JP2023125462A - 重合体、組成物、正極用スラリー、正極、及び二次電池 - Google Patents

重合体、組成物、正極用スラリー、正極、及び二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】固形分濃度が高く、かつ、塗膜形成性に優れるスラリーであって、かつ従来の重合体を用いて作製した電池と同程度の電池特性を有する電池を作製することができる正極用スラリーを得ることができる重合体、重合体を含む組成物、正極用スラリー、正極、及び二次電池を提供する。【解決手段】本発明によれば、重合体であって、前記重合体2質量%、アセチレンブラック4質量%、N-メチルピロリドン94質量%からなる分散液の、25℃においてせん断速度1S-1および10S-1の条件下で測定した定常流粘度をηX1、ηX10mPa・Sとし、前記分散液の、25℃において角周波数1rad/sおよび10rad/sで測定した複素粘度をηY1、ηY10mPa・Sとしたとき、ηY1/ηX1、ηY10/ηX10が、0.6~1.9である重合体が提供される。

Description

本発明は、重合体、組成物、正極用スラリー、正極、及び二次電池に関する。
近年、ノート型パソコン、携帯電話といった電子機器の電源として二次電池が利用されており、環境負荷の低減を目的に二次電池を電源として用いるハイブリット自動車や電気自動車の開発が進められている。それらの電源に高エネルギー密度、高電圧、高耐久性の二次電池が求められている。リチウムイオン二次電池は高電圧、高エネルギー密度を達成できる二次電池として注目を集めている。
リチウムイオン二次電池は正極、負極、電解質、セパレータの部材からなり、正極は正極活物質、導電助剤、金属箔、バインダーから構成されている(特許文献1~3)。
しかし、従来の共重合体を用いた組成物では、導電助剤等の分散質を高度に分散させることができなかったため、得られる正極用スラリーの粘度が高く、これを正極形成に適した粘度にするためには多くの溶媒を添加する必要があり、高固形分のスラリーを得ることが難しかった。また、このような、溶媒を多く含むスラリーを用いて塗膜を形成した場合、塗膜を形成した後に、溶媒を揮発させるために高温・長時間の加熱を要するという問題があった。
リチウムイオン二次電池用正極バインダーとして、ポリビニルアルコールおよびポリアクリロニトリルを主成分とするバインダー(グラフト共重合体)が開示されている(特許文献4)。
また、リチウムイオン二次電池用正極バインダーとして、ポリビニルアルコールを有する幹ポリマーに、(メタ)アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体がグラフト共重合したグラフト共重合体を含有する組成物が開示されている(特許文献5)。
しかし、特許文献4~5は、定常流粘度と複素粘度との比について記載がない。
特開2013-98123号公報 特開2013-84351号公報 特開平6-172452号公報 国際公開第2015/053224号公報 国際公開第2018/230599号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、特定の分散液において、特定のレオロジー特性を有する重合体を用いることによって、固形分濃度が高く、かつ、塗膜形成性に優れるスラリーであって、従来の重合体を用いて作製した電池と同程度の電池特性を有する電池を作製することができる正極用スラリーを得ることができる重合体、重合体を含む組成物、正極用スラリー、正極、及び二次電池を提供するものである。
本発明によれば、重合体であって、前記重合体2質量%、アセチレンブラック4質量%、N-メチルピロリドン94質量%からなる分散液の、25℃においてせん断速度1S-1および10S-1の条件下で測定した定常流粘度をηX1、ηX10 mPa・Sとし、前記分散液の、25℃において角周波数1rad/sおよび10rad/sで測定した複素粘度をηY1、ηY10 mPa・Sとしたとき、ηY1/ηX1、ηY10/ηX10が、0.6~1.9である重合体が提供される。
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、重合体であって、該重合体を含む特定の配合の分散液を形成した際、特定の2点において、特定のせん断速度における粘度と、特定の角速度における複素粘度の比を一定とすることにより、固形分濃度を高くしても塗膜形成性が良い正極用スラリーを得ることができる重合体、該重合体を含む組成物、正極用スラリー、正極、及び二次電池が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可
能である。
好ましくは、前記分散液の、25℃における、せん断速度10S-1で測定した粘度が、1,000mPa・S以下である。
好ましくは、分子量分布が3.0以下である。
好ましくは、数平均分子量が、5,000以上である。
好ましくは、ポリビニルアルコール構造を含む。
好ましくは、前記重合体を100質量%としたとき、ポリビニルアルコール構造を0.1~80質量%含む、前記記載の、重合体である。
好ましくは、第1単量体単位を含み、前記第1単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位、及び(メタ)アクリル酸単量体単位のうちの少なくとも一種である。
好ましくは、ポリビニルアルコール構造を含む重合体ブロックAと、前記第1単量体を含む重合体ブロックBとを含む、ブロック共重合体である。
本発明の別の観点によれば、前記記載の重合体と、導電助剤と、分散媒を含む、組成物が提供される。
好ましくは、重合体と、導電助剤と、分散媒を含む、組成物であって、前記組成物の、25℃においてせん断速度1S-1および10S-1測定した定常流粘度をηX1、ηX10 mPa・Sとし、前記組成物の、25℃において角周波数1rad/sおよび10rad/sで測定した複素粘度をηY1、ηY10mPa・Sとしたとき、ηY1/ηX1、ηY10/ηX10が、0.6~1.9である、組成物である。
好ましくは、前記組成物中の導電助剤の質量を100質量%としたとき、前記組成物中の前記重合体の量が5~20質量%である、前記記載の組成物である。
また、本発明の別の観点によれば、前記記載の組成物と、正極活物質を含む、正極用スラリーが提供される。
本発明の別の観点によれば、金属箔および、前記金属箔上に形成された前記記載の正極用スラリーの塗膜を備える正極が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、前記記載の正極を備える二次電池であって、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、またはカリウムイオン二次電池からなる群から選択される1種以上である、二次電池が提供される。
好ましくは、前記正極活物質が、LiNiMn(2-X)(但し、0<X<2)、Li(CoNiMn)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、かつX+Y+Z=1)、およびLi(NiCoAl)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、かつX+Y+Z=1)から選択される少なくとも1種以上を含む、前記記載の二次電池である。
本発明に係る重合体によれば、固形分濃度が高く、かつ、塗膜形成性に優れる正極用スラリーを得ることができる重合体、該重合体を含む組成物、正極用スラリー、正極、及び二次電池を得ることができる。
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各種特徴事項について独立して発明が成立する。
1.重合体
本発明に係る重合体は、前記重合体2質量%、アセチレンブラック4質量%、N-メチルピロリドン94質量%からなる分散液の、25℃においてせん断速度1S-1および10S-1測定した定常流粘度をηX1、ηX10 mPa・Sとし、前記分散液の、25℃において角周波数1rad/sおよび10rad/sで測定した複素粘度をηY1、ηY10 mPa・Sとしたとき、ηY1/ηX1、ηY10/ηX10が、0.6~1.9である。
本発明に係る重合体は、特定の組成の分散液としたとき、せん断速度X S-1における粘度と、角周波数Xrad/sにおける複素粘度の比が、特定の2点において特定の数値範囲内であり、すなわちCox-Merz則が成立した分散液を形成することができる。該分散液は、重合体を含むミセルが、相互作用が少ない状態で高度に分散した状態(孤立分散状態)であるため、固形分濃度が高く、かつ、塗膜形成性に優れる正極用スラリーを得ることができるものと考えられる。本発明に係る重合体によれば、従来よりもスラリー中の溶媒濃度を下げることができるため、溶媒を揮発させるための加熱工程に要するエネルギー・コスト・時間を低減することができる。また、本発明に係る重合体によれば、従来の重合体と遜色ない電池特性を発揮することができる正極を形成することができる。
なお、本発明に係る重合体を、特定の組成の分散液としたときの分散液のレオロジー特性は、重合体を構成する単量体単位の種類、配合量、構造等を高度に制御することによって調整することができる。
<ηY0.1/ηX0.1に係る要件A>
本発明の一実施形態に係る重合体は、重合体2質量%、カーボンブラック4質量%、N-メチルピロリドン94質量%からなる分散液の、25℃においてせん断速度0.1S-1で測定した粘度をηX0.1 mPa・Sとし、分散液の、25℃において角周波数0.1rad/sで測定した複素粘度をηY0.1 mPa・Sとしたとき、ηY0.1/ηX0.1が、0.5~3.0であることが好ましい。ηY0.1/ηX0.1は、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<ηY1/ηX1に係る要件B>
上記分散液の、25℃においてせん断速度1S-1で測定した粘度をηX1 mPa・Sとし、分散液の、25℃において角周波数1rad/sで測定した複素粘度をηY1 mPa・Sとしたとき、ηY1/ηX1が、0.6~1.9である。ηY1/ηX1は、例えば、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<ηY10/ηX10に係る要件C>
上記分散液の、25℃においてせん断速度10S-1で測定した粘度をηX10 mPa・Sとし、分散液の、25℃において角周波数10rad/sで測定した複素粘度をηY10 mPa・Sとしたとき、ηY10/ηX10が、0.6~1.9である。ηY10/ηX10は、例えば、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<ηY100/ηX100に係る要件D>
上記分散液の、25℃においてせん断速度100S-1で測定した粘度をηX100 mPa・Sとし、分散液の、25℃において角周波数100rad/sで測定した複素粘度をηY100 mPa・Sとしたとき、ηY100/ηX100が、0.5~1.1であることが好ましい。ηY100/ηX100は、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る重合体は、上記の要件B及びCを満たす。また、本発明の一実施形態に係る重合体は、要件A~Cを満たすものとでき、要件B~Dを満たすものとできる。本発明の一実施形態に係る重合体は、上記の要件A~Dのすべてを満たすことがより好ましい。
<|ηX0.1-ηY0.1|に係る要件1>
本発明の一実施形態に係る重合体は、|ηX0.1-ηY0.1|が、300mPa・S以下であることが好ましい。|ηX0.1-ηY0.1|は、具体的には例えば、0、50、100、150、200、250、300mPa・Sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<|ηX1-ηY1|に係る要件2>
本発明の一実施形態に係る重合体は、|ηX1-ηY1|が、100mPa・S以下であることが好ましい。|ηX1-ηY1|は、具体的には例えば、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mPa・Sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<|ηX10-ηY10|に係る要件3>
本発明の一実施形態に係る重合体は、|ηX10-ηY10|が、50mPa・S以下であることが好ましい。|ηX10-ηY10|は、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50mPa・Sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<|ηX100-ηY100|に係る要件4>
本発明の一実施形態に係る重合体は、|ηX100-ηY100|が、30mPa・S以下であることが好ましい。|ηX100-ηY100|は、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30mPa・Sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る重合体は、上記の要件1~4のいずれか1つを満たすことが好ましく、上記の要件1~4のうち2つ以上を満たすことがより好ましく、上記の要件1~4のうち3つ以上を満たすことがより好ましく、上記の要件1~4のすべてを満たすことがより好ましい。
本発明の一実施形態に係る重合体は、せん断速度X S-1における粘度と、角周波数Xrad/sにおける複素粘度の差が小さいとき、より高度な分散状態(孤立分散状態)の分散液を形成可能な重合体となり、固形分濃度が高い正極用スラリーとしたときにより塗膜形成性に優れる分散液となる。
本発明の一実施形態に係る重合体は、上記分散液の、25℃においてせん断速度1S-1で測定した粘度ηX1 mPa・Sが1000mPa・S以下であることが好ましく、500mPa・S以下であることがより好ましく、200mPa・S以下であることがさらにより好ましい。25℃においてせん断速度1S-1で測定した粘度ηX1 mPa・Sは、具体的には例えば、10、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500mPa・Sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る重合体は、上記分散液の、25℃においてせん断速度10S-1で測定した粘度ηX10 mPa・Sが1000mPa・S以下であることが好ましく、
500mPa・S以下であることがより好ましく、300mPa・S以下であることがさらにより好ましい。25℃においてせん断速度10S-1で測定した粘度ηX10 mPa・Sは、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る重合体は、上記特定の組成の分散液の粘度が上記数値範囲内であることにより、固形分濃度を高くし、溶媒量を低減させても、より、塗膜形成性に優れる正極用スラリーとなる重合体となり、従来よりも溶媒を揮発させ乾燥させる工程を短時間にすることができ、生産効率の向上、エネルギー消費・コストの削減を図ることができる。
なお、粘度及び複素粘度は、レオメータを用いて定常流粘度測定、及び、動的粘弾性測定を行うことにより求めることができる。定常流粘度測定により求められる粘度(本明細書においては、単に粘度とも称する)は、液体に一定の応力を与えている間、流れの速さ(せん断速度)が一定である状態の測定により求められる、発生する応力が定常状態に到達した時の粘度をいう。また、動的粘弾性は、25℃におけるひずみ依存性を測定して粘弾性がひずみに依存しない領域(線形領域)内のひずみで評価する。
また、レオメータ―には色々な種類の測定治具が存在し、測定治具については測定が可能であれば、特に指定はないが、例えば、Φ50mm、2度のコーンプレートを用いて実施することができる。また、溶媒の揮発による影響を指摘される可能性を考慮し、ソルベントトラップもしくは共軸二重円筒式の治具を使うことが好ましい。
1.1 重合体の重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布
本発明に係る重合体は、分子量分布が3.0以下であり、2.6以下であることがより好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.4以下であることが更により好ましい。分子量分布は、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
なお、本明細書において、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)であり、Mw/Mnで示される。
重合体の分子量分布は、重合体の製造方法を適切に選択することで制御することができ、例えば、RAFT重合を用いることによって、高度に分子量分布が制御された重合体を得ることができる。具体的な製造方法の一例は後述のとおりである。
本発明の一実施形態に係る重合体の数平均分子量は、5000以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、1,000,000とすることができ、500,000とすることができる。
数平均分子量は、具体的には例えば、5,000、10,000、20,000、50,000、70,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る重合体の重量平均分子量は、5000以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、1,000,000とすることができ、500,000とすることができる。
重量平均分子量は、具体的には例えば、5,000、10,000、20,000、50,000、70,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
分子量分布及び分子量が上記範囲内であることにより、より導電助剤等の分散質を高度に分散させたスラリーを形成することができる重合体となり、固形分濃度が高く、かつ、塗膜形成性に優れる正極用スラリーを得ることができる重合体と成る。
重合体の分子量は、重合体の重合条件を調整することで制御することができる。具体的な製造方法の一例は後述のとおりである。
なお、重合体の重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布は、GPCにて標準ポリスチレン換算で測定できる。GPCの測定は例えば以下の条件とできる。
カラム:GPC LF-804、φ8.0×300mm(昭和電工株式会社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:10mM-LiBr/DMF
1.2 ポリビニルアルコール構造
本発明に係る重合体は、上記のレオロジー特性を満たせば、どのような単量体を有するものであっても構わないが、ポリビニルアルコール構造を含むことが好ましい。ポリビニルアルコール構造は、例えば、酢酸ビニルモノマーを重合したポリ酢酸ビニルを鹸化して合成されるポリビニルアルコールに由来する構造である。本発明の一実施形態に係る重合体は、ポリビニルアルコール構造を含む重合体ブロックAを含むことが好ましい。
重合体ブロックAの数平均分子量は、1000以上であることが好ましく、1,000~500,000であることが好ましい。数平均分子量は、具体的には例えば、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、20,000、50,000、70,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
重合体ブロックAの重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、1,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量は、具体的には例えば、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、20,000、50,000、70,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
重合体ブロックAの分子量分布は、2.5以下であることが好ましい。分子量分布は、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2,2.3、2.4、2.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
重合体ブロックAの重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布は、重合体の製造方法・製造条件を適切に選択・調整することで制御することができる。
一例として、
・酢酸ビニルを重合してポリ酢酸ビニルを得る第1の重合工程、及び
・第1単量体を重合させる第2の重合工程
を含む製造方法によって共重合体を製造する場合、ポリ酢酸ビニル重合時の重合方法・条件を適切に選択・調整することで、最終的に得られる共重合体中の重合体ブロックAの重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布を制御することができる。
例えば、RAFT重合を用いることによって、高度に分子量分布が制御された重合体を得ることができ、重合条件を調整することで重量平均分子量・数平均分子量を制御することができる。
なお、上記の製造方法で共重合体を製造する場合、中間生成物であるポリ酢酸ビニルの重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布は、最終的に得られる共重合体中の重合体ブロックAの重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布と同様の値となる。
重合体ブロックAのポリビニルアルコール構造の平均重合度は、好ましくは50~4000であり、より好ましくは500~2000である。当該平均重合度が、このような範囲にあると、得られる組成物及びスラリーの安定性が特に高い。また、溶解性、結着性、およびバインダーの粘度の観点からも上記範囲であることが好ましい。平均重合度が300以上だとバインダーと活物質および導電助剤との間の結着性が向上し、耐久性が向上する。また、平均重合度が4000以下だと溶解性が向上し、粘度が低下するため、正極用スラリーの製造が容易になる。ここでいう平均重合度は、JIS K 6726に準ずる方法で測定される値である。
重合体のポリビニルアルコール構造の鹸化度は、好ましくは60~100mol%であり、より好ましくは80~100mol%である。当該鹸化度が、このような範囲にある場合にスラリーの安定性が特に高い。ここでいう鹸化度は、JIS K 6726に準ずる方法で測定される値である。
1.3 第1単量体単位
本発明に係る重合体は、第1単量体単位を含むことが好ましい。
本発明において、第1単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体単位である。第1単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、更に好ましくはアクリロニトリル単量体単位を含む。
すなわち、第1単量体は、好ましくは、(メタ)アクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸を含み、より好ましくは(メタ)アクリロニトリルを含み、更に好ましくはアクリロニトリルを含む。
よって、第1単量体単位はこれらに由来する構造を有する。
本発明の一実施形態に係る重合体は、第1単量体を含む重合体ブロックBを含むことが好ましい。
1.4 重合体の構造
本発明の一実施形態に係る重合体は、ポリビニルアルコール構造を含む重合体ブロックAと、第1単量体を含む重合体ブロックBとを含むブロック共重合体であることが好ましい。
また、本発明の一実施形態に係る共重合体は、ポリビニルアルコール構造を含む重合体ブロックAと、第1単量体を含む重合体ブロックBとをそれぞれ1つずつ含むジブロック共重合体であることがより好ましい。
上記構造を有することにより、共重合体を含む組成物において、共重合体を含むミセルが、相互作用が少ない状態でより高度に分散することができる。
1.5 重合体中に含まれる繰り返し単位・成分
本発明の一実施形態に係る重合体は、各成分の含有量について以下の要件を満たすことが好ましい。各成分の含有量が以下のような範囲にある場合に、導電助剤等の分散質を高度に分散させたスラリーを形成することができる重合体となり得る。
本発明の一実施形態に係る重合体は、重合体を100質量%としたとき、ポリビニルアルコール構造を0.1~80.0質量%含むことが好ましく、1.0~80.0質量%であることがより好ましく、1.0~60.0質量%であることが更により好ましい。ポリビニルアルコール構造の含有率は例えば、0.1、0.3、0.5、1.0、3.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記下限以上、特には、1質量%以上とすることにより、結着性を有するバインダーとでき、上記上限以下とすることにより、耐酸化性および柔軟性を保つことができる。
本発明の一実施形態に係る重合体は、重合体を100質量%としたとき、第1単量体単位を20.0~99.9質量%含むことが好ましく、20.0~99.0質量%であることがより好ましく、40.0~99.0質量%であることが更により好ましい。ポリビニルアルコール構造の含有率は、具体的には例えば、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0、85.0、90.0、95.0、99.0、99.9質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記下限以上とすることにより、結着性を有するバインダーとでき、上記上限以下とすることにより、耐酸化性および柔軟性を保つことができる。
本発明の一実施形態に係る重合体は、ポリビニルアルコール構造及び第1単量体単位以外の繰り返し単位を含むこともできる。本発明の一実施形態に係る重合体は、重合体を100質量%としたとき、ポリビニルアルコール構造及び第1単量体単位を合計で80質量%以上含むものとでき、90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがより好ましく、99質量%以上含むことが更により好ましい。本発明の一実施形態に係る重合体は、ポリビニルアルコール構造及び第1単量体単位以外の繰り返し単位を含まないものとすることもできる。
本発明の一実施形態に係る重合体は、RAFT剤由来の構造を有するものとできる。すなわち、本発明の一実施形態に係る重合体の製造方法は、RAFT重合による重合工程を含むことができる。RAFT重合による重合工程を含むことにより、得られる重合体の分子量分布をより高度に制御することができる。
なお、RAFT剤由来の構造の有無は、例えば、H-NMRで確認することができる。
本発明の一実施形態に係る重合体は、チオエーテル構造、ジスルフィド構造、及びスルフォン構造の合計含有量が、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが更により好ましい。本発明の一実施形態に係る重合体は、チオエーテル構造、ジスルフィド構造、及びスルフォン構造を含まないものとすることもできる。
チオエーテル構造、ジスルフィド構造、及びスルフォン構造等の、酸化還元電位が低い構造の量を少なくすることによって、重合体が低い電圧で容易に分解せず、より安定になる。
チオエーテル構造、ジスルフィド構造、及びスルフォン構造の量は、重合体重合時の製造方法を適切に選択し、また、重合時に用いる薬剤の種類及び量を調整することにより制御することができる。なお、チオエーテル構造、ジスルフィド構造、及びスルフォン構造の量は、例えば、X線光電子分光法(XPS)等で確認することができる。
なお、一例として、チオール等を末端に有するポリビニルアルコールを経て、重合体を製造する場合、上記構造が重合体に含まれる場合がある。
本発明の一実施形態に係る重合体は、遷移金属の含有量が500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがより好ましく、1ppm未満であることが更により好ましい。遷移金属の量は、具体的には例えば、0.1、0.5、1、5、10、20、30、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500ppmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
遷移金属としては、特には、Fe、Ni、Co、Cu、Te、Ruを挙げることができる。
遷移金属の量は、重合体の製造条件を適切に選択・制御することで調整することができる。例えば、重合方法としてRAFT重合を選択し、遷移金属を含む薬剤の使用量を減らすこと、又は使用しないことで、得られる重合体中の遷移金属の量を低減させることができる。
なお、重合体中の遷移金属の量は、例えば、誘導結合プラズマ発光分析法により測定することができる。
2.重合体の製造方法
本発明の一実施形態に係る製造方法は、得られる重合体が上記したレオロジー特性を満たせば特に制限はないが、一例として、酢酸ビニルを重合してポリ酢酸ビニルを得る第1の重合工程を含むことができる。また、本発明の一実施形態に係る製造方法は、さらに第1単量体を重合させる第2の重合工程を含むことが好ましい。
特に制限されるものではないが、本発明の一実施形態に係る重合体は、一例として、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)により製造することができる。
本発明の一実施形態に係る製造方法は、第1の重合工程では、酢酸ビニルと、開始剤と、RAFT剤とを含む混合液を用いて重合を行い、ポリ酢酸ビニルのマクロ連鎖移動剤を製造することができる。
また、好ましくは、第2の重合工程では、第1単量体と、開始剤と、第1の重合工程で得られたマクロ連鎖移動剤とを用いて重合を行うことができる。
上記の製造方法を採用することで、分子量が均一で分子量分布が狭い重合体を得ることができる。
また、例えば、重合工程にCo触媒等の遷移金属を含む触媒を用いた場合や、原子移動ラジカル重合(ATRP)法を用いた場合、最終的に得られる重合体中に金属不純物が残留する場合があるが、RAFT重合を用いることにより、遷移金属等の不純物の混入を回避することができ、純度の高いバインダーを得やすい。
2.1 第1の重合工程
第1の重合工程は、酢酸ビニルを重合してポリ酢酸ビニルを得るものとでき、より具体的には、酢酸ビニルと、開始剤と、RAFT剤と、溶媒とを含む混合液を用いて重合を行い、ポリ酢酸ビニルのマクロ連鎖移動剤を製造することが好ましい。得られる重合体の分子量、分子量分布を調整するためには、第1の重合工程において得られるポリ酢酸ビニルの分子量、分子量分布を調整することが好ましい。ポリ酢酸ビニルの分子量、分子量分布は、重合温度、重合時間、並びに開始剤の種類及び添加量を調整する等の方法がある。重合時間は例えば、10~40時間とすることができ、15~35時間であることがより好ましい。重合温度は、例えば、50~70℃とすることができる。
RAFT剤としては、チオカーボネート化合物、チオカルバマート化合物、チオベンゾエート化合物、キサンテート化合物等の公知のRAFT剤を用いることができ、チオカーボネート化合物やキサンテート化合物を用いることがより好ましい。
チオカーボネート化合物としては、ベンジルブチルトリチオカーボネート、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]吉草酸、2-シアノ-2-ドデシルトリチオカーボネート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノール、シアノメチルドデシルトリチオカーボネート等が挙げられる。キサンテート化合物としては、エチル2-[(エトキシカルボノチオイル)チオ]プロパナート、O-エチル-S-2-シアノ-2-プロピル-ジチオカルボナート、O-エチル-S-ベンジル-ジチオカルボナート、O-エチル-S-シアノメチル-ジチオカルボナートなどのジチオカルボナートが挙げられる。チオベンゾエート化合物としては、1,4-ビス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(チオベンゾイルチオ)プロパン-2-イル)ベンゼン、2-フェニル―2-プロピルベンゾジチオエート、1-(メトキシカルボニル)エチルベンゾジチオエート、ベンジルベンゾジチオエート、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート、エチル-2-メチル-2-(フェニルチオカルボニルチオ)アセテート等が挙げられる。
本発明の一実施形態に係る重合体は、RAFT剤由来の構造を有することが好ましい。
本発明の一実施形態に係る重合体は、上記した化合物由来の構造を有するものとできる。具体的には、例えば、チオカルボニルチオ構造(1)(S=C-S)を有するものとできる。
また、本発明の一実施形態に係る重合体は、RAFT剤由来の構造をその末端に有するものとできる。
本発明の一実施形態に係る重合体は、RAFT剤由来の構造を取り除く構造を経て、RAFT剤由来の構造を有しないものとすることもできる。
開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物、もしくは過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩等の無機過酸化物が挙げられる。
溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらは1種以上を用いてもよい。これらの中では、1,4-ジオキサンが好ましい。
2.2 第2の重合工程
第2の重合工程は、第1単量体を重合させるものとでき、第2の重合工程では、第1単量体と、開始剤と、第1の重合工程で得られたマクロ連鎖移動剤とを含む混合液を用いて重合を行うことが好ましい。得られる重合体の分子量、分子量分布を調整するためには、重合温度、重合時間、並びに開始剤の種類及び添加量を調整する等の方法がある。重合時間は例えば、10~40時間とすることができ、15~35時間であることがより好ましい。重合温度は、例えば、50~70℃とすることができる。
開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物等が挙げられる。もしくは過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩等の無機過酸化物が挙げられる。
溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、1,4-ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種以上を用いてもよい。これらの中では、ジメチルホルムアミドが好ましい。
2.3 鹸化工程
本発明の一実施形態に係る製造方法は、重合体に含まれるポリ酢酸ビニル構造を鹸化して少なくともその一部をポリビニルアルコール構造にする、鹸化工程を含むことが好ましい。
鹸化工程は、第1の重合工程及び第2の重合工程の後、行われることが好ましい。
ポリ酢酸ビニルの鹸化反応は、例えば、有機溶媒中、鹸化触媒存在下で鹸化する方法に
より行うことができる。
鹸化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコキシド等の
塩基性触媒や、硫酸、塩酸等の酸性触媒が挙げられる。これらの中では、鹸化速度の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群の1種以上が好ましい。鹸化触媒の種類および量、並びに鹸化時の温度および時間を調整することによって、ポリビニルアルコールの鹸化度を制御することができる。ポリビニルアルコールの鹸化度は上記した範囲内に調整することが好ましい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらは1種以上を用いてもよい。これらの中では、メタノールが好ましい。
以上の製造工程により、ポリビニルアルコール構造及び第1単量体単位を含む共重合体、特には、ポリビニルアルコール構造を含む重合体ブロックAと第1単量体単位を含む重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を含む反応液を得ることができる。
該反応液は、本発明の一実施形態に係る共重合体を含み、さらに、ポリビニルアルコール構造を含むホモポリマー及び第1単量体単位を含むホモポリマーを含んでいても良い。
本発明の一実施形態に係る製造方法は、第1の単量体単位を重合して第1の単量体単位からなるホモポリマーを製造する工程を有しないことが好ましい。
第1の単量体単位からなるホモポリマー重合を重合する方法としては、例えば、Co等の遷移金属を含む触媒を用いる方法や、チオール等を末端に有するポリビニルアルコールを経て、共重合体を製造する方法が挙げられる。
Co等の遷移金属を含む触媒を用いる方法を採用しないことで、第1の単量体単位からなるホモポリマー重合時に用いる薬剤等に起因する金属(例えばCo)等の不純物の残留を回避することができ、純度の高い重合体を得ることができ、該重合体を含む正極を備える二次電池の電池特性の劣化抑制や長寿命化をはかることができる。
また、チオール等を末端に有するポリビニルアルコールを経て、重合体を製造する場合、得られる重合体に、チオエーテル構造、ジスルフィド構造、及びスルフォン構造等の比較的低電位で重合体が分解しやすい構造が含まれる場合がある。チオールを末端に有するポリビニルアルコールを経て、重合体を製造する方法を採用しないことで、チオエーテル構造、ジスルフィド構造、及びスルフォン構造等の易酸化性構造の量が少ない重合体とすることができ、該重合体を含む正極を備える二次電池の電池特性の劣化抑制や長寿命化をはかることができる。
3.組成物
本発明の一実施形態に係る組成物は、上記重合体と、導電助剤と、分散媒を含む。
また、本発明の一実施形態に係る組成物は、重合体と、導電助剤と、分散媒を含む、組成物であって、前記組成物の25℃においてせん断速度1S-1および10S-1の条件下で測定した定常流粘度をηX1、ηX10 mPa・Sとし、前記組成物の、25℃において角周波数1rad/sおよび10rad/sで測定した複素粘度をηY1、ηY10 mPa・Sとしたとき、 ηX1/ηY1、ηX10/ηY10が、0.6~1.9である。
本発明の一実施形態に係る組成物は、その他分散液について上記したレオロジー特性を満たすことが好ましい。
組成物は、上記重合体以外のバインダーをさらに、含むこともできる。
組成物は、バインダーを0.5~5質量%含むことができ、1~3質量%含むことができる。
組成物に含まれるバインダーを100質量%としたとき、組成物は、上記重合体を1~100質量%含むものとでき、具体的には例えば、1、3、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
組成物中の一部に本発明の一実施形態に係る重合体を用いた場合も、組成物中の導電助剤の分散性が向上する。
本発明の一実施形態に係る組成物は、組成物を100質量%としたとき、組成物中の導電助剤の量が2~20質量%であることが好ましい。組成物中の導電助剤の含有率は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係る重合体によれば、導電助剤の量を高くしても、塗工性の良い組成物を得ることができる。
上記重合体以外のバインダーとしては、特に制限されるものではないが、分子量分布が2.4を超す、ポリビニルアルコール構造及び第1単量体単位を含む重合体や、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、スチレン-ブタジエン系共重合体(スチレンブタジエンゴム等)および(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
導電助剤は、(i)繊維状炭素、(ii)カーボンブラックおよび(iii)繊維状炭素とカーボンブラックとが相互に連結した炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1種以上が好ましい。繊維状炭素としては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバー等が挙げられる。繊維状炭素としては、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーからなる群の1種以上が好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラックおよびケッチェンブラック(登録商標)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラックが好ましい。これらの導電助剤は単体で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、導電助剤の分散性を向上させる効果が高い観点から、アセチレンブラック、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーから選択される1種以上が好ましい。
組成物は、導電助剤を1~15質量%含むことができる。
分散媒としては、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
4.正極用スラリー
本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、上記組成物と、正極活物質を含むことが好ましい。
本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、正極用スラリー中の固形分総量を100質量%としたとき、上記重合体の含有量が0.02~2.00質量%であることが好ましい。重合体の含有量は、具体的には例えば、0.02、0.05、0.10、0.20、0.50、1.00、1.50、2.00質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
正極活物質は、カチオンを可逆的に吸蔵放出可能な正極活物質が好ましい。正極活物質は、体積抵抗率1×10Ω・cm以上のMnを含むリチウム含有複合酸化物またはリチウム含有ポリアニオン化合物が好ましい。例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMPO、LiMSiO、LiNiMn(2-X)、Li(CoNiMn)O、Li(NiCoAl)OまたはXLiMnO-(1-X)LiMO等が挙げられる。但し、LiNiMn(2-X)中のXは0<X<2という関係を満たし、Li(CoNiMn)O中またはLi(NiCoAl)O中のX、YおよびZは、X+Y+Z=1という関係を満たし、かつ0<X<1、0<Y<1、0<Z<1という関係を満たし、XLiMnO-(1-X)LiMO中のXは0<X<1という関係を満たし、更にLiMPO中、LiMSiO中またはXLiMnO-(1-X)LiMO中のMはFe、Co、Ni、Mnから選ばれる元素の1種以上であることが好ましい。
正極活物質の中では、LiNiMn(2-X)(但し、0<X<2)、Li(CoNiMn)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、かつX+Y+Z=1)およびLi(NiCoAl)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、かつX+Y+Z=1)から選択される1種以上が好ましく、LiNiMn(2-X)(但し、0<X<2)およびLi(CoNiMn)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、かつX+Y+Z=1)から選択される1種以上がより好ましい。
本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、好ましくは、正極用スラリー中の固形分総量に対し、正極活物質の固形分含有量が50~99.8質量%であることが好ましく、80~99.5質量%であることがより好ましく、95~99.0質量%であることが最も好ましい。
5.正極
本発明の一実施形態に係る正極は、金属箔および、前記金属箔上に形成された上記正極用スラリーの塗膜を備える。
正極は、上記重合体と、導電助剤と、使用する正極活物質とを含む正極用スラリーを、アルミニウム箔等の集電体上に塗布した後、加熱によりスラリーに含まれる溶剤を除去し、更に集電体と電極合剤層をロールプレス等により加圧して密着させることにより、作製できる。
6.リチウムイオン二次電池
本発明の一実施形態に係る電池は、上記正極を備える電池であることが好ましく、二次電池であることが好ましい。
二次電池としては、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池から選択される1種以上が好ましく、リチウムイオン二次電池がより好ましい。
本発明の一実施形態に係る正極を備えるリチウムイオン二次電池は、上記重合体を含む組成物を含む正極用スラリーを用いて作製できる。
本発明の一実施形態に係る二次電池は、上記の正極、負極、セパレータ、並びに、電解質溶液(以下、電解質、電解液と称することもある。)を備えることが好ましい。
<負極>
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池に用いられる負極は、特に限定されないが、負極活物質を含む負極用スラリーを用いて製造できる。この負極は、例えば、負極用金属箔と、その金属箔上に設けられる負極用スラリーとを用いて製造できる。負極用スラリーは、負極用バインダー(負極用組成物)と、負極活物質と、前述の導電助剤とを含むことが好ましい。負極用バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、スチレン-ブタジエン系共重合体(スチレンブタジエンゴム等)および(メタ)アクリル系重合体等を用いることができる。負極用バインダーとしては、フッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンからなる群の1種以上がより好ましく、ポリフッ化ビニリデンが最も好ましい。
負極に用いられる負極活物質としては、黒鉛、ポリアセン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素材料、スズおよびケイ素等の合金系材料、或いは、スズ酸化物、ケイ素酸化物、チタン酸リチウム等の酸化物材料等が挙げられる。これらは1種以上を用いてもよい。
負極用の金属箔としては、箔状の銅を用いることが好ましく、厚さは、加工性の観点から、5~30μmが好ましい。負極は、前述の正極の製造方法に準じた方法にて、負極用スラリーおよび負極用金属箔を用いて製造できる。
<セパレータ>
セパレータには、電気絶縁性の多孔質膜、網、不織布、繊維等、充分な強度を有するものであれば使用できる。特に、電解液のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ、溶液保持に優れたものを使用するとよい。材質は特に限定しないが、ガラス繊維等の無機物繊維または有機物繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフロン等の合成樹脂またはこれらの層状複合体等を挙げることができる。結着性および安定性の観点から、オレフィンまたはこれらの層状複合体が好ましい。オレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群の1種以上が好ましい。
<電解質>
電解質としては、公知のリチウム塩が何れも使用でき、例えば、LiClO、LiBF、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiI、LiB(C、LiCFSO、LiCHSO、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等が挙げられる。
<電解液>
上記電解質を溶解させる電解液は、特に限定されない。電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびメチルエチルカーボネート等のカーボネート類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2-エトキシエタン、テトラヒドロフランおよび2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1,3-ジオキソランおよび4-メチル-1,3-ジオキソラン等のオキソラン類、アセトニトリル、ニトロメタンおよびN-メチル-2-ピロリドン等の含窒素化合物類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルおよびリン酸トリエステル等のエステル類、硫酸エステル、硝酸エステルおよび塩酸エステル等の無機酸エステル類、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド等のアミド類、ジグライム、トリグライムおよびテトラグライム等のグライム類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン類、スルホラン等のスルホラン類、3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類、並びに、1,3-プロパンサルトン、4-ブタンスルトンおよびナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらの電解液の中から選択される1種以上を使用できる。電解液は、好ましくは、カーボネート類を含み、さらに好ましくはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートを含む。
上記の電解質および電解液の中では、LiPFをカーボネート類に溶解した電解質溶液が好ましく、LiPFをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを含む混合液に溶解した電解質溶液がより好ましく、LiPFをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比で1対2の比率で混合した混合液に溶解した電解質溶液がさらにより好ましい。当該溶液中の電解質の濃度は、使用する電極および電解液によって異なるが、0.5~3モル/Lが好ましい。
本発明の実施形態のリチウムイオン二次電池の用途としては、特に限定されないが、例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ポータブルオーディオプレイヤー、携帯液晶テレビ等の携帯AV機器、ノート型パソコン、スマートフォン、モバイルPC等の携帯情報端末、その他、携帯ゲーム機器、電動工具、電動式自転車、ハイブリット自動車、電気自動車、電力貯蔵システム等の幅広い分野が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
(実施例1)
<ポリ酢酸ビニルの製造(第1の重合工程)>
反応容器に、酢酸ビニル15g、開始剤として2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)0.086g、RAFT剤にエチル2-[(エトキシカルボノチオイル)チオ]プロパナート0.39g、溶媒として1,4-ジオキサン35mlを入れ、窒素ガス雰囲気下、24時間、60℃で加熱し、酢酸ビニルを重合した。得られた重合液を室温まで冷却し、ヘキサン300mlにゆっくりと滴下し、析出したポリマーをろ過して室温下真空乾燥してポリ酢酸ビニルのマクロ連鎖移動剤(マクロCTA)を得た。
<アクリロニトリルの重合(第2の重合工程)・鹸化>
次に、反応容器に、上記マクロCTA3g、アクリロニトリル6g、開始剤として2,2' -アゾビス(イソブチロニトリル)0.014g、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド22.6mlを入れ、窒素ガス雰囲気下、24時間、60℃で加熱し、室温まで冷却した。得られた重合液を室温まで冷却し、メタノール中にゆっくりと滴下し、析出したポリマーをろ過して室温下真空乾燥し、酢酸ビニルとアクリロニトリルのブロック共重合体を得た。このブロック共重合体3gをジメチルスルホキシド40mlに溶解し、水酸化カリウム0.5gを溶解したメタノール40ml中に加え、24時間、25℃で鹸化を行った。得られた反応液の析出物を減圧ろ過して30℃で24時間乾燥させて共重合体1を得た。
(実施例2、3、4)
酢酸ビニルの重合工程及びアクリロニトリルの重合工程において、各成分の添加量を、最終的に得られる共重合体中のPVA構造の含有量が表1に記載の通りになるように変更した以外は実施例1と同様の方法で、共重合体2、3、4を製造した。
(PVA構造の含有量)
得られた共重合体を重DMSOに溶解させ、H―NMRを測定した。得られたスペクトルの、PVA、第1単量体に対応するシグナルの強度から、PVAを基準として、各成分の組成を算出した。なお、1~1.7ppmにPVA、1.7~2.3ppmにPANと酢酸ビニル、3~3.2ppmにPANに由来するシグナルが観察される。PVA構造の含有量を表1に示す。
(比較例1)
PVAとして、PVA(デンカ株式会社製、部分鹸化PVA(鹸化度85.6%、重合度2400)、B-24)を用いた。反応容器に純水1804質量部を仕込み、窒素ガスをバブリングして脱酸素した後、PVA100質量部を室温下で仕込み、90℃まで昇温することで溶解した。反応容器を60℃に調整し、別途窒素ガスをバブリングして脱酸素した10%過硫酸アンモニウム水溶液170質量部を一括添加し、アクリロニトリル96質量部と架橋剤オリゴエチレングリコールジアクリレート(繰り返し数n=9)(新中村化学工業製、商品名:A-400)8質量部の混合液を5時間かけて添加し、重合した。得られた重合液100質量部を300質量部のメタノール中に添加し、析出物を減圧ろ過して40℃で12時間乾燥させて共重合体5を含む生成物を得た。
表1に示す通り、比較例1では、原料として分子量分布が3.3であるPVAを用いた。また、共重合体5は、幹ポリマーがPVAであり、枝ポリマーがポリアクリロニトリルであるグラフト共重合体が、架橋剤であるオリゴエチレングリコールジアクリレートによって架橋された構造を有する。したがって、共重合体5の分子量分布は3.3を超すことが明らかである。なお、比較例1に係る生成物は、DMFに溶解しないため、後述の方法で分子量を測定することができなかった。
得られた生成物について、各原料の反応率と各成分の組成比を算出した。
ポリビニルアルコールの反応率は以下の方法で求めた。
まず、原料溶液中のPVAの濃度を、吸光度により求めた。次に、重合反応で得た重合反応液50gを3000Gで30分間遠心分離して上澄みを得た。上澄み中の吸光度を測定し、PVA濃度を測定した。PVAの反応率(%)を、
{1-(上澄み中のPVA濃度)/(仕込み時のPVAの濃度)}×100
で求めた。PVAの反応率は、93%であった。
第1単量体、架橋剤の反応率を以下の方法で求めた。重合終了後、メタノール析出し、乾燥した生成物を重DMSOに溶解させ、H―NMRを測定した。得られたスペクトルの、PVA、第1単量体、架橋剤に対応するシグナルの強度から、PVAを基準として、各成分の組成を算出した。なお、1~1.7ppmにPVA、1.7~2.3ppmにPANと酢酸ビニル、3~3.2ppmにPAN、3.5~3.7ppmに架橋剤に由来するシグナルが観察される。NMRから算出された組成と、仕込み時の各成分の組成とを比較して反応率を算出した。反応率は、仕込んだ第1単量体、架橋剤のうち、どの程度第1単量体、架橋剤が組成物に含まれるかを示す。第1単量体の反応率は、98%、架橋剤の反応率は100%であった。
また、反応率から、比較例1に係る生成物の各成分の組成比を算出した。生成物を100質量%としたとき、ポリビニルアルコール構造の含有量は47.7質量%、第1単量体単位の含有量は48.2質量%、架橋剤に由来する構造の含有量は4.2質量%であった。なお、この組成比には、第1単量体のホモポリマーである遊離ポリマーが含まれる。
(比較例2)
PVAとして、PVA(デンカ株式会社製、部分鹸化PVA(鹸化度99.0%、重合度1200)、F-12)を用いた。反応容器に純水1804質量部を仕込み、窒素ガスをバブリングして脱酸素した後、PVA100質量部を室温下で仕込み、90℃まで昇温することで溶解した。反応容器を60℃に調整し、別途窒素ガスをバブリングして脱酸素した10%過硫酸アンモニウム水溶液170質量部を一括添加し、アクリロニトリル233質量部を5時間かけて添加し、重合した。得られた重合液100質量部を300質量部のメタノール中に添加し、析出物を減圧ろ過して40℃で12時間乾燥させて共重合体6を含む生成物を得た。
比較例1と同様の方法で各成分の組成を算出した結果、組成物のPVA構造の含有量は、35質量%、アクリロニトリルに基づく構造の含有量は65質量%であることが確認された。
(比較例3)
PVAとして、PVA(デンカ株式会社製、部分鹸化PVA(鹸化度99.0%、重合度1200)、F-12)を用いた。反応容器に純水1804質量部を仕込み、窒素ガスをバブリングして脱酸素した後、PVA100質量部を室温下で仕込み、90℃まで昇温することで溶解した。反応容器を60℃に調整し、別途窒素ガスをバブリングして脱酸素した10%過硫酸アンモニウム水溶液170質量部を一括添加し、アクリロニトリル172質量部を5時間かけて添加し、重合した。得られた重合液100質量部を300質量部のメタノール中に添加し、析出物を減圧ろ過して40℃で12時間乾燥させて共重合体7を含む生成物を得た。
比較例1と同様の方法で各成分の組成を算出した結果、組成物のPVA構造の含有量は、25.6質量%、アクリロニトリルに基づく構造の含有量は74.4質量%であることが確認された。
(比較例4)
PVAとして、PVA(デンカ株式会社製、部分鹸化PVA(鹸化度99.0%、重合度1200)、F-12)を用いた。反応容器に純水1804質量部を仕込み、窒素ガスをバブリングして脱酸素した後、PVA100質量部を室温下で仕込み、90℃まで昇温することで溶解した。反応容器を60℃に調整し、別途窒素ガスをバブリングして脱酸素した10%過硫酸アンモニウム水溶液166質量部を一括添加し、アクリロニトリル97質量部、(2-(2-エトキシ)エトキシ)エチルアクリレート85質量部を5時間かけて添加し、重合した。得られた重合液100質量部を300質量部のメタノール中に添加し、析出物を減圧ろ過して40℃で12時間乾燥させて共重合体8を含む生成物を得た。
比較例1と同様の方法で各成分の組成を算出した結果、組成物のPVA構造の含有量は、28質量%、アクリロニトリルに基づく構造の含有量は質量40%、(2-(2-エトキシ)エトキシ)エチルアクリレートに基づく構造の含有量は32質量%であることが確認された。
(比較例5)
アクリロニトリルの重合工程において、重合時間を48時間とした以外は実施例1と同様の方法で共重合体9を製造した。
(比較例6)
アクリロニトリルの重合工程において、重合温度を80℃に上げ、重合時間を3時間とした以外は実施例1と同様の方法で共重合体10を製造した。
(参考例1 PVDF)
正極用組成物としてポリフッ化ビニリデン樹脂(HSV900:アルケマ社製)を用いた。
(参考例2 変性PVDF)
正極用組成物として変性ポリフッ化ビニリデン樹脂(HSV1810:アルケマ社製)を用いた。
<組成物Aの調製>
各実施例・比較例・参考例の生成物及びバインダー(共重合体1~10を含む生成物、ポリフッ化ビニリデン樹脂、変性ポリフッ化ビニリデン樹脂)2質量部を、N-メチル-2-ピロリドン94質量部に溶解させてバインダー溶液とした。更に、アセチレンブラック(デンカ株式会社製のデンカブラック(登録商標)「Li-435」)4質量部を加えて撹拌混合し、組成物A1~12を得た。
(評価方法)
<ポリ酢酸ビニルの重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布>
実施例1~4のポリ酢酸ビニルのマクロ連鎖移動剤の分子量について、GPCにて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布を測定した。
GPCの測定は以下の条件とした。
カラム:GPC LF-804、φ8.0×300mm(昭和電工株式会社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:10mM-LiBr/DMF
<共重合体の重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布>
共重合体について、同様の方法で重量平均分子量・数平均分子量・分子量分布を測定した。
<組成物の粘度・複素粘度>
回転式レオメータ(アントンパール製、MCR92)を用いて、組成物A1~A12、B1~B3の定常流粘度測定、及び、(線形)動的粘弾性測定をそれぞれ行った。組成物A1~A12のせん断速度及び粘度、並びに角周波数(角速度)及び複素粘度を表1に示す。
なお、測定には、Φ50mm、2度のコーンプレートを用いた。
<共重合体に含まれる金属不純物量>
実施例の共重合体について、ICP発光分析を用いて金属不純物量の分析を行った。その結果、検出下限(1ppm)以下であることを確認した。なお、金属不純物量の分析では、共重合体0.1gに、硫酸及び硝酸を加え加熱し、湿式加熱分解して、10mlの試験液量を得、該試験溶液をICP発光分析に供した。
<固形分70%正極用スラリーの電極塗工性>
共重合体1質量%、アセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック(登録商標)「Li435」)2質量%、NMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2、ユミコア社、TX-10)97質量%からなる組成物を、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略す)43質量%になるように添加、混合して、固形分70%正極形成用スラリーを調整した。なお、参考例で用いたPVDFは、実施例等で用いた重合体と比重が異なるため、重合体の体積に合わせて配合を調整した。具体的には、参考例では、正極形成用スラリーの配合を、PVDF(変性PVDF)2質量部、アセチレンブラック2質量部、NMC622 96質量部とした。
得られた自動塗工機で20mg/mとなるようにアルミ箔上にスラリーを塗布し、以下の評価基準で、電極塗工性を評価した。
○:気泡や欠けが無く、膜厚が均一である
△:気泡や欠けがあり、膜厚が不均一である。
×:塗工できない。
表1に示すように、比較例・参考例の重合体を用いた固形分70%正極用スラリーは、粘度が高くなり、チクソ性が高いため、欠陥のない均一な膜を形成することができないか、または、スラリーをアルミ箔正極用スラリー上に載せることが困難であった。
<電池特性の評価>
(スラリーの調整)
上記で得られた組成物A6質量部に、NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2、ユミコア社、TX-10)94質量部を添加し、撹拌混合して正極用スラリーとした。
(正極の作製)
厚み20μmのアルミニウム箔に、調製した正極用スラリーを、自動塗工機で20mg/mとなるように塗布し、105℃で30分間予備乾燥した。次に、ロールプレス機にて0.1~3.0ton/cmの線圧でプレスし、正極板の厚さが80μmになるように調製した。更に正極板を13Φmmの円形に打ち抜いた。残留溶媒や吸着水分といった揮発成分を完全に除去するため、170℃で6時間真空乾燥して正極を得た。電極面積密度は、20mg/cm、体積密度は、3.0g/cmであった。
(リチウムイオン二次電池の作製)
得られた正極と、対極として金属リチウムとを用い、2032型コインセルを作製した。電解質としてLiPFを1mol/Lの濃度で溶解した電解液(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(体積比)混合液)を用いた。これらを電気的に隔離するセパレータとして15Φmmのオレフィン繊維製不織布を用いた。作製したリチウムイオン二次電池について、以下の方法により電池性能を評価した。
(電池特性)
得られた電池の電池特性を下記の測定条件で評価した。
充電条件:CC-CV方式、CC電流=0.2C、CV電圧=4.2V、カットオフ電流=1/20C
放電条件:CC方式、CC電流=0.2、0.5、1.0、2.0、2.8C、カットオフ電圧=3.0V
温度条件:25℃
電池を初充電後、充放電効率が100%近傍になることを確認後、0.20mA/cmの電流密度にて定電流放電を3.0Vまで行った際の放電容量を測定し、正極活物質量で除した容量密度(mAh/g)を算出した。この容量(mAh)を1時間で充放電可能な電流値を「1C」とし、0.2C、1Cをそれぞれ算出した。
(直流抵抗)
上記の正極と同様に作製したφ13mm×80μmの電極に対して、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0mAの電流を印加し、0.2、1、10秒後の電圧を読み取り、オームの法則より抵抗値を求めた。
体積抵抗率(Ω・cm)は二端子法により測定した。電位差をV、断面積をS、電流値をI(A)、電極厚みをL(cm)とすると、以下の式で表すことができる。
体積抵抗率(Ω・cm) = (V×S)/(I×L)

Claims (15)

  1. 重合体であって、
    前記重合体2質量%、アセチレンブラック4質量%、N-メチルピロリドン94質量%からなる分散液の、25℃においてせん断速度1S-1および10S-1で測定した定常流粘度をηX1、ηX10 mPa・Sとし、前記分散液の、25℃において角周波数1rad/sおよび10rad/sで測定した複素粘度をηY1、ηY10 mPa・Sとしたとき、
    ηY1/ηX1、ηY10/ηX10が、0.6~1.9である重合体。
  2. 前記分散液の、25℃における、せん断速度10S-1で測定した粘度が、1,000mPa・S以下である、請求項1に記載の重合体。
  3. 分子量分布が3.0以下である、請求項1又は2に記載の重合体。
  4. 数平均分子量が、5,000以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体。
  5. ポリビニルアルコール構造を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体。
  6. 前記重合体を100質量%としたとき、ポリビニルアルコール構造を0.1~80質量%含む、請求項5に記載の重合体。
  7. 第1単量体単位を含み、
    前記第1単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位、及び(メタ)アクリル酸単量体単位のうちの少なくとも一種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体。
  8. ポリビニルアルコール構造を含む重合体ブロックAと、前記第1単量体を含む重合体ブロックBとを含むブロック共重合体である、請求項7に記載の重合体。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の重合体と、導電助剤と、分散媒を含む、組成物。
  10. 重合体と、導電助剤と、分散媒を含む、組成物であって、
    前記組成物の、25℃においてせん断速度1S-1および10S-1で測定した定常流粘度をηX1、ηX10 mPa・Sとし、前記組成物の、25℃において角周波数1rad/sおよび10rad/sで測定した複素粘度をηY1、ηY10 mPa・Sとしたとき、
    ηY1/ηX1、ηY10/ηX10が、0.6~1.9である、組成物。
  11. 前記組成物を100質量%としたとき、前記組成物中の前記導電助剤の量が2~20質量%である、請求項9又は10に記載の組成物。
  12. 請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物と、正極活物質を含む、正極用スラリー。
  13. 金属箔および、前記金属箔上に形成された請求項12に記載の正極用スラリーの塗膜を備える正極。
  14. 請求項13に記載の正極を備える二次電池であって、前記二次電池は、リチウムイオン二
    次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、またはカリウムイオ
    ン二次電池からなる群から選択される1種以上である、二次電池。
  15. 前記正極活物質が、LiNiMn(2-X)(但し、0<X<2)、Li(CoNiMn)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、かつX+Y+Z=1)、およびLi(NiCoAl)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、かつX+Y+Z=1)から選択される少なくとも1種以上を含む、請求項14に記載の二次電池。
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