JP2023147222A - ポリアニリン複合体、溶液組成物、防錆剤、防錆塗料、防錆塗膜、防錆塗膜の製造方法及び構造体 - Google Patents

ポリアニリン複合体、溶液組成物、防錆剤、防錆塗料、防錆塗膜、防錆塗膜の製造方法及び構造体 Download PDF

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雅規 古川
Masaki Furukawa
宏寿 石井
Hirotoshi Ishii
重和 笘井
Shigekazu Tomai
剛 西村
Takeshi Nishimura
泰広 末永
Yasuhiro Suenaga
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Abstract

【課題】防錆能に優れるポリアニリン複合体を提供する。【解決手段】置換又は無置換のポリアニリンにドーパントがドープしたポリアニリン複合体であって、Z平均分子量Mzが10000以上66000以下である、ポリアニリン複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアニリン複合体に関する。さらに詳しくは、防錆能に優れるポリアニリン複合体、溶液組成物、防錆剤、防錆塗料、防錆塗膜、防錆塗膜の製造方法及び構造体に関する。
ポリアニリンは導電性高分子として知られている。ポリアニリンにドーパントをドープさせることによって、導電性を向上させる技術がある(特許文献1、2)。
国際公開第2009/084418号 国際公開第2012/102017号
特許文献1、2をはじめとする従来の技術は、ポリアニリンの導電性を向上する観点では優れているが、防錆能を向上する観点でさらなる改善の余地が見出された。
本発明の目的は、防錆能に優れるポリアニリン複合体、溶液組成物、防錆剤、防錆塗料、防錆塗膜、防錆塗膜の製造方法及び構造体を提供することである。
本発明によれば、以下の防錆能に優れるポリアニリン複合体等が提供される。
1.置換又は無置換のポリアニリンにドーパントがドープしたポリアニリン複合体であって、Z平均分子量Mzが10000以上66000以下である、ポリアニリン複合体。
2.重量平均分子量Mwが9000未満である、1に記載のポリアニリン複合体。
3.重量平均分子量Mwが20000以上39000未満であり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.2以上1.9未満である、1に記載のポリアニリン複合体。
4.重量平均分子量Mwが39000以上50000未満であり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.2以上2.0未満である、1に記載のポリアニリン複合体。
5.前記ドーパントが、スルホン酸基を有する化合物のイオンである、1~4のいずれかに記載のポリアニリン複合体。
6.前記ドーパントが、スルホコハク酸誘導体のイオンである、1~5のいずれかに記載のポリアニリン複合体。
7.前記ドーパントが下記式(1)で表される、1~6のいずれかに記載のポリアニリン複合体。
Figure 2023147222000001
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基又は-(RO)-R基[ここで、Rはそれぞれ独立に炭化水素基又はシリレン基であり、Rは水素原子、炭化水素基又はR Si-基(ここで、Rはそれぞれ独立に炭化水素基である)であり、rは1以上の整数である]である。)
8.1~7のいずれかに記載のポリアニリン複合体を含む、防錆剤。
9.8に記載の防錆剤を含む、防錆塗膜。
10.1~7のいずれかに記載のポリアニリン複合体と、溶媒とを含む、溶液組成物。
11.さらに樹脂を含む、10に記載の溶液組成物。
12.10又は11に記載の溶液組成物からなる防錆塗料。
13.12に記載の防錆塗料を用いて製造された、防錆塗膜。
14.12に記載の防錆塗料を金属の表面に塗布すること、及び
前記金属の表面に塗布された前記防錆塗料に含まれる前記溶媒を乾燥させて防錆塗膜を形成すること、
を含む、防錆塗膜の製造方法。
15.金属と、
前記金属の表面に形成された9又は13に記載の防錆塗膜と、
を含む、構造体。
16.1~7のいずれかに記載のポリアニリン複合体の製造方法であって、下記の条件1及び2の少なくとも一方を満たす、製造方法。
条件1:アニリン重合工程を過酸化水素共存下で実施する。
条件2:アニリン重合工程において、8.5質量%以上50質量%以下のリン酸水溶液を重合溶媒として使用する。
17.前記条件2のアニリン重合工程において、10質量%以上50質量%以下のリン酸水溶液を重合溶媒として使用する、16に記載の製造方法。
18.前記条件2のアニリン重合工程において、20質量%以上50質量%以下のリン酸水溶液を重合溶媒として使用する、16又は17に記載の製造方法。
本発明によれば、防錆能に優れるポリアニリン複合体、溶液組成物、防錆剤、防錆塗料、防錆塗膜、防錆塗膜の製造方法及び構造体を提供できる。
以下、本発明のポリアニリン複合体、溶液組成物、防錆剤、防錆塗料、防錆塗膜、防錆塗膜の製造方法及び構造体について詳述する。
尚、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。「x以上」は「x超え」としてもよく、「y以下」は「y未満」としてもよい。数値範囲に関して記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
また、以下に記載される本発明の個々の形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の形態である。
1.ポリアニリン複合体
本発明の一態様に係るポリアニリン複合体は、置換又は無置換のポリアニリンにドーパントがドープしたポリアニリン複合体であって、Z平均分子量Mzが10000以上66000以下である。Z平均分子量Mzが10000以上66000以下であるポリアニリン複合体が優れた防錆能を発揮する。当該範囲の分子量であれば、防錆能を発揮するために必要な構造のポリアニリン主鎖の電子状態を有するポリアニリン複合体が得られ、かつ、防錆剤組成物として用いる際の溶解性も向上する。これらの複合効果として防錆能に優れる。
一実施形態では、ポリアニリン複合体の重量平均分子量Mwが9000未満である。
また、一実施形態では、ポリアニリン複合体の重量平均分子量Mwが20000以上39000未満であり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.2以上1.9未満である。
また、一実施形態では、ポリアニリン複合体の重量平均分子量Mwが39000以上50000未満、かつ分子量分布Mw/Mnが1.2以上2.0未満である。
また、一実施形態のポリアニリン複合体は、重量平均分子量Mwが20000以上39000未満、かつ分子量分布Mw/Mnが1.9以上2.8以下であるか、
重量平均分子量Mwが39000以上50000未満、かつ分子量分布Mw/Mnが2.0以上3.5以下であるか、又は
重量平均分子量Mwが9000以上20000未満、かつ分子量分布Mw/Mnが1.2以上2.7以下である、ポリアニリン複合体ではない。
ポリアニリン複合体のZ平均分子量Mz、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnは、例えばポリアニリン複合体を重合する際の温度(重合温度)の設定等により制御することができる。重合温度を高くすることで、重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnを共に低下させることができる。重合温度を低くすることで、重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnをともに上昇させることができる。また、Z平均分子量Mzは、通常の重合開始末端での制御に加えて、分子量分布中の高分子量体成分の量を、高濃度(例えば、20質量%以上50質量%以下)リン酸及び/又は過酸化水素による連鎖移動で調整することにより制御できる。Z平均分子量Mzは、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnよりも、高分子量の存在に影響を受けやすい。
Z平均分子量Mz、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnは、ゲルパーミェションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン(PS)換算で測定される値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定される値である。尚、これら分子量は、置換又は無置換のポリアニリンとドーパントとを含むポリアニリン複合体としての分子量である。
ポリアニリン複合体は、下記式の条件を満たすことが好ましい。
10000/PALL>0.15
(式中、P10000は、ポリアニリン複合体のうち分子量が10000以下のポリアニリン複合体の質量の総和である。PALLは、全ポリアニリン複合体の質量の総和である。)
上記式を満たすことは、ポリアニリン複合体の総質量に対する、分子量が10000以下のポリアニリン複合体の総質量が15%超であることを意味する。ポリアニリン複合体中の、分子量が10000以下のポリアニリン複合体の割合を低くすることで、ポリアニリン複合体は、より優れた防錆能を発現することができる。
尚、ここでも分子量は、ゲルパーミェションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン(PS)換算で測定される値である。
ドーパントによってドープされるポリアニリンは、置換又は無置換のポリアニリンであればよい。ポリアニリンが置換のポリアニリンである場合、置換基としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシロキシ基等が挙げられる。
置換又は無置換のポリアニリンをドープするドーパントとしては、例えば、スルホン酸基を有する化合物のイオンが好適である。スルホン酸基を有する化合物のイオンは、スルホコハク酸誘導体のイオンであることが好ましい。これにより、ポリアニリン複合体の防錆能がさらに向上する。
スルホコハク酸誘導体のイオンは、下記式(1)で表されるスルホコハクスルホコハク酸誘導体のイオンが好ましい。これにより、ポリアニリン複合体の防錆能がさらに向上する。
Figure 2023147222000002
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基又は-(RO)-R基[ここで、Rはそれぞれ独立に炭化水素基又はシリレン基であり、Rは水素原子、炭化水素基又はR Si-基(ここで、Rはそれぞれ独立に炭化水素基である)であり、rは1以上の整数である]である。)
及びRが炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1~24、好ましくは炭素数4以上の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基等が挙げられ、R及びRが炭化水素基である場合の炭化水素基の具体例としては、例えば、直鎖又は分岐状のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基(例えば2-エチルヘキシル基)、デシル基等が挙げられる。
及びRにおける、Rが炭化水素基である場合の炭化水素基としては、例えば炭素数1~24の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基である。また、R及びRにおける、R及びRが炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基等が挙げられる。
rは、1~10であることが好ましい。
及びRが-(RO)-R基である場合のドーパントの具体例としては、下記式で表わされる2つのドーパントが挙げられる。
Figure 2023147222000003
スルホン酸基を有する化合物のイオンは、例えば、アルキルスルホン酸誘導体のイオンであることが好ましい。(好ましくは直鎖の)アルキルスルホン酸誘導体のイオンとしては、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、プロパンスルホン酸イオン、ブタンスルホン酸イオン、ペンタンスルホン酸イオン、ヘキサンスルホン酸イオン、ヘプタンスルホン酸イオン、オクタンスルホン酸イオン、ノナンスルホン酸イオン、デカンスルホン酸イオン(例えば1-デカンスルホン酸)、ウンデカスルホン酸イオン、ドデカンスルホン酸イオン、トリデカンスルホン酸イオン、テトラデカンスルホン酸イオン等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物のイオンとして、アルキルベンゼンスルホン酸誘導体のイオンを用いてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸誘導体のイオンとしては、トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物のイオンとして、ポリビニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸イオン)等の高分子イオン等を用いてもよい。
以上に例示したドーパントの中でも、ポリアニリン複合体の防錆能をさらに向上する観点で、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸イオンが好適である。
ドーパントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
置換又は無置換のポリアニリンにドープしているドーパント量は格別限定されず、ドーパント比(ドーパント/ポリアニリンを構成するモノマーユニット:モル比)で、好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.15~0.75である。
ここで、例えば、無置換ポリアニリンとドーパントを含むポリアニリン複合体のドーパント比が0.5であることは、ポリアニリンのモノマーユニット分子2個に対し、ドーパントが1個ドープしていることを意味する。
ドーパント比は、ポリアニリン複合体中のドーパントとポリアニリンのモノマーユニットのモル数が測定できれば算出可能である。例えば、ドーパントが有機スルホン酸の場合、ドーパント由来の硫黄原子のモル数と、ポリアニリンのモノマーユニット由来の窒素原子のモル数を、有機元素分析法により定量し、これらの値の比を取ることでドーパント比を算出できる。
本態様のポリアニリン複合体は、例えば、化学酸化重合によりアニリン単量体を重合することにより製造できる。化学酸化重合の具体的方法としては、従来公知の方法を適用できる。化学酸化重合では、ポリアニリンのモノマーとなるアニリン又はアニリン誘導体を、重合溶媒中で酸化剤を作用させる。
酸化剤は、従来公知の化学酸化重合によりポリアニリンの製造方法で用いられる酸化剤を使用することができる。酸化剤としての安全性や重合反応の制御性から、過硫酸塩、過ヨウ素酸塩、過酸化水素、オゾン等の無機過酸化物が好ましい。得られるポリアニリンの構造、性能及び経済性の観点から、過硫酸アンモニウムが最も好ましい。
重合溶媒は化学酸化重合を阻害しない範囲で任意の溶媒を用いることができる。重合溶媒は、リン酸、塩酸、硫酸等の水溶液を用いることが好ましい。得られるポリアニリンの構造、性能及び経済性の観点からリン酸水溶液が最も好ましい。
化学酸化重合における条件に関して、ポリアニリン以外も含めた、従来公知の化学酸化重合の説明と同様に、温度、圧力、撹拌条件、使用する原料の比、添加方法等を変化させることにより、得られるポリアニリンの分子量等の構造、収率が変化する。したがって、所望のポリアニリンにより条件を選択できる。
ポリアニリン複合体の製造にあっては、特に下記の条件1及び2の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
条件1:アニリン重合工程を過酸化水素共存下で実施する。
条件2:アニリン重合工程において、8.5質量%以上50質量%以下のリン酸水溶液を重合溶媒として使用する。
上記条件を満たすことにより、本発明で規定する分子量を満たすポリアニリン複合体が得られやすくなる。
過酸化水素は、任意の量を化学酸化重合に共存させることができる。例えば、アニリン及び過酸化水素を除く酸化剤に対して0.1当量以上100当量以下で添加することが好ましく、さらに0.5当量以上20当量以下で添加することが好ましい。
リン酸水溶液が8.5質量%未満であると、連鎖移動が従来の濃度と変化が無いため効果がない。一方、50質量%を超えると連鎖移動が過剰となる。
リン酸水溶液は10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
2.防錆剤
本発明の一態様に係る防錆剤は、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体からなる(composed of)。ポリアニリン複合体そのものを防錆剤として用いてもよい。かかる防錆剤は、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体による優れた防錆能を発揮できる。
3.溶液組成物
本発明の一態様に係る溶液組成物は、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体と、溶媒とを含む。かかる溶液組成物は、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体による優れた防錆能を発揮できる。
尚、溶液組成物において、溶液組成物に含まれるポリアニリン複合体の全部が溶媒に溶解されていてもよいし、溶液組成物に含まれるポリアニリン複合体の一部が溶媒に溶解されていてもよい。溶液組成物に含まれるポリアニリン複合体の一部が溶媒に溶解されている場合、ポリアニリン複合体の他の一部(残部)は、溶媒に分散されていてもよい。溶液組成物は、溶媒に溶解されたポリアニリン複合体と、溶媒に分散されたポリアニリン複合体(粒子状のポリアニリン複合体)と、を含むスラリーの形態であってもよい。
(溶媒)
溶液組成物に含まれる溶媒は格別限定されず、例えば、水、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族系炭化水素系溶媒、モノアルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒、含硫黄系溶媒等が挙げられる。
以下に各種溶媒について例示するが、一種の溶媒について例示された溶媒が、同時に他種の溶媒に属する場合もある。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、軽油、灯油、n-ペンタン、iso-ペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、iso-オクタン、水素化パラフィン等が挙げられる。
芳香族系炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、アニソール、安息香酸等が挙げられる。
モノアルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等が挙げられる。
多価アルコール系溶媒としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンコン等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、エチルエーテル、iso-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェノキシエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸iso-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
含窒素系溶媒としては、例えば、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
含硫黄系溶媒としては、例えば、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等が挙げられる。
以上に例示した溶媒の中でも、高濃度の溶解性、保存安定性、取り扱い容易性、入手の容易さ等の観点から、n-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェノキシエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましく、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテルがより好ましい。
本発明の一態様に係る溶液組成物は、例えば、塗料、ワックス、接着剤、インク(例えば導電性インク)等の形態であってもよい。ポリアニリン複合体を、例えば、塗料、ワックス、接着剤、インク、潤滑油及びこれらの希釈液等の媒体に含有させて(溶解乃至分散させて)用いる観点からは、以上に例示した溶媒の中でも、灯油、トルエン、キシレン、2-プロパノール、シクロヘキサノン、アセトン、エタノールが、当該媒体に含まれる溶媒として、より好ましい。
一実施形態において、溶液組成物に含まれる溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジオキサン、テトラクロロメタン、p-キシレン、ベンゼン、m-キシレン、トルエン、トリエチルアミン、o-キシレン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、クロロホルム、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸、ジメチルエーテル、メチルテトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、ピリジン、t-ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、2-ブタノール、1-ブタノール、2-プロパノール、3-ブテン、1-プロパノール、アセトン、エタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジエチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される1種以上を含む。
溶媒は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
混合溶媒を構成する溶媒の組み合わせは格別限定されず、例えば、トルエンと2-プロパノールとの混合溶媒等が挙げられる。
溶液組成物における溶媒の含有量は格別限定されず、例えば、ポリアニリン複合体100質量部に対し、20質量部以上又は100質量部以上であり得、また、100000質量部以下又は10000質量部以下であり得る。
(樹脂)
溶液組成物は、樹脂を含んでもよく、樹脂を含まなくてもよい。尚、ここでいう樹脂は、上述した本発明の一態様に係るポリアニリン複合体とは区別される。
溶液組成物が含むことができる樹脂は格別限定されず、例えば、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれも含むことができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリイソシアネート、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミン、ポリウレタン、エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂は主剤と硬化剤の配合により用いられるが、主剤としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、アミン類が、硬化剤としては、酸無水物型、脂環式アミン型、フェノール型、ケチミン型、イミダゾール型等から適宜組み合わされて用いられる。特に高温耐性が求められる場合には、主剤としてテトラグリシジルアミノジフェニルメタン、硬化剤としてジアミノフェニルスルホンの組み合わせが好ましい。
熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。1種単独で使用する場合はポリウレタンが好ましい。2種以上使用する場合は、ポリエステルとメラミン樹脂、ポリエステルとポリイソシアネート、アクリル樹脂とメラミン樹脂、アクリル樹脂とポリイソシアネート、エポキシ樹脂とポリアミン等の組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェレンスルフィド、ポリエーテルケトンケトン等を好適に使用することができる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
溶媒として水等のような高い極性を有する溶媒を用いる場合は、溶媒の極性に応じて適切な樹脂を選択することができる。例えば、溶媒として水を用いる場合は、樹脂として、水溶性アクリル樹脂、及び水溶性ポリエステル樹脂を用いることができる。油溶性樹脂をエマルション化して用いることもできる。
以上に説明した樹脂は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、熱硬化性樹脂を1種単独で使用する場合はポリウレタンが好ましい。熱硬化性樹脂を2種以上使用する場合は、ポリエステルとメラミン樹脂、ポリエステルとポリイソシアネート、アクリル樹脂とメラミン樹脂、アクリル樹脂とポリイソシアネート、エポキシ樹脂とポリアミン等の組み合わせが挙げられる。
溶液組成物における樹脂の含有量は格別限定されず、例えば、ポリアニリン複合体100質量部に対し、500質量部以上又は1000質量部以上であり得、また、100000質量部以下又は10000質量部以下であり得る。
(他の成分)
溶液組成物は、以上に説明した各成分以外の他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。他の成分は格別限定されず、例えば、有色系顔料、可塑剤、顔料分散剤、乳化剤、増粘剤、飛散防止剤、レベリング材等の公知の添加剤が挙げられる。
また、溶液組成物は、ポリアニリン複合体と、塗料、接着剤、ワックス、油脂、グリース及び潤滑油からなる群から選択される1種以上とを含むものであってもよい。この場合、溶液組成物に含まれる溶媒は、別途に添加された溶媒であってもよいし、上述した塗料、接着剤、ワックス、油脂、グリース及び潤滑油からなる群から選択される1種以上に含まれる溶媒であってもよい。
(溶液組成物の組成)
一実施形態において、溶媒を除いた溶液組成物の40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上又は100質量%が、
ポリアニリン複合体であるか、又は
ポリアニリン複合体、並びに任意に樹脂及び上述した他の成分から選択される1種以上である。
一実施形態において、溶媒を除いた溶液組成物は、
実質的にポリアニリン複合体のみからなるか、又は
実質的に、ポリアニリン複合体、並びに任意に樹脂及び上述した他の成分から選択される1種以上のみからなる。
ここで、「実質的」とは、本発明の効果を損なわない範囲で不可避不純物を含んでいてもよいことである。
4.防錆塗料
本発明の一態様に係る防錆塗料は、上述した本発明の一態様に係る溶液組成物からなる(composed of)。溶液組成物そのものを防錆塗料として用いてもよい。かかる防錆塗料は、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体による優れた防錆能を発揮できる。
5.防錆塗膜
本発明の一態様に係る防錆塗膜は、本発明の一態様に係る防錆剤を含むか、又は、本発明の一態様に係る防錆塗料を用いて製造されたものである。かかる防錆塗膜は、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体による優れた防錆能を発揮できる。
(防錆塗膜の組成)
一実施形態において、防錆塗膜の40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上又は実質的に100質量%が、
ポリアニリン複合体であるか、又は
ポリアニリン複合体、並びに任意に樹脂及び上述した他の成分から選択される1種以上である。
尚、上記「実質的に100質量%」の場合、不可避不純物を含んでもよい。
6.防錆塗膜の製造方法
本発明の一態様に係る防錆塗膜の製造方法は、本発明の一態様に係る防錆塗料を金属の表面に塗布すること、及び、金属の表面に塗布された防錆塗料に含まれる溶媒を乾燥させて防錆塗膜を形成すること、を含む。かかる防錆塗膜の製造方法により製造される防錆塗膜は、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体による優れた防錆能を発揮できる。
(金属)
防錆塗料が塗布される金属の種類は格別限定されず、例えば、Fe、Al、Zn、Cr及びNiからなる群から選択される1種以上を含むものであり得る。
金属の形態として、例えば、鋼板、アルミニウム板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス板等が挙げられる。鋼板としては、例えば、熱間圧延軟板、冷間圧延鋼板、炭素鋼等が挙げられる。鋼板は、硬度と靭性のバランスのため、鉄以外に、炭素、マンガン、リン、硫黄等の不純物を必要に応じて含んでもよい。
7.構造体
本発明の一態様に係る構造体は、金属と、金属の表面に形成された、本発明の一態様に係る防錆塗膜とを含む。かかる構造体は、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体による優れた防錆能を発揮できる。構造体に含まれる金属については、本発明の一態様に係る防錆塗膜の製造方法における金属についてした説明を援用し、ここでの詳細な説明は省略する。
(用途)
構造体の用途は格別限定されず、防錆、防食を必要とする種々の用途に広く適用できる。例えば、家屋、ビル、橋梁、プラント、タンク(例えば、石油タンク、天然ガスタンク)、道路、送電や通信用の鉄塔等の建築構造物;船舶、車両(例えば、鉄道車両、大型車両、小型車両、ハイブリッド自動車、電気自動車)、航空機、ロケット等の輸送媒体;自動車等の車両における電線、ケーブル、コネクタ、ボディ等の金属部分や、高圧電力ケーブル;電気又は電子機器部品等の金属部分等が挙げられる。これらの金属部分は同種の金属であってもよく、異種の金属であってもよく、また、ガラス繊維や炭素繊維で強化した複合材料と貼り合わせた金属であってもよい。
コネクタの適用箇所としては、例えば、端子圧着部がある。端子圧着部では、端子と電線とが同種の金属であってもよく、また、異種の金属であってもよい。
本発明の一態様に係るポリアニリン複合体、溶液組成物及び構造体、並びに、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体を含む塗膜(例えば、本発明の一態様に係る溶液組成物を用いて製造された塗膜であり得、溶液組成物に含まれていた溶媒は乾燥等により除去されていてもよい。)は、防錆能に優れるものであるが、これらの用途は、以上に主に説明した防錆用途に必ずしも限定されず、各種用途に用いることができる。
本発明の一態様に係るポリアニリン複合体、溶液組成物及び構造体、並びに、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体を含む塗膜は、例えば、電池の活物質、バインダー、帯電防止材料、電磁波シールド材料、各種センサー材料、透明電極材料等としても用いることができる。
本発明の一態様に係るポリアニリン複合体、溶液組成物及び構造体、並びに、本発明の一態様に係るポリアニリン複合体を含む塗膜は、防錆用途以外の用途において、ポリアニリン複合体が各種溶媒に対する溶解性乃至分散性に優れることによって、ポリアニリン複合体が有する機能(例えば、導電性、酸化還元性等)を良好に発揮することができる。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
(実施例1)
<ポリアニリン複合体の合成>
窒素気流下においた1Lのセパラブルフラスコにリン酸水溶液(濃度27質量%)210mLを入れ、5.1gのアニリンを加え、40℃に加温した。その後、リン酸水溶液(濃度27質量%)90mLに溶解させた過硫酸アンモニウム(以下、APSと表記する)2.5gをセパラブルフラスコに投入し、毎分400回転で40℃にて3時間撹拌することにより重合を行った。
得られた溶液に、ネオコールSW-C(ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純度69.5%、第一工業製薬株式会社製)7.8gを、イソプロパノール20mLとトルエン460mLの混合液に溶解した溶液を加え、40℃にて1時間撹拌することによりドーピングを行った。次いで、60℃加熱下で静置し、トルエン層と水層とに分層させた。トルエン層を抜き出し、分液ロートに移し、イオン交換水450mLを加え、振とう、静置し、水層を抜きだすことにより、トルエン層を水洗した。水洗を同様に2回繰り返し行い、トルエン溶液を得た。
次いで、得られたトルエン溶液をエバポレーターに移し、40℃の湯浴で加温しながら減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、真空乾燥機にて80℃で10時間乾燥させることにより、6.8gの粉末状のポリアニリン複合体を得た。
<分子量測定>
得られたポリアニリン複合体の分子量を、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。具体的な手順は以下の通りである。
ポリアニリン複合体50mgをトルエン1mLとイソプロパノール72μLに溶解させた。その溶液に、0.01%以上のトリエチルアミンが溶解した0.01M LiBrのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液を50μL加え、撹拌した。撹拌後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過し、得られた濾液を測定溶液とした。
GPC測定は、昭和電工株式会社製GPCカラム(Shodex KF-806Mを2本)を用い、下記条件で行った。
[GPC測定条件]
溶媒:0.01M LiBrのNMP溶液
流量:0.7mL/min
カラム温度:60℃
注入量:100μL
UV検出波長:270nm
分子量については、標準ポリスチレンを使って分子量500~4,500,000の範囲において10水準以上で校正曲線を作成し、ポリスチレン換算でZ平均分子量Mz、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを算出した。結果を表1に示す。
Figure 2023147222000004
(実施例2)
用いるリン酸水溶液の濃度をいずれも13.5質量%とし、APSを溶解させるリン酸水溶液の量を80mLとし、そこに過酸化水素水溶液(濃度30質量%)を11g加えたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(実施例3)
用いるリン酸水溶液の濃度をいずれも27質量%としたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(実施例4)
APSの使用量を12.5gに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(実施例5)
APSを溶解させるリン酸水溶液の量を35mLとし、そこに過酸化水素水溶液(濃度30質量%)を56g加えたこと以外は、実施例4と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(実施例6)
アニリンの使用量を15.3gとし、APSの使用量を37.5gとし、ネオコールSW-Cの使用量を23.4gとしたこと以外は、実施例4と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
用いるリン酸水溶液の濃度をいずれも13.5質量%とし、アニリンの使用量を15.3gとし、APSの使用量を45.0gとし、ネオコールSW-Cの使用量を9.6gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(比較例2)
アニリンの使用量を5.1gとし、APSの使用量を15.0gとしたこと以外は、比較例1と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(比較例3)
用いるリン酸水溶液の濃度をいずれも6.8質量%とし、APSの使用量を12.5gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(比較例4)
用いるリン酸水溶液の濃度をいずれも19質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(比較例5)
用いるリン酸水溶液の濃度をいずれも54質量%としたこと以外は、比較例3と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表1に示す。
(実施例7)
窒素気流下においた1Lのセパラブルフラスコにリン酸水溶液(濃度13.5質量%)210mLを入れ、アニリンを5.1g、ネオコールSW-Cを12.9g、トルエンを15mL加え、40℃に加温した。
その後、リン酸水溶液(濃度13.5質量%)90mLに溶解させた12.5gのAPSをセパラブルフラスコに投入し、毎分400回転で40℃にて3時間撹拌することにより重合させた。
得られた溶液に、イソプロパノール25mLとトルエン460mLの混合液に溶解した溶液を加え、40℃にて1時間撹拌することにより有機相側への抽出を行った。次いで、静置し、トルエン層と水層とに分層させた。トルエン層を抜き出し、分液ロートに移し、イオン交換水450mLを加え、振とう、静置し、水層を抜きだすことにより、トルエン層を水洗した。水洗を同様に2回繰り返し行い、トルエン溶液を得た。
次いで、得られたトルエン溶液をエバポレーターに移し、40℃の湯浴で加温しながら減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、真空乾燥機にて80℃で10時間乾燥させることにより、12.2gの粉末状のポリアニリン複合体を得た。
実施例1と同様にGPC測定を行い、ポリスチレン換算でZ平均分子量Mz、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを算出した。結果を表2に示す。
(実施例8)
ネオコールSW-Cの使用量を10.5gにした以外は、実施例7と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表2に示す。
(実施例9)
トルエンを含むリン酸水溶液の混合液について、トルエンの添加量を45mLに変えたこと以外は実施例7と同様にして、ポリアニリン複合体を得た。結果を表2に示す。
(実施例10)
窒素気流下においた1Lのセパラブルフラスコにリン酸水溶液(濃度13.5質量%)420mLを入れ、アニリンを30.6g、ネオコールSW-Cを77.4g、トルエンを30mL加え、40℃に加温した。
その後、リン酸水溶液(濃度13.5質量%)180mLに溶解させた75gのAPSをセパラブルフラスコに投入し、毎分400回転で40℃にて3時間撹拌することにより重合を行った。
得られた溶液を吸引濾過し、濾集された固形物に対してイソプロパノール50mLとトルエン920mLを加え、40℃にて1時間撹拌することにより固形物を溶解させた。当該固形物の溶液を分液ロートに移し、イオン交換水900mLを加え、振とう、静置し、水層を抜きだすことにより、トルエン層を水洗した。水洗を同様に2回繰り返し行い、トルエン溶液を得た。
次いで、得られたトルエン溶液をエバポレーターに移し、40℃の湯浴で加温しながら減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、真空乾燥機にて80℃で10時間乾燥させることにより、77.4gの粉末状のポリアニリン複合体を得た。
(実施例11)
トルエンを含むリン酸水溶液の混合液について、トルエンの添加量を18mLにしたこと以外は、実施例10と同様にしてポリアニリン複合体を得た。結果を表2に示す。
(実施例12)
重合時の温度を5℃としたこと以外は、実施例11と同様にしてポリアニリン複合体を得た。結果を表2に示す。
Figure 2023147222000005
<溶液組成物(防錆塗料)の調製>
実施例1~6及び比較例1~5により得られた各ポリアニリン複合体100質量部を、プロピレングリコールモノブチルエーテル900質量部に添加して、ポリアニリン複合体溶液を得た。このポリアニリン複合体溶液1000質量部を、ワックス(日本精蝋株式会社製「OX―2251」)9000質量部に混合し、溶液組成物(防錆塗料)を得た。
<防錆塗膜の形成>
得られた溶液組成物(防錆塗料)を、鋼板(株式会社テストピースにより加工、SPCC鋼板光沢タイプ、板厚0.5mm、20mm×70mm)上に塗布し、80℃で1時間乾燥して溶媒(プロピレングリコールモノブチルエーテル)を除去し、厚さ25μmの防錆塗膜を形成し、試験片(表面に防錆塗膜が形成された鋼板)とした。
<塩水噴霧試験>
得られた試験片を、塩水噴霧装置(スガ試験機株式会社製、STP-30)内に設置し、JIS K2371の条件に従って塩水噴霧試験を行った。塩水としては、5質量%の塩化ナトリウム水溶液を用いた。
塩水噴霧試験を継続しながら、約50時間ごとに試験片を塩水噴霧装置から一時的に取り外し、鋼板表面をカメラで撮像した。撮像された画像に基づき、鋼板表面の試験対象面積(防錆塗膜が形成された面積)における錆の面積の割合(錆化率[%])を測定した。錆の面積は、色度座標において錆を示す赤~赤黒の範囲に基づいて定量化したものである。
塩水噴霧装置内における設置位置が異なる3つの試験片について、錆化率が20%に到達するまでの時間を測定し、これらの算術平均値として錆化率20%所要時間[h]を求めた。結果を表3に示す。
Figure 2023147222000006
表3より、本発明に規定の分子量を満たすポリアニリン複合体(実施例1~6)を用いた場合、比較例1~5に比べ、錆化率20%所要時間が長く、防錆能に優れることがわかる。

Claims (18)

  1. 置換又は無置換のポリアニリンにドーパントがドープしたポリアニリン複合体であって、Z平均分子量Mzが10000以上66000以下である、ポリアニリン複合体。
  2. 重量平均分子量Mwが9000未満である、請求項1に記載のポリアニリン複合体。
  3. 重量平均分子量Mwが20000以上39000未満であり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.2以上1.9未満である、請求項1に記載のポリアニリン複合体。
  4. 重量平均分子量Mwが39000以上50000未満であり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.2以上2.0未満である、請求項1に記載のポリアニリン複合体。
  5. 前記ドーパントが、スルホン酸基を有する化合物のイオンである、請求項1~4のいずれかに記載のポリアニリン複合体。
  6. 前記ドーパントが、スルホコハク酸誘導体のイオンである、請求項1~4のいずれかに記載のポリアニリン複合体。
  7. 前記ドーパントが下記式(1)で表される、請求項1~4のいずれかに記載のポリアニリン複合体。
    Figure 2023147222000007
    (式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基又は-(RO)-R基[ここで、Rはそれぞれ独立に炭化水素基又はシリレン基であり、Rは水素原子、炭化水素基又はR Si-基(ここで、Rはそれぞれ独立に炭化水素基である)であり、rは1以上の整数である]である。)
  8. 請求項1~4のいずれかに記載のポリアニリン複合体を含む、防錆剤。
  9. 請求項8に記載の防錆剤を含む、防錆塗膜。
  10. 請求項1~4のいずれかに記載のポリアニリン複合体と、溶媒とを含む、溶液組成物。
  11. さらに樹脂を含む、請求項10に記載の溶液組成物。
  12. 請求項10に記載の溶液組成物からなる防錆塗料。
  13. 請求項12に記載の防錆塗料を用いて製造された、防錆塗膜。
  14. 請求項12に記載の防錆塗料を金属の表面に塗布すること、及び
    前記金属の表面に塗布された前記防錆塗料に含まれる前記溶媒を乾燥させて防錆塗膜を形成すること、
    を含む、防錆塗膜の製造方法。
  15. 金属と、
    前記金属の表面に形成された請求項9に記載の防錆塗膜と、
    を含む、構造体。
  16. 請求項1~4のいずれかに記載のポリアニリン複合体の製造方法であって、下記の条件1及び2の少なくとも一方を満たす、製造方法。
    条件1:アニリン重合工程を過酸化水素共存下で実施する。
    条件2:アニリン重合工程において、8.5質量%以上50質量%以下のリン酸水溶液を重合溶媒として使用する。
  17. 前記条件2のアニリン重合工程において、10質量%以上50質量%以下のリン酸水溶液を重合溶媒として使用する、請求項16に記載の製造方法。
  18. 前記条件2のアニリン重合工程において、20質量%以上50質量%以下のリン酸水溶液を重合溶媒として使用する、請求項16に記載の製造方法。

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