JP2023147597A - 電気化学デバイス及び電気化学デバイス用電解液 - Google Patents

電気化学デバイス及び電気化学デバイス用電解液 Download PDF

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Yosuke Ikeda
薫平 山田
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恭章 川口
Yasuaki Kawaguchi
憲人 西村
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Abstract

【課題】電気化学デバイスの高温下での膨張を充分に抑制すること。【解決手段】電気化学デバイスが開示される。当該電気化学デバイスは、正極と、負極と、電解液とを備える。電解液は、下記式(1)で表される化合物、及び、硫黄原子を含む複素環式化合物を含有する。TIFF2023147597000011.tif32149[式(1)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは2価の有機基を示す。]【選択図】図1

Description

本開示は、電気化学デバイス及び電気化学デバイス用電解液に関する。
近年、携帯型電子機器、電気自動車等の普及により、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池、キャパシタ等の高性能な電気化学デバイスが必要とされている。電気化学デバイスの性能を向上させる手段としては、例えば、電解液に所定の添加剤を添加する方法が検討されている(例えば、特許文献1)。
国際公開第2012/147502号パンフレット
電気化学デバイスを車載用途へ適用するためには、高温(例えば、60℃)下での耐熱性を向上させることが重要である。電気化学デバイスの耐熱性の指標としては、例えば、高温保存後の電気化学デバイスの膨張が抑制されていることが挙げられる。または、高温保存後の容量低下の程度等、電気化学デバイスの種々の性能の劣化が抑制されていることも挙げられる。高温保存中に電気化学デバイスが膨張して破裂すると安全面で問題となるため、電気化学デバイスの膨張を抑制することは特に重要である。
そこで、本開示は、電気化学デバイスの高温下での膨張を充分に抑制することを主な目的とする。
本発明者らの検討によると、電気化学デバイスにおいて、特定のイソシアネート化合物、及び、硫黄原子を含む複素環式化合物(以下、単に、「複素環式化合物」という場合がある。)を含有する電解液を用いることにより、高温下での膨張が充分に抑制されることが見出された。
本開示の一側面は、電気化学デバイスに関する。当該電気化学デバイスは、正極と、負極と、電解液とを備える。電解液は、下記式(1)で表される化合物、及び、硫黄原子を含む複素環式化合物を含有する。このような電気化学デバイスによれば、高温下での膨張が充分に抑制される。一実施形態において、電気化学デバイスは、高温保存後の容量回復率に優れる傾向にある。電気化学デバイスは、非水電解液二次電池又はキャパシタであってよい。
Figure 2023147597000002

[式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは2価の有機基を示す。]
本開示の他の側面は、電気化学デバイス用電解液(以下、単に、「電解液」という場合がある。)に関する。当該電気化学デバイス用電解液は、下記式(1)で表される化合物、及び、硫黄原子を含む複素環式化合物を含有する。このような電気化学デバイス用電解液によれば、電気化学デバイスの高温下での膨張を充分に抑制することが可能となる。また、一実施形態において、電気化学デバイス用電解液は、電気化学デバイスの高温保存後の容量回復率を向上させることが可能となる。
Figure 2023147597000003

[式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは2価の有機基を示す。]
上記の各側面における好ましい態様(A)~(E)を以下に示す。これらの好ましい態様は、複数組み合わせることができる。
(A)式(1)におけるR及びRは、水素原子である。
(B)式(1)におけるXは、炭素数1~6のアルキレン基である。
(C)複素環式化合物は、S=O結合を有する化合物である。
(D)複素環式化合物は、環状スルホン酸エステル又は環状硫酸エステルである。
(E)式(1)で表される化合物及び複素環式化合物の合計含有量は、電解液全量を基準として、0.1~10質量%である。
本開示によれば、電気化学デバイスの高温下での膨張を充分に抑制することが可能となる。また、本開示によれば、高温下での電気化学デバイスの膨張を充分に抑制することが可能な電気化学デバイス用電解液が提供される。
図1は、電気化学デバイスとしての非水電解液二次電池の一実施形態を示す斜視図である。 図2は、図1に示す非水電解液二次電池の電極群を示す分解斜視図である。 図3は、実施例及び比較例における高温保管後のリチウムイオン二次電池の体積変化率の測定結果を示すグラフである。 図4は、実施例及び比較例における高温保管後のリチウムイオン二次電池の容量回復率の測定結果を示すグラフである。
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
本開示における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用して使用してもよい。
図1は、電気化学デバイスとしての非水電解液二次電池の一実施形態を示す斜視図である。本実施形態において、電気化学デバイスは非水電解液二次電池である。図1に示すように、非水電解液二次電池1は、正極、負極、及びセパレータから構成される電極群2と、電極群2を収容する袋状の電池外装体3とを備えている。正極及び負極には、それぞれ正極集電タブ4及び負極集電タブ5が設けられている。正極集電タブ4及び負極集電タブ5は、それぞれ正極及び負極が非水電解液二次電池1の外部と電気的に接続可能なように、電池外装体3の内部から外部へ突き出している。電池外装体3内には、電解液(図示せず)が充填されている。非水電解液二次電池1は、上述したようないわゆる「ラミネート型」以外の形状の電池(コイン型、円筒型、積層型等)であってもよい。
電池外装体3は、例えば、ラミネートフィルムで形成された容器であってよい。ラミネートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムと、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔と、ポリプロピレン等のシーラント層とがこの順で積層された積層フィルムであってよい。
図2は、図1に示す非水電解液二次電池の電極群を示す分解斜視図である。図2に示すように、電極群2は、正極6と、セパレータ7と、負極8とをこの順に備えている。正極6及び負極8は、正極合剤層10側及び負極合剤層12側の面がそれぞれセパレータ7と対向するように配置されている。
正極6は、正極集電体9と、正極集電体9上に設けられた正極合剤層10とを備えている。正極集電体9には、正極集電タブ4が設けられている。
正極集電体9は、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等で形成されている。正極集電体9は、接着性、導電性、及び耐酸化性の向上の目的で、アルミニウム、銅等の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で処理が施されたものであってもよい。正極集電体9の厚さは、電極強度及びエネルギー密度の点から、例えば、1~50μmである。
正極合剤層10は、一実施形態において、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有する。正極合剤層10の厚さは、例えば、20~200μmである。
正極活物質は、例えば、リチウム酸化物であってよい。リチウム酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1-y、LiCo1-y、LiNi1-y、LiMn、LiMn2-y(各式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V、及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す(ただし、Mは、各式中の他の元素と異なる元素である)。x=0~1.2、y=0~0.9、z=2.0~2.3である。)が挙げられる。LiNi1-yで表されるリチウム酸化物は、LiNi1-(y1+y2)Coy1Mny2(ただし、x及びzは上述したものと同様であり、y1=0~0.9、y2=0~0.9であり、かつy1+y2=0~0.9である。)であってよく、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、又はLiNi0.8Co0.1Mn0.1であってもよい。LiNi1-yで表されるリチウム酸化物は、LiNi1-(y3+y4)Coy3Aly4(ただし、x及びzは上述したものと同様であり、y3=0~0.9、y4=0~0.9であり、かつy3+y4=0~0.9である。)であってよく、例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05であってもよい。
正極活物質は、例えば、リチウムのリン酸塩であってもよい。リチウムのリン酸塩としては、例えば、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO)、リン酸バナジウムリチウム(Li(PO)が挙げられる。
正極活物質の含有量は、正極合剤層全量を基準として、80質量%以上、又は85質量%以上であってよく、99質量%以下であってよい。
導電剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料であってよい。導電剤の含有量は、正極合剤層全量を基準として、例えば、0.01質量%以上、0.1質量%以上、又は1質量%以上であってよく、50質量%以下、30質量%以下、又は15質量%以下であってよい。
結着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂;SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム等のゴム;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー;シンジオタクチック-1、2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素含有樹脂;ニトリル基含有モノマーをモノマー単位として有する樹脂;アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。
結着剤の含有量は、正極合剤層全量を基準として、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、又は1.5質量%以上であってよく、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
セパレータ7は、正極6及び負極8間を電子的には絶縁する一方でイオンを透過させ、かつ、正極6側における酸化性及び負極8側における還元性に対する耐性を備えるものであれば、特に制限されない。このようなセパレータ7の材料(材質)としては、樹脂、無機物等が挙げられる。
樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が挙げられる。セパレータ7は、電解液に対して安定で、保液性に優れる観点から、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンで形成された多孔質シート又は不織布である。
無機物としては、アルミナ、二酸化珪素等の酸化物、窒化アルミニウム、窒化珪素等の窒化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩などが挙げられる。セパレータ7は、例えば、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜状基材に、繊維状又は粒子状の無機物を付着させたセパレータであってよい。
負極8は、負極集電体11と、負極集電体11上に設けられた負極合剤層12とを備えている。負極集電体11には、負極集電タブ5が設けられている。
負極集電体11は、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、アルミニウム-カドミウム合金等で形成されている。負極集電体11は、接着性、導電性、及び耐還元性の向上の目的で、銅、アルミニウム等の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で処理が施されたものであってもよい。負極集電体11の厚さは、電極強度及びエネルギー密度の点から、例えば、1~50μmである。
負極合剤層12は、例えば、負極活物質と、結着剤とを含有する。
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質であれば特に制限されない。負極活物質としては、例えば、炭素材料、金属複合酸化物、錫、ゲルマニウム、ケイ素等の第14族元素の酸化物又は窒化物、リチウムの単体、リチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、Sn、Si等のリチウムと合金を形成可能な金属などが挙げられる。負極活物質は、安全性の観点からは、好ましくは炭素材料及び金属複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種である。負極活物質は、これらの1種単独又は2種以上の混合物であってよい。負極活物質の形状は、例えば、粒子状であってよい。
炭素材料としては、非晶質炭素材料、天然黒鉛、天然黒鉛に非晶質炭素材料の被膜を形成した複合炭素材料、人造黒鉛(エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の樹脂原料、又は、石油、石炭等から得られるピッチ系原料を焼成して得られるもの)などが挙げられる。金属複合酸化物は、高電流密度充放電特性の観点から、好ましくはチタン及びリチウムのいずれか一方又は両方を含み、より好ましくはリチウムを含む。
負極活物質には、ケイ素及びスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料が更に含まれていてもよい。ケイ素及びスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料は、ケイ素又はスズの単体、ケイ素及びスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物であってよい。当該化合物は、ケイ素及びスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む合金であってよく、例えば、ケイ素及びスズの他に、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む合金である。ケイ素及びスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物は、酸化物、窒化物、又は炭化物であってもよく、具体的には、例えば、SiO、SiO、LiSiO等のケイ素酸化物、Si、SiO等のケイ素窒化物、SiC等のケイ素炭化物、SnO、SnO、LiSnO等のスズ酸化物などであってよい。
負極合剤層12は、エネルギー密度等の電気化学デバイスの性能を更に向上させる観点から、負極活物質として、好ましくは炭素材料を含み、より好ましくは黒鉛を含み、更に好ましくは、炭素材料と、ケイ素及びスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料との混合物を含み、特に好ましくは、黒鉛とケイ素酸化物との混合物を含む。当該混合物におけるケイ素及びスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料(ケイ素酸化物)の含有量は、当該混合物全量を基準として、1質量%以上、又は3質量%以上であってよく、30質量%以下であってよい。
負極活物質の含有量は、負極合剤層全量を基準として、80質量%以上、又は85質量%以上であってよく、99質量%以下であってよい。
結着剤及びその含有量は、上述した正極合剤層における結着剤及びその含有量と同様であってよい。
負極合剤層12は、粘度を調節するために増粘剤を更に含有してもよい。増粘剤は、特に制限されないが、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン、これらの塩等であってよい。増粘剤は、これらの1種単独又は2種以上の混合物であってよい。
負極合剤層12が増粘剤を含む場合、その含有量は特に制限されない。増粘剤の含有量は、負極合剤層の塗布性の観点からは、負極合剤層全量を基準として、0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。増粘剤の含有量は、電池容量の低下又は負極活物質間の抵抗の上昇を抑制する観点からは、負極合剤層全量を基準として、5質量%以下であってよく、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。
電解液(電気化学デバイス用電解液)は、下記式(1)で表される化合物(イソシアネート化合物)、及び、硫黄原子を含む複素環式化合物を含有する。電解液は、一実施形態において、式(1)で表される化合物と、複素環式化合物と、電解質塩と、非水溶媒とを含有する。
Figure 2023147597000004
式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは2価の有機基を示す。
言い換えれば、一実施形態において、式(1)で表される化合物及び複素環式化合物は、電気化学デバイスの電解液に用いられる添加剤である。
及びRは、好ましくは水素原子である。Rは、好ましくは水素原子である。
Xは、例えば、2価の炭化水素基であってよく、アルキレン基であってよく、炭素数1~6のアルキレン基であってよい。当該アルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。当該炭素数の下限値は、2以上であってもよい。当該炭素数の上限値は、5以下又は4以下であってもよい。Xで示されるアルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はペンチレン基であってよく、好ましくはエチレン基である。
Xは、例えば、2価の炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された2価の基であってもよい。ヘテロ原子は、例えば、酸素原子であってよい。Xは、例えば、2価の炭化水素基の一部が酸素原子で置換されたエーテル構造を有する2価の基であってよい。Xは、例えば、下記式(2)で表される2価の基であってよい。
-X-O-X- (2)
式(2)中、X及びXは、それぞれ独立にアルキレン基を示す。当該アルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。X及びXで示されるアルキレン基の炭素数は、それぞれ独立に、1~6、1~5、1~4、1~3、又は1~2であってよい。
式(1)で表される化合物の含有量は、電気化学デバイスの高温下での膨張をより充分に抑制することが可能となることから、電解液全量を基準として、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、又は0.2質量%以上であってよく、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
複素環式化合物は、硫黄原子を含む。硫黄原子を含む複素環式化合物は、例えば、S=O結合を有する化合物であってよい。S=O結合を有する化合物としては、例えば、環状スルホン酸エステル、環状硫酸エステル、環状亜硫酸エステル、環状スルホン等が挙げられる。これらの中でも、複素環式化合物又はS=O結合を有する化合物は、環状スルホン酸エステル又は環状硫酸エステルであってもよい。
環状スルホン酸エステルとしては、例えば、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン等のスルトン化合物;メチレンメタンジスルホナート、エチレンメタンジスルホナート等のジスルホナート化合物などが挙げられる。環状スルホン酸エステルは、1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、及びメチレンメタンジスルホナートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
環状硫酸エステルとしては、例えば、1,2-エチレンスルファート(1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド)、1,2-プロピレンスルファート、1,3-プロピレンスルファート、1,2-ブチレンスルファート、1,3-ブチレンスルファート、1,4-ブチレンスルファート、1,2-ペンチレンスルファート、1,3-ペンチレンスルファート、1,4-ペンチレンスルファート、1,5-ペンチレンスルファート等のアルキレンスルファート化合物などが挙げられる。これらの中でも、環状硫酸エステルは、1,2-エチレンスルファート(1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド)であってよい。
環状亜硫酸エステルとしては、例えば、1,2-エチレンスルファイト、1,2-プロピレンスルファイト、1,3-プロピレンスルファイト、1,2-ブチレンスルファイト、1,3-ブチレンスルファイト、1,4-ブチレンスルファイト、1,2-ペンチレンスルファイト、1,3-ペンチレンスルファイト、1,4-ペンチレンスルファイト、1,5-ペンチレンスルファイト等のアルキレンスルファイト化合物などが挙げられる。
環状スルホンとしては、例えば、スルホラン、メチルスルホラン、4,5-ジメチルスルホラン等のアルキレンスルホン化合物;スルホレン等のアルキニレンスルホン化合物などが挙げられる。
複素環式化合物の含有量は、電気化学デバイスの高温下での膨張をより充分に抑制することが可能となることから、電解液全量を基準として、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、又は0.2質量%以上であってよく、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
式(1)で表される化合物及び複素環式化合物の合計含有量は、電気化学デバイスの高温下での膨張をより充分に抑制することが可能となることから、電解液全量を基準として、0.1~10質量%であってよい。式(1)で表される化合物及び複素環式化合物の合計含有量は、電解液全量を基準として、0.2質量%以上、0.3質量%以上、又は0.4質量%以上であってよく、7質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
式(1)で表される化合物及び複素環式化合物の合計含有量に対する式(1)で表される化合物の含有量の比(式(1)で表される化合物の含有量/(式(1)で表される化合物及び複素環式化合物の合計含有量))は、電気化学デバイスの高温下での膨張をより充分に抑制することが可能となることから、例えば、0.05以上、0.1以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、又は0.4以上であってよく、0.9以下、0.85以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、又は0.6以下であってよい。
電解質塩は、例えば、リチウム塩であってよい。リチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiB(C、LiCHSO、CFSOOLi、LiN(SOF)(Li[FSI]、リチウムビスフルオロスルホニルイミド)、LiN(SOCF(Li[TFSI]、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、及びLiN(SOCFCFからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。リチウム塩は、溶媒に対する溶解性、二次電池の充放電特性、出力特性、サイクル特性等に更に優れることから、好ましくはLiPFを含む。
電解質塩の濃度は、充放電特性に優れる観点から、非水溶媒全量を基準として、0.5mol/L以上、より好ましくは0.7mol/L以上、更に好ましくは0.8mol/L以上であり、好ましくは1.5mol/L以下、より好ましくは1.3mol/L以下、更に好ましくは1.2mol/L以下である。
非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート等の鎖状カーボネート化合物;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル等の鎖状カルボン酸エステル化合物;γ-ブチルラクトン等の環状カルボン酸エステル化合物;ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等の鎖状エーテル化合物;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキソラン等の環状エーテル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物であってよい。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。非水溶媒は、好ましくは2種以上の混合物である。
電解液は、式(1)で表される化合物、複素環式化合物、電解質塩、及び非水溶媒以外のその他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、不飽和環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、式(1)で表される化合物以外の窒素原子を含有する化合物等が挙げられる。
不飽和環状カーボネートとしては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート(4,5-ジメチルビニレンカーボネート)、エチルビニレンカーボネート(4,5-ジエチルビニレンカーボネート)、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。不飽和環状カーボネートは、電気化学デバイスの性能を更に向上させることができる観点から、好ましくはビニレンカーボネートである。フッ素含有環状カーボネートとしては、例えば、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(フルオロエチレンカーボネート;FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。フッ素含有環状カーボネートは、好ましくは、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(フルオロエチレンカーボネート;FEC)である。式(1)で表される化合物以外の窒素原子を含有する化合物は、例えば、スクシノニトリル等のニトリル化合物であってよい。
本発明者らは、式(1)で表される化合物、及び、複素環式化合物を含有する電解液を、電気化学デバイスに用いることによって、高温下での膨張が充分に抑制されることを見出した。このような効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。すなわち、初回充電時に、式(1)で表される化合物の不飽和炭素結合構造が、他の添加剤又はカーボネート溶媒よりも先に負極側で還元反応し、被膜を形成する。その後、イソシアネート部位が反応することによって安定な被膜が形成され、負極側で他の添加剤、非水溶媒、電解質塩等の還元分解を抑制できるためであると推察している。また、正極側では、還元分解されずに残存する複素環式化合物が被膜を形成する、又は、式(1)で表される化合物と複素環式化合物とが反応し安定な被膜を形成するため、正極側でも他の添加剤、非水溶媒、電解質塩等の酸化分解を抑制できるためであると推察している。
また、一実施形態において、式(1)で表される化合物及び複素環式化合物を含有する電解液を、電気化学デバイスに用いることによって、電気化学デバイスは、高温保存後の容量回復率に優れる傾向にある。このような効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは上記の正極及び負極上の安定な被膜の形成に加えて、式(1)で表される化合物による電解液中のフッ酸(HF)の低減によって、正極活物質の溶出及び負極上でのLiF等の被膜の形成による副反応を抑制できるためであると推察している。
続いて、非水電解液二次電池1の製造方法を説明する。非水電解液二次電池1の製造方法は、正極6を得る第1の工程と、負極8を得る第2の工程と、電極群2を電池外装体3に収容する第3の工程と、電解液を電池外装体3に注液する第4の工程とを備える。第1~第4の工程の順序は任意である。
第1の工程では、正極合剤層10に用いる材料を混練機、分散機等を用いて分散媒に分散させてスラリー状の正極合剤を得た後、この正極合剤をドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等により正極集電体9上に塗布し、その後分散媒を揮発させることにより正極6を得る。分散媒を揮発させた後、必要に応じて、ロールプレスによる圧縮成型工程が設けられてもよい。正極合剤層10は、上述した正極合剤の塗布から分散媒の揮発までの工程を複数回行うことにより、多層構造の正極合剤層として形成されてもよい。分散媒は、水、1-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」という場合がある。)等であってよい。
第2の工程では、上述した第1の工程の正極6を得る工程と同様にして、負極8を得る。負極集電体11に負極合剤層12を形成する方法は、正極集電体9及び正極合剤層10を負極集電体11及び負極合剤層12に変更する以外は、上述した第1の工程と同様の方法であってよい。
第3の工程では、作製した正極6及び負極8の間にセパレータ7を挟み、電極群2を形成する。次いで、この電極群2を電池外装体3に収容する。
第4の工程では、電解液を電池外装体3に注入する。電解液は、例えば、電解質塩をはじめに溶媒に溶解させてから、その他の材料を溶解させることにより調製することができる。
他の実施形態として、電気化学デバイスはキャパシタであってもよい。キャパシタは、上述した非水電解液二次電池1と同様に、正極、負極、及びセパレータから構成される電極群と、電極群を収容する袋状の電池外装体とを備えていてよい。キャパシタにおける各構成要素の詳細は、非水電解液二次電池1と同様であってよい。
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[正極の作製]
正極活物質としてのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(92質量%)に、導電剤としてアセチレンブラック(AB)(4質量%)と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(4質量%)とを順次添加し、混合した。得られた混合物に対し、分散媒としてのNMPを添加し、混練することによりスラリー状の正極合剤を調製した。この正極合剤を正極集電体としての厚さ20μmのアルミニウム箔に均等かつ均質に所定量塗布した。その後、分散媒を揮発させてから、プレスすることにより密度2.8g/cmまで圧密化して、正極を得た。
[負極の作製]
負極活物質として、黒鉛系活物質(人造黒鉛、平均粒径(D50);約23μm)及びシリコン系活物質(SiOx、平均粒径(D50);約10μm)を用いた。これらの活物質に、結着剤としてのスチレン-ブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースとを添加した。これらの質量比については、黒鉛活物質:シリコン系活物質:結着剤:増粘剤=92:5:1.5:1.5とした。得られた混合物に対し、分散媒としての水を添加し、混練することによりスラリー状の負極合剤を調製した。この負極合剤を負極集電体としての厚さ10μmの圧延銅箔に均等かつ均質に所定量塗布した。その後、分散媒を揮発させてから、プレスすることにより密度1.6g/cmまで圧密化して、負極を得た。
[リチウムイオン二次電池の作製]
13.5cmの四角形に切断した正極電極を、セパレータであるポリエチレン製多孔質シート(厚さ30μm)で挟み、さらに14.3cmの四角形に切断した負極を重ね合わせて電極群を作製した。この電極群を、アルミニウム製のラミネートフィルム(商品名:アルミラミネートフィルム、大日本印刷株式会社製)で形成された容器(電池外装体)に収容した。次いで、容器の中に電解液を0.25mL添加し、容器を熱溶着させ、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。電解液としては、1mol/LのLiPFを含むエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1/1(体積比)の混合溶液に、下記式(1X)で表される化合物A(R、R、及びRが水素原子であり、Xがエチレン基である、式(1)で表される化合物)を0.5質量%と、1,3-プロパンスルトン(複素環式化合物1)0.5質量%と、ビニレンカーボネートを1質量%と、フルオロエチレンカーボネートを1質量%(いずれも電解液全量基準)とを添加したものを使用した。
Figure 2023147597000005
(実施例2)
化合物Aを電解液全量基準で0.2質量%添加した電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例3)
1,3-プロパンスルトンを電解液全量基準で0.2質量%添加した電解液を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例4)
化合物Aを電解液全量基準で1質量%添加した電解液を用いたこと以外は、実施例3と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例5)
化合物Aの代わりに下記式(1Y)で表される化合物B(R及びRが水素原子であり、Rがメチル基であり、Xがエチレン基である、式(1)で表される化合物)を、電解液全量基準で0.5質量%添加した電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
Figure 2023147597000006
(実施例6)
1,3-プロパンスルトンの代わりに1-プロペン-1,3-スルトン(複素環式化合物2)を、電解液全量基準で0.5質量%添加した電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例7)
1,3-プロパンスルトンの代わりに1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド(DTD、複素環式化合物3)を、電解液全量基準で0.5質量%添加した電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例8)
1,3-プロパンスルトンの代わりにメチレンメタンジスルホナート(MMDS、複素環式化合物4)を、電解液全量基準で0.5質量%添加した電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例1)
電解液に化合物A及び1,3-プロパンスルトンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例2)
p-トルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)を、電解液全量基準で0.5質量%添加したこと以外は、比較例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例3)
化合物Aの代わりにp-トルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)を、電解液全量基準で0.5質量%添加した電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
[初回充放電]
作製した各リチウムイオン二次電池について、以下に示す方法で初回充放電を実施した。まず、25℃の環境下において0.1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.2Vまで行い、続いて4.2Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.01Cとした。その後、0.1Cの電流値で終止電圧2.7Vの定電流放電を行った。この充放電サイクルを3回繰り返した(電流値の単位として用いた「C」とは、「電流値(A)/電池容量(Ah)」を意味する。)。3サイクル目の放電容量をリチウムイオン二次電池の容量(Q1)とした。
[高温保存試験]
実施例1~8及び比較例1~3の各リチウムイオン二次電池について、上述した初回充放電を行った後、25℃の環境下において0.1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.2Vまで行い、続いて4.2Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.01Cとした。その後、これらのリチウムイオン二次電池を60℃の恒温槽中で4週間保管した。保管後、下記に示す手順に従って、リチウムイオン二次電池の体積変化率及び容量回復率を測定した。続いて、測定後の電池を25℃の環境下において0.1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.2Vまで行い、続いて4.2Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.01Cとした。その後、リチウムイオン二次電池を60℃の恒温槽中で保管し、保管前から8週間後及び12週間後に、それぞれリチウムイオン二次電池の体積変化率及び容量回復率を測定した。図3に、60℃で12週間保管後のリチウムイオン二次電池の体積変化率の測定結果を示す。図4に、60℃で12週間保管後のリチウムイオン二次電池の容量回復率の測定結果を示す。
(体積変化率の測定)
高温保管前の各リチウムイオン二次電池の体積(V1)、及び、高温保管後に25℃の環境下に30分間静置した各リチウムイオン二次電池の体積(V2)を、アルキメデス法に基づく比重計(電子比重計MDS-300、アルファミラージュ社製)により測定した。測定されたV1及びV2を用いて、以下の式から体積変化率を算出した。表1及び表2に、60℃で12週間保管後のリチウムイオン二次電池の体積変化率の測定結果を示す。
体積変化率(%)=V2/V1×100
(容量回復率の測定)
高温保管後の各リチウムイオン二次電池を25℃の環境下に30分間静置した後、0.1Cの電流値で終止電圧2.7Vの定電流放電を行った。次に、0.1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.2Vまで行い、続いて4.2Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.01Cとした。その後、0.1Cの電流値で終止電圧2.7Vの定電流放電を行った。このときの放電容量を高温保存試験後の容量(Q2)とした。上記Q1及びQ2を用いて、以下の式から容量回復率を算出した。表1及び表2に、60℃で12週間保管後のリチウムイオン二次電池の容量回復率の測定結果を示す。
容量回復率(%)=Q2/Q1×100
Figure 2023147597000007
Figure 2023147597000008
図3及び図4並びに表1及び表2から、式(1)で表される化合物及び複素環式化合物を含有する電解液を適用した実施例1~8のリチウムイオン二次電池は、これらの化合物を含有しない電解液を適用した比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて、体積変化率が低く、かつ容量回復率が高かった。一方、同一分子内に、イソシアネート基と、硫黄原子を含む官能基(スルフォニル基)とを有する化合物であるPTSIを含有する電解液を適用した比較例2のリチウムイオン二次電池、並びに、PTSI及び1,3-プロパンスルトン(複素環式化合物1)を含有する電解液を適用した比較例3のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池よりも体積変化率が低かったが、実施例1~8のリチウムイオン二次電池の方が、体積膨張の抑制効果が大きかった。以上の結果から、本開示の電気化学デバイスが、高温下での膨張を充分に抑制することが可能であることが確認された。また、比較例2及び比較例3のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池よりも容量回復率が低下したが、実施例1~8のリチウムイオン電池は比較例1~3のリチウムイオン二次電池よりも容量回復率が高いことが判明した。以上の結果から、本開示の電気化学デバイスが、高温保存後の容量回復率にも優れることが確認された。
本発明者らは、式(1)で表される化合物及び複素環式化合物を含有する電解液を、電気化学デバイスに用いることによって、高温下での膨張が充分に抑制される作用効果について、以下のように推察している。すなわち、初回充電時に、式(1)で表される化合物の不飽和炭素結合構造が、他の添加剤又はカーボネート溶媒よりも先に負極側で還元反応し、被膜を形成する。その後、イソシアネート部位が反応することによって安定な被膜が形成され、負極側で他の添加剤、非水溶媒、電解質塩等の還元分解を抑制できるためであると推察している。また、正極側では、還元分解されずに残存する複素環式化合物が被膜を形成する、又は、式(1)で表される化合物と複素環式化合物とが反応し安定な被膜を形成するため、正極側でも他の添加剤、非水溶媒、電解質塩等の酸化分解を抑制できるためであると推察している。
1…非水電解液二次電池(電気化学デバイス)、2…電極群、3…電池外装体、4…正極集電タブ、5…負極集電タブ、6…正極、7…セパレータ、8…負極、9…正極集電体、10…正極合剤層、11…負極集電体、12…負極合剤層。

Claims (13)

  1. 正極と、負極と、電解液とを備え、
    前記電解液が、下記式(1)で表される化合物、及び、硫黄原子を含む複素環式化合物を含有する、
    電気化学デバイス。
    Figure 2023147597000009

    [式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは2価の有機基を示す。]
  2. 前記式(1)におけるR及びRが水素原子である、
    請求項1に記載の電気化学デバイス。
  3. 前記式(1)におけるXが炭素数1~6のアルキレン基である、
    請求項1又は2に記載の電気化学デバイス。
  4. 前記複素環式化合物がS=O結合を有する化合物である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学デバイス。
  5. 前記複素環式化合物が環状スルホン酸エステル又は環状硫酸エステルである、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学デバイス。
  6. 前記式(1)で表される化合物及び前記複素環式化合物の合計含有量が、電解液全量を基準として、0.1~10質量%である、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学デバイス。
  7. 前記電気化学デバイスが非水電解液二次電池又はキャパシタである、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の電気化学デバイス。
  8. 下記式(1)で表される化合物、及び、硫黄原子を含む複素環式化合物を含有する、
    電気化学デバイス用電解液。
    Figure 2023147597000010

    [式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは2価の有機基を示す。]
  9. 前記式(1)におけるR及びRが水素原子である、
    請求項8に記載の電気化学デバイス用電解液。
  10. 前記式(1)におけるXが炭素数1~6のアルキレン基である、
    請求項8又は9に記載の電気化学デバイス用電解液。
  11. 前記複素環式化合物がS=O結合を有する化合物である、
    請求項8~10のいずれか一項に記載の電気化学デバイス用電解液。
  12. 前記複素環式化合物が環状スルホン酸エステル又は環状硫酸エステルである、
    請求項8~11のいずれか一項に記載の電気化学デバイス用電解液。
  13. 前記式(1)で表される化合物及び前記複素環式化合物の合計含有量が、電解液全量を基準として、0.1~10質量%である、
    請求項8~12のいずれか一項に記載の電気化学デバイス用電解液。
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