JP2023122675A - 新規大動脈内バルーン遮断装置 - Google Patents

新規大動脈内バルーン遮断装置 Download PDF

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Abstract

【課題】より合併症の発生を防ぐことのできる大動脈内バルーン遮断方法を開発しそれに適した装置を提供する。【解決手段】大動脈内でのバルーンの膨張・収縮を、心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波をトリガーとして自動で行うことで、バルーンより下流の動脈脈波の、最大血圧及び/又は最小血圧及び/又は脈拍数を下げる方向へ調整するもので、心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波の波形のトリガーからバルーンの収縮・膨張が開始されるまでの応答時間が1秒以下で、バルーンの最大膨張速度が50cc/秒以上、かつ、最大収縮速度が50cc/秒以上である、大動脈内バルーン遮断装置。本発明の装置によれば、より合併症の発生を防ぐことのできる大動脈内バルーン遮断方法を実現できるので、患者の予後を改善できるとともに、重篤な出血の場合だけでなく、中等症、予防的な使用にも、大動脈内バルーン遮断方法を使うことができるようになる。【選択図】図6

Description

本発明は、新規大動脈内バルーン遮断装置に関する。さらに詳しくは、心電図、動脈脈波の特定の波形をトリガーとして、自動でバルーンの膨張・収縮を行うことのできる、新規大動脈内バルーン遮断装置に関する。
大動脈内バルーン遮断の技術は、外的あるいは内的要因による臓器出血に対して使用されるものであり、大腿動脈や上腕動脈などの四肢の動脈より、バルーン付きカテーテルを挿入し、胸部下行大動脈や腹部大動脈内でバルーンを拡張(以下インフレート又は膨張)させることによって、その下流の血流を遮断するものである(適宜、図1参照、以下同じ)。これにより、遮断部位より下流の臓器(例えば、脾臓、腎臓、肝臓、骨盤内臓器など)からの出血を抑制し、同時に脳や心臓、肺などといった生命維持に短時間たりとも欠かせない最重要臓器への血流を維持もしくは増加させることが可能になる。肝・胆・膵・脾・腎・腸管などの腹腔内臓器の出血に対してはZoneI(胸部下行大動脈の左鎖骨下動脈分枝部~腹腔動脈分枝部の間)で遮断を行い、骨盤内臓器や下肢の出血に対してはZoneIII(腎動脈分枝部~左右総腸骨動脈分枝部の間)で遮断を行う。ZoneII(腹腔動脈分枝部~腎動脈分枝部の間)で遮断を行うことは、その他のZoneと比較して付加的な効果がないことに加えて、臓器虚血のリスクを高めるので行われない。大動脈内バルーン遮断は、それだけで止血できるものではなく、一時的な出血コントロール、つまり遮断して時間を稼ぐ間に根治的な止血操作「経カテーテル動脈塞栓術(以下TAE)や止血手術」を行うものである。
大動脈内バルーン遮断(REBOA:Resuscitative Endovascular Balloon Occlusion of AortaやIABO:Intra-Aortic Balloon Occlusion Catheterと称され、以下必要に応じてREBOAと略す)の報告は、1954年の韓国南北戦争時に2人の外傷症例に使用したLieutenant Colonel Hughes の報告が最初であり、2016年にPrytime Medical 社(Boerne, TX)の”REBOA-ER”がFDAに承認されてから、使用件数が爆発的に増えている。
しかしながら、この技術には以下に示す通り多くの医学的合併症が生じるという欠点がある。(イ)臓器虚血障害:遮断部位より下流の血流が遮断されるため、虚血により臓器が可逆的もしくは不可逆的に損傷を受ける。(ロ)血栓症:血液は長い時間停滞したり、乱流が生じると凝血し血栓を形成する。バルーンをインフレートしている間にバルーン付近に血栓を生じて、バルーンを収縮(以下収縮又はデフレート)させたりカテーテルを抜去する際に、形成された血栓が下流臓器に飛んで血管を閉塞しうる(下肢動脈塞栓、脾・腎・肝梗塞、脊髄梗塞、上腸間膜動脈塞栓症など)。(ハ)心不全・脳出血:体内の血液を上半身に集めるような形になるため遮断上流の臓器の血圧が高くなりすぎる場合がある。脳血管の血圧が高くなり破綻して脳出血を引き起こしうる。また、バルーンインフレート中は、心臓にとっては血液を押し出すときの抵抗(以下後負荷)となり心不全を生じる。(ニ)虚血再灌流障害:ある一定時間臓器を虚血の状態にしてその後血流を再開すると、虚血時間中にダメージを受けた組織、細胞内の物質(各種サイトカイン、カリウムなど)が血液中に放出され、それが全身の臓器もしくは局所の臓器や組織、細胞に悪影響を与える現象である。
現在その使用方法を工夫することで合併症を防ぐ試みがなされている。例えば、「intermittent REBOA」と「partial REBOA」という方法がある(非特許文献1~4)。
「intermittent REBOA」(以下、i-REBOA)は、間欠的にバルーンを完全デフレート(フルデフレート)し、下流に血液を流す方法で、バルーンインフレート時間の30-90分毎に5-15分間のデフレート時間を設け下流に血流を再開させる方法である。
「partial REBOA」(以下、p-REBOA)は、バルーンを完全インフレートしないで、不完全に膨張した状態(部分インフレート)で使用する方法で、大動脈径より少し細い状態までバルーンを部分インフレートすることで、下流への血流を担保する方法である。
しかしながら、上記の工夫で臓器虚血障害などの多くの合併症が生じるという欠点は克服されていない。
例えばi-REBOAの問題点として、遮断時間や血流再開時間の適正化がなされていないことがある。インフレート時間の30-90分、あるいはデフレート時間の5-15分という時間設定に医学的根拠はない。5-15分間という比較的長い血流再開時間中に、出血を抑制できなかったり、下流の臓器に血液を取られてしまうため心臓や脳に十分に血液が行きわたらなかったりする事象が発生し、ショックが増悪することがある。このことから、心肺停止や低酸素脳症を引き起こすなど、REBOA本来の目的が達せない場合がある。また、下流の臓器がどのくらいの血流遮断時間に耐えられるのかが解明されておらず、臓器虚血障害を防ぐのに不十分である。さらに、30-90分間という完全遮断時間で、血栓症や虚血再灌流障害が起こりうるし、後負荷が比較的長時間にわたりかかってしまう。すなわち、出血を抑制しつつ臓器虚血障害などの合併症を防ぐには不十分な方法である。
p-REBOAの問題として、血流を抑制して止血を抑えつつなおかつ下流臓器の虚血を防ぐ程度の血流は維持するという条件設定は、非常に難しいうえに症例毎に異なることがある。つまり、出血量は種々の症例毎に異なり、出血量に対する生体の生理的フィードバック機構の発現程度も異なる。さらに、治療中に投与される様々な薬剤の影響を受けることで、心臓拍出量や血管径も経時的に変化する。そのため、個々の症例でどのくらいの大きさにバルーンをインフレートすればよいか決定することは不可能である。さらに、経時的変化に対し用手的に調節する必要もある。この大動脈内バルーン遮断は前述のようにTAEや止血手術中に行うものであるため、そういった止血操作中に、手動でバルーンをインフレート/デフレートして調節することは操作する医師にとって大きな負担となり、時に不可能である。すなわち、出血を抑制しつつ臓器虚血障害等の合併症を防ぐにはこちらも不十分な方法である。
以上の結果として、この技術の外傷患者への使用が外傷患者の生命予後を改善しているかどうかも結論は出ていない。REBOAの使用が、外傷患者の救命率を悪くするというデータもある。そのため、現状、REBOAの適応は慎重にならざるを得ない。現状では適応となる病態は非常に限られている。
また、i-REBOAやp-REBOAのいずれの方法であっても、心拍に同期させる使用方法でないため、既存のREBOAではバルーンの膨張・収縮を迅速に繰り返す必要はなく、バルーンの膨張/収縮は、生理食塩水注入による用手的な数分単位のゆっくりとした拡張/収縮動作にとどまっている。これに使用する装置も、数分単位のゆっくりとした拡張/収縮動作をできるにとどまっている。
一方、心拍に同期して、迅速にバルーンの膨張・収縮を繰り返す、大動脈内バルーンパンピング(Intra Aortic Balloon Pumping:以下IABP)という技術がある。生理食塩水の代わりに管抵抗の少ないヘリウムガスを使用したIABP駆動装置が、心拍に同期した高応答のバルーンの拡張/収縮動作を可能にしている。
このIABPは、循環器科の領域で使われる技術であり、心不全や心筋梗塞などで低下した心臓のポンプ機能をサポートする補助循環法の一種で、血流を遮断あるいは低下させる方向のREBOAとはいわば逆方向の技術である。この技術は、主に大腿動脈からバルーン付カテーテルを挿入し、下行大動脈に両末端が半球状になった円柱状のバルーン先端を留置する。心臓の動きに合わせてバルーンをインフレート/デフレートさせ拍動させるものである。具体的には、心電図波形や動脈圧波形をセンシングして、心臓の心室拡張期にバルーンをインレートし、ポンプ作用により心冠状動脈に流れる血流量の増加を得る、心臓の心室収縮期にバルーンをデフレートし、心臓の後負荷を軽減させる効果を得るものである。
DIRECT REBOAセミナー公式テキストREBOAハンドブック,監修:DIRECT研究会,2021年3月,へるす出版. Resuscitative Endovascular Balloon Occlusion of the Aorta (REBOA): update and insights into current practices and future directions for research and implementation Thrailkill et al. Scandinavian Journal of Trauma, Resuscitation and Emergency Medicine,2021 Jan 6 The complications associated with Resuscitative Endovascular Balloon Occlusion of the Aorta (REBOA), Marcelo A F Ribeiro Junior et al., World J Emerg Surg. , 2018 May 11 藤田健享ら,「REBOAによる出血性ショック治療の最前線」,外科と代謝54(4),p.163-169,2020年10月.
従来の大動脈内バルーン遮断法では臓器虚血障害などの合併症を十分に克服できていない。したがって、本発明の目的は、より合併症の発生を防ぐことのできる大動脈内バルーン遮断方法を開発しそれに適した装置を提供することである。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は、出血量に影響する脈波、特にその主要構成因子である収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍数に着目した。バルーン上流の心電図、動脈脈波に対応してバルーンを膨張・収縮して、バルーン下流脈波の収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍数の値をコントロールすることで、出血を抑えつつも、バルーン下流へ必要最小限の血液を流し臓器虚血などの合併症を防ぐことに思い至り本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.大動脈へ挿入するカテーテルと、その先に膨張・収縮可能なバルーンを備える、大動脈内バルーン遮断装置であって、
大動脈内でのバルーンの膨張・収縮を、心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波をトリガーとして自動で行うことで、バルーンより下流の動脈脈波の、最大血圧及び/又は最小血圧及び/又は脈拍数を下げる方向へ調整するもので、
心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波の波形のトリガーからバルーンの収縮・膨張が開始されるまでの応答時間が1秒以下で、
バルーンの最大膨張速度が50cc/秒以上、かつ、最大収縮速度が50cc/秒以上である、
大動脈内バルーン遮断装置。
2.自動で行うバルーンの膨張・収縮が、心臓の心室収縮期開始を示す波形をトリガーとして、心室収縮期でバルーンを膨張させ、心臓の心室拡張期開始を示す波形をトリガーとして、心室拡張期にバルーンを収縮させることである、前期1の大動脈内バルーン遮断装置。
3.自動で行うバルーンの膨張・収縮が、
複数回の拍動のうちそれより少ない回数の拍動という割合で、心臓の心室収縮期開始を示す波形をトリガーとしてバルーンが収縮し、心臓の心室拡張期開始から心室収縮期開始までに現れるいずれかの波形をトリガーとして膨張し、
残りの拍動の間は、波形に応答せずバルーンは膨張状態を維持する
前記1の大動脈内バルーン遮断装置。
4.自動で行うバルーンの膨張・収縮が、
複数回の拍動のうちそれより少ない回数の拍動という割合で、心臓の心室収縮期開始を示す波形をトリガーとしてバルーンを収縮し、又は収縮状態を維持し、心臓の心室拡張期開始から心室収縮期開始の間に現れるいずれかの波形をトリガーとして膨張し、
残りの拍動の間は、心室収縮期開始を示す波形をトリガーとして心室収縮期でバルーンを膨張させ又は膨張状態を維持し、心室拡張期開始を示す波形をトリガーとしてバルーンを収縮させる、
前記1の大動脈内バルーン遮断装置。
5.バルーンの膨張・収縮をヘリウムガス又は炭酸ガスの移動により行う前記1~4のいずれか1の大動脈内バルーン遮断装置。
6.バルーン下流の動脈脈波の最高血圧及び/又は最低血圧及び/又は脈拍数の計測値からフィードバックして、バルーンの膨張・収縮を調整する機構を有する、前期1~5のいずれか1の大動脈内バルーン遮断装置。
7.バルーンより下流の大動脈に設置され、膨張時に血流を完全遮断する追加バルーンを備える、前期1~6のいずれか1の大動脈内バルーン遮断装置。
本発明の装置によれば、より合併症の発生を防ぐことのできる大動脈内バルーン遮断方法を実現できる。その結果、患者の予後を改善できるとともに、重篤な出血の場合だけでなく、中等症、予防的な使用にも、大動脈内バルーン遮断方法を使うことができるようになる。
ヒトの大動脈の模式図を示した。 各生理的圧力について示した。必要最低灌流圧とは組織が維持されるのに最低限必要な血液量である。 出血量(組織灌流量が相当する)と各生理的圧力の関係を示した。 従来のREBOAにおける生理的圧力と出血の関係を示した。(A)はi―REBOAのとき、(B)はp-REBOAのときの図である。 本発明の装置を使用したときの生理的圧力と出血の関係を示した。(A)は血圧をコントロールしたとき、(B)は脈拍数をコントロールしたときの図である。 本発明の装置の一実施例を動脈へ取り付け済みの状態で示した。 追加バルーンを備える本発明の装置の一実施例を動脈へ取り付け済みの状態で示した。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.大動脈内バルーン遮断装置の構成
大動脈内バルーン遮断装置は、カテーテルの先にバルーンを有するバルーンカテーテル、バルーンを膨張・収縮させるための駆動部分、膨張・収縮を制御する制御部分、から構成される。
さらに、心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波の信号を入力できるようになっていることが必要である。例えば、信号入力のための端子を備えていてもよいし、本発明の装置が、直接、バルーン上流の動脈脈波を計測するためのセンサーを有していてもよい。センサーは、例えば、橈骨動脈などの上半身の末梢動脈に留置する従来の観血的血圧測定器のセンサーでよい。センサーの設置は、上腕や橈骨動脈から、センサーを挿入してもよいし、バルーン付きカテーテル本体の先端にバルーン上流の動脈脈波を測定するセンサーを備えつけ、バルーン付きカテーテルとともに、大腿動脈から挿入してもよい。
また、バルーン下流の動脈脈波の信号を入力できる装置であればより好ましい。この場合、信号入力のための端子を備えていてもよいし、本発明の装置が、直接、バルーン下流の動脈脈波を測定するためのセンサーを有していてもよい。センサーは、例えば、前述の観血的血圧測定器のセンサーでよい。センサーは以下のように設置し動脈脈波を測定すればよい。大腿動脈に留置されているシース(筒)にセンサーを配置しシースとカテーテルの隙間の血流を測定しても良いし、バルーン付きカテーテルを挿入している側と反対側の大腿動脈から、もう一本シースを留置して、そこからセンサーを挿入してもよい。さらには、バルーンカテーテルのバルーン下流のカテーテル部分にセンサーを取り付けて、バルーン付きカテーテルとともに、大腿動脈から挿入してもよい。このようにして、下流センサーを設置し、センサーからの信号によりモニターで下流動脈脈波を観察できれば、下流脈波が適切にコントルールされているか、チェックすることが可能となる。
本発明のバルーン遮断装置は、バルーンが膨張することで大動脈を遮断し、収縮することで血流を開放する。大動脈の遮断には、大動脈を完全に遮断する完全遮断と、一部を遮断する部分遮断が含まれる。同様に開放にも、バルーンを完全に収縮させる完全開放だけでなく、完全には収縮させない、部分開放も含まれる。
大動脈の遮断の程度、開放の程度は、バルーンの膨らみの程度を調整して、調節する。バルーンの膨らみの程度は、遮断、開放が十分にできるよう、10~90%に調整できればより好ましく、0~100%に調整できれば特に好ましい。さらに、膨らみの段階も、自由にすなわち連続的に調整できるのがより好ましいが、0%、20%、40%、60%、80%、100%などと段階的に調整できるものでもよい。
バルーンの膨張・収縮は、心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波の入力信号により、心電図、動脈脈波に応じて自動で行う。通常は心電図を入力するが、電気メスなどの使用でノイズが出ている場合、心停止中や人工心肺使用中の場合、不整脈などで心電図がうまく取れない場合には、上流の動脈脈波を入力信号にして、自動でバルーンの膨張・収縮を行う。
2.心電図、動脈脈波に応じた自動のバルーン膨張・収縮
収縮期血圧(最高血圧)、拡張期血圧(最低血圧)、脈拍数は出血量に影響を与える主要因子である。
本発明は、心電図、バルーン上流の動脈脈波に応じてバルーンを膨張・収縮し、バルーン下流の、収縮期血圧(最高血圧)、拡張期血圧(最低血圧)、脈拍数を下げる方向へコントロールして、出血量を抑制しつつもバルーン下流の必要最低組織灌流量を担保する新しい技術思想に基づく発明である。わかりやすくいえば、これらの因子が低値の代表例は静脈血であり、低圧性で拍動のない静脈性出血は抑えやすく、自然止血も起こりうる。本発明は動脈血を静脈血流に近い低圧性で拍動のない血流に変化させて出血を抑制しつつも、バルーン下流に必要最小限の血液を流すことを目的とした装置の発明である。
例えば、心電図に応じて、血圧が上昇する心臓の心室収縮期にバルーンを部分膨張して下流の最高血圧を抑え、心臓の心室拡張期にはバルーンを部分収縮させて下流へ血液を流すことで、出血を抑えつつ下流へ血液を流すことができる。大動脈内バルーン遮断の本来の目的である出血抑制を維持しながら、合併症防止のためにバルーン下流へ血液を流すことができる。
単に、血流を間欠的に止めたり部分的に遮断するのでなく、心電図及び/又は動脈脈波に応じた高周波のバルーン動作パターンで、バルーン下流の血流を少なくしたり、止めたり、元に戻したりすることで、バルーン下流の収縮期血圧(最高血圧)、拡張期血圧(最低血圧)、脈拍数を下げる方向へコントロールして、出血を抑えつつ下流へ血液を流す。なお、IABPは、心室拡張期に心臓冠状動脈血流量を増加させること、心室収縮期に上流の血流を下げて後負荷を無くすことを目的としており、心室拡張期にバルーンを完全拡張し、上半身の血流を増加せしめ、心室収縮期にバルーンを完全収縮し、血流を再開させる方向でバルーンを調整するもので、本発明とは異なる膨張・収縮の動きとなる。
3.バルーン下流の血圧のコントロール
心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波に応じた、自動のバルーン膨張・収縮は、以下のように行うことができる。
心臓の心室収縮期にバルーンを膨張し、心臓の心室拡張期にバルーンを収縮させることで、バルーン下流の血圧を低下しかつ平準化するようコントロールする。
具体的には、心室収縮期開始を示す波形、例えば、心電図図形でP波の終了直後、又は動脈脈波波形で拡張末期圧が最も低くなるタイミングを示す波形をトリガーとして、バルーンを膨張させる。そして、心室拡張期開始を示す波形、例えば心電図図形でT波の頂点付近又は大動脈脈波でdicrotic notchの波形をトリガーとして、収縮を開始する。念のために付け加えると、心室拡張期終了の波形も、続いて収縮期開始となる訳だから、心室収縮期開始を示す波形といえる。同様に、心室収縮期終了の波形も、続いて拡張期開始となる訳だから、心室拡張期開始を示す波形といえる。
本発明では、バルーンを膨張・収縮(部分膨張、部分収縮を含む)させて、大動脈の完全遮断、完全開放、部分遮断、部分開放を行う。バルーンの膨らみの程度を調整できるので、完全遮断、完全開放、部分遮断、部分開放を自由に行うことができる。なお、大動脈の太さにより、必ずしも完全膨張が完全遮断ということにはならない。むしろ部分膨張で完全遮断となることが多い。
バルーンの膨張の程度、収縮の程度は、出血の状態、バルーン下流の脈波の血圧、脈拍数を考慮するなどして、設定する。膨張の程度、収縮の程度は一定である必要はなく、出血状態、脈波の状況により、途中で変更してもよい。出血の程度が制御できていなければバルーンの膨張の程度を高く設定したり、収縮の程度を低く設定したりする。逆に、脈波が必要組織最低灌流量に満たない場合は、バルーンの膨張の程度を低く設定したり、収縮の程度を高く設定したりする。
装置としては、上記のように心電図及び/又は動脈脈波の信号に応じて、自動膨張・収縮を行うことのできる制御プログラムを有する。
4.バルーン下流の脈拍数のコントロール
心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波に応じた、自動のバルーン膨張・収縮は、以下のように行うこともできる。
全身へ血液を送り出す心臓の心室収縮期の間は少なくとも、複数の拍動のうちそれより少ない回数の拍動でバルーンを収縮する。例えば、拍動3回のうち2回、4回のうち1回、11回のうち1回でバルーンを収縮すればよい。バルーン収縮時には拍動が再開されることになる。3回のうち2回(1回遮断、2回開放)であれば2/3に、4回に1回(3回遮断、1回開放)であれば1/4に、11回に1回(10回遮断、1回開放)であれば、1/11にバルーン下流の拍動数をコントロールできる。開放する割合は、出血状態やバルーン下流の脈波の血圧、脈拍数を考慮して、設定する。この割合は一定である必要はなく、出血状態等により、途中で変更してもよい。出血の程度が制御できていなければ開放する割合を少なくし、逆に、脈波が必要組織最低灌流量に満たない場合は開放する割合を多くする。
このようにして、拍動数を下げる方向にコントロールすることで出血を抑えつつ、バルーン下流へ血液を流す。バルーン収縮の回数比は、自由に設定できると特に好ましいが、1:2(拍動2/3になる)~10:1(拍動1/11になる)程度の幅で設定できることでもよい。
なお、心拍数が高い場合は、より速い応答時間、より速い膨張・収縮速度が求められることになる。
4回に1回開放するとき残りの3回が部分遮断であれば、脈波を弱く残すことになるが、考え方として同様である。
具体的には、心臓の心室収縮期開始を示す波形、例えば心電図図形でP派の終了直後又は大動脈波で拡張末期圧が最も低くなるタイミングを示す波形をトリガーとしてバルーンが収縮し、心室拡張期開始から心室収縮期開始までに現れるいずれかの波形、例えば心電図図形でT波の頂点付近又は大動脈脈波でdicrotic notchの波形又は心電図図形で再度のP派の終了直後の波形又は大動脈波で拡張末期圧が最も低くなるタイミングを示す波形をトリガーとしてバルーンを膨張する。残りの拍動の間は、波形に応答せずバルーンは膨張状態を維持する。念のために付け加えると、心室拡張期終了の波形も、続いて収縮期開始となる訳だから、心室収縮期開始を示す波形といえる。心臓の収縮期終了の波形も、続いて拡張期開始となる訳だから、心室拡張期開始を示す波形といえる。
バルーンを膨張・収縮(部分膨張、部分収縮を含む)させて、大動脈の完全遮断、完全開放、部分遮断、部分開放を行う。本発明の装置では完全遮断、完全開放、部分遮断、部分開放を自由に行うことができる。なお、大動脈の太さにより、必ずしも完全膨張が完全遮断ということにはならない。むしろ部分膨張で完全遮断となることが多い。
装置としては、上記のように心電図及び/又は動脈脈波の信号に応じて、自動膨張・収縮を行うことのできる制御プログラムを有する。
5.バルーン下流の血圧と脈拍数のコントロール
自動のバルーン膨張・収縮は、前述の2つの方法を組み合わせ行うこともできる。複数の拍動のうちそれより少ない回数の拍動でバルーンを収縮し、残りの拍では大動脈を遮断するのでなく、バルーン下流の血圧をコントロールしてバルーン下流に血液を流す方法である。例えば以下の通りの方法である。
1拍目(心拍数調整):心臓の心室収縮期開始を示す波形をトリガーとしてバルーンを収縮し、心室拡張期開始~心室収縮期開始の間に現れる特定の波形をトリガーとして膨張する。
2拍目(血圧調整):次の心室収縮期開始を示す波形では膨張状態を維持し(ある程度収縮させ遮断部分を狭める場合も含む)又は膨張し、心室拡張期開始を示す波形をトリガーとして収縮する。「ある程度」を規定するのは難しいがおよそ大動脈断面積の半分程度となる収縮である。
3拍目(血圧調整):心室収縮期開始を示す波形をトリガーとして膨張し、心室拡張期開始を示す波形をトリガーとして収縮する。これを繰り返す。
N拍目(心拍数調整):心室収縮期開始を示す波形で収縮状態を維持し(ある程度膨張させ、開放部分を狭める場合も含む)又は収縮し、心室拡張期開始~心室収縮期開始の間に現れる特定の波形をトリガーとして膨張する。「ある程度」を規定するのは難しいがおよそ大動脈断面積の半分程度となる膨張である。
N+2拍目(血圧調整):2拍目と同様である。
N+3拍目(血圧調整):3拍目と同様である。
膨張の程度、収縮の程度、開放する割合は、出血状態やバルーン下流の脈波の血圧、脈拍数を考慮して、設定する。これらは途中で変更してもよい。
装置としては、心電図及び/又は動脈脈波の信号に上記のように応じて、自動膨張・収縮を行うことのできる制御プログラムを有する。

[出血を防ぎつつ臓器虚血を防ぐ原理]
バルーン下流の出血を防ぎつつも、必要最低灌流圧を保って臓器虚血の合併症を防ぐことができる仕組みを詳しく説明する。
(1)出血量のコンロトロールとは
各生理的圧力は図2であらわすことができる。脈波を構成する主因子は、動脈圧の、最高血圧(収縮期血圧)、最低血圧(拡張期血圧)及び、脈拍数である。正常状態の組織灌流は脈波が組織圧より高い部分で生まれる。つまり組織灌流量は、脈波から組織圧を引き時間にて積分した量となり、図3の濃い灰色部分の面積で表される。医学的前提として、必要最低組織灌流量は、正常範囲の動脈圧ほどは必要なく過分である。また、最高血圧の山、最低血圧の谷からなる波である必要はなく、定常流でも良い。つまり、必要最低組織灌流量は、正常の動脈圧や脈拍数は過分であり、図3で示す濃い灰色部分の面積がある程度確保されていれば良いことになる。
一方、出血とは、動静脈内の血液や組織を灌流する血液が血管外に出ていくことであるため、出血量も濃い灰色部分の面積に比例する。そのため出血量を抑制するということは、図3における濃い灰色部分の面積を減らすことと置き換えて考えられる。
例えば、止血のために動脈を遮断するという方法は、遮断している時間に脈波を下げることであり、図3では濃い灰色部分の面積をゼロにするということであり、必然的に遮断した部位の下流の組織灌流量もゼロになる。また、組織を圧迫する方法では、図3では、組織圧を脈波よりも高めることで、濃い灰色部分の面積がゼロになる。やはり圧迫している部分の組織灌流量もゼロとなる。
(2)従来のREBOA
従来のi-REBOAは30-90分の膨張中、止血できるが、組織灌流が全くなくなってしまう。この間に臓器虚血障害が起こるし、血栓も生じる。また5-15分間の収縮中組織灌流を再開できるが、この間出血をコントロールできない(図4(A))。p-REBOAでは、下流組織への灌流を確保しうるが、バルーンの拡張が過少の場合、出血量を抑制できず、過大の場合組織灌流量が足りなくなる(図4(B))。[0006]で述べたとおり、実臨床では経時的に動脈脈波が変化するため、バルーンを適切な状態に調整することは不可能である。
(3)本発明の大動脈内バルーン遮断
本発明で、心室収縮期にバルーンを部分遮断、心室拡張期に部分~完全開放した場合の、生理的圧力の反応を図5(A)に示した。出血量を減少させつつ、必要最低組織灌流圧を確保するイメージである。また、図5(B)では、脈拍に対する完全遮断と部分開放の割合を2:1とした場合の、生理的圧力の図を示した。脈拍数をコントロールすることで、出血を抑える仕組みを示している。
6.バルーン上流の重要臓器への血流維持
以上の通り、バルーンの膨張・収縮を制御するが、当然ながら大動脈内バルーン遮断の第一の目的はバルーン上流の、脳、心臓、肺などの重要臓器への血流を維持することなので、バルーン上流の血圧が維持できないと判断したときは、手動モードに切り替えて、大動脈を完全遮断してもよい。本発明の装置は手動操作への切り替えモードを備え、必要に応じて手動で操作できることがより好ましい。
7.装置の応答時間とバルーン膨張・収縮の最大速度
バルーンの膨張・収縮のタイミングに遅れが生じないように、装置の応答性とバルーンの膨張収縮速度が、心臓の動きに対して十分に早い必要、すなわち、心電図や大動脈波の動きに対して、十分に早い必要がある。
装置の応答時間は1秒以下が好ましく、200ms以下がより好ましく、100ms以下がさらに好ましく、10ms以下であれば特に好ましい。応答時間は短いほど良いが、
心臓の動きはミリ秒単位なので、1ms程度とできれば十分と考えられる。応答時間とは、正確には、制御システムへの入力信号に対して出力信号が対応するまでの時間のことを言う。
膨張の最大速度は、バルーン50ccを膨らませるのに1秒以下が好ましく、100ms以下であればより好ましい。収縮の最大速度も50cc収縮させるのに1秒以下が好ましく、100ms以下であればより好ましい。膨張速度は速いほど好ましいが、心臓の動きはミリ秒単位なので、50cc/10ms程度にできれば十分の可能性もある。
応答時間と膨張速度を足し算すると、スイッチを押してから50cc膨張し終わるまで、1秒+1秒=2秒以下ということになる。
この膨張・収縮速度を実現するため、バルーンの膨張・収縮は、管抵抗の少ないヘリウムガス又は炭酸ガスの移動で行うのがより好ましい。抵抗がより少ないという点ではヘリウムガスが優れているが、バルーンが破けたときの危険性は炭酸ガスの方が少なく、災害現場や戦場などの、病院前救護での使用には炭酸ガスの方が入手しやすく、安全であり、炭酸ガスにもメリットがある。
これら気体を移動させる駆動部分、代表的にはポンプには、例えばIABPで使われている、コンプレッサー方式のポンプ、ベローズ方式のポンプを使えばよい。
8.バルーンの形状
バルーンの形状は、特に制限はなく、例えば球状や、両末端が半球状になった円柱状でよい。円柱状であれば、心臓の遠位側から近位側へ膨らむか、近位側から遠位側へ膨らむかの膨らみ方によっては、それぞれ上流や下流への血圧に影響を与えることができる。また、大動脈圧が高い場合、バルーンを膨張させている間に、血圧によりバルーンを押し流す力が働く。その力でカテーテルが変形・破損してしまうことが起こりうる。円柱状バルーンは血管壁により支えられるため、変形をより起こしにくいというメリットがある。ただし、円柱状のバルーンは長径が長いため、バルーンの位置調整が難しいので注意を要する。バルーンが、総頚動脈や鎖骨下動脈までかかると、脳への血流がバルーン拡張時に遮断されることになる。
9.臓器虚血防止以外のメリット
以上の方法で、出血を抑制しつつ、バルーン下流へ血液を流すことができるので、臓器虚血の合併症をより抑えることができるようになるが、他にも、間欠的なバルーンの動作がミリ秒単位で行われるため、長時間の血流のうっ滞は起こらないので血栓形成が起こりにくくさらに後負荷がかかる時間を短縮できると考えられる。
また、従来のREBOAの際は、TAEや手術などの止血操作中にバルーンを用手的に操作する必要があり、医師にとって障害になっていたが、本発明の装置では、プログラム化された機械動作で自動管理されるため管理が容易となる。
さらには、REBOAではZoneIやZoneIIIでの使用のみであり、ZoneIIにバルーンの位置が異常にずれてしまった場合、出血量が増えてしまったり、虚血障害の発生が懸念され位置を修正する必要があった。しかし、本発明の装置では下流への血流を確保しているため、バルーンがZoneIIにずれたとしても、出血の原因となる血管を遮断している限りは、そのまま使用することが可能になる。
また、合併症が起こりにくいことにより、間接的には、以下のメリットがある。従来のREBOAよりも長時間の使用が可能になる。さまざまな病態や疾患への適応拡大。戦場や災害現場などの病院前救護、つまり病院外での使用が可能になる。つまり、REBOAは重症外傷出血のような重篤な循環血液量減少性ショックのみが適応の対象となっていたが、本発明では、軽傷から中等症のショックに対しての使用、麻酔導入時の急激な血圧低下を防ぐための予防的使用、また敗血症性ショックやアナフィラキシーショックのような血液分布異常性ショックにも使用できることになる。そのため、病院内診療での精査に基づいた確定診断がつく前の状態でも、応急処置として使用することが可能になる。
10.バルーン下流の血圧等によるフィードバック制御
本発明の装置は、バルーン下流の動脈脈波の血圧、脈拍数を解析して、バルーンの膨張・収縮にフィードバックする機能を有していてもよい。例えば、ある時点での、バルーンの膨張収縮の設定下において、下流の脈波が必要最低組織灌流量に満たない場合、バルーンの膨張の程度を抑制したり、収縮の頻度を増加する方向に自動調節する。逆に出血が抑制できない、言いかえれば上流の脈波が十分に上がらない場合は、膨張の程度を増加させる。膨張の頻度を増加させるなどして下流血流遮断の程度を増加する方向に自動応答する機能である。
11.追加バルーンを備えた本発明の装置
本発明の装置は、バルーン下流の大動脈に設置する追加バルーンを備えてもよい。追加バルーンは膨張時に血流を完全遮断する。
今まで述べた本発明の大動脈内バルーン遮断装置で十分な合併症抑制効果を有するものの、出血量が過度に大量の場合は、血流を下流に流すことで、上流の血圧を十分に保てない場合も考え得る。通常その場合は、輸血を行い、迅速に止血することで対応すべきであるが、輸血や止血術が間に合わない状況が少なからずある。その際、従来のREBOAのようにいきなりゾーンIで完全遮断するのでなく、本発明のバルーンによるゾーンI遮断と、追加バルーンによるゾーンIII完全遮断を併用し、下肢より下流の血流は犠牲にしつつ、バルーンと追加バルーンの間から血流を受ける腹腔内臓器の虚血障害を少しでも防ぐための工夫となる。
追加バルーンによる大動脈遮断は、上流側バルーンの膨張・収縮では、上流側バルーンの上流の動脈脈波の血圧が、脳、心臓、肺などの重要臓器を維持するのに不十分となったときに、自動的に行われるとより好ましい。
追加バルーンは迅速に膨張・収縮を繰り返す必要はないため、生理的食塩水の出し入れによる膨張・収縮で構わない。
12.本発明の装置の製造方法
IABP用の装置に準じて製造できるが、制御プログラムは、今まで述べたような、バルーン上流の心電図及び/又は大動脈波の信号を取り込んで、バルーン下流の収縮期血圧及び/又拡張期血圧及び/又脈拍数の値を下げる方向にバルーンを自動で膨張・収縮させるものを備える。
13.使用方法
本発明の装置のバルーンカテーテルを、大腿動脈や上腕動脈などの四肢の動脈より挿入し、胸部下行大動脈や腹部大動脈内にバルーンを設置する。各種センサーを「1.大動脈内バルーン遮断装置の構成」で述べたように設置し、心電図及び/又はバルーンより上流の動脈脈波、及び必要に応じて下流の動脈脈波の信号が入力される状態にする。
制御プログラム、例えば[0012]2、3、4に対応する制御プログラムのいずれか、を選択し、さらに、心室収縮期開始を示す波形に何を選択するか、拡張期開始を示す波形に何を選択するか、拡張期開始から収縮期開始までに現れる波形に何を選択するかを設定し、膨張の程度・収縮の程度、及び/又は開放の割合を設定すれば、あとは、自動的に膨張・収縮を行う。
実施例1 本発明の装置の一実施例
本発明の装置の一実施例を示した(図6)。バルーンカテーテル(1)とバルーンにガスを供給するガス供給管(2)、バルーンを膨張収縮させるためのポンプ(3)、心電図センサー(4)、バルーンカテーテルの先端に取り付けられた上流の動脈脈波を計測するためのセンサー(5)とその信号伝導路(6)、下流の動脈脈波を計測するためのセンサー(7)とその信号伝導路(8)と、これらからの信号を表示する表示部分(9)、心電図、上流の大動脈脈波に応じて膨張・収縮を制御する制御部分(10)がある。
バルーンカテーテル(1)は、両側鼠経動脈にシースを設置して、その片側(11)から挿入される。もう一方のシース(12)からは、下流の大動脈波を計測するセンサー(7)が挿入される。
本発明の装置を使用する際は、本発明の装置を大動脈に挿入し、設置する。制御プログラムは、例えば、心室収縮期にバルーンが膨張し、心室拡張期にバルーンが収縮するプログラム([0012]2)を選ぶ。この場合、さらに、例えば、心室収縮期開始の波形を心電図のP波の終了直後に設定し、心室拡張期開始の波形をT波の頂点に設定する。次に、膨張の程度、収縮の程度、動脈の開放割合を設定する。あとは、自動で、心電図及び/又は上流の動脈脈波に応じて、膨張・収縮が行われる。また、その後も、出血の程度、下流脈波の血圧、脈拍を観察しながら、必要に応じて、膨張の程度、収縮の程度、動脈の開放割合を変更してもよい。
実施例2 追加バルーンを備える本発明の装置
追加バルーンを備える本発明の装置(図7)は、実施例1の装置に加えて、バルーンの下流に設置する追加バルーン(13)を備えている。ただし、下流動脈脈波の測定は追加バルーン先端のセンサー(14)でできるので、独立して下流の動脈脈波を計測するためのセンサーは備えていない。追加バルーンは生理食塩水の移動で膨張収縮する従来のREBOAに使われているバルーンである。
追加バルーンカテーテルは、上流のバルーンを挿入したのと反対側の鼠経動脈に設置されたシースから挿入して、総腸骨動脈分枝部で下肢あるいは骨盤内臓器の一部の血流を完全に遮断する。バルーンと追加バルーン上流の血流を維持しつつ、バルーンと追加バルーンの間の臓器虚血を抑制することができる。
使用方法は、実施例1と基本的に同様であるが、加えて、大量出血の場合で、輸血や迅速な止血術が間に合わない状況のときに、追加バルーンを膨張させる。
本発明の装置によれば、合併症を少なくすることができるので、患者にとって極めて有用であるし、大動脈内バルーン遮断装置が広く使われるようになりその需要が増大するので、医療機器業界にとっても有用である。
1 バルーンカテーテル
2 ガス供給管
3 ポンプ
4 心電図センサー
5 上流の動脈脈波を計測するためのセンサー
6 上流動脈脈波の信号伝導路
7 下流の動脈脈波を計測するためのセンサー
8 下流動脈脈波の信号伝導路
9 表示部分
10 制御部分
11 バルーンカテーテルを挿入するシース
12 対側の大動脈のシース
13 追加バルーン
14 追加バルーン先端のセンサー

Claims (7)

  1. 大動脈へ挿入するカテーテルと、その先に膨張・収縮可能なバルーンを備える、大動脈内バルーン遮断装置であって、
    大動脈内でのバルーンの膨張・収縮を、心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波をトリガーとして自動で行うことで、バルーンより下流の動脈脈波の、最大血圧及び/又は最小血圧及び/又は脈拍数を下げる方向へ調整するもので、
    心電図及び/又はバルーン上流の動脈脈波の波形のトリガーからバルーンの収縮・膨張が開始されるまでの応答時間が1秒以下で、
    バルーンの最大膨張速度が50cc/秒以上、かつ、最大収縮速度が50cc/秒以上である、
    大動脈内バルーン遮断装置。
  2. 自動で行うバルーンの膨張・収縮が、心臓の心室収縮期開始を示す波形をトリガーとして、心室収縮期でバルーンを膨張させ、心臓の心室拡張期開始を示す波形をトリガーとして、心室拡張期にバルーンを収縮させることである、請求項1の大動脈内バルーン遮断装置。
  3. 自動で行うバルーンの膨張・収縮が、
    複数回の拍動のうちそれより少ない回数の拍動という割合で、心臓の心室収縮期開始を示す波形をトリガーとしてバルーンが収縮し、心臓の心室拡張期開始から心室収縮期開始までに現れるいずれかの波形をトリガーとして膨張し、
    残りの拍動の間は、波形に応答せずバルーンは膨張状態を維持する
    請求項1の大動脈内バルーン遮断装置。
  4. 自動で行うバルーンの膨張・収縮が、
    複数回の拍動のうちそれより少ない回数の拍動という割合で、心臓の心室収縮期開始を示す波形をトリガーとしてバルーンを収縮し、又は収縮状態を維持し、心臓の心室拡張期開始から心室収縮期開始の間に現れるいずれかの波形をトリガーとして膨張し、
    残りの拍動の間は、心室収縮期開始を示す波形をトリガーとして心室収縮期でバルーンを膨張させ又は膨張状態を維持し、心室拡張期開始を示す波形をトリガーとしてバルーンを収縮させる、
    請求項1の大動脈内バルーン遮断装置。
  5. バルーンの膨張・収縮をヘリウムガス又は炭酸ガスの移動により行う請求項1~4のいずれか1の大動脈内バルーン遮断装置。
  6. バルーン下流の動脈脈波の最高血圧及び/又は最低血圧及び/又は脈拍数の計測値からフィードバックして、バルーンの膨張・収縮を調整する機構を有する、請求項1~5のいずれか1の大動脈内バルーン遮断装置。
  7. バルーンより下流の大動脈に設置され、膨張時に血流を完全遮断する追加バルーンを備える、請求項1~6のいずれか1の大動脈内バルーン遮断装置。



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