JP2023128661A - 車両制御装置及び車両制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】横方向だけでなく、前後方向の車両運動が乗員の頭部揺動に与える影響および個人差を考慮し、前後と横を連携した車両運動により乗員の頭部揺動をさらに低減する車両制御装置及び車両制御方法を提供する。【解決手段】第1の方向の車両運動に起因する乗員の第1の方向の頭部揺動に対して、第1の方向とは異なる第2の方向の車両運動が、乗員の第1の方向の頭部揺動に与える変化を求める頭部揺動予測モデルと、頭部揺動予測モデルに基づき車両運動を生成する車両運動生成部と、を備えることを特徴とする車両制御装置。【選択図】図4

Description

本発明は、車両の運動量を制御する車両制御装置及び車両制御方法に係り、特に、乗員の乗り心地の改善や乗り物酔い(動揺病)発症の防止をするように車両の姿勢を制御する車両制御装置及び車両制御方法に関する。
乗員にとっての乗り物酔い(動揺病)につながる乗員頭部の揺動を低減するための車両運動を制御する従来の車両制御装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1の要約書には、「車両の進行方向と、車両が走行する目標コース上の前方注視時間後の目標到達点の方向との偏角を検出する偏角検出手段と、検出された偏角に比例するヨー角速度を、前方注視時間の3分の1のむだ時間後のヨー角速度の第1目標値として演算する目標値演算手段と、ヨー角速度の第1目標値を修正して、乗員の頭部動揺を抑制するためのフィードフォワード制御を行う場合のヨー角速度の第2目標値を求める目標値修正手段と、ヨー角速度の第2目標値をむだ時間後に実現するように、車両運動を制御する車両運動制御手段と、を含み、むだ時間を、フィードフォワード制御の位相遅れに相当する第1むだ時間、または、第1むだ時間と実舵角からヨー角速度までの伝達関数の位相遅れに相当する第2むだ時間との和とする」ことが記載されている。
また、特許文献1の請求項2には、「前記フィードフォワード制御の伝達関数を、人体挙動モデルを用いて定義された車両に作用する横加速度から乗員の頭部変位を得る第1伝達関数の分子に存在する不安定ゼロ点の符号を反転させて、分子と分母を入れ替えた逆モデルを含む第2伝達関数とする」ことが記載されている。
特開2021-62821号公報
しかしながら、特許文献1の車両運動制御方法は、乗員の頭部の横(ロール)方向の制御のみに言及されており、乗員の頭部揺動をさらに抑えるためにはカーブ通過時の速度を落とさざるを得ない事例が存在すると考えられる。
また、特許文献1では乗員により人体挙動モデルが異なりうることへは言及されておらず、ある乗員に対して適合されたフィードフォワード制御が別の乗員にはあまり頭部揺動の抑圧効果を発揮しない可能性がある。カーブ通過速度の向上、すなわち目的地への到達時刻の短縮という利便性を損なうことなく、より効果的に乗員の動揺病を低減するためには、横(ロール)方向だけでなく、前後(ピッチ)方向も考慮し、個人差に対応したモデルの適合を実施することが必要となる。
そこで、本発明の目的は、横(ロール)方向だけでなく、前後(ピッチ)方向の車両運動が乗員の頭部揺動に与える影響および個人差を考慮し、前後と横を連携した車両運動により乗員の頭部揺動をさらに低減する車両制御装置及び車両制御方法を提供することにある。
以上のことから本発明においては「第1の方向の車両運動に起因する乗員の第1の方向の頭部揺動に対して、第1の方向とは異なる第2の方向の車両運動が、乗員の第1の方向の頭部揺動に与える変化を求める頭部揺動予測モデルと、頭部揺動予測モデルに基づき車両運動を生成する車両運動生成部と、を備えることを特徴とする車両制御装置。」としたものである。
また本発明は、「第1の方向の車両運動に起因する乗員の第1の方向の頭部揺動に対して、第1の方向とは異なる第2の方向の車両運動が、乗員の第1の方向の頭部揺動に与える変化を求めて、第2の方向の車両運動を抑制するように車両制御することを特徴とする車両制御方法。」としたものである。
また本発明は、「左右方向の車両運動に起因する乗員の左右方向の頭部揺動に対して、前後方向の車両運動が、乗員の前記左右方向の頭部揺動に与える変化を求めて、前後方向の車両運動を抑制するように車両制御することを特徴とする車両制御方法。」としたものである。
本発明によれば、カーブ通過速度の向上、すなわち目的地への到達時刻の短縮という利便性を損なうことなく、より多くの乗員に対し、効果的に頭部揺動を低減し、動揺病を抑圧する車両制御方法を実現することができる。
これにより、乗員の乗り心地の改善や乗り物酔い(動揺病)発症の抑制が可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の実施例1に係る車両1の全体構成例を示す平面図。 実施例1の車両制御装置2の入出力信号を例示した概略図。 乗員特性取得部の一例として、車両が自動運転可能な乗り合いバスの形状をしている場合を示す図。 乗員特性取得部の一例として、車両が自動運転可能な乗用車の形状をしている場合を示す図。 本発明の実施例1に係る車両制御装置2の機能ブロック図。 動揺病発症率MSIの演算方法を示す機能ブロック図。 乗員に対する横加速度により、頭部ロール角が発生する様子を示す図。 物理モデルとしてバネ・マス・ダンパの力学モデルを採用した例を示す図。 車線変更する車両1を示す平面図と、その時の車両1の横加速度72および乗員52の頭部ロール角74の変化の一例を示す図。 実施例1車両運動生成部25の機能の一例を概念的に示す図。 GVCによる乗員の頭部挙動の変化を計測した方法を示す図。 GVCによる乗員の頭部挙動の変化を計測した結果を示す図。 GVCによる乗員の頭部挙動の変化を計測した結果を示す図。 乗員の頭部について、前後方向と左右方向の定義を示した図。 頭部揺動予測モデルにおける左右方向のバネ61のバネ係数K65の設定の一例を示す図。 車両運動生成部25の具体的構成例を示す図。 実施例1車両運動生成部25により生じる車両運動の変化の一例を示す図。 左カーブに進入する車両1を示す平面図である。 実施例1の車両運動生成部25により生じる車両運動の変化の一例を示す図。 実施例1の車両運動生成部25により生じる車両運動の変化の一例を示す図。 実施例1の車両運動生成部25により生じる車 両運動の変化の一例を示す図。 本発明の実施例2に係る車両制御装置2の機能ブロック図。 実施例2の車両制御装置2の処理を示すフローチャート。 実施例2の車両運動生成部25により生じる車両運動の変化の一例を示す図。 実施例2の車両運動生成部25により生じる車両運動の変化の一例を示す図。 実施例3の車両制御装置2の機能ブロック図。 情報提示の方法および挙動の一例を示す図。 情報提示の方法および挙動の一例を示す図。
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略することがある。
ここで、本発明の基本的な考え方を明らかにしておくと、これは従来においては左右方向の頭部動揺による動揺病の低減を、左右方向の運動量の抑制制御により図ったものであるに対し、本発明では前後方向の頭部動揺もまた左右方向の頭部動揺による動揺病に影響を与えるという新しい知見を発見したことに基づいて行われたものである。
本発明による上記知見は、より敷衍的には「第1の方向の車両運動に起因する乗員の第1の方向の頭部揺動に対して、第1の方向とは異なる第2の方向の車両運動が、乗員の第1の方向の頭部揺動に影響を与える」というものである。
このことから、本発明においては左右方向の頭部動揺による動揺病の低減のために、前後方向の頭部動揺を抑制制御するというものであり、実施例においてこの具体手法を説明する。
図1から図18を参照して、本発明の実施例1に係る車両制御装置について説明する。
図1は、本発明の実施例に係る車両1の全体構成例を示す平面図である。図1において、2は車両制御装置、3は外部制御装置、4はコンバインセンサ、11は車輪、12はモータ、13はブレーキ機構、14はステアリング機構、15はサスペンション、16はアクセルペダル、17はブレーキペダル、18はハンドルである。
なお図中、FLは左前、FRは右前、RLは左後、RRは右後に対応する構成であることを示す符号であり、車輪11を例にすれば、11FL、11FR、11RL、11RRはそれぞれ、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪である。また、Fは前側、Rは後側に対応する構成であることを示す符号である。
以下、車両1の前後方向をx軸(前方向を正)、左右方向をy軸(左方向を正)、上下方向をz軸(上方向を正)と定義したうえで、各構成の詳細を順次説明する。
車両制御装置2は、運転者の操作や、外部制御装置3からの外部指令、及び、コンバインセンサ4の検出信号(前後、左右、上下の各加速度、及び、ロール、ピッチ、ヨーの各レートの合計6自由度の制御軸に関する検出信号)に応じて、モータ12、ブレーキ機構13、ステアリング機構14、サスペンション15等の各アクチュエータを統合制御する制御装置である。
この車両制御装置2は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、補助記憶装置、及び、通信装置などのハードウェアを備えたECU(Electronic Control Unit)である。そして、補助記憶装置から主記憶装置にロードしたプログラムを演算装置が実行することで、後述する各機能を実現するが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら説明する。
外部制御装置3は、車両制御装置2を介して運転支援制御や自動運転制御を実行するための上位コントローラであり、外界センサ19(カメラ、レーダ、LiDAR等)が取得した外界情報に基づいて、先行車に追従するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を実現するための速度指令値や加速指令値、或いは、車線内走行を維持するレーン・キープ・コントロール(LKC)を実現するためのヨー指令値等を演算し、それらを外部指令として車両制御装置2に出力する。
なお、図1では、車両制御装置2と外部制御装置3を別体としているが、両者を一つのECUで実現しても良い。
外界センサ19として、例えば180゜の視野角を持った魚眼カメラを車両1の前面、左右側面、後面それぞれに設置することで(19、19SL、19SR、19)、車両1の周囲に存在する他の車両、自転車、歩行者、障害物等の物体との相対距離及び相対速度を検出することができる。
なお、本実施例では、センサ構成の一例として上記センサの組み合わせを示しているが、それに限定するものではなく、超音波センサ、ステレオカメラ、赤外線カメラなどとの組み合わせでも良く、車両1の天井に周囲360゜をセンシング可能なレーザレーダを搭載しても良い。上記センサ信号(上記センサから出力される信号)が、車両制御装置2もしくは外部制御装置3に入力される。
ここで、車両1の駆動系を説明する。車両1は、駆動系の要部として、車輪11の各々に駆動力を与えるトルク発生装置を搭載している。このトルク発生装置の一例は、デファレンシャルギアとドライブシャフトを介して左右一対の車輪11に駆動力を伝達するエンジンやモータである。トルク発生装置の他の例は、車輪11の各々を独立駆動させるインホイールモータ式のモータ12である。以下では、インホイールモータ式のモータ12を車輪11の各々に搭載した、図1の車両構造を前提に本実施例の詳細を説明する。
運転者が車両1を前進(または後退)させたい場合、運転者はシフトレバーを所望の設定にしてから、アクセルペダル16を操作する。このとき、ストロークセンサ16aは、アクセルペダル16の踏み込み量を検出し、加速制御装置16bは、踏み込み量を変換したアクセル指令を車両制御装置2に出力する。車両制御装置2は、入力されたアクセル指令に応じた電力を図示しないバッテリから各輪のモータ12に供給し、各々のモータトルクを制御する。この結果、アクセルペダル16の操作に応じて、車両1を加減速させることができる。
また、外部制御装置3からの外部指令に応じて運転支援や自動運転を実施する場合、車両制御装置2は、入力された外部指令に応じて所望の電力を各輪のモータ12に供給することで、各々のモータトルクを制御する。この結果、車両1が加減速され、所望の運転支援や自動運転が実行される。
次に、車両1の制動系を説明する。車両1は、制動系の要部として、車輪11の各々に制動力を与えるホイルシリンダ13aを搭載している。このホイルシリンダ13aは、例えば、シリンダ、ピストン、パッド、ディスクロータ等から構成されている。このホイルシリンダ13aでは、マスタシリンダから供給された作動液によってピストンが推進され、ピストンに連結されたパッドが車輪11と共に回転しているディスクロータに押圧されることで、ディスクロータに作用したブレーキトルクが、車輪11と路面との間に作用する制動力となる。
運転者が車両1を制動させたい場合、運転者はブレーキペダル17を操作する。このとき、運転者がブレーキペダル17を踏む踏力は、ブレーキブースタ(不図示)で増加され、マスタシリンダによって、その踏力に略比例した油圧を発生させる。発生した油圧は、ブレーキ機構13を介して、各輪のホイルシリンダ13aFL、13aFR、13aRL、13aRRに供給されるので、運転者のブレーキペダル操作に応じて、各輪のホイルシリンダ13aのピストンがディスクロータに押圧され、各輪に制動力を発生させる。
なお、車両制御装置2を搭載した車両1では、ブレーキブースタやマスタシリンダを省略しても良く、その場合は、ブレーキペダル17とブレーキ機構13を直結させ、運転者がブレーキペダル17を踏めばブレーキ機構13が直接動作する機構であっても良い。
また、外部制御装置3からの外部指令に応じて運転支援や自動運転を実施する場合、車両制御装置2は、入力された外部指令に応じ、制動制御装置13bを介して、ブレーキ機構13と各輪のホイルシリンダ13aを制御する。この結果、車両1が制動され、所望の運転支援や自動運転が実行される。
なお、制動制御装置13bは、運転者によるブレーキペダル17の操作量をブレーキ指令に変換し、車両制御装置2に外部指令として出力する機能も担っている。
次に、車両1の操舵系を説明する。車両1は、操舵系の要部として、車輪11の各々に操舵力を与えるステアリング機構14を搭載している。図1では、前輪11(左前輪11FL、右前輪11FR)を操舵する前側のステアリング機構14と、後輪11(左後輪11RL、右後輪11RR)を操舵する後側のステアリング機構14を示しているが、前後にステアリング機構14を備える必要は無く、例えば、後側のステアリング機構14を省略しても良い。
運転者が車両1を操舵したい場合、運転者はハンドル18を操作する。このとき、運転者がハンドル18を介して入力した「操舵トルク」と「操舵角」は、操舵トルク検出装置18aと操舵角検出装置18bで検出される。前側の操舵制御装置14aは、検出された操舵トルクと操舵角に基づいて、前側の操舵用モータ14bを制御して、前輪11を操舵するためのアシストトルクを発生させる。同様に、後側の操舵制御装置14aは、検出された操舵トルクと操舵角に基づいて、後側の操舵用モータ14bを制御して、後輪11を操舵するためのアシストトルクを発生させる。
また、外部制御装置3からの外部指令に応じて運転支援や自動運転を実施する場合、車両制御装置2は、操舵制御装置14aを介して、操舵用モータ14bの操舵トルクを制御する。この結果、車両1が操舵され、所望の運転支援や自動運転が実行される。その場合、ハンドル18を省略しても良い。
次に、車両1の懸架系を説明する。車両1は、懸架系の要部として、車輪11の各々に発生する振動や衝撃を吸収し、車体の安定性、乗り心地を良くするための、サスペンション15を搭載している。このサスペンション15は、例えば、粘性を変更可能なダンパとコイルスプリングを組み合わせたセミアクティブサスペンションや、長さを調節可能なアクチュエータとダンパとコイルスプリングを組み合わせ、車体と車輪11の相対距離を任意に変更できるフルアクティブサスペンションである。
車両制御装置2は、セミアクティブサスペンションの粘性や、フルアクティブサスペンションの長さを制御することで、乗り心地等を改善するだけでなく、環境に応じて車両1の姿勢を適切に制御する。
次に、図2を用いて、車両制御装置2の入出力を説明する。図2は、車両制御装置2の入出力信号を列挙した概略図である。図2に示すように、車両制御装置2には、運転者がアクセルペダル16、ブレーキペダル17、ハンドル18等を操作することで生成された、アクセル指令、ブレーキ指令、操舵トルク、操舵角等が外部指令として入力される。
また、車両制御装置2には、運転支援制御中や自動運転制御中に外部制御装置3が生成した、前後加速指令値、左右加速指令値、上下加速指令値、ロール指令値、ピッチ指令値、ヨー指令値の中から、最大6自由度の外部指令が入力される。
さらに、車両制御装置2には、コンバインセンサ4から、前後、左右、上下の各加速度、及び、ロール、ピッチ、ヨーの各レートの各検出値が入力される。
そして、車両制御装置2は、上記の外部指令、検出値に基づいて、モータ12(12FL~12RR)、ブレーキ機構13(ホイルシリンダ13aFL~13aRR)、ステアリング機構14(操舵用モータ14b、14b)、サスペンション15(15FL~15RR)(以降、符号12~15を総称してアクチュエータと称することがある)の各々の操作量を適切に配分して、駆動、制動、操舵、懸架の各制御を実行することで、姿勢制御を含む所望の車両制御を実現する。
なお、図1の車両1は、手動運転に対応するものであるため、図2では運転者起因の外部指令も例示しているが、本発明は、完全自動運転または遠隔操作にのみ対応した車両1にも適応でき、その場合は、運転者起因の外部指令を省略した構成とすれば良い。自動運転時は外部制御装置3から最大6自由度の外部指令が入力されても良いし、外界センサ19からの外界情報及び車両制御装置2内部に記憶された地図情報を用いて自動走行用の目標値を生成してもよい。本実施例においては、車両制御装置2内部で自動運転用の目標値を生成する前提で説明する。
車両制御装置2には、さらに乗員特性24(乗員の姿勢とかを表すもの)が入力されてもよい。例えば、車両1の車室内に乗員特性取得部23としてカメラを搭載し、乗員の頭部の動きを計測して動揺病(乗り物酔い)の発症しやすさ(感受性)を推定する。或いは、乗車中の乗員の動揺病(乗り物酔い)感受性に関わる情報を、乗員が所有する携帯端末から取得する仕組みを備えても良い。
図3a及び図3bを用いて、乗員特性取得部23に関する一例を説明する。図3aは、車両1aが自動運転可能な乗り合いバスの形状をしている場合を例にとって図示したものである。図3aにおいて、乗員特性取得部23aは天井に取り付けられた360゜の視野を持つカメラである。このカメラで乗員52a、52´aの乗車位置、乗車方向、姿勢、頭部の姿勢、頭部の動き、視線、乗車中タスク(読書中、睡眠中など)などを乗員特性24として検知する。なお、カメラはこのような形状・位置に限定されるものではなく、車室内に複数台設置してあっても良いし、360゜の視野でなくとも良い。
或いは、図3bのように、車両1bが乗用車の形状をしている場合、乗員特性取得部23bはフロントガラスと天井との接続点付近(通常ルームミラーがついている部分)に設置したカメラであっても良い。この場合、後部座席に着席している乗員52bの乗員特性24を検知する。
図4は、車両制御装置2の機能ブロック図である。図2では、運転者起因の3種の外部指令(アクセル指令、ブレーキ指令、操舵トルク・操舵角)が入力され、また、外部制御装置3からの最大6種の外部指令が入力される車両制御装置2を例示したが、本実施例においては前述の通り、車両制御装置2内部で自動運転用の目標値を生成する構成を例にとって、本実施例の車両制御装置2の詳細を説明する。
本実施例の車両制御装置2は、図4に示すように、少なくとも目標値生成部21、車両運動生成部25、頭部揺動予測モデル28から構成されており、最終的に車両運動26をアクチュエータ12-15に出力する。
目標値生成部21は、自動運転における特定の運転タスク(経路に追従する、先行車と同じ速度で走行する等)を実現するような車両運動目標を目標値22とし、車両運動生成部25に出力する。目標値22は、前後加速指令値、左右加速指令値、ヨー指令値の3種であることが一般的であり、加えてロール角指令値、ピッチ角指令値、上下方向加速指令値を加えて最大6種の指令値を生成するのがよい。なお、運転者起因の3種の外部指令(アクセル指令、ブレーキ指令、操舵トルク・操舵角)が入力された場合は、目標値生成部21は、それらの外部指令を前後加速指令値、左右加速指令値、ヨー指令値に変換して目標値22として出力するものとする。
車両運動生成部25は、入力された種類の目標値22を補正し、入力されなかった種類の目標値を生成し、車両の最大6自由度の運動および姿勢(前後・左右・上下・ロール・ピッチ・ヨー)である車両運動26を出力する。ここで、車両運動生成部25は、乗り心地の改善や動揺病低減を考慮した車両運動目標を生成する役割を担っており、後述する頭部揺動予測モデル28が算出する乗員の頭部揺動特徴29に基づき、動揺病感受性指数を最適化するような車両運動26を生成する。具体的な生成方法の例は後述する。
頭部揺動予測モデル28は、頭部動揺発生の原因要因である車両運動26´を入力して、最終的に乗員の頭部揺動特徴29を提供する。ここでは、乗員の動揺病感受性を評価する動揺病感受性指数の一つの例として、動揺病(いわゆる「車酔い」)の発症率である動揺病発症率MSIについて説明する。
動揺病発症率MSIは、例えば、図5に示すような演算方法によって、演算できることが論文などにより知られている。図5の詳細説明を省略するが、この手法によれば、頭部動揺発生の原因要因である車両運動26´として、3軸頭部加速度+重力加速度31と、3軸頭部角速度32と、3軸頭部加速度33とを入力し、図5に示したような処理に基づいて、動揺病発症率MSIを演算することができる。
なお、図5中の「頭部加速度」と「頭部角速度」は、車両1に乗車中の乗員の頭部が受ける加速度と角速度とである。動揺病発症率MSIは、その値が小さいほど動揺病が発症しにくい車両運動とされる指標であるため、動揺病発症率MSIが小さくなるような車両運動の目標値の生成が望まれる。カーブ走行時等に頭部に慣性加速度が発生した際に、頭部に生じるロールあるいはピッチ方向の揺動がなるべく小さくなること(あるいは慣性加速度方向とは逆、すなわち慣性にあらがう方向にロール角やピッチ角が発生すること)でMSIが低減することが知られている。
動揺病感受性指数の他の例としては、MSDV(Motion Sickness Dose Value)が挙げられる。これは、人体に発生した加速度の中で、特に動揺病を発症しやすいとされる特定の周波数成分を抜き出した値であり、この値が高いほど動揺病を発症しやすいことが一般に知られている。従って、この感性指標に着目する場合は、その特定の周波数成分を発生させないように前後・左右・上下の加速度を制御するような車両運動の車両運動を生成する。
動揺病感受性指数のさらなる他の例としては、生体信号(たとえば発汗・心拍など)が挙げられる。乗員が動揺病を発症した場合、心拍数の増加、掌部または額部の発汗が見られることが一般に知られている。従って、この感性指標に着目する場合は、この生体信号が改善するように車両運動の目標値を生成する。
頭部揺動予測モデル28は、車両運動生成部25より暫定または最終的な車両運動26´を受領し、乗車中の乗員について車両運動26´により発生しうる頭部揺動(乗員頭部の6軸の運動量および姿勢角)の予測値を将来にわたって算出する物理モデルを有する。前記物理モデルのパラメータは乗員によって異なるため、頭部揺動予測モデル28は前記パラメータを記憶する役割を有する。そして、車両運動26´により発生しうる頭部揺動の予測値、もしくは記憶した前記パラメータを、頭部揺動特徴29として車両運動生成部25に送信することにより、車両運動生成部25が最終的な車両運動26を生成するための基準となる情報を提供する。
図6a、図6bおよび図7を用いて、頭部揺動予測モデル28の動作の一例を説明する。図6aは、乗員52に対する横加速度72により、頭部ロール角74が発生する様子を示している。図6bは、頭部揺動を予測する前記物理モデルとして一般的なバネ・マス・ダンパの力学モデルを採用した場合の例を示している。なお、図6a及び図6bではロール方向を例に説明するが、ピッチ方向も同様のモデルで表現可能である。また、後述する通り、ロール方向とピッチ方向に関連性を持つことを特徴とする。
先ず、図6aに示すように、乗員52に対して横加速度72が生じると、頭部には慣性加速度が生じることで頭部のロール角74が発生する。この時、乗員52の頸部(肩部と頭部の接続部)は一般に、バネ(変位に比例した反力発生)とダンパ(変位の時間変化に比例した反力発生)の特性を持つことが知られている。この構成を頭部揺動モデルとして単純化すると、図6bに示すように、慣性63がバネ61、ダンパ62を介して接地している構成として表せる。
本モデルへの力学的な入力は、慣性63の重心点に発生する慣性加速度であり、その結果発生する変位64が頭部ロール角74と等価である。このようなモデルを想定することで、目標値22で設定された横加速度の時間変化に起因する乗員の頭部ロール角74の時間変化が推定可能となる。
図6bで示したバネ61、ダンパ62の係数は人によって異なる(個人差がある)と考えられ、頭部揺動予測モデル28のパラメータの一例はこのバネ61、ダンパ62の係数である。一般に、バネやダンパの係数が大きいほど頭部の揺動が小さい。いま、乗員の頭部のロール角に相当する変位64をX、その時間に関する一階微分をX´、二階微分をX´´とおき、バネ61のバネ係数をK、ダンパ62のダンピング係数をC、慣性63の質量をM、慣性63の重心点に発生する慣性加速度をAxとおくと、頭部揺動予測モデル28内部では(1)式に示すような運動方程式を計算する。
[数1]
MX´´=MAx-KX-Cx´ (1)
図7を用いて、パラメータ(K、C)の違いによる挙動差の例を説明する。図7上段には、車量の車線変更の様子を、中段にはその時の横加速度の変動を、下段にはその時の乗員の頭部ロール角をそれぞれ示している。
ここでは車両1が2車線の道路で左から右に車線変更する場合を想定しており、横加速度72が図7中段の通り生じる。すなわち、最初に右方向に操舵をすることで負の横加速度が生じ、次に左方向に操舵をすることで正の加速度が生じる。この時、頭部が揺動しにくい乗員aと頭部が揺動しやすい乗員bでは、同じ横加速度72に対する頭部ロール角が74a、74bと異なる。例えば図7において、頭部ロール角の振幅は74aに比べて74bは略2倍の大きさであることから、同定されるバネ係数Kやダンピング係数Cは、乗員aに比べて乗員bが概ね半分の大きさを持つことが想定される。
なお、頭部揺動予測モデル28において、バネ・マス・ダンパとは別に、横加速度に比例する入力を別途追加してもよい。これは、人体の能動的な反応を模擬するもので、頭部で横加速度を知覚すると、発生した横加速度にあらがう方向に、横加速度に比例した力を発生させることで頭部揺動を抑えようとする反応を想定する。この能動的な動作の比例係数をLとおくと、頭部揺動予測モデル28内部では(2)式に示すような運動方程式を計算する。
[数2]
MX´´=MAx-KX-CX´-LAx (2)
図8から図11を用いて、頭部揺動予測モデル28おけるロール方向とピッチ方向の関連性を説明する。図8は、良好な操舵特性や乗り心地を実現する車両運動として提案されているG-Vectoring制御(GVC)の車両運動の特徴を示す模式図である。上から、横加速度72、横加速度の時間微分である横加加速度76、前後加速度77を表す。本図では左カーブ進入時に発生する車両運動を想定している。
車両が緩和曲線を伴う左カーブに侵入して左方向に操舵をすると、横加速度72がある時点から増加を始め、緩和曲線から曲率一定の曲線に達すると以降は横加速度が一定値になるような時間経過を示す。この時、横加加速度は緩和曲線を走行している(操舵角が徐々に増加している)間に0より大きいある値を示す。GVCはこの横加加速度の絶対値に比例した前後加速度を逆方向に発生させる(すなわち横加加速度の大きさが増加しているときは減速方向に発生させる)ことを特徴とする。
この横加加速度の絶対値に対する前後加速度の比例係数(GVCゲイン66)の設定方法が本発明の特徴である。
GVCが実施されていない車両では前後加速度77aに示すように0のまま変化せず、車両は一定速度でカーブに侵入するが、GVCが搭載された車両では、前後加速度77bに示すように、横加加速度76に比例した大きさの前後加速度が減速方向に発生する。
図9から図11は、図8で示したようなGVCの車両運動を発生させた場合に、乗員の頭部揺動がどのように変化するかを計測した結果を示す。まず、図9のように、車両が車線間を左右に行き来し続けるスラローム走行を行った。この時の乗員の頭部ロールレイト78(ロールレイトはロール角の時間微分)の時間変化は図10に示す通りとなった。ここでは3人の被験者A、B、Cについて計測しており、破線が「GVC無」、実線が「GVC有」を示す。ここでGVC無とは図8における前後加速度77a、GVC有とは図8における前後加速度77bの動きに相当する。
図10において、被験者AはGVC無におけるロールレイト78aよりGVC有におけるロールレイト78a´のほうが頭部ロールレイトの振幅が大きくなっていることが見て取れる。一方、被験者Bおよび被験者Cでは、GVC有(78b´、78c´)のほうが、GVC無(78b、78c)より頭部ロールレイトの振幅が小さくなっている。これは、操舵時に横加加速度76に比例した大きさの前後加速度が減速方向に発生することで、乗員の頭部揺動が減少する場合があること、その効果には個人差があることが示されている。
図11は、GVC有における頭部揺動低減効果が最も高かった被験者Cについて、車両に発生したロールレイトを横軸にとり、頭部のロールレイトを縦軸にとったリサージュ波形79を示す。横軸の値の範囲に着目すると、GVC無の破線とGVC有の実線では値の範囲がほぼ同じである。すなわち車両のロールレイト振幅はGVC有無による違いがほとんどないことを示している。これは、GVCはあくまで前後方向の制御をするものであり、横(ロール)方向に与える変化は些少であることに起因する。一方、縦軸はGVC無に比べてGVC有では値の範囲が狭くなっており、頭部ロールレイト78の振幅が小さくなっていることが見て取れる。
このように、車両の横(ロール)方向の車両運動にはほとんど差がないにも関わらず、前後方向に動きの変化を加えることで乗員の頭部ロールレイトに影響が生じることがわかる。本発明はこの事象(原理)を利用し、前後運動の制御により乗員の頭部の横(ロール)方向揺動を低減するものである。
図12a、図12bを用いて、頭部揺動予測モデル28が前記のようなロール方向とピッチ方向の関連性を有する一例を説明する。図12aは乗員52の頭部について、前後(ピッチ)方向と左右(ロール)方向の定義を示した説明図である。本発明においては、乗員52が向いている方向を前後と定義し、前後に対して直交する並進方向を左右と定義する。
図12bは、頭部揺動予測モデル28における左右(ロール)方向のバネ61のバネ係数K65の設定の一例を示す。本図は横軸に前後加速度またはピッチ角の大きさ(車体基準でとっても良いし、乗員の頭部基準でとっても良い)、縦軸は頭部揺動予測モデル28で想定するバネ係数65を表す。なお、ここでは前後方向の車両運動量として、前後加速度およびピッチ角を例に説明するが、それぞれの時間微分である前後加加速度やピッチレイトを制御する構成であってもよい。以降の説明では、前後方向の車両運動量について「前後加速度」と代表して説明する。
図12bにおいて、乗員Aは図10における被験者Aを想定しており、前後加速度の発生による頭部揺動の低減効果がない(あるいはかえって頭部揺動が大きくなる)特性を示している。本図では前後加速度またはピッチ角によりバネ係数65aが変化せず、横軸に平行な特性として描画しているが、図10における被験者Aの特性を右肩下がりの特性として設定してもよい。また、前後加速度が十分に大きい領域では、乗員Bにおいてもある前後加速度を超えた領域ではバネ係数Kが右肩下がりに変化する特性となってもよい。
一方、乗員Bは前後加速度またはピッチ角が発生していないときにはバネ係数65bが乗員Aより小さい。すなわち、同様に操舵した際に、前後加速度が発生しなければ、乗員BはジョインAより頭部揺動が大きい、つまり動揺病に発症しやすいことが示唆される。一方、前後加速度の大きさが0より大きい場合に、バネ係数65bが右肩上がりで上昇し、ある点で乗員Aを超える特性が設定されている。これは、操舵時に前後加速度を与えることにより、乗員Aよりもむしろ頭部揺動が低減されうる、つまり動揺病の発症しやすさが抑圧されうることを示唆している。
車両運動に起因する乗員の頭部揺動特徴についての上記解析結果に応じて、本発明においては図4の車両運動生成部25を例えば図13のように構成するものである。図13において、車両運動生成部25内の入力部30に与えられる入力である車両運動目標22は、前後加速指令値22a、左右加速指令値22b、ヨー指令値22cを含み、さらに加えてロール角指令値22d、ピッチ角指令値22e、上下方向加速指令値22fを含む最大6種の指令値とされるのがよい。
またこれらの車両運動目標22は、頭部揺動予測モデル28に車両運動26´として与えられ、これらから生成した3軸頭部加速度+重力加速度31と、3軸頭部角速度32と、3軸頭部加速度33を用いて、図4のMSI導出に用いられる。
車両運動生成部25では、入力された種類の目標値22を補正し、入力されなかった種類の目標値を生成し、車両の最大6自由度の運動および姿勢(前後・左右・上下・ロール・ピッチ・ヨー)である車両運動26を出力するための各種処理を実行しているが、図13には、本発明に関する前後加速度に対する処理部分のみを記載している。従って、図13には図示していないが、左右方向の頭部動揺による動揺病の低減を、左右方向の運動量の抑制制御により実現する制御回路を備えたものとすることができる。
前後加速度に対する基本処理では、車両運動生成部25は入力した指令値の内、前後加速度に対する車両運動目標22である前後加速指令値22aとピッチ角指令値22eに着目し、前後加速度生成部34において前後加速度目標77´を得る。前後加速度目標77´は減算部35における補正後に、車両運動生成部25から前後加速度目標77としてアクチュエータ12-15に送られる。
これに対する本発明の補正処理では、横加速度72に関連する左右加速指令値22bとロール角指令値22dに着目して、微分回路部31においてこれを微分して横加加速度76とし、さらに絶対値回路32において横加加速度76の大きさを求める。横加加速度76の大きさに対して、頭部揺動予測モデル28から与えられるGVCゲイン66を乗算回路33で乗じた信号を、減算部35において前後加速度目標77´に対して補正後に、車両運動生成部25から前後加速度目標77として出力する。
図4と、図13を対比して明らかなように図4における頭部揺動予測モデル28からの乗員の頭部揺動特徴29は、図13ではGVCゲイン66として実現されたものである。
この場合に、GVCゲイン66を与えるか否か、またその大きさは、頭部揺動予測モデル28の判断により乗員毎に個別に設定される。GVCゲイン66は通常は1から0の範囲の値である。頭部揺動予測モデル28での処理結果により、酔いやすいと判断された乗員に対してはGVCゲイン66を大きい値とすることで前後加速を軽減する運転とし、そうでない人に対してはGVCゲイン66を小さい値とすることで目標値生成部21が定めた前後加速指令がそのまま運転に反映されるように調整されることになる。
図14から図18を用いて、車両運動生成部25が車両運動26を生成する具体例を説明する。図14は、図7で説明した車線変更の目標値22が生成された場合に、車両運動生成部25が車両運動26として前後加速度77を生成する例を示す。ここでは図12と同じ乗員A、乗員Bを例にとって挙動の差を説明する。
図14上図では、乗員Aに対しては前後加速度77aの通り前後加速度が発生しない(一定速度で走行する)一方、乗員Bでは車線変更開始時に操舵角を増加させる際、および隣の車線への収束のため操舵角を逆方向に増加させる際に、減速方向に前後加速度77bを発生させていることが見て取れる。これは、図8で説明した比例係数(GVCゲイン66)を、乗員Aに対しては0に設定し、乗員Bに対して0より大きいある値に設定したことを意味する。
図14下図では、上記前後加速度の発生により、それぞれ乗員A、乗員Bの頭部ロール角74がどのように時間変化するかの一例を示している。いま、乗員Aの頭部ロール角74aが破線のように発生する場合、77aのように乗員Aと同様に前後加速度が発生しない(一定速度で走行する)ように走行すると、乗員Bの頭部ロール角は74bに示す一点鎖線の通り、乗員Aよりも大きい振幅で発生する。
一方、乗員Bに対して前後加速度を77bのように発生させると、乗員Bの頭部ロール角は74b´に示す実線の通り、乗員Aよりも小さい振幅で発生する。これが、本発明による頭部揺動低減効果である。
図15は、左カーブに進入する車両1を示す平面図である。ここで説明する道路形状は左カーブであり、車両1がこの左カーブの形状の道路に進入する。ここで実行される運転動作は左旋回である。図16から図18で説明する挙動例は、図15に示す左カーブ通過時を例にとって説明する。
図15に示す道路は、曲率0(直線)の第一区間(~A)と、曲率が徐々に大きくなる(曲率単調増加:左右加速度増加)第二区間(A~B)と、曲率が一定(定常旋回)の第三区間(B~C)と、曲率が徐々に小さくなる(曲率単調減少:左右加速度減少)第四区間(C~D)と、曲率0(直線)の第五区間(D~)と、に分割されている。
図16に、図15のような左カーブを一定速度で通過するよう目標値22が生成された場合の、車両1の挙動と乗員の頭部ロール角74の時間変化の一例を示す。図16は、上から順に、車両1の速度71、横加速度72、ロール角73、乗員の頭部ロール角74の推移を示しており、横軸はカーブに差し掛かる直前の位置からの移動距離である。一点鎖線はそれぞれ図15に示す区間A~Dの位置に対応する。
先ず、速度71は、一定速度で通過した場合を示しているため常に一定値で推移している。このような速度推移で走行すると、車両1に発生する横加速度72は、第二区間(A~B)で曲率が徐々に大きくなるとともに増加し、曲率が一定(定常旋回)の第三区間(B~C)では一定値で推移し、曲率が徐々に小さくなる第四区間(C~D)では徐々に減少する。ロール角73も横加速度72とほぼ同様に推移する。
なお、横加速度72は、車両1が進行方向に対して左方向に移動した場合、つまり、車両1が左方向に旋回した場合を正と定義し、この時に演算されるロール角73も正(進行方向に対して時計回り)、つまり、旋回外側(右側)方向へのロールとなる。
このような車両挙動において、乗員の頭部ロール角74の推移の一例を示すと図16の最下段のようになる。車両1が左カーブに差し掛かると、乗員52の頭部は横方向の慣性加速度を知覚する。また、慣性により旋回外側に動揺することで、頭部ロール角74が生じる。この時、同じ車両挙動(横加速度・ロール角)でも、乗員によっては、或いは、同じ乗員でも乗車中のタスクによっては、頭部の揺動が異なる。すなわち、頭部が揺動しにくい乗員Aの頭部ロール角は74aのように推移し、頭部が揺動しやすい乗員Bの頭部ロール角は74bのように推移する。動揺病感受性指数27の一つであるMSIの原理によれば、後者の乗員Bが動揺病を発症しやすいことになる。
図17は、車両運動26として速度71を変更する例を示したものである。上から順に、車両1の速度71、横加速度72、乗員の頭部ロール角74の推移を示しており、横軸はカーブに差し掛かる直前の位置からの移動距離である。一点鎖線はそれぞれ図15に示す区間A~Dの位置に対応する。
頭部が揺動しにくい乗員Aに対しての挙動、すなわち速度71a、横加速度72a、乗員の頭部ロール角74aの挙動は図16と同様である。それに対し、頭部が揺動しやすい乗員Bが乗車中に同様の速度71aで左カーブを通過すると、頭部ロール角は74bのように74aより高い値となる。従って、車両運動生成部25は速度を71bのように低減する車両運動26を生成する。
具体的には、カーブに差し掛かる前に十分減速する前後加速度(不図示)を車両運動26として生成する。これにより、カーブ通過中の横加速度が72bのように低減され、頭部ロール角は74bが74aと同等の74´bとなる。すなわち、動揺病の感受性が高い乗員Bに対してはカーブ通過時の速度を低減することで、それに起因する頭部の揺動が抑えられることで動揺病の発症が抑制される。
図18は、車両運動26として横加速度の時間変化に比例する前後加速度を発生させ、乗員Bの頭部揺動低減を図る例を示したものである。上から順に、車両1の速度71、横加速度72、前後加速度77、乗員の頭部ロール角74の推移を示しており、横軸はカーブに差し掛かる直前の位置からの移動距離である。一点鎖線はそれぞれ図15に示す区間A~Dの位置に対応する。頭部が揺動しにくい乗員Aに対する速度71a、横加速度72a、乗員の頭部ロール角74aの推移は図17と同様のため説明を省略する。また、被験者Aに対する前後加速度77aは図14と同様、常に0であるため図示を省略している。
それに対し、頭部が揺動しやすい乗員Bに対しては、まず図17と同様に71bに示すように速度を低減すると、図17と同様にカーブ通過中の横加速度が72bのように低減され、頭部ロール角は74bが74aと同等となる。この時、前後加速度は77bに示すように、カーブに差し掛かる前(A地点より前)に減速方向に発生し、カーブを抜けた後(D地点より後)に加速方向に発生する。
一方、本発明では速度を71b´に示すように推移させる。すなわち、緩和曲線走行中のA~B区間において速度を落とし、B~Cの曲率一定の区間では速度を一艇に保ち、緩和曲線走行中のC~D区間において速度を上げる。この時、71bに比べて71b´はカーブ区間(B~C区間)における通過速度が増加し、その結果、横加速度も72bより高い72b´となる。前後加速度77b´を見ると、A~B区間で横加速度72b´が増加するのに比例した減速方向の前後加速度が発生し、C~D区間で横加速度72b´が減少するのに比例した加速方向の前後加速度が発生している。このような挙動をすることにより、カーブ通過速度が高いにもかかわらず、頭部ロール角は74b´が74bと同等となる。
以上、乗員の頭部ロール角74を低減させるために、横加速度72の時間変化に平井した前後加速度77を発生させることを例にとって説明したが、前後加速度77の代わりに、サスペンション15等のアクチュエータで車両に前傾方向のピッチ角を発生させることでも同様の効果が得られると想定される。したがって、車両運動生成部25が車両運動26としてピッチ角を生成する構成であってもよい。
以上説明したように、本実施例の車両制御装置2によれば、前後方向と横方向の関連性に着目した車両運動26を生成することにより、従来技術に比べてカーブ通過時の車両速度低下を抑え、目的地までの速達性という利便性を保ちつつ、乗員の動揺病発症率を抑圧する。乗員により異なる頭部揺動モデル28を持つことにより、乗員の動揺病感受性に関する個人差に対応し、動揺病を効果的に低減する車両運動目標値を生成する車両制御装置を提供することが可能となる。
なお実施例1の説明は、自動運転を行うことを前提とし、目的地に至る経路における運動量の変化(目標値生成)が予め知られているものとしており、図4の頭部動揺予測モデル28は将来時点の頭部動揺を予測するものとしているが、図4の実現は現在時点での対応とすることも可能である。現在時点の運動量の変化が乗員に与える頭部動揺を計算して、現在時点の制御に反映する形式での実現も可能である。
図19から図22を参照して、本発明の実施例2に係る車両制御装置及び車両統合制御方法について説明する。
実施例1では、車両制御装置2の内部に頭部揺動予測モデル28を有し、その内部に記憶されているパラメータが乗員により異なるという構成を示した。一方、本発明を図3aに示したような自動運転の相乗りバス等で実施することを考えると、不特定多数の乗員(乗客)が乗車することが想定される。このような場合に乗員の動揺病をより効果的に低減することを考慮すると、乗員ごとにパラメータを学習することが望ましい。そのためには、頭部揺動予測モデル28が乗員ごとにパラメータを同定する構成構成であっても良い。
図19は、実施例2の車両制御装置2の機能ブロック図である。本実施例の車両制御装置2は、図20に示すように、少なくとも目標値生成部21、乗員特性取得部23、車両運動生成部25、頭部揺動予測モデル28から構成されている。目標値生成部21は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
乗員特性取得部23は、図3a及び図3bで説明したように、乗員特性24(乗員の乗車姿勢や頭部姿勢等)を取得する。例えば図3a及び図3bのように、車両1の車室内に乗員特性取得部23としてカメラを搭載し、乗員の頭部の動きを計測して動揺病(乗り物酔い)の発症しやすさ(感受性)を推定する。或いは、乗車中の乗員の動揺病(乗り物酔い)感受性に関わる情報を、乗員が所有する携帯端末から取得する仕組みを備えても良い。
乗員特性24の一例として、車両1に乗車している乗員52の頭部に関する最大6軸の運動量が挙げられる。ここでは特に、頭部のロール角とピッチ角の少なくとも1つが取得されることが必要となる。取得方法としては、例えば図3a及び図3bに示したように、車室内に搭載されたカメラの映像から乗員52の頭部映像を撮影し、画像からロール角やピッチ角を認識することが一例である。なお、乗員52が能動的に頭部を動かしている場合は、その運動量を除外して、車両運動に起因した頭部運動を抽出する。
車両運動生成部25は、入力された種類の目標値22を補正し、入力されなかった種類の目標値を生成し、車両の最大6自由度の運動および姿勢(前後・左右・上下・ロール・ピッチ・ヨー)である車両運動26を出力する。乗員の頭部揺動を低減するための車両運動26を生成する点は実施例1と同様である。本実施例の車両運動生成部25は、それに加えて、後述する頭部揺動予測モデル28が乗員の頭部揺動特徴を学習するための車両運動26´を生成する役割を有する。
頭部揺動予測モデル28は、車両運動生成部25より暫定または最終的な車両運動26´を受領し、乗車中の乗員について車両運動26´により発生しうる頭部揺動(乗員頭部の6軸の運動量および姿勢角)の予測値を将来にわたって算出する物理モデルを有する。その機能は実施例1と同様であるが、本実施例の頭部揺動予測モデル28は、それに加えて、乗員特性取得部23により取得された乗員特性24と車両運動26´を用いて、頭部揺動モデルのパラメータを現在乗車中の乗員に適合する機能を有する。
なお、頭部揺動予測モデル28は、コンバインセンサ4から取得した、最大6軸の車両運動(前後、左右、上下の各加速度、及び、ロール、ピッチ、ヨーの各レートの各検出値)を車両運動26´として用いてもよい。一般的な車両1に搭載されているコンバインセンサ4は、前後、左右の各加速度とヨーレイトの計3軸が取得されることが一般的である。この場合は、これら3軸の車両運動と速度71、ステアリング機構14から操舵角を取得することで、ロール及びピッチのレートまたは角度を推定する構成であっても良い。
図20は、本実施例の車両制御装置2の処理を示すフローチャートである。本処理では、計算ステップ毎に、車両1に乗車中の乗員52に対して頭部揺動モデルのパラメータが同定完了しているか否かを判定し、同定完了でなければ同定しつつ一般的な係数で、同定完了していれば同定された係数で乗員の頭部揺動を予測する。
先ず、ステップS101において、乗員特性取得部23は、乗員52の個人を識別する。例えば、カメラ映像により、当該乗員52が過去に車両1に乗車したことがあるか否かを判定する。
次に、ステップS102において、頭部揺動予測モデル28は、当該乗員52に関し、頭部揺動モデルが学習済みか否かを判定する。すなわち、頭部揺動予測モデル28内に当該乗員52のバネ係数、ダンパ係数が記憶されているか否かを判定する。
当該乗員52の頭部運動モデルを学習済みでない場合(No)、ステップS103において、頭部揺動予測モデル28は車両運動26´を取得する。さらにステップS104において、乗員特性取得部23は当該乗員52の頭部揺動を取得する。そして、ステップS105において、頭部揺動予測モデル28は、取得した車両運動26´および乗員52の頭部揺動に基づき、当該乗員52の頭部揺動モデルパラメータを同定する。その後、ステップS106において、同定完了したか否かを判定する。ここで、同定には所定時間分の車両運動及び乗員52の頭部揺動の時系列情報を要する。したがって、学習開始から所定時間経過したか否かが主な判定基準となる。
ステップS106において、同定が完了していないと判定した場合(No)、ステップS107において、頭部揺動予測モデル28は、一般的な人体のバネ係数、ダンパ係数を用いて乗員52の頭部揺動を予測する。この時、車両運動生成部25は必要に応じて、学習に必要な特別な車両運動26´を生成する。その詳細は後述する。
一方、ステップS102において、当該乗員52の頭部揺動モデルを学習済みである場合(Yes)、もしくは、ステップS106において、同定が完了していると判定した場合(Yes)、ステップS108において、同定されたバネ係数、ダンパ係数を用いて乗員52の頭部揺動を予測する。
そして、ステップS109において、車両運動生成部25は、同定した乗員52の頭部揺動モデルパラメータに基づき、車両運動26を算出する。
図20に示す上記一連の処理において、乗員が複数人であることを想定する。例えば乗員Aは車両1を常時使用しており、従って乗員Aの頭部学習モデルは形成済みであり、乗員B、Cは車両1を未使用であるが乗員Bについては速やかに短時間での学習ができたのに対し、乗員Cは短時間での学習ができなかったので、一般人扱いとしてのモデルでの推定とされたものとする。この例によれば、乗員毎に適切な頭部揺動予測モデルが形成されて、個人差を反映した形での運転が実現されていることが明らかである。
図21を用いて、車両運動生成部25が頭部揺動予測モデル28における学習のための車両運動26´を生成する一例を説明する。図21は、図16と同様、図15で示す左カーブを一定速度で通過することを想定した場合の、車両運動生成部25が生成する車両運動26´および車両1の挙動と乗員の頭部ロール角74の時間変化の一例を示す。図21は、上から順に、車両1の横加速度72、横加加速度76、前後加速度77(車両運動26´)、乗員の頭部ロール角74の推移を示しており、横軸はカーブに差し掛かる直前の位置からの移動距離である。一点鎖線はそれぞれ図15に示す区間A~Dの位置に対応する。
図21において、横加速度72の推移は図16と同様である。この時、横加速度72の時間微分である横加加速度は76のような推移となる。頭部揺動予測モデル28がまだ学習済みでない場合、車両運動生成部25は車両運動26´として、図21に示す前後加速度77を生成する。これは図8で述べたGVCの車両運動特徴と同様に、横加加速度76の絶対値に比例した前後加速度である。比例係数であるGVCゲイン66を乗員に合わせた最適値に設定することが本発明の特徴であるが、ここでは学習前であるため、GVCゲイン66は初期値を設定する。
前記初期値の設定はさまざまな方法が適用可能である。例えば、多くの乗員に対する頭部揺動モデルの学習結果をデータベースとして保有している場合、最も頭部動揺が発生しやすい乗員に適合したGVCゲイン66を初期値として設定するのが一例である。あるいはそれぞれの乗員に適合するGVCゲイン66の平均値に設定する、あるいは最大値に設定する等が選択肢である。頭部揺動モデルの学習をより効果的に行うためには、GVCゲイン66を大きく設定することが一般に望ましい。また、何らかの理由で学習が行えない場合、例えば乗員特性24が取得できなかった場合、あるいは乗員特性取得部23が存在せず、乗員の個人を特定する手段がない場合、GVCゲイン66は初期値を設定し続けることになる。
図21における横加速度72、前後加速度77および乗員の頭部ロール角74の時間推移が得られることで、頭部揺動予測モデル28は物理パラメータを同定する。具体的には、数式2で示したK、C、Lの各パラメータと、図12で示した前後加速度によるK、C、Lの変化の特徴を同定する。例えば図7で示した通り、横加速度72に対して頭部ロール角74の振幅が小さく出る乗員ほど、前記パラメータは大きい値として同定されやすい。また、GVCゲイン66が大きいほど頭部ロール角74の振幅が小さくなる乗員は、前後加速度によるK、C、Lの変化の特徴が右肩上がりの特性として同定されやすい。
図22を用いて、GVCゲイン66の初期値として、それぞれの乗員に適合するGVCゲイン66の最大値に設定した場合の、学習によるGVCゲイン66の推移の例を説明する。図22は、高速道路のような直線的な道路において、図7に示すような車線変更が繰り返し発生する場合の、車両運動生成部25が生成する車両運動26および車両1の挙動と乗員の頭部ロール角74の時間変化の一例を示す。図22は、上から順に、車両1の横加速度72、前後加速度77(車両運動26)、乗員の頭部ロール角74、GVCゲイン66の推移を示しており、横軸は頭部揺動モデル28が乗車中の乗員に対して学習を開始した時点からの経過距離である。ここでは車線変更が繰り返し発生しており、説明の便宜上、左から順に車線変更が発生するごとにA~Gの符号をつけている。横加速度72の振幅や周期は車線変更ごとに毎回同じとする。なお、車線変更DとEの間は長時間の経過を想定しており、この間にも複数回、車線変更が発生することを想定する。また、それぞれの符号間にも車線変更が複数回発生してもよく、その場合、符号間における各時間推移はその左に位置する符号の時間推移と同じ推移を繰り返すか、両符号間の時間変化を補完するように時間推移する。
まず、車線変更Aの時点では頭部揺動予測モデル28が学習を開始したばかりであり、車両運動生成部25におけるGVCゲイン66は初期値としてそれぞれの乗員に適合しうるゲインの最大値に設定する。この時、横加速度72の振幅に対し、前後加速度は負の方向に最大の大きさとなる。そして、乗員の頭部ロール角が同時刻に74の通り発生する。
次に、車線変更Bの時点で、頭部揺動予測モデル28の学習のため、車両運動生成部25はGVCゲイン66を一段階減少させる。その結果、前後加速度の負の方向の大きさも一段階減少する。この時、図示の通り乗員の頭部ロール角の振幅が車線変更A時点に比べて小さかった場合、頭部揺動予測モデル28はK、C、Lの各パラメータを同定するとともに、前後加速度によるK、C、Lの変化の特徴は水平に近い(あまり右肩上がりにはならない)特性として同定する。その結果、学習が完了した後の車線変更CおよびDにおいては、GVCゲイン66はさらに一段階減少し、前後加速度もあまり発生しないようになる。その後、このGVCゲイン66を当該乗員に適合するパラメータとして所定時間の間維持をする。
一方、当該乗員がある時間、車両1に乗車し続けた場合に、当該車両の挙動の特徴をつかむことで頭部の揺動の出方が経時変化することがありうる。この事象は、長時間の乗車による慣れで当該乗員の動揺病感受性が低下したり、前後と左右の運動の特徴をつかむことによって前後加速度発生時により頭部の揺動を抑えるような能動的な動きをしやすくなったりすること等により生じる。そこで、所定時間経過後に頭部揺動予測モデル28は再学習のプロセスを実行する構成であってもよい。
図22の車線変更E以降は前記再学習の挙動を示している。まず、車線変更Eの時点では車両運動生成部25におけるGVCゲイン66は初期値としてそれぞれの乗員に適合しうるゲインの最大値に再度設定する。この時、横加速度72の振幅に対し、前後加速度77は負の方向に最大の大きさとなる。そして、乗員の頭部ロール角が同時刻に74の通り発生する。
次に、車線変更Fの時点で、頭部揺動予測モデル28の学習のため、車両運動生成部25はGVCゲイン66を一段階減少させる。その結果、前後加速度の負の方向の大きさも一段階減少する。この時、図示の通り乗員の頭部ロール角の振幅が車線変更E時点に比べて大きくなった場合(車線変更B時点とは逆の変化)、頭部揺動予測モデル28はK、C、Lの各パラメータを同定するとともに、前後加速度によるK、C、Lの変化の特徴は右肩上がりの特性として同定する。その結果、学習が完了した後の車線変更Gにおいては、GVCゲイン66は再び増加し、前後加速度を積極的に発生させるようになる。その後、このGVCゲイン66を当該乗員に適合するパラメータとして所定時間の間維持をする。
このように、頭部揺動の特徴がまだ不確定な乗員が新たに乗車した際に、学習に必要な特定の車両運動を発生させ、その時の横加速度72、前後加速度77および乗員の頭部ロール角74の関係から、頭部揺動予測モデル28は当該乗員の頭部揺動特徴を学習可能である。
以上説明したように、本実施例の車両制御装置2によれば、不特定多数の乗員52の頭部揺動がどのように発生するかを、個人差も含めて予測し、車両運動を変更することで、より効果的に乗員52の動揺病を低減することが可能となる。
図23および図24を参照して、本発明の実施例3に係る車両制御装置及び車両統合制御方法について説明する。
実施例1及び実施例2では、車両制御装置2は車両運動26を出力し、車両運動26に基づいて各アクチュエータ12~15もしくは下位の制御器の操作量を決定する構成となっているが、手動運転でかつ制御指令を受容可能なアクチュエータが乏しい車両の場合、車両運動26の代わりにドライバ53に対し、実施例1および2で説明した車両運動26と同等の車両運動を、ドライバ53が手動操作により実現するよう支援する構成であってもよい。
図23は、実施例3の車両制御装置2の機能ブロック図である。本実施例の車両制御装置3は、図23に示すように、少なくとも目標値生成部21、情報提示生成部81、頭部揺動モデル28から構成されている。目標値生成部21、頭部揺動モデル28は実施例1および2と同様であるため、説明を省略する。
情報提示生成部81は、乗り心地の改善や動揺病低減を考慮した車両運動をドライバに生成させるよう促す情報を提示する。実施例1や2と同様に頭部揺動予測モデル28が算出する乗員の頭部揺動特徴29に基づき、動揺病感受性指数27を最適化するような車両運動の目標を生成す、その目標通りの運転行動を促すようにドライバに情報を提示する。
図24a、図24bを用いて、情報提示の方法および挙動の一例を説明する。図24aは車両1として手動運転する自動車を想定し、ドライバ53がアクセルペダル16を踏んで車両1の加減速を制御する様子を示す模式図である。この時、情報提示の方法の一例は、このアクセルペダル16に対して反力(ドライバの踏む力にあらがう力)をアクティブに発生させることである。
図24bは挙動の一例を示す。本図は図15で示した左カーブを、図16と同様の車両挙動で走行する場合を示している。横加速度72の挙動は図16と同様である。この時、アクセルペダル16に対する反力の時間推移を情報提示83として、ドライバの踏む力にあらがう力を正方向にとってプロットすると図24bの下図のようになる。すなわちGVCと同様に、緩和曲線を走行中のA地点とB地点の間で反力を正方向に発生させる。これにより、ドライバのアクセルオフを促し、エンジンブレーキによる前後加速度の発生を促す。逆にC地点とD地点の間では反力を減少(負の方向に発生)させ、前後加速度の発生を促す。ただしドライバに対して加速を促すことは、道路状況次第ではリスクを伴う可能性があるため、本情報提示は減速側(A地点とB地点の間)のみで生じるように実施してもよい。
なお、ここではアクセルペダル16に対する反力を変化させる例について説明したが、これ以外の情報提示方法にも適用可能である。例えばブレーキペダルに対する反力を変化させてもよい。この場合、緩和曲線を走行中のA地点とB地点の間で反力を減少(負方向に増加)させることでブレーキを促すことが可能である。それ以外にも、音声による提示などが可能である。
以上説明したように、本実施例の車両制御装置2によれば、手動運転でかつ制御指令を受容可能なアクチュエータが乏しい車両においても、実施例1および2で述べた効果を発揮する車両運動をドライバに生成させるよう支援することが可能となる。
以上、実施例1~3について、乗員が1人乗車している場合について述べたが、乗員が同じ車両1の車室内に複数いる場合には、動揺病を起こしやすい人に対して効果のある車両運動を実現しつつ、そうでない人が逆に動揺病を起こさないように留意して車両運動を生成させる必要がある。例えば図12に示す乗員Aと乗員Bが同時に乗っていた場合(図3aのような状況)、乗員Aは前後加速度の発生によりかえって頭部のロール剛性(バネ定数K)が小さくなる可能性があるため、車両運動を行った結果として両名の頭部揺動(ロール角の振幅)がほぼ同じになるようにGVCゲインを決めることが一例である。
以上、実施例1~3について、乗員が前向きに乗車している場合について述べたが、図3aのように後ろ向きで乗車する場合、あるいは横向きに乗車する場合もありうる。特に乗員が横を向いている場合、乗員にとっての前後(ピッチ)方向の頭部揺動と、車両の横(ロール)方向の運動に関係がある場合もありうる。したがって、本発明は、乗員の横方向の頭部揺動と前後方向の車両運動の関係だけでなく、乗員の前後方向の頭部揺動と横方向の車両運動など、他の組み合わせに対しても有効である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1:車両、11:車輪、12:モータ、13:ブレーキ機構、13a:ホイルシリンダ、13b:制動制御装置、14:ステアリング機構、14a:操舵制御装置、14b:操舵用モータ、15:サスペンション、16:アクセルペダル、16a:ストロークセンサ、16b:加速制御装置、17:ブレーキペダル、18:ハンドル、18a:操舵トルク検出装置、18b:操舵角検出装置、18d:操舵用モータ、19:外界センサ、2:車両制御装置、21:目標値生成部、22:目標値、23:乗員特性取得部、24:乗員特性、25:車両運動生成部、26:車両運動、27:動揺病感受性指数、28:頭部揺動予測モデル、29:頭部揺動特徴、3:外部制御装置、4:コンバインセンサ、51:座席、52:乗員、53:ドライバ、61:頭部揺動モデルのバネ、62:頭部揺動モデルのダンピング、63:頭部揺動モデルの慣性、64:頭部揺動モデルの慣性の変位、65:頭部揺動モデルのバネ係数K、66:GVCゲイン、71:速度、72:横加速度、73:ロール角、74:乗員の頭部ロール角、75:走行軌道、76:横加加速度、77:前後加速度、78:乗員の頭部ロールレイト、79:リサージュ波形(車両ロールレイトと乗員頭部ロールレイト)、81:情報提示生成部、82:情報提示

Claims (16)

  1. 第1の方向の車両運動に起因する乗員の前記第1の方向の頭部揺動に対して、前記第1の方向とは異なる第2の方向の車両運動が、前記乗員の前記第1の方向の頭部揺動に与える変化を求める頭部揺動予測モデルと、前記頭部揺動予測モデルに基づき車両運動を生成する車両運動生成部と、を備えることを特徴とする車両制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両制御装置であって、
    前記頭部揺動予測モデルは、前後またはピッチ方向の車両運動が発生した際に、前記頭部揺動のうち左右またはロール方向の揺動減少を求めることを特徴とする車両制御装置。
  3. 請求項1に記載の車両制御装置であって、
    前記車両運動生成部は、車両の横加速度発生時に、前後方向の車両運動を発生させることを特徴とする車両制御装置。
  4. 請求項1に記載の車両制御装置であって、
    前記頭部揺動予測モデルに、前記車両運動に対応した乗員ごとの頭部揺動の特性を学習する頭部揺動特性学習部を備えることを特徴とする車両制御装置。
  5. 請求項4に記載の車両制御装置であって、
    前記頭部揺動特性学習部は、予め定められた所定の車両運動を発生させた際に取得される頭部姿勢に基づいて、乗員の頭部揺動の特性を学習することを特徴とする車両制御装置。
  6. 請求項5に記載の車両制御装置であって、
    前記車両運動生成部は、前記頭部揺動特性学習部における前記所定の車両運動として、車両の前後方向及びピッチ方向の少なくとも一方と、ロール方向とを組み合わせた車両運動を生成することを特徴とする車両制御装置。
  7. 請求項4に記載の車両制御装置であって、
    前記頭部揺動特性学習部は、乗員が採り得る乗車姿勢のパターンごとに区別して、前記車両運動に対応した乗員の頭部揺動の特性を学習することを特徴とする車両制御装置。
  8. 請求項4に記載の車両制御装置であって、
    前記頭部揺動特性学習部は、学習前は予め定められたパラメータを設定し、学習により前記予め定められたパラメータを乗員ごとに修正することを特徴とする車両制御装置。
  9. 請求項8に記載の車両制御装置であって、
    前記予め定められたパラメータとして大きいパラメータ値を設定し、学習によって前記大きいパラメータ値を小さい方向に修正することを特徴とする車両制御装置。
  10. 請求項9に記載の車両制御装置であって、
    前記予め定められたパラメータとして記大きいパラメータ値を設定し、学習によって前記大きいパラメータ値を小さい方向に修正して学習を完了した後、前記修正されたパラメータ値を再度大きい方向に修正することを特徴とする車両制御装置。
  11. 請求項8に記載の車両制御装置であって、
    前記予め定められたパラメータとして、統計的に得られるパラメータの平均値を設定することを特徴とする車両制御装置。
  12. 請求項8に記載の車両制御装置であって、
    前記予め定められたパラメータを修正して学習を完了し、修正されたパラメータに基づいて所定時間経過走行した後、前記修正されたパラメータを再度修正することを特徴とする車両制御装置。
  13. 請求項1に記載の車両制御装置であって、
    前記第2の方向の車両運動をドライバに促す表示装置(操作装置への反力生成手段)を備えることを特徴とする車両制御装置。
  14. 請求項1に記載の車両制御装置であって、
    複数の乗員がいる場合には、乗員ごとに予測した頭部運動の最大発生量が最小となる車両運動にすることを特徴とする車両制御装置。
  15. 第1の方向の車両運動に起因する乗員の前記第1の方向の頭部揺動に対して、前記第1の方向とは異なる第2の方向の車両運動が、前記乗員の前記第1の方向の頭部揺動に与える変化を求めて、前記第2の方向の車両運動を抑制するように車両制御することを特徴とする車両制御方法。
  16. 左右方向の車両運動に起因する乗員の前記左右方向の頭部揺動に対して、前後方向の車両運動が、前記乗員の前記左右方向の頭部揺動に与える変化を求めて、前記前後方向の車両運動を抑制するように車両制御することを特徴とする車両制御方法。
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