JP2023124819A - NOxセンサおよびNOxセンサの動作方法 - Google Patents

NOxセンサおよびNOxセンサの動作方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リッチ雰囲気下での使用に際しセンサ素子を保護可能なNOxセンサを提供する。【解決手段】NOxセンサのコントローラは、センサ素子に備わる複数の内部空所のそれぞれに設けられた内側電極と内部空所以外の箇所に配置された空所外ポンプ外側電極と両電極間の固体電解質とを備える電気化学的ポンプセルのうち、測定ポンプセル以外における酸素の汲み入れ動作の指標となる判断対象値が、所定の判断時間において閾値を超えたか否かを判断し、判断対象値が閾値を超えない限りは、複数の内部空所のそれぞれにおける酸素濃度を一定に保ちつつ測定電極でのNOxの還元により測定電極と外側電極との間を流れるポンプ電流に基づいてNOxの濃度を特定する基本モードにてNOxセンサを制御し、判断対象値が閾値を超えた場合には、基本モードを停止し測定電極を過剰な還元から保護する保護実行モードにてNOxセンサを制御する、ようにした。【選択図】図2

Description

本発明は、限界電流型のNOxセンサに関し、特に、リッチ雰囲気下での使用における当該NOxセンサの動作制御に関する。
例えばイットリア安定化ジルコニアなどの酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成成分とするセンサ素子を用いた、限界電流型のNOxセンサがすでに公知である。係るNOxセンサにおいては、被測定ガスがセンサ素子の内部に連続的に設けられた複数の空所(内部空所)に順次に導入される。そして、これらの内部空所のそれぞれに面して設けられた複数の内側電極のそれぞれと、素子内部に備わり基準ガスに接触する基準電極との電位差を、所望の空所内酸素濃度に応じた所定の値に保つ制御が行われる。
係る制御は概略、それぞれの内側電極と、空所外に備わる外側電極(空所外電極)と、両電極間に存在する固体電解質領域とから構成される電気化学的ポンプセルにおいて、両電極間にポンピング電圧を印加し、内部空所と外部との間で酸素の汲み入れまたは汲み出しを行うことによって行われる。係るポンピング電圧の印加により、内側電極と外側電極との間には、空所内の酸素濃度に応じた大きさおよび向きの酸素ポンピング電流が流れる。
特に、最奥部の内部空所に設けられる内側電極である測定電極と基準電極との電位差は、NOxの還元により生じる酸素が全て汲み出される値に制御される。NOxセンサにおいては、係る制御に際して測定電極と外側電極との間に流れる酸素ポンピング電流の大きさに基づいて、NOxの濃度が特定される。
このようなガスセンサの一例として、センサ素子の外面に外側電極を備えるとともに、所定の拡散抵抗を付与するスリット部が係る外側電極の周囲に形成されるようにセラミックス層を設けたガスセンサも、すでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
また、酸素濃度検出セルと酸素ポンプセルとが絶縁層を介して素子厚み方向に積層され、絶縁層の一部に設けられた多孔質体からなる拡散律速部を通じて検出ガスが内部に導入される構成のセンサ素子を備えるガスセンサも、すでに公知である(例えば、特許文献2参照)。
特開2021-162465号公報 特開2012-173146号公報
上述のような限界電流型のNOxセンサを、例えばガソリンエンジンからの排気経路の途中など、空燃比が理論空燃比よりも小さいリッチガスが素子内部に導入され得る環境で、使用する場合がある。
係る場合、リッチガスが内部空所に導入されると、電気化学的ポンプセルにおいては通常、空所内の酸素濃度を一定するべく、素子外部から内部空所に酸素を汲み入れる動作(ポンピング動作)が実行される。すなわち、酸素が内部空所に汲み入れられるように(酸素イオンが素子外部から内部空所へと移動するように)ポンピング電圧が印加され、これに応じた酸素ポンピング電流が内側電極と外側電極との間に流れる。
この酸素の汲み入れに際しては、内部空所に導入されるリッチガスの量が多いほど、ポンピング電圧が大きくなり酸素ポンプ電流が大きくなる傾向にある。しかしながら、被測定ガスのリッチ度合いが過度に大きくなると、ポンピング電圧の増大に応じた外部からの酸素の汲み入れが困難となり、多くの場合は被測定ガスの流通部の最奥部に備わる測定電極が、リッチガスによって過剰に還元されてしまう場合がある。測定電極において係る過剰な還元がいったん生じてしまうと、内部空所に導入される被測定ガスが理論空燃比あるいはリーンな状態になったとしても、測定電極が安定するまでに時間を要する(例えば20分程度)こととなり、それまでの間は、NOx濃度を正確に測定することが出来ないという問題が生じる。なお、測定電極の安定は、測定電極と外側電極との間を流れる酸素ポンピング電流の安定性に基づいて判断が可能である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、リッチ雰囲気下での使用に際し測定電極を保護可能なNOxセンサを提供することを、目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、被測定ガス中のNOxを検知可能に構成されたNOxセンサであって、酸素イオン伝導性の固体電解質にて構成されてなるセンサ素子と、前記NOxセンサの動作を制御するコントローラと、を備え、前記センサ素子が、前記被測定ガスの導入口から所定の拡散抵抗の下で順次に連通し、内側電極が設けられてなる複数の内部空所と、前記複数の内部空所以外の箇所に配置された空所外ポンプ電極と、基準ガスと接触可能に設けられた基準電極と、を備え、それぞれの前記内側電極と前記空所外ポンプ電極との間に所定のポンプ電源にてポンプ電圧を印加することによって前記複数の内部空所のうち対応する内部空所と前記センサ素子の外部との間で酸素の汲み入れまたは汲み出しが可能に構成され複数の電気化学的ポンプセルと、それぞれの前記内側電極と前記基準電極との間に、前記対応する内部空所における酸素濃度に応じた電位差が生じるように構成された複数の電気化学的センサセルと、さらに備え、前記複数の内部空所のそれぞれに備わる前記内側電極の1つがNOxを還元可能な測定電極であり、前記複数の電気化学的ポンプセルが、前記測定電極を含む測定ポンプセルと、前記測定電極以外の前記内側電極を含む少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルと、からなり、前記複数の電気化学的センサセルが、前記測定電極を含む測定センサセルと、前記測定電極以外の前記内側電極を含む少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルと、からなり、前記コントローラは、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルに含まれる判断対象ポンプセルにおける酸素の汲み入れ動作の指標となる所定の判断対象値が、所定の判断時間において所定の閾値を超えたか否かを判断し、前記判断対象値が前記所定の閾値を超えない限りは、前記複数の電気化学的ポンプセルを動作させることによって前記複数の内部空所のそれぞれにおける酸素濃度を一定に保ちつつ、前記測定電極にてNOxが還元されることにより前記測定ポンプセルにおいて前記測定電極と前記空所外ポンプ電極との間をNOxの濃度に応じて流れる測定ポンプ電流に基づいてNOxの濃度を特定する、基本モードにて前記NOxセンサを制御し、前記判断対象値が前記所定の閾値を超えた場合には、前記基本モードを停止し、前記測定電極を過剰な還元から保護する保護実行モードにて前記NOxセンサを制御する、ことを特徴とする。
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るNOxセンサであって、前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの停止の要否を判断するための停止閾値であり、前記コントローラは、前記判断対象値が前記停止閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの動作を停止させ、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差のモニタを開始し、モニタされる前記電位差が所定の再開閾値を下回った時点で、前記基本モードでの前記NOxセンサの制御を再開する、ことを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1の態様に係るNOxセンサであって、前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の印加を制御する際の、対応する前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルにおける前記電位差の目標値の変更の要否を判断するための変更閾値であり、前記コントローラは、前記判断対象値が前記変更閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記目標値を通常値よりも大きな値に変更したうえで前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの制御を継続し、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、少なくとも前記判断対象ポンプセルを含む前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の値または電流の値であるポンプセル動作値のモニタを開始し、前記ポンプセル動作値が復帰閾値を下回った時点で、前記目標値を前記通常値に復帰させて前記NOxセンサの制御を前記基本モードに復帰させる、ことを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1の態様に係るNOxセンサであって、前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の印加を制御する際の、対応する前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルにおける前記電位差の目標値の変更を判断するための変更閾値であり、前記コントローラは、前記判断対象値が前記変更閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記目標値を通常値よりも大きな値に変更したうえで前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの制御を継続し、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、少なくとも前記判断対象ポンプセルを含む前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の値または電流の値であるポンプセル動作値のモニタを開始し、前記ポンプセル動作値が復帰閾値を下回った時点で、前記目標値を前記通常値に復帰させて前記NOxセンサの制御を前記基本モードに復帰させ、前記ポンプセル動作値が前記復帰閾値を下回らず、かつ、前記判断対象値が前記変更閾値より値の大きい停止閾値を超えない限りは、前記ポンプセル動作値のモニタを継続し、前記ポンプセル動作値が前記復帰閾値を下回らず、かつ、前記判断対象値がさらに、前記停止閾値を超えた場合には、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差のモニタを開始し、モニタされる前記電位差が所定の再開閾値を下回った時点で、前記基本モードでの前記NOxセンサの制御を再開する、ことを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1ないし第4の態様のいずれかに係るNOxセンサであって、前記判断対象値が、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差の実測値である、ことを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第1ないし第4の態様のいずれかに係るNOxセンサであって、前記判断対象値が、前記判断対象ポンプセルにおいて酸素を汲み入れるときのポンプ電流の値である、ことを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第1ないし第6の態様のいずれかに係るNOxセンサであって、前記複数の内部空所が、拡散抵抗部を介して順次に連通する第1内部空所と、第2内部空所と、第3内部空所であり、前記測定電極以外の前記内側電極が、前記第1内部空所に設けられた主ポンプ電極と、前記第2内部空所に設けられた補助ポンプ電極であり、前記測定電極が前記第3内部空所に設けられてなり、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルが、前記第1内部空所の酸素濃度を制御する主ポンプセルと、前記第2内部空所の酸素濃度を制御する補助ポンプセルであり、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルが、前記主ポンプ電極と前記基準電極との間に前記第1内部空所における酸素濃度に応じた電位差が生じるように構成された主センサセルと、前記補助ポンプ電極と前記基準電極との間に前記第2内部空所における酸素濃度に応じた電位差が生じるように構成された補助センサセルであり、前記コントローラは、少なくとも前記基本モードにおいて、前記第1内部空所と前記第2内部空所とにおける酸素濃度がそれぞれに所定の一定値に保たれるように前記主ポンプセルおよび前記補助ポンプセルを動作させつつ、前記第3内部空所に導入された酸素濃度調整済みの前記被測定ガスに含まれるNOxの濃度に応じて前記測定ポンプセルを流れる前記測定ポンプ電流の大きさに基づいて、NOxの濃度を特定する、ことを特徴とする。
本発明の第8の態様は、酸素イオン伝導性の固体電解質にて構成されてなるセンサ素子を備え、被測定ガス中のNOxを検知可能に構成されたNOxセンサの動作方法であって、前記センサ素子が、前記被測定ガスが導入される導入口から所定の拡散抵抗の下で順次に連通する複数の内部空所と、前記複数の内部空所のそれぞれに面して設けられてなる複数の内側電極と、前記複数の内部空所以外の箇所に配置された空所外ポンプ電極と、基準ガスと接触可能に設けられた基準電極と、を備え、それぞれの前記内側電極と前記空所外ポンプ電極との間に所定のポンプ電源にてポンプ電圧を印加することによって前記複数の内部空所のうち対応する内部空所と前記センサ素子の外部との間で酸素の汲み入れまたは汲み出しが可能に構成され複数の電気化学的ポンプセルと、それぞれの前記内側電極と前記基準電極との間に、前記対応する内部空所における酸素濃度に応じた電位差が生じるように構成された複数の電気化学的センサセルと、をさらに備え、前記複数の内部空所のそれぞれに備わる前記内側電極の1つがNOxを還元可能な測定電極であり、前記複数の電気化学的ポンプセルが、前記測定電極を含む測定ポンプセルと、前記測定電極以外の前記内側電極を含む少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルと、からなり、前記複数の電気化学的センサセルが、前記測定電極を含む測定センサセルと、前記測定電極以外の前記内側電極を含む少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルと、からなる場合において、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルに含まれる判断対象ポンプセルにおける酸素の汲み入れ動作の指標となる所定の判断対象値が、所定の判断時間において所定の閾値を超えたか否かを判断する判断工程、を有し、前記判断工程において前記判断対象値が前記所定の閾値を超えない限りは、前記複数の内部空所のそれぞれにおける酸素濃度を一定に保ちつつ、前記測定電極にてNOxが還元されることにより前記測定ポンプセルにおいて前記測定電極と前記空所外ポンプ電極との間をNOxの濃度に応じて流れる測定ポンプ電流に基づいてNOxの濃度を特定する、基本モードにて前記NOxセンサを制御し、前記判断工程において前記判断対象値が前記所定の閾値を超えた場合には、前記基本モードを停止し、前記測定電極を過剰な還元から保護する保護実行モードにて前記NOxセンサを動作させる、ことを特徴とする。
本発明の第9の態様は、第8の態様に係るNOxセンサの動作方法であって、前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの停止の要否を判断するための停止閾値であり、前記判断工程において前記判断対象値が前記停止閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの動作を停止させ、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差のモニタを開始し、モニタされる前記電位差が所定の再開閾値を下回った時点で、前記基本モードでの前記NOxセンサの動作を再開する、ことを特徴とする。
本発明の第10の態様は、第8の態様に係るNOxセンサの動作方法であって、前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の印加を制御する際の、対応する前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルにおける前記電位差の目標値の変更の要否を判断するための変更閾値であり、前記判断工程において前記判断対象値が前記変更閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記目標値を前記所定の通常値よりも大きな値に変更したうえで前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの動作を継続し、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、少なくとも前記判断対象ポンプセルを含む前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の値または電流の値であるポンプセル動作値のモニタを開始し、前記ポンプセル動作値が復帰閾値を下回った時点で、前記目標値を前記所定の通常値に復帰させて前記NOxセンサの動作を前記基本モードに復帰させる、ことを特徴とする。
本発明の第11の態様は、第8の態様に係るNOxセンサの動作方法であって、前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の印加を制御する際の、対応する前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルにおける前記電位差の目標値の変更を判断するための変更閾値であり、前記判断工程において前記判断対象値が前記変更閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記目標値を通常値よりも大きな値に変更したうえで前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの動作を継続し、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、少なくとも前記判断対象ポンプセルを含む前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の値または電流の値であるポンプセル動作値のモニタを開始し、前記ポンプセル動作値が復帰閾値を下回った時点で、前記目標値を前記通常値に復帰させて前記NOxセンサの制御を前記基本モードに復帰させ、前記ポンプセル動作値が前記復帰閾値を下回らず、かつ、前記判断対象値が前記変更閾値より値の大きい停止閾値を超えない限りは、前記ポンプセル動作値のモニタを継続し、前記ポンプセル動作値が前記復帰閾値を下回らず、かつ、前記判断対象値がさらに、前記停止閾値を超えた場合には、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差のモニタを開始し、モニタされる前記電位差が所定の再開閾値を下回った時点で、前記基本モードでの前記NOxセンサの動作を再開する、ことを特徴とする。
本発明の第12の態様は、第8ないし第11の態様のいずれかに係るNOxセンサの動作方法であって、前記判断対象値を、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差の実測値とする、ことを特徴とする。
本発明の第13の態様は、第8ないし第11の態様のいずれかに係るNOxセンサの動作方法であって、前記判断対象値を、前記判断対象ポンプセルにおいて酸素を汲み入れるときのポンプ電流の値とする、ことを特徴とする。
本発明第1ないし第13の態様によれば、被測定ガスが空燃比の小さいリッチガスとなり得る環境においてNOxセンサが使用される場合であっても、内部空所に酸素を汲み入れることが困難となって、酸素濃度制御不能の状況が生じることが、好適に回避される。加えて、リッチガスによって測定電極が過剰還元されることが好適に抑制されるので、NOxの測定の再開に際し、測定電極を速やかに使用可能な状態とすることができる。
ガスセンサ100の構成の一例を概略的に示す図である。 素子保護モードの第1の態様における動作フローを示す図である。 素子保護モードの第2の態様における動作フローを示す図である。 素子保護モードの第3の態様における動作フローを示す図である。 素子保護モードの第3の態様における動作フローを示す図である。 ガスセンサ100Bの構成の一例を概略的に示す図である。
<ガスセンサの概略構成>
図1は、本実施の形態に係るガスセンサ100の構成の一例を概略的に示す図である。ガスセンサ100は、センサ素子101によってNOxを検知し、その濃度を測定する、限界電流型のNOxセンサである。また、ガスセンサ100は、各部の動作を制御するとともに、センサ素子101を流れるNOx電流に基づいてNOx濃度を特定するコントローラ110をさらに備える。図1は、センサ素子101の長手方向に沿った垂直断面図を含んでいる。
センサ素子101は、それぞれが酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニア(ZrO)からなる(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などからなる)、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの固体電解質層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する、平板状の(長尺板状の)セラミックス製の素子体である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。なお、以降においては、図1におけるこれら6つの層のそれぞれの上側の面を単に上面、下側の面を単に下面と称することがある。また、センサ素子101のうち固体電解質からなる部分全体を基体部と総称する。
係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子101の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10を兼ねる第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40と、第4拡散律速部60と、第3内部空所61とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40、第3内部空所61とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間(領域)である。なお、ガス導入口10についても同様に、第1拡散律速部11とは別に、センサ素子101の先端面(図面視左端)においてスペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられてなる態様であってもよい。係る場合、第1拡散律速部11がガス導入口10よりも内部に隣接形成されることになる。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30と、第4拡散律速部60とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第3内部空所61に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質アルミナからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
ガス流通部において、ガス導入口10(第1拡散律速部11)は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。
第1拡散律速部11は、取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面(センサ素子101の一方主面)の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側(空所外)ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)に形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成されてなる。これら天井電極部22aと底部電極部22bとは、第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に設けられた導通部にて接続されてなる(図示省略)。
天井電極部22aおよび底部電極部22bは、平面視矩形状に設けられてなる。ただし、天井電極部22aのみ、あるいは、底部電極部22bのみが設けられる態様であってもよい。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極として形成される。特に、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。例えば、5%~40%の気孔率を有し、Auを0.6wt~1.4wt%程度含むAu-Pt合金とZrOとのサーメット電極として、5μm~20μmの厚みに形成される。Au-Pt合金とZrOとの重量比率は、Pt:ZrO=7.0:3.0~5.0:5.0程度であればよい。
一方、外側ポンプ電極23は、例えばPtあるいはその合金とZrOとのサーメット電極として、平面視矩形状に形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に可変電源24によって所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向に主ポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。なお、主ポンプセル21において内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に印加されるポンプ電圧Vp0を、主ポンプ電圧Vp0とも称する。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセルである主センサセル80が構成されている。
主センサセル80における内側ポンプ電極22と基準電極42との電位差である起電力V0を測定することで、第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。
さらに、コントローラ110が、起電力V0が一定となるように主ポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することで、主ポンプ電流Ip0が制御されている。これにより、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保たれるようになっている。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧をさらに調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、補助ポンプセル50が作動することによって調整される。第2内部空所40においては、被測定ガスの酸素濃度がさらに高精度に調整される。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101と外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様の形態にて、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成されてなり、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成されてなる。これら天井電極部51aと底部電極部51bは、平面視矩形状をなしているとともに、第2内部空所40の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に設けられた導通部にて接続されてなる(図示省略)。
なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、コントローラ110による制御のもと、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧(補助ポンプ電圧)Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセルである補助センサセル81が構成されている。補助センサセル81においては、第2内部空所40内の酸素分圧に応じて補助ポンプ電極51と基準電極42との間に生じる電位差である起電力V1が、検出される。
補助ポンプセル50は、この補助センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、ポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にフィードバック制御されるようになっている。
また、これとともに、その補助ポンプ電流Ip1が、主センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、補助ポンプ電流Ip1は、制御信号として主センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
第4拡散律速部60は、第2内部空所40で補助ポンプセル50の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所61に導く部位である。
第3内部空所61は、第4拡散律速部60を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間(測定用内部空所)として設けられている。NOx濃度の測定は、第3内部空所61において、測定ポンプセル41が動作することによりなされる。第3内部空所61には、第2内部空所40において酸素濃度が高精度に調整された被測定ガスが導入されるため、ガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
測定ポンプセル41は、第3内部空所61内に導入された被測定ガスのNOx濃度を測定するためのものである。測定ポンプセル41は、第3内部空所61に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は、貴金属と固体電解質との多孔質サーメット電極である。例えばPtあるいはPtとRhなどの他の貴金属との合金と、センサ素子101の構成材料たるZrOとのサーメット電極として形成される。測定電極44は、第3内部空所61内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
測定ポンプセル41においては、コントローラ110による制御のもと、第3内部空所61内の雰囲気中におけるNOxの分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって、電気化学的なセンサセルである測定センサセル82が構成されている。測定センサセル82にて検出される、第3内部空所61内の酸素分圧に応じて測定電極44と基準電極42との間に生じる電位差である起電力V2に基づいて、可変電源46がフィードバック制御される。
第3内部空所61内に導かれた被測定ガス中のNOxは測定電極44により還元され(2NO→N+O)、酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定センサセル82にて検出された起電力V2が一定となるように可変電源46の電圧(測定ポンプ電圧)Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中のNOxの濃度に比例するものであるから、測定ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中のNOx濃度が算出されることとなる。以降、係るポンプ電流Ip2のことを、NOx電流Ip2とも称する。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
センサ素子101は、さらに、基体部を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。
ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータエレメント72と、ヒータリード72aと、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74と、圧力放散孔75と、図1においては図示を省略するヒータ抵抗検出リードとを、主として備えている。また、ヒータ部70は、ヒータ電極71を除いて、センサ素子101の基体部に埋設されてなる。
ヒータ電極71は、第1基板層1の下面(センサ素子101の他方主面)に接する態様にて形成されてなる電極である。
ヒータエレメント72は、第2基板層2と第3基板層3との間に設けられた抵抗発熱体である。ヒータエレメント72は、図1においては図示を省略する、センサ素子101の外部に備わる図示しないヒータ電源から、通電経路であるヒータ電極71、スルーホール73、およびヒータリード72aを通じて給電されることより、発熱する。ヒータエレメント72は、Ptにて、あるいはPtを主成分として、形成されてなる。ヒータエレメント72は、センサ素子101のガス流通部が備わる側の所定範囲に、素子厚み方向においてガス流通部と対向するように埋設されている。ヒータエレメント72は、10μm~20μm程度の厚みを有するように設けられる。
センサ素子101においては、ヒータ電極71を通じてヒータエレメント72に電流を流すことにより、ヒータエレメント72を発熱させることで、センサ素子101の各部を所定の温度に加熱、保温することができるようになっている。具体的には、センサ素子101は、ガス流通部付近の固体電解質および電極の温度が700℃~900℃程度になるように加熱される。係る加熱によって、センサ素子101において基体部を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性が高められる。なお、ガスセンサ100が使用される際の(センサ素子101が駆動される際の)ヒータエレメント72による加熱温度を、センサ素子駆動温度と称する。
ヒータエレメント72による発熱の程度(ヒータ温度)は、ヒータエレメント72の抵抗値の大きさ(ヒータ抵抗)によって把握される。
なお、図1においては図示を省略しているが、センサ素子101の一方主面側に、外側ポンプ電極23を保護する目的で、外側ポンプ電極23を被覆する電極保護層が備わっていてもよい。
また、センサ素子101の一先端部側(図面視左端側)の所定範囲の外周に、センサ素子101を覆う単層または多層の多孔質層である耐熱衝撃保護層がさらに備わる態様であってもよい。係る耐熱衝撃保護層は、ガスセンサ100の使用時に被測定ガスに含まれる水分がセンサ素子101に付着して凝縮することに伴い生じる熱衝撃により、センサ素子101にクラックが発生することを防ぐ目的や、被測定ガス中に混在する被毒物質がセンサ素子101の内部に入り込むことを防ぐ目的で、設けられる。なお、センサ素子101と耐熱衝撃保護層との間に層状の空隙(空隙層)が形成される態様であってもよい。
また、センサ素子101は、ガス導入口10側と基準ガス導入空間43側との間が気密に封止される態様にて図示しない金属製の収容部材(ケーシング)に収容される。これらセンサ素子101と収容部材とが、ガスセンサ100の本体部を構成する。そして、ガスセンサ100が実際に使用される際には、係る本体部が、例えばエンジン排気管などの使用箇所に取り付けられる。また、収容部材からは、内部においてセンサ素子101の各部との電気的接続が確保された配線が引き出され、それらの配線は、コントローラ110や各種電源等へと適宜に接続される。
<通常モードでの動作>
以上のような構成を有するガスセンサ100においてNOxの濃度が測定される際には、主ポンプセル21さらには補助ポンプセル50を作動させることによって、第1内部空所20さらには第2内部空所40において酸素濃度が一定とされるフィードバック制御が実行され、酸素濃度一定とされた被測定ガスが、第3内部空所61へと導入され、測定電極44に到達する。例えば、被測定ガスがリーン雰囲気である場合、酸素分圧がNOxの測定に実質的に影響がない程度(例えば0.0001ppm~1ppm)にまで十分に低めた被測定ガスが、第3内部空所61へと導入される。
そして、測定電極44においては、到達した被測定ガス中のNOxが還元されることによって、酸素が発生する。係る酸素は、測定ポンプセル41より汲み出されるが、係る汲み出しの際に流れるNOx電流Ip2は、被測定ガス中のNOxの濃度と一定の関数関係(以下、感度特性と称する)を有する。
係る感度特性は、ガスセンサ100を実使用するに先立ってあらかじめ、NOx濃度が既知の複数種類のモデルガスを用いて特定され、そのデータがコントローラ110に記憶される。そして、ガスセンサ100の実使用時には、被測定ガスにおけるNOx濃度に応じて流れるNOx電流Ip2の値を表す信号がコントローラ110に時々刻々と与えられる。コントローラ110においては、その値と特定した感度特性とに基づいて、NOx濃度が次々と演算され、NOxセンサ検出値として出力される。これにより、ガスセンサ100においては、被測定ガス中のNOx濃度をほぼリアルタイムで把握することができるようになっている。
本実施の形態においては、以上のようなNOxの濃度の特定に係るガスセンサ100の動作を、ガスセンサ100の通常モードでの動作と称する。
なお、係る通常モードにおいて主ポンプセル21、補助ポンプセル50、および測定ポンプセル41のそれぞれをフィードバック制御する際の主センサセル80、補助センサセル81、および測定センサセル82における起電力V0、V1、およびV2の目標値は、具体的なセンサ素子101の各部の構成、サイズ、さらにはガスセンサ100の使用状況、使用態様などに応じて、適宜に設定されてよいが、以降においては、例示的態様として、それら起電力V0、V1、およびV2の目標値がそれぞれ、250mV、385mV、および400mVに設定される場合を想定する。これらの値は、センサ素子101を構成する酸素イオン伝導性固体電解質がジルコニアである場合に、概ね標準的に設定される値である。
<素子保護モードでの動作>
本実施の形態に係るガスセンサ100は主として、リーン雰囲気など、被測定ガスに酸素が比較的十分に含まれる状況下で、上述した通常モードで動作することが、つまりは被測定ガス中のNOxの濃度を特定することが、想定されている。
より詳細には、ガスセンサ100の通常モードでの動作時、主ポンプセル21は、主センサセル80に生じる起電力V0が第1内部空所20における酸素濃度値(あるいは酸素分圧値)として所望される値に応じた所定の値となるように作動するものであるところ、外部空間から第1内部空所20に導入される被測定ガスにおける酸素濃度は時々刻々変化するため、主ポンプセル21においては、酸素の汲み出しあるいは汲み入れの双方が行われ得る。
これに対し、補助ポンプセル50および測定ポンプセル41は、構成上酸素の汲み入れも可能とされてはいるものの、それぞれのポンプセルを作動させる際の制御目標値たる、補助センサセル81における起電力V1と測定センサセル82における起電力V2の設定値は、NOx濃度の測定原理上、酸素の汲み出しを行われることを前提に設定される。すなわち、ガスセンサ100が通常モードにて動作する際、補助ポンプセル50および測定ポンプセル41においては専ら、酸素の汲み出しが行われる。
ただし、ガスセンサ100は必ずしも酸素を十分に含む雰囲気下で使用されるとは限らず、ガスセンサ100の本体部が例えばガソリンエンジンの排気経路に取り付けられて当該エンジンからの排ガスが被測定ガスとされる場合など、雰囲気ガスが空燃比の小さいリッチガスとなり得る環境下で使用される場合もある。係る場合、センサ素子101の内部に導入される被測定ガスもリッチガスとなる。係る場合、主ポンプセル21は、外部からの酸素の汲み入れにより第1内部空所20内の酸素濃度値を保とうとする。
しかしながら、センサ素子101の内部に導入された被測定ガスが過度にリッチであると、主ポンプセル21に印加される主ポンプ電圧Vp0が増大させられたとしても、係る主ポンプ電圧Vp0に応じた量の酸素を外部から汲み入れることができなくなり、第1内部空所20において目標の酸素濃度が実現されない、酸素濃度制御不能の状況が起こり得る。加えて、ガス流通部の最奥部に備わる測定電極44がリッチガスによって過剰に還元されてしまうという不具合が発生することも起こり得る。
なお、このような外部からの酸素の汲み入れが好適に行い得ない状況は、例えば特許文献1に開示されているガスセンサのように、外部空間からの酸素の取り込み箇所である外側ポンプ電極23の周囲における雰囲気ガスの出入りが所定の拡散抵抗にて律速されるような場合ほど、生じやすい。図6は、そのようなガスセンサ100の一態様としてのガスセンサ100Bの構成の一例を概略的に示す図である。ガスセンサ100Bは、第2固体電解質層6の上にセラミックス層7と多孔体領域8とをさらに備えるほかは、図1に示したガスセンサ100と共通の構成を有する。多孔体領域8は、気孔率が30%~60%程度の多孔質体(例えばアルミナなど)にて、外側ポンプ電極23を覆うように、かつ、図示しない素子短手方向の両端部において露出するように設けられてなる。セラミックス層7は、例えば第2固体電解質層6などと同程度に緻密なセラミックス(例えば、ジルコニア、アルミナなど)にて、多孔体領域8を含む第2固体電解質層6の上面全体を覆うように、設けられてなる。係るガスセンサ100Bにおいては、外側ポンプ電極23の周囲における雰囲気ガスの出入りが多孔体領域8の与える拡散抵抗にて律速される。
以上の点を踏まえ、本実施の形態に係るガスセンサ100は、被測定ガスが過度にリッチとなった場合には、酸素濃度制御不能の状況を回避しつつ測定電極44の過剰還元を回避して測定電極44さらにはセンサ素子101を保護することを優先的に行う、素子保護モードでの動作が可能となっている。
係る素子保護モードには、処理手順の異なる3通りの態様がある。以下、それらについて順次に説明する。
(第1の態様)
図2は、素子保護モードの第1の態様における動作フローを示す図である。第1の態様は、概略、被測定ガスが過度にリッチ雰囲気となった場合に、外部からの酸素の汲み入れ動作を含むガスセンサ100におけるNOxの測定動作を一時的に停止することで、測定電極の過剰還元を回避する手法である。
本態様では、まず、ガスセンサ100が素子保護モードでの動作を開始するように設定される(ステップS1-1)。これは例えば、ガスセンサの使用者(操作者)が図示しない所定のインターフェースを通じてコントローラ110に対し適宜の設定指示を与えることで実現される。あるいは、ガスセンサ100が常時、素子保護モードにて動作するように設定されていてもよい。
素子保護モードの開始後も、基本的には、コントローラ110による制御のもと、通常モードと同様のNOx濃度の測定が、連続的に行われる。このように、素子保護モードの実行中であっても通常モードと変わらずNOx濃度の測定が行われる場合の動作態様を特に、基本モードとも称する。なお、通常モードにおける動作も含め、基本モードでの動作と称する場合がある。ただし、素子保護モードが開始されると、係る通常モードでの動作に並行して、コントローラ110が所定の判断対象値のモニタを開始する(ステップS1-2)。
本態様において、判断対象値とは、NOxの測定動作の停止を判断する際の指標となる値である。具体的には、起電力V0の実測値が用いられる。第1内部空所20に導入される被測定ガスの酸素濃度があらかじめ規定されている第1内部空所20の目標酸素濃度よりも小さい場合、起電力V0を目標値に保つべく主ポンプセル21において酸素の汲み入れが行われるが、過度にリッチな被測定ガスが導入された場合、酸素の汲み入れが十分に行い得なくなり、起電力V0の実測値が目標値からずれていく(目標値よりも大きくなっていく)ことになる。係るずれが許容される限界での起電力V0の値を、停止閾値としてあらかじめ設定しておく。停止閾値は例えば350mVに設定される。
判断対象値のモニタは、あらかじめ設定された所定の時間(判断時間)が経過(終了)するまで継続される(ステップS1-3)。判断時間は、例えば10秒程度に設定される。
そして、判断時間が経過(終了)した時点(ステップS1-3でYes)で、コントローラ110は、当該判断時間の間に判断対象値が所定の停止閾値を超えたか否かを判断する(ステップS1-4)。あるいは、判断時間終了時の判断対象値が所定の停止閾値を超えたか否かを判断する態様であってもよい。
判断時間において判断対象値が所定の停止閾値を超えることがなかった場合(ステップS1-4でNo)、コントローラ110はガスセンサ100における測定動作をそのまま継続させる(ステップS1-5)。係る測定動作は、素子保護モードを終了し通常モードとして継続されてもよいし、素子保護モードを改めて開始し直すことにより基本モードとして継続されてもよい。
一方、判断時間において判断対象値が所定の停止閾値を超えることがあった場合(ステップS1-4でYes)、コントローラ110は、NOxの測定動作を停止させる保護実行モードへと移行する。具体的には、主ポンプセル21および補助ポンプセル50におけるポンプ制御(フィードバック制御)を停止させ、測定ポンプセル41については、測定電極保護制御のもとでの動作に切り替える(ステップS1-6)。ここで、測定電極保護制御とは、測定電極44を過剰にリッチな被測定ガスによる過剰な還元から保護することを目的として、第3内部空所61に対し外部から酸素を汲み入れるように測定ポンプセル41を動作させる、制御態様である。ただし、センサ素子101にクラックが発生することを避けるため、測定電極保護制御に際し測定ポンプセル41に印加される汲み入れ電圧(測定ポンプ電圧)Vp2の絶対値は、2000mV以下とする。
係る場合、主ポンプセル21と補助ポンプセル50はいずれも動作をしないので、ガス導入口10から導入された被測定ガスはそのまま、第1内部空所20から第2内部空所40を経て第3内部空所61へと入り込むが、一方で、第3内部空所61には測定ポンプセル41により酸素が汲み入れられるので、過度にリッチな被測定ガスによる測定電極44の過剰な還元は好適に抑制される。
主ポンプセル21と補助ポンプセル50のポンプ制御が停止されると、それまでは所望の酸素濃度に応じた所定の一定値となるように制御されていた主センサセル80および補助センサセル81における起電力V0およびV1の実測値はそれぞれ、第1内部空所20および第2内部空所40に流入する酸素濃度が調整されていない被測定ガスの酸素濃度に応じた値となる。これらの、ポンプ制御が停止された状態において各センサセルに生じる起電力を特に、OPEN起電力と称する。
OPEN起電力は、各内部空所に流入した被測定ガスの酸素濃度に応じて変動し、当該酸素濃度が大きいほど大きな値となる。それゆえ、それぞれのOPEN起電力は、ポンプ制御が停止されている状態において各センサセルに対応した内部空所に存在する被測定ガスの、酸素濃度の大小を示す指標として、用いることができる。
コントローラ110は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50におけるポンプ制御の停止と測定ポンプセル41を対象とした測定電極保護制御の実行とを開始するとともに、OPEN起電力のモニタを開始し(ステップS1-7)、係るOPEN起電力が所定の再開閾値を下回るか否かを判断する(ステップS1-8)。その際には、測定センサセル82以外のいずれか1つのセンサセル(例えば主センサセル80)におけるOPEN起電力がモニタされ、再開閾値との大小関係が判断される態様であってもよい。OPEN起電力が再開閾値を下回らない(ステップS1-8でNo)間は、OPEN起電力のモニタは継続される。
再開閾値は、OPEN起電力がその値になった段階でそれぞれのポンプセルにおけるポンプ制御を再開したとしても各ポンプセルにおける酸素の汲み入れあるいは汲み出しを問題なく行い得る程度にまで、各内部空所に流入している被測定ガスの酸素濃度が大きくなったと判断することが出来る値に、設定される。係る再開閾値は、例えば、あらかじめ実験的に特定しておいた、被測定ガスの空燃比とOPEN起電力値との対応関係(関数関係)に基づいて、設定することができる。
例えばガソリンエンジンの排ガスが被測定ガスとされるような場合、あるタイミングで過度にリッチな排ガスが被測定ガスとしてセンサ素子101の内部に流入したとしても、通常は、係る流入は永続的なものではなく、しばらくの時間が経過すれば、排ガスの酸素濃度は各ポンプセルが好適に作動する程度にまで回復する。
主センサセル80におけるOPEN起電力がモニタ対象とされる場合であれば、再開閾値は450mVに設定されるのが好適な一例である。OPEN起電力が450mV以下となった場合、第1内部空所20の内部の雰囲気はストイキ組成あるいはリーン組成となることが、あらかじめ確認されている。
OPEN起電力が所定の再開閾値を下回ったと判断された場合(ステップS1-8でYes)、コントローラ110は、それまで停止していたポンプ制御動作を再開する(ステップS1-9)。すなわち、測定ポンプセル41を対象とした測定電極保護制御は停止され、第1内部空所20、第2内部空所40、および第3内部空所61における酸素濃度が所望の値となるように、主センサセル80、補助センサセル81、および測定センサセル82における起電力V0、V1、およびV2の目標値がそれぞれ再設定され、これらの目標値が実現されるように、各ポンプセルが再び作動させられる。
最終的に、それぞれのポンプセルにおいてこれら起電力V0、V1、およびV2の目標値に基づくフィードバック制御が可能な状態になると、NOxの測定動作が再開される(ステップS1-10)。係る測定動作は、素子保護モードを終了し通常モードとして継続されてもよいし、素子保護モードを改めて開始し直すことによって基本モードとして継続されてもよい。
本態様においては、酸素濃度制御不能の状況を回避するべくNOxの測定動作が停止されている間、測定電極44を過剰還元から保護する目的で、測定電極保護制御のもと測定ポンプセル41にて第3内部空所61内に酸素を汲み入れているので、NOxの測定動作の再開に際し、測定電極44は速やかに、通常のフィードバック制御が可能な状態に復帰する。
このように、本態様では、過度にリッチなガスが被測定ガスとしてセンサ素子101内に導入された場合に、酸素濃度制御不能の状況を回避するべく主ポンプセル21と補助ポンプセル50の動作を停止する一方で、第3内部空所61に対しては測定電極44の過剰還元を抑制するべく測定ポンプセル41により酸素を汲み入れるようにする。これにより、過度にリッチな被測定ガスが第3内部空所61にまで到達するような場合であっても、過剰な酸素の汲み入れ動作の発生を防いでポンプセルを保護することができ、かつ測定電極44の過剰還元を好適に抑制することができる。また、導入される被測定ガスの酸素濃度が、ポンプセルによる酸素の汲み入れが可能な程度にまで回復したと判断された時点における、NOxの測定の再開に際し、測定電極を速やかに使用可能な状態とすることができる。
(第2の態様)
図3は、素子保護モードの第2の態様における動作フローを示す図である。第2の態様は、概略、被測定ガスが過度にリッチ雰囲気となった場合に、第1内部空所20における目標酸素濃度を一時的に低減させることによって主ポンプセル21における過剰な汲み入れを抑制しつつ、測定電極の過剰還元を回避する手法である。
係る第2の態様のステップS2-1~ステップS2-5はそれぞれ、第1の態様におけるステップS1-1~ステップS1-5と概ね同様である。また、判断対象値が具体的には起電力V0の実測値である点も、第1の態様と同じである。
ただし、本態様の場合、判断対象値は、第1内部空所20における目標酸素濃度の変更を判断する際の指標として用いられる。より詳細には、係る目標酸素濃度に応じた主センサセル80の起電力V0の目標値を変更する際の指標として、用いられる。なお、起電力V0の目標値が大きいほど、第1内部空所20における目標酸素濃度は小さくなるという関係がある。
すなわち、本態様の場合、過度にリッチな被測定ガスが第1内部空所20に導入された結果として起電力V0の実測値が目標値からずれていく際の、係るずれが許容される限界での起電力V0の値を、変更閾値としてあらかじめ設定しておく。そして、コントローラ110は、第1の態様と同様に素子保護モード(基本モード)を開始(ステップS2-1)し、判断対象値のモニタを開始(ステップS2-2)した後、判断時間が経過(終了)した時点(ステップS2-3でYes)で、当該判断時間の間に判断対象値が所定の変更閾値を超えたか否かを判断する(ステップS2-4)。変更閾値は、第1の態様における停止閾値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
判断時間において判断対象値が所定の変更閾値を超えることがなかった場合(ステップS2-4でNo)は、第1の態様と同様、コントローラ110はガスセンサ100における測定動作を通常モードあるいは素子保護モード(基本モード)においてそのまま継続させる(ステップS2-5)。
一方、判断時間において判断対象値が所定の変更閾値を超えることがあった場合(ステップS2-4でYes)、本態様でも基本モードから保護実行モードへと移行する。ただし、本態様の場合、コントローラ110は、NOx濃度の測定に際して行うポンプ制御における制御基準値を、基本モード時(通常モード時)の値(通常の値)から変更する(ステップS2-6)。
具体的には、コントローラ110は、少なくとも、主ポンプセル21におけるポンプ制御の基準となる主センサセル80の起電力V0の目標値を、通常の値よりも(さらには変更閾値よりも)大きくする変更を行う。例えば、起電力V0の目標値を、通常モード時の値である250mVから350mVに変更する。係る変更後の起電力V0の目標値を、変更後基準値と称する。係る態様にて起電力V0の目標値が変更されることにより、第1内部空所20における目標酸素濃度は引き下げられる。これに加え、補助ポンプセル50におけるポンプ制御の際の制御基準値についても、通常モード時の値から変更するようにしてもよい。
そして、コントローラ110は、主ポンプセル21(あるいはさらに補助ポンプセル50)については変更後基準値に基づく制御を開始させる一方で、測定ポンプセル41については、測定電極保護制御のもとでの動作に切り替える(ステップS2-7)。結果として、本態様の場合も、保護実行モードにおいてはNOxの測定は停止される。なお、本態様においても、測定電極保護制御に際し測定ポンプセル41に印加される汲み入れ電圧(測定ポンプ電圧)Vp2の絶対値は、2000mV以下とする。
起電力V0の目標値が通常の値よりも大きい変更後基準値とされ、第1内部空所20における目標酸素濃度が引き下げられることで、係る目標酸素濃度と、第1内部空所20に入り込んだ過度にリッチな被測定ガスにおける酸素濃度との差分は、通常モードの場合よりも小さくなる。すると、変更後基準値に基づいて各ポンプセルを制御した場合、変更前に比して、目標酸素濃度を達成するために主ポンプセル21によって第1内部空所20に汲み入れることが必要な酸素の量は低減される。その結果として、主ポンプセル21における主ポンプ電流Ip0または主ポンプ電圧Vp0の過度な増大が抑制される。
しかも、第1の態様の場合、判断対象値が停止閾値を超えて保護実行モードへと移行すると主ポンプセル21および補助ポンプセル50は停止されるが、本態様の場合は、これらのポンプセルにおけるポンプ制御動作自体は継続されるので、第1の態様に比べると、保護実行モードの終了から測定の再開までに要する時間が短くて済む。
コントローラ110は、測定ポンプセル41に測定電極保護制御に基づく動作を開始させるとともに、ポンプセル動作値のモニタを開始し(ステップS2-8)、ポンプセル動作値が復帰閾値を下回るか否かを判断する(ステップS2-9)。
ポンプセル動作値とは、具体的には、主ポンプ電流Ip0または主ポンプ電圧Vp0である。ポンプセル動作値は、酸素の汲み入れ量が多いほど大きな値となる。また、復帰閾値は、ポンプセル動作値がその値になった段階で制御基準値を変更後基準値から通常の値に戻したとしても、各ポンプセルにおける酸素の汲み入れあるいは汲み出しを問題なく行い得る程度にまで各内部空所に流入している被測定ガスの酸素濃度が大きくなったと判断することが出来る値に、設定される。
ポンプセル動作値が復帰閾値を下回らない(ステップS2-9でNo)限りは、ポンプセル動作値のモニタは継続される。
一方、ポンプセル動作値が所定の復帰閾値を下回ったと判断された場合(ステップS2-9でYes)、コントローラ110は、制御基準値を変更後基準値から通常の値に戻す(ステップS2-10)。そして、測定電極保護制御に基づく測定ポンプセル41の動作を停止させ、代わって、通常の制御基準値に基づくNOxの測定動作を再開する(ステップS2-11)。係る測定動作は、素子保護モードを終了し通常モードとして継続されてもよいし、素子保護モードを改めて開始し直すことで継続されてもよい。
このように、本態様の場合、過度にリッチなガスが被測定ガスとしてセンサ素子101内に導入された場合に、酸素濃度制御不能の状況を回避するべく第1内部空所20における目標酸素濃度を一時的に低減させることによって主ポンプセル21における過剰な汲み入れを抑制する一方で、第3内部空所61に対しては測定電極44の過剰還元を抑制するべく測定ポンプセル41により酸素を汲み入れるようにする。これにより、第1の態様と同様、過度にリッチな被測定ガスが第3内部空所61にまで到達するような場合であっても、測定電極44の過剰還元が好適に抑制される。また、第1の態様とは異なり、主ポンプセル21と補助ポンプセル50の動作を停止させるわけではないので、導入される被測定ガスの酸素濃度が、ポンプセルによる酸素の汲み入れが可能な程度にまで回復したと判断された時点における、NOxの測定の再開に際し、測定電極を速やかに使用可能な状態とすることができる。
(第3の態様)
図4および図5は、素子保護モードの第3の態様における動作フローを示す図である。第3の態様は、第1の態様と第2の態様とを組み合わせ、被測定ガスが過度にリッチ雰囲気となった場合に、測定電極の過剰還元を回避しつつ、主ポンプセル21における酸素濃度制御不能な状況への対応については、その程度に応じて2段階に行う手法である。
概略的には、被測定ガスが過度にリッチ雰囲気となった場合、まずは第2の態様と同様に、測定ポンプセル41については測定電極保護制御を行う一方で、第1内部空所20における目標酸素濃度を一時的に低減させることによって主ポンプセル21における過剰な汲み入れを抑制する。そして、それでも第1内部空所20における酸素濃度が十分に回復しない場合には、第1の態様と同様に外部からの酸素の汲み入れ動作を含むガスセンサ100におけるNOxの測定動作を一時的に停止する。
係る第3の態様のステップS3-1~ステップS3-7はそれぞれ、第2の態様におけるステップS2-1~ステップS2-7と同じである。すなわち、第3の態様においても、まずは第2の態様と同様、コントローラ110は、素子保護モード(基本モード)を開始(ステップS3-1)し、判断対象値のモニタを開始(ステップS3-2)した後、判断時間が経過(終了)した時点(ステップS3-3でYes)で、当該判断時間の間に判断対象値が所定の変更閾値を超えたか否かを判断する(ステップS3-4)。なお、本態様の場合も、判断対象値は具体的には起電力V0の実測値である。
判断時間において判断対象値が所定の変更閾値を超えることがなかった場合(ステップS3-4でNo)は、第1および第2の態様と同様、コントローラ110はガスセンサ100における測定動作を通常モードあるいは素子保護モード(基本モード)においてそのまま継続させる(ステップS3-5)。
一方、判断時間において判断対象値が所定の変更閾値を超えることがあった場合(ステップS3-4でYes)、本態様でも基本モードから保護実行モードへと移行する。コントローラ110は、主ポンプセル21(あるいはさらに補助ポンプセル50)については制御基準値を基本モード時(通常モード時)の値(通常の値)から変更し(ステップS3-6)、変更後基準値に基づく制御を開始させる一方で、測定ポンプセル41については、測定電極保護制御のもとでの動作に切り替える(ステップS3-7)。結果として、NOxの測定は停止される。なお、本態様においても、測定電極保護制御に際し測定ポンプセル41に印加される汲み入れ電圧(測定ポンプ電圧)Vp2の絶対値は、2000mV以下とする。
また、併せてポンプセル動作値のモニタが開始され(ステップS3-8)、ポンプセル動作値が所定の復帰閾値を下回ったと判断された場合(ステップS3-9でYes)には、コントローラ110が制御基準値を変更後基準値から通常の値に戻し(ステップS3-10)、測定電極保護制御に基づく測定ポンプセル41の動作を停止させ、代わって、通常の制御基準値に基づくNOxの測定動作を通常モードまたは素子保護モード(基本モード)にて再開する(ステップS3-11)点も、第2の態様と同様である。
一方、ポンプセル動作値が復帰閾値を下回っていないと判断された場合(ステップS3-9でNo)は、判断対象値が所定の停止閾値を超えたか否かが判断される(ステップS3-12)。なお、本態様においては、停止閾値の方が変更閾値よりも大きな値に設定される。
判断対象値が停止閾値を超えていない場合(ステップS3-12でNo)は、ステップS3-8に戻ってポンプセル動作値のモニタが再開され、ステップS3-9以降の処理が改めて行われる。ゆえに、ポンプセル動作値が所定の復帰閾値以上であるが判断対象値が停止閾値以下である状況では、ステップS3-8→ステップS3-9→ステップS3-12→ステップS3-8→・・・というループが繰り返されることになる。これは、リッチガスのセンサ素子101内部への導入に伴い生じる、主ポンプセル21による過度の酸素の汲み入れが、第2の態様と同様の、目標酸素濃度を低減させることによって回避可能な程度である場合には、係る態様での対処が継続されることを、意味する。係る状況においても、測定ポンプセル41を対象とする測定電極保護制御は依然として継続される。
制御基準値を変更した後の判断対象値が停止閾値を超えている場合(ステップS3-12でYes)は、第1の態様と同様の手順が実行される。係る手順は、目標酸素濃度を低減させるだけではポンプセルの保護を十分に行い得ない場合に、係る保護をより確実に実現することを意図したものである。
具体的にはまず、コントローラ110が、主ポンプセル21および補助ポンプセル50におけるポンプ制御を停止させる(ステップS3-13)。それゆえ、係る状態において動作しているポンプセルは、測定電極保護制御がなされている測定ポンプセル41のみとなる。すなわち、主ポンプセル21による過度の酸素の汲み入れが、目標酸素濃度を低減させることによっても回避困難となり得る場合には、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の保護のためにこれらのポンプセルの動作を停止させる。
コントローラ110はさらに、測定センサセル82以外のセンサセルにおけるOPEN起電力のモニタを開始し(ステップS3-14)、係るOPEN起電力が所定の再開閾値を下回るか否かを判断する(ステップS3-15)。主センサセル80におけるOPEN起電力がモニタ対象とされる場合であれば、再開閾値は450mVに設定されるのが好適な一例である。OPEN起電力が再開閾値を下回らない(ステップS3-15でNo)間は、OPEN起電力のモニタは継続される。
OPEN起電力が再開閾値を下回ったと判断された場合(ステップS3-15でYes)、コントローラ110は、測定ポンプセル41を対象とする測定電極保護制御を停止したうえで、各ポンプセルについて制御基準値を通常の値に再設定し、ポンプ制御動作を再開する(ステップS3-16)。最終的に、それぞれのポンプセルにおいて起電力V0、V1、およびV2に基づくフィードバック制御が可能な状態になると、通常モードまたは素子保護モード(基本モード)でのNOxの測定動作が再開される(ステップS3-17)。
このように、本態様では、第1の態様と第2の態様とが組み合わされており、センサ素子101の内部に導入される被測定ガスのリッチ度合いによって、保護実行モードにおける酸素濃度制御不能の状況を回避するための対処の仕方を段階的に切り替える一方で、測定電極44の過剰還元からの保護については、第1の態様および第2の態様と同様に行われる。これにより、過度にリッチな被測定ガスが第3内部空所61にまで到達するような場合であっても、測定電極44の過剰還元が好適に抑制される。一方で、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とが停止される状況は最低限度に留められる。また、導入される被測定ガスの酸素濃度が、ポンプセルによる酸素の汲み入れが可能な程度にまで回復したと判断された時点における、NOxの測定の再開に際し、測定電極を速やかに使用可能な状態とすることができる。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、例えばガソリンエンジンからの排ガスなど、被測定ガスが空燃比の小さいリッチガスとなり得る環境においてガスセンサが使用される場合であっても、内部空所に酸素を汲み入れることが困難となって、酸素濃度制御不能の状況が生じることが、好適に回避される。加えて、リッチガスによって測定電極が過剰還元されることが好適に抑制されるので、NOxの測定の再開に際し、測定電極を速やかに使用可能な状態とすることができる。
<変形例>
上述の実施の形態においては、判断対象値として起電力V0の実測値が用いられているが、これに代わり、主ポンプセル21において酸素の汲み入れが生じているときの主ポンプ電流Ip0の値を判断対象値とする態様であってもよい。係る主ポンプ電流Ip0は第1内部空所20への酸素の汲み入れ量に応じて増大するため、第1内部空所20への酸素の汲み入れ度合の指標となり得る。第1の態様における停止閾値や第2および第3の態様における変更閾値は、用いられる判断対象値に応じて設定される。
また、通常モードおよび素子保護モードの基本モードにおいては、一定の大きさの補助ポンプ電流Ip1が流れるように補助ポンプセル50を制御する、Ip1一定制御なる制御態様にてガスセンサ100を動作させるようにしてもよく、係る場合、起電力V0の実測値に代えて、あるいは起電力V0の実測値と併用する態様にて、補助ポンプ電流Ip1の実測値が、素子保護モードの保護実行モードにおける判断対象値とされてもよい。第1内部空所20から第2内部空所40へと導入される被測定ガスにおける酸素濃度が所定値に保たれる間は、補助ポンプセル50が酸素を汲み出す際の補助ポンプ電流Ip1をあらかじめ設定された一定値に保つことによって、第2内部空所40における酸素濃度を所定値に制御することが可能である。しかしながら、過度にリッチな被測定ガスが第1内部空所20に導入され、第1内部空所20における酸素濃度の調整が行えなくなった結果として、第2内部空所40にまで酸素濃度の小さい被測定ガスが入り込んでしまうと、補助ポンプセル50が第2内部空所40から酸素を汲み出すことができなくなり、起電力V1の実測値が一定値から上昇するとともに、補助ポンプ電流Ip1の実測値は設定されていた一定値から減少していく。それゆえ、補助ポンプ電流Ip1の実測値についても、判断対象値として用いることができる。
上述の実施の形態においては、ガスセンサが、内部に3つの空所を有するセンサ素子を備える場合を対象としていたが、過度にリッチな被測定ガスセンサ素子の内部に取り込まれることに起因したブラックニングが発生し得るセンサ素子の構成は、上述の実施の形態のものに限られない。
そのような場合も、ガスセンサが、電気化学的ポンプセルによる酸素の汲み入れまたは汲み出しを行うことにより酸素濃度が一定に保たれる内部空所を有するセンサ素子を備える限り、上述した第1ないし第3の態様を、必要であれば素子構成に応じて適宜に修正しつつ適用することによって、当該センサ素子において酸素濃度制御不能の状況が生じることを回避することが可能である。また、リッチガスによって測定電極が過剰還元されることを好適に抑制することも可能である。すなわち、リッチガス雰囲気下においてセンサ素子を好適に保護することが出来る。
1 第1基板層
2 第2基板層
3 第3基板層
4 第1固体電解質層
5 スペーサ層
6 第2固体電解質層
10 ガス導入口
11 第1拡散律速部
13 第2拡散律速部
20 第1内部空所
21 主ポンプセル
22 内側ポンプ電極
23 外側ポンプ電極
24、46、52 可変電源
30 第3拡散律速部
40 第2内部空所
41 測定ポンプセル
42 基準電極
43 基準ガス導入空間
44 測定電極
50 補助ポンプセル
51 補助ポンプ電極
60 第4拡散律速部
61 第3内部空所
70 ヒータ部
80 主センサセル
81 補助センサセル
82 測定センサセル
100 ガスセンサ
101 センサ素子
Ip0 主ポンプ電流
Ip1 補助ポンプ電流
Ip2 NOx電流

Claims (13)

  1. 被測定ガス中のNOxを検知可能に構成されたNOxセンサであって、
    酸素イオン伝導性の固体電解質にて構成されてなるセンサ素子と、
    前記NOxセンサの動作を制御するコントローラと、
    を備え、
    前記センサ素子が、
    前記被測定ガスの導入口から所定の拡散抵抗の下で順次に連通し、内側電極が設けられてなる複数の内部空所と、
    前記複数の内部空所以外の箇所に配置された空所外ポンプ電極と、
    基準ガスと接触可能に設けられた基準電極と、
    を備え、
    それぞれの前記内側電極と前記空所外ポンプ電極との間に所定のポンプ電源にてポンプ電圧を印加することによって前記複数の内部空所のうち対応する内部空所と前記センサ素子の外部との間で酸素の汲み入れまたは汲み出しが可能に構成され複数の電気化学的ポンプセルと、
    それぞれの前記内側電極と前記基準電極との間に、前記対応する内部空所における酸素濃度に応じた電位差が生じるように構成された複数の電気化学的センサセルと、
    をさらに備え、
    前記複数の内部空所のそれぞれに備わる前記内側電極の1つがNOxを還元可能な測定電極であり、
    前記複数の電気化学的ポンプセルが、
    前記測定電極を含む測定ポンプセルと、
    前記測定電極以外の前記内側電極を含む少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルと、
    からなり、
    前記複数の電気化学的センサセルが、
    前記測定電極を含む測定センサセルと、
    前記測定電極以外の前記内側電極を含む少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルと、
    からなり、
    前記コントローラは、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルに含まれる判断対象ポンプセルにおける酸素の汲み入れ動作の指標となる所定の判断対象値が、所定の判断時間において所定の閾値を超えたか否かを判断し、
    前記判断対象値が前記所定の閾値を超えない限りは、前記複数の電気化学的ポンプセルを動作させることによって前記複数の内部空所のそれぞれにおける酸素濃度を一定に保ちつつ、前記測定電極にてNOxが還元されることにより前記測定ポンプセルにおいて前記測定電極と前記空所外ポンプ電極との間をNOxの濃度に応じて流れる測定ポンプ電流に基づいてNOxの濃度を特定する、基本モードにて前記NOxセンサを制御し、
    前記判断対象値が前記所定の閾値を超えた場合には、前記基本モードを停止し、前記測定電極を過剰な還元から保護する保護実行モードにて前記NOxセンサを制御する、
    ことを特徴とするNOxセンサ。
  2. 請求項1に記載のNOxセンサであって、
    前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの停止の要否を判断するための停止閾値であり、
    前記コントローラは、
    前記判断対象値が前記停止閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの動作を停止させ、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差のモニタを開始し、
    モニタされる前記電位差が所定の再開閾値を下回った時点で、前記基本モードでの前記NOxセンサの制御を再開する、
    ことを特徴とするNOxセンサ。
  3. 請求項1に記載のNOxセンサであって、
    前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の印加を制御する際の、対応する前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルにおける前記電位差の目標値の変更の要否を判断するための変更閾値であり、
    前記コントローラは、
    前記判断対象値が前記変更閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記目標値を通常値よりも大きな値に変更したうえで前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの制御を継続し、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、少なくとも前記判断対象ポンプセルを含む前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の値または電流の値であるポンプセル動作値のモニタを開始し、
    前記ポンプセル動作値が復帰閾値を下回った時点で、前記目標値を前記通常値に復帰させて前記NOxセンサの制御を前記基本モードに復帰させる、
    ことを特徴とするNOxセンサ。
  4. 請求項1に記載のNOxセンサであって、
    前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の印加を制御する際の、対応する前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルにおける前記電位差の目標値の変更を判断するための変更閾値であり、
    前記コントローラは、
    前記判断対象値が前記変更閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記目標値を通常値よりも大きな値に変更したうえで前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの制御を継続し、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、少なくとも前記判断対象ポンプセルを含む前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の値または電流の値であるポンプセル動作値のモニタを開始し、
    前記ポンプセル動作値が復帰閾値を下回った時点で、前記目標値を前記通常値に復帰させて前記NOxセンサの制御を前記基本モードに復帰させ、
    前記ポンプセル動作値が前記復帰閾値を下回らず、かつ、前記判断対象値が前記変更閾値より値の大きい停止閾値を超えない限りは、前記ポンプセル動作値のモニタを継続し、
    前記ポンプセル動作値が前記復帰閾値を下回らず、かつ、前記判断対象値がさらに、前記停止閾値を超えた場合には、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差のモニタを開始し、
    モニタされる前記電位差が所定の再開閾値を下回った時点で、前記基本モードでの前記NOxセンサの制御を再開する、
    ことを特徴とするNOxセンサ。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のNOxセンサであって、
    前記判断対象値が、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差の実測値である、
    ことを特徴とするNOxセンサ。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のNOxセンサであって、
    前記判断対象値が、前記判断対象ポンプセルにおいて酸素を汲み入れるときのポンプ電流の値である、
    ことを特徴とするNOxセンサ。
  7. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のNOxセンサであって、
    前記複数の内部空所が、拡散抵抗部を介して順次に連通する第1内部空所と、第2内部空所と、第3内部空所であり、
    前記測定電極以外の前記内側電極が、前記第1内部空所に設けられた主ポンプ電極と、前記第2内部空所に設けられた補助ポンプ電極であり、
    前記測定電極が前記第3内部空所に設けられてなり、
    前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルが、前記第1内部空所の酸素濃度を制御する主ポンプセルと、前記第2内部空所の酸素濃度を制御する補助ポンプセルであり、
    前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルが、前記主ポンプ電極と前記基準電極との間に前記第1内部空所における酸素濃度に応じた電位差が生じるように構成された主センサセルと、前記補助ポンプ電極と前記基準電極との間に前記第2内部空所における酸素濃度に応じた電位差が生じるように構成された補助センサセルであり、
    前記コントローラは、少なくとも前記基本モードにおいて、前記第1内部空所と前記第2内部空所とにおける酸素濃度がそれぞれに所定の一定値に保たれるように前記主ポンプセルおよび前記補助ポンプセルを動作させつつ、前記第3内部空所に導入された酸素濃度調整済みの前記被測定ガスに含まれるNOxの濃度に応じて前記測定ポンプセルを流れる前記測定ポンプ電流の大きさに基づいて、NOxの濃度を特定する、
    ことを特徴とするNOxセンサ。
  8. 酸素イオン伝導性の固体電解質にて構成されてなるセンサ素子を備え、被測定ガス中のNOxを検知可能に構成されたNOxセンサの動作方法であって、
    前記センサ素子が、
    前記被測定ガスが導入される導入口から所定の拡散抵抗の下で順次に連通する複数の内部空所と、
    前記複数の内部空所のそれぞれに面して設けられてなる複数の内側電極と、
    前記複数の内部空所以外の箇所に配置された空所外ポンプ電極と、
    基準ガスと接触可能に設けられた基準電極と、
    を備え、
    それぞれの前記内側電極と前記空所外ポンプ電極との間に所定のポンプ電源にてポンプ電圧を印加することによって前記複数の内部空所のうち対応する内部空所と前記センサ素子の外部との間で酸素の汲み入れまたは汲み出しが可能に構成され複数の電気化学的ポンプセルと、
    それぞれの前記内側電極と前記基準電極との間に、前記対応する内部空所における酸素濃度に応じた電位差が生じるように構成された複数の電気化学的センサセルと、
    をさらに備え、
    前記複数の内部空所のそれぞれに備わる前記内側電極の1つがNOxを還元可能な測定電極であり、
    前記複数の電気化学的ポンプセルが、
    前記測定電極を含む測定ポンプセルと、
    前記測定電極以外の前記内側電極を含む少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルと、
    からなり、
    前記複数の電気化学的センサセルが、
    前記測定電極を含む測定センサセルと、
    前記測定電極以外の前記内側電極を含む少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルと、
    からなる場合において、
    前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルに含まれる判断対象ポンプセルにおける酸素の汲み入れ動作の指標となる所定の判断対象値が、所定の判断時間において所定の閾値を超えたか否かを判断する判断工程、
    を有し、
    前記判断工程において前記判断対象値が前記所定の閾値を超えない限りは、前記複数の内部空所のそれぞれにおける酸素濃度を一定に保ちつつ、前記測定電極にてNOxが還元されることにより前記測定ポンプセルにおいて前記測定電極と前記空所外ポンプ電極との間をNOxの濃度に応じて流れる測定ポンプ電流に基づいてNOxの濃度を特定する、基本モードにて前記NOxセンサを制御し、
    前記判断工程において前記判断対象値が前記所定の閾値を超えた場合には、前記基本モードを停止し、前記測定電極を過剰な還元から保護する保護実行モードにて前記NOxセンサを動作させる、
    ことを特徴とするNOxセンサの動作方法。
  9. 請求項8に記載のNOxセンサの動作方法であって、
    前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの停止の要否を判断するための停止閾値であり、
    前記判断工程において前記判断対象値が前記停止閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの動作を停止させ、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差のモニタを開始し、
    モニタされる前記電位差が所定の再開閾値を下回った時点で、前記基本モードでの前記NOxセンサの動作を再開する、
    ことを特徴とするNOxセンサの動作方法。
  10. 請求項8に記載のNOxセンサの動作方法であって、
    前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の印加を制御する際の、対応する前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルにおける前記電位差の目標値の変更の要否を判断するための変更閾値であり、
    前記判断工程において前記判断対象値が前記変更閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記目標値を前記所定の通常値よりも大きな値に変更したうえで前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの動作を継続し、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、少なくとも前記判断対象ポンプセルを含む前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の値または電流の値であるポンプセル動作値のモニタを開始し、
    前記ポンプセル動作値が復帰閾値を下回った時点で、前記目標値を前記所定の通常値に復帰させて前記NOxセンサの動作を前記基本モードに復帰させる、
    ことを特徴とするNOxセンサの動作方法。
  11. 請求項8に記載のNOxセンサの動作方法であって、
    前記所定の閾値が、前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の印加を制御する際の、対応する前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルにおける前記電位差の目標値の変更を判断するための変更閾値であり、
    前記判断工程において前記判断対象値が前記変更閾値を超えた場合、前記保護実行モードを開始し、前記保護実行モードにおいては、前記目標値を通常値よりも大きな値に変更したうえで前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルの動作を継続し、前記測定ポンプセルには酸素を汲み入れさせるとともに、少なくとも前記判断対象ポンプセルを含む前記少なくとも1つの酸素濃度制御ポンプセルにおける前記ポンプ電圧の値または電流の値であるポンプセル動作値のモニタを開始し、
    前記ポンプセル動作値が復帰閾値を下回った時点で、前記目標値を前記通常値に復帰させて前記NOxセンサの制御を前記基本モードに復帰させ、
    前記ポンプセル動作値が前記復帰閾値を下回らず、かつ、前記判断対象値が前記変更閾値より値の大きい停止閾値を超えない限りは、前記ポンプセル動作値のモニタを継続し、
    前記ポンプセル動作値が前記復帰閾値を下回らず、かつ、前記判断対象値がさらに、前記停止閾値を超えた場合には、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差のモニタを開始し、
    モニタされる前記電位差が所定の再開閾値を下回った時点で、前記基本モードでの前記NOxセンサの動作を再開する、
    ことを特徴とするNOxセンサの動作方法。
  12. 請求項8ないし請求項11のいずれかに記載のNOxセンサの動作方法であって、
    前記判断対象値を、前記少なくとも1つの酸素濃度検知センサセルのうち前記判断対象ポンプセルに対応するセンサセルにおける前記電位差の実測値とする、
    ことを特徴とするNOxセンサの動作方法。
  13. 請求項8ないし請求項11のいずれかに記載のNOxセンサの動作方法であって、
    前記判断対象値を、前記判断対象ポンプセルにおいて酸素を汲み入れるときのポンプ電流の値とする、
    ことを特徴とするNOxセンサの動作方法。
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