JP2023149722A - 汚染物質吸着シートの製造方法及び当該シートを用いた汚染物質除去工法 - Google Patents

汚染物質吸着シートの製造方法及び当該シートを用いた汚染物質除去工法 Download PDF

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Abstract

【課題】汚染物質の吸着量を増加することが可能で、傾斜地にシートを設置した場合、降雨や強風に晒されても吸着材が流出したり、シート中で偏在したりすることなく、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥に含まれる重金属等や、これらの土壌から流出した雨水や浸出水等に含まれる重金属等の汚染物質を有効に捕獲することができる、汚染物質吸着シートを有効に製造する方法を提供する。【解決手段】汚染物質吸着シート1の製造方法は、汚染物質を含む土壌から滲出する汚染物質を捕獲するシートの製造方法であって、不織布シート2に粉状吸着材3を散布し、次いで、水又はバインダー液を散布することで、不織布の繊維と繊維との間隙内4に粉状吸着材を装着するか、又は予め粉状吸着材を混合した水又はバインダー液を不織布シートに散布して、不織布の繊維と繊維との間隙内に粉状吸着材を装着する、汚染物質吸着シートの製造方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、汚染物質吸着シートの製造方法及び当該シートを用いた汚染物質除去工法に関し、特に、トンネル工事等の建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥や排水から発生する土壌汚染対策法にて特定有害物質として定められている重金属等の汚染物質を、平坦な場所のみならず傾斜のある場所においても極めて有効に設置して汚染物質を捕獲することができ、軽量で施工性に優れるとともに耐久性に優れる、汚染物質吸着シートの製造方法及び当該シートを用いた汚染物質除去工法に関する。
トンネル、ダム、造成などの建設・土木工事を実施する際には、掘削によって掘り起こし残土として、掘削ずりが発生する。
かかる掘削ずりには、自然由来または人工的な汚染物質が含まれることがあるため、汚染物質を含む掘削ずりを含む建設残土を用いて盛土や埋め立て等を行う場合には、これらの汚染物質に対する有効な除去処理が求められる。
従来は、これらの汚染物質を含む建設残土や建設廃材の処理方法としては、掘削ずりや建設廃材を場外に搬出して処理する方法や不溶化処理方法が利用されてきた。
また、シートを製造して、かかるシート上に掘削ずりや建設廃材を積載し、汚染物質を吸着させる方法も提案されてきている。
更に、建造物が破壊されて生じるがれきなどの廃棄物は、一旦、屋外の所定の土地に仮置きされた後処分されるが、当該廃棄物に、重金属類などの環境汚染物質が含まれている場合があり、雨水により廃棄物に水が染み込むと、その水は環境汚染物質を取り込んだ後、汚染水となって廃棄物から染み出し、土壌を汚染する。
汚染土壌中の重金属等の汚染物質を吸着するための吸着層が設けられる工法(以下、「吸着層工法」と称する)においては、敷土吸着層工法により、例えば盛土内に重金属含有土壌を封入した場合、敷土吸着層下面から排出される汚染物質の濃度が基準値以下であれば、特に問題はない。
しかし、従来の工法では、一般には、盛土が崩壊したり亀裂が入った場合や、汚染物質を吸着する吸着層に亀裂等が生じた場合には、重金属含有土壌から汚染物質が基準値を超過した浸透水が浸出して、地下水中に溶出して地下水を汚染する危険性が生じており、有効に汚染物質を吸着することが困難である。
また、かかる吸着工法では、吸着材と母材となる砂等の混合を必要とするため吸着材の局在や、傾斜のある場所では対応することが困難であるとの課題がある。
また、重金属を捕獲するために、国際公開公報WO2013/115033A1には、ゼオライト等の吸着材と有機バインダーとを混合して吸着シートを形成する場合に、吸着材であるゼオライトの細孔内に有機バインダーの側鎖等が吸着してしまい十分な吸着性能が得られないとの問題を解決するとともに、更に温度400~800℃で焼成して有機バインダーを除去できたとしてもその吸着性能は十分とはいえなかったとの問題を解決することを目的として、有機繊維に多孔性金属錯体を担持させたシート状の成形体とする発明が開示されている。
また、特開2014-166621号公報には、汚染水から環境汚染物質を除去する機能を備え、汚染水による土壌汚染を効果的に防止できる環境汚染物質除去シートとして、ゼオライト吸着材を含む透水性層と、該透水性層の一方の面に積層した透水性調節層とを少なくとも有する環境汚染物質除去シートで、下記の方法で測定する200ml通水時間が10分以上である、環境汚染物質除去シートが開示されている。
200ml通水時間:A4サイズの環境汚染物質除去シートを市販の漏斗に透水性調節層が下になるように置き、中央部を押し込んで凹ませた状態で固定し、その上から200mlの水を注ぐ。水の全量が下に自重で落ちるまでの時間を測定し、200ml通水時間とした。
WO2013/115033A1 特開2014-166621号公報
本発明の目的は、汚染物質吸着シートの不織布繊維の間隙に吸着材を入れ込むことができ、汚染物質の吸着量を増加することが可能で、更に傾斜地に汚染物質吸着シートを設置した場合において、降雨や強風に晒されても吸着材が流出したり、シート中で偏在したりすることなく、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥に含まれる重金属等や、これらの土壌から流出した雨水や浸出水等に含まれる重金属等の汚染物質を有効に捕獲することができる、汚染物質吸着シートを有効に製造する方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記方法により得られた汚染物質吸着シートを用いて、傾斜地に敷設しても、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥に含まれる重金属等の汚染物質や、これらの土壌から流出した雨水や浸出水等に含まれる重金属等の汚染物質を有効に捕獲することができる、本発明による上記シートを用いた汚染物質除去工法を提供することである。
本発明者らは、汚染物質吸着シートを、特定の方法により製造することで、粉状汚染物質吸着材が繊維と繊維との間隙内部に固定されて、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
(1)本発明の汚染物質吸着シートの製造方法は、汚染物質を含む土壌から滲出する汚染物質を捕獲するシートの製造方法であって、不織布シートに粉状吸着材を散布し、次いで、水又はバインダー液を散布することで、不織布の繊維と繊維との間隙内に粉状吸着材を装着することを特徴とする、汚染物質吸着シートの製造方法である。
(2)本発明の他の汚染物質吸着シートの製造方法は、汚染物質を含む土壌から滲出する汚染物質を捕獲する不織布シートの製造方法であって、予め粉状吸着材を混合した水又はバインダー液を不織布シートに散布して、不織布の繊維と繊維との間隙内に粉状吸着材を装着することを特徴とする、汚染物質吸着シートの製造方法である。
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)の汚染物質吸着シートの製造方法において、不織布シートは、粉状吸着材が予め添着されている不織布シートであることを特徴とする、汚染物質吸着シートの製造方法である。
(4)更に好ましくは、上記(1)乃至(3)いずれかの汚染物質吸着シートの製造方法において、前記不織布は単位面積あたり10~700g/mであり、前記吸着材は、粒度が10~600μmであってシートあたり10~5000g/mであり、透水係数が10-5cm/sを超えることを特徴とする、汚染物質吸着シートの製造方法である。
(5)本発明の汚染物質吸着シートを用いた汚染物質除去工法は、上記(1)~(4)いずれかの汚染物質吸着シートの製造方法により得られた汚染物質吸着シートを、水平状及び/又は傾斜状に少なくとも1枚敷設し、前記汚染物質吸着シートの上部に汚染物質を含む土壌を設置し、当該土壌からの滲出水に含まれる汚染物質と当該シートとが接触することで汚染物質を捕獲することを特徴とする、汚染物質吸着シートを用いた汚染物質除去工法である。
本発明の汚染物質吸着シートの製造方法は、不織布シートの繊維と繊維との間隙内に粉状吸着材を入り込ませて装填することができるため、平坦地のみならず、傾斜地に設置した場合においても、降雨や強風に晒されることにより吸着材が飛散したり偏在したり流出することなく、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥に含まれる重金属等の汚染物質が流出した雨水や浸出水等に含まれる汚染物質を有効に捕獲することができる、汚染物質吸着シートを有効に製造することが可能となる。
また、本発明の汚染物質吸着シートを用いた汚染物質除去工法は、本発明の汚染物質吸着シートを平坦地のみならず傾斜地に設置した場合においても、降雨や強風に晒されることにより吸着材が飛散したり偏在したり流出することなく、施工が容易であるとともに、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥に含まれる重金属等や、重金属等を含む土壌から流出した雨水や浸出水等に含まれる重金属等の汚染物質を有効に捕獲することができる。
更に、汚染物質を吸着した使用済汚染物質吸着シートは、例えばセメント工場の燃料として利用することも可能である。
本発明の汚染物質吸着シートの製造方法により、粉状吸着材を不織布シートの繊維と繊維との間隙内部に入れ込む状態を模式的に示す模式図である。 本発明の汚染物質吸着シート製造方法により製造した汚染物質吸着シートを敷設して汚染物質を吸着する工法の一例を示す模式図である。
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の第1の汚染物質吸着シートの製造方法は、汚染物質を含む土壌から滲出する重金属等の汚染物質を捕獲するシートの製造方法であって、不織布シートに粉状吸着材を散布し、次いで、水又はバインダー液を散布することで、不織布の繊維と繊維との間隙内に粉状吸着材を装着する、汚染物質吸着シートの製造方法である。
本発明の第2の汚染物質吸着シートの製造方法は、汚染物質を含む土壌から滲出する汚染物質を捕獲する不織布シートの製造方法であって、予め粉状吸着材を配合した水又はバインダー液を不織布シートに散布して、不織布の繊維と繊維との間隙内に粉状吸着材を装着する、汚染物質吸着シートの製造方法である。
図1を参照しながら説明する。
本発明の汚染物質吸着シート1を製造する方法に用いる不織布2は、重金属等の汚染物質を吸着する吸着材3が、不織布の繊維と繊維との間隙に入れ込むことができる間隙4を有していれば特に限定されるものではなく、市場で入手できる任意の不織布を用いることができる。
不織布としては、その繊度、繊維長等は特に限定されず、適宜、粉状吸着材との関係で適宜決定することができる。
不織布は、不織布を構成する通常の公知の任意の有機繊維を使用することができ、かかる有機繊維としては、親水性有機繊維や疎水性有機繊維が挙げられ、好ましくは疎水性有機繊維からなることが長期に強度を保持して有効な耐久性を備える点から望ましい。
これらの不織布繊維としては、例えば、パルプ、古紙パルプ、リンター、麻、綿、ケナフ等から調製される天然セルロース繊維や、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-アクリル共重合体、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)等のポリビニルアルコール系樹脂等の繊維を例示することができる。
不織布の一般的な製造工程としては、原料繊維からウェブを形成するウェブ形成工程と、ウェブ中の原料繊維を結合させる繊維結合工程とを有する方法があり、ウェブ形成工程としてエアレイド法が採用された不織布(エアレイド不織布)や、ウェブ形成工程としてカーディング法が採用された不織布がある。また、不織布の形態としては、例えばウェブ形成工程の違いに基いて、乾式不織布、湿式不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などがあり、いずれのものも使用することが可能である。
次いで、上記不織布のウェブ繊維を結合して不織布が製造されるが、その繊維結合方法としては、公知の任意の方法を用いることができ、例えば、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法等を用いることができる。
好ましくは、不織布自体の単位面積あたりの質量(目付)は10~700g/mが望ましく、より好ましくは10~600g/m、さらに好ましくは200~600g/mであることが望ましい。
目付がかかる範囲であると、軽量で施工性がよく、粉状吸着材を不織布の繊維と繊維との間隙内部に更に装填しやすい重金属吸着シートを得ることができる。
本発明の製造方法に用いる不織布は、不織布自体に加えて、不織布に予め粉状吸着材が添着されているものを適用してもよく、例えば、公知の方法により不織布に粉状吸着材が担持されているものを適用することができる。この場合には、予め添着されている吸着材と、不織布の間隙に入れ込んだ吸着材の総含量が、シートあたり、10~5000g/mとすることが望ましい。
例えば、吸着材をケミカルボンド法(浸漬法・スプレー法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法や、水流交絡法等の不織布のウェブ繊維結合方法として、公知の任意の方法において使用する液体に含有させ、かかる液中に不織布を浸漬させること等によって、予め吸着材をシートに均一に添着することができる。
例えば、不織布として上側と下側の不織布を備え、上側不織布と下側不織布と重金属を吸着する粉状の汚染物質吸着材とが一体化されており、上側不織布と下側不織布の内部の前記粉状吸着材は、前記両不織布を構成する繊維の一部が絡まって保持されている不織布を好適に用いることができる。
かかる予め粉状吸着材が担持された不織布は、下側不織布上に重金属を吸着する粉状吸着材を積載し、次いで前記積載した吸着材の上に上側不織布を積載して、ニードルパンチ法により前記両不織布から繊維を引き出して前記吸着材に当該繊維を当該吸着材が脱離しないように絡めて、前記両不織布及び前記吸着材とを一体化することにより製造することができる。
または、上側不織布と下側不織布とを積層し、次いで上側不織布上に重金属を吸着する吸着材を積載して振動を付与することで、前記吸着材を上側不織布と下側不織布の内に落下させて、ニードルパンチ法により前記両不織布シートから繊維を引き出して前記吸着材に当該繊維を当該吸着材が脱離しないように絡めて、前記両不織布及び前記吸着材とを一体化することによっても製造することができる。
本発明の第1の製造方法においては、上記したように、まず不織布2上に、粉状吸着材3を散布する。
粉状吸着材を散布する方法は、不織布上2に粉状吸着材が均一に散布できれば、その方法は特に限定されず、例えば、任意量の粉状吸着材を汚染物質吸着シート上に広げ、グラウンドレーキなどで平坦にならすことにより均一に散布することができる。
次いで、不織布上2に散布された粉状吸着材3に、水又はバインダー液を散布する。
水又はバインダー液は、粉状吸着材3が、不織布の繊維と繊維との間隙内4に装填されるように十分に散布する。
例えば、不織布の表面が湿潤する程度に散布することが望ましい。
散布する方法は、均一に水又はバインダー液を散布できれば散布方法は特に限定されず、例えば、任意の噴霧器や散水器等を用いて散布することができ、これにより不織布の繊維と繊維との間隙内4に吸着材3を装填することができる。
本発明の第2の製造方法においては、まず水又はバインダー液に、粉状吸着材を混合して、粉状吸着材含有液を調製する。
次いで、均質性を保持しながら又は保持した当該粉状吸着材含有液を、上記不織布2に散布する。
粉状吸着材含有液を散布する方法は、不織布2上に粉状吸着材含有液が均一に散布できれば、その方法は特に限定されず、例えば、じょうろやコンクリート吹付機等により散布し、粉状吸着材含有液中に含まれる吸着材を、不織布の繊維と繊維との間隙内4に装填する。
粉状吸着材含有液は、含有される粉状吸着材が、不織布の繊維と繊維との間隙内に十分に装填されるように散布し、例えば、不織布の表面が湿潤する程度に散布することが望ましい。
バインダー液としては、例えば、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ウレタン等の液を用いることができる。
次いで、必要に応じて、不織布の繊維と繊維との間隙内に吸着材が装填された湿潤状態の不織布シートを乾燥させて、汚染物質吸着シートを製造する。
このように、本発明の方法により、粉状の汚染物質吸着材を汚染物質吸着シートの繊維と繊維との間隙内部に装填することができ、傾斜状態で使用しても、粉状吸着材が流出したり、偏在する状態になることなく、重金属等の汚染物質を有効に吸着除去することが可能となる。
また、本発明の方法により製造された汚染物質吸着シートの透水係数は、好ましくは、10-5cm/sを超えるものであり、より好ましくは10-4cm/s以上とすることが望ましい。
汚染物質を含む汚染水が汚染物質吸着シート上に滞留すると、汚染水等が汚染物質吸着シートと十分に接触することなく、当該シートの周囲にあふれてしまい、汚染物質を有効に除去することができなくなるため、得られる汚染物質吸着シートの透水係数を上記範囲として当該シートが高い透水性を有することとし、建設・土木工事等から発生する掘り起こし残土等から浸出する汚染物質を含む汚染水等を汚染物質吸着シートに通過させやすくし、掘り起こし残土等に含まれる汚染物質を含む汚染水等と汚染物質吸着シートとを効率的に接触させて、汚染物質を有効に捕獲除去することを、より可能とする。
また、汚染水が汚染物質吸着シート中の粉状吸着材と十分に接触する時間なく直ちに通過してしまうことは、汚染物質を有効に吸着除去することができない場合もあるため、好ましくは透水係数が10-1cm/s以下であることが更に望ましい。
本発明の汚染物質吸着シートを製造する際に不織布の繊維間の間隙に装填される、重金属等の汚染物質を吸着する吸着材としては、特に限定されず、公知の重金属等の吸着材を用いることができる。
当該吸着材は、粉末状であることが、不織布繊維間の間隙に広く分散装填されて担持されることができる。また、粉末形態とすることで汚染排水と速やかに反応することが可能であり、汚染物質である重金属等を効率的に吸着して捕獲することができる。
かかる粉末の平均粒径は、好ましくは10~600μm、より好ましくは10~500μmであることが、汚染水の透水性を良好に保持するために望ましい。
また、重金属等を吸着できる吸着材としては、公知の任意の吸着材を用いることができるが、特に、ドロマイト系化合物を含む吸着材が、汚染物質である重金属等を有効に捕獲して固定することができることから望ましい。
ここで、汚染物質は、重金属やハロゲンを意味し、重金属としては、例えば、マンガン、クロム、銅、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素、カドミウム等の1種若しくは2種以上のもので、かつ重金属単体及びその化合物が含まれて例示され、またハロゲンとしてはフッ素、塩素等の単体及びその化合物が例示できる。さらにこれらに加え、重金属等には土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質も含まれ、例えばホウ素単体及びその化合物を例示することができる。
汚染物質の吸着材として好適に用いられるドロマイト系化合物は、MgO、CaMg(CO及びCaCOを必須含有成分とするものである。
当該成分を含有するドロマイト系化合物としては、例えば、MgO、CaCO、CaMg(COを主成分とする半焼成ドロマイトが挙げられる。
前記ドロマイトは、市場で入手し得る任意のものを用いることができ、産地は問わない。
また、市場で入手し得る任意の半焼成ドロマイトや、市場で入手し得る任意のドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイトを用いることができ、産地や原料ドロマイトの組成等は問わない。半焼成ドロマイトは、分解反応が完全に完了するまでドロマイトを焼成して得られるものではなく、MgO、CaMg(CO及びCaCOを必須成分として含むものである。
ドロマイトは、石灰石CaCOとマグネサイトMgCOのモル比が1:1となる複塩構造を有しており、CO 2-基を挟んでCa2+イオンとMg2+イオンが交互に層を成して、一般に、MgCOの割合が10~45質量%のものをいう。ドロマイトは、国内に多量に存在しており、ドロマイトを使用した吸着材は、コストや環境負荷の点からも有利である。
上記半焼成ドロマイトとしては、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)となる半焼成ドロマイトを好適に用いることができる。
半焼成ドロマイト中に含まれるCaMg(CO相を定量して、上記範囲内のCaMg(CO相残留量の半焼成ドロマイトを好適に用いることで、原料となるドロマイト鉱石の産地による組成の相違や、焼成温度等の焼成条件の設定などに関係なく、ドロマイトが最大に優れた重金属等吸着性能を有することが更に可能となる。
ドロマイトは焼成することで、CaMg(CO→MgO+CaCO+COで表わされる分解反応を示す。また、ドロマイトの焼成による上記熱分解により、細孔が形成されて重金属等捕獲性能を発揮しているものと考えられる。
本発明においては、ドロマイトを焼成した半焼成ドロマイト中のドロマイト相(CaMg(CO相)の残留量を粉末X線回折によるリートベルト法により解析して、残留CaMg(CO相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)、好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)とすることで、特に好適に、重金属等を、より良好に捕獲することを実現することが可能となる。
例えば、かかる好適な半焼成ドロマイトは、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO相の含有量xが、好ましくは0.4≦x≦35.4(質量%)、より好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)となるように焼成することで製造することができる。
ドロマイトを焼成する温度は、特に限定されず、通常ドロマイトを焼成して半焼成ドロマイトを製造する温度、例えば650~1000℃で焼成することができる。残留CaMg(CO相の含有量が、0.4≦x≦35.4(質量%)となるように焼成すれば焼成時間も特に制限されるものではない。
上記汚染物質吸着シートに担持される吸着材中のMgO含有量は、好ましくは粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析した値で約14~23質量%であり、さらに好適には14~21質量%である。
かかる吸着材中のMgOは、含有されるドロマイト系化合物由来のものであり、具体的には、ドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイト等由来のものであり、更に好ましくは半焼成ドロマイト由来のものである。
MgO含有量が14質量%未満では、鉛やフッ素等に対する吸着能力が低下する場合があったり、約23質量%を超えると、MgOのpHがアルカリ性であるため、汚染水中の汚染物質を吸着したあとの雨水等の水のpHが10以上のアルカリ性を示す場合があり、望ましくない。
上記吸着材に含まれるドロマイト系化合物は、必須含有成分MgO、CaMg(CO、CaCOが含まれるように1種類及び/又は2種類以上の材料を任意に混合することができる。
一例として21質量%のMgOを含有する半焼成ドロマイトを使用した場合においては、吸着材中の半焼成ドロマイト配合比を80~99質量%とすることにより、本発明に用いる吸着材中のMgOの含有量を16~21質量%とすることができるが、使用するドロマイト系材料に応じて、上記配合比率の制約を受けるものではない。
更に、上記吸着材には、望ましくは酸性硫酸塩を含む。
酸性硫酸塩としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム等が例示でき、好ましくは硫酸第一鉄を含有する。
酸性硫酸塩を含有することにより、硫酸第一鉄のようにその高い還元作用によって、砒素や六価クロム等の重金属等に対して、より有効に捕獲することができるとともに、酸性であるため、他のドロマイト系化合物中の含有材料の配合比率を調整することで、当該吸着材を用いて処理した処理水を中性付近に保持することを可能とする。
また、上記吸着材に含まれる酸性硫酸塩は、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、内割で、酸性硫酸塩を1~40質量%、好ましくは14~30質量%の割合で含む。
かかる割合で、吸着材中に、ドロマイト系化合物と酸性硫酸塩とを含むことが望ましい。
吸着材の一例としては、上記したように、ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩を含み、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、酸性硫酸塩は1~40質量%の割合で含有され、且つ、吸着材中にMgOを14~23質量%含む吸着材が望ましい。
また上記吸着材を適用することで、汚染物質を吸着後の雨水等の処理水を、中性付近に維持することが可能である。
更に好ましくは、上記吸着材中に、上記ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩を含有し、これらの各含有量を上記範囲内の量とすることで、特に、重金属等をより有効に捕獲することができる。
上記汚染物質吸着シート中の前記吸着材の総含量は、吸着シートあたり10~5000g/m、好ましくは、50~3000g/mである。
これにより、汚染物質を吸着する性能を有効に発揮することができるとともに、上側不織布と下側不織布との間に効果的に吸着材を担持させることが可能となる。
本発明の方法により製造された汚染物質吸着シートを用いた汚染物質除去工法は、図2に示すように、汚染物質吸着シートを、敷設する土壌5の形状に依存して、水平状及び/又は傾斜状に少なくとも1枚敷設し、前記汚染物質吸着シート1と汚染物質を含む土壌5とが接するように設置し、当該土壌からの滲出水に含まれる汚染物質と当該シートとが接触することで汚染物質を捕獲して、汚染物質を除去する工法である。
汚染物質が含まれる土壌としては、特に限定されず、トンネル、ダム、造成などの建設・土木工事を実施する際の、掘削によって掘り起こし残土としての掘削ずりや、建設土、汚泥等を例示することができ、重金属等の汚染物質を含む任意の土壌5が含まれる。
本発明の汚染物質吸着シートを用いた汚染物質除去工法は、粉状吸着材が不織布繊維と繊維との間隙内部に装填されているため、平坦に敷設する場合のみならず、傾斜状態で敷設しても、雨水や地下水等により、汚染物質吸着シートに装填された吸着材が流れ出したり、傾斜下部のシート部分に偏在したりすることなく、汚染物質を有効に捕獲することができる。
また必要に応じて、汚染物質吸着シートは、複数枚を重ねて使用しても構わない。
実施例1~6、比較例1~4
汚染物質吸着シートを、以下の実施例及び比較例により説明する。
汚染物質吸着シートに担持される吸着材としてドロマイト系吸着材を以下の材料により調製した。
・半焼成ドロマイト(粉末):栃木県葛生産のドロマイトを焼成
・酸性硫酸塩:硫酸第一鉄一水和物粉末
上記半焼成ドロマイト(粉末)について、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて各成分の含有量を測定した。
その結果を表1に示す。
Figure 2023149722000002
上記半焼成ドロマイトと硫酸第一鉄とを質量比で表2に記載の配合比で混合して、種々の吸着材を調製した。調製した各吸着材の各平均粒径を、表2に示す。
また、汚染物質吸着シートを構成する不織布として、ポリプロピレン繊維からなり、目付けが表2に示すものをそれぞれ不織布として用いた(実施例1~2、実施例4~5、比較例1、比較例3、)。なお、不織布としては同じ状態のものを用いていたものであり、目付の相違は、厚みの相違に反映されている。
また、汚染物質吸着シートを構成する前記不織布に予め表2の吸着材を添着したものも用いた(実施例3、実施例6、比較例2、比較例4)。
具体的には、上記ポリプロプレン繊維からなる表2の不織布に、表2に示す吸着材を公知のケミカルボンド法にて混合する液体に含有させ、かかる液中に不織布を浸漬させることなどによって、予め吸着材をシートに均一に添着させて乾燥させた。
その添着量は、表2中の「予めシートに添着されている吸着材の担持量」で示される。
実施例1、実施例3、実施例4及び実施例6の各汚染物質吸着シートは、上記各不織布に、スコップを用いて各不織布の上部に粉状吸着材を、表2の「粉状吸着材散布量」で散布し、次いで、水を噴霧器を用いて、不織布表面上の前記粉状吸着材が不織布の間隙に入り込むように、不織布表面が湿潤する程度に十分に散布した。これにより不織布の繊維と繊維との間隙に粉状吸着材を装着させせた。
また比較例1及び比較例3の各汚染物質吸着シートは、上記各不織布に、スコップを用いて各不織布の上部に粉状吸着材を、表2の「粉状吸着材散布量」で散布した状態のシートとし、水等で当該粉体吸着材を不織布の繊維の間隙に入れ込む処理はしなかった。
実施例2及び実施例5の各重金属吸着シートは、表2の「粉状吸着材散布量」で示される量の吸着材を水と混合して混合液とし、該混合液を噴霧器を用いて、各不織布の表面が湿潤する程度に十分散布することで、不織布の繊維と繊維との間隙内部に粉状吸着材を装着させた。
また比較例2及び4の各汚染物質吸着シートは、上記したように、汚染物質吸着シートを構成する不織布に予め表2の吸着材を添着したものをそのまま用いた。
得られた各重金属吸着シートの透水係数及び各シート中の吸着材の総含量を、それぞれ表2に示す。
なお、不織布の目付、吸着材の担持量、平均粒径、吸着材総含量は以下の方法により測定した値である。
・不織布の目付:JIS L 1913:2010一般不織布試験方法の6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)に準拠した値である。
・吸着材の平均粒径:マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)にて測定した値の平均粒径である。
・吸着材の担持量:電子天秤にて、吸着材を担持させた不織布シートの質量から、不織布の質量を減じて、吸着材の担持量を計算した値である。
・吸着材の散布量:不織布1m当たり2000gとなる粉状吸着材散布量が表2中の40gに相当し、各シートに装着された粉状吸着材量を算出した値である。
・吸着材総含量:汚染物質シートに装着された吸着材の総量を示す。
Figure 2023149722000003
(試験例1~2)
上記実施例1~6及び比較例1~4の各汚染物質吸着シートを、縦×横が20cm×10cmの各試験シートにして、下記の各試験を実施した。
(試験例1 砒素(As)吸着試験)
汚染物質として、重金属である砒素を用いた吸着試験を実施した。
具体的には、砒素(ひ素標準液(As-1000)、関東化学社製(株))を用いて1mg/L砒素水溶液を調製した。
次いで、下部に排水用の穴をあけたポリプロピレン製トレーに、各試験シートを設置して、水平に保持した(表2中、傾斜角度°0)。前記砒素溶液を流速131mL/hで当該トレーの上部から1時間通水し、排水用の穴の下部から回収した溶液をろ過して、残存溶液中の砒素濃度(mg/L)を測定した。
また、別のポリプロピレン製トレーに、各試験シートを設置し、当該ポリプロピレン製トレーが傾斜角度33度となるように保持した(表2中、傾斜角度°33)。
前記砒素溶液を流速131mL/hで傾斜の上部から下部へと1時間通水し、回収した溶液をろ過して、残存溶液中の砒素濃度(mg/L)を測定した。
その結果を、上記表2に示す。
(試験例2 粉漏れ)
得られた各シートの粉漏れを評価した。
具体的には、各試験シートの表面に担持された吸着材粉の吹き出し状態を確認するとともに、手でシートを持って、3回叩き、吸着材粉のシートからの漏れ具合を目視で確認した。
その結果を、上記表2に示す。
なお、上記表2中の評価基準は以下のとおりである。
◎:吸着材粉の吹き出し、粉漏れ無し
×:吸着材粉の吹き出し有り且つ吸着材粉の漏れ有り
上記表2より、実施例の本発明の方法にて製造された汚染物質吸着シートは、傾斜角を有する状態で設置したとしても、粉状吸着材が流出することなく、重金属等の汚染物質を有効に吸着することが可能である。
本発明の方法により製造された汚染物質吸着シートは、平坦地のみならず傾斜地で傾斜設置をしても、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥から発生する重金属等の汚染物質を極めて効率よく捕獲できるとともに、例えば、トンネルやダム等の掘削工事や建設工事等によって大量に発生する重金属等が溶出する汚染土壌の掘削ずり等にも有効に適用することが可能となる。
1・・・・・汚染物質吸着シート
2・・・・・不織布
3・・・・・粉状吸着材
4・・・・・不織布の繊維と繊維との間隙
5・・・・・汚染物質を含む土壌

Claims (5)

  1. 汚染物質を含む土壌から滲出する汚染物質を捕獲するシートの製造方法であって、不織布シートに粉状吸着材を散布し、次いで、水又はバインダー液を散布することで、不織布の繊維と繊維との間隙内に粉状吸着材を装着することを特徴とする、汚染物質吸着シートの製造方法。
  2. 汚染物質を含む土壌から滲出する汚染物質を捕獲するシートの製造方法であって、予め粉状吸着材を混合した水又はバインダー液を不織布シートに散布して、不織布の繊維と繊維との間隙内に粉状吸着材を装着することを特徴とする、汚染物質吸着シートの製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の汚染物質吸着シートの製造方法において、不織布シートは、粉状吸着材が予め添着されている不織布シートであることを特徴とする、汚染物質吸着シートの製造方法。
  4. 請求項1乃至3いずれかの汚染物質吸着シートの製造方法において、前記不織布は単位面積あたり10~700g/mであり、前記吸着材は、粒度が10~600μmであってシートあたり10~5000g/mであり、透水係数が10-5cm/sを超えることを特徴とする、汚染物質吸着シートの製造方法。
  5. 請求項1乃至4いずれかの汚染物質吸着シートの製造方法により得られた汚染物質吸着シートを、水平状及び/又は傾斜状に少なくとも1枚敷設し、前記汚染物質吸着シートの上部に汚染物質を含む土壌を設置し、当該土壌からの滲出水に含まれる汚染物質と当該シートとが接触することで汚染物質を捕獲することを特徴とする、汚染物質吸着シートを用いた汚染物質除去工法。

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