JP2023127082A - 光学素子の製造方法 - Google Patents

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JP2023127082A JP2022030641A JP2022030641A JP2023127082A JP 2023127082 A JP2023127082 A JP 2023127082A JP 2022030641 A JP2022030641 A JP 2022030641A JP 2022030641 A JP2022030641 A JP 2022030641A JP 2023127082 A JP2023127082 A JP 2023127082A
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一真 井上
Kazuma Inoue
憲 佐藤
Ken Sato
麻人 田中
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Abstract

【課題】 均一な回折効率を有するホログラムが多重記録された光学素子を製造する。【解決手段】 重合性化合物と光重合開始剤とを含む記録層を有する媒体に対して、下記式(1)に基づく露光時間スケジュールにてホログラムの多重記録を行う、光学素子の製造方法。TIFF2023127082000007.tif1898[式(1)中、Tnはn回目の記録露光時間(ミリ秒)、nは2以上の整数、Aは1回目の記録露光時間(ミリ秒)、ΣTn-1は、T1からTn-1までの露光時間の総和、Bは2×10-5以上の無次元の定数を示す。]【選択図】なし

Description

本発明は、ホログラム記録媒体の製造方法に関する。
近年、注目を浴びているホログラム記録媒体は、光の干渉、回折現象を利用する記録媒
体である。ホログラムとは、参照光と情報(又は信号)光と呼ばれる2つの光の干渉縞が
作る干渉パターンを記録媒体内部に立体的に記録する記録手法である。ホログラム記録媒
体は記録層に感光材料を含んでおり、感光材料が干渉パターンに応じて化学変化し光学特
性が局所的に変化することによって干渉パターンを記録する。
ホログラム記録媒体はメモリ用途向けに開発が進められていたが、他の用途としてAR
グラス導光板等の光学素子用途へ適用する検討が行われている。ARグラス用途の場合、
導光板に用いられるホログラム記録された光学素子には広い視野角、可視領域の光に対す
る高い回折効率及び媒体の高い透明性が求められる。
ホログラム記録媒体はどのような光学特性を変化させるかによりいくつかの種類に分け
られるが、一定以上の厚みを有する記録層内屈折率差を生じさせることにより記録を行う
体積型ホログラム媒体が、省スペースかつ高い回折効率、波長選択性を実現できるためA
Rグラス導光板用途に有利であると考えられている。
体積型ホログラム記録媒体の例としては、湿式処理や漂白処理が不要なライトワンス形
式があり、その記録層の組成としては、マトリクス樹脂に光活性化合物を相溶させたもの
が一般的である。例えば、記録層として、マトリクス樹脂に、光活性化合物として、光重
合開始剤とラジカル重合やカチオン重合可能な重合性の反応性化合物とを組み合わせたフ
ォトポリマーを用いることが知られている(特許文献1~4)。
ホログラムを記録するとき、参照光と物体光が交差して干渉パターンが形成される部分
にフォトポリマーからなる記録層があると、干渉パターンのうち光強度の高い部分では光
重合開始剤が化学反応を起こし活性物質となり、これが重合性化合物に作用して重合性化
合物が重合する。この際、マトリックス樹脂と重合性化合物から生成する重合物の間で屈
折率に差があると、干渉パターンが屈折率差となって記録層の中に固定化される。また、
重合性化合物が重合する際、周辺から重合性化合物の拡散が起こり、記録層内部で、重合
性化合物またはその重合物の濃度分布が発生する。この原理により、ホログラム記録媒体
に干渉パターンが屈折率差として記録される。
以下、上記のように媒体の記録層を所定の条件で露光することで記録層の光学特性を変
化させる過程を「記録露光」と呼び、この参照光と物体光の交差角度を変えて、同位置に
異なる干渉パターンを重複して記録露光することを「多重記録露光」と呼ぶ。
一方、データ再生時は再生光のみを使用し、照射された再生光は前記干渉パターンに応
じた回折を生じる。この際、再生光の波長が記録光の波長と一致していなくても、前記干
渉パターンとブラッグ条件が成立すれば回折を生じる。したがって回折させたい再生光の
波長と入射角に応じて、対応した干渉パターンを記録しておけば、広い波長域の再生光に
対して回折を生じさせることができ、ARグラスの表示色域を広げることができる。また
、回折光の強さを再生光の強さで除算した値を「回折効率」と呼び、ARグラスにおいて
は、表示されるAR増の明るさと相関がある。つまり、表示色域を広げ、明るいAR像を
得るには、表示色域に応じた干渉パターンを出来るだけ均一な回折効率となるように、多
重記録露光をすることが重要となる。
多重記録露光の際に均一な回折効率となるように記録露光する方法として、多重記録露
光が行われるたびに、徐々に参照光と物体光の露光エネルギーを大きくすることが知られ
ている。この露光エネルギーは、光源の光強度と露光時間の積であるから、露光エネルギ
ーを変化させる方法としては、多重記録が進むにつれて、光源の光強度を増大させるか、
光照射する時間を長くする方法が考えられるが、光強度を任意に変化させながら記録露光
をするのは、製造上の効率が悪いことに加えて、光強度に上限もあり、生産には適さない
ため、通常では光照射する時間を、多重記録露光の前に決めておき、光学シャッターなど
で制御する方法が取られる。その方法を「露光時間スケジュール」という(特許文献5)
。しかし、この露光時間スケジュールを均一な回折効率となるように実施することは難し
く、特許文献5に記載されている累積露光時間に対して、実質的な1次関数である直線的
な露光時間スケジュールを行っても、均一な回折効率を得ることは難しい。ここで、累積
露光時間とは、多重記録をする際に当該多重記録が終了するまでの各露光時間の総和を意
味している。
特開2021-12249号公報 特開2007-34334号公報 特開平8-160842号公報 特開2003-156992号公報 特開2012-141621号公報
本発明はかかる問題点を鑑みてなされたもので、均一な回折効率を有するホログラムが
多重記録露光された光学素子を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の露光時間スケジュールを採用することにより、
ホログラム記録媒体に対して均一な回折効率となる多重記録露光ができることを見出した
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]重合性化合物と光重合開始剤とを含む記録層を有する媒体に対して、下記式(1)
に基づく露光時間スケジュールにてホログラムの多重記録露光を行う、光学素子の製造方
法。
Figure 2023127082000001
式(1)中、Tはn回目の記録露光時間(ミリ秒)、nは2以上の整数、Aは1回目
の記録露光時間(ミリ秒)、ΣTn-1は、T1からTn-1までの記録露光時間の総和、B
は2×10-5以上の無次元の定数を示す。
[2]前記式(1)のAが3ミリ秒以上である[1]に記載の光学素子の製造方法。
[3]前記多重記録露光における総多重数mが20以上である[1]または[2]に記載
の光学素子の製造方法。
[4]前記式(1)に基づく露光時間スケジュールにて多重記録されたホログラムの回折
効率の平均が0.2以上となる[1]~[3]のいずれかに記載の光学素子の製造方法。
[5]前記式(1)に基づく露光時間スケジュールにて多重記録された各ホログラムの回
折効率の分散が0.3以下である[1]~[4]のいずれかに記載の光学素子の製造方法
本発明によれば、均一な回折効率を有する光学素子を製造することができる。
露光時間スケジュールのパラメータを決定する際のフローチャートである。 ホログラム記録装置の一例を示す概略図である。 非直線的な露光時間スケジュール(実施例2)にて多重記録露光された光学素子の再生測定例である。 直線的な露光時間スケジュール(比較例1)にて多重記録露光された光学素子の再生測定例である。
以下に本発明の光学素子の製造方法の実施形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本
発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの
内容に特定されない。
(本発明のホログラム記録媒体の製造方法)
本発明は、媒体の記録層に参照光と物体光による干渉パターンの多重記録露光を行うこ
とによる光学素子の製法方法に関するものである。
この多重記録露光は、重合性化合物と光重合開始剤とを含む記録層を有する媒体を予め
設定した条件に基づき、例えば参照光と物体光の入射角度が変わるように回転させ、同じ
場所に各入射角度に基づく干渉パターンを繰り返し記録露光することにより行うことがで
きるが、本発明においては、式(1)に定められる露光時間スケジュールにて多重記録露
光が行なわれる。
Figure 2023127082000002
式(1)中、Tはn回目の記録露光時間(ミリ秒)、nは2以上の整数、Aは1回目
の記録露光時間(ミリ秒)、ΣTn-1は、T1からTn-1までの記録露光時間の総和、B
は2×10-5以上の無次元の定数を示す。
本発明において参照光とは、媒体に干渉パターンを記録する際の基準となる光で、媒体
の記録層に露光を行う際に物体光と重複させてこの記録層に照射する光である。また、本
発明において物体光とは、ARグラス等に用いられる光学素子として必要な再生光の波長
と回折に応じて、参照光との干渉によって対応した干渉パターンを媒体内にホログラム記
録させるために媒体の記録層に照射する光である。
本発明における記録露光に用いることができる光源としては、媒体の記録層中の光重合
開始剤の吸収波長領域で任意に選択可能である。特に好適なものとしては、例えば、ルビ
ー、ガラス、Nd-YAG、Nd-YVO等の固体レーザー;GaAs、InGaAs
、GaN等のダイオードレーザー;ヘリウム-ネオン、アルゴン、クリプトン、エキシマ
、CO等の気体レーザー;色素を有するダイレーザー等の、単色性と指向性に優れたレ
ーザー等が挙げられる。
本発明における記録露光用の光の波長は、この光重合開始剤の吸収波長領域であればよ
く、紫外領域から可視領域の波長で任意に選択可能であるが好ましくは300nm以上で
あり、さらに好ましくは350nm以上である。また、好ましくは600nm以下であり
、さらに好ましくは450nm以下である。
本発明において、露光時間スケジュールとは、前記式(1)にて求められるn回目の多
重ホログラム記録時における露光時間T(ミリ秒)のことである。
この式(1)において、Aは1回目(n=1)の記録露光時間(ミリ秒)である。この
Aは、適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、より高精度で記録露光
できる傾向にあることから3ミリ秒以上とするのが好ましい。より好ましくは20ミリ秒
以上であり、さらに好ましくは100ミリ秒以上である。一方、記録露光時間が長くなり
すぎると、露光時の空気の揺らぎによる光の干渉性の悪化により、ホログラム記録が阻害
される傾向にあるので、Aは30×10ミリ秒以下であるのが好ましい。より好ましく
は10×10ミリ秒以下である。
また式(1)において、Bは2×10-5以上の無次元の定数である。Bを2×10-5
以上とすることによって、ホログラムの多重記録露光により得られる光学素子における回
折効率の均一性が向上する傾向にある。より好ましくは4×10-5以上である。
一方、Bが大きくなるほど多重記録回数が進むにつれてTが長くなり、光学素子の製
造効率の低下や前半に多重記録露光した信号の品質を劣化させる傾向にあるので、Bは7
×10-5以下であり、より好ましくは6×10-5以下である。
さらに式(1)が適用される本発明における総多重数m(多重記録露光の全記録回数)
は2以上であれば適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、総多重数m
が少ない場合は、得られる光学素子から表示色域の広いAR像を得ることが難しい傾向に
ある。そのため、総多重数mは20以上が好ましく、40以上がより好ましく、60以上
がさらに好ましい。一方、総多重数mが多いほど、前記の通り表示色域は広がり、AR像
の色再現度が上がるが、多重記録露光にかかる時間が長くなることで、光学素子の製造効
率が低下する傾向にある。従って、総多重数mは300以下が好ましく、200以下がよ
り好ましく、150以下がさらに好ましい。
図1は、式(1)におけるA、Bの値を決定するためのフローチャートの一例であり、
以下、順に説明する。
まず、1回目のテスト多重記録露光を行うための各数値を決める。総多重数mは、上記
の範囲内において任意に設定するとともに、初期設定としてB=4×10-5とするとと
もに、n=1のときの露光時間Aを100ミリ秒とする。この設定条件にて1回目のテス
ト多重記録露光を行い、再生したときの多重記録された各ホログラムの回折効率の分散が
0.3以下となるか判定を行う。
この分散が0.3より大きい場合は、各数値の調整を行った上で、新しい未露光の同一
仕様の媒体を用いて2回目のテスト多重記録を行い、前記の分散が0.3以下となるかの
判定を再度行う。
例えば、多重数が後半にいくほど回折効率が高くなる場合は、Aを大きくし、多重数が後
半にいくほど回折効率が低くなる場合は、Aを小さくする。また、多重数が前半のときに
回折効率が低く、多重数が進むにつれて回折効率が徐々に大きくなり、後半で再び回折効
率が低下する場合は、Bの値を小さくし、多重数に対して各回折効率の変化がこれと逆の
傾向を示す場合には、Bの値を大きくする。
2回目のテスト多重記録の分散が0.3より大きい場合は、各数値の調整を行ったテス
ト多重記録露光を繰り返し行い、分散値が0.3以下の所望の値になるまで各数値を調整
する。
以上の順序で式(1)におけるA、Bの値を決定し、式(1)に基づく露光時間スケジ
ュールにて、媒体を多重記録露光することによって、記録層中の重合性化合物や光重合開
始剤を余すことなく使い切ることができるとともに、均一な回折効率を有する光学素子を
得ることができる。
重合性化合物と光重合開始剤とを含む記録層を有する媒体に対してホログラムの記録露
光を行うと、露光エネルギーに応じた一定量の光重合開始剤が開裂し、一定量の重合性化
合物が重合することで、干渉パターンが媒体中に形成される。この記録露光を繰り返し、
累積露光時間が増加する多重記録露光の後半になると、記録層中の光重合開始剤や光反応
性化合物が減少しているため、多重記録露光の前半と同じ露光エネルギーにて記録露光を
行っても、この前半と同じ強度の干渉パターンを媒体中に形成させることは困難となる。
そこで本発明においては、均一な回折効率を有する光学素子を得るために、前記式(1
)に基づく露光時間スケジュールを採用し、各回の記録露光時における露光エネルギーを
指数関数的に増加させている。
この露光時間スケジュールの実行に際しては、物理的に光を遮断するシャッターや、液
晶の明暗反転を利用した液晶シャッター等を利用することによって、記録露光時間を制御
することができる。
本発明にて光学素子を製造する場合、露光阻害の防止を目的として、多重記録露光する
前の媒体に対して前処理露光を行い、媒体の記録層中含まれている重合禁止剤や酸素を失
活させることができる。
また、本発明にて光学素子を製造する場合、干渉パターンの光学素子への固定を目的と
して、多重記録露光後の媒体に対してポスト露光を行い、記録層中の未反応の重合性化合
物や光重合開始剤を安定化させることができる。
この前処理露光やポスト露光に用いる光源としては、LED、UVランプ、キセノンラ
ンプ、水銀灯等があるが、光重合開始剤の吸収波長領域の光を照射できる光源であれば任
意に選択でき、記録露光と同じレーザーを用いることもできる。
本発明により製造された光学素子の回折効率は、参照光を再生光として光学素子に照射
することにより求めることができる。
n回目に記録露光したホログラムからの回折効率ηは、記録した干渉パターンから得
られた回折光強度Idnと再生光の透過光強度Itnの関係から求めることができ、式(
2)により定義される。
Figure 2023127082000003
例えば、本発明の光学素子をARグラス導光板に適用する場合は、明るいAR像が得ら
れる傾向にあるため、多重記録露光されたそれぞれのホログラムの回折効率の平均が0.
2以上であるのが好ましい。より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.6
以上である。これらホログラムの回折効率はそれぞれ高いほど好ましいが、原理上1を超
えることはない。
本発明では、多重記録露光されたそれぞれホログラムの回折効率の均一性を示す値とし
て、式(3)で表される回折効率の分散σが用いられる。
この分散が小さいほどホログラムの回折効率の均一性が高いことを意味するが、0.3
以下であれば、ARグラス導光板として、充分に均一な色表示性能が得られる傾向にある
ので好ましい。より好ましくは0.2以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。
Figure 2023127082000004
(式中、mは総多重数、ηはn回目に多重記録露光したホログラムの回折効率、ηav
は回折効率の平均を示す。)
(本発明における媒体の構成要素)
本発明に用いられる媒体は、ホログラム記録用媒体として有用であり、少なくとも重合
性化合物、及び光重合開始剤を含む記録層を有する。このような記録層を形成するための
組成物(以下、「記録層形成用組成物」ともいう)としては、例えば、適当なマトリクス
樹脂に、重合性化合物としてラジカル重合やカチオン重合可能な重合性モノマーと、前記
重合性モノマーの重合を促進する光重合開始剤と、前記重合性モノマーの重合を阻害する
物質である重合阻害剤とを組み合わせたフォトポリマーが好適に用いられる。
<ホログラム記録層形成用組成物について>
本発明に係る媒体の記録層は、以下に詳述する記録層形成用組成物により形成される。
ここで、マトリクス樹脂については、通常、記録層形成用組成物を平面基板間に充填後に
重合や架橋させることにより、記録層内に架橋ネットワーク構造として存在せしめること
になるため、記録層形成用組成物には、重合や架橋によりマトリクス樹脂を形成するため
のマトリクス樹脂用組成物の形で含有されることとなる。
つまり、本発明に係る記録層形成用組成物には、重合性モノマー、マトリクス樹脂形成
用組成物、光重合開始剤及び重合阻害剤を含有させることができる。以下、ホログラム記
録層形成用組成物の構成成分について詳述する。
<<重合性モノマーについて>>
本発明に係る重合性モノマーとは、後述の光重合開始剤によって重合され得る化合物を
いう。重合性モノマーの種類は特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択すること
が可能である。重合性モノマーの例としては、カチオン重合性モノマー、アニオン重合性
モノマー、ラジカル重合性モノマー等が挙げられる。これらは、何れを使用することもで
き、また二種以上を併用してもよい。
カチオン重合性モノマーの例としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、オキソラ
ン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合
物、ビニルエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和結合化合物
、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物等が挙げられる。カチオ
ン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ
及び比率で併用してもよい。
アニオン重合性モノマーの例としては、炭化水素モノマー、極性モノマー等が挙げられ
る。炭化水素モノマーの例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソ
プレン、ビニルピリジン、ビニルアントラセン、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
極性モノマーの例としては、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、ビニルケ
トン類、イソプロペニルケトン類、その他の極性モノマーなどが挙げられる。アニオン重
合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び
比率で併用してもよい。
ラジカル重合性モノマーの例としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(メ
タ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニル化合物、スチレン類、スピロ環含有化
合物等が挙げられる。ラジカル重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、
二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。上記の中でも、ラジカル重合す
る際の立体障害の点から(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
上記重合性モノマーにおいて、分子内にハロゲン原子(ヨウ素、塩素、臭素など)を有
する化合物や複素原子(窒素、硫黄、酸素など)を有する化合物が、屈折率が高く好まし
い。上記の中でも、複素環構造を有するものがより高い屈折率を得られることから好まし
い。
<<マトリクス樹脂及びマトリクス樹脂形成用組成物について>>
本発明に係るマトリクス樹脂とは、重合反応又は架橋反応によって結合形成された架橋
ネットワーク構造を持つ硬化物をいい、マトリクス樹脂形成用組成物とは、重合反応及び
架橋反応による結合形成前のマトリクス樹脂前駆体をいう。
マトリクス樹脂は、架橋ネットワーク構造を有するが故に、重合性モノマーや光重合開
始剤の運動性を適度に抑制することで、記録層中の重合性モノマーや光重合開始剤を空間
的に均一に分散した状態を安定に保つ役割を有している。また、マトリクス樹脂は記録層
中に生成した重合体との絡み合いなどにより重合体の拡散を抑制することで、記録情報が
消去されることを防いでいる。更に、液体状態と比べて高い弾性率を有するため、記録層
の物理的形状を保持するなどの役割を有する。
マトリクス樹脂形成用組成物としては、重合反応又は架橋反応により結合形成させた後
も重合性モノマーやその重合体、及び、光重合開始剤との十分な相溶性を維持しうるもの
であれば、特に制限されず、好ましくは、分子中にイソシアネート基、水酸基、メルカプ
ト基、エポキシ基、アミノ基およびカルボキシ基からなる群から選ばれる官能基を、少な
くとも2以上有する化合物を単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
これらの化合物を単独もしくは複数組み合わせて、架橋ネットワーク構造となるある種
の化学結合を実現する例としては、以下のような例が挙げられる。即ち、イソシアネート
基を有する化合物同士の反応によりイソシアヌレート結合を形成させること、イソシアネ
ート基を有する化合物と、分子内に活性水素を有する化合物、例えば、水酸基やメルカプ
ト基、アミノ基、カルボキシ基を含む化合物を組み合わせてウレタン結合、チオウレタン
結合、尿素結合、アミド結合などを形成させること、水酸基を有する化合物とカルボキシ
基を有する化合物を組み合わせてエステル結合を形成させること、アミノ基を有する化合
物とカルボキシ基を有する化合物を組み合わせてアミド結合を形成させること、エポキシ
基を有する化合物同士の反応によりエーテル結合を形成させること、エポキシ基と水酸基
の組み合わせによりエーテル結合を形成させること、エポキシ基を有する化合物とアミノ
基を有する化合物の組み合わせによりアミン結合を形成させること、さらには、これらを
含む複数種の結合形成をさせることなどが考えられる。
中でも、イソシアネート基を有する化合物と、イソシアネート反応性官能基として分子
内に2つ以上の水酸基を有する化合物との組み合わせは、マトリクス樹脂構造の選択の自
由度が高い点や臭気のない点で好ましい。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソシアン酸、イソシアン酸ブチ
ル、イソシアン酸オクチル、ジイソシアン酸ブチル、ジイソシアン酸ヘキシル(HMDI
)、イソホロジイソシアネート(IPDI)、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシア
ナトメチル)オクタン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレン
ジイソシアネート、異性体ビス(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタン及び任
意の異性体含量を有するその混合物、イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシア
ネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレン
ジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-
トルエンジイソシアネート、1,5-ナフレチレンジイソシアネート、2,4’-又は4
,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はトリフェニルメタン4,4’,4
’’-トリイソシアネートなどが挙げられる。
また、ウレタン、ウレア、カルボジイミド、アクリルウレア、イソシアヌレート、アロ
ファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレットジオン及び/又はイミノオ
キサジアジンジオン構造を有するイソシアネート誘導体の使用も可能である。これらは何
れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよ
い。
イソシアネート反応性官能基として分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物の例とし
ては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチ
レングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリ
コール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプ
タンジオール、テトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノール類、又はこれ
らの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合
物;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘ
キサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコール
をポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物;多官能ポリオキシ
ブチレン;多官能ポリカプロラクトン;多官能ポリエステル;多官能ポリカーボネート;
多官能ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用し
てもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
マトリクス樹脂を形成する場合、例えば、エポキシ基を有する化合物とアミノ基を有す
る化合物の組み合わせなどは、マトリクス樹脂形成用組成物の結合形成の反応速度が比較
的高いため、室温で放置することによって短時間で結合形成反応が進行することでマトリ
クス樹脂が形成されるものがある。
その一方で、例えば、マトリクス樹脂構造の選択の自由度が高くマトリクス樹脂形成用
組成物として好ましい組み合わせである、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有
する化合物の組み合わせなどは、その結合形成の反応速度は高くなく、室温で数日間放置
しても結合形成が完結せずマトリクス樹脂が形成されない場合がある。そのような結合形
成反応速度の低いマトリクス樹脂形成用組成物を用いる場合には、一般的な化学反応と同
様に、加熱することによりマトリクス樹脂形成用組成物の結合形成反応を促進することが
できる。従って、マトリクス樹脂形成用組成物によっては、両基板間に記録層形成用組成
物を充填後、マトリクス樹脂の形成のために適宜加熱することが好ましい。
さらに、適当な触媒を用いることによっても、マトリクス樹脂形成用組成物の結合形成
反応を促進することができる。そのような触媒の例として、ビス(4-t-ブチルフェニ
ル)ヨードニウムパーフルオロー1-ブタンスルホン酸、ビス(4-t-ブチルフェニル
)ヨードニウムp-トルエンスルホン酸などのオニウム塩類、塩化亜鉛、塩化すず、塩化
鉄、塩化アルミニウム、BF3、などのルイス酸を主成分にした触媒、塩酸、リン酸、な
どのプロトン酸、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチ
ルベンジルアミン、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン類、2-メチルイミダゾール
、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリメリット酸1-シアノエチル-2-ウンデ
シルイミダゾリルウム、などのイミダゾール類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭
酸カリウムなどの塩基類、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート、ジブチ
ルスズオクトエートなどのスズ触媒、トリス(2-エチルヘキサナート)ビスマス、トリ
ベンゾイルオキシビスマス、三酢酸ビスマス、トリス(ジメチルジオカルバミン酸)ビス
マス、水酸化ビスマスなどのビスマス触媒が挙げられる。触媒は以上の何れか一種を単独
で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<<光重合開始剤について>>
本発明に係る光重合開始剤とは、光の照射によってカチオン、アニオン、ラジカルを発
生するものをいい、上述の重合性モノマーの重合に寄与する。光重合開始剤の種類は特に
制限はなく、重合性モノマーの種類等に応じて適宜選択することができる。
カチオン光重合開始剤は、公知のカチオン光重合開始剤であれば、何れを用いることも
可能である。例としては芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体例としては、SbF
、BF 、AsF 、PF 、CFSO 、B(C 等のアニオン
成分と、ヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物
が挙げられる。中でも、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩等が
好ましい。上記例示したカチオン光重合開始剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、
二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アニオン光重合開始剤は、公知のアニオン光重合開始剤であれば、何れを用いることも
可能である。例としてはアミン類等が挙げられる。アミン類の例としては、ジメチルベン
ジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]
ウンデセン-7等のアミノ基含有化合物、およびこれらの誘導体;イミダゾール、2-メ
チルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、およ
びその誘導体;等が挙げられる。上記例示したアニオン光重合開始剤は、何れか一種を単
独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ラジカル光重合開始剤は、公知のラジカル光重合開始剤であれば、何れを用いることも
可能である。例としては、ホスフィンオキシド化合物、アゾ化合物、アジド化合物、有機
過酸化物、有機硼素酸塩、オニウム塩類、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、
ヨードニウム塩類、有機チオール化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体、オキシムエステル
化合物等が用いられる。上記例示したラジカル光重合開始剤は、何れか一種を単独で使用
してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
他の例としては、イミダゾール誘導体やオキサジアゾール誘導体、ナフタレン、ペリレ
ン、ピレン、アントラセン、クマリン、クリセン、p-ビス(2-フェニルエテニル)ベ
ンゼン及びそれらの誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO
などのアルミニウム錯体、ルブレン、ペリミドン誘導体、ベンゾピラン誘導体、ロー
ダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン、フェニルピリ
ジン錯体、ポルフィリン錯体、ポリフェニレンビニレン系材料等が挙げられる。
<<重合阻害剤について>>
本発明に係る重合阻害剤とは、前記重合性モノマーの重合反応を阻害するものを指し、
必要に応じて用いることができるものである。例えば、ホログラム記録がなされる前の記
録層において、保存環境におけるわずかな光や熱により重合開始剤や重合性モノマーが発
生したラジカルにより重合性モノマーの重合反応が開始されてしまうといった、予期せぬ
重合反応の進行を阻害し、媒体のホログラム記録前の保存安定性を改善する効果がある。
重合阻害剤の種類は、前記重合性モノマーの重合反応を阻害出来れば特に制限されない
。具体的には、例えば、リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のホスフィン酸塩類
、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2-プロパンチオール、2-メルカプトエ
タノール、チオフェノール等のメルカプタン類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒ
ド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トリクロロエチレン
、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類、テルピノレン、α-テルピネン、β-
テルピネン、γ-テルピネン等のテルペン類、1、4-シクロヘキサジエン、1,4-シ
クロヘプタジエン、1,4-シクロオクタジエン、1、4-ヘプタジエン、1,4-ヘキ
サジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、3,6-ノナンジエン-1-オール、9
,12-オクタデカジエノール等の非共役ジエン類、リノレン酸、γ-リノレン酸、リノ
レン酸メチル、リノレン酸エチル、リノレン酸イソプロピル、リノレン酸無水物等のリノ
レン酸類、リノール酸、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル
、リノール酸無水物等のリノール酸類、エイコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸エ
チル等のエイコサペンタエン酸類、ドコサヘキサエン酸、ドコサヘキサエン酸エチル等の
ドコサヘキサエン酸類、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、p-メトキシフェノ
ール、ジフェニル-p-ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、
レソルシノール、フェナントラキノン、2,5-トルキノン、ベンジルアミノフェノール
、p-ジヒドロキシベンゼン、2,4,6-トリメチルフェノールなどの、ブチルヒドロ
キシトルエン等のフェノール誘導体、o-ジニトロベンゼン、p-ジニトロベンゼン、m
-ジニトロベンゼン等のニトロベンゼン誘導体、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N
-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、フェノチアジン、タンニン酸、p-ニトロ
ソアミン、クロラニル、アニリン、ヒンダードアニリン、塩化鉄(III)、塩化銅(I
I)、トリエチルアミン、ヒンダードアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン
1-オキシルを含むニトロキシラジカル、トリフェニルメチルラジカル、及び酸素等があ
げられる。これらの成分は従来公知の材料をいずれか一種を単独で用いてもよく、二種以
上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
<<その他の添加剤について>>
記録層形成用組成物に含まれるその他の成分としては、溶媒、可塑剤、分散剤、レベリ
ング剤、消泡剤、接着促進剤、相溶化剤、増感剤などがあげられる。これらの成分は従来
公知の材料をいずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせおよび比
率で併用してもよい。
<<各材料の含有率等について>>
本実施の形態に係る記録層形成用組成物における各成分の含有率は、本発明の主旨に反
しない限り任意であるが、各成分の割合は組成物の全質量を基準に以下の範囲であること
が好ましい。
マトリクス樹脂は、合計で通常0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、
さらに好ましくは35質量%以上である。また通常99.9質量%以下であり、好ましく
は99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。マトリクス樹脂の含有率を上
記の下限値以上とすることで、記録層を形成することが容易となる。
マトリクス樹脂形成促進に用いられる硬化触媒の含有率は、上記マトリクス形成成分の
結合形成速度を考慮して決定することが好ましく、通常5質量%以下、好ましくは4質量
%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。また0.005質量%以上用いることが
好ましい。
重合性モノマーの含有率は通常0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、よ
り好ましくは2質量%以上である。また通常80質量%以下であり、好ましくは50質量
%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。重合性モノマーの含有率が上記の下限
値より多いことで十分な回折効率が得られ、上記の上限値より少ないことで記録層の相溶
性が保たれる。
光重合開始剤の含有率は通常0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上であり、
通常20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは16質量%以下である
。光重合開始剤の含有率が上記の下限値より多いことで、十分な記録感度が得られる。
重合阻害剤の含有率は通常、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上
である。また、通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下である。重合阻害剤の含
有量が上記範囲内にあることで、わずかな光や熱により発生したラジカルにより開始する
予期せぬ重合反応の進行を阻害することができる。
その他の成分の総量は、通常30質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、5質
量%以下がより好ましい。
<記録層の膜厚について>
本発明における記録層の厚みは、好ましくは0.1mm以上、3.0mm以下でありよ
り好ましくは0.3mm以上、2mm以下である。この範囲であれば、ホログラム記録媒
体における多重記録の際、各ホログラムの選択性が高くなり、多重記録の度合いを高くで
きる傾向にある。また記録光波長における記録層の光透過率を高く維持でき、厚み方向に
わたって記録層全体に均一な記録をすることが可能となり、S/N比の高い多重記録が実
現できる傾向にある。
本発明における媒体は、記録層と、必要に応じて、更に支持体やその他の層を備える。
通常、媒体は支持体を有し、記録層やその他の層は、この支持体上に積層されて媒体を構
成する。ただし、記録層またはその他の層が、媒体に必要な強度や耐久性を有する場合に
は、媒体は支持体を有していなくてもよい。その他の層の例としては、保護層、反射層、
反射防止層(反射防止膜)等が挙げられる。
<支持体>
支持体は、媒体に必要な強度および耐久性を有しているものであれば、その詳細に特に
制限はなく、任意の支持体を使用することができる。
支持体の形状にも制限は無いが、通常は平板状またはフィルム状に形成される。
支持体を構成する材料にも制限は無く、透明であっても不透明であってもよい。
支持体の材料として透明なものを挙げると、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、
ポリエチレンナフトエート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アモル
ファスポリオレフィン、ポリスチレン、酢酸セルロース等の有機材料;ガラス、シリコン
、石英等の無機材料が挙げられる。この中でも、ポリカーボネート、アクリル、ポリエス
テル、アモルファスポリオレフィン、ガラス等が好ましく、特に、ポリカーボネート、ア
クリル、アモルファスポリオレフィン、ガラスがより好ましい。
一方、支持体の材料として不透明なものを挙げると、アルミニウム等の金属;前記の透
明支持体上に金、銀、アルミニウム等の金属、または、フッ化マグネシウム、酸化ジルコ
ニウム等の誘電体をコーティングしたものなどが挙げられる。
支持体の厚みにも特に制限は無いが、通常は0.05mm以上、1mm以下の範囲とす
ることが好ましい。支持体の厚みが上記下限値以上であれば、媒体の機械的強度を得るこ
とができ、基板の反りを防止できる。また支持体の厚みが上記上限値以下であれば、光の
透過量が保たれ、コストの上昇を抑えることができる。
また、支持体の表面に表面処理を施してもよい。この表面処理は、通常、支持体と記録
層との接着性を向上させるためになされる。表面処理の例としては、支持体にコロナ放電
処理を施したり、支持体上に予め下塗り層を形成したりすることが挙げられる。ここで、
下塗り層の組成物としては、ハロゲン化フェノール、または部分的に加水分解された塩化
ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
更に、表面処理は、接着性の向上以外の目的で行なってもよい。その例としては、例え
ば、金、銀、アルミニウム等の金属を素材とする反射コート層を形成する反射コート処理
;フッ化マグネシウムや酸化ジルコニウム等の誘電体層を形成する誘電体コート処理等が
挙げられる。また、これらの層は、単層で形成してもよく、2層以上を形成してもよい。
また、これらの表面処理は、基板の気体や水分の透過性を制御する目的で設けても良い
。例えば記録層を挟む支持体にも気体や水分の透過性を抑制する働きを持たせることによ
りより一層媒体の信頼性を向上させることができる。
また、支持体は、本発明における媒体の記録層の上側および下側の何れか一方にのみ設
けてもよく、両方に設けてもよい。但し、記録層の上下両側に支持体を設ける場合、支持
体の少なくとも何れか一方は、活性エネルギー線(励起光、参照光、再生光など)を透過
させるように、透明に構成する。
また、記録層の片側または両側に支持体を有する媒体の場合、透過型または反射型のホ
ログラムが記録可能である。また、記録層の片側に反射特性を有する支持体を用いる場合
は、反射型のホログラムが記録可能である。
更に、支持体にデータアドレス用のパターニングを設けてもよい。この場合のパターニ
ング方法に制限は無いが、例えば、支持体自体に凹凸を形成してもよく、後述する反射層
にパターンを形成してもよく、これらを組み合わせた方法により形成してもよい。
<保護層>
保護層は、記録層の酸素や水分による感度低下や保存安定性の劣化等の影響を防止する
ための層である。保護層の具体的構成に制限は無く、公知のものを任意に適用することが
可能である。例えば、水溶性ポリマー、有機/無機材料等からなる層を保護層として形成
することができる。
保護層の形成位置は、特に制限はなく、例えば記録層表面や、記録層と支持体との間に
形成してもよく、また支持体の外表面側に形成してもよい。また支持体と他の層との間に
形成してもよい。
<反射層>
反射層は、媒体を反射型のホログラム媒体として構成する際に形成される。反射型のホ
ログラム記録媒体の場合、反射層は支持体と記録層との間に形成されていてもよく、支持
体の外側面に形成されていてもよいが、通常は、支持体と記録層との間にあることが好ま
しい。
反射層としては、公知のものを任意に適用することができ、例えば金属の薄膜等を用い
ることができる。
<反射防止膜>
本発明における媒体を透過型および反射型の何れのホログラム記録媒体として構成する
際には、物体光および読み出し光が入射および出射する側や、あるいは記録層と支持体と
の間に、反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は、光の利用効率を向上させ、かつゴー
スト像の発生を抑制する働きをする。
反射防止膜としては、公知のものを任意に用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しな
い限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[使用原料]
実施例、比較例で用いた組成物原料は以下の通りである。
(イソシアネート基を有する化合物)
・デュラネートTM TSS-100:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシ
アネート(NCO17.6%)(旭化成社製)
(イソシアネート反応性官能基を有する化合物)
・プラクセルPCL-205U:ポリカプロラクトンジオール(分子量530、ダイセ
ル社製)
・プラクセルPCL-305:ポリカプロラクトントリオール(分子量550、ダイセ
ル社製)
(重合性モノマー)
・HLM201:2-[[2,2-ビス(4-ジベンゾチオフェニルチオメチル)-3
-(4-ジベンゾチオフェニルチオ)プロポキシ]カルボニルアミノ]エチルアクリレー

(光重合開始剤)
・HLI02: 1-(9-エチル-6-シクロヘキサノイル-9H-カルバゾール-
3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)グルタル酸メチル
(硬化触媒)
・トリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマスのオクチル酸溶液(有効成分量56重
量%、重合阻害剤)
・4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラ
ジカル(TEMPOL、東京化成社製)
<<TEMPOLマスターバッチの調製>>
デュラネートTMTSS-100:2.97gに、TEMPOL:0.03gを溶解さ
せた。次いでここへトリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマスのオクチル酸溶液:0
.0003gを溶解させた後、減圧下、45℃で撹拌し、2時間反応させた。
<<記録層用組成物の調製とホログラム記録媒体の作成>>
<ホログラム記録用媒体>
デュラネートTMTSS-100:5.8207gに、重合性モノマーHLM201:
2.0811g、光重合開始剤HLI02:0.0749g、TEMPOLマスターバッ
チ:2.8095gを溶解させてA液とした。
別に、プラクセルPCL-205U:3.949gとプラクセルPCL-305(ポリ
カプロラクトントリオール(分子量550)):3.949gを混合し(プラクセルPC
L-205U:プラクセルPCL-305=50:50(重量比))、トリス(2-エチ
ルヘキサノエート)ビスマスのオクチル酸溶液:0.00025gを溶解させてB液とし
た。
A液を減圧下で2時間脱気し、B液を減圧下で45℃にて2時間脱気した後、A液5.
1955gとB液3.8045gを攪拌混合した。
続いて、厚さ0.5mmのスペーサーシートを対向する2端辺部にのせたスライドガラ
スの上に、上記混合液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を
固定して80℃で24時間加熱してホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製し
た。この評価用サンプルは、カバーとしてのスライドガラス間に、厚さ0.5mmの記録
層が形成されたものである。
<<ホログラム記録媒体の製造>>
<ホログラム記録装置>
図2は、媒体へのホログラム記録に用いた装置の概要を示す構成図である。
図2中、Sはホログラム記録媒体のサンプルであり、M1、M2は何れもミラーを示す
。CSは露光時間制御シャッターであり、BSはビームシャッターである。PBSは偏光
ビームスプリッタであり、LEDはポスト露光用の光源(THORLAB社製の中心波長
405nmのLED)であり、LDは波長405nmの光を発する記録光用レーザー光源
(波長405nm付近の光が得られるTOPTICA Photonics製シングルモ
ードレーザー)を示し、PD1、PD2はフォトディテクタを示す。
<ホログラム記録露光>
LDから発生した波長405nmの光をPBSにより分割し、それらを物体光(M1側
)および参照光(M2側)とみなして、2本のビームのなす角が59.3°になるように
記録面上にて交差するように照射した。このとき、2本のビームのなす角の2等分線(以
下、光軸と記載)がホログラム記録媒体の記録層の記録面に対して垂直になるようにし、
更に、分割によって得られた2本のビームの電場ベクトルの振動面は、交差する2本のビ
ームを含む平面と垂直になるようにした。上記の場合を0°とし、ビームシャッターは開
き、2本のビームの入射方向は固定したまま、ホログラム記録媒体の向きを28°の角度
に変えて、前処理露光として露光時間制御シャッターを550ミリ秒開き、物体光および
参照光を照射し、10秒間暗状態でラジカルクエンチャーとして働く酸素の失活を待った
。その後、記録面の光軸に対する角度を0.3°ずつ変えながら、表1のAとBの値を有
する前記式(1)の露光時間スケジュールに基づいて露光時間制御シャッターを開き、総
多重数70、100、及び160のホログラム記録を行った。このとき、ビーム1本あた
りの露光パワー密度は10.2mW/cmである。また、各実施例及び各比較例の露光
時間スケジュールは、総露光時間が同一になるように設定されている。
<ポスト露光>
多重記録露光後、前記回転角度を0°に戻し、暗状態で120秒の信号成長時間を待ち
、ポスト露光用光源LEDを4J/cm照射して記録の固定化を行った。
<ホログラム記録再生>
図2のビームシャッターを閉じて、ミラーM2側の光を参照光として、記録したホログ
ラムの再生を行った。PD1に検出される光強度を回折光Idn、PD2に検出される光
強度を透過光Itnとして、各干渉パターンから回折された光の回折効率ηの値を計算
した。このとき、前処理露光した際の干渉パターンによる回折も同様に再生されるが、多
重数には含めない。
<判定基準>
回折効率の分散σと回折効率の平均ηavgとの関係から、以下評価基準を設定した

◎:σ≦0.1かつ0.6≦ηavg
〇:σ≦0.3かつ0.3≦ηavg<0.6、又は0.1<σ≦0.3かつ0
.6≦ηavg
△:σ≦0.3かつηavg<0.3
×:0.3<σ
<評価結果>
表1のA、及びBに基づく式(1)の露光時間スケジュールにて得られる光学素子の回
折効率を表1に示す。
図3と図4は、それぞれ実施例2と比較例1にて、ホログラムを多重記録露光して得ら
れた光学素子の再生結果である。
Figure 2023127082000005
実施例及び比較例から、式(1)に基づく露光時間スケジュールを用いて多重記録露光
を行うと、得られる光学素子の回折効率の分散が有意に小さくなり、回折効率の平均も高
くなることが確認された。
本発明の光学素子の製造方法は、特にARグラス導光板等に用いられる光学素子におい
て、表示色域を広げ、明るいAR像を得るための均一な回折効率を記録する手段として有
用である。
図2
S ホログラム記録用媒体
M1,M2 ミラー
LD 記録光用半導体レーザー光源
PD1,PD2 フォトディテクタ
LED ポスト露光用LED光源
BS ビームシャッター
PBS 偏光ビームスプリッタ
CS 露光時間制御シャッター

Claims (5)

  1. 重合性化合物と光重合開始剤とを含む記録層を有する媒体に対して、下記式(1)に基
    づく露光時間スケジュールにてホログラムの多重記録を行う、光学素子の製造方法。
    Figure 2023127082000006
    [式(1)中、Tはn回目の記録露光時間(ミリ秒)、nは2以上の整数、Aは1回目
    の記録露光時間(ミリ秒)、ΣTn-1は、T1からTn-1までの記録露光時間の総和、B
    は2×10-5以上の無次元の定数を示す。]
  2. 前記式(1)のAが3ミリ秒以上である請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記多重記録露光における総多重数mが20以上である請求項1または請求項2に記載
    の光学素子の製造方法。
  4. 前記式(1)に基づく露光時間スケジュールにて多重記録されたホログラムの回折効率
    の平均が0.2以上となる請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の光学素子の製造方
    法。
  5. 前記式(1)に基づく露光時間スケジュールにて多重記録された各ホログラムの回折効
    率の分散が0.3以下である請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の光学素子の製造
    方法。
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