JP2023149267A - 個包装歯科材料 - Google Patents

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Yasushi Yoshino
誉夫 三品
Yoshio Mishina
明弘 岡下
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聖一 吉川
Seiichi Yoshikawa
卓也 岩本
Takuya Iwamoto
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Abstract

【課題】作業性および硬化物の強度に優れる個包装歯科材料を提供する。【解決手段】個包装歯科材料1は、石膏粉末2と、水溶性フィルム3とを含み、石膏粉末2が、水溶性フィルム3によって、所定量ごとに個別に包装され、個包装歯科材料1が、水溶性フィルム3を、100質量部の石膏粉末2に対して0.1~3.0質量部含み、個包装歯科材料1を所定の水量で硬化させた硬化物は、石膏粉末2のみを所定の水量と同じ水量で硬化させた硬化物に対し、JIS T 6600:2016に準拠して温度23℃で測定される圧縮強さが60%以上であり、水溶性フィルム3が、ポリビニルアルコール系樹脂を含み、23℃の水に入れて1分以内で溶解するフィルムであり、120℃~200℃でヒートシール可能なフィルムである。【選択図】図1

Description

本発明は半水石こう(膏)を主成分とする粉末状歯科用石膏組成物の水溶性フィルム包装物であって、口くう(腔)内印象、義歯埋没、模型、歯型、模型基底部の作成や、こう(咬)合器装着などに用いる歯科用石膏が個別に包装された個包装歯科材料に関する。
半水石膏などの石膏粉末は、その水硬性を利用して、歯科用石膏として模型等の作製に使われている。従来、歯科用石膏は、数百g~数kg程度のアルミニウム製の外装体やフィルム外装体に詰められた状態で販売されている。
歯科用石膏を使用する際には、使用のたびに外装体を開封し、石膏粉末を計量する必要がある。そのため、石膏粉末を計量容器に移す際に、石膏粉末をこぼしたり、取扱者が粉塵を吸い込んだりしやすく、粉を掬うさじなどの器具や粉が付着した手を洗う必要があった。
また、開封後の歯科用石膏の保管場所が多湿環境の場合、石膏粉末が固まったり、硬化時間が変化したりするおそれがあった。さらに、石膏粉末が周辺の臭気を吸着し、水を加えて撹拌(練和)する際に臭いが放出される場合があった。
さらに、歯科用石膏と水を練和する際には、石膏粉末に所定量の水を加えて機械や手で撹拌して練和するところ、石膏粉末と水との練和比率(混水比)が所定の比率からずれた場合、硬化物の強度が低下したり、練和物の取り扱い性が変化したりするおそれがあった。
これに対し、特許文献1には、歯科用石膏などの粉末化学材料を水溶性フィルムにより所定量ずつ予め包装した歯形成型材が記載されている。特許文献1記載の歯形成型材を用いることで、石膏粉末の計量を行うことなく正確な混水比での練和ができ時間を節約できるとともに、粉末の飛散防止、衛生管理の容易化など作業性を向上できる。
特開昭61-115557号公報
ここで、歯科用石膏は、例えば、口腔内に装着されるインレー(詰め物)、クラウン(歯全体を覆うようにかぶせる人工の歯)、ブリッジ、義歯などの補綴物を作製する際に用いられる口腔内の形状を模した型の作成に使用される。
歯科技工士などの石膏粉末を取り扱う作業者は、例えば、模型用に使用する場合、所定量の石膏粉末と練和用の水を容器に採取し、さじを用いて練和し、石膏スラリーとする。その後、口腔内の印象を採得した陰型内に注入して硬化させる。その結果、口腔内の形状を模した作業用模型を得ることができ、この模型を元に補綴物が作製される。そのため、歯科用石膏には、細部を再現するための精密さと、再現した細部が壊れない程度の強度が要求される。
特許文献1には、当該文献記載の歯形成型材を用いることにより、粉末の飛散を防止しつつ、石膏粉末と水とを正確に練和できる旨が記載されているが、包装に用いるフィルムの量が石膏粉末に対して多大であると、歯科用石膏の本来の特性が発揮されないおそれがある。
具体的には、歯科用石膏の硬化は、石膏粉末と水との間での水和反応により進行するところ、フィルム成分が練和時および硬化時に共存することで水和反応に何らかの影響を与えたり、硬化物中で可塑剤として作用したりする可能性が考えられる。そのため、特許文献1に記載の歯形成型材は、石膏粉末に対して多大な水溶性フィルムで包装した場合、硬化物の強度が実用上不足するおそれがあった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、作業性および硬化物の強度に優れる個包装歯科材料の提供を課題とする。
本発明の個包装歯科材料は、石膏粉末と、水溶性フィルムとを含む歯科材料であって、上記石膏粉末が、上記水溶性フィルムによって、所定量ごとに個別に包装され、上記歯科材料が、上記水溶性フィルムを、上記石膏粉末100質量部に対して0.1~3.0質量部含むことを特徴とする。
上記個包装歯科材料を所定の水量で硬化させた硬化物は、上記石膏粉末のみを上記所定の水量と同じ水量で硬化させた硬化物に対し、JIS T 6600:2016に準拠して温度23℃で測定される圧縮強さが60%以上であることを特徴とする。
上記石膏粉末が、JIS T 6600:2016 タイプ4またはタイプ5の石膏粉末であり、上記個包装歯科材料の上記硬化物の圧縮強さが、35.0MPa以上であることを特徴とする。
上記石膏粉末が、JIS T 6600:2016 タイプ2 クラス2の石膏粉末であり、上記個包装歯科材料の上記硬化物の圧縮強さが、9.0MPa以上であることを特徴とする。
上記水溶性フィルムが、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を含むことを特徴とする。
上記水溶性フィルムが、23℃の水に入れて1分以内で溶解するフィルムであることを特徴とする。
上記水溶性フィルムが、120℃~200℃でヒートシール可能なフィルムであることを特徴とする。
本発明の個包装歯科材料は、石膏粉末が、水溶性フィルムによって、所定量ごとに個別に包装されるので、粉体を取り扱う場合に生じる手間を省略でき、作業性に優れる。また、水溶性フィルムを、石膏粉末100質量部に対して0.1~3.0質量部含むので、硬化物の強度に影響を与えにくく、硬化物の強度に優れる。
水溶性フィルムが、PVA系樹脂を含むので、水溶性、ガスバリア性、ヒートシール性に優れるとともに、包装用フィルムとして適度な強度を有し、取り扱い性に優れる。
水溶性フィルムが、23℃の水に入れて1分以内で溶解するフィルムであるので、フィルムが練和物中に均一に練和されやすく、硬化物の強度により優れる。
本発明の個包装歯科材料を示す図である。 個包装歯科材料を水と練和する際に用いるものを示す図である。
本発明の個包装歯科材料を図1に基づき説明する。図1は、本発明の個包装歯科材料を示す図である。図1(a)は個包装歯科材料の平面図であり、図1(b)は個包装歯科材料の断面図である。なお、図1(b)において、個包装歯科材料1に対する水溶性フィルム3の厚みは実際よりも厚く描いている。図1に示すように、個包装歯科材料1は、石膏粉末2と、該石膏粉末を包装する水溶性フィルム3とを含む。石膏粉末2は、水溶性フィルム3によって、所定量(1回の施用量)ごとに個別に包装されている。上記所定量としては、作業者が1回の練和作業で使い切る石膏粉末2の量であり、例えば、10g~200g、好ましくは10g~150g、より好ましくは50g~150g、特に好ましくは100gである。
歯科用石膏の練和時および硬化時にフィルム成分が共存することによる石膏本来の特性(練和物の流動性、硬化物の強度など)への影響を考慮すると、石膏粉末に対する水溶性フィルムの比率は適切な範囲で制御する必要があると考えられる。本発明の個包装歯科材料は、100質量部の石膏粉末に対して、0.1~3.0質量部の水溶性フィルムを含む。個包装歯科材料中の水溶性フィルムの含有量は、硬化物の強度や後述する開封時の臭気抑制の観点から、100質量部の石膏粉末に対して、0.1~2.0質量部であることが好ましく、0.1~1.5質量部であることがより好ましい。また、後述するヒートシール時の作業性の観点から、100質量部の石膏粉末に対して、0.3~3.0質量部であることが好ましく、0.5~3.0質量部であることがより好ましい。硬化物の強度およびヒートシール時の作業性の観点からは、100質量部の石膏粉末に対して、0.3~2.0質量部であることが好ましい。ここで、硬化物とは、石膏粉末の水和反応により流動性を失って固形化した状態のものを意味する。
本発明の個包装歯科材料は、上記構成であることにより、個包装歯科材料を袋ごと練和用の容器につまんで入れて、石膏の混水比に応じた所定量の水を入れて機械などで撹拌するだけで練和が完了し、石膏粉末の計量ミスによる硬化の不具合を解決できる。また、計量や計量器具の洗浄の手間の削減や、粉塵の飛散防止もできる。さらに、石膏粉末の保存時の安定性が向上するとともに、保存時に発生していた種々の問題も解決できる。さらに、石膏粉末が入った外装体(容器)開封後に、石膏粉末が吸湿により固まったり、周辺の臭気を吸着したりすることも改善される。
石膏粉末としては、例えば、半水石膏(CaSO・1/2HO)を含む。半水石膏は、例えば、石膏の主原料である二水石膏(CaSO・2HO)を、回転釜などを用いて乾式加熱することによって得ることができる(β型半水石膏)。また、半水石膏は、二水石膏を湿式加熱して得ることもできる(α型半水石膏)。本発明では、α型およびβ型のいずれの半水石膏も用いることができる。石膏粉末は、硬化物の強度が一定の強度を維持できる範囲で、着色剤や、香料を含むことができる。さらに、石膏粉末は、凝結促進剤や凝結遅延剤を含んでもよく、これらによって水硬性を調整することもできる。石膏粉末は、陰型内への注入時の流動性調整や、硬化物の寸法安定性の観点から、シリカや、ジルコニア、アルミナを含んでもよい。
水溶性フィルムは、フィルム形成可能な(成膜性を有する)水溶性の材料を含む。石膏粉末をヒートシールによって簡易に包装できるとともに、包装物の取り扱い時に容易に破損しない強度(破れにくさ)を有する観点から、水溶性有機材料を含むことが好ましい。水溶性有機材料としては、例えば、PVA系樹脂、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルキルセルロース、水溶性ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、アクリル無水マレイン酸樹脂、ゼラチン、水溶性でんぷん、寒天などから選択される。
水溶性フィルムは、上記水溶性有機材料の単一組成のフィルムであってもよいし、2以上の水溶性有機材料の混合組成のフィルムであってもよい。さらに、着色剤や、香料、補強材などを含んでもよい。
水溶性フィルムは、水溶性、ガスバリア性、ヒートシール性、取り扱い性などの観点から、PVA系樹脂を含むことが特に好ましい。PVA系樹脂としては特に限定されず、公知のPVA系樹脂を用いることができる。そして、公知の方法に従って、酢酸ビニルなどのビニルエステルを溶液重合法、塊状重合法および懸濁重合法などの公知の方法により重合してポリマーを得た後、ポリマーをケン化することにより得られる。ケン化は、アルカリまたは酸を用いてなされ、特にアルカリを用いることが好ましい。水溶性フィルムは、PVA系樹脂を1種のみ含んでもよいし、けん化度や構造が異なる2種以上のPVA系樹脂を含んでもよい。
PVA系樹脂は、未変性であってもよいし、マレイン酸変性PVA系樹脂などのアニオン性基変性PVA系樹脂、カチオン性基変性PVA系樹脂であってもよい。PVA系樹脂は、水に対する溶解性を調整する観点からは、アニオン性基変性PVA系樹脂であることが好ましい。アニオン性基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。
本実施形態で用いられるPVA系樹脂では、そのPVA系樹脂中に、予め下記のモノマーからなる繰り返し単位を有していてもよい。なお、下記のモノマーは、PVA系樹脂を構成する全モノマーに対して、本発明の効果を阻害しない範囲にて上記の変性用のモノマーと同様の割合になるようにしても良い。
樹脂中に予め有する繰り返し単位を構成するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類の完全アルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド類、ポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
PVA系樹脂の平均ケン化度は、特に限定されない。水溶性の観点から、60~100モル%が好ましく、70モル%~99モル%がより好ましく、80~99モル%がさらに好ましく、87~98モル%が特に好ましい。なお、上記の平均ケン化度は、JIS K 6726-1994に準拠して測定される。
PVA系樹脂を含むフィルム(PVA系フィルム)としては、例えば、ソルブロン(アイセロ社製)、ハイセロン(三菱ケミカル社製)、トスロン(東京セロハン紙社製)、クラレポバールフィルム(クラレ社製)などが挙げられる。
PVA系フィルムは臭気を通しにくいものの、その製法や構造によってはフィルム自体が独特の臭気を発する。PVA系フィルムには、例えば、鼻にツンとくる酢酸臭を放出しやすいものがある。そのようなPVA系フィルムで包装された複数の個包装歯科材料が梱包された密閉容器(梱包物)を開封した際などには作業者が臭気を気にすることが考えられる。また、強い臭気はなくても、作業者によっては異臭と感じるPVA系フィルムもある。
このように独特の臭気を発しやすいPVA系フィルムを、石膏粉末を包装する水溶性フィルムとして用いる場合、個包装歯科材料が、PVA系フィルムを、石膏粉末100質量部に対して0.1~3.0質量部含むことにより、それよりも多量のPVA系フィルムを含む場合に比べ、個包装歯科材料が梱包された密閉容器を開封した際などに、作業者が臭気を気にしにくいと考えられる。
歯科用石膏と水との練和について説明する。石膏粉末は、JIS T 6600:2016(以下、単に「JIS規格」ともいう)に基づき、23℃±2℃の温度条件下で所定量の水と水和反応して硬化するように水硬性が制御されている。作業者が石膏粉末と水との練和を行う時間は約1分~2分程度であると考えられる。このため、水溶性フィルムは、23℃の水に入れて1分以内で溶解するフィルムであることが好ましい。ここで、フィルムの溶解に用いる水の量は、フィルムを溶解させるのに十分な量であることとする。
練和用の水として水道水が用いられることも考慮すると、冬季の水道水を想定し、水溶性フィルムは冷水にも溶解することが好ましい。水溶性フィルムは、例えば、10℃の水に入れて1分以内で溶解するフィルムであることがより好ましく、4℃の水に入れて1分以内で溶解するフィルムであることがさらに好ましい。
水溶性フィルムの厚さとしては、例えば、1μm~80μmの範囲で自由に選択できる。水溶性フィルムの厚さは、破れにくさおよび取り扱いやすさの観点からは、20μm~60μmであることが好ましく、20μm~50μmであることがより好ましく、20μm~40μmであることがさらに好ましい。また、石膏粉末に対する水溶性フィルムの比率を低減する観点からは、1μm~50μmであることが好ましく、1μm~40μmであることがより好ましい。
水溶性フィルムは、破れにくさの観点から、引張強度が20MPa~40MPaであることが好ましく、25MPa~35MPaであることがより好ましい。また、引張伸度が150%~400%であることが好ましく、200%~370%であることがより好ましい。
水溶性フィルムを水に濡れた手で触れたり、高温高湿条件下で長時間保管したりすると破れやすくなる。そのような状況でも破れにくくするために、フィルム表面に無機塩としてNaSOを配置してもよい。この方法によれば、フィルム表面のNaSOに水分が付着した場合、ぬるぬるした感触にはなるが、フィルム表面へ直接水分が付着した場合よりも破れるまでの時間が長くなる。
ここで、NaSOは石膏の凝結促進剤として機能しうる。本発明の個包装歯科材料のフィルム表面にNaSOを配置する場合、石膏粉末に凝結遅延剤を含有させたり、半水石膏の粒径を大きくしたりして調整することで、水存在下での破れにくさと水硬性の両立を図ることができる。また、本発明の個包装歯科材料は一般消費者向けではなく、資格を有した歯科技工士向けの製品である。そのため、取り扱い説明書中などに、水に濡れた手で扱わないことを注意事項として記載するなどしてもよい。
本発明の個包装歯科材料の製造方法(石膏粉末を包装する方法)の一例について説明する。まず所定の大きさの水溶性フィルムを準備し、それを折り畳んだ折り畳み部の両端に位置する対向する2辺それぞれを、例えば約120℃~200℃の温度でヒートシールして袋状にする。得られた袋状フィルムに、1回の使用で使い切る量として例えば100gの石膏粉末を入れ、袋状フィルムの開口部をヒートシールして個包装歯科材料が得られる。なお、個包装歯科材料は、2枚の水溶性フィルムで所定量の石膏粉末を挟み、石膏粉末周囲をヒートシールすることで個包装するなどしてもよい。水溶性フィルムは、生産効率の観点からは、120℃~160℃でヒートシール可能なフィルムであることが好ましい。また、耐熱性やフィルム強度の観点からは、150℃~200℃でヒートシール可能なフィルムであることが好ましい。
本発明の個包装歯科材料は、作業者が練和作業をする際に所定量の水との練和を簡易に行えるように、例えば、各個包装歯科材料のパックの表面、複数の個包装歯科材料を梱包した梱包物の外面、取扱説明書などに1袋分の練和に必要な水量を表示することが好ましい。作業者が必要な水量を確認しやすくして水量間違いを抑制する観点から、各個包装歯科材料のパックの表面に上記必要な水量を表示しておくことがより好ましい。この場合、ヒートシール前のフィルムの状態で表記してもよいし、石膏粉末を包装してパックとなった状態で表記してもよい。
本発明の個包装歯科材料の使用方法の一例について図2に基づき説明する。図2は、個包装歯科材料を水と練和する際に用いるものを示す図である。100gの石膏粉末2を有する個包装歯科材料1を用いて混水比23%で練和する場合、個包装歯科材料1を1袋と、1袋当たりの必要水量(単位必要水量)である23gの水4とを容器5の中で練和する。練和に用いる水4は、例えば23℃の水である。個包装歯科材料1と水4を、ヘラを用いて30秒間撹拌し、さらに撹拌羽根6を用いて機械により1分間撹拌して均一に練和された石膏の練和物が得られる。練和物は、印象に注入され、例えば約9分かけて硬化させることで模型が得られる。なお、練和の開始は、容器5の中の水4に個包装歯科材料1を投入したときである。容器5の中に個包装歯科材料1が先にある場合は、容器5の中の個包装歯科材料1に水4を投入したときを練和の開始とする。模型の作製などに大量の練和物が必要な場合、複数個の個包装歯科材料1と、それと同数倍の単位必要水量を用いて練和することもできる。
個包装歯科材料を所定の水量(包装される石膏粉末の混水比に応じた水量)で硬化させた硬化物は、石膏粉末のみを上記所定の水量と同じ水量で硬化させた硬化物に対し、JIS T 6600:2016に準拠して温度23℃で測定される圧縮強さが60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。なお、本発明における「圧縮強さ」は、JIS T 6600:2016に準拠して測定される温度23℃での圧縮強さであり、練和開始から60分後の硬化物を測定して得られる破壊時の最大強度(いわゆる「ぬれ圧縮強度」)である。
歯科用石膏は、JIS規格において、線硬化膨張および圧縮強さによりタイプ1~タイプ5に分類される。例えば、JIS規格タイプ4またはタイプ5の歯科用石膏は、当該石膏の製造販売業者が指定する混水比で水と練和して得られる硬化物の圧縮強さが35.0MPa以上である。そのため、本発明の個包装歯科材料を従来の石膏粉末の代替材料として用いるためには、個包装歯科材料中の石膏粉末としてJIS規格タイプ4またはタイプ5の石膏粉末を用いる場合、個包装歯科材料の硬化物の圧縮強さが35.0MPa以上であることが好ましい。
また、JIS規格タイプ2 クラス2の歯科用石膏は、当該石膏の製造販売業者が指定する混水比で水と練和して得られる硬化物の圧縮強さが9.0MPa以上である。そのため、個包装歯科材料中の石膏粉末としてJIS規格タイプ2 クラス2の石膏粉末を用いる場合、個包装歯科材料の硬化物の圧縮強さが9.0MPa以上であることが好ましい。JIS規格タイプ2 クラス2の石膏は比較的低硬度(低圧縮強さ)の石膏であるため、数MPa程度の圧縮強さの低下でも規格値を下回りやすい。そのため、JIS規格タイプ2 クラス2の石膏粉末を含む個包装歯科材料の硬化物の圧縮強さが9.0MPa以上であることは特に有用である。
本発明の個包装歯科材料の梱包形状は、図1に示すような平らな袋状に限定されず、円筒状(俵状)、箱状、三角錐状など、任意に形状を採用できる。
(実施例1~4、比較例1、参考例1)
実施例1~4および比較例1では、歯科用の石膏粉末として硬石膏ノリタケストンExホワイト(クラレノリタケデンタル社製)を用いて、石膏粉末に対する混水比23%で練和、硬化を行った。石膏粉末を100gずつ計量し、重量(フィルム面積)が異なる水溶性のPVA系フィルムで石膏粉末を包装後、155℃でヒートシールし個包装歯科材料とした。これらはそれぞれ、23℃の水23gが入った容器内へ1袋の個包装歯科材料を投入した後、ヘラを用いて30秒間撹拌し、さらに機械により1分間撹拌した。得られた練和物についてちょう度測定を行うとともに、練和物が硬化物となるまでの時間(硬化時間)、硬化膨張率(線硬化膨張)、圧縮強さ、細線再現性の試験を行った。また、参考例1として、水溶性フィルムで個包装していない上記石膏粉末100gからなる歯科材料についても同様に練和、硬化させ、上記試験を行った。実施例1~4および比較例1で用いたPVA系フィルムを以下に示す。
実施例1~3、比較例1:アイセロ社製、ソルブロンCS、厚さ30μm
実施例4:三菱ケミカル社製、ハイセロンC-200、厚さ30μm
<ちょう度測定>
JIS K 2220に準拠した方法で、各練和物のちょう度を測定した。ちょう度測定は、機械による撹拌の直後に行った。結果を表1に示す。なお、後述する実施例5、6の各練和物も、同様の方法でちょう度を測定した。
<硬化時間、硬化膨張率、圧縮強さ、細線再現性>
硬化時間、硬化膨張率、圧縮強さ、および細線再現性は、JIS T 6600:2016 タイプ5に準拠して測定した。結果を表1に示す。なお、細線再現性は、練和物を印象に注入して得られる硬化物の模型を用いて行い、50±8μmのラインを再現可能な場合を「○」、再現不可能な場合を「×」として評価した。
Figure 2023149267000002
表1に示すように、上記PVA系フィルムにより石膏粉末が個包装された実施例1~4および比較例1は、石膏粉末が個包装されていない参考例1と同等程度のちょう度、硬化時間、硬化膨張率であった。なお、実施例1~4および比較例1は、参考例1よりも、ちょう度がやや大きく(実施例4を除く)、硬化時間がやや長い傾向を示した。また、異種のPVA系フィルムを用いた実施例2(フィルム重量1.4g)と実施例4(フィルム重量1.2g)の圧縮強さを比較すると、実施例2は、実施例4よりもちょう度が大きく、流動性に優れることがわかった。
JIS T 6600:2016 タイプ5の硬質石膏の場合、硬化物の圧縮強さの規格値が35.0MPa以上であるところ、水溶性フィルムを石膏粉末100質量部に対して0.1~3.0質量部含む実施例1~4の硬化物の圧縮強さは全て35.0MPa以上で、規格値を満たした。また、実施例2と実施例4の圧縮強さを比較すると、実施例2は45.0MPa、実施例4は44.0MPaとほぼ同等で、上述した規格値(35.0MPa以上)よりも10MPa程度高い結果であった。一方、水溶性フィルムを石膏粉末100質量部に対して3.1質量部含む比較例1の硬化物の圧縮強さは24.0MPaで、規格値を満たさなかった。本結果より、石膏粉末に対する水溶性フィルムのフィルム重量(比率)は硬化物の強度に大きく影響を与えることがわかった。
同種のPVA系フィルムを用い、フィルム重量が異なる実施例1~実施例3および比較例1の圧縮強さを比較すると、フィルム重量が増えるにつれて圧縮強さが徐々に低下する傾向が見られた。また、実施例1~4、比較例1、および参考例1は、細線再現性に問題ないことが確認された。実施例1~4は、JIS T 6600:2016 タイプ5で規定される圧縮強さ、硬化膨張率、細線再現性を満たすことが確認された。
(比較例2)
硬石膏ノリタケストンExホワイト100gに対して、PVA系フィルムに代えて水溶性でんぷんフィルム(瀧川オブラート社製、オブラート、1.0g)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で個包装歯科材料とし、23℃の水23gで練和を行った。しかし、オブラートが溶解せず、スラリー状の均一な練和物は得られなかった。
(実施例5、参考例2)
実施例5では、歯科用の石膏粉末として超硬石膏セーフティロック(クラレノリタケデンタル社製)を用いて、石膏粉末に対する混水比20%で練和、硬化を行った。石膏粉末を100g計量し、水溶性のPVA系フィルム(アイセロ社製、ソルブロンCS、厚さ30μm、1.3g)で石膏粉末を包装後、155℃でヒートシールし個包装歯科材料とした。23℃の水20gが入った容器内へ1袋の上記個包装歯科材料を投入した後、ヘラを用いて30秒間撹拌し、さらに機械により1分間撹拌した。得られた練和物についてちょう度測定を行うとともに、硬化時間、硬化膨張率、圧縮強さ、細線再現性の試験を行った。また、参考例2として、水溶性フィルムで個包装していない上記石膏粉末100gからなる歯科材料についても同様に練和、硬化させ、上記試験を行った。
<硬化時間、硬化膨張率、圧縮強さ、細線再現性>
硬化時間、硬化膨張率、圧縮強さ、および細線再現性は、JIS T 6600:2016 タイプ4に準拠して測定した。結果を表2に示す。なお、細線再現性は、練和物を印象に注入して得られる硬化物の模型を用いて行い、50±8μmのラインを再現可能な場合を「○」、再現不可能な場合を「×」として評価した。
Figure 2023149267000003
表2に示すように、実施例5は、参考例2と比較すると、同じ硬化時間であったが、ちょう度および硬化膨張率がやや低かった。また、実施例5の圧縮強さは40.0MPaであり参考例2の圧縮強さ(52.0MPa)よりも10MPa程度低かったが、JIS T 6600:2016 タイプ4の圧縮強さの規格値(35.0MPa以上)を満たした。さらに、実施例5は、JIS T 6600:2016 タイプ4で規定される硬化膨張率、細線再現性を満たすことが確認された。
(実施例6、参考例3)
実施例6では、歯科用の石膏粉末として普通石膏ノリタケ デンタル プラスター ラボ用(クラレノリタケデンタル社製)を用いて、石膏粉末に対する混水比52%で練和、硬化を行った。石膏粉末を100g計量し、水溶性のPVA系フィルム(アイセロ社製、ソルブロンCS、厚さ30μm、1.3g)で石膏粉末を包装後、155℃でヒートシールし個包装歯科材料とした。23℃の水52gが入った容器内へ1袋の上記個包装歯科材料を投入した後、ヘラを用いて30秒間撹拌し、さらに機械により1分間撹拌した。得られた練和物についてちょう度測定を行うとともに、硬化時間、硬化膨張率、圧縮強さ、細線再現性の試験を行った。また、参考例3として、水溶性フィルムで個包装していない上記石膏粉末100gからなる歯科材料についても同様に練和、硬化させ、上記試験を行った。
<硬化時間、硬化膨張率、圧縮強さ、細線再現性>
硬化時間、硬化膨張率、圧縮強さ、および細線再現性は、JIS T 6600:2016 タイプ2 クラス2に準拠して測定した。結果を表3に示す。なお、細線再現性は、練和物を印象に注入して得られる硬化物の模型を用いて行い、75±8μmのラインを再現可能な場合を「○」、再現不可能な場合を「×」として評価した。
Figure 2023149267000004
表3に示すように、実施例6は、参考例3と比較すると、ちょう度はほぼ同じで、硬化時間がやや長く、硬化膨張率がやや低かった。また、実施例6の圧縮強さは12.0MPaであり参考例3の圧縮強さ(14.0MPa)よりもやや低かったが、JIS T 6600:2016 タイプ2 クラス2の圧縮強さの規格値(9.0MPa以上)を満たした。さらに、実施例6は、JIS T 6600:2016 タイプ2 クラス2で規定される硬化膨張率、細線再現性を満たすことが確認された。
本発明の個包装歯科材料は、石膏粉末を所定量の水溶性フィルムによって所定量ごとに個別に包装することで、作業性および硬化物の強度の維持を図っている。
本発明の個包装歯科材料は、作業性および硬化物の強度に優れるので、石膏粉末を含む歯科材料として広く使用できる。
1 個包装歯科材料
2 石膏粉末
3 水溶性フィルム
4 水
5 容器
6 撹拌羽根

Claims (7)

  1. 石膏粉末と、水溶性フィルムとを含む歯科材料であって、
    前記石膏粉末が、前記水溶性フィルムによって、所定量ごとに個別に包装され、
    前記歯科材料が、前記水溶性フィルムを、前記石膏粉末100質量部に対して0.1~3.0質量部含むことを特徴とする個包装歯科材料。
  2. 前記個包装歯科材料を所定の水量で硬化させた硬化物は、前記石膏粉末のみを前記所定の水量と同じ水量で硬化させた硬化物に対し、JIS T 6600:2016に準拠して温度23℃で測定される圧縮強さが60%以上であることを特徴とする請求項1記載の個包装歯科材料。
  3. 前記石膏粉末が、JIS T 6600:2016 タイプ4またはタイプ5の石膏粉末であり、
    前記個包装歯科材料の前記硬化物の圧縮強さが、35.0MPa以上であることを特徴とする請求項2記載の個包装歯科材料。
  4. 前記石膏粉末が、JIS T 6600:2016 タイプ2 クラス2の石膏粉末であり、
    前記個包装歯科材料の前記硬化物の圧縮強さが、9.0MPa以上であることを特徴とする請求項2記載の個包装歯科材料。
  5. 前記水溶性フィルムが、ポリビニルアルコール系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の個包装歯科材料。
  6. 前記水溶性フィルムが、23℃の水に入れて1分以内で溶解するフィルムであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の個包装歯科材料。
  7. 前記水溶性フィルムが、120℃~200℃でヒートシール可能なフィルムであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の個包装歯科材料。
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