JP2023137152A - 空調制御装置及びそのためのプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】シビアな温湿度制御を維持し、空調に要するエネルギー消費量を確実に低減できる空調制御装置を提供すること。
【解決手段】この空調制御装置31は、第1空調制御部42、第2空調制御部43、算出比較部44、制御切換部45を備える。第1空調制御部42は、PID制御により空調用機器の操作量を制御する。第2空調制御部43は、予測モデル53に基づいたモデル予測制御により空調用機器の操作量を制御する。算出比較部44は、PID制御により空調空気の目標点到達に要するエネルギーE1と、モデル予測制御により空調空気の目標点到達に要するエネルギーE2とを算出比較する。制御切換部45は、空調空気の目標点到達に要するエネルギーが少ないほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる。
【選択図】図1
【解決手段】この空調制御装置31は、第1空調制御部42、第2空調制御部43、算出比較部44、制御切換部45を備える。第1空調制御部42は、PID制御により空調用機器の操作量を制御する。第2空調制御部43は、予測モデル53に基づいたモデル予測制御により空調用機器の操作量を制御する。算出比較部44は、PID制御により空調空気の目標点到達に要するエネルギーE1と、モデル予測制御により空調空気の目標点到達に要するエネルギーE2とを算出比較する。制御切換部45は、空調空気の目標点到達に要するエネルギーが少ないほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる。
【選択図】図1
Description
本発明は、取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を操作して調整する制御を行う空調制御装置及びそのためのプログラムに関するものである。
一般的に塗装設備は、自動車ボディ等の被塗物に塗料を塗布する塗装ブースや、塗装ブースを通過した被塗物上の塗料を乾燥させる乾燥炉などの装置を備えている。このような塗装設備では、塗装ブース用空調機によって温湿度を調整した空気を塗装ブース内に送気し、塗装を行っている。また、塗装ブース用空調機は、加熱装置、冷却装置、加湿装置(ワッシャ)、送風ファンなどの機器で構成されており、これらの機器を組み合わせて動作させることで、空調空気が目標とする温湿度となるように制御を行っている(例えば、特許文献1、2を参照)。また、この場合の制御としては、PID制御が従来用いられている。
ところで、自動車の塗装ブースにおけるブース用空調機は、製品の塗装品質を維持するため、シビアな温湿度制御を必要とする。そして近年では、シビアな温湿度制御を実現するための新たな手段として、未来の反応を予測しながら制御を行うモデル予測制御(MPC)を採用したものが提案されている。ここで、モデル予測制御は、空調装置のダイナミクスを適切に捉え、モデル化した予測モデルを使用するといった制御方法である。それゆえ、モデル予測制御によれば、従来の制御であるPID制御よりも高い制御性能が実現され、安定した制御結果が得やすくなると考えられている。
しかしながら、モデル予測制御は、想定外の外乱や経年による変化の影響によって、予測モデルと実際の反応との間で誤差が生じることがある。このようにモデル化誤差が生じた場合、PID制御に比べて制御結果が不安定になり、シビアな温湿度制御を維持できなくなる。それゆえ、エネルギーの消費量が増えるといった事態になり、空調に要するエネルギー消費量の低減が達成できなくなる。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シビアな温湿度制御を維持することで、空調に要するエネルギー消費量を確実に低減することができる空調制御装置及びそのためのプログラムを提供することにある。
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置における前記空調用機器の操作量を制御する空調制御装置であって、PID制御により前記空調用機器の操作量を制御する第1空調制御部と、予測モデルに基づいたモデル予測制御により前記空調用機器の操作量を制御する第2空調制御部と、前記PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーと、前記モデル予測制御により前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーとを算出して比較する算出比較部と、前記第1空調制御部及び前記第2空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーが少ないほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換部とを備えたことを特徴とする空調制御装置をその要旨とする。
上記課題を解決するために、手段2に記載の発明は、取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置における前記空調用機器の操作量を制御する空調制御装置であって、PID制御により前記空調用機器の操作量を制御する第1空調制御部と、予測モデルに基づいたモデル予測制御により前記空調用機器の操作量を制御する第2空調制御部と、前記PID制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差と、前記モデル予測制御により前記空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差とを算出して比較する算出比較部と、前記第1空調制御部及び前記第2空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差が小さいほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換部とを備えたことを特徴とする空調制御装置をその要旨とする。
従って、手段1、2に記載の発明によると、PID制御により制御を行う第1空調制御部、モデル予測制御により制御を行う第2空調制御部の2つを備えているため、いずれかの空調制御部を選択して空調用機器の操作量を制御することができる。算出比較部は、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーと、モデル予測制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーとを算出して比較する。あるいは算出比較部は、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差と、モデル予測制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差とを算出して比較する。そして制御切換部は、上記エネルギーの比較結果に基づいて、エネルギー消費量が少なくて済むほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる。あるいは制御切換部は、上記偏差の比較結果に基づいて、目標値に対する偏差が小さいほうの空調制御部(換言すると制御の正確性が高いほうの空調制御部)に自動的に切り換えて制御を行わせる。例えば、モデル予測制御の実行中にモデル化誤差が生じた場合、制御結果がPID制御に比べて不安定になり、制御の正確性が低下することで、空調に要するエネルギー消費量が増加することが想定される。この場合には、制御切換部が第2空調制御部から第1空調制御部に自動的に切り換えてPID制御を実行させる。従って、モデル化誤差の影響を受けることがなく、シビアな温湿度制御が維持されることから、空調に要するエネルギー消費量を確実に低減することができる。
手段3に記載の発明は、手段1または2において、前記第1空調制御部が前記PID制御を行っている最中に、前記予測モデルの追加学習のための学習データを収集する学習データ収集部をさらに備えることをその要旨とする。
従って、手段3に記載の発明によると、モデル化誤差の発生により第2空調制御部がモデル予測制御を実行できなくても、第1空調制御部がPID制御を行うとともに、その最中に学習データ収集部が学習データを収集する。このため、シビアな温湿度制御を中断させずに継続して実行することができる。また、追加学習のための学習データを効率よく収集することができる。
手段4に記載の発明は、手段3において、前記第1空調制御部が前記PID制御を行っている最中に、前記学習データ収集部が収集した前記学習データに基づいて前記予測モデルを新たに作成する機械学習部をさらに備えることをその要旨とする。
従って、手段4に記載の発明によると、第1空調制御部がPID制御を行っている最中に、機械学習部がモデル化誤差を解消した予測モデルを新たに作成する。よって、古い予測モデルを最新の予測モデルに置き換える更新作業に備えておくことができる。
手段5に記載の発明は、手段1または2において、前記第2空調制御部が前記モデル予測制御を行っている最中に、制御ステップごとに制御結果を前記学習データとして逐次的に与えることで、前記予測モデルの誤差を随時改善する逐次学習部をさらに備えることをその要旨とする。
従って、手段5に記載の発明によると、第2空調制御部がモデル予測制御を行っている最中に、逐次学習部が予測モデルの誤差を随時改善する追加学習のための学習データを収集する。このため、第2空調制御部によるシビアな温湿度制御を継続して実行しやすくなる。また、追加学習のための学習データを効率よく収集することができる。
手段6に記載の発明は、手段4または5において、前記制御切換部は、新たな前記予測モデルが完成した段階で、古い予測モデルを最新の前記予測モデルに置き換えて更新した後、前記第1空調制御部から前記第2空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせることをその要旨とする。
従って、手段6に記載の発明によると、追加学習が終了して新たな予測モデルが完成すると、第1空調制御部から第2空調制御部に自動的に切り換えられ、モデル化誤差を解消した更新後の最新の予測モデルに基づくモデル予測制御が実行される。その結果、PID制御よりも安定度が増したモデル予測制御に復帰して、シビアな温湿度制御を中断させずに継続して実行することができる。
手段7に記載の発明は、手段1乃至6のいずれか1項において、前記空調装置は、予熱装置、加湿装置、冷却装置及び再熱装置を前記空調用機器として含む塗装ブース用空調機であることをその要旨とする。
手段8に記載の発明は、取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置を構成し、PID制御により前記空調用機器の操作量を制御する第1空調制御部と、予測モデルに基づいたモデル予測制御により前記空調用機器の操作量を制御する第2空調制御部とを備える空調制御装置を動作させるためのプログラムであって、前記PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーと、前記モデル予測制御により前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーとを算出して比較する算出比較ステップと、前記第1空調制御部及び前記第2空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーが少ないほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換ステップとを含むことを特徴とする空調制御装置用プログラムをその要旨とする。
手段9に記載の発明は、取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置を構成し、PID制御により前記空調用機器の操作量を制御する第1空調制御部と、予測モデルに基づいたモデル予測制御により前記空調用機器の操作量を制御する第2空調制御部とを備える空調制御装置を動作させるためのプログラムであって、前記PID制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差と、前記モデル予測制御により前記空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差とを算出して比較する算出比較ステップと、前記第1空調制御部及び前記第2空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差が小さいほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換ステップとを含むことを特徴とする空調制御装置用プログラムをその要旨とする。
従って、手段8、9に記載の発明によると、算出比較ステップにて、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーと、モデル予測制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーが算出比較される。あるいは、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差と、モデル予測制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差とが算出比較される。続く制御切換ステップでは、この比較結果に基づいて、エネルギー消費量が少なくて済むほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる。あるいは、目標値に対する偏差が小さいほうの空調制御部(換言すると制御の正確性が高いほうの空調制御部)に自動的に切り換えて制御を行わせる。例えば、モデル予測制御の実行中にモデル化誤差が生じた場合、制御結果がPID制御に比べて不安定になり、制御の正確性が低下することで、空調に要するエネルギー消費量が増加することが想定される。この場合には、制御切換部が第2空調制御部から第1空調制御部に自動的に切り換えてPID制御を実行させる。従って、モデル化誤差の影響を受けることがなく、シビアな温湿度制御が維持されることから、空調に要するエネルギー消費量を確実に低減することができる。
以上詳述したように、請求項1~9に記載の発明によると、シビアな温湿度制御を絶えず維持することで、空調に要するエネルギー消費量を確実に低減することができる空調制御装置及びそのためのプログラムを提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態の空調システム11における空調制御装置を図1~図4に基づき詳細に説明する。
図1に示される本実施形態の空調システム11は、上記のとおり塗装設備用空調システム11であって、取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置21と、空調用機器の操作量を制御する空調制御装置31とを含んで構成される。本実施形態における空調装置21は、複数種の空調用機器(予熱装置、加湿装置、冷却装置、再熱装置等)を含んで構成された塗装ブース用空調機21である。
図1にて概略的に示されるように、本実施形態の空調システム11における塗装ブース用空調機21は、予熱装置22、加湿装置23、冷却装置24、再熱装置25、第1のセンサ27a、第2のセンサ27b、第3のセンサ27c等を備えている。一方、本実施形態の空調システム11における空調制御装置31は、送気目標入力部32、送気設定演算部33、第1空調制御部42、第2空調制御部43、算出比較部44、制御切換部45、学習データ収集部46、機械学習部47、システム同定出力部51等を備えている。なお、図2には各要素のより具体的な接続関係を説明するためのブロック図が示されている。
塗装設備用空調システム11によって生成される空調空気の供給対象である塗装ブースは、一般的に、被塗物搬送ラインにおいて被塗物に塗料を塗布するためエリアに設置されている。塗装ブースは、塗装室と、塗装室の上側に設けられ塗装室にダウンフロー(上方から下方に向かう一定方向)の空気を供給するための給気室と、塗装室の下側に設けられその塗装室内の空気を排気するための排気室とを備えている。本実施形態の塗装ブースでは、塗装ブース用空調機21から排出される空調空気が給気室からダウンフローで塗装室内に供給される。
塗装ブースの塗装室では、図示しない塗装機から塗料ミストを噴射することで被塗物の塗装が行われる。このとき、塗装機からオーバースプレーされて飛散した塗料ミストは、塗装室内に作用するダウンフローの空調空気によって塗装室から排気室に排出される。排気室では、ブース循環水を使用して空気中に含まれる塗料ミストが捕捉され塗料が回収される。また、排気室から排出される空気は、送風ファンによって大気に放出される。
図1、図2に示されるように、本実施形態における塗装ブース用空調機21(空調装置)は、複数種の空調用機器を含んで構成されている。この塗装ブース用空調機21は、装置外部から取り入れた空気を所定温度(例えば23℃前後)及び所定湿度(例えば70%RH前後)に調節して塗装ブースへ送気するための装置である。具体的に説明すると、この塗装ブース用空調機21は、プレヒータ22(予熱装置)、ワッシャ23(加湿装置)、クーリングコイル24(冷却装置)、レヒータ(再熱装置)25及び送風ファン26を備えている。
プレヒータ22は、取り込んだ空気の温度を調整する調温手段の一種であって、空気を加熱してあらかじめ温度を上げるための装置である。ワッシャ23は、取り込んだ空気の湿度を調整する調湿手段の一種であって、プレヒータ22を経た空気に対する水の噴射により空気の湿度を上げるための装置である。クーリングコイル24は、取り込んだ空気の温度を調整する調温手段の一種であって、ワッシャ23を経た空気を冷却して温度を下げるための冷却装置である。レヒータ25は、取り込んだ空気の温度を調整する調温手段の一種であって、クーリングコイル24を経た空気を再び加熱して温度を上げる再熱装置である。送風ファン26は、調温及び調湿された空気(即ち空調空気)を塗装ブースに圧送するための空気圧送装置である。
塗装ブース用空調機21における複数の箇所には、センシング手段が設けられている。具体的にいうと、この塗装ブース用空調機21は、温湿度測定用の第1のセンサ27a、温湿度測定用の第2のセンサ27b、温度測定用の第3のセンサ27cを備えている。第1のセンサ27aは、空調前の外気の温湿度を測定するためのものであって、塗装ブース用空調機21における外気の取り込み口付近に配置されている。第2のセンサ27bは、空調後の外気の温湿度を測定するためのものであって、空調空気が送り出される送風ファン26の出口側に配置されている。第3のセンサ27cは、プレヒータ22を経た外気の温度を測定するためのものであって、ワッシャ23の上流側に配置されている。
図1、図2に示されるように、本実施形態における塗装設備用の空調制御装置31は、空調用機器の操作量を制御するための装置であって、CPUや記憶手段(ROM、RAM)等からなる周知のコンピュータ1台あるいは複数台により構成されている。
空調制御装置31における記憶手段内には、温湿度制御のためのプログラムが格納されており、空調制御装置31内のCPUは当該プログラムを記憶手段から読み出して順次実行するようになっている。記憶手段内には、このプログラムのほかに、空気の状態値を座標に表した湿り空気線図に関するデータ(湿り空気線図テーブル)が格納されている。ちなみに、エンタルピーは湿り空気線図の右上に行くほど高くなり、逆に左下にいくほど低くなる。
図1、図2に示されるように、空調制御装置31における第1空調制御部42は、PID制御により空調用機器の操作量を制御する。PID制御(Proportional-Integral-Differential Control)とは、フィードバック制御の一種であって、入力値の制御を出力値と目標値との偏差、その積分及び微分の3要素によって行う制御のことを指す。本実施形態の第1空調制御部42はPIDコントローラ42であって、制御対象の数と同数(具体的には4つ)のPIDループを有している。PIDコントローラ42と、各空調用機器(即ち、プレヒータ22、ワッシャ23、クーリングコイル24、レヒータ25)とは、制御部切換スイッチ48、加算器49及び図示しないドライバ回路を介してそれぞれ電気的に接続されている。また、PIDコントローラ42と上記各センサ27a~27cとは、電気的に接続されている。従って、制御部切換スイッチ48によりPIDコントローラ42と各空調用機器との間が接続されている場合には、PIDコントローラ42から各制御対象に対して駆動制御信号が出力され、これによって各空調用機器の操作量がPID制御される。その結果、外気温湿度が目標温湿度に到達するように調整されるようになっている。また、上記各センサ27a~27cからは温湿度の測定結果が入力される。そのため、PIDコントローラ42は、その測定結果に基づいてフィードバック制御を行うことができるようになっている。
図1、図2に示されるように、空調制御装置31における第2空調制御部43は、予測モデル53に基づいたモデル予測制御(MPC;Model Predictive Control)により空調用機器の操作量を制御する。本実施形態の第2空調制御部43はMPCコントローラ43であって、MPCコントローラ43と、各空調用機器(即ち、プレヒータ22、ワッシャ23、クーリングコイル24、レヒータ25)とは、制御部切換スイッチ48、加算器49及び図示しないドライバ回路を介してそれぞれ電気的に接続されている。また、MPCコントローラ43と上記各センサ27a~27cとは、電気的に接続されている。従って、制御部切換スイッチ48によりMPCコントローラ43と各空調用機器との間が接続されている場合には、MPCコントローラ43から各制御対象に対して駆動制御信号が出力され、これによって各空調用機器の操作量がMPCにより制御される。MPCコントローラ43は、最適化器を含んで構成されており、その最適化器が予測モデルに基づいて最適な温湿度制御を算出する。その結果、外気温湿度が目標温湿度に到達するように調整されるようになっている。また、上記各センサ27a~27cから温湿度の測定結果が入力される。そのため、MPCコントローラ43は、その測定結果に基づいてフィードバック制御を行うことができるようになっている。
送気目標入力部32は、送気設定演算部33を介して、PIDコントローラ42及びMPCコントローラ43に電気的に接続されている。送気目標入力部32は、塗装ブースに送気するための空調空気の温湿度の目標値を入力するためのものであって、キーボードやタッチパネル等のような手段を含んで構成されている。送気目標入力部32の出力信号は、送気設定演算部33に入力される。
送気設定演算部33と上記各センサ27a~27cとは電気的に接続されている。従って、送気設定演算部33には、各センサ27a~27cから出力される温度や湿度の測定値が入力される。送気設定演算部33は、入力した温湿度の目標値と測定値とに基づいて演算を行い、目標温湿度に到達させるのに最小となるエンタルピーを算出する。そして送気設定演算部33は、その算出結果に基づいて各空調用機器の操作量の目標値を設定し、その目標値をPIDコントローラ42及びMPCコントローラ43に出力する。
算出比較部44は、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーと、MPCにより空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーとを算出して比較する。この場合、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーは、例えばPIDコントローラ42が決定した各空調用機器の操作量(制御量)に基づいて算出される。MPCにより空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーは、例えばMPCコントローラ43が決定した各空調用機器の操作量(制御量)に基づいて算出される。なお、算出比較部44は、PID制御の安定性とMPCの安定性とを比較すると把握することもできる。
制御切換部45は、PIDコントローラ42及びMPCコントローラ43のうち、空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーが少ないほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる。つまり、PIDコントローラ42及びMPCコントローラ43のうち、より安定した温湿度制御を行うことができるほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる。具体的には、制御切換部45は算出比較部44と電気的に接続されていて、算出比較部44から出力された比較結果に基づいて動作する。この制御切換部45は制御部切換スイッチ48に電気的に接続されている。制御切換部45は、制御部切換スイッチ48を切換制御することにより、PIDコントローラ42及びMPCコントローラ43のうち一方と各空調用機器側との間を接続させる。なお、この制御切換部45は、MPC実行時にモデル化誤差の発生及び拡大という好ましくない挙動を検知したときに、相対的に安定なPID制御に自動的に切り換えるフェイルセーフ部であると把握してもよい。
システム同定出力部51は、システム同定のために用いるステップ信号をランダムに出力する部分である。加算器49において、システム同定出力部51からの出力信号は、PIDコントローラ42からの操作量指令信号、MPCコントローラ43からの操作量指令信号に加算されるようになっている。なお、システム同定出力部51は、後述する空調用機器のランダム加振を行う際に作動する。
さらにこの空調制御装置31は、塗装ブース用空調機21のMPCに使用される予測モデルの学習データを収集する学習データ収集部46を備えている。学習データ収集部46は、PIDコントローラ42がPID制御を行っている最中に、予測モデルの追加学習のための学習データを収集する。具体的にいうと、学習データ収集部46は、図2に示すように測定値(PV)、制御量(あるいは操作量、MV)、実績を学習データとして収集し、実績データベースを作成する。なお、学習データ収集のためのプログラムは、空調制御装置31における記憶手段内に格納されている。空調制御装置31内のCPUは、必要に応じて当該プログラムを記憶手段から読み出し、順次実行するようになっている。
学習データ収集部46は、領域設定、学習開始点設定、状態点移動、データ収集の各ステップによりデータを収集する。
図4に示されるように、領域設定ステップでは、湿り空気線図上にて予測モデルを作成する領域R1、即ち温湿度制御の対象としたい領域(制御対象領域R1)の設定を行う。当該制御対象領域R1は、高精度な温湿度制御を実現するために高品質の予測モデルが欲しい領域、と言い換えることもできる。
学習開始点設定ステップでは、設定された制御対象領域R1内に、空調用機器のランダム加振を行うときの起点となる複数の学習開始点S1~S9の設定を行う。この場合、具体的には学習開始点S1~S9の数や位置、それらの移動順序についても設定する。本実施形態では9つの点を学習開始点S1~S9として設定している(図4参照)。なお、学習開始点S1~S9の数は、好ましくは10点以上がよい。学習開始点S1~S9の位置も限定されず任意に設定され、例えば湿り空気線図上にて互いに離間した位置に設定される。
状態点移動ステップでは、空調空気状態点K1を、PID制御によって空調用機器を操作して温湿度制御を行い、最初の学習開始点S1まで移動させる。
データ収集ステップでは、空調空気状態点K1を制御対象領域R1内における複数の学習開始点S1~S9間で移動させながら、空調用機器のランダム加振を行うことにより、学習データを収集する。具体的には、学習開始点S1~S9から変位した空調空気状態点K1をPID制御により当該学習開始点S1~S9まで戻す制御を行うようになっている(図4参照)。また、空調空気状態点K1を現在の学習開始点から次の学習開始点まで移動させる際にも、PID制御を行うようになっている。
機械学習部47は、PIDコントローラ42がPID制御を行っている最中に、学習データ収集部46が収集した学習データに基づいて予測モデル52を新たに作成する。なお、新たに作成された最新の予測モデル52は、例えば機械学習部47内の記憶領域に一時的に格納される。そして制御切換部45は、新たな予測モデル52が完成した段階で、古い予測モデル53を最新の予測モデル52に置き換えて更新する。その後、制御切換部45は、PIDコントローラ42からMPCコントローラ43に自動的に切り換えてMPCを実行させる。
次に、図3のフローチャートに基づき、図4の湿り空気線図を参照しながら、本実施形態の温湿度制御方法の手順について説明する。なお、このフローチャートに示す手順は一例であり、これとは別の手順により本実施形態の温湿度制御方法を実行しても勿論構わない。
本実施形態の温湿度制御方法では、まずステップS110が実行される。即ち、制御切換部45が制御部切換スイッチ48を駆動し、MPCコントローラ43と各空調用機器との間を接続する。すると、MPCコントローラ43から各制御対象に対して駆動制御信号が出力され、これによって各空調用機器の操作量がMPCにて制御される。その結果、MPCに基づく温湿度制御によって、外気温湿度が目標温湿度に到達するように調整される。
次のステップS120では、算出比較部44がPID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーE1と、MPCにより空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーE2とを算出する。次のステップS130では、算出した上記エネルギーE1、E2同士を比較する。具体的には、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーE1が、MPCにより空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーE2より小さいか否かについて判定する。ステップS130での判定結果がNOの場合、つまりE1≧E2である場合には、モデル化誤差がない予測モデルに基づいてMPCが行われていると考えられる。よって、現時点でのMPCによる制御結果が、PID制御による制御結果に比べて安定した状態となっている。この場合には、ステップS110に戻って引き続きMPCに基づく温湿度制御を実行する。
ステップS130での判定結果がYESの場合、つまりE1<E2である場合には、モデル化誤差が生じて劣化した予測モデルに基づいてMPCが行われていると考えられる。よって、現時点でのMPCによる制御結果が、PID制御による制御結果に比べて不安定になった状態となっている。この場合には、ステップS140に移行し、MPCからPID制御に自動的に切り換えて温湿度制御を実行する。即ち、制御切換部45が制御部切換スイッチ48を駆動し、PIDコントローラ43と各空調用機器との間の接続に切り換える。
次のステップS150では、学習データ収集部46が作動して、MPC制御に使用される予測モデルの学習データをPID制御の最中に収集する(図4参照)。具体的には、まず湿り空気線図上にて予測モデルを作成する制御対象領域R1を設定する。次に、設定された制御対象領域R1内に、空調用機器のランダム加振を行うときの起点となる複数の学習開始点S1~S9及びそれらの移動順序を設定する。次に、PID制御によって空調空気状態点K1を最初の学習開始点S1まで移動させる。次に、システム同定出力部51が作動し、学習開始点S1を起点としてランダム加振を行う。すると、学習開始点S1から変位した空調空気状態点K1をPID制御により当該学習開始点S1まで戻す制御が実行される。最初の学習開始点S1でのデータ収集が終了したら、空調空気状態点K1を現在の学習開始点S1から次の学習開始点S2まで移動させ、同様のランダム加振を行う。その後、このようなランダム加振を学習開始点S3~S9まで順に移動してそれぞれ実行する。
次のステップS160では、機械学習部47が作動して学習データ収集部46が収集した学習データを取り込み、その学習データに基づいて最新の予測モデル52を作成するための機械学習を行う。そして、最新の予測モデル52が完成したら、機械学習部47はその最新の予測モデル52を自身の記憶領域に一時的に格納する。
次のステップS170では、制御切換部45が作動し、最新の予測モデル52が完成した否かを判定する。ステップS170での判定結果がNOの場合、つまり最新の予測モデル52がまだ完成していない場合には、ステップS150に戻って引き続き学習データの収集及び機械学習が実行される。なお、これを実行している際にPID制御による温湿度制御は維持される。ステップS170での判定結果がYESの場合、つまり最新の予測モデル52が完成した場合には、次のステップS180に移行する。すると、制御切換部45が作動して、古い予測モデル53を最新の予測モデル52に置き換えて更新する。次のステップS190では、PID制御からMPCに自動的に切り換えた後、最初のステップS110に戻るようになっている。即ち、制御切換部45が制御部切換スイッチ48を駆動し、MPCコントローラ43と各空調用機器との間の接続に切り換える。すると、MPCコントローラ43から各制御対象に対して駆動制御信号が出力され、各空調用機器がMPCからの操作量に基づいて制御される状態に復帰する。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の空調制御装置31は、上記のとおり、第1空調制御部であるPIDコントローラ42、第2空調制御部であるMPCコントローラ43、算出比較部44、制御切換部45等を備えている。従って、PIDコントローラ42及びMPCコントローラ43のうちのいずれかを選択して空調用機器の操作量を制御することができる。算出比較部44は、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーE1と、MPCにより空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーE2とを算出して比較する。制御切換部45は、この比較結果に基づいてエネルギー消費量が少なくて済むほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる。例えば、MPCの実行中にモデル化誤差が生じた場合、制御結果がPID制御に比べて不安定になり、空調に要するエネルギー消費量が増加することが想定される。この場合には、制御切換部45がMPCコントローラ43からPIDコントローラ42に自動的に切り換えてPID制御を実行させる。従って、モデル化誤差の影響を受けることがなく、シビアな温湿度制御が維持されることから、空調に要するエネルギー消費量を確実に低減することができる。
(2)本実施形態の空調制御装置31では、モデル化誤差の発生によりMPCコントローラ43がMPCを実行できなくても、PIDコントローラ42がPID制御を行うとともに、その最中に学習データ収集部46が学習データを収集する。このため、シビアな温湿度制御を中断させずに継続して実行することができる。また、追加学習のための学習データを効率よく収集することができる。
(3)本実施形態の空調制御装置31では、PIDコントローラ42がPID制御を行っている最中に、機械学習部47がモデル化誤差を解消した予測モデル52を新たに作成する。よって、古い予測モデル52を最新の予測モデル53に置き換える更新作業に確実に備えておくことができる。
(4)本実施形態の空調制御装置31では、追加学習が終了して新たな予測モデル52が完成すると、古い予測モデル53を最新の予測モデル52に速やかに置き換えられて更新される。その後、PIDコントローラ42からMPCコントローラ43に自動的に切り換えられ、モデル化誤差を解消した更新後の最新の予測モデル52に基づくMPCが実行される。その結果、PID制御よりも安定度が増したMPCに復帰して、シビアな温湿度制御を中断させずに継続して実行することができる。
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、プレヒータ22(予熱装置)、ワッシャ23(加湿装置)、クーリングコイル24(冷却装置)、レヒータ(再熱装置)25及び送風ファン26を空調用機器として備えた塗装ブース用空調機21を用いたが、これに限定されず、異なる装置構成を採用してもよい。例えばクーリングコイル24を1段ではなく2段にしてもよいほか、不要であれば省略してもよい。レヒータ25も不要であれば省略してもよい。つまり、空調装置は取り入れた外気を加温、加湿及び冷却する機能を有するものに限らず、加温及び加湿機能を有しかつ冷却機能を有しないもの、冷却及び加湿機能を有しかつ加温機能を有しないものであってもよい。
・上記実施形態では、本発明の空調システム11を塗装ブース用空調機21を備える塗装設備用空調システムに具体化したが、塗装ブース用途以外の空調装置を備えるものに具体化しても勿論よい。
・上記実施形態では、第1空調制御部であるPIDコントローラ42がPID制御を行っている最中に、予測モデル53の追加学習のための学習データを収集するように構成したが、これに限定されない。例えば、同一仕様の別の装置で作成された外部の最新の予測モデル53を取り込み、古いものと置き換えてもよい。また、これとは逆に、本実施形態の空調制御装置31によって作成された最新の予測モデル53を、自身の装置で利用するばかりではなく、同一仕様の別の装置に移植して利用してもよい。
・上記実施形態では、第1空調制御部であるPIDコントローラ42がPID制御を行っている最中に限り、予測モデル53の追加学習のための学習データを収集する例を示したが、これに限定されない。例えば、第2空調制御部であるMPCコントローラ43がMPCを行っている最中にも同様の学習データ収集を行っても勿論よい。具体的には、例えば、予測モデルの誤差を随時改善する逐次学習部を備えるものとして構成し、第2空調制御部がMPCを行っている最中に、制御ステップごとに制御結果を学習データとして逐次学習部に逐次的に与えるようにしてもよい。この構成によると、第2空調制御部によるシビアな温湿度制御を継続して実行しやすくなる。また、追加学習のための学習データを効率よく収集することができる。
・上記実施形態では、互いに異なる2種の制御方法(PID制御とMPC)により空調用機器の操作量を制御する2つの空調制御部を備えていた。そして、空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーを算出比較部44で2つの空調制御部ごとに算出して比較し、制御切換部45で2つの空調制御部のうち当該エネルギーが少ないものに自動的に切り換えて制御を行わせるように構成したが、これに限定されない。例えば、互いに異なる3種以上の制御方法(PID制御とMPCとそれら以外の制御)により空調用機器の操作量を制御する3つ以上の空調制御部を備えていてもよい。そして、空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーを算出比較部44で3つ以上の空調制御部ごとに算出して比較し、制御切換部45で3つ以上の空調制御部のうち当該エネルギーが最も少ないものに自動的に切り換えて制御を行わせるように構成してもよい。なお、エネルギーを3つ以上の空調制御部ごとに算出して比較する算出比較部44に代えて、制御結果の安定度を3つ以上の空調制御部ごとに算出して比較する算出比較部44としてもよい。
・上記実施形態では、空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーを算出比較部44で2つの空調制御部ごとに算出して比較し、制御切換部45で2つの空調制御部のうち当該エネルギーが少ないものに自動的に切り換えて制御を行わせるように構成したが、これに限定されない。例えば、算出比較部44によって、PID制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差と、MPCにより空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差とを算出して比較してもよい。そして、制御切換部45によって、2つの空調制御部のうち、空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差が小さいもの(換言すると制御の正確性が高いもの)に自動的に切り換えて制御を行わせるようにしてもよい。この構成によると、制御の正確性低下が予想される場合であっても、事前に制御切換部が空調制御部を自動的に切り換えて、制御の正確性が高いままに維持される。従って、シビアな温湿度制御が維持され、空調に要するエネルギー消費量を確実に低減することができる。
・上記実施形態では、塗装ブース用空調機21に設けられた3つのセンシング手段(第1、第2、第3のセンサ27a、27b、27c)からの温湿度の測定結果に基づいて、算出比較部44がエネルギーの算出比較を行い、かつ、PIDコントローラ42及びMPCコントローラ43がフィードバック制御を行っていたが、これに限定されない。例えば、塗装ブース用空調機21以外の機器に設けられたセンシング手段からの測定結果を利用してもよい。図5に示す別の実施形態の空調制御装置31Aでは、塗装ブース用空調機21に対してヒートポンプ(HP)から熱源及び冷水が供給されるような構成となっている。塗装ブース用空調機21とヒートポンプとの間は、熱源を供給する第1経路61と、冷水を供給する第2経路62とによりそれぞれ流路的に接続されている。プレヒータ22に熱源を供給する第1経路61上には、第4のセンサ27dが設けられている。レヒータ25に熱源を供給する第1経路61上には、第5のセンサ27eが設けられている。クーリングコイル24に冷水を供給する第2経路62上には、第6のセンサ27fが設けられている。第4のセンサ27d及び第5のセンサ27eとしては、例えば、ガス流量センサ、蒸気流量センサ、温水温度流量センサなどを挙げることができる。第6のセンサ27fとしては、例えば、冷水流量センサ、冷水温度センサなどを挙げることができる。そして、センサ27a~27cからのセンシング情報に加え、センサ27d~27fからのセンシング情報に基づいて、算出比較部44がエネルギーの算出比較を行い、かつ、PIDコントローラ42及びMPCコントローラ43がフィードバック制御を行うようにしてもよい。このように、エネルギー関連のセンサからのセンシング情報を利用すると、算出比較部44によるエネルギーの算出比較がいっそう的確になり、ひいては空調に要するエネルギー消費量をより確実に低減することが可能となる。なお、ヒートポンプの運転電力をセンシングし、そのセンシング情報を上記の算出比較等に利用しても勿論よい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置における前記空調用機器の操作量を制御する空調制御装置であって、互いに異なる制御方法により前記空調用機器の操作量を制御する複数の空調制御部と、空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーを前記複数の空調制御部ごとに算出して比較する算出比較部と、前記複数の空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーが最も少ない空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換部とを備えたことを特徴とする空調制御装置。
(2)取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置における前記空調用機器の操作量を制御する空調制御装置であって、互いに異なる制御方法により前記空調用機器の操作量を制御する複数の空調制御部と、温湿度制御結果の安定度を算出して比較する算出比較部と、前記複数の空調制御部のうち、前記安定度が最も高い空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換部とを備えたことを特徴とする空調制御装置。
(3)上記手段1~9のいずれかにおいて、前記算出比較部は、前記空調装置に設けた温湿度センサからのセンシング情報に基づいて、前記エネルギーの算出比較を行うこと。
(4)上記手段1~9のいずれかにおいて、前記算出比較部は、前記空調装置と前記空調装置に熱源及び冷水を供給するヒートポンプとの間を流路的に接続する経路上に設けたエネルギー関連のセンサからのセンシング情報に基づいて、前記エネルギーの算出比較を行うこと。
21:空調装置としての塗装ブース用空調機
22:空調用機器である予熱装置としてのプレヒータ
23:空調用機器である加湿装置としてのワッシャ
24:空調用機器である冷却装置としてのクーリングコイル
25:空調用機器である再熱装置としてのレヒータ
31、31A:空調制御装置
42:第1空調制御部としてのPIDコントローラ
43:第2空調制御部としてのMPCコントローラ
44:算出比較部
45:制御切換部
46:学習データ収集部
47:機械学習部
52:(最新の)予測モデル
53:予測モデル
E1、E2:エネルギー
22:空調用機器である予熱装置としてのプレヒータ
23:空調用機器である加湿装置としてのワッシャ
24:空調用機器である冷却装置としてのクーリングコイル
25:空調用機器である再熱装置としてのレヒータ
31、31A:空調制御装置
42:第1空調制御部としてのPIDコントローラ
43:第2空調制御部としてのMPCコントローラ
44:算出比較部
45:制御切換部
46:学習データ収集部
47:機械学習部
52:(最新の)予測モデル
53:予測モデル
E1、E2:エネルギー
Claims (9)
- 取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置における前記空調用機器の操作量を制御する空調制御装置であって、
PID制御により前記空調用機器の操作量を制御する第1空調制御部と、
予測モデルに基づいたモデル予測制御により前記空調用機器の操作量を制御する第2空調制御部と、
前記PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーと、前記モデル予測制御により前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーとを算出して比較する算出比較部と、
前記第1空調制御部及び前記第2空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーが少ないほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換部と
を備えたことを特徴とする空調制御装置。 - 取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置における前記空調用機器の操作量を制御する空調制御装置であって、
PID制御により前記空調用機器の操作量を制御する第1空調制御部と、
予測モデルに基づいたモデル予測制御により前記空調用機器の操作量を制御する第2空調制御部と、
前記PID制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差と、前記モデル予測制御により前記空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差とを算出して比較する算出比較部と、
前記第1空調制御部及び前記第2空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差が小さいほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換部と
を備えたことを特徴とする空調制御装置。 - 前記第1空調制御部が前記PID制御を行っている最中に、前記予測モデルの追加学習のための学習データを収集する学習データ収集部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空調制御装置。
- 前記第1空調制御部が前記PID制御を行っている最中に、前記学習データ収集部が収集した前記学習データに基づいて前記予測モデルを新たに作成する機械学習部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の空調制御装置。
- 前記第2空調制御部が前記モデル予測制御を行っている最中に、制御ステップごとに制御結果を前記学習データとして逐次的に与えることで、前記予測モデルの誤差を随時改善する逐次学習部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空調制御装置。
- 前記制御切換部は、新たな前記予測モデルが完成した段階で、古い予測モデルを最新の前記予測モデルに置き換えて更新した後、前記第1空調制御部から前記第2空調制御部に切り換えて制御を行わせることを特徴とする請求項4または5に記載の空調制御装置。
- 前記空調装置は塗装設備用の空調装置であり、前記空調用機器は予熱装置、加湿装置、冷却装置及び再熱装置を含む塗装ブース用空調機であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の空調制御装置。
- 取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置を構成し、PID制御により前記空調用機器の操作量を制御する第1空調制御部と、予測モデルに基づいたモデル予測制御により前記空調用機器の操作量を制御する第2空調制御部とを備える空調制御装置を動作させるためのプログラムであって、
前記PID制御により空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーと、前記モデル予測制御により前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーとを算出して比較する算出比較ステップと、
前記第1空調制御部及び前記第2空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるのに要するエネルギーが少ないほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換ステップと
を含むことを特徴とする空調制御装置用プログラム。 - 取り込んだ外気の温湿度を複数種の空調用機器を用いて調整する空調装置を構成し、PID制御により前記空調用機器の操作量を制御する第1空調制御部と、予測モデルに基づいたモデル予測制御により前記空調用機器の操作量を制御する第2空調制御部とを備える空調制御装置を動作させるためのプログラムであって、
前記PID制御により空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差と、前記モデル予測制御により前記空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差とを算出して比較する算出比較ステップと、
前記第1空調制御部及び前記第2空調制御部のうち、前記空調空気を目標点まで到達させるときの目標値に対する偏差が小さいほうの空調制御部に自動的に切り換えて制御を行わせる制御切換ステップと
を含むことを特徴とする空調制御装置用プログラム。
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