JP2023127870A - 変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(cpt)ファミリー蛋白質、ポリイソプレノイドの製造方法、ベクター、形質転換植物、空気入りタイヤの製造方法及びゴム製品の製造方法 - Google Patents

変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(cpt)ファミリー蛋白質、ポリイソプレノイドの製造方法、ベクター、形質転換植物、空気入りタイヤの製造方法及びゴム製品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にする、変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質、ポリイソプレノイドの製造方法を提供する。【解決手段】ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質。【選択図】図1

Description

本開示は、変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質、ポリイソプレノイドの製造方法、ベクター、形質転換植物、空気入りタイヤの製造方法、及びゴム製品の製造方法に関する。
ヒト由来のシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質においては、CPTファミリー蛋白質(以下では、単にCPTとも記載する)のN末端と、Nogo-B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質(ゴムノキ由来のHRBPに相当)の相互作用が、CPTの活性において重要であることが知られている。
ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質(以下では、単にゴム合成酵素とも記載する)においても、ゴム合成酵素のN末端欠損体では酵素活性が失われることが知られている。すなわち、ゴム合成酵素のN末端は酵素活性に重要な部位であることが知られている。しかしながら、従来の技術では、高分子量のポリイソプレノイドを製造するという点では、改善の余地がある。
本開示は、前記課題を解決し、高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にする、変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質、ポリイソプレノイドの製造方法を提供することを目的とする。
本開示はまた、前記課題を解決し、遺伝子組換え技術により植物体に導入することで高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にする、ベクター、該ベクターが導入された形質転換植物を提供することを目的とする。
本開示者らは、Nogo-B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質は、CPTが正しい構造に折りたたまれることを補助する役割があると考えている。そのため、NgBRとの相互作用が失われると、CPTは正しい構造で折りたたまれることが少なくなり、酵素活性が失われることとなる。
本開示者らの検討の結果、以下のことが判明した。
(知見1)野生型のCPTを使用したゴム粒子上でのゴム合成
CPTに変異導入を行わずにそのままゴム粒子に結合させて、ポリイソプレノイドを合成する場合、CPTの種類によっては、ゴム粒子上で高分子のポリイソプレノイドが合成されない場合があることが分かった。特に、もともと膜に結合しない短・中鎖のイソプレノイド合成する酵素を用いた場合はそもそも膜に結合しないという問題点があった。
(知見2)CPTに膜結合を補助するペプチド(又は酵素)を融合させた酵素を使用した膜粒子上でのポリイソプレノイド合成
前記知見1の課題を解決する方法の1つとして、CPTのN末端側又はC末端側に膜結合性を補助するペプチドや酵素(油滴結合蛋白質の膜結合部分やゴム粒子に結合するSRPPなど)と融合する方法も試みた。しかしながら、この方法により、酵素の膜結合性の問題は解決したものの、酵素が正しく膜に埋め込まれない可能性や融合蛋白質が酵素活性に重要とされているNgBRとの相互作用を阻害する可能性が残されていた。
本開示者らは、鋭意検討した結果、ゴム粒子上で高分子のポリイソプレノイドを合成するためには、(指針a)CPTが正しく折りたたまれること、(指針b)膜に結合すること、(指針c)膜に正しく(深く)組み込まれることが必要であると考えるに至った。
本開示者らは、鋭意検討した結果、前記(知見1)の手法では、もともとゴム粒子上に存在しないCPTを用いた場合、(指針b)と(指針c)に課題を抱えることとなり、前記(知見2)の手法では、膜結合性ペプチドとの融合により(指針b)は解決できるものの、ペプチド融合の弊害として(指針a)(N末端側に融合させ場合、酵素の折り畳みがうまくいかない)や(指針c)(C末端側に融合させた場合、酵素が膜に正しく組み込まれない)に課題を抱えていることが判明した。
本開示者らは、CPTの末端構造とNgBRの相互作用の関係性を調べていく中で、CPTのN末端構造を変えることで、NgBRとの相互作用を持たないCPTにNgBRとの相互作用を付与することができることを発見した。更に、本開示者らは、NgBRとの相互作用を持たないCPTが、NgBRとの相互作用を有するようになることで、ゴム粒子上でのポリイソプレノイド合成において生成物鎖長が高分子化することを発見した。更に、本開示者らは、CPTのN末端構造に加えて、更にCPTのC末端構造も変えることで、ゴム粒子上でのポリイソプレノイド合成において生成物鎖長がより高分子化することを発見した。
更に、本開示者らは、CPTのN末端にゴム粒子上に存在するCPTのN末端配列を融合させるのではなく、ゴム粒子上に存在しないCPTのN末端配列を、ゴム粒子上に存在するCPTのN末端配列と交換(スワップ)することで、高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にできること、同様に、CPTのC末端にゴム粒子上に存在するCPTのC末端配列を融合させるのではなく、ゴム粒子上に存在しないCPTのC末端配列を、ゴム粒子上に存在するCPTのC末端配列と交換(スワップ)することで、高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にできること、を見出し、本開示を完成した。
すなわち、本開示は、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、
前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質に関する。以降、この開示を本開示の第1の開示とし、第1の本開示とも称する。
第1の本開示によれば、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質であるので、変異前のシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質よりも高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能であり、変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いたポリイソプレノイドの製造方法により、変異前のシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いた場合よりも高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能となる。
第1の本開示の空気入りタイヤの製造方法は、第1の本開示のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程と、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であるので、高分子量のポリイソプレノイドから空気入りタイヤを製造するため、植物資源を有効に利用でき、環境に配慮して性能に優れた空気入りタイヤを製造することができる。
第1の本開示のゴム製品の製造方法は、第1の本開示のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程と、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法であるので、高分子量のポリイソプレノイドからゴム製品を製造するため、植物資源を有効に利用でき、環境に配慮して性能に優れたゴム製品を製造することができる。
第2の本開示のベクターは、第1の本開示の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターである。そして、該ベクターを植物に導入することにより、該ベクターに含まれる、第1の本開示の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子が発現し、当該植物において、遺伝子組み換え前と比較して、高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にする。
第2の本開示の空気入りタイヤの製造方法は、第2の本開示のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であるので、遺伝子組み換え前と比較して、高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にした形質転換植物から得られる高分子量のポリイソプレノイドから空気入りタイヤを製造するため、植物資源を有効に利用でき、環境に配慮して性能に優れた空気入りタイヤを製造することができる。
第2の本開示のゴム製品の製造方法は、第2の本開示のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法であるので、遺伝子組み換え前と比較して、高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にした形質転換植物から得られる高分子量のポリイソプレノイドからゴム製品を製造するため、植物資源を有効に利用でき、環境に配慮して性能に優れたゴム製品を製造することができる。
予想される機構を示す概略図である。 実施例1、比較例1、2において合成されたポリイソプレノイドの分子量分布の測定結果を表すグラフである。
本明細書においては、第1の本開示と第2の本開示を合わせて本開示ともいう。まず、第1の本開示について説明し、続いて第2の本開示について説明する。
(第1の本開示)
第1の本開示の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、
前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である。これにより、変異前のシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質よりも高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能であり、変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いたポリイソプレノイドの製造方法により、変異前のシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いた場合よりも高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能となる。
なお、本明細書において、蛋白質のN末端は、ポリペプチド鎖のアミノ末端、蛋白質のC末端は、ポリペプチド鎖のカルボキシ末端を意味する。
本開示で前述の効果が得られる理由は、以下のように推察される。
前記の通り、本開示者らは、CPTのN末端及びC末端の両末端に着目した。CPTのN末端については、他の研究でも着目されてきたが、あくまで活性を維持するために必要なものという扱いに過ぎず、生成物の鎖長変化との関係を示唆する研究はなく、CPTのN末端と、生成物の鎖長変化の関係についてはこれまで着目されてこなかった。一方、CPTのC末端の役割についてはホモダイマー型のCPTでは、C末端側のRXGモチーフの変異で活性が大きく低下することが示されている。構造的知見から、C末端側領域が別のサブユニットの基質結合部位に近づき、基質の結合を保持していることが示唆されている。一方で、ヘテロマー型のCPTではcPTLのC末端がRxGモチーフと同様の機能をしていることが示されているが、cPTLと結合しているCPT側のC末端に関しての機能は未知であった。
(1)野生型のHRT1(パラゴムノキ由来のゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質(ゴム合成酵素))は、ゴム粒子に結合した状態で、問題なく活性を示した。
(2)N末端欠損HRT1は、ゴム粒子への結合は確認できたものの、酵素活性は確認できなかった。これは、従来の知見と一致する。また、NgBRとの相互作用も弱くなる。
一方で、ゴム粒子上に存在しないCPTのN末端への変異導入は大きな影響をもたらした。
(3)野生型のAtCPT5(シロイヌナズナ由来のゴム粒子上に存在しないCPT)は、ゴム粒子に結合させると、本来の生成物であるC35のポリイソプレノイドに加え、長鎖イソプレン鎖も合成した。
(4)N末端HRT1化変異導入AtCPT5(AtCPT5のN末端をHRT1のN末端に置換)では、ゴム粒子に結合させると、生成物が高分子化した。また、HRBPとの相互作用を有するようにもなった。
(5)両末端HRT1化変異導入AtCPT5(AtCPT5のN末端及びC末端をHRT1のN末端及びC末端に置換)では、ゴム粒子に結合させると、N末端変異体よりも更に生成物が高分子化した。N末端変異によるNgBRとの相互作用とC末端による膜結合性の両方の作用が働いたためと推測される。
前記(3)と前記(4)の結果の比較から、HRT1のN末端もNgBRと相互作用することが分かった。これは従来のCPTでも知られている。ただし、(4)の生成物の高分子化については新しい発見である。更に、前記(3)~前記(5)の結果の比較から、N末端への変異導入だけでも生成物が高分子化するが、更にC末端にも変異導入することでその効果がより高まることが分かった。すなわち、N末端変異だけでなく、C末端の構造も変えることで、より生成物の高分子化の効果を得られることを発見した。
生成物の高分子化に対するN末端の作用は、以下のように推測される。
CPTとNgBRの相互作用は、CPTの折り畳みに関与すると考えられているが、AtCPT5はもともとNgBRとの相互作用をせずに活性を有する折り畳み構造をとるため、折り畳み作用が高分子化に作用しているとは考えづらい。
一方で、NgBRは膜(ゴム粒子)上に結合していることが知られているため、CPTがNgBRとの相互作用を持つことで、CPTが膜(ゴム粒子)により近づきやすくなる(膜に深く結合する)ことが予想され、この作用がポリイソプレノイドの高分子化に影響していると推測される。
また、生成物の高分子化に対するC末端の作用は、以下のように推測される。
ゴム粒子上に存在しないCPTにおけるC末端の変異が、どのような作用で効果を発揮しているのかは明確には分かっていないが、以下の点から、CPTが膜に深く入り込むのを助ける機能を有していると推測される。
・C末端HRT1化変異導入AtCPT5(AtCPT5のC末端をHRT1のC末端に置換)とHRBP(パラゴムノキ由来のNgBR)との相互作用試験では、相互作用は確認できなかった。
・C末端HRT1化変異導入AtCPT5は、生成物の鎖長決定するHelix2及びHelix3に変異を加えていないにもかかわらず、鎖長制御機構がうまく働かなくなり、生成物の高分子量化が見られた。
・CPTのC末端構造は活性中心の近くに存在することが知られている。
よって、これらの知見より、C末端は活性中心の近くに存在するため、その構造(例えば、疎水性度)を変化させることで、活性中心近くまでCPTが膜に深く入り込んでいると推測される。
以上の、予想される機構を図1を用いて説明する。
図1(a)は、ゴム粒子上に存在しないCPTがゴム粒子に結合していない状態で反応する際の概略図である。この場合には、ストッパーの存在により、鎖長制御機構が機能し、所定の分子量のポリイソプレノイドが製造されることとなる。
図1(b)は、ゴム粒子上に存在しないCPTがゴム粒子に結合した状態で反応する際の概略図である。この場合には、ストッパーがわずかにゴム粒子(膜)に埋まるため、ゴム粒子に結合していない状態に比べて、多少高分子量化したポリイソプレノイドが製造されることとなる。
図1(c)は、「ゴム粒子上に存在しないCPTのC末端領域を、ゴム粒子上に存在するCPTのC末端領域に置換した変異CPT」がゴム粒子に結合した状態で反応する際の概略図である。この場合には、変異CPTのC末端が、ゴム粒子(膜)と相互作用するようになるため、CPTがより深くゴム粒子(膜)に入り込み、本来のストッパーが機能しなくなり、生成物が高分子量化することとなる。なお、本開示では、ゴム粒子上に存在しないCPTのC末端領域に更にアミノ酸配列を付加する融合ではなく、ゴム粒子上に存在しないCPTのC末端領域の置換を行っているため、前記機構がより好適に発揮されるものと推測される。
ゴム粒子上に存在するCPTにおいて、C末端の重要性が低いのは、ゴム粒子上に存在するCPTはもともとゴム粒子に結合する酵素であるため、C末端以外の部分においても、ゴム粒子(膜)と結合する部分を有していると考えられる。そのため、ゴム粒子上に存在するCPTにおいて、C末端がうまく機能しなくなったとしても他の部分がゴム粒子(膜)との結合を補助していると推測される。
また、ゴム粒子上に存在するCPTには、生成物鎖長を制御するストッパーが存在しないため、ゴム粒子(膜)への結合が多少浅くなったとしても影響は少ないものと推測される。
以上の通り、ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質のN末端領域を、ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質のN末端領域と同一に又は類似するように変異(置換)した変異CPTファミリー蛋白質であれば、変異CPTがNgBRとの相互作用を持つことで、CPTが膜(ゴム粒子)により近づきやすくなり、生成物が高分子量化することとなる。
更に、以上の通り、ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質のC末端領域を、ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質のC末端領域と同一に又は類似するように変異(置換)した変異CPTファミリー蛋白質であれば、変異CPTのC末端が、ゴム粒子(膜)と相互作用するようになるため、CPTがより深くゴム粒子(膜)に入り込み、本来のストッパーが機能しなくなり、生成物が高分子量化することとなる。
よって、第1の本開示によれば、ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、前記ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異CPTファミリー蛋白質であるので、変異前のCPTファミリー蛋白質よりも高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能であり、変異CPTファミリー蛋白質を用いたポリイソプレノイドの製造方法により、変異前のCPTファミリー蛋白質を用いた場合よりも高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能となる。
<変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質>
本開示の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、
前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である。
本開示の変異CPTファミリー蛋白質は、より具体的には、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一の又は類似するアミノ酸配列に置換し、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一の又は類似するアミノ酸配列に置換した変異CPTファミリー蛋白質である。
ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列が、該蛋白質のN末端からβシートを構成する一番目のβストランド(βストランド1)までの区間内のN末端を含むアミノ酸配列であることが好ましく、該蛋白質のN末端からβストランド1までの区間のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であることがより好ましい。同様に、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列が、該蛋白質のN末端からβストランド1までの区間内のN末端を含むアミノ酸配列であることが好ましく、該蛋白質のN末端からβストランド1までの区間のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列であることがより好ましい。
ここで、本明細書において、βストランド1とは、CPTの構造の中核に位置するβシート構造を構成するβストランドのうち,もっともN末端側のものを意味する。
また、本明細書において、N末端からβストランド1までの区間とは、N末端からβストランド1を構成するアミノ酸配列の1つ上流側のアミノ酸までの区間を意味する。
なお、本明細書において、N末端領域のアミノ酸配列は、連続するアミノ酸配列である。
ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列は、該蛋白質のN末端から下流100アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることが好ましく、該蛋白質のN末端から下流90アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることがより好ましく、該蛋白質のN末端から下流85アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることが更に好ましく、該蛋白質のN末端から下流80アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることが特に好ましく、該蛋白質のN末端から下流75アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることが最も好ましい。
ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列は、例えば、配列番号3で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5のアミノ酸配列では、1位から72位までのアミノ酸配列、配列番号4で示されるパラゴムノキ由来のHbCPT5のアミノ酸配列では、1位から34位までのアミノ酸配列に相当する。
ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列も、同様に、該蛋白質のN末端から下流70アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることが好ましく、該蛋白質のN末端から下流60アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることがより好ましく、該蛋白質のN末端から下流50アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることが更に好ましく、該蛋白質のN末端から下流40アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることが特に好ましく、該蛋白質のN末端から下流35アミノ酸以内のN末端を含むアミノ酸配列であることが最も好ましい。
ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列は、例えば、配列番号1で示されるパラゴムノキ由来のHRT1のアミノ酸配列では、1位から32位までのアミノ酸配列に相当する。
ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と類似するアミノ酸配列は、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列と、好ましくは80%以上の配列同一性、より好ましくは85%以上の配列同一性、更に好ましくは90%以上の配列同一性、特に好ましくは95%以上の配列同一性、最も好ましくは98%以上の配列同一性、より最も好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列は、該蛋白質のC末端から上流50アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることが好ましく、該蛋白質のC末端から上流45アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることがより好ましく、該蛋白質のC末端から上流40アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることが更に好ましく、該蛋白質のC末端から上流35アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることが特に好ましく、該蛋白質のC末端から上流30アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることが最も好ましい。
なお、本明細書において、C末端領域のアミノ酸配列は、連続するアミノ酸配列である。
ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列は、例えば、配列番号3で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5のアミノ酸配列では、278位から302位までのアミノ酸配列、配列番号4で示されるパラゴムノキ由来のHbCPT5のアミノ酸配列では、342位から368位までのアミノ酸配列に相当する。
ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列も、同様に、該蛋白質のC末端から上流50アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることが好ましく、該蛋白質のC末端から上流45アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることがより好ましく、該蛋白質のC末端から上流40アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることが更に好ましく、該蛋白質のC末端から上流35アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることが特に好ましく、該蛋白質のC末端から上流30アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列であることが最も好ましい。
ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列は、例えば、配列番号1で示されるパラゴムノキ由来のHRT1のアミノ酸配列では、263位から290位までのアミノ酸配列に相当する。
ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と類似するアミノ酸配列は、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列と、好ましくは80%以上の配列同一性、より好ましくは85%以上の配列同一性、更に好ましくは90%以上の配列同一性、特に好ましくは95%以上の配列同一性、最も好ましくは98%以上の配列同一性、より最も好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
前記変異CPTファミリー蛋白質において、ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列、及び、ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列は、同一のCPTファミリー蛋白質由来であってもよく、異なるCPTファミリー蛋白質由来であってもよいが、同一のCPTファミリー蛋白質由来であることが好ましい。
同様に、前記変異CPTファミリー蛋白質において、ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列、及び、ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列は、同一のCPTファミリー蛋白質由来であってもよく、異なるCPTファミリー蛋白質由来であってもよいが、同一のCPTファミリー蛋白質由来であることが好ましい。
アミノ酸配列の変異(置換)は、公知の手法に従って行うことができる。例えば、相同組換え、Overlap Extension PCR、In-Fusionクローニングや制限酵素を用いたPCR産物の融合などが挙げられる。
<<ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質>>
ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質としては、ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質であれば特に限定されず、例えば、植物由来のゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質であればよい。なかでも、Hevea属又はTaraxacum属(なかでも、Hevea属)に属する植物由来のゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質であることが好ましく、Hevea brasiliensis又はTaraxacum koksaghyz(なかでも、Hevea brasiliensis)由来のゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質であることがより好ましい。
前記植物としては、特に限定されず、例えば、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のHevea属;ノゲシ(Sonchus oleraceus)、オニノゲシ(Sonchus asper)、ハチジョウナ(Sonchus brachyotus)等のSonchus属;セイタカアワダチソウ(Solidago altissima)、アキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. asiatica)、ミヤマアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa)、キリガミネアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa f. paludosa)、オオアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. gigantea)、オオアワダチソウ(Solidago gigantea Ait. var. leiophylla Fernald)等のSolidago属;ヒマワリ(Helianthus annuus)、シロタエヒマワリ(Helianthus argophyllus)、ヘリアンサス・アトロルベンス(Helianthus atrorubens)、ヒメヒマワリ(Helianthus debilis)、コヒマワリ(Helianthus decapetalus)、ジャイアントサンフラワー(Helianthus giganteus)等のHelianthus属;タンポポ(Taraxacum)、エゾタンポポ(Taraxacum venustum H.Koidz)、シナノタンポポ(Taraxacum hondoense Nakai)、カントウタンポポ(Taraxacum platycarpum Dahlst)、カンサイタンポポ(Taraxacum japonicum)、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale Weber)、ロシアンタンポポ(Taraxacum koksaghyz)等のTaraxacum属;イチジク(Ficus carica)、インドゴムノキ(Ficus elastica)、オオイタビ(Ficus pumila L.)、イヌビワ(Ficus erecta Thumb.)、ホソバムクイヌビワ(Ficus ampelas Burm.f.)、コウトウイヌビワ(Ficus benguetensis Merr.)、ムクイヌビワ(Ficus irisana Elm.)、ガジュマル(Ficus microcarpa L.f.)、オオバイヌビワ(Ficus septica Burm.f.)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)等のFicus属;グアユール(Parthenium argentatum)、アメリカブクリョウサイ(Parthenium hysterophorus)、ブタクサ等のParthenium属;レタス(Lactuca sativa)等が挙げられる。
前記ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質の具体例は、例えば、パラゴムノキ由来のゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質であるHRT1、HRT2、ロシアタンポポ由来のゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質であるCPT1、グアユール由来のゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質であるCPT3等が挙げられる。なかでも、HRT1が好ましい。
前記ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[1]が挙げられる。
[1]配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[2]も挙げられる。
[2]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
なお、前記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1~58個のアミノ酸、更に好ましくは1~44個のアミノ酸、更により好ましくは1~29個のアミノ酸、特に好ましくは1~15個のアミノ酸、最も好ましくは1~6個のアミノ酸、より最も好ましくは1~3個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[3]も挙げられる。
[3]配列番号1で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
なお、前記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号1で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。
前記酵素活性を有する蛋白質であることを確認する方法としては、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
前記ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子としては、具体的には、下記[1]又は[2]が挙げられる。
[1]配列番号2で表される塩基配列からなるDNA
[2]配列番号2で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部の塩基配列は、ノーザン又はサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、又はPCR(Polymerase Chain Reaction)解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができるが、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAであってもよい。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
前記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができるが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェントな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度及び温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、更に低いストリンジェントな条件としては、前記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
前記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、又は変更することにより設定することもできる。前記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
前記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLAST及びFASTA等のプログラムを用いて、前記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号2で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
前記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、所定の酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAであることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
また、前記蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列を同定する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、生育する植物から、Total RNAを抽出し、必要に応じてmRNAを精製し、逆転写反応によりcDNAを合成する。次に目的蛋白質に相当する既知の蛋白質のアミノ酸配列をもとに、縮重プライマーを設計し、RT-PCRを行い、部分的にDNA断片の増幅を行い、部分的に配列を同定する。次いで、RACE法などを行い、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定する。RACE法(Rapid Amplification of cDNA Ends法)とは、cDNAの塩基配列が部分的に把握されているときに、その既知領域の塩基配列情報を基にPCRを行って、cDNA末端までの未知領域をクローニングする方法で、cDNAライブラリーの作製を経ずに、PCR法によって全長のcDNAをクローニングすることができる方法である。
なお、縮重プライマーは、前記目的蛋白質と共通性の高い配列部位を有する植物由来の配列から作製することが好ましい。
また、前記蛋白質をコードする塩基配列が既知の場合には、その知られている塩基配列から開始コドンを含むプライマー及び終止コドンを含むプライマーを設計し、合成したcDNAを鋳型にしてRT-PCRを行うことで全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定することができる。
<<ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質>>
ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質としては、ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質であれば特に限定されず、例えば、植物由来のゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質であればよい。ここで、植物としては、前述の植物と同様の植物である。なかでも、Hevea属又はTaraxacum属(なかでも、Hevea属)に属する植物由来のゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質であることが好ましく、Hevea brasiliensis又はTaraxacum koksaghyz(なかでも、Hevea brasiliensis)由来のゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質であることがより好ましい。また、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質であることも好ましい。
また、ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質は、Nogo-B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質と相互作用しない蛋白質が好ましい。
前記ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質の具体例は、例えば、シロイヌナズナ由来のゴム粒子上に存在しないCPTであるAtCPT4、AtCPT5、パラゴムノキ由来のゴム粒子上に存在しないCPTであるHbCPT4、HbCPT5、トマト由来のゴム粒子上に存在しないCPTであるNDPS1等が挙げられる。なかでも、AtCPT5、HbCPT5が好ましく、AtCPT5がより好ましい。
前記ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[4]が挙げられる。
[4]配列番号3で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[5]も挙げられる。
[5]配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
なお、前記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号3で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1~60個のアミノ酸、更に好ましくは1~45個のアミノ酸、更により好ましくは1~30個のアミノ酸、特に好ましくは1~15個のアミノ酸、最も好ましくは1~6個のアミノ酸、より最も好ましくは1~3個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[6]も挙げられる。
[6]配列番号3で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
なお、前記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号3で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。
前記酵素活性を有する蛋白質であることを確認する方法としては、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
前記ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質の具体例としては、また下記[7]が挙げられる。
[7]配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[8]も挙げられる。
[8]配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
なお、前記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号4で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1~73個のアミノ酸、更に好ましくは1~55個のアミノ酸、更により好ましくは1~37個のアミノ酸、特に好ましくは1~18個のアミノ酸、最も好ましくは1~7個のアミノ酸、より最も好ましくは1~4個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[9]も挙げられる。
[9]配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
なお、前記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号4で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。
前記酵素活性を有する蛋白質であることを確認する方法としては、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
前記ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子としては、具体的には、下記[3]又は[4]が挙げられる。
[3]配列番号5で表される塩基配列からなるDNA
[4]配列番号5で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部の塩基配列は、ノーザン又はサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、又はPCR(Polymerase Chain Reaction)解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができるが、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAであってもよい。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
前記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができるが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェントな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度及び温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、更に低いストリンジェントな条件としては、前記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
前記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、又は変更することにより設定することもできる。前記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
前記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLAST及びFASTA等のプログラムを用いて、前記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号5で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
前記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、所定の酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAであることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
また、前記蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列を同定する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、生育する植物から、Total RNAを抽出し、必要に応じてmRNAを精製し、逆転写反応によりcDNAを合成する。次に目的蛋白質に相当する既知の蛋白質のアミノ酸配列をもとに、縮重プライマーを設計し、RT-PCRを行い、部分的にDNA断片の増幅を行い、部分的に配列を同定する。次いで、RACE法などを行い、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定する。RACE法(Rapid Amplification of cDNA Ends法)とは、cDNAの塩基配列が部分的に把握されているときに、その既知領域の塩基配列情報を基にPCRを行って、cDNA末端までの未知領域をクローニングする方法で、cDNAライブラリーの作製を経ずに、PCR法によって全長のcDNAをクローニングすることができる方法である。
なお、縮重プライマーは、前記目的蛋白質と共通性の高い配列部位を有する植物由来の配列から作製することが好ましい。
また、前記蛋白質をコードする塩基配列が既知の場合には、その知られている塩基配列から開始コドンを含むプライマー及び終止コドンを含むプライマーを設計し、合成したcDNAを鋳型にしてRT-PCRを行うことで全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定することができる。
前記ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子としては、具体的には、また下記[5]又は[6]が挙げられる。
[5]配列番号6で表される塩基配列からなるDNA
[6]配列番号6で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部の塩基配列は、ノーザン又はサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、又はPCR(Polymerase Chain Reaction)解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができるが、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAであってもよい。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
前記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができるが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェントな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度及び温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、更に低いストリンジェントな条件としては、前記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
前記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、又は変更することにより設定することもできる。前記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
前記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLAST及びFASTA等のプログラムを用いて、前記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号6で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
前記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、所定の酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAであることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
また、前記蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列を同定する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、生育する植物から、Total RNAを抽出し、必要に応じてmRNAを精製し、逆転写反応によりcDNAを合成する。次に目的蛋白質に相当する既知の蛋白質のアミノ酸配列をもとに、縮重プライマーを設計し、RT-PCRを行い、部分的にDNA断片の増幅を行い、部分的に配列を同定する。次いで、RACE法などを行い、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定する。RACE法(Rapid Amplification of cDNA Ends法)とは、cDNAの塩基配列が部分的に把握されているときに、その既知領域の塩基配列情報を基にPCRを行って、cDNA末端までの未知領域をクローニングする方法で、cDNAライブラリーの作製を経ずに、PCR法によって全長のcDNAをクローニングすることができる方法である。
なお、縮重プライマーは、前記目的蛋白質と共通性の高い配列部位を有する植物由来の配列から作製することが好ましい。
また、前記蛋白質をコードする塩基配列が既知の場合には、その知られている塩基配列から開始コドンを含むプライマー及び終止コドンを含むプライマーを設計し、合成したcDNAを鋳型にしてRT-PCRを行うことで全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定することができる。
<<変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質の具体例>>
前記変異CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[A-1]が挙げられる。
[A-1]配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、前記変異CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[A-2]も挙げられる。
[A-2]配列番号7で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
なお、前記変異CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号7で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1~54個のアミノ酸、更に好ましくは1~40個のアミノ酸、更により好ましくは1~27個のアミノ酸、特に好ましくは1~13個のアミノ酸、最も好ましくは1~5個のアミノ酸、より最も好ましくは1~3個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、前記変異CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[A-3]も挙げられる。
[A-3]配列番号7で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
なお、前記変異CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号7で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。
前記酵素活性を有する蛋白質であることを確認する方法としては、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子としては、具体的には、下記[B-1]又は[B-2]が挙げられる。
[B-1]配列番号8で表される塩基配列からなるDNA
[B-2]配列番号8で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部の塩基配列は、ノーザン又はサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、又はPCR(Polymerase Chain Reaction)解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができるが、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAであってもよい。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
前記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができるが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェントな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度及び温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、更に低いストリンジェントな条件としては、前記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
前記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、又は変更することにより設定することもできる。前記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
前記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLAST及びFASTA等のプログラムを用いて、前記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号8で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
前記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、所定の酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAであることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
また、前記蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列を同定する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、生育する植物から、Total RNAを抽出し、必要に応じてmRNAを精製し、逆転写反応によりcDNAを合成する。次に目的蛋白質に相当する既知の蛋白質のアミノ酸配列をもとに、縮重プライマーを設計し、RT-PCRを行い、部分的にDNA断片の増幅を行い、部分的に配列を同定する。次いで、RACE法などを行い、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定する。RACE法(Rapid Amplification of cDNA Ends法)とは、cDNAの塩基配列が部分的に把握されているときに、その既知領域の塩基配列情報を基にPCRを行って、cDNA末端までの未知領域をクローニングする方法で、cDNAライブラリーの作製を経ずに、PCR法によって全長のcDNAをクローニングすることができる方法である。
なお、縮重プライマーは、前記目的蛋白質と共通性の高い配列部位を有する植物由来の配列から作製することが好ましい。
また、前記蛋白質をコードする塩基配列が既知の場合には、その知られている塩基配列から開始コドンを含むプライマー及び終止コドンを含むプライマーを設計し、合成したcDNAを鋳型にしてRT-PCRを行うことで全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定することができる。
<ポリイソプレノイドの製造方法>
本開示のポリイソプレノイドの製造方法は、本開示の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いることを特徴とする。
本開示のポリイソプレノイドの製造方法は、本開示の変異CPTファミリー蛋白質を用いる限り特に限定されないが、生体外で、本開示の変異CPTファミリー蛋白質を膜粒子(好ましくはゴム粒子)に結合させる結合工程を含むことが好ましい。生体外で、膜粒子(好ましくはゴム粒子)に変異CPTファミリー蛋白質を結合させることで、膜粒子(好ましくはゴム粒子)中にポリイソプレノイドを合成することができるため、より高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能となる。これは、膜粒子(好ましくはゴム粒子)の内部に生成されたポリイソプレノイドが蓄積されることとなるため、膜粒子(好ましくはゴム粒子)に結合しない場合に比べて、より鎖長の長い生成物を生成可能となるためである。
ここで、本明細書において、ポリイソプレノイドとは、イソプレン単位(C)で構成された重合体(cis―1,4―ポリイソプレンまたはtrans―1,4―ポリイソプレン)を基本炭素骨格とする天然物)の総称である。ポリイソプレノイドとしては、例えばソラネソール(C45) 、ウンデカプレニルリン酸(C55)、グッタペルカ、ゴムなどの重合体が挙げられる。ポリイソプレノイドは、イソプレン単位がシス型に結合したシス型ポリイソプレノイドであることが好ましい。また、本明細書において、イソプレノイドは、イソプレン単位(C)を有する化合物を意味し、ポリイソプレノイドをも含む概念である。
膜粒子としては、膜構造を有する粒子であれば特に限定されず、例えば、ゴム粒子、油滴(lipid droplet)等の生体膜;ナノディスク、リポソーム等の人工膜;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴム粒子が好ましい。以下においては、膜粒子がゴム粒子である場合について説明するが、他の膜粒子の場合も同様である。
なお、本開示の製造方法は、前記結合工程以外の他の工程を含んでいてもよく、また、各工程は1回行われてもよいし、複数回繰り返し行われてもよい。
また、ゴム粒子に結合する変異CPTファミリー蛋白質の量は特に限定されない。
本明細書において、ゴム粒子に変異CPTファミリー蛋白質が結合するとは、変異CPTファミリー蛋白質の全部又は一部がゴム粒子中に取り込まれる又はゴム粒子の膜構造に挿入される、といったことを意味するが、これに限らず、ゴム粒子表面又は内部に局在する等の場合をも意味する。また更には、ゴム粒子に結合している蛋白質と変異CPTファミリー蛋白質が複合体を形成し、複合体としてゴム粒子上に存在する場合もゴム粒子に結合しているとの概念範囲に含まれる。他の膜粒子の場合も同様である。
前記ゴム粒子の由来は特に限定されず、例えば、パラゴムノキ、ロシアンタンポポ、グアユール、ノゲシなどのゴム産生植物のラテックス由来であればよい。
また、前記ゴム粒子の粒子径も特に限定されず、所定の粒子径のものを分取して用いてもよいし、様々な粒子径のものが含まれた状態のものを使用してもよく、所定の粒子径のものを分取して用いる場合であっても、用いられるゴム粒子としては、粒子径の小さいSmall Rubber Particles(SRP)を用いてもよいし、粒子径の大きいLarge Rubber Particles(LRP)を用いてもよい。
前記所定の粒子径のゴム粒子を分取する方法としては、通常行われる方法を採用することができるが、例えば、遠心分離処理、より好ましくは多段階の遠心分離処理、を行う方法などが挙げられる。具体的には、500~1500×gでの遠心分離処理、1700~2500×gでの遠心分離処理、7000~9000×gでの遠心分離処理、15000~25000×gでの遠心分離処理、40000~60000×gでの遠心分離処理を順に行う方法が挙げられる。なお、各遠心分離処理の処理時間としては、20分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、40分以上が更に好ましい。一方、120分以下が好ましく、90分以下がより好ましい。また、各遠心分離処理の処理温度としては、0~10℃が好ましく、2~8℃がより好ましく、4℃が特に好ましい。
前記結合工程においては、生体外で、前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質がゴム粒子に結合される。
前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、前述の通りである。
また、前記変異CPTファミリー蛋白質は、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した蛋白質であるが、当該ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質の由来を、前記変異CPTファミリー蛋白質と結合させるゴム粒子の由来と同一とすると、前記変異CPTファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列の由来及び/又はC末端領域のアミノ酸配列の由来と、前記変異CPTファミリー蛋白質と結合させるゴム粒子の由来とが同一となり、前記変異CPTファミリー蛋白質とゴム粒子との結合能を更に高めることができる。
例えば、パラゴムノキ由来のゴム粒子を用いる場合には、前記変異CPTファミリー蛋白質のN末端領域及び/又はC末端領域を、パラゴムノキ由来のゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質(HRT1)のN末端領域及び/又はC末端領域に置換した変異蛋白質を用いるのが好ましく、又は、ロシアンタンポポ由来のゴム粒子を用いる場合には、前記変異CPTファミリー蛋白質のN末端領域及び/又はC末端領域を、ロシアンタンポポ由来のゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質のN末端領域及び/又はC末端領域に置換した変異蛋白質を用いることが好ましい。
なお、前記結合工程においては、生体外で、前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質がゴム粒子に結合される限り、更にその他の蛋白質が結合されてもよい。
前記その他の蛋白質の由来は特に制限されないが、植物由来であることが好ましく、ゴム産生植物由来であることがより好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることが更に好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることがより更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。
前記その他の蛋白質としては、何ら制限されずいかなる蛋白質であってもよいが、ゴム粒子のゴム合成能力の観点からは、ゴム産生植物体内でもともとゴム粒子上に存在する蛋白質であることが好ましい。なお、ゴム粒子上に存在する蛋白質は、大きくゴム粒子の膜表面に結合する蛋白質であってもよいし、ゴム粒子の膜に挿入されるように結合する蛋白質であってもよいし、前記膜に結合している蛋白質と複合体を形成して膜表面上に存在することになる蛋白質であってもよい。
前記ゴム産生植物体内でもともとゴム粒子上に存在する蛋白質としては、例えば、HRT1―REF―BRIDGING PROTEIN(HRBP)、、Rubber Elongation Factor(REF)、Small Rubber Particle Protein(SRPP)、β-1,3-グルカナーゼ、Heveinなどが挙げられる。なかでも、HRT1―REF―BRIDGING PROTEIN(HRBP)、Rubber Elongation Factor(REF)が好ましく、REFがより好ましい。
前記結合工程は、生体外で、ゴム粒子に前記変異CPTファミリー蛋白質を結合させることができればその手段は特に制限されず、例えば、前記変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成を行い、ゴム粒子に前記変異CPTファミリー蛋白質を結合させる方法などが挙げられる。
前記結合工程としては、中でも、前記変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成を行い、ゴム粒子に前記変異CPTファミリー蛋白質を結合させる工程であることが好ましい。
すなわち、変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて(より具体的には、変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを混合して)蛋白質合成を行うことで、変異CPTファミリー蛋白質の結合したゴム粒子を得ることが好ましい。
前記変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて行われる蛋白質合成は、いわゆる、無細胞蛋白合成法を用いた変異CPTファミリー蛋白質の合成であり、生物学的機能を担持した(native状態の)変異CPTファミリー蛋白質を合成でき、当該無細胞蛋白合成法をゴム粒子の共存下で行うことにより、合成される変異CPTファミリー蛋白質をnative状態でゴム粒子に結合することが可能となる。
ここで、前記無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子との共存下、蛋白質合成を行うことで、ゴム粒子に変異CPTファミリー蛋白質が結合するとは、当該蛋白質合成により合成された変異CPTファミリー蛋白質の各蛋白質の全部又は一部がゴム粒子中に取り込まれる又はゴム粒子の膜構造に挿入される、といったことを意味するが、これに限らず、ゴム粒子表面又は内部に局在する等の場合をも意味する。また更には、上述のようにゴム粒子に結合している蛋白質と複合体を形成し、複合体としてゴム粒子上に存在する場合もゴム粒子に結合しているとの概念範囲に含まれる。
前記変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAはそれぞれ、翻訳されて変異CPTファミリー蛋白質を合成しうる翻訳鋳型である。
前記変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAはそれぞれ、翻訳されて変異CPTファミリー蛋白質を合成しうる翻訳鋳型であればその調製方法は特に制限されない。
前記無細胞蛋白合成溶液は、前記変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む限り、その他の蛋白質をコードするmRNAを含んでいてもよい。
前記その他の蛋白質をコードするmRNAとしては、翻訳されてその他の蛋白質を発現することができるものを用いることができる。なお、その他の蛋白質としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
前記結合工程においては、ゴム粒子の共存下で変異CPTファミリー蛋白質の無細胞蛋白合成が行われることが好ましいが、当該無細胞蛋白合成は、前記無細胞蛋白合成溶液を用いて、従来と同様の方法で行うことができる。用いられる無細胞蛋白合成系としては、通常用いられる無細胞蛋白質合成手段を採用することができる。例えば、Rapid Translation System RTS500(Roshe Diagnostics社製)やProc.Natl.Acad.Sci.USA,97:559-564(2000)、特開2000-236896号公報、特開2002-125693号公報、特開2002-204689号公報に従って調製された小麦胚芽抽出液及びその無細胞蛋白質合成系(特開2002-204689号公報、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:14652-14657(2002))を使用することができる。中でも、胚芽抽出物を用いる系が好ましい。
前記胚芽抽出物の由来は特に限定されないが、翻訳効率の観点からは、植物の蛋白質を無細胞蛋白合成法で合成する場合には植物由来の胚芽抽出物を用いることが好ましい。特に好ましくは小麦由来の胚芽抽出物を用いることである。
前記胚芽抽出物の調製方法としては特に制限されず、通常の胚芽抽出物調製方法を採用することができるが、例えば、特開2005-218357号公報に記載された方法を採用すればよい。
前記無細胞蛋白合成溶液は、更にサイクリックヌクレオシド一リン酸誘導体又はその塩(以降、単に「活性増強物質」とも称する。)を含むことが好ましい。該活性増強物質を含有することにより、蛋白質合成活性を更に増強させることができる。
前記サイクリックヌクレオシド一リン酸誘導体又はその塩としては、無細胞蛋白合成活性を増強しうるものであれば特に制限されず、例えば、アデノシン-3’,5’サイクリック一リン酸及びその塩、アデノシン-3’,5’サイクリックチオ一リン酸(Spアイソマー)及びその塩、アデノシン-3’,5’サイクリックチオ一リン酸(Rpアイソマー)及びその塩、グアノシン-3’,5’サイクリック一リン酸及びその塩、グアノシン-3’,5’サイクリックチオ一リン酸(Spアイソマー)及びその塩、グアノシン-3’,5’サイクリックチオ一リン酸(Rpアイソマー)及びその塩、8-ブロモアデノシン-3’,5’-サイクリック一リン酸(ブロモcAMP)及びその塩、8-(4-クロロフェニルチオ)アデノシン-3’,5’-サイクリック一リン酸(クロロフェニルチオcAMP)及びその塩、5,6-ジクロロ-1-β-D-リボフラノシルべンジミダゾルアデノシン-3’,5’-サイクリック一リン酸(ジクロロリボフラノシルべンジミダゾルcAMP)及びその塩、アデノシン-2’,5’サイクリック一リン酸及びその塩、アデノシン-2’,5’サイクリックチオ一リン酸(Spアイソマー)及びその塩、アデノシン-2’,5’サイクリックチオ一リン酸(Rpアイソマー)及びその塩、グアノシン-2’,5’サイクリック一リン酸及びその塩、グアノシン-2’,5’サイクリックチオ一リン酸(Spアイソマー)及びその塩、グアノシン-2’,5’サイクリックチオ一リン酸(Rpアイソマー)及びその塩等が挙げられる。
前記サイクリックヌクレオシド一リン酸誘導体との塩を形成する塩基としては、生化学的に許容しうるもので、当該誘導体と塩を形成するものであれば特に制限されないが、中でも好ましいものとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、トリスヒドロキシアミノメタン等の有機塩基が挙げられる。
前記活性増強物質としては、中でも、アデノシン-3’,5’サイクリック一リン酸、アデノシン-3’,5’サイクリック一リン酸ナトリウムが特に好ましい。また、これら活性増強物質は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記活性増強物質は、あらかじめ前記無細胞蛋白合成溶液に加えておいてもよいが、当該溶液中で不安定である場合には、無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成反応を行う際に加えるのが好ましい。
前記活性増強物質の添加量としては、前記無細胞蛋白合成溶液による蛋白質合成反応が活性化(増加)しうる濃度であれば特に制限されない。具体的には、反応系中の最終濃度として、通常0.1ミリモル/リットル以上であればよい。濃度の下限は、好ましくは0.2ミリモル/リットル、より好ましくは0.4ミリモル/リットル、特に好ましくは0.8ミリモル/リットルである。他方、濃度の上限は、好ましくは24ミリモル/リットル、より好ましくは6.4ミリモル/リットル、特に好ましくは3.2ミリモル/リットルである。
前記活性増強物質を前記無細胞蛋白合成溶液に加える際の無細胞蛋白合成溶液の温度としては特に限定されないが、0~30℃が好ましく、10~26℃がより好ましい。
前記無細胞蛋白合成溶液は、変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNA(翻訳鋳型)に加え、蛋白質合成に必須の成分であるATP、GTP、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、L型アミノ酸、カリウムイオン及びマグネシウムイオン等を含有し、更には必要に応じて活性増強物質を含むものであり、このような無細胞蛋白合成溶液を用いることにより無細胞蛋白合成反応系とすることができる。
なお、前記特開2005-218357号公報に記載された方法で調製された胚芽抽出物には蛋白質合成反応に必要とされる量のtRNAが含まれているため、当該方法により調製された胚芽抽出物を無細胞蛋白合成溶液に用いる場合には、別途調製したtRNAを追加することは必須要件ではない。すなわち、無細胞蛋白合成溶液には、必要に応じてtRNAを追加すればよい。
前記結合工程は、変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成を行うことが好ましいものであるが、具体的には蛋白質の合成前又は合成後の適当な時期に、好ましくは蛋白質合成前に、前記無細胞蛋白合成溶液にゴム粒子を加えることにより行うことができる。
また、無細胞蛋白合成溶液と共存させるゴム粒子の濃度は、5~50g/Lであることが好ましい。すなわち、無細胞蛋白合成溶液1Lに対してゴム粒子を5~50g共存させることが好ましい。無細胞蛋白合成溶液と共存させるゴム粒子の濃度が5g/L未満であると、合成された変異CPTファミリー蛋白質が結合したゴム粒子を回収するために、超遠心分離等による分離処理を行った際に、ゴム層が形成されず、合成された変異CPTファミリー蛋白質が結合したゴム粒子を回収することが困難になる場合がある。一方、無細胞蛋白合成溶液と共存させるゴム粒子の濃度が50g/Lを超えると、ゴム粒子同士が凝集し、合成された変異CPTファミリー蛋白質がうまくゴム粒子に結合できなくなるおそれがある。前記ゴム粒子の濃度としてより好ましくは10~40g/L、更に好ましくは15~35g/L、特に好ましくは15~30g/Lである。
また、前記無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子との共存下での蛋白質合成は、その反応の進展に伴い、適宜ゴム粒子を追加していってもよい。ゴム粒子を前記無細胞蛋白合成溶液に加えてから例えば3~48時間(好ましくは3~30時間、より好ましくは3~24時間)など無細胞蛋白合成系が活性な間、前記無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とが共存するようにしておくことが好ましい。
前記ゴム粒子は、前記結合工程に用いる前に(より好ましくは前記無細胞蛋白合成溶液と共存させる前に)前処理等の特段の処理を行う必要はない。ただし、ゴム粒子上に存在する蛋白質のうち、結合させたい変異CPTファミリー蛋白質の割合を高めるために、予め界面活性剤によりゴム粒子からある程度蛋白質を除去してもよい。その際、除去後のゴム粒子のゴム合成活性が除去前の50%以上残っていることが好ましい。
前記界面活性剤としては特に限定されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、膜上の蛋白質の変性作用が小さい点で、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好適に用いられ、両性界面活性剤が特に好適に用いられる。すなわち、前記界面活性剤が、両性界面活性剤であることもまた、第1の本開示の好適な実施形態の1つである。
これら界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系、ポリオキシアルキレンポリグルコシド系の非イオン性界面活性剤や、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオキシアルキレンエーテル系の非イオン性界面活性剤、多価アルコール脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤が好ましい。
前記ポリオキシアルキレンエーテル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリオールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノ、ジ、又はトリスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルが好適に使用される。なお、前記ポリオールとしては、炭素数2~12の多価アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、グルコース、スクロース、ペンタエリトリトール、ソルビタン等が挙げられる。
前記ポリオキシアルキレンエステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルロジン酸エステル等が挙げられる。
前記多価アルコール脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2~12の多価アルコールの脂肪酸エステル又はポリオキシアルキレン多価アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられる。より具体的には、例えば、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。また、これらのポリアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル等)も使用可能である。これらの中でも、ソルビタン脂肪酸エステルが好適に使用される。
前記糖脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ショ糖、グルコース、マルトース、フルクトース、多糖類の脂肪酸エステル等が挙げられ、これらのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
前記アルキルポリグリコシド系の非イオン性界面活性剤としては、グリコシドとしてグルコース、マルトース、フルクトース、ショ糖などが挙げられ、例えば、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルポリグルコシドなどが挙げられ、これらの脂肪酸エステル類も挙げられる。また、これらすべてのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
これら非イオン性界面活性剤におけるアルキル基としては、例えば、炭素数4~30の直鎖又は分岐した飽和若しくは不飽和のアルキル基が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン基としては、炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられ、例えば、酸化エチレンの付加モル数が1~50モル程度のものが挙げられる。また、前記脂肪酸としては、例えば、炭素数4~30の直鎖又は分岐した飽和若しくは不飽和の脂肪酸が挙げられる。
前記非イオン性界面活性剤としては、中でも、ゴム粒子の膜を安定化させた状態で、かつ蛋白質の変性作用が小さい状態で、適度に膜結合蛋白質を除去できるという理由から、ポリオキシエチレンエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100)、ソルビタンモノラウレート(Span 20)が特に好ましい。
前記両性界面活性剤としては、例えば、四級アンモニウム塩基/スルホン酸基(-SOH)タイプ、四級アンモニウム塩基/リン酸酸基タイプ(水に可溶)、四級アンモニウム塩基/リン酸酸基タイプ(水に不溶)、四級アンモニウム塩基/カルボキシル基タイプなどの両性イオン界面活性剤が挙げられる。なお、前記の酸基は塩であってもよい。
特に、前記の両性イオン界面活性剤が一分子中に+と-の両電荷を有することが好ましく、前記の酸基の酸解離定数(pKa)が、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
前記両性界面活性剤としては、具体的には、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミノ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CHAPSO)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミノ]-プロパンスルホン酸(CHAPS)、N,N-ビス(3-D-グルコナミドプロピル)-コラミド、n-オクタデシル-N,N’-ジメチル-3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、n-デシル-N,N’-ジメチル-3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、n-ドデシル-N,N’-ジメチル-3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、n-テトラデシル-N,N’-ジメチル-3-アミノ-1-プロパンスルホン酸{Zwittergent(商標)-3-14}、n-ヘキサデシル-N,N’-ジメチル-3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、n-オクタデシル-N,N’-ジメチル-3-アミノ-1-プロパンスルホン酸等のアンモニウムスルホベタイン類、n-オクチルホスホコリン、n-ノニルホスホコリン、n-デシルホスホコリン、n-ドデシルホスホコリン、n-テトラデシルホスホコリン、n-ヘキサデシルホスホコリン等のホスホコリン類、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン等のホスファチジルコリン類が挙げられる。これらの中でも、ゴム粒子の膜を安定化させた状態で適度に蛋白質を除去できるという理由から、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミノ]-プロパンスルホン酸(CHAPS)が特に好ましい。
前記界面活性剤の処理濃度は、使用する界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)の3倍以内であることが好ましい。臨界ミセル濃度の3倍を超える濃度の界面活性剤で処理するとゴム粒子の膜安定性が低下するおそれがある。より好ましくは2.5倍以内であり、更に好ましくは2.0倍以内である。また下限としては、0.05倍以上であることが好ましく、0.1倍以上であることがより好ましく、0.3倍以上であることが更に好ましい。
前記無細胞蛋白合成における蛋白質合成のための反応システム又は装置としては、バッチ(回分)法(Pratt,J.M.et al.,Transcription and Tranlation,Hames,179-209,B.D.&Higgins,S.J.,eds,IRL Press,Oxford(1984))や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞蛋白質合成システム(Spirin,A.S.et al.,Science,242,1162-1164(1988))、透析法(木川等、第21回日本分子生物学会、WID6)、重層法(PROTEIOSTM Wheat germ cell-free protein synthesis core kit取扱説明書:TOYOBO社製)等が挙げられる。その他、蛋白質合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法等も用いることができる。
中でも、重層法は操作が簡便であるという利点はあるものの反応溶液中でゴム粒子が分散してしまい、合成される変異CPTファミリー蛋白質をゴム粒子に効率よく結合させることが困難であるのに対して、透析法では、合成される変異CPTファミリー蛋白質の原料となるアミノ酸は透析膜を透過できるがゴム粒子は透過しないため、ゴム粒子の分散を防ぐことができ、効率的にゴム粒子に合成される変異CPTファミリー蛋白質を結合させることができることから、透析法が好ましい。
なお、前記透析法とは、前記無細胞蛋白合成における蛋白質合成の合成反応液を透析内液とし、透析外液と物質移動が可能な透析膜によって隔離される装置を用いて、蛋白質合成を行う方法である。具体的には、例えば、翻訳鋳型を除いた前記合成反応液を必要に応じて適当時間プレインキュベートした後、翻訳鋳型を添加して、適当な透析容器に入れ反応内液とする。透析容器としては、底部に透析膜が付加されている容器(第一化学社製の透析カップ12,000等)や、透析用チューブ(三光純薬社製の12,000等)が挙げられる。透析膜は、10,000ダルトン以上の分子量限界を有するものが用いられるが、12,000ダルトン程度の分子量限界を有するものが好ましい。
前記透析外液としては、アミノ酸を含む緩衝液が用いられる。透析外液は反応速度が低下した時点で、新鮮なものと交換することにより透析効率を上昇させることができる。反応温度及び時間は用いる蛋白質合成系において適宜選択されるが、例えば、小麦由来の胚芽抽出物を用いた系においては、通常10~40℃、好ましくは18~30℃、より好ましくは20~26℃で、10分~48時間(好ましくは10分~30時間、より好ましくは10分~24時間)行うことができる。
また、前記無細胞蛋白合成溶液に含まれる変異CPTファミリー蛋白質をコードするmRNAは、分解されやすいことから、前記蛋白質合成反応中に適宜当該mRNAを追加することで、蛋白質の合成をより効率的に行うことができる。なお、前記mRNAの添加時間、添加回数、添加量等は特に制限されず、適宜設定することができる。
第1の本開示の製造方法においては、生体外で、変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質をゴム粒子に結合させる結合工程を行った後、必要に応じてゴム粒子を回収する工程を行ってもよい。
前記ゴム粒子回収工程は、ゴム粒子を回収することができればその手法は特に制限されず、ゴム粒子を回収する通常行われる方法により行うことができる。具体的には、例えば、遠心分離により行う方法などが挙げられる。当該遠心分離によりゴム粒子を回収する場合、その遠心力や、遠心分離処理時間、遠心分離処理温度はゴム粒子を回収できるよう適宜設定することができるが、例えば、遠心分離処理の遠心力としては、15000×g以上が好ましく、20000×g以上がより好ましく、25000×g以上が更に好ましい。一方、遠心力は大きくしすぎてもそれに見合うだけの分離効果が望めないことから、遠心力の上限としては、50000×g以下が好ましく、45000×g以下がより好ましい。遠心分離処理時間としては、20分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、40分以上が更に好ましい。一方、遠心分離処理時間を長くしすぎてもそれに見合うだけの分離効果が望めないことから、遠心分離処理時間の上限としては、120分以下が好ましく、90分以下がより好ましい。
また、遠心分離処理温度としては、ゴム粒子に結合した変異CPTファミリー蛋白質の蛋白活性を維持するという観点から、0~10℃が好ましく、2~8℃がより好ましく、4℃が特に好ましい。
例えば、前記無細胞蛋白合成を行った場合には、前記遠心分離処理を行うと、ゴム粒子が上層に、無細胞蛋白合成溶液が下層に分離される。その後、下層の無細胞蛋白合成溶液を除去することで、変異CPTファミリー蛋白質を結合させたゴム粒子を回収することができる。回収したゴム粒子はpHが中性の適当な緩衝液に再懸濁することで保存することができる。
なお、前記ゴム粒子回収工程を行った後に回収されたゴム粒子は更なる特別な処理を経ずに通常の天然ゴムと同様に用いることができる。
更に、第1の本開示のポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドは、前記ゴム粒子を以下の固化工程に供することで回収することができる。
前記固化工程において、固化する方法としては、特に限定されず、エタノール、メタノール、アセトン等のポリイソプレノイドを溶解しない溶媒にゴム粒子を添加する方法やゴム粒子に酸を添加する方法等が挙げられる。固化工程を行うことにより、ゴム粒子からゴム(ポリイソプレノイドの1種)を固形分として回収できる。得られたゴムは、必要に応じて乾燥してから使用すればよい。
このように、第1の本開示によれば、生体外で、変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質をゴム粒子に結合させることで、ゴム粒子中にポリイソプレノイドを合成することができ、効率的に反応槽(試験管、プラントなど)内で高分子量のポリイソプレノイドを生産することが可能となる。
(ゴム製品の製造方法)
第1の本開示のゴム製品の製造方法は、前記第1の本開示のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程と、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
ゴム製品としては、ゴム(好ましくは天然ゴム)を使用して製造できるゴム製品であれば特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ゴムローラ、ゴム防舷材、手袋、医療用ゴムチューブ等が挙げられる。
ゴム製品が空気入りタイヤの場合、すなわち、第1の本開示のゴム製品の製造方法が第1の本開示の空気入りタイヤの製造方法の場合、前記生ゴム製品成形工程は、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程に、前記加硫工程は、前記生タイヤを加硫する加硫工程に相当する。すなわち、第1の本開示の空気入りタイヤの製造方法は、前記ポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程と、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法である。
<混練工程>
混練工程では、前記ポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る。
添加剤としては特に限定されず、ゴム製品の製造に用いられる添加剤を使用できる。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、例えば、前記ポリイソプレノイド以外のゴム成分、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなどの補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、各種老化防止剤、オイルなどの軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等が挙げられる。
混練工程における混練は、オープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて行えばよい。
<生ゴム製品成形工程(タイヤの場合は生タイヤ成形工程)>
生ゴム製品成形工程では、混練工程により得られた混練物から生ゴム製品(タイヤの場合は生タイヤ)を成形する。
生ゴム製品の成形方法としては特に限定されず、生ゴム製品の成形に用いられる方法を適宜適用すればよい。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、混練工程により得られた混練物を、各タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、各タイヤ部材を貼り合わせ、生タイヤ(未加硫タイヤ)を成形すればよい。
<加硫工程>
加硫工程では、生ゴム製品成形工程により得られた生ゴム製品を加硫することにより、ゴム製品が得られる。
生ゴム製品を加硫する方法としては特に限定されず、生ゴム製品の加硫に用いられる方法を適宜適用すればよい。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、生ゴム製品成形工程により得られた生タイヤ(未加硫タイヤ)を加硫機中で加熱加圧して加硫することにより空気入りタイヤが得られる。
(第2の本開示)
(ベクター)
第2の本開示のベクターは、本開示の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターである。このようなベクターを植物に導入して形質転換を行うことにより、当該ベクターに含まれる、変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子が発現し、当該植物において、遺伝子組み換え前と比較して、高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にする。
前記ベクターは、植物での蛋白質発現に用いられるプロモーター、及び、該プロモーターに機能的に連結された前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むことが好ましい。これにより、より好適に植物内において、変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現できる。
ここで、本明細書において、遺伝子をプロモーターと機能的に連結させるとは、当該プロモーターの制御を受けるように、当該プロモーターの下流に当該遺伝子配列を連結することを意味する。
前記植物での蛋白質発現に用いられるプロモーターとしては、植物細胞中で機能するものであれば特に限定されず、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子プロモーター、タバコモザイクウィルスの35Sプロモーター、イネ由来アクチン遺伝子プロモーター、ユビキチンプロモーター等が挙げられる。
前記ベクターは、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーター、及び、該プロモーターに機能的に連結された前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むことが更に好ましい。このようなベクターを植物に導入して形質転換を行うことにより、当該ベクターに含まれる、前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子が乳管特異的に発現し、当該植物において、遺伝子組み換え前と比較して、高分子量のポリイソプレノイドの製造をより好適に可能にする。
なお、本明細書において、プロモーターが乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するとは、所望の遺伝子を当該プロモーターと機能的に連結させて植物に導入した場合に、当該所望の遺伝子が乳管で特異的に発現されるように遺伝子発現を制御する活性を有することを意味する。ここで、乳管特異的に遺伝子が発現するとは、当該遺伝子が植物中、乳管以外の部位では全く又はほとんど発現せず、当該遺伝子が実質的に乳管でのみ専ら発現しているといえる状態を意味する。
第2の本開示のベクターは、例えば、一般的に植物の形質転換用ベクターとして知られているベクターに、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターの塩基配列、及び、変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を従来公知の方法により挿入することで作製することができる。第2の本開示のベクターを作製するために使用することができるベクターとしては、例えば、pBI系のベクターや、pGA482、pGAH、pBIGなどのバイナリーベクター、pLGV23Neo、pNCAT、pMON200などの中間系プラスミド、GATEWAYカセットを含むpH35GSなどが挙げられる。
第2の本開示のベクターは、前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を含む限り、プロモーターの塩基配列に加えて、その他の塩基配列を含んでいてもよい。通常、ベクターにはこれらの塩基配列に加えて、ベクター由来の配列が含まれており、更に、制限酵素認識配列、スペーサ―配列、マーカー遺伝子の配列、レポーター遺伝子の配列などが含まれる。
前記マーカー遺伝子としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。また、前記レポーター遺伝子は、植物体中での発現部位を確認するために導入するものであり、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、GUS(βグルクロニダーゼ)遺伝子、GFP(緑色蛍光蛋白質)、RFP(赤色蛍光蛋白質)等が挙げられる。
前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、前述の第1の本開示で述べたとおりである。
前記乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターとしては、Rubber Elongation Factor(REF)をコードする遺伝子のプロモーター、Small Rubber Particle Protein(SRPP)をコードする遺伝子のプロモーター、Hevein2.1(HEV2.1)をコードする遺伝子のプロモーター、及び、MYC1 transcription factor(MYC1)をコードする遺伝子のプロモーターからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、本明細書において、Rubber Elongation Factor(REF)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のゴム産生植物のラテックスに存在するゴム粒子に結合するゴム粒子結合蛋白質のことであり、ゴム粒子が安定化するのに寄与する。
Small Rubber Particle Protein(SRPP)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のゴム産生植物のラテックスに存在するゴム粒子に結合するゴム粒子結合蛋白質のことである。
Hevein2.1(HEV2.1)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のゴム産生植物の乳管細胞に多く発現している蛋白質のことであり、ゴム粒子の凝集に関与し、抗真菌活性を有するものである。
また、MYC1 transcription factor(MYC1)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のゴム産生植物のラテックスで多く発現している、ジャスモン酸シグナルに関わる転写因子のことである。ここで、transcription factor(転写因子)とは、遺伝子の転写量を増加若しくは減少(好ましくは増加)させる活性を有する蛋白質を意味する。すなわち、本明細書において、MYC1は、ジャスモン酸シグナルに関わる蛋白質のうち少なくとも1種の蛋白質をコードする遺伝子の転写量を増加若しくは減少(好ましくは増加)させる活性(転写因子活性)を有する蛋白質のことである。
第2の本開示のベクター(前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクター)を植物に導入することにより、ポリイソプレノイド生合成に関わる前記変異CPTファミリー蛋白質を発現するように形質転換された形質転換植物が得られる。そして、当該形質転換植物では、ポリイソプレノイド生合成に関わる前記変異CPTファミリー蛋白質が発現することにより、第2の本開示のベクターが導入された植物体内で新たに該蛋白質が有する所定の酵素活性等の機能が増強され、結果的に当該植物において、遺伝子組み換え前と比較して、高分子量のポリイソプレノイドの製造をより好適に可能にする。
次に、前記形質転換植物の作製方法について簡単に説明するが、このような形質転換植物は従来公知の方法により作製することができる。
前記形質転換植物を作出するために、第2の本開示のベクターが導入される植物としては、特に限定されないが、中でも、ポリイソプレノイドを生合成できる植物で変異CPTファミリー蛋白質を発現させることにより、高分子量のポリイソプレノイドの製造が特に期待できることから、前記植物としては、ゴム産生植物が好ましい。なかでも、Hevea属又はTaraxacum属に属する植物が好ましく、Hevea brasiliensis又はTaraxacum koksaghyzがより好ましい。
第2の本開示のベクターを植物(カルスや、培養細胞、スフェロプラスト、プロトプラストといった植物細胞を含む)に導入する方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる方法(特開昭59-140885号公報、特開昭60-70080号公報、国際公開第94/00977号)、エレクトロポレーション法(特開昭60-251887号公報)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856号、特許第2517813号)等を挙げることができる。中でも、アグロバクテリウムを用いる方法(アグロバクテリウム法)を用いて第2の本開示のベクターを植物に導入して形質転換植物(形質転換植物細胞)を作製するのが好ましい。
なお更には、第2の本開示のベクターを、前記DNAを導入する方法などにより、微生物、酵母、動物細胞、昆虫細胞等の、生物体、生物体の一部、器官、組織や培養細胞、スフェロプラスト、プロトプラストなどに導入することによって、シス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドを生産することも可能である。
以上の方法等により、前記形質転換植物(形質転換植物細胞)が得られる。なお、前記形質転換植物は、上述の方法で得られた形質転換植物細胞のみならず、その子孫又はクローン、更にそれらを継代させて得られる子孫植物の全てを含む概念である。一旦、第2の本開示のベクターが導入された形質転換植物細胞が得られれば、該形質転換植物細胞から有性生殖、無性生殖、組織培養、細胞培養、細胞融合等により子孫又はクローンを得ることが可能である。また、該形質転換植物細胞やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、不定芽、不定胚、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該形質転換植物を量産することも可能である。
形質転換植物細胞から植物体(形質転換植物)を再生する方法としては、例えば、ユーカリでは土肥らの方法(特願平11-127025号公報)、イネではFujimuraらの方法(Fujimuraら(1995), Plant Tissue Culture Lett.,vol.2:p74-)、トウモロコシではShillitoらの方法(Shillitoら(1989), Bio/Technology,vol.7:p581-)、ジャガイモではVisserらの方法(Visserら(1989), Theor.Appl.Genet.,vol.78:p589-)、シロイヌナズナではAkamaらの方法(Akamaら(1992), Plant Cell Rep.,vol.12:p7-)が知られており、当業者であれば、これらを参照して形質転換植物細胞から植物体を再生できる。
再生した植物体において、周知の手法を用いることで、目的の蛋白質遺伝子の発現を確認することが出来る。例えば、目的の蛋白質の発現をウエスタンブロット解析すればよい。
前記形質転換植物から種子を得る方法としては、例えば、形質転換植物を適当な培地において発根させ、その発根体を水分含有の土を入れたポットに移植する。適当な栽培条件下で生育させ、最終的に種子を形成させて、該種子を得る。また、種子から植物体を得る方法としては、例えば、前記のようにして得られた形質転換植物由来の種子を、水分含有の土に播種し、適当な栽培条件下で生育させることにより植物体を得ることができる。
第2の本開示では、第2の本開示のベクターを植物に導入することにより、該ベクターに含まれるポリイソプレノイド生合成に関わる前記変異CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子が発現し、当該植物において、遺伝子組み換え前と比較して、高分子量のポリイソプレノイドの製造を可能にする。具体的には、上述の方法で得られた形質転換植物細胞、形質転換植物細胞から得られたカルス、該カルスから再分化した細胞等を適当な培地で培養したり、形質転換植物細胞から再分化した形質転換植物、該形質転換植物から得られた種子から得られた植物体等を適当な栽培条件下で生育させたりすることにより、高分子量のシス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドを製造することができる。
(ゴム製品の製造方法)
第2の本開示のゴム製品の製造方法は、前記第2の本開示のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
ゴム製品としては、第1の本開示において上述したものと同様である。
ゴム製品が空気入りタイヤの場合、すなわち、第2の本開示のゴム製品の製造方法が第2の本開示の空気入りタイヤの製造方法の場合、前記生ゴム製品成形工程は、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程に、前記加硫工程は、前記生タイヤを加硫する加硫工程に相当する。すなわち、第2の本開示の空気入りタイヤの製造方法は、前記第2の本開示のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法である。
<混練工程>
混練工程では、前記第2の本開示のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る。
前記第2の本開示のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドは、前記形質転換植物からラテックスを採取し、採取したラテックスを以下の固化工程に供することにより得られる。
なお、前記形質転換植物からのラテックスの採取方法は特に制限されず、通常行われる方法を採用することができるが、例えば、植物の幹を傷つけてにじみ出る乳液を回収したり(タッピング)、根など形質転換植物の一部を切断し、切断した部分からにじみ出る乳液を回収したり、切断した組織を粉砕し、有機溶媒を用いて抽出して採取したりすることができる。
<固化工程>
前記採取されたラテックスは、固化工程に供される。固化する方法としては、特に限定されず、エタノール、メタノール、アセトン等のポリイソプレノイドを溶解しない溶媒にラテックスを添加する方法やラテックスに酸を添加する方法等が挙げられる。固化工程を行うことにより、ラテックスからゴム(ポリイソプレノイドの1種)を固形分として回収できる。得られたゴムは、必要に応じて乾燥してから使用すればよい。
添加剤としては特に限定されず、ゴム製品の製造に用いられる添加剤を使用できる。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、例えば、前記ラテックスから得られたゴム以外のゴム成分、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなどの補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、各種老化防止剤、オイルなどの軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等が挙げられる。
混練工程における混練は、オープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて行えばよい。
<生ゴム製品成形工程(タイヤの場合は生タイヤ成形工程)>
生ゴム製品成形工程では、第1の本開示において上述した工程と同様である。
<加硫工程>
加硫工程は、第1の本開示において上述した工程と同様である。
実施例に基づいて、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらのみに限定されるものではない。
まず、実施例、比較例の概要について説明する。
実施例1:AtCPT5-両末端(N末端及びC末端)HRT1型を用いたゴム粒子上のアッセイ
比較例1:AtCPT5を用いたゴム粒子上のアッセイ
比較例2:AtCPT5-N末端HRT1型を用いたゴム粒子上のアッセイ
実施例1、比較例1、2において、NgBRファミリー蛋白質と相互作用しないCPTの両末端変異体と、N末端変異体及び通常型との生成物鎖長を比較した。ここで、AtCPT5が、ゴム粒子上に存在しないCPTファミリー蛋白質、HRT1が、ゴム粒子上に存在するCPTファミリー蛋白質に該当する。
また、AtCPT5-N末端HRT1型蛋白質について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した(配列番号11、12)。
(各遺伝子の獲得)
(1)HRT1遺伝子
〔HeveaラテックスからのTotal RNA抽出〕
パラゴムノキのラテックスからホットフェノール法により、Total RNAを抽出した。ラテックス6mLに100mM酢酸ナトリウム緩衝液6mL、10%SDS溶液1mLを添加し、更に65℃で予温しておいた水飽和フェノールを12mL添加した。65℃で5分間インキュベートしたのち、ボルテックスで撹拌し、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った。遠心後、上清を新しいチューブに移し、フェノール:クロロホルム(1:1)溶液12mLを添加し、2分間振盪撹拌した。撹拌後、再度、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を新しいチューブに移し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)溶液12mLを添加し、2分間振盪撹拌した。撹拌後、再度、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を新しいチューブに移し、3M酢酸ナトリウム溶液1.2mLとイソプロパノール13mLを添加し、ボルテックスで撹拌した。Total RNAを沈殿させるために、-20℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、4℃、15000rpmで10分間遠心し、上清を取除くことでTotal RNAの沈殿を回収した。回収したTotal RNAは70%エタノールで2度洗浄したのち、RNase freeの水で溶解させた。
〔Total RNAからcDNAの合成〕
回収したTotal RNAをもとに、cDNAを合成した。cDNAの合成はPrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(Takara)の説明書に従って行った。
〔cDNAからHRT1遺伝子の取得〕
作製した1st strand cDNAを鋳型にHRT1遺伝子の取得を行った。PCRはKOD-plus-Neo(TOYOBO)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
HRT1遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー1:5’- tttggatccgatggaattatacaacggtgagagg-3’
プライマー2:5’- tttgcggccgcttattttaagtattccttatgtttctcc-3’
を使用した。
上述の方法により、HRT1遺伝子が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。
〔cDNAからREF遺伝子の取得〕
プライマー3:5‘- tttctcgagatggctgaagacgaagac -3’
プライマー4:5 ‘- tttggatcctcaattctctccataaaac-3’
を使用した。
上述の方法により、REF遺伝子が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した(配列番号9、10)。
〔ベクターの構築〕
前記取得したDNA断片にdA付加を行った後、pGEM-T Easy Vector System(Promega)を利用してpGEM-T Easy Vectorに挿入し、pGEM-HRT1、pGEM-HRBP、pGEM-REFを作製した。
〔大腸菌の形質転換〕
前記作製したVectorを用いて大腸菌DH5αの形質転換を行い、形質転換体はアンピシリンとX-galを含むLB寒天培地上で培養し、青/白スクリーニング法によって目的遺伝子を導入した大腸菌の選別を行った。
〔プラスミドの抽出〕
目的遺伝子を含むプラスミドで形質転換された大腸菌は、LB液体培地上で37℃で一晩培養したのち、菌体を回収し、プラスミドの回収を行った。プラスミドの回収はFast Geneプラスミドミニキット(日本ジェネティクス)を使用した。回収したプラスミドに挿入された遺伝子の塩基配列に変異がないことをシークエンス解析により確認した。
(2)AtCPT5遺伝子
AtCPT5 (At5g58780)の完全長cDNAはNational Bio-Resource Projectを通して理化学研究所バイオリソースセンターから提供された(リソース番号:RAFL06-16-E16)。
(変異体遺伝子の作製)
〔各断片の作製〕
変異体遺伝子作製のための、PCR断片は以下のプライマーを使用したPCRを行うことで作製した。PCRはKOD-plus-Neo(TOYOBO)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
AtCPT5 N末端無し (217-909)
プライマー5:Fw 5’-TCCCATCCCTACTCATGTGGCAGTG-3’
プライマー6:Rv 5’-TACAGGTTTTCCTCGAGTCAAACCCGACAGCCAA-3’
HRT1 N末端のみ(1-102)AtCPT5融合用
プライマー7:Fw 5’-ACATCACCAAGATATCATGGAATTATACAACGGTGAGAGG-3’
プライマー8:Rv 5’-CACTGCCACATGAGTAGGGATGGGA-3’
AtCPT5 両末端無し (217-834)
プライマー9:Fw 5’-TCCCATCCCTACTCATGTGGCAGTG-3’
プライマー10:Rv 5’-GTCGAAGACCAATATCAGGCCAAAGG-3’
HRT1 C末端のみ(787-873)AtCPT5融合用
プライマー11:Fw 5’-CCTTTGGCCTGATATTGGTCTTCGAC-3’
プライマー12:Rv 5’-TACAGGTTTTCCTCGAGTTATTTTAAG-3’
PCR産物は2.0%アガロースゲルにより電気泳動し,FastGeneTMGel/PCR Extraction Kit(日本ジェネティクス)により目的サイズのバンドをゲル回収した。得られたPCR産物を鋳型としてOverlap Extension PCRを行うことでキメラ配列を作製した。PCRは、94℃ 2分後、98℃ 10秒、55℃ 30秒、68℃ 30秒を1サイクルとし、30サイクル行った。
AtCPT5 N末なし+HRT1N末のみ
プライマー13:Fw 5’-ACATCACCAAGATATCATGGAATTATACAACGGTGAGAGG-3’
プライマー14:Rv 5’-TACAGGTTTTCCTCGAGTCAAACCCGACAGCCAA-3’
AtCPT5 両末なし+HRT1N末のみ+HRT1C末のみ
プライマー15:Fw 5’-ACATCACCAAGATATCATGGAATTATACAACGGTGAGAGG-3’
プライマー16:Rv 5’-TACAGGTTTTCCTCGAGTTATTTTAAG-3’
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲルでゲル回収し,10×A-attachment mix(TOYOBO)を用いてdA付加を行い,pGEM-T EASY Vector(プロメガ)へライゲーションし,大腸菌DH5αを形質転換し,LB寒天培地[+50 μg/mL Amp,+ 5% (w/v) X-gal 20 μL,+100 mM IPTG 25 μL]に塗布して37℃で一晩培養し,青白判定を行った。白色コロニーを複数個選抜し,LB液体培地4 mL [+50 μg/mL Amp]において37°Cで,一晩振とう培養した後,FastGeneTM Plasmid Mini Kit (日本ジェネティクス)を用いてプラスミドを回収し,EcoR I(NEB)で20 min消化することでインサートの挿入を確認した。シーケンシングによりPCRで増幅させた配列に変異が導入されていないことを確認した。
(変異体発現用ベクターの作製)
無細胞発現用ベクターpEU-E01-MCS-TEV-His-C1は制限酵素EcoRVとKpnIで処理し、ゲル回収によって精製した。SLiCE反応に用いるSLiCE溶液は、以下のように作成した。
培養した大腸菌DH5α 0.3~0.4gを3% Triton X-100を含む50mM Tris-HCl(pH8.0)1.2mLで穏やかに懸濁し、室温で10分間インキュベートした。インキュベート後、4℃、20000×gの条件下で2分間遠心し、上清を回収した。回収した上清に等量の80%グリセロール溶液を添加し、SLiCE溶液とした。SLiCE溶液は一定量ごとに小分けし、使用するまで-80℃で保管した。
〔PCR〕
AtCPT5全長
プライマー17:Fw 5’-ACATCACCAAGATATCATGTTGTCTATTCTCTCTTCTCTTTTATCT-3’
プライマー18:Rv 5’-TGATTGGCCGAGGCGGCCTCAAACCCGACAGCCAA-3’
AtCPT5-N末端HRT1
プライマー19:Fw 5’-ACATCACCAAGATATCATGGAATTATACAACGGTGAGAGG-3’
プライマー20:Rv 5’-TACAGGTTTTCCTCGAGTCAAACCCGACAGCCAA-3’
AtCPT5-両末端HRT1
プライマー21:Fw 5’-ACATCACCAAGATATCATGGAATTATACAACGGTGAGAGG-3’
プライマー22:Rv 5’-TACAGGTTTTCCTCGAGTTATTTTAAG-3’
得られたPCR断片、制限酵素処理したベクターを1:1~3:1の比率になるように混ぜ、10×SLiCE Buffer(500μM Tris-HCl(pH7.5)、100mM MgCl2、10mM ATP、10mM DTT)を反応系最終容量の10分の1量、SLiCE溶液を反応系最終容量の10分の1量加え、37℃で15分反応させ、pEU-AtCPT5(比較例1)、pEU-AtCPT-N末HRT1(比較例2)、pEU-AtCPT5-両末端HRT1(実施例1)を作製した。
〔大腸菌の形質転換〕
前記作製したVectorを用いて大腸菌DH5αの形質転換を行い、形質転換体はアンピシリンとX-galを含むLB寒天培地上で培養し、コロニーPCRによって目的遺伝子を導入した大腸菌の選別を行った。
〔プラスミドの抽出〕
目的遺伝子を含むプラスミドで形質転換された大腸菌は、LB液体培地上で37℃で一晩培養したのち、菌体を回収し、プラスミドの回収を行った。プラスミドの回収はFast Geneプラスミドミニキット(日本ジェネティクス社製)を使用した。
(REF発現用ベクターの作製)
pGEM-REFを制限酵素Xho IとBam HIで処理したのち、同様にXho IとBam HIで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEUE01-MCS-TEV-His-C1に挿入し、pEU-C1-REFを作製した。
〔大腸菌の形質転換〕
前記作製したVectorを用いて大腸菌DH5αの形質転換を行い、形質転換体はアンピシリンとX-galを含むLB寒天培地上で培養し、コロニーPCRによって目的遺伝子を導入した大腸菌の選別を行った。
〔プラスミドの抽出〕
目的遺伝子を含むプラスミドで形質転換された大腸菌は、LB液体培地上で37℃で一晩培養したのち、菌体を回収し、プラスミドの回収を行った。プラスミドの回収はFast Geneプラスミドミニキット(日本ジェネティクス社製)を使用した。
(酵素アッセイ)
〔ゴム粒子の調製〕
ゴム粒子は、5段階の遠心分離によってパラゴムノキのラテックス(Heveaラテックス)から調製した。Heveaラテックス900mLに、20mMのジチオスレイトール(DTT)を含む1M Tris緩衝液(pH7.5)100mLを添加し、ラテックス溶液を調製した。得られたラテックス溶液を、1000×g、2000×g、8000×g、20000×g、50000×gの異なる遠心速度で段階的に遠心分離した。遠心分離はいずれも4℃、45分で行った。50000×gでの遠心分離で残ったゴム粒子層に、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミノ]-プロパンスルホン酸(CHAPS)を終濃度0.1~2.0×CMC(臨界ミセル濃度CMCの0.1~2.0倍)になるように加え、ゴム粒子を洗浄した。洗浄処理後、洗浄されたゴム粒子を超遠心分離(40000×g、4℃、45分)によって回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。前記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
透析カップ(MWCO 12000)(Bio-Teck社製)中に、以下の量をそれぞれ添加した。WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って全量60μLで反応溶液を調整した。反応溶液にゴム粒子を1~2mg添加した。更に、PP容器No.2(マルエム容器)にSUB-AMIX 650μLを添加した。
透析カップをPP容器No.2にはめ、26℃で蛋白合成反応を開始した。反応開始から2度のmRNAの追加と透析外液(SUB-AMIX)の交換を行った。反応は24時間行った。
〔反応後のゴム粒子の回収〕
透析カップの溶液を新しい1.5μLチューブに移し、反応後のゴム粒子を超遠心分離(40000×g、4℃、45分)によって回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を以下の方法により測定した。
まず、50mM Tris-HCl(pH7.5)、2mM DTT、5mM MgCl2、15μM ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)、100μM 1-14Cイソペンテニル二リン酸([1-14C]IPP)(比活性:5Ci/mol)、10μL ゴム粒子溶液を混合した反応溶液(Total 100μL)を調製し、30℃で16時間反応させた。
反応後、飽和NaClを200μL加え、1mLのジエチルエーテルでイソペンテノールなどを抽出した。次に、水相のポリプレニル二リン酸を1mLの食塩水飽和BuOHで抽出し、その後更に、水相の超長鎖ポリイソプレノイド(ゴム)を1mLのトルエン/ヘキサン(1:1)で抽出し、放射活性を計測した。各層の放射活性は液体シンチレーションカウンターで14Cのカウントを計測した。放射活性(dpm)が高いほど、超長鎖ポリイソプレノイド(ゴム)が多く生産されており、ゴム合成活性が高いことを示す。
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイドの分子量分布測定〕
前記合成した超長鎖ポリイソプレノイド(ゴム)の分子量分布を下記の条件でRadio HPLCにより測定した。結果を図2に示す。
HPLCシステム:GILSON社製
カラム:TOSOH社製のTSKguardcolumn MP(XL)、TSKgel Multipore HXL-M(2本)
カラム温度:40℃
溶媒:Merck社製のTHF
流速:1ml/分
UV検出:215nm
RI検出:Ramona Star(Raytest GmbH)
(試験結果)
〔比較例1、2と実施例1〕
結果を図2に示した。図2より、GPCによる分子量分布を確認したところ、生成物の分子量が高分子化していることが分かった。
前記実験結果により、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、変異前のシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質よりも高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能であり、変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いたポリイソプレノイドの製造方法により、変異前のシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いた場合よりも高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能となることが分かった。
従って、第1の本開示の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターを植物に導入することにより、該ベクターに含まれる、第1の本開示の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子が発現し、当該植物において、遺伝子組み換え前と比較して、高分子量のポリイソプレノイドの製造が可能となることも分かった。
本開示(1)は、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である。
本開示(2)は、ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一の又は類似するアミノ酸配列に置換し、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一の又は類似するアミノ酸配列に置換した本開示(1)記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である。
本開示(3)は、前記ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質が、Hevea属又はTaraxacum属に属する植物由来のゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である本開示(1)又は(2)記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である。
本開示(4)は、前記ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質が、Hevea brasiliensis又はTaraxacum koksaghyz由来のゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である本開示(1)又は(2)記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である。
本開示(5)は、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列が、該蛋白質のN末端からβシートを構成する一番目のβストランドまでの区間内のN末端を含むアミノ酸配列であり、前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列が、該蛋白質のC末端から上流50アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列である本開示(1)~(4)のいずれかに記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である。
本開示(6)は、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いることを特徴とするポリイソプレノイドの製造方法である。
本開示(7)は、生体外で、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を膜粒子に結合させる結合工程を含む本開示(6)記載のポリイソプレノイドの製造方法である。
本開示(8)は、本開示(6)又は(7)に記載のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程と、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法である。
本開示(9)は、本開示(6)又は(7)に記載のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程と、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
本開示(10)は、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターである。
本開示(11)は、植物での蛋白質発現に用いられるプロモーター、及び、該プロモーターに機能的に連結された変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含む本開示(10)記載のベクターである。
本開示(12)は、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーター、及び、該プロモーターに機能的に連結された変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含む本開示(10)記載のベクターである。
本開示(13)は、本開示(10)~(12)のいずれかに記載のベクターが導入された形質転換植物である。
本開示(14)は、本開示(10)~(12)のいずれかに記載のベクターを植物に導入することにより、該植物においてポリイソプレノイドを製造する方法である。
本開示(15)は、本開示(10)~(12)のいずれかに記載のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法である。
本開示(16)は、本開示(10)~(12)のいずれかに記載のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
(配列表フリーテキスト)
配列番号1:パラゴムノキ由来のHRT1のアミノ酸配列
配列番号2:パラゴムノキ由来のHRT1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号3:シロイヌナズナ由来のAtCPT5のアミノ酸配列
配列番号4:パラゴムノキ由来のHbCPT5のアミノ酸配列
配列番号5:シロイヌナズナ由来のAtCPT5をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号6:パラゴムノキ由来のHbCPT5をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号7:AtCPT5-両末端HRT1のアミノ酸配列
配列番号8:AtCPT5-両末端HRT1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号9:パラゴムノキ由来のREFをコードする遺伝子の塩基配列
配列番号10:パラゴムノキ由来のREFのアミノ酸配列
配列番号11:AtCPT5-N末端HRT1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号12:AtCPT5-N末端HRT1のアミノ酸配列
配列番号13:プライマー1
配列番号14:プライマー2
配列番号15:プライマー3
配列番号16:プライマー4
配列番号17:プライマー5
配列番号18:プライマー6
配列番号19:プライマー7
配列番号20:プライマー8
配列番号21:プライマー9
配列番号22:プライマー10
配列番号23:プライマー11
配列番号24:プライマー12
配列番号25:プライマー13
配列番号26:プライマー14
配列番号27:プライマー15
配列番号28:プライマー16
配列番号29:プライマー17
配列番号30:プライマー18
配列番号31:プライマー19
配列番号32:プライマー20
配列番号33:プライマー21
配列番号34:プライマー22

Claims (16)

  1. ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異し、
    前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一に又は類似するように変異した変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質。
  2. ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列と同一の又は類似するアミノ酸配列に置換し、
    前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列を、ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列と同一の又は類似するアミノ酸配列に置換した請求項1記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質。
  3. 前記ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質が、Hevea属又はTaraxacum属に属する植物由来のゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である請求項1又は2記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質。
  4. 前記ゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質が、Hevea brasiliensis又はTaraxacum koksaghyz由来のゴム粒子上に存在するシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質である請求項1又は2記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質。
  5. 前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列が、該蛋白質のN末端からβシートを構成する一番目のβストランドまでの区間内のN末端を含むアミノ酸配列であり、
    前記ゴム粒子上に存在しないシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質のC末端領域のアミノ酸配列が、該蛋白質のC末端から上流50アミノ酸以内のC末端を含むアミノ酸配列である請求項1~4のいずれかに記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を用いることを特徴とするポリイソプレノイドの製造方法。
  7. 生体外で、請求項1~5のいずれかに記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質を膜粒子に結合させる結合工程を含む請求項6記載のポリイソプレノイドの製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程と、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法。
  9. 請求項6又は7に記載のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程と、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法。
  10. 請求項1~5のいずれかに記載の変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクター。
  11. 植物での蛋白質発現に用いられるプロモーター、及び、該プロモーターに機能的に連結された変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含む請求項10記載のベクター。
  12. 乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーター、及び、該プロモーターに機能的に連結された変異シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含む請求項10記載のベクター。
  13. 請求項10~12のいずれかに記載のベクターが導入された形質転換植物。
  14. 請求項10~12のいずれかに記載のベクターを植物に導入することにより、該植物においてポリイソプレノイドを製造する方法。
  15. 請求項10~12のいずれかに記載のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法。
  16. 請求項10~12のいずれかに記載のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法。
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