JP2023130032A - 熱放射素子及び熱輸送方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定の角度の熱放射を、広い波長帯域にて実現することが可能な熱放射素子と、その熱放射素子を用いた熱輸送方法を提供する。【解決手段】本発明の熱放射素子は、第一金属基板101と、第一金属基板の一方の主面101aに配置された誘電体膜102と、誘電体膜102の上に配置された複数の第二金属部材103と、を備え、複数の第二金属部材103は、第一方向において所定の間隔Sxを空けて並んでおり、第一方向における第二金属部材の幅Lxが4μm以上50μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、熱放射素子及び熱輸送方法に関する。
自然光による熱放射は、一般的には広波長帯域かつ等方的な放射である。放射の波長、角度については、熱放射体の構造に起因した共振モードを熱放射と結合させることによって、狭められることが知られている。従来構造の熱放射体から得られる角度選択的熱放射は、単一波長あるいは一部の波長域での放射に限られる(非特許文献1)。そのため、角度選択的放射熱輸送を行う際に、各角度の放射によって輸送されるエネルギーは、一部の波長域のエネルギーのみとなり、微小なものとなる。熱輸送の観点から、理想的な角度選択的放射熱輸送を実現するためには、所定の角度範囲において幅広い波長帯域で熱放射を発生させる必要がある。
熱放射の波長帯域は、熱放射体の材料の物性に基づいている。そのため、要求される波長帯域に応じて熱放射体の材料を選択すれば、理想的な角度選択的放射熱輸送を実現することはできる。しかしながら、要求される波長帯域に応じた材料が存在しなかったり、入手困難であったりした場合には、このような手段を適用することができない。そのため、熱放射体の材料によらず、熱放射の波長帯域を細かく調整する技術が求められている。
S. Tsuda et al., OPTICS EXPRESS 6899, Vol.26, No. 6, 19 Mar 2018
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、所定の角度の熱放射を、広い波長帯域にて実現することが可能な熱放射素子と、その熱放射素子を用いた熱輸送方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
(1)本発明の一態様に係る熱放射素子は、第一金属基板と、前記第一金属基板の一方の主面に配置された誘電体膜と、前記誘電体膜の上に配置された複数の第二金属部材と、を備え、複数の前記第二金属部材は、第一方向において所定の間隔を空けて並んでおり、前記第一方向における前記第二金属部材の幅は、4μm以上50μm以下であり、より好ましくは、多くのピークが生じる幅である、15μm以上である。
(2)上記(1)に記載の熱放射素子において、前記第一方向における前記第二金属部材の幅は、前記間隔の5倍以上10倍以下であるのが好ましい。
(3)上記(1)または(2)のいずれかに記載の熱放射素子において、前記誘電体膜の厚みが、前記誘電体膜内での熱放射分布における主要波長の0.02倍以下であることが好ましい。
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の熱放射素子において、前記第一方向と交差する第二方向において、複数の前記第二金属部材が、所定の間隔を空けて並んでいてもよい。
(5)本発明の一態様に係る熱輸送方法は、上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の熱放射素子を用いた熱輸送方法であって、前記第二金属部材側から、前記第二金属部材主面の鉛直方向に対して80度以上90度未満の角度で、0.3μm以上の波長帯域にわたって熱放射を発生させ、熱輸送を行う。これは室温から約1000度の物体から放射される全熱輻射のうち大きな割合を占める波長域であり、熱放射制御の効果が大きい。
本発明は、所定の角度の熱放射を、広い波長帯域にて実現することが可能な熱放射素子と、その熱放射素子を用いた熱輸送方法を提供することができる。
(a)、(b)本発明の一実施形態に係る熱放射素子の斜視図、断面図である。 同実施形態の熱放射素子の断面において、共振モードが発生している状態を示す図である。 同実施形態の変形例1に係る熱放射素子の平面図である。 同実施形態の変形例2に係る熱放射素子の平面図である。 (a)~(c)製造過程における熱放射素子の断面図である。 (a)~(c)製造過程における熱放射素子の断面図である。 実施例1、2の熱放射素子において、照射光の波長と吸収率の関係を示すグラフである。 実施例3、4の熱放射素子において、照射光の波長と吸収率の関係を示すグラフである。 熱放射素子の吸収率を、第二金属部材同士の間から回折光が発生する場合と発生しない場合とで、比較したグラフである。 誘電体膜の厚みと吸収率との関係を示すグラフである。 入射角度ごとの吸収率を示すポーラープロットである。
以下、本発明を適用した実施形態に係る熱放射素子及び熱輸送方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る熱放射素子100の斜視図である。熱放射素子100は、主に、第一金属からなる基板(第一金属基板)101と、誘電体膜102と、複数の第二金属部材103と、を備えている。
第一金属基板101は、光を90%以上反射する第一金属からなる。第一金属としては、例えば、金、銀、白金等の貴金属、モリブデン、アルミニウム、タングステン、チタン、ニッケル、銅、鉄等が挙げられる。第一金属基板101は、少なくとも誘電体膜102を配置する一方の主面101aが平坦であればよく、その他の部分の形状・サイズ等については限定されない。
誘電体膜102は、第一金属基板101の一方の主面101aに配置(形成)され、照射された光Iの導波路として機能する膜体である。誘電体膜102は、その厚み方向と直交する面内方向(ここではXY面内方向)に、振動モードを有する分子で構成されるものとする。面内方向の振動モードを有する分子としては、光吸収率の低い(消衰係数k<1)誘電体、例えばSiO、Al、TiO、NiO等のセラミック、或いは、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド等の高分子が挙げられる。SiOは、消衰係数が低く、また材料の安定性が高いため、誘電体膜102の構成材料として特に好ましい。
誘電体膜102を構成する高分子としては、具体的に限定されるものではないが、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、PMF(poly(melamine-co-formaldehyde))、エポキシ等の炭素化合物を用いることができる。
金属基板上に誘電体膜を配置した従来構造の熱放射素子では、誘電体膜102から放射される光の波長が、誘電体膜102を構成する材料によって異なる。つまり、誘電体膜102は、放射光の波長選択性を有しており、その構成材料を適宜選択することによって、放射される光の波長が決定される。
これに対し、第一金属基板101上の誘電体膜102の上に、さらに第二金属部材103を配置した本実施形態の熱放射素子100は、構造により電磁波共鳴を誘起することで、誘電体膜102の構成材料によらず、3μm以上の広い波長帯域の光を放射させることができる。
PMMAは分子構造がシンプルであり、Leaky modeと結合する分子振動子(周波数)の数が少ないため、放射光の波長範囲を狭めたい場合に好適な材料となる。これに対し、PMFは分子構造が複雑であり、複数の分子振動子を有する。そのため、PMFでは、放射光の波長範囲を広げたい場合に好適な材料となる。
光の吸収率を高める観点から、誘電体膜102は薄いほど好ましい。誘電体膜102を薄くした場合には、照射される光IのLeaky modeが、誘電体膜102内の分子の熱振動(分子振動)と結合しやすくなり、結合した場合には、放射光の放射角度が限定される。つまり、所望の方向のみへの放射が可能になり、放射光の指向性を高めることができる。
第二金属部材103は、光を90%以上反射する第二金属からなる。第二金属としては、例えば、金、銀、白金等の貴金属、モリブデン、アルミニウム、タングステン、チタン、ニッケル、銅、鉄等が挙げられる。第二金属部材103は、誘電体膜102の上(第一金属基板101と反対側)に複数配置(形成)され、第一方向(図1ではX方向)において、互いに所定の間隔Sを空けて並んでいる。第一方向における第二金属部材103の幅Lは、非常に重要である。幅が広いほど、多数のモードが対象波長域に現れ、ピーク数が増えるためである。そのため、幅Lは4μm以上50μm以下であるのが好ましく、多くのピークが生じる幅である、15μm以上50μm以下であるのがより好ましい。間隔Sは、狭い方がよい第二金属部材103の幅Lは、間隔Sの5倍以上10倍以下であるのが好ましく、8倍以上10倍以下であるのがより好ましい。
誘電体膜102に光を入射させるため、隣接する第二金属部材103同士の間にできるスリット103sは、空隙になっていることが好ましいが、光を90%以上透過させる部材が挟まれた状態になっていてもよい。図1では、第二金属部材103同士の間にできるスリット103sが、第一方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に延在している場合を例示している。
第二金属部材103の厚み103dは、図1(b)に示すように、第二金属部材103の主面103aの鉛直方向に対する角度θで入射した光Iが、隣接する第二金属部材103同士の間を通って、誘電体膜102の表面(上面)102aに到達できるように設計される。
図2は、シミューレーションにより、熱放射素子100を動作させた状態を示した図である。図2は、図1(b)に対応しており、角度θを89°で入射した際の振動状態を示している。面内方向(X方向)の共振モード発生のメカニズムは、次の通りである。まず、誘電体膜102の上面102aの電子が、光を照射されることによって振動する。この振動に連鎖して下面102bの電子が振動することにより、誘電体膜の上面102aと下面102bとの間に電磁波共鳴(ファブリ・ペロー型共振)が起きる。図2では、電磁波共鳴が起きている部分を白色で示している(図2では、特に強い電磁波共振が起きている箇所ほど白色に近い色で示している。)。
誘電体膜の上面102aと下面102bとの間に電磁波共鳴が起きることにより、第一金属基板101の主面101aを構成する電子は振動し、疎密を生じる。これに起因して発生する電界の一部は、誘電体膜102の厚みが、誘電体膜内での熱放射分布における主要波長の0.02倍以下である条件を満たす時、Leaky-modeとして構造表面に現れ、第二金属部材103主面(上面、誘電体膜102と反対側の表面)103aの鉛直方向に対して、80~90度の大きな角度を持った光との強い相互作用が生じ、複数の波長域での強い吸収(吸収ピーク)が発生する。なお、ここでの熱放射分布における主要波長は、ピークを示す波長、例えば最大ピークを示す波長を意味している。
第二金属部材103の形状および配置パターンは、図1(a)に示すストライプ状のものに限定されることはない。第二金属部材103は、少なくとも一方向(第一方向)において、図1(b)に示すように、複数の第二金属部材103が所定の間隔置きに並ぶ周期構造を有していれば、他の形状を有していてもよく、また、他のパターンで配置されていてもよい。例えば、第一方向と交差する第二方向において、複数の第二金属部材103が、所定の間隔を空けて並んで配置されてもよい。
図3、4は、先に示した熱放射素子100の変形例に係る、熱放射素子110、120の平面図(上面図)である。熱放射素子110、120は、第二金属部材103の形状および配置パターンのみが熱放射素子100と異なるが、その他の構成は熱放射素子100と同様である。熱放射素子100と対応する箇所については、同じ符号を付している。
図3の熱放射素子110では、誘電体膜102の上面に、複数の第二金属部材103がアイランド状に配置され、第一方向(X方向)だけでなく第二方向(Y方向)にも周期構造が形成されている。(ここでは、長方形で示しているが、正方形、円形、あるいは他の形状であってもよい。)そのため、第一方向とともに第二方向への熱放射を行うことができる。第二金属部材103は、第二方向において、互いに所定の間隔Sを空けて並んでいる。第二方向における第二金属部材103の幅Lは、4μm以上50μm以下であるのが好ましく、15μm以上50μm以下であるのがより好ましい。間隔Sは、狭い方がよい第二金属部材103の幅Lは、間隔Sの5倍以上10倍以下であることが好ましく、8倍以上10倍以下であるのがより好ましい。
図4の熱放射素子120では、誘電体膜102の上面に、ロの字型(四角形、矩形)の第二金属部材103のパターンが、所定の間隔を空けて入れ子状に複数重なって配置されている。この場合にも、周期構造が形成されている第一方向(X方向)と第二方向(Y方向)の両方に熱放射を行うことができる。
(熱放射素子の製造方法)
図5、6は、熱放射素子100を製造する各工程での断面図である。熱放射素子100は、主に次の工程を経て製造される。
まず、図5(a)に示すように、支持部材104の一面に対し、スパッタリング等の公知の成膜法を用いて、金等の前述した物質からなる第一金属の膜体(以下では第一金属基板と呼ぶ)101を形成する。第一金属基板101の厚みについては特に限定されないが、50nm~1000nm(50nm以上であれば透過は起きない。)程度であれば好ましい。なお、支持部材104にSiを使用する場合は、第一金属基板101の密着層として、Cr等の薄膜(5nm以下)を形成してから、第一金属基板101を形成するのが好ましい。
次に、図5(b)に示すように、第一金属基板101の上に、スパッタリング等の公知の成膜法を用いて、SiO等の前述した物質からなる誘電体の膜(以下では誘電体膜と呼ぶ)102を形成する。誘電体膜102の厚みについては限定されないが、300nm以下であればよいが、角度選択性及び、エネルギーの吸収量の増大の観点から、100nm以下であれば好ましく、30nm以下であればより好ましい。
次に、図5(c)に示すように、誘電体膜102の上面にレジスト105(ここではネガレジスト)を塗布する。続いて、図6(a)に示すように、誘電体膜102の上面のうち、第二金属部材103を配置する部分に塗布されているレジストのみを、レーザー・リソグラフィ法等を用いて選択的に除去する。
次に、図6(b)に示すように、レジスト105の上側から、この時点での最表面に対し、スパッタリング等の公知の成膜法を用いて、金等の前述した物質からなる第二金属の膜体(以下では第二金属部材と呼ぶ)103を形成する。第二金属部材103の厚みについては500nm以下であればよく、10nm~100nm程度であるのが好ましい。
また、第二金属部材103の幅は、4μm以上、50μm以下にすると、実用性の高い、3μm~10μm付近の広帯域の波長に対して、複数の吸収波長を得られるため、好ましい。
次に、図6(c)に示すように、超音波洗浄等でリフトオフを行い、レジスト105とレジスト105上の第二金属部材103Bを除去することにより、支持部材104で支持された熱放射素子100を得ることができる。誘電体102の上面は、複数の第二金属部材103Aが、所定の間隔を空けて並んで配置された状態となる。この時点で、支持部材104については、不要であれば除去してもよい。
以上のように、本実施形態の熱放射素子100では、所定の角度で照射された光を吸収する誘電体膜102の上面に、複数の第二金属部材103が間隔を空けて並んで配置される。これらの第二金属部材103が共振器としてはたらくことにより、誘電体膜102に、面内方向の共振モードを人工的に発生させることができる。この共振モードによって生じた第一金属基板の表面における電子の疎密に起因する電界が、Leakyモードとして現れる。
そのため、照射された光は、広い波長域にわたって誘電体膜102内に強く吸収させることができる。その結果として、本実施形態の熱放射素子100では、照射角度に対応した熱放射を、広い波長帯域にて発生させることができ、熱エネルギーの輸送効率を高めた熱輸送方法を実現することができる。
吸収波長の帯域は、誘電体膜102に発生させる共振モードの種類に依存するため、この共振モードを発生させる第二金属部材103の形状および配置によって、微調整することができる。そのため、誘電体膜102の材料を変えて調整する場合に比べて、吸収波長の帯域の設計自由度を大幅に向上させることができる。
以下、実施例により、本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
実施例において、輻射量を吸収率で示すが、熱放射素子100の輻射するエネルギーは熱放射素子100が吸収したエネルギーであるため、吸収率と輻射量は等価の関係にある。そのため、吸収率が大きいというのは、その波長での輻射量が大きいことを意味する。
(実施例1)
上記実施形態の熱放射素子に対し、入射角度が80度になるように、第二金属部材103側から光を照射するシミュレーションを行い、照射光に含まれるTE偏光およびTM偏光の吸収強度を、波長ごとに算出した。第一金属基板、第二金属部材の材料を、いずれもAu(金)とした。誘電体膜の材料をSiOとした。第一方向において、第二金属部材の幅を13μmとし、第二金属部材同士の間隔を2μmとした。また、第二金属部材の厚みを0.1μmとし、誘電体膜の厚みを0.15μmとした。
(実施例2)
実施例1と同じ条件の熱放射素子を作製、準備し、これに光を照射し、照射光に含まれるTE偏光およびTM偏光の吸収強度を、波長ごとに実測した。
(実施例3)
熱放射素子に対する光の入射角度を10度とし、その他の条件は変更せずに、実施例1と同様のシミュレーションを行った。
(実施例4)
熱放射素子に対する光の入射角度を10度とし、その他の条件は変更せずに、実施例2と同様の実測を行った。
図7は、実施例1(入射角度80度)のTE偏光のシミュレーション結果(細い破線)およびTM偏光のシミュレーション結果(太い破線)と、実施例2(入射角度80度)のTE偏光(細い実線)およびTM偏光(太い実線)の測定結果と、を示すグラフである。図8は、実施例3(入射角度10度)のTE偏光のシミュレーション結果(細い破線)およびTM偏光のシミュレーション結果(太い破線)と、実施例4(入射角度10度)のTE偏光(細い実線)およびTM偏光(太い実線)の測定結果と、を示すグラフである。いずれのグラフにおいても、横軸が照射光の波長(μm)を示し、縦軸が吸収強度を示している。グラフ中の実線が実測結果に対応し、破線がシミュレーション結果に対応している。実測結果とシミュレーション結果とは、光の入射角度、偏光の種類によらず、ほぼ一致する傾向を示していることが分かる。
図7、8のグラフから、TE偏光については吸収がほとんど見られないが、TM偏光については、波長3~10μmの広範囲にわたって複数の波長帯域で、強い吸収が見られる。この違いは、TE偏光の振動方向がスリットの延在方向と直交しているのに対し、TM偏光の振動方向はスリットの延在方向と平行であるため、ファブリ・ペロー型の共振モードを発生させられることに起因している。
入射角度を80度とした場合のTM偏光(図7)は、入射角度を10度とした場合のTM偏光(図8)に比べて、約4倍強く吸収されている。この結果から、第二金属部材がストライプ状に並んだ上記熱放射素子であれば、第二金属部材側から、第二金属部材主面の鉛直方向に対して80度以上90度未満の制限された角度範囲、および3μm以上の広い波長帯域にわたる熱放射(熱輸送)を大きなエネルギー量で実現できることが分かる。
3μm以上の広い波長帯域は、室温から約1000度の物体から放射される全熱輻射のうち大きな割合を占める波長域であり、熱放射制御の効果が大きい。
また、80度以上90度未満の制限された角度範囲で熱放射を行うことができるので、熱輸送を行う際の、熱機器の設計の選択肢を増やすことができる。
上記実測結果における吸収率は、熱放射素子に照射した光の反射率Rを測定し、全確率1から、その反射率Rのみを差し引いて算出した(1-R)である。算出した(1-R)には、誘電体膜に吸収されずに回折光として放出される確率も含まれていることがある。そこで、吸収率として、回折の影響がない構造の熱放射素子での(1-R)の算出結果「Normal°」を、上記実施例での算出結果「Total°」と比較した。図9は、比較の結果を示すグラフである。グラフの横軸、縦軸は、図7、8と同様である。比較の結果、算出された二つの吸収率は、ほぼ同程度の大きさを示しており、吸収率について正しく評価できていることが分かる。
(実施例5)
誘電体膜の厚みを0~0.1μmとし、その他の条件は変更せずに実施例1と同様のシミュレーションを行い、厚みごとの吸収率を算出した。
(実施例6~10)
誘電体膜の厚みを0.01μm(実施例6)、0.02μm(実施例7)、0.03μm(実施例8)、0.1μm(実施例9)、0.5μm(実施例10)とし、その他の条件は変更せずに実施例2と同様の実測を行った。
(参考例)
誘電体膜の厚みを0~0.5μmとし、回折光が発生しない構造の熱放射素子を用いて、実施例1と同様のシミュレーションを行い、厚みごとの吸収率を算出した。
図10は、実施例5のシミュレーション結果、実施例6、7、9の実測結果、および参考例の結果をまとめたグラフである。グラフの横軸は誘電体膜の相対的な厚み(d/5:実際の厚みdを、誘電体膜(SiO膜)内での分子振動の波長5μmで規格化した厚み)を示している。グラフの縦軸は、誘電体膜の相対的な吸収率(A80/A10:入射角が10度の光の平均吸収率(単位面積当たりの吸収率)A10に対する、入射角が80度の光の平均吸収率A80の比率)、すなわち、入射光に対する誘電体膜の(入射)角度選択性の強さを示している。
図10では、実施例での算出結果を黒丸で、そのフィッティング関数を実線で、実施例での実験結果を四角で、回折の影響がない構造の熱放射素子での算出結果を白丸で、示している。
図11は、実施例8~10の実測結果を用い、入射角度ごとの吸収率のポーラプロットである。
図10、11から、共振モード発生のメカニズムにおいて、誘電体膜102の厚みは非常に重要であることがわかる。
図10、11から明らかように、相対的な吸収率(A80/A10)は、誘電体膜が薄いほど高くなっている。つまり、誘電体膜が薄いほど角度選択性が高まり、80度以上の大きい角度で入射する光が、選択的に強く吸収されていることが分かる。また、実測結果とシミュレーション結果とは、光の入射角度、偏光の種類によらず、ほぼ一致する傾向を示していることが分かる。なお、回折光の発生による測定結果のずれは、相対的な吸収率が0.02以下ではほぼなくなっている。
角度選択性は、誘電体膜の厚みの指数関数に従って変化していることから、エバネッセント波に関連したモードを含んでいると考えられる。熱放射を発生させる際には、このモードが、ファブリ・ペロー型共振に起因する第一金属基板の表面の電子の疎密によって生じていると考えられる。
図10の結果から、角度選択性が著しくなるのは、誘電体膜102の厚みdが、300nm以下と推定される。高角度での吸収率は、誘電体膜102の厚みdが300nm以下であれば、低角度に対して3倍以上の吸収率となり、また、30nm以下であれば、5.5倍以上になり、角度選択性及び、エネルギーの吸収量(すなわち、輻射量)の増大につながり、そのような薄い膜厚にするのがより実用上、好ましい。
100・・・熱放射素子
101・・・第一金属基板
101a・・・第一金属基板の一方の主面
102・・・誘電体膜
102d・・・誘電体膜の厚み
103・・・第二金属部材
103d・・・第二金属部材の厚み
103s・・・スリット
104・・・支持部材
105・・・レジスト
I・・・光
、L・・・第二金属部材の幅
、S・・・間隔
θ・・・入射角

Claims (5)

  1. 第一金属基板と、
    前記第一金属基板の一方の主面に配置された誘電体膜と、
    前記誘電体膜の上に配置された複数の第二金属部材と、を備え、
    複数の前記第二金属部材は、第一方向において所定の間隔を空けて並んでおり、
    前記第一方向における前記第二金属部材の幅が、4μm以上50μm以下であることを特徴とする熱放射素子。
  2. 前記第一方向における前記第二金属部材の幅は、前記間隔の5倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱放射素子。
  3. 前記誘電体膜の厚みが、前記誘電体膜内での熱放射分布における主要波長の0.02倍以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の熱放射素子。
  4. 前記第一方向と交差する第二方向において、複数の前記第二金属部材が、所定の間隔を空けて並んでいることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱放射素子。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の熱放射素子を用いた熱輸送方法であって、
    前記第二金属部材側から、前記第二金属部材主面の鉛直方向に対して80度以上90度未満の角度で、0.3μm以上の波長帯域にわたって熱放射を発生させ、熱輸送を行うことを特徴とする熱輸送方法。
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