JP2023149118A - 電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物および電力ケーブル - Google Patents

電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物および電力ケーブル Download PDF

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伸悟 三ツ木
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Abstract

Figure 2023149118000001
【課題】水トリーの成長を抑制し、かつ誘電損失正接を低下できる、電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物および電力ケーブルを提供する。
【解決手段】電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物は、成分(a)と成分(b)と成分(c)と成分(d)とを含み、前記成分(a)は、ポリエチレンであり、前記成分(b)は、樹脂(b1)および樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂であり、前記樹脂(b1)は、不飽和有機酸およびその誘導体から選択される少なくとも1種の変性モノマーがグラフトされた樹脂であり、前記樹脂(b2)は、エチレン-アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体およびエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体であり、前記成分(c)は、水トリー抑制剤であり、前記成分(d)は、架橋剤である。
【選択図】図1

Description

本開示は、電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物および電力ケーブルに関する。
従来の電力ケーブルに用いられてきた架橋性ポリエチレン(XLPE)は、水分の多い環境下で電力ケーブルの絶縁体として運用していると、水トリーが発生する。水トリーは、樹脂中の異物や気泡(ボイド)から生じる樹枝状の欠陥である。
電力ケーブルに電気を流すことで生じる水の誘電泳動により、樹脂中の水分が異物やボイド界面に集中することで、水トリーは成長する。水トリーは電力ケーブルの破壊を引き起こすので、水トリーの成長を抑制させることが求められている。
水トリーの成長抑制のために、XLPE樹脂では、疎水性のポリエチレンに親水性の分子、例えばポリエチレングリコール類を添加する。ポリエチレングリコール類のような親水性の分子により、XLPE樹脂中で水分が均一に分散するので、異物やボイド界面への水分の集中が抑えられ、水トリーの成長が抑制される。
また、特許文献1では、ポリオレフィンまたは架橋ポリオレフィンと少量の高分子量ポリエチレングリコールとを含む電気絶縁用ポリオレフィン組成物が開示されている。また、ポリプロピレングリコールのような低親水性、もしくは疎水性の材料は絶縁体中の水トリーの生成を防止しないという技術も開示されている。
このように、親水性の分子を添加して、水トリーの成長を抑制している。しかしながら、親水性分子の添加は、樹脂の誘電損失正接(tanδ)を増加させるため、電力ケーブルの電力輸送効率が低下する。
米国特許第4305849号明細書
本開示の目的は、水トリーの成長を抑制し、かつ誘電損失正接を低下できる、電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物および電力ケーブルを提供することである。
[1] 成分(a)と成分(b)と成分(c)と成分(d)とを含み、前記成分(a)は、ポリエチレンであり、前記成分(b)は、樹脂(b1)および樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂であり、前記樹脂(b1)は、不飽和有機酸およびその誘導体から選択される少なくとも1種の変性モノマーがグラフトされた樹脂であり、前記樹脂(b2)は、エチレン-アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体およびエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体であり、前記成分(c)は、水トリー抑制剤であり、前記成分(d)は、架橋剤である、電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
[2] 前記成分(c)は、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ならびにソルビットエステルから選択される少なくとも1種の化合物である、上記[1]に記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
[3] 前記電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物を架橋させてなる架橋物の、90℃で30kV/mmの誘電損失正接が1.0%以下である、上記[1]または[2]に記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
[4] 前記樹脂(b1)は、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸誘導体から選択される少なくとも1種の変性モノマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系共重合体から選択される少なくとも1種の樹脂に付加している、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
[5] 前記電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物に含まれる前記成分(b)の含有割合は、3.0wt%以上25.0wt%以下である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
[6] 導体と、前記導体の外側に配置され、前記導体を取り囲む内部半導電層と、前記内部半導電層の外側に配置され、前記内部半導電層を取り囲む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物を架橋させてなる絶縁層と、前記絶縁層の外側に配置され、前記絶縁層を取り囲む外部半導電層とを備える電力ケーブル。
本開示によれば、水トリーの成長を抑制し、かつ誘電損失正接を低下できる、電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物および電力ケーブルを提供することができる。
図1は、実施形態の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物を適用した電力ケーブルの一例を示す横断面図である。 図2は、水トリー試験を示す概略図である。
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、水トリーの成長抑制のために水トリー抑制剤を含有しても、特定の成分を含有することによって、水トリー抑制剤に起因する誘電損失正接の増加を抑制できることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
実施形態の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物(以下、単に絶縁性樹脂組成物ともいう)は、成分(a)と成分(b)と成分(c)と成分(d)とを含み、成分(a)は、ポリエチレンであり、成分(b)は、樹脂(b1)および樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂であり、樹脂(b1)は、不飽和有機酸およびその誘導体から選択される少なくとも1種の変性モノマーがグラフトされた樹脂であり、樹脂(b2)は、エチレン-アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体およびエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体であり、成分(c)は、水トリー抑制剤であり、成分(d)は、架橋剤である。
実施形態の絶縁性樹脂組成物は、構成要素として、成分(a)と成分(b)と成分(c)と成分(d)とを含む。絶縁性樹脂組成物を架橋させてなる架橋物(以下、単に架橋物ともいう)は、絶縁体であり、電力ケーブルの絶縁層に好適に用いられる。
絶縁性樹脂組成物に含まれる成分(a)は、ポリエチレンである。ポリエチレンとしては、低圧プロセスでも高圧プロセスでも製造し得るが、高圧プロセスで製造される低密度ポリエチレン(LDPE)であることが好ましい。
絶縁性樹脂組成物に含まれる成分(b)は、樹脂(b1)および樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂である。成分(b)は、成分(c)である水トリー抑制剤に起因する、絶縁性樹脂組成物の架橋物における誘電損失正接の上昇を抑制する。
樹脂(b1)は、不飽和有機酸およびその誘導体から選択される少なくとも1種の変性モノマーがグラフトされた樹脂(以下、単にグラフト樹脂ともいう)である。
変性モノマーのグラフトにより樹脂に導入される官能基としては、C=O結合を有する官能基であることが好ましい。そのなかでも、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、酸無水物、アミド基、イミド基であることが好ましい。成分(c)である水トリー抑制剤は、樹脂にグラフトした分子中のC=Oとの水素結合で拘束されることで、電場による分子運動が抑制される。このように、樹脂にグラフトした分子中のC=Oは、水トリー抑制剤の運動を抑制するため、架橋物の誘電損失正接を効率的に低下することができる。また、グラフト樹脂は、水トリー抑制剤の分散性を改善できると共に、架橋物のブリードアウトを抑制できる。
好ましい変性モノマーとしては、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸誘導体である。このような変性モノマーがグラフトされた樹脂(b1)としては、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸誘導体から選択される少なくとも1種の変性モノマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系共重合体から選択される少なくとも1種の樹脂に付加していることが好ましい。ポリエチレンとしては、高圧プロセスで製造される低密度ポリエチレンであることが好ましい。
不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸であることが好ましい。不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸および無水イタコン酸であることが好ましい。不飽和ジカルボン酸誘導体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N-フェニルマレイミドおよびN-シクロヘキシルマレイミドであることが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。そのなかでも、五員環の環状酸無水物である無水マレイン酸であることが好ましい。
変性モノマーのグラフト量は、グラフト樹脂中の0.25wt%以上2.00wt%以下であることが好ましい。この範囲で変性モノマーがグラフトされると、絶縁性樹脂組成物中で変性モノマーが均一に分散するので、系内の誘電損失正接を均一に低下させることができる。
変性モノマーが無水マレイン酸である場合、絶縁性樹脂組成物に含まれる変性モノマーの含有割合は、0.01wt%以上0.50wt%以下であることが好ましい。この範囲で無水マレイン酸が絶縁性樹脂組成物に含有されると、系内の誘電損失正接を均一に抑制することができる。特に、0.50wt%超で無水マレイン酸を含有する場合は、混練装置や押出し装置の金属内壁にグラフト樹脂が固着し、樹脂組成の均一性を低下させることがある。その結果、水トリーの成長が促進されることがある。
グラフト樹脂の調製方法としては、例えば特許第6205032号明細書の段落[0098]に記載の方法によって、原料となるポリエチレン、酸化防止剤、変性モノマーおよび有機過酸化物を押出機内で混合して加熱、反応させることにより得ることができる。
樹脂(b2)は、エチレン-アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体およびエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体である。
エチレン-アクリレート共重合体としては、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合であることが好ましい。
絶縁性樹脂組成物に含まれる成分(b)の含有割合について、下限値は、好ましくは3.0wt%以上、より好ましくは4.0wt%以上であり、上限値は、好ましくは25.0wt%以下、より好ましくは15.0wt%以下である。成分(b)の含有割合が上記範囲内であると、絶縁性樹脂組成物の架橋物の誘電損失正接を十分に低下することができる。
成分(b)について、樹脂(b1)は、樹脂(b2)に比べて、架橋物の誘電損失正接を効率的に低下できる。そのため、絶縁性樹脂組成物は、樹脂(b1)を含むことが好ましい。
絶縁性樹脂組成物に含まれる成分(c)は、水トリー抑制剤である。成分(c)である水トリー抑制剤は、親水性分子であり、絶縁性樹脂組成物の架橋物に吸湿性を付与することができる。架橋物への吸湿性の付与により、架橋物中の水分が均一に分散されるため、異物やボイド界面への水分の集中が抑えられ、架橋物中の水トリーの成長を抑制できる。
水トリー抑制剤は、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ならびにソルビットエステルから選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、およびこれらのアルキルエーテルもしくはカルボン酸エステルであることが好ましい。これらの水トリー抑制剤は、水分子との水素結合により絶縁性樹脂組成物の架橋物に吸湿性を付与することが目的であり、ポリアルキレングリコール誘導体はポリアルキレングリコール同様の効果を発現する。ポリアルキレングリコールおよびその誘導体は、ドライブレンド時に樹脂ペレットに吸収させて使用する場合には、60℃で液体であることが好ましい。ポリグリセリンは、複数のグリセリンがエーテル結合により重合した化合物であり、直鎖状や環状、分岐状構造をとることができる。また、これらポリグリセリンをアルキルエーテル化、カルボン酸エステル化とすることで、本開示の絶縁性樹脂組成物への分散性が改善する。特に脂肪酸エステル化で絶縁性樹脂組成物へ導入することが化合物の製造安定性の点で好ましい。ソルビットはグルコースより誘導された多価アルコールであり、ソルビットエステルはソルビットの1つ以上の水酸基を脂肪酸でエステル化した化合物である。ソルビットはエステル化により絶縁性樹脂組成物へ分散することができる。
絶縁性樹脂組成物の架橋物におけるブリードアウトを抑制するため、水トリー抑制剤の数平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは3000以上、さらに好ましくは9000以上である。一方で、溶融混練時の水トリー抑制剤の分散性を良好にするため、水トリー抑制剤の数平均分子量は30000以下であることが好ましい。また、取り扱い容易性から、水トリー抑制剤の数平均分子量は20000以下であることが好ましい。
絶縁性樹脂組成物に含まれる水トリー抑制剤の含有割合について、下限値は、好ましくは0.1wt%以上、より好ましくは0.2wt%以上であり、上限値は、好ましくは2.0wt%以下、より好ましくは1.0wt%以下である。水トリー抑制剤の含有割合が上記範囲内であると、絶縁性樹脂組成物の架橋物における水トリーの成長を十分に抑制できる。また、水トリー抑制剤の含有割合が1.0wt%以下であると、架橋物のブリードアウトをさらに抑制できる。
絶縁性樹脂組成物に含まれる成分(d)は、架橋剤であり、成分(a)であるポリエチレンを架橋させる。成分(d)である架橋剤は、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(日油社製パーヘキシルD)、ジクミルパーオキサイド(日油社製パークミルD)、2, 5-ジメチル-2, 5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製パーヘキサ25B)、α, α' -ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油社製パーブチルP )、t-ブチルクミルパーオキサイド(日油社製パーブチルC)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(日油社製パーブチルD)であることが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。そのなかでも、ジクミルパーオキサイドであることが好ましい。
絶縁性樹脂組成物に含まれる架橋剤の含有割合について、下限値は、好ましくは0.1wt%以上、より好ましくは0.5wt%以上であり、上限値は、好ましくは5.0wt%以下、より好ましくは3.0wt%以下である。架橋剤の含有割合が上記範囲内であると、絶縁性樹脂組成物を良好に架橋できる。
また、絶縁性樹脂組成物は、上記の成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)に加えて、酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤としては、ラジカル捕捉を主目的としたヒンダードフェノール系酸化防止剤と、過酸化物分解を主目的としたリン系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤との併用が好ましい。
絶縁性樹脂組成物に含まれる酸化防止剤の含有割合について、下限値は、好ましくは0.01wt%以上、より好ましくは0.20wt%以上であり、上限値は、好ましくは1.00wt%以下、より好ましくは0.60wt%以下である。酸化防止剤の含有割合が上記範囲内であると、絶縁性樹脂組成物の架橋物における酸化劣化を良好に抑制できる。
また、絶縁性樹脂組成物の架橋物における水トリーの成長抑制および誘電損失正接の低下を阻害しない限りにおいて、絶縁性樹脂組成物は、上記成分に加えて、各種物質を含んでもよい。各種物質としては、安定剤、滑剤、無機充填材、表面処理剤、難燃剤、酸スカベンジャー、電圧安定剤などが挙げられる。
絶縁性樹脂組成物は、成分(a)に対し、成分(b)、成分(c)、成分(d)などを、ヘンシェルミキサーなどによるドライブレンド後に溶融混練することで得ることができる。溶融混練の装置としては、単軸または二軸押出し機、バンバリー、ニーダーなどの混練機を用いることができる。特に、連続加工が可能である、単軸または二軸押出し機に異物を取り除く目的で目開き100μm以下の金属メッシュフィルターを取り付けて、樹脂押出しを行うことが好ましい。成分(d)を添加した後の絶縁性樹脂組成物は、120℃以上135℃以下で混練を行うことが好ましい。
絶縁性樹脂組成物の比重は、0.91以上0.93以下であることが好ましい。
また、絶縁性樹脂組成物を架橋させてなる架橋物の、90℃で30kV/mmの誘電損失正接は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下である。架橋物の上記誘電損失正接が上記範囲内であると、絶縁性樹脂組成物の架橋物を絶縁層に適用した電力ケーブルについて、誘電損失正接が小さいため、電力輸送効率を向上できる。
架橋物の上記誘電損失正接は、JIS C 2138に準じて90℃で30kV/mmの条件で測定したときの値である。なお、誘電損失正接は、温度および課電電界依存性があり、上記絶縁性樹脂組成物の架橋物を23℃で10kV/mmの条件で測定すると、架橋物の誘電損失正接は0.1%以下である。
また、絶縁性樹脂組成物の架橋物における水トリーの成長抑制のため、架橋物の吸湿率は、500ppm以上であることが好ましく、800ppm以上であることがより好ましい。架橋物への吸湿性の付与により、架橋物中の水分が均一に分散し、架橋物中の水トリーの成長を抑制できる。また、架橋物の絶縁耐力の観点から、架橋物の吸湿率は2000ppm以下であることが好ましい。
また、JIS K 7210に準じて溶融温度190℃、荷重2.16kgfで測定したときの架橋物の樹脂流動性は、好ましくは0.5g/10分以上5.0g/10分以下、より好ましくは0.5g/10分以上3.0g/10分以下である。樹脂流動性が上記範囲内であると、架橋物からのトリー抑制剤のブリードアウトを抑制できると共に、架橋物の形状を長期に亘って維持できる。
実施形態の絶縁性樹脂組成物を架橋することで得られる架橋物は、絶縁体である。このような絶縁性樹脂組成物の架橋物を絶縁層に適用した電力ケーブルでは、絶縁層における水トリーの成長を抑制でき、かつ誘電損失正接を低下できることから、高圧や超高圧で電力ケーブルを使用しても、電力ケーブルは効率よく送電することができる。このような電力ケーブルは、地底ケーブルや海底ケーブルに好適に使用される。電力ケーブルが交流電力ケーブルであると、水トリーの成長抑制および誘電損失正接の低下の効果をさらに有効的に発揮する。
図1は、実施形態の絶縁性樹脂組成物を適用した電力ケーブルの一例を示す横断面図である。
図1に示すように、電力ケーブル1は、導体2、導体2の外側に配置される内部半導電層3、内部半導電層3の外側に配置され、上記の絶縁性樹脂組成物を架橋させてなる絶縁層4、および絶縁層4の外側に配置される外部半導電層5を備える。内部半導電層3は、導体2を取り囲む。絶縁層4は、内部半導電層3を取り囲む。外部半導電層5は、絶縁層4を取り囲む。このように、電力ケーブル1では、銅やアルミニウムなどの金属から構成される導体2上に、内部半導電層3と絶縁層4と外部半導電層5とが、この順に積層されている。
内部半導電層3および外部半導電層5は、例えば、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、またはエチレン-酢酸ビニル共重合体などのエチレン系共重合体と、オレフィン系エラストマーと、導電性のカーボンブラックとを含んでいる。
また、電力ケーブル1は、外部半導電層5の外側に配置され、外部半導電層5を取り囲む不図示の金属遮蔽層をさらに備えてもよい。また、電力ケーブル1は、金属遮蔽層の外側に配置され、金属遮蔽層を取り囲む不図示のシースをさらに備えてもよい。
導体2は、樹脂押出し口に連続的に供給され、ここで内部半導電層3と絶縁性樹脂組成物層と外部半導電層5とにより被覆される。これら3層は、同時に押し出して被覆してもよいし、順次被覆してもよい。被覆時の導体が先に被覆した樹脂からの伝熱により加熱されている場合、導体近傍の樹脂の冷却速度が遅くなるので、冷却により導体の温度を1℃以上100℃以下に調整し、導体を樹脂押出し口に供給することが好ましい。
絶縁性樹脂組成物の被覆は、異物を取り除く目的で目開き100μm以下の金属メッシュフィルターを取り付けた樹脂押出し機の樹脂押出し口から、導体2上(内部半導電層3上)に向けて押し出して行われる。押出し時の絶縁性樹脂組成物の温度は、絶縁性樹脂組成物の融点以上であることが好ましく、具体的には110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。また、スコーチ抑制のためには、押出し時の絶縁性樹脂組成物の温度は140℃以下であることが好ましい。
このようにして導体2上が絶縁性樹脂組成物層で被覆された後、加圧加熱により絶縁性樹脂組成物層の架橋反応を行い、絶縁性樹脂組成物を架橋させてなる絶縁層4を形成する。こうして、電力ケーブル1を得る。その後、電力ケーブル1は冷却管や冷却水槽により冷却され、必要に応じて、通常の方法により不図示の金属遮蔽層やシースが形成される。
冷却後の電力ケーブル1に金属遮蔽層やシースなどの外装を形成する際、絶縁層4の変形を防ぐために、絶縁層4の温度は300℃以下であることが好ましい。
絶縁層4の厚さについて、絶縁特性の観点から、2mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましく、敷設作業性の観点から、50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましい。
また、内部半導電層3の厚さおよび外部半導電層5の厚さについて、絶縁特性の観点から、いずれも、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、導電特性の観点から、いずれも、5.0mm以下であることが好ましく、3.0mm以下であることがより好ましく、2.0mm以下であることがさらに好ましい。
以上説明した実施形態によれば、水トリーの成長抑制のために成分(c)である水トリー抑制剤を含有しても、成分(b)を含有することによって、水トリー抑制剤に起因する誘電損失正接の増加を抑制できる。そして、水トリーの成長を抑制し、かつ誘電損失正接を低下できる絶縁性樹脂組成物の架橋物を絶縁層に適用することで、電力ケーブルの電力輸送効率を向上できる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた原料は下記の通りである。
・成分(a):ポリエチレン(CE1559;住友化学社製LDPE、MFR0.8)
・樹脂(b1-1):無水マレイン酸グラフト樹脂(無水マレイン酸をCE1559に2.00wt%グラフトさせた樹脂)
・樹脂(b1-2):無水マレイン酸グラフト樹脂(無水マレイン酸をCE1559に0.25wt%グラフトさせた樹脂)
・樹脂(b1-3):無水マレイン酸グラフト樹脂(無水マレイン酸をCE1559に1.00wt%グラフトさせた樹脂)
・樹脂(b2-1):エチレン系共重合体(NUC-6520;エネオスNUC社製エチレンエチルアクリレートコポリマー、アクリレート含有24wt%、MFR1.6)
・成分(c-1):水トリー抑制剤(PEG-20000;アデカ社製ポリエチレングリコール、数平均分子量20000)
・成分(c-2):水トリー抑制剤(ポリプロピレングリコール4000;アデカ社製ポリプロピレングリコール、数平均分子量4000)
・成分(c-3):水トリー抑制剤(ポリプロピレングリコール400;アデカ社製ポリプロピレングリコール、数平均分子量400)
・成分(d):架橋剤(パークミルD;日油社製ジクミルパーオキサイド)
・酸化防止剤(Irganox1010;BASF社製ヒンダートフェノール系酸化防止剤)
(実施例1~8および比較例1~2)
ヘンシェルミキサーを用いて各原料をドライブレンドした後、目開き0.091mmの平織りメッシュを取り付けた単軸押出し機(L/D=24、120℃)で押出し、表1に示す組成を有するペレット状の絶縁性樹脂組成物(以下、樹脂ペレットともいう)を得た。
[測定および評価]
上記実施例および比較例で得られた絶縁性樹脂組成物について、下記の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
[1] 吸湿率
樹脂ペレットを用いて、縦100mm、横150mm、高さ1mmの試料になるように120℃で成型し、試料を160℃で架橋し、架橋物を6分割した試験片を、70℃相対湿度90%の恒温恒湿槽に4時間保管した後で取出し、JIS K7251のB法(水分気化法)のカールフィッシャー法により含水量を測定して、吸湿率を求めた。
[2] 樹脂流動性
樹脂ペレットを用いて、JIS K7210に準じて溶融温度190℃、荷重2.16kgfの条件で、10分あたりの押出し樹脂量(g)により樹脂流動性を測定した。
[3] 水トリーの長さ
はじめに、小型の電力ケーブルを製造した。まず、樹脂ペレットを用いて、絶縁性樹脂組成物を目開き0.091mmの平織りメッシュを取り付けた単軸押出し機(L/D=24、120℃、フルフライトスクリュー)で押出し、目開き0.091mmの平織りメッシュを取り付けた別の単軸押出し機(L/D=24、120℃、フルフライトスクリュー)で押出した半導電材樹脂(NUCV-9590、エネオスNUC社製エチレン-エチルアクリレート共重合体ベースの半導電性樹脂組成物)と共に、三層ヘッド(120℃)にて銅導体上に被覆を行った。被覆後のケーブルについて、加圧架橋管を通り、次いで水槽に送って冷却した。こうして、外形約2mmの銅導体、厚さ約0.5mmの内部半導電層、厚さ約2mmの絶縁層、厚さ約0.5mmの外部半導電層を備える小型の電力ケーブルを得た。
次に、小型の電力ケーブル1を図2に示すように3.5wt%NaCl水溶液に浸漬し、導体とNaCl水溶液の間に4kVの1000Hz交流電圧を200時間印加し、水トリー試験を行った。試験後の電力ケーブルを軸方向に沿って厚さ1mmの輪切りにスライスして得られた10枚の試料について、光学顕微鏡で観察し、水トリーの長さを測定した。
[4] 誘電損失正接
樹脂ペレットを用いて、厚さ0.3mmのフィルム状試料になるように120℃で10分成型し、試料を160℃で30分架橋し、架橋物をJIS C 2138に準じて90℃で30kV/mmの条件で誘電損失正接を測定した。
Figure 2023149118000002
表1に示すように、実施例1~8では、絶縁性樹脂組成物が成分(a)と成分(b)と成分(c)と成分(d)とを含んでいるため、水トリーの成長抑制かつ誘電損失正接の低下を達成できた。一方、比較例1~2では、絶縁性樹脂組成物が成分(a)~成分(d)の少なくとも1つの成分を含まなかったため、水トリーの成長抑制かつ誘電損失正接の低下を達成できなかった。
1 電力ケーブル
2 導体
3 内部半導電層
4 絶縁層
5 外部半導電層

Claims (6)

  1. 成分(a)と成分(b)と成分(c)と成分(d)とを含み、
    前記成分(a)は、ポリエチレンであり、
    前記成分(b)は、樹脂(b1)および樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂であり、前記樹脂(b1)は、不飽和有機酸およびその誘導体から選択される少なくとも1種の変性モノマーがグラフトされた樹脂であり、前記樹脂(b2)は、エチレン-アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体およびエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体であり、
    前記成分(c)は、水トリー抑制剤であり、
    前記成分(d)は、架橋剤である、
    電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
  2. 前記成分(c)は、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ならびにソルビットエステルから選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
  3. 前記電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物を架橋させてなる架橋物の、90℃で30kV/mmの誘電損失正接が1.0%以下である、請求項1または2に記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
  4. 前記樹脂(b1)は、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸誘導体から選択される少なくとも1種の変性モノマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系共重合体から選択される少なくとも1種の樹脂に付加している、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
  5. 前記電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物に含まれる前記成分(b)の含有割合は、3.0wt%以上25.0wt%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物。
  6. 導体と、
    前記導体の外側に配置され、前記導体を取り囲む内部半導電層と、
    前記内部半導電層の外側に配置され、前記内部半導電層を取り囲む、請求項1~5のいずれか1項に記載の電力ケーブル用絶縁性樹脂組成物を架橋させてなる絶縁層と、
    前記絶縁層の外側に配置され、前記絶縁層を取り囲む外部半導電層と
    を備える電力ケーブル。
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