JP2023146477A5 - - Google Patents

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JP2023146477A5
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本発明は、セルロースナノファイバーの製造方法及びセルロースナノファイバーに関するものである。
近年、セルロースナノファイバー、マイクロ繊維セルロース(ミクロフィブリル化セルロース)等の微細繊維は、樹脂の補強材としての使用が脚光を浴びている。もっとも、微細繊維が親水性であるのに対し、樹脂は疎水性であるため、微細繊維を樹脂の補強材として使用するには、当該微細繊維の分散性に問題があった。そこで、本発明者等は、微細繊維のヒドロキシ基をカルバメート基で置換することを提案した(特許文献1参照)。この提案によると、微細繊維の分散性が向上し、もって樹脂の補強効果が向上する。もっとも、この提案は、微細繊維の取扱性向上や樹脂の補強性向上を意図したものであり、微細繊維の透明性を意図したものではない。
特開2019-1876号公報
本発明が解決しようとする課題は、透明度の高いセルロースナノファイバーの製造方法及びセルロースナノファイバーを提供することにある。
カルバメート化したセルロース繊維は希アルカリに可溶性であり、凝固によってセルロース繊維を再生する。このセルロース繊維が希アルカリに可溶なメカニズムを利用し、想到するに至ったのが次に示す、上記課題を解決するための手段である。
すなわち、カルバメート化したセルロース繊維に、希アルカリを添加して微細化する、ことを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法である。
本発明によると、透明性の高いセルロースナノファイバーの製造方法及びセルロースナノファイバーとなる。
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
本形態のセルロースナノファイバーの製造方法は、以下の工程を主に有する。
(1)原料パルプのカルバメート化
(2)希アルカリ、好ましくは希アルカリ及び添加剤の添加
(3)微細化
また、より好適には、上記(2)の希アルカリ及び添加剤の添加に先立って原料パルプをミクロフィブリル化してマイクロ繊維セルロース(MFC)にする。以下、順に説明する。
(原料パルプ)
原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物(粉状物)の状態等であってもよい。
ただし、不純物の混入を可及的に避けるために、原料パルプとしては、木材パルプを使用するのが好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
(カルバメート化)
原料パルプはカルバメート化してカルバメート化したセルロース繊維(カルバメート化セルロース繊維)を得る。
なお、カルバメート化とは、セルロース繊維にカルバメート基(カルバミン酸のエステル)が導入された状態を意味する。カルバメート基は、-O-CO-NH-で表される基であり、例えば、-O-CO-NH、-O-CONHR、-O-CO-NR等で表わされる基である。つまり、カルバメート基は、下記の構造式(1)で示すことができる。
Figure 2023146477000001
ここでRは、それぞれ独立して、飽和直鎖状炭化水素基、飽和分岐鎖状炭化水素基、飽和環状炭化水素基、不飽和直鎖状炭化水素基、不飽和分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基の少なくともいずれかである。
飽和直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~10の直鎖状のアルキル基を挙げることができる。
飽和分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基を挙げることができる。
飽和環状炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基を挙げることができる。
不飽和直鎖状炭化水素基としては、例えば、エテニル基、プロペン-1-イル基、プロペン-3-イル基等の炭素数2~10の直鎖状のアルケニル基、エチニル基、プロピン-1-イル基、プロピン-3-イル基等の炭素数2~10の直鎖状のアルキニル基等を挙げることができる。
不飽和分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、プロペン-2-イル基、ブテン-2-イル基、ブテン-3-イル基等の炭素数3~10の分岐鎖状アルケニル基、ブチン-3-イル基等の炭素数4~10の分岐鎖状アルキニル基等を挙げることができる。
芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
誘導基としては、例えば、上記飽和直鎖状炭化水素基、飽和分岐鎖状炭化水素基、飽和環状炭化水素基、不飽和直鎖状炭化水素基、不飽和分岐鎖状炭化水素基及び芳香族基が有する1又は複数の水素原子が、置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等。)で置換された基を挙げることができる。
カルバメート化したセルロース繊維おいては、極性の高いヒドロキシ基の一部又は全部が、相対的に極性の低いカルバメート基に置換されている。したがって、カルバメート化セルロース繊維を微細化したカルバメート化セルロース微細繊維は、親水性が低いため粘性が低く、ハンドリング性が良い。
セルロース繊維のヒドロキシ基に対するカルバメート基の置換率は、好ましくは0.5~5.0mmol/g、より好ましくは1.0~3.0mmol/g、特に好ましくは1.5~2.0mmol/gである。操業性を考慮すると、置換率を0.5mmol/g以上にすることで、ミクロフィブリル化に必要なエネルギーが少なくなるため好ましい。他方、置換率が5.0mmol/gを超えると、セルロース繊維が繊維の形状を保ちにくくなり、希アルカリ及び添加剤を添加した場合には溶解してセルロースナノファイバーが得られなくなる。
本形態においてカルバメート基の置換率(mmol/g)とは、カルバメート基を有するセルロース原料1gあたりに含まれるカルバメート基の物質量をいう。カルバメート基の置換率は、カルバメート化したパルプ内に存在するN原子をケルダール法によって測定し、単位重量当たりのカルバメート化率を算出する。また、セルロースは、無水グルコースを構造単位とする重合体であり、一構造単位当たり3つのヒドロキシ基を有する。
原料パルプをカルバメート化する工程は、例えば、混合処理、除去処理、及び加熱処理に、主に区分することができる。なお、混合処理及び除去処理は合わせて、加熱処理に供される混合物を調製する調製処理ということもできる。
ちなみに、カルバメート化の方法としては、例えば、原料パルプをシート状にし、このシート状の原料パルプに尿素等を塗布して加熱処理する方法、つまり混合処理ではない方法なども存在する。本形態においては、このシート状にする方法を否定するものではなく、以下では、1つの例として原料パルプ及び尿素等を混合処理する形態について、詳細に説明する。
混合処理においては、セルロース繊維(原料パルプ)と尿素又は尿素の誘導体(以下、単に「尿素等」ともいう。)とを分散媒中で混合する。
尿素や尿素の誘導体としては、例えば、尿素、チオ尿素、ビウレット、フェニル尿素、ベンジル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、テトラメチル尿素、尿素の水素原子をアルキル基で置換した化合物等を使用することができる。これらの尿素又は尿素の誘導体は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
セルロース繊維に対する尿素等の混合質量比(尿素等/セルロース繊維)の下限は、好ましくは1/100、より好ましくは10/100である。他方、上限は、好ましくは300/100、より好ましくは200/100である。混合質量比を1/100以上にすることで、カルバメート化の効率が向上する。他方、混合質量比が300/100を上回っても、カルバメート化は頭打ちになる。
分散媒は、通常、水である。ただし、アルコール、エーテル等の他の分散媒や、水と他の分散媒との混合物を用いてもよい。
混合処理においては、例えば、水にセルロース繊維及び尿素等を添加しても、尿素等の水溶液にセルロース繊維を添加しても、セルロース繊維を含むスラリーに尿素等を添加してもよい。また、均一に混合するために、添加後、攪拌してもよい。さらに、セルロース繊維と尿素等とを含む分散液には、その他の成分が含まれていてもよい。
除去処理においては、混合処理において得られたセルロース繊維及び尿素等を含む分散液から分散媒を除去する。分散媒を除去することで、これに続く加熱処理において効率的に尿素等を反応させることができる。
分散媒の除去は、加熱によって分散媒を揮発させることで行うのが好ましい。この方法によると、尿素等の成分を残したまま分散媒のみを効率的に除去することができる。
除去処理における加熱温度の下限は、分散媒が水である場合は、好ましくは50℃、より好ましくは70℃、特に好ましくは90℃である。加熱温度を50℃以上にすることで効率的に分散媒を揮発させる(除去する)ことができる。他方、加熱温度の上限は、好ましくは120℃、より好ましくは100℃である。加熱温度が120℃を上回ると、分散媒と尿素が反応し、尿素が単独分解するおそれがある。
除去処理における加熱時間は、分散液の固形分濃度等に応じて適宜調節することができる。具体的には、例えば、1~24時間である。
除去処理に続く加熱処理においては、セルロース繊維と尿素等との混合物を加熱処理する。この加熱処理において、セルロース繊維のヒドロキシ基の一部又は全部が尿素等と反応してカルバメート基に置換される。より詳細には、尿素等が加熱されると下記の反応式(1)に示すようにイソシアン酸及びアンモニアに分解される。そして、イソシアン酸はとても反応性が高く、例えば、下記の反応式(2)に示すようにセルロースの水酸基にカルバメート基が形成される。
NH-CO-NH → H-N=C=O + NH …(1)
Cell-OH + H-N=C=O → Cell-O-CO-NH…(2)
加熱処理における加熱温度の下限は、好ましくは120℃、より好ましくは130℃、特に好ましくは尿素の融点(約134℃)以上、さらに好ましくは140℃、最も好ましくは150℃である。加熱温度を120℃以上にすることで、カルバメート化が効率的に行われる。加熱温度の上限は、好ましくは280℃、より好ましくは260℃、特に好ましくは240℃である。加熱温度が280℃を上回ると、セルロース繊維が分解し、セルロースナノファイバーが得られないおそれがある。
加熱処理における加熱時間の下限は、好ましくは10秒、より好ましくは20秒、特に好ましくは1分である。加熱時間を10秒以上にすることで、カルバメート化の反応を確実に行うことができる。他方、加熱時間の上限は、好ましくは15時間、より好ましくは10時間である。加熱時間が15時間を上回ると、経済的ではなく、15時間で十分カルバメート化を行うことができる。
もっとも、加熱時間の長期化は、セルロース繊維の劣化を招く。そこで、加熱処理におけるpH条件が重要となる。pHは、好ましくはpH9以上、より好ましくはpH9~13、特に好ましくはpH10~12のアルカリ性条件である。また、次善の策として、pH7以下、好ましくはpH3~7、特に好ましくはpH4~7の酸性条件又は中性条件である。pH7~8の中性条件であると、カルバメート化反応の効率が悪く、加熱時間の長期化や薬品量が必要になる可能性があり経済的ではない。これに対し、pH9以上のアルカリ性条件であると、セルロース繊維が膨潤し、尿素等への反応が促進され、効率良くカルバメート化反応するため、セルロース繊維の平均繊維長を十分に確保することができる。他方、pH7以下の酸性条件であると、尿素等からイソシアン酸及びアンモニアに分解する反応が進み、セルロース繊維への反応が促進され、効率良くカルバメート化反応する。ただし、可能であれば、アルカリ性条件で加熱処理する方が好ましい。酸性条件であるとセルロースの酸加水分解が進行し平均繊維長が短くなるおそれがある。
pHの調整は、混合物に酸性化合物(例えば、酢酸、クエン酸等。)やアルカリ性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等。)を添加すること等によって行うことができる。
加熱処理において加熱する装置としては、例えば、熱風乾燥機、抄紙機、ドライパルプマシン等を使用することができる。
加熱処理後の混合物は、洗浄してもよい。この洗浄は、水等で行えばよい。この洗浄によって未反応で残留している尿素等を除去することができる。
(ミクロフィブリル化)
セルロース繊維をカルバメート化したら直ちに希アルカリ及び添加剤を添加し、微細化することもできるが、本形態においては、まず、カルバメート化したセルロース繊維をミクロフィブリル化し、マイクロ繊維セルロースとする。以下、まず、このミクロフィブリル化に関する説明をする。
なお、カルバメート化したセルロース繊維は、ミクロフィブリル化するに先立って化学的手法によって前処理することができる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。ただし、化学的手法による前処理としては、酵素処理を施すのが好ましく、加えて酸処理、アルカリ処理、及び酸化処理の中から選択された1又は2以上の処理を施すのがより好ましい。以下、酵素処理について詳細に説明する。
酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。これらの酵素を使用すると、セルロース繊維の解繊がより容易になる。なお、セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を惹き起こす。また、ヘミセルラーゼ系酵素は、水共存下でヘミセルロースの分解を惹き起こす。
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ-ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
また、セルラーゼ系酵素としては、EG(エンドグルカナーゼ)及びCBH(セロビオハイドロラーゼ)のいずれかもを使用することもできる。EG及びCBHは、それぞれを単体で使用しても、混合して使用してもよい。また、ヘミセルラーゼ系酵素と混合して使用してもよい。
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
ヘミセルロースは、植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で木材の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。針葉樹の2次壁では、グルコマンナンが主成分であり、広葉樹の2次壁では4-O-メチルグルクロノキシランが主成分である。そこで、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から微細繊維を得る場合は、マンナーゼを使用するのが好ましい。また、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)から微細繊維を得る場合は、キシラナーゼを使用するのが好ましい。
セルロース繊維に対する酵素の添加量は、例えば、酵素の種類、原料となる木材の種類(針葉樹か広葉樹か)、機械パルプの種類等によって決まる。ただし、セルロース繊維に対する酵素の添加量は、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.3~2.5質量%、特に好ましくは0.5~2質量%である。酵素の添加量が0.1質量%を下回ると、酵素の添加による効果が十分に得られないおそれがある。他方、酵素の添加量が3質量%を上回ると、セルロースが糖化され、微細繊維の収率が低下するおそれがある。また、添加量の増量に見合う効果の向上を認めることができないとの問題もある。
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0~6.9)であるのが好ましい。他方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1~10.0)であるのが好ましい。
酵素処理時の温度は、酵素としてセルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素のいずれを使用する場合においても、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃、特に好ましくは40~60℃である。酵素処理時の温度が30℃以上であれば、酵素活性が低下し難くなり、処理時間の長期化を防止することができる。他方、酵素処理時の温度が70℃以下であれば、酵素の失活を防止することができる。
酵素処理の時間は、例えば、酵素の種類、酵素処理の温度、酵素処理時のpH等によって決まる。ただし、一般的な酵素処理の時間は、0.5~24時間である。
酵素処理した後には、酵素を失活させるのが好ましい。酵素を失活させる方法としては、例えば、アルカリ水溶液(好ましくはpH10以上、より好ましくはpH11以上)を添加する方法、80~100℃の熱水を添加する方法等が存在する。
次に、アルカリ処理の方法について説明する。
フィブリル化に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、フィブリル化におけるセルロース繊維の分散が促進される。
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を使用することができる。ただし、製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
フィブリル化に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、フィブリル化によって得られるマイクロ繊維セルロースの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。この点、マイクロ繊維セルロースの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解される。結果、フィブリル化のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。ただし、過度の前処理は、マイクロ繊維セルロースのアスペクト比を低下させ、希アルカリ及び添加剤添加時に溶解しセルロースナノファイバーが得られない可能性があるため、避けるのが好ましい。
セルロース繊維のフィブリル化は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用してセルロース繊維を叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましく、シングルディスクリファイナー(SDR)を使用して行うのがより好ましい。
フィブリル化によって得られるマイクロ繊維セルロースの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは0.1~15μm、より好ましくは0.2~10μm、特に好ましくは0.5~10μmである。マイクロ繊維セルロースの平均繊維径が0.1μmを下回ると、希アルカリ及び添加剤添加時に溶解しセルロースナノファイバーが得られない可能性がある。他方、マイクロ繊維セルロースの平均繊維径が15μmを上回ると、パルプであるのと変わらなくなり、セルロースナノファイバーの光透過率が低下する可能性がある。
マイクロ繊維セルロースの平均繊維径は、例えば、フィブリル化の程度、前処理等によって調整することができる。
マイクロ繊維セルロースの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%の微細繊維(マイクロ繊維セルロース)の水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
マイクロ繊維セルロースの平均繊維長(単繊維の長さの平均)は、好ましくは0.10~2.0mm、より好ましくは0.2~1.5mm、特に好ましくは0.3~1.2mmである。平均繊維長が0.10mmを下回ると、希アルカリ及び添加剤添加時に溶解しセルロースナノファイバーが得られない可能性がある。他方、平均繊維長が2.0mmを上回ると、得られるセルロースナノファイバーの光透過率が低下する可能性がある。
マイクロ繊維セルロースの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
マイクロ繊維セルロースのFine率A(ファイン率A)は、10~100%であるのが好ましく、20~100%であるのがより好ましく、25~100%であるのが特に好ましい。ファイン率Aが10%以上であると希アルカリ及び添加剤添加後の微細化において処理に必要なエネルギーが少なくなり経済性が優位になる。
一方、マイクロ繊維セルロースのFine率B(ファイン率B)は、1~50%であるのが好ましく、2~40%であるのがより好ましく、3~35%であるのが特に好ましい。Fine率Bが1%未満であると、繊維長が短い繊維が多い、又は繊維幅の大きい繊維が多いことから、得られるセルロースナノファイバーの光透過率が低下する可能性がある。他方、Fine率Bが50%を超えると、細くて長い繊維が多くなり、繊維同士が絡まってしまい、凝集する可能性がある。
Fine率A,Bの調整は、酵素処理等の前処理によって行うことができる。ただし、特に酵素処理する場合は、酵素を過度に添加して処理すると繊維が単糖まで分解され、セルロースナノファイバーの収率が低下してしまう可能性がある。したがって、この観点からの酵素の添加量は、2質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましく、0.5質量%以下であるのが特に好ましい。また、酵素処理しない(添加量0質量%)のも1つの選択枠である。
Fine率A,Bの調節にあたっては、例えば、Fine率の異なる2種類、又はそれ以上の複数種類のマイクロ繊維セルロースを混ぜ合わせる方法によることができる。ただし、1つのセルロース原料を単に微細化してFine率比を調節する方が製造効率に優れる。そこで、例えば、セルロース原料として複数のパルプ原料が混在したものを使用するのが好ましい。
具体的には、例えば、NKP(針葉樹クラフトパルプ)及びLKP(広葉樹クラフトパルプ)が混在するパルプ原料を用いるのが好ましく、NKP(好適には、NBKP。)5~95質量%、LKP(好適には、LBKP。)5~95質量%からなるパルプ原料を用いるのがより好ましく、NKP25~75質量%、LKP25~75質量%からなるパルプ原料を用いるのが特に好ましい。NKPには長くて固い(太い)繊維が多いとの特徴があり、LKPには短くて柔らかい(細い)繊維が多いとの特徴があるため、上記配合割合によるとFine率A,Bを容易に調節することができる。
本形態において「ファイン率A(Fine率A)」とは、繊維長が0.2mm以下で、かつ繊維幅が75μm以下であるセルロース繊維の質量基準の割合をいう。また、「ファイン率B(Fine率B)」とは、繊維長が0.2mmを超え、かつ繊維幅が10μm以下であるセルロース繊維の質量基準の割合をいう。
マイクロ繊維セルロースのアスペクト比は、好ましくは2~15,000、より好ましくは10~10,000である。アスペクト比が2を下回ると、繊維状ではなくなりセルロースナノクリスタルに近い形状となる。他方、アスペクト比が15,000を上回ると、マイクロ繊維セルロース同士の絡み合いが高くなり、分散が不十分となるおそれがある。
アスペクト比とは、平均繊維長を平均繊維幅で除した値である。アスペクト比が大きいほど引っかかりが生じる箇所が多くなるためセルロースナノファイバーを添加剤として使用した場合は補強効果が上がるが、他方で繊維の絡み合いが多くなりハンドリング性が悪くなる可能性がある。
マイクロ繊維セルロースの繊維長、ファイン率(Fine率)等は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」によって測定した値である。
マイクロ繊維セルロースのフィブリル化率は、好ましくは1.0~30.0%、より好ましくは1.5~20.0%、特に好ましくは2.0~15.0%である。フィブリル化率が30.0%を上回ると、水との接触面積が広くなり過ぎるため、脱水が困難になる可能性がある。他方、フィブリル化率が1.0%下回ると、希アルカリ及び添加剤添加後の微細化において処理に必要なエネルギーが増加し経済性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本形態においてフィブリル化率とは、セルロース繊維をJIS-P-8220:2012「パルプ-離解方法」に準拠して離解し、得られた離解パルプをFiberLab.(Kajaani社)を用いて測定した値をいう。
マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上である。結晶化度が50%を下回ると、希アルカリ及び添加剤へ溶解するおそれがありセルロースナノファイバーが得られにくくなるおそれがある。他方、マイクロ繊維セルロースの結晶化度の上限は限定しないが、叩解やミクロフィブリル化時に結晶性が低下するため90%程度が上限となると考えられる。
マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、微細化処理で任意に調整可能である。
マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、JIS K 0131(1996)に準拠して測定した値である。
マイクロ繊維セルロースのパルプ粘度は、好ましくは2cps以上、より好ましくは4cps以上である。マイクロ繊維セルロースのパルプ粘度が2cpsを下回ると、希アルカリ及び添加剤添加時に溶解しセルロースナノファイバーが得られないおそれがある。
マイクロ繊維セルロースのパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
マイクロ繊維セルロースのフリーネスは、好ましくは500ml以下、より好ましくは300ml以下、特に好ましくは100ml以下である。マイクロ繊維セルロースのフリーネスが500mlを上回ると、パルプからの叩解が進んでいないため希アルカリ及び添加剤添加後の微細化において必要なエネルギーが増加し、得られるセルロースナノファイバーの光透過率が低下する可能性がある。
マイクロ繊維セルロースのフリーネスは、JIS P8121-2(2012)に準拠して測定した値である。
マイクロ繊維セルロースのゼータ電位は、好ましくは-150~20mV、より好ましくは-100~0mV、特に好ましくは-80~-10mVである。ゼータ電位が-150mVを下回ると、カルバメート基の導入量が低い可能性があり、希アルカリ及び添加剤添加後の微細化において得られるセルロースナノファイバーの光透過率が低下する可能性がある。他方、ゼータ電位が20mVを上回ると、カルバメート基の導入量が高く、希アルカリ及び添加剤添加時に溶解しセルロースナノファイバーが得られない可能性がある。
マイクロ繊維セルロースの保水度は、好ましくは30~400%、より好ましくは90~350%、特に好ましくは100~300%である。保水度が30%を下回ると、原料パルプと変わらないため希アルカリ及び添加剤添加後の微細化において得られるセルロースナノファイバーの光透過率が低下する可能性がある。他方、保水度が400%を上回ると、脱水性が劣る傾向にあり、また、希アルカリ及び添加剤時に溶解しセルロースナノファイバーが得られない可能性がある。この点、マイクロ繊維セルロースの保水度は、当該繊維のヒドロキシ基がカルバメート基に置換されていることで、より低くすることができ、脱水性や乾燥性を高めることができる。
マイクロ繊維セルロースの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
マイクロ繊維セルロースの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
(希アルカリ及び添加剤の添加)
次に、カルバメート化したセルロース繊維をフィブリル化して得たマイクロ繊維セルロースを微細化するにあたって行う希アルカリ及び添加剤の添加について説明する。
まず、カルバメート化マイクロ繊維セルロースは、必要により、水系媒体中に分散して分散液(スラリー)にする。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましいが、一部が水と相溶性を有する他の液体である水系媒体も使用することができる。他の液体としては、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
スラリーの固形分濃度は、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。固形分濃度が上記範囲内であれば、効率的に解繊することができる。
カルバメート化マイクロ繊維セルロースに添加する希アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マンガン、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化銅(II)、水酸化亜鉛、水酸化ランタン、水酸化アルミニウム等を例示することができる。ただし、経済性の観点から水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
また、添加剤としては、尿素及び尿素の誘導体の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、尿素を使用するのがより好ましい。
以上のように希アルカリ及び尿素等の添加剤を添加した状態で微細化を行う形態によると、希アルカリによりセルロースの親水性領域にある水素結合が阻害され、さらに尿素等の添加剤がファンデルワールス力により疎水性領域に集まり、セルロース繊維同士の再凝集を防ぐはたらきをするため、溶媒中へのセルロース繊維の分散の安定性を向上させることができ、得られるセルロースナノファイバーの透明性(透明度)が向上する。
また、以上に加えて、更に酸化亜鉛(ZnO)を添加した状態で微細化するのが好ましい。酸化亜鉛(ZnO)を添加した状態で微細化を行う形態によると、酸化亜鉛がセルロースと水素結合し、セルロース分子間の水素結合を選択的にせん断すると同時に、セルロースが荷電することで静電反発を発生させ溶媒中にセルロース繊維が分散しやすくなり、得られるセルロースナノファイバーの透明性(透明度)が向上する。
希アルカリが水酸化ナトリウムである場合においては、当該水酸化ナトリウムの添加量がセルロース繊維1kgに対して、0.1~100kgであるのが好ましく、1~90kgであるのが特に好ましい。添加量が0.1kg未満であると、得られるセルロースナノファイバーの光透過率が低下する可能性がある。他方、添加量が100kgを超えると、セルロースが溶解しセルロースナノファイバーが得られない可能性がある。
また、尿素等の添加剤の添加量は、セルロース1kgに対して0.1~100kgであるのが好ましく、2.5~90kgであるのがより好ましく、5~80kgであるのが特に好ましい。添加量が0.1kg未満であると、得られるセルロースナノファイバーの光透過率が低下する可能性がある。他方、添加量が100kgを超えても、光透過率の上昇は頭打ちになり経済性コスト面において優位性が得られない。
また、セルロース分散溶液中の酸化亜鉛添加量はセルロース繊維1kgに対して、0.1~20gであるのが好ましく、0.1~10gであるのがより好ましい。添加量が20gを超えると溶液が白濁する可能性がある。
希アルカリ及び添加剤の添加は、カルバメート化したセルロース繊維及びマイクロ繊維セルロースの水分散液に対して行う。添加は、ミクロフィブリル化前及び微細化前のどちらで行うこともできる。また、攪拌は水分散液中に希アルカリ及び添加剤が均一に分散できる方法であれば特に制限されない。
(微細化)
以上のようにしてカルバメート化マイクロ繊維セルロースのスラリーに希アルカリや尿素等を添加したら、この状態においてカルバメート化マイクロ繊維セルロースの微細化(解繊)を行う。この微細化は、前述したカルバメート化セルロース繊維のフィブリル化と類似するので、以下では、当該フィブリル化とは異なる点を中心に説明する。
本形態においては、カルバメート化マイクロ繊維セルロースの微細化をセルロース繊維がセルロースナノファイバーとなるように行う。セルロースナノファイバーは、マイクロ繊維セルロースと同様に微細繊維であるが、より光透過率が高く透明である。
セルロースナノファイバーは、マイクロ繊維セルロースと微細化の程度が異なり、例えば、平均繊維径が0.1μmを下回る。具体的には、セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは1~20nm、より好ましくは1~15nm、特に好ましくは1~10nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が1nmを下回ると、繊維の表面積が大きくなり脱水性が悪く、シート等の製品時に製造コストが上昇してしまう可能性がある。他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が20nmを上回ると、透明性(透明度)が劣る可能性がある。
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、カルバメート化マイクロ繊維セルロースのフィブリル化の程度、前処理、解繊等によって調整することができる。
なお、セルロースナノファイバーの物性に関する計測方法は、特にこれに反する記載のない限り、マイクロ繊維セルロースの場合と同様である。
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、好ましくは0.1~1,000μm、より好ましくは0.5~500μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が0.1μmを下回ると、繊維状ではなくなりセルロースナノクリスタルに近い形状となる。他方、セルロースナノファイバーの平均繊維長が1,000μmを上回ると、繊維同士が絡み易くなり、分散性が十分に向上しないおそれがある。
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバー結晶化度は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。セルロースナノファイバーの結晶化度が以上の範囲内であればセルロースの力学物性(特に強度及び寸法安定性)を向上することができる。
結晶化度は、例えば、カルバメート化マイクロ繊維セルロースのフィブリル化の程度、前処理、解繊等で任意に調整することができる。
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、必要により、他のセルロース繊維と混合するに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。分散媒は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、分散媒は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1%)のB型粘度は、好ましくは10~2,000cp、より好ましくは30~1,500cpである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、他のセルロース繊維との混合が容易になり、また、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
分散液のB型粘度(固形分濃度1%)は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
スラリーの固形分濃度は、好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.5~5.0質量%である。固形分濃度が0.1質量%を下回ると、脱水や乾燥する際に過大なエネルギーが必要となるおそれがある。他方、固形分濃度が10.0質量%を上回ると、スラリー自体の流動性が低下してしまい分散剤を均一に混合できなくなるおそれがある。
(その他)
本形態のセルロースナノファイバーは、例えば、スラリー状のものを乾燥させ透明なシート状として利用すること等ができる。
次に、本発明の実施例について、説明する。
まず、針葉樹クラフトパルプと固形分濃度10%の尿素水溶液を固形分換算比で2:1で混合した。また20%クエン酸溶液を少量添加(0.0008g/g-尿素)した。この混合物を105℃で乾燥して乾燥体とした。この乾燥体は160℃で1時間加熱処理し、カルバメート変性パルプを得た。このようにして得られたカルバメート変性パルプは蒸留水で希釈攪拌し、脱水洗浄を2回繰り返し行った。洗浄したカルバメート変性パルプをリファイナーで叩解し、カルバメート変性マイクロ繊維セルロース(セルロース繊維)を得た。このカルバメート変性マイクロ繊維セルロースは、カルバメート基の導入量が1.4mmol/g、fineAが77%であった。
次に、水酸化ナトリウム50%水溶液80.0g、尿素50.0gと水130.8gを混合し、試薬Aを作製した。作製した試薬Aとカルバメート変性マイクロ繊維セルロース(NBKP:水分97.9質量%)乾燥重量5gを混合し、高圧ホモジナイザーを用いた解繊(微細化)処理を施した後、濃度1.0質量%のカルバメート変性セルロースナノファイバーの水分散液を得た。また、一部の試験例においては、酸化亜鉛を添加した。その他の試験例は、表1の配合割合に合わせて試薬Aを作製した後に同様の操作を行った。
得られた各カルバメート変性セルロースナノファイバーの水分散液について、全光透過率を以下のようにして調べた。結果を表1に示した。
(全光透過率)
得られたカルバメート変性セルロースナノファイバーの水分散液を脱気処理後、吸光度計を用いてJIS K 7361に準拠して全光透過率を測定した。ゼロ点補正は同ガラスセルに入れたイオン交換水で行い、全光透過率は波長350~880nmで測定した透過率の平均値より算出した。
Figure 2023146477000002
本発明は、セルロースナノファイバーの製造方法及びセルロースナノファイバーとして利用可能である。

Claims (6)

  1. カルバメート化したセルロース繊維に、希アルカリを添加して微細化する、
    ことを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
  2. カルバメート化したセルロース繊維に、希アルカリと、尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方の添加剤とを添加して微細化する、
    ことを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
  3. 前記希アルカリが水酸化ナトリウムであって、前記セルロース繊維1kgに対して、前記水酸化ナトリウムの添加量が0.1~100kgであり、前記添加剤の添加量が、0.1~100kgである、
    請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  4. 前記カルバメート化したセルロース繊維の平均繊維径が1~16μmで、かつ前記微細化を平均繊維径1~20nmとなるように行う、
    請求項1又は請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  5. 前記カルバメート化を、pH9以上のアルカリ性条件、又はpH7以下の酸性条件で行って前記カルバメート化したセルロース繊維の平均繊維長を0.10~2.0mmとする、
    請求項1又は請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  6. 前記カルバメート化したセルロース繊維の結晶化度が50%以上である、
    請求項1又は請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
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