JP2023148848A - 鉄道システム、車上装置及び電気車駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 地上の充電スタンドの電圧を昇圧して電気車の蓄電装置へ充電できるようにした、より簡素な鉄道システムを提供する。【解決手段】 地上から供給される電力により充電可能な蓄電装置を具備する電気車を稼働させる鉄道システムであって、地上には、電車線とは別系統の直流充電装置が配設され、電気車の車上装置として、電車線から集電装置を介して接続されスイッチング素子を有する少なくとも直流から交流への電力変換装置と、電力変換装置の交流側に接続された電動機と、を備え、直流充電装置により蓄電装置を充電するために必要な充電電圧は、直流充電装置の出力電圧を直流-直流電力変換装置が昇圧して確保する。直流-直流電力変換装置が車上の兼用機であれば、インバータモードからチョパモードへと切り替え可能な切り替えスイッチと、昇圧可能に形成されるチョッパ回路と、を有するが、専用機を備えても良い。【選択図】 図2
Description
本発明は鉄道システム、車上装置及び電気車駆動方法に関する。
近年の電気車において、架線からの電力供給が途絶えた緊急時には、車載畜電池に蓄えられた電力で、電気車に必要最小限の自力走行させることが考えられる。その車載畜電池は、充電機能も含めて、スペース、重量及び設備負担の点から、できるだけ小規模であることが好ましい。そこで、車載された複数の二次電池を並列接続することにより、低電圧の充電装置から充電し、この充電済の二次電池を直列接続につなぎ換えて、高電圧出力が得られるようにした電気車が知られている(例えば、特許文献1)。
蓄電池電車は、架線等の電車線を備えて電力供給が維持された区間を通常の電車として走行し、電車線がない区間、又は電車線からの給電が途絶えた場合、車載蓄電池の電力によりある程度の自力走行が可能である。その車載蓄電池の容量に制約があっても、今後、地上の電気自動車(Battery Electric Vehicle、以下「EV」ともいう)用充電設備から電気車の車載蓄電池に対し、プラグイン方式による充電が容易になれば、列車運行計画の選択肢が広がる。
その際、高電圧駆動の電車と、比較的低電圧駆動のEVとの電圧格差が問題であり、その電圧格差を解消できて、なお簡素なシステムとすることが好ましい。本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地上の充電スタンドの電圧を昇圧して電気車の蓄電装置へ充電できるようにした、より簡素な鉄道システムを提供することにある。
上記課題を解決する本発明は、地上から供給される電力により充電可能な蓄電装置を具備する電気車を稼働させる鉄道システムであって、地上には、電車線とは別系統の直流充電装置が配設され、電気車の車上装置として、電車線から集電装置を介して接続されスイッチング素子を有する少なくとも直流から交流への電力変換装置と、電力変換装置の交流側に接続された電動機と、を備え、直流充電装置により蓄電装置を充電するために必要な充電電圧は、直流充電装置の出力電圧を直流-直流電力変換装置が昇圧して確保する。
本発明によれば、地上の充電スタンドの電圧を昇圧して電気車の蓄電装置へ充電できるようにした、より簡素な鉄道システムを提供できる。
以下、図面を用いて実施例を説明する。実施例1は、図1~図6を用いて説明し、その変形例は、図6を用いて説明する。実施例2は、図7を用いて説明する。実施例3は、図8を用いて説明する。これら各実施例に応じた電力変換装置6A~電力変換装置6Dを後述するが、区別の必要がなければ、まとめて電力変換装置6とする。文中の符号6Xは、電力変換装置(インバータ)6を異なるモードの直流-直流電力変換装置(チョッパ回路)6Xとして使用し、兼用機6Xともいうが、その符号6Xは不図示である。
図1は、本発明の実施例1に係る鉄道システムを示す概略図である。図1に示すように、車両8は、架線1から集電装置7を介して受電し、電動機5の駆動により、車輪3を回転させて、前進又は後進する。車両8を駆動する電機品、すなわち車上装置としての遮断器11a、電力変換装置6A、フィルタリアクトル15、断流器箱、蓄電装置9、蓄電池17、及び外部充電コネクタ10は、各別の箱に格納されて床下に配設されている。なお、フィルタリアクトル15については、詳細に後述する。
図1に示す各電機品は、別箱で記載しているが、電機品の一部もしくは全てを一体の箱に格納することにより、実装密度を高密度化しても良い。電気的なグラウンドとして、電力変換装置6Aの低電位側は、車輪3を介してレール2に接続されている。電動機5は、台車4に搭載されており、その台車4は、車両8を支持している。
電動機5は、誘導電動機又は永久磁石同期電動機のどちらでも良い。なお、誘導電動機の場合、1台の電力変換装置6Aで複数の電動機を駆動できる。しかし、同期電動機の場合、1台の電力変換装置6Aで駆動できる電動機は1台に限られる。架線1の電圧は直流600V、直流750V、直流1500V、直流3000V等である。なお、実施例1では架線1の電圧は直流1500Vとしている。以下、本システムの構成を説明する。
図2は、図1の本システムの概略回路図である。本システムは、架線1の電力を集電装置7で受電し、遮断器11a及びフィルタリアクトル15を介して電力変換装置6Aに電力を供給する。遮断器11aとフィルタリアクトル15の間には電力変換装置6Aの一部として接触器12a,14a及び充電抵抗13aで構成される充電回路が搭載されている。なお、これらの充電回路は電力変換装置6Aとは別箱で実装されても良い。
電力変換装置6Aは集電装置7で受電した直流電力を交流電力に変換する機能を有し、スイッチS1,S2、フィルタキャパシタ16、スイッチング素子Q1~Q6、逆並列還流ダイオード(以下、単に「ダイオード」ともいう)D1~D6で構成されている。スイッチング素子Q1-Q2群は直列接続されてU相を構成する。
同様に、スイッチング素子Q3-Q4群は直列接続されてV相を構成する。同様に、スイッチング素子Q5-Q6群は直列接続されてW相を構成している。実施例1の電力変換装置6Aは、一例として2レベルの回路構成として説明するが、実施例2として図7に示す電力変換装置6Cのように、3レベル以上のマルチレベルの回路構成でも適用可能である。
スイッチング素子Q1~Q6がIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)の場合、各スイッチング素子Q1~Q6の主端子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD1~D6が必要である。ダイオードD1~D6は、各スイッチング素子Q1~Q6がオフ時に還流電流を流す。
これに対し、スイッチング素子Q1~Q6がMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)の場合、ダイオードD1~D6として、MOSFETのボディダイオードを用いても良い。このように、スイッチング素子Q1~Q6がMOSFET等のため、ボディダイオードを有する場合、各スイッチング素子Q1~Q6と逆並列にダイオードを接続せず、MOSFETのボディダイオードを利用して良い(図7及び図8に記載された同類の素子にも適用可)。
ボディダイオードを環流ダイオードとして使用することでダイオードD1~D6のチップを削減でき、電力変換装置6Aを小型化できる。また、直列接続された他方のスイッチング素子Q1~Q6(例えばQ1とQ2)は、同一パッケージに収納されて、2in1のパッケージに形成されたものを用いても良い。スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFETやIGBT、マルチゲートIGBTでも良い(図7及び図8に記載された同類の素子にも適用可)。
スイッチング素子Q1~Q6及びダイオードD1~D6の半導体材料は、Si(シリコン)やSiよりもバンドギャップが広い半導体であるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)でも良い。これらのワイドバンドギャップ半導体は、Siに比べて発生損失を低減できるため、電力変換装置6Aを小型化できる。(図7及び図8に記載された同類の素子にも適用可)。
本システムは、蓄電池17とその遮断器11b及び接触器12b,14bと充電抵抗13bから構成される充電回路を有している。蓄電池17は、遮断器11b及び充電回路を介してフィルタキャパシタ16に対して並列に接続される。このため、蓄電池17の電圧と架線1の電圧は、概ね一致し1500Vである。したがって、蓄電池17は、架線1から取得した電力でも充電できる。
なお、架線1に電力を供給する変電所(図示しない)が、ダイオード整流器を採用している場合、電力制御ができず、かつ架線電圧が大きく変動することがある。このような場合、変電所と、蓄電池電車と、少なくとも何れかにおいて、何らかの対策しなければ、架線1と蓄電池17との電位差により、蓄電池に過大な充電電流が流れることが危惧される。その対策の1つとして、変電所側が充電電力を制御可能な設備とし、過大な充電電流を低減するようにしても良い。
それとは別の対策として、変電所が上述のダイオード整流器のため電力制御ができない場合、本システム側で、以下のように蓄電池17を充電制御することもできる。まず、車両8が加速(力行)する場合を説明する。車両8の力行時において、本システムは、架線1から電力供給を受けて電動機5を駆動するとともに、接触器12b,14b又は遮断器11bを釈放し、架線1から蓄電池17を切り離すことで、力行により電圧の低下した架線1の影響を蓄電池17が受けないように制御する。
一方、車両8の減速時において、本システムは、接触器12a,14a又は遮断器11aを釈放することにより、架線1と切り離すとともに接触器14b及び遮断器11bを投入することにより、電動機5からの回生電力を蓄電池17の充電のみに振り向ける。このように、ダイオード整流器を採用した変電所のため、蓄電池電車にとって必ずしも好適な電力環境でない場合であっても、本システムは、上述した制御により、架線1からの供給電力と、力行電力需要と、回生電力供給と、蓄電池17の充電と、様々な場合に応じて最適の対応ができる。
また、本システムは地上に直流充電装置20を有している。この直流充電装置20は、車上の外部充電コネクタ10を介して電力変換装置6Aに接続される。外部充電コネクタ10の高電位側は、接触器14aとフィルタリアクトル15の間に接続され、低電位側はフィルタキャパシタ16の低電位側に接続される。直流充電装置20の出力電圧は架線1の電圧である1500Vよりも低く、例えば350Vである。
電力変換装置6Aは、スイッチS1,S2を備えている。スイッチS1の基端はフィルタリアクトル15に接続され、末端はフィルタキャパシタ16の高電位側に接続される。スイッチS2も基端はスイッチS1と同様にフィルタリアクトル15に接続され、末端はスイッチング素子Q1とQ2の間、すなわちU相の中間端子に接続される。なお、スイッチS1,S2の基端と末端とは、図2、図6及び図7と整合する便宜上の呼び方であり、実際には、以下にいうa,b,c接点で特定される。
電力変換装置6Aは、スイッチS2の末端はU相の中間端子に接続しているが、V相又はW相の中間端子でも良い。また、スイッチS1,S2は、a接点あるいはb接点のスイッチとしているが、c接点のスイッチでも良く、その場合はスイッチの小型化が可能となる。なお、a接点、b接点、c接点のスイッチとは、リレーの動作と端子との関係に対する一般的呼称であるため、図示を省略するが、次のとおりである。
a接点とは、コイルに電流を流すとNO(Normally Open)端子とつながりON状態となる端子をいう。b接点(Brake Contact)とは、コイルに電流を流すとNC(Normally Close)端子から離れてOFF状態となる端子をいう。c接点とは、電流を流さないとNC端子(b接点)とつながり、電流を流すとNO端子(a接点)とつながる端子をいう。
図3は、図1及び図2の本システムのモード別動作を示すタイミングチャートである。図3の横軸は時間、縦軸は上から車両走行指令(Vehicle running command)、遮断器11aの指令(Command of circuit breaker 11a)、スイッチS1の指令(Command of switch S1)、電力変換装置6Aの動作(Motin of power converter 6A)、外部充電指令(External charging command)、スイッチS2の指令(Command of switch S2)である。以下、タイミングチャートを説明する。
時刻t0において、車両8の前進、後進又は加速、減速の指令に備えて、遮断器11aとスイッチS1が投入されている。
時刻t1において、車両の運転士のノッチ操作に基づいて、車両情報制御装置(不図示)から車両走行指令がONとなり、電力変換装置6Aは三相インバータモードで動作する。電力変換装置6Aの三相インバータモード(Three-phase inverter mode)の詳細は後述する。
時刻t2において、車両走行指令がOFFになると、電力変換装置6Aも動作を停止する。
時刻t3において、直流充電装置20から充電する外部充電指令がON状態になると、蓄電池17を充電するモードとなる。このとき、架線1と直流充電装置20とでは、それぞれの電圧が異なるため、両者を電気的に切り離す必要があることから、遮断器11aを開放する。なお、遮断器11aを開放する代わりに接触器12a,14aを開放しても良い。また、スイッチS1を開放しスイッチS2を投入する。
時刻t4において、電力変換装置6Aはチョッパモード(Chopper mode)として動作を開始し、直流充電装置20から電力変換装置6Aを介して蓄電池17を充電する。電力変換装置6Aのチョッパモードの詳細は後述する。
図4は、図2の概略回路図に示した本システムの電力変換装置6Aが三相インバータモードにスイッチ結線された回路図である。なお、電力変換装置6Aが三相インバータモードで動作するとき、直流充電装置20は接続しないため図示していない。スイッチング素子Q1~Q6をPWM(Pulse Width Modulation)制御することでフィルタキャパシタ16からパルス状の交流電力を出力する。この交流電力は、電動機5に供給されて、機械エネルギーに変換されることにより、車両8を前進又は後進させる。
なお、フィルタキャパシタ16の初期充電は、接触器14aを開放、接触器12aを投入することで充電抵抗13aを介して行われる。フィルタキャパシタ16の初期充電が完了すると、接触器12aは開放、接触器14aが投入される。フィルタキャパシタ16とフィルタリアクトル15は、フィルタ回路を構成しており、電力変換装置6Aから架線1に流れるノイズ電流を低減している。
車両8を加速する場合、架線1から集電装置7を介して電力を受電し、遮断器11a、フィルタリアクトル15、電力変換装置6Aを介して電動機5に電力を供給する。若しくは、遮断器11aを開放すれば、電力変換装置6Aは、蓄電池17から電力を供給されるので、架線1に接続された変電所(不図示)からの受電電力を削減することができる。
なお、蓄電池17は、車両8が停車中と、加速(力行)中と、の少なくとも何れかのタイミングで充電すれば良い。その充電中は、接触器12bを投入、接触器14bを開放して充電抵抗13bを介することで、蓄電池17の充電電流を制限することができる。あるいは、接触器12bを開放し、接触器14bを投入することで充電抵抗13bを介することなく、蓄電池17を急速充電することができる。
車両8を減速するブレーキ動作の場合、電動機5が発電機として機能し、回生電力が発生する。回生電力は、電力変換装置6Aにより、交流-直流電力変換され、フィルタリアクトル15、遮断器11a、集電装置7、及び架線1を介して他の車両(不図示)が加速(力行)するための電力などに利用される。
回生電力を蓄電池17に充電する際には、架線1と電気的に切り離すため、遮断器11aを開放するもしくは接触器12a,14aを開放すれば良い。この際、電動機5のブレーキトルクを通常時よりも低くすることによって、蓄電池17の充電電流を制限し、蓄電池17の劣化を抑制することができる。以上より、電力変換装置6Aが三相インバータモードで動作する場合は、車両8を前進、後進又は加速、減速する際に電動機5の電力を制御する。
図5は、図2の概略回路図に示した本システムの電力変換装置6Aがチョッパモードにスイッチ結線された回路図である。電力変換装置6Aは等価変換している。また、前述のとおり、遮断器11aを単独で開放するか、又は、2つの接触器12a,14aを両方ともに開放するか、何れかで架線1と直流充電装置20を電気的に切り離している。
電力変換装置6Aがチョッパモードで動作する際は、直流充電装置20が外部充電コネクタ10を介して接続される。ここで、フィルタリアクトル15が昇圧リアクトル15として機能し、スイッチング素子Q1,Q2及びダイオードD1,D2がチョッパ回路として機能することで昇圧チョッパ回路が構成される。
すなわち、直流充電装置20の出力電圧350Vに対して、昇圧チョッパを介することで1500Vを出力し、蓄電池17を充電することができる。このとき、接触器12bは開放し、接触器14b及び遮断器11bは投入状態とすることで、充電抵抗13bを介することなく直流充電装置20で蓄電池17の充電電流を制御できる。また、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチングに伴うリプル電流を吸収するキャパシタ(不図示)は、直流充電装置20の内部と、電力変換装置6Aと、少なくとも何れかに搭載すると良い。
本システムのスイッチS1,S2を電力変換装置6Aに搭載した構成により、直流充電装置20の出力電圧が蓄電池17の電圧よりも低い場合も蓄電池17を充電することができる。すなわち、電力変換装置6Aは、フィルタリアクトル15を昇圧チョッパモードに適用し、直流-直流電力変換装置6Xとして動作することにより、直流充電装置20の出力電圧の不足分を補足する。その結果、車両8や地上側に昇圧チョッパを新規搭載する必要がなく、本システムの小型化が可能となる。さらに、図7の実施例2で後述するように、電力変換装置6Aは、2レベルの回路構成で昇圧動作することも可能である。
電力変換装置6Aは、三相インバータモードと、チョッパモードと、それぞれの動作に応じて制御部(不図示)を切り替える必要がある。この切り替えに合わせて、三相インバータモードと、チョッパモードと、それぞれの動作に最適なスイッチング素子Q1~Q6のキャリア周波数に変更すると良い。例えば、チョッパモードのキャリア周波数を低減することにより、直流-直流電力変換装置6Xのスイッチング損失を低減し、電力変換装置6の寿命を向上させることができる。
ここで、電動機5への誘導障害等を考慮する。図2の本システムにおいて、スイッチング素子Q1~Q6の損失や寿命を考慮すると、インバータ動作の最高周波数に比べ、昇圧チョッパの効率を高めたくても、その周波数を極端に高くはできない。このように動作モード別の周波数に大差無ければ、誘導障害等に関係する電圧変化率dv/dtも大差無い。また、電動機5の端子に対し、昇圧チョッパ動作による誘導障害等の電圧が印可されても、中性点電圧は、インバータ動作中と同じ値(入力電圧Ed/6)である。したがって、電動機5への漏洩電流による誘導障害は、問題ないと考えられる。
図2の実施例1では、車上機器の小型化に向けて、昇圧チョッパレス(昇圧専用の部品増加を避ける)化しつつ、直流充電装置20の低圧出力と、蓄電池17の高圧と、の電位差を解消する。そのため、図2の電力変換装置(インバータ)6Aのうち一相のスイッチング素子Q1,Q2をチョッパ動作させると、電動機5に中性点電圧(Ed/6)が発生する。このとき、他の二相のスイッチング素子Q1~Q6、及びダイオードD11~D6は、全てオフ状態のため、電動機5には電流が流れない。したがって、停車して充電中の電車8が動いてしまう危険は無い。
[変形例]
図6は、図1及び図2の本システムに対する変形例の回路図である。図6の変形例の電力変換装置6Bには、実施例1の電力変換装置6Aに対してスイッチS3,S4が追加されており,その他の構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。スイッチS3の基端は、スイッチS2と同様にフィルタリアクトル15に接続され、末端は、スイッチング素子Q3とQ4の間、すなわちV相の中間端子に接続される。
図6は、図1及び図2の本システムに対する変形例の回路図である。図6の変形例の電力変換装置6Bには、実施例1の電力変換装置6Aに対してスイッチS3,S4が追加されており,その他の構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。スイッチS3の基端は、スイッチS2と同様にフィルタリアクトル15に接続され、末端は、スイッチング素子Q3とQ4の間、すなわちV相の中間端子に接続される。
スイッチS4の基端は、スイッチS3と同様にフィルタリアクトル15に接続され、末端はスイッチング素子Q5とQ6の間、すなわちW相の中間端子に接続される。図6の電力変換装置6Bは、チョッパモードにおいて、スイッチS2,S3,S4が投入され、スイッチS1は開放される。これにより、電力変換装置6Bは、フィルタリアクトル15が昇圧リアクトル15として機能して、直流-直流電力変換装置6Xとなる。
この直流-直流電力変換装置6Xは、そのU相、V相、W相を構成していたスイッチング素子Q1~Q6及びダイオードD1~D6が、それぞれチョッパ回路として機能するので三相の昇圧チョッパ回路が構成される。この三相の昇圧チョッパ回路は、一相の昇圧チョッパ回路に比べ、蓄電池17の充電電力を増大することができるので、蓄電池17をより急速に充電することができる。
図7は、本発明の実施例2に係る鉄道システム(これも「本システム」という)6Cの回路図である。この電力変換装置6Cは、3レベルのインバータで構成される。以下、スイッチング素子については、図2及び図7の符号のみで説明する。
ここで、地上設備としての直流充電装置20から、車上の蓄電池17を充電する動作フローを説明する。まず、スイッチS2をONに接続する。なお、三相構成のU相について、図2のQ1は、図7のQ1u+Q2uに相当する。同様に、図2のQ2は、図7のQ3u+Q4uに相当する。
すなわち、Q1u+Q2uでチョッパの上アームを構成し、Q3u+Q4uでチョッパの下アームを構成する。図2に記載のスイッチング素子と、図7に記載のスイッチング素子と、の関係は、三相構成のV相とW相についても同様である。3レベル回路の利点は、2レベル回路に比べて、スイッチング素子Q1u等の定格電圧を大きく低減できる。例えば、2レベル回路でスイッチング素子Q1~Q6それぞれの定格電圧が3300Vの場合、3レベル回路は1700Vで足りる。
図8は、本発明の実施例3に係る鉄道システム(これも「本システム」という)6Dの回路図である。この電力変換装置6Dは、交流き電区間用にAC/DCコンバータとDC/ACインバータで構成される。ここで、交流架線1もしくは地上設備20から蓄電池17を充電するフローを説明する。交流架線1(例えば20kV)から充電する場合、まず、接触器14aを接続する。次に、スイッチング素子Q7~Q10が交流から直流へコンバータ動作して蓄電池17を充電する。
図8の実施例3に係る本システムは、地上設備である直流充電装置20の接続点が接触器14aの両端である点のほか、以下の動作フローに技術的特徴がある。
直流充電装置20から充電する場合、接触器12a,14a、及び遮断器11aも開放する。このとき、変圧器18の漏れインダクタンスが実施例2,3の昇圧リアクトル15に相当し、スイッチング素子Q7~Q10が実施例2,3の直流-直流電力変換装置6X、すなわち、チョッパ回路によるDC/DCコンバータとして動作する。なお、不図示の符号6Xは、符号6を異なるモードで使用していることを明示する。
次に、Q7とQ9を同時にONして昇圧リアクトル15にエネルギーを蓄積する。Q7とQ9を同時にOFFすることでD7から蓄電池17を充電し、D10を経由してトランス二次側へ戻る。このような、チョッパモードにおいて、インバータ(Q1~Q6)は、何れもOFF状態である。図8のQ7~Q10は、従来であればAC/DCコンバータとして動作するのみであるが、実施例3では昇圧可能なDC/DCコンバータとしても動作することに、技術的特徴がある。
図9は、本発明の実施例4に係る鉄道システム(これも「本システム」という)の回路図である。図2の実施例1では、スイッチS1,S2の操作により、電力変換装置6Aをインバータ回路の機能から、直流-直流電力変換装置(昇圧チョッパ回路)6Xの機能へと、切り替えて使用した。これに対し、図9の実施例4では、電力変換装置6Aをインバータ機能に固定しておき、専用の昇圧チョッパ回路を予め組み込まれた蓄電装置(以下、「専用機」、「直流-直流電力変換装置」又は「蓄電装置」ともいう)9Fを備え、使用する点が異なる。また、図2の実施例1では、フィルタリアクトル15が主回路に1か所のみであるが、図9の実施例4では、3か所に配設されている点も異なる。また、架線1からの充電のみならず外部充電コネクタ10を介して直流充電装置20から蓄電池17を充電できる。ここで、架線1及び蓄電池17の電圧は等しく(例えば1500V)とし、直流充電装置20の電圧は、例えば350Vとする。
図9に示すように、専用の昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子Q11,Q12、ダイオードD11,D12及びフィルタキャパシタ19により構成される。フィルタリアクトル15aは、図2と同様で主回路に配設されている。フィルタリアクトル15bは、蓄電装置9Fの主回路寄りに配設されている。
図9の実施例4の本システムは、直流充電装置20から適宜に昇圧して蓄電池17に充電する場合、不図示の制御部により、昇圧チョッパ回路のスイッチング素子Q11,Q12が適切な周波数でチョッパ動作する。蓄電池17が放電する場合、制御部によりチョッパ回路のスイッチング素子Q11,Q12はオフする一方で、ダイオードD11が順方向オンする。
このように、図9の実施例4の本システムは、車上の蓄電装置9Fに直流-直流電力変換装置(昇圧チョッパ回路)を設けることで、主目的が自動車用として地上に設置されている低電圧の直流充電装置20を、電車駆動用である高電圧の蓄電池17にも兼用利用できる。つまり、両者の電位差を解消できて、これら相互の設備利用率を高められる。また、架線1から蓄電池17を充電する場合には電圧が同レベルであるため、昇圧チョッパ回路をスイッチング動作せずスイッチング素子Q11をオン状態としても良い。このようにすることで、昇圧チョッパのスイッチング損失を低減することができ、充電効率を向上することができる。もしくは充電抵抗13bを用いて蓄電池17を充電することで昇圧チョッパを用いずに過大な充電電流を抑制することができる。
[補足]
近年、全地球規模での脱炭素化の流れに沿って、EVの普及が進んでいる。それに伴って、今後ガソリンスタンドの大半が充電スタンドに置き換わった場合、過疎路線であっても鉄道沿線や駅近くにまで、充電スタンドの進出が想定される。また、EV充電器は、急速充電のニーズが高まっており、充電装置の容量も蓄電池電車にも供給可能な程に増大している。例えば、CHAdeMO規格は、500kW対応も制定されつつあり、架線を介した充電に匹敵する。これに関連した僻地へのエネルギー輸送について、タンクローリーと、電線路と、相互間の優劣が問われる。
近年、全地球規模での脱炭素化の流れに沿って、EVの普及が進んでいる。それに伴って、今後ガソリンスタンドの大半が充電スタンドに置き換わった場合、過疎路線であっても鉄道沿線や駅近くにまで、充電スタンドの進出が想定される。また、EV充電器は、急速充電のニーズが高まっており、充電装置の容量も蓄電池電車にも供給可能な程に増大している。例えば、CHAdeMO規格は、500kW対応も制定されつつあり、架線を介した充電に匹敵する。これに関連した僻地へのエネルギー輸送について、タンクローリーと、電線路と、相互間の優劣が問われる。
[蓄電池電車]
また、僻地でなくとも、電気車8の保安上の課題として、トンネルや橋梁等で緊急避難が困難な区間、又は駅間において、停電その他で架線1からの電力供給が途絶えた電気車には、自力走行して最寄り駅等の安全地帯まで移動できる能力が求められている。また、ほとんどの電気車8は、デッドセクション等で停車したら自力脱出困難になるため、停車禁止位置も設定されており、そこで立ち往生した場合に備え、簡素な自力脱出手段も望まれていた。この要望に蓄電池電車8は対応できる。
また、僻地でなくとも、電気車8の保安上の課題として、トンネルや橋梁等で緊急避難が困難な区間、又は駅間において、停電その他で架線1からの電力供給が途絶えた電気車には、自力走行して最寄り駅等の安全地帯まで移動できる能力が求められている。また、ほとんどの電気車8は、デッドセクション等で停車したら自力脱出困難になるため、停車禁止位置も設定されており、そこで立ち往生した場合に備え、簡素な自力脱出手段も望まれていた。この要望に蓄電池電車8は対応できる。
[僻地鉄道]
また、過疎路線を軽負担で維持するため、必要な区間のみに架線1を残しておき、僻地区間の架線1を撤去して保守負担を軽減し、これら両区間を連通して気動車、蓄電池電車又はハイブリット電車を運行させることも考えられる。その場合、電気車、気動車、ハイブリット電車、といった異種類の動力車操縦者運転免許についての有資格者を確保する必要もあり、運転本数が少ないにもかかわらず、人員負担が増大してしまう。
また、過疎路線を軽負担で維持するため、必要な区間のみに架線1を残しておき、僻地区間の架線1を撤去して保守負担を軽減し、これら両区間を連通して気動車、蓄電池電車又はハイブリット電車を運行させることも考えられる。その場合、電気車、気動車、ハイブリット電車、といった異種類の動力車操縦者運転免許についての有資格者を確保する必要もあり、運転本数が少ないにもかかわらず、人員負担が増大してしまう。
一方、鉄道事業者としては、限られた路線のために気動車の免許を取得させる負担は避けたい。また、免許の問題がなければ、電気車の運転士を非電化区間に配置転換することもできる。現状において、人員確保の点で比較的容易な電気車のみの運転資格保有者か、その次に確保が容易と見込まれるハイブリット電車の運転資格保有者だけで、人員配置を済ませることが好ましい。これに対し、非電化区間を運行する蓄電池電車8は、電気車免許の保有者で運転できることが多い(出願時の日本では順法範囲)。
[リアクトル]
電気車8において、電力変換装置6は、半導体スイッチング素子Q1~Q6(以下、「半導体」と略す)によるインバータ制御やチョッパ制御等を適宜に織り交ぜて電動機5に流れる電流を制御する。電気車8が直流で受電する方式ならば、フィルタリアクトル15が不可欠な装備とされるが、その理由は以下の通りである。
電気車8において、電力変換装置6は、半導体スイッチング素子Q1~Q6(以下、「半導体」と略す)によるインバータ制御やチョッパ制御等を適宜に織り交ぜて電動機5に流れる電流を制御する。電気車8が直流で受電する方式ならば、フィルタリアクトル15が不可欠な装備とされるが、その理由は以下の通りである。
電機子チョッパ制御やVVVF制御のように、半導体で制御を行なう装置は、その半導体でスイッチング動作や変調動作することにより、電流制御や周波数制御を行なうが、それに伴って高調波等の電気的ノイズ(以下、「高調波ノイズ」又は「高周波」ともいう)を発生する。
この高調波ノイズが架線1に漏洩すると、その乱れた波形に応じた電磁誘導を引き起こす。電気車8の主電源となる大電流が流れる架線1で電流変動があれば、電磁誘導により、その架線1の周りに発生している磁場の強さも一緒に変動し、その磁場の変動が架線1の近くに敷設されたレール2の電流に影響を及ぼす。
また、ほとんどの鉄道で、線路上の特定区間に列車が存在するかどうかを検知する軌道回路が採用されおり、これにより閉塞のための信号装置を作動させる。軌道回路を形成する鉄道のレール2には、信号や踏切等の保安システムの微弱電流が流れている。この微弱電流は、高調波による架線1の磁場変動の影響を受けて変動することがある。これが軌道回路に対する誘導障害である。
このように、電力変換装置6から発生した高調波が架線1に流れると、それが原因で軌道回路に対して誘導障害が発生する。その結果、レール2を流れている信号保安システム等の電気信号が乱れて誤作動等を引き起こすことが危惧される。鉄道システムは、この誘導障害への防護対策を講じるように設計されている。
そのため、近年の半導体制御の鉄道車両(電気車)8には、電力変換装置6と架線1との間の電路にフィルタリアクトル15を介在させることで、架線1に高周波を流入さない対策としている。このフィルタリアクトル15の実体は、そこに流れる電流の変化を妨げようとする巨大なコイルであり、その性質を利用して、変化の激しい高調波ノイズを遮断する。
なお、高調波は、電気車8が架線1及びレール2に電気を戻す回生ブレーキ時のみならず、電動機5で加速している力行時にも発生する。また、フィルタリアクトル15は、電力変換装置6から架線1側に漏洩する高調波に対してのみ除去する機能によって、誘導障害の原因を低減できる。一方、電力変換装置6からレール2側に漏洩する高調波は、ほとんど無いので、そちら側の対策は不要である。
[直流電車とチョッパ回路]
電気車8が直流電車の場合、電力変換装置6A~6Cにおいて、コンバータ回路、インバータ回路、チョッパ回路を一体化できるほか、フィルタリアクトル15が有るから、これを用いてチョッパ回路を構成できる。しかし、交流電車にはフィルタリアクトル15が無いので、チョッパ回路を構成することが難しい。しかし、交流電車なら必須の変圧器18に伴う漏れリアクタンスを応用して、リアクトル15に代えたチョッパ回路を形成することも可能である。したがって、交流き電区間を走行する交流電車にも、本システムを適用可能である。なお、このチョッパ回路が発生する高周波は、フィルタリアクトル15を用いることなく、無害化対策されるものとする。
電気車8が直流電車の場合、電力変換装置6A~6Cにおいて、コンバータ回路、インバータ回路、チョッパ回路を一体化できるほか、フィルタリアクトル15が有るから、これを用いてチョッパ回路を構成できる。しかし、交流電車にはフィルタリアクトル15が無いので、チョッパ回路を構成することが難しい。しかし、交流電車なら必須の変圧器18に伴う漏れリアクタンスを応用して、リアクトル15に代えたチョッパ回路を形成することも可能である。したがって、交流き電区間を走行する交流電車にも、本システムを適用可能である。なお、このチョッパ回路が発生する高周波は、フィルタリアクトル15を用いることなく、無害化対策されるものとする。
本システムは、以下のように総括できる。
[1]図1,図2,図4~図9に示すように、本システムは、電車線1とは別系統の直流充電装置20が地上に配設され、そこから供給される電力により充電可能な蓄電装置17を具備する電気車8を稼働させる鉄道システムである。
[1]図1,図2,図4~図9に示すように、本システムは、電車線1とは別系統の直流充電装置20が地上に配設され、そこから供給される電力により充電可能な蓄電装置17を具備する電気車8を稼働させる鉄道システムである。
電気車8の車上装置として、電力変換装置6と、電動機5と、を備える。電力変換装置6は、集電装置7を介して電車線1に連係し、スイッチング素子Q1~Q6,Q11,Q12を有し、少なくとも直流から交流へ電力変換する。
電動機5は、電力変換装置6の交流側、すなわちインバータ出力側に連係している。直流充電装置20により蓄電装置17を充電するために必要な充電電圧は、直流充電装置20の出力電圧を直流-直流電力変換装置6X,9Fが昇圧して確保する。
電気車8が主に力行するときは、電力変換装置6はインバータモードである。また、充電モードでは、地上の充電スタンド20の350Vといった低い電圧を直流-直流電力変換装置6X,9Fにより、架線と同じ1500Vにまで昇圧して電気車8の蓄電装置9へ充電する。なお、ここで示した電圧値は、一例に過ぎない。
このように、直流-直流電力変換装置6X,9Fは、蓄電装置9に対し、例えば、1500V又はその前後の充電電圧を印加しての充電可能である。したがって、直流充電装置の出力電圧、例えば、350Vは、直流-直流電力変換装置6X,9Fを介して充電電圧の不足分1150Vを補足可能である。
なお、昇圧チョッパモードの実現手段は、図2~図8の電力変換装置6を直流-直流電力変換装置6Xにモード切り替えて用いる形態に限定されない。例えば、図9に示すように、低電圧の直流充電装置20から、高電圧の蓄電池17を充電するとき、蓄電装置9Fに常設された直流-直流電力変換装置(チョッパ回路)を不図示の制御部が起動して用いる形態でも良い。このように、本発明によれば、地上の充電スタンド20の比較的低い電圧を必要なだけ昇圧して電気車8の蓄電装置9へ充電できるような、より簡素な鉄道システムを提供できる。
一例として、僻地の終着駅の近くにEV用の充電スタンド20があれば、これを鉄道システムとして常用する効率的な列車運行計画も可能である。逆に鉄道事業者が自前の鉄道システムのなかで、蓄電池電車8用に設けた簡素な直流充電装置20をEV用の充電スタンド20として、公衆利用に供しても良い。
[2]図9に示すように、上記[1]において、車上の直流-直流電力変換装置として、常設のチョッパ回路を有する専用機9Fをさらに備えても良い。すなわち、図2、図4~図8の蓄電装置9の代わりに、図9の専用機9Fで車上装置を構成すれば良い。なお、昇圧機能は、兼用機6Xと、専用機9Fと、少なくとも何れかにあれば良く、両方に重複しても構わない。
[3]上記[1]において、直流-直流電力変換装置6Xは、兼用機6Xであり、昇圧可能に形成されるチョッパ回路を形成可能な形態で車上に配設されている。兼用機6Xは、インバータモードからチョパモードへと切り替え可能な切り替えスイッチS1,S2を有する。兼用機6Xは、蓄電装置17を充電するとき、スイッチS1,S2により、電力変換装置6の機能を切り替えて形成される。
例えば、電力変換装置6が三相インバータであれば、その三相を構成するスイッチング素子Q1~Q6のうち、少なくとも一相を構成するスイッチング素子Q1~Q2(一例)及びリアクトル15を兼用することにより、兼用機6Xのチョッパ回路を形成する。リアクトル15は、インバータモードにおいて、高周波フィルタとして機能するように、集電装置2と、電力変換装置6と、の間に介挿される結線であり、チョパモードにおいて、電流の変化を妨げながら、その変化速度に応じた電圧を発生する昇圧素子として機能するように結線される。
また、電力変換装置6は、チョッパ回路の機能に切換え編成されて、昇圧動作に寄与するので、直流充電装置20から供給された電力を必要な電圧に昇圧し、蓄電装置17を充電するように接続される。なお、本システムにおいて、インバータと、直流昇圧回路と、同時に稼働させることはないので、スイッチング素子Q1~Q6は、電流容量を確保するために必要な素子数を必要なときだけ、直流昇圧回路用に切り替えて利用すれば良い。
本システムにおいて、直流充電装置20から受電した低電圧の直流電力は、直流-直流電力変換装置6Xで必要なレベルの高電圧まで昇圧されて、電気車8の畜電装置9へ印加され、畜電装置9を充電する。
[4]図8に示すように、上記[3]の本システムは、交流き電区間を走行する交流電車にも適用され、変圧器18の漏れリアクタンスをリアクトル15に代用してチョッパ回路を形成しても良い。
[5]図2及び図7に示すように、上記[3]において、リアクトル15の両端のうち、一端は集電装置2に接続され、他端は切り替えスイッチS1,S2の分岐基部に接続される。これらの切り替えスイッチS1,S2は、リアクトル15の他端を少なくとも2回路の接点に分岐するように構成されている。
一方の切り替えスイッチS1に係る接点(以下、「スイッチS1」又は「接点S1」ともいう)は、電力変換装置6の直流母線に接続され、他方の切り替えスイッチS2に係る接点(接点S2)は電力変換装置6の交流側に接続される。図3に示すように、本システムは、力行を主とするインバータモードでは、スイッチS1がONで、スイッチS2はOFFであり、その逆でチョッパモードとなる。チョパモードにおけるリアクトル15は、昇圧素子として機能するように結線される。
[6]図2,図4~図9に示すように、上記[5]において、電力変換装置6は2レベル又は3レベルのインバータを備える。このような2レベル又は3レベルのインバータを備えた電力変換装置6は、少なくとも一相を構成するスイッチング素子Q1~Q2(一例)が、チョッパ回路の機能に切換え編成されて、昇圧動作に寄与する。これにより、本システムは、地上に配設された充電スタンド20の比較的低い電圧を昇圧して電気車8の蓄電装置9に、それが必要とする高い電圧で充電できる。
[7]図6に示すように、上記[6]において、三相インバータを備える電力変換装置6は、地上の直流充電装置20で急速充電する場合、全相分のスイッチング素子Q1~Q6を直流昇圧回路用に切り替えて、専用利用すれば、三相分により一相の3倍の電流容量となる。
上述のように、本システムにおいて、インバータと、直流昇圧回路と、同時に稼働させることはないので、急速充電に必要な電流容量を確保するために必要なスイッチング素子Q1~Q6の全部を強力な直流昇圧回路用に切り替えて、専用利用すれば、直流-直流電力変換装置6Xの能力を最大限に発揮できる。
[8]上記[6]又は[7]において、電力変換装置6をインバータ動作させる場合のキャリア周波数と、電力変換装置6が直流-直流電力変換装置6Xとして動作する場合のキャリア周波数と、それぞれの動作に最適化し、異なる周波数に設定すると良い。
所望の電圧を得られる条件の周波数範囲内であれば、スイッチング周波数は、低いほど電力変換効率を高められる。この種の電力変換装置における損失総量は、スイッチングON時の導通発熱損に加えて、1回スイッチング(ON/OFFが遷移)する度に発生する損失にスイッチング回数を乗じた値となるからである。
[9]上記[1]において、電力変換装置6に搭載されるスイッチング素子Q1~Q6のうち、少なくとも一方は、シリコンSiよりバンドギャップが大きい半導体材料(シリコンカーバイト等)を母材とすることが好ましい。この母材による電力変換装置6を備えた本システムは、シリコンSiの母材よりも、発熱損失が少ないので、同じ電力容量ならば、Siに比べて発熱損失を低減できる。その結果、本システムは、電力変換装置6を小型化できる。
[10]上記[1]において、電力変換装置6に搭載されるスイッチング素子Q1~Q6のうち、少なくとも一方は、MOSFET、IGBT又は、マルチゲートIGBTの電圧駆動型素子であることが好ましい。この構造による電力変換装置6を備えた本システムは、そうでないものよりも、発熱損失が少ないので、同じ電力容量ならば、発熱損失を低減できる。その結果、本システムは、電力変換装置6を小型化できる。
[11]上記[1]~[10]の何れかの直流-直流電力変換装置6X,9Fを電気車8に搭載して構成される車上装置であることが好ましい。このような車上装置は、地上の充電スタンド20の低い電圧を昇圧して電気車8の蓄電装置9へ充電できるので、設備利用率を高められる。
また、架線1等の電車線を残された区間で、しかも電力供給が維持された区間は、蓄電池電車8を通常の電車8として走行しながら充電も可能であり、電車線1がない区間、又は電車線1からの給電が途絶えた場合にも車載蓄電池9の電力により自力走行できる。その車載蓄電池9の容量に制約があっても、地上のEV用充電設備20から電気車8の車載蓄電池9に対し、プラグイン方式による充電が容易であり、列車運行計画の選択肢が広がるとともに、列車運行への信頼性も高められる。
1 架線、2 レール、3 車輪、4 台車、5 電動機、6,6A~6D 電力変換装置、6X 直流-直流電力変換装置(チョッパ回路によるDC/DCコンバータ)、7 集電装置、8 鉄道車両(電気車、蓄電池電車、電車、車両)、9 蓄電装置、9F 直流-直流電力変換装置(昇圧チョッパ回路)付の蓄電装置、10 外部充電、11a,11b 遮断器、12a,12b,14a,14b 接触器、13a,13b 充電抵抗、15,15a~15c フィルタリアクトル(昇圧リアクトル)、16,19 フィルタキャパシタ、17 蓄電池、18 変圧器、20 直流充電装置(EV用の充電スタンド)、Q1~Q12 スイッチング素子、D1~D12 ダイオード、S1~S4 切り替えスイッチ
Claims (21)
- 地上から供給される電力により充電可能な蓄電装置を具備する電気車を稼働させる鉄道システムであって、
前記地上には、電車線とは別系統の直流充電装置が配設され、
前記電気車の車上装置として、
前記電車線から集電装置を介して接続されスイッチング素子を有する少なくとも直流から交流への電力変換装置と、
該電力変換装置の交流側に接続された電動機と、
を備え、
前記直流充電装置により前記蓄電装置を充電するために必要な充電電圧は、前記直流充電装置の出力電圧を直流-直流電力変換装置が昇圧して確保する、
鉄道システム。 - 前記直流-直流電力変換装置は車上に配設される専用機を備え、該専用機には昇圧用のチョッパ回路が常設された、
請求項1に記載の鉄道システム。 - 前記直流-直流電力変換装置は車上に配設される兼用機であり、
該兼用機におけるインバータモードからチョパモードへと切り替え可能な切り替えスイッチと、
昇圧可能に形成されるチョッパ回路と、
を有し、
前記蓄電装置を充電するときに、スイッチング素子を兼用しながら前記電力変換装置の機能を使い分けて形成され、
前記電力変換装置の少なくとも一相に前記直流充電装置から電力供給されるように接続されて前記直流-直流電力変換装置として昇圧動作する、
請求項1に記載の鉄道システム。 - 交流き電区間を走行する交流電車に適用され、
変圧器の漏れリアクタンスをリアクトルに代用して前記チョッパ回路を形成した、
請求項3に記載の鉄道システム。 - リアクトルの両端のうち、一端は前記集電装置に接続され、他端は前記切り替えスイッチの分岐基部に接続され、
前記切り替えスイッチは、前記リアクトルの他端を少なくとも2回路の接点への分岐を形成しており、一方の接点は前記電力変換装置の直流母線に接続され、他方の接点は前記電力変換装置の交流側に接続される、
請求項3に係る鉄道システム。 - 前記電力変換装置は2又は3レベルのインバータを備える、
請求項5に記載の鉄道システム。 - 前記電力変換装置は三相インバータを備え、前記直流充電装置で急速充電する場合に前記電力変換装置の全相が前記直流-直流電力変換装置として動作する、
請求項6に記載の鉄道システム。 - 前記電力変換装置が前記インバータとして動作する場合のキャリア周波数と、前記電力変換装置が直流-直流電力変換装置として動作する場合のキャリア周波数が異なる、
請求項6又は7に記載の鉄道システム。 - 前記電力変換装置に搭載されるスイッチング素子のうち少なくとも一方はシリコン又はシリコンよりバンドギャップが大きい半導体材料を母材とする、
請求項1に記載の鉄道システム。 - 前記電力変換装置に搭載されるスイッチング素子のうち少なくとも一方はMOSFET、IGBT又はマルチゲートIGBTの電圧駆動型素子である、
請求項1に記載の鉄道システム。 - 請求項1~10の何れか1項に記載の鉄道システムにおける、
前記直流-直流電力変換装置に形成される前記電力変換装置を前記電気車に搭載して構成される車上装置。 - 電車線とは別系統で地上に配設された直流充電装置から充電可能な蓄電装置を具備する電気車を駆動する電気車駆動方法であって、
前記電気車に配設された電力変換装置は、
集電装置を介して前記電車線と連係された電力をスイッチング素子により少なくとも直流から交流へ変換して電動機と連係し、
前記電気車が力行又回生するときは、前記電動機が前記電力変換装置の交流側と電力授受し、
前記蓄電装置を充電するときは、直流-直流電力変換装置が、前記直流充電装置の出力電圧を昇圧して充電用に供給する、
電気車駆動方法。 - 前記直流-直流電力変換装置は車上に配設される専用機を備え、該専用機には昇圧用のチョッパ回路が常設された、
請求項12に記載の電気車駆動方法。 - 車上に配設された前記直流-直流電力変換装置は兼用機であり、
該兼用機は、
切り替えスイッチによって、インバータモードからチョパモードへと切り替え、
該チョパモードでは、チョッパ回路が昇圧可能に形成され、
前記蓄電装置を充電するときに、スイッチング素子を兼用しながら前記電力変換装置の機能を使い分けて形成され、
前記電力変換装置の少なくとも一相に前記直流充電装置から電力供給されるように接続されて前記直流-直流電力変換装置として昇圧動作する、
請求項12に記載の電気車駆動方法。 - 交流き電区間を走行する交流電車に適用され、
変圧器の漏れリアクタンスをリアクトルに代用して前記チョッパ回路を形成した、
請求項14に記載の電気車駆動方法。 - リアクトルの両端のうち、一端は前記集電装置に接続され、他端は前記切り替えスイッチの分岐基部に接続され、
前記切り替えスイッチは、前記リアクトルの他端を少なくとも2回路の接点への分岐を形成しており、一方の接点は前記電力変換装置の直流母線に接続され、他方の接点は前記電力変換装置の交流側に接続される、
請求項14に係る電気車駆動方法。 - 前記電力変換装置は2レベル又は3レベルのインバータとして稼働する、
請求項16に記載の電気車駆動方法。 - 前記直流充電装置で急速充電する場合、三相インバータを備える前記電力変換装置は、三相の全てが直流-直流電力変換装置として動作する、
請求項17に記載の電気車駆動方法。 - 前記電力変換装置が前記インバータとして動作する場合のキャリア周波数と、前記電力変換装置が直流-直流電力変換装置として動作する場合のキャリア周波数と、を相違させる、
請求項17又は18に記載の電気車駆動方法。 - 前記電力変換装置を構成するスイッチング素子のうち少なくとも一部には、シリコン又はシリコンよりバンドギャップが大きい半導体材料を母材とするものが用いられる、
請求項12に記載の電気車駆動方法。 - 前記電力変換装置を構成するスイッチング素子のうち少なくとも一部は、MOSFET、IGBT又はマルチゲートIGBTの電圧駆動型素子が用いられる、
請求項12に記載の電気車駆動方法。
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