以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるテラヘルツ帯用アンテナの構成を示す構成図である。図1では、テラヘルツ帯用アンテナを模式的に斜視図で示している。
このテラヘルツ帯用アンテナは、グラフェンから構成されて対象とするテラヘルツ波(テラヘルツ光)の表面プラズモンが共鳴する第1アンテナパタン101と、グラフェンから構成されて第1アンテナパタン101とは異なるプラズモン共鳴周波数の第2アンテナパタン102とを備える。第2アンテナパタン102は、第1アンテナパタン101に所定の距離離間して向かい合って積層されている。実施の形態1では、各アンテナパタンの平面視の形状を矩形としている。第1アンテナパタン101と第2アンテナパタン102とは、互いに平行な状態となっていることが最適であるが、互いの面が見込める状態に配置されていればよく、平行な状態よりある程度ずれていてもよい。
この例では、第1アンテナパタン101は、テラヘルツ波に対して吸収の少ない材料から構成された基板103の主表面上に形成されている。また、第2アンテナパタン102は、基板103の上に形成された誘電体層104の上に形成されている。誘電体層104は、基板103と同程度の誘電率の材料から構成すればよい。誘電体層104の層厚により、第1アンテナパタン101に所定の距離離間して向かい合った状態で、第2アンテナパタン102が積層されている。
上述したテラヘルツ帯用アンテナにおいて、第1アンテナパタン101と第2アンテナパタン102との間隔は、図2に示すように、光学的距離に換算して1/10〜1/4波長(λ)程度に取れば良い。なお、波長は、対象とするテラヘルツ波の波長である。
次に、共鳴周波数のずれについて図3を用いて説明する。図3は、第1アンテナパタン101と第2アンテナパタン102との共鳴周波数のずれとゲインの関係の一例を示す特性図である。まず、第2アンテナパタン102の方が第1アンテナパタン101より共鳴周波数が高く、第2アンテナパタン102の側を前方とし、第1アンテナパタン101の側を後方とする。
対象とするテラヘルツ波の共鳴周波数をfとする。この場合、共鳴する第1アンテナパタン101の共鳴周波数もほぼfである。これに対し、第2アンテナパタン102の共鳴周波数はf+Δfとすると、図3からわかるように、0.02f<Δf<0.2f程度であれば、高いゲインが得られている。
上記構成としたテラヘルツ帯用アンテナに対し、共鳴周波数f+Δfの第2アンテナパタン102の側から、共鳴周波数fの第1アンテナパタン101の側に向けてテラヘルツ波121を照射することを考える。テラヘルツ波の電場によって、共鳴周波数がずれている第2アンテナパタン102に誘起される電流には位相差が生じる。この位相差により、共鳴周波数fの第1アンテナパタン101の位置での電界は強め合い、従って大きな吸収が発生する。
逆に、共鳴周波数fの第1アンテナパタン101の側から、共鳴周波数f+Δfの第2アンテナパタン102の側に向けてテラヘルツ波122を照射した場合は、第1アンテナパタン101の位置で電界の打ち消し合いが発生し、吸収が起こりにくくなる。
次に、第2アンテナパタン102の方が第1アンテナパタン101より共鳴周波数が低い場合を考える。対象とするテラヘルツ波の共鳴周波数をfとすると、共鳴する第1アンテナパタン101の共鳴周波数もほぼfである。これに対し、第2アンテナパタン102の共鳴周波数はf−Δfとすると、0.02f<Δf<0.2f程度であれよい。
上記構成としたテラヘルツ帯用アンテナに対し、共鳴周波数fの第1アンテナパタン101の側から、共鳴周波数f+Δfの第2アンテナパタン102の側に向けてテラヘルツ波122を照射すると、テラヘルツ波の電場によって、共鳴周波数がずれている第2アンテナパタン102に誘起される電流には位相差が生じる。この位相差により、第1アンテナパタン101の位置での電界は強め合い従って大きな吸収が発生する
逆に、共鳴周波数f−Δfの第2アンテナパタン102の側から、共鳴周波数fの第1アンテナパタン101の側に向けてテラヘルツ波121を照射すると、第1アンテナパタン101の位置で電界の打ち消し合いが発生し、吸収が起こりにくくなる。
上述したように、本発明のテラヘルツ帯用アンテナでは、特定の方向から入射するテラヘルツ波を効率よく受信、あるいは吸収することができる。また、これ以外の方向からのテラヘルツ波に対しては透過性が高くなる。
以下、実施の形態1におけるテラヘルツ帯用アンテナについて、より詳細に説明する。まず、基板103は、テラヘルツ波に対して吸収の少ないzカット水晶基板を用いればよい。zカット水晶基板からなる基板103の上に、すでに形成してあるグラフェンを転写し、転写したグラフェンを公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングし、第1アンテナパタン101を形成すればよい。グラフェンの形成は、例えば、よく知られた触媒金属を用いたCVD法により形成すればよい。第1アンテナパタン101は、例えば、長さ2mm、幅44μmに形成すればよい。なお、長さは共鳴周波数の決定にあまり重要ではなく、照射するテラヘルツ波のスポットサイズより大きく取れば良い。
次に、第1アンテナパタン101を構成しているグラフェンに、ホールをドープする。例えば、真空中加熱処理(非特許文献2)や高分子による修飾(非特許文献3)により、ホール濃度約2.2×1018cm-2までグラフェンにホールをドープする。前述した寸法とされ、上述したホール濃度とされた第1アンテナパタン101は、誘電率3.8の水晶からなる基板103に担持された状態では、幅方向に偏光している約1.5THzのテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する状態となる。
次に、誘電体層104は、水晶とほぼ同じ誘電率となるHSQ(hydrogen silsesquioxane:ハイドロジェンシルセスキオキサン)から形成すればよい。HSQは、液体ガラス的な性質を有し、電子線を露光光源としたネガ型レジストであり、電子線が照射された箇所が、SiOxに変化する。HSQをスピンコート法により塗布し、例えば、110℃・3分の条件で加熱して溶媒などを揮発させることで、層厚25μm程度の塗布層を形成する。この塗布層に紫外線を照射してSiOxに変化させ、誘電体層104とする。
次に、形成した誘電体層104の上に、前述同様にグラフェンを転写し、転写したグラフェンを公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングし、第2アンテナパタン102を形成する。第2アンテナパタン102は、例えば、長さ2mm、幅40μmに形成すればよい。
次に、第2アンテナパタン102を構成しているグラフェンに、前述同様にホールをドープする。ホール濃度約2.2×1018cm-2までグラフェンにホールをドープする。前述した寸法とされ、上述したホール濃度とされた第2アンテナパタン102は、HSQからなる誘電体層104に担持された状態では、幅方向に偏光している約1.6THzのテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する状態となる。
上述した構成とした実施の形態1におけるテラヘルツ帯用アンテナに、第2アンテナパタン102の側より1.5THzのテラヘルツ波121を照射すると、前述したように、第1アンテナパタン101と第2アンテナパタン102との間の干渉効果により、第1アンテナパタン101で強い電界を生じ光が強く吸収される。一方、第1アンテナパタン101の側より1.5THzのテラヘルツ波122を照射すると、第1アンテナパタン101と第2アンテナパタン102との間の干渉効果により第1アンテナパタン101で電界が打ち消し合い吸収が抑制される。なおここでは受信動作について述べたが、本アンテナは送信にも使用可能である。送信の場合には、第1アンテナパタン101の側から第2アンテナパタン102の側(紙面上方向)へ向かうテラヘルツ波が放射される。
ここで、実施の形態1では、誘電体層104をHSQから形成したが、これに限るものではなく、テラヘルツ領域で吸収の少ない他の材料を用いても良い。例えば、PMMA(Poly methyl methacrylate)、BCB(Benzocyclobutene)、ポリイミド、ポリエチレンなどが考えられる。ただし、誘電体層104の誘電率は、第1アンテナパタン101,第2アンテナパタン102の共鳴周波数に影響を与える。誘電体層104の誘電率が大きいほど、共鳴周波数は低くなる。また、誘電体層104の光学的な厚さは、構成する材料の屈折率に依存する。一般に、屈折率が大きいほど誘電体層104を薄くすることができる。
また、第1アンテナパタン101,第2アンテナパタン102を構成するグラフェンのドープ量は、前述した値に限るものではない。物理的に同じ形状のアンテナパタンの場合、グラフェンのドープ量が小さいほど共鳴周波数は低くなる。また、各アンテナパタンの平面視の寸法も、前述した値に限るものではない。
例えば、以下に示す構成としてもよい。まず、第1アンテナパタン101の幅を25μmとし、ホール濃度を3.8×1012cm-1に調整する。この場合、第1アンテナパタン101の共鳴周波数は、約1.3THzとなる。また、誘電体層104の層厚を20nmとする。また、第2アンテナパタン102の幅を22μmとし、ホール濃度を3.8×1012cm-1に調整する。この場合、第2アンテナパタン102の共鳴周波数は、約1.5THzとなる。
上記構成としたテラヘルツ帯用アンテナによれば、第1アンテナパタン101の側より1.5THzのテラヘルツ波121を照射すると、前述したように、第1アンテナパタン101と第2アンテナパタン102との間の干渉効果により、第2アンテナパタン102で強い電界を生じテラヘルツ波121が強く吸収される。これに対し、第2アンテナパタン102の側より1.5THzのテラヘルツ波122を照射すると、第1アンテナパタン101と第2アンテナパタン102との間の干渉効果により、第2アンテナパタン102で電界が打ち消し合い吸収が抑制される。
また、基板103は、水晶に限定されるものではなく、テラヘルツ帯で高い透過性を示す他の材料も使用できる。例えば、サファイア、非ドープシリコン、ポリエチレンなどから基板103を構成してもよい。ただし、基板103の誘電率は、第1アンテナパタン101の共鳴周波数に影響を与えることを考慮する。
また、グラフェンの製法は、CVD法に限るものではない。例えば、SiC基板を加熱することでSiC基板の表面に熱分解法で、グラフェンを成長してもよい。また、グラファイトから剥離法によりグラフェンを形成してもよい。これらのことにより得られたグラフェンを、転写すればよい。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2におけるテラヘルツ帯用アンテナの構成を示す構成図である。図4では、テラヘルツ帯用アンテナを模式的に斜視図で示している。
このテラヘルツ帯用アンテナは、第1アンテナパタン201と、第1アンテナパタン201と所定の距離離間して向かい合って積層された第2アンテナパタン202と、第1アンテナパタン201と所定の距離離間して向かい合って積層された第3アンテナパタン203とを備える。第1アンテナパタン201の一方の面側に第2アンテナパタン202が配置され、第1アンテナパタン201の他方の面側に第3アンテナパタン203が配置されている。実施の形態2でも、各アンテナパタンの平面視の形状を矩形としている。なお、第1アンテナパタン201と第3アンテナパタン103とは、互いに平行な状態となっていることが最適であるが、互いの面が見込める状態に配置されていればよく、平行な状態よりある程度ずれていてもよい。
各アンテナパタンは、前述した実施の形態1と同様に、グラフェンから構成されている。また、第1アンテナパタン201は、対象とするテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する。一方、第2アンテナパタン202は、第1アンテナパタン201より低いプラズモン共鳴周波数とされ、第3アンテナパタン203は、第1アンテナパタン201より高いプラズモン共鳴周波数とされている。
この例では、第2アンテナパタン202が、水晶からなる基板204の主表面上に形成されている。また、第1アンテナパタン201は、基板204の上に形成された層厚20μmの誘電体層205の上に形成されている。また、第3アンテナパタン203は、誘電体層205の上に形成された、層厚20μmの誘電体層206の上に形成されている。誘電体層205の層厚により、第2アンテナパタン202に所定の距離離間して向かい合った状態で、第1アンテナパタン201が積層されている。また、誘電体層206の層厚により、第1アンテナパタン201に所定の距離離間して向かい合った状態で、第3アンテナパタン203が形成されている。誘電体層205,誘電体層206は、HSQから構成すればよい。
また、第1アンテナパタン201は、長さ2mm、幅22μmに形成する。また、第2アンテナパタン202は、長さ2mm、幅25μmに形成する。また、第3アンテナパタン203は、長さ2mm、幅20μmに形成する。また、各アンテナパタンを構成するグラフェンのホール濃度は、約3.8×1012cm-2とする。この結果、第1アンテナパタン201の共鳴周波数は1.5THzとなり、第2アンテナパタン202の共鳴周波数は1.3THzとなり、第3アンテナパタン203の共鳴周波数は1.7THzとなる。
上述した構成とした実施の形態3によれば、第3アンテナパタン203の側より1.5THzのテラヘルツ波221を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン201で強い電界を生じ、テラヘルツ波221が強く吸収される。これに対し、第2アンテナパタン202の側より1.5THzのテラヘルツ波222を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン201で電界が打ち消し合い吸収が抑制される。
なお、積層数は3に限らず、4層、5層とより数を増やしてもよい。例えば、第3アンテナパタン203の上に、層厚20μmの新たな誘電体素を形成し、この上に、第3アンテナパタン203と同じ形状、同じドープ状態のアンテナパタンを、前述同様に配置すれば、更なる指向性の向上が得られる。
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態3におけるテラヘルツ帯用アンテナの構成を示す構成図である。図5では、テラヘルツ帯用アンテナを模式的に斜視図で示している。
このテラヘルツ帯用アンテナは、第1アンテナパタン301と、第1アンテナパタン301と所定の距離離間して向かい合って積層された第2アンテナパタン302と、第1アンテナパタン301と所定の距離離間して向かい合って積層された第3アンテナパタン303とを備える。第1アンテナパタン301の一方の面側に第2アンテナパタン302が配置され、第1アンテナパタン301の他方の面側に第3アンテナパタン303が配置されている。実施の形態3では、各アンテナパタンの平面視の形状を円形としている。
各アンテナパタンは、前述した実施の形態1と同様に、グラフェンから構成されている。また、第1アンテナパタン301は、対象とするテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する。一方、第2アンテナパタン302は、第1アンテナパタン301より低いプラズモン共鳴周波数とされ、第3アンテナパタン303は、第1アンテナパタン301より高いプラズモン共鳴周波数とされている。
この例では、第2アンテナパタン302が、水晶からなる基板304の主表面上に形成されている。また、第1アンテナパタン301は、基板304の上に形成された層厚20μmの誘電体層305の上に形成されている。また、第3アンテナパタン303は、誘電体層305の上に形成された、層厚20μmの誘電体層306の上に形成されている。誘電体層305の層厚により、第2アンテナパタン302に所定の距離離間して向かい合った状態で、第1アンテナパタン301が積層されている。また、誘電体層306の層厚により、第1アンテナパタン301に所定の距離離間して向かい合った状態で、第3アンテナパタン303が形成されている。誘電体層305,誘電体層306は、HSQから構成すればよい。
また、第1アンテナパタン301は、直径30μmの円形に形成する。また、第2アンテナパタン302は、直径33μmの円形に形成する。また、第3アンテナパタン303は、直径27μmの円形に形成する。また、各アンテナパタンを構成するグラフェンのホール濃度は、約3.8×1012cm-2とする。この結果、第1アンテナパタン301の共鳴周波数は1.5THzとなり、第2アンテナパタン302の共鳴周波数は1.3THzとなり、第3アンテナパタン303の共鳴周波数は1.7THzとなる。
上述した構成とした実施の形態3によれば、第3アンテナパタン303の側より1.5THzのテラヘルツ波221を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン301で強い電界を生じ、テラヘルツ波221が強く吸収される。これに対し、第2アンテナパタン302の側より1.5THzのテラヘルツ波222を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン301で電界が打ち消し合い吸収が抑制される。
また、実施の形態3では、アンテナパタンを平面視円形としているので、偏光方向によらず送受信が可能となる。なお、アンテナパタンの形状は、楕円やそれ以外の形でも良い。共鳴周波数は、偏光方向に対するパタンの長さに主に依存する。
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態4におけるテラヘルツ帯用アンテナの構成を示す構成図である。図6では、テラヘルツ帯用アンテナを模式的に斜視図で示している。
このテラヘルツ帯用アンテナは、第1アンテナパタン401と、第1アンテナパタン401と所定の距離離間して向かい合って積層された第2アンテナパタン402と、第1アンテナパタン401と所定の距離離間して向かい合って積層された第3アンテナパタン403とを備える。第1アンテナパタン401の一方の面側に第2アンテナパタン402が配置され、第1アンテナパタン401の他方の面側に第3アンテナパタン403が配置されている。実施の形態4では、第1アンテナパタン401は、平面視正方形とし、第2アンテナパタン402は、平面視円形とし、第3アンテナパタン403は、平面視正三角形としている。このように、実施の形態4では、各アンテナパタンが、平面視で異なる幾何学形状とされている
各アンテナパタンは、前述した実施の形態1と同様に、グラフェンから構成されている。また、第1アンテナパタン401は、対象とするテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する。一方、第2アンテナパタン402は、第1アンテナパタン401より低いプラズモン共鳴周波数とされ、第3アンテナパタン403は、第1アンテナパタン401より高いプラズモン共鳴周波数とされている。
この例では、第2アンテナパタン402が、水晶からなる基板404の主表面上に形成されている。また、第1アンテナパタン401は、基板404の上に形成された層厚20μmの誘電体層405の上に形成されている。また、第3アンテナパタン403は、誘電体層405の上に形成された、層厚20μmの誘電体層406の上に形成されている。誘電体層405の層厚により、第2アンテナパタン402に所定の距離離間して向かい合った状態で、第1アンテナパタン401が積層されている。また、誘電体層406の層厚により、第1アンテナパタン401に所定の距離離間して向かい合った状態で、第3アンテナパタン403が形成されている。誘電体層405,誘電体層406は、HSQから構成すればよい。
また、第1アンテナパタン401は、1辺22μmの正方形に形成する。また、第2アンテナパタン402は、直径33μmの円形に形成する。また、第3アンテナパタン403は、1辺36μmの正三角形に形成する。各アンテナパタンは、基板404の平面の法線方向上部より見ると、各々の重心位置が重なっている。また、各アンテナパタンを構成するグラフェンのホール濃度は、約3.8×1012cm-2とする。この結果、第1アンテナパタン401の共鳴周波数は1.5THzとなり、第2アンテナパタン402の共鳴周波数は1.3THzとなり、第3アンテナパタン403の共鳴周波数は1.7THzとなる。
上述した構成とした実施の形態4によれば、第3アンテナパタン403の側より1.5THzのテラヘルツ波221を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン401で強い電界を生じ、テラヘルツ波221が強く吸収される。これに対し、第2アンテナパタン402の側より1.5THzのテラヘルツ波222を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン401で電界が打ち消し合い吸収が抑制される。
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5について図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態5におけるテラヘルツ帯用アンテナの構成を示す構成図である。図7では、テラヘルツ帯用アンテナを模式的に斜視図で示している。
このテラヘルツ帯用アンテナは、第1アンテナパタン501と、第1アンテナパタン501と所定の距離離間して向かい合って積層された第2アンテナパタン502と、第1アンテナパタン501と所定の距離離間して向かい合って積層された第3アンテナパタン503とを備える。第1アンテナパタン501の一方の面側に第2アンテナパタン502が配置され、第1アンテナパタン501の他方の面側に第3アンテナパタン503が配置されている。実施の形態5では、各アンテナパタンの平面視の形状を正方形としている。
各アンテナパタンは、前述した実施の形態1と同様に、1層のグラフェンから構成されている。また、第1アンテナパタン501は、対象とするテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する。一方、第2アンテナパタン502は、第1アンテナパタン501より低いプラズモン共鳴周波数とされ、第3アンテナパタン503は、第1アンテナパタン501より高いプラズモン共鳴周波数とされている。
この例では、第2アンテナパタン502が、水晶からなる基板504の主表面上に形成されている。また、第1アンテナパタン501は、基板504の上に形成された層厚20μmの誘電体層505の上に形成されている。また、第3アンテナパタン503は、誘電体層505の上に形成された、層厚20μmの誘電体層506の上に形成されている。誘電体層505の層厚により、第2アンテナパタン502に所定の距離離間して向かい合った状態で、第1アンテナパタン501が積層されている。また、誘電体層506の層厚により、第1アンテナパタン501に所定の距離離間して向かい合った状態で、第3アンテナパタン503が形成されている。誘電体層505,誘電体層506は、HSQから構成すればよい。
各アンテナパタンは、平面視で1辺が22μmの正方形とされている。第1アンテナパタン501は、グラフェンのホール濃度が、約3.8×1012cm-2とされている。第2アンテナパタン502は、グラフェンのホール濃度が、約3.0×1012cm-2とされている。第3アンテナパタン503は、グラフェンのホール濃度が、約4.6×1012cm-2とされている。この結果、第1アンテナパタン501の共鳴周波数は1.5THzとなり、第2アンテナパタン502の共鳴周波数は1.3THzとなり、第3アンテナパタン503の共鳴周波数は1.7THzとなる。このように、アンテナパタンの形状を同一としても、ホール濃度を制御することで、各々異なる共鳴周波数とすることができる。
上述した構成とした実施の形態5によれば、第3アンテナパタン503の側より1.5THzのテラヘルツ波221を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン501で強い電界を生じ、テラヘルツ波221が強く吸収される。これに対し、第2アンテナパタン502の側より1.5THzのテラヘルツ波222を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン501で電界が打ち消し合い吸収が抑制される。
[実施の形態6]
次に、本発明の実施の形態6について図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態6におけるテラヘルツ帯用アンテナの構成を示す構成図である。図8では、テラヘルツ帯用アンテナを模式的に斜視図で示している。
このテラヘルツ帯用アンテナは、第1アンテナパタン601と、第1アンテナパタン601と所定の距離離間して向かい合って積層された第2アンテナパタン602と、第1アンテナパタン601と所定の距離離間して向かい合って積層された第3アンテナパタン603とを備える。第1アンテナパタン601の一方の面側に第2アンテナパタン602が配置され、第1アンテナパタン601の他方の面側に第3アンテナパタン603が配置されている。実施の形態6では、各アンテナパタンの平面視の形状を正方形としている。
各アンテナパタンは、前述した実施の形態1と同様に、1層のグラフェンから構成されている。また、第1アンテナパタン601は、対象とするテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する。一方、第2アンテナパタン602は、第1アンテナパタン601より低いプラズモン共鳴周波数とされ、第3アンテナパタン603は、第1アンテナパタン601より高いプラズモン共鳴周波数とされている。
この例では、第2アンテナパタン602が、サファイアからなる基板604の主表面上に形成されている。また、第1アンテナパタン601は、基板604の上に形成された層厚20μmの誘電体層605の上に形成されている。誘電体層605は、HSQから構成されている。誘電体層605の層厚により、第2アンテナパタン602に所定の距離離間して向かい合った状態で、第1アンテナパタン601が積層されている。
また、第3アンテナパタン603は、誘電体層605の上に形成された、層厚20μmの誘電体層606の上に形成されている。ここで、誘電体層605には、溝部606aを備える。第3アンテナパタン603は、溝部606aを跨いで架設されている。このため、第3アンテナパタン603の有効な領域の、第1アンテナパタン601側は、中空の状態とされ、空気(大気)に接触した状態とされている。このように、実施の形態6では、各アンテナパタンが、異なる誘電率の材料に接して配置されている。
例えば、フォトリソグラフィー技術により形成したマスクパタンを用い、反応性イオンエッチングによりパターニングすることで、誘電体層605に溝部606aを形成すればよい。このようにして溝部606aを形成した後、グラフェンを転写し、転写したグラフェンをパターニングして第3アンテナパタン603とすればよい。なお、誘電体層605も、HSQから構成されている。また、誘電体層606の層厚により、第1アンテナパタン601に所定の距離離間して向かい合った状態で、第3アンテナパタン603が形成されている。
各アンテナパタンは、平面視で1辺が22μmの正方形とされている。また、各アンテナパタンは、グラフェンのホール濃度が、約3.8×1012cm-2とされている。ここで、第1アンテナパタン501は、HSQからなる誘電体層605に接して形成されており、共鳴周波数は1.5THzとなる。また、第2アンテナパタン602は、サファイアからなる基板604に接して形成されており、共鳴周波数は1.3THzとなる。また、第3アンテナパタン603は、大気に接して形成された状態となっているため、共鳴周波数は1.6THzとなる。このように、アンテナパタンの形状を同一としても、接触する物質を異なる誘電率とすることで、各々異なる共鳴周波数とすることができる。
上述した構成とした実施の形態6によれば、第3アンテナパタン603の側より1.5THzのテラヘルツ波221を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン601で強い電界を生じ、テラヘルツ波221が強く吸収される。これに対し、第2アンテナパタン602の側より1.5THzのテラヘルツ波222を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン601で電界が打ち消し合い吸収が抑制される。
[実施の形態7]
次に、本発明の実施の形態7について図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施の形態7におけるテラヘルツ帯用アンテナの構成を示す構成図である。図9では、テラヘルツ帯用アンテナを模式的に斜視図で示している。
このテラヘルツ帯用アンテナは、第1アンテナパタン701と、第1アンテナパタン701と所定の距離離間して向かい合って積層された第2アンテナパタン702と、第1アンテナパタン701と所定の距離離間して向かい合って積層された第3アンテナパタン703とを備える。第1アンテナパタン701の一方の面側に第2アンテナパタン702が配置され、第1アンテナパタン701の他方の面側に第3アンテナパタン703が配置されている。実施の形態7では、各アンテナパタンの平面視の形状を正方形としている。
各アンテナパタンは、前述した実施の形態1と同様に、グラフェンから構成されている。実施の形態7では、第1アンテナパタン701が、2層のグラフェンから構成され、第2アンテナパタン702が、1層のグラフェンから構成され、第3アンテナパタン703が、3層のグラフェンから構成されている。なお、第1アンテナパタン701は、対象とするテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する。一方、第2アンテナパタン702は、第1アンテナパタン701より低いプラズモン共鳴周波数とされ、第3アンテナパタン703は、第1アンテナパタン701より高いプラズモン共鳴周波数とされている。
この例では、第2アンテナパタン702が、水晶からなる基板704の主表面上に形成されている。また、第1アンテナパタン701は、基板704の上に形成された層厚20μmの誘電体層705の上に形成されている。また、第3アンテナパタン703は、誘電体層705の上に形成された、層厚20μmの誘電体層706の上に形成されている。誘電体層705の層厚により、第2アンテナパタン702に所定の距離離間して向かい合った状態で、第1アンテナパタン701が積層されている。また、誘電体層706の層厚により、第1アンテナパタン701に所定の距離離間して向かい合った状態で、第3アンテナパタン703が形成されている。誘電体層705,誘電体層706は、HSQから構成すればよい。
また、各アンテナパタンは、平面視で1辺が25μmの正方形とされている。また、各アンテナパタンを構成するグラフェンのホール濃度は、約3.8×1012cm-2とする。この結果、2層のグラフェンから構成された第1アンテナパタン701の共鳴周波数は、1.5THzとなる。また、1層のグラフェンから構成された第2アンテナパタン702の共鳴周波数は、1.3THzとなる。また、3層のグラフェンから構成された第3アンテナパタン703の共鳴周波数は、1.7THzとなる。
上述した構成とした実施の形態7によれば、第3アンテナパタン703の側より1.5THzのテラヘルツ波221を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン701で強い電界を生じ、テラヘルツ波221が強く吸収される。これに対し、第2アンテナパタン702の側より1.5THzのテラヘルツ波222を照射すると、3つのアンテナパタン間の干渉効果により、第1アンテナパタン701で電界が打ち消し合い吸収が抑制される。
[実施の形態8]
次に、本発明の実施の形態8について図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態8におけるテラヘルツ帯用アンテナの構成を示す構成図である。図10では、テラヘルツ帯用アンテナを模式的に斜視図で示している。
このテラヘルツ帯用アンテナは、第1アンテナパタン801と、第1アンテナパタン801と所定の距離離間して向かい合って積層された第2アンテナパタン802と、第1アンテナパタン801と所定の距離離間して向かい合って積層された第3アンテナパタン803とからなる複数のアンテナユニット811を備える。複数のアンテナユニット811は、正方配列されて周期が50μmとされている。この例では、3×3の正方配列(マトリクス)としている。各々のアンテナユニット811において、第1アンテナパタン801の一方の面側に第2アンテナパタン802が配置され、第1アンテナパタン801の他方の面側に第3アンテナパタン803が配置されている。実施の形態8では、各アンテナパタンの平面視の形状を正方形としている。
また、複数の第1アンテナパタン801は、各々のプラズモン共鳴周波数が同一とされて同一の平面上に形成されている。また、複数の第2アンテナパタン802は、各々のプラズモン共鳴周波数が同一とされて同一の平面上に形成されている。同様に、複数の第3アンテナパタン803は、各々のプラズモン共鳴周波数が同一とされて同一の平面上に形成されている 。
各アンテナパタンは、前述した実施の形態1と同様に、グラフェンから構成されている。また、第1アンテナパタン801は、対象とするテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する。一方、第2アンテナパタン802は、第1アンテナパタン801より低いプラズモン共鳴周波数とされ、第3アンテナパタン803は、第1アンテナパタン801より高いプラズモン共鳴周波数とされている。
この例では、各第2アンテナパタン802が、水晶からなる基板804の主表面上に形成されている。また、各第1アンテナパタン801は、基板804の上に形成された層厚20μmの誘電体層805の上に形成されている。また、各第3アンテナパタン803は、誘電体層805の上に形成された、層厚20μmの誘電体層806の上に形成されている。
誘電体層805の層厚により、各アンテナユニット811毎に、第2アンテナパタン802に所定の距離離間して向かい合った状態で、第1アンテナパタン801が積層されている。また、誘電体層806の層厚により、各アンテナユニット811毎に、第1アンテナパタン801に所定の距離離間して向かい合った状態で、第3アンテナパタン803が形成されている。誘電体層805,誘電体層806は、HSQから構成されている。
また、第1アンテナパタン801は、1辺の長さが22μmの正方形に形成する。また、第2アンテナパタン802は、1辺の長さが25μmの正方形に形成する。また、第3アンテナパタン803は、1辺の長さが20μmの正方形に形成する。また、各アンテナパタンを構成するグラフェンのホール濃度は、約3.8×1012cm-2とする。この結果、複数の第1アンテナパタン801が形成された第1アレイアンテナ層801aの共鳴周波数は、1.5THzとなる。また、複数の第2アンテナパタン802が形成された第2アレイアンテナ層802aの共鳴周波数は、1.3THzとなる。また、複数の第3アンテナパタン803が形成されただ3アレイアンテナ層803aの共鳴周波数は1.7THzとなる。
上述した構成とした実施の形態8によれば、第3アンテナアレイ層803aの側より1.5THzのテラヘルツ波221を照射すると、3つのアンテナアレイ層間の干渉効果により、第1アンテナアレイ層801aで強い電界を生じ、テラヘルツ波221が強く吸収される。これに対し、第2アンテナアレイ層802aの側より1.5THzのテラヘルツ波222を照射すると、3つのアンテナアレイ層間の干渉効果により、第1アンテナアレイ層801aで電界が打ち消し合い吸収が抑制される。
以上に説明したように、本発明によれば、グラフェンから構成されて対象とするテラヘルツ波の表面プラズモンが共鳴する第1アンテナパタンと、グラフェンから構成されて第1アンテナパタンとは異なるプラズモン共鳴周波数の第2アンテナパタンとを、所定の距離離間して向かい合って積層したので、テラヘルツ波を、より効率よく送信、あるいは受信できるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、本発明のアンテナは、テラヘルツ波の吸収構造体、テラヘルツ波の反射構造体として用いることもできる。例えば、対象とする共鳴周波数fのテラヘルツ波が、共鳴周波数f+Δfの第2アンテナパタンの側から入射すれば、上記テラヘルツ波は吸収する。これに対し、上記テラヘルツ波が、逆に、共鳴周波数fの第1アンテナパタンの側から入射すれば、上記テラヘルツ波は反射する。
また、例えば実施の形態8では、アンテナアレイ層を3層積層したが、これに限るものではなく、2層としてもよく、また、4層以上としてもよい。例えば、上述では、グラフェンにホールドープしたが、これに限らず、電子ドープをしてもよい。