JP2023144794A - 金属接合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】W系部材とCu系部材30との接合強度を改善できる新規な技術を提供する。【解決手段】ここに開示される金属接合体100は、タングステン(W)を含むW系部材10と、銅(Cu)を含むCu系部材30とを少なくとも備えている。そして、ここに開示される金属接合体100では、W系部材10の表面に、当該W系部材10の対向層(中間層20)に侵入する突起が形成されている。これによって、W系部材10と対向層(中間層20)とをアンカー効果によって強固に接合できる。そして、この中間層20は、Cu元素を含んでいるため、Cu系部材30と好適に接合することができる。ここに開示される金属接合体によると、中間層20を介してW系部材10とCu系部材30とを強固に接合できる。【選択図】図1

Description

本発明は、金属接合体に関する。具体的には、タングステン系部材と銅系部材を含む金属接合体に関する。
タングステン(W)を含むタングステン系部材(以下「W系部材」ともいう)は、融点が高く、かつ、熱膨張率が低いという特徴を有し、高温環境での信頼性に優れている。このため、W系部材は、ダイバータ、加速器、プラズマ放電装置、高温炉、薄膜形成装置等の高温環境に晒される超高温部品に使用される。一方、タングステンは、希少かつ高価な金属であり、かつ、加工が困難であるため、タングステン以外の金属を主成分とする部材(以下、「異種金属部材」ともいう)と接合された状態で用いられることが多い。例えば、材料コストや放熱性(熱伝導性)などの観点から、接合対象である異種金属部材の一例として、銅(Cu)を含む銅系部材(以下「Cu系部材」ともいう)が挙げられる。
この種の金属接合体の製造では、例えば、拡散接合(Diffusion Bonding Method)を用いて、W系部材とCu系部材とを直接接合する。この拡散接合では、W系部材とCu系部材とを密着させた状態で加熱と加圧を同時に行う。これによって、W系部材とCu系部材との間に、W元素とCu元素とが相互に拡散したW-Cu拡散層が形成され、当該W-Cu拡散層を介してW系部材とCu系部材とが接合される。かかる拡散接合の一例が非特許文献1に開示されている。この非特許文献1に記載の拡散接合では、温度を980℃に設定し、圧力を106MPaに設定している。そして、非特許文献1では、上記条件の拡散接合によって、W系部材とCu系部材との間に厚さ22nm程度のW-Cu拡散層が形成されることが報告されている。
J.Zhang et al.,Material and design 137(2018)473-480
ところで、近年では、超高温部品の耐久性の向上に対する要求が高まっており、W系部材とCu系部材との間の接合強度を改善できる技術が求められている。本発明は、かかる要求に応じてなされたものであり、その主な目的は、W系部材とCu系部材との接合強度を改善できる新規な技術を提供することである。
上記目的を実現するべく、ここに開示される技術によって、以下の構成の金属接合体が提供される。
ここに開示される金属接合体は、タングステン(W)を含むタングステン系部材と、銅(Cu)を含む銅系部材とを少なくとも備えている。そして、ここに開示される金属接合体では、タングステン系部材の表面に、当該タングステン系部材の対向層に侵入する突起が形成されている。
上記構成の金属接合体では、W系部材の表面に、当該W系部材の対向層に侵入する突起が形成されている。これによって、W系部材と対向層との界面においてアンカー効果が発揮されるため、W系部材とCu系部材とを強固に接合することができる。
ここに開示される金属接合体の好適な一態様では、突起の平均幅aが0.01μm以上1μm以下である。これによって、W系部材と対向層との界面におけるアンカー効果をより適切に発揮できる。
ここに開示される金属接合体の好適な一態様では、突起の平均アスペクト比(b/a)が1以上である。これによって、W系部材と対向層との界面におけるアンカー効果をより適切に発揮できる。
ここに開示される金属接合体の好適な一態様では、突起の平均長さbが0.05μm以上5μm以下である。これによって、W系部材と対向層との界面におけるアンカー効果をより適切に発揮できる。
ここに開示される金属接合体の好適な一態様では、突起は、タングステン系部材の表面から対向層に向かうに従って分岐する樹枝状の突起である。これによって、W系部材と対向層との界面におけるアンカー効果をより適切に発揮できる。なお、この樹枝状の突起の平均分岐数は1以上5以下が好適である。
ここに開示される金属接合体の好適な一態様では、タングステン系部材は、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステン、タングステン複合材料からなる群から選択される一種である。ここに開示される技術は、これらのW系部材に特に好適に適用できる。また、上記タングステン複合材料の一例として、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むタングステン複合材料が挙げられる。
ここに開示される金属接合体の好適な一態様では、タングステン系部材の表面に銅系部材が接合されており、突起が銅系部材に侵入している。ここに開示される技術において、W部材の突起は、例えばCu系部材に直接侵入し得る。かかる態様によると、アンカー効果によってW部材とCu部材との直接接合の強度を向上できる。
ここに開示される金属接合体の好適な一態様では、タングステン系部材と銅系部材との間に、白金(Pt)と銅(Cu)を含む中間層が形成されており、突起が中間層に侵入している。ここに開示される技術では、W部材とCu系部材との間に中間層を形成し、当該中間層に突起を侵入させることもできる。かかる態様によると、アンカー効果によってW部材と中間層とを強固に接合できる。そして、この中間層は、Cu系部材の主成分であるCu元素を含んでいるため、Cu系部材と強固に接合することができる。このため、本態様によると、中間層を介してW部材とCu系部材とが強固に接合された金属接合体を得ることができる。また、本態様では、W系部材とCu系部材との熱膨張率の差を中間層において緩和できるため、W系部材とCu系部材との接合強度の安定化にも貢献できる。
上記中間層を形成する態様において、中間層は、タングステン(W)を主成分とするW相と、白金(Pt)と銅(Cu)を含むPt-Cu相とが混在したW-Pt-Cu合金を含む。これによって、W系部材とCu系部材とをより適切に接合できる。
また、上記W-Pt-Cu合金は、Pt-Cu相からなるマトリックス中に複数のW相が存在することによって構成されていることが好ましい。このように、W相とPt-Cu相とが混在した構造の中間層を形成することによって、W系部材とCu系部材とをより適切に接合できる。
また、ここに開示される技術の他の側面として、タングステン系部材と銅系部材とを接合する接合方法が提供される。かかる接合方法は、タングステン系部材の表面に、白金(Pt)とタングステン(W)とを含むPt-W合金を形成し、Pt-W合金にCu源を接触させた状態で、Pt-W合金の白金(Pt)をCu源に移動させることによって、タングステン系部材の表面に、当該タングステン系部材の対向層に侵入する突起を形成する。このようにW系部材の表面に突起を形成することによって、W系部材と対向層との界面においてアンカー効果が発揮されるため、W系部材とCu系部材とが強固に接合された金属接合体を製造できる。
ここに開示される接合方法の好適な一態様では、タングステン系部材の表面に銅系部材を接合し、突起を銅系部材に侵入させる。ここに開示される接合方法によると、W部材の突起をCu系部材に直接侵入させることができる。これによって、アンカー効果によってW部材とCu部材とが直接接合された金属接合体を製造できる。
ここに開示される接合方法の好適な一態様では、タングステン系部材と銅系部材との間に、白金(Pt)と銅(Cu)を含む中間層を形成し、突起を中間層に侵入させる。ここに開示される接合方法によると、W部材とCu系部材との間にした中間層に、W部材の突起を侵入させることもできる。これによって、アンカー効果によってW部材と中間層とを強固に接合し、当該中間層を介してW部材とCu系部材を強固に接合できる。
ここに開示される接合方法の好適な一態様では、タングステン系部材と銅系部材との間に、白金(Pt)を含有するPt源を介在させた状態で熱処理を実施する。また、ここに開示される接合方法の他の好適な態様では、タングステン系部材と銅系部材との間に、白金(Pt)を含有するPt源を介在させた状態で加圧処理を実施する。これらの処理を行うことによって、Pt-W合金の形成と、Pt-W合金からCu系部材へのPtの移動を生じさせることができるため、W系部材とCu系部材との接合をより容易に実施できる。
第1の実施形態に係る金属接合体を模式的に示す断面図である。 第1の実施形態に係る金属接合体の製造方法におけるPt-W生成工程の一例を模式的に示す断面図である。 第1の実施形態に係る金属接合体の製造方法におけるPt-Cu生成工程の一例を模式的に示す断面図である。 第2の実施形態に係る金属接合体を模式的に示す断面図である。 第3の実施形態に係る金属接合体を模式的に示す断面図である。 (a)は実施例1の断面SEM像(250倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例1の断面SEM像(1000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例1の断面SEM像(3000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例1の断面SEM像(10000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例1の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 実施例1をFIB加工した際のSEM画像であり、(a)はCu系部材とW系部材との境界を示す画像であり、(b)および(c)は境界部分をさらに拡大した画像である。 実施例1のHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 図12に示すHAADF-STEM画像のW-Pt-Cu領域を拡大して示す図である。 図13中の領域A(W相)におけるEDXスペクトルである。 図13中の領域B(Pt-Cu相)におけるEDXスペクトルである。 実施例1におけるW系部材の突起の寸法を測定する断面SEM像である。 (a)は実施例2の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例2のPt-Cu領域における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例2のPt-W領域における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例2のW-Pt-Cu領域における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例2のW系部材における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 図17(a)中の線分X1上におけるW、Pt、Cuの濃度分布を示すグラフである。なお、図中の(a)はPtの分析結果を示し、(b)はWの分析結果を示し、(c)はCuの分析結果を示す。 実施例2の反射電子像(1000倍)を示す図である。 (a)は実施例2の反射電子像(5000倍)であり、(b)は(a)中の領域αの拡大図(20000倍)であり、(c)は(a)中の領域βの拡大図(20000倍)である。 (a)は実施例2の領域αにおける断面SEM像(20000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたCu,Pt,Wの元素マップである。 (a)は実施例2の領域βにおける断面SEM像(20000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたCu,Pt,Wの元素マップである。 実施例2のHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 図27中の線分X2上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフである。 実施例2のW系部材と、W-Pt-Cu領域のW相と、W-Pt-Cu領域のPt-Cu相との界面におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 図29中の線分X3上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフである。 図29中の線分X3上におけるOとFeの濃度分布を示すグラフである。 (a)は図27(a)中の領域αにおける電子線回折の結果を示す画像であり、(b)は領域βにおける電子線回折の結果を示す画像であり、(c)は領域γにおける電子線回折の結果を示す画像であり、(d)は領域δにおける電子線回折の結果を示す画像である。 実施例2のW系部材におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 実施例2のPt-W領域におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 実施例2のPt-Cu領域におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。 図33中のPt-Cu相におけるEDXスペクトルである。 図29中のPt-Cu相におけるEDXスペクトルである。 図34中のPt-Cu相におけるEDXスペクトルである。 図35中のPt-Cu相におけるEDXスペクトルである。 実施例2におけるW系部材の突起の寸法を測定する断面SEM像である。 (a)は実施例3の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例3の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 実施例3におけるW系部材の突起の寸法を測定する断面SEM像である。 (a)は実施例4の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例4のPt-W領域の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例4のW-Pt-Cu領域の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたPt,Cu,Wの元素マップである。 (a)は実施例4のW系部材の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例4のW系部材とW-Pt-Cu領域との界面における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 実施例4におけるW系部材の突起の寸法を測定する断面SEM像である。 (a)は実施例5のCu未塗布部における断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例5のCu未塗布部における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例5のCu塗布部における断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例5のCu塗布部に形成されたW-Pt-Cu領域の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例5のCu塗布部に形成されたW-Pt-Cu領域の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例5のCu塗布部に形成された中間層(W-Pt-Cu領域)とW板との境界における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 実施例5におけるW系部材の突起の寸法を測定する断面SEM像である。 (a)は実施例6の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(e)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Pt、Auの元素マップである。 (a)は実施例6の中間層(W-Pt-Cu領域)とW板との境界における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(e)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Pt、Auの元素マップである。 実施例6におけるW系部材の突起の寸法を測定する断面SEM像である。 (a)は実施例7の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例7のPt-Cu領域の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例7の第1W-Pt-Cu領域の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例7のPt-W層の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 (a)は実施例7の中間層(第2W-Pt-Cu領域)とW系部材との境界における断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたW,Cu,Ptの元素マップである。 図60中の線分X4上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフである。 実施例7におけるW系部材の突起の寸法を測定する断面SEM像である。 (a)は比較例1の断面SEM像(250倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)は比較例1の断面SEM像(1000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)は比較例1の断面SEM像(5000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)は比較例1の断面SEM像(50000倍)であり、(b)~(d)はそれぞれEDX分析に基づいたO,Cu,Wの元素マップである。 (a)は比較例2の断面SEM像(5000倍)であり、(c)はEDX分析に基づいたWの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。 比較例3の断面SEM像(5000倍)である。 比較例3の断面SEM像(50000倍)である。
以下、ここに開示される技術の一実施形態について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。なお、本明細書において、「A~B(A、Bは数値)」と記載した場合、「A以上B以下」を意味するものとする。
<第1の実施形態>
以下、ここに開示される金属接合体の第1の実施形態について説明する。
1.金属接合体
図1は、第1の実施形態に係る金属接合体を模式的に示す断面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る金属接合体100は、タングステン系部材(W系部材)10と、中間層20と、銅系部材(Cu系部材)30とを備えている。以下、各々の構成について説明する。
(1)W系部材
W系部材10は、タングステン(W)を含む部材である。W系部材10は、W元素を含む固形の部材であれば、特に限定されない。すなわち、W系部材10は、タングステンのみからなる構成に限定されず、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステン、銅-タングステン合金、銀-タングステン合金などを含んでいてもよい。また、このW系部材10は、タングステン材料と他の金属材料とが複合した材料(タングステン複合材料)であってもよい。ここで、タングステン複合材料に含まれ得る金属材料としては、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、鉄(Fe)、金(Au)、トリウム(Th)等の各種金属材料や、トリア(ThO)、イットリア等の高融点セラミックなどが挙げられる。また、説明の便宜上、図1では板状のW系部材10を記載しているが、W系部材の形状は特に限定されない。例えば、W系部材は、筒状、柱状などの一般的な金属部材が取り得る形状を特に制限なく採用できる。
ここに開示される金属接合体では、W系部材の表面に、当該W系部材の対向層に侵入する突起が形成されている。図1に示すように、第1の実施形態に係る金属接合体100では、W系部材10と対向する対向層として中間層20が形成されている。換言すると、本実施形態では、W系部材10と銅系部材30との間に中間層20が形成されており、W系部材10の突起12が中間層20に侵入している。これによって、W系部材10と中間層20との界面においてアンカー効果が発揮されるため、中間層20とW系部材10とを強固に接合できる。
このW系部材10の突起12は、Wを主成分として構成されている。なお、本明細書において「タングステンを主成分とする」とは、タングステン以外の元素が意図的に含まれていないことを指す。したがって、突起12は、原料や製造工程等に由来する不可避的不純物(W以外の金属元素)を副成分として含んでいてもよい。例えば、突起12を構成する金属元素の総数を100atm%としたときに、当該突起12におけるW原子の原子数が75atm%以上であれば、「Wを主成分とした突起が形成されている」ということができる。なお、突起12におけるW原子の原子数が増加するにつれて、W系部材10と突起12との接合性が向上してアンカー効果が生じやすくなる傾向がある。かかる観点から、突起12におけるW原子の原子数は、77.5atm%以上が好ましく、80atm%以上がより好ましく、82.5atm%以上が特に好ましい。なお、突起12におけるW原子の原子数の上限は、特に限定されず、99.5atm%以下であってもよく、97.5atm%以下であってもよく、95atm%以下であってもよく、92.5atm%以下であってもよく、90atm%以下であってもよい。なお、本明細書における「原子数」は、金属接合体の断面SEM画像に対してエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を実施して得られた元素分析に基づいた数値である。なお、突起12に含まれ得る不可避的不純物としては、銅(Cu)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、金(Au)、トリウム(Th)などが挙げられる。また、突起12におけるタングステンは、金属単体の状態で存在していてもよいし、化合物(酸化物等)や、他の金属元素との合金の状態で存在していてもよい。
また、突起12は、一定以上の幅を有していることが好ましい。これによって、突起12の破損による接合強度の低下を抑制できる。具体的には、突起12の平均幅aは、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましく、0.07μm以上が特に好ましい。一方で、微細な突起12がW系部材10の表面に多く形成されていると、W系部材10と対向層との界面の全域において好適なアンカー効果を生じさせることができる。かかる観点から、突起12の平均幅aは、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.4μm以下がさらに好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。なお、本明細書における「突起の平均幅a」は、次の手順に従って測定された寸法である。まず、測定対象(金属接合体)の断面(イオンミリング面)のSEM写真を取得し、当該断面SEM写真で確認された突起内の任意の位置に測定点を設定する。そして、この測定点を通過する突起の最少寸法を測定し、これを「突起の幅」とみなす。そして、上述の手順に従って、50個の突起の幅(突起の最少寸法)を測定し、これらの測定値の平均を「突起の平均幅a」とみなす。
また、上記突起12の平均長さbは、0.05μm以上が好ましく、0.06μm以上がより好ましく、0.08μm以上がさらに好ましく、0.1μm以上が特に好ましい。これによって、対向層の深い位置まで突起12が侵入するため、アンカー効果をより好適に発揮することができる。また、アンカー効果を好適に発揮させるという観点では、突起12の平均長さbの上限は、特に限定されない。例えば、突起12の平均長さbは、10μm以下でもよく、5μm以下でもよく、2μm以下でもよく、1.5μm以下でもよい。なお、本明細書における「突起の長さ」は、突起の根本(W系部材との境界)から、対向層に侵入した突起の最深部までの直線距離である。なお、「突起の平均長さ」は、上記「突起の幅」と同様に、測定対象(金属接合体)の断面SEM写真で確認された50個の突起の長さの平均値である。
また、突起12は、突起の平均幅aに対する突起の平均長さbの比率(平均アスペクト比b/a)が所定の範囲を満たしていることが好ましい。これによって、突起12の強度を十分に維持した上で、対向層の深い位置まで突起12を侵入させて好適なアンカー効果を生じさせることができるため、W系部材10と対向層とを接合強度をさらに改善できる。具体的には、突起12の平均アスペクト比b/aは、1以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、3以上が特に好ましい。一方、突起12の平均アスペクト比b/aは、20以下が好ましく、17以下がより好ましく、15以下がさらに好ましく、13以下が特に好ましい。なお、W系部材10と対向層とを特に好適に接合するという観点から、W系部材10の突起12は、平均幅aと平均アスペクト比b/aの両方が所定の範囲に調節されていることが好ましい。例えば、突起12は、平均幅aが0.01μm~1μm(より好適には0.05μm~0.5μm、さらに好適には0.05μm~0.3μm)であり、かつ、上記平均アスペクト比b/aが1以上(より好適には2以上、さらに好適には3以上)であることが好ましい。
また、図1に示すように、突起12は、W系部材10の表面から対向層(中間層20)に向かうに従って分岐する樹枝状の突起であることが好ましい。このような樹枝状の突起12が対向層の内部に侵入することによって、より好適なアンカー効果を生じさせることができる。なお、この樹枝状の突起12の平均分岐数は、0.1個以上が好ましく、0.5個以上が好ましく、1個以上が好ましく、1.5個以上が好ましい。これによって、さらに好適なアンカー効果を生じさせることができる。また、アンカー効果の向上という観点では、突起12の平均分岐数の上限は、特に限定されない。すなわち、突起12の平均分岐数は、10個以下でもよく、7.5個以下でもよく、5個以下でもよく、3個以下でもよい。なお、本明細書における「突起の平均分岐数」は、金属接合体の断面SEM観察にて確認された50個の突起の分岐数の平均値である。
また、金属接合体100の断面SEM観察におけるW部材10と対向層との界面長さ(μm)に対する突起12の形成数(以下「突起の形成密度」という)は、0.1個/μm以上が好ましく、0.2個/μm以上がより好ましく、0.3個/μm以上がさらに好ましく、0.5個/μm以上が特に好ましい。このように、W部材10の表面に多数の突起12を形成することによって、さらに好適なアンカー効果を発揮できる。一方、突起12の形成密度の上限は、特に限定されず、10個/μm以下でもよく、5個/μm以下でもよく、3個/μm以下でもよく、2個/μm以下でもよい。なお、上記「突起の形成密度」は、50個の測定領域において測定した突起の形成密度の平均値である。
(2)中間層
本実施形態に係る金属接合体100では、W系部材10とCu系部材30との間に、Pt元素とCu元素を含む中間層20が形成されている。この中間層20は、W系部材10とCu系部材30とを接合する接合材として機能する。具体的には、中間層20は、Cu系部材30の主成分であるCu元素を含んでいるため、当該Cu系部材30と好適に接合される。そして、上述した通り、本実施形態に係る金属接合体100では、W系部材10の突起12が中間層20の内部に侵入しているため、アンカー効果によってW系部材10と中間層20とが強固に接合される。このため、本実施形態によると、中間層20を介してW系部材10とCu系部材30とを強固に接合できる。また、本実施形態に係る金属接合体100では、W系部材10とCu系部材30との熱膨張率の差を中間層20において緩和できるため、W系部材10とCu系部材30との接合強度の安定化にも貢献できる。
なお、中間層20は、PtとCuを含んでいればよく、具体的な構造や他の金属元素の存在などは特に限定されない。例えば、本実施形態における中間層20は、図1に示すように、Wを主成分とするW相22と、PtとCuを含むPt-Cu相24とが混在した三元二相のW-Pt-Cu合金を含んでいる。換言すると、図1に示す中間層20では、金属組織の全体でW相22とPt-Cu相24とが混ざり合った状態で存在している。具体的には、本実施形態における中間層20では、Pt-Cu相24からなるマトリックスが形成されており、当該マトリックス中に複数のW相22が存在している。この種の三元二相のW-Pt-Cu合金は、W相22とPt-Cu相24との界面が安定しているため、W系部材10に対して好適な接合性を発揮できる。さらに、三元二相のW-Pt-Cu合金は、Cuを含むPt-Cu相24を有しているため、Cu系部材30に対しても好適な接合性を発揮できる。すなわち、三元二相のW-Pt-Cu合金を含む中間層20を形成することによって、中間層20を介したW系部材10とCu系部材30との接合をより好適に実施できる。なお、三元二相のW-Pt-Cu合金の構造の一例として、長尺な島状のW相が厚み方向に延びるように複数点在し、当該複数のW相の間を充填するようにPt-Cu相が形成された構造が挙げられる(例えば、図9、図46等参照)。但し、W相の形状は、上述した長尺な島状に限定されず、略球形(例えば、図57参照)であってもよい。
なお、中間層20の主要な相であるPt-Cu相24は、PtとCuを含んでいればよい。すなわち、Pt-Cu相24は、PtやCu以外の金属元素を含むことを排除するものではない。PtやCu以外の金属元素としては、W、Mo、Fe、Pd、Ir、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thなどが挙げられる。さらに、Pt-Cu相24は、PtとCuが主成分である必要もなく、PtやCu以外の金属元素が主成分であってもよい。例えば、上述の金属元素の中でも、Cuとの間で合金を生成しやすい金属元素(例えば、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thなど)は、Pt-Cu相24の主成分になり得る。具体的には、Pt-Cu相24における金属原子の総数を100atm%としたときのPt原子とCu原子の合計原子数は、20atm%以上であってもよく、30atm%以上であってもよく、40atm%以上であってもよい。なお、Pt-Cu相24におけるPt原子とCu原子の合計原子数は、50atm%以上が好ましく、65atm%以上がより好ましく、75atm%以上がさらに好ましく、85atm%以上が特に好ましい。一方、Pt-Cu相24におけるPt原子とCu原子の合計原子数の上限は、特に限定されず、99.5atm%以下であってもよく、99atm%以下であってもよく、97.5atm%以下であってもよく、95atm%以下であってもよい。
Pt-Cu相24におけるPtとCuの各々の原子数についても特に限定されない。例えば、Pt-Cu相24におけるPtの原子数は、0.1atm%以上であってもよく、0.5atm%以上であってもよく、1atm%以上であってもよい。一方、Pt原子の原子数の上限は、25atm%以下であってもよく、22.5atm%以下であってもよく、20atm%以下であってもよく、17.5atm%以下であってもよい。また、Pt-Cu相24におけるCuの原子数は、15atm%以上であってもよく、20atm%以上であってもよく、30atm%以上であってもよく、40atm%以上であってもよい。なお、中間層20とCu系部材30との接合性を考慮すると、Cu原子の原子数は、50atm%以上が好ましく、65atm%以上がより好ましく、75atm%以上がさらに好ましく、80atm%以上が特に好ましい。一方、Pt-Cu相24におけるCu原子の原子数の上限は、85atm%以下であってもよく、82.5atm%以下であってもよく、80atm%以下であってもよい。また、Pt-Cu相24におけるPtとCuとの合計原子数(Pt+Cu)に対するPtの原子数の割合(Pt/(Pt+Cu))も特に限定されない。例えば、上記Ptの原子数の割合(Pt/(Pt+Cu))は、80atm%以下でもよく、60atm%以下でもよく、40atm%以下でもよく、34atm%以下でもよい。一方、上記Ptの原子数の割合(Pt/(Pt+Cu))は、0.5atm%以上でもよく、1atm%以上でもよく、3atm%以上でもよい。
また、上述した通り、Pt-Cu相24は、PtやCu以外の金属元素(W、Mo、Fe、Pd、Ir、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thなど)を含んでいてもよい。これらのPtやCu以外の金属元素の中でも、Au、Co、Ni、Zn、Al、Sn、Pb、Mn、Ag、Thなどは、Cuとの間で合金(例えば固溶体)や共晶組成を生成してPt-Cu相24の主成分になり得る。ここで、中間層20に含まれるPtやCu以外の金属元素は、Cu単体(融点:1084℃)よりも低融点のCu合金(又は共晶組成)を形成する金属元素であると好ましい。これによって、中間層20を介したW系部材10とCu系部材30との接合をさらに好適に実現できる。具体的には、W系部材10とCu系部材30とを加熱接合すると、Cu系部材30からW系部材10の方向にCu元素の移動(拡散)が生じるため、中間層20やCu系部材30にカーケンダルボイドと呼ばれる空孔が形成され、中間層20とCu系部材30との接合性が低下する可能性がある。これに対して、低融点のCu合金や共晶組成が中間層20(例えば、Pt-Cu相24)含まれていると、当該低融点のCu合金(又は共晶組成)が焼成中に液相となってカーケンダルボイドを塞ぐため接合性の低下を抑制できる。なお、このような低融点の銅合金や共晶組成の一例として、AuとCuとの合金(Au-Cu合金)、BaとCuとの合金(Ba-Cu合金)、AgとCuとの共晶組成などが挙げられる。
一方、W相22は、Wを主成分とする相であり、Pt-Cu相24の内部に存在している。詳しくは後述するが、このW相22は、W系部材10に突起12を形成する過程で中間層20のPt-Cu相24内に生成される可能性がある。このW相22は、上記W系部材10の突起12と同様に、タングステンを主成分としている。なお、W相22におけるW原子の原子数は、77.5atm%以上が好ましく、80atm%以上がより好ましく、82.5atm%以上が特に好ましい。これによって、W系部材10と中間層20をさらに好適に接合できる。なお、W相22におけるW原子の原子数の上限は、特に限定されず、99.5atm%以下であってもよく、97.5atm%以下であってもよく、95atm%以下であってもよく、92.5atm%以下であってもよく、90atm%以下であってもよい。また、上述した突起12と同様に、W相22も、材料や製造工程に由来する不可避的不純物を含有していてもよい。このW相22の不可避的不純物としては、銅(Cu)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、金(Au)、トリウム(Th)などが挙げられる。また、W相22におけるタングステンは、金属単体の状態で存在していてもよいし、化合物(酸化物等)や、他の金属元素との合金の状態で存在していてもよい。
(3)Cu系部材
Cu系部材30は、銅(Cu)を含む部材である。このCu系部材30は、Cu元素を含有していれば特に限定されず、Cu元素を含有する種々の金属部材を特に制限なく採用できる。かかるCu系部材30の材料の一例として、銅単体、Pt-Cu合金などが挙げられる。また、Cu系部材30の全域におけるCu元素の分布は、均一でなくてもよい。詳しくは後述するが、Cu系部材30は、W系部材10に近づくにつれてPt元素の存在量が増加し、Cu元素の存在量が減少するようなPt-Cu合金(典型的にはPtとCuとの固溶体)で構成されていてもよい。また、Cu系部材30の材料の他の例として、Ni、Zn、Sn、Mn、Fe、Al、Beの何れか一つを含むCu合金(例えば、Cu-Ni合金、Cu-Zn合金、Cu-Sn-P合金)など挙げられる。また、上記W系部材10と同様に、図1では、説明の便宜上、板状のCu系部材30を記載している。しかし、Cu系部材の形状は、ここに開示される技術を限定する要素ではない。すなわち、Cu系部材は、筒状、柱状などの一般的な金属部材が取り得る形状を特に制限なく採用できる。
2.金属接合体の製造方法
次に、本実施形態に係る金属接合体100を製造する方法の一例について説明する。本実施形態に係る金属接合体100は、例えば、Pt-W生成工程とPt-Cu生成工程を備えた製造方法によって製造できる。以下、各工程について図2~図3を参照しながら説明する。図2は、第1の実施形態に係る金属接合体の製造方法におけるPt-W生成工程の一例を模式的に示す断面図である。図3は、第1の実施形態に係る金属接合体の製造方法におけるPt-Cu生成工程の一例を模式的に示す断面図である。
(a)Pt-W生成工程
本工程では、W系部材10の表面に、白金(Pt)とタングステン(W)とを含むPt-W合金の層(Pt-W層25)を形成する。本実施形態では、白金(Pt)を含むPt源と、W系部材10とを接触させた状態で焼成処理を行う。これによって、PtとWを含む合金を有するPt-W層25がW系部材10の表面に生成される(図2参照)。なお、Pt-W層25は、PtとWを含んでいれば特に限定されない。例えば、Pt-W層25は、PtとWとを所定の整数比で含む金属間化合物(例えば、PtW)を含んでいることが好ましい。
例えば、焼成処理でPt-W層25を形成する場合の焼成温度は、750℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、850℃以上がさらに好ましく、900℃以上が特に好ましい。これによって、Pt源とW系部材10とを十分に反応させてPt-W層25を適切に形成できる。一方、焼成温度の上限は、1250℃以下が好ましく、1200℃以下がより好ましく、1150℃以下がさらに好ましく、1100℃以下が特に好ましい。また、焼成時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。このように一定以上の焼成時間を確保することによって、Pt源とW系部材10とが反応しやすくなる傾向がある。一方、製造効率の観点から、焼成時間の上限は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下が特に好ましい。なお、本明細書における「焼成温度」は焼成処理における最高温度を指し、「焼成時間」は当該最高温度を維持する時間を指す。また、焼成処理中の雰囲気は、非酸化雰囲気(中性雰囲気、還元雰囲気)に設定することが好ましい。還元ガスの一例として、水素(H)ガス、炭化水素(CH、Cなど)ガスなどが挙げられる。また、中性ガスの一例として、窒素(N)ガスなどが挙げられる。また、これらの還元ガスと中性ガスとを混合したものを使用することもできる。例えば、水素(H)ガスを1%~5%(例えば3%)の濃度で窒素(N)ガスと混合した混合ガスなどを用いることができる。
なお、本工程で使用されるPt源は、Pt元素を含む材料であればよく、詳細な成分や形態は特に限定されない。かかるPt源の一例として、Pt粒子やPt箔を所定の溶剤(樹脂を含んでもよい)に分散させたPtペーストが挙げられる。このようなPtペーストをW系部材10の表面に塗布し、Pt元素とW元素を反応させることによってPt-W層25を形成できる。なお、Ptペーストは、Pt元素を含んでいる点を除いて特に限定されず、ここに開示される技術の効果を阻害しない限り、従来公知のPtペーストを使用できる。また、ペースト中のPt粒子の平均粒子径は、0.01μm~10μmが好ましく、0.05μm~5μmがより好ましく、0.1μm~1.0μmが特に好ましく、例えば0.5μmである。なお、本明細書における「平均粒子径」は、SEM観察に基づいて測定した複数(例えば100個)の粒子の粒子径の平均値である。また、Ptペーストの総体積を100vol%としたときのPtの含有量(体積比)は、10vol%以上が好ましく、15vol%以上がより好ましく、20vol%以上がさらに好ましく、25vol%以上が特に好ましい。このように多量のPtを供給することによって、Pt-W合金の生成量が増大するため、後述のPt-Cu生成工程において平均アスペクト比(b/a)が大きく、優れたアンカー効果を発揮する突起12を形成することができる。一方、Ptペーストの粘度上昇を抑制して作業性を向上させるという観点から、Ptの含有量(体積比)の上限は、50vol%以下が好ましく、40vol%以下がより好ましく、35vol%以下がさらに好ましく、30vol%以下が特に好ましい。なお、Ptペーストの総重量を100wt%としたときのPtの含有量(重量比)は、50wt%以上が好ましく、60wt%以上がより好ましく、70wt%以上がさらに好ましく、80wt%以上が特に好ましい。一方、Ptの含有量(重量比)の上限は、90wt%以下が好ましく、85wt%以下がより好ましく、80wt%以下がさらに好ましく、75wt%以下が特に好ましい。なお、Ptを除くPtペーストの成分(溶剤、バインダ、分散剤など)は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて、従来公知の成分を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を特徴付けるものではないため詳細な説明を省略する。
また、十分な量のPtを供給することによって平均アスペクト比が大きな突起を形成するという観点から、本工程におけるPtペーストの塗布厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、40μm以上が特に好ましい。一方、Ptペーストの塗布厚みの上限は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、70μm以下がさらに好ましく、60μm以下が特に好ましい。これによって、未反応のPtがPt-W層25の表面に生じ、後述のPt-Cu生成工程におけるPt-W合金とCu源との反応を阻害することを防止できる。なお、Ptペーストの塗布厚みは、ペースト塗布時に使用するメタルマスクの厚みを調節することによって容易に制御できる。
なお、焼成処理によってPt-W層25を形成する場合には、焼成処理中の急激な体積変化に伴う破損(クラック等)を防止するために、焼成処理の前にPtペーストを乾燥させる乾燥処理を実施することが好ましい。かかる乾燥処理における加熱温度は、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。一方、上記クラックの防止という観点から、乾燥処理における加熱温度の上限は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。また、乾燥時間は10分以上60分以下(例えば30分程度)が好ましい。
また、バインダ等の有機成分がPtペーストに含まれている場合には、有機成分の除去を目的とした予備加熱処理(脱バインダ処理)を焼成処理の前に実施することが好ましい。なお、この脱バインダ処理によってW系部材10が酸化すると、酸化タングステンによって、Pt-W層25の生成が阻害される可能性がある。このため、Ptペーストに添加する有機成分(バインダ等)は、非酸化雰囲気で充分に加熱分解できる樹脂材料(例えば、アクリル樹脂など)が好ましい。なお、有機成分を確実に除去するという観点から、脱バインダ処理における加熱温度は、145℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、155℃以上がさらに好ましく、160℃以上が特に好ましい。一方、脱バインダ処理中にPt-W合金の生成が進行することを防止するため、脱バインダ処理における加熱温度の上限は、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、350℃以下が特に好ましい。また、脱バインダ処理における加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。これによって、有機成分を確実に除去できる。一方、製造効率の観点から、脱バインダ処理における加熱時間の上限は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましく、2時間以下が特に好ましい。
(b)Pt-Cu生成工程
本工程では、Cu源とPt-W層25とを接触させた状態で、Pt-W合金の白金(Pt)をCu源に移動させる。図3に示すように、本実施形態では、Cu源としてCu系部材30を使用し、Cu系部材30とPt-W層25とを接触させた状態で焼成処理を実施している。これによって、Pt-W層25からCu系部材30へのPtの移動(典型的には拡散)が進行する。そして、Ptが移動した後のPt-W層25には、Cu系部材30からCuが供給される。そして、焼成中のPt-W層25では、Cu系部材30から供給されたCuとPt-W合金のPtとが結合し、Pt-Cu相24を有する中間層20(図1参照)が生成される。そして、上記Ptの移動に伴うPt-W合金からの脱Ptが進むことによって、Wを主成分とした領域が中間層20のPt-Cu相24の内部に形成される。このWを主成分とした領域のうち、W系部材10と接触するように形成されたものが突起12となり、Pt-Cu相24のマトリクス内に閉じ込められたものがW相22となる。これによって、三元二相のW-Pt-Cu合金を有する中間層20と、当該中間層20のPt-Cu相24内に侵入する突起12とが形成される。
なお、焼成処理で中間層20と突起12を形成する場合の焼成温度(焼成処理における最高温度)は、750℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、850℃以上がさらに好ましく、900℃以上が特に好ましい。これによって、Ptの拡散をより好適に促進してW系部材10の突起12を効率よく形成できる。一方、最高焼成温度の上限は、1500℃以下が好ましく、1400℃以下がより好ましく、1300℃以下がさらに好ましく、1200℃以下が特に好ましい。また、焼成時間は、1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。これによって、突起12をより確実に形成できる。一方、製造効率の観点から、焼成時間の上限は、3時間以下が好ましく、2.5時間以下がより好ましい。
また、焼成処理を実施する際の雰囲気は、非酸化雰囲気(例えば、中性雰囲気、不活性雰囲気、還元雰囲気)に設定することが好ましい。還元ガスの一例として、水素(H)ガス、炭化水素(CH、Cなど)ガスなどが挙げられる。また、不活性ガスの一例として、アルゴン(Ar)ガスなどが挙げられ、中性ガスの一例として、窒素(N)ガス、アンモニアなどが挙げられる。また、還元ガスと不活性ガス(若しくは中性ガス)とを混合したものを使用することもできる。例えば、水素ガスを1%~5%(例えば3%)の濃度で窒素ガスと混合した混合ガスなどを用いることができる。
本工程で使用するCu源は、Cuを含む材料であればよく、その成分は特に限定されない。例えば、Cu源は、Cu以外の金属元素を含んでいてもよい。かかるCu以外の金属元素の一例として、Pt元素が挙げられる。また、PtやCu以外の金属元素をCu源に混合することによって、製造後の中間層20(例えば、Pt-Cu相24)に、Cuと他の金属元素との合金を含ませることができる。上述した通り、ここで、銅合金を形成し得る金属元素としては、金(Au)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)シリカ(Si)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ベリリウム(Be)などが挙げられる。
また、本実施形態では、Pt-W層25からCu系部材30にPt元素を移動させるための処理として焼成処理を採用している。この焼成処理は、低強度の精密部品を製造する際に特に好適に使用できる。例えば、焼成処理を採用すると、接合時の圧力を5kPa以下に低減させても、W系部材10とCu系部材30を好適に接合できるため、圧力による部品破損を好適に防止できる。なお、圧力による部品破損をより好適に防止するという観点から、焼成処理の際に加える圧力は、2.5kPa以下がより好ましく、2kPa以下がさらに好ましく、1kPa以下が特に好ましい。一方、中間層20とCu系部材30との界面における隙間の発生を抑制するという観点から、W系部材10とCu系部材30とを接合する際の圧力は、0.1kPa以上が好ましく、0.25kPa以上がより好ましく、0.5kPa以上が特に好ましい。
<他の製造方法>
なお、ここに開示される金属接合体の製造方法(W系部材とCu系部材との接合方法)は、上述の方法に限定されず、種々の方法を適宜採用できる。
例えば、上述した製造方法では、Pt-W生成工程と、Pt-Cu生成工程という2種類の焼成処理を個別に実施している。しかしながら、W系部材とCu系部材との間にPt源(例えばPtペースト)を挟み込んだ状態で一度に焼成処理を行った場合でも、ここに開示される金属接合体を製造できることが実験において確認されている。具体的には、W系部材とPtペーストとCu系部材とをまとめて焼成した場合、焼成初期においてW系部材とPtペーストとの境界にPt-W層が生成される。そして、焼成処理がさらに進むと、Pt-W層内のPtがCu系部材に向かって移動すると共に、Cu元素がPt-W層に供給される。この結果、Pt-W合金からの脱Ptが進み、Wを主成分とした突起がW系部材の表面に形成される。なお、ここに開示される金属接合体を確実に形成するという観点からは、上述のように、Pt-W生成工程とPt-Cu生成工程に分けて焼成処理を実施した方が好ましい。一方、製造効率や製造コストを考慮する場合には、W系部材とPtペーストとCu系部材とをまとめて焼成した方が好ましい。
また、上述した製造方法では、Pt-W層25とCu系部材30とを直接接触させている。しかしながら、ここに開示される技術は、かかる製造方法に限定されない。すなわち、Pt-W層とCu系部材との間に、中間金属材料(薄膜やペースト乾燥膜を含む)を介在させてもよい。中間金属材料を介してPt-W層とCu源とを接触させた状態で焼成処理を行っても、ここに開示される金属接合体を製造することができる。なお、かかる中間金属材料の一例として、Auを含む金属部材(例えばAuペーストの乾燥膜)や、Ptを含む金属部材(例えばPtペーストの乾燥膜)などが挙げられる。特に、Auを含む金属部材を使用すると、Au-Cu合金を含む中間層を形成できるため、カーケンダルボイドの発生による接合性の低下をより好適に抑制できる。
さらに、上述した製造方法では、Pt-W層25に銅系部材30を接触させた状態で、加熱処理(焼成処理)を実施することによって、Pt-W層25から銅系部材30へのPtの移動(拡散)を生じさせている。しかしながら、Pt-W合金からCuへのPtの移動は、反応障壁を超えることができれば進行するため、焼成処理以外の手段を採用した場合でも生じさせることができる。例えば、Pt-W層25に銅系部材30を接触させた状態で加圧処理を行うことによって、Pt-W層25から銅系部材30へのPtの移動を生じさせてもよい。このような拡散接合を採用した場合でも、上述した焼成処理と同等の反応が進行し、W系部材10の表面に突起12を形成できる。また、拡散接合を実施する場合には、W系部材とCu系部材との間にPt源(例えばPtペースト)を挟み込んだ状態で一度に加圧処理を行うことが好ましい。これによって、W系部材とCu系部材を効率よく接合することができる。かかる加圧処理によるPt-W層25から銅系部材30へのPtの移動(拡散)は、比較的に強度が高い部品の製造に特に好適である。
また、上述した製造方法では、固形のCu系部材30をPt-W層25に接触させて焼成処理を実施することによって、W系部材10の表面に突起12を形成している。しかしながら、ここに開示される技術におけるCu源は、固形のCu系部材に限定されない。例えば、ここに開示される製造方法におけるCu源の他の例として、所定の溶剤にCu粉末を分散させたCuペーストが挙げられる。このCuペーストをPt-W合金の表面に塗布して焼成処理を行うことによって、Pt-W合金からCu源(Cuペースト)へのPt元素の移動が生じ、W系部材の表面に突起を形成できる。加えて、この焼成処理においてCuペーストが焼結することによって、固形のCu系部材が形成される。このように、Cu源としてCuペーストを使用した場合でも、ここに開示される金属接合体を製造できる。
なお、Cu源としてCuペーストを使用する場合、当該ペースト中のCu粒子の平均粒子径は、0.01μm~10μmが好ましく、0.1μm~5μmがより好ましく、0.5μm~2μmが特に好ましく、例えば1μmである。また、Cuペーストの総体積を100vol%としたときのCu粒子の含有量(体積比)は、5vol%以上が好ましく、10vol%以上がより好ましく、15vol%以上がさらに好ましく、20vol%以上が特に好ましい。これによって、Cuの不足による突起12の小型化を防止すると共に、当該Cuペーストの焼結によってCu系部材を適切に形成できる。一方、銅ペーストの粘度上昇を抑制して作業性を向上させるという観点から、Cu粒子の含有量(体積比)の上限は、55vol%以下が好ましく、50vol%以下がより好ましく、45vol%以下がさらに好ましく、40vol%以下が特に好ましい。なお、Cuペーストの総重量を100wt%としたときのCu粒子の含有量(重量比)は、60wt%以上が好ましく、65wt%以上がより好ましく、70wt%以上がさらに好ましく、75wt%以上が特に好ましい。一方、Cu粒子の含有量(重量比)の上限は、95wt%以下が好ましく、90wt%以下がより好ましく、85wt%以下が特に好ましい。なお、Cu粒子を除くCuペーストの成分(溶剤、バインダ、分散剤など)は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて、従来公知の成分を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を特徴付けるものではないため詳細な説明を省略する。また、上述したように、PtやCu以外の金属元素を含む中間層20を形成する場合には、当該PtやCu以外の金属元素の粉体をCuペーストに添加することもできる。このときに添加するPtやCu以外の金属元素の粉体としては、Cu単体の融点よりも融点が低い銅合金を生成する金属元素の粉体であることが好ましい。これによって、カーケンダルボイドの形成による接合性の低下が生じることを抑制できる。
<第2の実施形態>
以上、ここに開示される技術の第1の実施形態について説明した。なお、ここに開示される技術は、以上の説明に限定されるものではなく、ここに開示される技術の効果を著しく阻害しない限りにおいて、種々の構成を適宜変更することができる。以下、ここに開示される技術の第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係る金属接合体を模式的に示す断面図である。
先ず、図1に示すように、第1の実施形態に係る金属接合体100の中間層20は、Pt-Cu相24とW相22を含む三元二相のW-Pt-Cu合金によって構成されている。しかしながら、中間層の構成は、ここに開示される技術を限定するものではない。具体的には、図4に示すように、第2の実施形態に係る金属接合体100Aでは、W相を有さず、Pt-Cu合金を主成分とする中間層20Aが形成されている。このような金属接合体100Aであっても、中間層20Aの内部に侵入する突起12がW系部材10の表面に形成されているため、中間層20AとW系部材10との界面に適切なアンカー効果が生じる。そして、このPt-Cu合金を含む中間層20Aは、Cu元素を含有しているため、Cu系部材30に対して好適な接合性を発揮できる。すなわち、この第2の実施形態に係る金属接合体100Aにおいても、W系部材10とCu系部材30を強固に接合できる。なお、本実施形態における突起12の好適な組成や寸法は、上述した第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
なお、W相を有さない中間層20Aは、上述したPt-W生成工程において、膜厚の薄いPt-W層を生成することによって実現できる。このような薄いPt-W層を生成すると、その後のPt-Cu生成工程において形成する「Wを主成分とした領域」の全てがW系部材と接触する。この結果、W相を有さない中間層20Aと、当該中間層20Aに侵入する突起12を有するW系部材10とを備えた金属接合体100Aを得ることができる。なお、このような、W相を有さない中間層20Aを形成する際には、Pt-W生成工程におけるPt-W層の膜厚を2000nm以下(好適には1000nm以下、より好適には500nm以下、さらに好適には200nm以下)とすることが好ましい。
<第3の実施形態>
次に、ここに開示される技術の第3の実施形態について説明する。図5は、第3の実施形態に係る金属接合体を模式的に示す断面図である。
先ず、図1及び図4に示すように、上述した第1~第2の実施形態では、W系部材10とCu系部材30との間に中間層20が形成されている。しかしながら、中間層の有無は、ここに開示される技術を限定するものではない。具体的には、図5に示すように、第3の実施形態に係る金属接合体100Bでは、W系部材10の表面にCu系部材30が直接接合されている。換言すると、第3の実施形態では、W系部材10と対向する対向層がCu系部材30となる。そして、本実施形態では、このCu系部材30にW系部材10の突起12が侵入している。なお、本実施形態における突起12の好適な組成や寸法は、上述した第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
なお、この金属接合体100Bは、上記第1及び第2の実施形態と同様に、W系部材の表面に形成したPt-W合金にCu源を接触させた状態で、Pt-W合金からCu源にPt元素を移動させることによって製造できる。具体的には、図3に示すPt-W合金(Pt-W層25)からCu源(銅系部材30)へのPt元素の移動を生じさせると、図1や図4に示すように、W系部材10とCu系部材30との間に中間層20が形成される。しかしながら、このPt元素の移動がさらに進行すると、Pt-W層25における全てのPt元素がCu系部材30に拡散するため中間層20が消失する。この場合、Pt-W合金25中のW元素によって形成された突起12がCu系部材30に侵入することが実験によって確認されている。これによって、図5に示すように、W系部材10の表面にCu系部材30が直接接合され、W系部材10の突起12がCu系部材30に侵入した金属接合体100Bが作製される。かかる構成の金属接合体100Bでは、突起12によって、W系部材10とCu系部材30との界面に好適なアンカー効果が発揮されるため、W系部材10とCu系部材30とを強固に直接接合することができる。
なお、第3の実施形態のように、W系部材10とCu系部材30とを直接接合する場合には、W系部材10の表面に形成するPt-W合金を薄くした上で、Pt-W合金からCu系部材へのPtの移動を促進するとよい。ここに開示される技術を限定することを意図するものではないが、W系部材10の表面に形成されるPt-W合金の厚みを1μm以下(好適には0.5μm以下、より好適には0.2μm以下、特に好適には0.1μm以下)とすることによって、全てのPt元素をCu系部材30に拡散させることが容易になり、W系部材10とCu系部材30との直接接合を実現しやすくなる。また、上述のような厚みのPt-W合金を形成する手段の一例として、W系部材10とCu系部材30との間に存在させるPt元素を少なくすることが挙げられる。例えば、W系部材10の表面に付与するPt源(例えばPtペースト)の量を、Pt厚みが1.5μm以下(好適には1μm以下、より好適には0.5μm以下、さらに好適には0.2μm以下)となるように調整することが好ましい。これによって、W系部材10とCu系部材30との間に存在するPt元素の総量を少なくし、厚みが薄いPt-W合金を形成することが容易になる。なお、上述のPt厚みは、当該Pt源の空隙やPt以外の材料を考慮しない厚みである。かかるPt厚みは、以下のように定義する。
Pt厚み=(付与したPt源中のPt重量)/(室温でのPt密度)/(Pt源付与面積)
ここで、室温でのPt密度=21.45g/cm
また、焼成処理を用いてW系部材10とCu系部材30を直接接合する場合の最高焼成温度は、750℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、850℃以上がさらに好ましく、900℃以上が特に好ましい。これによって、Cu系部材30へのPtの拡散を促進して中間層の形成を防止できる。一方、最高焼成温度の上限は、1200℃以下が好ましく、1100℃以下がより好ましく、1085℃(銅の融点)以下がさらに好ましく、1050℃以下が特に好ましい。また、このときの焼成時間は、0.1時間以上が好ましく、0.3時間以上がより好ましい。これによって、PtをCu系部材30に充分に拡散させることができる。一方、製造効率の観点から、本工程における焼成時間の上限は、5時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。上述した通り、ここでの「焼成温度」は焼成処理における最高温度を指し、「焼成時間」は当該最高温度を維持する時間を指す。
なお、第3の実施形態に係る金属接合体100Bでは、上述した通り、製造工程においてW系部材10とCu系部材30との間に存在していたPt元素がCu系部材30に拡散する。このため、第3の実施形態におけるCu系部材30は、Cu元素とPt元素を含むPt-Cu合金になり得る。なお、このCu系部材30の全域におけるCu元素とPt元素の分布は、均一でなくてもよい。典型的には、第3の実施形態におけるCu系部材30は、W系部材10に近づくにつれてPt元素の存在量が増加し、Cu元素の存在量が減少するようなPt-Cu合金で構成されていてもよい。
<他の技術への応用>
また、上述した製造方法は、白金(Pt)とタングステン(W)とを反応させてPt-W層を生成するPt-W生成工程と、当該Pt-W層中のPtを銅(Cu)に移動させるPt-Cu生成工程を実施することによって、W系部材Cu系部材とが強固に接合された金属接合体を製造する。ここに開示される技術に直接関係する知見ではないが、上述した金属接合体の製造方法は、タングステン(W)と銅(Cu)以外の金属材料の接合にも応用できる。具体的には、所定の金属Xと、接合対象の金属Yと、金属Xと金属Yの両方と合金化し得る金属Zを準備する。そして、金属Xと金属Zを合金化するX-Z合金生成工程を実施する。そして、このX-Z合金に金属Yを接触させ、X-Z合金から金属Yへの金属Zの移動(典型的には拡散)を生じさせるY-Z合金生成工程を実施する。これによって、金属Xを含む金属部材と、Y-Z合金を含む中間層とが接合された金属接合体を得ることができる。なお、ここでのX-Z合金は、金属間化合物であってもよい。金属間化合物とすることで固溶体と比較してX-Z合金の反応の制御が容易であるため、厚さや組成の制御がしやすい。そして、最初に生成するX-Z合金は、最終生成物であるY-Z合金よりも熱力学的に不安定であることが好ましい。これによって、相対的に不安定なX-Z合金から金属YへのZ成分の拡散を容易に生じさせることができる。この方法によれば、XとYとが合金化しない(典型的には熱力学的に安定な固溶体や金属間化合物を形成しない)金属であっても、接合過程における金属元素の移動(拡散)によって密着性の高い接合が得られる。また、接合反応後の接合界面は安定であるため、使用中にカーケンダルボイド等が発生しにくい。また、Y-Z合金は、金属間化合物ではないこと(典型的には固溶体であること)が好ましい。換言すると、YとZは、金属間化合物を生成しにくい組み合わせであることが好ましい。これによって、強度が低い金属間化合物の生成を抑制できる。かかる観点から、Y-Z合金は、全率固溶であるとより好ましい。なお、上述した実施形態に係る製造方法では、金属Xとしてタングステン(W)を選択し、金属Yとして銅(Cu)を選択し、金属Zとして白金(Pt)を選択している。しかし、かかる製造方法の他の例として、金属Xとしてタングステン(W)を選択し、金属Yとして白金(Pt)を選択し、金属Zとしてニッケル(Ni)を選択するような組み合わせ等が挙げられる。
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明するが、かかる試験例は、ここに開示される技術を限定することを意図したものではない。
1.実施例1
(1)サンプルの作製
まず、W系部材としてタングステン板(厚さ0.3mm、長さ7.5mm、幅7.5mm)を準備した。そして、Pt元素を含むPtペーストを準備し、当該PtペーストをW系部材の片面全面に塗布した。なお、本試験で使用したPtペーストは、21vol%のPt粉末(平均粒子径:0.5μm)と、バインダ(エチルセルロース系樹脂)と、分散材と、溶剤とを混錬したものである。なお、Ptペーストの溶剤には、2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol 1-Monoisobutyrateを使用した。そして、本試験では、120℃、30分間の乾燥処理を行ってPtペーストを乾燥させた後に、大気中で脱バインダ処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:200℃、加熱時間:3時間)を行った。次に、Cu源(Cu系部材)として、銅板(厚さ0.3mm、長さ20mm、幅20mm)を準備した。そして、上記W系部材のペースト塗布面とCu系部材とを面接触させ、W系部材の上に50gのアルミナブロックを載置することによって、W系部材とCu系部材との接触部分に0.89kPaの圧力を加えた。この状態で、昇温速度4℃/min、最高焼成温度を1000℃、焼成時間2時間の焼成処理を実施することによって、W系部材とCu系部材とが強固に接合された接合体サンプルを得た。なお、焼成時の雰囲気ガスには、3%の水素(H)を含むNガスを使用した。
(2)サンプルの解析
(a)SEM観察およびEDX分析
実施例1のサンプルを積層方向に沿って切断した後、イオンミリングを用いて切断面を研磨し、切断面の断面SEM画像を撮像した。また、撮像した断面SEM画像に対してEDX分析を実施し、タングステン(W)と、銅(Cu)と、白金(Pt)の各々の元素マッピング像を取得した。倍率250倍における解析結果を図6に示し、倍率1000倍における解析結果を図7に示し、倍率3000倍における解析結果を図8に示し、倍率10000倍における解析結果を図9に示し、倍率50000倍における解析結果を図10に示す。なお、図6~図10における(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。
まず、図6に示すように、低倍率250倍での観察では、W系部材とCu系部材との間に、Pt-Cu合金を主成分とした合金層(中間層)が形成されていることが確認された。かかる中間層の主成分であるPt-Cu合金は、通常、W系部材に対する接合性が低いにも関わらず、実施例1では、中間層とW系部材とが強固に接合されていた。そこで、より高倍率の観察を行った結果、実施例1では、W系部材の表面から樹枝状の突起が突出し、W系部材の対向層である中間層に突起が侵入していることが確認された(図8、図9、図16参照)。そして、各図の元素マップに示すように、この中間層の内部に侵入する突起の主要元素は、W元素であることが確認された。以上のことから、実施例1のW系部材の表面には、W元素を主成分とした突起が形成されており、当該突起が中間層(Pt-Cu相)に入り込むことによって、W系部材と中間層との界面でアンカー効果が生じていることが分かった。また、図8に示すように、実施例1では、中間層とW系部材との境界に、WとPtとCuとが混在する層(W-Pt-Cu領域)が形成されていることが分かった。そして、このW-Pt-Cu領域をさらに拡大したところ、図9および図10に示すように、Pt-Cu相マトリクス中にW相が混在したW-Pt-Cu合金が確認された。以上の解析結果から、W系部材とCu系部材との間には、三元二相のW-Pt-Cu合金を有する中間層が形成されていることが分かった。このW-Pt-Cu合金を有する中間層によって、W系部材とCu系部材との接合性がさらに向上していると予想される。
(b)結晶組織の観察
FIB-SEMを用いて実施例1のサンプルを薄片化してSEM/EBSD画像を取得した。結果を図11に示す。かかる図11に示すように、実施例1では、W系部材とCu系部材との間にPt-Cu合金が形成されており、そのPt-Cu合金とW系部材との境界にW-Pt-Cu合金が形成されていることが分かる。そして、W系部材におけるW-Pt-Cu合金に接した領域では、Wの結晶粒が他の領域よりも小さくなっていることが確認された。これは、W-Pt-Cu合金の生成のために、当該領域からWが供給されたためと推測される。
(c)元素マッピング
また、本試験では、FIB-SEMで薄片化した試験片のHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)画像(倍率50000倍)を取得した。HAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を図12に示す。また、図12のHAADF-STEM画像のW-Pt-Cu層を拡大した拡大図を図13に示す。また、図13中の領域A(中間層内のW相)のEDXスペクトルを図14に示す。そして、領域B(中間層内のP-Cu相)のEDXスペクトルを図15に示す。
まず、図12中のWの元素マップに示すように、実施例1のW系部材の表面には、中間層(W-Pt-Cu層)に侵入する突起が形成されていることが確認された。そして、図14及び図15に示すように、W-Pt-Cu層全体では、W元素、Cu元素、Pt元素、Mo元素、Fe元素、O元素が主に確認された。そして、図12及び図14に示すように、W相では、W元素、Mo元素、Fe元素、O元素が主に確認された。これらのうち、Mo元素、Fe元素は、W板に含まれる不純物に由来すると考えられる。また、Moに関してはサンプルフォルダに含まれるものを検出した可能性がある。一方、図12及び図15に示すように、Pt-Cu相では、Cu元素、Pt元素、O元素が主に確認された。なお、W相とPt-Cu相の両方で確認されたO元素は、測定環境で付着した酸素や試験片の表面酸化に由来すると考えられる。
そして、図14を解析した結果、中間層内のW相におけるWの原子数は84.57atm%であり、Cuの原子数は2.56atm%であり、Ptの原子数は0.06atm%であった。また、W相には、不純物であるモリブデン(Mo)が12.81atm%含まれていたが、これはサンプルフォルダに含まれるものを検出したと考えられる。一方、図15を解析した結果、中間層内のPt-Cu相におけるWの原子数は2.31atm%であり、Cuの原子数は78.13atm%であり、Ptの原子数は15.59atm%であった。また、Pt-Cu相には、不純物であるモリブデン(Mo)が3.97atm%含まれていた。このMoもサンプルフォルダに含まれるものを検出したと考えられる。
(d)突起の寸法測定
本解析では、まず、実施例1のサンプルにおけるW系部材と中間層(W-Pt-Cu層)との境界における断面SEM画像(倍率:500000倍)を撮像した(図16参照)。そして、当該断面SEM写真におけるW系部材の突起に2つの測定点を設定し、各々の測定点における突起の幅を測定した。図16に示すように、実施例1におけるW系部材の突起の幅は、0.16μm~0.26μmであった。また、ここでは、任意に選択した1つの突起の最深部と根本を結ぶ線分(直線距離)の寸法(突起の長さ)を測定した。図16に示すように、実施例1におけるW系部材の突起の長さは1.4μmであった。そして、測定した突起の幅と長さに基づいて突起のアスペクト比を算出したところ、実施例1の突起のアスペクト比は5.4~8.8であった。また、図16に示すように、実施例1では、2つ以上に分岐した樹枝状の突起が複数形成されていた。
2.実施例2
(1)サンプルの作製
実施例2では、PtペーストにおけるPt粉の含有量を10vol%に減らし、Ptペーストの塗布後の脱バインダ処理の条件を160℃,30分間に変更した点を除いて、実施例1と同じ条件でW系部材とCu系部材とを接合した接合体サンプルを作製した。
(2)サンプルの解析
(a)SEM観察およびEDX分析
上記実施例2のサンプルに対して、実施例1と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。実施例2の倍率5000倍の解析結果を図17に示し、Pt-Cu領域における倍率50000倍の解析結果を図18に示し、Pt-W層における倍率50000倍の解析結果を図19に示し、W-Pt-Cu領域における倍率50000倍の解析結果を図20に示し、W系部材における倍率50000倍の解析結果を図21に示す。なお、図17~図20中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。図17に示すように、実施例2においても、中間層(W-Pt-Cu領域)に侵入する突起がW系部材の表面に形成されていた。
また、実施例2については、図17(a)の上側(Pt-Cu合金側)から下側(W系部材側)に長さ20μmの線分X1を引き、当該ライン上におけるW、Pt、Cu各元素の濃度分布の変化を調べた。かかるライン分析の結果を図22に示す。この図22の横軸の0μmの位置は線分X1の上端に対応しており、20μmの位置は線分X1の下端に対応している。また、縦軸は各々の元素の特性X線強度を示している。そして、図22中の(a)はPtの分析結果を示し、(b)はWの分析結果を示し、(c)はCuの分析結果を示している。図22に示すように、Pt-Cu合金が存在する領域では、Pt元素とCu元素の存在が確認され、W元素は確認されなかった。そして、W-Pt-Cu合金が存在する領域では、W元素とPt元素とCu元素の各々が確認された。そして、W系部材が存在する領域(12μm~20μm)の殆どがW元素であった(図22(b))。
(c)反射電子像解析
また、実施例2では、FIBを用いてサンプルを薄片化し、上記図17とは異なる視野における反射電子像を取得して種々の解析を行った。図23は、実施例2の反射電子像(1000倍)である。また、図24(a)は実施例2の反射電子像(5000倍)であり、(b)は(a)中の領域αの拡大図(20000倍)であり、(c)は(a)中の領域βの拡大図(20000倍)である。この図24にも示されているように、実施例2では、W系部材とCu系部材との間の中間層に、W-Pt-Cu合金を含む領域(W-Pt-Cu領域)と、Pt-W合金を含む領域(Pt-W領域)と、Pt-Cu合金を含む領域(Pt-Cu領域)とが形成されていた。そして、図24(c)に示すように、W系部材の表面には、Pt-Cu領域に侵入する突起が形成されていた。そして、実施例2では、図24(a)中の領域αと領域βの各々において、EDX分析に基づいた元素マッピング像を取得した。領域αにおける元素マッピング像の結果を図25に示し、領域βにおける元素マッピング像の結果を図26に示す。先ず、図25に示すように、領域α中のPt-W領域では、粒子径が100~500nm程度のPt-W結晶粒子の間に、微量のPt-Cu結晶粒子が存在していることが確認された。このPt-W領域におけるPt-W結晶粒子とPt-Cu結晶粒子との面積比は、98.5:1.5であった。また、図26中のWの元素マッピングの結果からも、実施例2のW系部材の表面に、中間層(Pt-Cu領域)に侵入する突起が形成されていることが確認された。
(d)HAADF-STEM解析
次に、実施例2では、HAADF-STEM画像と、当該HAADF-STEM画像の元素マッピング像も取得した。図27は、実施例2のHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。また、図28は、図27中の線分X2上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフである。この図27および図28に示すように、実施例2では、主にWで構成されたW系部材と、W相とPt-Cu相とを有したW-Pt-Cu領域と、Pt-W合金で形成されたPt-W領域と、Pt-Cu合金で形成されたPt-Cu領域とが形成されていた。そして、図27中のWの元素マッピング結果に示すように、W系部材の表面には、中間層(Pt-Cu領域)のPt-Cu相に侵入する突起が形成されていた。
さらに、図29は、実施例2のW系部材と、W-Pt-Cu領域のW相と、W-Pt-Cu領域のPt-Cu相との界面におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像の結果を示す図である。また、図30は、図29中の線分X3上におけるPt、Cu、Wの濃度分布を示すグラフであり、図31は、線分X3上におけるOとFeの濃度分布を示すグラフである。図29および図31に示すように、W系部材内に少量の鉄(Fe)元素の存在が確認された。また、酸素(O)元素は、測定ノイズによるものと推測される。そして、これらのFe元素やO元素は、いずれの領域においても存在しており、W-Pt-Cu領域のPt-Cu相とW系部材との界面において明らかな偏在は確認されなかった。
また、実施例2では、図27中の領域α~領域δの各領域において電子線回折を行った。結果を図32に示す。図32(a)は、領域α(W系部材)における電子線回折の結果を示す画像である。かかる電子線回折結果から、領域α(W系部材)における主成分がWであることが分かる。次に、図32(b)は、領域β(W-Pt-Cu領域)における電子線回折の結果を示す画像である。かかる電子線回折結果から、領域β(W-Pt-Cu領域)においてW相とPt-Cu相が確認された。さらに、W-Pt-Cu領域中のPt-Cu相には、少なくともCuPtが存在していることが分かった。また、図32(c)は、領域γ(Pt-W領域)における電子線回折の結果を示す画像である。かかるPt-W領域では、Pt-W合金の他に、Pt-Cu合金も確認された。そして、Pt-W層は、Pt-W合金として、少なくともPtWを含み、Pt-Cu合金として、少なくともCuPtを含んでいた。そして、図32(d)は、領域δ(Pt-Cu領域)における電子線回折の結果を示す画像である。かかるPt-Cu領域は、Pt-Cu合金として、少なくともCuPtを含んでいた。
次に、上述の図29に示すように、実施例2では、W系部材とW-Pt-Cu領域との界面におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像を取得している。これに加え、実施例2では、W系部材とPt-W領域とPt-Cu領域の各層におけるHAADF-STEM画像および元素マッピング像を取得した。結果を図33~図35に示す。図29、図34および図35に示すように、実施例2では、W-Pt-Cu領域とPt-W層とPt-Cu領域の各々の領域において、PtとCuとを有するPt-Cu相が確認された。さらに、図33に示すように、実施例2では、W系部材の結晶粒界においても、Pt-Cu相が確認された。これらの各領域におけるPt-Cu相のEDXスペクトルを図37~図40に示すと共に、かかるEDXスペクトルに基づいて算出した元素比率を表1に示す。図37~図40および表1に示すように、W系部材の結晶粒界に存在するPt-Cu相の元素比率は、他の層におけるPt-Cu相の元素比率と大きな違いがなかった。
Figure 2023144794000002
(e)突起の寸法測定
次に、実施例2においても、上記実施例1と同様に、W系部材と中間層(W-Pt-Cu層)との境界における断面SEM画像(倍率:50000倍)を撮像した(図40参照)。そして、当該断面SEM写真に基づいて、W系部材の表面に形成された突起の幅と長さを測定した。図40に示すように、実施例2におけるW系部材の突起の幅は、0.1μm~0.4μmであった。また、突起の長さは1.3μmであった。そして、実施例2における突起のアスペクト比は、3.3~13であった。また、図40に示すように、実施例2では、3つ以上に分岐した樹枝状の突起が形成されていた。
3.実施例3
(1)サンプルの作製
実施例3では、Ptペーストの塗布後の脱バインダ処理の昇温速度を10℃/minとし、最高温度を450℃とし、加熱時間を30分間に設定した点を除いて、実施例2と同じ条件でW系部材とCu系部材とを接合した接合体サンプルを作製した。
(2)サンプルの解析
上記実施例3のサンプルに対して、実施例1、2と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。実施例3の倍率5000倍の解析結果を図41に示し、W-Pt-Cu領域とW系部材との境界における倍率50000倍の解析結果を図42に示す。なお、図41及び図42中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。図41~図42に示すように、実施例3においても、中間層を介してW系部材とCu系部材とが接合されていた。そして、図42に示すように、実施例3においても、W系部材の表面に、中間層(W-Pt-Cu領域)に侵入する突起が形成されていた。
そして、実施例3においても、上記実施例1、2と同様に、W系部材と中間層(W-Pt-Cu層)との境界における断面SEM画像(倍率:50000倍)において、W系部材の突起の幅と長さを測定した(図43参照)。図43に示すように、実施例3におけるW系部材の突起の幅は、0.07μm~0.1μmであった。また、突起の長さは0.20μm~0.33μmであった。そして、実施例3における突起のアスペクト比は、2.9~3.3であった。また、図43に示すように、実施例3においても、樹枝状の突起が形成されていた。
4.実施例4
(1)サンプルの作製
実施例4では、実施例1~3と同様のW系部材の表面に、実施例2と同じ組成のPtペーストを塗布して乾燥処理(120℃、30分間)を実施した後、大気雰囲気で脱バインダ処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:160℃、加熱時間:0.5h)を実施した。次に、Nガス(3%水素(H)含有)雰囲気下で焼成処理(昇温速度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2h)を実施した。そして、室温まで冷却した後に表面を観察すると、Pt焼成膜が生成されて金属光沢を示していた。また、W系部材とPt焼成膜の間にはPt-W合金が生成されていた。次に、Pt焼成膜の表面にCuペーストを塗布した。なお、本試験で使用したCuペーストは、20vol%のCu粉末(平均粒子径:0.5μm)と、ガラス粉(SiO-B系ガラス)と、バインダ(エチルセルロース系樹脂)と、分散材と、溶剤(2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol 1-Monoisobutyrate)とを混錬したものである。その後、乾燥処理(120℃、30分間)を実施した後、大気雰囲気で脱バインダ処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:350℃、焼成時間:3h)を実施し、W系部材とPt-W層とPt焼成膜とCu乾燥膜とが、この順に積層された4層構造物を得た。そして、Nガス(3%水素(H)含有)雰囲気下で焼成処理(昇温速度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2h)を実施した。これによって、実施例4のサンプルを得た。
(2)サンプルの解析
上記実施例4のサンプルに対して、実施例1~3と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。実施例4の倍率5000倍の解析結果を図44に示し、Pt-W領域における倍率50000倍の解析結果を図45に示し、W-Pt-Cu領域における倍率50000倍の解析結果を図46に示し、W系部材における倍率50000倍の解析結果を図47に示し、W系部材とW-Pt-Cu領域との界面における倍率50000倍の解析結果を図48に示す。なお、図44、図45、図47、図48中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。また、図46中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はPtの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はWの元素マップである。まず、図48に示すように、実施例4においても、W系部材の表面に、中間層に侵入する突起が形成されていることが確認された。さらに、図46に示すように、実施例4においても、中間層に三元二相のW-P-Cu合金が形成されていることが確認された。また、図47及び図48に示すように、実施例4では、中間層の一部に、Pt-W合金を主成分としたPt-W領域が形成されていることが確認された。
そして、実施例4においても、上述の各実施例と同様に、W系部材と中間層(W-Pt-Cu層)との境界における断面SEM画像(倍率:50000倍)において、W系部材の突起の幅と長さを測定した(図49参照)。図49に示すように、実施例4におけるW系部材の突起の幅は、0.13μm~0.23μmであった。また、突起の長さは0.83μm~1.13μmであった。そして、実施例4における突起のアスペクト比は、3.6~8.7であった。また、図49に示すように、実施例4では、3つ以上に分岐した樹枝状の突起が形成されていた。
5.実施例5
(1)サンプルの作製
実施例5では、Pt-W合金生成工程で生成したPt-W合金と、W-Pt-Cu合金生成工程で生成したW-Pt-Cu合金との形状を比較した。具体的には、実施例1と同じ寸法のW板の表面に、実施例2と同じ組成のPtペーストを薄めに塗布した。そして、120℃で30分間の乾燥処理を行った後、大気中で加熱処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:160℃、加熱時間:0.5h)を行うことによって脱バインダ処理を行った。その後、N-H(3%)の雰囲気下で焼成処理(昇温速度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2時間)を実施した。そして、サンプルを室温まで冷却し、W板の表面にW-Pt合金が生成されていることを確認した。なお、実施例5で生成されたW-Pt合金の表面は、微細な凹凸を有する粗面となっていた。次に、実施例5では、W-Pt合金の表面にCuペースト(Cu源)を塗布した塗工領域と、Cuペーストを塗布しない未塗工領域を設けた。なお、Cuペーストには、実施例4と同じものを使用した。そして、塗工領域のCuペーストを120℃で30分間乾燥した後に、N-H(3%)雰囲気下で焼成処理(昇温温度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2時間)を実施した。これによって、実施例5のサンプルを得た。
(2)サンプルの解析
上記実施例5のサンプルに対して、実施例1~4と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。実施例5の未塗工領域の解析結果を図50および図51に示す。一方、塗工領域の解析結果を図52~図55に示す。先ず、図50に示すように、未塗工領域におけるW板の表面には、表面に微細な凹凸を有するW-Pt合金が形成されていた。一方、図52~図55に示すように、塗工領域では、W板とPt-Cu層との間にW-Pt-Cu合金が形成されていた。そして、図55に示すように、実施例5においても、W系部材の表面に、中間層に侵入する突起が形成されていた。また、実施例5におけるW系部材の突起の幅は0.07μmであり、突起の長さは0.1μm~0.13μmであった(図56参照)。そして、実施例5における突起のアスペクト比は、1.4~1.9であった。また、図55に示すように、実施例5では、突起の分岐が殆ど確認されなかった。
6.実施例6
(1)サンプルの作製
実施例1と同じ寸法のW板の表面に、実施例2と同じ組成のPtペーストを薄めに塗布した。そして、120℃で30分間の乾燥処理を行った後、大気中で加熱処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:160℃、加熱時間:0.5h)を行うことによって脱バインダ処理を行った。その後、N-H(3%)の雰囲気下で焼成処理(昇温速度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2時間)を実施した。そして、サンプルを室温まで冷却し、W板の表面にW-Pt合金が生成されていることを確認した。なお、実施例6で生成されたW-Pt合金の表面は、微細な凹凸を有する粗面となっていた。次に、実施例6では、W-Pt合金の表面にAuペースト(Au源)を塗布した後に、120℃で30分間乾燥した後に、大気雰囲気で脱バインダ処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:350℃、焼成時間:3h)を実施し、W系部材とPt-W層とAu乾燥膜とが、この順に積層された3層構造物を得た。なお、実施例6で使用したAuペーストは、20vol%のAu粉末(平均粒子径:0.5μm)と、ガラス粉(SiO-B系ガラス)と、バインダ(エチルセルロース系樹脂)と、分散材と、溶剤(2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol 1-Monoisobutyrate)とを混錬したものである。そして、Au乾燥膜の表面に、実施例4、5と同様の組成のCuペーストを塗布して120℃で30分間乾燥した後に、N-H(3%)雰囲気下で焼成処理(昇温温度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2時間)を実施した。これによって、実施例6のサンプルを得た。
(2)サンプルの解析
上記実施例6のサンプルに対して、実施例1~5と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。実施例6の倍率5000倍の解析結果を図57に示し、W系部材とW-Pt-Cu領域との界面における倍率50000倍の解析結果を図58に示す。なお、図57及び図58中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップであり、(e)はAuの元素マップである。まず、図58に示すように、実施例6においても、W系部材の表面に、中間層に侵入する突起が形成されていることが確認された。さらに、図57に示すように、実施例6においても、中間層に三元二相のW-P-Cu合金が形成されていることが確認された。以上の通り、Pt-W層とCu源との間に、他の金属層(Au層)を介在させた場合でも、W系部材の表面に、間層に侵入する突起を形成できることが分かった。そして、実施例6におけるW系部材の突起の幅は0.13μm~0.27μmであり、突起の長さは0.83μmであった(図59参照)。また、実施例6における突起のアスペクト比は、3.1~6.4であった。また、実施例6においても突起の分岐が殆ど確認されなかった。
7.実施例7
(1)サンプルの作製
実施例7では、実施例1~4と同様のW系部材の表面に、実施例2と同じ組成のPtペーストを塗布して乾燥処理(120℃、30分間)を実施した後、大気雰囲気で脱バインダ処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:160℃、加熱時間:0.5h)を実施した。そして、Nガス(3%水素(H)含有)雰囲気下で焼成処理(昇温速度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2h)を実施した。なお、実施例5では、他の実施例と異なり、Ptペーストの塗布厚みを10μmから2μmに減少させた。このため、冷却後の塗布面を観察すると、Pt-W層の表面からW系部材の一部が露出し、当該Pt-W層の表面が灰色でざらついていた。次に、本実施例では、Cu源としてPt-Cuペーストを準備し、Pt-W層の表面に塗布した。なお、本試験で使用したPt-Cuペーストは、20vol%のPt-Cu粉末(平均粒子径0.5μmのPt粉末と平均粒子径0.5μmのCu粉末とを10:90の割合で混合したもの)と、ガラス粉(SiO-B系ガラス)と、バインダ(エチルセルロース系樹脂)と、分散材と、溶剤(2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol 1-Monoisobutyrate)とを混錬したものである。そして、乾燥処理(120℃、30分間)を実施した後、大気雰囲気で脱バインダ処理(昇温速度:10℃/min、最高温度:350℃、加熱時間:3h)を実施した後に、Nガス(3%水素(H)含有)雰囲気下で焼成処理(昇温速度:4℃/min、最高温度:1000℃、焼成時間:2h)を実施した。これによって、実施例7のサンプルを得た。
(2)サンプルの解析
上記実施例7のサンプルに対して、実施例1~6と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。実施例7の倍率5000倍の解析結果を図57に示し、Pt-Cu領域における倍率50000倍の解析結果を図60に示し、第1W-Pt-Cu領域における倍率50000倍の解析結果を図61に示し、Pt-W領域における倍率50000倍の解析結果を図62に示し、第2W-Pt-Cu領域における倍率50000倍の解析結果を図63に示し、第2W-Pt-Cu領域とW系部材との境界における倍率50000倍の解析結果を図64に示す。なお、図60~図64中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はWの元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。また、実施例7については、図61(a)の上側(Pt-Cu領域側)から下側(W系部材側)に長さ20μmの線分X4を引き、当該ライン上におけるW、Pt、Cu各元素の濃度分布の変化を調べた。結果を図65に示す。この図65の横軸の0μmの位置は線分X4の上端に対応しており、20μmの位置は線分X4の下端に対応している。また、縦軸は各元素の特性X線強度を示している。
まず、図64に示すように、実施例7においても、中間層に侵入する突起がW系部材の表面に形成されていることが確認された。そして、実施例7におけるW系部材の突起の幅は0.08μm~0.15μmであり、突起の長さは0.47μmであった(図66参照)。また、実施例7における突起のアスペクト比は、3.1~5.9であった。また、実施例6においても突起の分岐が殆ど確認されなかった。以上の通り、Cu源としてPt-Cuペーストを使用した場合でも、中間層との界面に突起が形成されたW系部材を備えた金属接合体を製造できることが確認された。また、図60~図64に示すように、実施例7では、Pt-Cu領域と第1W-Pt-Cu領域とPt-W領域と第2W-Pt-Cu領域とが積層した層状構造の中間層が形成されていた。このような層状構造の中間層が形成された原因は、Pt-W層のひび割れによって、Pt-W層からのPtの拡散が層表面と層内部の両方から生じたためと推測される。
8.比較例1
(1)サンプルの作製
比較例1では、W系部材の表面にCuペーストを塗布して乾燥・焼成を行った。具体的には、実施例1と同じ寸法のW系部材の表面に、実施例4と同じ組成のCuペーストを塗布した。そして、120℃、30分間の乾燥処理を行って、Cuペーストを乾燥させた後に、空気中で400℃、1時間の加熱処理を行った。その後、焼成速度を5℃/min、最高焼成温度を1000℃、焼成時間を30分間に設定した焼成処理を行った。
(2)サンプルの解析
上記比較例1のサンプルに対して、実施例1と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。比較例1の倍率250倍の解析結果を図67に示し、倍率1000倍の解析結果を図68に示し、倍率5000倍の解析結果を図69に示し、倍率50000倍の解析結果を図70に示す。なお、図67~図70中の(a)は断面SEM画像であり、(b)はO(酸素)の元素マップであり、(c)はCuの元素マップであり、(d)はWの元素マップである。これらの解析の結果、比較例1では、中間層に侵入するような突起がW系部材の表面に形成されていなかった(例えば図70(c)参照)。また、WとCuとが混在した合金材料を含む中間層なども形成されていなかった。すなわち、Ptが存在していない状態(W-Pt合金が生成されていない状態)でCuとWとを接触させて焼成処理を行っても、中間層に侵入する突起や、WとCuとが混在した中間層は生成されないことが分かった。そして、この比較例1のサンプルは、外部からの力によってW系部材とCu層との界面が容易に剥離した。
9.比較例2
(1)サンプルの作製
比較例2では、板状のW系部材の表面にPtペーストを塗布して乾燥・焼成を行った。具体的には、実施例1と同じ寸法のW系部材の表面に、実施例1と同じ組成のPtペーストを塗布した。そして、120℃、30分間の乾燥処理でPtペーストを乾燥させた後に、空気中で160℃、0.5時間の加熱処理を行った。その後、焼成速度を3℃/min、最高焼成温度を1300℃、焼成時間を10分間に設定した焼成処理を行った。これによって、W系部材の表面に、白金(Pt)を含む層が形成された接合体を得た。
(2)サンプルの解析
上記比較例2のサンプルに対して、実施例1と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。比較例2の倍率5000倍の解析結果を図71に示す。なお、図71の(a)は断面SEM画像であり、(c)はWの元素マップであり、(d)はPtの元素マップである。これらの解析の結果、比較例2のようにPt源とW源とを接触させた状態で焼成することによって、W系部材の表面に、PtとWを含む合金(Pt-W合金)が生成されることが確認された。
8.比較例3
(1)サンプルの作製
比較例3では、板状のW系部材の表面にPt-Cuペーストを塗布して乾燥・焼成を行った。具体的には、実施例1と同じ寸法のW系部材の表面に、実施例7と同じ組成のPt-Cuペーストを塗布した。そして、120℃、30分間の乾燥処理を行ってペーストを乾燥させた後に、空気中で160℃、0.5時間の第1加熱処理を行った後に、3%Hガス含有Nガス中で、昇温速度10℃/min、最高加熱温度400℃、加熱時間を1時間に設定した第2加熱処理を行った。そして、昇温速度5℃/min、最高焼成温度を1000℃、焼成時間を30分間の焼成処理を行った。
(2)サンプルの解析
上記比較例3のサンプルに対して、実施例1と同じ条件でSEM観察とEDX分析を実施した。比較例3の倍率5000倍の解析結果を図72に示し、倍率50000倍の解析結果を図73に示す。これらの解析の結果、比較例3のようにPt源とCu源を混合して焼成した場合、W系部材の表面にPt源とCu源が存在した状態で焼成を行っているにも関わらず、中間層に侵入するような突起がW系部材に形成されなかった。さらに、W系部材の表面には、Pt-Cu合金が形成されていたが、このPt-Cu合金はW系部材と適切に接合されていなかった。このような結果になった原因は次のように推測される。比較例3では、混在させたPt源とCu源との反応が優先的に生じ、Pt-W合金が生成されなかった。そして、Pt源とCu源とが反応して生じたPt-Cu合金は、W系部材との反応性が低いため、W系部材に突起を形成するような元素の移動(拡散)が生じなかった。このことから、中間層に侵入するような突起をW系部材の表面に形成するには、W系部材の表面にPt-W合金を生成した後に、当該Pt-W合金にCu源を接触させて焼成処理を行った方がよいことが分かった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 W系部材
12 突起
20 中間層
22 W相
24 Pt-Cu相
25 Pt-W層
100 金属接合体
200 Cu系部材

Claims (17)

  1. タングステン(W)を含むタングステン系部材と、
    銅(Cu)を含む銅系部材と
    を少なくとも備え、
    前記タングステン系部材の表面に、当該タングステン系部材の対向層に侵入する突起が形成されている、金属接合体。
  2. 前記突起の平均幅aが0.01μm以上1μm以下である、請求項1に記載の金属接合体。
  3. 前記突起の平均アスペクト比(b/a)が1以上である、請求項1または2に記載の金属接合体。
  4. 前記突起の平均長さbが0.05μm以上5μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属接合体。
  5. 前記突起は、前記タングステン系部材の表面から前記対向層に向かうに従って分岐する樹枝状の突起である、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属接合体。
  6. 前記樹枝状の突起は、平均分岐数が1以上5以下である、請求項5に記載の金属接合体。
  7. 前記タングステン系部材は、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、炭窒化タングステン、タングステン複合材料からなる群から選択される一種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属接合体。
  8. 前記タングステン複合材料は、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む、請求項7に記載の金属接合体。
  9. 前記タングステン系部材の表面に前記銅系部材が接合されており、前記突起が前記銅系部材に侵入している、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属接合体。
  10. 前記タングステン系部材と前記銅系部材との間に、白金(Pt)と銅(Cu)を含む中間層が形成されており、前記突起が前記中間層に侵入している、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属接合体。
  11. 前記中間層は、タングステン(W)を主成分とするW相と、白金(Pt)と銅(Cu)を含むPt-Cu相とが混在したW-Pt-Cu合金を含む、請求項10に記載の金属接合体。
  12. 前記W-Pt-Cu合金は、前記Pt-Cu相からなるマトリックス中に複数の前記W相が存在することによって構成される、請求項11に記載の金属接合体。
  13. タングステン(W)を含むタングステン系部材と、銅(Cu)を含む銅系部材とを接合する接合方法であって、
    前記タングステン系部材の表面に、白金(Pt)とタングステン(W)とを含むPt-W合金を形成し、
    前記Pt-W合金にCu源を接触させた状態で、前記Pt-W合金の白金(Pt)を前記Cu源に移動させることによって、前記タングステン系部材の表面に、当該タングステン系部材の対向層に侵入する突起を形成する、接合方法。
  14. 前記タングステン系部材の表面に前記銅系部材を接合し、前記突起を前記銅系部材に侵入させる、請求項13に接合方法。
  15. 前記タングステン系部材と前記銅系部材との間に、白金(Pt)と銅(Cu)を含む中間層を形成し、前記突起を前記銅系部材に侵入させる、請求項13に接合方法。
  16. 前記タングステン系部材と前記銅系部材との間に、白金(Pt)を含有するPt源を介在させた状態で熱処理を実施する、請求項13~15のいずれか一項に記載の接合方法。
  17. 前記タングステン系部材と前記銅系部材との間に、白金(Pt)を含有するPt源を介在させた状態で加圧処理を実施する、請求項13~15のいずれか一項に記載の接合方法。
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