JP2023141627A - 繊維強化樹脂基材とその成形品、および繊維強化樹脂基材の製造方法 - Google Patents

繊維強化樹脂基材とその成形品、および繊維強化樹脂基材の製造方法 Download PDF

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淳史 増永
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Abstract

【課題】優れた圧縮特性を有する熱可塑性樹脂組成物の繊維強化基材、およびその成形品を提供すること。【解決手段】層状ケイ酸塩と熱可塑性樹脂を含み、次の条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物と、連続した繊維状充填材または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材とからなる繊維強化樹脂基材。(1)熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下の層状ケイ酸塩を含む(2)層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂組成物中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している【選択図】なし

Description

本発明は熱可塑性樹脂組成物を、連続した繊維状充填材に、または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材に含浸させてなる繊維強化樹脂基材、およびその成形品に関する。
より詳しくは、層状ケイ酸塩と熱可塑性樹脂を含み、次の条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物と、連続した繊維状充填材または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材とからなる繊維強化樹脂基材である。
(1)熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下の層状ケイ酸塩を含む
(2)層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂組成物中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している
近年、航空機用途など、軽量かつ高強度の構造部材として、繊維強化樹脂複合材料が種々提案されている。一般に、このような構造部材は、軽量で、高い機械的物性、特に圧縮強度を有することが求められている。
このような構造部材には、従来金属材料が使用されることが多かったが、金属材料に比して軽量な繊維強化樹脂複合材料の使用が近年ますます拡大している。繊維強化樹脂複合材料のマトリックス樹脂としては様々なものを使用しうるが、熱硬化性樹脂と比較して成形サイクルの短い熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂複合材料が、近年、注目されている。特に、航空機用途など、耐熱性や耐薬品性を求められる分野では、マトリックス樹脂として、ポリフェニレンスルフィド樹脂やポリアリールエーテルケトン樹脂の使用が検討されている。
一方で、熱硬化性樹脂と比較して、熱可塑性樹脂は弾性率に劣る傾向にあり、そのため、熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂複合材料の圧縮強度などの機械特性は、熱硬化性樹脂からなる繊維強化樹脂複合材料に対して劣る傾向にあり、その改善が求められていた。
このような背景のもと、特許文献1では、疎水性ナノセルロース繊維0.3~5質量%及び、反応により重合することで熱可塑エポキシ樹脂となるモノマー99.7~95質量%からなる混合物がポリマー化されてなることを特徴とする複合樹脂組成物と強化繊維とからなることを特徴とする繊維強化複合材が開示されている。
特開2021-187917号公報
特許文献1において提案されている方法では、曲げ弾性率の向上効果は小さく、圧縮強度の向上効果も十分ではないといった課題があった。
本発明は、前述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。本発明は以下の構成を有する。
[1]層状ケイ酸塩と熱可塑性樹脂を含み、次の条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物と、連続した繊維状充填材または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材とからなる繊維強化樹脂基材。
(1)熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下の層状ケイ酸塩を含む
(2)層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂組成物中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している
[2]上記層状ケイ酸塩が膨潤性の層状ケイ酸塩である、[1]に記載の繊維強化樹脂基材。
[3]上記熱可塑性樹脂組成物と、連続した繊維状充填材とからなることを特徴とする[1]または[2]に記載の繊維強化樹脂基材。
[4]上記熱可塑性樹脂がポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリーレンスルフィド樹脂である[1]~[3]のいずれかに記載の繊維強化樹脂基材。
[5]上記熱可塑性樹脂が、融解熱量(ΔHm)が45J/g以下のポリアリールエーテルケトン樹脂であることを特徴とする[4]に記載の繊維強化樹脂基材。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の繊維強化樹脂基材が成形されてなる成形品。
[7]層間イオンが有機オニウムイオンで置換された層状ケイ酸塩と、熱可塑性樹脂との溶融混練によって次の条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物を製造し、上記熱可塑性樹脂組成物を、連続した繊維状充填材、または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材に含浸させる繊維強化樹脂基材の製造方法。
(1)熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下の層状ケイ酸塩を含む
(2)層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂組成物中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している
[8]上記熱可塑性樹脂がポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリーレンスルフィド樹脂で、前記溶融混練をする際の温度が上記層間イオンが有機オニウムイオンで置換された層状ケイ酸塩の35%分解温度以上であることを特徴とする[7]に記載の繊維強化樹脂基材の製造方法。
[9]上記熱可塑性樹脂が、融解熱量(ΔHm)が45J/g以下のポリアリールエーテルケトン樹脂である[8]に記載の繊維強化樹脂基材の製造方法。
本発明によれば、優れた圧縮特性を有する繊維強化樹脂基材を得ることができる。本発明の繊維強化樹脂基材、あるいはその成形品は、例えば、電機・電子機器部品、自動車部品、航空機部品、機械部品として使用することができる。
本発明の繊維強化樹脂基材は、層状ケイ酸塩と熱可塑性樹脂を含み、次の条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物と、連続した繊維状充填材または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材とからなる繊維強化樹脂基材である。
(1)熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下の層状ケイ酸塩を含む
(2)層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂組成物中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している
以下に、本発明実施の好ましい形態を説明する。
(1)熱可塑性樹脂
本発明で用いられる熱可塑性樹脂の種類に特に制限はないが、層状ケイ酸塩を微分散化させ、繊維強化樹脂基材として好ましい効果が期待される成分としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂が挙げられ、特に好ましくは、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂である。なお、ここで微分散とは、層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している状態を指す。
(2)ポリアリールエーテルケトン樹脂
本発明で用いられるポリアリールエーテルケトン樹脂は、アリール基をエーテル基およびケトン基で結合した反復単位を有する熱可塑性樹脂であれば特に制限されないが、下記一般式(I)の2種類の単位を有する重合体であることが好ましい。
Figure 2023141627000001
(ここで、ArおよびArは各々アリール基を表し、ArおよびArは同一でも異なっていてもよく、ArおよびArは1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)フェニレン、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレンおよび2,6-ナフチレンまたはアントラセニレン単位から好ましく選択できる。Xは電子求引性基を表し、カルボニル基またはスルホニル基から好ましく選択できる。Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基(例えば-CH-)、イソプロピリデン、およびヘキサフルオロイソプロピリデンのいずれかである)。
これらの単位で、X基の少なくとも50%はカルボニル基であり、より好ましくは70%以上である。また、好ましくはY基の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%は酸素原子である。
ポリアリールエーテルケトン樹脂としては、下記式(II)の単位および/または下記式(III)から(V)を有するポリエーテルエーテルケトン、下記式(VI)の単位を有するポリエーテルケトン、下記式(VII)の単位および/または式(VIII)の単位を有するポリエーテルケトンケトン、下記式(IX)の単位から成るポリエーテルエーテルケトンケトンなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して使用することもできる。
Figure 2023141627000002
ポリアリールエーテルケトンとしては特に限定されるものではないが、例えば、ダイセル・エボニック(株)製“ベスタキープ(登録商標)”、ビクトレックス・ジャパン(株)製“VICTREX(登録商標)”、アルケマ(株)製“KEPSTAN(登録商標)”、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製“アバスパイア(登録商標)”、“キータスパイア(登録商標)”、“NovaSpire(登録商標)”などとして上市されているものを入手して用いることや、PEEK/PEDEK共重合体として特許文献(特表2016-526598)で報告されているもの、PEEK/PEoEK共重合体として特許文献(WO2020/254097)で報告されているもの、あるいはPEEK/PEmEK共重合体として特許文献(特表2021-507077)で報告されているものを合成して用いることもできる。
また、ポリアリールエーテルケトンの融解熱量(ΔHm)は、45J/g以下であることが好ましく、40J/g以下であることがより好ましい。このようなΔHmを有するポリアリールエーテルケトンを用いて、層状ケイ酸塩と熱可塑性樹脂を含み、上記条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物と、連続した繊維状充填材または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材とからなる繊維強化樹脂基材を製造した場合、圧縮特性が向上しやすい傾向にある。この理由は定かではないが、ΔHmが小さい、すなわち非晶部位の多いポリアリールエーテルケトンほど、樹脂中に均一に分散した層状ケイ酸塩による樹脂弾性率の向上効果が大きく、結果として、繊維強化樹脂基材の圧縮特性が向上しやすいものと想定している。
熱可塑性樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)で測定する。すなわち、融点は、JIS K-7121(2012)に基づいた方法により、室温から10℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(Tm1)の測定後、Tm1+40℃で2分間保持し、次いで10℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から10℃/分の昇温速度で加熱(2stRUN)した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする。
熱可塑性樹脂の融解熱量(ΔHm)は、示差走査熱量計(DSC)で測定する。すなわち、ΔHmは、JIS K-7122(2012)に基づいた方法により、室温から10℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(Tm1)の測定後、Tm1+40℃で2分間保持し、次いで10℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から10℃/分の昇温速度で加熱(2stRUN)した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピーク面積から求める。
(3)ポリアリーレンスルフィド樹脂
本発明において、ポリアリーレンスルフィドとは、一般式(X)で示される繰り返し単位を含む重合体であり、上記繰り返し単位を90モル%以上含むと好ましく、95モル%以上含むとより好ましい。上記繰り返し単位が90モル%未満では、耐熱性が損なわれるので好ましくない。
Figure 2023141627000003
ポリアリーレンスルフィドの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンや、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。これらの中でも、p-フェニレンスルフィド由来の単位を全繰り返し単位中80モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドがより好ましく、90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドがさらに好ましい。
ポリアリーレンスルフィドを製造する方法としては、特に限定はなく、有機極性溶媒中でジクロロ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させる方法や、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱してポリアリーレンスルフィドに転化する方法や、ジヨード芳香族化合物と硫黄単体を溶融反応させる方法などが挙げられる。これら方法から得られたポリアリーレンスルフィドの後処理にも特に限定されず、溶媒で洗浄してオリゴマー成分を除去する処理、加熱や脱揮などで溶媒やガス成分を低減する処理、酸素雰囲気下で架橋させる処理、得られたポリアリーレンスルフィドを再度溶融させて追加反応を行う処理などを施しても良い。
(4)層状ケイ酸塩
層状ケイ酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとるケイ酸塩化合物である。
その具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであっても良い。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素雲母などの膨潤性合成雲母が好ましい。膨潤性の層状ケイ酸塩は、層状ケイ酸塩の層間に存在する陽イオンを有機オニウムイオンで置換することが可能であり、層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されている層状ケイ酸塩は、熱可塑性樹脂との溶融混練によって熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、樹脂への分散性が向上する傾向にあるため好ましい。
熱可塑性樹脂との溶融混練によって熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、樹脂への分散性が向上するように、層状ケイ酸塩は表面処理されているか、または層状ケイ酸塩の層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されていることが好ましい。このような層状ケイ酸塩を用いることで、樹脂への分散性が向上する傾向にある。有機オニウムイオンとはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンに代表される化合物群である。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好んで用いられる。アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムなどのいずれでも良い。
層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されている層状ケイ酸塩の製造方法に特に制限はなく、例えば、交換可能なカチオンを含有する粘土と有機オニウムイオンを反応させる公知の技術(例えば特開昭60-42451号公報等参照)により製造することができる。
なお、熱可塑性樹脂との溶融混練によって熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、層状ケイ酸塩の層間距離は、1.5nm以上であることが好ましく、1.8nm以上であることがより好ましく、2.2nm以上であることが更に好ましい。このような層間距離を有する層状ケイ酸塩を用いることで、分散性が向上する傾向にある。層間距離の上限値は、有機オニウムイオンの種類や量に応じて変化しうるものであり、特に限定されないが、一例を挙げると、層間距離の上限は10nm以下である。また、層状ケイ酸塩の層間距離は、X線回折装置を用いて測定することができる。
(5)熱可塑性樹脂組成物
本発明の繊維強化樹脂基材に含まれる熱可塑性樹脂組成物は、層状ケイ酸塩と熱可塑性樹脂を含み、次の条件(1)、(2)を満たすことを特徴とする。
(1)熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下の層状ケイ酸塩を含む
(2)層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂組成物中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している。
本発明において、熱可塑性樹脂組成物中の層状ケイ酸塩の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であり、0.5質量%以上18質量%以下が好ましく、1.0質量%以上15質量%以下がより好ましい。0.1質量%未満では、機械特性の改良効果が小さく、20質量%を超える場合は、成形性が大きく低下する場合がある。ここで、熱可塑樹脂組成物中の層状ケイ酸塩の含有量は次のように測定する。熱可塑性樹脂組成物を550℃の電気炉で質量変化がなくなるまでの時間、灰化させ、次の式(1)により求められる無機灰分の含有量を層状ケイ酸塩の含有量として取り扱う。
無機灰分の含有量=100×無機灰分量/熱可塑性樹脂組成物量・・・(1)。
本発明において、熱可塑性樹脂組成物中の層状ケイ酸塩は、平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態に劈開し、樹脂中に均一に分散している。
熱可塑性樹脂組成物中の層状ケイ酸塩の平均層厚みは、0.6nm以上14nm以下が好ましく、0.8nm以上13nm以下がより好ましい。平均層厚みが15nmを超える場合、機械特性の改良効果が小さくなる傾向にある。
熱可塑性樹脂組成物中の層状ケイ酸塩の平均アスペクト比は、11以上450以下が好ましく、12以上400以下がより好ましい。平均アスペクト比が10未満の場合、機械特性の改良効果が小さくなり、500を超える場合には耐衝撃性の低下が大きくなる傾向がある。
ここで、平均層厚みとは、多層状であった層状ケイ酸塩が、単層~15層程度に分裂したものの厚みの平均を意味する。また、平均アスペクト比とは観察された個々の層状ケイ酸塩の最大長さを層厚みで除した値の平均である。
なお、熱可塑性樹脂組成物中の層状ケイ酸塩の平均層厚みと平均アスペクト比は、熱可塑性樹脂組成物から切片を切削し、これを電子顕微鏡で観察することで、熱可塑性樹脂組成物中に分散している50個以上の層状ケイ酸塩についてそれぞれ層厚みとアスペクト比を測定し、その数平均値として求める。
一般に、熱可塑性繊維強化樹脂複合材料は、熱可塑性樹脂の弾性率が熱硬化性樹脂よりも低い傾向にあるため、熱硬化性繊維強化樹脂複合材料よりも圧縮特性などに乏しい傾向がある。従来は、熱可塑性樹脂組成物の弾性率を向上させるために、カット長1mm以上6mm未満に細断されたガラス短繊維やマイカなどを無機フィラーとして配合することが実施されているが、このような無機フィラーは、連続した繊維状充填材、特に一方向に配列した繊維状充填剤と用いる場合、繊維状充填剤のアライメント乱れを生じるため、不連続の繊維状充填剤が分散した強化繊維基材と用いる場合、当該無機フィラーが当該強化繊維基材に貫入できず組成が不均一になるため、好ましくない。
一方で、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で層状ケイ酸塩が均一に分散しているため、繊維状充填材のアライメント乱れを生じにくく、また組成を均一にしやすいため、上記連続した繊維状充填剤や上記不連続の繊維状充填剤が分散した強化繊維基材と好ましく用いることができ、特に一方向に配列してなる連続した繊維状充填材を用いた繊維強化樹脂複合材料を製造するために好ましく用いることができる。
(6)本発明の繊維強化樹脂基材
本発明では、連続した繊維状充填材、または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材を用いる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維などを挙げることができる。またこれら繊維状充填材の形状は、連続繊維やチョップドストランドのような短繊維やウィスカーの形状を挙げることができる。
繊維強化樹脂基材中の繊維状充填材含有量は、例えば下記のような方法で測定できる。繊維強化樹脂基材を、熱可塑性樹脂と、層状ケイ酸塩がそれぞれ溶解する溶媒を用いて溶解し、不溶分を層状ケイ酸塩が通過でき、かつ繊維状充填材が通過しない孔径のフィルターを用いてろ過し、ろ過物として繊維状充填材を回収し、洗浄後質量を測定する。
繊維強化樹脂基材の態様は以下の2種類である。第一の態様は、連続した繊維状充填材に熱可塑性樹脂組成物を含浸させてなる繊維強化樹脂基材であり、第二の態様は不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材に、熱可塑性樹脂組成物を含浸させてなる繊維強化樹脂基材である。
本発明の実施形態において、第一の態様における連続した繊維状充填材とは、当該繊維が途切れのないものをいう。連続した繊維状充填材の形態および配列としては、例えば、一方向に引き揃えられたもの、織物(クロス)、編み物、組み紐、トウ等が挙げられる。また、特定方向の機械特性を効率よく高められることから、当該繊維が一方向に配列してなる連続した繊維状充填材が好ましい。
第二の態様における不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材とは、当該繊維状充填材が6mm以上100mm以下に切断され分散されたマット状のものをいう。強化繊維基材は、繊維を溶液に分散させた後、シート状に製造する湿式法や、カーディング装置やエアレイド装置を用いた乾式法などの任意の方法により得ることができる。生産性の観点から、カーディング装置やエアレイド装置を用いた乾式法が好ましい。強化繊維基材における不連続の繊維状充填材の数平均繊維長の下限については、7mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましい。不連続の繊維状充填剤の数平均繊維長が6mm未満の場合、不連続繊維が分散されたマット形状の強化繊維基材の形態保持が困難になり、得られる繊維強化樹脂基材の力学特性も低下する。一方、不連続の繊維状充填剤の数平均繊維長の上限については、80mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、50mm以下がさらに好ましい。不連続の繊維状充填剤の数平均繊維長が100mm超である場合、得られる繊維強化樹脂基材の成形性が低下する。
不連続の繊維状充填剤の数平均繊維長は、以下の方法により求めることができる。まず、繊維強化樹脂基材から100mm×100mmのサンプルを切り出し、切り出したサンプルを550℃の電気炉中で1.5時間加熱し、マトリックス樹脂を焼き飛ばす。こうして得られた不連続強化繊維の中から、不連続強化繊維束を無作為に400本採取する。取り出した不連続強化繊維束について、ノギスを用いて1mm単位で繊維長を測定し、次式により数平均繊維長(Ln)を算出することができる。
Ln=ΣLi/400
(Li:測定した繊維長(i=1,2,3,・・・400)(単位:mm))。
不連続の繊維状充填剤の数平均繊維長は、強化繊維基材製造時に繊維を所望の長さに切断することにより、上記範囲に調整することができる。不連続の繊維状充填剤が分散した強化繊維基材の配向性については特に制限は無いが、成形性の観点からは等方的に分散されている方が好ましい。
(7)本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂と、層間イオンが有機オニウムイオンで置換された層状ケイ酸塩をそれぞれドライブレンドし、押出機メインフィーダーより供給し、樹脂の融点以上の温度で溶融混練する方法を好ましく用いることができる。また、溶融混練時に発生する低分子量の揮発成分や水分を除去する目的で、ベント口を設けることも好んで用いられる。押出機のスクリューアレンジにも特に制限はないが、層状ケイ酸塩を微分散化させるために、ニーディングゾーンを設けることが好ましい。
ポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリーレンスルフィド樹脂と層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されている層状ケイ酸塩の溶融混練によって、熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、その溶融混練温度は、層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されている層状ケイ酸塩の35%分解温度以上であることが好ましい。より好ましくは45%分解温度以上である。
ここで、層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されている層状ケイ酸塩の35%分解温度とは、乾燥状態の層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されている層状ケイ酸塩を、窒素雰囲気下で50℃から20℃/分の昇温速度で550℃まで加熱した際に、次の式(2)で表されように、550℃での質量減少率を100%としたときに、質量減少率が35%となる温度である。また、45%分解温度も同様に、550℃での質量減少率を100%としたときに、質量減少率が45%となる温度である。なお、質量減少率は、熱質量分析(TG)で測定することが出来る。
35%分解温度での50℃時点の質量からの質量減少率/550℃での50℃時点の質量から質量減少率×100=35%・・・(2)
また、ポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリーレンスルフィド樹脂と層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されている層状ケイ酸塩の溶融混練によって、熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、ポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリーレンスルフィド樹脂の融点は、層間に存在する陽イオンが有機オニウムイオンで置換されている層状ケイ酸塩の35%分解温度-40℃以上35%分解温度+40℃以下にあることが好ましい。このような融点を有するポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリーレンスルフィド樹脂を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造することで、層状ケイ酸塩が樹脂中に分散しやすく、また、溶融混練時に樹脂の熱劣化を生じにくく好ましい。
(8)本発明の繊維強化樹脂基材の製造方法
上述した第一の態様における、連続した繊維状充填材に熱可塑性樹脂組成物を含浸させる方法としては、例えば、フィルム状の熱可塑性樹脂組成物を溶融し、加圧することで繊維状充填剤に熱可塑性樹脂組成物を含浸させるフィルム法、繊維状の熱可塑性樹脂組成物と繊維状充填剤とを混紡した後、繊維状の熱可塑性樹脂組成物を溶融し、加圧することで繊維状充填剤に熱可塑性樹樹脂組成物を含浸させるコミングル法、粉末状の熱可塑性樹脂組成物を繊維状充填剤における繊維の隙間に分散させた後、粉末状の熱可塑性樹脂組成物を溶融し、加圧することで繊維状充填剤に含浸させる粉末法、溶融した熱可塑性樹脂中に繊維状充填剤を浸し、加圧することで繊維状充填剤に熱可塑性樹脂組成物を含浸させる溶融法が挙げられる。様々な厚み、繊維体積含有率など多品種の繊維強化樹脂基材を作製できることから、溶融法が好ましい。
上述した第二の態様における、不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材に熱可塑性樹脂組成物を含浸させる方法としては、例えば、溶融した熱可塑性樹脂組成物を押出機により供給して強化繊維基材に含浸させる方法、粉末の熱可塑性樹脂組成物を強化繊維基材の繊維層に分散し溶融させる方法、熱可塑性樹脂組成物をフィルム化して強化繊維基材とラミネートした後、溶融、加圧する方法、熱可塑性樹脂組成物を溶剤に溶かし溶液の状態で強化繊維基材に含浸させた後に溶剤を揮発させる方法、熱可塑性樹脂組成物を繊維化して不連続繊維との混合糸にする方法、メルトブロー不織布を用いてラミネートした後、溶融、加圧する方法などが挙げられる。
また、本発明の繊維強化樹脂基材は、その用法や目的に応じて、所望の含浸度合いを選択することができる。例えば、十分に含浸させたプリプレグや、半含浸のセミプレグ、マトリックス樹脂含有量の低いファブリックなどが挙げられる。一般的に、含浸度合いの高い成形材料ほど、短時間の成形で力学特性に優れる成形品が得られるため好ましい。
(9)本発明の繊維強化樹脂基材を用いた成形方法
本発明の繊維強化樹脂基材を用いた成形方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、本発明の繊維強化樹脂基材を任意の構成で積層した材料に対して、加熱加圧するプレス成形法、オートクレーブ内に投入して加熱加圧するオートクレーブ成形法、フィルムなどで包み込み内部を減圧にして大気圧で加圧しながらオーブン中で加熱するバッギング成形法、張力をかけながらテープを巻き付け、オーブン内で加熱するラッピングテープ法などを採用することが出来る。
本発明の繊維強化樹脂基材は、所望に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤などを添加することもできる。
本発明の繊維強化樹脂基材から得られる成形品は、電子部品用途、電気機器部品用途、家庭、事務電気製品部品用途、機械関連部品用途、光学機器、精密機械関連部品用途、自動車・車両関連部品用途、各種航空・宇宙用途等々に適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。各実施例および比較例において用いた化合物を以下に示す。
<ポリアリールエーテルケトン樹脂>
・ポリエーテルエーテルケトン(以下、PEEKとも表記する。Victrex社製“Victrex(登録商標)”151G、融点:346℃、ΔHm=56J/g)
・PEEK/PEDEK共重合体(融点:307℃、ΔHm=35J/g、下記参考例1の手順で合成)。
<ポリアリーレンスルフィド樹脂>
・ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSとも表記する。東レ社製“トレリナ(登録商標)”M2088、融点:280℃、ΔHm=37J/g)。
<層状ケイ酸塩>
・層間イオンが有機オニウムイオンで置換された膨潤性の層状ケイ酸塩(片倉コープアグリ社製“ソマシフ(登録商標)”MAE、層間距離3.2nm、35%分解温度330℃)
・層間イオンがナトリウムイオンである膨潤性の層状ケイ酸塩(片倉コープアグリ社製“ソマシフ(登録商標)”ME-100、層間距離1.0nm)
・非膨潤性の層状ケイ酸塩(片倉コープアグリ社製“ミクロマイカ(登録商標)”MK-100)。
<ガラス繊維>
・チョップドストランドT-275H(以下、GFとも表記する。日本電気硝子社製)。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
表1の各実施例および比較例に示す原料のうち、ガラス繊維を除く原料を表1に示す組成でドライブレンドし、二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α)のメインフィーダーより供給(ガラス繊維はサイドフィーダー(スクリューの全長を1.0としたときの上流側からみて0.35の位置に設置されたもの)より供給)し、シリンダー温度370℃(実施例3、比較例3では310℃)、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化し、120℃で12時間真空乾燥を行った。
<熱可塑性樹脂組成物の評価方法>
熱可塑性樹脂組成物の評価方法を説明する。評価n数は、特に断らない限り、n=3とし平均値を求めた。
(1)層状ケイ酸塩の平均層厚み、平均アスペクト比
各実施例および比較例で得た熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機工業(株)製SE75DUZ-C250)を用いて、シリンダー温度370℃(実施例3、比較例3の場合は320℃)、金型温度200℃(実施例3、比較例3の場合は120℃)の条件で、ISO527-1A規格で厚さ4mmのダンベルを射出成形し、その成形品の中心部から厚み80nmの薄片を成形品の断面積方向に切削し、透過型電子顕微鏡で観察した。
得られた画像から、層状ケイ酸塩50個について、画像処理ソフト「Image Pro Premier」(Media Cybernetics社製)を用いて、各々の層厚みとアスペクト比を測定し、平均値を求めた。
(2)層状ケイ酸塩の含有量
各実施例および比較例で得た熱可塑性樹脂組成物のペレットを、550℃の電気炉で7時間加熱し、樹脂成分を焼成した。その後、残渣(無機灰分量)の質量を測定し、初期の熱可塑性樹脂組成物質量との比較から層状ケイ酸塩の含有量を算出した。
(3)GFの含有量
GFの含有量は、二軸押出機に供給したポリアリールエーテルケトン樹脂とGFの質量から算出した。
<連続繊維強化樹脂基材の製造方法>
炭素繊維束(東レ(株)製“トレカ(登録商標)”T700S-12k)が巻かれたボビンを16本準備し、それぞれボビンから連続的に糸道ガイドを通じて炭素繊維束を送り出した。連続的に送り出された炭素繊維束に、370℃(実施例3、比較例3では320℃)に加熱された含浸ダイ内において、充填したフィーダーから定量供給された、上記<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>で得られた熱可塑性樹脂組成物を含浸させた。含浸ダイ内で熱可塑性樹脂組成物を含浸した炭素繊維を、引取ロールを用いて含浸ダイのノズルから0.5m/minの引き抜き速度で連続的に引き抜いた。引き抜かれた炭素繊維束は、冷却ロールを通過して熱可塑性樹脂組成物が冷却固化され、連続繊維強化樹脂基材として巻取機に巻き取られた。得られた連続繊維強化樹脂基材の厚さは0.08mm、幅は350mmであり、繊維体積含有率は60%であった。
<連続繊維強化樹脂基材の有孔圧縮強度(OHC)の測定>
上記<連続繊維強化樹脂基材の製造方法>で得られた連続繊維強化樹脂基材16枚を[+45,0,-45,90]2s構造に積層し、370℃(実施例3、比較例3では320℃)に加熱されたプレス機で圧力15bar、20分加圧することで連続繊維強化樹脂基材の積層体を得た。この連続繊維強化樹脂基材積層体の圧縮強度を、ASTM D6484に従って測定した。
<連続繊維強化樹脂基材の繊維の乱れ評価>
上記<連続繊維強化樹脂基材の製造方法>で得られた連続繊維強化樹脂基材の表面を観察し、繊維の配向が良好な場合は〇、顕著な繊維の乱れが生じている場合は×評価とした。
<参考例1:PEEK/PEDEK共重合体の合成>
攪拌機、窒素導入口及び排出口を備えた0.5リットルのセパラブルフラスコに、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(83.47g、0.38mol)、1,4-ジヒドロキシベンゼン(30.98g、0.28mol)、4,4’-ジヒドロキシジフェニル(17.46g、0.094mol)及びジフェニルスルホン(185g)を加え、1時間窒素置換した。次いで内容物を窒素雰囲気中で160℃に加熱した。窒素雰囲気を維持したまま、乾燥させた炭酸ナトリウム(39.75g、0.38mol)及び炭酸カリウム(2.07g、0.015mol)(いずれも目開き500マイクロメートルの篩を通過したもの)を加えた。温度を1℃/分で185℃まで昇温し、100分間保持した。温度を1℃/分で205℃まで昇温し、20分間保持した。さらに、温度を1℃/分で315℃まで昇温し、撹拌機のトルクが所定の値に到達するまで反応させた。次いで、反応混合物を金属製のトレイに注いで放冷し、粉砕して、アセトン2リットルで洗浄した後、80℃の温水で5回洗浄した。得られたポリマー粉末を120℃の真空乾燥機で12時間乾燥させた。
PEEK/PEDEK共重合体として白色固体を得た。その溶融粘度を(株)東洋精機製作所製キャピログラフで測定した結果、370Pa・s(350℃、100s-1)であった。
Figure 2023141627000004
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、あるいは実施例3と比較例3の比較から、上記条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物を用いて繊維強化樹脂基材を製造することで、圧縮強度が向上することがわかった。
実施例1と比較例4の比較から、一般的なガラス繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて繊維強化樹脂基材を製造すると、繊維のアライメントに乱れを生じ、圧縮特性の向上も見られないことがわかった。
比較例1と比較例5、6の比較から、平均層厚み15nm超の層状ケイ酸塩が熱可塑性樹脂中に分散している熱可塑性樹脂組成物を用いて繊維強化樹脂基材を製造しても、圧縮強度はほとんど向上しないことがわかった。
実施例1と比較例1のOHCの関係、および実施例2と比較例2のOHCの関係の比較から、ポリアリールエーテルケトン樹脂のΔHmが45J/g以下である場合、OHCの向上効果が大きく、より好ましいことがわかった。
実施例2と比較例2のOHCの関係、および実施例3と比較例3のOHCの関係の比較から、溶融混練温度が、層間イオンが有機オニウムイオンで置換された層状ケイ酸塩の35%分解温度以上である方がOHCの向上効果が大きく、より好ましいことがわかった。この理由は定かではないが、このような条件で、層間イオンが有機オニウムイオンで置換された層状ケイ酸塩と熱可塑樹脂を溶融混練することで、層状ケイ酸塩が微分散しやすい傾向にあると推定している。
本発明の繊維強化樹脂基材は、通常公知の成形方法で成形することができ、機械特性、成形加工性に優れる点を活かし、各種電気電子部品、自動車部品、航空機部品などに加工することが可能である。

Claims (9)

  1. 層状ケイ酸塩と熱可塑性樹脂を含み、次の条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物と、連続した繊維状充填材または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材とからなる繊維強化樹脂基材。
    (1)熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下の層状ケイ酸塩を含む
    (2)層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂組成物中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している
  2. 前記層状ケイ酸塩が膨潤性の層状ケイ酸塩である、請求項1に記載の繊維強化樹脂基材。
  3. 前記熱可塑性樹脂組成物と、連続した繊維状充填材とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化樹脂基材。
  4. 前記熱可塑性樹脂がポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリーレンスルフィド樹脂である請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化樹脂基材。
  5. 前記熱可塑性樹脂が、融解熱量(ΔHm)が45J/g以下のポリアリールエーテルケトン樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の繊維強化樹脂基材。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の繊維強化樹脂基材が成形されてなる成形品。
  7. 層間イオンが有機オニウムイオンで置換された層状ケイ酸塩と、熱可塑性樹脂との溶融混練によって、次の条件(1)、(2)を満たす熱可塑性樹脂組成物を製造し、前記熱可塑性樹脂組成物を連続した繊維状充填材、または不連続の繊維状充填材が分散した強化繊維基材に含浸させる繊維強化樹脂基材の製造方法。
    (1)熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下の層状ケイ酸塩を含む
    (2)層状ケイ酸塩が、熱可塑性樹脂組成物中において平均層厚み0.5nm以上15nm以下、平均アスペクト比10以上500以下の状態で均一に分散している
  8. 前記熱可塑性樹脂がポリアリールエーテルケトン樹脂またはポリアリーレンスルフィド樹脂で、前記溶融混練をする際の温度が前記層間イオンが有機オニウムイオンで置換された層状ケイ酸塩の35%分解温度以上であることを特徴とする請求項7に記載の繊維強化樹脂基材の製造方法。
  9. 前記熱可塑性樹脂が、融解熱量(ΔHm)が45J/g以下のポリアリールエーテルケトン樹脂である請求項8に記載の繊維強化樹脂基材の製造方法。
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