JP2023145980A - 水性発泡耐火塗料組成物 - Google Patents

水性発泡耐火塗料組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】火災時における火炎又は熱に耐性のある発泡塗膜を形成可能な水性発泡耐火塗料組成物を提案する。【解決手段】水性樹脂(A)、チャー形成補助剤(B)、炭素源(C)、発泡剤(D)、ゼオライト(E)及び水を含む、水性発泡耐火塗料組成物、基材表面に、前記水性発泡耐火塗料組成物を塗装することを含む、基材の塗装方法、基材表面に、前記水性発泡耐火塗料組成物を塗装することを含む、熱及び火災から構造物を保護する方法。【選択図】図1

Description

本発明は水を希釈媒体として含む水性の発泡耐火塗料組成物に関する。
鉄は500℃付近で急激に強度を失うため、火災時には鉄骨造りの構造物は崩壊し、避難や消火活動が出来なくなる。このため、火災時でも定められた時間、強度を維持するために、構造物の鉄骨に断熱性を備えた耐火被覆を施工することが建築基準法によって義務付けられている。この耐火被覆材料としてはロックウール耐火被覆材と発泡耐火塗料がある。ロックウール耐火被覆材は安価であり、市場で多く流通されているが、耐火性能を発揮するには1cm~数cmの厚みを要するものであり、吹き付け作業が困難であるという問題がある。
一方、発泡耐火塗料は火災時の温度上昇によって塗膜が膨張して断熱性を発揮する被覆材料である。発泡耐火塗料を用いた耐火被覆はロックウールとは異なり平常時は薄膜で、構造物自体がもつ形状を損なうことがなく、火災時には膨張、炭化し、チャーと呼ばれる難燃性の断熱層によって鉄の温度上昇を抑制し、構造物の崩壊を遅延させることができる。
この発泡耐火塗料として本出願人は特許文献1において、加水分解性シリル基含有樹脂、可塑剤、発泡剤、及び炭化剤を含む発泡耐火塗料を提案した。この塗料においては、厚塗りが容易であり、速乾性、内部硬化性、耐水性等の諸物性に優れた保護塗膜が得られ、そして火災の状況下においては耐火性に優れた発泡層を形成しうるものである。
しかしながら特許文献1に記載の発泡耐火塗料は希釈媒体として有機溶剤を含むものであり、病院や学校等で施工する場合に臭気の問題がある。また、有機溶剤が飛散することにより電気工事との並行作業ができないなどの問題があり、水を希釈媒体とする水性発泡耐火塗料の要望が高まっている。
これまで水性発泡耐火塗料のバインダー成分として種々の合成樹脂エマルションが検討されてきた。例えば特許文献2には合成樹脂エマルションとしてアクリル樹脂エマルションをバインダー成分として含む発泡耐火塗料組成物が開示されている。
特開2018-159065号公報 特開2005-89670号公報
建築物に塗装するための水性塗料は常温乾燥の条件でも耐久性を備えた塗膜を形成することが必要である。そのため、塗膜形成成分には耐久性が高いとされているアクリル樹脂エマルションが使用されることが一般的である。しかしながらアクリル樹脂エマルションを使用した水性発泡耐火塗料は火災時の塗膜の発泡が困難であり、十分な耐火性を発揮できないという問題がある。
本発明の課題は、火災時における火炎又は熱に耐性のある発泡塗膜を安定に形成可能な水性発泡耐火塗料組成物を提案することにある。
本発明者らは上記課題について鋭意検討した。その結果、水性発泡耐火塗料組成物に含まれる無機化合物に着目した。そして今回、種々の無機化合物の中でゼオライトが水性発泡耐火塗料組成物の耐火性を大きく向上させることを見出した。
すなわち、本発明は
項1
水性樹脂(A)、チャー形成補助剤(B)、炭素源(C)、発泡剤(D)、ゼオライト(E)及び水を含む、水性発泡耐火塗料組成物、
項2
可塑剤(F)をさらに含む、項1記載の水性発泡耐火塗料組成物、
項3
可塑剤(F)の重量平均分子量が、300~2000の範囲内にある、項2に記載の水性発泡耐火塗料組成物、
項4
可塑剤(F)が、アジピン酸又はクエン酸を原料として使用した可塑剤である、項2または3に記載の水性発泡耐火塗料組成物、
項5
基材表面に、項1~4のいずれか1項に記載の水性発泡耐火塗料組成物を塗装することを含む、基材の塗装方法、
項6
基材表面に、項1~4のいずれか1項に記載の水性発泡耐火塗料組成物を塗装することを含む、熱及び火災から構造物を保護する方法、
に関する。
本発明の水性発泡耐火塗料組成物によれば、塗膜が高熱に曝された際に、発泡状態の偏りの少ない耐火性に優れたチャーが形成できる。
本発明の水性発泡耐火塗料組成物は、水性樹脂(A)、チャー形成補助剤(B)、炭素源(C)、発泡剤(D)、ゼオライト(E)及び水を含む。
<水性樹脂(A)>
本発明において、水性樹脂(A)は、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用される。その樹脂種には特に限定はなく、また、分散粒子の形態である場合には単層状又はコアシェル型等の多層状のいずれであってもよい。
水性樹脂(A)としては、塗膜形成能を有するものであれば特に制限なく従来公知のものを使用できる。樹脂種の具体例としては、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、これらは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
前記水性樹脂(A)は、水分散性又は水溶解性の観点から、分子中にカルボキシル基を有することが好ましい。前記水性樹脂(A)がカルボキシル基を有する場合、水性樹脂(A)の酸価は3~100mgKOH/g、特に5~80mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。ここで酸価とは、樹脂不揮発分の質量1g中に含まれる酸基を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を、アルカリ中和滴定に基づく常法により求めたものである。
前記水性樹脂(A)としては、例えば、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーの共重合体エマルションが挙げられる。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
前記共重合体エマルションにおいて、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの共重合量としては、全重合性不飽和モノマー中に1~20質量%、特に3~10質量%の範囲内が好適である。
その他の重合性不飽和モノマーとしては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ-ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;
イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する(メタ)アクリレート;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;
フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;
マレイミド基等の光重合性官能基を有するモノマー;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ-ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;
分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホエチルメタクリレート、及びそのナトリウム塩又はアンモニウム塩等のスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;
2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー;
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;
並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
尚、本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートの両方を、(メタ)アクリルとはアクリルとメタクリルの両方を、(メタ)アクリロニトリルとはアクリロニトリルとメタクリロニトリルの両方を、それぞれ意味するものとする。
前記その他の重合性不飽和モノマーとしては、耐火性の観点から、ビニル芳香族化合物を含むことが好ましい。ビニル芳香族化合物を使用する場合、その共重合割合としては水性樹脂(A)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中、ビニル芳香族化合物の量が55質量%以上、特に70~95質量%の範囲内にあることがより好ましい。
前記共重合体エマルションは、通常の方法を採用することで得ることができるが、形成される塗膜の耐水性の点から乳化重合法によるものが好ましい。
前記水性樹脂(A)は、水性発泡耐火塗料組成物中の不揮発分の全質量を基準として、水性発泡耐火塗料組成物中に、不揮発分質量で5~50質量%、より好ましくは10~35質量%の範囲内で存在することができる。
本明細書では不揮発分とは揮発成分を除いた残存物を意味するものであり、残存物は常温で固形状であっても液状であっても差し支えない。例えば、0.3gの試料を105℃、30分間加熱し乾燥させた際に残存する成分を不揮発分として取り扱う。
<チャー形成補助剤(B)>
チャー形成補助剤(B)は、水性発泡耐火塗料組成物により形成される塗膜が火に曝されたときにチャーの形成を促進するためのものである。一般的にルイス酸はチャーを形成する補助機能を果たすと考えられている。チャー形成補助剤(B)の具体例としてはリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸等のリン含有化合物が使用される。リン含有化合物の中でも、リン酸またはポリリン酸のアンモニウム塩であるリン酸アンモニウム化合物が好ましく、ポリリン酸アンモニウムがより好ましい。本発明では、リン含有化合物の代わりにまたはリン含有化合物に加えて、他のチャー形成補助剤を使用することも可能である。例えばポリリン酸アンモニウムとトリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)の組み合わせはその一例である。
前記チャー形成補助剤(B)は、水性発泡耐火塗料組成物中の不揮発分の全質量を基準として、水性発泡耐火塗料組成物中に好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~45質量%の量で存在することができる。
<炭素源(C)>
水性発泡耐火塗料組成物は、炭素源(C)を含有する。炭素源(C)の例としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、デンプン、セルロース粉末等が挙げられる。
炭素源(C)は、水性発泡耐火塗料組成物中の不揮発分の全質量を基準として、水性発泡耐火塗料組成物中に好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%の量で存在することができる。
<発泡剤(D)>
本発明において水性発泡耐火塗料組成物は、発泡剤(D)を含有する。発泡剤(D)とは、熱(通常は火)に暴露されると、分解して膨張ガスを提供する1つ以上の化合物である。発泡剤が分解し、ガスを発生するのに十分な熱は、通常約90℃以上である。
発泡剤(D)がガスを放出する温度としては、有機ポリマーが軟らかくなる温度で、且つチャーが形成される温度よりも低い温度であることが望ましい。このようにして形成された水性発泡耐火塗料組成物は十分に発泡してからチャーを形成、より良好な断熱体となることができる。
発泡剤(D)としてはメラミン、メラミンホルムアルデヒド、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、メラミンモノホスフェート、メラミンジ燐酸、メラミンポリ燐酸ホスフェート、メラミンピロ燐酸、メラミンシアヌレート、尿素、ニトロウレア、ジメチル尿素、ジシアンジアミド、グアニル尿素ホスフェート、グリシン、アミンリン酸塩、アゾジカルボンアミド、4,4´-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p-トルエンヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、5-フェニルテトラゾール、ジアゾアミノベンゼン等が使用可能である。上記化合物は、熱に暴露されると分解し、窒素ガスを放出する。また、ホウ酸アンモニウム、炭酸カリウム、クエン酸誘導体など、熱に曝されると二酸化炭素、水蒸気および/またはアンモニアを放出する化合物、膨張性グラファイトも発泡剤として使用することができる。
本発明において好ましい発泡剤(D)は、メラミンまたはその誘導体であることができ、単独でまたは組み合わせて使用される。
前記発泡剤(D)は、水性発泡耐火塗料組成物中の不揮発分の全質量を基準として、好ましくは1~30質量%、より好ましくは5~25質量%の範囲内で存在することができる。
<ゼオライト(E)>
本発明で用いるゼオライト(E)は結晶性アルミノケイ酸塩であり、天然又は合成のいずれであってもよいが、合成ゼオライトであることが好ましい。
一般に、ゼオライトが有する結晶構造(骨格構造ともいう。)の基本的な単位は、ケイ素原子又はアルミニウム原子を取り囲んだ4個の酸素原子からなる四面体であり、これらが3次元方向に連なって結晶構造を形成している。
ゼオライト(E)の結晶構造は、特に制限はなく、例えば、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)が定めるアルファベット3文字からなる構造コードにて表される各種の結晶構造が挙げられる。構造コードの例としては、例えば、LTA、FER、MWW、MFI、MOR、LTL、FAU、BEAのコードが挙げられる。結晶構造の名称の例としてはA型、X型、β型、Y型、L型、ZSM-5型、MCM-22型、フェリエライト型及びモルデナイト型等が挙げられる。
ゼオライト(E)は、その結晶構造中に、陽イオンを有しており、当該陽イオンが、アルミノケイ酸塩から構成される上記結晶構造中の負電荷を補償して、正電荷の不足を補っている。当該陽イオンとしては例えば、水素イオン、リチウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びバリウムイオンが挙げられる。
前記ゼオライト(E)は、水性発泡耐火塗料組成物中の不揮発分の全質量を基準として、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%の範囲内で存在することができる。ゼオライト(E)の量がこの範囲内にあることにより、塗装時の粘度が適度であり、発泡状態に偏りの少ない、均一なチャーを形成し得る水性発泡耐火塗料組成物が得られる。
ゼオライト(E)による効果の理由は定かではないが、本発明者らは前記チャー形成補助剤(B)と炭素源(C)との反応にゼオライトが固体酸触媒として働くことによって、チャー形成までの反応を適度に促進したものと考えている。
<可塑剤(F)>
本発明の水性発泡耐火塗料組成物は、耐火性の観点から可塑剤(F)を含むことが好ましい。
本発明において可塑剤(F)は、平常時の塗膜に残存する成分であり、重量平均分子量が250以上、好ましくは300以上であり、かつ重量平均分子量が2000以下、好ましくは1900以下にある物質であることが耐火性の点から好ましい。
なお、本明細書において、化学式が明らかな物質の重量平均分子量は、化学式から算出される分子量とする。
また、化学式が明らかでない物質の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
前記可塑剤(F)としては例えば、脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤が挙げられる。脂肪酸エステル系可塑剤としては、アジピン酸エステル系、クエン酸エステル系、安息香酸エステル系、ミリスチン酸エステル系、酢酸エステル系、コハク酸エステル系、グルタル酸エステル系、セバシン酸エステル系、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特にアジピン酸又はクエン酸を原料として使用した可塑剤が好ましい。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、イソデシルジフェニルホフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物、これらを各種置換基で変性させた化合物、これらの各種の縮合タイプ等が挙げられる。
前記可塑剤(F)は、水性発泡耐火塗料組成物中の不揮発分の全質量を基準として水性発泡耐火塗料組成物中に好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%の範囲で存在することができる。
<水性発泡耐火塗料組成物>
本発明の水性発泡耐火塗料組成物は、他の成分、例えば、顔料、造膜助剤、顔料分散剤、繊維、触媒、有機溶剤、溶融粘度を変えるための添加剤、レオロジー調整剤、硬化剤を任意選択で含むことができるが、これらに限定されない。
これらのうち顔料としては二酸化チタン(白色顔料)、カーボンブラック、酸化鉄等の有色顔料;バライト、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、クレー等のフィラー顔料が挙げられる。
前記顔料は、水性発泡耐火塗料組成物中の不揮発分の全質量を基準として、水性発泡耐火塗料組成中に好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%の範囲で存在することができる。
また、前記造膜助剤としては、水性樹脂(A)に相溶可能な高沸点の有機溶剤であり、水が揮発した後も塗膜内に残り、水性樹脂(A)粒子の融合を促進しながら徐々に揮発する成分である。造膜助剤の重量平均分子量は例えば250未満である。造膜助剤の具体例としては、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルル等のグリコールエーテル系化合物;2-イソブトキシエチルベンゾエート、2,2,4-トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチルペンタンジオールジイソブチレート等のエステル系化合物等が挙げられる。
本発明水性発泡耐火塗料組成物が造膜助剤を含む場合、その場合の含有量は、塗料不揮発分を基準として好ましくは造膜助剤の量が0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%の範囲内である。
<塗装方法>
本発明はさらに、基材表面に、上記水性発泡耐火塗料組成物を塗装することを含む、基材の塗装方法に関する。
本発明の水性発泡耐火塗料組成物は、周囲温度、例えば-5℃~40℃で硬化および/または乾燥することができる。よって、加熱硬化が実用的でない大きな構造物に適用するのに適している。
本発明において、水性発泡耐火塗料組成物の層の乾燥フィルムの厚さは、用途に応じて適宜選択することができる。典型的には、セルロース系の耐火用途(例えばオフィスビルなどの建築物に適用)の場合、100μm~8mm、好ましくは200μm~4mmである。
本発明はさらに、基材表面に、上記水性発泡耐火塗料組成物を塗装することを含む、火炎又は熱から構造物を保護する方法に関する。
本発明の水性発泡耐火塗料組成物は、様々な基材に適用することができる。
基材の例としては、鉄骨、アルミニウム、亜鉛鉄板等の金属だけでなく、壁紙、合板、木材、無機質ボード、コンクリート、モルタル、FRP、プラスチック類、紙、布、合成樹脂、ゴム、シリコン、電線ケーブル等が挙げられる。構造物としては、地上構造物、海洋構造物等が挙げられ、特に好適な構造物としては建築基準法第21条及び第27条に規定される建物等が挙げられる。その具体例の一部としては、ビル、学校、病院、ホテル、映画館、店舗、倉庫、空港等が挙げられる。
本発明の水性発泡耐火塗料組成物を既存構造物の鉄骨に適用する場合は、錆除去等の下地処理をした後、必要に応じて下塗り塗料を塗装したあとに本発明水性発泡耐火塗料組成物を塗装してもよい。また、本発明の水性発泡耐火塗料組成物を塗装したあとに公知の上塗り塗装をしてもよい。
塗装方法としては特に限定されず、刷毛、コテ、ローラ、スプレー等の一般の方法で簡単に塗装することができ、平滑塗装だけでなく、厚膜で凹凸のあるパターンを形成することも可能である。これらの塗装方法は、基材の使用目的に応じて適宜選択される。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。ここで、『部』および『%』はそれぞれ『質量部』および『質量%』を意味する。
水性発泡耐火塗料組成物の製造
実施例1
容器に下記成分を入れてプラネタリーミキサを用いて均一になるまで攪拌混合し、水性発泡耐火塗料組成物(X-1)を得た。
脱イオン水 14.4部
分散剤 1.6部
消泡剤 0.2部
酸化チタン 8部
メラミン 8.1部
ペンタエリスリトール 8.1部
ポリリン酸アンモニウム 24.2部
ゼオライト(E1)(注1) 0.5部
繊維 3部
48%アクリル樹脂エマルション(A)(注11) 18部
可塑剤(F1)(注12) 5部
増粘剤 1部。
実施例2~11及び比較例1~6
上記実施例1において、配合を下記表1に記載の通りとする以外は実施例1と同様にして水性発泡耐火塗料組成物(X-2)~(X-17)を得た。表1は実配合表示である。
次いで100mm×100mm×3.2mmのブラスト鋼板に、各水性発泡耐火塗料組成物を乾燥膜厚が1.0mmとなるように塗装し、23℃で7日間乾燥させたものを試験パネルとし、コーンカロリーメーターによる簡易的な耐火試験に供した。具体的には、試験パネルの裏面側に熱電対を取り付け、加熱強度が50kw/mのコーンカロリーメーターを用いた着火試験に供し、耐火性とチャーの発泡状態を下記基準で評価した。結果を表1に併せて示す。
(*)耐火性:
着火してから20分後の熱電対の温度を記録し、下記基準で評価した。
評価◎、〇の場合は耐火性が良好であり、評価△、×の場合は耐火性が不良であると判定した。尚、比較例6については着火後10分後に熱電対温度が360℃を超えたため、測定を中止した。
◎:20分後の熱電対温度が340℃未満
〇:20分後の熱電対温度が340℃~350℃未満
△:20分後の熱電対温度が350℃~360℃未満
×:20分後の熱電対温度が360℃以上。
(*)チャーの発泡状態
着火試験後の試験パネルの発泡状態を目視にて確認し、下記基準で評価した。
◎:発泡状態に偏りが認めらない、
〇:発泡状態にやや偏りが認められる、
△:発泡状態に顕著な偏りが認められる、
×:発泡がほとんど認められない。
図1は着火試験後の試験パネルの状態を表す写真である。図1では発泡状態を確認するためにチャーを垂直方向に切断し、断面を露出させている。図1左側はチャー発泡状態評価が◎ランクの試験パネルの例であり、全体的に同程度に発泡している。これに対し、図1右側は発泡状態評価が△ランクの試験パネルの例であり、発泡は認められるものの、塗膜の中央部と端部とで厚みが大きく異なり、発泡及び残存度合いが明らかに異なる。
Figure 2023145980000002
Figure 2023145980000003
(注1)ゼオライト(E1):「モレキュラーシーブ3A」、ユニオン昭和社製商品名、A型合成カリウムイオン交換型ゼオライト、シリカ/アルミナ比=2、
(注2)ゼオライト(E2);「モレキュラーシーブ4A」、ユニオン昭和社製商品名、A型合成ナトリウムイオン交換型ゼオライト、シリカ/アルミナ比=2、
(注3)ゼオライト(E3);「モレキュラーシーブ5A」、ユニオン昭和社製商品名、A型合成カルシウムイオン交換型ゼオライト、シリカ/アルミナ比=2、
(注4)ゼオライト(E4);「モレキュラーシーブ13X」、ユニオン昭和社製商品名、X型合成ナトリウムイオン交換型ゼオライト、シリカ/アルミナ比=2、
(注5)ゼオライト(E5);「USKY-700」、ユニオン昭和社製商品名、ハイシリカゼオライト、
(注6)ヘクトライト;「LaponiteRDS」、ビッグケミー社製商品名、
(注7)ベントナイト;「Optigel WX」、ビッグケミー社製商品名、
(注8)フリット粉;「01-4102P」、日本フェロー社製商品名、ガラス粉、
(注9)コロイダルシリカ;「ST-N40」、日産化学工業株式会社製商品名、
(注10)コロイダルシリカ;「AEROSIL200」、Evonik社製商品名、
(注11)48%樹脂エマルション;スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=85/7/8、乳化重合体、不揮発分48%、
(注12)可塑剤(F1):「D620」、ジェイ・プラス社製商品名、アジピン酸系ポリエステル、重量平均分子量800、
(注13)可塑剤(F2);「D623」、ジェイ・プラス社製商品名、アジピン酸系ポリエステル、重量平均分子量1800、
(注14)可塑剤(F3);クエン酸トリブチル、分子量360。
<考察>
表1の結果より、本発明の効果について以下に考察する。
実施例1~12は、本発明で規定したゼオライトを含む水性発泡耐火塗料組成物である。
比較例1~7はゼオライトを含まないか、ゼオライトを他の無機鉱物に置き換えた点で本発明範囲から外れる水性発泡耐火塗料組成物である。
以上により調製された水性発泡耐火塗料組成物による耐火性試験結果より、以下のことが言える。
第1に、ゼオライトを含む水性発泡耐火塗料組成物はゼオライトを含まない、もしくはゼオライトを他の無機鉱物に置き換えた場合と比較して耐火性が優れている。第2に、ゼオライトを含む水性発泡耐火塗料組成物はチャーの発泡状態と耐火性が共に良好であることがわかる。尚、比較例2の水性発泡耐火塗料組成物のようにチャーの発泡状態が良好であるにも関わらず耐火性が不良である場合もあるので、発泡状態と耐火性は必ずしも相関しない。
図1は着火試験後の試験パネルの状態を表す写真である。

Claims (6)

  1. 水性樹脂(A)、チャー形成補助剤(B)、炭素源(C)、発泡剤(D)、ゼオライト(E)及び水を含む、水性発泡耐火塗料組成物。
  2. 可塑剤(F)をさらに含む、請求項1記載の水性発泡耐火塗料組成物。
  3. 可塑剤(F)の重量平均分子量が、300~2000の範囲内にある、請求項2に記載の水性発泡耐火塗料組成物。
  4. 可塑剤(F)が、アジピン酸又はクエン酸を原料として使用した可塑剤である、請求項2または3に記載の水性発泡耐火塗料組成物。
  5. 基材表面に、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性発泡耐火塗料組成物を塗装することを含む、基材の塗装方法。
  6. 基材表面に、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性発泡耐火塗料組成物を塗装することを含む、熱及び火災から構造物を保護する方法。
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