JP2023135980A - 電極の製造方法、および電極 - Google Patents

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Abstract

Figure 2023135980000001
【課題】活物質層の目付量の上限値を大きくすること。
【解決手段】基材に第1電圧が印加され、かつスクリーンに第2電圧が印加されることにより、基材とスクリーンとの間に電界が形成される。スクリーンを通して、粉体塗料が電界に導入される。粉体塗料が基材に付着することにより、電極が製造される。第1電圧は、第2電圧と反対極性を有する。粉体塗料がスクリーンを通過する際に、粉体塗料がスクリーンと接触することにより、粉体塗料に電荷が付与される。電界中、静電気力によって粉体塗料が飛行することにより、粉体塗料が基材に到達する。粉体塗料の飛行方向と、鉛直下向きとのなす角は、90~270度である。
【選択図】図1

Description

本開示は、電極の製造方法、および電極に関する。
特開2018-192380号公報(特許文献1)は、静電粉体塗装装置を開示する。
特開2018-192380号公報
静電塗装技術により電極を製造することが提案されている。例えば、電界が形成される。電界の一端は、ワーク(基材)である。電界中に粉体塗料が噴霧される。粉体塗料は活物質粒子を含む。粉体塗料に静電気力が作用する。静電気力により、粉体塗料が基材に向かって飛行する。さらに静電気力により、粉体塗料が基材に付着する。粉体塗料が基材に付着することにより、活物質層が形成され得る。
例えば、電界中の粉体塗料の飛行方向と、鉛直下向きとのなす角を90~270度に調整することが考えられる。これにより、フィルター作用の発現が期待される。「フィルター作用」は、粉体塗料から金属異物を除去する作用を示す。
粉体塗料は、金属異物を含み得る。金属異物は、例えば、活物質粒子の製造時に混入し得る。金属異物は、電池性能に悪影響を及ぼす可能性がある。飛行中の粉体塗料には、推力と重力とが作用する。飛行方向が例えば鉛直上向きであることにより、推力と重力とが互いに異なる方向に作用し得る。通常、金属異物は、粗大粒子である。金属異物は、活物質粒子に比して、大きい質量を有し得る。また金属異物は導体であるため、帯電し難いと考えられる。そのため、金属異物に作用する重力が、飛行の推力(静電気力、風圧力等)より大きくなり得る。重力の影響が大きくなることにより、金属異物が飛行できないか、または飛行しても落下し得る。これにより、金属異物が粉体塗料から除去されることが期待される。
ただし、フィルター作用と引き換えに、活物質層の目付量(単位面積当たりの付着量)が制限されることになる。粉体塗料は、静電気力により基材に付着する。すなわち粉体塗料の付着力は、静電気力に比例する。目付量が大きくなる程(活物質層が厚くなる程)、活物質層の表面と、基材(電極)との距離が長くなる。静電気力は、距離の2乗に反比例する。したがって、活物質層が厚くなる程、活物質層の表面に作用する静電気力(付着力)が小さくなる。例えば、粉体塗料の飛行方向が鉛直上向きである時、粉体塗料を基材から引き離す方向に重力が作用し得る。活物質層が所定の厚さになると、重力が付着力を超える。重力が付着力を超えると、新たに粉体塗料が付着できなくなる。すなわち、活物質層の目付量が上限値に達する。
本開示の目的は、活物質層の目付量の上限値を大きくすることである。
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
1.電極の製造方法は、下記(a)~(c)を含む。
(a)基材に第1電圧を印加し、かつスクリーンに第2電圧を印加することにより、基材とスクリーンとの間に電界を形成する。
(b)スクリーンを通して、粉体塗料を電界に導入する。
(c)粉体塗料を基材に付着させることにより、電極を製造する。
第1電圧は、第2電圧と反対極性を有する。粉体塗料がスクリーンを通過する際に、粉体塗料がスクリーンと接触することにより、粉体塗料に電荷が付与される。電界中、静電気力によって粉体塗料が飛行することにより、粉体塗料が基材に到達する。粉体塗料の飛行方向と、鉛直下向きとのなす角は、90~270度である。
粉体塗料の飛行方向と、鉛直下向きとのなす角が90~270度であることにより、フィルター作用の発現が期待される。
従来、電界の一端である基材は、グランド(0V)とされている。すなわち基材には、電圧が付与されていない。この場合、基材に付着した粉体塗料に作用する静電気力(付着力)は、鏡像力に等しい。粉体塗料が基材に堆積することにより、活物質層が厚くなる。活物質層が厚くなる程、活物質層の表面に作用する鏡像力は小さくなる。活物質層の表面において、鏡像力と重力とが釣り合う時、活物質層の目付量が上限値に達する。
本開示においては、基材に第1電圧が付与される。基材に付与される第1電圧は、スクリーンに付与される第2電圧と反対極性を有する。粉体塗料は、スクリーンから電荷を付与される。よって基材は、粉体塗料の電荷と反対極性の電荷を有する。粉体塗料と反対極性の電荷を基材が有することにより、鏡像力を超える静電気力が発生し得る。したがって、活物質層の目付量の上限値が大きくなることが期待される。
さらに、付着力の増大により、基材への粉体塗料の付着頻度が上昇することも期待される。付着頻度の上昇により、付着速度の上昇が期待される。
2.粉体塗料の飛行方向は、例えば、鉛直上向きであってもよい。
フィルター作用の増強が期待されるためである。なお、鉛直上向きと鉛直下向きとのなす角は、180度である。
3.第1電圧は、例えば正極性であってもよい。
すなわち第2電極は、例えば負極性であってもよい。
4.粉体塗料は、例えば複合粒子を含んでいてもよい。複合粒子は、活物質粒子と、被膜とを含む。被膜は、活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。被膜は、バインダを含む。
従来、液体塗料の塗布により、活物質層が形成されている。液体塗料は、スラリー、ペースト等と称されている。液体塗料は、活物質粒子およびバインダ等が分散媒中に分散されることにより、準備される。液体塗料の乾燥時、分散媒(液体)の蒸発に伴って、バインダが塗膜の表面に向かって移動し得る。該現象は、「バインダマイグレーション」とも称されている。バインダマイグレーションにより、活物質層の組成(バインダの分布)にバラツキが生じ得る。バインダマイグレーションが発生すると、抵抗の増加、剥離強さの低下等の不都合が生じ得る。
本開示の複合粒子においては、予め活物質粒子とバインダとが結合している。静電塗装技術における粉体塗料は、分散媒が不要であり得る。すなわち、活物質層の形成過程で、バインダを移動させる因子が少ない。したがって、活物質層におけるバインダの分布が均一になることが期待される。
5.バインダは、例えばフッ素樹脂を含んでいてもよい。
フッ素樹脂は、帯電列において最も負側に位置する。バインダがフッ素樹脂を含むことにより、粉体塗料の帯電が促進されることが期待される。
6.下記式(1)の関係が満たされてもよい。
Ed<f(pd) (1)
上記式(1)中、
「E」は、電界の電界強度を示す。
「d」は、基材とスクリーンとの距離を示す。
「p」は、電界中のガス圧を示す。
「f(pd)」は、ガス圧と距離との積と、パッシェン曲線とから求まる火花電圧を示す。
上記式(1)が満たされることにより、電極の製造中、火花放電の低減が期待される。
7.バッチ式で電極が製造されてもよい。
電極の製造方式は、連続式とバッチ式とに大別される。上記「1.」の製造方法においては、基材に第1電圧が付与される。例えば、連続式(ロールtoロール方式)により、電極が製造される時、基材が数千mの長さになる場合がある。製造設備の大部分に、第1電圧が印加されることになるため、製造設備が複雑かつ高価になる可能性がある。さらに、上記「1.」の製造方法においては、目付量が大きい電極が製造され得る。目付量が大きい電極(分厚い電極)が、ロールに巻き取られると、活物質層が割れる等の不都合も発生し得る。
上記「1.」の製造方法は、バッチ式により、大面積の枚葉状電極を一枚一枚製造することに適している。大面積の枚葉状電極は、例えば、大面積の積層型電池に使用され得る。またバッチ式の採用により、製造設備のコンパクト化も期待される。
8.電極は、基材と活物質層とを含む。基材は、第1領域と第2領域とを含む。第1領域は、活物質層に被覆されている。第2領域は、活物質層から露出している。第2領域は、第1領域と隣接している。活物質層は、側端面を有する。側端面は、第1領域と第2領域との境界と接触している。側端面と、基材とがなす角は、45~90度である。
活物質層は、複合粒子を含む。複合粒子は、活物質粒子と、被膜とを含む。被膜は、活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。被膜は、バインダを含む。
下記式(2)の関係が満たされる。
0.90≦α/β≦1.10 (2)
上記式(2)中、
「α」は、上部におけるバインダに由来する特定元素の質量濃度を示す。
「β」は、下部における特定元素の質量濃度を示す。
上部および下部は、活物質層が厚さ方向に2等分されることにより、区分される。下部は、上部と基材との間に位置する。
本開示においては、上記「8.」の構成を含む電極が製造され得る。
例えば、液体塗料の塗布により、活物質層が形成された場合、液垂れが生じ得る。すなわち塗膜(乾燥前の活物質層)において、液体塗料の端部が外側に垂れる。その結果、活物質層の側端面が傾斜することになる。活物質層の側端面と、基材とのなす角(傾斜角)は、45度未満である。
本開示においては、粉体塗料が使用される。本開示おいては、活物質層の側端面を傾斜させる因子が少ない。したがって45~90度の傾斜角が実現され得る。傾斜角が90度に近い程、電池内において正負極間のデッドスペースが低減され得る。デッドスペースの低減により、電池のエネルギー密度が向上することが期待される。
本開示においては、バインダが均一に分布し得る。バインダの分布は、マイグレーション指数により評価され得る。上記式(2)の「α/β」は、マイグレーション指数を示す。マイグレーション指数が1に近い程、バインダが均一に分布すると考えられる。例えば、液体塗料の乾燥時、バインダマイグレーションが発生すると、活物質層の上部にバインダが偏在することになる。このときマイグレーション指数は、例えば2~3の値をとり得る。本開示においては、予め活物質粒子とバインダとが結合した複合粒子が使用され得る。さらに、バインダを移動させる因子(例えば分散媒の蒸発等)が少ない。したがって、0.9~1.1のマイグレーション指数が実現され得る。
9.活物質層は、例えば20mg/cm2以上の目付量を有していてもよい。
本開示においては、目付量の上限値が大きい。したがって、例えば20mg/cm2以上の目付量が実現され得る。
10.活物質層は、例えば100~1000μmの厚さを有していてもよい。
本開示においては、厚さの上限値が大きい。したがって、例えば100~1000μmの厚さが実現され得る。
11.活物質層は、矩形状の平面形状を有していてもよい。平面視において、活物質層の一辺の長さは、例えば500mm以上であってもよい。
本開示においては、大面積の枚葉状電極が製造され得る。
12.活物質層において、金属異物の密度は、1個/m2以下であってもよい。
本開示においては、電極製造時のフィルター作用により、金属異物が低減され得る。
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
図1は、本実施形態における電極の製造方法の概略フローチャートである。 図2は、本実施形態における電極の製造方法を示す概念図である。 図3は、参考形態における電極の製造方法を示す概念図である。 図4は、本実施形態における複合粒子の概念図である。 図5は、本実施形態における電極を示す概略平面図である。 図6は、本実施形態における電極を示す概略部分断面図である。 図7は、本実施例における電極製造装置を示す概略断面図である。 図8は、塗装時間と目付量との関係を示すグラフである。 図9は、第2実験例の結果を示すSEM画像である。 図10は、マイグレーション指数の測定方法を示す概念である。 図11は、パッシェン曲線の一例である。 図12は、粉体塗料の飛行方向と鉛直下向きとのなす角を示す概念図である。
<用語の定義等>
「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
各種方法に含まれる複数のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その実行順序が記載順序に限定されない。例えば、複数のステップが同時進行してもよい。例えば複数のステップが相前後してもよい。
例えば「m~n%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
幾何学的な用語(例えば「平行」、「垂直」、「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本開示技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
「平面視」は、対象物の厚さ方向と平行な視線で、対象物を視ることを示す。
図12は、粉体塗料の飛行方向と鉛直下向きとのなす角を示す概念図である。「なす角(Θ)」は、鉛直下向き(vd)から飛行方向(fd)に向かう半時計回りを正方向として定義される。なす角(Θ)が90度または270度である時、飛行方向(fd)は水平方向である。なす角(Θ)が180度である時、飛行方向(fd)は鉛直上向きである。なお、例えば「90~270度」は「90~270°」と表記されてもよい。
「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%に達する粒子径と定義される。「D99」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が99%に達する粒子径と定義される。D50およびD99は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
金属異物(粒子)は「短径」と「長径」とを有する。長径は、粒子画像の輪郭線上において最も離れた2点間の距離を示す。短径は、長径をなす線分の中点において、該線分と直交する径を示す。短径が長径と等しいこともある。
「金属異物の密度」は、次の手順で測定され得る。
(1)電極が準備される。電極から活物質層が回収される。活物質層が分散媒に分散されることにより、粒子分散液が準備される。分散媒は、例えば、バインダの種類に応じて選択される。例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が使用されてもよい。
(2)粒子分散液に、棒磁石が浸漬されることにより、粒子分散液中の磁性物が捕集される。粉体塗料に混入する金属異物は、通常、磁性物である。
(3)棒磁石が粒子分散液から引き上げられる。棒磁石に付着した磁性物が回収される。例えば、粘着テープ等により、磁性物が回収されてもよい。
(4)例えば、XRF(X-Ray Fluorescence)等により、磁性物の組成が同定される。磁性物の組成により、磁性物が金属異物か否かが特定される。金属異物が計数される。
(5)金属異物の個数が、活物質層の面積で除されることにより、密度(個/m2)が求まる。
「融点」は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)曲線における融解ピーク(吸熱ピーク)のピークトップ温度を示す。DSC曲線は、「JIS K 7121」に準拠して測定され得る。「融点付近」は、例えば融点±20℃の範囲を示し得る。
「電極」は正極および負極の総称である。電極は正極であってもよいし、負極であってもよい。電極は、例えばリチウムイオン電池用であってもよい。リチウムイオン電池は、例えば液系電池であってもよいし、全固体電池であってもよい。ただし電極は、任意の電気化学デバイスに適用され得る。本実施形態においては、一例としてリチウムイオン電池への適用例が説明される。
「正電圧」は、正極性(+)を有する電圧を示す。「正電荷」は、正極性を有する電荷を示す。「負電圧」は、負極性(-)を有する電圧を示す。「負電荷」は、負極性を有する電荷を示す。正極性と負極性とは、互いに反対極性である。
「側端面の傾斜角」は、側端面と、基材とがなす角のうち、鋭角を示す(図6の「θ」参照)。傾斜角(θ)は、電極10の断面画像において測定される。断面画像は、側端面12bよりも外側に、基材11が延びている部分で撮像される。断面画像は、例えば、OM(Optical Microscope)により撮像されてもよいし、SEM(Scanning Electron Microscope)により撮像されてもよい。例えば、活物質層12の厚さ等に応じて、適切な観察デバイスが選択される。側端面12bは湾曲している場合もある。断面画像において、側端面12bの先端と、側端面12bの後端とを結ぶ線分が描かれる。先端は、側端面12bと基材11との接点である。後端は、側端面12bと、活物質層12の主面12aとの境界である。当該線分と、基材11の主面とのなす角(θ)が測定される。なお「主面」は、対象物(典型的には六面体)の外面のうち、最大面積を有する面を示す。
「マイグレーション指数」は、次の手順で測定される。電極から試料が切り出される。切断面は、活物質層の厚さ方向と平行である。活物質層の切断面に断面加工が施されることにより、断面試料が準備される。例えば、イオンミリング装置により、断面加工が施されてもよい。断面試料がEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により分析される。図10は、マイグレーション指数の測定方法を示す概念である。断面試料において、活物質層12が厚さ方向に2等分されることにより、活物質層12が上部1と下部2とに区分される。下部2は、上部1と基材11との間に位置する。バインダの種類に応じて、特定元素が選択される。特定元素は、バインダのマーカーとなり得る元素である。例えば、バインダがポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む場合、フッ素が特定元素とされてもよい。バインダが適当な元素を有しない場合、断面試料に対して、公知の染色処理が施されることにより、バインダに特定元素が付与されてもよい。EPMAにより、上部1における特定元素の質量濃度(α)と、下部2における特定元素の質量濃度(β)とがそれぞれ測定される。αがβで除されることにより、マイグレーション指数(α/β)が求まる。
「パッシェン曲線(Paschen Curve)」は、ガス圧(p)と電極間距離(d)との積(p×d)と、火花電圧との関係を表す。積(p×d)は「pd」とも表記される。図11は、パッシェン曲線の一例である。図11のグラフは、両対数グラフである。パッシェン曲線は、極小値を有し得る。図11には、一例として空気のパッシェン曲線が示されている。パッシェン曲線は、ガスの種類によって変化し得る。任意のガス種について、公知のパッシェン曲線が利用可能である。
「エアロゾル」は、固体および液体の少なくとも一方が、ガス中に分散した分散系を示す。エアロゾルは、例えば、煙霧、クラウド粉体等とも称され得る。エアロゾルの外観は、例えばクラウド状、噴煙状等と形容され得る。
<電極の製造方法>
図1は、本実施形態における電極の製造方法の概略フローチャートである。以下「本実施形態における電極の製造方法」が「本製造方法」と略記され得る。本製造方法は、「(a)電界の形成」、「(b)帯電」および「(c)塗装」を含む。本製造方法は、例えば「(d)定着」等をさらに含んでいてもよい。
《(a)電界の形成》
図2は、本実施形態における電極の製造方法を示す概念図である。本製造方法は、基材11に第1電圧(V1)を印加し、かつスクリーンに第2電圧(V2)を印加することにより、電界を形成することを含む。
基材11は、導電性を有する。基材11は、例えばシート状であってもよい。基材11は、例えば集電体であってもよい。基材11は、例えば金属箔を含んでいてもよい。基材11は、例えば「集電箔」と称されてもよい。基材11は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)および鉄(Fe)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。基材11は、例えばAl箔、Al合金箔、Cu箔等を含んでいてもよい。基材11は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
スクリーン122は、多孔質である。スクリーン122は、貫通孔を有し得る。スクリーン122は、導電性を有する。例えば、静電スクリーン印刷におけるスクリーンが、使用されてもよい。スクリーン122は、例えば、金属メッシュ等であってもよい。スクリーン122は、例えばステンレスメッシュ等であってもよい。例えば、粉体塗料がスクリーン122を通過し、かつ粉体塗料とスクリーン122との接触頻度が適度となるように、スクリーン122の目開きが調整されてもよい。スクリーン122の目開きは、例えば、30~300μmであってもよいし、50~200μmであってもよい。
基材11と、スクリーン122とが、直流電源133に接続される。第1高圧電源131が基材11に接続される。第1高圧電源131が基材11に第1電圧(V1)を印加する。第2高圧電源132がスクリーン122に接続される。第2高圧電源132がスクリーン122に第2電圧(V2)を印加する。
第1電圧(V1)は、第2電圧(V2)と反対極性を有する。これにより、目付量の上限値が大きくなることが期待される。例えば、第1電圧(V1)が正電圧であり、かつ第2電圧(V2)が負電圧であってもよい。例えば、第1電圧(V1)が負電圧であり、かつ第2電圧(V2)が正電圧であってもよい。
電界強度(E)は、第1電圧と第2電圧との差(V1-V2)が、基材11とスクリーン122との距離(d)で除されることにより求まる。電界強度(E)は、例えば、火花電圧未満であってもよい。火花電圧は、ガス圧(p)と距離(d)との積と、パッシェン曲線とから求まる。すなわち上記式(1)の関係が満たされていてもよい。電界中のガスは、例えば、空気であってもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスであってもよい。ガス圧(p)は、例えば、大気圧であってもよい。ガス圧(p)は、例えば0.01~1MPaであってもよい。
電界強度(E)は、例えば、500V/mm以下であってもよい。電界強度は、例えば100~500V/mmであってもよい。第1電圧(V1)は、例えば+500~+1500Vであってもよい。第2電圧(V2)は、例えば-3500~-2500Vであってもよい。距離(d)は、例えば、1~20mmであってもよいし、5~10mmであってもよい。
粉体塗料の飛行方向は、基材11と、スクリーン122との位置関係によって調整される。スクリーン122から基材11に向かう方向が、粉体塗料の飛行方向となる。飛行方向と、鉛直下向きとのなす角は、90~270度である。例えば、飛行方向が、鉛直方向(図2のZ軸方向)の成分と、水平方向(図2のX軸方向)の成分とに分解された時、飛行方向は、鉛直上向きの成分を含んでいてもよい。飛行方向が鉛直上向きの成分を含むことにより、フィルター作用の増強が期待される。飛行方向は、例えば、水平方向であってもよい。飛行方向は、例えば鉛直上向きであってもよい。飛行方向と、鉛直下向きとのなす角は、例えば、120~240度であってもよいし、150~210度であってもよい。
《(b)帯電》
本製造方法は、スクリーン122を通して、粉体塗料を電界に導入することを含む。粉体塗料は後述される。例えば、ガスフローにより、粉体塗料(粒子5)がスクリーンまで輸送されてもよい。ガスは、例えば、空気であってもよいし、不活性ガスであってもよい。例えば、粉体塗料とガスとが混合されることにより、エアロゾルが形成されてもよい。エアロゾルが電界に導入されてもよい。
粉体塗料(粒子5)がスクリーン122を通過する際、粉体塗料がスクリーン122と接触する。これにより、粉体塗料に電荷が注入される。電荷の極性は、第2電圧(V2)の極性と同一である。例えば、第2電圧(V2)が負電圧である時、粉体塗料に負電荷が注入される。
スクリーン122を通過した粒子5は、電界に導入される。電界に導入された粒子5には、静電気力が作用する。粒子5は、静電気力により飛行する。なお粒子5の飛行は、静電気力に加えて、例えば、風圧力等によりアシストされてもよい。例えば、送風装置によるガスフロー等が併用されてもよい。
《(c)塗装》
本製造方法は、粉体塗料を基材11に付着させることにより、電極10を製造することを含む。粒子5が電界中を飛行することにより、粒子5が基材11に到達する。粒子5は、基材11に付着する。粒子5が基材に堆積することにより、活物質層12が形成される。
基材11に付着した粒子5には、静電気力(F)が働く。静電気力(F)は、下記式(3)により表される。
F=k×q12/r2 (3)
「F」は静電気力を示す。
「k」は比例定数を示す。
「q1」は、粉体塗料に付与された電気量を示す。
「q2」は、基材11に付与された電気量を示す。
「r」は、基材11と粉体塗料との距離を示す。
基材11に第1電圧が付与されず、基材11がグランド(0V)である時、上記式(3)において、「q1=q2」の関係が満たされる。「q1=q2」の関係が満たされる時、静電気力は鏡像力に等しい。
基材11に付着した粒子5には、重力(mg)も作用する。「m」は粒子5の質量を示し、「g」は重力加速度を示す。重力(mg)は、粒子5を基材11から引き離す方向に作用する。
本製造方法においては、基材11に第1電圧(V1)が印加される。これにより、基材11の電気量が増大する。基材11に第1電圧(V1)が印加されている時、基材11の電気量は、「α×q1」(α>1)により表される。よって、粒子5に「F=k×αq12/r2」の静電気力が作用することになる。これにより、粉体塗料の付着力が向上することが期待される。付着力の向上により、目付量の上限値が大きくなることが期待される。また、粉体塗料の基材11への付着頻度が上昇することも期待される。付着頻度の上昇により、付着速度の上昇が期待される。
図3は、参考形態における電極の製造方法を示す概念図である。図3においては、基材11に高圧電源が接続されていない。すなわち基材11に第1電圧(V1)が印加されていない。基材11は、グランド(GND=0V)である。スクリーン122に第2電圧(V2)が印加されている。参考形態においては、粒子5に作用する静電気力が鏡像力に等しい。すなわち、粒子5に作用する静電気力は、「F=k×q12/r2」である。参考形態の静電気力は、本製造方法の静電気力の「1/α」である。すなわち参考形態の静電気力は、本製造方法の静電気力より小さい。そのため、参考形態においては、目付量の上限値が、本製造方法に比して小さい可能性がある。参考形態においては、付着速度が、本製造方法に比して低い可能性がある。
《(d)定着》
本製造方法は、圧力および熱の少なくとも一方を活物質層12に付与することにより、活物質層12を基材11に定着させることを含んでいてもよい。活物質層12の定着により、活物質層12の剥離強さが向上することが期待される。
圧力および熱は、別々に付与されてもよい。圧力および熱は、実質的に同時に付与されてもよい。例えば、ヒートロール、ヒートプレート等により、活物質層12が圧縮されてもよい。活物質層12の加熱温度は、例えば、バインダの融点付近の温度であってもよい。加熱温度は、例えば80~200℃であってもよい。圧力は、例えば、活物質層12の目標厚さ、目標密度等に応じて調整され得る。例えば、50~200MPaの圧力が活物質層12に加えられてもよい。
以上より、電極10が製造され得る。電極10は、例えば連続式で製造されてもよい。電極10は、例えばバッチ式で製造されてもよい。
《粉体塗料》
液体塗料は、活物質層12と異なる組成を有する。液体塗料は、分散媒(液体)を含むためある。他方、粉体塗料は、活物質層12と同一の組成を有し得る。粉体塗料は、活物質粒子を含む。粉体塗料は、活物質粒子に加えて、例えば、バインダ、導電材および固体電解質等をさらに含んでいてもよい。
活物質粒子は、例えば、1~30μmのD50を有していてもよいし、1~20μmのD50を有していてもよいし、1~10μmのD50を有していてもよい。活物質粒子は、例えば、30~50μmのD99を有していてもよい。
活物質粒子は電極反応を生起する。活物質粒子は任意の成分を含み得る。活物質粒子は、例えば、正極活物質を含んでいてもよい。活物質粒子は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2等を含んでいてもよい。
活物質粒子は、例えば、負極活物質を含んでいてもよい。活物質粒子は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、珪素、酸化珪素、珪素基合金、錫、酸化錫、錫基合金、およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
バインダは粉体状であり得る。バインダは、活物質層12において、固体材料同士を結合する。バインダの配合量は、100質量部の活物質粒子に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、PVdF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
バインダは、例えば、フッ素樹脂を含んでいてもよい。フッ素樹脂は、例えば、PVdF、PVdF-HFP、およびPTFEからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダがフッ素樹脂を含むことにより、粉体塗料の帯電が促進され得る。フッ素樹脂が帯電列において最も負側に位置するためである。
導電材は粉体状であり得る。導電材は、活物質層12中に電子伝導パスを形成し得る。導電材の配合量は、100質量部の活物質粒子に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、導電性炭素粒子、導電性炭素繊維等を含んでいてもよい。導電材は、例えば、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。カーボンブラックは、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびサーマルブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
固体電解質は粉体状であり得る。固体電解質は、活物質層12中にイオン伝導パスを形成し得る。固体電解質の配合量は、100体積部の活物質粒子に対して、例えば10~100体積部であってもよい。固体電解質は任意の成分を含み得る。固体電解質は、例えば、Li2S-P25、LiI-Li2S-P25、LiBr-Li2S-P25、およびLiI-LiBr-Li2S-P25からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
図4は、本実施形態における複合粒子の概念図である。粉体塗料は、複合粒子6を含んでいてもよい。複合粒子6は、活物質粒子7とその他の材料とが複合化されることにより形成され得る。複合粒子6は、活物質粒子7と被膜8とを含む。活物質粒子7は、複合粒子6のコアである。被膜8は、複合粒子6のシェルである。被膜8は、活物質粒子7の表面の少なくとも一部を被覆している。被膜8は、バインダを含む。被膜8は、導電材、固体電解質等をさらに含んでいてもよい。
複合粒子6は、任意の方法により形成され得る。例えば、強いせん断力が加わる条件下で、活物質粒子7と、その他の材料とが混合されることにより、複合粒子6が形成されてもよい。本製造方法においては、任意の粒子複合化装置が使用され得る。複合粒子6の形成後、例えば、バインダの融点付近の温度で、複合粒子6に熱処理が施されてもよい。熱処理によって、バインダが軟化、溶融、再固化する。その結果、被膜8が活物質粒子7の表面に、強固に定着することが期待される。定着強度が低い場合、例えば、複合粒子6の飛行時に、被膜8が活物質粒子7の表面から剥がれる可能性がある。
<電極>
図5は、本実施形態における電極を示す概略平面図である。電極10は、基材11と活物質層12とを含む。活物質層12は、基材11の主面の一部に配置されている。活物質層12は、基材11の片面のみに形成されていてもよいし、表裏両面に形成されていてもよい。
活物質層12は、任意の平面形状を有し得る。活物質層12は、例えば、矩形状の平面形状を有していてもよい。活物質層12は、大面積を有し得る。平面視において、活物質層12の一辺の長さは、例えば、500mm以上であってもよいし、1000mm以上であってもよいし、1500mm以上であってもよい。平面視において、活物質層12の一辺の長さは、例えば、3000mm以下であってもよい。
活物質層12は、大きい目付量を有し得る。活物質層12は、例えば、20mg/cm2以上の目付量を有していてもよいし、40mg/cm2以上の目付量を有していてもよいし、60mg/cm2以上の目付量を有していてもよい。活物質層12は、例えば、120mg/cm2以下の目付量を有していてもよいし、100mg/cm2以下の目付量を有していてもよい。
図6は、本実施形態における電極を示す概略部分断面図である。基材11は、第1領域11aと、第2領域11bとを含む。図6には、第1領域11aと第2領域11bとの境界付近が示されている。第1領域11aは、活物質層12に被覆されている。第2領域11bは、第1領域11aと隣接している。第2領域11bは、活物質層12から露出している。第2領域11bは、活物質層12よりも外側に延びている。第2領域11bは、例えば「未塗布部」、「非塗工部」等と称され得る。第2領域11bには、集電部材が接合され得る。集電部材は、例えば、超音波接合、スポット溶接、レーザ溶接等により接合され得る。集電部材は、例えば、集電板、リードタブ、電極端子等を含んでいてもよい。
活物質層12は、主面12aと側端面12bとを含む。側端面12bは、主面12aと接続している。側端面12bは、第1領域11aと第2領域11bとの境界と接触している。側端面12bと、基材11の主面とのなす角(θ)は、45~90度である。なす角(θ)が90度に近い程、エネルギー密度の向上が期待される。なす角(θ)は、例えば、60~90度であってもよいし、70~90度であってもよいし、80~90度であってもよい。
活物質層12は、例えば、100~1000μmの厚さを有していてもよいし、200~500μmの厚さを有していてもよい。
活物質層12は、複合粒子6を含む。複合粒子6の集合体が活物質層12を形成していることにより、バインダの分布が均一になり得る。活物質層12は、0.9~1.10のマイグレーション指数を有する。すなわち上記式(2)の関係が満たされる。活物質層12は、例えば、0.92以上のマイグレーション指数を有していてもよいし、0.94以上のマイグレーション指数を有していてもよい。活物質層12は、例えば、1.08以下のマイグレーション指数を有していてもよいし、1.06以下のマイグレーション指数を有していてもよい。
活物質層12において、金属異物は低密度であり得る。金属異物の密度は、例えば、1個/m2以下であってもよいし、0.5個/m2以下であってもよい。金属異物の密度は、ゼロであってもよい。金属異物は、例えば、磁性物であってもよい。金属異物は、例えばステンレス鋼(SUS)に由来する成分、鉄(Fe)、酸化鉄等を含んでいてもよい。金属異物は、粗大粒子であってもよい。金属異物の短径は、例えば、活物質粒子のD99より大きくてもよい。金属異物の短径は、例えば、活物質粒子のD99の2~10倍であってもよいし、2~5倍であってもよいし、2~3倍であってもよい。
<第1実験例>
第1実験例においては、第1電圧の極性が検討された。
《第1製造例》
下記材料が準備された。
活物質粒子:Li(NiCoMn)O2
導電材:アセチレンブラック
バインダ:PVdF
日本コークス工業社製の混合装置「マルチパーパスミキサ」が準備された。同装置は、球形タンク(混合槽)を含む。球形タンクの対流促進効果により、強いせん断力が発生し、固体材料が複合化され得る。
球形タンクに、活物質粒子、導電材およびバインダが投入された。材料の配合比は「活物質粒子/導電材/バインダ=90/5/5(質量比)」であった。攪拌羽根の回転数が10000rpmに設定された。10分間にわたって材料が混合された。これにより複合粒子が形成された。複合粒子は、活物質粒子と被膜とを含んでいた。被膜は、活物質粒子の表面を被覆していた。被膜は、バインダおよび導電材を含んでいた。
金属製のトレーが準備された。複合粒子の集合体(粉体)がトレーに薄く広げられた。トレーがオーブン内で保管されることにより、複合粒子に熱処理が施された。オーブンの設定温度は160℃であった。保管時間は30分間であった。熱処理により、被膜が活物質粒子の表面に定着したと考えられる。以上より、複合粒子を含む粉体塗料が準備された。
図7は、本実施例における電極製造装置を示す概略断面図である。電極製造装置100は、導入部110と、現像部120と、電界形成部130とを含む。
導入部110は、攪拌羽根111と、多孔板112と、ファン113とを含む。多孔板112は、アルミナ多孔板(目開き 10μm、平面サイズ 75mm×75mm)である。
現像部120は、現像電極121と、スクリーン122とを含む。スクリーン122は、SUS製メッシュ(目開き 100μm)である。現像電極121と、スクリーン122とのギャップは8mmである。
電界形成部130は、第1高圧電源131と、第2高圧電源132と、直流電源133とを含む。第1高圧電源131は、現像電極121に正電圧を印加する。第2高圧電源132は、スクリーン122に負電圧を印加する。
現像電極121の表面に基材11が配置された。基材11は、Al箔(厚さ 12μm)であった。基材11は、現像電極121と等電位を有する。粉体塗料が、多孔板112上に供給された。ファン113が粉体塗料にガスフローを供給することにより、粉体塗料が舞い上げられた。ガス種は空気であった。ガスの流量は25L/minであった。攪拌羽根111が粉体塗料とガスとを混合することにより、エアロゾル9が形成された。攪拌羽根111の回転数は、120rpmであった。エアロゾル9がスクリーン122を通過した。帯電したエアロゾル9が電界に導入された。エアロゾル9が基材11の表面に接触することにより、粉体塗料が基材11に付着した。これにより活物質層12が形成された。活物質層12の平面サイズは、60mm×200mmであった。
活物質層12の形成後、2枚のヒートプレート(平板)に電極10が挟み込まれた。ヒートプレートの温度は160℃であった。ヒートプレートにより、15tfの荷重が活物質層12に付与された。これにより活物質層12が基材11に定着した。以上より電極10が製造された。
《第2製造例》
下記表1に示されるように、第1電圧(V1)と、第2電圧(V2)とが変更されることを除いては、第1製造例と同様に、電極10の製造が試行された。
《第3製造例》
下記表1に示されるように、第1電圧(V1)と、第2電圧(V2)とが変更されることを除いては、第1製造例と同様に、電極10の製造が試行された。
Figure 2023135980000002
図8は、塗装時間と目付量との関係を示すグラフである。第1~第3製造例は、いずれも、電界強度が500V/mmである。しかし第2製造例において、粉体塗料が基材に付着しなかった。第2製造例においては、第1電圧(V1)が第2電圧(V2)と同極性を有する。スクリーンにおいて粉体塗料に負電荷が注入される。基材も負電荷を有する。静電反発により、粉体塗料が基材から遠ざかると考えられる。
第1製造例および第3製造例においては、欠点を有しない活物質層が形成されていた。目付量は、塗装時間の増加と共に増加し、やがて飽和する。すなわち上限値に達する。第3製造例は、第1製造例に比して、目付量の上限値が大きかった。図8において、曲線の傾きが大きい程、付着速度が高いと考えられる。第3製造例は、第1製造例に比して、高い付着速度を示した。50秒経過時の目付量も、付着速度の高低を表している(上記表1参照)。
第1製造例においては、第1電圧(V1)が0V(GND)である。第3製造例においては、第1電圧(V1)が、第2電圧(V2)と反対極性を有する。負電荷を有する粉体塗料が、正電荷を有する基材に引き寄せられることにより、粉体塗料の付着が促進されていると考えられる。
<第2実験例>
第2実験例においては、フィルター作用が検討された。
金属異物として、SUS粒子が準備された。SUS粒子は、45~90μmの短径を有していた。第1実験例で準備された粉体塗料(複合粒子)に、質量分率で10%のSUS粒子が混合された。SUS粒子は、活物質粒子のD99に比して大きい短径を有していた。
金属異物を含む粉体塗料が使用されることを除いては、第1実験例における第3製造例と同条件で、電極の製造が試行された。初期の粉体塗料(飛行前)、エアロゾル(飛行中)、および活物質層(付着後)の各段階において、所定量の粉体試料がそれぞれ回収された。粉体試料がSEMにより観察された。
図9は、第2実験例の結果を示すSEM画像である。初期の粉体塗料においては、金属異物(SUS粒子)の存在が確認できる。他方、エアロゾルおよび活物質層においては、金属異物が確認できない。本製造方法のフィルター作用により、金属異物が除去されていると考えられる。
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
1 上部、2 下部、5 粒子、6 複合粒子、7 活物質粒子、8 被膜、9 エアロゾル、10 電極、11 基材、11a 第1領域、11b 第2領域、12 活物質層、12a 主面、12b 側端面、100 電極製造装置、110 導入部、111 攪拌羽根、112 多孔板、113 ファン、120 現像部、121 現像電極、122 スクリーン、130 電界形成部、131 第1高圧電源、132 第2高圧電源、133 直流電源。

Claims (12)

  1. (a)基材に第1電圧を印加し、かつスクリーンに第2電圧を印加することにより、前記基材と前記スクリーンとの間に電界を形成すること、
    (b)前記スクリーンを通して、粉体塗料を前記電界に導入すること、および
    (c)前記粉体塗料を前記基材に付着させることにより、電極を製造すること、
    を含み、
    前記第1電圧は、前記第2電圧と反対極性を有し、
    前記粉体塗料が前記スクリーンを通過する際に、前記粉体塗料が前記スクリーンと接触することにより、前記粉体塗料に電荷が付与され、
    前記電界中、静電気力によって前記粉体塗料が飛行することにより、前記粉体塗料が前記基材に到達し、
    前記粉体塗料の飛行方向と、鉛直下向きとのなす角は、90~270度である、
    電極の製造方法。
  2. 前記粉体塗料の前記飛行方向は、鉛直上向きである、
    請求項1に記載の電極の製造方法。
  3. 前記第1電圧は、正極性である、
    請求項1または請求項2に記載の電極の製造方法。
  4. 前記粉体塗料は、複合粒子を含み、
    前記複合粒子は、活物質粒子と、被膜とを含み、
    前記被膜は、前記活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
    前記被膜は、バインダを含む、
    請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
  5. 前記バインダは、フッ素樹脂を含む、
    請求項4に記載の電極の製造方法。
  6. 下記式(1):
    Ed<f(pd) (1)
    の関係が満たされ、
    上記式(1)中、
    Eは、前記電界の電界強度を示し、
    dは、前記基材と前記スクリーンとの距離を示し、
    pは、前記電界中のガス圧を示し、
    f(pd)は、前記ガス圧と前記距離との積と、パッシェン曲線とから求まる火花電圧を示す、
    請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
  7. バッチ式で前記電極が製造される、
    請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
  8. 基材と、
    活物質層と、
    を含み、
    前記基材は、第1領域と第2領域とを含み、
    前記第1領域は、前記活物質層に被覆されており、
    前記第2領域は、前記活物質層から露出しており、
    前記第2領域は、前記第1領域と隣接しており、
    前記活物質層は、側端面を有し、
    前記側端面は、前記第1領域と前記第2領域との境界と接触しており、
    前記側端面と、前記基材とがなす角は、45~90度であり、
    前記活物質層は、複合粒子を含み、
    前記複合粒子は、活物質粒子と、被膜とを含み、
    前記被膜は、前記活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
    前記被膜は、バインダを含み、
    下記式(2):
    0.90≦α/β≦1.10 (2)
    の関係が満たされ、
    上記式(2)中、
    αは、上部における前記バインダに由来する特定元素の質量濃度を示し、
    βは、下部における前記特定元素の質量濃度を示し、
    前記上部および前記下部は、前記活物質層が厚さ方向に2等分されることにより、区分され、
    前記下部は、前記上部と前記基材との間に位置する、
    電極。
  9. 前記活物質層は、20mg/cm2以上の目付量を有する、
    請求項8に記載の電極。
  10. 前記活物質層は、100~1000μmの厚さを有する、
    請求項8または請求項9に記載の電極。
  11. 前記活物質層は、矩形状の平面形状を有し、
    平面視において、前記活物質層の一辺の長さは、500mm以上である、
    請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の電極。
  12. 前記活物質層において、金属異物の密度は、1個/m2以下である、
    請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の電極。
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