JP2023127142A - ジャイロ装置およびジャイロ装置の制御方法 - Google Patents
ジャイロ装置およびジャイロ装置の制御方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】角速度を検出しつつ2次元振動子のミスマッチに応じた補正を可能とするジャイロ装置を提供する。
【解決手段】第1回転振動モードに対応する駆動信号および第2回転振動モードに対応する駆動信号によって駆動され、第1回転振動モードに対応する出力信号および第2回転振動モードに対応する出力信号を出力する単一の2次元振動子15と、第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第1変調方式で変調する第1変調処理部301と、第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第2変調方式で変調する第2変調処理部501と、第2回転振動モードに対応する第1エラー成分に対して、第1変調方式に対応する第1復調方式で復調を行う第1復調処理部401と、第1回転振動モードに対応する第2エラー成分に対して、第2変調方式に対応する第2復調方式で復調を行う第2復調処理部601と、を備える。
【選択図】図29
【解決手段】第1回転振動モードに対応する駆動信号および第2回転振動モードに対応する駆動信号によって駆動され、第1回転振動モードに対応する出力信号および第2回転振動モードに対応する出力信号を出力する単一の2次元振動子15と、第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第1変調方式で変調する第1変調処理部301と、第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第2変調方式で変調する第2変調処理部501と、第2回転振動モードに対応する第1エラー成分に対して、第1変調方式に対応する第1復調方式で復調を行う第1復調処理部401と、第1回転振動モードに対応する第2エラー成分に対して、第2変調方式に対応する第2復調方式で復調を行う第2復調処理部601と、を備える。
【選択図】図29
Description
本発明は、ジャイロ装置およびジャイロ装置の制御方法に関し、例えば、単一(1個)のモードマッチ(直交する2軸の共振周波数が一致)した2次元振動子を有するジャイロ装置およびジャイロ装置の制御方法に関する。
従来から、回転の角速度を検出するためのジャイロ装置が提案されており、本件発明者も、下記特許文献1に開示されている、2次元振動子を用いたジャイロ装置を提案している。特許文献1に開示されたジャイロ装置では、2次元振動子の不完全性により生じ得るX方向およびY方向における周波数やQ値のずれ(以下、これらをミスマッチとも称する場合がある)をキャンセルするために、位相調整部による位相調整処理および振幅調整部による振幅調整処理が行われる。
特許文献1に記載されている技術では、2次元振動子のミスマッチを適切に補正できる。しかしながら、ミスマッチを検出し補正のためのパラメータを設定する期間(例えば、ジャイロ装置の起動時におけるキャリブレーションの期間)が必要となり、その期間の間、ジャイロ装置として使用することができないという問題があった。
本発明の目的の一つは、これらの問題を解決するための新規かつ有用なジャイロ装置およびジャイロ装置の制御方法を提供することにある。
本発明の一の態様は、
第1回転振動モードに対応する駆動信号および第2回転振動モードに対応する駆動信号によって駆動され、第1回転振動モードに対応する出力信号および第2回転振動モードに対応する出力信号を出力する単一の2次元振動子と、
第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第1変調方式で変調する第1変調処理部と、
第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第2変調方式で変調する第2変調処理部と、
第1回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、第2回転振動モードに対応する第1エラー成分を検出する第1エラー成分検出部と、
第2回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、第1回転振動モードに対応する第2エラー成分を検出する第2エラー成分検出部と、
第2回転振動モードに対応する第1エラー成分に対して、第1変調方式に対応する第1復調方式で復調を行う第1復調処理部と、
第1回転振動モードに対応する第2エラー成分に対して、第2変調方式に対応する第2復調方式で復調を行う第2復調処理部と、
を備える
ジャイロ装置である。
第1回転振動モードに対応する駆動信号および第2回転振動モードに対応する駆動信号によって駆動され、第1回転振動モードに対応する出力信号および第2回転振動モードに対応する出力信号を出力する単一の2次元振動子と、
第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第1変調方式で変調する第1変調処理部と、
第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第2変調方式で変調する第2変調処理部と、
第1回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、第2回転振動モードに対応する第1エラー成分を検出する第1エラー成分検出部と、
第2回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、第1回転振動モードに対応する第2エラー成分を検出する第2エラー成分検出部と、
第2回転振動モードに対応する第1エラー成分に対して、第1変調方式に対応する第1復調方式で復調を行う第1復調処理部と、
第1回転振動モードに対応する第2エラー成分に対して、第2変調方式に対応する第2復調方式で復調を行う第2復調処理部と、
を備える
ジャイロ装置である。
また、本発明の他の態様は、
第1回転振動モードに対応する駆動信号および第2回転振動モードに対応する駆動信号によって駆動された単一の2次元振動子が、第1回転振動モードに対応する出力信号および第2回転振動モードに対応する出力信号を出力し、
第1変調処理部が、第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第1変調方式で変調し、
第2変調処理部が、第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第2変調方式で変調し、
第1エラー成分検出部が、第1回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、第2回転振動モードに対応する第1エラー成分を検出し、
第2エラー成分検出部が、第2回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、第1回転振動モードに対応する第2エラー成分を検出し、
第1復調処理部が、第2回転振動モードに対応する第1エラー成分に対して、第1変調方式に対応する第1復調方式で復調し、
第2復調処理部が、第1回転振動モードに対応する第2エラー成分に対して、第2変調方式に対応する第2復調方式で復調する、
ジャイロ装置における制御方法である。
第1回転振動モードに対応する駆動信号および第2回転振動モードに対応する駆動信号によって駆動された単一の2次元振動子が、第1回転振動モードに対応する出力信号および第2回転振動モードに対応する出力信号を出力し、
第1変調処理部が、第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第1変調方式で変調し、
第2変調処理部が、第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第2変調方式で変調し、
第1エラー成分検出部が、第1回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、第2回転振動モードに対応する第1エラー成分を検出し、
第2エラー成分検出部が、第2回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、第1回転振動モードに対応する第2エラー成分を検出し、
第1復調処理部が、第2回転振動モードに対応する第1エラー成分に対して、第1変調方式に対応する第1復調方式で復調し、
第2復調処理部が、第1回転振動モードに対応する第2エラー成分に対して、第2変調方式に対応する第2復調方式で復調する、
ジャイロ装置における制御方法である。
本発明によれば、角速度を検出しつつ2次元振動子のミスマッチを補正できるジャイロ装置を提供できる。なお、本明細書により例示された効果により、本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<本発明に関連する技術について>
<一実施形態>
<変形例>
以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。
<本発明に関連する技術について>
<一実施形態>
<変形例>
以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。
<本発明に関連する技術について>
本特許出願の発明者は、先に、ジャイロ装置およびジャイロ装置の制御方法を提案している。提案内容は、特許文献である特開2020-169819号公報として公開されている。本特許出願は、当該特許文献に記載された内容を適用することができる。本発明の理解を容易とするために、当該公報に記載されている内容を説明しつつ、本発明において考慮すべき問題について言及する。
本特許出願の発明者は、先に、ジャイロ装置およびジャイロ装置の制御方法を提案している。提案内容は、特許文献である特開2020-169819号公報として公開されている。本特許出願は、当該特許文献に記載された内容を適用することができる。本発明の理解を容易とするために、当該公報に記載されている内容を説明しつつ、本発明において考慮すべき問題について言及する。
まず始めに、一般的なジャイロ装置(ジャイロスコープ)について説明する。なお、以下の説明では、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を使用した小型の振動型ジャイロ装置を例にして説明する。ジャイロ装置は、回転の角速度(以下、回転角速度と適宜、称する)を検出する。回転角速度Ωzを検出する方法として、複数の方法が知られている。第1の方法として、AM(Amplitude Modulation)モードと称される方法が知られている。AMモードでは、ドライブ軸(例えばX軸)方向に振動を与えたときに、コリオリ力によって変化するセンス軸(例えばY軸)方向の振幅(変位)を計測することで角速度を得る。センス軸方向の振幅が回転角速度Ωzに比例することから、当該振幅を検出することにより回転角速度Ωzを検出することができる。AMモードでは、ドライブ軸方向に与えられる振動がセンス軸方向を直接励振してしまう点を考慮して、ドライブ軸、センス軸方向における共振周波数が異なるように設定される(モードミスマッチ)。しかしながら、AMモードでは、共振周波数から離れた周波数で計測を行うため、感度が低下する等の問題がある。また、AMモードでは、感度と測定帯域に原理的にトレードオフがあり、高感度と広帯域を両立させることは不可能である。
第2の方法は、フォースリバランスと呼ばれる方法であり、AMモードのセンス軸方向の振幅が常に一定値(多くの場合は0)になるようにフィードバック制御をかけ、そのフィードバック信号の大きさから回転角速度を得る方法である。この場合は、ドライブ軸とセンス軸の共振周波数を合わせた(モードマッチさせた)振動子を用いることができる。しかしながら、スケールファクタ(回転角速度に対する出力の大きさ)が、温度等により変動してしまう等の問題がある。
以上のような第1、第2の方法の問題に鑑み、後述する実施形態では、FMモードによるジャイロ装置の駆動を採用している。FMモードの特徴としては、他の方法に比べ、感度(スケールファクタ)が正確で安定する、原理的に温度特性に優れている、ダイナミックレンジが大きい等の利点を有している点が挙げられる。FMモードには大きく分けて直交FM型とリサージュFM型があるが、本明細書では、特に断らない限り直交FM型のみを対象とする。
ここでFMモードの基本的な原理について説明する。なお、FMモードの原理そのものは公知であるのでここでは概略的な説明に留める。FMモードのジャイロは、直交(独立)する2軸方向に振動する振動子(共振子、共振器とも称される)で構成される。FMモードでは、各軸における共振周波数、およびQ値を一致させた振動子(縮退振動子)を用いる。この状態において、振動子に対して回転角速度が与えられた時、下記の数式1で表される関係が成り立つことが知られている。なお、数式1におけるλは共振周波数、ωは回転を与えていない場合の共振周波数(縮退しているので、2軸ともに同じ共振周波数)、Ωzは振動子に与えられる回転角速度を表している。
なお、以下で言及する振動は直線振動(例えばX方向、Y方向)に限らず、縮退した直交振動モードであれば、どのような振動でも利用できる。例えば、リング型の共振器の場合は、図1、2に示すように、直交する2つの振動は必ずしも単純な直線振動にはならないが、それぞれの振動モードにおける変位の状態をモード座標(一般化座標)で表すと、直線振動と全く同じように扱うことができる。以下では、これらのモード座標(一般化座標)も含めて、一つのモードを"X軸(もしくはX方向)"、これと直交するモードを"Y軸(もしくはY方向)"と呼ぶ(なお、図1、2におけるモード1、2は数学的、もしくは振動学的に直交している状態を示している)。
数式1から下記の数式2が導出される。
すなわち、数式2により示されるように、回転が与えられない時にはX軸、Y軸方向の共振周波数が一致していた、すなわち縮退していたものが、回転を与えることにより共振周波数λがω+Ωzとω-Ωzとに分かれる。この2つの共振周波数をλ1、λ2とすると、共振周波数λ1、λ2の差(ずれ)が回転角速度Ωzに比例することから、2つの共振周波数をλ1、λ2を検出すれば、下記の数式3により回転角速度Ωzを得ることができる。
ここで、λ1(=ω+Ωz)に対応する運動は時計回り(CW)に対応しており、λ2(=ω-Ωz)に対応する運動は反時計回り(CCW)に対応している。すなわち、縮退している振動子に回転が与えられた場合には、固有振動モードは直線(X方向もしくはY方向単独の振動)ではなく、回転振動(X方向とY方向の振動の位相が±90度(°)ずれている2次元振動)になる。なお、実際の振動子の回転は、これらCWモードおよびCCWモードの重ねあわせとなる。
「各モードの成分の検出方法について」
以上、FMモードについて説明した。例えば、上述したFMモードで2軸縮退した1個の振動子(以下、2次元振動子と適宜、称する)を励振させる制御が行われる。したがって、回転角速度Ωzを得るためには、2次元振動子の回転振動(出力)に含まれるCWモード(第1回転振動モード)の成分とCCWモード(第2回転振動モード)の成分を独立して検出する必要がある。そこで、次に、2次元振動子の出力からCWモードの成分とCCWモードの成分を分離して検出する方法について説明する。
以上、FMモードについて説明した。例えば、上述したFMモードで2軸縮退した1個の振動子(以下、2次元振動子と適宜、称する)を励振させる制御が行われる。したがって、回転角速度Ωzを得るためには、2次元振動子の回転振動(出力)に含まれるCWモード(第1回転振動モード)の成分とCCWモード(第2回転振動モード)の成分を独立して検出する必要がある。そこで、次に、2次元振動子の出力からCWモードの成分とCCWモードの成分を分離して検出する方法について説明する。
図3は、一般的な同期検波方式を説明するための図である。入力信号(Signal)SIにある所定の振幅(Amplitude)および位相(Phase)を有する信号が入力される。入力信号SIが分岐され、乗算器(ミキサ)1、3のそれぞれに入力される。同期検波方式では、位相を90度ずらした2つの信号を参照信号として使用し、この参照信号を別々の乗算器1、3で乗算した後、フィルタ処理を行うことで復調出力を得る。例えば、参照信号としてcos波およびsin波が使用され、入力信号SIにcos波を乗算する処理が乗算器1により行われ、入力信号SIにsin波を乗算する処理が乗算器3により行われる。
乗算器1から出力される信号がLPF(Low Pass Filter)2に入力されフィルタ処理がなされる。LPF2によるフィルタ処理により、LPF2からは、参照信号(本例ではcos波)と同じ周波数であり、且つ、同じ位相を持つ成分のみが出力される。
一方、乗算器3から出力される信号がLPF4に入力され、フィルタ処理がなされる。LPF4によるフィルタ処理により、LPF4からは、乗算器3における参照信号(本例ではsin波)と同じ周波数であり、且つ、同じ位相を持つ成分のみが出力される。
LPF2、4からの出力により入力信号SIが復調され、復調出力に基づいて入力信号SIの振幅rと位相θとが検出される。
この同期検波方式を発展、応用してCWモードの成分とCCWモードの成分とを検出する処理が行われる。なお、以下の説明では、2次元振動子内に生じているCWモードとCCWモードとが組み合わさった信号から、CWモードの成分のみを検出する例について説明するが、同様の処理によりCCWモードの成分を検出することができる。
図4は、入力信号SIからCWモードの成分を検出する方法を説明するための図である。入力信号SIとして、2次元振動子から出力される信号が入力される。2次元振動子を使用した場合には、図示するように、X、Y方向の成分を含むベクトル的な表記で入力信号SIを示すことができる。
入力信号SIが分岐され、乗算器1、3のそれぞれに入力される。参照信号として信号CW-I(In phase)、CW-Q(Quadrature Phase)が使用され、入力信号SIに信号CW-Iを乗算する処理が乗算器1により行われ、入力信号SIに信号CCW-Iを乗算する処理が乗算器3により行われる。信号CW-I、信号CW-Qは、図4にシンボル的に示されているように、振幅、周波数、回転方向は同じで位相が90度ずれている信号である。
入力信号SIに対して信号CW-Iが乗算器1により乗算され、その出力がLPF2に供給される。入力信号SIに対して信号CW-Qが乗算器3により乗算され、その出力がLPF4に供給される。LPF2、4のそれぞれによるフィルタ処理の結果、入力信号SIが復調され、復調出力に基づいて入力信号SIに含まれるCWモードの成分の振幅rおよび位相θを検出することができる。
図5は、上述した乗算器1、3の詳細な構成例を説明するための図である。乗算器1は、例えば、乗算器1aと、乗算器1bと、加算器1cとを備えている。乗算器3は、例えば、乗算器3aと、乗算器3bと、加算器3cとを備えている。
上述したように、2次元振動子の場合は入力信号SIとしてX軸、Y軸方向の信号(振幅)(以下、信号SIX、SIYと適宜、称する)が乗算器1に入力される。乗算器1aは、信号SIXに対して信号CW-IのX軸方向の成分を乗算し、乗算器1bは、信号SIYに対して信号CW-IのY軸方向の成分を乗算する。加算器1cは、乗算器1a、1bの出力を加算してLPF2に出力する。
乗算器3aは、信号SIXに対して信号CW-QのX軸方向の成分を乗算し、乗算器3bは、信号SIYに対して信号CW-QのY軸方向の成分を乗算する。加算器3cは、乗算器3a、3bの出力を加算してLPF4に出力する。
上述した方法により、2次元振動子の出力に含まれるCWモードの成分を検出できる点について、図6乃至図9を参照して更に詳細に説明する。図6に示される例は、参照信号として信号CW-Iを使用して検波する例である。なお、本例では、CW-IのX軸方向の信号をsin波とし、Y軸方向の信号をcos波としている。入力信号SIが信号CW-Iの成分のみと仮定した場合には、乗算器1aの出力波形は波形WA1aとなり、乗算器1bの出力波形は波形WA2aとなる。各乗算器の出力を加算器1cで加算した信号の波形は、波形WA3aとなる。この信号波形をLPF2に通すと、LPF2によるフィルタ処理は平均を得る処理と等価の処理であることから、得られる信号の波形は波形WA3aと同様の波形WA4a(直流成分)となる。すなわち、入力信号SIに信号CW-Iの成分が含まれる場合は、信号CW-Iを使用した検波によりその成分を検出することができる。
図7に示される例は、参照信号として信号CW-Iを使用して検波する例であるが、入力信号SIが信号CW-Iと位相が90度異なる信号CW-Qの成分のみと仮定した例である。この場合には、乗算器1aの出力波形は波形WA1bとなり、乗算器1bの出力波形は波形WA2bとなる。これらの波形の出力を加算器1cで加算した信号は図示する通り0となり、したがって、LPF2の出力も図示する通り0となる。
図8に示される例は、参照信号として信号CW-Iを使用して検波する例であるが、入力信号SIが信号CW-Iと回転方向が異なる反時計回りの信号CCW-Iの成分のみと仮定した例である。この場合には、乗算器1aの出力波形は波形WA1cとなり、乗算器1bの出力波形は波形WA2cとなる。各乗算器の出力を加算器1cで加算した信号の波形は、0を中心として対称となる波形WA3cとなる。この波形WA3aの信号をLPF2に通すとその出力は図示する通り0となる。
図9に示される例は、参照信号として信号CW-Iを使用して検波する例であるが、入力信号SIが信号CW-Iと回転方向が異なる反時計回りの信号であり、信号CCW-Iと位相が90度異なる信号CCW-Qの成分のみと仮定した例である。この場合には、乗算器1aの出力波形は波形WA1dとなり、乗算器1bの出力波形は波形WA2dとなる。各乗算器の出力を加算器1cで加算した信号の波形は、0を中心として対称となる波形WA3dとなる。この波形WA3dの信号をLPF2に通すとその出力は図示の通り0となる。
すなわち、2次元振動子内に生じている任意の2次元振動(CW-I,CW-Q,CCW-I,CCW-Qの線型結合で表される)を、信号CW-Iを参照信号として同期検波ですると、2次元振動子の出力信号に含まれる信号CW-Iの成分のみが得られる。このことは参照信号として他の信号を使用した場合の検出される成分についても当てはまる。以上をまとめると下記の表1が得られる。
表1に示すように、2次元振動子の出力に信号CW-Qの成分が含まれている場合には、参照信号を信号CW-Qとして検波できる一方、他の信号の成分については出力が0となる。2次元振動子の出力に信号CCW-Iの成分が含まれている場合には、参照信号を信号CCW-Iとして検波できる一方、他の信号の成分については出力が0となる。2次元振動子の出力に信号CCW-Qの成分が含まれている場合には、参照信号を信号CCW-Qとして検波できる一方、他の信号の成分については出力が0となる。つまり、例えば2個の検出器を設け、各検出器における参照信号を信号CW-Iおよび信号CW-Qの組合せ、信号CCW-Iおよび信号CCW-Qの組合せにそれぞれ設定すれば、2次元振動子の出力からCWモードの成分およびCCWモードの成分を独立して検出できることになる。
以上の説明を踏まえて、角速度を検出可能なジャイロ装置(ジャイロ装置10)について説明する。図10は、ジャイロ装置10の構成例を示す図である。ジャイロ装置10は、例えば、単一の2次元振動子15と、駆動信号生成部20と、第1検出部30aと、第1発振回路の一例としての第1PLL(Phase Locked Loop)回路40aと、第1AGC(Automatic Gain Control)部50aと、第2検出部30bと、第2発振回路の一例としての第2PLL回路40bと、第2AGC部50bと、2次元振動子15の入力側に設けられた増幅器61a、61bと、2次元振動子15の出力側に設けられた増幅器62a、62bとを備えている。
なお、図示は省略しているが、ジャイロ装置10は、DA(Digital to Analog)変換器およびAD(Analog to Digital)変換器を備え、デジタル信号処理により各処理を行うようにしても良い。この場合、DA変換器は、例えば、増幅器61a、61bの前段に設けられ、駆動信号生成部20から出力されるデジタル形式の駆動信号をアナログ形式に変換するように構成される。また、AD変換器は、例えば、増幅器62a、62bの後段に設けられ、2次元振動子15から出力されるアナログ形式の信号をデジタル形式に変換するように構成される。
2次元振動子15は、例えば、リング形状を成しCWモードおよびCCWモードのそれぞれに対応した駆動信号により励振可能な振動部材である。なお、2次元振動子15の形状はリング形状に限定されるものではなく、正四角板、円柱、正四角柱、4個のマスを使用した4重マス型等、任意の形状とすることが可能である。
駆動信号生成部20は、CWモードに対応する駆動信号(第1駆動信号)およびCCWモードに対応する駆動信号(第2駆動信号)を多重化した駆動信号を2次元振動子15に供給する。駆動信号生成部20から供給される駆動信号により2次元振動子15が励振させられる。本例では、CWモードに対応するX軸方向の駆動信号としてcos波(以下、coscw信号と表記する)、Y軸方向の駆動信号として-sin波(以下、-sincw信号と表記する)を用いている。なお、駆動信号は、Y方向信号がX方向信号に比べて90度位相が進んでいれば、必ずしもcos波、-sin波である必要はない。また、CCWモードに対応するX軸方向の駆動信号として-cos波(以下、-cosCCW信号と表記する)、Y軸方向の駆動信号として-sin波(以下、-sinCCW信号と表記する)を用いている。なお、駆動信号は、Y方向信号がX方向信号に比べて90度位相が遅れていれば、必ずしも-cos波、-sin波である必要はない。駆動信号生成部20は、例えば、第1PLL回路40aからフィードバックされる信号に基づいてCWモードに対応する駆動信号を生成し、第2PLL回路40bからフィードバックされる信号に基づいてCCWモードに対応する駆動信号を生成する。駆動信号生成部20は、例えば、乗算器201と、乗算器202と、乗算器203と、乗算器204と、加算器205と、加算器206とを備えている。
第1検出部30aは、2次元振動子15の出力に含まれるCW成分の振幅rcwおよび位相θcwを検出する。なお、第1検出部30aの詳細については後述する。
第1PLL回路40aは、位相比較器41aと、PID(Proportional Integral Differential)制御部42aと、VCO(Voltage Controlled Oscillator)やNCO(Numerical Controlled Oscillator)等の発振周波数を変化することができる発振器43aとを備えている。図示が煩雑となることを防止するために詳細な図示を省略しているが、第1PLL回路40aの出力(全ての出力でもよいし一部の出力でもよい)が駆動信号生成部20、第1検出部30aのそれぞれにフィードバックされるように構成されている。
第1AGC部50aは、振幅比較器51aと、PID制御部52aとを備えている。第1AGC部50aの出力が駆動信号生成部20にフィードバックされるように構成されている。
第2検出部30bは、2次元振動子15の出力に含まれるCCW成分の振幅rCCWおよび位相θCCWを検出する。なお、第2検出部30bの詳細については後述する。
第2PLL回路40bは、位相比較器41bと、PID制御部42bと、VCOやNCO等の発振周波数を変化することができる発振器43bとを備えている。図示が煩雑となることを防止するために詳細な図示を省略しているが、第2PLL回路40bの出力(全ての出力でもよいし一部の出力でもよい)が駆動信号生成部20、第2検出部30bのそれぞれにフィードバックされるように構成されている。
第2AGC部50bは、振幅比較器51bと、PID制御部52bとを備えている。第2AGC部50bの出力が駆動信号生成部20にフィードバックされるように構成されている。
図11は、第1検出部30aの構成例を説明するための図である。第1検出部30aは、2次元振動子15から出力される信号が分岐されて入力される検出器31a、32aと、検出器31aの出力にフィルタ処理を行うLPF33aと、検出器32aの出力にフィルタ処理を行うLPF34aと、LPF33aおよびLPF34aからの出力に基づいて2次元振動子15の出力信号に含まれるCW成分の振幅rcwおよび位相θcwを検出する振幅位相検出部35aとを備えている。
検出器31aは、2次元振動子15からの出力のうちX軸方向の成分が入力される乗算器310aと、2次元振動子15からの出力のうちY軸方向の成分が入力される乗算器311aと、乗算器310a、311aのそれぞれの出力を加算する加算器312aとを備えている。検出器32aは、2次元振動子15からの出力のうちX軸方向の成分が入力される乗算器320aと、2次元振動子15からの出力のうちY軸方向の成分が入力される乗算器321aと、乗算器320a、321aのそれぞれの出力を加算する加算器322aとを備えている。
なお、本例では、X軸方向のCW-I成分をsin信号とし、Y軸方向のCW-I成分をcos信号とし、X軸方向のCW-Q成分をcos信号とし、Y軸方向のCW-Q成分を-sin信号としている。
図12は、第2検出部30bの構成例を説明するための図である。第2検出部30bは、2次元振動子15からの信号が分岐されて入力される検出器31b、32bと、検出器31bの出力にフィルタ処理を行うLPF33bと、検出器32bの出力にフィルタ処理を行うLPF34bと、LPF33bおよびLPF34bからの出力に基づいて2次元振動子15の出力信号に含まれるCCW成分の振幅rCCWおよび位相θCCWを検出する振幅位相検出部35bとを備えている。
検出器31bは、2次元振動子15からの出力のうちX軸方向の成分が入力される乗算器310bと、2次元振動子15からの出力のうちY軸方向の成分が入力される乗算器311bと、乗算器310b、311bのそれぞれからの出力を加算する加算器312bとを備えている。検出器32bは、2次元振動子15からの出力のうちX軸方向の成分が入力される乗算器320bと、2次元振動子15からの出力のうちY軸方向の成分が入力される乗算器321bと、乗算器320b、321bのそれぞれの出力を加算する加算器322bとを備えている。
なお、本例では、X軸方向のCCW-I成分を-sin信号とし、Y軸方向のCCW-I成分をcos信号とし、X軸方向のCCW-Q成分を-cos信号とし、Y軸方向のCCW-Q成分を-sin信号としている。
次に、ジャイロ装置10の動作例について図10~図12を参照しながら説明する。駆動信号生成部20は、2次元振動子15に対する駆動信号を生成する。coscw信号および-sincw信号のそれぞれに対して、PID制御部52aからフィードバックされた信号が乗算器201、202で乗算された後、乗算器201からの出力信号が加算器205に供給され、乗算器202からの出力信号が加算器206に供給される。-cosCCW信号および-sinCCW信号のそれぞれに対して、PID制御部52bからフィードバックされた信号が乗算器203、204で乗算された後、乗算器203からの出力信号が加算器205に供給され、乗算器204からの出力信号が加算器206に供給される。加算器205は、乗算器201からの出力信号と乗算器203からの出力信号とを加算して出力する。加算器205からの出力信号が増幅器61aにより適宜な増幅率でもって増幅された後、2次元振動子15に入力Xdとして入力される。一方、加算器206は、乗算器202からの出力信号と乗算器204からの出力信号とを加算して出力する。加算器206からの出力信号が増幅器61bにより適宜な増幅率でもって増幅された後、2次元振動子15に入力Ydとして入力される。
入力Xd、Ydによって2次元振動子15が励振され、2次元振動子15からの出力Xs、Ysが得られる。2次元振動子15からの出力Xs、Ysが増幅器62a、62bによって適宜な増幅率でもって増幅された後、出力Xsが分岐されて第1、第2検出部30a、30bのそれぞれに入力され、出力Ysが分岐されて第1、第2検出部30a、30bのそれぞれに入力される。
第1検出部30aは、2次元振動子15の出力に含まれるCW成分を検出する。具体的には、第1検出部30aにおける検出器31aが信号CW-Iを使用して検波し、その結果にLPF33aによるフィルタ処理を行うことで2次元振動子15の出力に含まれるCW-I成分を検出し、検出結果を振幅位相検出部35aに供給する。また、第1検出部30aにおける検出器32aが信号CW-Qを使用して検波し、その結果にLPF34aによるフィルタ処理を行うことで2次元振動子15の出力に含まれるCW-Q成分を検出し、検出結果を振幅位相検出部35aに供給する。振幅位相検出部35aは、LPF33aおよびLPF34aからの出力に基づいて2次元振動子15の出力信号に含まれるCW成分の振幅rcwおよび位相θcwを検出する。すなわち、既述したように、信号CW-I、信号CW-Qのそれぞれを参照信号として同期検波することで、2次元振動子15の出力に含まれるCW成分のみを検出することができる。
第1検出部30aにより検出された位相θcwが第1PLL回路40aに供給される。第1PLL回路40aにおける位相比較器41aは、位相θcwと設定位相θcw,set(以下の説明ではθcw,set =90°として話を進める)とを比較し、比較結果に基づいてPID制御部42aが位相θcwを90°すなわち共振周波数fcwとなる制御を実行する。PID制御部42aからの出力で発振器43aを制御し、これにより発振器43aからは共振周波数fcwの信号sincwおよび信号coscwが出力される。これらの信号が入力側にフィードバックされ、CWモードに対応する駆動信号の共振周波数が共振周波数fcwで維持される制御がなされる。また、信号sincwおよび信号coscwが第1検出部30aにフィードバックされ、これに基づいて参照信号としての信号CW-I、信号CW-Qが生成される。本例では、フィードバックされる信号と参照信号との間に、sin=sincw、cos=coscw、-sin=-1*sincwの関係が成り立っている。
第1検出部30aにより得られた振幅rcwが第1AGC部50aに供給される。第1AGC部50aにおける振幅比較器51aは、振幅rcwと所定の第1設定値Rset,cwとを比較し、比較結果に基づいてPID制御部52aが、振幅rcwが所定の第1設定値Rset,cwとなる制御を実行する。PID制御部52aからの出力が駆動信号生成部20にフィードバックされ、CWモードに対応する駆動信号の振幅が第1設定値Rset,cwで維持されるようにゲインをコントロールする制御がなされる。
2次元振動子15の出力に含まれるCCW成分を検出する系についても同様の処理が実行される。具体的には、第2検出部30bにおける検出器31bが信号CCW-Iを使用して検波し、その結果にLPF33bよるフィルタ処理を行うことで2次元振動子15の出力に含まれるCCW-I成分を検出し、検出結果を振幅位相検出部35bに供給する。また、第2検出部30bにおける検出器32bが信号CCW-Qを使用して検波し、その結果にLPF34bによるフィルタ処理を行うことで2次元振動子15の出力に含まれるCCW-Q成分を検出し、検出結果を振幅位相検出部35bに供給する。振幅位相検出部35bは、LPF33bおよびLPF34bからの出力に基づいて2次元振動子15の出力信号に含まれるCCW成分の振幅rCCWおよび位相θCCWを検出する。すなわち、上述したように、信号CCW-I、信号CCW-Qのそれぞれを参照信号として同期検波することで、2次元振動子15の出力に含まれるCCW成分のみを検出することができる。
第2検出部30bにより得られた位相θCCWが第2PLL回路40bに供給される。第2PLL回路40bにおける位相比較器41bは、位相θCCWと90°とを比較し、比較結果に基づいてPID制御部42bが位相θCCWを0すなわち共振周波数fcwとなる制御を実行する。PID制御部42bからの出力で発振器43bを制御し、これにより発振器43bからは位相が一致した換言すれば共振周波数fCCWの信号sinCCWおよび信号cosCCWが出力される。共振周波数fCCWが入力側にフィードバックされ、CCWモードに対応する駆動信号の共振周波数が共振周波数fCCWとなるように維持する制御がなされる。また、信号sinCCWおよび信号cosCCWが第2検出部30bにフィードバックされ、これに基づいて参照信号としての信号CCW-I、信号CCW-Qが生成される。本例では、フィードバックされる信号と参照信号との間に、-sin=sinccw、cos=cosccw、-cos=-1*cosccw、の関係が成り立っている。
第2検出部30bにより得られた振幅rCCWが第2AGC部50bに供給される。第2AGC部50bにおける振幅比較器51bは、振幅rCCWと第2設定値Rset,CCWとを比較し、比較結果に基づいてPID制御部52bが、振幅rCCWが第2設定値Rset,CCWとなる制御を実行する。PID制御部52bからの出力が駆動信号生成部20にフィードバックされ、CCWモードに対応する駆動信号の振幅が第2設定値Rset,CCWで維持されるようにゲインをコントロールする制御がなされる。
図13は、ジャイロ装置10における信号の流れを模式的に示した図である。図13における太線が信号の流れを示している。2次元振動子15の出力に含まれるCCW成分は第1検出部30aによりカットされ、CW成分のみが一方の系(図13における上側の系)をループすることになる。2次元振動子15の出力に含まれるCW成分は第2検出部30bによりカットされ、CCW成分のみが他方の系(図13における下側の系)をループすることになる。
次に、角速度検出部(角速度検出部70)の構成例について説明する。なお、本例では、角速度検出部70は、ジャイロ装置10に組み込まれているものとして説明するが、他の装置に組み込まれていてもよい。
図14は、角速度検出部70の構成例を示す図である。角速度検出部70は、例えば、減算器71と、乗算器72とを備えている。角速度検出部70は、第1PLL回路40aから出力される共振周波数fcwおよび第2PLL回路40bから出力される共振周波数fCCWを得、両共振周波数を減算器71で減算し、その結果を乗算器72で定数倍(角度ゲインが1である理想的な振動子の場合は1/2倍)する。すなわち、角速度検出部70は、上述した数式3と同様の演算を行うことで回転角速度Ωzを検出する。
以上、説明したジャイロ装置10によれば、単一の2次元振動子により構成しているので、装置を小型化することが可能となるとともに、複数の振動子を使用した場合のように振動子の特性や使用環境を一致させる必要がなくなる。さらに、2次元振動子の出力からCW、CCWモードに対応する成分を独立して検出することができる。
ここで、振動子(例えば、上述した2次元振動子15)の不完全性(X-Y非対称性)について説明する。振動子の不完全性とは、主に振動子の作製誤差による構造の非対称性によって生じる、X、Y方向の共振周波数、減衰係数の差を意味する。
ここで、理想振動子(モードマッチで駆動される振動子)について図15および図16を参照して説明する。図15Aの上段はX方向の駆動信号の例を示したグラフであり、図15Aの下段はY方向の駆動信号の例を示したグラフである。それぞれのグラフにおける縦軸は駆動信号のレベルを示し、横軸は時間(t)を示している。図示の通り、X方向およびY方向の駆動信号の位相差(Δθ)は90°である。
図15Bは、図15Aに示した駆動振動でもって振動子を励振した場合の振動を示し、図15Bの上段は振動子の出力のうちX方向の振動を示し、図15Bの下段は振動子の出力のうちY方向の振動を示している。各方向の振動は、対応する方向における駆動信号の位相が90°遅れたものになっており、X方向の振動とY方向の振動との位相差が90°に維持されている。すなわち、X方向およびY方向における位相差が90°の駆動信号で振動子を励振した場合、理想的には、図16Aおよび図16Bに示すように、共振点(共振周波数f0)においてX方向およびY方向の振動の振幅が同一となり、X方向およびY方向における振動の位相差が90°となる。
しかしながら、上述した振動子の不完全性(モードミスマッチ)により、振動子の振動が非理想的な振動となる場合がある。例えば、図17Aに示すように、X方向とY方向の共振周波数がずれていると、図17Bに示すように駆動信号(周波数f0)に対する振動の位相遅れ量が、X方向およびY方向のそれぞれにおいて異なってしまう。そのため、図17Bに示すように、駆動周数数f0におけるX、Y方向の位相遅れ量が90°にはならず、位相差Δφが生じてしまう。
その結果、図18Aおよび図18Bに示すように、振動子の不完全性により、X方向の振動の位相遅れがX方向の駆動信号の位相に対して90°より小さく(若しくは大きく)、Y方向の振動の位相遅れがY方向の駆動信号の位相に対して90°より大きく(若しくは小さく)なる場合がある。このような場合には、励振された振動のX方向およびY方向の振動の位相差は90°にはならない。
上述したミスマッチがジャイロ装置10の処理系統に与える影響について説明する。図19は、ジャイロ装置10を簡略化して示したブロック図である。なお、第1検出部30aは、2次元振動子15の振動に含まれるCW成分を検出するものであることから、図19ではCWディテクタと表記している。同様に、第2検出部30bは、2次元振動子15の振動に含まれるCCW成分を検出するものであることから、図19ではCCWディテクタと表記している。
上述した駆動周波数において位相差が生じると言うことは、CW(CCW)で駆動したつもりでも純粋なCW(CCW)振動(X、Y方向のそれぞれの振動の位相差が90°(-90°)の振動)が励振できなくなりCCW(CW)成分が同時に生じてしまっていることを意味する。
上述したように(図13等参照)、ジャイロ装置10では、CWモードの成分がループする系とCCWモードの成分がループする系は、本来は独立であるべきところ、CWモードの成分に含まれる不要なCCWモードの成分は、CCWディテクタを通り抜けてしまう。つまり、CCWモードのループの系にCWモードの情報を持った信号が漏れ、CCWモードのループにおけるPLL(第2PLL回路40b)にCWモードの情報が入ってしまう。これにより、第2PLL回路40bの動作がCWモードに含まれる不要なCCWモードの成分によって乱され、第2PLL回路40bがロックする周波数が乱れてしまう。
なお、上述した例では、CWモードの成分に不要なCCWモードの成分が含まれる例について説明したが、CCWモードの成分に不要なCWモードの成分が含まれる場合も同様である。すなわち、CCWモードの成分に含まれる不要なCWモードの成分により、第1PLL回路40aがロックする周波数が乱れてしまう。
そこで、この問題に対応するために、2次元振動子15の不完全性により生じる不要な位相差をキャンセルするために、駆動信号の位相を予めずらしておく(位相調整処理)。図20Aおよび図20Bの上段にそれぞれ示すように、例えば、X方向における駆動振動の位相と振動の位相との位相差が90°より小さい場合には、その位相差分、駆動信号の位相を予め遅らせておく。また、図20Aおよび図20Bの下段にそれぞれ示すように、例えば、Y方向における駆動振動の位相と振動の位相との位相差が90°より大きい場合には、その位相差分、駆動信号の位相を予め進めておく。これにより、X方向の振動とY方向の振動との位相差を90°とすることができ、純粋な固有モードが励振できる。
補償すべき位相差は、例えば、共振周波数の差より求めることができる。なお、X方向の振動とY方向の振動とが最も直交する位相差を予め実験等により求めておき、当該位相差の分だけ駆動信号の位相を遅らせまたは進めて補償してもよい。
振動子の不完全性は、上述の周波数のずれだけでなく、X方向におけるQ値(ダンピング)とY方向におけるQ値との間のずれも招く。X方向およびY方向におけるQ値にずれが生じると、図21および図22に示すように、共振点において、X方向の振動の振幅とY方向の振動の振幅とが異なってしまう。X方向の振動の振幅とY方向の振動の振幅とが異なると、固有振動(円振動)ではなくなり、上述した事象と同様に、CWモードの振動にCCWモードの成分が含まれて(CCWモードの振動にCWモードの成分が含まれて)しまう問題を生じる。
そこで、図23に示すように、駆動信号の振幅を予めずらしておくことによりQ値のずれを補償する(振幅調整処理)。例えば、図23Bに示すように、共振点において一致すべきX方向の振動の振幅およびY方向の振動の振幅を振幅ACとする。この振幅ACに対するずれの分だけ、X方向の駆動信号の振幅およびY方向の駆動信号の振幅を予めずらしておく。図23Aの上段に示す例では、X方向の駆動信号の振幅とX方向の振動の振幅との間に生じる振動の減衰分(ΔAx分)だけ駆動信号の振幅を大きくしている。図23Aの下段に示す例では、Y方向の駆動信号の振幅とY方向の振動の振幅との間に生じる振動の増加分(ΔAy分)だけ駆動信号の振幅を小さくしている。もちろん、X方向の駆動信号の振幅を小さくしたり、Y方向の駆動信号の振幅を大きくしたりする補償の場合もある。
振幅の補償分は、例えば、Q値の差から求められる。なお、X方向の振動とY方向の振動とが最も直交する振幅の補償分を予め実験等により求めておき、当該振幅の補償分だけ駆動信号の振幅を大きくまたは小さくしてもよい。
図24は、上述した位相や振幅を調整する機能を適用したジャイロ装置(ジャイロ装置10A)の構成例を示すブロック図である。ジャイロ装置10と同一の構成については同一の符号を付している。ジャイロ装置10Aの駆動信号生成部20Aは、駆動信号生成部20の構成に加え、位相調整部91、92、93、94および振幅調整部95、96、97、98を有している。
位相調整部91は、乗算器201の入力段に接続されており、振幅調整部95は、乗算器201の出力段に接続されている。位相調整部91および振幅調整部95は、2次元振動子15の不完全性により生じる不要な位相差やQ値のずれを解消するために、CWモードのX方向の駆動信号に対して、上述した位相調整処理および振幅調整処理を実行する。
位相調整部92は、乗算器202の入力段に接続されており、振幅調整部96は、乗算器202の出力段に接続されている。位相調整部92および振幅調整部96は、2次元振動子15の不完全性により生じる不要な位相差やQ値のずれを解消するために、CWモードのY方向の駆動信号に対して、上述した位相調整処理および振幅調整処理を実行する。
位相調整部93は、乗算器203の入力段に接続されており、振幅調整部97は、乗算器203の出力段に接続されている。位相調整部93および振幅調整部97は、2次元振動子15の不完全性により生じる不要な位相差やQ値のずれを解消するために、CCWモードのX方向の駆動信号に対して、上述した位相調整処理および振幅調整処理を実行する。
位相調整部94は、乗算器204の入力段に接続されており、振幅調整部98は、乗算器204の出力段に接続されている。位相調整部94および振幅調整部98は、2次元振動子15の不完全性により生じる不要な位相差やQ値のずれを解消するために、CCWモードのY方向の駆動信号に対して、上述した位相調整処理および振幅調整処理を実行する。なお、各位相調整部を各乗算器の出力段に設けても良いが、乗算器による演算処理(掛算)の前に駆動信号の位相を調整する方が回路構成を簡略化できる。また、振幅調整は乗算器201~204の倍率を個々に調整することでも実現できる。
振幅調整部95、97の出力が加算器205により加算された後、増幅器61aにより増幅され、X方向の駆動信号として2次元振動子15に供給される。振幅調整部96、98の出力が加算器206により加算された後、増幅器61bにより増幅され、Y方向の駆動信号として2次元振動子15に供給される。2次元振動子15は、それぞれの方向に対応する駆動振動により励振される。上述したように、駆動信号の位相および振幅が予め調整されているので、CWモードの駆動信号は純粋なCWモードの振動のみ(CCWモードの駆動信号は純粋なCCWモードの振動のみ)を励振することができる。
ジャイロ装置10Aにおける処理を実行したことによる効果について説明する。図25Aおよび図25Bに示すグラフの横軸は時間(t)(s)を示し、縦軸は発振器43aの周波数fcwと発振器43bの周波数fccwとの差Δf(Hz)を示している。図25Aのグラフは本実施形態における処理を適用しない場合の結果を示し、図25Bのグラフは本実施形態における処理を適用した場合の結果を示す。図25Aに示すように、位相遅れ量およびQ値のミスマッチによりCWモードとCCWモードとが直交しないので、一定速度で回しているのにも関わらず、干渉による周波数の周期的変動が見られる。一方で、上述した処理を適用し、駆動信号の位相および振幅を調整した場合には、モード間の直交性が良くなり、図25Aに示したような周波数の周期的変動が見られない。したがって、正確に角速度を検出できる。
<一実施形態>
以上説明した関連技術を踏まえつつ、一実施形態について説明する。上述したようにジャイロ装置10では、CWモードの成分がループする系(図13における上側のループ)とCCWモードの成分がループする系(図13における下側のループ)は、本来は独立であるべきところ、図26に模式的に示すように、CWモードの成分に不要なCCWモードの成分が含まれてしまう問題、および、CCWモードの成分に不要なCWモードの成分が含まれてしまう問題がある。かかる問題に対応するために、上述したように第1、第2位相・振幅調整部のそれぞれが位相調整処理および振幅調整処理を行うようにした。なお、振幅補正値という場合、振幅補正値は、CWループにおけるX方向の振幅の補正値(絶対値)に対するY方向の振幅の補正値(絶対値)の比(CWループではAcw,y/Acw,x、CCWループであればAccw,y/Accw,x)で表される。この比を満たすのであれば、振幅(絶対値)としては、任意の値をとることができる。
以上説明した関連技術を踏まえつつ、一実施形態について説明する。上述したようにジャイロ装置10では、CWモードの成分がループする系(図13における上側のループ)とCCWモードの成分がループする系(図13における下側のループ)は、本来は独立であるべきところ、図26に模式的に示すように、CWモードの成分に不要なCCWモードの成分が含まれてしまう問題、および、CCWモードの成分に不要なCWモードの成分が含まれてしまう問題がある。かかる問題に対応するために、上述したように第1、第2位相・振幅調整部のそれぞれが位相調整処理および振幅調整処理を行うようにした。なお、振幅補正値という場合、振幅補正値は、CWループにおけるX方向の振幅の補正値(絶対値)に対するY方向の振幅の補正値(絶対値)の比(CWループではAcw,y/Acw,x、CCWループであればAccw,y/Accw,x)で表される。この比を満たすのであれば、振幅(絶対値)としては、任意の値をとることができる。
しかしながら、上記手法では、ミスマッチに応じた補正を行うためのパラメータを決定するための期間を設ける必要がある。最も単純な方法は、静止時において生じるミスマッチ量を測定して、これが0になるようにパラメータを決定する方法である。しかしながら、その場合には、静止(つまり角速度が0)を保証する必要があり、その間、ジャイロ装置として角速度を検出することができないという問題があった。そこで、本実施形態では、ジャイロ装置により角速度を検出しながら、ミスマッチを同時に検出する方法を提案する。
[概要]
本実施形態の概要について説明する。上述した処理を行うジャイロ装置(FMジャイロ、およびこれを発展させた積分型ジャイロ)では、角速度(角度)を検出するにあたり周波数(位相)の情報を使用しており、振幅の情報は本質的に重要ではない。換言すれば、振幅の大きさを変化させても角速度(角度)の計測結果に影響を与えない。係る点に着目し、本実施形態では、駆動信号の振幅を変調する。そして、2次元振動子の出力を、変調信号で同期検波することでミスマッチを検出する。これにより、角速度(角度)を計測しつつ、ミスマッチの検出が可能となる。
本実施形態の概要について説明する。上述した処理を行うジャイロ装置(FMジャイロ、およびこれを発展させた積分型ジャイロ)では、角速度(角度)を検出するにあたり周波数(位相)の情報を使用しており、振幅の情報は本質的に重要ではない。換言すれば、振幅の大きさを変化させても角速度(角度)の計測結果に影響を与えない。係る点に着目し、本実施形態では、駆動信号の振幅を変調する。そして、2次元振動子の出力を、変調信号で同期検波することでミスマッチを検出する。これにより、角速度(角度)を計測しつつ、ミスマッチの検出が可能となる。
[ジャイロ装置の構成例]
一実施形態に係るジャイロ装置(以下、ジャイロ装置1000と適宜、称する)は、上述した第1検出部30aの構成が検出部30Aに置き換わり、第2検出部30bの構成が検出部30Bに置き換わる点である。検出部30Aは、主としてCW成分がループする系に配置され、検出部30Bは、主としてCCW成分がループする系に配置される構成である。
一実施形態に係るジャイロ装置(以下、ジャイロ装置1000と適宜、称する)は、上述した第1検出部30aの構成が検出部30Aに置き換わり、第2検出部30bの構成が検出部30Bに置き換わる点である。検出部30Aは、主としてCW成分がループする系に配置され、検出部30Bは、主としてCCW成分がループする系に配置される構成である。
図27は、検出部30Aの構成例を示す図である。検出部30Aは、一対の検出部として、CWディテクタとして機能する第1検出部30aと、CCWディテクタとして機能する第3検出部30c(第1エラー成分検出部の一例)とを有している。それぞれに対して2次元振動子15の出力が供給される。第1検出部30aの出力は、第1PLL回路40aおよび第1AGC部50aのそれぞれに供給される。第3検出部30cには、第1検出部30aと同一の参照信号、即ち、第1PLL回路40aからフィートバックされる信号sincwおよび信号coscwが参照信号として入力される。第3検出部30cの出力は、後述する第1復調処理部401に供給される。
図28は、検出部30Bの構成例を示す図である。検出部30Bは、一対の検出部として、CCWディテクタとして機能する第2検出部30bと、CWディテクタとして機能する第4検出部30d(第2エラー成分検出部の一例)とを有している。それぞれに対して2次元振動子15の出力が供給される。第2検出部30bの出力は、第2PLL回路40bおよび第2AGC部50bに供給される。第4検出部30dには、第2検出部30bと同一の参照信号、即ち、第2PLL回路40bからフィードバックされる信号sinCCWおよび信号cosCCWが参照信号として入力される。第4検出部30dの出力は、後述する第2復調処理部601に供給される。
検出部30Aに入力される信号が、CWモードの成分のみである場合には、第3検出部30cが、信号sinCWおよび信号cosCWを参照信号として同期検波したとしてもその出力は0になる(表1参照)。しかしながら、上述したように、振動子の不完全性のために検出部30Aの系にもCCWモードの成分が含まれ場合には、CCWモードに対応したエラー成分(第1エラー成分の一例)である、ICCWおよびQCCWが第3検出部30cにより検出される(図26参照)。
同様に、検出部30Bに入力される信号が、CCWモードの成分のみである場合には、第4検出部30dが、信号sinCWおよび信号cosCWを参照信号として同期検波したとしてもその出力は0になる(表1参照)。しかしながら、上述したように、振動子の不完全性のために検出部30Aの系にもCCWモードの成分が含まれる場合には、CCWモードに対応したエラー成分(第2エラー成分の一例)である、ICWおよびQCWが第4検出部30dにより検出される(図26参照)。
図29は、本実施形態に係るジャイロ装置1000の構成例を示すブロック図である。なお、図29に示す構成において、ジャイロ装置10、10Aと同一若しくは同質の構成については同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜、省略する。
ジャイロ装置100、第1変調処理部301、第1復調処理部401、第2変調処理部501、および、第2復調処理部601を有する。第1変調処理部301は、第1AGC部50aの振幅比較器51aと接続されている。第1復調処理部401は、検出部30Aの出力側に接続されている。第2変調処理部501は、第2AGC部50bの振幅比較器51bと接続されている。第2復調処理部601は、検出部30Bの出力側に接続されている。
図30を参照しつつ、第1変調処理部301および第1復調処理部401の構成例について説明する。第1変調処理部301は、信号発生部311、第1変調部312、および、アンプ313を有する。
信号発生部311は、変調信号を発生する。変調信号としては、例えば、周波数が所定の周波数(第1周波数)であるsin(2πfAM,t)が用いられる。勿論、cos波等の他の信号や、スペクトル拡散された広帯域信号などが変調信号として用いられてもよい。第1変調部312は、変調信号sin(2πfAM,t)を用いた変調処理を実行する。具体的には、第1変調部312は、第1設定値Rset,cwを変調信号sin(2πfAM,t)で変調し、また、必要に応じてオフセットを与えることで第1設定値R’set,cwを生成する。第1設定値R’set,cwはアンプ313によりゲインが適宜、調整された後、振幅比較器51aに供給される。振幅比較器51aは、第1検出部30aの出力である振幅rcwと第1設定値R’set,cwとを比較し、比較結果に基づいてPID制御部52aが、振幅rcwが所定の第1設定値R’set,cwとなる制御を実行する。PID制御部52aからの出力が駆動信号生成部20にフィードバックされ、CWモードに対応する駆動信号の振幅が第1設定値R’set,cwで維持されるようにゲインをコントロールする制御がなされる。すなわち、CWモードに対応する駆動信号が変調信号sin(2πfAM,t)で変調されることになる。
第1復調処理部401は、乗算器412、乗算器413、乗算器414、乗算器415、LPF416、LPF417、LPF418、LPF419、および、位相調整部420を有する。第3検出部30cの出力のうちICCWが乗算器412および乗算器413のそれぞれに供給される。第3検出部30cの出力のうちQCQWが乗算器414および乗算器415のそれぞれに供給される。
LPF416は、乗算器412の出力側に接続されている。LPF417は、乗算器413の出力側に接続されている。LPF418は、乗算器414の出力側に接続されている。LPF419は、乗算器415の出力側に接続されている。
変調信号sin(2πfAM,t)は、第1変調処理部301から第1復調処理部401に対しても供給される。位相調整部420は、入力信号の位相を90°進めることで直交信号(本例ではcos(2πfAM,t))を生成する。sin(2πfAM,t)が乗算器412、414のそれぞれに供給され、cos(2πfAM,t)が乗算器413、415のそれぞれに供給される。
第1復調処理部401の動作について説明する。乗算器412は、sin(2πfAM,t)を第3検出部30cから供給されるICCWに対して乗算する。乗算結果に対して、LPF416がカットオフ周波数以下の信号を取り出す処理を行う。これにより、変調信号sin(2πfAM,t)と同相であるI(In-phase)成分の信号Icが取り出される。
乗算器413は、位相調整部420で位相が調整された信号(本例ではcos(2πfAM,t))を第3検出部30cから供給されるICCWに対して乗算する。乗算結果に対して、LPF417がカットオフ周波数以下の信号を取り出す処理を行う。これにより、変調信号sin(2πfAM,t)の位相と直交するI成分の信号IDが取り出される。
乗算器414は、sin(2πfAM,t)を第3検出部30cから供給されるQCCWに対して乗算する。乗算結果に対して、LPF418がカットオフ周波数以下の信号を取り出す処理を行う。これにより、変調信号sin(2πfAM,t)と同相であるQ(Quadrature)成分の信号Qcが取り出される。
乗算器415は、位相調整部420で位相が調整された信号(本例ではcos(2πfAM,t))を第3検出部30cから供給されるQCCWに対して乗算する。乗算結果に対して、LPF419がカットオフ周波数以下の信号を取り出す処理を行う。これにより、変調信号sin(2πfAM,t)の位相と直交するQ成分の信号QDが取り出される。
図31を参照しつつ、第2変調処理部501および第2復調処理部601の構成例について説明する。第2変調処理部501は、信号発生部511、第2変調部512、および、アンプ513を有する。
信号発生部511は、変調信号を発生する。信号発生部511は、混信を防止するために、CWループで用いられる変調信号とは異なる変調信号を発生する。例えば、信号発生部511は、CWループで用いられる変調信号sin(2πfAM,t)と周波数が異なる(周波数が第1周波数と異なる第2周波数)sin(2πfAM’,t)を発生する。信号発生部511は、CWループの変調信号と直交するスペクトル拡散信号を変調信号として発生してもよい。第2変調部512は、変調信号sin(2πfAM’,t)を用いた変調処理を実行する。具体的には、第2変調部512は、第2設定値Rset,ccwを変調信号sin(2πfAM’,t)で変調し、必要に応じてオフセットを与えることで第2設定値R’set,ccwを生成する。第2設定値R’set,ccwはアンプ513によりゲインが適宜、調整された後、振幅比較器51bに供給される。振幅比較器51bは、第2検出部30bの出力である振幅rccwと第2設定値R’set,ccwとを比較し、比較結果に基づいてPID制御部52bが、振幅rccwが所定の第2設定値R’set,ccwとなる制御を実行する。PID制御部52bからの出力が駆動信号生成部20にフィードバックされ、CCWモードに対応する駆動信号の振幅が第2設定値R’set,ccwで維持されるようにゲインをコントロールする制御がなされる。すなわち、CCWモードに対応する駆動信号が変調信号sin(2πfAM’,t)で変調されることになる。
第2復調処理部601は、乗算器612、乗算器613、乗算器614、乗算器615、LPF616、LPF617、LPF618、LPF619、および、位相調整部620を有する。第4検出部30dの出力のうちICWが乗算器612および乗算器613のそれぞれに供給される。第4検出部30dの出力のうちQCWが乗算器614および乗算器615のそれぞれに供給される。
LPF616は、乗算器612の出力側に接続されている。LPF617は、乗算器613の出力側に接続されている。LPF618は、乗算器614の出力側に接続されている。LPF619は、乗算器615の出力側に接続されている。
変調信号sin(2πfAM,t)は、は、第2変調処理部501から第2復調処理部601に対しても供給される。位相調整部620は、入力信号の位相を90°進めることで直交信号(本例ではcos(2πfAM’,t))を生成する。sin(2πfAM’,t)が乗算器612、614のそれぞれに供給され、cos(2πfAM’,t)が乗算器613、615のそれぞれに供給される。
第2復調処理部601の動作について説明する。乗算器612は、sin(2πfAM’,t)を第4検出部30dから供給されるICWに対して乗算する。乗算結果に対して、LPF616がカットオフ周波数以下の信号を取り出す処理を行う。これにより、変調信号sin(2πfAM’,t)と同相であるI成分の信号Ic’が取り出される。
乗算器613は、位相調整部620で位相が調整された信号(本例ではcos(2πfAM’,t))を第4検出部40dから供給されるICWに対して乗算する。乗算結果に対して、LPF617がカットオフ周波数以下の信号を取り出す処理を行う。これにより、変調信号sin(2πfAM’,t)の位相と直交するI成分の信号ID’が取り出される。
乗算器614は、sin(2πfAM’,t)を第4検出部40dから供給されるQCWに対して乗算する。乗算結果に対して、LPF618がカットオフ周波数以下の信号を取り出す処理を行う。これにより、変調信号sin(2πfAM’,t)と同相であるQ成分の信号Qc’が取り出される。
乗算器615は、位相調整部620で位相が調整された信号(本例ではcos(2πfAM’,t))を第4検出部40dから供給されるQCWに対して乗算する。乗算結果に対して、LPF619がカットオフ周波数以下の信号を取り出す処理を行う。これにより、変調信号sin(2πfAM’,t)の位相と直交するQ成分の信号QD’が取り出される。
第1復調処理部401および第2復調処理部601における処理で得られる信号Ic、ID、Qc、QD、および、信号Ic、ID、Qc、QDは、2次元振動子が理想的でありミスマッチがない場合には0になる。本実施形態では、信号Ic、ID、Qc、QD、および、信号Ic、ID、Qc、QDが検出された場合には、検出された信号を0にするように、それぞれのループにおける駆動信号の振幅の補正値(CWループではAcw,y/Acw,x、CCWループであればAccw,y/Accw,x)や位相調整部91~94における位相の調整値が設定される。例えば、信号Ic、ID、Qc、QD、および、信号Ic、ID、Qc、QDのそれぞれの検出値に応じた補正値が記述されたテーブルを用意し、検出値に応じた補正値が読み出されるようにし、読み出された補正値に応じた振幅・位相調整処理が行われる。この他にも、振幅や位相の補正に係る最適なパラメータを得る手法として、本発明者が先に提案している「T. Tsukamoto and S. Tanaka, "Automated Frequency and Quality Factor Mismatch Compensation Method for MEMS Rate Integrating Gyroscope," in Proc. 2019 20th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems Eurosensors XXXIII (TRANSDUCERS EUROSENSORS XXXIII), 2019, pp. 1831-1834.」や「T. Tsukamoto and S. Tanaka, "Theoretical Consideration of Mismatch Compensation for MEMS Resonator Having Unaligned Principle Axes," in Proc. 2021 IEEE International Symposium on Inertial Sensors and Systems (INERTIAL), 2021, pp. 1--4.」を用いることも可能である。
[実験例]
図32および図33を参照して、実際に2次元振動子を用いて実験した結果について説明する。図32Aおよび図32Bの縦軸は、CWループにおける上述した信号IC、IDの大きさ(それぞれを2乗した結果を加算した値のルート)であり、図32Aの横軸はQ値のミスマッチ、図32Bの横軸は周波数のミスマッチをそれぞれ示す。また、図33Aおよび図33Bの縦軸は、CWループにおける上述した信号QC、QDの大きさ(それぞれを2乗した結果を加算した値のルート)であり、図33Aの横軸はQ値のミスマッチ、図33Bの横軸は周波数のミスマッチをそれぞれ示す。
図32および図33を参照して、実際に2次元振動子を用いて実験した結果について説明する。図32Aおよび図32Bの縦軸は、CWループにおける上述した信号IC、IDの大きさ(それぞれを2乗した結果を加算した値のルート)であり、図32Aの横軸はQ値のミスマッチ、図32Bの横軸は周波数のミスマッチをそれぞれ示す。また、図33Aおよび図33Bの縦軸は、CWループにおける上述した信号QC、QDの大きさ(それぞれを2乗した結果を加算した値のルート)であり、図33Aの横軸はQ値のミスマッチ、図33Bの横軸は周波数のミスマッチをそれぞれ示す。
なお、各軸の値は、所定の基準値を用いて正規化した任意単位(a.u.:arbitrary unit)として示す場合がある。また、実際の2次元振動子のミスマッチそのものを変化させるのは困難であるため、ミスマッチに対応する補正値(振幅の補正値Acw,y/Acw,x、位相の補正値ΔφCW)を最適値(マッチングする値)からずらすことでミスマッチを導入した。
図32Aに示すように、振幅の補正値を最適値(中央の値)からずらすことで縦軸の値が変化することが確認された。また、位相の補正値を変化させ周波数を変えた場合には、図32Bに示すように、縦軸の値が変化しないことが確認された。また、図33Aに示すように、Q成分の信号の場合は、振幅の補正値を最適値(中央の値)からずらしても縦軸の値が変化しないことが確認された。また、位相の補正値を変化させ周波数を変えた場合には、図33Bに示すように、縦軸の値が変化することが確認された。すなわち、I成分の信号に基づいて、2次元振動子におけるQ値のミスマッチを検出できることが確認された。また、Q成分の信号に基づいて、2次元振動子における周波数のミスマッチを検出できることが確認された。
[本実施形態により得られる効果]
以上、本実施形態によれば、角速度の検出結果に影響しない振幅信号を用いてミスマッチを検出するので、角速度を検出しつつミスマッチに応じた補正を行うことができるジャイロ装置とすることができる。したがって、ミスマッチに応じた補正を行うための期間(キャリブレーション等)を設ける必要がなくなる。
以上、本実施形態によれば、角速度の検出結果に影響しない振幅信号を用いてミスマッチを検出するので、角速度を検出しつつミスマッチに応じた補正を行うことができるジャイロ装置とすることができる。したがって、ミスマッチに応じた補正を行うための期間(キャリブレーション等)を設ける必要がなくなる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく各種の変形が可能である。
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく各種の変形が可能である。
一実施形態において、CWループとCCWループにおけるミスマッチを別々に検出する場合は、同じ変調信号が用いられてもよい。また、2次元振動子のミスマッチ量を直接求める場合は、一方のループのみの処理(例えば第1変調処理部301および第1復調処理部401に係る処理)だけが行われるようにし、その結果を他方のループ(例えば、CCWループ)に適用し、当該ループにおける駆動信号に対する補正が行われるようにしてもよい。但し、精度を向上させる観点からは、両方のループでミスマッチを検出する処理が行われることが好ましい。
信号発生部311、信号発生部511で発生する信号としては、単一周波数の正弦波のみでなく、他の方法、例えば広帯域の信号を用いたスペクトラム拡散技術が適用されてもよい。すなわち、第1、第2設定値を所定の拡散符号(第1、第2疑似ランダム信号)で拡散し、後段の復調処理で逆拡散することで、ミスマッチの検出が行われてもよい。すなわち、一実施形態では、第1変調処理部が行う第1変調方式、第2変調処理部が行う第2変調方式として振幅変調を用いたが、これに限定されることなく、他の公知の変調方式および当該変調方式に対応する復調方式を本発明に適用可能である。
周波数およびQ値のミスマッチ補正は、例示した駆動信号の位相差、振幅比を調整する方法に限らず,静電チューニング等の方法を用いても良い.
本発明は、2次元にモードマッチする振動子であれば、形状、励振方法(静電、電磁、圧電など)等は特定の方法等に限定されることはない。
2次元振動子15の出力を処理する回路は、ASIC(Application Specific integrated Circuit)等の集積回路で構成することも可能である。
本発明の作用効果を奏する範囲で、ジャイロ装置が他の回路素子等を備える構成でもよい。また、ジャイロ装置における一部の処理が、他の装置やクラウドサーバー等によって行われるようにしてもよい。
本発明のジャイロ装置は、他の装置(例えば、ゲーム機器、撮像装置、スマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の各種の電子機器や、自動車、電車、飛行機、ヘリコプター、小型飛行体、宇宙用機器等の移動体、ロボット等)に組み込まれて使用されてもよい。
上述した実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。また、本発明は、装置、方法、複数の装置からなるシステム(クラウドシステム等)により実現することができ、複数の実施形態および変形例で説明した事項は、技術的な矛盾が生じない限り相互に組み合わせることができる。
15、15A・・・2次元振動子
30a・・・第1検出部
30b・・・第2検出部
40a・・・第1PLL回路
40b・・・第2PLL回路
42a、42b・・・PID制御部
301・・・第1変調処理部
311・・・信号発生部
312・・・第1変調部
401・・・第1復調処理部
412~415・・・乗算器
416~419・・・LPF
420・・・位相調整部
501・・・第1変調処理部
511・・・信号発生部
512・・・第1変調部
601・・・第1復調処理部
612~615・・・乗算器
616~619・・・LPF
620・・・位相調整部
1000・・・ジャイロ装置センサ
CW・・・第1回転振動モード
CCW・・・第2回転振動モード
30a・・・第1検出部
30b・・・第2検出部
40a・・・第1PLL回路
40b・・・第2PLL回路
42a、42b・・・PID制御部
301・・・第1変調処理部
311・・・信号発生部
312・・・第1変調部
401・・・第1復調処理部
412~415・・・乗算器
416~419・・・LPF
420・・・位相調整部
501・・・第1変調処理部
511・・・信号発生部
512・・・第1変調部
601・・・第1復調処理部
612~615・・・乗算器
616~619・・・LPF
620・・・位相調整部
1000・・・ジャイロ装置センサ
CW・・・第1回転振動モード
CCW・・・第2回転振動モード
Claims (9)
- 第1回転振動モードに対応する駆動信号および第2回転振動モードに対応する駆動信号によって駆動され、前記第1回転振動モードに対応する出力信号および前記第2回転振動モードに対応する出力信号を出力する単一の2次元振動子と、
前記第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第1変調方式で変調する第1変調処理部と、
前記第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第2変調方式で変調する第2変調処理部と、
前記第1回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、前記第2回転振動モードに対応する第1エラー成分を検出する第1エラー成分検出部と、
前記第2回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、前記第1回転振動モードに対応する第2エラー成分を検出する第2エラー成分検出部と、
前記第2回転振動モードに対応する第1エラー成分に対して、前記第1変調方式に対応する第1復調方式で復調を行う第1復調処理部と、
前記第1回転振動モードに対応する第2エラー成分に対して、前記第2変調方式に対応する第2復調方式で復調を行う第2復調処理部と、
を備える
ジャイロ装置。 - 前記第1復調処理部の前記第1復調方式による復調処理で得られる信号、および、前記第2復調処理部の前記第2復調方式による復調処理で得られる信号を0とするように、前記第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅および位相と、前記第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅および位相とがそれぞれ補正される
請求項1に記載のジャイロ装置。 - 前記第1復調処理部の前記第1復調方式による復調処理で得られる信号、および、前記第2復調処理部の前記第2復調方式による復調処理で得られる信号を0とするように、前記2次元振動子のX軸とY軸のそれぞれの周波数およびQ値が電気的にチューニングされる
請求項1に記載のジャイロ装置。 - 前記第1変調方式および前記第1復調方式は、第1周波数の信号を用いた変調方式および復調方式であり、
前記第2変調方式および前記第2復調方式は、前記第1周波数と異なる第2周波数の信号を用いた変調方式および復調方式である
請求項1から3までの何れかに記載のジャイロ装置。 - 前記第1変調方式および前記第1復調方式は、第1疑似ランダム信号を用いた変調方式および復調方式であり、
前記第2変調方式および前記第2変調方式は、前記第1疑似ランダム信号と異なる第2疑似ランダム信号を用いた変調方式および復調方式である
請求項1から3までの何れかに記載のジャイロ装置。 - 前記第1復調処理部の前記第1復調方式による復調処理で得られる信号および前記第2復調処理部の前記第2復調方式による復調処理で得られる信号の少なくとも一方に基づいて、前記2次元振動子のQ値のミスマッチおよび前記2次元振動子の周波数のミスマッチが検出される
請求項1から5までの何れかに記載のジャイロ装置。 - 前記第1復調処理部の前記第1復調方式による復調処理で得られる信号および前記第2復調処理部の前記第2復調方式による復調処理で得られる信号の両方に基づいて、前記2次元振動子のQ値のミスマッチおよび前記2次元振動子の周波数のミスマッチが検出される
請求項6に記載のジャイロ装置。 - 前記第1回転振動モードに対応した成分と前記第2回転振動モードに対応した成分との位相差に基づいて、回転の角度を検出する
請求項1から7までの何れかに記載のジャイロ装置。 - 第1回転振動モードに対応する駆動信号および第2回転振動モードに対応する駆動信号によって駆動された単一の2次元振動子が、前記第1回転振動モードに対応する出力信号および前記第2回転振動モードに対応する出力信号を出力し、
第1変調処理部が、前記第1回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第1変調方式で変調し、
第2変調処理部が、前記第2回転振動モードに対応する駆動信号の振幅を第2変調方式で変調し、
第1エラー成分検出部が、前記第1回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、前記第2回転振動モードに対応する第1エラー成分を検出し、
第2エラー成分検出部が、前記第2回転振動モードに対応する出力信号に含まれる、前記第1回転振動モードに対応する第2エラー成分を検出し、
第1復調処理部が、前記第2回転振動モードに対応する第1エラー成分に対して、前記第1変調方式に対応する第1復調方式で復調し、
第2復調処理部が、前記第1回転振動モードに対応する第2エラー成分に対して、前記第2変調方式に対応する第2復調方式で復調する、
ジャイロ装置における制御方法。
Priority Applications (1)
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JP2022030741A JP2023127142A (ja) | 2022-03-01 | 2022-03-01 | ジャイロ装置およびジャイロ装置の制御方法 |
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