JP2023132504A - 電動機の回転子 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転軸2と、軸方向に配置されると共に、周方向の間隔を存して回転軸2の外周面に取り付けられた複数の永久磁石3と、第1熱硬化性樹脂が第1繊維基材に含浸された第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成される、軸方向にのびる補強管4とを備えた電動機の回転子1において、高速回転時にも全ての永久磁石3が回転軸1から外方へ飛散するのを抑制しつつ、安価な汎用品とする。【解決手段】回転軸1に外嵌して全ての永久磁石3を狭圧固定する一対の磁石押え5,5が設けられ、第2熱硬化性樹脂が第2繊維基材に含浸された、線膨張率がゼロ以下である第2プリプレグシートが、一対の磁石押え5,5と共に、全ての永久磁石3の外周面に巻き付けられ、第2プリプレグシートの外周面に第1プリプレグシートが巻き付けられ、加熱硬化によって、補強管4は、全ての永久磁石3の外周面に接着している。【選択図】図1
Description
本発明は、回転軸と、軸方向に配置されると共に、周方向の間隔を存して回転軸の外周に設けられた複数の永久磁石又は二次導体とを備えた電動機の回転子に関する。
従来、この種の電動機の回転子として、熱硬化性樹脂が繊維基材に含浸されたプリプレグシートの加熱硬化によって形成された軸方向にのびる補強管が、全ての永久磁石の外周面に密着するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような電動機の回転子については、高速回転時の遠心力によっても全ての永久磁石が回転軸から外方へ飛散するのを抑制することが要求される。この要求を満たすためには、補強管の密着強度を高める必要がある。そこで、特許文献1記載の電動機の回転子では、永久磁石が取り付けられた回転軸を内挿可能にした筒状の補強管を予め作製しておくと共に、回転軸に中空なものを採用している。そして、いわゆる冷し嵌めという手法を採用して電動機の回転子を作製する。すなわち、回転軸の中空部に液体窒素等の冷媒を流通させて回転軸を径方向内側に収縮させる。この後、補強管の内部に回転軸を挿入して冷媒の流通を停止し、回転軸の温度を常温に戻すことによって、回転軸を径方向外側に膨張させて元の大きさに復帰させる。そして、補強管を、全ての永久磁石の外周面に密着させる。
しかしながら、特許文献1記載の電動機の回転子には、作製のために採用している冷し嵌めが特殊な手法であり、専用の治具等が必要であるばかりでなく、筒状の補強管をプリプレグの単体で作製するための治具や中空な回転軸も必要である。したがって、特許文献1記載の電動機の回転子を安価な汎用品とするためには、再検討の余地が少なからずある。
本発明は、以上の点に鑑み、高速回転時にも全ての永久磁石又は全ての二次導体が回転軸から外方へ飛散するのを抑制しつつ、安価な汎用品となり得る電動機の回転子を提供することをその課題としている。
上記課題を解決するために、本発明は、第1に、回転軸と、軸方向に配置されると共に、周方向の間隔を存して回転軸の外周面に取り付けられた複数の永久磁石とを備えた電動機の回転子であって、第1熱硬化性樹脂が第1繊維基材に含浸された第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成される、軸方向にのびる補強管が、全ての永久磁石の外周面に密着するものにおいて、各永久磁石の軸方向の両端に位置し、回転軸に外嵌して全ての永久磁石を狭圧固定する一対の磁石押えが設けられ、補強管の内周部は、第2熱硬化性樹脂が第2繊維基材に含浸された、線膨張率がゼロ以下である第2プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、補強管の外周部は、第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、第2プリプレグシートが、一対の磁石押えと共に、全ての永久磁石の外周面に巻き付けられ、第2プリプレグシートの外周面に第1プリプレグシートが巻き付けられ、加熱硬化によって、補強管は、全ての永久磁石の外周面に接着していることを特徴とする。
本発明の第1の特徴によれば、補強管を加熱硬化によって全ての永久磁石の外周面に接着させる際に、回転軸及び一対の磁石押えの膨張を、補強管の内周部を形成する第2プリプレグシートによって抑制することができる。このため、加熱硬化後の冷却時に回転軸の膨張が収まる際に、補強管が、全ての永久磁石及び一対の磁石押えの外周面から剥離するのを十分に抑制することができる。したがって、全ての永久磁石及び一対の磁石押えと補強管との接着強度は、上記の通りの冷し嵌めによる密着強度と遜色のない十分に高いものになり、高速回転時にも全ての永久磁石が回転軸から外方へ飛散するのを抑制することができる。そして、後に補強管となる第1プリプレグシート及び第2プリプレグシートを、一対の磁石押えと共に、全ての永久磁石の外周に巻き付けて加熱硬化することによって電動機の回転子は作製されるため、この電動機の回転子は安価な汎用品となり得る。
本発明の第1の特徴が対象とする電動機の回転子は、いわゆるSPM(Surface Permanent Magnet)方式と呼ばれるタイプであり、回転軸の外周面に全ての永久磁石が取り付けられるが、第1の特徴における補強管は、軸方向に配置されると共に、周方向に間隔を存して設けられた複数の永久磁石又は複数の二次導体が、回転軸に外嵌するコアに埋設される、いわゆるIPM(Internal Permanent Magnet)方式の電動機の回転子にも等しく適用することができる。
そこで、本発明は、第2に、回転軸と、軸方向にのび、回転軸に外嵌する筒状のコアと、このコアの軸方向の両端に位置し、回転軸に外嵌してコアを狭圧固定する一対のコア押えと、これら一対のコア押え間で、軸方向に配置されると共に、周方向の間隔を存して設けられた複数の永久磁石又は二次導体とを備えた電動機の回転子であって、永久磁石又は二次導体はコアに埋設され、第1熱硬化性樹脂が第1繊維基材に含浸された第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成される、軸方向にのびる補強管が、コア及び一対のコア押えの外周面に密着するものにおいて、補強管の内周部は、第2熱硬化性樹脂が第2繊維基材に含浸された、線膨張率がゼロ以下である第2プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、補強管の外周部は、第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、第2プリプレグシートが、一対のコア押えと共に、コアの外周面に巻き付けられ、第2プリプレグシートの外周面に第1プリプレグシートが巻き付けられ、加熱硬化によって、補強管は、一対のコア押え及びコアの外周面に接着していることを特徴とする。
本発明の第2の特徴によれば、上記第1の特徴と同様に、補強管を加熱硬化によってコア及び一対のコアの外周面に接着させる際に、コア及び一対のコア押えの膨張を、補強管の内周部を形成する第2プリプレグシートによって抑制することができる。このため、加熱硬化後の冷却時に回転軸の膨張が収まる際に、補強管が、コア及び一対のコア押えの外周面から剥離するのを十分に抑制することができる。コア及び一対のコア押えと補強管との接着強度は、上記の通りの冷し嵌めによる密着強度と遜色のない十分に高いものになる。このため、高速回転時にも全ての永久磁石が回転軸から外方へ飛散するのを抑制することができる。そして、後に補強管となる第1プリプレグシート及び第2プリプレグシートを、コア及び一対のコア押えの外周に巻き付けて加熱硬化することによって電動機の回転子は作製されるため、この電動機の回転子は安価な汎用品となり得る。
図1及び図2に示す実施形態は、上記SPMに分類される電動機の回転子の一例である。電動機はモータであり、回転子1は、回転軸2と、軸方向に配置されると共に、周方向の間隔を存して回転軸2の外周面に取り付けられた複数の永久磁石3とを備えている。回転軸2は、鉄その他の磁性物質を含有する金属材料から形成されている。各永久磁石3は、具体的には、各永久磁石3の構成単位となる複数の磁石片3aが、軸方向に一列に配列され、回転軸2の外周面に磁石片3aが有する磁力によって取り付けられている。各永久磁石3は、モータの要求性能を満たすことができるような磁界を発生するものである限り、永久磁石3の数、回転軸2への取付位置等は特に限定されない。また、磁石片3aを形成する材料についても特に限定されない。
また、回転子1では、外周部4aが、第1熱硬化性樹脂が第1繊維基材に含浸された第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、内周部4bが、第2熱硬化性樹脂が第2繊維基材に含浸された、線膨張率がゼロ以下である第2プリプレグシートの加熱硬化によって形成された、軸方向にのびる補強管4が、全ての永久磁石3の外周面に密着している。上記第1プリプレグシートについては、上記第1繊維基材には、例えば、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、チラノ(SiTiC)繊維繊、ケブラー繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等の織布又は不織布が採用可能である。上記第1熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が採用可能である。上記第2プリプレグシートについては、上記第2繊維基材には、好適には、ガラス繊維が例示され、上記第2熱硬化性樹脂には、上記第1プリプレグシートとの接着強度が十分高くなるような第1熱硬化性樹脂と親和性の良好なものが望ましい。好適には、第1熱硬化性樹脂と同一の熱硬化性樹脂が例示される。
また、上記第1プリプレグシート及び上記第2プリプレグシートから形成される補強管4は、軽量であり、且つ全ての永久磁石3が、高速回転によっても回転軸2から外方へ飛散するのを抑制することができる強度を有するものが望ましい。以上のことを考慮して、上記第1繊維基材、上記第2繊維基材、上記第1熱硬化性樹脂及び上記第2熱硬化性樹脂は選択される。
さらに、回転子1では、各永久磁石3の軸方向の両端に位置し、回転軸2に外嵌して全ての永久磁石3を狭圧固定する一対の磁石押え5,5が設けられている。補強管4は、全ての永久磁石3の外周面及び一対の磁石押え5,5の永久磁石3側に位置する外周面に接着している。全ての永久磁石5及び一対の磁石押え5,5と補強管4とは、上記第2プリプレグシートが、一対の磁石押え5,5と共に、全ての永久磁石3の外周面に巻き付けられ、また、上記第2プリプレグシートの外周面に上記第1プリプレグシートが巻き付けられ、加熱硬化によって補強管4になる時に接着される。上記第1プリプレグシート及び第2プリプレグシートを加熱硬化させる際に、その熱が、回転軸2及び一対の磁石押え5,5に伝達されるが、上記第2プリプレグシートの線膨張係数はゼロ以下であるため、回転軸2及び一対の磁石押え5,5の膨張が上記第2プリプレグシートによって抑制される。したがって、上記第1プリプレグシート及び第2プリプレグシートの加熱硬化後の冷却時に回転軸2及び一対の磁石押え5,5の膨張が収まる際に、補強管4が、全ての永久磁石3の外周面から剥離するのを十分に抑制することができる。このため、全ての永久磁石3及び一対の磁石押え5,5と補強管4との接着強度は、上記の通りの冷し嵌めによる密着強度と遜色のない十分に高いものになり、高速回転時にも全ての永久磁石3が回転軸2から外方へ飛散するのを抑制することができる。そして、後に補強管4となる上記第1プリプレグシート及び上記第2プリプレグシートを、全ての永久磁石3と共に、一対の磁石押え5,5の外周に巻き付けて加熱硬化することによって、モータの回転子1は作製されるため、回転子1は安価な汎用品となり得る。
より具体的には、上記第1プリプレグシート及び第2プリプレグシートの軸方向の幅寸法は、各磁石押え5の永久磁石3よりも軸方向外側までの長さとされ、原反から引き出され、いわゆるBステージとされた状態で一対の磁石押え5,5と共に、全ての永久磁石3の外周に、所定の張力で巻き付けられる。また、補強管4を全ての永久磁石3の外周面に接着させる際には、一対の磁石押え5,5と共に、全ての永久磁石3の外周に上記第1プリプレグシート及び上記第2プリプレグシートが巻き付けられた前駆体を、例えば、減圧可能とされた袋、容器等の内部に収納し、減圧によって上記第1プリプレグシート及び上記第2プリプレグシートが、各磁石押え5及び各永久磁石5の外周面に沿うように変形させる。そして、上記前駆体を、上記第1プリプレグシート及び第2プリプレグシートの上記第1熱硬化性樹脂及び上記第2熱硬化性樹脂の硬化温度まで加熱する。この時の加熱は、袋、容器等の内部に収納したままの連続処理であっても、一旦外部に取り出し、熱処理路等の内部に収納し直して加熱するバッチ処理であっても構わない。
図3及び図4は、上記IPMに分類される電動機の回転子の一実施形態である。なお、図1及び図2に示す実施形態と同じ部品及び部位については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図3及び図4に示す電動機もモータであるが、永久磁石3は、巻線等の二次導体に置換することができ、この場合、電動機は発電機になる。なお、図3及び図4に示すモータの回転子1は、回転軸2に外嵌する筒状のコア6と、回転軸2に外嵌し、コア6を軸方向両端で狭圧固定する、筒状の一対のコア押え7,7とを備えている。
なお、図3及び図4に示すモータは、IPMに分類されるものであるため、複数の永久磁石3は、コア6に周方向の間隔を存して埋設されている。このようなIPMに分類されるモータの場合、回転子1については、回転性能の向上を図るために、固定子とのギャップを縮小することが望ましく、この場合、全ての永久磁石3は、コア6の外周面寄りの部分に埋設される。
本実施形態のモータの回転子1では、補強管4は、コア6の外周面及び一対のコア押え7,7のコア6側に位置する外周面に接着している。コア6及び一対のコア押え7,7と補強管4とは、上記第2プリプレグシートが、一対のコア押え7,7と共に、コア6の外周面に巻き付けられ、また、上記第2プリプレグシートの外周面に上記第1プリプレグシートが巻き付けられ、加熱硬化によって補強管4になる時に接着される。上記第1プリプレグシート及び第2プリプレグシートを加熱硬化させる際に、その熱が、コア6及び一対のコア押え7,7に伝達されるが、上記第2プリプレグシートの線膨張係数はゼロ以下であるため、コア6及び一対のコア押え7,7の膨張が上記第2プリプレグシートによって抑制される。したがって、上記第1プリプレグシート及び第2プリプレグシートの加熱硬化後の冷却時にコア6及び一対のコア押え7,7の膨張が収まる際に、補強管4が、コアの外周面から剥離するのを十分に抑制することができる。このため、コア6及び一対のコア押え7,7と補強管4との接着強度は、上記の通りの冷し嵌めによる密着強度と遜色のない十分に高いものになり、高速回転時にも全ての永久磁石3が回転軸2から外方へ飛散するのを抑制することができる。そして、後に補強管4となる上記第1プリプレグシート及び上記第2プリプレグシートを、コア6と共に一対のコア押え7,7の外周に巻き付けて加熱硬化することによって、モータの回転子1は作製されるため、回転子1は安価な汎用品となり得る。上記発電機の回転子の場合も同様である。
図3及び図4に示すモータの回転子1は、図1及び図2に示すモータの回転子1と同様にして作製することができる。上記発電機の場合にも同様である。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、永久磁石3の形状、大きさ、数及び回転軸2の外周面への取付位置又はコア6への埋設位置、そして、永久磁石3の構成単位である永久磁石片3aの数、形状、大きさ及び材質については特に限定されない。また、補強管4の外周部4aを形成する上記第1プリプレグシートを構成する第1繊維基材及び第1熱硬化性樹脂の種類等についても特に限定されない。このことは、補強管4の内周部4bを形成する上記第2プリプレグシートについても同様である。さらに、一対の磁石押え5,5、コア6及び一対のコア押え7,7の形状及び大きさ等ついても様々な態様が可能である。
1…電動機の回転子、2…回転軸、3…永久磁石、4…補強管、4a…補強管4の外周部、4b…補強管4の内周部、5,5…磁石押え、6…コア、7,7…コア押え。
Claims (2)
- 回転軸と、軸方向に配置されると共に、周方向の間隔を存して回転軸の外周面に取り付けられた複数の永久磁石とを備えた電動機の回転子であって、
第1熱硬化性樹脂が第1繊維基材に含浸された第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成される、軸方向にのびる補強管が、全ての永久磁石の外周面に密着するものにおいて、
各永久磁石の軸方向の両端に位置し、回転軸に外嵌して全ての永久磁石を狭圧固定する一対の磁石押えが設けられ、
補強管の内周部は、第2熱硬化性樹脂が第2繊維基材に含浸された、線膨張率がゼロ以下である第2プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、補強管の外周部は、第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、
第2プリプレグシートが、一対の磁石押えと共に、全ての永久磁石の外周面に巻き付けられ、第2プリプレグシートの外周面に第1プリプレグシートが巻き付けられ、加熱硬化によって、補強管は、全ての永久磁石の外周面に接着していることを特徴とする電動機の回転子。 - 回転軸と、軸方向にのび、回転軸に外嵌する筒状のコアと、このコアの軸方向の両端に位置し、回転軸に外嵌してコアを狭圧固定する一対のコア押えと、これら一対のコア押え間で、軸方向に配置されると共に、周方向の間隔を存して設けられた複数の永久磁石又は二次導体とを備えた電動機の回転子であって、
永久磁石又は二次導体はコアに埋設され、
第1熱硬化性樹脂が第1繊維基材に含浸された第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成される、軸方向にのびる補強管が、コア及び一対のコア押えの外周面に密着するものにおいて、
補強管の内周部は、第2熱硬化性樹脂が第2繊維基材に含浸された、線膨張率がゼロ以下である第2プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、補強管の外周部は、第1プリプレグシートの加熱硬化によって形成され、
第2プリプレグシートが、一対のコア押えと共に、コアの外周面に巻き付けられ、第2プリプレグシートの外周面に第1プリプレグシートが巻き付けられ、加熱硬化によって、補強管は、一対のコア押え及びコアの外周面に接着していることを特徴とする電動機の回転子。
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