JP2023123442A - 持続性抑制を増加させ、二次性不眠症を治療する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】持続性抑制の増加を必要とする患者、たとえば、脆弱X症候群またはアンジェルマン症候群を有する患者における、持続性抑制を増加させるための医薬組成物を提供する。
【解決手段】脆弱X関連振戦/運動失調症候群を治療するための医薬組成物であって、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその医薬的に許容しうる塩および医薬的に許容しうる担体または賦形剤を含み、THIPまたはその医薬的に許容しうる塩のヒトに投与される総有効量が、1 mg~50 mgである、医薬組成物とする。
【選択図】なし

Description

本発明の技術分野は、一般に、二次性不眠症および/または持続性抑制の欠乏または欠陥を特徴とする疾患または障害を治療するために、4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)、その誘導体、またはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を用いる方法に関する。
多くの進歩がなされてきたが、神経変性疾患および神経原性疾患のための治療は、依然として不十分なままである。
神経疾患は、根底にある病態生理学に関連するものもあり、たとえば、脆弱X症候群とアンジェルマン症候群は、脳の特定の組織における持続性抑制の喪失に関連する。神経疾患は、症状に関連するものもある。たとえば、さまざまな神経変性疾患が、広範な症状を特徴とするが、多くの疾患および障害は、不眠症、中断された睡眠および変更された睡眠構築などの1つ以上の睡眠関連障害に関連する(Jennumら、「CHAPTER 39: Sleep disorders in neurodegenerative disorders and stroke」、European Handbook of Neurological Management、Volume 1、2nd Edition(Ed. Gilhusら)Blackwell Publishing Ltd. 2011))。
ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、脆弱X症候群およびアンジェルマン症候群などの疾患について、治療は非常に限定され、治癒は存在しない。したがって、神経変性疾患、神経原性および他の中枢神経系障害を治療するためのさらなる治療選択肢が必要である。
したがって、本発明の1つの目的は、神経疾患を有する患者における二次性不眠症を治療および予防する方法を提供することである。
本発明のもう1つの目的は、持続性抑制の増加を必要とする患者における持続性抑制を増加させる方法を提供することである。
発明の概略
患者、特に脆弱X症候群またはアンジェルマン症候群を有する患者におけるニューロンの持続性抑制を増加させる方法を提供する。神経変性疾患または中枢神経系障害を有する患者における二次性不眠症を治療する方法を提供する。方法は、典型的には、患者におけるニューロンにおける持続性抑制を増加させるため、徐波睡眠(SWS)および/または徐波活動(SWA)を増加させ、睡眠構築を正常化し、二次性不眠症を減少させ、ノンレム(非急速眼球運動(non-rapid eye movement))(NREM)睡眠を増加させ、睡眠の連続性を高め、ノンレム(NREM)睡眠を増加させ、睡眠の連続性を高め、NREM内のデルタ活動を強化し、総睡眠時間(TST)を増加または改善し、睡眠効率を増加または改善し、総覚醒時間(TAA)を短縮し、覚醒回数を減らし(NWA)、持続睡眠潜時(LPS)を短縮するか、または中途覚醒(WASO)を減少させるため、または患者におけるそれらの任意の組合せのために、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を患者に投与することを包含する。
特定の実施態様において、二次性不眠症に苦しんでいる患者は、パーキンソン病(PD)またはPD関連障害、アルツハイマー病(AD)、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症またはアルツハイマー病を有する。
最も好ましい実施態様において、THIPまたはその誘導体は、THIPまたはその医薬的に許容しうる塩である。THIPまたはその誘導体は、医薬組成物中の単一の活性剤でありうるか、または2つ以上の活性薬剤のうちの1つであり得る。医薬組成物は、持続放出用に製剤される。医薬組成物は、たとえば、医薬組成物を含む経皮パッチを患者の皮膚に接触させることによって経皮投与することができる。特定の実施態様において、THIPまたはその誘導体の1日投与量は、約2.5 mg~50 mg/日である。
詳細な記載
I.定義
本明細書で用いる用語「担体」または「賦形剤」は、1種以上の活性成分と組合わせる、製剤中の有機または無機成分、天然または合成不活性成分を意味する。
本明細書で用いる用語「医薬的に許容しうる」は、活性成分の生物活性の有効性を妨げない非毒性物質を意味する。
本明細書で用いる用語「有効量」または「治療有効量」は、治療される障害、疾患または状態の1つ以上の症状を緩和するのに十分な用量を意味する。正確な投与量は、患者従属変数(たとえば、年齢、免疫系の健康など)、治療される疾患または障害ならびに投与経路および投与される作用剤の薬物動態などのさまざまな因子に応じて変化する。
本明細書で用いる用語「予防」または「予防する」は、疾患または障害の特定の症状の停止、疾患または障害の1つ以上の症状の軽減または予防、疾患または障害の重篤度の低減化、疾患または障害の完全な除去、疾患または障害の発達または進行の安定化または遅延化を引き起こすために、疾患または障害によって引き起こされる1つ以上の症状の危険性があるか、または該症状の素因を有する患者または身体に組成物を投与することを意味する。
II.ガボキサドールまたはその誘導体を含む組成物
患者における二次性不眠症、乱れた睡眠構築、またはその組合せを治療するための4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)、その誘導体、またはその医薬的に許容しうる塩を用いる方法を開示する。一部の実施態様において、患者は、神経変性疾患または中枢神経系障害を有するか、または発症する危険性がある。最も好ましい実施態様において、患者は、神経変性疾患または中枢神経系障害による二次性不眠症および/または乱れた睡眠構築に苦しむ。以下により詳細に説明するように、方法は、典型的に、徐波睡眠を増加させ、睡眠構築を正常化するため、またはその組合せのために、有効量の有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)、その誘導体、またはその医薬的に許容しうる塩を、それを必要とする患者に投与することを包含する。一部の実施態様において、神経変性疾患または中枢神経系障害の臨床症状が、低減化される。
持続性抑制を増加させるために、4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)、その誘導体、またはその医薬的に許容しうる塩を用いる方法もまた、提供される。方法を用いて、持続性抑制の欠乏または欠陥を特徴とする疾患または障害、たとえば、脆弱X症候群またはアンジェルマン症候群を有する患者における持続性抑制を増加させることができる。
A.4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)
開示する二次性不眠症を治療する方法において用いるための組成物は、4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIPおよびガボキサドールとも称される)、その誘導体、またはその医薬的に許容しうる塩、または構造的関連化合物を包含する。THIP、ならびに誘導体および構造的関連化合物、およびその製造方法は、当技術分野で公知である。たとえば、米国特許第4,278,676、4,362,731、4,353,910号、およびWO 2005/094820を参照(これらのそれぞれは、その全体において参照することによって本明細書に援用される)。特に好ましい化合物を以下により詳細に考察する。
一部の実施態様において、化合物は、式((Ia)):
Figure 2023123442000001
[4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)]
で示される化合物、またはその互変異性体、異性体、エピマーもしくはジアステレオマーである。
THIPは十分に耐容性であり、非常に特異的な活性を有し、GABA取り込み阻害剤として不活性である非常に強力なGABAアゴニストである。ガボキサドールは、選択的シナプス外GABAAアゴニスト(SEGA)である(Deaconら、Sleep、30(3):281-287(2007))。GABAA受容体は、中心陰イオンチャネルを形成する5つのサブユニットを有する五量体膜貫通タンパク質である。ガボキサドールは、内在性GABAリガンドが結合するのと同じ部位であるαサブユニットとβサブユニットとの間の境界面に結合する。ガボキサドールは、GABAとは無関係に塩素コンダクタンスに直接影響を及ぼし、GABA結合部位との相互作用を介してシナプス外に位置するδ-含有受容体を直接活性化することができる。シナプス外δ含有受容体は、視床、大脳皮質、および辺縁系において主に発現される。これらの脳領域は、睡眠の調節および皮質活動の同期に関与している。
化合物(Ia)の選択的活性は、5員環の酸性ヒドロキシ基に関連して、6員環の窒素原子の特定の位置に起因すると考えられる。
したがって、化合物(Ia)およびその誘導体、特に、投与の際にその場で分解されて親化合物(Ia)を生じる誘導体、特に、一般式(I):
Figure 2023123442000002
[式中、R”は、水素、アセチルまたは一般式(II):
Figure 2023123442000003
(式中、R5は、C1-8アルキル;フェニル;4位にてハロゲン、低級アルコキシまたは低級アルキルで置換されたフェニル;ベンジルまたはフェニルエチルまたはなどのフェニルアルキル(ここで、フェニル基は、4位にてハロゲン、低級アルコキシまたは低級アルキルで置換されてもよい)で示される基]
で示される化合物およびその塩。
水素ではないR”は、それらが化合物の血液脳関門を通過する能力を強化することができ、その後、その場で分割されて親化合物が得られるという点において、
脳内への化合物の侵入を強化することができると考えられる。また、R”が水素ではない化合物のその場での分解を介して、化合物(Ia)の長期効果が得られ、親化合物を生成することができる。
「低級アルキル」、「低級アルコキシ」および「低級アルキルオキシ」は、1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の原子を含むそのような基を示す
一般式(I)で示される化合物は、式(I'):
Figure 2023123442000004
で示される互換異性体で存在しうる。式(I)は、この互変異性体(I')および2つの互変異性体の混合物も包含すると理解されるべきである。
R”が水素ではない一般式(I)で示される化合物の例は、以下のとおりである:6-アセチル-4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-3-オール、メチル 3-ヒドロキシ-4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-6-カルボキシレート、エチル 3-ヒドロキシ-4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-6-カルボキシレート、tert.ブチル 3-ヒドロキシ-4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-6-カルボキシレート、フェニル 3-ヒドロキシ-4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-6-カルボキシレート、4-クロロフェニル 3-ヒドロキシ-4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-6-カルボキシレート、4-メトキシフェニル 3-ヒドロキシ-4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-6-カルボキシレート、ベンジル 3-ヒドロキシ-4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-6-カルボキシレート、およびその塩基との塩。
THIPの誘導体は、当技術分野で公知である。たとえば、米国特許第4,353,910号を参照。
好ましい誘導体は、式:
Figure 2023123442000005
(III)
[式中、Rは、1~17個の炭素原子を有する分枝または非分枝のアルキル基;低級アルキル、低級アルキルオキシおよびハロゲンから選ばれる1または2個の基で任意に置換されたフェニル基;フェニルアルキル基;低級アルキルオキシ基;または-NHR1基(ここで、R1は、水素、低級アルキル、フェニルまたはシクロヘキシルである)]
で示される化合物ならびにその医薬的に許容しうる酸付加塩である。
式(III)で示される化合物ならびにその医薬的に許容しうる酸付加塩は、化合物THIPと同じレベルのGABA関連活性を示し、いくつかの化合物は、THIPと比べて長期化された効果も示す。さらに、それらは、顕著な鎮痛および筋緊張緩和効果を示す。
開示する式で示される化合物の医薬的に許容しうる塩の例として、無機酸との塩が挙げられる。該式で示される塩の例は、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、有機カルボン酸、たとえば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルクロン酸、安息香酸、パモ酸およびなどの有機酸、または有機スルホン酸、たとえば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸との塩などのその酸付加塩であり、該塩は、たとえば、当該酸を塩基、好ましくは溶媒中に加えることによるなど、それ自体公知の手順で製造することができる。該式で示される化合物は、金属塩、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはアルミニウム塩、およびアンモニウムおよび置換アンモニウム塩、たとえば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチルピペリジン、プロカインおよびジベンジルアミンなどのアミンの塩などの、塩基との医薬的に許容しうる塩を形成することができる。
本明細書を通して、「THIPまたはその誘導体」は、塩基(両性イオン)、医薬的に許容しうる塩、たとえば、医薬的に許容しうる酸付加塩、塩基または塩の水和物または溶媒和物、ならびに無水物、および非晶質または結晶形態などの化合物の形態を包含することを意図する。
B.製剤
開示の化合物は、医薬組成物中に製剤化することができる。医薬組成物は、投与の非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、経腸、経皮(受動的またはイオン導入法もしくはエレクトロポレーションを使用して)または経粘膜(経鼻、肺、膣、直腸または舌下)の投与経路によって、または生体内分解性インサートを用いて投与することができ、各投与経路に適した投与剤形に製剤することができる。
組成物は、全身投与することができる。
薬物は、即時放出、徐放性放出、または調節放出用に製剤することができる。遅延放出剤形は、投与直後以外の時点で薬物(1種以上)を放出するものである。徐放性剤形は、従来の投与剤形(たとえば、溶液または即時薬物放出性の従来の固体投与剤形として)と比較して、投与頻度を少なくとも1/2に減少することを可能にするものである。調節放出剤形は、溶液、軟膏、または即時溶解剤形などの従来の投与剤形によっては提供されない治療目的または便宜目的を達成するために、時間経過および/または位置に関する薬物放出特性が選択される剤形である。遅延放出および徐放性剤形およびそれらの組み合わせは、放出調節剤形の種類である。
製剤は、安全かつ有効であると考えられ、好ましくない生物学的副作用または望ましくない相互作用を引き起こすことなく個体に投与され得る材料からなる医学的に許容する「担体」を用いて製造される。「担体」は、有効成分(1種以上)以外の医薬製剤中に存在する全ての成分である。用語「担体」には、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤およびコーティング組成物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
「担体」には、可塑剤、顔料、着色剤、安定化剤、流動促進剤を含みうるコーティング組成物の全ての成分も含まれる。遅延放出投与製剤は、錠剤およびカプセル剤、ならびに錠剤、カプセル剤および顆粒剤の遅延放出剤形の製造のための担体、材料、装置および方法に関する情報を提供する、「Pharmaceutical dosage form tablets」、eds. Liberman et. al.(New York、Marcel Dekker、Inc.、1989)、「Remington-The science and practice of pharmacy」、20th ed.、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD、2000、および「Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems」、6th Edition、Ansel et.al.、(Media、PA: Williams and Wilkins、1995)などの参考文献の記載にしたがって製造することができる。
化合物は、デリバリービヒクルの助けを借りて、または借りずに対象に投与することができる。化合物のための適切なデリバリービヒクルは、当技術分野において公知であり、特定の活性剤に適合するように選択することができる。たとえば、一部の実施態様において、活性剤は、ナノ粒子、微粒子、ミセル、合成リポタンパク質粒子、またはカーボンナノチューブに組み込まれるか、またはカプセル化されるか、または結合される。たとえば、組成物は、活性剤の制御放出を提供するポリマー微粒子などのビヒクルに組み込むことができる。一部の実施態様において、薬剤の放出は、微粒子からの活性剤の拡散および/または加水分解および/または酵素分解によるポリマー粒子の分解によって制御される。
適切なポリマーとして、エチルセルロースおよび他の天然または合成セルロース誘導体が挙げられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリエチレンオキシドなどの、水性環境中でゆっくりと溶解してゲルを形成するポリマーもまた、薬物含有微粒子または粒子のための材料として適切でありえる。他のポリマーとして、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(PHB)およびこれらのコポリマーなどのポリ無水物、ポリ(エステル無水物)、ポリヒドロキシ酸、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)およびそのコポリマー、ポリカプロラクトンおよびそのコポリマー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、両方の薬剤は同じ粒子に組み込まれ、異なる時間および/または異なる期間にわたって放出されるように製剤される。たとえば、一部の実施態様において、第2の薬剤の放出が始まる前に、薬剤の1つが粒子から完全に放出される。他の実施態様において、第1の薬剤の放出が開始され、続いて第1の薬剤のすべてが放出される前に第2の薬剤の放出が開始される。さらに他の実施態様において、両方の薬剤は、同じ時間または異なる期間にわたって同時に放出される。
1.非経口投与用製剤
化合物およびその医薬組成物は、水溶液で、非経口注射によって投与することができる。製剤は、懸濁液または乳液の形態であってもよい。一般に、有効量の活性剤を含む医薬組成物が提供され、任意に、医薬的に許容しうる希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体を含む。このような組成物として、希釈剤滅菌水、さまざまな緩衝内容(たとえば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の緩衝生理食塩水;および任意に、界面活性剤および可溶化剤(たとえば、POLYSORBATE(登録商標)20または80とも称されるTWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80);抗酸化剤(たとえば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム);および保存剤(たとえば、チメルソール、ベンジルアルコール)および増量剤(たとえば、ラクトース、マンニトール)が挙げられる。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびトウモロコシ油などの植物油、ゼラチン、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。製剤は、凍結乾燥し、使用直前に再溶解/再懸濁することができる。製剤は、たとえば、細菌保持フィルターによる濾過、組成物への滅菌剤の組み込み、組成物の放射線照射、または組成物の加熱によって滅菌することができる。
2.経口即放性製剤
適切な経口投与剤形として、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁液剤、シロップ剤およびロゼンジが挙げられる。錠剤は、当技術分野で周知の圧縮または成形技術を用いて作成することができる。ゼラチンカプセル剤または非ゼラチンカプセル剤は、当技術分野において周知の技術を用いて、液体、固体および半固体の充填材料を封入することができる硬質または軟質カプセルシェルとして製造することができる。
適当なコーティング材料の例として、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなどのセルロースポリマー;ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、および商品名Eudragit(登録商標)(Roth Pharma、Westerstadt、Germany)で市販されているメタクリル樹脂、ゼイン、シェラック、および多糖類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、コーティング材料は、可塑剤、顔料、着色剤、流動促進剤、安定化剤、細孔形成剤および界面活性剤などの従来の担体を含有してもよい。
薬剤含有錠剤、ビーズ、顆粒または粒子中に存在する任意の医薬的に許容される賦形剤として、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、安定化剤および界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「充填剤」とも呼ばれる希釈剤は、錠剤の圧縮またはビーズおよび顆粒の形成にとって実用的なサイズが提供されるように、固体剤形のバルクを増加させるために典型的に必要である。適当な希釈剤として、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、乳糖、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、アルファ化デンプン、二酸化ケイ素、酸化チタン、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよび粉末糖が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
結合剤は、固体投与製剤に凝集性を付与するために使用され、したがって、錠剤またはビーズまたは顆粒が、投与剤形の形成後に無傷のままであることを保証する。適当な結合剤として、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖類(ショ糖、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス;アラビアゴム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ゴム;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースを含むセルロース;およびビーガム(veegum)、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸およびポリビニルピロリドンなどの合成ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
滑沢剤は、錠剤製造を容易にするために使用される。適当な滑沢剤の例として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、タルクおよび鉱物油が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
崩壊剤は、投与剤形の崩壊または投与後の「分解」を促進するために使用され、一般に、崩壊剤として、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、α化デンプン、粘土、セルロース、アルギニン、ゴムまたは架橋PVP(Polyplasdone XL、GAF Chemical Corp)などの架橋ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
安定剤は、たとえば酸化反応を含む薬物分解反応を阻害または遅延させるために使用される。
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性界面活性剤であってもよい。適当なアニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩および硫酸イオンを含むものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アニオン性界面活性剤の例として、長鎖アルキルスルホン酸塩ナトリウム、カリウム、アンモニウム、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのジアルキルナトリウムスルホサクシネート;ビス-(2-エチルチオキシル)スルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンルアンモニウム、ポリオキシエチレンおよびココナッツアミンなどの第四級アンモニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。非イオン性界面活性剤の例として、エチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルステアレート、ポリグリセリル-4-オレアート、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、PEG-150ラウレート、PEG-400モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウラート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG-1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、POLOXAMER(登録商標)401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、およびポリオキシエチレン水添獣脂アミドが挙げられる。両性界面活性剤の例として、N-ドデシル-β-アラニンナトリウム、N-ラウリル-β-イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセテート(myristoamphoacetate)、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインが挙げられる。
必要に応じて、錠剤、ビーズ顆粒または粒子はまた、湿潤剤または乳化剤、染料、pH緩衝剤および保存剤などの少量の非毒性補助物質を含有してもよい。
3.徐放性投与剤形
「徐放性製剤は、一般に、たとえば、Remington-The science and practice of pharmacy」(20th ed.、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD、2000)に記載されるように、拡散または浸透システムとして製造される。拡散システムは、典型的には、2つのタイプのデバイス、すなわち、リザーバおよびマトリックスからなり、当技術分野で周知であり、記載されている。マトリックスデバイスは、一般に、ゆっくりと溶解するポリマー担体を用いて薬剤を錠剤の形態に圧縮することによって製造される。マトリックスデバイスの製造に使用される3つの主なタイプの材料は、不溶性プラスチック、親水性ポリマーおよび脂肪族化合物である。プラスチックマトリックスとして、メチルアクリレート-メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。親水性ポリマーとして、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボポール934、ポリエチレンオキシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。脂肪族化合物として、カルナウバワックス、グリセリルトリステアレートなどのさまざまなワックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
あるいは、徐放性製剤は、浸透性システムを用いて、または投与剤形に半透性コーティングを適用することによって製造することができる。後者の場合、所望の薬物放出プロファイルは、低透過性および高透過性コーティング材料を適切な割合で組み合わせることによって達成することができる。
上述の異なる薬物放出メカニズムを有するデバイスを、単一または複数の単位を含む最終投与剤形において組み合わせることができる。複数の単位の例として、多層錠剤、錠剤、ビーズ、顆粒などを含むカプセルが挙げられる。
速放性部分は、コーティングまたは圧縮プロセスを用いて徐放性コアの上に速放性層を適用するか、または徐放性および速放性ビーズを含有するカプセルなどの複数単位システムにおいて、徐放性システムに添加されうる。
親水性ポリマーを含有する徐放性錠剤は、直接圧縮法、湿式顆粒化法、または乾式顆粒化法のような当技術分野において一般的に知られている技術によって製造される。それらの製剤は、通常、ポリマー、希釈剤、結合剤、および滑沢剤ならびに活性医薬成分を含む。通常の希釈剤は、多くのさまざまな種類のデンプン、粉末セルロース、特に結晶セルロースおよび微結晶セルロース、フルクトース、マンニトールおよびスクロースなどの糖類、穀粉および類似の食用粉末などの不活性粉末物質を含む。典型的な希釈剤として、たとえば、さまざまなタイプのデンプン、乳糖、マンニトール、カオリン、リン酸カルシウムまたは硫酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩および粉末糖類が挙げられる。粉末セルロース誘導体も有用である。典型的な錠剤結合剤は、デンプン、ゼラチンおよびラクトース、フルクトース、およびグルコースなどの糖類などの物質を含む。アラビアゴム、アルギン酸塩、メチルセルロースおよびポリビニルピロリジンを含む天然および合成ゴムを使用することもできる。ポリエチレングリコール、親水性ポリマー、エチルセルロースおよびワックスもまた結合剤としての役割を果たすことができる。錠剤およびパンチが打ち抜き型に粘着するのを防止するために、錠剤配合物中に滑沢剤が必要である。滑沢剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびカルシウム、ステアリン酸および水添植物油などの滑りやすい固形物から選択される。
ワックス材料を含有する徐放性錠剤は、一般に、直接混合法、凝固法、および水分散法などの当技術分野で公知の方法を用いて製造される。凝固法では、薬物をワックス材料と混合し、噴霧凝固または凝固させ、ふるい分けして処理する。
4.遅延放出投与剤形
遅延放出製剤は、胃の酸性環境に不溶性であり、小腸の中性環境に可溶性であるポリマーのフィルムで固体剤形をコーティングすることによって作成される。
遅延放出投与単位は、たとえば、選択されたコーティング材料で、薬物または薬物含有組成物をコーティングすることによって製造することができる。薬物含有組成物は、たとえば、カプセルに入れるための錠剤、「被覆コア」剤形の内部コアとして使用するための錠剤、または複数の薬物含有ビーズ、粒子または顆粒であって、錠剤またはカプセルのいずれかに組み込まれる。好ましいコーティング材料は、生体分解性、段階的加水分解性、段階的水溶性および/または酵素分解性のポリマーを含み、従来の「腸溶性」ポリマーであり得る。当業者に理解されるように、腸溶性ポリマーは、下部消化管の高pH環境において可溶性になるか、または投与剤形が消化管を通過するにつれてゆっくり分解されるが、酵素分解性ポリマーは、特に結腸では、下部消化管に存在する細菌性酵素によって分解される。遅延放出を成し遂げるための適当なコーティング材料として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテートおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系ポリマー;好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルから形成されるアクリル酸ポリマーおよびコポリマー、およびEUDRAGIT(登録商標).L30D-55およびL100-55(pH 5.5以上で可溶性)、EUDRAGIT(登録商標).L-100(pH 6.0以上で可溶性)、EUDRAGIT(登録商標).S(pH 7.0以上で可溶性、高いエステル化の度合いの結果として)、およびEUDRAGITS(登録商標).NE、RLおよびRS(さまざまな度合いの透過性と拡張性を有する水不溶性ポリマー)などの商品名EUDRAGIT(登録商標)(Rohm Pharma;ドイツ、Westerstadt)で市販されている、その他のメタクリル系樹脂;ポリビニルピロリドン、ビニルアセテート、ビニルアセテートフタレート、ビニルアセテートクロトン酸コポリマー、およびエチレン-ビニルアセテートコポリマーなどのビニルポリマーおよびコポリマー;アゾ系ポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガムなどの酵素分解性ポリマー;ゼインおよびシェラックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さまざまなコーティング材料の組合せを用いてもよい。さまざまなポリマーを用いる多層コーティングを適用してもよい。
特定のコーティング材料の好ましいコーティング重量は、さまざまなコーティング材料の異なる量で製造された錠剤、ビーズおよび顆粒の個々の放出プロファイルを評価することによって、当業者によって容易に決定されうる。それは、臨床研究からのみ決定できる、所望の放出特性を生じる物質、方法および適用形態の組み合わせである。
コーティング組成物は、慣用の添加剤、たとえば可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、流動促進剤などを含んでもよい。可塑剤は、通常、コーティングの脆弱性を減少させるために存在し、一般に、ポリマーの乾燥重量に対して約10重量%~50重量%である。典型的な可塑剤の例として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチルアセチル、ヒマシ油およびアセチル化モノグリセリドが挙げられる。分散液中の粒子を安定化させるために、安定剤を使用することが好ましい。典型的な安定剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびポリビニルピロリドンなどの非イオン性乳化剤である。流動促進剤は、フィルム形成および乾燥中の粘着の影響を低減するために推奨され、一般に、コーティング溶液中のポリマー重量の約25重量%~100重量%である。1つの効果的な流動促進剤はタルクである。ステアリン酸マグネシウムおよびモノステアリン酸グリセロールなどの他の流動促進剤を使用することもできる。二酸化チタンなどの顔料を使用することもできる。少量の消泡剤、たとえば、シリコーン(たとえば、シメチコン)をコーティング組成物に添加することもできる。
製造方法
当業者に理解されるように、関連するテキストおよび文献に記載されているように、さまざまな薬物放出プロファイルを提供する薬物含有錠剤、ビーズ、顆粒または粒子を製造するための多くの方法が利用可能である。このような方法として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:典型的にはポリマー材料を組み込む必要はないが、薬物または薬物含有組成物を適切なコーティング材料で被覆すること、薬物粒子サイズを増大させること、マトリックス内に薬物を置くこと、および適当な錯化剤と薬物の複合体を形成すること。
遅延放出投与単位は、従来の技術、たとえば、従来のコーティングパン、エアレススプレー技術、流動床コーティング装置(Wursterインサートの有無にかかわらず)を用いて遅延放出ポリマーコーティングでコーティングすることができる。錠剤および遅延放出剤形を製造するための材料、装置および方法に関する詳細については、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets、eds. Liebermanら、(New York: Marcel Dekker、Inc.、1989)、and Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、6.sup.th Ed.(Media、PA: Williams & Wilkins、1995)を参照。
徐放性錠剤を製造するための好ましい方法は、直接混合、湿式造粒または乾式造粒プロセスを用いて製造された薬物含有混合物、たとえば顆粒の混合物を圧縮することによるものである。徐放性錠剤は、適切な水溶性滑沢剤を含む湿った材料から開始して、圧縮するよりもむしろ型で成形することもできる。しかしながら、錠剤は、型での成形ではなく圧縮を用いて製造されるのが好ましい。徐放性薬物含有混合物を形成するための好ましい方法は、薬物粒子を、希釈剤(または充填剤)、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、および着色剤などの1種以上の賦形剤と直接混合することである。直接混合の代わりに、薬剤含有混合物は、湿式造粒法または乾式造粒法を用いて製造することができる。活性剤を含有するビーズはまた、多くの従来技術のいずれか1つ、典型的には分散液から出発して製造することができる。たとえば、薬物含有ビーズを製造するための典型的な方法は、活性剤を、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、タルク、金属ステアレート、二酸化ケイ素、可塑剤などの医薬賦形剤を含むコーティング懸濁液または溶液に分散または溶解させることを含む。混和剤は、約60~20メッシュのサイズを有する糖球(またはいわゆる「ノンパレイユ」)などのビーズコアを被覆するために使用される。
薬物ビーズを製造するための別の手順は、微晶質セルロース、ラクトース、セルロース、ポリビニルピロリドン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、崩壊剤などの1種以上の医薬的に許容しうる賦形剤と薬物を混合し、混合物を押し出し、押出物を球状化し、乾燥させ、任意にコーティングして速放性ビーズを形成する。
5.粘膜および肺用製剤
投与
活性剤およびその組成物を、肺または粘膜投与用に製剤化することができる。投与は、肺、鼻、口(舌下、頬側)、膣または直腸粘膜への組成物のデリバリーを含むことができる。特定の実施態様において、組成物は患者への舌下用に製剤され、デリバリーされる。
1つの実施態様において、化合物は、鼻腔内投与または経口吸入などの肺デリバリー用に製剤される。気道は、空気と血流との間の気体の交換に関与する構造である。肺は、ガスの交換が起こる肺胞で最終的に終わる分枝構造である。肺胞表面面積は、呼吸器系において最大であり、薬物吸収が生じる場所である。肺胞は薄い上皮または粘膜層で覆われており、界面活性剤であるリン脂質を分泌する。気道は、中咽頭および喉頭を含む上気道に続く、気管支および細気管支への分岐に続く気管を含む下気道を包含する。上気道および下気道は、誘導気道と呼ばれる。その後、終末細気管支は呼吸気管支に分かれ、最終的な呼吸帯である、肺胞または深部肺に至る。深部肺または肺胞は、全身性ドラッグデリバリーのための吸入治療用エアロゾルの主要な標的である。
低分子量薬物を含む治療用組成物の肺投与が、たとえば、喘息を治療するためのベータアンドロゲン性拮抗薬であることが観察されている。肺で活性である他の治療薬は、全身投与され、肺吸収を介して標的化されている。経鼻デリバリーは、以下の理由により、治療薬の投与のための有望な技術であると考えられている:鼻は、多数の微絨毛による上皮表面の被覆のために薬物吸収のために利用可能な大きな表面積を有する;上皮層は高度に血管新生している;鼻からの静脈血は、全身循環を直接通り、したがって、肝臓における初回通過代謝による薬物の損失を回避する;それは、低用量、治療薬の血中濃度のより迅速な達成、薬理学的活性のより迅速な開始、より低い副作用、立方センチメートルあたりの高い全血流量、多孔性内皮基底膜を提供する;そして、それは用意にアクセス可能である。
本明細書で用いるエアロゾルという用語は、噴射剤を使用して製造されたか否かにかかわらず、溶液であっても懸濁液であってもよい、微粒子の微細な霧の任意の製造物を指す。エアロゾルは、超音波処理または高圧処理などの標準的な技術を用いて製造することができる。
肺製剤のための担体は、乾燥粉末製剤用の担体および溶液としての投与用の担体に分けることができる。気道への治療薬のデリバリー用のエアロゾルは、当技術分野で公知である。上気道を介する投与用に、製剤は、滴剤または噴霧剤としての鼻内投与用の、溶液、たとえば、緩衝または非緩衝の水または等張性生理食塩水、または懸濁液として製剤することができる。好ましくは、このような溶液または懸濁液は、鼻分泌物に対して等張性であり、約pH4.0~約pH7.4またはpH6.0~pH7.0の範囲のほぼ同じpHである。緩衝液は、生理学的に適合性があるべきであり、単に例として、リン酸緩衝液が挙げられる。たとえば、代表的な鼻充血除去剤は、約pH6.2に緩衝されると記載されている。当業者は、鼻および/または上気道投与のための無害な水溶液の適切な生理食塩水含有量およびpHを容易に決定することができる。
好ましくは、水溶液は、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの塩および/または緩衝液を含む生理学的に許容される水溶液、または動物またはヒトへの投与用に許容する任意の他の水溶液である。そのような溶液は、当業者に周知であり、蒸留水、脱イオン水、純粋または超純水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の適切な水性ビヒクルとして、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水性懸濁液は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよびトラガカントゴムなどの懸濁化剤、およびレシチンなどの湿潤剤を含み得る。水性懸濁液に適した防腐剤として、エチルおよびn-プロピル p-ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
もう1つの実施態様において、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、エチルエーテルおよびプロパノールなどの低毒性有機(すなわち、非水)クラス3の残留溶媒である溶媒を製剤に使用することができる。溶媒は、製剤を容易にエアロゾル化するその能力に基づいて選択される。溶媒は、化合物と有害に反応してはならない。化合物を溶解するか、または化合物の懸濁液を形成する、適切な溶媒を使用すべきである。溶媒は、溶液または懸濁液のエアロゾルの形成を可能にするのに十分に揮発性でなければならない。溶液または懸濁液の揮発性を高めるために、必要に応じて、追加の溶媒またはフレオンなどのエアロゾル化剤を添加することができる。
1つの実施態様において、組成物は、少量のポリマー、界面活性剤、または当業者に周知の他の賦形剤を含むことができる。これに関連して、「少量」は、肺における化合物の取り込みに影響を及ぼすかまたは媒介する賦形剤が存在しないこと、および存在する賦形剤が、肺における化合物の取り込みに悪影響を及ぼさない量で存在することを意味する。
乾燥した脂質粉末は、その疎水性ゆえにエタノール中に直接分散されうる。クロロホルムなどの有機溶媒に保存された脂質については、所望の量の溶液をバイアルに入れ、クロロホルムを窒素気流下で蒸発させて、ガラスバイアルの表面上に乾燥薄膜を形成する。フィルムは、エタノールで再構成させると容易に膨潤する。脂質分子を有機溶媒中に完全に分散させるために、懸濁液を超音波処理する。脂質の非水性懸濁液は、再使用可能なPARI LC Jet+ネブライザー(PARI Respiratory Equipment、カリフォルニア州、モンテレー)を用いて、無水エタノール中で製造することもできる。
大きな粒径を有する乾燥粉末製剤(DPF)は、より少ない凝集、より容易なエアロゾル化、および潜在的により少ない食作用などの、改善された流動性特性を有する。吸入療法用の乾燥粉末エアロゾルは、一般に、空気力学的直径における好ましい範囲は、1~10ミクロンであるが、主に5ミクロン未満の範囲の平均直径で製造される。他の可能性のある利点のうち、効率的なエアロゾル化を達成するのを助けるために、大きな「担体」粒子(薬物を含まない)が治療用エアロゾルと一緒にデリバリーされている。
単一および二重エマルション溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純および複合コアセルベーション、界面重合、および当業者に周知の他の方法を用いて、ポリマー粒子を製造することができる。粒子は、当技術分野で公知のマイクロスフェアまたはマイクロカプセルを作製するための方法を用いて作製され得る。好ましい製造方法は、界面活性剤を含む溶液を使用し、所望のサイズの液滴を形成するために噴霧し、そして溶媒を除去することを伴う噴霧乾燥および凍結乾燥による。
粒子は、深部肺または上気道などの気道の選択された領域への局所デリバリーのための適切な材料、表面粗さ、直径およびタップ密度で製造することができる。たとえば、より高密度またはより大きな粒子を上気道デリバリーに使用することができる。同様に、同じまたは異なる活性剤を備えた異なるサイズの粒子の混合物を投与して、1回の投与で肺の異なる領域を標的とすることができる。
6.局所および経皮製剤
経皮製剤を製造することもできる。これらは典型的には、ゲル、軟膏、ローション、スプレーまたはパッチであり、これらはすべて標準技術を用いて製造することができる。経皮製剤は、浸透増強剤を含むことができる。
「ゲル」は、分散相が連続相と結合してゼリーなどの半固体材料を生成するコロイドである。
「オイル」は、少なくとも95重量%の親油性物質を含む組成物である。親油性物質の例として、天然および合成油、脂肪、脂肪酸、レシチン、トリグリセリドおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「連続相」とは、固体が懸濁している液体や他の液体の液滴が分散している液体を意味し、外相と呼ばれることもある。これは、固体粒子または流体粒子がその中に分布しているコロイドの流体相も意味する。連続相が水(または他の親水性溶媒)である場合、水溶性または親水性薬物は(分散されるのではなく)連続相に溶解する。多相配合物(たとえば、エマルション)では、別個の相が連続相中に懸濁または分散される。
「エマルション」は、均一に混合した非混和性成分の混合物を含む組成物である。特定の実施態様において、非混和性成分は、親油性成分および水性成分を含む。エマルションは、第2の液体の本体にわたって、小さな小球に分布する1つの液体の調製物である。分散液は不連続相であり、分散媒は連続相である。油が分散液であり、水溶液が連続相である場合、それは水中油型エマルションとして知られ、一方、水または水溶液が分散相であり、油または油性物質が連続相である場合、 油中水型エマルションとして知られる。油相および水相のいずれかまたは両方は、1つ以上の界面活性剤、乳化剤、乳化安定剤、緩衝剤および他の賦形剤を含有してもよい。好ましい賦形剤として、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤;乳化剤、特に乳化ワックス;および液体非揮発性非水性材料、特にグリコール、たとえばプロピレングリコールが挙げられる。油相は、他の油性の医薬的に認可された賦形剤を含み得る。たとえば、ヒドロキシル化ヒマシ油またはゴマ油などの物質は、界面活性剤または乳化剤として油相に使用され得る。
「エモリエント」は、皮膚を軟化またはなめらかにする外用剤であり、当技術分野で一般的に知られており、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、4th Ed.、Pharmaceutical Press、2003などの大要に記載されている。これらには、限定されないが、アーモンド油、ヒマシ油、セラトニア抽出物、セトステアロイルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、コレステロール、綿実油、シクロメチコン、パルミトステアリン酸エチレングリコール、グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、レシチン、軽油、中鎖トリグリセリド、鉱物油およびラノリンアルコール、ワセリン、ワセリンおよびラノリンアルコール、大豆油、デンプン、ステアリルアルコール、ひまわり油、キシリトールおよびそれらの組み合わせを含む。1つの実施態様において、エモリエントは、ステアリン酸エチルヘキシルおよびパルミチン酸エチルヘキシルである。
「界面活性剤」は、表面張力を低下させることにより、製品の乳化、発泡、分散、濡れ特性を高める界面活性化作用剤である。適当な非イオン性界面活性剤として、乳化ワックス、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸、シクロデキストリン、モノステアリン酸グリセリン、ポロキサマー、ポビドンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施態様において、非イオン性界面活性剤はステアリルアルコールである。
「乳化剤」は、1つの液体をもう1つの液体に懸濁させ、油と水の安定した混合物またはエマルションの形成を促進する界面活性物質である。一般的な乳化剤は、金属石鹸、特定の動植物油、およびさまざまな極性化合物である。適当な乳化剤の例として、アラビアゴム、アニオン性乳化ワックス、ステアリン酸カルシウム、カルボマー、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、パルミトステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ラノリン、含水、ラノリンアルコール、レシチン、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、鉱物油およびラノリンアルコール、一塩基性リン酸ナトリウム、モノエタノールアミン、非イオン性乳化ワックス、オレイン酸、ポロキサマー、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、プロピレングリコールアルギン酸塩、自己乳化モノステアリン酸グリセリル、クエン酸ナトリウム二水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ヒマワリ油、トラガカント、トリエタノールアミン、キサンタンガムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施態様において、乳化剤はステアリン酸グリセロールである。
「ローション」は、低粘度から中粘度の液体製剤である。ローションは、懸濁剤および分散剤の使用によって、分散媒体に可溶性である微細粉末物質を含むことができる。あるいは、ローションは、ビヒクルと不混和性の液体物質を分散相として有することができ、通常、乳化剤または他の適切な安定剤によって分散される。1つの実施態様において、ローションは、100~1000センチストークスの粘度を有するエマルションの形態である。ローションの流動性は、広い表面積にわたって迅速かつ均一な適用を可能にする。ローションは、典型的には皮膚上で乾燥して、皮膚の表面上に医薬成分の薄いコートを残すことを意図する。
「クリーム」とは、「水中油型」または「油中水型」のいずれかの粘稠液体または半固体のエマルションである。クリームは、乳化剤および/または他の安定剤を含有してもよい。1つの実施態様において、製剤は、1000センチストークス以上、典型的には20,000~50,000センチストークスの範囲の粘度を有するクリームの形態である。クリームは、一般に、より広げやすく、除去しやすいので、軟膏に比べて好ましいことが多い。
エマルションは、第2の液体の本体にわたって小さな小球にて分布する1つの液体の調製物である。分散液は不連続相であり、分散媒は連続相である。油が分散液であり、水溶液が連続相である場合、それは水中油型エマルションとして知られ、一方、水または水溶液が分散相であり、油または油性物質が連続相である場合、それは油中水型エマルションとして知られる。油相は、HFA噴射剤などの噴射剤の少なくとも一部から構成されてもよい。油相および水相のいずれかまたは両方は、1つ以上の界面活性剤、乳化剤、乳化安定剤、緩衝剤、およびその他の賦形剤を含み得る。好ましい賦形剤として、界面活性剤、特に非イオン界面活性剤;乳化剤、特に乳化ワックス;および液体不揮発性非水性材料、特にプロピレングリコールなどのグリコールが挙げられる。油相は、他の油性の医薬的に認可された賦形剤を含み得る。たとえば、ヒドロキシル化ヒマシ油またはゴマ油などの物質は、界面活性剤または乳化剤として油相に使用され得る。
乳濁液のサブセットは自己乳化系である。これらのドラッグデリバリーシステムは、典型的には、界面活性剤と油または他の水不混和性液体などの親油性液体との混合物に分散または溶解した薬物からなるカプセル(硬質シェルまたは軟質シェル)である。カプセルが水性環境に曝され、外側のゼラチンシェルが溶解すると、水性媒体とカプセル内容物との間の接触は、瞬時に非常に小さなエマルション液滴を生み出す。これらは、典型的には、ミセルまたはナノ粒子のサイズ範囲内にある。典型的にはエマルション製剤プロセスの場合のように、エマルションを生成するために混合力は必要とされない。
クリームとローションとの間の基本的な相違は、粘度であり、これは、製剤を調製するために使用されるさまざまな油の量/使用および水の割合に従属する。クリームは一般的にローションよりも濃く、さまざまな用途があり、しばしば皮膚において望まれる効果に応じて、より多様な油/バターが使用される。クリーム製剤では、水基剤の割合は約60~75%であり、油基剤は合計の約20~30%であり、乳化剤、保存剤および添加剤である他のパーセンテージとの合計で100%である。
「軟膏」は、軟膏基剤および任意に1種以上の活性剤を含有する半固体製剤である。適当な軟膏基剤の例として、炭化水素(たとえば、ペトロラタム、白色ワセリン、黄色軟膏、および鉱物油);吸収基剤(親水性ペトロラタム、無水ラノリン、ラノリンおよびコールドクリーム);水で除去可能な基剤(たとえば、親水性軟膏);および水溶性基剤(たとえば、ポリエチレングリコール軟膏)が挙げられる。ペーストは、典型的には、固形分の割合がより高いという点で、軟膏とは異なる。ペーストは、典型的には、同じ成分で調製された軟膏よりも吸収性があり、脂っぽさが少ない。
「ゲル」は、液体ビヒクル中に溶解または懸濁した増粘剤またはポリマー材料の作用によって半固体になる、液体ビヒクル中の小分子または大分子の分散体を含有する半固体系である。液体は、親油性成分、水性成分またはその両方を含むことができる。いくつかのエマルションはゲルであってもよく、そうでない場合、ゲル成分を含んでいてもよい。しかしながら、いくつかのゲルは、混和しない成分の均質な混合物を含まないので、エマルションではない。
適当なゲル化剤として、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースなどの変性セルロース;カルボポールホモポリマーおよびコポリマー;およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。液体ビヒクル中の適当な溶媒として、ジグリコールモノエチルエーテル;プロピレングリコールなどのアルキレングリコール;ジメチルイソソルビド;イソプロピルアルコールおよびエタノールなどのアルコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。溶媒は、典型的には、薬物を溶解する能力について選択される。製剤の皮膚感触および/またはエモリエント性を改善する他の添加剤を組み込むこともできる。
このような添加剤の例として、ミリスチン酸イソプロピル、酢酸エチル、C12~C15アルキル安息香酸塩、鉱物油、スクワラン、シクロメチコン、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
発泡体は、気体状噴射剤と組み合わせたエマルジョンからなる。気体状推進剤は、主にハイドロフルオロアルカン(HFA)からなる。適当な噴射剤として、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)などのHFAが挙げられるが、現在承認されているか、または医療用途のために承認される可能性がある、これらと他のHFAとの混合物および混和物が適当である。噴射剤が、噴霧中に可燃性または爆発性の蒸気を発生させうる炭化水素噴射剤ではないのが好ましい。さらに、組成物が、使用中に可燃性または爆発性の蒸気を生成し得る揮発性アルコールを含まないのが好ましい。
緩衝液は、組成物のpHをコントロールするために使用される。緩衝液が、組成物をpH約4~pH約7.5、より好ましくはpH約4~pH約7、最も好ましくはpH約5~pH約7に緩衝するのが好ましい。好ましい実施態様において、緩衝液はトリエタノールアミンである。
保存剤を用いて、真菌および微生物の増殖を防ぐことができる。適当な抗真菌剤および抗菌剤として、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェニールエールアルコール、チメロサールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
製剤に添加することができるさらなる作用剤として、浸透強化剤が挙げられる。一部の実施態様において、浸透強化剤は、薬物の溶解性を増加させるか、特に角質層を横切って皮膚全体にわたる薬物の経皮デリバリーを改善するか、またはそれらの組み合わせである。一部の浸透強化剤は、皮膚刺激、皮膚毒性および真皮アレルギーを引き起こす。しかしながら、より一般的に使用されるものとして、尿素、(カルボニルジアミド)、イミド尿素、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1-ドデカアザシクロヘプタン-2-オン、チオグリコール酸カルシウム、2-ピロリドン、N,N-ジエチル-m-トルアミド、メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,ビニル,グリセリルモノオレエートなどのオレイン酸およびそのエステル誘導体、モノラウリン酸ソルビタンおよびモノオレイン酸ソルビタンなどのソルビタンエステル、ラウリン酸イソプロピル,ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル,モノラウリン酸プロピレングリコール,モノオレイン酸プロピレングリコールなどのその他の脂肪酸エステル、および
BRIJ(登録商標)76(ステアリルポリ(10オキシエチレンエーテル)、BRIJ(登録商標)78(ステアリルポリ(20)オキシエレチンエーテル)、BRIJ(登録商標)96(オレイルポリ(10)オキシエチレンエーテル)およびBRIJ(登録商標)721(ステアリルポリ(21)オキシエチレンエーテル)(ICI Americas Inc. Corp.)が挙げられる。化学的浸透および経皮ドラッグデリバリーの増強方法は、Inayatraら、Tropical Journal of Pharmaceutical Research、8(2):173-179(2009)およびFoxら、Molecules、16:10507-10540(2011)に記載されている。一部の実施態様において、浸透強化剤は、エタノールなどのアルコール、または本明細書に開示されるか、または当技術分野で公知である他のものであるか、またはそれを包含する。
経皮経路による薬剤のデリバリーは長年にわたって知られている。経口、静脈内、筋肉内などの他のタイプのドラッグデリバリーと比較した経皮ドラッグデリバリーの利点として、肝初回通過代謝の回避、システムの除去による投与中止能力、経口投与剤形の通常の消化管通過よりも長時間のドラッグデリバリー制御能力、および生物学的バリアの特性を吸収に変更する能力が挙げられる。
制御放出経皮デバイスの効果は、一般的に、1日、数日、または1週間という長期間にわたる皮膚への薬物の既知のフラックスのデリバリーに依存する。薬物フラックスを調節するために2つのメカニズムが使用される:薬物は、薬物がそれを通って拡散する合成膜によって着用者の皮膚から分離される薬物リザーバ内に含まれる;または薬物は、薬物がそれを通って皮膚に拡散するポリマーマトリックス内に溶解または懸濁して保持される。リザーバを組み込んでいるデバイスは、過剰の溶解していない薬物がリザーバに残っている限り、膜を横切って安定した薬物フラックスをデリバリーする;マトリックスまたはモノリシックデバイスは、典型的には、皮膚に近いマトリックス層が薬剤を使い果たすので、時間とともに薬物フラックスが低下することを特徴とする。通常、リザーバパッチは、放出を制御することができる投薬のリザーバを覆う多孔質膜を含み、ポリマーマトリックス(たとえば、接着剤層)に埋め込まれた薬物の薄い層を熱溶融させながら、マトリックスまたはモノリシックデバイスからの薬物の放出を制御することができる。したがって、活性剤は、必ずしも制御放出製剤でなくとも、制御された様式でパッチから放出され得る。
パッチは、貯蔵中にパッチを保護し、使用前に除去されるライナー;剥離ライナーと直接接触する薬物または薬物溶液;パッチを皮膚に接着させるとともにパッチの成分を接着させるように働く接着剤;他の層を分離し、リザーバおよび多層パッチなどからの薬物の放出を制御することができる1つ以上の膜;およびパッチを外部環境から保護する裏張りを含むことができる。
経皮パッチの一般的なタイプとして、皮膚に対するシステム全体とともに、接着剤層が、薬物を含有し、パッチの様々な層を一緒に接着するのに役立つが、薬物の放出にも関与する、単層の薬物溶解型接着剤パッチ;単層の薬物溶解型接着剤パッチと同様であるが、たとえば、薬物の即時放出のための1つの層、およびリザーバからの薬物の制御放出のためのもう1つの層などの複数の層を含む多層の薬物溶解型接着剤パッチ;薬物層が、接着層によって分離された薬物溶液または懸濁液を含む液体区画であることを特徴とするリザーバパッチ;薬物溶液または懸濁液を含む半固体マトリックスの薬物層が、前記粘着剤層に囲まれており、接着剤層によって部分的に覆われているマトリックスパッチ;および、接着剤層が、様々な層を一緒に接着するのに役立つだけでなく、蒸気を放出することも特徴とする蒸気パッチが挙げられるが、これらに限定されるものではない。経皮パッチの製造方法は、米国特許第6,461,644、6,676,961、5,985,311、および5,948,433号に開示されている。
特に好ましい実施態様において、THIPまたはその誘導体は、経皮デリバリー用に製剤され、経皮パッチを用いて投与される。一部の実施態様において、製剤、パッチ、またはその両方は、THIPまたはその誘導体の持続放出用に設計される。例示的な症状、薬理学的および生理学的効果を、以下に、より詳細に論じる。
III.二次性不眠症を治療する方法
二次性不眠症を治療する方法を提供する。方法は、睡眠中断を減少させ、徐波睡眠(SWS)および/または徐波活動(SWA)を増加させ、睡眠構築を正常化し、二次性不眠症を減少させ、ノンレム(NREM)睡眠を増加させ、睡眠の連続性を高め、NREM内のデルタ活動を増強し、総睡眠時間(TST)を増加または改善し、睡眠効率を向上または改善し、総覚醒時間(TAA)を減少させ、覚醒回数(NWA)を減少させ、持続睡眠潜時(LPS)を短縮し、睡眠開始後の覚醒(WASO)を減少させるため、またはそれらの任意の組み合わせのために、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体を患者に投与することを含みうる。好ましい実施態様において、REM睡眠は実質的に減少されない。一部の実施態様において、方法は、神経変性疾患または中枢神経系疾患または障害の1つ以上の他の臨床症状を軽減、遅延、または予防するのに有効である。
A.治療プロトコル
THIPおよびその誘導体を用いて二次性不眠症を治療することができることが発見された。二次性不眠症は、感情的、神経学的またはその他の医学的または睡眠障害などの、もう1つの問題である症状または副作用である。したがって、治療される患者は、典型的に、不眠症および不眠症の原因となる基礎疾患、障害または状態の両方に苦しんでいる。
不眠症の原因となる情動障害として、うつ病、不安症および外傷後ストレス障害が挙げられる。関節炎および頭痛などの慢性疼痛を引き起こす状態;喘息や心不全などの呼吸困難な状態;過活動甲状腺;胸焼けなどの胃腸障害;脳卒中;むずむず脚および睡眠関連呼吸障害などの睡眠障害;更年期障害およびホットフラッシュ;薬物療法、たとえば、テオフィリンなどの喘息薬、ならびにいくつかのアレルギー薬および風邪薬、ベータ遮断薬および心臓病を治療するために使用される医薬は、二次性不眠症を引き起こしうる。カフェインおよびその他の興奮剤、タバコおよびその他のニコチン製品、アルコールおよび他の鎮静剤の使用は、二次性不眠症をもたらす可能性がある。
好ましい実施態様において、二次性不眠症は、以下に、より詳細に記載されるような神経学的疾患または障害によって引き起こされる。
1.睡眠構造
一部の実施態様において、患者は、徐波睡眠の低下、睡眠構築の中断を有しているか、またはそれを発症する危険にあり、あるいは徐波睡眠の増加の利益を受ける。したがって、一部の実施態様において、組成物は、1つ以上の睡眠関連症状を軽減、緩和、または予防するために有効量で投与される。好ましい実施態様において、THIPまたはその誘導体は、睡眠中断を減少させ、徐波睡眠(SWS)および/または徐波活動(SWA)を増加させ、睡眠構築を正常化し、二次性不眠症を減少させ、ノンレム(NREM)睡眠を増加させ、睡眠の連続性を高め、NREM内のデルタ活動を増強し、総睡眠時間(TST)を増加または改善し、睡眠効率を向上または改善し、総覚醒時間(TAA)を減少させ、覚醒回数(NWA)を減少させ、持続睡眠潜時(LPS)を短縮し、睡眠開始後の覚醒(WASO)を減少させるため、またはそれらの任意の組み合わせのために、有効量で患者に投与される。好ましい実施態様において、レム睡眠は実質的に減少されない。
睡眠は、主に視床下部、脳幹および視床に位置する神経系の複雑なセットによって生成および調節される能動的プロセスである。睡眠は、睡眠および覚醒状態を制御する脳領域の病変、痛みを引き起こす病変または病気、運動の減少および治療などのメカニズムによる多くの神経学的疾患において変化する。日中の過度の眠気(EDS)、睡眠の断片化、不眠症、睡眠呼吸障害(SDB)、急速眼球運動(REM)睡眠行動障害などの夜行性行動現象または夜間発作、むずむず脚症候群、および周期性四肢運動障害(PLMS)は、神経障害における一般的な症状および所見である(Jennumら、「CHAPTER 39: Sleep disorders in neurodegenerative disorders and stroke」、European Handbook of Neurological Management、Volume 1、2nd Edition(Ed. Gilhusら)Blackwell Publishing Ltd. 2011)。一部の場合には、睡眠障害は、神経疾患、特に日中の機能、生活の質、罹患率および死亡率に関連する神経疾患において、疾患経過に先行して影響を及ぼす。
ハンチントン病(HD)を有する患者は、睡眠および日常または「概日」リズムの両方での制御における異常に苦しむ可能性がある証拠も出現している(Morton、「HDBuzz Special Feature: Huntington's disease and sleep」HDbuzz.net/115、(ed.、Wild)、February 06、2013)。したがって、睡眠と概日機能障害はHDの症状である。不随意運動の減少におけるハンチントン病患者の他の睡眠関連症状、すなわち、入眠潜時の増加をともなう乱れた睡眠パターン、減少した睡眠効率、頻繁な夜間覚醒、および少ない徐波睡眠をともなうより長時間の覚醒時間などの睡眠障害は、睡眠中に減少する傾向がある。これらの異常は、病気の持続時間、臨床症状の重症度、および尾状核の萎縮の程度と部分的に相関しうる。ハンチントン病の睡眠表現型には、不眠症、進行性睡眠相、周期的脚運動、REM睡眠行動障害(RBD)およびREM睡眠の減少も含まれうる。レム睡眠の減少は、舞踏病の前に起こり、突然変異ハンチントンは、睡眠中のレム睡眠および運動制御に影響を及ぼすことがある。
睡眠覚醒の問題は、認識されないことが多いが、頻繁であり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の合併症である。不眠症、睡眠呼吸障害およびむずむず脚症候群などの睡眠障害は、研究の数が限られており、これまで調査された集団が少ないのにもかかわらず、すべてのALS患者において報告されている(Lo Cocoら、Neurodegenerative Disease Management、2(3):315-324(2012))。ALSの予後は呼吸筋力と密接に関連しており、睡眠中の夜間突然死が頻繁に起こる。低い夜間酸素飽和度などの呼吸指標は予後不良と関連している。横隔膜の関与を有する患者では、レム睡眠が有意に減少する可能性がある。認知症の患者は、しばしば、メラトニンおよび光線療法で治療されている概日障害を示す。
睡眠および概日機能障害は、神経変性疾患の他の症状によって引き起こされうるか、または疾患とは独立した要因によって引き起こされうる。睡眠および概日機能障害は、たとえば、あまりにも遅く起きる、早く起きる、睡眠を妨げる薬物を服用する、および/または仕事など深夜の活動、テレビなどによって過度の刺激を生じるなどの、個人的な習慣、ライフスタイルまたは環境によって引き起こされうる。神経性疾患患者の睡眠および概日障害は、覚醒や不安などの睡眠不足により悪化する病気の症状に寄与する可能性があり、日中の機能、生活の質、罹患率および死亡率に関与する疾患経過に先立って影響を及ぼす可能性がある。たとえば、睡眠障害は、ALSにおける疾患の進行とともに徐々に悪化することが報告されており、疾患の重症度と神経変性プロセスとの間の関係が示されている。さらに、神経変性疾患を有する患者は、健常者が頼りとする、睡眠不足に対処するための同じ神経保護を持たない可能性がある。
睡眠不足は、不安症、うつ病、痛み、窒息、唾液分泌、線維束性攣縮、けいれん、夜間頻尿、ベッドで快適性を得、自由に動くことができないなどのいくつかの障害の結果でもある。睡眠障害は、過度の日中傾眠、疲労、認知障害、生活の質および生存の低下などの、患者に多くの反映もたらす可能性がある。(Lo Cocoら、Neurodegenerative Disease Management、2(3):315-324(2012))。
概日リズムと睡眠はしばしば互換的に使用されるが、これらの用語は、2つの異なるプロセスである。概日リズムは、およそ24時間ごとに変化する生物学的プロセスである。それらは、視交叉上核またはSCNと呼ばれる脳の小さな部分によって調整され、いつ起きるか、いつ寝るかなどの身体活動を調節する。睡眠は概日行動であるが、SCNの影響を受ける多くの概日行動の1つに過ぎない。その他のものとして、心拍数、ホルモン分泌、血圧および体温が挙げられる。
夜間には、深い修復睡眠(深い睡眠)とより敏感な段階(ノンREMまたはNREMと総称される)と夢見(レム睡眠)の間を行き来する予測可能なパターンに従う。具体的には、睡眠サイクルは、段階W(覚醒)、N1(NREM1)、N2(NREM2)、N3(NREM3)およびR(REM)を含む。睡眠段階は、患者の脳電気活動(たとえば、脳波)を監視することによって同定することができる。
各段階の基準および睡眠中の患者の段階を決定する方法および患者の睡眠構築をプロファイリングする方法は、Iberら、「The AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events、American Academy of Sleep Medicine」、pg. 1-57(2007)に記載されており、この文献は、その全体において参照することによって本明細書に援用される
REM睡眠とノンレム睡眠の段階が、一緒に、完全睡眠サイクルを形成する。典型的には、各サイクルは約90分持続し、典型的な夜間睡眠の過程では4~6回繰り返される。正常な成人は、総睡眠時間の約50%を段階2の睡眠で、20%をレム睡眠で、深い睡眠を含む残りの段階で30%を費やす。たとえば、典型的な第1の睡眠サイクルN1は、低電圧の混合周波数パターンを特徴とし、約1~約10分間持続しうる。次に来る第2段階N2は、脳波記録において睡眠紡錘波および/またはK複合波を特徴とする。N2は、一般に約10~約25分間持続する。N2睡眠が進行するにつれて、NREM睡眠の第3段階であるN3の特徴的な高電圧の徐波活動が徐々に現れる。一般的に約20~40分間続くこの段階は、「徐波」、「デルタ」または「深い」睡眠と呼ばれる。睡眠のN3段階に続いて、一連の身体運動が、通常、軽いNREM睡眠段階への「上昇」の前兆となる。典型的には、N2の5~10分間の期間が最初のREM睡眠エピソードに先行する。レム睡眠エピソードは、最初は1~5分間しか持続しえないが、一般的に夜間には長くなる。典型的な夜の間、N3睡眠は第1の睡眠よりも第2の睡眠よりも少ない時間を占め、後のサイクルからは完全に消滅することがある。最初のNREM-REM睡眠サイクルの平均長さは70~100分間であり、2番目以降のサイクルの平均長さは約90~120分である。REM睡眠は、典型的な健康な成人の全睡眠の約20~25%を占める(「Natural Patterns of Sleep」 healthysleep.med.harvard.edu/healthy/science/what/sleep-patterns-rem-nrem、A resource from the Division of Sleep Medicine at Harvard Medical School(2007))。
睡眠サイクル単独の段階の持続時間または段階の循環との組み合わせを、被験者の睡眠構築と呼ぶことができる。一部の実施態様において、神経変性疾患患者は、対照または基準値と比較して中断された睡眠構築、たとえば、1つ以上の睡眠サイクルの持続時間の変化、睡眠サイクルの持続時間または回数の変化、またはそれらの任意の組み合わせを有する。この場合の対照値または基準値は、たとえば、段階の平均の正常持続時間、あるいは中断されたかまたは乱れた睡眠構築に苦しんでいない被験者(たとえば、健常者)における平均の正常持続時間またはサイクル数であり得る。
したがって、一部の実施態様では、THIPまたはその誘導体は、たとえば患者の睡眠構築の1つ以上の態様を正常な被験者の睡眠構築の配列により近づけることによって患者の睡眠構築を正常化するために有効量で投与される。
徐波睡眠(SWS)は、しばしば深い睡眠と呼ばれ、N3のノンレム睡眠からなる。睡眠段階3~4を組み合わせた1968年の分類は、段階N3として2007年に再分類された。徐波(デルタ)睡眠の20%以上からなる時期(30秒間の睡眠)は、今や段階3であると考えられている(Gazzaniga、Just the Facts 101、e-Study Guide for: Psychological Science、Content Technologies Inc.、2014)。徐波睡眠は新しい記憶を整理する上で重要であると考えられており、ヒトの睡眠不足研究では、とりわけ徐波睡眠の重要な機能が脳の日常活動からの回復を可能にする可能性があることが示されている。
迅速な眼球運動(REM)睡眠は、眼の急速でランダムな動きを特徴とする睡眠の段階であり、2つのカテゴリーに分類することができる:緊張性および相動性。レム睡眠の基準には、睡眠ポリグラフで特定することができる特徴である、迅速な眼球運動、低筋緊張および迅速で低電圧のEEGが含まれる。レム睡眠は、典型的には、夜間睡眠の約90~120分間、総睡眠の20~25%を占める。
THIPまたはその誘導体またはそれらの組み合わせは、患者の睡眠中の1つ以上のN3段階の長さを増加させるために有効量で被験体に投与され、患者の睡眠中のN3段階の数を増加させる。一部の実施態様において、組成物は、睡眠期間(たとえば、一晩)にわたって、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも60分間、少なくとも75分間、少なくとも90分間、または少なくとも120分間まで、徐波睡眠を増加させる。一部の実施態様では、組成物は患者における徐波睡眠の量を2倍以上にする。
2.投与量および投与
開示する二次性不眠症を治療する方法は、典型的には、それを必要とする患者に、有効量のTHIPまたはその誘導体を投与することを含み、好ましくは、上記でより詳細に考察される医学的に許容される組成物である。
有効量または治療有効量は、典型的に、睡眠中断を減少させ、徐波睡眠(SWS)および/または徐波活動(SWA)を増加させ、睡眠構築を正常化し、二次性不眠症を減少させ、ノンレム(NREM)睡眠を増加させ、睡眠の連続性を高め、NREM内のデルタ活動を増強し、総睡眠時間(TST)を増加または改善し、睡眠効率を向上または改善し、総覚醒時間(TAA)を減少させ、覚醒回数(NWA)を減少させ、持続睡眠潜時(LPS)を短縮し、睡眠開始後の覚醒(WASO)を減少させるため、またはそれらの任意の組み合わせのために十分な用量である。好ましい実施態様において、レム睡眠は実質的に減少しない。
一部の実施態様では、方法は、神経変性疾患または障害を有する患者における1つ以上の神経精神医学的罹患を減少させるか、または防止する。したがって、量は、神経変性疾患または中枢神経系障害の1つ以上の症状を治療または予防するため、またはそうでない場合、所望の薬理学的および/または生理学的効果を提供するために有効でありうる。
正確な投与量は、患者に依存する変数(たとえば、年齢、免疫系の健康状態、臨床症状など)などのさまざまな要因によって変化する。例示的な投与量、症状、薬理学的および生理学的効果を、以下により詳細に論じる。
ガボキサドールが被験者の睡眠改善に及ぼす影響についての研究は、Walshら、Journal of Clinical Sleep Medicine、5(2):S27-S32(2009)およびDeaconら、Sleep、30(3):281-287 (2007年)において、考察され、概観される。たとえば、15mgのガボキサドールは、睡眠制限下の被験者において、プラセボ群と比較して有意に多い段階4の睡眠およびSWS(ステージ3ではなかったが)をもたらした(ガボキサドールにより、プラセボと比較して平均21.8分以上のSWSが、4つの睡眠制限夜にわたって見られた)(両者ともp<0.001)、Walshら、Journal of Clinical Sleep Medicine、5(2):S27-S32(2009)。ガボキサドールはまた、段階1の睡眠、レム睡眠、および覚醒または段階1の睡眠への移行が、プラセボと比較して小さいが有意な減少をもたらした。
もう1つの用量反応試験では、4時間の習慣的睡眠時間によって一時的睡眠障害を生じる109人の健常者に、5、10または15mgガボキサドールを投与した(Walshら、Sleep、30:593-602(2007))。研究結果は、ガボキサドールがプラセボと比較してSWSにおいて約5~22分間の用量関連性の増加を生じたことを示す。すべての用量において、プラセボと比較して、TSTは約30分間(p<0.001)有意に増加し、WASOは約17~20分間(p<0.05)減少した。プラセボと比較して、ガボキサドールは、睡眠の質の主観的測度も改善した。
10および20mgのガボキサドールを投与された40人の一次性不眠症の患者の用量関連試験でも、プラセボ(10mg:p<0.01;20mg:p<0.001)と比較してSWSの増加が報告された(Lundahlら、Psychopharmacology(Berl) 195:139-46(2007)。ガボキサドールは、20mgの投与量で有意にWASOを減少させ(p<0.01)、ガボキサドールは、両用量の投与でNASOを有意に低下させた(p<0.001)。ガボキサドールは、20mgの投与量でも、TSTを有意に増加させた(p<0.05)。
26人の一次性不眠症に対するガボキサドールの効果についてのもう1つの研究では、ステージ1、ステージ2、またはレム睡眠に有意に影響を及ぼすことなく、15 mgの用量がSWSを増強することが示された(Deaconら、Sleep、30(3):281-287(2007))。5 mgおよび15 mgの用量でのガボキサドールは、TSTを有意に改善した(p<0.05)。この結果はまた、WASOが改善されたことも示しているが、統計的有意性は5 mg用量でのみ達成された。ガボキサドールの投与量15mgでも持続睡眠潜時は有意に減少した(p<0.05)。
さらに、前臨床試験および健常若年者および高齢者の研究では、ガボキサドールが、NREM睡眠を増加させ、睡眠の持続性を増加させ、NREM睡眠中のデルタ活性を増強し、REM睡眠を抑制せずにSWS/SWAを増加させることが見い出された(Lancelら、Neuroreport、7:2241-5(1996)、Lancelら、Sleep、20:1099-104(1997)、Faulhaberら、Psychopharmacology(Berl)、130:285-91(1997)、Lancel、Sleep、;22:33-42(1999)、Lancelら、Am J Physiol Endocrinol Metab、281:E130-7(2001)、Mathiasら、Psychopharmacology(Berl)、157:299-304(2001)、Mathiasら、Neuropsychopharmacology、30:833-41(2005))。
好ましい実施態様において、THIPまたはその誘導体は、患者の徐波睡眠を増加させるために有効量で患者に投与される。
特に好ましい実施態様として、徐放用の製剤が挙げられる。たとえば、製剤は、1日1回またはそれ以下の投与に適することができる。一部の実施態様において、組成物は、24~48時間ごとに1回のみ患者に投与される。一部の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、睡眠前の夜に投与される。他の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、朝または少なくとも睡眠の数時間前に投与される。
組成物の投与のタイミングは、使用される製剤および/または投与経路に依存する。一部の実施態様において、組成物の投与は、薬物動態定常状態が達成される長期治療計画として与えられる。経口または非経口投与のための投薬は、特定の睡眠期間に直接関連して、たとえば睡眠開始の10分から3時間前に投与されてもよい。したがって、組成物は、特定の睡眠期間に直接関連して、たとえば睡眠開始の5分~5時間前、睡眠開始の10分~3時間前などに投与することができる。
好ましい投与経路は経皮であり、たとえば、患者の皮膚と接触する経皮パッチまたはゲルである。特定の実施態様において、患者が睡眠する前(たとえば、夜間)に、経皮パッチを用いて、経皮製剤を患者に投与する。もう1つの特定の実施態様において、朝に、経皮パッチを用いて、経皮製剤を患者に投与する。以下に、さらに詳細に説明するように、一部の方法では、神経変性疾患または中枢神経系障害を有する患者に、患者における睡眠障害または徐波睡眠を低下させるのに有効な量のTHIPまたはその誘導体を経皮的に投与する。
一般的には、ほんの一例として、開示する方法において有用な投与剤形は、好ましい用量の特定の例である、0.1~1,000 mg、1~200 mg、5~175 mg、7.5~150 mg、または10~125 mg、または12.5~150 mg、または15~125 mg、または17.5~100 mg、または20~75 mg、または22.5~60 mg、または25~50 mgの範囲の用量、および1 mg、5 mg、10 mg、15 mg、20 mg、25 mg、30 mg、35 mg、40 mg、45 mg、50 mg、55 mg、60 mg、75 mg、および100 mgの用量を含みうる。典型的には、そのような用量は、1日1回、2回、または3回、または1日おきにヒトに投与される。
典型的な経口投与剤形が、約2.5mg~約30mgのTHIPを含むのが好ましい。好ましくは、THIPが、結晶形であるのが好ましい。医薬のさらなる実施態様は、2.5 mg~20 mg、such as 2.5 mg~4 mg、4 mg~6 mg、6 mg~8 mg、8 mg~10 mg、10 mg~12 mg、12 mg~14 mg、14 mg~16 mg、16 mg~18 mg、または18 mg~20 mg、たとえば、2.5 mg、5 mg、7.5 mg、10 mg、12.5 mg、15 mg、17.5 mg、または20 mgの有効量のTHIPを含む。典型的な実施態様は、約5mg~約20mgの、THIPの塩酸塩などの結晶性のTHIPである。典型的には、そのような用量は、1日1回、2回、または3回、または1日おきにヒトに投与される。一部の実施態様において、24時間で患者に投与される総量は、1mg~50mgである。一部の実施態様において、患者は低用量にて開始され、薬物において漸増される用量は、患者にとって十分に耐容性がある。
健常者に経口投与されると、ガボキサドールは急速に吸収され(30~60分のtmax)、除去される(1.5時間のt1/2)(Deaconら、Sleep、30(3):281-287(2007))。用量の95%以上が尿中に排泄され、ほとんど変化せず、有意な量において形成された唯一の代謝産物は、グルクロニド結合体である。
一部の実施態様において、患者における組成物の効果を対照と比較する。たとえば、特定の症状、薬理学的または生理学的指標における組成物の効果を、未治療の患者、または治療前の患者の状態と比較することができる。一部の実施態様において、症状、薬理学的または生理学的指標は、治療前の患者において測定され、そして治療開始後1回以上測定される。一部の実施態様において、対照は、治療される疾患または状態を有さない1人以上の被験者(たとえば、健常者)における症状、薬理学的または生理学的指標を測定することに基づいて決定される参照レベルまたは平均である。一部の実施態様において、治療の効果は、本明細書で論じられるものの1つなどの当技術分野で公知の従来の治療と比較される。
3.静脈内デリバリー
一部の実施態様において、組成物は、静脈内注射または点滴によって投与される。経口投与される場合、ガボキサドールの腸から門脈循環への輸送は、輸送体PAT1を介して行われる。プロリン、トリプトファン、アラニン、およびグリシンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではないPAT1輸送体のアミノ酸基質は食物中に存在するので、経口投与中のそれらの存在は、ガボキサドールの吸収に影響を及ぼしうる。さらに詳しくは、L-トリプトファンなどのPAT1阻害剤は、ガボキサドールの吸収速度定数kaおよびCmaxを減少させ、Tmaxを増加させることができる(たとえば、Larsenら、Br. J. Pharmacol.、157(8):1380-1389(2009)およびWO 2009/056146を参照)。したがって、経口経路によるガボキサドール摂取の有意な変動ゆえに、静脈内投与は、経口投与よりも血漿レベル(および脳レベル)の制御を改善することができると考えられる。さらに、素因のある個体におけるガボキサドールの高いピーク濃度は、幻覚を引き起こし、一部の患者への薬物投与の中止をもたらしている。静脈内デリバリーは、高いピークCmaxが観察されないことを確実にする用量を漸増する能力を提供し、この潜在的な有害事象を回避するのに役立つ。
一部の実施態様において、静脈内投与の使用は、組成物が、たとえば経口的に送達される場合よりも低用量で送達されることを可能にする。IVデリバリーにとって好ましい速度は、0.001mg/kg/時間~1mg/kg/時間である。治療は、数分、数時間、または数日のコースで投与することができる。全体としての1日の投与量などの用量は、上記で考察される。特定の実施態様において、1回の治療は、それを必要とする患者に約0.001mg~約30mgのTHIPまたはその誘導体を静脈内投与することを含む。一部の実施態様において、投与は、約3~約5時間の間隔で少なくとも1回繰り返される。一部の実施態様において、投与は、24時間の期間中に少なくとも6回繰り返される。さまざまな実施態様において、投与は、24時間の期間中に3~8回(たとえば、3回、4回、5回、6回、7回、または8回)繰り返され、約0.001mg~約 30mgのTHIPまたはその誘導体が、24時間にわたって送達される。投薬計画も上記で考察される。たとえば、一部の実施態様において、1回の治療を、1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上の日数、数週間、または数か月間隔で繰り返すことができる。静脈内投与は、用量漸増に関連する副作用をモニターすることが容易であり、血漿濃度を制御する能力を改善し、用量を漸増する能力を含む。したがって、一部の実施態様において、静脈内投薬計画は、用量が患者を治療するのに有効になるまで、好ましくは望ましくない副作用を誘発することなく、24時間以内にTHIまたはその誘導体の用量を0.001mgから約30mgへ漸増することを含む。静脈内のプロトコルは、当技術分野で公知のものから適合させることもできる。たとえば、米国出願公開第2009/0143474号を参照されたい。
B.治療される状態、症状、患者および疾患
開示する組成物は、典型的には、神経変性疾患または障害または中枢神経系障害、特に患者に二次性不眠症をもたらすものを有する患者に投与される。神経変性は、ニューロンの死などのニューロンの構造または機能の進行性喪失を意味する。例示的な疾患および障害を以下に示す。一部の実施態様において、組成物は、神経変性疾患または障害を有していない患者に投与される。
神経変性、およびその疾患および障害は、遺伝子突然変異または突然変異;タンパク質ミスフォールディング;調節不全タンパク質分解経路、膜損傷、ミトコンドリア機能不全、または軸索輸送における欠陥などの細胞内メカニズム;アポトーシス、自食作用、細胞質細胞死などのプログラムされた細胞死メカニズムにおける欠陥;およびそれらの組合せによって引き起こされうる。神経変性障害に共通するより具体的なメカニズムとして、たとえば、酸化ストレス、ミトコンドリア機能不全、興奮毒性、炎症性変化、鉄蓄積、および/またはタンパク質凝集が挙げられる。
1.症状
一部の実施態様において、開示する組成物は、神経変性疾患の1つ以上の分子または臨床症状、または神経変性を引き起こす1つ以上のメカニズムを低減化または防止するために有効量で、それを必要とする患者に投与される。神経変性疾患の症状は、当技術分野では公知であり、疾患によって異なる。一部の実施態様において、疾患は、以下の症状または疾患の1つまたは任意の組み合わせを示すか、またはそれによって特徴付けられる:ストレス、不安症、季節性うつ病、不眠症および疲労、統合失調症、パニック発作、憂鬱、食欲の調節における機能不全、不眠症、精神病性障害、てんかん、老人性認知症、正常または病的老化に起因する種々の障害、片頭痛、記憶喪失、脳循環障害、心臓血管の病状、消化器系の病状、食欲障害による疲労、肥満、疼痛、精神病性障害、糖尿病、老人性認知症、または性機能障害が挙げられる。一部の実施態様において、患者は、上記の症状の1つ以上を示さない。
一部の実施態様において、患者は、疾患の臨床的(たとえば、身体的)な症状を示すことにより、神経保護を必要とする状態であることを医学的に診断されている。上記のように、一部の患者において、睡眠関連障害の出現は、疾患の臨床診断に先行する。したがって、一部の実施態様において、本明細書に開示する化合物または組成物は、疾患または状態の臨床診断に先立って投与される。一部の実施態様において、遺伝子検査は、患者が、神経変性疾患または中枢神経系障害に関連する1つ以上の遺伝的変異を有することを示す。
神経変性疾患は、通常、高齢者においてより一般的である。したがって、一部の実施態様において、患者は、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100歳以上である。
2.治療される疾患
本明細書に開示する方法は、神経変性疾患または障害を有する患者を治療するために使用されうる。例示的神経変性疾患として、パーキンソン病(PD)およびPD関連障害、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)および他の認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、HIV関連認知障害、軽度認知障害、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、フリードライヒ失調症、レヴィー小体病、アルパース病、バタン病、脳・眼・顔・骨格症候群、大脳皮質基底核変性症、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー症候群、クール、リー病、単子葉筋萎縮症、多系統萎縮症、起立性低血圧による多系統萎縮(Shy-Drager症候群)、多発性硬化症(MS)、脳の鉄蓄積を伴う神経変性、オプソクロナス・ミオクローヌス、後皮質萎縮症、原発性進行失調、進行性核上麻痺、血管性認知症、進行性多巣性白質脳症、レビー小体による認知症、ラクナ症候群、水頭症、ヴェルニケ・コルサコフ症候群、脳炎後認知症、癌および化学療法に関連する認知障害および認知症、およびうつ病誘発性認知症および偽認知症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一部の実施態様において、患者は中枢神経系障害を有するか、または神経保護が必要である。例示的な状態および/または患者として、脳卒中、心的外傷性脳損傷、脊髄損傷、心的外傷後ストレス症候群、またはそれらの組み合わせを有していた患者、有している患者、または発症するか罹患する可能性のある患者が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
a.ハンチントン病
本明細書に開示する方法を用いて、ハンチントン病の患者を治療することができる。ハンチントン病(HD)は、筋肉調整に影響を及ぼし、認知低下および精神医学的問題を引き起こす神経変性疾患である。HDの慢性病理は、認知機能障害、より具体的には思考および精神的表現における機能不全、判断や推論における変化などの多数の関連する支障につながる。HDは、個体の2コピーのハンチンチン(HTT)遺伝子のいずれかの常染色体優性突然変異によって引き起こされる。この遺伝子の一部は、トリヌクレオチドリピートと呼ばれる反復部分であり、個体間で長さが異なり、世代間で長さが変化する可能性がある。反復が健常な遺伝子に存在する場合、動的突然変異は反復回数を増加させ、遺伝子欠損をもたらす可能性がある。この繰り返し部分の長さが一定の閾値に達すると、それは突然変異ハンチンチンタンパク質(mHtt)と呼ばれる変化した形態のタンパク質を産生する。これらのタンパク質の異なる機能が、疾患の症状を引き起こす病理学的変化の原因である。ハンチントン病の突然変異は、遺伝的に優性でほぼ完全に浸透性である。ヒトのHTT遺伝子のいずれかの突然変異は、この疾患を引き起こし得る。ハンチントン病の身体的症状は、乳児期から老齢期までのあらゆる年齢で開始しうるが、通常、35~44歳で開始する(Walkerら、Lancet、369(9557):218-28(2007))。
一部の実施態様において、患者は、本明細書および他の文献で論じられているような1つ以上のHD臨床症状、1つ以上のHD分子症状、またはそれらの組み合わせを示す。HDの臨床症状は、当技術分野において知られており、幻覚、過敏症、気分障害、落ち着きのなさ、妄想、偏執症、精神病、自殺思考、および自殺の試み;舞踏病、これらに限定されるものではないが、しかめつら、目の位置をシフトさせるための頭部旋回などの顔の動き、腕、脚、顔、および他の身体部分の急速で突然の、時には野生的なけいれんの動き、ゆっくりとして制御されていない動き、不安定な歩行、意図せぬ小さな動きまたは不完全な動き、および調整の欠如などの異常な動きおよび/または普通でない動き;これらに限定されるものではないが、見当識障害および/または錯乱、判断力の喪失、記憶喪失、人格変化、および言語の変化などの認知障害および/または認知症関連症状;および不安、ストレス、緊張、嚥下困難、言語障害、硬直、ゆっくりとした動き、振戦、栄養失調、および体重減少などのその他の症状などの行動障害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。神経精神医学的特徴は、この疾患の中心的な要素である。
突然変異ハンチントンは身体全体にわたって発現され、このような脳外の発現によって直接引き起こされる末梢組織の異常に関連する。これらの異常として、筋萎縮、心不全、耐糖能異常、体重減少、骨粗鬆症および精巣萎縮が挙げられる。
いくつかの研究では、ハンチントン病の患者における無数の症状の有病率を調べている。Shiwach、Acta Psychiatr Scand、90(4):241-6(1994)は、30家族のハンチントン病患者110人の後ろ向き研究の結果を報告している。この研究では、うつ病の最小限の生涯有病率が39%であることが分かった。症候性精神分裂病の頻度は9%であり、サンプルの72%に有意な性格の変化が見られた。発症時の年齢は非常に変動的であった。最初の10年間でいくつかの徴候を示した患者もあり、60歳を越えるまで徴候がなかった患者もある。
Rosenbergら、J Med Genet.、32(8):600-4(1995)は、遺伝子検査を申し込んだ、HDに対してリスクがある33人における二重盲検試験を記載する。注意、視空間、学習、記憶、および計画機能をカバーする一連神経心理学的試験によって、有意に劣った認知機能が、遺伝子保持者において明らかにされた。主として、注意、学習、および計画機能が影響を及ぼされた。
Bamfordら、Neurology、45(10):1867-73(1995)は、ハンチントン病を有する60人の神経心理学的能力およびCTスキャンの前向き分析を報告している。この研究では、評価された認知機能の中で、精神運動技能が最も重要な一貫した低下を示すことが分かった。
Marshallら、Arch Neurol.、64(1):116-21(2007)は、臨床症状のないHD変異保持者29例、精神運動症状のHD変異保持者20例、顕在化HD患者34例、および非変異対照171例を比較した研究を報告している。軽度の運動症状群および顕在化HD群は、非突然変異対照群と比較して、強迫行動、対人感受性、不安、偏執症、および精神病のスコアが有意に高かった。軽度の運動症状群および顕在化HD群は、非突然変異対照群と比較して、強迫行動、対人感受性、不安、偏執症、および精神病のスコアが有意に高かった。症状のない突然変異保持者は、非突然変異対照群と比較して、不安、妄想様観念、および精神病的傾向(psychoticism)のスコアが高かった。結果は、HDの前臨床段階の個体は特定の精神科的症状を示し、さらなる症状は疾患経過の後期に現れることを示した。ハンチントン病では自殺念慮が頻繁に発見されており、医師は無症候性のリスクのある患者と症候性の患者の両方で自殺のリスクが高いことに気付くべきである(Walkerら、Lancet、369(9557):218-28(2007))。
HDの基礎となるメカニズムは、Wangら、Journal of Neuroscience、31(41):14496-14507(2011)で検討されており、以下に、さらに詳細に考察する。研究は、細胞、マウス、およびヒトにおける突然変異ハンチンチン(htt)媒介毒性が、1型メラトニン受容体(MT1)の喪失に関連することを示す。高レベルのMT1受容体が野生型マウス由来の脳のミトコンドリア中で見出されたが、HDマウス由来の脳でははるかに少なく、メラトニンは変異型htt誘導性カスパーゼ活性化を阻害し、MT1受容体発現を保持した。したがって、一部の実施態様において、本明細書に開示する化合物および組成物は、HDの1つ以上の分子症状を治療するため、たとえば、突然変異体htt誘導性カスパーゼ活性化を低下、遅延または阻害するため;MT1受容体発現の喪失、特に患者の細胞のミトコンドリアにおける喪失を低減または防止するため;またはそれらの組み合わせのために、有効量でHD患者に投与される。
一部の実施態様において、患者は、本明細書で考察する1つ以上の症状を呈するが、症状のすべては示さない。したがって、一部の実施態様において、患者は、本明細書または他の文献に開示された症状の1つ以上を有していない。
一部の実施態様において、患者は、疾患の臨床(たとえば、物理的)症状を示すことにより、HDを有すると医学的に診断されている。身体の任意の部分の過度の意図しない動きが、最初の臨床症状であることが多い。もし、これらが突然であり、タイミングと分布がランダムであれば、それらは、HDであるという診断を示唆する。認知的または精神医学的症状が最初に診断されることはまれであり、最も典型的には、後からでしか認識されないか、またはさらに進行する場合にしか認識されない。疾患の進行は、運動、行動、認知および機能評価に基づいた全体的な評価システムを提供する統一ハンチントン病評価尺度を用いて測定することができる(Huntington Study Group、Movement Disorders、11(2):136-142(1996))。
コンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴撮影(MRI)などの医療的画像化、およびfMRIおよびPETなどの機能的な神経画像化技術は、身体症状の分析を補うことができるが、典型的には単独診断ではない。
HDの家族歴がない場合、理学的診断を確認するために、遺伝的検査を使用することができる。症状が現れる前でも、遺伝子検査は、個体または胚が、疾患を引き起こすHTT遺伝子においてトリヌクレオチドリピートの拡大コピーを保有するかどうかを確認することができる。米国政府が支援している遺伝病大綱(Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)データベース)は、HDに表現型番号#143100を与える。遺伝子/遺伝子座は、ハンチンチン(HTT)であり、遺伝子/遺伝子座 MIM番号613004を有する染色体4p16.3に位置する。ハンチントン病(HD)は、染色体4p16.3のハンチンチン(HTT;613004)をコードする遺伝子における、グルタミンをコードする伸長したトリヌクレオチドリピート(CAG)nによって引き起こされる一遺伝性疾患であるため、OMIMエントリーへの143100番号の割り当てがある。HDの遺伝子検査は、各HTT対立遺伝子のCAG反復数をカウントする血液検査からなる。
遺伝子検査のためのカットオフは、De Die-Smuldersら、Human Reproduction Update、19(3):304-315(2013)に従って以下のように付与される。
40以上のCAG反復:完全浸透対立遺伝子(FPA)。「陽性検定」または「陽性の結果」とは、一般的にこの場合を意味する。疾患について陽性であると判定された人は、彼または彼女が、病気が出現するのに十分な長さを生きるならば、生涯のうちのいつかはHDを発症するであろう。
36~39回の反復数:不完全または減少した浸透対立遺伝子(RPA)。通常、成人期の後期に症状が起こる可能性がある。RPA患者は65歳で症状が起こるリスクが最大で60%、75歳で症状が起こるリスクが70%となる。
27~35の反復数:中間対立遺伝子(IA)、または大きな正常対立遺伝子。試験された個体においては症候性疾患とは関連しないが、さらなる遺伝的形質に拡大して子孫に症状を付与する可能性がある。
26以下の反復数:HDとは関連しない。
陽性の結果は症状が始まる数十年前に得られる可能性があるので、臨床診断とは異なると考えられる。本来50%の確率で病気を遺伝で受け継ぐ可能性を有した個人に、リスクが100%になるか、または排除されるかどうかを告げることができる。
他の場所では、正常個体の反復数は9~36の範囲であり、HD個体では37以上である(Duyaoら、Nat Genet.、4(4):387-92(1993))。
したがって、一部の実施態様においては、遺伝的試験により、被験者は、「陽性結果」を有するか、または浸透対立遺伝子(RPA)が不完全または減少していると判定されるか、または中間対立遺伝子(IA)または大きな正常対立遺伝子を有すると判定されるが、被験者がいずれの臨床症状も示さないか、または臨床症状が肯定的な医療診断にとって軽度でありすぎる。特定の実施態様においては、被験者は「陽性結果」を有するが、いずれの臨床症状も示さないか、または肯定的な医療診断にとって臨床症状が軽度でありすぎる。したがって、一部の実施態様においては、本明細書に開示する化合物または組成物は、HDの臨床診断に先立って投与される。
b.パーキンソン病
特定の実施態様において、開示する組成物は、パーキンソン病の患者またはパーキンソニズムもしくはパーキンソン症候群に苦しむ患者を治療するために用いられる。PDは中枢神経系の変性疾患である。一部の実施態様において、患者は、本明細書および他の文献で考察したものなどの、1つ以上のPDの臨床症状、1つ以上のPDの分子症状、またはそれらの組み合わせを示す。PDの症状は、当技術分野で公知であり、Jankovicら、J. Neurol. Neurosurg. Psychiatr.、79(4): 368-76(2007)に概説されている。パーキンソン病の運動症状は、中脳の領域である黒質中のドーパミン生成細胞の死に起因する。細胞死の原因は不明のままである。この病気の初期には、最も顕著な症状は運動関連の症状であり、振戦、こわばり、動きの遅さ、歩行および足取りの困難性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、PDの特徴である4つの運動症状は、振戦、こわばり、動きの遅さ、および姿勢の不安定性である。主な運動症状は、まとめてパーキンソニズムまたは「パーキンソン症候群」と呼ばれる。
その後、思考や行動の問題が発生し、それらは軽度から重度の範囲であり、通例、認知症は病気の進行段階で起こるが、うつ病が最も一般的な精神症状である。他の一般的な神経精神障害として、発語、認知、気分、行動、および思考の障害が挙げられる。病気の初期段階で、診断の前に発生しうる認知障害として、計画、認知的柔軟性、抽象的思考、ルールの取得、適切なアクションの開始および不適切な行動の抑制、および関連する感覚情報の選択に関する問題を含みうる実行機能不全;注意の不安定さおよび認知速度の低下;および記憶障害が挙げられる。
他の症状として、感覚、睡眠、情緒障害が挙げられる。事実、睡眠障害や覚醒障害は、PDの最も一般的で身体に障害をもたらす非運動症状の1つであり、患者の90%に影響を及ぼす。(Videnovicら、JAMA Neurol. doi: 10.1001/jamaneurol. 2013.6239、オンライン公開 February 24、(2014))。
医師のPDの診断は、典型的には、病歴と神経学的検査との組み合わせにより行なわれる。PDを有する人々の脳スキャンは、典型的には正常に見えるが、同様の症状を引き起こす可能性のある障害を排除するために使用することができる。PDのための臨床検査は存在しないが、医療機関は診断プロセスを容易にし、標準化するための診断基準を作成している。たとえば、すべてPDを診断するための基準を提供する、UK Parkinson's Disease Society Brain Bank、U.S. National Institute of Neurological Disorders and Stroke、およびPD Society Brain Bankを参照。
パーキンソン病は高齢者において、より一般的であり、ほとんどの症例は50歳以降に起こる。PDの治療法はなく、レボドパ(通常ドーパデカルボキシラーゼ阻害剤またはCOMT阻害剤と組み合わせたもの)、ドーパミンアゴニストおよびMAO-B阻害剤の1つの組み合わせを使用して最も一般的に管理される。PDの治療法はなく、レボドパ(通常、ドーパデカルボキシラーゼ阻害剤またはCOMT阻害剤と組み合わせたもの)、ドーパミンアゴニストおよびMAO-B阻害剤の1つまたは組み合わせを使用して管理するのが一般的である。他の一般的な薬剤として、運動症状を治療するためのアマンタジンおよび抗コリン作用薬、精神病を治療するためのクロザピン、認知症を治療するためのコリンエステラーゼ阻害薬、および日中の眠気を治療するためのモダフィニル挙げられる。薬物がもはや有効ではない場合、最も一般的には、外科手術および深部脳刺激を用いることができる。遺伝子治療、幹細胞移植、神経保護剤もPDの治療選択肢として開発されている。
一部の実施態様において、患者は、本明細書および他の文献で考察されたものなどの、1つ以上のPD臨床症状、1つ以上のALS分子症状、またはそれらの組み合わせを示す。一部の実施態様において、患者は、本明細書で考察される1つ以上の症状を示すが、すべての症状を示すわけではない。したがって、一部の実施態様において、患者は、本明細書または他の文献に開示される症状の1つ以上は有していない。
一部の実施態様において、患者は、疾患の臨床的(たとえば、身体的)症状を示すことによってPDを有すると医学的に診断される。一部の実施態様において、患者は、本明細書で考察される1つ以上の症状を示すが、すべての症状を示すわけではない。したがって、一部の実施態様において、患者は、本明細書または他の文献に開示される症状の1つ以上は有していない。
一部の実施態様において、患者は、疾患の臨床的(たとえば、身体的)症状を示すことによってPDを有すると医学的に診断される。幾人かの患者において、睡眠関連障害の出現は、PDの臨床的診断に先行する。したがって、一部の実施態様において、本明細書に開示する化合物または組成物は、PDの臨床的診断に先立って投与される。
c.筋萎縮性側索硬化症
本明細書中に開示する方法は、筋萎縮性側索硬化症を有する患者を治療するために使用され得る。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、致命的な運動ニューロン疾患であり、一次および二次運動ニューロンに影響を及ぼす。ALSの進行は、脊髄の前角における脱髄に関連する運動ニューロンの変性を特徴とする。病因は部分的にしか理解されていない。5~10%の家族性症例のうち、20%がスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子の変異を有する。この突然変異は、散発性症例の5%にも存在する(Rowlandら、New Engl J Med、44:1688-1700(2001))。家族性症例の3~4%は、TDP-43またはFUS遺伝子の病原性変異体によるものである(Mackenzieら、Lancet Neurol.、9:995-1007(2010))。
一部の実施態様において、患者は、たとえば本明細書および他の文献で論じられたものなどの、ALS臨床症状の1つ以上、ALS分子症状の1つ以上、またはそれらの組み合わせを示す。ALSの臨床症状は当技術分野で公知である。たとえば、ALSの最も初期の症状は、典型的には、衰弱および/または筋肉萎縮である。他の初期の症状として、嚥下障害、けいれん、または罹患した筋肉の硬直;腕または脚に影響する筋力低下;および/またはろれつが回らない鼻声、ならびに場合によっては認知症が挙げられる。
ALSと診断されるためには、患者は、他の原因によるものではない上位および下位運動ニューロン損傷の両方の徴候および症状を有していなければならない。診断は、病歴と検査による上位(UMN)および下位(LMN)運動ニューロン所見の進行性変性に依存し、経験豊富な臨床医が行った場合の正確さは95%である(Gordon、Aging and Disease、4(5):295-310(2013))。筋電図検査は、広範な下位運動ニューロン疾患を確認し、伝導ブロックを有する多巣性運動ニューロパチーなどの他の疾患を排除するために使用することができる。脳脊髄MRIは、頚部脊椎症などのUMNに影響を及ぼす状態を排除する。時折、脳MRIは、皮質脊髄路内の両側の信号変化を示し、これはALSの特徴的な所見である。El Escorial基準は、臨床研究の診断の標準化を支援する(Brooksら、Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord、1:293-299(2000))。
時間が経つにつれて、患者は、動くこと、嚥下すること(嚥下障害)、話すことまたは言葉を形成すること(構音障害)の困難性増加を経験する。上位運動ニューロンが関与する症状として、緊張した硬い筋肉(痙性)および咽頭反射の過活動などの誇張反射(反射亢進)が挙げられる。通常、バビンスキーの徴候と呼ばれる異常な反射もまた、上位運動ニューロンの損傷を示す。軽度の運動ニューロン変性の症状として、筋肉の衰弱および萎縮、筋肉のけいれん、および皮膚下で見られる筋肉の一瞬のけいれん(線維束性攣縮)が挙げられる。延髄上位運動ニューロンの変性は、情動の運動発現の誇張を引き起こす可能性がある。
しかしながら、進行は患者特有であり、最終的にはほとんどの患者が手や腕を歩いたり使用したりすることができなくなる。彼らはまた、話したり、食べ物を飲み込んだりする能力を失い、ほとんどが携帯型人工呼吸器で終わる。進行の速度は、48(正常機能)と0(重度の障害)との間のスコアを生じる、臨床インタビューまたは患者報告アンケートとして管理される12項目からなる計器である「ALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)」と呼ばれる結果判定法を用いて測定することができる。
臨床医間の調査に基づく研究では、彼らは、ALSFRS-Rの勾配の20%の変化を臨床的に意味があると評価した(Castrillo-Vigueraら、Amyotroph Lateral Scler、11(1-2):178-80(2010))。したがって、患者のALSFRS-Rの勾配を1%、5%、10%、15%、20%、またはそれ以上変化させるのに有効な量で組成物を患者に投与することができる。
一部の実施態様において、患者のALSFRS-Rスコアは、治療開始前および治療開始後に1回以上に採点される。一部の実施態様において、ALSFRS-Rスコアは、改善するためには、日、週、月またはそれ以上の時間を必要とする。
一部の実施態様において、患者は、たとえば本明細書および他の文献で論じられたものなどの、ALS臨床症状の1つ以上、ALS分子症状の1つ以上、またはそれらの組み合わせを示す。一部の実施態様において、患者は、本明細書で考察される1つ以上の症状を示すが、すべての症状を示すわけではない。したがって、一部の実施態様において、患者は、本明細書または他の文献に開示される症状の1つ以上は有していない。
一部の実施態様において、患者は、疾患の臨床的(たとえば、身体的)症状を示すことによってALSを有すると医学的に診断される。一部の実施態様において、患者は、本明細書で考察される1つ以上の症状を示すが、すべての症状を示すわけではない。したがって、一部の実施態様において、患者は、本明細書または他の文献に開示される症状の1つ以上は有していない。
一部の実施態様において、患者は、疾患の臨床的(たとえば、身体的)症状を示すことによってALSを有すると医学的に診断される。一部の患者では、睡眠関連障害の出現はALSの臨床診断に先行する。したがって、一部の実施態様において、本明細書に開示する化合物または組成物は、ALSの臨床的診断に先立って投与される。一部の実施態様において、遺伝子検査は、患者が、ALSに関連する1つ以上の遺伝的変異を有することを示す。
d.アルツハイマー病
本明細書に開示する方法を用いて、アルツハイマー病の患者を治療することができる。アルツハイマー病(AD)は、最も一般的な型の認知症である。ADの原因と進行は完全には解明されていないが、研究から、脳内のプラークおよび絡みが病態生理学的役割を果たすことが示されている。現在の治療は、疾患の症状を支援するのみであり、病気の進行を停止または逆行させる利用可能な治療法はない。
一部の実施態様において、患者は、たとえば本明細書および他の文献で論じられたものなどの、1つ以上のAD臨床症状、1つ以上のAD分子症状、またはそれらの組み合わせを示す。ADの臨床症状は、当技術分野で公知である。アルツハイマー病は個人ごとに異なって発症するが、多くの共通する症状がある。初期症状は、「年齢に関連する」懸念やストレスの徴候であると誤解されることが多い。最も一般的な初期症状の1つは、短期記憶の喪失である。中等期の症状としては、たとえば、記憶喪失や混乱の増加;家族や友人の認識問題;物語、好きな欲求、動きを継続的に繰り返すこと;服を着るなどの複数のステップからなることを行うことの困難さ;および/または衛生と外観に対する関心の欠如が挙げられる。重篤期の症状としては、たとえば、自分または家族を認識できない、コミュニケーションできない、腸や膀胱のコントロールの欠如、唸り声、嘆き声、うめき声を出す、および/または日常生活のあらゆる活動に助けを必要とするなどが挙げられる。他の一般的な症状としては、混乱、過敏性、攻撃性、気分の揺れ、言語障害、および長期記憶の喪失などが挙げられる。徐々に、身体機能が失われ、最終的に死亡する。
ADが疑われる場合、診断は、通常、行動および思考能力(たとえば、認知試験)を評価する試験を行って確認され、次いで、可能であれば脳スキャンが行われることが多い。記憶検査およびミニ・メンタル・ステート検査(MMSE)などの神経心理テストを含む知的機能の評価は、診断に必要な認知障害を評価するために広く使用されている(Waldemarら、Eur J Neurol. 14(1):e1-26(2007))。早期ADにおける神経学的検査は、通常、認知症の他の原因などの他の疾患プロセスに起因するものとは異ならない可能性がある明らかな認知障害を除いて、正常な結果を提供する。
脳組織の検査は、決定的な診断をもたらすことができる。ADは、完全に明らかになる前に、未知の可変量の時間の間発達し、何年もの間、未診断で進行することができる。
一部の実施態様において、患者は、たとえば本明細書および他の文献で論じられたものなどの、1つ以上のAD臨床症状、1つ以上のALS分子症状、またはそれらの組み合わせを示す。一部の実施態様において、患者は、本明細書で考察される1つ以上の症状を示すが、すべての症状を示すわけではない。したがって、一部の実施態様において、患者は、本明細書または他の文献に開示される症状の1つ以上は有していない。
一部の実施態様において、患者は、疾患の臨床的(たとえば、身体的)症状を示すことによってADを有すると医学的に診断される。一部の実施態様において、患者は、本明細書で考察される1つ以上の症状を示すが、すべての症状を示すわけではない。したがって、一部の実施態様において、患者は、本明細書または他の文献に開示される症状の1つ以上は有していない。
一部の実施態様において、患者は、疾患の臨床的(たとえば、身体的)症状を示すことによってADを有すると医学的に診断される。一部の患者では、睡眠関連障害の出現はADの臨床診断に先行する。したがって、一部の実施態様において、本明細書に開示する化合物または組成物は、ADの臨床的診断に先立って投与される。
e.外傷性脳損傷
もう1つの特定の実施形態において、開示する組成物は、外傷性脳損傷(TBI)に罹患している患者を治療するために使用される。外傷性脳損傷は、外部からの機械的な力、典型的には頭部外傷が、脳機能障害を引き起こす場合に起こる。
外傷性脳損傷は、広範な身体的および心理的影響を有しうる。外傷性イベントの直後にはいくつかの徴候または症状が現れることがあるが、数日後や数週間後まで現れないこともある。TBIの症状として、意識の喪失;眩暈、混乱、または方向性を失った状態;記憶や集中の問題;頭痛、めまいまたはバランスの喪失;吐き気または嘔吐;視覚がぼやける、耳鳴りがする、口に嫌な味がするなどの感覚的な問題;光または音に対する感受性;気分の変化または気分のむら;うつまたは不安感;疲労または眠気;睡眠障害;普段よりも眠っている、激怒している、闘争性がある、または他の異常な行動;ろれつが回らない;睡眠から目を覚ますことができない;手指や足指の衰弱またはしびれ;協調の喪失;けいれんまたは発作、眼の一方または両方の瞳孔の拡張;および/または鼻または耳から流れ出る透明な流体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。児童では、さらなる症状として、食事または養育習慣の変化;泣き続け、慰められないこと;普段とは異なる怒り、または怒りやすさ;注意を払う能力の変化;睡眠習慣の変化;悲しいか、または落ち込んだ気分;および/または好きなおもちゃまたは活動における興味の喪失が挙げられる。
TBIは、医師または他の救急医療職員が、方向を追跡し、目と手足を動かす人の能力をチェックすることによって、脳損傷の初期重症度を評価するのに役立つグラスゴー昏睡尺度(Glasgow Coma Scale)を使用して診断することができる。話の一貫性も重要な手がかりを提供する。能力は、高い得点がより軽度の傷害を示すことで、数値的に評点される。コンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴画像化(MRI)、ならびに頭蓋内圧監視などの画像化は、外傷の局所および程度を識別するのを補助することによって診断を支援するために使用することもできる。
TBIの従来の治療として、利尿薬、抗けいれん薬および昏睡誘発薬などの薬剤の投与;凝固した血液の除去、頭蓋骨の骨折の修復、および/または頭蓋骨内の圧力の解放のための手術が挙げられる。
IV.持続性抑制を増加させる方法
持続性抑制を増加させるための4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)、その誘導体、またはその医薬的に許容しうる塩を用いる方法も提供される。方法は、持続性抑制における欠乏または欠陥を特徴とする障害を有する患者における持続性抑制を増加させるために使用することができる。例示的な疾患として、脆弱X症候群またはアンジェルマン症候群などの神経原性疾患が挙げられる。
A.治療プロトコル
1.持続性抑制
患者における持続性抑制を増加させるための開示する方法は、典型的に、患者の脳における持続性抑制を増加させるために、それを必要とする患者に、有効量のTHIPまたはその誘導体を投与することを含む。
哺乳動物の脳における神経抑制は、2つの速い伝達物質、グリシンおよびγ-アミノ酪酸(GABA)によって媒介される(Jonas and Buzaki、Scholarpedia、2(9):3286(2007))。グリシンは脊髄における主要な抑制伝達物質であり、GABAは高次脳領域の主要伝達物質である。シナプス前末端から放出されたGABAは、GABA受容体(GABA)A型、B型およびC型の3つの異なるタイプの受容体を活性化することができる。神経抑制は「一過性」または「持続性」でありうる。一過性抑制は、シナプス前介在ニューロンにおける活動電位後のGABAA受容体の活性化によって最も頻繁に生成される短時間持続する抑制である。いくつかの長時間持続する抑制形態の中には、細胞外空間において周囲のGABAによって活性化される持続性のGABAAコンダクタンスがある。持続性抑制は、α6またはδサブユニットを含み、GABA結合に対して高い親和性を示す、分子的および機能的に特化したGABAA受容体によって媒介される。THIPは、δサブユニット含有シナプス前シナプスおよびシナプス外GABAA受容体のスーパーアゴニストであり、CNSにおける強い持続性の抑制性コンダクタンスを媒介する(Brownら、Br. J. Pharmacol.、136:965-974(2002)、Glykysら、J Physiol.、582:1163-1178(2007)、Brownら、Cell、107:477-487(2001)。
したがって、それを必要とする患者において、THIPを用いて持続性抑制を増強することができる。
インビトロおよび動物モデルの研究は、低下した持続性抑制がいくつかの神経原性疾患の根本原因であり得ることを示している。たとえば、GABAの濃度が低下すると、アンジェルマン症候群における小脳性運動失調の根本的原因である小脳顆粒細胞の持続性抑制がもたらされうることが研究によって示されている(Egawaら、Science Translational Medicine、4:163ra157(2012))。THIP(500nM)で治療すると、持続性保持電流が増加し、アンジェルマン症候群のマウスモデルからの細胞核顆粒細胞の興奮性が低下して欠乏が救済された。THIPの用量(1.25mg/kgおよび2.5mg/kg)は、インビボでの小脳機能不全を救済するのに有効であったが(有効な幅またはストライドなしの後足の外転の減少)、低い有効用量(たとえば、1.25mg/kg)は、副作用(ロータロッド上での時間減少)なしに小脳機能不全を救済するのに有効であった。
研究は、扁桃体、線条体または大脳皮質などの異なる脳領域におけるGABA作動性伝達の障害が、脆弱X症候群におけるニューロン興奮性欠損および行動異常に寄与することも示している(Olmos-Serranoら、Dev. Neurosci.、33:395-403(2011)、Olmos-Serranoら、J. Neurosci.、30(29):9929-9938(2010)、Braat and Kooy、Drug Discovery Today、19(4):510-519(2014))。インビトロ実験は、THIPを用いた持続性抑制傾向の増強が、GABAのバイオアベイラビリティの低下およびFmr1ノックアウトマウスのBL扁桃体の主要ニューロンの持続性電流の減少を救済することを明らかにした。さらに、THIP処置は、多動の減少または減衰(たとえば、移動および速度によって測定される)、および聴覚刺激に対する過敏症の低減などのように、インビボでのFmr1ノックアウトマウスにおける多くの脆弱X表現型を改善した。
2.用量および投与
開示される持続性抑制を増加させる方法は、典型的には、それを必要とする患者に、有効量のTHIPまたはその誘導体を投与することを含み、好ましくは、上記でより詳細に考察されたものなどの医薬的に許容しうる組成物である。
有効量または治療有効量は、典型的には、患者の脳内のニューロンの持続性抑制を増加させるのに十分な用量である。いくつかの実施態様では、方法は、以下により詳細に考察される神経原性疾患または障害を有する患者における1つ以上の神経精神医学的罹患率または表現型を低減化または予防する。したがって、この量は、神経原性疾患の1つ以上の症状を治療または予防するために、または、たとえば、所望の薬理学的および/または生理学的効果を提供するために有効でありうる。
正確な投与量は、患者に依存する変数(たとえば、年齢、免疫系の健康状態、臨床症状など)などのさまざまな要因によって変化する。例示的な投与量、症状、薬理学的および生理学的効果を、以下により詳細に考察する。
特に好ましい実施態様には、徐放性製剤が含まれる。たとえば、製剤は、1日1回またはそれ以下の投与に適しうる。一部の実施態様において、組成物は、24~48時間毎に1回のみ患者に投与される。
組成物の投与のタイミングは、使用される製剤および/または投与経路に依存する。一部の実施態様において、組成物の投与は、それによって薬物動態定常状態が達成される長期治療投与計画として与えられるであろう。
好ましい投与経路は、経皮であり、たとえば、患者の皮膚と接触する経皮パッチである。
一般に、ほんの一例として、開示する方法において有用な投与剤形は、好ましい用量の特定の例である、0.1~1,000 mg、1~200 mg、5~175 mg、7.5~150 mg、または10~125 mg、または12.5~150 mg、または15~125 mg、または17.5~100 mg、または20~75 mg、または22.5~60 mg、または25~50 mgの範囲の用量、および1 mg、5 mg、10 mg、15 mg、20 mg、25 mg、30 mg、35 mg、40 mg、45 mg、50 mg、55 mg、60 mg、75 mg、および100 mgの用量を含みうる。典型的には、そのような用量は、1日1回、2回、または3回、または1日おきにヒトに投与される。
典型的な経口投与剤形が、約2.5mg~約30mgのTHIPを含むのが好ましい。好ましくは、THIPが、結晶形であるのが好ましい。医薬のさらなる実施態様は、2.5 mg~20 mg、such as 2.5 mg~4 mg、4 mg~6 mg、6 mg~8 mg、8 mg~10 mg、10 mg~12 mg、12 mg~14 mg、14 mg~16 mg、16 mg~18 mg、または18 mg~20 mg、たとえば、2.5 mg、5 mg、7.5 mg、10 mg、12.5 mg、15 mg、17.5 mg、または20 mgの有効量のTHIPを含む。典型的な実施態様は、約5mg~約20mgの、THIPの塩酸塩などの結晶性のTHIPである。典型的には、そのような用量は、1日1回、2回、または3回、または1日おきにヒトに投与される。一部の実施態様において、24時間で患者に投与される総量は、1mg~50mgである。一部の実施態様において、患者は低用量にて開始され、薬物において漸増される用量は、患者にとって十分に耐容性がある。
最も好ましい実施態様において、投与量は、患者に副作用引き起こすことなく持続性抑制を増加させるのに有効である。副作用は、たとえば、誘発されたニューロンの機能不全、および発作または過剰な眠気の頻度の増加または日中の傾眠などの視床-皮質ネットワークの機能における負の影響を含みうる。上記の動物モデルは、マウスにおいて1.25mg/kg~3mg/kgの投与量を利用する。特定の動物モデルにおいて、副作用がより少ないので、2.5mg/kgの投与量よりも、1.25mg/kgの投与量が好ましい。したがって、一部の実施態様において、用量は、約0.1mg/kg~約5mg/kgであり、副作用がほとんどまたは全くないのが好ましい。当技術分野で知られている変換を使用して、マウスからヒトへと投与量を拡大することができる。この療法は、典型的には、患者が活動している時間中の投与を含むので、投与量が、患者に鎮静効果を誘導しないのが好ましい。
一部の実施態様において、患者における組成物の効果を対照と比較する。たとえば、特定の症状、薬理学的または生理学的指標における組成物の効果を、未治療の患者または治療前の患者の状態と比較することができる。一部の実施態様において、症状、薬理学的または生理学的指標は、治療前の被験者において測定され、そして治療開始後に1回以上測定される。一部の実施態様において、対照は、処置される疾患または状態を有さない1つまたは複数の被験者(たとえば、健常者)における症状、薬理学的または生理学的指標を測定することに基づいて決定される参照レベルまたは平均である。一部の実施態様において、治療の効果は、本明細書で論じられるものの1つなどの当技術分野で公知の従来の治療と比較される。
B.治療される状態、症状、患者および疾患
一部の実施態様において、持続性抑制を必要とする患者は、神経原性疾患を有する患者である。一部の実施態様において、組成物は、疾患の1つ以上の症状または表現型を低減化または予防するために有効量で投与される。疾患および症状については、以下でより詳細に考察する。
1.アンジェルマン症候群
一部の実施態様において、組成物は、アンジェルマン症候群を有する患者を治療するために使用される。アンジェルマン症候群は、母系遺伝性染色体15上の遺伝子の欠失または不活性化によって引き起こされる神経原性障害であり、正常な配列であってもよい父系コピーは刷り込まれ、沈黙する。プラダー・ウィリー症候群は、父系遺伝性遺伝子の同様の欠失および母系刷り込みによって引き起こされる。
アンジェルマン症候群の症状として、次のものが挙げられる:100%の症例に見られる一貫した症状、80%以上の症例で起こる頻繁な症状、および20~80%の症例に随伴する症状。一貫した症状として、発達遅延;言語障害、単語の不使用または最小限の使用;口頭のものよりも高い受容的および非言語的なコミュニケーションスキル;運動またはバランス障害;通常、歩行の運動失調および/または手足の振戦運動;および手の羽ばたき動作、超運動挙動、短い注意スパン、またはそれらの任意の組み合わせを伴うことが多い、頻繁な笑い声/笑顔、明らかな幸福な態度、容易に興奮する性格などの行動の特異性が挙げられる。頻繁な症状として、通常は2歳までに小頭症(絶対的または相対的)を生じる、遅れた不均衡な頭囲の成長;通常3歳未満の発作、発症;および大振幅の遅いスパイク波を伴う特徴的なパターンを有する異常なEEGが挙げられる。随伴症状として、視力低下、低色素の皮膚および眼;舌の突き出し;吸い込み障害/嚥下障害;過活動腱反射;乳児期の摂食障害;歩行中に歩行中に腕を持ち上げ曲げる;隆起した下顎骨;熱に対する感覚過敏;大きな口,間隙の空いた歯;睡眠障害;頻繁な流涎;舌の呈出;水が大好きで引き付けられること;噛むことやもぐもぐする動作の過剰;後頭部扁平;滑らかな手のひら;水が大好きで引き付けられること;紙やプラスチックのような縮れたものを好む;食行動の異常;肥満(年長児);脊柱側弯症;および便秘が挙げられる。
アンジェルマン症候群の他の一般的な症状ならびに診断方法については、Williamsら、American Journal of Medical Genetics、140A:413-418(2006)に考察されており、この文献は、その全体において参照することによって本明細書に援用される
2.脆弱X症候群
組成物は、脆弱X症候群(FXS)を有する患者を治療するために使用される。脆弱X症候群は、神経原性障害である。それは、最も一般的な単一遺伝子を原因とする自閉症であり、特に少年における知的障害の遺伝的原因である。FXSは、X染色体上の脆弱X精神遅滞1(FMR1)遺伝子に影響を及ぼすCGGトリヌクレオチドリピートの拡大に関連する。正常な個人において、このDNAセグメントは5~約40回反復される。脆弱X症候群を有する人々では、CGGセグメントは200回以上繰り返され、遺伝子のサイレンシングをもたらす。FMR1の喪失または不足(欠陥)は、神経系機能を崩壊させ、脆弱X症候群の徴候や症状を引き起こす。
知的障害に加えて、この症候群の顕著な特徴および症状として、細長い顔、大きいかまたは突出した耳、偏平な足、より大きな精巣(巨大睾丸)および低い筋緊張;再発性中耳炎(中耳炎)および副鼻腔炎は、幼児期には一般的である;発言が混乱するか、または神経質になることがある;常同行動(たとえば、手の羽ばたき)および非定型の社会性の発達、特に内気、限られたアイコンタクト、記憶問題および顔認知の困難性;注意欠陥多動性障害、強迫性障害、気分障害、認知症および不安障害などの精神医学的問題;注意散漫、多動性、および視覚,聴覚,触覚および嗅覚刺激、ならびに忍耐に対する過敏性;斜視および弱視などの眼科的な問題;発作などの神経学的合併症;作業記憶の中央実行系(central executive)を必要とする仕事を実行する際の問題;および早発閉経を挙げることができる。脆弱X症候群を有する個人は、自閉症の診断基準を満たしている場合もある。
脆弱X症候群の診断は、CGGリピートの数を決定するための遺伝子検査を介して行われる。FXSの診断には少なくとも200の反復が必要であるが、55~200反復のCGGセグメントを有する男性および女性は、FMR1遺伝子の前突然変異を有すると言われている。しかしながら、前突然変異を有するほとんどの人々は、知的に正常であり、前突然変異を有するいくらかの個人は、正常な量よりも少ないFMRPを有する。結果として、彼らは疾患の軽度のバージョンの身体的症状を有する可能性があり、不安またはうつ病などの感情的な問題を経験する可能性がある。
一部の実施態様において、患者は、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)を有する)。
3.レット症候群
一部の実施態様において、組成物は、脳萎縮高アンモニア血症(cerebroatrophic hyperammonemia)とも呼ばれるレット症候群を有する患者を治療するために使用される。レット症候群は、ほとんどの場合、女性に影響を与える神経発達障害である。遺伝的に、レット症候群は、最も典型的には、X染色体上に位置する遺伝子MECP2の突然変異によって引き起こされる。この突然変異は、散発的にまたは生殖系列突然変異から生じうるが、典型的には遺伝されない。10%未満のレット症候群では、遺伝子CDKL5またはFOXG1の突然変異も見出されている。レット症候群は、最初は臨床観察によって診断されるが、MECP2遺伝子に遺伝的欠損がある場合には診断は確定的である。
レット症候群の発症および重症度は患者によって異なる。症状の発症前は、子供は一般的に成長し正常に発育しているように見える。早期幼児期であっても、初期の微妙な異常として、筋緊張の喪失(筋緊張低下)、摂食障害および四肢運動のけいれんが挙げられる。次に、徐々に、精神的および肉体的な症状が現れ始める。患者は、彼女の手の意図的な使用と話す能力を失い、ハイハイまたは歩行の問題および視線合わせの減少などの他の初期症状を経験する。手の機能的使用の喪失に続いて、手絞りおよび手もみのような強迫性の手の動きが生じる。失行症は、運動機能を発揮できないため、視線や話すことを含むすべての身体運動を妨げうる。
レット症候群の児童は、失禁、息苦しさ、呼吸停止、過呼吸および空気嚥下、視線合わせの回避、社会的/感情的相互主関係の欠如、社会的相互作用を制御するための非言語的行動の使用が著しい不全、言語障害および感覚の問題などの自閉症様の行動を示すこともありうる。他の症状として、つま先歩行、睡眠の問題、幅広な歩行、歯ぎしりおよび咀嚼困難、成長遅延、発作、認知障害、および無呼吸(呼吸停止)、身長不足の可能性、歩行困難または嚥下困難による栄養失調に起因する異常な体重、低血圧、歩行能力の遅延または欠如、運動失調症、小頭症、胃腸の問題、いくつかの形態のけいれん、舞踏病およびジストニアが挙げられる。
現在のところレット症候群の治療法は無いが、たとえばインスリン様成長因子-1(IGF-1)を用いたMECP2の回復は、マウスモデルにおいて有望である(Tropeaら、Proc Natl Acad Sci U S A.、106(6): 2029-2034(2009))。NMDA受容体アンタゴニストもまた有望であることが分かっている。症状は、たとえば、睡眠補助薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、抗精神病薬(自傷行為に対して)、ベータ遮断薬(QT延長症候群に対して)および胃腸機能障害および栄養失調を管理する薬剤を用いても治療されうる。
4.自閉症スペクトラム
一部の実施態様において、組成物は、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、他に特定されていない広汎性発達障害(PDD-NOS)、自閉症障害、または別の自閉症スペクトラムを有する患者を治療するために使用される。
自閉症スペクトラム(ASD)は、社会的障害、コミュニケーションの困難、制限された、反復的で常同的な行動パターンによって一般的に特徴付けられる、広範な神経発達障害である。自閉症または古典的ASDとも呼ばれる自閉症障害は、ASDの最も重篤な形態である。古典的ASDの児童は、他のスペクトル障害を有する子供よりも典型的に重症である、社会的および言語的機能ならびに反復行動を伴う不全を示す。多くの場合、彼らはまた、精神遅滞および/または発作を有する。
自閉症スペクトラムに沿った他の状態として、アスペルガー症候群およびPDD-NOSが挙げられる。アスペルガー症候群(AS)は、最も軽度の自閉症である。ASを有する児童は、単一の物体または対象に強く関心を持つようになる。彼らは、彼らの好みの主題についてすべてを学び、それを継続的に議論することが多い。ASの児童において、協調性がないことが多い。
PDD-NOSの症状は、子供によって広範に変化しうる。全体的に、PDD-NOSの児童は、損なわれた社会的相互作用、自閉症を患っている子供に比べるとより良好であるが、アスペルガー症候群の児童ほどではない言語能力、アスペルガー症候群または自閉症障害を有する児童よりも少ない反復行動、および発症年齢が遅いことで特徴づけられる。PDD-NOSを有する患者を診断するための合意された基準はない。児童は、評価の専門家からは自閉症に見えるが、自閉症のすべての基準を満たしていない場合にPDD-NOSと診断されうる。
薬剤介入は、典型的には、不安、うつ病または強迫神経症などの特定の自閉症関連症状の治療に限定される。抗精神病薬は、行動問題を治療するために使用することができる。発作は、1種以上の抗けいれん薬で治療することができる。注意欠陥障害を治療するために使用される薬物は、自閉症スペクトラム患者の衝動性および過剰活動を減少させるために使用することができる。
V.併用療法
一部の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、1つ以上のさらなる活性薬剤と組み合わせて投与される。併用療法として、同じ混合物中で、または別々の混合物中での活性薬剤の共投与を挙げることができる。したがって、一部の実施態様において、医薬組成物は、2種、3種、またはそれ以上の活性薬剤を含む。そのような製剤は、典型的には、有効量のTHIPまたは誘導体を含む。異なる活性薬剤は、同一または異なる作用機序を有することができる。一部の実施態様において、併用は、疾患または障害の治療に対して相加的な効果をもたらす。一部の実施態様において、併用は、疾患または障害の治療に対して相乗効果をもたらす。
医薬組成物は、単位投与形態とも呼ばれる医薬投与単位として製剤化することができる。
THIPまたは誘導体は、徐波睡眠を増加させ、持続性抑制を増加させ、神経原性障害、神経変性疾患、中枢神経系障害、またはその症状もしくは病状を治療するために投与される単一の活性剤でありうる;またはTHIPまたはその誘導体は、徐波睡眠を増加させ、認知機能障害を低減化もしくは予防するため、神経変性疾患、中枢神経系障害、またはその症状もしくは病状を治療するためのもう1つの活性剤との併用で投与されうる。
特定の実施態様において、併用療法は、THIPまたはその誘導体、および本明細書で議論したような1つ以上の神経変性のための従来の治療もしくは神経保護を増加または増強するための従来の治療を包含する。例示的神経保護剤は、当技術分野で公知であり、たとえば、グルタミン酸塩アンタゴニスト、抗酸化剤およびNMDA受容体刺激剤が挙げられる。他の神経保護剤および治療として、カスパーゼ阻害剤、栄養因子、抗タンパク質凝集剤、治療的低体温、およびエリスロポエチンが挙げられる。一部の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、神経再生を増加させる治療との併用で患者に投与される。
特定の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、異常な行動または動きを減少させるのに役立つドーパミン阻害薬、またはアマンタジンおよびテトラベナジンなどの動きを制御するための薬物などのハンチントン病の従来の治療薬との併用で患者に投与される。舞踏病を軽減するのに役立つ他の薬物として、神経遮断薬およびベンゾジアゼピンが挙げられる。アマンタジンまたはリマセミドなどの化合物は予備的な陽性結果を示している。特に、若年症例では、運動失調症や硬直を抗パーキンソン病薬で治療することができ、ミオクローヌス性高カリウム血症をバルプロ酸で治療することができる。精神医学的症状は、一般集団で使用されるものと同様の薬物で治療されうる。選択的セロトニン再取り込み阻害剤およびミルタザピンは、うつ病に推奨されているが、非定型抗精神病薬は、精神病および行動問題に推奨されている。
もう1つの特定の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、レボドパ(通常、ドーパデカルボキシラーゼ阻害剤またはCOMT阻害剤と組み合わせて)、ドーパミン作動薬またはMAO-B阻害剤などのパーキンソン病の従来の治療と組み合わせて患者に投与される。開示された組み合わせと併用で使用することができる他の一般的な薬剤として、運動症状を治療するためのアマンタジンおよび抗コリン作用薬、精神病を治療するためのクロザピン、認知症を治療するためのコリンエステラーゼ阻害剤、および日中の眠気を治療するためのモダフィニルが挙げられる。
もう1つの特定の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、抗エキシトトキシンリルゾール(RILUTEK(登録商標))(2-アミノ-6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール)などの慣用のALSの治療薬と併用して患者に投与される。他の薬物療法、最も頻繁に使用される認可外薬、および治療介入は、ALSによる症状を軽減することができる。治療の中には生活の質を改善するものも、生命を延長するものもある。一般的なALS関連療法は、Gordon、Aging and Disease、4(5):295-310(2013)において概説されており、この文献は、その全体において参照することによって本明細書に援用される。例示的なALSの治療および治療介入を以下の第1表において提供する。出典は、Gordon、Aging and Disease、4(5):295-310(2013)である。
第1表:ALSの治療
Figure 2023123442000006



第1表(続き):
Figure 2023123442000007



第1表(続き):
Figure 2023123442000008



Bid=1日2回;IU=国際単位;qAM=毎朝;qd=毎日;qhs=毎日;qt=就寝時間;qid=1日4回;qnoon=毎日正午;qxh=x時間毎;SL=舌下;SR=持続放出;SSRI=セロトニン特異的再取り込み阻害剤;tid=毎日3回。*:ALSにおいて有益な効果を有することが示された。
非有効から有望性までの範囲の有効性について、多くの他の薬剤が1つ以上の臨床試験において試験されている。例示的な薬剤は、Carlesiら、Archives Italiennes de Biologie、149:151-167(2011)で概説されている。たとえば、一部の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、(8-メチル-7H-1,3-ジオキソロ(2,3)ベンゾジアゼピン)、セフトリアキソンなどのセファロスポリン、またはメマンチン、などの興奮毒性を低下させる薬剤;コエンザイムQ10、マンガンポルフィリン、KNS-760704[(6R)-4,5,6,7-テトラヒドロ-N6-プロピル-2,6-ベンゾチアゾール - ジアミン二塩酸塩、RPPX]、またはエダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、MCI-186)などの酸化ストレスを軽減する薬剤;バルプロ酸、TCH346(ジベンゾ(b,f)オキセピン-10-イルメチル-メチルプロプ-2-イニルアミン)、ミノサイクリンまたはタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)などのヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤などのアポトーシスを減少させる薬剤;サリドマイドおよびセラストールなどの神経炎症を軽減する薬剤;インスリン様成長因子1(IGF-1)または血管内皮増殖因子(VEGF)などの神経栄養因子;アルモクロモールなどの熱ショックタンパク質誘導物質;またはラパマイシンまたはリチウムなどのオートファジー誘導物質との併用で患者に投与される。
もう1つの特定の実施態様において、THIPまたはその誘導体は、たとえば、タキリン、リバスチグミン、ガランタミンまたはドネペジルなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;またはメマンチンなどのNMDA受容体アンタゴニスト、または抗精神病薬などのADのための従来の治療薬との併用で患者に投与される。
一部の実施態様において、該活性剤は、栄養補助食品を伴うかまたは伴わない食生活の変化、運動療法、心理学的および/または心理社会的カウンセリング、理学療法、作業療法および言語療法などの併用療法との組合せで投与される。
一部の実施態様において、該活性剤は、栄養補助食品を伴うかまたは伴わない食生活の変化、運動療法、心理学的および/または心理社会的カウンセリング、理学療法、作業療法および言語療法などの併用療法との組合せで投与される。
本発明には、次の態様が含まれる。
1. 患者のニューロンの持続性抑制を増加させるために、神経変性疾患、神経原性障害または中枢神経系障害を有するヒト患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者におけるニューロンの持続性抑制を増加させる方法。
2. 患者が、脆弱X症候群または脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)を有する、項目1に記載の方法。
3. 患者が、アンジェルマン症候群を有する、項目1に記載の方法。
4. 患者におけるニューロンの持続性抑制を増加させるために、脆弱X症候群または脆弱X関連振戦/運動失調症候群を有する患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者における脆弱X症候群または脆弱X関連振戦/運動失調症候群を治療または予防する方法。
5. 患者におけるニューロンの持続性抑制を増加させるために、アンジェルマン症候群を有する患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者におけるアンジェルマン症候群を治療または予防する方法。
6. THIPまたはその誘導体の量が、患者において副作用を引き起こすのに有効でない、項目1~5のいずれか1つに記載の方法。
7. 患者における徐波睡眠(SWS)および/または徐波活動(SWA)を増加させ、睡眠構築を正常化し、二次性不眠症を減少させ、ノンレム(非急速眼球運動(non-rapid eye movement))(NREM)睡眠を増加させ、睡眠の連続性を高め、NREM内のデルタ活動を強化し、総睡眠時間(TST)を増加または改善し、睡眠効率を増加または改善し、総覚醒時間(TAA)を短縮し、覚醒回数を減らし(NWA)、持続睡眠潜時(LPS)を短縮し、中途覚醒(WASO)を減少させるため、または患者におけるそれらの任意の組合せのために、神経変性疾患または中枢神経系障害を有する患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者における二次性不眠症を治療する方法。
8. 患者における徐波睡眠を増加させるために、神経変性疾患または中枢神経系障害を有する患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者における徐波睡眠を増加させる方法。
9. 神経変性疾患が、パーキンソン病(PD)およびPD関連障害、アルツハイマー病(AD)および他の認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、HIV関連認知障害、軽度認知障害、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、フリードライヒ失調症、レヴィー小体病、アルパース病、バタン病、脳・眼・顔・骨格症候群、大脳皮質基底核変性症、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー症候群、クール、リー病、単子葉筋萎縮症、多系統萎縮症、起立性低血圧による多系統萎縮(Shy-Drager症候群)、多発性硬化症(MS)、脳の鉄蓄積を伴う神経変性、オプソクロナス・ミオクローヌス、後皮質萎縮症、原発性進行失調、進行性核上麻痺、血管性認知症、進行性多巣性白質脳症、レビー小体による認知症、ラクナ症候群、水頭症、ヴェルニケ・コルサコフ症候群、脳炎後認知症、癌および化学療法に関連する認知障害および認知症、およびうつ病誘発性認知症および偽認知症からなる群より選ばれる、項目7または8のいずれかに記載の方法。
10. 神経変性疾患が、ハンチントン病である、項目9に記載の方法。
11. 神経変性疾患が、パーキンソン病である、項目9に記載の方法。
12. 神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症である、項目9に記載の方法。
13. 神経変性疾患が、アルツハイマー病である、項目9に記載の方法。
14. 患者が、神経変性疾患と臨床的に診断されていない、項目7~13のいずれか1つに記載の方法。
15. 患者が、神経変性疾患の有意な身体症状を有しないか、または臨床症状が、神経変性疾患の肯定的な診断には軽度すぎる、項目7~13のいずれか1つに記載の方法。
16. 患者が、神経変性疾患であると臨床的に診断されている、項目7~13のいずれか1つに記載の方法。
17. THIPまたはその誘導体が、THIPまたはその医薬的に許容しうる塩である、項目1~16のいずれか1つに記載の方法。
18. THIPまたはその誘導体が、唯一の活性剤である、項目1~17のいずれか1つに記載の方法。
19. 医薬組成物が、有効量のTHIPまたはその誘導体および1種以上の医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤からなる、項目1~18のいずれか1つに記載の方法。
20. 医薬組成物が、持続放出用に製剤化される、項目1~19のいずれか1つに記載の方法。
21. 医薬組成物が、24~48時間毎に1回投与される、項目1~20のいずれか1つに記載の方法。
22. 医薬組成物が、経皮的に投与される、項目1~21のいずれか1つに記載の方法。
23. 医薬組成物が、医薬組成物を含む経皮パッチを患者の皮膚に接触させることによって投与される、項目22に記載の方法。
24. 医薬組成物が、患者に朝または夕方に投与される、項目1~23のいずれか1つに記載の方法。
25. THIPまたはその誘導体の1日投与量が、約1 mg~20 mgである、項目1~24のいずれか1つに記載の方法。
26. 医薬組成物が、患者に静脈内投与される、項目1~24のいずれか1つに記載の方法。
27. 患者が投与される、THIPまたはその誘導体の1日投与量が約0.001 mg~30 mgである、項目26に記載の方法。
28. THIPまたはその誘導体が、0.001mg/kg/時間~1 mg/kg/時間の速度で投与される、項目27に記載の方法。

Claims (28)

  1. 患者のニューロンの持続性抑制を増加させるために、神経変性疾患、神経原性障害または中枢神経系障害を有するヒト患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者におけるニューロンの持続性抑制を増加させる方法。
  2. 患者が、脆弱X症候群または脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 患者が、アンジェルマン症候群を有する、請求項1に記載の方法。
  4. 患者におけるニューロンの持続性抑制を増加させるために、脆弱X症候群または脆弱X関連振戦/運動失調症候群を有する患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者における脆弱X症候群または脆弱X関連振戦/運動失調症候群を治療または予防する方法。
  5. 患者におけるニューロンの持続性抑制を増加させるために、アンジェルマン症候群を有する患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者におけるアンジェルマン症候群を治療または予防する方法。
  6. THIPまたはその誘導体の量が、患者において副作用を引き起こすのに有効でない、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
  7. 患者における徐波睡眠(SWS)および/または徐波活動(SWA)を増加させ、睡眠構築を正常化し、二次性不眠症を減少させ、ノンレム(非急速眼球運動(non-rapid eye movement))(NREM)睡眠を増加させ、睡眠の連続性を高め、NREM内のデルタ活動を強化し、総睡眠時間(TST)を増加または改善し、睡眠効率を増加または改善し、総覚醒時間(TAA)を短縮し、覚醒回数を減らし(NWA)、持続睡眠潜時(LPS)を短縮し、中途覚醒(WASO)を減少させるため、または患者におけるそれらの任意の組合せのために、神経変性疾患または中枢神経系障害を有する患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者における二次性不眠症を治療する方法。
  8. 患者における徐波睡眠を増加させるために、神経変性疾患または中枢神経系障害を有する患者に、有効量の4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ(5,4-c)ピリジン-3-オール(THIP)またはその誘導体および医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、患者における徐波睡眠を増加させる方法。
  9. 神経変性疾患が、パーキンソン病(PD)およびPD関連障害、アルツハイマー病(AD)および他の認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、HIV関連認知障害、軽度認知障害、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、フリードライヒ失調症、レヴィー小体病、アルパース病、バタン病、脳・眼・顔・骨格症候群、大脳皮質基底核変性症、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー症候群、クール、リー病、単子葉筋萎縮症、多系統萎縮症、起立性低血圧による多系統萎縮(Shy-Drager症候群)、多発性硬化症(MS)、脳の鉄蓄積を伴う神経変性、オプソクロナス・ミオクローヌス、後皮質萎縮症、原発性進行失調、進行性核上麻痺、血管性認知症、進行性多巣性白質脳症、レビー小体による認知症、ラクナ症候群、水頭症、ヴェルニケ・コルサコフ症候群、脳炎後認知症、癌および化学療法に関連する認知障害および認知症、およびうつ病誘発性認知症および偽認知症からなる群より選ばれる、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
  10. 神経変性疾患が、ハンチントン病である、請求項9に記載の方法。
  11. 神経変性疾患が、パーキンソン病である、請求項9に記載の方法。
  12. 神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症である、請求項9に記載の方法。
  13. 神経変性疾患が、アルツハイマー病である、請求項9に記載の方法。
  14. 患者が、神経変性疾患と臨床的に診断されていない、請求項7~13のいずれか1つに記載の方法。
  15. 患者が、神経変性疾患の有意な身体症状を有しないか、または臨床症状が、神経変性疾患の肯定的な診断には軽度すぎる、請求項7~13のいずれか1つに記載の方法。
  16. 患者が、神経変性疾患であると臨床的に診断されている、請求項7~13のいずれか1つに記載の方法。
  17. THIPまたはその誘導体が、THIPまたはその医薬的に許容しうる塩である、請求項1~16のいずれか1つに記載の方法。
  18. THIPまたはその誘導体が、唯一の活性剤である、請求項1~17のいずれか1つに記載の方法。
  19. 医薬組成物が、有効量のTHIPまたはその誘導体および1種以上の医薬的に許容しうる担体もしくは賦形剤からなる、請求項1~18のいずれか1つに記載の方法。
  20. 医薬組成物が、持続放出用に製剤化される、請求項1~19のいずれか1つに記載の方法。
  21. 医薬組成物が、24~48時間毎に1回投与される、請求項1~20のいずれか1つに記載の方法。
  22. 医薬組成物が、経皮的に投与される、請求項1~21のいずれか1つに記載の方法。
  23. 医薬組成物が、医薬組成物を含む経皮パッチを患者の皮膚に接触させることによって投与される、請求項22に記載の方法。
  24. 医薬組成物が、患者に朝または夕方に投与される、請求項1~23のいずれか1つに記載の方法。
  25. THIPまたはその誘導体の1日投与量が、約1 mg~20 mgである、請求項1~24のいずれか1つに記載の方法。
  26. 医薬組成物が、患者に静脈内投与される、請求項1~24のいずれか1つに記載の方法。
  27. 患者が投与される、THIPまたはその誘導体の1日投与量が約0.001 mg~30 mgである、請求項26に記載の方法。
  28. THIPまたはその誘導体が、0.001mg/kg/時間~1 mg/kg/時間の速度で投与される、請求項27に記載の方法。
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