JP2023137101A - 膜分離装置の保管方法、及び膜分離システム - Google Patents

膜分離装置の保管方法、及び膜分離システム Download PDF

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Abstract

【課題】分離膜の分離性能の低下を抑制することに適した、膜分離装置の新たな保管方法を提供する。【解決手段】本発明の膜分離装置10の保管方法は、揮発性の有機化合物C1を含む水溶液S1から、水溶液S1よりも有機化合物C1の含有率が高い透過流体を生じさせる分離膜11を備えた膜分離装置10を保管する方法である。保管方法は、炭素数が4以上である揮発性の有機化合物C2を含む水溶液S2を分離膜11に接触させることを含む。【選択図】図3

Description

本発明は、膜分離装置の保管方法、及び膜分離システムに関する。
微生物を利用してグルコースなどの炭素源を発酵させることによって、アルコールなどの揮発性の有機化合物(発酵物)を製造する方法が開発されている。炭素源の発酵は、例えば、水溶液中で行われる。この方法では、水溶液中の発酵物の含有率が上昇すると、微生物による発酵が停止する場合がある。その場合、微生物による発酵物の製造を連続して行うためには、発酵と同時に、水溶液から発酵物を分離する必要がある。
揮発性の有機化合物を含む水溶液から当該有機化合物を分離する方法の一例として、分離膜を用いた浸透気化法(パーベーパレーション法)が挙げられる。浸透気化法は、様々な物質を含む水溶液から揮発性の有機化合物を分離することに適している。この特長を活かし、浸透気化法を行う膜分離装置と、発酵物を製造する発酵槽とを組み合わせることによって、発酵物を連続して製造することができる。
特開平4-131128号公報
上記の浸透気化法は、揮発性の有機化合物を含む水溶液を膜分離装置の供給空間に導入して行われる。そのため、膜分離装置の運転を停止して、膜分離装置を保管する場合、当該水溶液は、通常、供給空間に収容された状態を維持し、分離膜と接触し続ける。しかし、膜分離装置を保管した状態で、上記の水溶液が分離膜と接触し続けると、水溶液の組成によっては、分離膜が膨潤又は親水化し、分離膜の分離性能が低下する。
特許文献1は、分離膜の分離性能の低下を抑制するために、膜分離装置の運転を停止するときに、装置内の被濃縮液(水溶液)を装置から排出することを開示している。しかし、膜分離装置、特にスパイラル型の膜エレメント、の内部から水溶液を完全に排出することは難しく、装置内には水溶液の一部が残留する傾向がある。装置内を十分に乾燥させるためには、不活性ガスを装置内に導入するなどの乾燥処理が必要であり、乾燥処理による時間やエネルギーの無駄が生じる。このように、特許文献1に開示された方法には改善の余地がある。
そこで本発明は、分離膜の分離性能の低下を抑制することに適した、膜分離装置の新たな保管方法を提供することを目的とする。
本発明は、
揮発性の有機化合物C1を含む水溶液S1から、前記水溶液S1よりも前記有機化合物C1の含有率が高い透過流体を生じさせる分離膜を備えた膜分離装置を保管する方法であって、
炭素数が4以上である揮発性の有機化合物C2を含む水溶液S2を前記分離膜に接触させることを含む、膜分離装置の保管方法を提供する。
さらに本発明は、
膜分離装置を備えた膜分離システムであって、
前記膜分離装置は、揮発性の有機化合物C1を含む水溶液S1から、前記水溶液S1よりも前記有機化合物C1の含有率が高い透過流体を生じさせる分離膜を備え、
前記膜分離装置を保管するときに、炭素数が4以上である揮発性の有機化合物C2を含む水溶液S2を前記分離膜に接触させる、膜分離システムを提供する。
本発明によれば、分離膜の分離性能の低下を抑制することに適した、膜分離装置の新たな保管方法を提供できる。
膜分離装置の一例を示す概略断面図である。 膜分離装置が備える分離膜の概略断面図である。 本実施形態の保管方法を説明するための図である。 膜分離装置の別の一例を示す概略断面図である。 膜分離装置を備える膜分離システムの概略構成図である。 実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
以下、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
本実施形態の保管方法は、揮発性の有機化合物C1を含む水溶液S1から、水溶液S1よりも有機化合物C1の含有率が高い透過流体を生じさせる分離膜を備えた膜分離装置を保管する方法に関する。保管方法は、炭素数が4以上である揮発性の有機化合物C2を含む水溶液S2を分離膜に接触させることを含む。
[膜分離装置]
図1に示すように、本実施形態において、膜分離装置10は、分離膜11を備える。膜分離装置10は、その運転時に、分離膜11を用いて、水溶液S1について膜分離を行う装置である。分離膜11は、水溶液S1を透過流体80と非透過流体81とに分離することができる。分離膜11は、水溶液S1に含まれる有機化合物C1を優先的に透過させる膜である。そのため、分離膜11によって分離された透過流体80は、水溶液S1よりも有機化合物C1の含有率が高い。一方、非透過流体81は、水溶液S1よりも有機化合物C1の含有率が低い。
膜分離装置10は、タンク12をさらに備える。タンク12は、第1室13及び第2室14を有する。第1室13は、水溶液S1が供給される供給空間として機能する。第2室14は、透過流体80が供給される透過空間として機能する。透過流体80は、水溶液S1が分離膜11を透過することによって得られる。分離膜11は、タンク12の内部に配置されている。タンク12の内部において、分離膜11は、第1室13と第2室14とを隔てている。分離膜11は、タンク12の1対の壁面の一方から他方まで延びている。
第1室13は、入口13a及び出口13bを有する。第2室14は、出口14aを有する。第1室13の入口13aは、水溶液S1を膜分離装置10に供給するための開口である。第2室14の出口14aは、透過流体80を膜分離装置10から排出するための開口である。第1室13の出口13bは、分離膜11を透過しなかった水溶液S1(非透過流体81)を膜分離装置10から排出するための開口である。入口13a、出口13b及び出口14aのそれぞれは、例えば、タンク12の壁面に形成されている。
膜分離装置10は、流通式(連続式)の膜分離方法に適している。ただし、膜分離装置10は、バッチ式の膜分離方法に用いられてもよい。
(分離膜)
分離膜11は、水溶液S1に含まれる有機化合物C1を優先的に透過させることができる限り、特に限定されない。分離膜11は、例えば、浸透気化法によって、有機化合物C1を含む気体の透過流体80を生じさせる浸透気化膜である。
図2に示すとおり、分離膜11は、例えば、分離機能層1、及び、分離機能層1を支持する多孔性支持体2を備えている。分離膜11は、分離機能層1を保護する保護層(図示せず)をさらに備えていてもよい。分離機能層1は、例えば、多孔性支持体2と直接接している。分離膜11は、例えば、分離機能層側の主面11aが第1室13に露出しており、多孔性支持体側の主面11bが第2室14に露出している。
(分離機能層)
分離機能層1は、水溶液S1に含まれる有機化合物C1を優先的に透過させることができる層である。分離機能層1は、例えば、疎水性材料を含む。本明細書において、「疎水性材料」は、例えば、当該材料で構成された試験片の表面に10μLの水滴(温度25℃)を滴下した場合に、水の静的接触角が90°を上回る材料を意味する。なお、水の静的接触角は、市販の接触角計を用いて測定することができる。
疎水性材料としては、例えば、シロキサン結合(Si-O-Si結合)を有する化合物、オレフィン系ポリマー、オイル、フッ素系化合物などが挙げられる。分離機能層1は、疎水性材料として、シロキサン結合を有する化合物を含むことが好ましい。シロキサン結合を有する化合物は、典型的には、シリコーン系ポリマーである。シリコーン系ポリマーは、25℃で固体であってもよく、液体であってもよい。シリコーン系ポリマーの具体例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などが挙げられる。オレフィン系ポリマーの具体例としては、ポリプロピレンなどが挙げられる。オイルとしては、例えば、流動パラフィンなどの炭化水素系オイルが挙げられる。フッ素系化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。疎水性材料は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
分離機能層1は、疎水性材料を主成分として含んでいてもよく、実質的に疎水性材料のみから構成されていてもよい。「主成分」は、分離機能層1に重量比で最も多く含まれる成分を意味する。
分離機能層1は、疎水性材料を含むマトリクスと、マトリクスに分散したフィラーとを含んでいてもよい。フィラーは、マトリクス内に埋め込まれている。マトリクス内において、全てのフィラーが互いに離間していてもよく、部分的に凝集していてもよい。
フィラーは、例えば、ゼオライト、シリカ、ベントナイトなどの無機材料を含む。フィラーに含まれるゼオライトは、アルミナに対するシリカの比率が高いハイシリカゼオライトであることが好ましい。ハイシリカゼオライトは、耐加水分解性に優れているため、水溶液S1を分離する用途に適している。ハイシリカゼオライトとしては、東ソー社製のHSZ(登録商標)、ユニオン昭和社製のHiSiv(登録商標)、ユニオン昭和社製のUSKY及び中村超硬社製のZeoal(登録商標)を用いることができる。
フィラーは、金属有機構造体(Metal-Organic-Framework:MOF)を含んでいてもよい。金属有機構造体は、多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer:PCP)とも呼ばれている。金属有機構造体は、疎水性であることが好ましい。金属有機構造体は、例えば、金属イオン及び有機配位子を含んでいる。金属イオンとしては、Znイオンなどが挙げられる。有機配位子は、例えば、芳香環を含んでいる。有機配位子に含まれる芳香環としては、イミダゾール環などが挙げられる。有機配位子としては、2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。金属有機構造体の具体例としては、ZIF-8などが挙げられる。
フィラーの形状は、例えば、粒子状である。本明細書において、「粒子状」には、球状、楕円体状、鱗片状及び繊維状が含まれる。フィラーの平均粒径は、特に限定されず、例えば50μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。フィラーの平均粒径の下限値は、例えば0.01μmである。フィラーの平均粒径は、例えば、次の方法によって特定することができる。まず、分離機能層1の断面を透過電子顕微鏡で観察する。得られた電子顕微鏡像において、特定のフィラーの面積を画像処理によって算出する。算出された面積と同じ面積を有する円の直径をその特定のフィラーの粒径(粒子の直径)とみなす。任意の個数(少なくとも50個)のフィラーの粒径をそれぞれ算出し、算出値の平均値をフィラーの平均粒径とみなす。
分離機能層1におけるフィラーの含有率は、例えば10wt%以上であり、好ましくは30wt%以上であり、より好ましくは40wt%以上である。分離機能層1におけるフィラーの含有率の上限値は、特に限定されず、例えば70wt%である。分離機能層1におけるマトリクスの含有率は、特に限定されず、例えば30wt%~90wt%である。
分離機能層1の厚さは、例えば200μm以下であり、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。分離機能層1の厚さは、1.0μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。
分離機能層1は、平均孔径が0.01μm未満の微孔構造を有していてもよいが、表面に孔を有さない緻密層であってもよい。
(多孔性支持体)
多孔性支持体2としては、例えば、不織布;多孔質ポリテトラフルオロエチレン;芳香族ポリアミド繊維;多孔質金属;焼結金属;多孔質セラミック;多孔質ポリエステル;多孔質ナイロン;活性化炭素繊維;ラテックス;シリコーン;シリコーンゴム;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド及びポリフェニレンオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む透過性(多孔質)ポリマー;連続気泡又は独立気泡を有する金属発泡体;連続気泡又は独立気泡を有するポリマー発泡体;シリカ;多孔質ガラス;メッシュスクリーンなどが挙げられる。多孔性支持体2は、これらのうちの2種以上を組み合わせたものであってもよい。
多孔性支持体2は、例えば0.01~0.4μmの平均孔径を有する。多孔性支持体2の厚さは、特に限定されず、例えば10μm以上であり、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上である。多孔性支持体2の厚さは、例えば300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
(保護層)
保護層は、例えば、分離機能層1の表面を被覆している。保護層の材料としては、特に限定されず、例えばシリコーン樹脂が挙げられる。保護層の材料は、分離機能層1のマトリクスの材料と同じであってもよい。保護層の厚さは、特に限定されず、例えば5μm以上であり、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。保護層の厚さは、例えば100μm以下であり、好ましくは50μm以下である。
(分離膜の作製方法)
分離膜11は、例えば、多孔性支持体2の上に分離機能層1を形成することによって作製することができる。詳細には、まず、分離機能層1の材料を含む塗布液を調製する。塗布液は、フィラーとともにフィラーを塗布液中に分散させるための分散剤を含んでいてもよい。塗布液がシロキサン結合を有する化合物を含む場合、塗布液は、当該化合物を硬化させるための触媒をさらに含んでいてもよい。次に、塗布液を多孔性支持体2の上に塗布することによって塗布膜を得る。塗布膜を乾燥させることによって、分離機能層1が形成される。
(分離膜の特性)
分離膜11において、水に対する有機化合物C1の分離係数は、特に限定されない。一例として、分離膜11の水に対するn-ブタノール(BuOH)の分離係数αは、10~100であってもよい。分離係数αは、次の方法によって測定できる。まず、分離膜11の一方の面(例えば分離膜11の分離機能層側の主面11a)にBuOH及び水からなる混合液体を接触させた状態で分離膜11の他方の面(例えば分離膜11の多孔性支持体側の主面11b)に隣接する空間を減圧する。これにより、分離膜11を透過した透過流体が得られる。透過流体における水の重量比率及びBuOHの重量比率を測定する。上記の操作において、混合液体におけるBuOHの含有率は、0.5wt%である。分離膜11に接触させる混合液体は、温度が30℃である。分離膜11の他方の面に隣接する空間は、1.5kPaまで減圧される。分離係数αは、以下の式から算出することができる。ただし、下記式において、XA及びXBは、それぞれ、混合液体におけるBuOHの重量比率及び水の重量比率である。YA及びYBは、それぞれ、分離膜11を透過した透過流体におけるBuOHの重量比率及び水の重量比率である。
分離係数α=(YA/YB)/(XA/XB
上記の分離係数αの測定条件において、分離膜11を透過するBuOHの流束は、特に限定されず、例えば0.01(g/min/m2)~1.0(g/min/m2)である。
上記の分離係数αの測定条件において、分離膜11を透過した透過流体におけるBuOHの含有率は、特に限定されず、例えば1wt%~20wt%である。
[膜分離装置の運転方法]
膜分離装置10の運転方法は、例えば、次のように実施される。まず、入口13aを通じて、水溶液S1を膜分離装置10の第1室13に供給する。これにより、分離膜11の一方の面(例えば、主面11a)に水溶液S1を接触させることができる。
水溶液S1に含まれる有機化合物C1は、揮発性を有する限り、特に限定されない。本明細書において、「揮発性を有する有機化合物」とは、沸点が50℃~260℃である有機化合物を意味する。なお、有機化合物C1は、例えば、水溶液中での濃度が高い場合に、水を主成分として含む水相と、当該水相よりも有機化合物C1の含有率が高い有機相とを生じさせるものである。
有機化合物C1の炭素数は、特に限定されず、例えば10以下であり、8以下、6以下、さらには4以下であってもよい。有機化合物C1の炭素数の下限値は、1であってもよく、2であってもよい。有機化合物C1は、例えば、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基などの酸素原子を含む官能基を有している。有機化合物C1において、酸素原子を含む官能基の数は、典型的には1つである。
有機化合物C1としては、例えば、アルコール、ケトンなどが挙げられ、アルコールであることが好ましい。有機化合物C1としてのアルコールは、アルキル基及びヒドロキシル基のみから構成されたアルキルアルコールであってもよく、アリール基及びヒドロキシル基を含むアリールアルコールであってもよい。アルキルアルコールは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。有機化合物C1において、アルキルアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール(BuOH)、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノールなどが挙げられ、好ましくはn-ブタノールである。アリールアルコールとしては、例えば、フェノールなどが挙げられる。
ケトンは、アルキル基及びカルボニル基のみから構成されたジアルキルケトンであってもよい。有機化合物C1において、ジアルキルケトンとしては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトンなどが挙げられる。
水溶液S1は、1種類の有機化合物C1を含んでいてもよく、2種類以上の有機化合物C1を含んでいてもよい。水溶液S1における有機化合物C1の含有率は、例えば50wt%以下であり、30wt%以下、10wt%以下、5wt%以下、2wt%以下、さらには1wt%以下であってもよい。有機化合物C1の含有率の下限値は、特に限定されず、例えば0.01wt%である。
有機化合物C1は、微生物が炭素源を発酵させることによって生成した発酵物であってもよく、微生物が生成したn-ブタノール(バイオブタノール)であってもよい。すなわち、水溶液S1は、発酵物としての有機化合物C1を含む発酵液であってもよい。ただし、水溶液S1は、発酵液に限定されず、化学プラントなどから排出された排水であってもよい。
水溶液S1は、水及び有機化合物C1以外に、微生物、炭素源、窒素源、無機イオンなどの他の成分をさらに含んでいてもよい。微生物としては、例えば、クロストリジウム属などの細菌が挙げられる。炭素源としては、デンプンなどの多糖類や、グルコースなどの単糖類が挙げられる。水溶液S1における他の成分の含有率は、特に限定されず、例えば1wt%~10wt%である。
膜分離装置10への水溶液S1の供給量は、特に限定されず、膜分離装置10の処理能力に応じて定められる。一例として、水溶液S1の供給量は、0.5kg/hr~500kg/hrである。第1室13に供給される水溶液S1は、予め加熱されてもよい。一例として、第1室13に供給される水溶液S1の温度は、30℃~75℃である。
次に、分離膜11の一方の面に水溶液S1を接触させた状態で、分離膜11の他方の面(例えば、主面11b)に隣接する空間を減圧する。詳細には、出口14aを通じて、第2室14内を減圧する。第2室14内の減圧は、例えば、真空ポンプなどの減圧装置によって行うことができる。第2室14の圧力は、例えば50kPa以下であり、20kPa以下、10kPa以下、5kPa以下、3kPa以下、さらには2kPa以下であってもよい。なお、本明細書において、特に言及のない限り、「圧力」は、絶対圧を意味する。
第2室14内を減圧することによって、分離膜11の他方の面側において、有機化合物C1の含有率が高い透過流体80を得ることができる。言い換えると、透過流体80が第2室14に供給される。第2室14内において、透過流体80は、気体であってもよく、液体であってもよい。透過流体80は、出口14aを通じて、膜分離装置10の外部に排出される。気体の透過流体80は、例えば、後述する凝縮部などで冷却される。これにより、透過流体80が液化し、液体の透過流体80が得られる。
一方、水溶液S1における有機化合物C1の含有率は、第1室13の入口13aから出口13bに向かって徐々に低下する。第1室13で処理された水溶液S1(非透過流体81)は、出口13bを通じて、膜分離装置10の外部に排出される。非透過流体81は、典型的には液体である。
上述のとおり、膜分離装置10の分離膜11は、水溶液S1に含まれる有機化合物C1を優先的に透過させることができる。そのため、膜分離装置10の運転によって得られた透過流体80は、膜分離装置10に供給される水溶液S1に比べて、有機化合物C1の含有率が高い。水溶液S1における有機化合物C1の含有率(wt%)に対する、透過流体80における有機化合物C1の含有率(wt%)の比は、特に限定されず、例えば5~50である。
[膜分離装置の保管方法]
上述のとおり、本実施形態の保管方法は、炭素数が4以上である揮発性の有機化合物C2を含む水溶液S2を分離膜11に接触させることを含む。なお、水溶液S2を分離膜11に接触させる操作は、膜分離装置10の運転を停止するときに行ってもよい。すなわち、膜分離装置10の運転停止方法が、水溶液S2を分離膜11に接触させることを含んでいてもよい。ただし、水溶液S2を分離膜11に接触させる操作は、膜分離装置10の運転を停止した後に行ってもよい。
本実施形態の保管方法は、詳細には、次のように実施される。まず、図3に示すように、水溶液S2を膜分離装置10の第1室13(供給空間)に導入する。水溶液S2は、例えば、入口13aを通じて、第1室13に導入することができる。ただし、第1室13が入口13a以外の他の入口を有しており、当該他の入口を通じて、水溶液S2を第1室13に導入してもよい。
水溶液S2が第1室13に導入されると、膜分離装置10の運転時に第1室13に供給された水溶液S1が、例えば出口13bから排出される。これにより、第1室13が水溶液S2で満たされ、分離膜11の一方の面(例えば、主面11a)に水溶液S2を接触させることができる。本実施形態の保管方法において、第2室14内の圧力は、透過流体がほとんど生じない値、例えば測定環境における大気圧に調整される。本実施形態では、膜分離装置10を保管している間、第2室14内を減圧する必要がなく、第2室14内を減圧状態に維持するために必要なエネルギーを節約できる。
水溶液S2は、膜分離装置10の保管液として機能する。水溶液S1の組成と、水溶液S2の組成とは、互いに異なることが好ましい。ただし、場合によっては、水溶液S1及び水溶液S2について、組成が互いに同じであってもよい。
水溶液S2に含まれる有機化合物C2は、炭素数が4以上であり、かつ揮発性を有する限り、特に限定されない。有機化合物C2の炭素数の上限値は、例えば10であり、8であってもよく、6であってもよい。有機化合物C2は、例えば、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基などの酸素原子を含む官能基を有している。有機化合物C2において、酸素原子を含む官能基の数は、典型的には1つである。
有機化合物C2としては、例えば、アルコール、ケトンなどが挙げられ、アルコールであることが好ましい。有機化合物C2としてのアルコールは、アルキル基及びヒドロキシル基のみから構成されたアルキルアルコールであることが好ましいが、アリール基及びヒドロキシル基を含むアリールアルコールであってもよい。アルキルアルコールは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。有機化合物C2において、アルキルアルコールとしては、例えば、n-ブタノール(BuOH)、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノールなどが挙げられ、好ましくはn-ブタノールである。アリールアルコールとしては、例えば、フェノールなどが挙げられる。
ケトンは、アルキル基及びカルボニル基のみから構成されたジアルキルケトンであってもよい。有機化合物C2において、ジアルキルケトンとしては、メチルエチルケトン(MEK)などが挙げられる。
有機化合物C2は、有機化合物C1と同じであってもよく、異なっていてもよい。水溶液S2は、1種類の有機化合物C2を含んでいてもよく、2種類以上の有機化合物C2を含んでいてもよい。水溶液S2における有機化合物C2の含有率は、例えば20wt%以下であり、10wt%以下、8wt%以下、5wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、さらには1wt%以下であってもよい。有機化合物C2の含有率の下限値は、特に限定されず、例えば0.01wt%である。
水溶液S2における水の含有率と有機化合物C2の含有率との合計値Tは、例えば90wt%以上であり、95wt%以上、96wt%以上、97wt%以上、98wt%以上、さらには99wt%以上であってもよい。水溶液S2は、水及び有機化合物C2以外の他の成分を含んでいてもよいが、他の成分を含まない(合計値Tが100%である)ことが好ましい。合計値Tが高い水溶液S2は、分離膜11を洗浄するための洗浄液として機能することもできる。そのため、本実施形態の保管方法では、合計値Tが高い水溶液S2を用いることで、別途洗浄液を用いて分離膜11を洗浄する操作を省略することができる。
第1室13に供給される水溶液S2の温度は、典型的には室温(25±10℃)である。
本実施形態の保管方法では、膜分離装置10の運転を開始(再開)するまで、水溶液S2を分離膜11に接触させた状態を維持することが好ましい。すなわち、膜分離装置10の運転を再開するまで、第1室13が水溶液S2で満たされていることが好ましい。膜分離装置10を保管する時間は、特に限定されず、例えば10時間~10日間である。なお、膜分離装置10の運転を再開する場合は、予め、膜分離装置10の入口13aを通じて水溶液S1を第1室13に供給して、水溶液S2を出口13bから排出することが好ましい。
本発明者らの検討によると、炭素数が4以上である揮発性の有機化合物C2を含む水溶液S2は、分離膜11と接触しても、分離膜11が親水化しにくい傾向がある。そのため、膜分離装置10を保管した状態で、水溶液S2が分離膜11と接触し続けても、分離膜11の分離性能の低下が抑制される傾向がある。このように、本実施形態の保管方法は、分離膜の分離性能を維持することに適している。本実施形態の保管方法では、分離膜11を乾燥させる必要がないため、乾燥処理による時間やエネルギーの無駄を省くことができる。
保管処理前の膜分離装置10の分離膜11を透過した透過流体におけるBuOHの含有率R0(wt%)に対する、保管処理後の膜分離装置10の分離膜11を透過した透過流体におけるBuOHの含有率R1(wt%)の比率は、例えば85%以上であり、90%以上、95%以上、さらには98%以上であってもよい。なお、含有率R0及びR1は、上述した分離係数αの測定条件で測定された値である。
なお、本実施形態の保管方法を行った後に、膜分離装置10の運転を再開した場合、運転の再開直後は、分離膜11の分離性能が低いことがある。この場合であっても、分離膜11は、運転を再開してから短時間(例えば60分)で、その分離性能が十分に回復する傾向がある。
<膜分離装置の変形例>
膜分離装置10は、図4に示すようなスパイラル型の膜エレメントであってもよい。図4の膜分離装置15は、中心管16及び積層体17を備えている。積層体17が分離膜11を含んでいる。
中心管16は、円筒形状を有している。中心管16の表面には、中心管16の内部に透過流体80を流入させるための複数の孔又はスリットが形成されている。中心管16の材料としては、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂)、ポリサルフォン樹脂(PSF樹脂)などの樹脂;ステンレス鋼、チタンなどの金属が挙げられる。中心管16の内径は、例えば20~100mmの範囲にある。
積層体17は、分離膜11の他に、供給側流路材18及び透過側流路材19をさらに含む。積層体17は、中心管16の周囲に巻回されている。膜分離装置15は、外装材(図示せず)をさらに備えていてもよい。
供給側流路材18及び透過側流路材19としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又はエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)からなる樹脂製のネット、織物又は編物を用いることができる。
膜分離装置15の運転方法は、例えば、次のように実施される。まず、巻回された積層体17の一端に水溶液S1を供給する。中心管16の内部の空間を減圧する。これにより、積層体17の分離膜11を透過した透過流体80が中心管16の内部に移動する。透過流体80は、中心管16を通じて外部に排出される。膜分離装置15で処理された水溶液S1(非透過流体81)は、巻回された積層体17の他端から外部に排出される。
膜分離装置15の保管方法は、巻回された積層体17の一端に水溶液S2を導入することによって行うことができる。
<膜分離システムの実施形態>
図5に示すように、本実施形態の膜分離システム100は、上述の膜分離装置10(又は15)を備える。膜分離システム100は、膜分離装置10に対して、上述した運転方法及び保管方法を行うことができる。詳細には、膜分離システム100は、膜分離装置10を保管するときに(特に、膜分離装置10の運転を停止するときに)、上記の水溶液S2を膜分離装置10の第1室13に導入して、水溶液S2を分離膜11に接触させることができる。
膜分離システム100は、膜分離装置10とともに、タンク20をさらに備える。タンク20は、膜分離装置10に供給する水溶液S1を貯蔵している。タンク20は、典型的には、微生物による炭素源の発酵によって有機化合物C1を生成するための発酵槽である。
膜分離システム100は、気体の透過流体80を凝縮させるための凝縮部30と、減圧装置40とをさらに備えていてもよい。凝縮部30には、例えば、透過流体80を冷却するための熱交換器が配置されている。熱交換器は、例えば、不凍液などの冷却媒体と透過流体80との間で熱交換を生じさせる気-液熱交換器である。凝縮部30では、熱交換器により透過流体80が冷却されることによって、液体の透過流体80が形成される。凝縮部30は、液体の透過流体80を貯蔵するためのタンクを備えていてもよい。
減圧装置40は、例えば、凝縮部30を通じて、膜分離装置10の透過空間(第2室14)内を減圧することができる。減圧装置40は、真空ポンプなどの真空装置であることが好ましい。真空ポンプは、典型的には気体輸送式の真空ポンプであり、往復運動式の真空ポンプや回転式の真空ポンプなどが挙げられる。往復運動式の真空ポンプとしては、ダイヤフラム型や揺動ピストン型の真空ポンプが挙げられる。回転式の真空ポンプとしては、液封ポンプ;油回転ポンプ(ロータリポンプ);メカニカルブースターポンプ;ルーツ型、クロー型、スクリュー型、ターボ型、スクロール型などの各種ドライポンプなどが挙げられる。減圧装置40としてのポンプは、回転数などを変化させるための可変速機構を備えていてもよい。可変速機構の例は、ポンプのモータを駆動するインバータである。可変速機構でポンプの回転数などを制御することによって、膜分離装置10の第2室14の圧力を適切に調整することができる。
膜分離システム100は、凝縮部30で凝縮された透過流体80を相分離させるための分離槽35をさらに備えていてもよい。例えば、分離槽35において、液体の透過流体80を静置すると、透過流体80は、水を主成分として含む水相と、当該水相よりも有機化合物C1の含有率が高い有機相とに分離される。なお、「主成分」は、水相に重量比で最も多く含まれる成分を意味する。水相は、例えば、水とともに有機化合物C1を含んでおり、有機化合物C1が飽和している状態であってもよい。有機相は、有機化合物C1とともに水をさらに含んでいてもよい。
膜分離システム100は、水溶液供給経路61、透過流体排出経路62及び非透過流体排出経路63をさらに備える。水溶液供給経路61は、タンク20の水溶液出口(出口21)及び膜分離装置10の水溶液入口(入口13a)に接続されており、タンク20から膜分離装置10に水溶液S1を供給するための経路である。水溶液供給経路61には、水溶液S1の流量を制御するポンプが配置されていてもよく、水溶液S1における有機化合物C1の含有率を測定するためのセンサが配置されていてもよい。
透過流体排出経路62は、膜分離装置10の透過流体出口(出口14a)及び凝縮部30の透過流体入口(入口31)に接続されており、膜分離装置10から凝縮部30に透過流体80を送るための経路である。透過流体排出経路62には、透過流体80における有機化合物C1の含有率を測定するためのセンサが配置されていてもよい。
非透過流体排出経路63は、膜分離装置10の非透過流体出口(出口13b)に接続されており、膜分離装置10から非透過流体81を排出するための経路である。非透過流体排出経路63には、非透過流体81における有機化合物C1の含有率を測定するためのセンサが配置されていてもよい。
非透過流体排出経路63は、タンク20の非透過流体入口(入口22)に接続されており、非透過流体81をタンク20に送るように構成されていてもよい。すなわち、膜分離システム100において、非透過流体81がタンク20にて水溶液S1に混合され、水溶液供給経路61及び非透過流体排出経路63を循環する構成であってもよい。非透過流体81をタンク20に送る場合、タンク20内では、水溶液S1及び非透過流体81が混合され、水溶液S1における有機化合物C1の含有率が低下する。タンク20が発酵槽である場合、水溶液S1における有機化合物C1の含有率が低下することによって、微生物による発酵が停止することを抑制でき、これにより、発酵物の製造を連続して行うことができる。
膜分離システム100は、液体排出経路64及び減圧経路65をさらに備える。液体排出経路64は、凝縮部30の液体出口32、及び分離槽35の液体入口36に接続されており、凝縮部30から分離槽35に液体の透過流体80を送るための経路である。
減圧経路65は、凝縮部30の気体出口33及び減圧装置40に接続されている。減圧装置40は、減圧経路65、凝縮部30及び透過流体排出経路62を通じて、膜分離装置10の第2室14内を減圧することができる。
膜分離システム100は、水相排出経路66及び有機相排出経路67をさらに備える。水相排出経路66は、分離槽35の水相出口37に接続されており、分離槽35で生じた水相を分離槽35から排出するための経路である。水相排出経路66には、水相排出経路66から水相を排出するための開口(排出口70)が形成されている。水相排出経路66は、水相を貯蔵するタンク、又は、水相について蒸留処理を行う蒸留部(例えば蒸留塔)に接続されていてもよい。
有機相排出経路67は、分離槽35の有機相出口38に接続されており、分離槽35で生じた有機相を分離槽35から排出するための経路である。有機相排出経路67には、有機相排出経路67から有機相を排出するための開口(排出口71)が形成されている。有機相排出経路67は、有機相を貯蔵するタンク、又は、有機相について蒸留処理を行う蒸留部(例えば蒸留塔)に接続されていてもよい。
膜分離システム100は、膜分離システム100の各部材を制御する制御器50をさらに備えていてもよい。制御器50は、例えば、A/D変換回路、入出力回路、演算回路、記憶装置などを含むDSP(Digital Signal Processor)である。制御器50には、膜分離システム100を適切に運転するためのプログラムが格納されている。
膜分離システム100の経路のそれぞれは、特に言及がない限り、例えば、金属製又は樹脂製の配管で構成されている。
以下に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[膜分離装置の作製]
まず、次の方法によって分離膜(浸透気化膜)を作製した。シリコーン樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のYSR3022)1.650kg(固形分濃度30wt%)、トルエン2.805kg、ハイシリカゼオライト(ユニオン昭和社製のHiSiv3000)0.495kg、シリコーン硬化触媒(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のYC6831)0.0495kg及び硬化遅延剤としてのアセチルアセトン0.0495kgを混合して塗布液を調製した。次に、塗布液を厚さ150μmの多孔性支持体(日東電工社製のRS-50)の上に塗布することによって塗布膜(厚さ500μm)を得た。塗布膜を90℃で4分間加熱し、乾燥させることによって、厚さ50μmの分離機能層を作製した。分離機能層において、シリコーン樹脂とハイシリカゼオライトとの重量比は、50:50であった。これにより、分離膜を得た。
得られた分離膜を用いて、図4に示すようなスパイラル型の膜エレメント(膜分離装置)を作製した。膜エレメントは、長さが300mmであり、外径が63mmであった。膜エレメントにおける透過側流路材の厚さは、250μmであった。供給側流路材の厚さは、850μmであった。膜エレメントにおける分離膜の膜面積は、0.4m2であった。
[分離膜の初期の分離性能]
次に、作製した膜エレメントを用いて、次の方法によって、分離膜の初期の分離性能を評価した。まず、n-ブタノール(BuOH)及び水からなる混合液体1Lを膜エレメントの供給空間に供給し、分離膜を洗浄した。次に、この混合液体を約100g/minの流量で膜エレメントの供給空間に供給した。詳細には、上記の流量で、混合液体を、混合液体を貯蔵しているタンクと膜エレメントとの間で循環させた。なお、評価試験中、混合液体におけるBuOHの含有率の変化は、分離性能の評価結果に影響を与えない程度に小さかった。評価試験中の混合液体におけるBuOHの含有率は、0.5wt%~0.6wt%であった。
次に、混合液体を貯蔵しているタンク、配管、膜エレメントを収容しているベッセルなどの温度を調節することによって、混合液体の温度を30℃に調節した。次に、膜エレメントの中心管の内部の空間(透過空間)を1.5kPaまで減圧した。これにより、混合液体が分離膜を透過し、気体の透過流体が得られた。液体窒素を利用した冷却トラップによって、気体の透過流体を冷却し、透過流体を凝縮させた。
次に、透過空間の減圧を開始してから30分後~45分後の間に、液体の透過流体を採取した。1回目の透過流体の採取から、15分ごとに液体の透過流体を採取することによって、合計4つの透過流体のサンプルを得た。ガスクロマトグラフィーを用いて、各サンプルの組成を分析し、各サンプルにおけるBuOHの含有率を測定した。得られた測定値の平均値を透過流体におけるBuOHの含有率とみなした。透過流体におけるBuOHの含有率は、13.56wt%であった。
(比較例1)
初期の分離性能の評価を行った膜エレメントの供給空間に、25℃の水を1L供給することによって、分離膜を洗浄するとともに供給空間を水で満たした。この状態で、膜エレメントを24時間保管した。これにより、比較例1の保管方法を行った。
保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、比較例1の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が10.97wt%まで低下した。
(比較例2)
膜エレメントを保管する時間を63時間に変更したことを除き、比較例1と同じ方法によって、比較例2の保管方法を行った。保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、比較例2の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が10.59wt%まで低下した。
(実施例1)
初期の分離性能の評価を行った膜エレメントの供給空間に、n-ブタノール(BuOH)の水溶液S2を1L供給することによって、分離膜を洗浄するとともに供給空間を水溶液S2で満たした。水溶液S2は、BuOHの含有率が0.8wt%であり、温度が25℃であった。この状態で、膜エレメントを22時間保管した。これにより、実施例1の保管方法を行った。
保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、実施例1の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が13.32wt%であった。
(実施例2)
膜エレメントを保管する時間を23時間に変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例2の保管方法を行った。保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、実施例2の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が12.90wt%であった。
(実施例3)
膜エレメントを保管する時間を87時間に変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例3の保管方法を行った。保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、実施例3の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が12.03wt%であった。
(実施例4)
膜エレメントを保管する時間を21時間に変更したこと、及び、水溶液S2におけるBuOHの含有率を1.5wt%に変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例4の保管方法を行った。保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、実施例4の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が12.52wt%であった。
(実施例5)
膜エレメントを保管する時間を20時間に変更したこと、及び、水溶液S2におけるBuOHの含有率を3.0wt%に変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例5の保管方法を行った。保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、実施例5の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が12.52wt%であった。
(比較例3)
初期の分離性能の評価を行った膜エレメントの供給空間に、エタノール(EtOH)の水溶液を1L供給することによって、分離膜を洗浄するとともに供給空間を当該水溶液で満たした。水溶液は、EtOHの含有率が2.0wt%であり、温度が25℃であった。この状態で、膜エレメントを20時間保管した。これにより、比較例3の保管方法を行った。
保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、比較例3の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が11.51wt%まで低下した。
(比較例4)
膜エレメントを保管する時間を68時間に変更したことを除き、比較例3と同じ方法によって、比較例4の保管方法を行った。保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、比較例4の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が10.90wt%まで低下した。
(比較例5)
初期の分離性能の評価を行った膜エレメントの供給空間に、イソプロパノール(IPA)の水溶液を1L供給することによって、分離膜を洗浄するとともに供給空間を当該水溶液で満たした。水溶液は、IPAの含有率が2.0wt%であり、温度が25℃であった。この状態で、膜エレメントを21時間保管した。これにより、比較例5の保管方法を行った。
保管処理後の膜エレメントに対して、上記の分離性能の評価を再度行った。その結果、比較例5の保管方法を行った後では、透過流体におけるBuOHの含有率が10.43wt%まで低下した。
実施例及び比較例の結果を図6に示す。図6からわかるとおり、実施例の保管方法を行った場合、保管処理前の分離膜を透過した透過流体におけるBuOHの含有率(13.56wt%)に対する、保管処理後の分離膜を透過した透過流体におけるBuOHの含有率(wt%)の比率が、いずれも85%以上であり、比較例よりも高い値であった。この結果から、本実施形態の保管方法は、分離膜の分離性能の低下を抑制することに適していることがわかる。
本実施形態の保管方法は、膜分離装置が備える分離膜の分離性能の低下を抑制することに適している。
1 分離機能層
2 多孔性支持体
10、15 膜分離装置
11 分離膜
80 透過流体
81 非透過流体
100 膜分離システム

Claims (16)

  1. 揮発性の有機化合物C1を含む水溶液S1から、前記水溶液S1よりも前記有機化合物C1の含有率が高い透過流体を生じさせる分離膜を備えた膜分離装置を保管する方法であって、
    炭素数が4以上である揮発性の有機化合物C2を含む水溶液S2を前記分離膜に接触させることを含む、膜分離装置の保管方法。
  2. 前記膜分離装置は、前記分離膜によって隔てられた供給空間及び透過空間を有し、
    前記水溶液S2を前記供給空間に導入することによって、前記水溶液S2を前記分離膜に接触させる、請求項1に記載の保管方法。
  3. 前記膜分離装置の運転を開始するまで、前記水溶液S2を前記分離膜に接触させた状態を維持する、請求項1又は2に記載の保管方法。
  4. 前記分離膜が浸透気化膜である、請求項1~3のいずれか1項に記載の保管方法。
  5. 前記分離膜は、疎水性材料を含む分離機能層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の保管方法。
  6. 前記疎水性材料は、シロキサン結合を有する化合物を含む、請求項5に記載の保管方法。
  7. 前記分離機能層は、前記疎水性材料を含むマトリクスと、前記マトリクスに分散したフィラーとを含む、請求項5又は6に記載の保管方法。
  8. 前記フィラーがゼオライトを含む、請求項7に記載の保管方法。
  9. 前記水溶液S1の組成と、前記水溶液S2の組成とが互いに異なる、請求項1~8のいずれか1項に記載の保管方法。
  10. 前記水溶液S2における前記有機化合物C2の含有率が10wt%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の保管方法。
  11. 前記水溶液S2における水の含有率と前記有機化合物C2の含有率との合計値が95wt%以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の保管方法。
  12. 前記有機化合物C2がアルキルアルコールである、請求項1~11のいずれか1項に記載の保管方法。
  13. 前記有機化合物C2がn-ブタノールである、請求項1~12のいずれか1項に記載の保管方法。
  14. 前記有機化合物C1がアルコールである、請求項1~13のいずれか1項に記載の保管方法。
  15. 前記有機化合物C1は、微生物が生成した発酵物である、請求項1~14のいずれか1項に記載の保管方法。
  16. 膜分離装置を備えた膜分離システムであって、
    前記膜分離装置は、揮発性の有機化合物C1を含む水溶液S1から、前記水溶液S1よりも前記有機化合物C1の含有率が高い透過流体を生じさせる分離膜を備え、
    前記膜分離装置を保管するときに、炭素数が4以上である揮発性の有機化合物C2を含む水溶液S2を前記分離膜に接触させる、膜分離システム。
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