JP2023125045A - 目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するための医療機器 - Google Patents

目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するための医療機器 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、細胞を組織中に投与する頻度を低減する医療機器の提供を目的とする。【解決手段】細胞懸濁液を貯留する貯留部、および目的部位付近に貯留部を固定する挟持部を含み、貯留部が開閉可能な開口部を有する、目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するための医療機器を提供することにより、上記課題を解決した。【選択図】図1

Description

本発明は、目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するための医療機器に関する。
近年、損傷した組織等の修復のために、種々の細胞を移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞等の利用が試みられている(非特許文献1)。
このような試みの一環として、スキャフォールドを利用して形成した細胞構造物や、細胞をシート状に形成したシート状細胞培養物が開発されてきた(非特許文献2)。また、細胞等の移植による損傷した組織等の修復の別の例として、重症下肢疾患に対するCD34陽性細胞治療が挙げられる。かかる治療において、CD34陽性細胞を、生理食塩水に溶解して、重篤な虚血状態にある両足の数十か所に、筋肉注射により注入している(非特許文献3)。
移植のために細胞を投与する手法、デバイスに関しても様々な試みがなされている。特許文献1には、細胞を体腔内に留置することのできる細胞留置デバイスが記載されている。かかるデバイスは、デバイス送達部分と連結可能であり筒状をなすデバイス本体と、デバイス本体と連通して設けられ、細胞を収納可能な袋体からなる細胞収納部とを有しており、袋体に収納された細胞から放出される液性因子を、袋体を通過させて目的の部位に作用させることが記載されている。
特許文献2には、細胞懸濁液送達装置が記載されている。かかる装置は、血管の管腔内から血管の1つ以上の層を穿孔するための複数の突起を有しており、かかる突起を通して、血管の1つ以上の層または血管周辺組織に細胞懸濁液を送達することが記載されている。
特許文献3には、医療用アクセスポートと移送デバイスとを備える医療システムが記載されている。かかるシステムにおいて、医療用アクセスポートは、針軸と取り外し可能な針チップからなる針を含む埋込型アクセスポートであり、針が皮膚を通って体外へと貫通することによって、移送デバイス、アクセスポート本体および針を通して対象から流体を取り出すこと、およびかかる経路を通じて流体や細胞を対象へと導入することが記載されている。
特開2014-79480号公報 特表2020-500669号公報 特許第6879946号
Haraguchi et al., Stem Cells Transl Med. 2012 Feb;1(2):136-41 Sawa et al., Surg Today. 2012 Jan;42(2):181-4 Fujita et al., Circulation Journal Vol.78, February 2014: 490-501
本発明者は、上記のように細胞を組織中に投与する場合、数多くの回数投与を繰り返さすことが多く、かかる投与の頻度が対象において多大な負担となるという問題に直面した。したがって、本発明は、このような問題を解決し、簡便な機構で、細胞の投与の頻度を低減することができる医療機器を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を進める中で、細胞を貯留する貯留部から徐々に目的部位へと細胞を放出することで上記課題を解決できることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するための医療機器であって、
細胞懸濁液を貯留する貯留部、および
目的部位付近に貯留部を固定する挟持部
を含み、貯留部が、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造を有する、前記医療機器。
[2]挟持部が、貯留部と流体連通可能な開口部を含み、貯留部から放出された細胞が産生する液性因子を含む液体が、開口部から目的部位に投与されるように構成されている、[1]に記載の医療機器。
[3]貯留部が、細胞懸濁液を注入する注入部をさらに含む、[1]または[2]に記載の医療機器。
[4]貯留部が、拡縮可能であるように構成されており、貯留部が、拡張すると細胞が産生する液性因子を含む液体を放出するように構成されている、[1]~[3]のいずれか1つに記載の医療機器。
[5]注入部が、汚染物質の混入を防止するように構成されている、[1]~[4]のいずれか1つに記載の医療機器。
[6]目的部位が、血管である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の医療機器。
[7]目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与する方法であって、
細胞懸濁液を貯留する貯留部、および目的部位付近に貯留部を固定する挟持部を含み、貯留部が、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造を有する、医療機器を提供するステップ、
目的部位を露出させるステップ、および
貯留部を固定した挟持部を、目的部位付近に固定するステップ
を含む、前記方法。
本発明によれば、目的部位付近に固定された貯留部に貯留された細胞懸濁液に含まれる細胞が産生する液性因子を含む液体を徐々に目的部位に投与し続けることができるため、手術や注入などの対象への投与操作の頻度を低減することができ、対象への負担を低減することができる。また、本発明によれば、投与により貯留部内の細胞懸濁液が減少した後に、体外からさらに貯留部へ細胞懸濁液を補充することができるため、さらに投与操作の頻度を低減することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る医療機器の概念図である。 本発明の第1実施形態に係る医療機器の使用例を示す概念図である。
本発明は一側面において、細胞懸濁液を貯留する貯留部、および目的部位付近に貯留部を固定する挟持部を含み、貯留部が、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造を有する、目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するための医療機器に関する。
本発明において、「細胞が産生する液性因子を含む液体」とは、細胞懸濁液に含まれる細胞が産生する任意の液性因子を含む液体のことをいう。細胞が産生する液性因子を含む液体は、例えば、細胞が産生する液性因子を含む生理食塩水、PBS、培地などが挙げられる。本発明において、細胞が産生する液性因子を含む液体には、細胞懸濁液も含む。
細胞が産生する液性因子としては、例えば、細胞増殖因子、分化誘導因子、造血因子、その他各種サイトカインが挙げられる。具体的には、液性因子として、HGF、VEGF、SDF-1等が挙げられる。
本発明において、「細胞懸濁液」とは、細胞が任意の媒体中で懸濁状態となっているものをいう。細胞は、単一の細胞の状態であってもよく、または細胞同士が介在物質を介して連結されていてもよい。細胞は、任意の遺伝子または任意の遺伝子を含むウイルスベクターなどを含んでいてもよい。また、細胞は、細胞培養物であってもよい。本発明において、細胞培養物は、細胞培養ステップを経て得られるものを指し、これらに限定されるものではないが、スフェロイド、シート状細胞培養物およびシート状細胞培養物の破砕片を包含する。
本発明において、細胞を懸濁する媒体は、これらに限定されないが、水、生理食塩水、培地、緩衝液、希釈液、細胞保存液およびゲルなどの膨潤体などが挙げられる。
本発明において「シート状細胞培養物」とは、細胞が互いに連結してシート状になったものをいう。細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも物理的(機械的)に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも物理的(機械的)に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。シート状細胞培養物は、1の細胞層から構成されるもの(単層)であっても、2以上の細胞層から構成されるもの(積層(多層)体、例えば、2層、3層、4層、5層、6層など)であってもよい。また、シート状細胞培養物は、細胞が明確な層構造を示すことなく、細胞1個分の厚みを超える厚みを有する3次元構造を有してもよい。例えば、シート状細胞培養物の垂直断面において、細胞が水平方向に均一に整列することなく、不均一に(例えば、モザイク状に)配置された状態で存在していてもよい。
シート状細胞培養物は、好ましくはスキャフォールド(支持体)を含まない。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、シート状細胞培養物の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られているが、本発明のシート状細胞培養物は、かかるスキャフォールドがなくともその物理的一体性を維持することができる。また、本発明のシート状細胞培養物は、好ましくは、シート状細胞培養物を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
本発明において、「シート状細胞培養物の破砕片」とは、シート状細胞培養物を破砕することにより、複数の破砕片へと分割したものを指す。破砕片の大きさは、これに限定されるものではないが、破砕片のうち大部分が、微小血管へ入らず、かつ注射針の内部を通る大きさであることが好ましい。かかる大きさは、例えば、シート形状の平面の対角線の長さの平均が30μm~1000μmであり、好ましくは100μm~500μmである。本発明において破砕は、シート状細胞培養物の破砕片を得られるものであれば、既知の任意の方法によって行うことができ、例えば、シリンジおよびニードルまたはピペットなどにより、シート状細胞培養物を含む媒体を懸濁することによって行うことができる。
本発明の細胞懸濁液に含まれる細胞は、液性因子を産生するものであれば特に限定されず、例えば、接着細胞(付着性細胞)が挙げられる。接着細胞は、例えば、接着性の体細胞等を含む。体細胞の例としては、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞等)、筋衛星細胞、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のもの等)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞等の組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞等の多能性幹細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞等)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞等)、肝細胞(例えば、肝実質細胞等)、膵細胞(例えば、膵島細胞等)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。体細胞は、iPS細胞から分化させたもの(iPS細胞由来細胞)であってよく、iPS細胞由来の心筋細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞等が挙げられる。細胞は、浮遊細胞を含む。浮遊細胞の例としては、Tリンパ球やBリンパ球等が挙げられる。
好ましくは、本発明の細胞懸濁液に含まれる細胞は、血管新生を促進できる細胞、例えば、血管新生を促進する因子、例えば、VEGFなどのサイトカインを分泌できる細胞である。かかる場合において、細胞が産生する液性因子を含む液体は、血管新生を促進できる細胞、例えば、血管新生を促進する因子、例えば、VEGFなどのサイトカインを含む液体である。
本発明において、「貯留部」とは、細胞懸濁液を貯留する部分をいう。本発明の貯留部は、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造を有する。貯留部の材料としては、例えば、弾性樹脂材料が挙げられる。かかる弾性樹脂材料としては、限定されず、例えば、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン、ポリウレタン系エラストマー、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。別の例において、貯留部の材料としては、生分解性ポリマーが挙げられる。かかる生分解性ポリマーとしては、限定されず、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、乳酸-カプロラクトン共重合体、グリコール酸-カプロラクトン共重合体、ポリ-γ-グルタミン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造としては、例えば、貯留部が開口を有することが挙げられる。かかる開口の径は、1~500μm、好ましくは、10~50μmである。
一態様において、貯留部は、拡縮可能であるように構成されている。拡縮可能である貯留部は、例えば、管状の弾性樹脂材料(シリコンなど)の片側の端部を融着し、逆側の端部をチューブなどに固定することにより形成される。かかるチューブから拡張するための流体を貯留部内に送達することにより、貯留部を拡張させることができる。かかる態様において、貯留部は、収縮した状態では、挟持部に固定されていないが、拡張することによって挟持部に固定されることができる。またかかる態様において、貯留部を、収縮状態では、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出しないが、拡張すると細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する弁構造のように構成することができる。また、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する箇所の内側にゴム状体などによる弁構造を備えることにより、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出可能な構造とすることもできる。
本発明において、「挟持部」とは、貯留部を目的部位付近に固定する部材をいう。挟持部は、その下面側に脚部、およびその上面側に腕部を有し、脚部によって組織中の目的部位付近に挟持部自身を固定し、さらに腕部によって貯留部を挟持部自身に固定することができる。本発明の挟持部は、上面側、下面側夫々別の面において貯留部の固定と、目的部位への固定を担うため、貯留部により(例えば、貯留部の拡縮による形状の変化などにより)、血管などの目的部位を圧迫、損傷させることがない。一態様において、脚部は、生体内の組織を挟み込むように構成されており、好ましくは、血管、リンパ管などの生体内の管状構造を挟み込むように構成されている。挟持部の脚部は、例えば、クリップのようにバネなどの力により、血管を挟み込むように構成されていてもよく、また血管壁の表面に沿うように湾曲しており、血管の周方向にフィットするように構成されていてもよい。脚部の先端は、血管などの管状構造の周辺組織に挟持部を固定するために、例えば、周辺組織に穿刺することができるように鋭利な構造をしていてもよい。
本発明の挟持部は、開口部を有することができる。開口部は、挟持部内を通る流路のことを指し、挟持部の腕部側および正面または側面において開口している。開口部は、腕部側の開口にて貯留部と流体連通可能となっている。開口部は、腕部側に複数開口し、貯留部の複数の細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する箇所と流体連通してもよい。貯留部から放出された細胞が産生する液性因子を含む液体は、腕部側の開口から開口部に流入し、挟持部の正面または側面の開口から、目的部位に投与することができる。開口部は、挟持部の正面または側面において複数開口していてもよい。かかる場合において、細胞が産生する液性因子を含む液体は、開口部の正面または側面の複数の開口から目的部位に投与される。
本発明の医療機器は、さらに注入部を含むことができる。注入部は、貯留部に細胞懸濁液を注入するように構成されている部材をいう。注入部は、貯留部と流体連通した、管状体であってもよい。例えば、貯留部が、拡縮可能であるように構成されている場合に、管状の弾性樹脂材料の片側に固定された拡張するための流体を送達するチューブを、注入部として用いてもよい。
一態様において、注入部は、汚染物質の混入を防止するように構成されている。例えば、注入部は、蓋部を有しており、細胞懸濁液の注入時以外は、蓋部により注入口を閉ざしておくことができる。
本発明において、「目的部位」とは、対象の組織中における、細胞が産生する液性因子を含む液体を投与する部位をいう。組織中の目的部位としては、例えば、生体において、損傷(創傷)が存在する部位や、その近傍が挙げられる。損傷(創傷)は、これらに限定されるものではないが、血管の損傷、狭窄を含み、このような場合においては、組織中の目的部位は、血管の近傍の組織中、好ましくは、血管壁とその周囲の組織の間である。一態様において、組織中の目的部位は、血管組織周辺の血管鞘である。かかる場合において、挟持部は、目的部位付近の血管に自身を固定し、さらに貯留部を固定する。
本発明において、細胞が産生する液性因子を含む液体は、対象の組織内、好ましくは、対象の脈管周辺の組織内、より好ましくは下肢の疾患を有している対象の病変部位付近の脈管周辺の組織内へ投与される。一態様において、細胞が産生する液性因子を含む液体は、末梢動脈疾患の患者において、血流量が悪化している病変部位、例えば、下肢の大腿内転筋群における脈管周辺の組織中へ投与される。かかる態様において、本発明の医療機器は、下肢の広範囲の脈管周辺の組織に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するために、貯留部を長尺にして、複数の挟持部により、脈管の長い距離に固定するよう構成することができる。一態様において、細胞が産生する液性因子を含む液体を、病変部位付近の脈管周辺の組織内に投与することにより、例えば投与7日後に、健常状態と比較して、例えば35%、40%、45%まで血流量を改善することができる。一態様において、細胞が産生する液性因子を含む液体を、病変部位付近の脈管周辺の組織内に投与することにより、対照の生理食塩水と比較して、例えば、血流量を約1.5倍、約2倍、約2.5倍改善することができる。
一態様において、本発明の医療機器により細胞が産生する液性因子を含む液体を投与される対象は、下肢の疾患を有する。下肢の疾患は、下肢に障害を有するあらゆる疾患を含む。かかる疾患の例として、これらに限定されないが、末梢動脈疾患、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症および糖尿病足病変などが挙げられる。好ましくは、本発明における下肢の疾患は、下肢において血管が狭窄または閉塞し、その下肢の血流量が悪化している疾患、例えば、末梢動脈疾患である。本発明において、末梢動脈疾患は、これらに限定されるものではないが、下肢閉塞性動脈硬化症、バージャー病、膠原病などを含み、特に重症化した下肢閉塞性動脈硬化症を重症下肢虚血と称する。
特定の理論に拘束されることはないが、本発明の医療機器により投与される細胞が産生する液性因子を含む液体の下肢の疾患への作用は、投与された細胞が産生する液性因子を含む液体に含まれるVEGFなどのサイトカインが、虚血部位の細胞に直接的および/または間接的に作用し、血管新生を促進することによるものと考えられる。
本発明は、別の側面において、細胞懸濁液を貯留する貯留部、および目的部位付近に貯留部を固定する挟持部を含み、貯留部が、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造を有する、医療機器を提供するステップ、目的部位を露出させるステップ、および貯留部を固定した挟持部を、目的部位付近に固定するステップを含む、目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与する方法に関する。
本発明において、目的部位を露出させるとは、例えば、体表面を切開することによって、細胞が産生する液性因子を含む液体を投与する目的部位を露出させることが挙げられる。好ましくは、目的部位は、血管であり、血管の周方向の一部が露出するまで、体表面を切開する。
本発明の医療機器は、切開して露出した目的部位付近に固定されたのちに、本発明の医療機器を体内に埋め込むようにして縫合することができる。これにより、縫合後も本発明の医療機器から目的部位へと細胞が産生する液性因子を含む液体を投与し続けることができる。
一態様において、本発明の方法において提供される医療機器は、さらに貯留部と流体連通した管状体の注入部を含む。かかる態様において、本発明の医療機器を目的部位の付近に固定した後、注入部の先端部分のみを体外に残して、露出した目的部位を閉じるように縫合することができる。かかる場合に、貯留部中の細胞懸濁液が、細胞が産生する液性因子を含む液体の放出により減少した後に、体外から貯留部に細胞懸濁液を補充することができる。このようにして、細胞が産生する液性因子を含む液体の投与のための操作の頻度を低減することができる。
以下、本発明の好適な実施態様に係る医療機器1について説明する。図1は、本発明の第1実施形態の概念図を示す。なお、本開示における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は実際の大きさを示すものではない。
図1に示されるように、本発明の医療機器1は、細胞懸濁液を貯留する貯留部2、貯留部2を目的部位付近に固定する挟持部3を含む。貯留部2は、目的部位の大きさや範囲に応じて、サイズを変更することができる。貯留部2のサイズに応じて、貯留部2を目的部位付近にしっかりと固定できるよう、複数の挟持部3を用いることができる。挟持部3は、その上面側に腕部を、下面側に脚部を有しており、腕部により貯留部2を固定し、脚部により自身を目的部位付近に固定する。貯留部2は、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造を有しており、貯留部2から細胞が産生する液性因子を含む液体を外側に出すことができる。
挟持部3は、さらに開口部3aを有することができる。開口部3aは、貯留部2と流体連通している。貯留部2から出た細胞が産生する液性因子を含む液体は、開口部3aを通ることにより、投与位置や細胞が産生する液性因子を含む液体が出る方向を変えることができる。
図1に示されるように、貯留部2には、貯留部2の内腔と流体連結した管状体の注入部4が連結されており、注入部4の先端側にある注入口から細胞懸濁液Sを貯留部2に注入することができる。注入部4の先端側には、図1に示されるように注入口を固定するための板状体6を取り付けることができる。
図1に示される医療機器1によって、血管付近に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するためには、まず図2aに示されるように、体表面を切開し、目的の血管Bを露出させる。目的の血管Bの露出は、バイパス術に使用する自家静脈を採取するステップと同様の方法により行うことができる。このとき、血管Bの周方向全面を露出させる必要はなく、一部の面を露出させればよい。次に、図2bに示されるように、収縮した状態の貯留部2をセットした挟持部3を、その下面の湾曲が血管Bを挟みこむように配置させる。挟持部3は、その両端の脚部を血管Bの周辺組織に突き刺すことにより血管Bの周辺の目的部位に固定される。
すべての挟持部3(図2においては、1つのみ記載)を所望の位置に固定すると、次いで、図2cに示されるように、注入部4から貯留部2へと細胞懸濁液Sを注入し、貯留部2を拡張させる。貯留部2は、拡張することにより挟持部3の腕部にしっかりと固定されるようになる。また貯留部2は、拡張することにより、挟持部3の開口部3aへ向けて突起を伸長させる。充分に貯留部2が拡張すると、突起の先端が開口し、貯留部2の内腔と挟持部3の開口部3aが流体連通し、貯留部2から放出された細胞が産生する液性因子を含む液体が挟持部3の開口部3a内へと流入し始める。
開口部3aの正面側から細胞が産生する液性因子を含む液体が放出され始めると、図2dに示されるように、注入部4の先端側のみを体表面に残し、切開部分を縫合する。このとき体表面の外側に露出した注入部4は、先端側付近に板状の固定具を備えて体表面上の所望の位置に固定されるよう構成されていてもよい。図2eに示されるように、体内にある貯留部2内の細胞懸濁液Sが減少すると、注入部4からさらに細胞懸濁液Sを注入することで、貯留部2内の細胞懸濁液Sを補充することができる。このとき注入部4は、細胞懸濁液Sを注入する注入口をふさぐように蓋部5を有していてもよく、細胞懸濁液Sの注入時以外は、蓋部5によりゴミや細菌などが、貯留部に混入することや貯留部3内の細胞懸濁液Sが体外に漏出することを防ぐことができる。
すなわち、本発明の医療機器の使用は、以下のステップによって順次行うことができる。
(1)医療機器1を提供する。
(2)血管Bが露出するように体表面を切開する。
(3)血管Bの付近に収縮状態の貯留部2をセットした挟持部3を配置する。
(4)注入部4より貯留部2へと細胞懸濁液Sを注入し、貯留部2を拡張させる。
(5)注入部4の先端側のみ体外に残して、切開部分を縫合する。
上記の手順では、挟持部3を血管Bの付近に配置してから貯留部2を拡張させたが、予め貯留部2を拡張させた状態で、拡張状態の貯留部2をセットした挟持部3を血管Bの付近に配置させてもよい。貯留部2が収縮状態のまま、切開部分を縫合し、その後に細胞懸濁液Sを体外から注入することで貯留部2を拡張させてもよい。また、貯留部2は、細胞懸濁液Sとは別に任意の拡張用流体を注入することによって拡張されてもよい。
以上、本発明の医療機器によれば、目的部位付近に固定された貯留部に貯留された細胞懸濁液に含まれる細胞が産生する液性因子を含む液体を徐々に目的部位に投与し続けることができるため、手術や注入などの対象への投与操作の頻度を低減することができ、対象への負担を低減することができる。また、本発明によれば、投与により貯留部内の細胞懸濁液が減少した後に、体外からさらに貯留部へ細胞懸濁液を補充することができるため、さらに投与操作の頻度を低減することができる。
1 医療機器
2 貯留部
3 挟持部
3a 開口部
4 注入部
5 蓋部
6 板状体
S 細胞懸濁液
B 血管

Claims (7)

  1. 目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与するための医療機器であって、
    細胞懸濁液を貯留する貯留部、および
    目的部位付近に貯留部を固定する挟持部
    を含み、貯留部が、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造を有する、前記医療機器。
  2. 挟持部が、貯留部と流体連通可能な開口部を含み、貯留部から放出された細胞が産生する液性因子を含む液体が、開口部から目的部位に投与されるように構成されている、請求項1に記載の医療機器。
  3. 貯留部が、細胞懸濁液を注入する注入部をさらに含む、請求項1または2に記載の医療機器。
  4. 貯留部が、拡縮可能であるように構成されており、貯留部が、拡張すると細胞が産生する液性因子を含む液体を放出するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療機器。
  5. 注入部が、汚染物質の混入を防止するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療機器。
  6. 目的部位が、血管である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療機器。
  7. 目的部位に細胞が産生する液性因子を含む液体を投与する方法であって、
    細胞懸濁液を貯留する貯留部、および目的部位付近に貯留部を固定する挟持部を含み、貯留部が、細胞が産生する液性因子を含む液体を放出する構造を有する、医療機器を提供するステップ、
    目的部位を露出させるステップ、および
    貯留部を固定した挟持部を、目的部位付近に固定するステップ
    を含む、前記方法。
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