JP2023139777A - 金属塩凝集剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリ硫酸第二鉄とポリ塩化アルミニウムを混合して組み合わせることで、それぞれを単独で用いた場合に比較して、より高い保存安定性と凝集能力有し、さらに様々な特徴を有する広範囲の処理排液に対して適用できる、鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤を提供する。大腸菌除去作用を併せ持つ金属塩凝集剤を提供する。【解決手段】金属塩凝集剤であって、金属塩凝集剤1リットル中に、アルミニウムイオンと鉄イオンの含有量の合計が5.7モル以下であり、塩素イオンと鉄イオンのモル比(Cl/Fe)が28以上であり、硫酸イオンと酸化アルミニウム換算でアルミニウムイオンのモル比(SO4/Al2O3)が0.15以下であり、大腸菌の除去率が83%よりも高い、金属塩凝集剤。【選択図】図2

Description

本発明は、排水処理に使用される鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤及び各種薬剤に関する。また本発明は大腸菌除去作用を併せ持つ金属塩凝集剤及び各種薬剤に関する。
下水処理場やし尿処理場においては、放流水の水質改善、廃棄物量の削減、施設の円滑な運転や長寿命化を目的として、鉄系やアルミニウム系の金属塩凝集剤を被処理水等に対して投入して使用される。鉄系の凝集剤としては、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄溶液が代表的な凝集剤であり、アルミニウム系としては、硫酸バンド、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムが挙げられる。
ポリ硫酸第二鉄は、鉄系の無機凝集剤の代表例の一つで、脱臭および脱リン効果を有することから、下水処理場およびし尿処理において広く使用されている。ポリ硫酸第二鉄は、一般式(〔Fe(OH)n(SO3-n/2〕m但し0<n≦2、mは自然数)で示され、鉄系原料である硫酸第一鉄(FeSO4)溶液に対して触媒として亜硝酸ナトリウム及び酸化剤を添加して、酸化反応を進行させる等の方法により得ることが出来る(特許文献1)。
ポリ塩化アルミニウム(通称PAC)は、アルミニウム系の無機凝集剤の代表例の一つで、懸濁質や溶解性有機物の処理性が高く、最適pH範囲が広い、水温の影響を受けがたく、凝集剤添加濃度の節減が可能且つ処理後の水が着色しないことなどから、浄水処理場において広く使用されている。PACは、ある一定の塩基度(=m/3n×100)を有する凝集剤で(特許文献2)、一般式Aln(OH)mCl3n-m(3n>m)で示され、塩酸または塩化アルミニウム溶液中に水酸化アルミニウムを加え、耐圧反応器内で加温・加圧させた方法によって得ることが出来る(特許文献3、4)。
無機凝集剤は、一般的にその主たる無機成分の濃度が高いものが、凝集効果が高くなることから、薬剤使用量の削減をすることが可能となり、且つ輸送面でもメリットがある。例えば、ポリ硫酸第二鉄についても通常品(全鉄濃度が11.0~12.5%)と比較して高濃度(全鉄濃度が12.5%以上)として含有水分が少なくすることにより、高い凝集能力と脱水性を有し、製品輸送コストを低減することができる。
日本国内で製造・販売されている水処理凝集剤用途のポリ塩化アルミニウムは、Al濃度として約10%(重量パーセント)以上のスペックである(以下、通常品)。Al濃度が15%を超えるような高濃度製品は、溶液の安定性の問題より、日本国内では販売されていないが、Al濃度が10%を超えるポリ塩化アルミニウムの高濃度製品に関する発明は既に報告されている(特許文献5、6)。特許文献5では、Al濃度が5~25wt%である高塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法を開示し、特許文献6では、Al濃度が16~25%である塩基性塩化アルミニウムを主体とする高濃度凝集剤を開示している。
近年では、鉄系凝集剤とアルミニウム系凝集剤がそれぞれ有する特徴を発揮させるため、両者を混合して、鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤として使用することが試みられるようになっている(特許文献7、8)。
特許文献7では、Al/Feの重量比が1/30~1/2である無機凝集剤を開示し、特許文献8では、Al/Feのモル比が0.06~1.0である含鉄廃塩酸を利用した凝集剤を開示している。
特公昭51-17516号公報 特公昭47-21401号公報 特公昭49-21239号公報 特開平09―142837号 特開昭52-111496号公報 特開2000-70609号公報 特開昭63-7808号公報 特開平1-180210号公報
鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤の使用例としては、還元性の排水に鉄系のポリ硫酸第二鉄を添加すると一部着色する場合があるので、これを防ぐために、塩化アルミニウムや硫酸バンドを配合した凝集剤を使用することが知られている。また、製紙工場等では、主として使用されるアルミニウム系の薬剤に対して、消臭効果を付帯させるために鉄系凝集剤を混合することがある。
しかしながら、その組み合わせによっては、問題が発生することも知られている。
例えば、塩化アルミニウムとポリ硫酸第二鉄の組合せでは、高い凝集効果は得られるものの、腐食性が強く且つ温度の低下によりミョウバンを析出するなどの保存安定性に問題があった。硫酸バンドとポリ硫酸第二鉄の組合せでは、腐食性が弱く、安定性にも優れているが、他の凝集剤に比べて薬剤の添加量が多くなり、経済性に難があった。
また、アルミニウム系で最も高い凝集力を有するポリ塩化アルミニウムに対し、鉄系の塩化第二鉄やポリ硫酸第二鉄を混合した、鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤の調製がこれまでに試みられてきたが、短期間でゲル化するなど保存安定性が極度に悪く、市販化には至っていない。
更に、鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤において、特許文献7および8では陽イオンの主体が鉄イオンであるが、アルミニウムイオンが鉄イオンに対して多量である組成をもった金属塩凝集剤(鉄含有ポリ塩化アルミニウム)の調製は、これまでには報告されていない。
本発明の第一の目的は、共に高い凝集能力を有することが知られているポリ硫酸第二鉄とポリ塩化アルミニウムについて、これらを混合して組み合わせることで、それぞれを単独で用いた場合に比較して、より高い凝集能力を有しながら保存安定性にも優れ、さらに様々な特徴を有する広範囲の処理排液に対して適用可能な鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤を提供することである。
本発明の第二の目的は、大腸菌除去作用を併せ持つ金属塩凝集剤を提供することである。
これらの課題を解決するため、本発明の金属塩凝集剤は、次の技術的手段から構成されるものである。
[1] 金属塩凝集剤であって、金属塩凝集剤1リットル中に、アルミニウムイオンと鉄イオンの含有量の合計が5.7モル以下であり、塩素イオンと鉄イオンのモル比(Cl/Fe)が28以上であり、硫酸イオンと酸化アルミニウム換算でアルミニウムイオンのモル比(SO/Al)が0.15以下であり、大腸菌の除去率が83%よりも高い、金属塩凝集剤。
[2] 塩素イオンと鉄イオンのモル比(Cl/Fe)が、50以上104以下である[1]に記載の金属塩凝集剤。
[3] 大腸菌の除去率が90%よりも高い、[1]または[2]に記載の金属塩凝集剤。
[4] pHが3.7~4.2(100倍希釈溶液)、比重が1.35~1.45である[1]または[2]に記載の金属塩凝集剤。
[5] [1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を含有する凝集剤。
[6] [1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を含有する水質改善剤。
[7] [1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を含有する消臭剤。
[8] [1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を含有する脱水剤。
[9] [1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を含有する排水の色度低下剤。
[10] 汚泥排水の処理方法であって、汚泥排水に[1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を添加する工程を備える汚泥排水の処理方法。
[11] 水の浄化消臭方法であって、病原微生物が存在すると考えられる水に、[1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を添加する工程を備える水の浄化消臭方法。
[12] [1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を排水中の病原微生物の除去に用いる金属塩凝集剤の新たな使用方法。
[13] [1]または[2]に記載の金属塩凝集剤を排水中の大腸菌の除去に用いる金属塩凝集剤の新たな使用方法。
本発明の金属塩凝集剤の第一の態様によれば、高い凝集能力を有することが知られているポリ硫酸第二鉄とポリ塩化アルミニウムを混合して組み合わせることで、高い凝集能力を有しながらも保存安定性に優れ、さらに様々な特徴を有する広範囲の処理排液に対して適用可能な、鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤を提供することが可能となった。
本発明の第二の態様によれば、上記作用効果に加えて、更に大腸菌除去作用を持つ金属塩凝集剤が提供される。
図1は、下水処理場の処理フロー図(実機試験フィールド1)である。 図2は、下水処理場の処理フロー図(実機試験フィールド2)である。 図3は、反応タンクの汚泥容量指標(SVI)を示す図である。 図4は、最終沈殿池越流水のT-P濃度の推移を示す図である。
〔金属塩凝集剤1〕
本発明者らは、ポリ塩化アルミニウムに対して、所定量のポリ硫酸第二鉄を添加・混合することで、保存安定性が高く、優れた水処理性能を有する鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤が得られることを発見した。
即ち、本発明は、金属塩凝集剤であって、金属塩凝集剤1リットル中に、アルミニウムイオンと鉄イオンの含有量の合計が5.7モル以下であり、塩素イオンと鉄イオンのモル比(Cl/Fe)が28以上であり、硫酸イオンと酸化アルミニウム換算でアルミニウムイオンのモル比(SO/Al)が0.15以下である、金属塩凝集剤に関する。
一般的に、塩基度の高いポリ塩化アルミニウムに対して、塩基度の低いポリ硫酸第二鉄を配合すると、ポリ塩化アルミニウムはpHが下がることでゲル化反応が進行する。また、ポリ硫酸第二鉄における鉄イオンは、pHが上昇することで水酸化鉄を生成して不溶化する。しかし、本発明の金属塩凝集剤を構成するイオンの量的関係を所定範囲に調整することで、ポリ塩化アルミニウムの安定化に必要な硫酸イオンが補給され、ゲル化が抑制される。また、ポリ硫酸第二鉄の鉄イオンにとっては、アルカリの供給が低下することで安定性の維持が可能となる。
一般的に水処理剤が溶液の状態で安定的に存在できるか否か(保存安定性)は、陽イオン濃度、陽イオンに対する陰イオンのモル比によって決まる例が多い。そこで、Al+Fe[mol/L]、Cl/Fe(モル比)、SO/Al(モル比)を基準として、安定領域を定めた。なお、Cl/AlとSO/Feは使用薬剤(ポリ塩化アルミニウムとポリ硫酸第二鉄)で固有の値をとり、両薬剤の混合比を変えてもこれらモル比は変わらないことになるので、ここでは考慮する必要はない。
これにより、ポリ塩化アルミニウムを主成分とし、これにポリ硫酸第二鉄を添加・混合した鉄イオンとアルミニウムイオンを含む金属塩凝集剤を得ることができた。これは、本発明者らが見出した、従来技術にはない新たな知見である。
上記したように、ポリ塩化アルミニウムに対して塩化第二鉄やポリ硫酸第二鉄を混合して高性能の凝集剤を製造することは、これまでも試みられてきたが、混合液の保存安定性が悪いため成功に至らなかった。このような長年の課題を、本発明においては陰イオン/陽イオン(モル比)を調整することで解決したが、本発明者らは、次のメカニズムによるものではないかと推測している。
すなわち、凝集剤としてのポリ塩化アルミニウムには硫酸イオンが含まれていることが多く、この硫酸イオンはポリ塩化アルミニウムの凝集特性や化学的安定性に寄与していると考えられている。
本発明においては、硫酸イオンの含有量を調整してポリ硫酸第二鉄の形態で硫酸イオンを添加することにより、混合液の化学的安定性が向上するばかりではなく、確認はできていないが、アルミニウムイオンと鉄イオンによって形成される多核錯体(多量体)において、ある特定の多核錯体の存在割合が多くなっているのかもしれず、これが本発明の金属塩凝集剤の水処理特性の向上に寄与しているのではないかと推定している。
実際に、以下に具体的に述べるように、本発明の金属塩凝集剤は、広範囲にわたり顕著な作用効果を有する凝集剤となっている。
本発明で使用するポリ塩化アルミニウムは、Al濃度が2~6mol/Lの範囲が好適である。また、ポリ硫酸第二鉄は、Fe濃度が2~4mol/Lの範囲が好適である。
ポリ硫酸第二鉄の添加量が少ないと、鉄含有ポリ塩化アルミニウムの安定性が悪く、良好な凝集能力を発揮することができない。また、当該添加量が多いと、ポリ硫酸第二鉄の加水分解が進行し、副産物として鉄系の殿物が析出してしまうので好ましくない。
本発明で得られる金属塩凝集剤は、pHが3.7~4.2(100倍希釈溶液)であることが好ましく、比重が1.35~1.45であることが好ましい。
混合して得られた金属塩凝集剤は、凝集剤としてばかりではなく、リン、窒素、CODあるいはSSの除去性能において優れており、消臭、脱水、色度低下、細菌やウイルスの除去、フッ素やTOC除去においても優れた性能を有する。このため、これらの特性を生かして、凝集剤ばかりではなく、様々で広範囲の排水処理剤として使用することができる。
(その他)
第一の実施形態に係る金属塩凝集剤は、後述の色度低下試験における実機試験からも明らかな通り、通常のポリ塩化アルミニウムと同設備で薬剤注入が可能である。また、薬剤の使用量を抑えられるため、ローリーの運搬・受入頻度が減少する。これにより必要労務や人件費の削減につながる。
〔金属塩凝集剤2〕
本発明について、第一の実施形態に係る金属塩凝集剤について中心に説明してきてきたが、本発明は上記内容に限定されるものではない。第一の実施形態に係る金属塩凝集剤との相違点について中心に説明する。
水処理の現場では、上述したような汚泥沈降やリン・窒素除去等の工程の他に、大腸菌除去が行われていた。これらの汚泥沈降等と大腸菌除去は、従来は、別々の工程でそれぞれ異なる薬剤を用いて行われていた。
昨今、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)という言葉に代表されるように、環境負荷軽減への意識が高まってきている。水処理の分野でも、水処理に使用される薬剤の使用量を抑えることにより、薬剤を添加するポンプをはじめとする使用機器の消費電力の削減や、タンクローリによる薬剤の搬送時に放出される二酸化炭素の放出を抑えることが求められていた。
本発明者等は金属塩凝集剤の更なる機能の向上について誠意検討した結果、金属塩凝集剤が、上述の基本性能に加え、更に、大腸菌の除去剤としての機能を合わせ持つことを見出した。
即ち、第二の実施形態に係る金属塩凝集剤は、金属塩凝集剤であって、金属塩凝集剤1リットル中に、アルミニウムイオンと鉄イオンの含有量の合計が5.7モル以下であり、塩素イオンと鉄イオンのモル比(Cl/Fe)が28以上であり、硫酸イオンと酸化アルミニウム換算でアルミニウムイオンのモル比(SO/Al)が0.15以下であり、大腸菌の除去率が83%よりも高い、金属塩凝集剤に関する。
第二の実施形態に係る金属塩凝集剤によれば、汚泥沈降等と大腸菌除去を、1種の薬剤を用いて1工程で行えることより、水処理全体の作業工程の簡略化を図ることができる。また、水処理に使用される薬剤の多機能化が図られることにより、水処理全体の薬剤の使用量が抑えられ、結果的に薬剤の搬送時のエネルギーを軽減することもできる。
第二の実施形態に係る金属塩凝集剤が大腸菌を除去するメカニズムは、定かではないが、凝集沈殿効果により、大腸菌は汚泥と共にフロックに捕捉された後、最終沈殿池で余剰汚泥として排出されるためと考えられる。また、薬剤由来の残留塩素の影響により、殺菌作用が働くからであると考えられる。
大腸菌の除去効果を向上させるためには、塩素イオンの濃度が高い領域であることが好ましい。具体的には、塩素イオンと鉄イオンのモル比(Cl/Fe)が、28以上であることが好ましく、50以上104以下であることがより好ましい。
28未満では薬剤の化学的安定性が低く水酸化鉄が析出するからである。104を超えると鉄イオンの共存による副次効果が低減するため、また処理水中に含まれる残留塩素が過剰量になるおそれがあるからである。処理水中の残留塩素が多い場合、消毒効果の持続性は高まるが、放流先の水域に生息する水生生物への悪影響が懸念される。
また大腸菌の除去率はより好ましくは90%よりも高い。
本発明は金属塩凝集剤に限定されることはなく、上述の金属塩凝集剤1、2の特性を活かした、種々の方法にも関する。
〔汚泥排水の処理方法〕
本発明は、下水処理における汚泥処理や排水処理に関する。
即ち本発明は、汚泥排水に、上述の金属塩凝集剤1又は2を添加する工程を備える、汚泥排水の処理方法に関する。
金属塩凝集剤1又は2によれば、実施例の欄において後述する通り、りん・窒素除去性能、消臭特性(硫化水素の抑制効果)、色度低下、汚泥沈降性(SV値)の項目において良好な作用効果を奏する。また薬剤としてポリ塩化アルミニウムを用いた場合に比べて、ポリ塩化アルミニウムの添加質量の約50%の添加率で汚泥の沈降性が改善され、ポリ塩化アルミニウムと同等のりん除去性能を奏する。
金属塩凝集剤2を添加した場合、上述の性能に加え、更に、病原微生物、例えば大腸菌の除去作用を奏する。汚泥に金属塩凝集剤2を添加することにより、大腸菌の除去率が、83%よりも高くなり、好ましくは90%よりも高くなる。
薬剤としてポリ塩化アルミニウムを添加した際の大腸菌の除去率が75%程度であることを考えると、金属塩凝集剤2によれば、ポリ塩化アルミニウムの添加質量の50%以下の添加量でありながら、大腸菌の除去率を大幅に向上させることができる。
本方法によれば汚泥沈降等と大腸菌除去を1種の薬剤を用いて1工程で行えることより、水処理全体において、作業工程の簡略化と薬剤の使用量の低減を同時に図ることができる。
〔水の浄化消臭方法〕
また本発明は、下水処理の他に、上水や中水等の排水の浄化消臭方法に関する。
即ち本発明は、病原微生物が存在すると考えられる水に、上述の金属塩凝集剤1又は2を添加する工程を備える水の浄化消臭方法にも関する。少ない薬剤の添加量にも関わらず、りん・窒素除去性能、消臭特性(硫化水素の抑制効果)、色度低下、病原微生物除去特性により水の浄化消臭を行うことができる。
〔その他の実施形態〕
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、実施形態において説明した金属塩凝集剤を新たな使用方法において用いることができる。即ち、本発明は、上述の金属塩凝集剤1又は2を排水中の病原微生物の除去に用いる金属塩凝集剤の新たな使用方法や、上述の金属塩凝集剤1又は2を排水中の大腸菌の除去に用いる金属塩凝集剤の新たな使用方法にも関する。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
〔金属塩凝集剤1〕
第一の実施形態に係る金属塩凝集剤について、以下の実験を行った。
(特性評価)
調製した金属塩凝集剤について、次の観点から特性を評価した。
(1)汚泥沈降性(SV値)
1リットルのメスシリンダー内に活性汚泥を充填し、これに評価対象の各薬剤を添加し、所定時間の静置後に固液分離した汚泥高さから、それぞれの薬剤の汚泥沈降性を評価した。ここで、SVnにおけるSVは汚泥量(Sludge volume)、nは静置後の経過時間(分)を表す。
(2)T-P、T-N、COD、SS成分の除去特性
活性汚泥に対して評価対象の各薬剤を添加して1時間静置後の上澄み水について、その水質を検査した。T-Pは全リン量、T-Nは全窒素量、CODは化学的酸素要求量、SSは懸濁物質を表す。これらの成分の残存量[mg/L]から、これらの成分に対する各薬剤の除去特性を評価した。
(3)消臭特性(硫化水素の抑制効果)
生汚泥に対して評価対象の各薬剤を添加して4時間静置し、その上澄み水に含まれる硫化水素濃度(HS[ppm])を、ガス検知器を用いて測定した。上澄み水に残留する硫化水素濃度が低いほど消臭特性が優れていると評価できる。
(4)脱水
消化汚泥に対して評価対象の各薬剤を添加し、加圧・脱水後のケーキの含水率[%]を測定した。
(5)色度低下
下水処理場の生物反応槽に評価対象の各薬剤を添加し、最終沈殿池における越流水の色度を測定した。
[実施例1]
(薬剤の調製と安定性評価)
Al濃度が5.08~5.87mol/Lの濃度が異なるポリ塩化アルミニウムに対して、Fe濃度が2.93mol/L、比重が1.484のポリ硫酸第二鉄をそれぞれの成分のSO/Alモル比として0.07~0.17の範囲で250mLポリ瓶内で混合・添加し、混合液200gを得た。得られたサンプルを、1g採取し、100mLの純水で希釈して溶液のpHを測定した。残りのサンプルは、比重を測定した後、常温下で1か月間保管して、その保存安定性を評価した。
ポリ塩化アルミニウムとポリ硫酸第二鉄との混合条件をそれぞれの成分モル量(AlおよびFe)で表示し、混合後の本発明の金属塩凝集剤の安定性を表1に示す。
表1にまとめた実験結果より、1L中にアルミニウムイオンと鉄イオンの合計で5.7モル以下であり、モル比で塩素イオンと鉄イオンの比(Cl/Fe)が28以上、硫酸イオンと酸化アルミニウム換算でアルミニウムイオンのモル比(SO/Al)が0.15以下の場合に、本発明の金属塩凝集剤は安定的に存在することがわかる。
[実施例2]
(汚泥沈降性と各成分の除去特性)
下水処理場よりサンプリングした活性汚泥(TS:0.2%)を1Lメスシリンダーに1,000mL採取し、ポリ塩化アルミニウム(M3+2.5mol/L)、ポリ硫酸第二鉄(M3+2.9mol/L)、本発明の金属塩凝集剤(M3+5.3mol/L(Al3+5.1mol/L,Fe3+0.2mol/L)、Cl/Fe:65、SO/Al:0.04)の各薬剤を表2の条件で添加・混合した。10分静置後、30分静置後における汚泥の沈降性(SV10、SV30)を測定した。ここで、M3+とは薬剤中に含まれる3価の金属イオン(即ちAl3+とFe3+)濃度の合計を表す。
さらに、1時間静置後の上澄み水について、残留するT-P、T-N、COD、SSの各成分の量を分析した。各薬剤の添加量は、表2で示す通り、M3+がいずれも等しくなるよう設定した。
試験結果は表2の通り。ここで、TSとは全蒸発残留物(Total solids)の略で、ここでは、固形物としての汚泥量を示す。
(汚泥沈降性の評価)
活性汚泥に対して各薬剤を添加した結果、本発明の金属塩凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムやポリ硫酸第二鉄よりも少ない添加量で、汚泥沈降性(SV値)が最も良好であった。特にSV10の値に注目すると、初期の沈降速度に関してその差が顕著に見られたため、薬剤の即効性に優れていることが理解できる。
本発明の金属塩凝集剤の使用により、処理水の固液分離性が大きく向上することから、凝集を目的としたあらゆる水処理設備(例:凝集槽、生物反応槽、重力濃縮槽など)における利用が可能である。
(T-P、T-N、COD、SS成分の除去特性の評価)
本発明の金属塩凝集剤では、ポリ塩化アルミニウムやポリ硫酸第二鉄よりも少ない添加量で、上澄み水からより多くのT-P、T-N、COD、SSの除去を行うことができた。
よって、本発明の金属塩凝集剤の使用により、上記成分の効率的な除去・回収が可能であるため、富栄養化対策や水質改善化に向けた効果が見込まれる。
[実施例3]
(消臭・硫化水素抑制)
下水処理場よりサンプリングした生汚泥(TS1.1%)を1Lメスシリンダーに1,000mL採取し、実施例2で使用したポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、本発明の金属塩凝集剤の各薬剤を表3の条件で添加・混合した。4時間静置後、上澄み水を300mL三角フラスコに100mL採取・密栓・振とうした後、気相部の硫化水素濃度をガス検知管で測定した。薬剤の添加量は、上記と同様に3価の金属イオン濃度が等しくなるように設定した。試験結果は、表3の通り。
(消臭特性の評価)
硫化水素の除去率は、ポリ塩化アルミニウム<本発明の金属塩凝集剤<ポリ硫酸第二鉄の順となった。一般的に、硫化水素の抑制には鉄イオンによる硫黄の固定化が大きく寄与するため、本発明の金属塩凝集剤は、通常のポリ塩化アルミニウムに比べて高い硫化水素抑制効果を示した。
したがって、本発明の金属塩凝集剤は水処理における消臭用途としての使用も可能である。使用例としては、下水処理場、排水処理施設、ポンプ場、送泥施設などが考えられる。
[実施例4]
(脱水特性)
下水処理場よりサンプリングした消化汚泥(TS1.3%)を500mLビーカーに300mL採取し、実施例2で使用した各無機凝集剤(ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、本発明の金属塩凝集剤)と高分子凝集剤(0.3wt%、170ppm)を表4の条件で添加・混合した。60秒間ろ過後、加圧・脱水し、ケーキ含水率を測定した。薬剤の添加量は、上記と同様に3価の金属イオン濃度が等しくなるように設定した。
試験結果は、表4の通り。
(脱水特性の評価)
脱水性はポリ塩化アルミニウム<ポリ硫酸第二鉄<本発明の金属塩凝集剤の順に良好であった。本発明の金属塩凝集剤では、薬剤無添加時に比べてケーキの含水率が1.5ポイント低下した。
以上より、本発明の金属塩凝集剤は汚泥含水率の低下を目的とした脱水機への利用も可能であり、最終的に汚泥の運搬や処理費用の削減につながる。
[実施例5]
(色度低下特性)
図1に示すフローの下水処理場(日平均流入水量:約33,000m/日、標準活性汚泥法)の生物反応槽末端部に、実施例2で使用したポリ塩化アルミニウム(25mg/L)または本発明の金属塩凝集剤(14mg/L)を1週間連続注入した。薬剤は、ダイヤフラム式定量ポンプを用い、生物反応槽で液中添加した。薬剤の添加量は、上記と同様、3価の金属イオン濃度が等しくなるように設定した。生物反応槽の後段の最終沈殿池より、越流水を定期的にサンプリングし、色度を測定した。
試験結果は、表5の通り。ここで、色度の平均値および最小値は、週平均の値である。
(色度低下特性の評価)
本発明の金属塩凝集剤では、ポリ塩化アルミニウムよりも少ない添加量で色度低下が顕著に見られた。
したがって、本発明の薬剤は下水の他、上水や中水等の排水への利用も見込まれる。
(その他の利点)
色度低下試験における実機試験より、本発明の金属塩凝集剤は、通常のポリ塩化アルミニウムと同設備で薬剤注入が可能であった。また、薬剤の使用量を抑えられるため、ローリーの運搬・受入頻度が減少し、これは必要労務や人件費の削減につながる。
〔金属塩凝集剤2〕
[実施例6]、[比較例1]
第二の実施形態に係る金属塩凝集剤について以下の実験を行った。
(実機試験)
(施設概要)
図2のフロー図に示されるような処理施設(A系)と処理施設(B系)を備える処理場を用いて実機試験を実施した。処理場の日平均流入水量は34,000m/日であり、処理方式は標準活性汚泥法で、窒素除去を目的に疑似ステップ流入式2段硝化脱窒法による運転を行っている(6系列)。また、りんの高度処理を行うため、別の1系列では反応タンクの最終槽前段に凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)が添加されている(凝集剤併用型ステップ流入式2段硝化脱窒法)。処理水の一部は砂ろ過、オゾン処理、塩素消毒を経たのち、近隣の公園で親水用水として再利用されている。
(試験方法)
注入する凝集剤として、比較例1では市販のポリ塩化アルミニウム(PAC)(比重:1.214、Cl/Al:2.7)、実施例6では高濃度鉄アルミ(比重:1.445、Cl/Fe:63、SO/Al:0.08、Cl/Al:3.3、SO/Fe:1.4)を用いた。薬剤中に含まれる3価の金属イオン濃度(Al3+、Fe3+)は、比較例1(PAC):2.38mol/L、実施例6(高濃度鉄アルミ):5.35mol/Lであった。
凝集剤併用型ステップ流入式2段硝化脱窒法による処理施設(A系)に、PAC、高濃度鉄アルミを添加した。薬剤の注入箇所は反応タンクの最終槽前段とし、PAC、高濃度鉄アルミを定量ポンプで各2週間注入した(添加率 比較例1(PAC):34mg/L、実施例6(高濃度鉄アルミ):17mg/L)。また、ブランクとして標準活性汚泥法(疑似ステップ流入式2段硝化脱窒法)による処理施設(B系)を選定した。A系、B系の反応タンク最終槽の活性汚泥と最終沈殿池の越流水を定期的にサンプリングし、汚泥沈降性評価と水質評価を行った。試験は、2020年11月26日から同年12月17日に至るまで行った。
(試験結果)
(汚泥沈降性の評価)
反応タンクの汚泥容量指標(SVI)を図3に示す。ブランクであるB系のSVI300~400mL/gに対し、A系のSVIはPAC注入中に150~300mL/g、高濃度鉄アルミ注入中に100~200mL/gであった。凝集剤の注入によって汚泥の沈降性が改善され、特に高濃度鉄アルミはより高い凝集効果を持つと考えられた。
(りん・窒素除去性能の評価)
最終沈殿池越流水のT-P濃度の推移を図4に示す。A系のT-P濃度はPAC、高濃度鉄アルミの注入期間中は0.05~0.50mg/Lの間で一定であった。高濃度鉄アルミの添加率はPACの約50%であるが、PACと金属イオン濃度が等しいため同等のりん除去が実施できることが示された。なお、PAC・高濃度鉄アルミ注入時のT-N濃度に大きな差はなく、生物反応による窒素除去性能は一定であったと考えられる。
(大腸菌、臭気物質除去評価)
最終沈殿池越流水の大腸菌数、残留塩素濃度、臭気物質濃度(ジェオスミン、2―メチルイソボルネオール)、の分析結果を表6に示す。
A系の大腸菌数はブランクであるB系よりも低い結果を示し、除去率はPAC注入中に75~83%程度、高濃度鉄アルミ注入中に約90%であった。残留塩素(遊離残留塩素・結合残留塩素)濃度はA系、B系ともに同等でありその値は低く、消毒力を有する濃度ではないと考えられる。
一般的に下水中の病原微生物の一部(大腸菌、ノロウイルス、クリプトスポリジウムなど)は汚泥に吸着したものがフロックに巻き込まれ、凝集沈殿に伴って処理水中から除去されると考えられている。大腸菌数はA系、B系のSVI値とも相関があり、処理水中に消毒力を有する塩素成分がないことから、本試験では凝集沈殿に伴って大腸菌が処理水から除去されたと考えられる。なお、砂ろ過、オゾン処理、塩素消毒を経た再生水から大腸菌は検出されなかった。
臭気物質濃度はA系、B系ともに低く、分析値に大きな差がないため、今回の試験では凝集剤の注入による優位な消臭効果は確認されなかった。
(色度、濁度)
最終沈殿池越流水の色度、濁度の測定結果を表7に示す。
A系の色度はB系よりも低く、凝集剤の注入によって処理水の清澄性が改善したといえた。高濃度鉄アルミ注入時の色度は10度であり、親水用水の基準値レベル(10度以下)まで色度が低下した。濁度は凝集剤の種類によらず、2.0程度であり、A系、B系の分析値に大きな差は見られなかった。
(凝集剤による処理水の下水再生水としての利用可能性)
下水再生水の利活用には(1)水洗用水、(2)散水用水、(3)修景用水、(4)親水用水があり、水質基準値として大腸菌数、濁度、pH、外観、色度、臭気がある。これらの項目をもとに凝集剤の利用による水質改善の程度を評価した。今回の試験ではブランクの処理水の濁度、臭気濃度が低いため評価対象からは除外した。
前述のとおり、凝集剤の注入は色度の低減に効果があり、本試験では基準値レベルまで改善することが示された。大腸菌数について、凝集剤の注入によって処理水から75~90%の大腸菌を除去できた。しかし、(1)、(2)、(4)の基準である“不検出であること”、(3)の基準値10CFU/mLには及ばなかった。よって、現状では凝集剤の注入のみで大腸菌数の基準値を達成することは難しく、処理水を再生水として利用するためにはより高度な処理(塩素消毒・オゾン処理)と組み合わせる必要があると考えられる。
凝集剤を利用する場合、大腸菌の除去率は使用する凝集剤の凝集能力によるところが大きい。このため、注入する陽イオン数を増やすことでより高い除去効果が期待できるが、適切な注入率はpHなど他の要素を含めて検討する必要がある。
今回の凝集剤注入試験では、処理水の水質は大腸菌数の項目において下水再生水の基準値レベルまで改善されなかったが、凝集剤の利用によって病原微生物濃度を一定割合減少させることができることが分かった。下水処理において処理水の病原微生物濃度を減少させることは、作業従事者の病原体曝露リスクを低減させることと同義である。このため、凝集剤の利用は下水処理能力の向上だけではなく、処理場における作業者の感染リスク低減においても意義があると考えられた。
窒素・りん除去を目的とした生物処理系への薬剤注入試験にて、高濃度鉄アルミはPACの約50%の添加率で汚泥の沈降性が改善され、PACと同等のりん除去性能が示された。
凝集剤の注入によって大腸菌数は75~90%程度減少した。大腸菌は汚泥の凝集沈殿に伴って除去されると考えられ、凝集剤の利用には汚泥に吸着する病原微生物の除去率を向上する効果が期待された。
凝集剤注入による下水の大腸菌除去は、下水再生水の基準値を達成するには至らないが、添加量の調整によって改善する可能性が示された。処理水の病原微生物濃度の低下は処理場の作業従事者の病原体暴露リスク低減につながり、凝集剤の利用はこのようなリスク低減に寄与できると考えられる。

Claims (13)

  1. 金属塩凝集剤であって、
    金属塩凝集剤1リットル中に、アルミニウムイオンと鉄イオンの含有量の合計が5.7モル以下であり、
    塩素イオンと鉄イオンのモル比(Cl/Fe)が28以上であり、
    硫酸イオンと酸化アルミニウム換算でアルミニウムイオンのモル比(SO/Al)が0.15以下であり、
    大腸菌の除去率が83%よりも高い、金属塩凝集剤。
  2. 塩素イオンと鉄イオンのモル比(Cl/Fe)が、50以上104以下である請求項1に記載の金属塩凝集剤。
  3. 大腸菌の除去率が90%よりも高い、請求項1または2に記載の金属塩凝集剤。
  4. pHが3.7~4.2(100倍希釈溶液)、比重が1.35~1.45である請求項1または2に記載の金属塩凝集剤。
  5. 請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を含有する凝集剤。
  6. 請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を含有する水質改善剤。
  7. 請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を含有する消臭剤。
  8. 請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を含有する脱水剤。
  9. 請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を含有する排水の色度低下剤。
  10. 汚泥排水の処理方法であって、汚泥排水に請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を添加する工程を備える汚泥排水の処理方法。
  11. 水の浄化消臭方法であって、病原微生物が存在すると考えられる水に、請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を添加する工程を備える水の浄化消臭方法。
  12. 請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を排水中の病原微生物の除去に用いる金属塩凝集剤の新たな使用方法。
  13. 請求項1または2に記載の金属塩凝集剤を排水中の大腸菌の除去に用いる金属塩凝集剤の新たな使用方法。
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