JP2023144774A - 光触媒複合粒子および光触媒混合物 - Google Patents

光触媒複合粒子および光触媒混合物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、揮発性化合物除去性能に優れた光触媒複合粒子、光触媒混合物等を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、金属酸化物助触媒を含む粒子と、結晶質の酸化チタンを含む光触媒とを含み、前記光触媒が前記粒子表面の少なくとも一部に付着している光触媒複合粒子、及び、該光触媒複合粒子と、酸化チタンを含む光触媒粒子とを含む光触媒混合物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、光触媒複合粒子、光触媒混合物、光触媒コーティング剤、光触媒コーティング層、光触媒複合粒子又は光触媒混合物を用いた揮発性化合物を除去する方法、光触媒フィルター及び揮発性化合物除去装置に関する。
揮発性化合物は、揮発性を有し大気中でガス状となる化合物である。揮発性化合物は、例えば、トルエンやキシレンなどの揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)や窒素酸化物(NOx)、アンモニアや過塩素酸などの揮発性無機化合物を含む。中でも、VOCは、塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれ、大気中の光化学反応により、光化学スモッグを引き起こす原因物質の一つとされている。そのため、大気中への揮発性化合物排出量の低減対策が求められている。
近年、持続可能な環境浄化技術として光触媒の産業化が進められており、光触媒を用いた揮発性化合物の除去が行われている。また、光触媒の性能向上のため、光触媒に他の化合物を組み合わせた複合材料についての研究もなされている。例えば、特許文献1には、少なくとも酸化タングステンを含むコア粒子と、コア粒子表面全体を被覆する酸化チタンから構成されているシェル層とから構成された光触媒材料が記載されており、該光触媒材料は耐アルカリ性に優れる旨、開示されている。
特許第5784804号公報
しかしながら、従来の光触媒は揮発性化合物除去性能が十分ではなく、さらなる揮発性化合物除去性能の向上が求められている。
本発明の目的は、揮発性化合物除去性能に優れた光触媒を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、酸化チタンを含む光触媒が金属酸化物助触媒を含む粒子表面の少なくとも一部に付着している光触媒複合粒子により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の通りである。
〔1〕
金属酸化物助触媒を含む粒子と、酸化チタンを含む光触媒と、を含み、
前記光触媒が前記粒子表面の少なくとも一部に付着している、光触媒複合粒子。
〔2〕
前記金属酸化物助触媒が酸化ジルコニウムである前記〔1〕に記載の光触媒複合粒子。
〔3〕
前記金属酸化物助触媒を含む粒子と前記光触媒の合計量に対する、前記光触媒の質量比率が16~40質量%である前記〔1〕又は〔2〕に記載の光触媒複合粒子。
〔4〕
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の光触媒複合粒子と、酸化チタンを含む光触媒粒子とを含む、光触媒混合物。
〔5〕
前記光触媒複合粒子と前記酸化チタンを含む光触媒粒子の合計量に対する、前記光触媒複合粒子の質量比率が5~99質量%である前記〔4〕に記載の光触媒混合物。
〔6〕
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の光触媒複合粒子、又は前記〔4〕若しくは〔5〕に記載の光触媒混合物と、バインダーと、溶媒とを含む光触媒コーティング剤。
〔7〕
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の光触媒複合粒子、又は前記〔4〕若しくは〔5〕に記載の光触媒混合物と、バインダーとを含む光触媒コーティング層。
〔8〕
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の光触媒複合粒子、又は前記〔4〕若しくは〔5〕に記載の光触媒混合物を用いて、揮発性有機化合物を除去する方法。
〔9〕
前記揮発性有機化合物がホルムアルデヒドである、前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の光触媒複合粒子、又は前記〔4〕若しくは〔5〕に記載の光触媒混合物を、フィルター基材に担持させた光触媒フィルター。
〔11〕
前記〔10〕に記載の光触媒フィルターおよび前記光触媒フィルターに光照射する光源を含む揮発性化合物除去部と、
前記揮発性化合物除去部に揮発性化合物を流入させる流入部と、
前記揮発性化合物が前記揮発性化合物除去部を通過することにより揮発性化合物が除去されてなる除去物を排出する排出部と、を備える、揮発性化合物除去装置。
本発明によれば、揮発性化合物除去性能に優れた光触媒複合粒子、及び光触媒混合物を提供することができる。
また、上記光触媒複合粒子又は光触媒混合物を用いた光触媒コーティング剤、光触媒コーティング層、揮発性化合物を除去する方法、光触媒フィルター及び揮発性化合物除去装置を提供することができる。
図1は、実施例および比較例のホルムアルデヒド除去率を示したグラフである。 図2は、滞留式ホルムアルデヒド除去性能の試験方法を模式的に示した図である。 図3は、本発明の一実施形態の光触媒フィルターの模式図を示す。 図4は、本発明の一実施形態の光触媒フィルターの作製フローを示す。 図5は、実施例および比較例のホルムアルデヒド除去率を、光触媒混合物中の酸化ジルコニウム含む粒子の質量比率に対してプロットしたグラフである。 図6は、実施例および比較例のホルムアルデヒド除去率を、光触媒混合物1g中の酸化チタン総モル数に対してプロットしたグラフである。 図7は、実施例および比較例のホルムアルデヒド除去率を、光触媒混合物1g中の酸化ジルコニウムモル数に対してプロットしたグラフである。 図8は、ホルムアルデヒド吸収性評価における性能評価系を模式的に示した図である。 図9は、実施例および比較例のホルムアルデヒド吸収率を、光触媒混合物1g中の酸化チタン総モル数に対してプロットしたグラフである。 図10は、実施例および比較例のホルムアルデヒド吸収率を、光触媒混合物1g中の酸化ジルコニウムモル数に対してプロットしたグラフである。示したグラフである。 図11は、本発明の一実施形態の揮発性化合物除去装置を正面から見た場合の概略断面図を示す。 図12の(a)は、本発明の一実施形態のヒュームフードを正面から見た場合の概略断面図である。図12の(b)は、本発明の一実施形態のヒュームフードを側面から見た場合の概略断面図である。
本明細書において、範囲を示す「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。また、本明細書において、「重量」と「質量」、および、「重量%」や「wt%」と「質量%」は、それぞれ同義語として扱う。
以下、本発明の実施形態について説明する。
(光触媒複合粒子)
本実施形態の光触媒複合粒子は、金属酸化物助触媒を含む粒子と、結晶質の酸化チタンを含む光触媒と、を含み、前記光触媒が前記粒子表面の少なくとも一部に付着している。
光触媒は、特定の波長域にある光(光触媒の価電子帯と導電帯の間のバンドギャップ以上のエネルギーを有する励起光)を照射されることにより光触媒活性を示す物質である。例えば、紫外線を照射することにより光触媒活性を示す紫外光応答性光触媒や、可視光を照射することにより光触媒活性を示す可視光応答性光触媒等が挙げられる。本実施形態における光触媒は、当該光触媒活性を示すことにより、揮発性化合物除去性能を発揮する。
なお、本発明において揮発性化合物除去性能とは、揮発性化合物の吸着性能および揮発性化合物の分解性能の両者を加味した、総合的な性能を意味するものとする。
本発明において、揮発性化合物とは、大気中で揮発して気体となる化合物の総称であり、揮発性有機化合物(VOC)及び揮発性無機化合物を含む。VOCとしては、具体的には、アセトアルデヒド、トルエン、ベンゼン、キシレン、酢酸エチル、ホルムアルデヒド、エチレンオキシド等が挙げられる。揮発性無機化合物としては、具体的には、アンモニア、硫化水素等が挙げられる。なかでも、本実施形態の光触媒複合粒子又は後述の本実施形態の光触媒混合物による除去性能が高い揮発性化合物としてはVOCが挙げられ、特にホルムアルデヒド(HCHO)が挙げられる。
また、本発明において、助触媒とは、光触媒の光触媒活性を促進させる物質である。助触媒は、それ単体が光触媒活性を示すものであってもよく、それ単体では光触媒活性を示さないものであってもよい。助触媒は、光触媒と協働することで、光触媒単体を用いた時に比して、その光触媒の反応速度を向上できる物質である。
本発明の実施形態における光触媒複合粒子が揮発性化合物除去性能に優れる理由について、本発明者らは以下のように推定している。
光触媒と助触媒を単に物理混合して併用した場合、助触媒は揮発性化合物の吸着性能が高いため、上記混合物における揮発性化合物の吸着性は、光触媒単体使用時に比して向上する。一方で、助触媒を添加する分、単位体積当たりの光触媒量が減少することに加え、助触媒が光を遮蔽して光触媒に到達する光量を減少させてしまうため、光照射時の光触媒活性は光触媒単体使用時よりも低下してしまう。
本実施形態における光触媒複合粒子では、光触媒を金属酸化物助触媒の表面に付着させている。上記構造を採用することより、助触媒によって吸着された揮発性化合物は、光触媒と助触媒を単に物理混合した場合よりも光触媒に効率的に誘導され、光触媒による揮発性化合物の分解反応速度が向上する。その結果、助触媒併用による光触媒活性低下が抑制され、揮発性化合物の除去性能を向上させることができたものと推定している。
後述の光触媒複合粒子と光触媒粒子とを含む光触媒混合物においても同様に、助触媒によって吸着された揮発性化合物の、光触媒複合粒子中の光触媒及び光触媒粒子中の光触媒への効率的な誘導効果により、光触媒による揮発性化合物の分解反応速度が向上し、光触媒と助触媒とを単に物理混合した場合に比して、高い揮発性化合物の除去性能が得られているものと推定している。
実施例の項において詳述するように、助触媒と光触媒を含む混合系において、揮発性化合物の吸着性能は、光触媒が助触媒表面に付着しているか否かには影響を受けないことがわかった。このことからも、本実施形態の光触媒複合粒子や光触媒混合物において揮発性化合物の除去性能が向上するのは、揮発性化合物の分解性能が向上するためであると考えられる。
<金属酸化物助触媒を含む粒子>
本実施形態の光触媒複合粒子は、金属酸化物助触媒を含む粒子(以下、単に、「金属酸化物助触媒粒子」ともいう)を含有する。
金属酸化物助触媒としては、揮発性化合物、なかでも、ホルムアルデヒドの吸着性が良好な、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化セリウム、チタン酸カルシウム等が好ましく挙げられる。
本実施形態においては、金属酸化物助触媒が酸化ジルコニウムであることが好ましい。
本実施形態の光触媒複合粒子に用いる金属酸化物助触媒は、粒子状である。粒子状にすることで、分散媒への分散性が得られ、光触媒複合粒子分散液を作製することができ、この分散液を塗布・乾燥することで容易に光触媒コーティング層を形成することができる。
本実施形態における当該金属酸化物助触媒粒子の平均粒径は特に限定されないが、好ましくは5nm~1000nmであり、より好ましくは5nm~100nmであり、さらに好ましくは5nm~50nmである。当該粒子の平均粒径を1000nm以下とすることにより、金属酸化物助触媒粒子全体の表面積が小さくなりすぎず、揮発性化合物除去性能、とりわけ揮発性化合物吸着性能の低下を抑制できる。他方、当該粒子の平均粒径を5nm以上とすることにより、粒子が凝集しにくくなり、分散性が得られやすい。
なお、本実施形態における金属酸化物助触媒粒子の平均粒径は、当該金属酸化物助触媒粒子を任意の分散液に分散させた状態において、金属酸化物助触媒粒子の動的光散乱法・周波数解析(FFT-ヘテロダイン法)により求められる体積基準の50%累積分布径(D50)を意味する。
本実施形態における金属酸化物助触媒粒子の比表面積は、特に制限されないが、例えば10~1000m/gであり、50~1000m/gが好ましく、100~1000m/gがより好ましい。金属酸化物助触媒粒子の比表面積を上記範囲とすることにより、金属酸化物助触媒よる揮発性化合物吸着性能が向上し、光触媒複合粒子における揮発性化合物除去性能が向上する。本実施形態における金属酸化物助触媒粒子の比表面積はBET法により測定する。
本実施形態の光触媒複合粒子全量に対する、金属酸化物助触媒粒子の質量比率は、60質量%以上が好ましく、62質量%以上がより好ましい。また、84質量%以下が好ましく、83質量%以下がより好ましい。60質量%以上とすることにより、揮発性化合物の吸着性能向上効果が得られやすい。また、84質量%以下とすることにより、光触媒の分解性能を阻害することなく十分な揮発性化合物除去性能を発揮できる。
後述する光触媒と金属酸化物助触媒粒子の合計量に対する、金属酸化物助触媒粒子の質量比率は、60質量%以上が好ましく、62質量%以上がより好ましく、64質量%以上がさらに好ましい。また、84質量%以下が好ましく、83質量%以下がより好ましく、82質量%以下がさらに好ましい。60質量%以上とすることにより、揮発性化合物の吸着性能向上効果が得られやすい。また、84質量%以下とすることにより、光触媒の分解性能を阻害することなく十分な揮発性化合物除去性能を発揮できる。
<光触媒>
本実施形態の光触媒複合粒子に用いる光触媒は、結晶質の酸化チタンを含む。分解中間体を生成するような揮発性化合物の除去においては、光触媒が酸化チタンを含むことにより、分解中間体を発生することなく完全分解が容易である。
なお、本明細書において、光触媒が酸化チタンを含むとは、光触媒が純粋な酸化チタンである場合だけでなく、酸化チタンが他の元素や化合物によってドーピングされているものを含む。
光触媒に、ある種の元素をドープすることで、その活性を改善することができる。そのような元素は「ドーパント」とも呼ばれ、例えば、上記光触媒に、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)などのアルカリ金属;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)などのアルカリ土類金属;金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)などの貴金属;鉄(Fe)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)などの遷移金属;スズ(Sn)、アルミニウム(Al)などのその他の金属、ホウ素(B)やヒ素(As)などの半金属;窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、フッ素(F)、セレン(Se)などの非金属やこれらの金属又は非金属を含む化合物が挙げられる。本明細書では、ドーパントがドーピングされた光触媒を、ドーピング型光触媒という。
なお、ドーピングとは、光触媒の基本結晶構造が殆ど変わらない範囲で任意の元素(ドーパント)をホスト化合物結晶中に入れることを表す。光触媒がドーピングされているか否かは、例えば、XPS(X線光電子分光法)でのピークのシフトにより確認できる。ドーピング型光触媒を形成する方法は特に限定されず、ゾルゲル法、固相反応法、又はイオン注入法などが用いられる。
光触媒が、ドーピング型光触媒である場合、光触媒内において、ホスト化合物(ドーピングされる化合物)とドーパントのモル比は、特に限定されないが、好ましくは99.9:0.1~80:20であり、より好ましくは99.9:0.1~85:15であり、さらに好ましくは99.9:0.1~87:13である。
ドーピング型光触媒は、好ましくは、炭素(C)、窒素(N)、硫黄(S)、フッ素(F)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、セレン(Se)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、及び鉄(Fe)から選ばれる少なくとも1つによってドーピングされていることが好ましい。
また、光触媒は、p型であってもよくn型であってもよい。p型の光触媒は、例えば、上記紫外光応答性光触媒に価数の多い元素(例えば、ヒ素(As)など)をドーピングすることによって得ることができる。n型の光触媒は、例えば、上記紫外光応答性光触媒に価数の少ない元素(例えば、ホウ素(B))をドーピングすることによって得ることができる。
光触媒は、波長589nmにおける屈折率(R1)が、1.0~4.0であることが好ましく、より好ましくは、1.0~3.0であり、特に好ましくは1.5~2.5である。光触媒の屈折率(R1)が1.0~4.0の範囲内であれば、助触媒との屈折率差を小さくし易くなり、透光性に優れた光触媒層を形成し易くなる。なお、光触媒の屈折率は、JIS K 0062(1992年)に規定された「固体試料の測定方法」に準じてアッベ屈折計を用いて測定される値である。
本実施形態の光触媒複合粒子において、光触媒は金属酸化物助触媒を含む粒子の表面に付着している。
本明細書において、「光触媒が金属酸化物助触媒を含む粒子の表面に付着している」とは、光触媒複合粒子の製造方法において後述するように、金属酸化物助触媒を含む粒子表面に光触媒を設けた状態で焼成すること等により、光触媒が表面に固着している状態を表すものとする。すなわち、光触媒と金属酸化物助触媒粒子とを物理混合することによりその表面同士が単に接触している状態は含まれない。
金属酸化物助触媒を含む粒子の表面に光触媒が付着しているか否かについては、TEM/EDX(エネルギー分散型X線分光法)による元素分析により確認することができる。
光触媒に含まれる酸化チタンは、結晶質であるのが好ましい。酸化チタンの結晶構造としては、アナターゼ型、ルチル型が挙げられ、なかでもアナターゼ型が好ましい。これは、アナターゼ型の方がルチル型と比べてバンドギャップが大きく、酸化力および還元力が大きいためである。アナターゼ型の酸化チタンを得るには、例えば、結晶化の際の焼成温度を500~550℃に調整する方法が挙げられる。
本実施形態の光触媒複合粒子全量に対する、光触媒の質量比率は、16~40質量%が好ましい。下限値としては、17質量%以上がより好ましく、18質量%以上がさらに好ましい。また、上限値としては、38質量%以下がより好ましく、36質量%以下がさらに好ましい。
光触媒の質量比率を16質量%以上とすることにより、光触媒による揮発性化合物分解性能が十分に発揮される。また、40質量%以下とすることにより、光触媒複合粒子における金属酸化物助触媒粒子表面の露出部を確保でき、金属酸化物助触媒による揮発性化合物吸着性能が発揮されやすい。
金属酸化物助触媒粒子と光触媒の合計量に対する、光触媒の質量比率は、16~40質量%が好ましい。下限値としては、17質量%以上がより好ましく、18質量%以上がさらに好ましい。また、上限値としては、38質量%以下がより好ましく、36質量%以下がさらに好ましい。
光触媒の質量比率を16質量%以上とすることにより、光触媒による揮発性化合物分解性能が十分に発揮される。また、40質量%以下とすることにより、光触媒複合粒子における金属酸化物助触媒粒子表面の露出部を確保でき、金属酸化物助触媒による揮発性化合物吸着性能が発揮されやすい。
本実施形態の光触媒複合粒子は、粉末状の形態で用いてもよく、あるいは、粉末状の触媒を顆粒状、ペレット状、ハニカム状等の適宜な形状に成形して用いてもよい。また、樹脂、ガラス、セラミック、金属等の適宜な材料からなる基材表面に、本実施形態の光触媒複合粒子からなる光触媒層を形成した形態で用いてもよい。
(光触媒複合粒子の製造方法)
本実施形態における光触媒複合粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記の1)~3)の工程を含むことが好ましい。
工程1)溶媒に金属酸化物助触媒粒子及びチタンテトライソプロポキシド(TTIP)を添加して分散処理を行う工程
工程2)上記分散液を加熱処理する工程
工程3)上記加熱処理物を焼成する工程
工程1)は、金属酸化物助触媒粒子及びTTIPを含む分散液を調製する工程である。
分散液の調製に用いる溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン等の溶媒を用いることができる。溶媒は、通常、金属酸化物助触媒粒子に対して、70~95質量%となるように用いられる。
溶媒への添加順序としては、最初に溶媒に金属酸化物助触媒粒子を添加し、第1の分散を行った後に、TTIPを滴下し、さらに第2の分散を行うことが好ましい。
分散は超音波分散、攪拌、にて行うことが好ましい。分散時間は、例えば、第1、第2の分散ともに10~30分間とすればよい。分散は室温で行うことができる。
工程2)は、工程1)で得られた分散液を加熱処理し、溶媒を除去する工程である。
加熱温度としては、通常80~150℃である。また、加熱時間としては、通常30~120分間である。
上記工程1)及び2)を経る際に、TTIPが空気中の水分と加水分解を起こし、金属酸化物助触媒粒子の表面に酸化チタンが設けられる。
工程3)は、上記加熱処理物を焼成する工程である。
焼成温度としては、500~600℃が好ましい。また、焼成時間としては、30~180分間が好ましい。
焼成工程を経ることにより、金属酸化物助触媒粒子表面の酸化チタンが結晶化し、該粒子表面に固着した光触媒複合粒子を得ることができる。
(光触媒混合物)
上記光触媒複合粒子は、その他の光触媒や助触媒と併用し、混合物として用いてもよい。
本実施形態の光触媒混合物は、上記光触媒複合粒子と、酸化チタンを含む光触媒粒子とを含む。
<光触媒粒子>
本実施形態の光触媒混合物に用いる光触媒粒子は、酸化チタンを含む。以下、酸化チタンを含む光触媒粒子を単にTiO光触媒粒子、TiO粒子ともいう。
なお、本明細書において、光触媒粒子が酸化チタンを含むとは、光触媒粒子が純粋な酸化チタンである場合だけでなく、酸化チタンが他の元素や化合物によってドーピングされているものを含む。
上記光触媒は、例えば、固相反応法、燃焼合成法、ソルボサーマル合成法、熱分解法、プラズマ合成法などによって得ることができる。好ましくは、光触媒は、高周波誘導結合プラズマ法(RF-ICP)によって得られる。RF-ICP法は製造効率が高く、且つ純度の高い光触媒を得ることができる。光触媒は、例えば、米国特許第8003563号明細書に記載されたRF-ICPの条件によって得ることができる。
光触媒は、波長589nmにおける屈折率(R1)が、1.0~4.0であることが好ましく、より好ましくは、1.0~3.0であり、特に好ましくは1.5~2.5である。光触媒の屈折率(R1)が1.0~4.0の範囲内であれば、助触媒との屈折率差を小さくし易くなり、透光性に優れた光触媒層を形成し易くなる。なお、光触媒の屈折率は、JIS K 0062(1992年)に規定された「固体試料の測定方法」に準じてアッベ屈折計を用いて測定される値である。
本実施形態の光触媒混合物における、酸化チタンを含む光触媒は粒子状である。光触媒を粒子状にすることで、光触媒複合粒子と共に光触媒を分散媒に分散させ分散液を作製することができ、この分散液を塗布・乾燥することで容易に光触媒コーティング層を形成することができる。
TiO光触媒粒子の平均粒径は特に限定されないが、好ましくは5nm~1000nmであり、より好ましくは5nm~100nmであり、さらに好ましくは5nm~30nmである。当該光触媒粒子の平均粒径を1000nm以下とすることにより、光触媒粒子全体の表面積が小さくなりすぎず、光触媒の光触媒活性の低下を抑制できる。他方、光触媒粒子の平均粒径を5nm以上とすることにより、粒子が凝集しにくくなり、分散性が得られやすい。
なお、光触媒粒子の平均粒径は、光触媒粒子を任意の分散液に分散させた状態において、光触媒粒子の動的光散乱法・周波数解析(FFT-ヘテロダイン法)により求められる体積基準の50%累積分布径(D50)を意味する。
本実施形態の光触媒混合物全量に対する、TiO光触媒粒子の質量比率は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。上記範囲であることにより、揮発性化合物の吸着性能と分解性能とを両立し、揮発性化合物除去性能に優れる。
光触媒複合粒子とTiO光触媒粒子の合計量に対するTiO光触媒粒子の質量比率は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。上記範囲であることにより、揮発性化合物の吸着性能と分解性能とを両立し、揮発性化合物除去性能に優れる。
上記光触媒複合粒子についての記載は、本実施形態の光触媒混合物に含まれる光触媒複合粒子についても当てはまる。
本実施形態の光触媒混合物全量に対する、光触媒複合粒子の質量比率は、5~99質量%であることが好ましい。下限値としては、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、上限値としては、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。上記範囲であることにより、揮発性化合物の吸着性能と分解性能とを両立し、揮発性化合物除去性能に優れる。
光触媒複合粒子とTiO光触媒粒子の合計量に対する光触媒複合粒子質量比率は、5~99質量%であることが好ましい。下限値としては、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、上限値としては、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。揮発性化合物の吸着性能と分解性能とを両立し、揮発性化合物除去性能に優れる。
本実施形態における光触媒混合物は、その他成分として助触媒を含有してもよい。
助触媒は、例えば、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、酸化イットリウム(III)(Y)、酸化モリブデン(VI)(MoO)、酸化マンガン(III)(Mn)、酸化ガドリニウム(III)(Gd)、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン(TiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、タンタル酸カリウム(KTaO)、炭化ケイ素(SiC)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化アルミニウム(III)(Al)、酸化鉄(III)(Fe)、酸化鉄(II,III)(Fe)、酸化ニッケル(II)(NiO)、酸化ニオブ(V)(Nb)、酸化インジウム(In)、酸化タンタル(Ta)、酸化セリウム(II)(CeO)、酸化セリウム(IV)(CeO)、ArXtOs(Aは、希土類元素であり、Xは希土類元素以外の元素やその組み合わせであり、rは1~2であり、tは0~3であり、sは2~3)、りんモリブデン酸アンモニウム三水和物((NH[PMo1240])、12タングストリン酸(PW1240)、ケイ化タングステン酸(H[SiW1240])、りんモリブデン酸(12MoO・HPO)、セリウム-ジルコニウム複合酸化物(CexZryO)(y/x=0.001~0.999)などが挙げられる。
本実施形態の光触媒混合物は、粉末状の形態で用いてもよく、あるいは、粉末状の触媒を顆粒状、ペレット状、ハニカム状等の適宜な形状に成形して用いてもよい。また、樹脂、ガラス、セラミック、金属等の適宜な材料からなる基材表面に、本実施形態の光触媒混合物からなる光触媒層を形成した形態で用いてもよい。なお、本実施形態における粉末状の光触媒混合物は、光触媒複合粒子とTiO光触媒粒子とが混合された粉末(混合粉)の形態であることが好ましい。
(光触媒混合物の製造方法)
本実施形態における光触媒混合物の製造方法は、上記光触媒複合粒子とTiO光触媒粒子とを混合する工程を含む。光触媒複合粒子及びTiO光触媒粒子の他にも、必要に応じて、その他成分を添加して混合してもよい。混合方法は特に制限されず、乳鉢、ボールミル、ミキサー等の一般的な物理混合法によって、混合してもよい。
また、光触媒混合物を製造するには、水、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン等の溶媒を用いることができ、光触媒混合物を分散液または溶液として得ることもできる。分散、混合には分散剤を用いることができる。また、超音波分散によってもよい。その他、光触媒混合物の調製には、架橋剤、充填剤等を配合することもできる。
(光触媒コーティング剤)
本実施形態の光触媒コーティング剤は、上記光触媒複合粒子又は光触媒混合物と、バインダーと、溶媒とを含む。
上記光触媒複合粒子及び光触媒混合物についての記載は、本実施形態の光触媒コーティング剤に含まれる光触媒複合粒子及び光触媒混合物についても当てはまる。
本実施形態の光触媒コーティング剤における上記光触媒複合粒子又は光触媒混合物の含有量は、通常5~30質量%であり、好ましくは8~25質量%、より好ましくは10~20質量%である。
バインダーとしては、特に制限されず、無機バインダーであってもよく、有機バインダーであってもよい。
無機バインダーとしては、特に限定されるものではないが、紫外線や可視光線を透過する性質のものが好ましく、例えば、珪酸塩系バインダー、リン酸塩系バインダー、無機コロイド系バインダー、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の微粒子等を挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機バインダーとしては、市販のバインダーが使用でき、具体的には、例えば、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチルメタアクリレート、ビニル系の共重合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の光触媒コーティング剤における上記バインダーの含有量は、通常0超~70質量%であり、好ましくは2~20質量%である。
溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン等の公知の溶媒が使用できる。
本実施形態の光触媒コーティング剤における上記溶媒の含有量は、通常70~95質量%であり、好ましくは80~90質量%である。
また、光触媒コーティング剤は、分散剤を含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、セロソルブ、カルビトール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸アミル等のエステル類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の光触媒コーティング剤における上記分散剤の含有量は、通常0~10質量%であり、好ましくは1~5質量%である。
(光触媒コーティング層)
本実施形態の光触媒コーティング層は、上記光触媒複合粒子又は光触媒混合物と、バインダーとを含む。
上記光触媒複合粒子及び光触媒混合物についての記載は、本実施形態の光触媒コーティング層に含まれる光触媒複合粒子及び光触媒混合物についても当てはまる。また、上記光触媒コーティング剤におけるバインダーについての記載は、本実施形態の光触媒コーティング層に含まれるバインダーについても当てはまる。
光触媒コーティング層は、上記光触媒コーティング剤を基材上に塗布し、塗布層を乾燥させることにより形成できる。塗布方法は、例えば、印刷、刷毛塗り、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、カーテンコートなどである。
光触媒コーティング層の厚さは、例えば、0.1~100μmである。
基材としては、例えば、セラミック、ガラス等の無機材料、プラスチック、ゴム、木、紙等の有機材料、アルミニウム等の金属、合金などの金属材料があげられ、用途に応じた形状のものが適宜に選択して用いられる。なお、基材への光触媒複合粒子又は光触媒混合物の適用にあたっては、中間層を設けることもできる。
本発明は、上述の光触媒複合粒子又は光触媒混合物を用いて揮発性有機化合物を除去する方法にも関する。前記揮発性有機化合物はホルムアルデヒドであることが好ましい。
揮発性有機化合物を除去する方法としては、例えば、下記の光触媒複合粒子又は光触媒混合物を担持させた光触媒フィルターや、後述の光触媒フィルターを用いた揮発性化合物除去装置を用いて行う方法が挙げられる。
(光触媒フィルター)
本実施形態の光触媒フィルターは、図3に示すように、上記光触媒複合粒子又は光触媒混合物をフィルター基材に担持させた光触媒フィルターである。なお、本実施形態の光触媒フィルターに用いられる光触媒複合粒子及び光触媒混合物に関しては、上述した光触媒複合粒子及び光触媒混合物の実施形態に関する説明がそのまま当てはまる。
フィルター基材の種類は特に限定されず、例えば、SiC、アルミナ等の焼結体等のセラミックスの素材、金属、樹脂、またはこれらの混合物等により構成されていてもよい。
フィルター基材は、例えば図3に示すように、面に対して垂直方向に貫通する複数の流路(セル)をハニカム状に有していてもよい。また、揮発性化合物が流れる各流路の面方向におけるセルの断面形状は特に限定されず、例えば、四角形、六角形などの多角形、円形、楕円形等が挙げられる。
光触媒フィルターは、フィルター基材に光触媒複合粒子又は光触媒混合物を担持させることで得られる。フィルター基材への光触媒複合粒子又は光触媒混合物の担持方法は、従来公知の方法を適用でき特に限定されないが、例えば、イオン交換水等に上記光触媒複合粒子又は光触媒混合物を分散させた光触媒スラリーに、フィルター基材をディップコートし、乾燥することで光触媒フィルターを得てもよい。
フィルター基材における光触媒複合粒子又は光触媒混合物の担持量は、0.01~0.1g/cmの範囲内であることが好ましい。さらに、上記担持量の下限は0.03g/cm以上であることがより好ましく、0.05g/cm以上であることがさらに好ましい。また、上記担持量の上限は0.085g/cm以下であることがより好ましく、0.075g/cm以下であることがさらに好ましい。光触媒複合粒子又は光触媒混合物の担持量が0.01g/cm以上であることで、揮発性化合物除去率が高くなる。また、光触媒複合粒子又は光触媒混合物の担持量が0.1g/cm以下であることで、光触媒フィルターから光触媒複合粒子又は光触媒混合物が落下しづらくなる。
なお、本明細書において、光触媒複合粒子又は光触媒混合物の担持量とは、フィルター基材の見掛けの体積当たりの光触媒複合粒子又は光触媒混合物の重量をいい、例えば、光触媒複合粒子又は光触媒混合物の担持処理前後におけるフィルター基材の重量変化から測定できる。
光触媒フィルターのセル稠密度は、下限が50個/inch以上であることが好ましく、より好ましくは100個/inch以上であり、さらに好ましくは200個/inch以上である。下限を50個/inch以上とすることで、光触媒フィルターを通過する揮発性化合物が光触媒複合粒子又は光触媒混合物に接触する確率が高くなり、揮発性化合物の除去率が向上する。また、上限が700個/inch以下であることが好ましく、より好ましくは600個/inch以下であり、さらに好ましくは500個/inch以下である。上限を700個/inch以下とすることで、光触媒複合粒子又は光触媒混合物に照射する光がセルの内部に届きやすくなり、光触媒がより活性化し、揮発性化合物の除去性能が向上する。ここで、1inch=0.0254mである。
光触媒フィルターの厚みは、0.4cm~1.6cmの範囲が好ましい。また、厚みの下限は、0.5cm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.6cm以上、特に好ましくは0.7cm以上である。下限を0.4cm以上とすることで、光触媒反応時に光源から照射される光が、フィルター内で反射、吸収され、光触媒複合粒子又は光触媒混合物の活性化が起こりやすくなる。また、厚さの上限は1.5cm以下がより好ましく、1.4cm以下がさらに好ましく、1.3cm以下が特に好ましい。上限を1.6cm以下とすることで、揮発性化合物が光触媒フィルターを通過する際に発生する圧力損失を抑制することができ、揮発性化合物の送出にかかるエネルギーを低減できる。
光触媒フィルターのセル稠密度は、例えば、単位面積当たりのセル数を計測することで測定できる。
光触媒フィルターの外観形状としては、用途に応じて適宜選択でき、特に制限されないが、例えば、短形、円形状が挙げられる。
(揮発性化合物除去装置)
図11に、本実施形態の揮発性化合物除去装置10の一例を示す。揮発性化合物除去装置10は、上記実施形態の光触媒フィルター13および光源12を含む揮発性化合物除去部14と、揮発性化合物除去部に揮発性化合物を流入させる流入部11と、揮発性化合物が揮発性化合物除去部を通過することにより揮発性化合物が除去されてなる除去物を排出する排出部15と、を備える。
また、本実施形態の揮発性化合物除去装置は、光触媒フィルターおよび光触媒フィルターに光照射する光源を含む揮発性化合物除去部と、揮発性化合物除去部に揮発性化合物を流入させる流入部と、揮発性化合物が揮発性化合物除去部を通過することにより揮発性化合物が除去されてなる除去物を排出する排出部と、を備え、揮発性化合物除去部を2段以上含み、2段以上の揮発性化合物除去部のうち、少なくとも1段の揮発性化合物除去部は上記実施形態の光触媒フィルターを含んでいてもよい。
上記実施形態の光触媒フィルターに関しては、上述した光触媒フィルターの実施形態に関する説明がそのまま当てはまる。
揮発性化合物除去装置10においては、流入部11を通じて、揮発性化合物が揮発性化合物除去部14に流入され、当該揮発性化合物除去部14によって揮発性化合物が除去される。その結果、揮発性化合物が除去されてなる除去物が排出部15を通じて排出される。なお、本発明において除去物とは、揮発性化合物が揮発性化合物除去部14によって処理された後の物質を指し、例えば、COやHOが挙げられる。
以下、揮発性化合物除去装置10の各構成部について詳しく説明する。
<流入部>
流入部11は、揮発性化合物を揮発性化合物除去部14に流入させる機能を有する。例えば、揮発性化合物除去装置10内外で発生した揮発性化合物を揮発性化合物除去部14へ流入させる。ここで、揮発性化合物は空気とともに、揮発性化合物除去部14へ流入させてもよい。これにより、揮発性化合物除去部14への揮発性化合物の流入を促進できる。この場合、揮発性化合物除去装置10へ空気を取り入れるために、当該装置10には、後述するとおり、装置外部から装置内部へ空気を取り入れるための吸気口を備えてもよい。
<揮発性化合物除去部>
揮発性化合物除去部14は、本実施形態の光触媒フィルター13と、光触媒フィルター13に光照射する光源12とを含み、流入部11から流入された揮発性化合物を除去する機能を有する。ここで「除去」とは、揮発性化合物の吸着および揮発性化合物の分解の両者を意味するものとする。
揮発性化合物除去部14は、本実施形態の光触媒フィルター13を少なくとも含むが、本実施形態の光触媒フィルター13以外の光触媒フィルターを含んでいてもよい。その場合、例えば、従来公知の光触媒材料をフィルター基材に担持させたものを用いてもよい。例えば、上述の光触媒複合粒子を含まない光触媒材料を上記フィルター基材に担持した光触媒フィルター等を含んでいてもよい。
光源12は、例えば発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)、有機EL(electroluminescence)等により構成され、所定の波長を有する光を発光し、光触媒フィルター13に照射する。この照射光により、光触媒フィルター13に担持された光触媒複合粒子又は光触媒混合物が活性化され、流入した揮発性化合物を除去する。ただし、光源の種類や、照射光の波長などは特に限定されない。また、光源12と、光触媒フィルター13の相対的な位置関係、例えば、光源12と光触媒フィルター13との距離、光源12に対して配置される光触媒フィルター13の角度等も特に限定はされず、光源12や光触媒フィルター13の種類やサイズ、数等により適宜設定される。例えば、触媒反応効率化のため、光源12から照射される光が光触媒フィルター13の面に対して垂直または略垂直となるように、光源12や光触媒フィルター13を配置することが好ましい。ここで、本明細書において、略垂直とは垂直方向から±10°以内の傾きをしている態様を含むものをいう。
揮発性化合物除去装置10における揮発性化合物除去部14の配置は、流入部11から流入した揮発性化合物が揮発性化合物除去部14を通過し、その除去物が排出部15から排出され得るのであれば、特に制限されるものでなく、種々の配置の態様が考えられる。例えば、図11に示すように、揮発性化合物除去部14の光触媒フィルター面が装置底部に対して平行または略平行に配置されていてもよい。ここで、本明細書において、略平行とは平行方向から±10°以内の傾きをしている態様を含むものをいう。また、図示しないが、装置底部に対して略垂直の向き、または斜め向きなど、任意に配置することもできる。
揮発性化合物除去部14の段数は、1段であってもよいし、2段以上であってもよい。ここで、「段」とは、揮発性化合物の流れ方向における揮発性化合物除去部14の1個の単位を意味する。揮発性化合物除去部は、段数が増加するほど、装置全体としての揮発性化合物除去性能が向上するため、2段以上を有することが好ましく、3段以上を有することがさらに好ましい。もっとも、装置サイズの観点から、通常5段以下であり、好ましくは4段以下である。
揮発性化合物除去部14が2段以上である場合において、揮発性化合物除去部14同士は、平行または略平行に配置されていてもよいし、平行または略平行に配置されていなくてもよい。また、揮発性化合物の流れ方向が、装置の下部から上部方向、または装置の上部から下部方向となるように、揮発性化合物除去部14同士が配置されていてもよいし、装置の左部から右部方向、または装置の右部から左部方向となるように、揮発性化合物除去部14同士が配置されていてもよいし、あるいは上記以外の流れ方向となるように、揮発性化合物除去部14同士が配置されていてもよい。
本実施形態の揮発性化合物除去装置10が2段以上の揮発性化合物除去部14を含む場合、揮発性化合物除去性能の観点から、少なくとも1段の揮発性化合物除去部14が本実施形態の光触媒フィルター13を含むことが好ましく、すべての段の揮発性化合物除去部14が本実施形態の光触媒フィルター13を含むことがより好ましい。
本実施形態の揮発性化合物除去装置10が2段以上の揮発性化合物除去部14を含む場合、少なくとも前記揮発性化合物が最後に通過する最終段の前記揮発性化合物除去部14は、本実施形態の光触媒フィルター13を含むことが好ましい。2段以上からなる揮発性化合物除去部14の場合、本実施形態の光触媒フィルター13は、揮発性化合物が最後に通過する最終段に配置することで、効率的に揮発性化合物を除去することができる。これは、本実施形態の光触媒複合粒子又は光触媒混合物は、揮発性化合物濃度が低くても、高い除去性能を示すためである。
また、揮発性化合物除去部14の1段あたりに複数の光触媒フィルターが配置されている場合、揮発性化合物除去性能の観点から、1段に配置された複数の光触媒のうち少なくとも1つの光触媒フィルターが本実施形態の光触媒フィルターであることが好ましく、1段に配置されたすべての光触媒フィルターが本実施形態の光触媒フィルターであることがより好ましい。
<排出部>
排出部15は、揮発性化合物が揮発性化合物除去部14を通過することにより揮発性化合物が除去されてなる除去物を揮発性化合物除去装置10から排出する機能を有する。
除去物とは、揮発性化合物が揮発性化合物除去部14によって処理された後の物質を意味し、例えば、ホルムアルデヒドが揮発性化合物除去部14によって処理されると、除去物としてCO、HOなどが排出される。また、揮発性化合物除去装置10に後述する吸気口が配置されている場合などでは、除去物には空気が含まれていてもよい。
<その他>
揮発性化合物除去装置10は、当該装置外部から当該装置に空気を取り入れるための、吸気口を備えていてもよい。吸気口を備えることで、揮発性化合物除去部への揮発性化合物の流入を促進できる。
また、揮発性化合物除去装置10は、揮発性化合物を流入部11から揮発性化合物除去部14を通じて排出部15へ流動させやすくするための手段を備えていてもよい。当該手段としては、例えば、流入部11から排出部15への方向に沿って風を送る送風ファンや、流入部11から排出部15への方向に沿って陰圧とする手段を備えてもよい。
本実施形態の揮発性化合物除去装置は、揮発性化合物を良好に低減することができるため、例えば、循環式プッシュブル型換気装置、空気清浄機、薬品保管庫、およびダクトレスヒュームフードなどのヒュームフードとして好適に用いられる。
以下、ヒュームフードを例に、本実施形態の揮発性化合物除去装置をさらに説明する。
ヒュームフードとは、一般に、化学実験等を行う作業者を有害な雰囲気から保護する局所排気装置のことを意味する。図12の(a)および図12の(b)に、ヒュームフードの概略断面図を示す。図12の(a)は、ヒュームフードを正面から見た場合の概略断面図であり、図12の(b)は、ヒュームフードを側面から見た場合の概略断面図である。図12の(a)および図12の(b)に示すように、ヒュームフード30は、作業部17で発生した揮発性化合物を、流入部11によって揮発性化合物除去部14に流入し、揮発性化合物除去部14にて揮発性化合物を除去し、除去物を排出部15から排出する。
作業部17は、作業者が化学実験等の作業を行うための空間である。作業により生じた揮発性化合物を装置外部に拡散させないために、作業部17は外部と隔絶された空間を有していてもよい。
作業部17が外部と隔絶された空間を有する場合、作業部17には、手指を挿入して化学実験等に係る操作をするための手指挿入部16が設けられていてもよい。例えば、図12の(a)および図12の(b)に示すように手指を挿入できるような開口や、昇降スライド式扉などが挙げられる。なお、手指挿入部は上述した吸気口を兼ねてもよい。
作業部17で生じた揮発性化合物は、流入部11により揮発性化合物除去部14に導入される。この時、揮発性化合物を外部に漏らさないため、揮発性化合物は吸気口から取り入れられる空気とともに、揮発性化合物除去部14へ流入させることが好ましい。空気とともに、揮発性化合物除去部14へ流入させる方法として、例えば、送風ファンや、流入部11から排出部15への方向に沿って陰圧とする手段がある。これにより、揮発性化合物を外部に漏らさず、揮発性化合物除去部14への流入を促進できる。
揮発性化合物除去部14に導入された揮発性化合物は、前述したように、揮発性化合物除去部14にて除去され、揮発性化合物が除去された除去物は、排出部15を通じて外部へ排出される。ヒュームフードは、図12の(b)に示すようなHEPA(High Efficiency Particular Air)フィルター18やバックアップフィルター20を備えていてもよい。このようなフィルターを備えることで、ヒュームフード30内に流入したほこりなどを除去することができる。さらに、ヒュームフード30内で処理された除去物の排出を促進するために、ヒュームフード30は、図に示すような送風ファン19を備えていてもよい。
以上説明したとおり、上記ヒュームフード30は、作業部17で発生した揮発性化合物を、外部へ漏らすことなく、揮発性化合物除去部14を通じて、無害となって外部へ放出することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に物づく各種の変形が可能である。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
[光触媒複合粒子の調製]
(実施例1)
金属酸化物助触媒粒子としての酸化ジルコニウム粒子(関東電化工業社製 ZrO)3gとイソプロピルアルコール27gをサンプル瓶に入れ、超音波洗浄器(株式会社SND製 US-2KS)によって15分間の超音波分散処理を行った。
次に、金属酸化物助触媒粒子に対して80質量%(2.4g)のチタンテトライソプロポキシド(TTIP 富士フイルム和光純薬株式会社製)をサンプル瓶に滴下し、再度15分間の超音波分散処理を行った。その後、上記分散液を120℃の乾燥機内(エスペック株式会社製 SPH―101)に入れ、1時間静置することでイソプロピルアルコールを除去した。以上の工程を行っている際に、TTIPが空気中の水により加水分解反応を起こし、TiOを表面に有する金属酸化物助触媒粒子が形成された。
最後に、これらTiOを表面に有する金属酸化物助触媒粒子を電気加熱炉にて525℃、1時間焼成することで、TiOを結晶化させ、光触媒複合粒子1を得た。
得られた光触媒複合粒子における、TiOの質量比率を誘導結合プラズマ発光・分光(ICP-AES)分析を用いて求めたところ、18質量%であった。ICP-AES分析については後述する。
(実施例2)
TTIPの添加量を金属酸化物助触媒粒子に対して160質量%とした以外は、光触媒複合粒子1と同様にして光触媒複合粒子2を調製した。
得られた光触媒複合粒子における、TiOの質量比率は31質量%であった。
(比較例1)
酸化チタン(Evonik社製、P25)を比較光触媒複合粒子1として用いた。
(比較例2)
酸化ジルコニウム粒子(関東電化工業社製 ZrO)を比較光触媒複合粒子2として用いた。
ICP-AES分析は、以下の測定条件にて行った。
約10mgの光触媒複合粒子サンプルをマイクロ波試料分解装置(マイルストーンゼネラル社製、UltraWAVE)指定のテフロン製の容器に採取し、酸を加えて密栓した。そして、この密閉容器にマイクロ波を照射し、最高250℃で加圧酸分解を行った。分解後、超純水を加えて50mLに定容し、適宜希釈後、ICP-AES(株式会社日立ハイテクサイエンス製、SPS-3520UV)によるTi、Zr定量分析を行った。各元素の分析波長は、Tiが335.037nm、Zrが339.295nmとした。また、サンプル中の各元素濃度は下記式から算出した。
Figure 2023144774000001
なお、試料調製を含む測定の再現性確認のため、試験はn=2で行った。
そして、得られた各種元素濃度より、光触媒複合粒子全量に対する、TiO、及びZrOの質量比率をそれぞれ求めた。
[滞留式ホルムアルデヒド除去性能評価]
(サンプル作製方法)
実施例1~2及び比較例1~2の光触媒複合粒子0.25gとイオン交換水2.25gを20mLのサンプル瓶に入れ、超音波洗浄器によって15分間の超音波分散を行った。
次に、上記分散液0.2gを直径28mmのシャーレに滴下した。その後、上記シャーレを120℃の乾燥機内に入れ、1時間静置することでイオン交換水を蒸発させた。以上の工程により、約20mgの光触媒複合粒子によってシャーレの底面がコーティングされたサンプルを作製した。
(ホルムアルデヒド除去性能評価方法)
図2に示すように、上記の方法で作製したサンプル42を5Lのテドラーバック44内に設置し、真空引きを行った。真空引きされたテドラーバック内に、25℃、37%のホルマリン液を湿度50%RHの空気でバブリングさせた0.1Lのガスと、湿度50%RHの空気3.6Lを充填した。これにより、テドラーバック中に約35ppmのホルムアルデヒド(HCHO)ガスと約80ppmのメタノール(MeOH)ガスを含む試験ガス41を3.7Lを含ませた。
ここで試験ガス導入直後をt=0(min)と定義し、そのまま75分間テドラーバックを静置した後に(t=75)、サンプルへ波長365nm、光量1.0mW/cmのUV-LED光43を照射開始した。
試験ガス導入直後(t=0)と、UV-LED光照射開始105分後(t=180)ののHCHOガス濃度を株式会社島津製作所のガスクロマトグラフィー(GC-2010 Plus)45により測定し、下記の式を用いてHCHO除去率を算出した。
ホルムアルデヒド(HCHO)除去率(%)=100×{UV照射75分前(t=0)のHCHO濃度(ppm)-UV照射105分後(t=180)のHCHO濃度(ppm)}/UV照射75分前(t=0)のHCHO濃度(ppm)
<分析条件>
・検出器:BID-2010 Plus
・カラム:RESTEK社製、Rt-U-BOND
・キャリアガス:He
・キャリアガス流速:30mL/min
・カラム温度:90℃(3min)、170℃(3min)
・インジェクタ温度:100℃
・ディテクタ温度:180℃
実施例および比較例におけるホルムアルデヒド除去率を表1および図1に示す。表1には、光触媒複合粒子の調製に用いた金属酸化物助触媒粒子種、TTIPの添加量、光触媒複合粒子中の酸化チタンの質量比率、並びに、前記質量比率より求めた、光触媒複合粒子1gあたりの金属酸化物助触媒及び酸化チタンのモル数についても記載した。
Figure 2023144774000002
上記結果から、金属酸化物助触媒(ZrO)や光触媒(TiO)を単独で使用する場合よりも、本発明の光触媒複合粒子はHCHO除去性能が高いことが示された。
[光触媒混合物の調製]
(実施例3~6)
TiO粒子(Evonik Resource Efficiency GmbH製、P25)と光触媒複合粒子を表2に記載の混合比率で物理混合した。光触媒複合粒子は、上記滞留式ホルムアルデヒド除去性能評価にて高除去率が得られた、実施例1の光触媒複合粒子1を用いた。
物理混合には内径10cmの深型メノー乳鉢を用い、約10分間乳棒によりかき混ぜることでTiO粒子と光触媒複合粒子1を十分に混ぜ合わせた。
(比較例3~7)
光触媒複合粒子1を、比較光触媒複合粒子2として用いた酸化ジルコニウム粒子(関東電化工業社製 ZrO)に変更し、表2に記載の混合比率とした以外は、実施例3~6と同様にして物理混合した。
[光触媒フィルターのホルムアルデヒドガス除去性能評価]
(光触媒フィルターの作製)
光触媒フィルターの作製フローの一例として、光触媒混合物を調製して光触媒フィルターを作製する場合の作製フローを図4に示す。
実施例1で使用した光触媒複合粒子1、比較例1で使用した比較光触媒複合粒子1、または上記のとおり作製した実施例3~6、若しくは比較例3~7の光触媒混合物を10gとイオン交換水90gをガラス容器に入れ、超音波洗浄器(株式会社SND製、US-2KS)によって10分間の超音波分散を行うことで、光触媒スラリーを作製した。
縦5cm、横5cm、厚さ0.8cmの日本ルツボ株式会社製のストレートフィルター(セル稠密度:300個/inch)を縦1cm×横1cm×厚み0.8cmに加工した。上記の光触媒スラリーにディップコートし、120℃の乾燥機内にて1時間静置乾燥させた。ストレートフィルター上の光触媒担持量が約0.03g/cm(約0.024g)になるまで、ディップコートと乾燥処理を1~4回繰り返し行うことで光触媒フィルターを作製した。
(流通式ホルムアルデヒド除去性能評価)
実施例1で使用した光触媒複合粒子1、比較例1で使用した比較光触媒複合粒子1、または上記のとおり作製した実施例3~6、若しくは比較例3~7の光触媒混合物を担持した光触媒フィルターをサンプルとして用いた。
試験には、25℃の20%中性緩衝ホルマリン液50ccをDry air(3cm/min)でバブリングしたガスに加え、Dry air(197cm/min)、Wet air(400cm/min)を混合したガスを使用した。この試験ガス中には、HCHO約8.3ppm(初期濃度)およびMeOH約6.5ppmが含まれていた。
光触媒フィルターに試験ガスを面速0.1m/sにて流通させてから9.25時間後に、波長365nmのUV光を光触媒フィルター上部に照射した。UV光の照射強度は7mW/cmとし、光触媒フィルター通過後のHCHO濃度をガスクロマトグラフィー(GC-2010 Plus)により測定した。GCの分析条件は上記と同様である。得られた評価結果を下記式に適用することにより、光触媒フィルターのHCHO除去率を算出した。
ホルムアルデヒド(HCHO)除去率(%)=100×{初期HCHO濃度(ppm)-光触媒フィルター通過後HCHO濃度(ppm)}/初期HCHO濃度(ppm)
結果を表2、図5~図7に示す。なお、表2には、使用した光触媒混合物1g中の、光触媒複合粒子(A)由来のTiO及びZrOのモル数、光触媒粒子(B)に由来するTiOのモル数、並びにTiOの総モル数についても併記した。
図5は、光触媒混合物中のZrO含有粒子(光触媒複合粒子1又は比較光触媒複合粒子2であるZrO)の含有比率(質量%)と、HCHO除去率(%)の関係を表すグラフである。
図6は、サンプル1g中のTiOの総モル数(mmol/g)とHCHO除去率(%)の関係を表すグラフである。
図7は、サンプル1g中のZrOのモル数(mmol/g)とHCHO除去率(%)の関係を表すグラフである。
Figure 2023144774000003
表2および図5に示すように、光触媒フィルターに担持させる光触媒として光触媒複合粒子を用いた実施例1は、酸化チタン粒子を単独で用いた比較例1よりも高いホルムアルデヒド除去性能を示した。
また、光触媒フィルターに担持させる光触媒として光触媒混合物を用いた実施例3~6と比較例3~7においては、金属酸化物助触媒粒子表面に酸化チタンを付着させた光触媒複合粒子と酸化チタン粒子の混合物である実施例の方が、金属酸化物助触媒粒子と酸化チタン粒子の物理混合物である比較例の場合よりも、高いホルムアルデヒド除去性能を示した。
さらに、図5より、金属助触媒粒子表面に酸化チタンを付着させた粒子と酸化チタン粒子の最適な混合比は、金属酸化物助触媒粒子表面に酸化チタンを付着させていない場合の最適な混合比と異なることが確認された。
図6や図7に示すように、サンプル中のTiO、ZrOそれぞれのモル数ベースで比較した場合においても、本実施形態の光触媒混合物を用いた方が、金属酸化物助触媒粒子と光触媒粒子の物理混合物よりもHCHO除去率が高く、優位であることがわかった。
また、サンプル中のTiO及びZrOのモル数がほぼ同等である、実施例1と比較例7を比べると、実施例1のHCHO除去率が高いことも示された。すなわち、金属助触媒粒子と酸化チタン粒子を単に物理混合した場合よりも、光触媒複合粒子とした方が、優位であることがわかった。
[光触媒混合物の調製]
(比較例8~10)
光触媒複合粒子1を比較光触媒複合粒子2として用いた酸化ジルコニウム粒子(関東電化工業社製 ZrO)に変更し、表3に記載の混合比率とした以外は、実施例3~6と同様にして物理混合した。
[ホルムアルデヒド吸着性能評価]
図8に光触媒のHCHO吸着性能評価の試験系の構成を示す。富士フイルム和光純薬株式会社製のパラホルムアルデヒドを100ccのサンプル瓶に約0.03g入れ、27℃に調整した恒温槽内に静置した。流量計1を48sccm、流量計2を2sccmに設定し、試験系を流通するHCHO濃度が約8ppmに安定化するまで約3時間放置した。内径0.38cmのセル内に表3に記載したサンプルを0.05cm充填した。その後、セル内に試験ガスを流通させ、セル通過前後のHCHO濃度をHCHO検出器1、2により計測した。そして、セル通過後のHCHO濃度が1ppm以上まで上昇した時を評価サンプルの破過点として記録した。
結果を表3及び図9~10に示す。
図9は、サンプル1g中のZrOのモル数(mmol/g)とHCHO吸着量(mL)の関係を表すグラフである。
図10は、サンプル1g中の総TiOのモル数(mmol/g)とHCHO吸着量(mL)の関係を表すグラフである。
Figure 2023144774000004
表3及び図9~10に示すように、HCHO吸着性は、単にサンプル中に含まれるZrOやTiOのモル数に依存することがわかった。すなわち、サンプルに含まれる粒子の構造の違いによるHCHO吸着性の違いは見られなかった。
この結果から、実施例において比較例よりもHCHO除去性が優れる理由としては、HCHOの分解性がより優れるためであると考えられる。
1 光触媒フィルター
10 揮発性化合物除去装置
11 流入部
12 光源
13 光触媒フィルター
14 揮発性化合物除去部
15 排出部
16 手指挿入部
17 作業部
18 HEPAフィルター
19 ファン
20 バックアップフィルター
30 ヒュームフード
41 試験ガス
42 サンプル
43 UV-LED光
44 テドラーバック
45 ガスクロマトグラフィー

Claims (11)

  1. 金属酸化物助触媒を含む粒子と、酸化チタンを含む光触媒と、を含み、
    前記光触媒が前記粒子表面の少なくとも一部に付着している、光触媒複合粒子。
  2. 前記金属酸化物助触媒が酸化ジルコニウムである請求項1に記載の光触媒複合粒子。
  3. 前記金属酸化物助触媒を含む粒子と前記光触媒の合計量に対する、前記光触媒の質量比率が16~40質量%である請求項1又は2に記載の光触媒複合粒子。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の光触媒複合粒子と、酸化チタンを含む光触媒粒子とを含む、光触媒混合物。
  5. 前記光触媒複合粒子と前記酸化チタンを含む光触媒粒子の合計量に対する、前記光触媒複合粒子の質量比率が5~99質量%である請求項4に記載の光触媒混合物。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載の光触媒複合粒子、又は請求項4若しくは5に記載の光触媒混合物と、バインダーと、溶媒とを含む光触媒コーティング剤。
  7. 請求項1~3のいずれか1項に記載の光触媒複合粒子、又は請求項4若しくは5に記載の光触媒混合物と、バインダーとを含む光触媒コーティング層。
  8. 請求項1~3のいずれか1項に記載の光触媒複合粒子、又は請求項4若しくは5に記載の光触媒混合物を用いて、揮発性有機化合物を除去する方法。
  9. 前記揮発性有機化合物がホルムアルデヒドである、請求項8に記載の方法。
  10. 請求項1~3のいずれか1項に記載の光触媒複合粒子、又は請求項4若しくは5に記載の光触媒混合物を、フィルター基材に担持させた光触媒フィルター。
  11. 請求項10に記載の光触媒フィルターおよび前記光触媒フィルターに光照射する光源を含む揮発性化合物除去部と、
    前記揮発性化合物除去部に揮発性化合物を流入させる流入部と、
    前記揮発性化合物が前記揮発性化合物除去部を通過することにより揮発性化合物が除去されてなる除去物を排出する排出部と、を備える、揮発性化合物除去装置。
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