JP2023128656A - 繊維強化複合成形体用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】曲げ強度、せん断強度等の機械特性およびこれらの長期耐久性ならびに難燃性に優れる繊維強化複合体用樹脂組成物を提供する。【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)70~99重量部および(B)ホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼン(B成分)30~1重量部を含有することを特徴とする繊維強化複合成形体用樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、繊維強化複合成形体用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、強度の長期耐久性、難燃性に優れ、電気・電子部品、家庭電化製品、自動車関連部品、インフラ関連部品、住設関連部品等に好適な繊維強化複合成形体用樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート及びカーボネート単位含有共重合体は、繊維含有構造体を有する積層体においてマトリックス層として利用されている。ポリカーボネート及び繊維構造体に基づく積層体は、熱成形、ネットシェイプ延伸、深絞りなどにより、様々な構造体へと成形することができる。こうした積層構造体は、自動車部品、一般工業用材料、電子機器、医療用デバイスなどをはじめとする様々な用途に利用することができる。こうした積層構造体は安全上の観点から難燃性、製品寿命の長期化による環境負荷低減の観点から長期使用における性能保持性が極めて重要視されてきている。
ポリカーボネート樹脂をマトリクス樹脂とする繊維強化複合成形体に難燃性を付与する手段として、ホスファゼン化合物を添加する方法が知られている(特許文献1、2)。
しかしながら、ホスファゼン化合物を添加した場合、高温、高湿環境下における強度低下が生じる課題があるため、難燃性と長期耐久性を両立する繊維強化複合成形体用樹脂組成物が求められている。
特表2021-506616号公報 特開2016-008295号公報
上記に鑑み、本発明の目的は、曲げ強度、せん断強度等の機械特性およびこれらの長期耐久性、難燃性に優れる繊維強化複合成形体用樹脂組成物を提供することである。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂およびホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼンを含有している熱可塑性樹脂と補強用繊維を複合化することで、機械強度の長期耐久性、難燃性に優れた繊維強化複合成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、上記課題は、下記1~7項により達成される。
1.(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)70~99重量部および(B)ホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼン(B成分)30~1重量部を含有することを特徴とする繊維強化複合成形体用樹脂組成物。
2.A成分とB成分の合計量100重量部に対し、(C)密着改良剤(C成分)を0.1~20重量部含有する前項1に記載の繊維強化複合成形体用樹脂組成物。
3.C成分が1分子中にエポキシ基、カルボン酸基および酸無水物基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1種類有する有機化合物である前項1または2に記載の繊維強化複合成形体。
4.C成分がグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートおよびスチレン-マレイン酸樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の有機化合物である前項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合成形体用樹脂組成物。
5.請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物と補強用繊維と複合体である繊維強化複合成形体。
6.補強用繊維を構成する繊維が、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも一種の繊維である前項5に記載の繊維強化複合成形体。
7.補強用繊維が補強用繊維シート形状であり、樹脂組成物が樹脂組成物シート形状であって、補強用繊維シートと樹脂組成物シートとの積層体である前項5または6に記載の繊維強化複合成形体。
本発明の繊維強化複合成形体用樹脂組成物を含有する繊維強化複合体は、機械強度の長期耐久性、難燃性に優れ、電気・電子部品、家庭電化製品、自動車関連部品、インフラ関連部品、住設関連部品等に有用であり、その奏する産業上の効果は格別である。
本発明における積層体の断面図の模式図である。 本発明における繊維強化複合成形体の断面図の模式図である。 LFT-D装置の概略図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
<積層体>
<A成分:ポリカーボネート樹脂>
本発明において使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
本発明では、汎用のポリカーボネート樹脂であるビスフェノールA系のポリカーボネート樹脂以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ-ト樹脂をA成分として使用することが可能である。
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis-TMC”と略称することがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ-ト樹脂(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)~(3)の共重合ポリカーボネート樹脂であるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBCFが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
(2)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10~95モル%(より好適には50~90モル%、さらに好適には60~85モル%)であり、かつBCFが5~90モル%(より好適には10~50モル%、さらに好適には15~40モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
(3)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBis-TMCが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
これらの特殊なポリカーボネート樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂と混合して使用することもできる。これらの特殊なポリカーボネート樹脂の製法及び特性については、例えば、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報及び特開2002-117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種のポリカーボネート樹脂の中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05~0.15%、好ましくは0.06~0.13%であり、かつTgが120~180℃であるポリカーボネート樹脂、あるいは
(ii)Tgが160~250℃、好ましくは170~230℃であり、かつ吸水率が0.10~0.30%、好ましくは0.13~0.30%、より好ましくは0.14~0.27%であるポリカーボネート樹脂。
ここで、ポリカーボネート樹脂の吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62-1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の樹脂組成物に、ドリップ防止性能などを付与できる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、2価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.01~1モル%、より好ましくは0.05~0.9モル%、さらに好ましくは0.05~0.8モル%である。また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造単位が生ずる場合があるが、かかる分岐構造単位量についても、2価フェノールから誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマー固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献および特許公報などで良く知られている方法である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するにあたり、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、特に限定されないが、好ましくは1.8×10~4.0×10であり、より好ましくは2.0×10~3.5×10、さらに好ましくは2.2×10~3.0×10である。粘度平均分子量が1.8×10未満のポリカーボネート樹脂では、良好な機械的特性が得られない場合がある。一方、粘度平均分子量が4.0×10を超えるポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る。
なお、前記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が前記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。殊に、前記範囲(5×10)を超える粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、樹脂のエントロピー弾性が向上する。その結果、強化樹脂材料を構造部材に成形する際に使用されることのあるガスアシスト成形、および発泡成形において、良好な成形加工性を発現する。かかる成形加工性の改善は前記分岐ポリカーボネート樹脂よりもさらに良好である。より好適な態様としては、A成分が粘度平均分子量7×10~3×10のポリカーボネート樹脂A-1-1成分)、および粘度平均分子量1×10~3×10の芳香族ポリカーボネート樹脂(A-1-2成分)からなり、その粘度平均分子量が1.6×10~3.5×10であるポリカーボネート樹脂(A-1成分)(以下、“高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂”と称することがある)も使用できる。
かかる高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂(A-1成分)において、A-1-1成分の分子量は7×10~2×10が好ましく、より好ましくは8×10~2×10、さらに好ましくは1×10~2×10、特に好ましくは1×10~1.6×10である。またA-1-1-2成分の分子量は1×10~2.5×10が好ましく、より好ましくは1.1×10~2.4×10、さらに好ましくは1.2×10~2.4×10、特に好ましくは1.2×10~2.3×10である。
高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂(A-1成分)は前記A-1-1成分とA-1-2成分を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、A-1成分100重量%中、A-1-1成分が2~40重量%の場合であり、より好ましくはA-1-1成分が3~30重量%であり、さらに好ましくはA-1-1成分が4~20重量%であり、特に好ましくはA-1-1成分が5~20重量%である。
また、A-1成分の調製方法としては、(1)A-1-1成分とA-1-2成分とを、それぞれ独立に重合しこれらを混合する方法、(2)特開平5-306336号公報に示される方法に代表される、GPC法による分子量分布チャートにおいて複数のポリマーピークを示す芳香族ポリカーボネート樹脂を同一系内において製造する方法を用い、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を本発明のA-1成分の条件を満足するよう製造する方法、および(3)かかる製造方法((2)の製造法)により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂と、別途製造されたA-1-1成分および/またはA-1-2成分とを混合する方法などを挙げることができる。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
尚、本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。すなわち、該組成物を、その20~30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mを算出する。
本発明のポリカーボネート樹脂としてポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を使用することも出来る。ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は下記一般式(1)で表される二価フェノール単位および下記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン単位を含有する共重合樹脂であることが好ましい。
[上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、a及びbは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。]
(上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、cは1~10の整数、dは4~7の整数である。)
[上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、e及びfは夫々1~4の整数であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。]
一般式(1)で表されるカーボネート構成単位を誘導する二価フェノール(I)としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
なかでも、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(3)で表されるカーボネート構成単位において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に好ましくは水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基が特に好ましい。R及びR10は夫々独立して好ましくは水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基であり、水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。上記一般式(3)で表されるカーボネート構成単位を誘導するジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)としては、例えば下記一般式(I)に示すような化合物が好適に用いられる。
p+qは4~120が好ましく、30~120がより好ましく、30~100がさらに好ましく、30~60が最も好ましい。
次に、上記の好ましいポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法について以下に説明する。あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のクロロホルメートおよび/または末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調製する。クロロホルメート形成性化合物としてはホスゲンが好適である。
二価フェノール(I)からのクロロホルメート化合物を生成するにあたり、上記一般式(1)で表されるカーボネート構成単位を誘導する二価フェノール(I)の全量を一度にクロロホルメート化合物としてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。このクロロホルメート化合物生成反応の方法は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。更に、所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、およびハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよく、添加することが好ましい。クロロホルメート形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、好適なクロロホルメート形成性化合物であるホスゲンを使用する場合、ガス化したホスゲンを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにピリジンの如き有機塩基、あるいはこれらの混合物などが用いられる。酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、二価フェノール(I)のクロロホルメート化合物の形成に使用する二価フェノール(I)1モルあたり(通常1モルは2当量に相当)、2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
前記溶媒としては、公知のポリカーボネートの製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレンの如き炭化水素溶媒、並びに、塩化メチレンおよびクロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレンの如きハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。
クロロホルメート化合物の生成反応における圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、もしくは減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、反応に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2~10時間で行われる。クロロホルメート化合物の生成反応におけるpH範囲は、公知の界面反応条件が利用でき、pHは通常10以上に調製される。
本発明のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造においては、このようにして二価フェノール(I)のクロロホルメートおよび末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調整した後、該混合溶液を攪拌しながら一般式(3)で表わされるカーボネート構成単位を誘導するジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を、該混合溶液の調整にあたり仕込まれた二価フェノール(I)の量1モルあたり、0.01モル/min以下の速度で加え、該ジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)と該クロロホーメート化合物とを界面重縮合させることにより、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得る。
ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、分岐化剤を二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂とすることができる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
かかる分岐化ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法は、クロロホルメート化合物の生成反応時にその混合溶液中に分岐化剤が含まれる方法であっても、該生成反応終了後の界面重縮合反応時に分岐化剤が添加される方法であってもよい。分岐化剤由来のカーボネート構成単位の割合は、該共重合樹脂を構成するカーボネート構成単位全量中、好ましくは0.005~1.5モル%、より好ましくは0.01~1.2モル%、特に好ましくは0.05~1.0モル%である。なお、かかる分岐構造量についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
重縮合反応における系内の圧力は、減圧、常圧、もしくは加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5~10時間で行われる。場合により、得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[ηSP/c]のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として取得することもできる。得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として回収することができる。
上記一般式(3)に含まれる下記一般式(4)で表されるポリジオルガノシロキサンブロックの含有量はポリカーボネート樹脂組成物の全重量を基準にして、1.0~10.0重量%であることが好ましく、1.0~8.0重量%がより好ましく、1.0~5.0重量%がさらに好ましく、1.0~3.0重量%が最も好ましい。
(上記一般式(4)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。)
<B成分:ホスファゼン>
本発明において、熱可塑性樹脂は、構成成分としてホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼンを含有する。ホスファゼンは、ハロゲン原子を含まず、分子中にホスファゼン構造を持つ化合物であれば特に限定されない。ここでいうホスファゼン構造とは、式:-P(R2)=N-[式中、R2は有機基]で表される構造を表す。ホスファゼンは一般式(5)、(6)で表される。
(式中、X、X、X、Xは、水素、水酸基、アミノ基、またはハロゲン原子を含まない有機基を表す。また、nは3~10の整数を表す。)
上記式(5)、(6)中、X、X、X、Xで表されるハロゲン原子を含まない有機基としては、例えば、アルコキシ基、フェニル基、アミノ基、アリル基などが挙げられる。
B成分であるホスファゼンはホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有することが必要である。該含有量は、好ましくは99mol%~100mol%、より好ましくは99.5mol%~100mol%の範囲である。ホスファゼン環状三量体の含有量が98.5mol%未満であると高温高湿試験後の強度保持率が低下する。
一般的なホスファゼンの製造方法は欧州特許出願公開第728811号および国際公開第97/40092号等に記載されている。
製造過程でホスファゼンは環状三量体以外に副生成物として環状四量体やそれ以上の高級なオリゴマーが生成されるが、カラムクロマトグラフィー等で精製することによりホスファゼン環状三量体の含有量を増加させることができる。
なお、ホスファゼン中のホスファゼン環状三量体の含有量は、31PNMR(化学シフト、δ三量体6.5~10.0ppm、δ四量体-10~-13.5ppm、δより高級なオリゴマー-16.5~-25.0ppm)によって定量できる。
B成分の含有量はA成分とB成分の合計量100重量部中、1~30重量部であり、好ましくは3~25重量部であり、5~20重量部がより好ましい。B成分の含有量が1重量部未満であると難燃化の効果が得られず、30重量部を超えると高温高湿試験後の強度保持率が低下する。
<C成分:密着性改良剤>
本発明のC成分として好ましく使用される密着性改良剤はA成分とB成分との密着性を向上させる化合物である。その中でも1分子中にエポキシ基、カルボン酸基および酸無水物基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1種類有する有機化合物が好ましく使用される。
本発明においては、本発明の効果である曲げ強度・層間せん断強度・長期耐久性改善効果を顕著に発現させるために、上記の有機化合物を含有することが好ましい。樹脂組成物中に、上記の有機化合物を配合することにより、A成分とB成分との密着性を強固にせしめることが可能となり、これにより曲げ強度・層間せん断強度・長期耐久性改善効果が顕著に発現する。
エポキシ基含有化合物としては、エポキシ基を含有する有機化合物であれば特に制限はないが、フェノキシ樹脂及びエポキシ樹脂を挙げることができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(7)で表わされるフェノキシ樹脂が挙げられる。
(式中、Xは下記一般式(8)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基、Yは水素原子または水酸基と反応する化合物の残基、nは0以上の整数である。)
(式中、Phはフェニル基を示す。)
上記一般式(7)において、水酸基と反応する化合物としては、エステル、カーボネート、エポキシ基などを有する化合物、カルボン酸無水物、酸ハライド、イソシアナート基などを有する化合物等を挙げることができ、エステルとしては、特に分子内エステルが好ましく、例えばカプロラクトン等が挙げられる。上記一般式(7)で表わされるフェノキシ樹脂において、Yが水素原子である化合物は、二価のフェノール類とエピクロルヒドリンから容易に製造することができる。また、Yが水酸基と反応する化合物の残基である化合物は、二価のフェノール類とエピクロルヒドリンから製造したフェノキシ樹脂と上記水酸基と反応する化合物を加熱下で混合することにより、容易に製造することができる。特に二価のフェノール類としてビスフェノールAを用いたビスフェノールA型フェノキシ樹脂が好ましい。
また、エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(9)で表わされるエポキシ樹脂が挙げられる。
(式中、Xおよびnは式(7)と同じである。)
上記一般式(9)で表わされるエポキシ樹脂は、二価のフェノール類とエピクロルヒドリンから容易に製造することができる。二価フェノール類としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンまたは4,4’-ジヒドロキシビフェニルなどが用いられる。特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
フェノキシ樹脂およびエポキシ樹脂として、市販品を用いることもできる。フェノキシ樹脂(ビスフェノールA型)の市販品としては、PKHB(Gabriel Phenoxies社製、Mw=32,000)、PKHH(Gabriel Phenoxies社製、Mw=52,000)、PKFE(Gabriel Phenoxies社製、Mw=60,000)等が挙げられる。また、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型)の市販品としては、jER1256(三菱ケミカル(株)製、Mw=50,000)等が挙げられる。
フェノキシ樹脂およびエポキシ樹脂の重量平均分子量としては特に限定されるものではないが、通常5,000~100,000、好ましくは8,000~80,000、更に好ましくは10,000~50,000である。重量平均分子量が5,000~100,000の範囲であると、特に機械的物性が良好である。
カルボン酸基含有化合物としては、カルボン酸基を含有する有機化合物であれば特に制限はないが、難燃剤に対する耐性、耐熱性、A成分との相溶性の観点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート及びポリアリレートのような芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、B成分への含浸性に優れる点から、ポリブチレンテレフタレートが最も好ましく用いられる。
本発明で好適に使用される芳香族ポリブチレンテレフタレート樹脂及び芳香族ポリエチレンテレフタレート樹脂としては、ポリエステルを形成するジカルボン酸成分とジオール成分の内、ジカルボン酸成分100モル%の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸である芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、より好ましくは90モル%以上、最も好ましくは99モル%以上が芳香族ジカルボン酸である芳香族ポリエステル樹脂である。このジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、2-クロロテレフタル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-Naスルホイソフタル酸、エチレン-ビス-p-安息香酸等があげられる。これらのジカルボン酸は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。本発明の芳香族ポリエステル樹脂には、上記の芳香族ジカルボン酸以外に、30モル%未満の脂肪族ジカルボン酸成分を共重合することができる。その具体例として、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等があげられる。本発明のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、トランス-またはシス-2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、p-キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して使用することができる。尚、ジオール成分中の二価フェノールは30モル%以下であることが好ましい。
本発明に使用される芳香族ポリブチレンテレフタレート樹脂及び芳香族ポリエチレンテレフタレート樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。更に芳香族ポリブチレンテレフタレート樹脂及び芳香族ポリエチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、バッチ式、連続重合式のいずれの方法をとることも可能である。
本発明の芳香族ポリブチレンテレフタレート樹脂及び芳香族ポリエチレンテレフタレート樹脂の分子量については特に制限されないが、o-クロロフェノールを溶媒として25℃で測定した固有粘度が0.4~1.5であるのが好ましく、特に好ましくは0.5~1.2である。
また本発明に使用される芳香族ポリブチレンテレフタレート樹脂及び芳香族ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は好ましくは5~75eq/ton、より好ましくは5~70eq/ton、さらに好ましくは7~65eq/tonである。
本発明で好適に使用される芳香族ポリアリレート樹脂としては、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と二価フェノールまたはその誘導体とから得られるものである。ポリアリレートの調製に用いられる芳香族ジカルボン酸としては、二価フェノールと反応し満足な重合体を与えるものであればいかなるものでもよく、1種または2種以上を混合して用いられる。
好ましい芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。またこれらの混合物であってもよい。
二価フェノール成分の具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’-ビス(4ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノンなどが挙げられる。これら二価フェノール成分はパラ置換体であるが、他の異性体を使用してもよく、さらに二価フェノール成分にエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを併用してもよい。
上記の中でも好ましいポリアリレート樹脂としては、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸からなり、二価フェノール成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)からなるものが挙げられる。テレフタル酸とイソフタル酸との割合は、テレフタル酸/イソフタル酸=9/1~1/9(モル比)が好ましく、特に溶融加工性、性能バランスの点で7/3~3/7が望ましい。
他の代表的なポリアリレート樹脂としては、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸からなり、二価フェノール成分がビスフェノールAおよびハイドロキノンからなるものが挙げられる。かかるビスフェノールAとハイドロキノンとの割合は、ビスフェノールA/ハイドロキノン=50/50~70/30(モル比)が好ましく、55/45~70/30がより好ましく、60/40~70/30が更に好ましい。
本発明におけるポリアリレート樹脂の粘度平均分子量は約7,000~100,000の範囲が物性および押出加工性から好ましい。またポリアリレート樹脂は界面重縮合法およびエステル交換反応法のいずれの重合方法も選択できる。
酸無水物基含有化合物としては、マレイン酸樹脂としては、マルキードシリーズ(マレイン酸樹脂、荒川化学株式会社製)、アラスターシリーズ(スチレン-マレイン酸樹脂、荒川化学株式会社製)、イソバンシリーズ(イソブチレン-無水マレイン酸ブロックコポリマー、株式会社クラレ製)などが挙げられ、耐熱性、A成分との相溶性の観点から、スチレン-マレイン酸樹脂が最も好ましく用いられる。
C成分の含有量はA成分とB成分の合計量100重量部に対し、好ましくは0.1~20重量部であり、より好ましくは1~10重量部、さらに好ましくは1~5重量部である。C成分の含有量が1重量部未満では、優れた曲げ強度・層間せん断強度および長期耐久性が得られない場合がある。また、20重量部を超えると、耐熱性が損なわるため、難燃性および長期耐久性が低下する場合がある。
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、リン系熱安定剤、フェノール系熱安定剤、イオウ含有酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、上記ホスファゼン以外の難燃剤、染顔料などが挙げられる。以下これら添加剤について具体的に説明する。
(リン系熱安定剤)
リン系安定剤としては、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、およびホスフェート化合物のいずれも使用可能である。
ホスファイト化合物としては、さまざまなものを用いることができる。具体的には例えば下記一般式〔10〕で表わされるホスファイト化合物、下記一般式〔11〕で表わされるホスファイト化合物、および下記一般式〔12〕で表わされるホスファイト化合物を挙げることができる。
[式中R31は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアルカリール基、炭素数7~30のアラルキル基、またはこれらのハロ、アルキルチオ(アルキル基は炭素数1~30)またはヒドロキシ置換基を示し、3個のR31は互いに同一または互いに異なるいずれの場合も選択でき、また2価フェノール類から誘導されることにより環状構造も選択できる。]
[式中R32、R33はそれぞれ、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアルキルアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数15~25の2-(4-オキシフェニル)プロピル置換アリール基を示す。なお、シクロアルキル基およびアリール基は、アルキル基で置換されていないもの、またはアルキル基で置換されているもののいずれも選択できる。]
[式中R34、R35は炭素数12~15のアルキル基である。なお、R34およびR35は互いに同一または互いに異なるいずれの場合も選択できる。]
ホスホナイト化合物としては下記一般式〔13〕で表わされるホスホナイト化合物、および下記一般式〔14〕で表わされるホスホナイト化合物を挙げることができる。
[式中、Ar、Arは、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアルキルアリール基、または炭素数15~25の2-(4-オキシフェニル)プロピル置換アリール基を示し、4つのArは互いに同一、または互いに異なるいずれも選択できる。または2つのArは互いに同一、または互いに異なるいずれも選択できる。]
上記一般式〔10〕で表されるホスファイト化合物の好ましい具体例としては、ジフェニルイソオクチルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイトが挙げられる。
上記一般式〔11〕で表されるホスファイト化合物の好ましい具体例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。好ましくはジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを挙げることができる。かかるホスファイト化合物は1種、または2種以上を併用することができる。
上記一般式〔12〕で表されるホスファイト化合物の好ましい具体例としては、4,4’-イソプロピリデンジフェノールテトラトリデシルホスファイトを挙げることができる。
上記一般式〔13〕で表されるホスホナイト化合物の好ましい具体例としては、テトラキス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。なかでも、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトがより好ましい。このテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトは、2種以上の混合物が好ましい。具体的には、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイトおよび、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイトの1種もしくは2種以上を併用して使用可能であるが、好ましくはかかる3種の混合物である。
上記一般式〔14〕で表されるホスホナイト化合物の好ましい具体例としては、ビス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトビス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。
このビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトは、2種以上の混合物が好ましい。具体的にはビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトの1種もしくは2種を併用して使用可能である。好ましくはかかる2種の混合物である。また、2種の混合物の場合その混合比は、重量比で5:1~4の範囲が好ましく、5:2~3の範囲がより好ましい。
一方、ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができる。好ましくはトリメチルホスフェートである。
上記のリン含有熱安定剤の中で、さらに好ましい化合物としては、以下の一般式〔15〕および〔16〕で表される化合物を挙げることができる。
[式〔15〕中、R36およびR37は、それぞれ独立して炭素原子数1~12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示す。]
[式〔16〕中、R41、R42、R43、R44、R47、R48およびR49はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、R45は、水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基を示し、およびR46は水素原子またはメチル基を示す。]
式〔15〕中、R36およびR37は、好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~8のアルキル基である。
式〔15〕で表される化合物としては具体的に、トリス(ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。特にトリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
式〔16〕で表される化合物としては具体的に、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)と2,6-ジ-tert-ブチルフェノールから誘導されるホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)とフェノールから誘導されるホスファイトが挙げられる。特に2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)とフェノールから誘導されるホスファイトが好ましい。
リン系熱安定剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.001~3.0重量部、より好ましくは0.01~2.0重量部、さらに好ましくは0.05~1.0重量部である。リン系熱安定剤の含有量が0.001重量部未満では機械特性が十分に発現せず、3.0重量部を超えても機械特性を十分に発現しない場合がある。
(フェノール系熱安定剤)
フェノール系安定剤としては、一般的にヒンダードフェノール、セミヒンダードフェノール、レスヒンダードフェノール化合物が挙げられる。ポリカーボネート系樹脂に対して熱安定処方を施すという観点で特にヒンダードフェノール化合物がより好適に用いられる。
かかるヒンダードフェノール化合物としては、具体例としては、例えばビタミンE、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを挙げることができる。これらを好ましく使用できる。
より好ましくは、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。さらに、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネートが好ましい。
(イオウ含有酸化防止剤)
ポリカーボネート樹脂組成物には、酸化防止剤としてイオウ含有酸化防止剤を使用することもできる。特に樹脂組成物が回転成形や圧縮成形に使用される場合には好適である。
かかるイオウ含有酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(β-ラウリルチオプロピオネート)エステル、ビス[2-メチル-4-(3-ラウリルチオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプト-6-メチルベンズイミダゾール、1,1’-チオビス(2-ナフトール)などを挙げることができる。より好ましくは、ペンタエリスリトールテトラ(β-ラウリルチオプロピオネート)エステルを挙げることができる。
上記に挙げたリン系安定剤、フェノール系安定剤、およびイオウ含有酸化防止剤はそれぞれ単独または2種以上併用することができる。フェノール系安定剤およびイオウ含有酸化防止剤それぞれの含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対し、0.0001~1重量部であることが好ましい。より好ましくは0.0005~0.5重量部であり、さらに好ましくは0.001~0.2重量部である。
(難燃剤:ホスファゼン以外の難燃剤)
本発明の樹脂組成物には、難燃剤を配合して難燃性を付与することができる。かかる難燃剤としては従来、熱可塑性樹脂の難燃剤として知られる各種の化合物が適用できるが、より好適には、(i)ハロゲン系難燃剤(例えば、臭素化ポリカーボネート化合物など)(ii)リン系難燃剤(例えば、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、およびホスファゼン化合物など)、(iii)金属塩系難燃剤(例えば有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、ホウ酸金属塩系難燃剤、および錫酸金属塩系難燃剤など)、(iv)シリコーン化合物からなるシリコーン系難燃剤である。尚、難燃剤として使用される化合物の配合は難燃性の向上のみならず、各化合物の性質に基づき、例えば帯電防止性、流動性、剛性、および熱安定性の向上などがもたらされる。
難燃剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対し、好ましくは0.01~30重量部であり、より好ましくは0.05~25重量部、さらに好ましくは0.08~20重量部である。難燃剤の含有量が0.01重量部未満の場合、十分な難燃性が得られない場合があり、30重量部を超えた場合、層間せん断強度および高温高湿試験後の強度保持率の低下が大きい場合がある。
(ドリップ防止剤)
本発明の樹脂組成物には、ドリップ防止剤を配合して難燃性を付与することができる。このドリップ防止剤の含有により、成形品の物性を損なうことなく、良好な難燃性を達成することができる。
ドリップ防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万~1000万、好ましくは200万~900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン工業(株)のポリフロンMPA FA500およびF-201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD-1、AD-936、ダイキン工業(株)製のフルオンD-1およびD-2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い、共凝集混合物を得る方法(特開昭60-258263号公報、特開昭63-154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4-272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06-220210号公報、特開平08-188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9-95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、さらに該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11-29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これら混合形態のPTFEの市販品としては、三菱ケミカル(株)の「メタブレン A3800」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1~60重量%が好ましく、より好ましくは5~55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる場合がある。なお、上記F成分の割合は正味のドリップ防止剤の量を示し、混合形態のPTFEの場合には、正味のPTFE量を示す。
ドリップ防止剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.05~2重量部であり、より好ましくは0.1~1.5重量部、さらに好ましくは0.2~1重量部である。ドリップ防止剤の含有量が0.05重量部未満では、十分な難燃性が得られず、2重量部を超えると層間せん断強度が低下する場合がある。
また、ポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される有機系重合体に使用されるスチレン系単量体としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基およびハロゲンからなる群より選ばれた1つ以上の基で置換されてもよいスチレン、例えば、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチル-スチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、フルオロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、およびトリブロモスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレンが例示されるが、これらに制限されない。前記スチレン系単量体は単独又は2つ以上の種類を混合して使用することができる。
ポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される有機系重合体に使用されるアクリル系単量体は、置換されてもよい(メタ)アクリレート誘導体を含む。具体的に前記アクリル系単量体としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、アリール基、及びグリシジル基からなる群より選ばれた1つ以上基によりの置換されてもよい(メタ)アクリレート誘導体、例えば(メタ)アクリロ二トリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレート、炭素数1~6のアルキル基、又はアリール基により置換されてもよいマレイミド、例えば、マレイミド、N-メチル-マレイミドおよびN-フェニル-マレイミド、マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸が例示されるが、これらに制限されない。前記アクリル系単量体は単独又は2つ以上の種類を混合して使用することができる。これらの中でも(メタ)アクリロ二トリルが好ましい。
コーティング層に用いられる有機重合体に含まれるアクリル系単量体由来単位の量は、スチレン系単量体由来単位100重量部に対して好ましくは8~11重量部、より好ましくは8~10重量部、さらに好ましくは8~9重量部である。アクリル系単量体由来単位が8重量部より少ないとコーティング強度が低下することがあり、11重量部より多いと成形品の表面外観が悪くなり得る。
ポリテトラフルオロエチレン系混合体は、残存水分含量が0.5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2~0.4重量%、さらに好ましくは0.1~0.3重量%である。残存水分量が0.5重量%より多いと難燃性に悪影響を与えることがある。
ポリテトラフルオロエチレン系混合体の製造工程には、開始剤の存在下でスチレン系単量体及びアクリル単量体からなるグループより選ばれた1つ以上の単量体を含むコーティング層を分岐状ポリテトラフルオロエチレンの外部に形成するステップが含まれる。さらに、前記コーティング層形成のステップ後に残存水分含量を0.5重量%以下、好ましくは0.2~0.4重量%、より好ましくは0.1~0.3重量%となるように乾燥させるステップを含むことが好ましい。乾燥のステップは、例えば、熱風乾燥又は真空乾燥方法のような当業界に公知にされた方法を用いて行うことができる。
ポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される開始剤は、スチレン系及び/又はアクリル系単量体の重合反応に使用されるものであれば制限なく使用され得る。前記開始剤としては、クミルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロゲンパーオキサイド、およびポタシウムパーオキサイドが例示されるが、これらに制限されない。本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体には、反応条件に応じて前記開始剤を1種以上使用することができる。前記開始剤の量は、ポリテトラフルオロエチレンの量及び単量体の種類/量を考慮して使用される範囲内で自由に選択され、全組成物の量を基準として0.15~0.25重量部使用することが好ましい。
ポリテトラフルオロエチレン系混合体は、懸濁重合法により下記の手順にて製造を行った。
まず、反応器中に水および分岐状ポリテトラフルオロエチレンディスパージョン(固形濃度:60%、ポリテトラフルオロエチレン粒子径:0.15~0.3μm)を入れた後、攪拌しながらアクリルモノマー、スチレンモノマーおよび水溶性開始剤としてクメンハイドロパーオキサイドを添加し80~90℃にて9時間反応を行なった。反応終了後、遠心分離機にて30分間遠心分離を行うことにより水分を除去し、ペースト状の生成物を得た。その後、生成物のペーストを熱風乾燥機にて80~100℃にて8時間乾燥した。その後、かかる乾燥した生成物の粉砕を行い本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体を得た。
かかる懸濁重合法は、特許3469391号公報などに例示される乳化重合法における乳化分散による重合工程を必要としないため、乳化剤および重合後のラテックスを凝固沈殿するための電解質塩類を必要としない。また乳化重合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン混合体では、混合体中の乳化剤および電解質塩類が混在しやすく取り除きにくくなるため、かかる乳化剤、電解質塩類由来のナトリウムイオンとカリウムイオンを低減することは難しい。本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン系混合体は、懸濁重合法で製造されているため、かかる乳化剤、電解質塩類を使用しないことから混合体中のナトリウムイオンとカリウムイオンの含有量を低減することができ、熱安定性および耐加水分解性を向上することができる。
また、ドリップ防止剤として被覆分岐PTFEを使用することができる。被覆分岐PTFEは分岐状ポリテトラフルオロエチレン粒子および有機系重合体からなるポリテトラフルオロエチレン系混合体であり、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの外部に有機系重合体、好ましくはスチレン系単量体由来単位及び/又はアクリル系単量体由来単位を含む重合体からなるコーティング層を有する。前記コーティング層は、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの表面上に形成される。また、前記コーティング層はスチレン系単量体及びアクリル系単量体の共重合体を含むことが好ましい。
被覆分岐PTFEに含まれるポリテトラフルオロエチレンは分岐状ポリテトラフルオロエチレンである。含まれるポリテトラフルオロエチレンが分岐状ポリテトラフルオロエチレンでない場合、ポリテトラフルオロエチレンの添加が少ない場合の滴下防止効果が不十分となる。分岐状ポリテトラフルオロエチレンは粒子状であり、好ましくは0.1~0.6μm、より好ましくは0.3~0.5μm、さらに好ましくは0.3~0.4μmの粒子径を有する。0.1μmより粒子径が小さい場合には成形品の表面外観に優れるが、0.1μmより小さい粒子径を有するポリテトラフルオロエチレンを商業的に入手することは難しい。また0.6μmより粒子径が大きい場合には成形品の表面外観が悪くなる場合がある。ポリテトラフルオロエチレンの数平均分子量は1×10~1×10が好ましく、より好ましくは2×10~9×10であり、一般的に高い分子量のポリテトラフルオロエチレンが安定性の側面においてより好ましい。粉末又は分散液の形態いずれも使用され得る。被覆分岐PTFEにおける分岐状ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、被覆分岐PTFEの総重量100重量部に対して、好ましくは20~60重量部、より好ましくは40~55重量部、さらに好ましくは47~53重量部、特に好ましくは48~52重量部、最も好ましくは49~51重量部である。分岐状ポリテトラフルオロエチレンの割合がかかる範囲にある場合は、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの良好な分散性を達成することができる場合がある。
(離型剤)
本発明の樹脂組成物には、その成形時の生産性向上や成形品の歪みの低減を目的として、更に離型剤を配合することができる。かかる離型剤としては公知のものが使用できる。
例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1-アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。
中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステルが挙げられる。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは、1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、好ましくは3~32の範囲、より好適には5~30の範囲である。
かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。
かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール~ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3~32であることが好ましく、特に炭素数10~22の脂肪族カルボン酸が好ましい。
該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、ベヘン酸、イコサン酸、およびドコサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14~20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。
ステアリン酸やパルミチン酸など上記の脂肪族カルボン酸は通常、牛脂や豚脂などに代表される動物性油脂およびパーム油やサンフラワー油に代表される植物性油脂などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常、炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明の脂肪酸エステルの製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる脂肪族カルボン酸、殊にステアリン酸やパルミチン酸が好ましく使用される。
脂肪酸エステルは、部分エステルおよび全エステル(フルエステル)のいずれであってもよい。しかしながら部分エステルでは、通常、水酸基価が高くなり高温時の樹脂の分解などを誘発しやすいことから、より好適にはフルエステルである。脂肪酸エステルにおける酸価は、熱安定性の点から好ましく20以下、より好ましくは4~20の範囲、更に好ましくは4~12の範囲である。尚、酸価は実質的に0を取り得る。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1~30の範囲がより好ましい。更にヨウ素価は、10以下が好ましい。尚、ヨウ素価は実質的に0を取り得る。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
離型剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.005~2重量部、より好ましくは0.01~1重量部、更に好ましくは0.05~0.5重量部である。
(紫外線吸収剤)
本発明の樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。
ベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ルが挙げられる。並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や、2-(2’―ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
シアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
上記の中でも紫外線吸収能の点においてはベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましく、耐熱性や色相(透明性)の点では、環状イミノエステル系およびシアノアクリレート系が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.01~2重量部、より好ましくは0.02~2重量部、さらに好ましくは0.03~1重量部、更に好ましくは0.05~0.5重量部である。
(ヒンダードアミン系光安定剤)
本発明の樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有することができる。ヒンダードアミン系光安定剤は一般にHALS(Hindered Amine Light Stabilizer)と呼ばれ、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を構造中に有する化合物である。
例えば、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルアセトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(エチルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)カーボネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)オキサレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、N,N’-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル-1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)エタン、α,α’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-p-キシレン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルトリレン-2,4-ジカルバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレン-1,6-ジカルバメート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,4-トリカルボキシレート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、および1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン骨格中の窒素原子の結合相手により大きく分けて、N-H型(窒素原子に水素が結合)、N-R型(窒素原子にアルキル基(R)が結合)、N-OR型(窒素原子にアルコキシ基(OR)が結合)の3タイプがある。ポリカーボネート樹脂に適用する際、ヒンダードアミン系光安定剤の塩基性の観点から、低塩基性であるN-R型、N-OR型を用いるのがより好ましい。上記ヒンダードアミン系光安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対し、0~1重量部であることが好ましく、0.05~1重量部がより好ましく、さらに好ましくは0.08~0.7重量部、特に好ましくは0.1~0.5重量部である。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が1重量部より多いとガス発生による外観不良やポリカーボネート樹脂の分解による物性低下が起こる場合がある。また、0.05重量部未満であると、十分な耐光性が発現しない場合がある。
(染顔料)
本発明の樹脂組成物には、更に各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かした更に良好な意匠効果を付与することができる。また極微量の染顔料による着色、かつ鮮やかな発色性を有する繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物もまた提供可能である。
蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
上記ブルーイング剤および蛍光染料以外の染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更に本発明の樹脂組成物はメタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、各種板状フィラーに金属被膜または金属酸化物被膜を有するものが好適である。
上記の染顔料の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、0.00001~1重量部が好ましく、0.00005~0.5重量部がより好ましい。
(他の樹脂)
本発明の樹脂組成物には、他の樹脂を本発明の効果を発揮する範囲において、少割合使用することもできる。
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂以外のポリオレフィン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
(その他充填材)
本発明の樹脂組成物には、他の充填材を本発明の効果を発揮する範囲において、少割合使用することもできる。
かかる他の充填材としては、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラストナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩が挙げられる。また、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ-ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられる。
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。かかる添加剤としては、摺動剤(例えばPTFE粒子)、蛍光染料、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、ラジカル発生剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、およびフォトクロミック剤などが挙げられる。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物を製造する方法に特に制限はなく、周知の方法を用いることができる。たとえば、溶液状態で各成分を混合し、溶剤を蒸発させるか、溶剤中に沈殿させる方法が挙げられる。工業的見地からみると溶融状態で各成分を混練する方法が好ましい。溶融混練には一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。特に二軸の高混練機が好ましい。溶融混練に際しては、混練装置のシリンダー設定温度は200~360℃の範囲が好ましく、より好ましくは200℃~300℃の範囲であり、さらに好ましくは230~280℃である。混練に際しては、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、単軸押出機、二軸押出機の如き押出機を用いて、溶融混練することによりペレット化またはシート化することができる。かかるペレット、シートを作製するにあたり、上記各種強化充填剤、添加剤を配合することもできる。
(補強用繊維)
本発明に用いられる補強用繊維の含有量としては、A成分とB成分の合計量100重量部に対し、15~400重量部であることが好ましく、80~300重量部がより好ましく、100~250重量部であることがさらに好ましい。補強用繊維の含有量が15重量部未満である場合、強度の長期耐久性が低下する場合があり、補強用繊維の含有量が400重量部を超える場合、難燃性が悪化する場合がある。
本発明に用いられる補強用繊維としては、耐熱性が350℃以上の補強用繊維であることが好ましい。
具体的には、強度の高い炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維や、芳香族ポリアミド繊維等の有機合成繊維を用いることができる。さらにはこれらを単独または2種以上を併用しても良い。金属繊維としては、例えばステンレス繊維を挙げることができ、導電性・機械的特性において好ましい。また、強化繊維の表面に金属などを被覆したり蒸着させたりしてもよい。例えば、ニッケルコート炭素繊維は導電性において好ましい。特には高強度、高弾性率である炭素繊維やガラス繊維が好ましく、さらには高剛性の積層体を得るためには炭素繊維、より具体的にはポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系などの炭素繊維を挙げることが可能である。特には、PANを原料としたPAN系炭素繊維が、工業規模における生産性および機械的特性に優れており好ましい。
また本発明で用いる補強用繊維としては、一方向に長い繊維形状であることが好ましく、一般的なファイバーやフィラメントのみでなく、いわゆるウィスカー等も含む概念である。
より具体的に本発明に好適に用いられる補強用繊維を例示すると、ガラスファイバー、扁平断面ガラスファイバー、カーボンファイバー、メタルファイバー、アスベスト、ロックウール、セラミックファイバー、スラグファイバー、チタン酸カリウムウィスカー、ボロンウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、ワラストナイト、ゾノトライト、パリゴルスカイト(アタパルジャイト)、およびセピオライトなどの無機充填材からなる繊維状物、アラミド繊維、ポリイミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維およびポリベンズチアゾール繊維などの耐熱有機繊維に代表され耐熱有機繊維、並びにこれらの繊維に対して例えば金属や金属酸化物などの異種材料を表面被覆した繊維などが例示される。
異種材料を表面被覆した繊維としては繊維状の形態であれば足り、例えば金属コートガラスファイバー、金属コートガラスフレーク、酸化チタンコートガラスフレーク、および金属コートカーボンファイバーなどが例示される。異種材料の表面被覆の方法としては特に限定されるものではなく、例えば公知の各種メッキ法(例えば、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法(例えば熱CVD、MOCVD、プラズマCVDなど)、PVD法、およびスパッタリング法などを挙げることができる。
これらの補強用繊維の中でも、特に炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維から選ばれる1種であることが好ましい。またこれらの補強用の強化繊維は、1種のみを使用してもよく、複数種を使用してもよい。
補強用繊維の太さ、いわゆる繊度としては、平均直径として3~20μmのものを使用することが好ましく、さらには5~15μmであることが好ましい。このような範囲では繊維の物性が高いだけではなく、最終的にマトリックスとなる熱可塑性樹脂中での分散性にも優れる。また、生産性の面から、この補強用繊維は、1000~50000本の単繊維が繊維束となったものであることも好ましい。
また本発明の積層体に用いる補強用の繊維としては、最終的に樹脂を補強するためにも強度は高い方が好ましく、繊維の引張強度としては、3500MPa~7000MPaであることや、モジュラスとしては220GPa~900GPaであることが好ましい。最終的に高強度の成形品が得られる観点からも、補強用繊維としては特には炭素繊維が好ましく、PAN系炭素繊維であることがより好ましい。
炭素繊維の表面はマトリックス樹脂との相溶性を高め、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂の分散性を向上する目的で酸化処理されることが好ましい。機構はまだ明らかではないが、炭素繊維の表面を酸化処理することで、表面の極性が向上し、非極性であるプロピレン樹脂と炭素繊維の密着性はより低下することになる。結果として、相対的に極性の高いポリカーボネート樹脂との密着性が向上するものと考えられる。
酸化処理の度合は炭素繊維上の表面酸素濃度(O/C)によって定量することができる。炭素繊維上の表面酸素濃度(O/C)は、X線光電子分光法によって測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)との原子数の比である表面酸素濃度(O/C)が0.15以上であることが好ましく、0.18以上であることがより好ましく、0.2以上であることがさらに好ましい。表面酸素濃度が0.15未満である場合、炭素繊維とポリカーボネート樹脂との密着性が不十分となる場合があり、好ましくない。なお、表面酸素濃度の上限は特に限定されないが、炭素繊維の取扱性、生産性のバランスから一般的に0.5以下であることが好ましい。
酸化処理方法は特に限定されないが、例えば、(1)炭素繊維を酸もしくはアルカリまたはそれらの塩、あるいは酸化性気体により処理する方法、(2)炭素繊維化可能な繊維または繊維状炭素充填材を、含酸素化合物を含む不活性ガスの存在下、700℃以上の温度で焼成する方法、および(3)炭素繊維を酸化処理した後、不活性ガスの存在下で熱処理する方法などが好適に例示される。
これらの補強用繊維の繊維強化複合成形体中での存在形態としては、長繊維や短繊維のいずれの形態でも用いることが可能である。しかし、樹脂の補強の観点からは長繊維形状であることが好ましく、逆に得られる複合体の物性を等方性とする観点からは、短繊維を主とする構成であることが好ましい。ここで短繊維とは、長繊維ではない不連続繊維であることをいう。短繊維として用いる場合には、補強用繊維シートが好ましく、補強用繊維シートは、あらかじめ繊維の配向をランダムにした繊維集合体や不織布であることが好ましい。補強用繊維シートとしては、織編物、不織布、一方向性シートのいずれかであることが好ましい。
また、補強用繊維を短繊維(不連続繊維)として用いる場合には、その長さは300μm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、6mm以上であることが更に好ましく、20mm以上であることが最も好ましい。また短繊維として用いる場合は100mm以下であることが好ましく、さらには80mm以下であることが、特には60mm以下であることが好ましい。このような繊維を不織布形状として用いた場合には、強度や寸法に対する異方性が改善される。
一方補強用繊維を長繊維として用いる場合には、一方向性シートや、織物、編物、組紐、などのさまざまな形態で用いることができる。ただし最終的に得られる複合体の強度補強の面からは、一方向性シート(いわゆるUDシート)として用いることが好ましい。あるいは補強用繊維の一部または全部が一方向性繊維シートや一方向性テープであって、それらを部分的に用いることが好ましい。長繊維として用いる場合の特に好ましい形態としては、2軸や3軸等の織物であることも好ましい。さらにはこれらの繊維形態としては、部分的に1種または2種以上の形態を組み合わせて使用することも可能である。
本発明に用いられる補強用繊維を構成する補強用繊維の含有量は、熱可塑性樹脂のA成分とB成分との合計100重量部に対し、15~400重量部であり、好ましくは40~300重量部、より好ましくは100~250重量部、さらに好ましくは120~200重量部である。補強用繊維の含有量が15重量部未満では、繊維強化複合成形体の強度が十分に発揮されず、400重量部を超えると強化繊維の滑落が多数発生し、外観不良となる。
(繊維強化複合成形体)
本発明において、補強用繊維が補強用繊維シート形状であり、樹脂組成物が樹脂組成物シート形状であって、補強用繊維シートと樹脂組成物シートとの積層体である繊維強化複合成形体とすることが好ましい。
補強用繊維シートと樹脂組成物シートとの積層体を、樹脂組成物シートを構成する熱可塑性樹脂の溶融温度以上、補強用繊維シートを構成する補強用繊維の耐熱温度未満の温度で、加圧処理することにより繊維強化複合成形体とすることが可能である。
樹脂組成物シートと補強用繊維シートとの重量比率としては90:10~20:80の範囲であることが好ましく、30:70~50:50の範囲であることがより好ましい。また樹脂組成物シートとしては、直径8mmの測定子のピーコックを使用して、荷重1.25N/cmの条件下の厚さを測定した時の厚さは0.05~0.5mmが好ましく、0.1~0.3mmがより好ましく、目付は2~100g/mの範囲内であることが好ましい。補強用繊維シートとしては、厚さは0.05~1.0mm、目付は100~2000g/mの範囲内であることが好ましい。
積層体は、このような薄い樹脂組成物シートと補強用繊維シートとを複数枚重ねたものであって、重ね方としては交互に配列したものであることが、さらには表裏の最表面には樹脂組成物シートを配置することが好ましい。補強用繊維シートの枚数は、好ましくは1枚~5枚、より好ましくは1枚~3枚、さらに好ましくは1枚~2枚である。図1に、本発明の積層体の断面図の模式図を示す。
本発明で用いられる樹脂組成物シートの形態は、特に制限はないが、上記目的を達成するためには長さ・幅・厚さの三次元のうち少なくとも一次元が1~300μmの範囲にあることが好ましく、1~100μmがより好ましく、1~50μmが更により好ましく、1~30μmが最も好ましい。このような形態を持ちうるものとしてフィルム、不織布および網目状繊維シートが挙げられ、なかでも樹脂組成物シートの品質の安定性という観点からフィルムが好ましい。
(繊維強化複合成形体の製造方法)
本発明の繊維強化複合成形体は、例えば射出成形、ブロー成形、押出成形、プレス成形、圧縮成形、インサート成形などの公知な成形方法によって成形される。
より好ましい方法としては、樹脂組成物シートと補強用繊維シートとを重ね合わせた前述の積層体をプレス成形する成形方法およびLFT-D(Long-Fiber Thermoplastics Direct)装置で成形する成形方法が挙げられる。
積層体をプレス成形する方法で得られる繊維強化複合体は、前述の積層体を加圧処理することにより得られる。具体的には、前述の積層体を、樹脂組成物シートを構成するポリカーボネート樹脂の溶融温度以上、補強用繊維シートを構成する補強用繊維の耐熱温度未満の温度で、加圧処理することにより製造することができる。
この方法により、補強用繊維の周囲をポリカーボネート樹脂によって包囲するのであるが、複合体の物性を向上させるためにも空隙が存在しないことが好ましい。加圧処理の温度としては使用するポリカーボネート樹脂にもよるが200~340℃、さらには240~330℃の範囲であることが好ましい。処理時間としては1~30分程度が好ましく、1~10分程度がより好ましく、特には3~10分の範囲であることが好ましい。加工時のプレス圧力としては2~30MPa、さらには5~20MPaの範囲内であることが好ましい。
積層体をプレス成形する方法で得られる繊維強化複合成形体は、補強用繊維シートが樹脂組成物シートを介して重ね合わさった構造を有する。積層体の樹脂組成物シートの一部は、補強用繊維シートに含浸しているが、基本的には、積層体と同様な断面形状を有する。図2に積層体をプレス成形する成形方法で製造した繊維強化複合体の断面図の模式図を示す。
LFT-D装置による成形の基本構成は、二軸押出機、ロータリーバルブ/射出プランジャ、プレス成形機から成る。具体的には、まず前述の樹脂組成物ペレットをフィーダーで二軸押出機に投入し、補強用繊維は、二軸押出機シリンダに直接供給され、シリンダ内で溶融樹脂と混錬し、複合材料を製造する。次に複合材料は、二軸押出機の先端側に設置されたロータリバルブを通って射出プランジャに流入する。流入中に射出プランジャを後退させて、複合材料を射出プランジャ内に所定量充満する(計量動作)。その後、射出プランジャを前進させて複合材料を金型内に射出し、プレス成形することで繊維強化複合成形体が得られる。二つの射出プランジャは、片側で射出動作を行っている最中に、もう片側で計量動作を行い、交互に射出動作と計量動作を繰り返すため、二軸押出機による連続的な複合材料の製造が可能である。
この方法による成形は、二軸押出機シリンダ内の樹脂が溶融した部位に補強用繊維を供給するため、通常の射出成形よりも繊維折損を抑制することが可能となり、高強度な成形体を得ることができる。LFT-D装置の概略図を図3に示す。
なお、本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、製造例、実施例、比較例中の製造方法、評価方法は以下の通り実施した。
[実施例A1~A5および比較例A1~A4(製造例1~9)]
(I)樹脂組成物シート
(I-1)樹脂組成物で構成されたシートの製造
表1に記載のポリカーボネート樹脂組成物を、90℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、二軸押出機から表に記載の押出温度で押出し、ダイ出口で急冷しながら表1に記載の厚みのフィルム状の樹脂組成物シートを作成した。このフィルム状シートの評価を表1に示す。
(I-2)平均厚み(フィルム状シート)
直径8mmの測定子のピーコックを使用して、荷重1.25N/cmの条件下の厚さを測定した。なお測定はフィルムの両端部および中心部の三点を測定し、これらの平均値を平均厚みとした。
[実施例A6(製造例10)]
表1に示す組成の混合物(樹脂組成物)を押出機の第1供給口から供給した。かかる混合物はV型ブレンダーで混合して得た。二軸押出機は、径30mmφであり、最上流部のC1と、その下流のC5に供給口を有する全10バレル構成(上流より、C1~C10シリンダーと称す。)の1ベントを備えた日本製鋼所社製「TEX30αIII」噛合い型同方向回転二軸スクリュー押出機を使用した。押出条件は、温度C1:260℃、C2~10:270℃とし、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/h、ベントの真空度3kPaで実施し、溶融混練しペレットを得た。
[実施例B1~B11、比較例B1~B4]
(II)繊維強化複合体
(II-1)繊維強化複合体の作製
(II-1―1)積層体のプレス成形
製造例1~9で得られた樹脂組成物シートおよび補強用繊維シートを表2および表3に示す割合となるように積層し、積層体とした。
積層体を予熱したホットプレスに挿入して、表2および表3に示すプレス条件(温度、プレス時間、プレス圧)にて、繊維強化複合体(FRP成形体)を得た。なお積層の際に、補強用繊維が偏らないように配慮し、また繊維強化複合成形体の厚みは、予め加熱加圧後に目的の厚みになるように、熱可塑性繊維シートおよび補強用繊維の量を調整した。最終的に得られた繊維強化複合成形体の評価を表2および表3に示す。なお補強用繊維FI-1、FI-3を使用した積層体は、繊維方向を揃えて繊維強化複合体を作製した。
(II-1―2)LFT-D装置によるプレス成形
表2に示す割合となるように製造例10で得られた樹脂組成物ペレットを二軸押出機の第一供給口(C1)から供給し、補強用繊維を第5供給口(C5)に供給して溶融混錬し、得られた複合材料を射出プランジャでプレス用金型に流入させ、表2に示すプレス条件(温度、プレス時間、プレス圧)にて、繊維強化複合成形体を得た。
二軸押出機は、径30mmφであり、最上流部のC1と、その下流のC5に供給口を有する全10バレル構成(上流より、C1~C10シリンダーと称す。)の1ベントを備えた日本製鋼所社製「TEX30αIII」噛合い型同方向回転二軸スクリュー押出機を使用した。押出条件は、温度C1:260℃、C2~10:270℃とし、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/h、ベントの真空度3kPaで実施し溶融混錬した。
(II-2)曲げ強度
(II-1)から得られた繊維強化複合成形体から、サンプル片を切り出し、ISO178に準拠して曲げ強度を測定した(測定条件:試験速度2mm/min、試験温度23℃)。なお補強用繊維FI-1、FI-3を使用した積層体は、長辺が繊維方向になるようにサンプル片を切り出して曲げ強度の測定を実施し、補強用繊維FI-2、4、5、6を使用した積層体は、お互いが垂直になるような二方向で切り出し、曲げ強度はその二方向の曲げ強度の平均値として評価を実施した。
(II-3)層間せん断強度
(II-1)から得られた繊維強化複合成形体から、サンプル片を切り出し、ASTM D2324に準拠して層間せん断強度を測定した(測定条件:試験温度23℃)。なお補強用繊維FI-1、FI-3を使用した積層体は、長辺が繊維方向になるようにサンプル片を切り出して層間せん断強度の測定を実施した。
(II-4)高温高湿試験(長期耐久性評価)
(a)曲げ強度保持率
(II-1)から得られた繊維強化複合成形体から、サンプル片を切り出し、60℃、55%の環境下で1000H熱処理し、ISO178に準拠して曲げ強度を測定した(測定条件:試験速度2mm/min、試験温度23℃)。この結果より、下記式により曲げ強度の保持率を算出した。曲げ強度保持率は、60%以上であることが好ましい。
曲げ強度保持率(%)=(高温高湿試験後の曲げ強度/初期の曲げ強度)×100
(b)層間層間せん断強度保持率
(II-1)から得られた繊維強化複合成形体から、サンプル片を切り出し、60℃、55%の環境下で1000H熱処理し、ASTM D2324に準拠して層間せん断強度を測定した(測定条件:試験温度23℃)。この結果より、下記式により曲げ強度の保持率を算出した。層間せん断強度保持率は、60%以上であることが好ましい。
層間せん断強度保持率(%)=(高温高湿試験後の層間せん断強度/初期の層間せん断強度)×100
(II-5難燃性)
米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL94垂直燃焼試験に従い、下記方法で得られた厚み1.0mmのUL試験片を用いて燃焼試験を実施した。結果はV-0、V-1、V-2およびnot Vに分類して評価した。難燃性は、V-0であることが好ましい。
[使用組成]
実施例では、下記の成分を使用した。
(A成分)(ポリカーボネート樹脂)
A-1:モノマー成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンからなるポリカーボネート樹脂[MVR(300℃、1.2kg荷重)=8.5cm/10min]
(B成分)(ホスファゼン)
B-1:下記式(18)のk=1の三量体の含有量が100mol%である環状フェノキシホスファゼン
B-2;下記式(18)のk=1の三量体の含有量が98.5mol%、k=2の四量体の含有量が1mol%、k=3以上の多量体の含有量が0.5molである環状フェノキシホスファゼン
B-3:下記式(18)のk=1の三量体の含有量が98mol%、k=2の四量体の含有量が1.5mol%、k=3以上の多量体の含有量が0.5molである環状フェノキシホスファゼン
B-4:下記式(18)のk=1の三量体の含有量が70mol%、k=2の四量体の含有量が20mol%、k=3以上の多量体の含有量が10mol%である環状フェノキシホスファゼン
(C成分) (ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
C-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量7500~8500g/eq、三菱化学社製 JER1256(製品名)
(D成分)
D-1:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、(株)アデカ AO-50(製品名)
D-2:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、(株)アデカ アデカスタブPEP36(製品名)
(補強用繊維)
FI-1:炭素繊維一方向テープ[東邦テナックス(株)製「F-22」、繊維径=7μm]
FI-2:炭素繊維織布[東邦テナックス(株)製「W3101」、目付=200g/m、厚さ0.25mm、繊維径=7μm]
FI-3:ニッケルコート炭素繊維テープ[東邦テナックス(株)製「HTS40 MC」、繊維径=7.5μm、幅10mm]
FI-4:ガラス繊維織布[日東紡株式会社製「WF150」]、目付=144g/m、厚さ0.22mm、繊維径=13μm]
FI-5:アラミド繊維不織布[帝人紡株式会社製「テクノーラ EF200」]、目付=200g/m、繊維径=12μm]
FI-6:炭素繊維シート[東邦テナックス(株)製:HT C422 6mm、長径7μm、カット長6mmの炭素繊維を加圧して幅300mm、長さ300mmのシート状にしたもの]
本発明の繊維強化複合体成形体用樹脂組成物を補強用繊維と複合化して得られる繊維強化複合成形体は、曲げ強度、せん断強度等の機械特性およびこれらの長期耐久性、難燃性に優れ、電気・電子部品、家庭電化製品、自動車関連部品、インフラ関連部品、住設関連部品等に有用である。
1.熱可塑性樹脂シート層
2.補強用繊維シート層
3.熱可塑性樹脂ペレット
4.強化繊維
5.原料フィーダー
6.二軸押出機
7.ロータリバルブ
8.射出プランジャ
9.プレス成形機

Claims (7)

  1. (A)ポリカーボネート樹脂(A成分)70~99重量部および(B)ホスファゼン環状三量体を98.5mol%以上含有するホスファゼン(B成分)30~1重量部を含有することを特徴とする繊維強化複合成形体用樹脂組成物。
  2. A成分とB成分の合計量100重量部に対し、(C)密着改良剤(C成分)を0.1~20重量部含有する請求項1に記載の繊維強化複合成形体用樹脂組成物。
  3. C成分が1分子中にエポキシ基、カルボン酸基および酸無水物基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1種類有する有機化合物である請求項1または2に記載の繊維強化複合成形体用樹脂組成物。
  4. C成分がグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートおよびスチレン-マレイン酸樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の有機化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合成形体用樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物と補強用繊維との複合体である繊維強化複合成形体。
  6. 補強用繊維を構成する繊維が、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも一種の繊維である請求項5に記載の繊維強化複合成形体。
  7. 補強用繊維が補強用繊維シート形状であり、樹脂組成物が樹脂組成物シート形状であって、補強用繊維シートと樹脂組成物シートとの積層体である請求項5または6に記載の繊維強化複合成形体。
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