましく、水素原子、NH(RS3がより好ましい。
上記式(S)で表されるスルホン酸基およびスルホン酸塩基の具体例としては、下記式(S1)~(S7)で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2023149746000008
上記R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]p-Re、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよい、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されている炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、上記Reが、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である(ただし、R1およびR2は、少なくとも一方がスルホン酸基またはスルホン酸塩基であるか、-O-Y-O-である。)ことが好ましい。
上記R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]p-Re、-ORf、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基であるか、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yが、エーテル結合を含んでいてもよい、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されている炭素数1~40のアルキレン基である(ただし、R1およびR2は、少なくとも一方がスルホン酸基またはスルホン酸塩基であるか、-O-Y-O-である。)ことがより好ましい。
上記R1およびR2は、R1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yが、エーテル結合を含んでいてもよい、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されている炭素数1~40のアルキレン基であることがより一層好ましい。
a~Rdは、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基を表す。これらの基の具体例としては上記で挙げたものと同じである。
中でも、Ra~Rdは、互いに独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、またはフェニル基が好ましい。
eは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基を表す。これらの基の具体例としては上記で挙げたものと同じである。
中でも、Reは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、またはフェニル基が好ましく、水素原子、メチル基、n-プロピル基、またはn-ブチル基がより好ましい。
また、pは、1~5が好ましく、1、2または3がより好ましい。
fは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基または炭素数6~20のアリール基であるが、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、またはフェニル基が好ましく、-CH2CF3がより好ましい。
本発明においては、R1は、好ましくは水素原子またはスルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、より好ましくはスルホン酸基またはスルホン酸塩基であり、かつ、R2は、好ましくは炭素数1~40のアルコキシ基または-O-[Z-O]p-Re、より好ましくは-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]p-Reまたは-ORf、より一層好ましくは-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]p-Re、-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH3、-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OHまたは-O-CH2CH2-OHであるか、または、R1およびR2が互いに結合して形成される-O-Y-O-である。
例えば、本発明の好ましい態様に係る上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基またはスルホン酸塩基であり、R2が、スルホン酸基またはスルホン酸塩基以外である繰り返し単位を含むか、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-である繰り返し単位を含む。
好ましくは、上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基またはスルホン酸塩基であり、R2が、炭素数1~40のアルコキシ基もしくは-O-[Z-O]p-Reである繰り返し単位を含むか、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-である繰り返し単位を含む。
より好ましくは、上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基またはスルホン酸塩基であり、R2が、-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]p-Reまたは-ORfである繰り返し単位を含む。
より一層好ましくは、上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基またはスルホン酸塩基であり、R2が、-O[C(Rab)-C(Rcd)-O]p-Reである繰り返し単位を含むか、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-である繰り返し単位を含む。
更に好ましくは、上記ポリチオフェン誘導体は、R1が、スルホン酸基またはスルホン酸塩基であり、R2が、-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH3、-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OH、もしくは-O-CH2CH2-OHである繰り返し単位を含むか、またはR1およびR2が互いに結合して、下記式(Y1)および/または(Y2)で表される基である繰り返し単位を含む。
Figure 2023149746000009
(式中、Ryは、炭素数1~6のアルキル基、またはフッ素原子を表す。Mは、上記と同じである。)
上記Ryの炭素数1~6のアルキル基としては、R1およびR2の説明において例示した基と同じものが挙げられる。炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基およびエチル基がより好ましく、メチル基がより一層好ましい。
上記ポリチオフェン誘導体の好ましい具体例としては、例えば、下記式(1-1)~(1-5)で示される繰り返し単位の少なくとも一種を含むポリチオフェンを挙げることができ、特に良好な導電性が再現性良く得られ、溶媒に対する溶解性が高い点から、下記式(1-5)で示される繰り返し単位を含むポリチオフェンがより好ましい。
Figure 2023149746000010
(式中、RyおよびMは、上記と同じである。)
また、上記ポリチオフェン誘導体の好適な構造としては、例えば、下記式(1a)で表される構造を有するポリチオフェン誘導体を挙げることができる。なお、下記式において、各単位はランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。
Figure 2023149746000011
式中、a~dは、各単位のモル比を表し、0≦a≦1、0≦b≦1、0<a+b≦1、0≦c<1、0≦d<1、a+b+c+d=1を満足する。Mは、上記と同じである。
さらに、上記ポリチオフェン誘導体は、ホモポリマーまたはコポリマー(統計的、ランダム、勾配、およびブロックコポリマーを含む)であってよい。モノマーAおよびモノマーBを含むポリマーとしては、ブロックコポリマーは、例えば、A-Bジブロックコポリマー、A-B-Aトリブロックコポリマー、および(AB)m-マルチブロックコポリマーを含む。ポリチオフェンは、他のタイプのモノマー(例えば、チエノチオフェン、セレノフェン、ピロール、フラン、テルロフェン、アニリン、アリールアミン、およびアリーレン(例えば、フェニレン、フェニレンビニレン、およびフルオレン等)等)から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
本発明において、ポリチオフェン誘導体における式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリチオフェン誘導体に含まれる全繰り返し単位中、50モル%超が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がより一層好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%が最も好ましい。
また、ポリチオフェン誘導体における式(1)で表される繰り返し単位のうち、スルホン酸基またはスルホン酸塩基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリチオフェン誘導体における式(1)で表される繰り返し単位中、10モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、50モル%以上がより一層好ましく、100モル%がさらに好ましい。
本発明において、重合に使用される出発モノマーの純度に応じて、形成されるポリマーは、不純物から誘導される繰り返し単位を含有してもよい。本発明において、上記の「ホモポリマー」という用語は、1つのタイプのモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマーを意味するものであるが、不純物から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。本発明において、上記ポリチオフェン誘導体は、基本的に全ての繰り返し単位が、上記式(1)で表される繰り返し単位であるポリマーであることが好ましく、上記式(1-1)~(1-5)で表される繰り返し単位の少なくとも1つを含むポリマーであることがより好ましい。
上記式(S)において、MとしてNH(RS3を導入する場合、スルホン酸基に所定のアミン化合物が付加したアミン付加体を形成すればよい。
アミン付加体の形成に使用できるアミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、s-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン化合物;N-エチルメチルアミン、N-メチル-n-プロピルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、N-メチル-n-ブチルアミン、N-メチル-s-ブチルアミン、N-メチル-t-ブチルアミン、N-メチルイソブチルアミン、ジエチルアミン、N-エチル-n-プロピルアミン、N-エチルイソプロピルアミン、N-エチル-n-ブチルアミン、N-エチル-s-ブチルアミン、N-エチル-t-ブチルアミン、ジプロピルアミン、N-n-プロピルイソプロピルアミン、N-n-プロピル-n-ブチルアミン、N-n-ブロピル-s-ブチルアミン等のジアルキルアミン化合物;ジフェニルアミン等のアルキルアリールアミン化合物等の二級アミン化合物;N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチル-n-プロピルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N,N-ジメチル-n-ブチルアミン、N,N-ジメチル-s-ブチルアミン、N,N-ジメチル-t-ブチルアミン、N,N-ジメチルイソブチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N-メチルジ(n-プロピル)アミン、N-メチルジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジエチル-n-ブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等のトリアルキルアミン化合物が挙げられるが、アミン付加体の溶解性、得られる電荷輸送性薄膜の電荷輸送性等のバランスを考慮すると、三級アミン化合物が好ましく、トリアルキルアミン化合物がより好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミンがより一層好ましい。
アミン付加体は、アミン自体またはその溶液にポリチオフェン誘導体を投入し、よく撹拌することで得ることができる。
本発明においては、上記のポリチオフェン誘導体は、還元剤で処理したものを用いてもよい。
ポリチオフェン誘導体では、それらを構成する繰り返し単位の一部において、その化学構造が「キノイド構造」と呼ばれる酸化型の構造となっている場合がある。用語「キノイド構造」は、用語「ベンゼノイド構造」に対して用いられるもので、芳香環を含む構造である後者に対し、前者は、その芳香環内の二重結合が環外に移動し(その結果、芳香環は消失する)、環内に残る他の二重結合と共役する2つの環外二重結合が形成された構造を意味する。当業者にとって、これらの両構造の関係は、ベンゾキノンとヒドロキノンの構造の関係から容易に理解できるものである。種々の共役ポリマーの繰り返し単位についてのキノイド構造は、当業者にとって周知である。一例として、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体の繰り返し単位に対応するキノイド構造を、下記式(1’)に示す。
Figure 2023149746000012
式(1’)中、R1およびR2は、上記式(1)において定義されたとおりである。
このキノイド構造は、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体がドーパントにより酸化反応を受けるプロセス、いわゆるドーピング反応によって生じ、ポリチオフェン誘導体に電荷輸送性を付与する「ポーラロン構造」および「バイポーラロン構造」と称される構造の一部を成すものである。これらの構造は公知である。有機太陽電池素子の作製において、「ポーラロン構造」および/または「バイポーラロン構造」の導入は必須であり、実際、有機太陽電池素子作成時、電荷輸送性組成物から形成された薄膜を焼成処理するときに、上記のドーピング反応を意図的に起こさせて、これを達成している。このドーピング反応を起こさせる前のポリチオフェン誘導体にキノイド構造が含まれているのは、ポリチオフェン誘導体が、その製造過程(特に、その中のスルホン化工程)において、ドーピング反応と同等の、意図しない酸化反応を起こしたためと考えられる。
上記ポリチオフェン誘導体に含まれるキノイド構造の量と、ポリチオフェン誘導体の有機溶媒に対する溶解性や分散性の間には相関があり、キノイド構造の量が多くなると、その溶解性や分散性は低下する傾向にある。このため、電荷輸送性組成物から薄膜が形成された後でのキノイド構造の導入は問題を生じないが、上記の意図しない酸化反応により、ポリチオフェン誘導体にキノイド構造が過剰に導入されていると、電荷輸送性組成物の製造に支障をきたす場合がある。ポリチオフェン誘導体においては、有機溶媒に対する溶解性や分散性にばらつきがあることが知られているが、その原因の1つは、上記の意図しない酸化反応によりポリチオフェンに導入されたキノイド構造の量が、各々のポリチオフェン誘導体の製造条件の差に応じて変動することであると考えられる。
そこで、上記ポリチオフェン誘導体を、還元剤を用いる還元処理に付すと、ポリチオフェン誘導体にキノイド構造が過剰に導入されていても、還元によりキノイド構造が減少し、ポリチオフェン誘導体の有機溶媒に対する溶解性や分散性が向上するため、均質性に優れた薄膜を与える良好な電荷輸送性組成物を、安定的に製造することが可能になる。
還元処理の条件は、上記キノイド構造を還元して非酸化型の構造、すなわち、上記ベンゼノイド構造に適切に変換する(例えば、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体においては、上記式(1’)で表されるキノイド構造を、上記式(1)で表される構造に変換する)ことができるものである限り特に制限はないが、例えば、適当な溶媒の存在下または非存在下、単にポリチオフェン誘導体を還元剤と接触させることにより、この処理を行うことができる。
このような還元剤も還元が適切にされる限り特に制限はないが、例えば、市販品で入手が容易であるアンモニア水、ヒドラジン等が適当である。
また、還元剤の量は、用いる還元剤の量に応じて異なるため一概に規定できないが、処理すべきポリチオフェン誘導体100質量部に対し、通常、還元が適切にされる観点から、0.1質量部以上であり、過剰な還元剤が残存しないようにする観点から、10質量部以下である。
還元処理の具体的な方法の一例としては、ポリチオフェン誘導体を28%アンモニア水中で、室温にて終夜撹拌する。このような比較的温和な条件下での還元処理により、ポリチオフェン誘導体の有機溶媒に対する溶解性や分散性は十分に向上する。
本発明の電荷輸送性組成物において、ポリチオフェン誘導体としてそのアミン付加体を使用する場合、上記還元処理は、アミン付加体を形成する前に行っても、アミン付加体を形成した後に行ってもよい。
なお、この還元処理によりポリチオフェン誘導体の溶媒に対する溶解性や分散性が変化する結果、処理の開始時には反応系に溶解していなかったポリチオフェン誘導体が、処理の完了時には溶解している場合がある。そのような場合には、ポリチオフェン誘導体と非相溶性の有機溶媒(スルホン化ポリチオフェンの場合、アセトン、イソプロピルアルコール等)を反応系に添加して、ポリチオフェン誘導体の沈殿を生じさせ、ろ過する等の方法により、ポリチオフェン誘導体を回収することができる。
上記式(1’)のキノイド構造の好ましい具体例としては、例えば、下記式(1’-1)で示される構造が挙げられる。
Figure 2023149746000013
(式中、Ryは、上記と同じである。)
式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体の重量平均分子量は、約1,000~約1,000,000が好ましく、約5,000~約100,000がより好ましく、約10,000~約50,000がより一層好ましい。重量平均分子量を下限以上とすることで、良好な導電性が再現性よく得られ、上限以下とすることで、溶媒に対する溶解性が向上する。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値である。
本発明の電荷輸送性組成物に含まれるポリチオフェン誘導体は、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
また、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体は、市販品を用いても、チオフェン誘導体などを出発原料とした公知の方法によって重合したものを用いてもよいが、いずれの場合も再沈殿やイオン交換等の方法により精製されたものを用いることが好ましい。精製したものを用いることで、本発明の電荷輸送性組成物から得られる薄膜を備えた有機太陽電池素子の特性をより高めることができる。市販品としては、例えば、東ソー(株)製のセルフトロン(SELFTRON,登録商標)等が挙げられる。
なお、共役ポリマーのスルホン化およびスルホン化共役ポリマー(スルホン化ポリチオフェンを含む)は、Seshadriらの米国特許第8,017,241号に記載されている。また、スルホン化ポリチオフェンについては、国際公開第2008/073149号および国際公開第2016/171935号に記載されている。
本発明においては、電荷輸送性組成物に含まれる式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体の少なくとも一部は、溶媒に溶解している。
本発明においては、電荷輸送性物質として、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体と、それ以外の電荷輸送性化合物からなる電荷輸送性物質を併用してよいが、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体のみが含まれることが好ましい。
有機薄膜太陽電池において、正孔捕集層のイオン化ポテンシャルは、活性層中におけるp型半導体材料のイオン化ポテンシャルに近接した値であることが好ましい。その差の絶対値は、0~1eVが好ましく、0~0.5eVがより好ましく、0~0.2eVがより一層好ましい。
したがって、本発明の電荷輸送性組成物には、これを用いて得られる電荷輸送性薄膜のイオン化ポテンシャルを調節することを目的として、下記式(2)で表されるアリールスルホン酸化合物およびヘテロポリ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の電子受容性ドーパント物質を含む。
Figure 2023149746000014
(式中、Aは、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、2~4価のパーフルオロビフェニル基を表し、lは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦l≦4を満たす整数であり、qは、BとXとの結合数を示し、2~4を満たす整数である。)
本発明において、好適に用いることができるアリールスルホン酸化合物の例としては、下記式(2-1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023149746000015
式(2)で表されるアリールスルホン酸化合物は、公知の方法により合成することができ、例えば、国際公開第2006/025342号に記載の方法により合成することができる。
ヘテロポリ酸としては、国際公開第2010/058777号に記載されているリンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブテン酸ナトリウム、リンバナドモリブテン酸等のヘテロポリ酸化合物等の無機酸化剤が挙げられる。本発明では、溶媒に対する溶解性を考慮すると、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸およびケイタングステン酸が好ましく、特に水に対する溶解性を考慮すると、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸が好ましい。
電子受容性ドーパント物質の含有量は、発現する電荷輸送性、電荷輸送性物質等の種類を考慮して適宜設定されるものではあるが、通常、電荷輸送性物質1に対し、通常、電子受容性ドーパント物質0.05~10、好ましくは0.1~3.0、より好ましくは0.2~2.0である。
また、式(2)で表されるアリールスルホン酸化合物およびヘテロポリ酸を併用することが好ましく、この場合、式(2)で表されるアリールスルホン酸化合物とヘテロポリ酸の混合比率は、質量比で10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましい。
また、本発明の電荷輸送性組成物には、上記の式(2)で表されるアリールスルホン酸化合物およびヘテロポリ酸以外の電子受容性ドーパント物質を含んでいてもよい。その他の電子受容性ドーパント物質の具体例としては、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機強酸;塩化アルミニウム(III)(AlCl3)、四塩化チタン(IV)(TiCl4)、三臭化ホウ素(BBr3)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF3・OEt2)、塩化鉄(III)(FeCl3)、塩化銅(II)(CuCl2)、五塩化アンチモン(V)(SbCl5)、五フッ化砒素(V)(AsF5)、五フッ化リン(PF5)、トリス(4-ブロモフェニル)アルミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)等のルイス酸;ベンゼンスルホン酸、トシル酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5-スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4-ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号に記載されているナフタレンスルホン酸化合物(ただし、式(2)で表されるアリールスルホン酸化合物に包含されるものを除く)、特開2005-108828号公報に記載されているジノニルナフタレンスルホン酸および1,3,6-ナフタレントリスルホン酸等のアリールスルホン酸化合物、ならびにカンファスルホン酸等の有機強酸;7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)、ヨウ素等の有機酸化剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
その他の電子受容性ドーパント物質を含む場合、その含有量は、電子受容性ドーパント物質全体の20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、含まないことがより一層好ましい
本発明の電荷輸送性組成物は、成膜性の観点から、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は特に限定されるものではなく、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、アルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることができるが、本発明では、フッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。
本発明で用いるフッ素系界面活性剤は、市販品として入手可能である。
そのような市販品としては、デュポン社製のキャップストーン(Capstone,登録商標)FS-10、FS-22、FS-30、FS-31、FS-34、FS-35、FS-50、FS-51、FS-60、FS-61、FS-63、FS-64、FS-65、FS-66、FS-81、FS-83、FS-3100;第一工業製薬(株)製のノイゲンFN-1287;DIC(株)製のメガファックF-444、F-477、F-559等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
特に、ノニオン性界面活性剤である、キャップストーンFS-30、31、34、35、3100、ノイゲンFN-1287、メガファックF-559が好適である。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を含有している限り特に限定されるものではなく、カチオン性、アニオン性、ノニオン性のいずれでもよいが、フッ素系ノニオン性界面活性剤が好適であり、特に、下記式(A1)および(B1)から選ばれる少なくとも1種のフッ素系ノニオン性界面活性剤が好ましい。
Figure 2023149746000016
上記式中、Rは、フッ素原子を含有する1価の有機基を表し、nは、1~20の整数を表す。
有機基の具体例としては、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数2~20のヘテロアリール基等が挙げられる。
炭素数7~20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、p-メチルフェニルメチル基、m-メチルフェニルメチル基、o-エチルフェニルメチル基、m-エチルフェニルメチル基、p-エチルフェニルメチル基、2-プロピルフェニルメチル基、4-イソプロピルフェニルメチル基、4-イソブチルフェニルメチル基、α-ナフチルメチル基等が挙げられる。
ヘテロアリール基の具体例としては、2-チエニル基、3-チエニル基、2-フラニル基、3-フラニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピラジル基、3-ピラジル基、5-ピラジル基、6-ピラジル基、2-ピリミジル基、4-ピリミジル基、5-ピリミジル基、6-ピリミジル基、3-ピリダジル基、4-ピリダジル基、5-ピリダジル基、6-ピリダジル基、1,2,3-トリアジン-4-イル基、1,2,3-トリアジン-5-イル基、1,2,4-トリアジン-3-イル基、1,2,4-トリアジン-5-イル基、1,2,4-トリアジン-6-イル基、1,3,5-トリアジン-2-イル基等が挙げられる。
その他、アルキル基、アリール基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
上記nは、1~20の整数であれば、特に限定されるものではないが、1~10の整数がより好ましい。
これらの中でも、炭素数1~40のパーフルオロアルキル基Rfを有する下記(A2)で示されるパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエステルおよび(B2)で示されるパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテルまたはフッ素テロマーアルコールから選ばれる少なくとも1種のフッ素系ノニオン性界面活性剤がより好ましい。
Figure 2023149746000017
(式中、nは、上記と同じ意味を表す。)
炭素数1~40のパーフルオロアルキル基の具体例としては、上記炭素数1~40のアルキル基の水素原子が全てフッ素原子に置換された基を挙げることができる。
アセチレン系界面活性剤としては、市販品を用いることもでき、具体例としては、Evonik社製のSurfynol-104、Surfynol-420、Surfynol-440、Surfynol-465、Surfynol-485、Dynol-604等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アルキル系界面活性剤としては、市販品を用いることもでき、具体例としては、Sigma-Aldrich社製のPluronic-10R5、Pluronic-25R5、Pluronic F-127、Pluronic-L44、Genapol X-080、Genapol X-100、Genapol C-100、ならびにSolvay社製のlgepal C0-430、lgepal CA-630等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
界面活性剤を含む場合、その含有量は特に限定されるものではないが、活性層上での成膜性の向上と、得られる素子の光電変換効率の低下とのバランスを考慮すると、組成物全体の0.01~0.2質量%程度が好ましく、0.02~0.18質量%がより好ましく、0.1~0.15質量%が最も好ましい。
更に、本発明の組成物は、1種以上の金属酸化物ナノ粒子を含んでもよい。ナノ粒子とは、一次粒子についての平均粒子径がナノメートルのオーダー(典型的には500nm以下)である微粒子を意味する。金属酸化物ナノ粒子とは、ナノ粒子に成形された金属酸化物を意味する。
ナノ粒子とは、一次粒子についての平均粒子径がナノメートルのオーダー(典型的には500nm以下)である微粒子を意味する。金属酸化物ナノ粒子とは、ナノ粒子に成形された金属酸化物を意味する。
本発明で用いる金属酸化物ナノ粒子の一次粒子径は、ナノサイズであれば特に限定されるものではないが、活性層に対する密着性をより高めることを考慮すると、2~150nmが好ましく、3~100nmがより好ましく、5~50nmがより一層好ましい。なお、粒子径は、BET法による窒素吸着等温線を用いた測定値である。
本発明における金属酸化物ナノ粒子を構成する金属は、通常の意味での金属に加え、半金属も包含する。
通常の意味での金属としては、特に限定されるものではないが、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびW(タングステン)からなる群より選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
一方、半金属とは、化学的および/または物理的性質が金属と非金属の中間である元素を意味する。半金属の普遍的な定義は確立されていないが、本発明では、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)およびテルル(Te)の計6元素を半金属とする。これらの半金属は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また通常の意味での金属と組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いる金属酸化物ナノ粒子は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびW(タングステン)から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物を含むことが好ましい。なお、金属が2種以上の組み合わせである場合、金属酸化物は、個々の単独の金属の酸化物の混合物であってもよく、複数の金属を含む複合酸化物であってもよい。
金属酸化物の具体例としては、B23、B2O、SiO2、SiO、GeO2、GeO、As24、As23、As25、Sb23、Sb25、TeO2、SnO2、ZrO2、Al23、ZnO等が挙げられるが、B23、B2O、SiO2、SiO、GeO2、GeO、As24、As23、As25、SnO2、SnO、Sb23、TeO2、およびこれらの混合物が好ましく、SiO2がより好ましい。
なお、上記金属酸化物ナノ粒子は、1種以上の有機キャッピング基を含んでもよい。この有機キャッピング基は、反応性であっても非反応性であってもよい。反応性有機キャッピング基の例としては、紫外線またはラジカル開始剤により架橋できる有機キャッピング基が挙げられる。
特に、本発明においては、金属酸化物ナノ粒子として、SiO2ナノ粒子が分散媒に分散したシリカゾルを用いることが好適である。
シリカゾルとしては、特に限定されるものではなく、公知のシリカゾルから適宜選択して用いることができる。
市販のシリカゾルは通常、分散液の形態にある。市販のシリカゾルとしては、SiO2ナノ粒子が種々の溶媒、例えば、水、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、イソプロパノール、メタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸エチル、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等に分散したものが挙げられる。
特に、本発明においては、分散媒がアルコール溶媒または水であるシリカゾルが好ましく、分散媒がアルコール溶媒であるシリカゾルがより好ましい。アルコール溶媒としては、水溶性のアルコールが好ましく、メタノール、2-プロパノール、エチレングリコールがより好ましい。
市販のシリカゾルの具体例としては日産化学(株)製のスノーテックス(登録商標)ST-O、ST-OS、ST-O-40、ST-OL、日本化学工業(株)製のシリカドール20、30、40等の水分散シリカゾル;日産化学(株)製のメタノールシリカゾル、MA-ST-M、MA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、EG-ST等のオルガノシリカゾルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、シリカゾルの固形分濃度も特に限定されるものではないが、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~30質量%がより一層好ましい。
金属酸化物ナノ粒子を使用する場合、その含有量は、特に限定されるものではないが、活性層に対する密着性を十分に発揮させることを考慮すると、電荷輸送性物質100質量部に対し、50~95質量部が好ましく、60~95質量部がより好ましく、80~95質量部がより一層好ましい。
なお、電荷輸送性物質を溶液や分散液として用いる場合、金属酸化物ナノ粒子の添加量は、電荷輸送性物質の固形分量を基準とする。
更に、本発明の組成物は、アルコキシシランを含んでいてもよい。アルコキシシランを含むことで、得られる薄膜の耐溶剤性および耐水性の向上、電子ブロック性向上、並びにHOMOレベルおよびLUMOレベルを活性層に対して最適な値とすることができる。なお、アルコキシシランは、シロキサン系材料であってもよい。
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランの中から任意の1種以上のアルコキシシランを用いることができるが、特にテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランが好ましく、テトラエトキシシランがより好ましい。
シロキサン系材料としては、上記アルコキシシランに対して加水分解等の反応により得られる、ポリ(テトラエトキシシラン)、ポリ(フェニルエトキシシラン)等のポリシロキサンが挙げられる。
アルコキシシランを使用する場合、その含有量は、上記の効果が発揮される量であれば特に限定されないが、本発明で用いるポリチオフェン誘導体に対し、質量比で0.0001~100倍が好ましく、0.01~50倍がより好ましく、0.05~10倍がより一層好ましい。
本発明の電荷輸送性組成物は、必要に応じて、マトリックス高分子を更に含んでいてもよい。
上記マトリックス高分子の具体例としては、下記式(I)で表される繰り返し単位および下記式(II)で表される繰り返し単位を含むマトリックス高分子を挙げることができる。
Figure 2023149746000018
(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基、または炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、Qは、-[OC(Rhi)-C(Rjk)]y-O-[CRlmz-SO3Hであり、Rh、Ri、Rj、Rk、RlおよびRmは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基、または炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、yは、0~10であり、zは、1~5である。)
ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基および炭素数1~20のパーフルオロアルキル基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
上記R3、R4、R5およびR6が、フッ素原子または塩素原子であることが好ましく、R3、R5およびR6が、フッ素原子であり、かつR4が、塩素原子であることがより好ましく、R3、R4、R5およびR6が、全てフッ素原子であることがより一層好ましい。
上記R7、R8およびR9が、全てフッ素原子であることが好ましい。
上記Rh、Ri、Rj、Rk、RlおよびRmが、フッ素原子、炭素数1~8のフルオロアルキル基、または炭素数1~8のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
上記RlおよびRmが、フッ素原子であることがより好ましい。また、yは、0が好ましく、zは、2が好ましい。
また、上記R3、R5、およびR6が、フッ素原子であり、R4が、塩素原子であり、そして各々のRlおよびRmが、フッ素原子であり;yは、0であり;そしてzは、2であることが好ましい。
更に、ある実施態様において、各々のR3、R4、R5、およびR6は、フッ素原子であり;そして各々のRlおよびRmは、フッ素原子であり;yは、0であり;そしてzは、2であることが好ましい。
式(I)で表される繰り返し単位の数「s」と式(II)で表される繰り返し単位の数「t」との比(s:t比)は、特に限定されない。s:t比は、好ましくは9:1~1:9、より好ましくは8:2~2:8である。
本発明において好適に使用できるマトリックス高分子は、公知の方法を用いて合成されたものを用いても、市販品を用いてもよい。例えば、上記式(I)で表される繰り返し単位および上記式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、下記式(Ia)で表されるモノマーと下記式(IIa)で表されるモノマーとを、公知の重合方法により共重合し、続いてスルホニルフルオリド基の加水分解によりスルホン酸基に変換することによって製造することができる。
Figure 2023149746000019
(式中、Q1は、-[OC(Rhi)-C(Rjk)]y-O-[CRlmz-SO2Fであり、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、Rh、Ri、Rj、Rk、Rl、Rm、yおよびzは、上記と同じ意味を表す。)
例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)は、スルホン酸の前駆体基を含む1種以上のフッ素化モノマー(例えば、F2C=CF-O-CF2-CF2-SO2F;F2C=CF-[O-CF2-CR12F-O]y-CF2-CF2-SO2F(ここで、R12は、FまたはCF3であり、そしてyは、1~10である);F2C=CF-O-CF2-CF2-CF2-SO2F;およびF2C=CF-OCF2-CF2-CF2-CF2-SO2Fなど)と共重合することができる。
本発明において、マトリックス高分子に存在する酸基1モル当たりのマトリックス高分子の質量(g/mol)を意味する。マトリックス高分子の当量は、好ましくは約400~約15,000g/mol、より好ましくは約500~約10,000g/mol、より一層好ましくは約500~約8,000g/mol、更に好ましくは約500~約2,000g/mol、最も好ましくは約600~約1,700g/molである。
このようなマトリックス高分子は、市販品として入手することができる。
市販品としては、例えば、デュポン製のナフィオン(NAFION,登録商標)、Solvay Specialty Polymers製のアクイヴィオン(AQUIVION,登録商標)、および旭硝子(株)製のフレミオン(FLEMION,登録商標)等が挙げられる。
本発明において、マトリックス高分子は、少なくとも1個のスルホン酸残基(-SO3H)を含む繰り返し単位を1個以上含むポリエーテルスルホンであることが好ましい。
なお、本発明の組成物には、本発明の目的を達成し得る限り、その他の添加剤を配合してもよい。
添加剤の種類としては、所望の効果に応じて公知のものから適宜選択して用いることができる。
電荷輸送性組成物の調製に用いる溶媒としては、ポリチオフェン誘導体および電子受容性ドーパント物質を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。高溶解性溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、組成物に使用する溶媒全体の5~100質量%とすることができる。
このような高溶解性溶媒としては、例えば、水;エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。
これらの中でも、水およびアルコール系溶媒から選ばれる少なくとも1種が好ましく、水、エタノール、2-プロパノールがより好ましく、水、2-プロパノールがより一層好ましく、水が更に好ましい。
上記の高溶解性溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができるが、上記溶媒中の有機溶媒の含有量は10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、含まないこと(すなわち、溶媒が水のみであること)がより好ましい。
電荷輸送性物質および電子受容性ドーパント物質は、いずれも上記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、高変換効率の有機薄膜太陽電池を与える正孔捕集層を再現性よく得ることを考慮すると、これらの物質は上記溶媒に完全に溶解していることがより好ましい。
また、本発明の電荷輸送性組成物は、成膜性および塗布装置からの吐出性向上のために、25℃で10~200mPa・s、特に35~150mPa・sの粘度を有し、常圧で沸点50~300℃、特に150~250℃の高粘度有機溶媒を、少なくとも1種類含有してもよい。
高粘度有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3-オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられる。
高粘度有機溶媒を使用する場合、その添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、上記高溶解性溶媒で例示した有機溶媒の含有量との合計で、溶媒中10質量%以下となる範囲が好ましく、5質量%以下がより好ましく、含まないこと(0質量%)がより好ましい。
更に、塗布面に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、熱処理時に膜の平坦性を付与し得るその他の溶媒を含有してもよい。
このような溶媒としては、例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルカルビトール、ジアセトンアルコール、γ-ブチロラクトン、エチルラクテート、n-ヘキシルアセテート等が挙げられる。
その他の溶媒を使用する場合、その添加割合は、組成物に使用する溶媒全体の1~90質量%であることが好ましく、1~50質量%であることがより好ましい。
本発明の組成物の固形分濃度は、組成物の粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1~10.0質量%程度であり、好ましくは0.5~5.0質量%、より好ましくは1.0~3.0質量%である。
そして、本発明において用いる電荷輸送性組成物の粘度は、作製する薄膜の厚み等や固形分濃度を考慮し、塗布方法に応じて適宜調節されるものではあるが、通常25℃で0.1~50mPa・s程度である。
本発明において、上記組成物中の溶存酸素濃度は、得られる薄膜の耐久性を向上させる点から、5.2mg/L以下であり、好ましくは3.0mg/L以下、より好ましくは2.0mg/L以下、より一層好ましくは1.0mg/L以下である。また、上記溶存酸素濃度は低いほど好ましいが、その下限は、通常、0.3mg/L以上である。本発明では、組成物中の溶存酸素濃度が上記範囲であると、上記式(1)で表される繰り返し単位に含まれるチオフェン環の酸化が抑制され、その結果として、得られる薄膜の耐久性が向上するものと考えられる。
本発明において、組成物の溶存酸素濃度は、隔膜ガルバニ電池式酸素センサーを用い、1.013×105Pa,24℃にて測定されるものである。上記溶存酸素濃度は、公知の測定装置を用いて確認することができる。本発明では、例えば、上記各成分を混合して得られた混合物について、飯島電子工業(株)製の有機溶剤対応型DOメーター WA-BRPを用いて測定することができる。
本発明の電荷輸送性組成物を調製する際、固形分が溶媒に均一に溶解または分散する限り、電荷輸送性物質、界面活性剤、金属酸化物ナノ粒子、電子受容性ドーパント物質、溶媒等を任意の順序で混合することができる。すなわち、例えば、溶媒にポリチオフェン誘導体を溶解させた後、その溶液に電子受容性ドーパント物質を溶解させる方法、溶媒に電子受容性ドーパント物質を溶解させた後、その溶液にポリチオフェン誘導体を溶解させる方法、ポリチオフェン誘導体と電子受容性ドーパント物質とを混合した後、その混合物を溶媒に投入して溶解させる方法のいずれも、固形分が溶媒に均一に溶解または分散する限り、採用することができる。
なお、マトリックス高分子、アルコキシシランの添加順序も任意である。
また、通常、組成物の調製は、溶存酸素の濃度の増加を抑制する点から、常温、常圧の不活性ガス雰囲気下で行われるが、最終的に後述の脱溶存酸素処理工程が適切に実施できれば、組成物中の化合物が分解したり、組成が大きく変化したりしない限り、大気雰囲気下(酸素存在下)で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。
本発明では、電荷輸送性組成物の調製時に脱溶存酸素処理工程を実施することによって、成物中の溶存酸素濃度を低減させる。上記脱溶存酸素処理工程は、最終的に得られる電荷輸送性組成物中の溶存酸素濃度が上記の範囲となるようにすればよく、組成物の調製時の任意のタイミングで実施することができる。例えば、上記各成分を混合した後に実施しても、混合前の原材料またはその溶液に対して実施してもよい。
脱溶存酸素処理の方法としては、不活性ガスバブリングや減圧脱気等が挙げられる。不活性ガスバブリングは、不活性ガスを液中に通すことにより、液中の溶存酸素(DO)を不活性ガスと置換する方法である。上記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられ、コストを考慮すると、窒素ガスが好ましい。
不活性ガスバブリングの条件は、液中の溶存酸素濃度を上記範囲まで低減することができれば特に限定されないが、その際の不活性ガスの流量は、対象となる液10gに対して、好ましくは200mL/min以上、より好ましくは300mL/min以上である。一方、上記流量の上限は特に限定されないが、好ましくは500mL/min以下である。
また、処理時間も特に限定されないが、好ましくは20分間以上、より好ましくは30分間以上である。一方、上記処理時間の上限は特に限定されないが、好ましくは60分間以下である。
不活性ガスバブリングの具体的な条件としては、例えば、窒素を用いて、300mL/minで30分間のバブリングを行う条件が挙げられる。
減圧脱気は、ダイアフラムポンプ等の公知の真空ポンプを用いて実施することができ、例えば、対象の液が入っている容器内を所定の気圧まで減圧した後、不活性ガスで常圧に戻す操作を行えばよい。この際、処理条件は、上記溶存酸素濃度を達成できれば特に限定されないが、好適な条件として以下の条件を挙げることができる。
減圧脱気時の減圧度は、溶存酸素濃度をより低減する観点から低いほど好ましいが、生産性の点から、3.0kPa以下が好ましく、より好ましくは1.0kPa以下である。
処理時間(所定の減圧度での保持時間を意味する。)は、5分間以上が好ましく、より好ましくは10分間以上である。一方、処理時間の上限は、特に制限されるものではないが、生産性の点から、好ましくは60分間以下である。
また、1回の減圧処理で上記範囲まで溶存酸素濃度が低下されなかった場合、さらに処理を繰り返し実施してもよい。なお、複数回の減圧処理を実施した場合、上記処理時間はその合計時間である。
減圧脱気の具体的な条件としては、例えば、ダイアフラムポンプを用いて120秒間減圧後、窒素ガスで常圧に戻す操作を5回行う条件が挙げられる。
以上説明した組成物を、順積層型有機薄膜太陽電池の場合は陽極上に、逆積層型有機薄膜太陽電池の場合は活性層上に塗布して焼成することで、本発明の正孔捕集層を形成できる。
塗布にあたっては、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、ドロップキャスト法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等といった各種ウェットプロセス法の中から最適なものを採用すればよい。
また、通常、塗布は、常温、常圧の不活性ガス雰囲気下で行われるが、組成物中の化合物が分解したり、組成が大きく変化したりしない限り、大気雰囲気下(酸素存在下)で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。
膜厚は、特に限定されないが、いずれの場合も0.1~800nm程度が好ましく、更には30~500nm程度が好ましい。膜厚を変化させる方法としては、組成物中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
以下、本発明の電荷輸送性組成物を正孔捕集層形成用組成物として用いた有機薄膜太陽電池の製造方法について説明するが、これらに限定されるものではない。
(1)順積層型有機薄膜太陽電池
[陽極層の形成]:透明基板の表面に陽極材料の層を形成し、透明電極を製造する工程
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の無機酸化物や、金、銀、アルミニウム等の金属、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体等の高電荷輸送性有機化合物を用いることができる。これらの中ではITOが最も好ましい。また、透明基板としては、ガラスあるいは透明樹脂からなる基板を用いることができる。
陽極材料の層(陽極層)の形成方法は、陽極材料の性質に応じて適宜選択される。通常、難溶性、難分散性昇華性材料の場合には真空蒸着法やスパッタ法等のドライプロセスが選択され、溶液材料あるいは分散液材料の場合には、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、上述した各種ウェットプロセス法の中から最適なものが採用される。
また、市販の透明陽極基板を用いることもでき、この場合、素子の歩留を向上させる観点からは、平滑化処理がされている基板を用いることが好ましい。市販の透明陽極基板を用いる場合、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、陽極層を形成する工程を含まない。
ITO等の無機酸化物を陽極材料として用いて透明陽極基板を形成する場合、上層を積層する前に、洗剤、アルコール、純水等で洗浄してから使用することが好ましい。更に、使用直前にUVオゾン処理、酸素-プラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
[正孔捕集層の形成]:形成された陽極材料の層上に正孔捕集層を形成する工程
上記方法に従い、陽極材料の層上に、本発明の組成物を用いて正孔捕集層を形成する。
[活性層の形成]:形成された正孔捕集層上に活性層を形成する工程
活性層は、n型半導体材料からなる薄膜であるn層と、p型半導体材料からなる薄膜であるp層とを積層したものであっても、これら材料の混合物からなる非積層薄膜であってもよい。本発明では、上記活性層は、FA活性層であってもNFA活性層であってもよく、いずれの組み合わせでも得られる素子の耐久性を大きく向上させることができる。特にNFA活性層と組み合わせて用いられた場合には、得られる電荷輸送性薄膜が有する深いIpによりNFA活性層とのエネルギーギャップを低減し、素子の高電圧化を実現し得る。
ここで、NFA活性層とは、本発明においてはNFAの含有量が、活性層に含まれるn型半導体のうち70質量%以上である活性層を意味する。また、FA活性層とは、本発明においてはFAの含有量が、活性層に含まれるn型半導体のうち70質量%以上である活性層を意味する。
FA活性層に用いられるn型半導体材料としては、フラーレン、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PC61BM)、[6,6]-フェニル-C71-酪酸メチルエステル(PC71BM)等が挙げられる。
NFA活性層に用いられるn型半導体材料としては、下記式(3-1)~(3-4)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2023149746000020
Figure 2023149746000021
上記n型半導体材料に組み合わせられるp型半導体材料としては、レジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、下記式(4-1)で表されるPTB7、下記式(4-2)で表されるPM6、特開2009-158921号公報および国際公開第2010/008672号に記載されているようなチエノチオフェンユニット含有ポリマー類等の、主鎖にチオフェン骨格を含むポリマー、CuPC,ZnPC等のフタロシアニン類、テトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン類などが挙げられる。
Figure 2023149746000022
(式中、uは、繰り返し単位の数を表し、*は、結合手を表す。)
これらの中でも、n型半導体材料としては、式(3-1)および(3-2)で表される化合物が好ましく、その中でも、前者ではXがFであるBTP-4Fがより好ましく、後者ではX1およびX2がともにFであるITIC-4Fがより好ましい。一方、p型半導体材料としては、PM6およびPTB7等の主鎖にチオフェン骨格を含むポリマー類が好ましい。
なお、ここでいう「主鎖にチオフェン骨格」とはチオフェンのみからなる2価の芳香環、またはチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、ナフトチオフェン、ナフトジチオフェン、アントラチオフェン、アントラジチオフェン等のような1以上のチオフェンを含む2価の縮合芳香環を表し、これらはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のチオアルコキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数1~20のハロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または炭素数1~20のアシル基で置換されていてもよい。
ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基としては、上記で例示したものと同様のものが挙げられる。
炭素数1~20のチオアルコキシ基の具体例としては、上記アルコキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基等が挙げられる。
炭素数1~20のチオアルコキシ(アルキルチオ)基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、n-ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、n-ノニルチオ基、n-デシルチオ基、n-ウンデシルチオ基、n-ドデシルチオ基、n-トリデシルチオ基、n-テトラデシルチオ基、n-ペンタデシルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基、n-ヘプタデシルチオ基、n-オクタデシルチオ基、n-ノナデシルチオ基、n-エイコサニルチオ基等が挙げられる。
炭素数2~20のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、n-1-プロペニル基、n-2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、n-1-ブテニル基、n-2-ブテニル基、n-3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、n-1-ペンテニル基、n-1-デセニル基、n-1-エイコセニル基等が挙げられる。
炭素数2~20のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、n-1-プロピニル基、n-2-プロピニル基、n-1-ブチニル基、n-2-ブチニル基、n-3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、n-1-ペンチニル基、n-2-ペンチニル基、n-3-ペンチニル基、n-4-ペンチニル基、1-メチル-n-ブチニル基、2-メチル-n-ブチニル基、3-メチル-n-ブチニル基、1,1-ジメチル-n-プロピニル基、n-1-ヘキシニル基、n-1-デシニル基、n-1-ペンタデシニル基、n-1-エイコシニル基等が挙げられる。
炭素数1~20のハロアルキル基としては、上記アルキル基中の水素原子の少なくとも1つをハロゲン原子で置換した基等が挙げられる。なお、ハロゲン原子は、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素原子のいずれでもよい。中でも、フルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましい。
その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ノナフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-デカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1~20のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
上記FA活性層には、本発明の効果を損なわない限り、活性層に含まれるn型半導体材料のうち30質量%未満範囲において、残部として、上述したNFAに該当するn型半導体材料が含まれていてもよい。そのようなn型半導体材料の具体例としては、BTP-4FやITIC-4F等が挙げられる。
また、上記NFA活性層においても、本発明の効果を損なわない限り、活性層に含まれるn型半導体材料のうち30質量%未満範囲において、残部として、上述したFAに該当するn型半導体材料が含まれていてもよい。
上記FA活性層およびNFA活性層の形成方法も、上記と同様、活性層材料が難溶性昇華性材料の場合には上述した各種ドライプロセスが選択され、溶液材料あるいは分散液材料の場合には、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、上述した各種ウェットプロセス法の中から最適なものが採用される。
[電子捕集層の形成]:形成された活性層上に電子捕集層を形成する工程
必要に応じて、電荷の移動を効率化すること等を目的として、活性層と陰極層の間に電子捕集層を形成してもよい。
電子捕集層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、8-キノリノールリチウム塩(Liq)、8-キノリノールナトリウム塩(Naq)、バソクプロイン(BCP)、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BPhen)、ポリエチレンイミン(PEI)、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)等が挙げられる。
電子捕集層の形成方法も、上記と同様、電子捕集材料が難溶性昇華性材料の場合には上述した各種ドライプロセスが選択され、溶液材料あるいは分散液材料の場合には、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、上述した各種ウェットプロセス法の中から最適なものが採用される。
[陰極層の形成]:形成された電子捕集層の上に陰極層を形成する工程
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、銀、金等の金属や、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の無機酸化物や、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体等の高電荷輸送性有機化合物が挙げられ、複数の陰極材料を積層したり、混合したりして使用することができる。
陰極層の形成方法も、上記と同様、陰極層材料が難溶性、難分散性昇華性材料の場合には上述した各種ドライプロセスが選択され、溶液材料あるいは分散液材料の場合には、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、上述した各種ウェットプロセス法の中から最適なものが採用される。
[キャリアブロック層の形成]
必要に応じて、光電流の整流性をコントロールすること等を目的として、任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。キャリアブロック層を設ける場合、通常、活性層と、正孔捕集層または陽極との間に電子ブロック層を、活性層と、電子捕集層または陰極との間に正孔ブロック層を挿入する場合が多いが、この限りではない。
正孔ブロック層を形成する材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、バソクプロイン(BCP)、4,7-ジフェニル1,10-フェナントロリン(BPhen)等が挙げられる。
電子ブロック層を形成する材料としては、N,N′-ジ(1-ナフチル)-N,N′-ジフェニルベンジジン(α-NPD)、ポリ(トリアリールアミン)(PTAA)等のトリアリールアミン系材料等が挙げられる。
キャリアブロック層の形成方法も、上記と同様、キャリアブロック層材料が難溶性、難分散性昇華性材料の場合には上述した各種ドライプロセスが選択され、溶液材料あるいは分散液材料の場合には、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、上述した各種ウェットプロセス法の中から最適なものが採用される。
(2)逆積層型有機薄膜太陽電池
[陰極層の形成]:透明基板の表面に陰極材料の層を形成し、透明陰極基板を製造する工程
陰極材料としては、上記順積層型の陽極材料で例示したものに加え、フッ素ドープ酸化錫(FTO)が挙げられ、透明基板としては、上記順積層型の陽極材料で例示したものが挙げられる。
陰極材料の層(陰極層)の形成方法も、難溶性、難分散性昇華性材料の場合には上述したドライプロセスが選択され、溶液材料あるいは分散液材料の場合には、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、上述した各種ウェットプロセス法の中から最適なものが採用される。
また、この場合も市販の透明陰極基板を好適に用いることができ、素子の歩留を向上させる観点からは、平滑化処理がされている基板を用いることが好ましい。市販の透明陰極基板を用いる場合、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、陰極層を形成する工程を含まない。
無機酸化物を陰極材料として使用して透明陰極基板を形成する場合、順積層型の陽極材料と同様の洗浄処理や、表面処理を施してもよい。
[電子捕集層の形成]:形成された陰極上に電子捕集層を形成する工程
必要に応じて、電荷の移動を効率化すること等を目的として、活性層と陰極層の間に電子捕集層を形成してもよい。
電子捕集層を形成する材料としては、上記順積層型の材料で例示したものに加え、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)等が挙げられる。
電子捕集層の形成方法も、難溶性、難分散性昇華性材料の場合には上述したドライプロセスが選択され、溶液材料あるいは分散液材料の場合には、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、上述した各種ウェットプロセス法の中から最適なものが採用される。また、無機酸化物の前駆体層をウェットプロセス(特にスピンコート法かスリットコート法)を用いて陰極上に形成し、焼成して無機酸化物の層を形成する方法を採用することもできる。
[活性層の形成]:形成された電子捕集層上に活性層を形成する工程
活性層は、n型半導体材料からなる薄膜であるn層と、p型半導体材料からなる薄膜であるp層とを積層したものであっても、これら材料の混合物からなる非積層薄膜であってもよい。
n型およびp型半導体材料としては、上記順積層型の半導体材料で例示したものと同様のものが挙げられるが、n型半導体材料としては、BTP-4FおよびITIC-4F、p型半導体材料としては、PM6およびPTB7等の主鎖にチオフェン骨格を含むポリマー類が好ましい。
活性層の形成方法も、上記順積層型の活性層で説明した方法と同様である。
[正孔捕集層の形成]:形成された活性層材料の層上に正孔捕集層を形成する工程
上記方法に従い、活性層材料の層上に、本発明の組成物を用いて正孔捕集層を形成する。
[陽極層の形成]:形成された正孔捕集層の上に陽極層を形成する工程
陽極材料としては、上記順積層型の陽極材料と同様のものが挙げられ、陽極層の形成方法としても、順積層型の陰極層と同様である。
[キャリアブロック層の形成]
順積層型の素子と同様、必要に応じて、光電流の整流性をコントロールすること等を目的として、任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。
正孔ブロック層を形成する材料および電子ブロック層を形成する材料としては、上記と同様のものが挙げられ、キャリアブロック層の形成方法も上記と同様である。
上記で例示した方法によって作製されたOPV素子は、大気による素子劣化を防ぐために、再度グローブボックス内に導入して窒素等の不活性ガス雰囲気下で封止操作を行い、封止された状態で太陽電池としての機能を発揮させたり、太陽電池特性の測定を行ったりすることができる。
封止法としては、端部にUV硬化樹脂を付着させた凹型ガラス基板を、不活性ガス雰囲気下、有機薄膜太陽電池素子の成膜面側に付着させ、UV照射によって樹脂を硬化させる方法や、真空下、スパッタリング等の手法によって膜封止タイプの封止を行う方法などが挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)グローブボックス:山八物産(株)製、VACグローブボックスシステム
(2)有機溶剤対応型DOメーター:飯島電子工業(株)製、WA-BRP、測定条件:1.013×105Pa,24℃
(3)蒸着装置:アオヤマエンジニアリング(株)製、真空蒸着装置
(4)ソーラーシミュレータ:分光計器(株)製、OTENTOSUN-III、AM1.5Gフィルター、放射強度:100mW/cm2
(5)ソースメジャーユニット:ケースレーインスツルメンツ(株)製、2612A
[1]正孔捕集層用組成物の製造
正孔捕集層用組成物を製造するため、以下の前駆体溶液を調製した。
・国際公開第2006/025342号の記載に基づいて合成した上記式(2-1)で示されるアリールスルホン酸化合物A:10.0質量%水溶液(以下:D1)
・ケイモリブド酸n水和物(富士フイルム和光純薬(株)製):2.0質量%水溶液(以下:D2)
・ケイタングステン酸n水和物(Alfa Aesar(株)製):2.0質量%水溶液(以下:D3)
・12モリブド(IV)りん酸n水和物(富士フイルム和光純薬(株)製):2.0質量%水溶液(以下:D4)
・12タングスト(IV)りん酸n水和物(富士フイルム和光純薬(株)製):2.0質量%水溶液(以下:D5)
[実施例1-1]
正孔捕集層用組成物の製造前に、SELFTRON S(東ソー(株)製、2.0質量%水溶液)(以下:P1)10gおよび希釈溶剤として使用する純水10gのそれぞれに対して、300mL/minで30分間の窒素バブリングを行い、予め液中の溶存酸素を低減させた。グローブボックス(以下:GB)内にて、該純水を用いてフッ素系ノニオン性界面活性剤(FN-1287、第一工業製薬(株)製):1.0質量%水溶液(以下:S1)を調製した。
GB内で上記のP1を5.00g、純水を3.79g、S1を1.20g加え、濃度1.00質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A1を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA1の溶存酸素濃度を計測したところ、0.35mg/Lであった。
[実施例1-2]
正孔捕集層用組成物の製造前に、D1 10gに対して300mL/minで30分間の窒素バブリングを行い、予め液中の溶存酸素を低減させた。
GB内で、実施例1-1と同様の操作を行ったP1、純水およびS1を、それぞれP1 5.00g、純水2.79g、S1 1.20gの量で混合した溶液に、上記のD1を1.00g加え、固形分濃度2.00質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A2を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA2の溶存酸素濃度を計測したところ、1.06mg/Lであった。
[実施例1-3]
正孔捕集層用組成物の製造前に、D2 10gに対して300mL/minで30分間の窒素バブリングを行い、予め液中の溶存酸素を低減させた。
GB内で、実施例1-1と同様の操作を行ったP1、純水およびS1を、それぞれP1 5.00g、純水2.29g、S1 1.20gの量で混合した溶液に、上記のD2を1.50g加え、固形分濃度1.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A3を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA3の溶存酸素濃度を計測したところ、1.40mg/Lであった。
[実施例1-4]
正孔捕集層用組成物の製造前に、D3 10gに対して300mL/minで30分間の窒素バブリングを行い、予め液中の溶存酸素を低減させた。
GB内で、実施例1-1と同様の操作を行ったP1、純水およびS1を、それぞれP1 5.00g、純水2.29g、S1 1.20gの量で混合した溶液に、上記のD3を1.50g加え、固形分濃度1.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A4を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA4の溶存酸素濃度を計測したところ、0.98mg/Lであった。
[実施例1-5]
正孔捕集層用組成物の製造前に、D4 10gに対して300mL/minで30分間の窒素バブリングを行い、予め液中の溶存酸素を低減させた。
GB内で、実施例1-1と同様の操作を行ったP1、純水およびS1を、それぞれP1 5.00g、純水2.29g、S1 1.20gの量で混合した溶液に、上記のD4を1.50g加え、固形分濃度1.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A5を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA5の溶存酸素濃度を計測したところ、1.22mg/Lであった。
[実施例1-6]
正孔捕集層用組成物の製造前に、D5 10gに対して300mL/minで30分間の窒素バブリングを行い、予め液中の溶存酸素を低減させた。
GB内で、実施例1-1と同様の操作を行ったP1、純水およびS1を、それぞれP1 5.00g、純水2.29g、S1 1.20gの量で混合した溶液に、上記のD5を1.50g加え、固形分濃度1.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A6を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA6の溶存酸素濃度を計測したところ、0.81mg/Lであった。
[実施例1-7]
GB内で、実施例1-1と同様の操作を行ったP1、純水およびS1を、それぞれP1 5.00g、純水2.79g、S1 1.20gの量で混合した溶液に、実施例1-2と同様の操作を行ったD1を1.00g、実施例1-3と同様の操作を行ったD2を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A7を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA7の溶存酸素濃度を計測したところ、0.58mg/Lであった。
[実施例1-8]
GB内で、実施例1-1と同様の操作を行ったP1、純水およびS1を、それぞれP1 5.00g、純水2.79g、S1 1.20gの量で混合した溶液に、実施例1-2と同様の操作を行ったD1を1.00g、実施例1-4と同様の操作を行ったD3を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A8を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA8の溶存酸素濃度を計測したところ、0.77mg/Lであった。
[実施例1-9]
正孔捕集層用組成物の製造前に、希釈溶剤として使用するイソプロパノール 10gに対して300mL/minで30分間の窒素バブリングを行い、予め液中の溶存酸素を低減させた。
GB内で、実施例1-1と同様の操作を行ったP1、純水およびS1を、それぞれP1 5.00g、純水0.31g、S1 1.20gの量で混合した溶液に、上記のイソプロパノールを0.98g、実施例1-2と同様の操作を行ったD1を1.00g、実施例1-4と同様の操作を行ったD2を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A9を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA9の溶存酸素濃度を計測したところ、0.42mg/Lであった。
[実施例1-10]
5.00gのP1に純水を1.29g加えた溶液に、D1を1.00g、D2を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。得られた濃青色溶液に対して300mL/minで20分間の窒素バブリングを行い、溶存酸素濃度を低減させた。窒素バブリング後、GB内で濃青色溶液にS1を1.20g加え、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A10を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA10の溶存酸素濃度を計測したところ、1.92mg/Lであった。
[実施例1-11]
5.00gのP1に純水を1.29g加えた溶液に、D1を1.00g、D2を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。得られた濃青色溶液に対して300mL/minで15分間の窒素バブリングを行い、溶存酸素濃度を低減させた。窒素バブリング後、GB内で濃青色溶液にS1を1.20g加え、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A11を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA11の溶存酸素濃度を計測したところ、2.95mg/Lであった。
[実施例1-12]
5.00gのP1に純水を1.29g加えた溶液に、D1を1.00g、D2を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。得られた濃青色溶液に対して300mL/minで10分間の窒素バブリングを行い、溶存酸素濃度を低減させた。窒素バブリング後、GB内で濃青色溶液にS1を1.20g加え、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A12を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA12の溶存酸素濃度を計測したところ、4.09mg/Lであった。
[実施例1-13]
5.00gのP1に純水を1.29g加えた溶液に、D1を1.00g、D2を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。得られた濃青色溶液に対して300mL/minで5分間の窒素バブリングを行い、溶存酸素濃度を低減させた。窒素バブリング後、GB内で濃青色溶液にS1を1.20g加え、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物A13を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてA13の溶存酸素濃度を計測したところ、5.11mg/Lであった。
[実施例1-14]
5.00gのP1に純水を1.29g、S1を1.20g加えた溶液に、D1を1.00g、D3を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、得られた濃青色溶液の溶存酸素濃度を低減するため、減圧脱気を行った。減圧脱気では、濃青色溶液を二口フラスコに入れ、ダイアフラムポンプを用いて、0.8kPaで120秒間保持した後、窒素ガスで常圧に戻す操作を5回行うことで溶存酸素濃度を低減した。減圧脱気後に得られた正孔捕集層用組成物A14の溶存酸素濃度を有機溶剤対応型DOメーターを用いて計測したところ、1.95mg/Lであった。
以上、実施例1-1~1-14のインク組成および溶存酸素濃度を表1にまとめた。表1中の質量比は、組成物中のP1の質量を1とした場合の、各ドーパントの質量比を表す。界面活性剤は組成物全体の質量に対する質量比を示す。
Figure 2023149746000023
[比較例1-1]
5.00gのP1に純水を3.79g、S1を1.20g加え、固形分濃度1.00質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B1を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB1の溶存酸素濃度を計測したところ、5.56mg/Lであった。
[比較例1-2]
5.00gのP1に純水を2.79g、S1を1.20g加えた溶液に、D1を1.00g加え、固形分濃度2.00質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B2を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB2の溶存酸素濃度を計測したところ、7.02mg/Lであった。
[比較例1-3]
5.00gのP1に純水を2.29g、S1を1.20g加えた溶液に、D2を1.50mg加え、固形分濃度1.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B3を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB3の溶存酸素濃度を計測したところ、6.72mg/Lであった。
[比較例1-4]
5.00gのP1に純水を2.29g、S1を1.20g加えた溶液に、D3を1.50mg加え、固形分1.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B4を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB4の溶存酸素濃度を計測したところ、5.92mg/Lであった。
[比較例1-5]
5.00gのP1に純水を2.29g、S1を1.20g加えた溶液に、D4を1.50mg加え固形分濃度1.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B5を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB5の溶存酸素濃度を計測したところ、7.50mg/Lであった。
[比較例1-6]
5.00gのP1に純水を2.29g、S1を1.20g加えた溶液に、D5を1.50mg加え、固形分濃度1.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B6を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB6の溶存酸素濃度を計測したところ、6.75mg/Lであった。
[比較例1-7]
5.00gのP1に純水を1.29g、S1を1.20g加えた溶液に、D1を1.00g、D2を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B7を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB7の溶存酸素濃度を計測したところ、7.07mg/Lであった。
[比較例1-8]
5.00gのP1に純水を1.29g、S1を1.20g加えた溶液に、D1を1.00g、D3を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B8を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB8の溶存酸素濃度を計測したところ、7.68mg/Lであった。
[比較例1-9]
5.00gのP1に純水を0.31g、イソプロパノールを0.98g、S1を1.20g加えた溶液に、D1を1.00g、D2を1.50g加え、固形分濃度2.30質量%の濃青色溶液を調製した。調製後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過することで正孔捕集層用組成物B9を得た。有機溶剤対応型DOメーターを用いてB9の溶存酸素濃度を計測したところ、6.56mg/Lであった。
以上、比較例1-1~1-9のインク組成および溶存酸素濃度を表2にまとめた。表2中の質量比は、組成物中のP1の質量を1とした場合の、各ドーパントの質量比を表す。界面活性剤は組成物全体の質量に対する質量比を示す。
Figure 2023149746000024
[2]有機薄膜太陽電池の作製
[実施例2-1]
陰極となるITO透明導電層を10mm×25mmのストライプ状にパターニングした25mm×25mmのガラス基板を15分間UV/オゾン処理した。この基板に、電子捕集層となる酸化亜鉛の溶液(Genes’ Ink製)を滴下し、スピンコート法(SC)により成膜した。電子捕集層の膜厚は約30nmであった。その後、窒素ガスにより置換されたグローブボックス中で、形成した電子捕集層上にNFA活性層PV-X Plus(Raynergy tek製)をスピンコート法により成膜し、活性層を形成した。活性層の膜厚は約100nmであった。
次に、GB内でこの活性層上に実施例1-1で調製した正孔捕集層用組成物A1をスピンコート法により塗布し、そのまま自然乾燥させることで、正孔捕集層を形成した。正孔捕集層の膜厚は約80nmであった。
最後に、積層した基板を真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-3Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱法によって、陽極となる銀層を100nmの厚さに蒸着することで、ストライプ状のITO層と銀層とが交差する部分の面積が10mm×10mmである逆積層型OPV素子C1を作製した。
[実施例2-2]
正孔捕集層用組成物A1の代わりに正孔捕集層用組成物A2を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で逆積層型OPV素子C2を作製した。正孔捕集層の膜厚は約130nmであった。
[実施例2-3]
正孔捕集層用組成物A1の代わりに正孔捕集層用組成物A4を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で逆積層型OPV素子C3を作製した。正孔捕集層の膜厚は約80nmであった。
[実施例2-4]
正孔捕集層用組成物A1の代わりに正孔捕集層用組成物A7を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で逆積層型OPV素子C4を作製した。正孔捕集層の膜厚は約80nmであった。
[実施例2-5]
陰極となるITO透明導電層を10mm×25mmのストライプ状にパターニングした25mm×25mmのガラス基板を15分間UV/オゾン処理した。この基板に、電子捕集層となる酸化亜鉛の溶液(Genes’ Ink製)を滴下し、SCにより成膜した。電子捕集層の膜厚は約30nmであった。その後、窒素ガスにより置換されたグローブボックス中で、形成した電子捕集層上にNFA活性層PV-X Plus(Raynergy tek製)をSCにより成膜し、活性層を形成した。活性層の膜厚は約100nmであった。
次に、大気下でこの活性層上に実施例1-7で調製した正孔捕集層用組成物A7をブレードコート法(BC)により塗布し、そのまま自然乾燥させることで、正孔捕集層を形成した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
最後に、積層した基板を真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-3Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱法によって、陽極となる銀層を100nmの厚さに蒸着することで、ストライプ状のITO層と銀層とが交差する部分の面積が10mm×10mmである逆積層型OPV素子C5を作製した。
[実施例2-6]
正孔捕集層用組成物A7の代わりに正孔捕集層用組成物A8を用いた以外は、実施例2-5と同様の方法で逆積層型OPV素子C6を作製した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
[実施例2-7]
正孔捕集層用組成物A7の代わりに正孔捕集層用組成物A10を用いた以外は、実施例2-5と同様の方法で逆積層型OPV素子C7を作製した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
[実施例2-8]
正孔捕集層用組成物A7の代わりに正孔捕集層用組成物A11を用いた以外は、実施例2-5と同様の方法で逆積層型OPV素子C8を作製した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
[実施例2-9]
正孔捕集層用組成物A7の代わりに正孔捕集層用組成物A12を用いた以外は、実施例2-5と同様の方法で逆積層型OPV素子C9を作製した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
[実施例2-10]
正孔捕集層用組成物A7の代わりに正孔捕集層用組成物A13を用いた以外は、実施例2-5と同様の方法で逆積層型OPV素子C10を作製した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
[実施例2-11]
正孔捕集層用組成物A7の代わりに正孔捕集層用組成物A14を用いた以外は、実施例2-5と同様の方法で逆積層型OPV素子C11を作製した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
[比較例2-1]
正孔捕集層用組成物A1の代わりに正孔捕集層用組成物B1を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で逆積層型OPV素子D1を作製した。正孔捕集層の膜厚は約80nmであった。
[比較例2-2]
正孔捕集層用組成物A1の代わりに正孔捕集層用組成物B2を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で逆積層型OPV素子D2を作製した。正孔捕集層の膜厚は約130nmであった。
[比較例2-3]
正孔捕集層用組成物A1の代わりに正孔捕集層用組成物B4を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で逆積層型OPV素子D3を作製した。正孔捕集層の膜厚は約80nmであった。
[比較例2-4]
正孔捕集層用組成物A1の代わりに正孔捕集層用組成物B7を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で逆積層型OPV素子D4を作製した。正孔捕集層の膜厚は約80nmであった。
[比較例2-5]
正孔捕集層用組成物A7の代わりに正孔捕集層用組成物B7を用いた以外は、実施例2-5と同様の方法で逆積層型OPV素子D5を作製した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
[比較例2-6]
正孔捕集層用組成物A7の代わりに正孔捕集層用組成物B8を用いた以外は、実施例2-5と同様の方法で逆積層型OPV素子D6を作製した。正孔捕集層の膜厚は約300nmであった。
[3]耐光性試験
上記逆積層型OPV素子C1~C11およびD1~D6を、光量が100mW/cm2となるように調整したメタルハライドランプに晒すことで、耐光性試験を実施した。所定時間毎に短絡電流密度(Jsc〔mA/cm2〕)、開放電圧(Voc〔V〕)、曲線因子(FF)、および変換効率(PCE〔%〕)を測定し、PCE保持率を比較することで、逆積層型OPV素子の耐光性を評価した。表3および表4に、各OPV素子の所定時間におけるPCE保持率を示す。表3では、脱溶存酸素処理工程の有無における、各OPV素子の耐光性を比較した。表4では、組成物中の溶存酸素濃度を少しずつ変化させた場合、ならびに脱溶存酸素処理工程が無しの場合における、各OPV素子の耐光性を比較した。
なおPCE〔%〕およびPCE保持率〔%〕は、下式により算出した。

PCE〔%〕=Jsc〔mA/cm2〕×Voc〔V〕×FF÷入射光強度(100〔mW/cm2〕)×100

PCE保持率〔%〕=耐光性試験における所定時間時点でのPCE/初期PCE×100
Figure 2023149746000025
表3より、以下のことが確認された。
・脱溶存酸素処理工程が、窒素バブリング、減圧脱気によらず耐光性向上を確認した。
・組成物の成膜法が、スピンコート成膜、ブレードコート成膜によらず耐光性向上を確認した。
・組成物中の溶存酸素濃度が5.2mg/L以下であれば、耐光性向上し、成膜時に酸素と触れても本発明の効果は損なわれない。
Figure 2023149746000026
表4より、溶存酸素濃度低減による耐光性向上は、組成物中の溶存酸素濃度を5.2mg/L以下にすることで、明確な効果を確認した。

Claims (14)

  1. 有機光電変換素子における電荷輸送性薄膜を形成するための電荷輸送性組成物であって、
    下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体からなる電荷輸送性物質と、水を含む溶媒とを含み、
    上記組成物中の隔膜ガルバニ電池式酸素センサーを用いて測定される溶存酸素濃度が5.2mg/L以下である電荷輸送性組成物。
    Figure 2023149746000027
    (式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]p-Re、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよく、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、Reは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。)
  2. 上記R1およびR2が、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]p-Re、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよい、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されている炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、上記Reが、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である(ただし、R1およびR2は、少なくとも一方がスルホン酸基またはスルホン酸塩基であるか、-O-Y-O-である。)請求項1記載の電荷輸送性組成物。
  3. 上記R1およびR2が、R1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yが、エーテル結合を含んでいてもよい、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されている炭素数1~40のアルキレン基である請求項1または2記載の電荷輸送性組成物。
  4. 上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体が、式(1-4)または式(1’-1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体である請求項1~3のいずれか1項記載の電荷輸送性組成物。
    Figure 2023149746000028
    (式中、Ryは、炭素数1~6のアルキル基、またはフッ素原子を表す。式(1-4)中、Mは、水素原子、Li、NaおよびKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(RS3またはHNC55を表す。RSは、互いに独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。)
  5. さらに、電子受容性ドーパント物質を含み、上記電子受容性ドーパント物質が、下記式(2)で表されるアリールスルホン酸およびヘテロポリ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~4のいずれか1項記載の電荷輸送性組成物。
    Figure 2023149746000029
    (式中、Aは、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、2~4価のパーフルオロビフェニル基を表し、lは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦l≦4を満たす整数であり、qは、BとXとの結合数を示し、2~4を満たす整数である。)
  6. 上記電子受容性ドーパント物質が、上記式(2)で表されるアリールスルホン酸およびヘテロポリ酸を含む請求項5記載の電荷輸送性組成物。
  7. 上記ヘテロポリ酸が、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸およびケイタングステン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項5または6記載の電荷輸送性組成物。
  8. 上記溶媒中の有機溶媒の含有量が、10質量%以下である請求項1~7のいずれか1項記載の電荷輸送性組成物。
  9. さらに、界面活性剤を含む請求項1~8のいずれか1項記載の電荷輸送性組成物。
  10. 請求項1~9のいずれか1項記載の電荷輸送性組成物から得られる電荷輸送性薄膜を備える電子素子。
  11. 上記電子素子が、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池および光センサーからなる群より選ばれる有機光電変換素子である請求項10記載の電子素子。
  12. 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体からなる電荷輸送性物質と、水を含む溶媒とを含む電荷輸送性組成物の製造方法であって、
    上記各成分を含む混合物中の隔膜ガルバニ電池式酸素センサーを用いて測定される溶存酸素濃度を5.2mg/L以下になるまで低減させる脱溶存酸素処理工程を含む電荷輸送性組成物の製造方法。
    Figure 2023149746000030
    (式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基、炭素数1~40のフルオロアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、-O-[Z-O]p-Re、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基、またはR1およびR2が結合して形成される-O-Y-O-であり、Yは、エーテル結合を含んでいてもよく、スルホン酸基またはスルホン酸塩基で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、Zは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~40のアルキレン基であり、pは、1以上の整数であり、Reは、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数1~40のフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。)
  13. 上記電荷輸送性組成物が、さらに電子受容性ドーパント物質を含み、上記電子受容性ドーパント物質が、下記式(2)で表されるアリールスルホン酸およびヘテロポリ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項12記載の電荷輸送性組成物の製造方法。
    Figure 2023149746000031
    (式中、Aは、ナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、2~4価のパーフルオロビフェニル基を表し、lは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦l≦4を満たす整数であり、qは、BとXとの結合数を示し、2~4を満たす整数である。)
  14. 脱溶存酸素処理工程を、不活性ガスバブリングまたは減圧脱気により行う請求項12または13記載の電荷輸送性組成物の製造方法。
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