以下の実施例のうちの1つまたは複数によって、本発明のいくつかの実施形態が例示される。ある実施例の特徴を別の実施形態の特徴と組み合わせて、本発明の追加の例示的な実施形態を提供してもよいことが留意される。
実施例1. 患者の脳容積内に導入した容積アダプタの体積を繰り返し調節することによって、上記患者の脳灌流に影響を与えるための方法であって、
上記患者の心臓活動において、脳血流周期の一部を形成する収縮期の脳血液流入のタイミングまたはその兆候を推定することと、
体積が減少した状態とするための上記容積アダプタの体積の縮小と、上記脳血液流入の上記推定されたタイミングとを同期させて、上記脳容積内の頭蓋内圧を減少させるのに十分な量まで上記体積を縮小させて、上記脳血液流入の流量を向上させることと、
上記容積アダプタの体積を、上記体積の減少した状態と比較して体積の増加した状態へと増加させることであって、増加させた体積は、上記脳血流周期の30%未満の期間において、上記体積の減少した状態の体積よりも20%超大きい増加ことと、
を含む、患者の脳灌流に影響を与えるための方法。
実施例2. 上記患者の上記心臓活動における脳血液流出のタイミングを推定することを更に含み、
上記増加を、推定された上記脳血液流出のタイミングと同期させて実施し、このことにより上記脳容積内の頭蓋内圧を増加させて、上記脳血液流出の流量を向上させる、実施例1に記載の方法。
実施例3. 上記患者の上記心臓活動における拡張期のタイミングを推定することを更に含み、
上記増加を、静脈流出量を増加させるように上記拡張期と同期させて実施し、続いて脳灌流を増加させるように更なる縮小を実施し、これらを全て同じ周期内で行う、実施例1に記載の方法。
実施例4. 上記増加を、上記減少の前に、上記周期の1/3超の期間実施する、実施例3に記載の方法。
実施例5. 上記増加を、上記減少の前に、上記周期の1/3未満の期間実施する、実施例1に記載の方法。
実施例6. 上記縮小を、上記収縮期の開始後10ms経過する前に完了する、実施例1に記載の方法。
実施例7. 上記増加を、約0.05ml/msecから約1ml/msecの速度で行う、実施例2に記載の方法。
実施例8. 上記増加を、脳血液流出のタイミングの前に開始する、実施例1に記載の方法。
実施例9. 上記タイミングを、患者のECG信号に基づいて推定する、実施例1に記載の方法。
実施例10. 上記患者を1時間を超える期間にわたってモニタリングすることと、
上記モニタリングによって上記患者の生理的入力を検出することと、
上記生理的入力に基づいて上記縮小の程度および上記縮小のタイミングの一方または両方を調節することと、
を更に含む、実施例1に記載の方法。
実施例11. 上記患者を1時間を超える期間にわたってモニタリングすることと、
上記モニタリングによって上記患者の生理的入力を検出することと、
上記生理的入力に基づいて上記縮小に対する、上記増加の程度および上記増加のタイミングの一方または両方を調節することとを更に含む、実施例1に記載の方法。
実施例12. 上記生理的入力の検出が、CBF、CPP、ICP、およびそれらの積分値、時間微分、ならびに/またはこれらを複合したものの内の1種または複数種を含む、実施例10に記載の方法。
実施例13. 上記アダプタを上記脳容積内に導入することと、
上記アダプタの体積の初期の増加の前、または上記増加と同じ周期内で、上記脳容積から脳脊髄液の一部を排出することと、
を更に含む、実施例1に記載の方法。
実施例14. 上記初期の増加が、流体の更なる除去と同期した、いくつかの周期にわたる増加を含む、実施例13に記載の方法。
実施例15. 上記初期の増加が、上記周期の拡張期部分の間の増加を含む、実施例13に記載の方法。
実施例16. 体積およびタイミングの両方を含む、上記容積アダプタの初期設定値の決定を含む、実施例1〜15のいずれか1つに記載の方法。
実施例17. 上記初期タイミング設定値の決定は、上記増加と上記減少との間の最短の遅延、または最短に近い遅延であり、それを下回ると臨床有効性が大きく損なわれるような遅延を決定することを含む、実施例16に記載の方法。
実施例18. 上記容積アダプタが、少なくとも1ccの流体を含む、ベースライン縮小体積を有する、実施例1〜15のいずれか1つに記載の方法。
実施例19. 上記増加が、圧縮不可能な流体を充填することを含む、実施例1〜15のいずれか1つに記載の方法。
実施例20. 上記増加が、拡張体内の圧縮可能な流体の圧力を増加させることを含む、実施例1〜15のいずれか1つに記載の方法。
実施例21. いくつかの頭蓋圧力周期にわたって、上記患者の脳室内に導入された容積アダプタの体積を繰り返し調節することによって、患者の脳灌流に影響を与えるための方法であって、
上記患者の心臓活動における脳血液流出のタイミングを推定することと、
上記容積アダプタの体積の拡張と、上記脳血液流出の上記推定されたタイミングとを同期させて、上記脳室内の頭蓋内圧を増加させるのに十分な量まで上記体積を拡張させて、上記脳血液流出の流量を向上させることであって、
上記拡張が、脳血流周期時間の30%未満の期間にわたる、患者の脳灌流に影響を与えるための方法。
実施例22. 収縮期中の上記脳への血液の流入前に、動脈からの血液の灌流が可能となるように、上記拡張に続いて上記体積の縮小を行う、実施例21に記載の方法。
実施例23. 上記患者の上記心臓活動における脳血液流入のタイミングを推定することと、
上記脳室内の頭蓋内圧を減少させている間に、上記容積アダプタの体積の縮小と、上記脳血液流入の上記推定されたタイミングとを同期させて、上記脳血液流入の流量を向上させることと、
を更に含む、実施例21に記載の方法。
実施例24. 上記拡張を、上記周期の拡張期の最初の60%の間に実施する、実施例21に記載の方法。
実施例25. 上記拡張を、上記周期の拡張期の最後の37%の間に実施する、実施例21に記載の方法。
実施例26. 上記患者の生理的入力を検出することと、
上記生理的入力に基づいて、上記拡張および/または上記拡張後の縮小の程度および/またはタイミングならびに/あるいは拡張の継続時間を調節するか否かを決定することと、
を更に含む、実施例21に記載の方法。
実施例27. 上記決定を5分に1回の頻度で行う、実施例26に記載の方法。
実施例28. 上記脳室が脳脊髄液空間である、実施例21に記載の方法。
実施例29. 上記脳室が上記患者の動脈系の少なくとも一部に対して機械的影響を及ぼす状態にある、実施例28に記載の方法。
実施例30. 上記脳室が、上記患者の静脈系の少なくとも一部に対して機械的影響を及ぼす状態にある、実施例29に記載の方法。
実施例31. 上記静脈系が、上記患者の静脈同士を橋渡ししている、実施例29に記載の方法。
実施例32. 脳血液体積を5〜30%の範囲内で増加させることによって、上記脳血液流入および/または上記脳血液流出の上記流量を増加向上させる、実施例21に記載の方法。
実施例33. 上記頭蓋内圧の増加が2〜10%の範囲内である、実施例21に記載の方法。
実施例34. 患者の脳における脳灌流に影響を与えるためのシステムであって、
患者の頭蓋骨内に導入可能なサイズおよび形状の、拡張可能な区画を有する容積アダプタであって、頭蓋内圧を有意に減少させるサイズである縮小した状態と、頭蓋内圧を有意に増加させるサイズである拡張した状態との間で切り替えることによって動作可能な容積アダプタと、
上記患者の生理的出力を測定するための少なくとも1つのセンサと、
上記容積アダプタを動作させるように連通し、上記生理的入力に基づいて、脳血液流入および脳拡張期の少なくとも一方のタイミングを予測し、かつ上記容積アダプタの上記縮小した状態への切り替えと、脳血液流入の前記タイミングとを同期させるための命令を有する、プロセッサであって、
上記プロセッサが、心周期の継続時間の50%未満の期間、上記容積アダプタを縮小していない状態に維持するように構成されており、
上記プロセッサが、1000回の連続した心周期のうち少なくとも100回の心周期に対して、上記切り替えを適用するように構成されている、
患者の脳における脳灌流に影響を与えるためのシステム。
実施例35. 上記プロセッサが、上記生理的入力に基づいて脳血液流出のタイミングを予測し、かつ上記容積アダプタの上記拡張した状態への切り替えと、前記脳血液流出のタイミングとを同期させるための命令を更に含む、実施例34に記載のシステム。
実施例36. 50ms(ミリ秒)未満の期間に、上記容積アダプタを縮小した状態から拡張した状態へと切り替えるように動作し得るポンプを備える、実施例34に記載のシステム。
実施例37. 上記拡張可能な区画には流体が収容されている、実施例34に記載のシステム。
実施例38. 上記プロセッサが、スイッチを提供するための上記ポンプの動作と連動した、外部脳室ドレーンを制御するための命令を有する、実施例34に記載のシステム。
実施例39. 上記容積アダプタの最大体積が、3から6cc(立方センチメートル)の間である、実施例34に記載のシステム。
実施例40. 生理学的センサを更に備え、
上記プロセッサが、上記センサからの入力に応答して、上記ポンプの少なくとも1つの動作パラメータおよび/または少なくとも1つのタイミングパラメータを調整するための命令を有する、実施例34に記載のシステム。
実施例41. 患者の生理学的反応に応答してシステムの一群の動作パラメータを連続的に調整するための命令を有するコントローラを含む、実施例40記載のシステム。
実施例42. タイミングパラメータが拡張と縮小との間の間隔を含み、ポンプのパラメータが拡張の容積を含む、実施例40に記載のシステム。
実施例43. 変形可能な上記区画が伸展性のない壁を備える、実施例34〜42のいずれか1つに記載のシステム。
実施例44. コントローラが、上記脳内の圧力が相対的に低い場合に、上記容積アダプタを第1の拡張状態へと漸進的に拡張させるための命令を有する、実施例34〜42のいずれか1つに記載のシステム。
実施例45. コントローラが、一連のパラメータ設定を試験することによって、パラメータの初期動作群を自動的に識別するための命令を有する、実施例34〜42のいずれか1つに記載のシステム。
実施例46. コントローラが、上記脳の伸展性を特定するための圧力容積曲線を自動的に生成するための命令を有する、実施例34〜42のいずれか1つに記載のシステム。
実施例47. 患者の脳室内に導入された容積アダプタの体積を繰り返し調節することによって、上記患者の脳灌流に影響を与えるための方法であって、
脳血流周期と相関する上記患者の心臓活動における脳血液の流入および/または流出のタイミングを推定することと、
少なくとも1周期中に2回、上記容積アダプタの体積の縮小および拡張と、上記タイミングとを同期させて、上記脳室内の頭蓋内圧を調節するのに十分な量まで上記体積を縮小および拡張させて、上記脳血流の流量を向上させることと、
を含む、患者の脳灌流に影響を与えるための方法。
実施例48. 患者の脳の容積変化を制御するための方法であって、
脳内の流体体積の変化または予想される変化を特定することと、
上記予想される変化と同期して、または上記特定に応じた変化とは逆の極性のときに、流体を自動的に追加または除去することと、
を含む、患者の脳の容積変化を制御するための方法。
実施例49. 上記追加を、脳の拡張期の圧力の谷のところで実施する、実施例48に記載の方法。
実施例50. 上記変化および上記追加または除去の1種を、脳の流体から遮断された区画内で行う、実施例48に記載の方法。
実施例51. 上記同期が同じ心周期内に含まれる、実施例48に記載の方法。
実施例52. 上記変化または予想される変化が、人の手によるものであるかまたは自然なものである、実施例48に記載の方法。
以下は、本発明のいくつかの実施形態に係る一群の追加の実施例である。
実施例1. 患者の脳室に導入した容積アダプタの体積を調節することによって、患者の脳灌流に影響を与えるための方法であって、
患者の心臓活動において脳血液流入のタイミングを識別することと、
脳血液流入の識別されたタイミングと同期させて、容積アダプタの体積を脳室内の頭蓋内圧を減少させるのに十分な量まで縮小させて、脳血液流入の流量を向上させることと、
を含む、患者の脳灌流に影響を与えるための方法。
実施例2. 患者の心臓活動において脳血液流出のタイミングを識別することと、
脳室内の頭蓋内圧を増加させている間に、識別された脳血液流出のタイミングと同期させて容積アダプタの体積を拡張させて、脳血液流出の流量を向上させることと、
を更に含む、実施例1に記載の方法。
実施例3. 拡張を、約0.5ml/secから約1.5ml/secの速度で行う、実施例2に記載の方法。
実施例4. 拡張を、脳血液流出のタイミングの予測の前に開始する、実施例2〜3のいずれか1つに記載の方法。
実施例5. 縮小を、脳血液流入のタイミングの予測の前に開始する、実施例2〜4のいずれか1つに記載の方法。
実施例6. 患者の生理的入力を検出することと、生理的入力に基づいて拡張の程度を調節することと、を更に含む、実施例2〜5のいずれか1つに記載の方法。
実施例7. 患者の生理的入力を検出することと、生理的入力に基づいて縮小の程度を調節すること、を更に含む、実施例1〜5のいずれか1つに記載の方法。
実施例8. 拡張の程度および/または縮小の程度の調節を、約5秒よりも大きい時間間隔内で行う、実施例6または7に記載の方法。
実施例9. 拡張の程度および/または縮小の程度の調節を、約1分よりも大きい時間間隔内で行う、実施例6または7に記載の方法。
実施例10. 生理的入力の検出が、患者の脳血流を測定することを含む、実施例6〜9のいずれか1つに記載の方法。
実施例11. 生理的入力の検出が、患者の脳灌流圧を測定することを含む、実施例6〜10のいずれか1つに記載の方法。
実施例12. 脳血液流入および/または脳血液流出のタイミングの識別が、患者のECG測定のR波を識別することに基づく、実施例1〜11のいずれか1つに記載の方法。
実施例13. 交換の前に脳室から脳脊髄液の一部を排出することを更に含む、実施例1〜12のいずれか1つに記載の方法。
実施例14. 脳室が脳脊髄液空間である、実施例1〜13のいずれか1つに記載の方法。
実施例15. 脳室が患者の動脈系の少なくとも一部に対して機械的影響を及ぼす状態にある、実施例14に記載の方法。
実施例16. 脳室が患者の静脈系の少なくとも一部に対して機械的影響を及ぼす状態にある、実施例14に記載の方法。
実施例17. 静脈系が、患者の静脈同士を橋渡ししている、実施例16に記載の方法。
実施例18. 脳血液体積を5〜30%の範囲内で増加させることによって、脳血液流入および/または脳血液流出の流量を増加向上させる、実施例1〜17のいずれか1つに記載の方法。
実施例19. 頭蓋内圧の増加が2〜10%の範囲内である、実施例2〜18のいずれか1つに記載の方法。
実施例20. 頭蓋内圧の減少が2〜20%の範囲内である、実施例1〜19のいずれか1つに記載の方法。
実施例21. 検出される患者の上記頭蓋内圧が所定の閾値を下回るときに、縮小を中止することを更に含む、実施例1〜20のいずれか1つに記載の方法。
実施例22. 検出される患者の頭蓋内圧が所定の閾値を上回るときに、拡張を中止することを更に含む、実施例2〜21のいずれか1つに記載の方法。
実施例23. 患者の脳室に導入された容積アダプタの体積を調節することによって患者の脳灌流に影響を与えるための方法であって、
患者の心臓活動において脳血液流出のタイミングを識別することと、
脳血液流出の識別されたタイミングと同期させて、容積アダプタの体積を脳室内の頭蓋内圧を増加させるのに十分な量まで拡張させて、脳血液流出の流量を向上させることと、
を含む、患者の脳灌流に影響を与えるための方法。
実施例24. 患者の心臓活動において脳血液流入のタイミングを識別することと、
脳室内の頭蓋内圧を減少させている間に、識別された脳血液流入のタイミングと同期させて容積アダプタの体積を縮小させて、脳血液流入の流量を向上させることと、
を更に含む、実施例23に記載の方法。
実施例25. 拡張を約0.5ml/secから約1.5ml/secの速度で行う、実施例23に記載の方法。
実施例26. 拡張を、脳血液流出のタイミングの予測の前に開始する、実施例23〜25のいずれか1つに記載の方法。
実施例27. 縮小を、脳血液流入のタイミングの予測の前に開始する、実施例24〜26のいずれか1つに記載の方法。
実施例28. 患者の生理的入力を検出することと、生理的入力に基づいて拡張の程度を調節することと、を更に含む、実施例23〜27のいずれか1つに記載の方法。
実施例29. 患者の生理的入力を検出することと、生理的入力に基づいて縮小の程度を調節することと、を更に含む、実施例24〜28のいずれか1つに記載の方法。
実施例30. 拡張の程度および/または縮小の程度の調節を、約5秒よりも大きい時間間隔内で行う、実施例28または29に記載の方法。
実施例31. 拡張の程度および/または縮小の程度の調節を、約1分よりも大きい時間間隔内で行う、実施例28または29に記載の方法。
実施例32. 生理的入力の検出が、患者の脳血流を測定することを含む、実施例28〜31のいずれか1つに記載の方法。
実施例33. 生理的入力の検出が、患者の脳灌流圧を測定することを含む、実施例28〜32のいずれか1つに記載の方法。
実施例34. 脳血液流入および/または脳血液流出のタイミングの識別が、患者のECG測定のR波を識別することに基づく、実施例23〜33のいずれか1つに記載の方法。
実施例35. 交換の前に脳室から脳脊髄液の一部を排出することを更に含む、実施例23〜34のいずれか1つに記載の方法。
実施例36. 脳室が脳脊髄液空間である、実施例23〜35のいずれか1つに記載の方法。
実施例37. 脳室が患者の動脈系の少なくとも一部に対して機械的影響を及ぼす状態にある、実施例36に記載の方法。
実施例38. 脳室が患者の静脈系の少なくとも一部に対して機械的影響を及ぼす状態にある、実施例37に記載の方法。
実施例39. 静脈系は患者の静脈同士を橋渡ししている、実施例37に記載の方法。
実施例40. 脳血液体積を5〜30%の範囲内で増加させることによって、脳血液流入および/または脳血液流出の流量を増加向上させる、実施例23〜39のいずれか1つに記載の方法。
実施例41. 頭蓋内圧の増加が2〜10%の範囲内である、実施例23〜40のいずれか1つに記載の方法。
実施例42. 頭蓋内圧の減少が2〜20%の範囲内である、実施例24〜41のいずれか1つに記載の方法。
実施例43. 検出される患者の頭蓋内圧が所定の閾値を下回るときに、縮小を中止することを更に含む、実施例24〜42のいずれか1つに記載の方法。
実施例44. 検出される患者の頭蓋内圧が所定の閾値を上回るときに、拡張を中止することを更に含む、実施例23〜43のいずれか1つに記載の方法。
実施例45. 患者の脳室における脳灌流に影響を与えるためのシステムであって、
脳室内に導入可能なサイズおよび形状の、拡張可能な区画を有する容積アダプタであって、頭蓋内圧を減少させるサイズである縮小した状態と、頭蓋内圧を増加させるサイズである拡張した状態との間で切り替えることによって動作可能な容積アダプタと、
患者の生理的出力を測定するための少なくとも1つのセンサと、
容積アダプタを動作させるように連通し、生理的入力に基づいて、脳血液流入のうちの少なくとも1つのタイミングを予測し、かつ上記容積アダプタの縮小した状態への切り替えと、脳血液流入のタイミングとを同期させるための命令を有する、プロセッサと、
を備える、患者の脳室における脳灌流に影響を与えるためのシステム。
実施例46. プロセッサが、生理的入力に基づいて、脳血液流出のタイミングを予測し、かつ上記容積アダプタの拡張した状態への切り替えと、脳血液流出のタイミングとを同期させるための命令を更に含む、実施例45に記載のシステム。
実施例47. 同期が脳血液流出のタイミングよりも前になるように時間設定される、実施例46に記載のシステム。
実施例48. 同期が脳血液流入のタイミングよりも前になるように時間設定される、実施例45〜47のいずれか1つに記載のシステム。
実施例49. 拡張可能な区画には流体が収容されている、実施例45に記載のシステム。
実施例50. 流体が気体を含む、実施例49に記載のシステム。
実施例51. 流体が液体を含む、実施例49に記載のシステム。
実施例52. 容積アダプタと流体連通している少なくとも1つのポンプを更に備える、実施例45〜51のいずれか1つに記載のシステム。
実施例53. ポンプおよびプロセッサと動作可能に連絡しているモータを更に備える、実施例52に記載のシステム。
実施例54. 容積アダプタが脳室ドレーンと連携する、実施例45〜53のいずれか1つに記載のシステム。
実施例55. 脳血流を測定するためのセンサを更に備える、実施例45〜54のいずれか1つに記載のシステム。
実施例56. 圧力センサを更に備える、実施例45〜55のいずれか1つに記載のシステム。
実施例57. 変形可能な区画が伸展性のない壁を備える、実施例45〜56のいずれか1つに記載のシステム。
実施例58.変形可能な区画が弾性の壁を備える、実施例45〜57のいずれか1つに記載のシステム。
実施例59. 患者の脳室に導入された容積アダプタの体積を調節することによって患者の脳灌流に影響を与えるための方法であって、
患者の心臓活動において脳血液の流入および/または流出のタイミングを識別することと、
識別された脳血流のタイミングと同期させて容積アダプタの体積を脳室内の頭蓋内圧を調節するのに十分な量になるように調節して、脳血流の流量を向上させることと、
を含む、患者の脳灌流に影響を与えるための方法。
別様に定義されていない限り、本明細書において用いる全ての技術および/または科学用語は、本発明に関連する技術の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施または試験において、本明細書に記載する方法および材料と類似または同等の方法および材料を用いることができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。対立する場合は、定義を含め、特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は例示的なものに過ぎず、必ずしも限定的であるように意図されていない。
当業者には諒解されるであろうが、本発明の態様は、システム、方法、またはコンピュータプログラム製品として具現化され得る。したがって、本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード、等)、またはソフトウェアおよびハードウェアの態様を組み合わせた実施形態をとることができ、これらは全て一般に本明細書では「回路」、「モジュール」、または「システム」と呼び得る。更に、本発明のいくつかの実施形態は、コンピュータ可読プログラムコードが具現化されている1つまたは複数のコンピュータ可読媒体において具現化された、コンピュータプログラム製品の形態をとることができる。本発明のいくつかの実施形態の方法および/またはシステムの実施は、選択されたタスクを、手動で、自動で、またはこれらを組み合わせて、実行および/または完了することを伴い得る。更に、本発明の方法および/またはシステムのいくつかの実施形態の実際の機器使用および装備によれば、例えばオペレーティングシステムを使用して、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、またはファームウェアによって、および/またはこれらの組合せによって、いくつかの選択されたタスクを実施できる。
例えば、本発明のいくつかの実施形態に係る選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明のいくつかの実施形態に係る選択されたタスクは、任意の好適なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得る。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、本明細書に記載するような方法および/またはシステムの例示的な実施形態に係る1つまたは複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどの、データプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令および/もしくはデータを記憶するための揮発性メモリ、ならびに/または、命令および/もしくはデータを記憶するための不揮発性ストレージ、例えば、磁気ハードディスクおよび/もしくは取り外し可能な媒体を含む。任意選択で、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、および/または、キーボードもしくはマウスなどのユーザ入力デバイスも、任意選択で提供される。
本発明のいくつかの実施形態では、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体の任意の組合せを利用することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、限定するものではないが、電子的な、磁気的な、光学的な、電磁的な、赤外線の、または半導体の、システム、装置、またはデバイス、あるいは、上記したものの任意の好適な組合せであり得る。コンピュータ可読記憶媒体のより詳細な例(非網羅的なリスト)には、以下、すなわち、1つもしくは複数のワイヤを有する電気接続部、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROMもしくはフラッシュメモリ)、光ファイバ、可搬のコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD−ROM)、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、または上記のものの任意の好適な組合せが含まれるであろう。本文書の文脈では、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって使用されるかまたはこれと接続されているプログラムを含むかあるいは記憶することのできる、任意の有形媒体であってもよい。
コンピュータ可読信号媒体は、例えばベースバンド中にまたは搬送波の一部として、コンピュータ可読プログラムコードが具現化された伝播データ信号を含んでもよい。かかる伝播信号は、限定するものではないが、電磁的な、光学的な、またはこれらの任意の好適な組合せを含む、様々な形態のうちのいずれをとることもできる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって使用されるかまたはこれと接続されたプログラムを通信、伝播、あるいは移送できる、任意のコンピュータ可読媒体であってもよい。
コンピュータ可読媒体上で具現化されるプログラムコードおよび/またはこれにより使用されるデータは、限定するものではないが、ワイヤレス、有線、光ファイバケーブル、RF、等、または上記のものの任意の好適な組合せを含む、任意の好適な媒体を使用して送信することができる。
本発明のいくつかの実施形態に関する動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java(登録商標)、Smalltalk、C++、または他の同様のものなどのオブジェクト指向のプログラミング言語、および「C」プログラミング言語または類似のプログラミング言語などの従来の手続き型のプログラミング言語を含む、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで書かれていてもよい。プログラムコードは、完全に使用者のコンピュータ上で、部分的に使用者のコンピュータ上で、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして、部分的に使用者のコンピュータ上でおよび部分的に遠隔のコンピュータ上で、または完全に遠隔のコンピュータもしくはサーバ上で、実行され得る。後者のシナリオでは、遠隔のコンピュータを使用者のコンピュータに、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを通して接続してもよく、あるいは、外部のコンピュータへの接続を(例えば、インターネットサービスプロバイダを利用してインターネットを通して)行ってもよい。
本発明のいくつかの実施形態を、本発明の実施形態に係る方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して、以下に記載する場合がある。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、ならびに、フローチャート図および/またはブロック図のブロックの組合せを、コンピュータプログラム命令によって実装できることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令を汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供して、マシンを作り出すことができ、この場合、このコンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行される命令は、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックにおいて特定された機能/動作を実施するための手段を創出する。
これらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスに特定の様式で機能するように指示できる、コンピュータ可読媒体に記憶することもでき、この場合、コンピュータ可読媒体に記憶された命令は、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックにおいて特定された機能/動作を実施する命令を含む製品を作り出す。
コンピュータプログラム命令を、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスにロードし、一連の処理ステップをこのコンピュータ、他のプログラム可能装置、または他のデバイス上で実行させるようにして、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で実行される命令がフローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックにおいて特定された機能/動作を実施するためのプロセスを提供するような、コンピュータ実施プロセスを生み出すこともできる。
本発明のいくつかの実施形態が、添付の図面を参照して、単なる例として、本明細書に記載されている。ここで図面を詳細に具体的に参照するが、示されている詳細は例としてのものであり、本発明の実施形態を例示的に検討することを目的としていることを強調しておく。この点に関して、説明を図面と併せて解釈することにより、本発明の実施形態がどのように実施され得るかが、当業者に明らかになる。
本発明は、そのいくつかの実施形態では、脳血液灌流に影響を及ぼすことに関し、より具体的には、限定するものではないが、頭蓋内圧の調節を介して脳血液灌流に影響を及ぼすことに関する。
概説
本発明のいくつかの実施形態の態様は、脳内容積および/または圧力を周期的に変化させることによって脳血流に影響を与えることに関する。いくつかの実施形態では、脳内容積および/または圧力の周期的な変更は、心周期における相に同期される。任意選択で、脳内の容積および/または圧力の適時の調節により、脳灌流圧および/または脳脊髄液の流れが改善される。例えば、流体は、血液および/またはリンパ液を含む。いくつかの実施形態では、流体の流れの改善は、流れの速度の増加、および/または流入の体積の増加、および/または流出の体積の増加として現れる。任意選択で、容積の変化には、バルーンなどの拡張可能な要素を使用する。本明細書における多くの実施形態において、バルーンという用語が例として使用されているが、これはバルーンでなくとも、任意の拡張可能な要素を意味するものとして理解できる。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、変更は、拡張可能な要素が拡張した状態と、拡張可能な要素がより拡張の少ない状態(ゼロまたは何らかの他のベースライン膨張)との間で行う。任意選択で、状態間の変化は急速であり、例えば、10〜20msのオーダーである。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、変更は、ICPまたはCCP曲線が全体的に平坦になるのを回避するようなタイミングで行う(例えば、変更により山の圧力と谷の圧力が等しくなるかまたはほぼ等しくなることはないが、個々の山または谷の大きさが低減される場合はある)。任意選択で、変更は、拡張期中に容積を増加させるようなタイミングで行う。任意選択でまたは別法として、変更は、ピークICPを平坦にするかまたは分割するようなタイミングで行う。任意選択でまたは別法として、変更は、収縮期中の拡張可能な要素の体積の増加を回避するようなタイミングで行う。任意選択でまたは別法として、変更は、拡張期中に静脈流出を支援するようなタイミングで行う。
拡張期および収縮期という用語の使用は、脳における動脈拍動の状態に関連しており、これは一般にICPと同期している(ただし一般に、ICPよりも数msだけ進んでいる)。心臓における収縮期および拡張期の直接的な機械的効果として、ただしこれらに対して遅延した時間で、収縮期では圧力が増加し、拡張期中は圧力が減少する。(例えばR波が示すような)心臓における収縮期は通常、頸動脈における収縮期よりも早いことに留意すべきである。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、変更は、収縮期中に拡張可能な要素の減少した拡張状態をもたらすようなタイミングで行う。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、変更は、周期のほとんどの間、拡張可能な要素が最大限には拡張しないようなタイミングで行う。例えば、それ自体のベースライン拡張と比較して20%超拡張可能な要素の、拡張の継続時間は、心周期またはICP周期の80%、60%、30%、20%未満の、もしくはこれらの間の、またはより小さい、パーセンテージである。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、変更は、拡張可能な要素の脱拡張から短い時間(例えば10から400msの間、例えば30から200msまたは50から150msの間)だけ前に拡張が起こるようなタイミングで、行う。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、拡張速度は速く、例えば、80、50、20、10、またはこれらの間の数のミリ秒未満で、最大体積まで拡張する。任意選択で、収縮は同様の速度で生じる。別法として、収縮は拡張よりも遅くてもよい。
通常、脳は、固定された容積の容器の役割を果たす硬膜頭蓋骨内に入っている。このことにより、頭蓋内圧(ICP)が上昇する前に、中で脳組織、脳脊髄液、およびこの系内の血液循環が拡張できる空間が、限定される可能性がある。おそらくは空間が限定されていることに起因して、ICPの増加により、場合によっては脳血管内の動脈圧と相殺し合うことによって、脳灌流圧(CPP)の低減がもたらされる場合がある。CPPの低減は脳血流(CBF)の減少につながる場合がある。別法としてまたは追加として、ICPの増加は血管内の容積の低減につながり、このことはまた、おそらくは特に血液流入によって特徴付けられる収縮相中に、利用可能な空間がより小さいことに起因する血液体積の低減ももたらす。ICPが増加しているいくつかの臨床状況としては、限定するものではないが、頭部外傷および/また脳出血が挙げられる。
いくつかの実施形態では、脳室内に存在する内容物の体積を低減することによって脳脊髄液の流量が向上するが、これは任意選択で能動的な手法で行う。例えば、例えば拡張可能な区画の形態の容積アダプタを導入することにより、アダプタの区画を縮小させることによって、アダプタが占めていた容積が解放され、脳室内の流体がより広い容積にわたって広がることが任意選択で可能になり、結果的に脳室内の流体圧の低減がもたらされる。潜在的には、頭蓋内圧の低減により、場合によっては血管の圧力と相殺し合わずCPPの増加に至ることによって、脳領域内への流体の流入が増加する。
別法としてまたは追加として、脳室内に存在する内容物の体積を大きくすることによって、脳脊髄液の流量が向上するが、これは任意選択で能動的な手法で行う。通常は、硬膜が画定している空間が限定されていることに起因して、脳内容物の体積の増加は、頭蓋内圧の増加につながる。潜在的には、ICPにより脳脊髄液排出管の搾り出しが支援されて、脳脊髄液の流出の増加につながる場合がある。
脳容積の低減は脳脊髄液の流入の増加につながる場合があり、一方、脳容積の増加は脳脊髄液の流出の増加につながる場合があるので、いくつかの実施形態では、流入の改善と流出の改善との間のトレードオフが解消される。いくつかの実施形態では、容積減少を主に流体流入によって特徴付けられる収縮相の少なくとも一部と同期させることによって、および/または、容積増加を主に流体流出によって特徴付けられる拡張相の少なくとも一部と同期させることによって、流体流入の向上と流体流出の向上との間のトレードオフが解消される。別法としてまたは追加として、容積増加および/または減少の振幅を適合させることによって、例えば、流入を止める可能性のあるICPを生じさせるような程度まで容積を拡張するのを回避することによって、トレードオフが解消される。別法としてまたは追加として、例えば流体の流入が可能となるように十分に圧力を低減しつつ、同時に流体を搾り出して流出を増加させるのに十分な圧力を生み出すように、縮小した容積の状態と拡張した状態との間の漸進的な移行を実現することによって、トレードオフが解消される。いくつかの実施形態では、トレードオフは、容積適合を心周期と同期させること、ならびに、心周期の相と適合性のある予想される血流量に基づいて、容積を低減するような時間および/または容積を増加させるような時間を選択することによって、解消される。
いくつかの実施形態では、脳容積の増加および/または低減は心周期に基づいてトリガされ、これは任意選択でECG測定に基づく。いくつかの実施形態では、ECGのR波に基づくタイミングは、脳容積を増加および/または低減させるためのトリガの役割を果たす。いくつかの実施形態では、容積は、心周期の時間線上でイベントを識別したときに能動的に変更される。例えば、容積は、収縮期圧力波の接近を特定したときに低減される。いくつかの実施形態では、容積変化は、流入および/または流出の予想される変化といった予想されるイベントの前に、そのイベントが起こるまでに変化のための十分な時間ができるようにして行われる。
任意選択で、例えば、心電図(ECG)の測定、および/または拍動の測定、および/または血圧の測定によって、心周期の直接的な測定を行う。いくつかの実施形態では、心臓の測定は、心臓に近接させて配置した、例えば電極などの測定プローブによって行う。別法としてまたは追加として、測定は、脳血管の拍動を測定することによって、ならびに/または、身体の任意の領域における拍動および/もしくは血圧を測定することによって、行う。任意選択で、心周期の相は、測定部位と脳の容積適合部位との間の何らかの遅延を補償するように較正される。
任意選択で、心周期の相の開始の特定は、外挿および/または予測および/または機械学習によって行われる。いくつかの実施形態では、心周期は、頭蓋内の圧力および/または容積の変化の測定から抽出される。
通常は、患者の脳に対する容積調節の実施は、患者の意識がない間に行う。したがって、患者の生理的入力を検出および/または測定することによって容積調節の効果をモニタリングすることが、有利である可能性がある。いくつかの実施形態では、生理的入力は各心周期の後で収集する。別法としてまたは追加として、生理的入力は、3回以上の心周期の後で収集する。別法としてまたは追加として、生理的入力は、6回以上の心周期の後で収集する。いくつかの実施形態では、生理的入力の測定により、脳容積の増加および/または減少の程度を特定する。別法としてまたは追加として、生理的入力の測定により、脳容積の増加および/または減少の速度を特定する。
いくつかの実施形態では、患者の生理的入力の検出は、フィードバックの役割を果たす。任意選択で、これらのフィードバック測定値は、脳容積の増加および/または減少の程度を微調整するために使用される。例えば、脳血流の形態の生理的入力の測定値により、流れが弱過ぎることが示される可能性があり、またこれらの測定値を使用して、任意選択で脳内に留置された容積アダプタの縮小の程度を大きくすることによって、脳容積を減少させることができる。別の例では、脳灌流圧の形態の生理的入力の測定値が、CPPが高過ぎることを示す可能性がある。これらの測定値は、任意選択で脳内に留置された容積アダプタの拡張の程度を大きくすることによって、脳容積を増加させるために使用することができる(このことはICPの増加につながると考えられ、この結果、CPPがCPP=MAP−ICPの計算に基づいて低減されると考えられる)。
いくつかの実施形態では、以下の指標のうちの1つまたは複数が、治療マーカーの一部または独立した治療マーカーとして使用される:組織の酸素化、CBF値、ICP値、CPP値、時間での積分値、平滑化値、および/または時間微分、ならびに/もしくはこれらの波形の形態。任意選択で、これらのうちのいずれかと相関している生理的マーカー、ならびに脳の状態および/または脳血流を示す他のマーカーを使用してもよい。
いくつかの実施形態では、生理的入力を、心周期の継続時間よりも長い時間間隔で収集する。したがって、いくつかの実施形態では、容積調節の微調整を、心周期の継続時間よりも長い時間間隔で行う。例えば、かかる必要性の程度の調節および/または決定は、約5秒ごとに1回の時間間隔で行ってもよい。別の例では、程度の調節は、約1分ごとに1回、あるいはより長い期間、例えば5分、10分、20分、もしくはこれらの間の、またはより長い期間ごとに1回の時間間隔で、行ってもよい。
いくつかの実施形態では、場合によっては血液排出体積の増加につながり得る逆行する流れによって、拡張相の少なくとも一部の間に脳容積を増加させることにより、CBFが改善される。いくつかの実施形態では、漸進的な脳容積の増加が実施される。潜在的には、漸進的な増加により、脳室がその収縮期前の(拡張した)形態へと戻るまでの間隔をより長くすることが可能になり、このことにより、心周期中で、頭蓋冠がより弛緩しているためにより小さい抵抗で血液流入が起こり得る時間を、より長くすることが可能になると考えられる。例えば、拡張期中の容積増加の小さな、例えば約0.5ccおよび約2ccの範囲内の増分は、おそらくは細動脈に影響を及ぼさないが、流出に対するより高い抵抗をもたらすことによって潜在的に静脈系に影響を及ぼすような、ICPの僅かな上昇につながるように構成される。任意選択で、これを脳組織内の灌流圧力の上昇に転換することができ、付随する循環が回復する、および/または浮腫状組織中の血管が開く、および/または脳血流が改善される可能性がある。本発明者らは、約0.1CCから約7CCの範囲内、例えば0.5から5ccの増分により、浮腫状の脳において大きなICPの変化を引き起こすことができ、潜在的には、その範囲内の変化は静脈うっ血および上流の虚脱した血管の回復をもたらすのにおそらく十分であることを、認識している。
いくつかの実施形態では、送達系および/または排出系に対して作用する可能性があると考えられる力を特定するために、収縮対膨張曲線が使用される。任意選択で、動脈系などの送達系に対する力の低減により、脳血液流入を更に促進する可能性のある、流体充填のためのより大きな空間が作り出される。また任意選択で、静脈系などの排出系に対する力により、静脈端部から血液体積が「搾り出され(squeeze)」て、潜在的に脳血液流出が更に促進される。
いくつかの実施形態では、CPPは平均動脈圧(MAP)とICPの間の差として計算される。いくつかの実施形態では、今日CPPを改善する際に現状使用されているものであるが、例えば呼吸亢進、および/または高浸透圧療法、および/またはCSFドレナージ、および/または十分な鎮静によって、ICPの低減を行う。別法としてまたは追加として、例えばアミンを使用して全身動脈圧を上昇させることによって、MAP増加を行う。上記の治療選択肢の潜在的な欠点は、患者を全身治療の制御不可能な副作用に曝すことである。
いくつかの実施形態では、外部脳室デバイス(EVD)の使用などによって、患者の脳室内のCSF流体の体積を調節することによって、CPPは調節される。任意選択で、EVDを通して受動的に排出されるおよび/または戻されるCSFの体積は、容積アダプタによって脳室の容積を能動的に変更することによって増加される。いくつかの実施形態では、患者の頭蓋骨が貫通されると、ならびに/または受動式および/もしくは能動式容積アダプタが患者の脳の区画に挿入されると、脳の区画からある程度の量のCSFが流出する。かかる実施形態では、容積アダプタの体積がある程度まで縮小すると、脳の区画が有する容積は、規準容積、すなわち頭蓋骨を貫通するおよび/または任意のデバイスを挿入する前の容積よりも、小さくなる。
成人では、CBFは通常、毎分750ミリリットルであるか、または、心拍出量の15〜20%である。いくつかの実施形態では、CPPは約50から約60mmHg(または60〜160mmHg)の圧力に維持される、すなわち、平均動脈圧(MAP)からICPを減算すると、約50から約60mmHgである。通常は、CPPの減少はCBFの減少につながる。いくつかの実施形態では、患者のCPPレベルがより低くなっている場合、実質的に生理学的に正常なレベルまでCBFを回復させるために、ICPを能動的に減少させる。本発明のいくつかの実施形態の態様は、心周期と同期させた能動的な脳容積の変更に関する。いくつかの実施形態では、任意選択ではCSFで満たされた脳室である患者の脳の区画に、局所的に挿入された容積アダプタによって、容積の変化がもたらされる。いくつかの実施形態では、アダプタを縮小および/または拡張させることにより、脳の区画の容積の変化が引き起こされる。いくつかの実施形態では、液体状である流体をアダプタに充填および/またはアダプタから排出することにより、脳の区画の容積の変化が引き起こされる。別法としてまたは追加として、気体状である流体をアダプタに充填および/またはアダプタから排出することにより、脳の区画の圧力の変化が引き起こされる。いくつかの実施形態では、心周期の特定の時間に脳内の容積アダプタを拡張させることによる、脳の区画の容積および/または圧力の低減は、ICPの低減につながり、このことは心周期の流れの段とあいまって、CPPを向上させる、および/または、CBFを改善する。別法としてまたは追加として、心周期の他の時間に容積アダプタを拡張させることによる、脳の区画の容積および/または圧力の増加は、ICPの増加につながり、このことは心周期の流れの段とあいまって、CPPを向上させる、および/または、CBFを改善する。
いくつかの実施形態では、容積アダプタはバルーンを備える。いくつかの実施形態では、脳の区画内の容積を拡張させるときは、バルーンを流体、任意選択で気体で膨張させる。別法としてまたは追加として、バルーンは液体、任意選択で水および/または生理食塩水で膨張させる。いくつかの実施形態では、バルーンは、バルーンの境界から外に流体を圧送することによって収縮される。いくつかの実施形態では、バルーンを収縮させることは、温度変化、および/またはバルーン体積の変化に転換される音響伝達、および/または電気エネルギーの使用を含む。
任意選択で、脳室ドレーンデバイスと連携した容積アダプタを提供する。いくつかの実施形態では、CSFを収容している脳室内の脳容積の減少および/または増加により、脳室内で吸引効果がもたらされ、任意選択で脳室を出入りするCSFの流れを向上させる力を生み出す。
いくつかの実施形態では、バルーンをリザーバからの流体で充填する。任意選択で、リザーバは患者の外側に位置付ける。別法としてまたは追加として、リザーバを患者の内側に提供する。いくつかの実施形態では、バルーンにはポンプによって気体が能動的に充填し、任意選択でこの気体は、弁を解放することによって周囲の空気へと受動的に排出る。別法としてまたは追加として、任意選択でバルーンの能動的な充填および能動的な排出のために、少なくとも2つのポンプを提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポンプを作動させるためのモータを提供する。任意選択で、モータは患者の外部に提供する。別法としてまたは追加として、モータは患者の中に、任意選択で脳の区画内に、任意選択でアダプタデバイス内に、内部にあるものとして提供する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、シリンジポンプを使用する。任意選択で、バルーンを充填および/または空にすることは、少なくとも10ml/sec、少なくとも50ml/sec、少なくとも100ml/sec、少なくとも250ml/secの、もしくはより速い、またはこれらの間の速度で行う。任意選択で、バルーンを充填および/または空にすることは、1から50msの間、例えば5から30msの間、例えば約10〜20msの範囲内で行う。任意選択で、膨張時間を短くできるように、より速い速度を提供する。任意選択でまたは別法として、脳組織の動揺を回避するために、より低い速度を使用する。
任意選択で、容積アダプタは伸展性のない表面を備える。潜在的には、伸展性のない表面により、容積アダプタの圧力を変化させることは可能となるが、体積はそれほど変化させることはできない。別法として、容積アダプタは弾性の表面を備える。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、容積変化によって全体としてのICPが平坦になることはない。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、膨張は、ICPが特定の値を超えている時間中には起こらないようなタイミングで行う。任意選択で、値は、ベースラインICP、ピークICP、または心周期の特定の部分におけるICPの値の関数として定義する。任意選択で、膨張は、収縮期中には起こらないようなタイミングで行う。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、膨張および収縮は、ICPが30から50mmHgの間にある場合でも、適用する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、膨張は収縮の直前に起こるようなタイミングで行い、したがって周期のほとんどで、バルーンはそのベースラインを超えては膨張されない。任意選択で、かかる膨張は主として、収縮が脳に対して効果を及ぼすことを可能にするために使用される。任意選択で、膨張継続時間をその効果に対して最適化する(例えば、収縮が有効であるのに十分な程度に長いが(例えば周期の<10%)、それよりもかなり長くなることはない)。
本発明のいくつかの実施形態の態様は、頭蓋内容積および/または圧力の変化の最適化に関する。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、最大(または最小)容積(および/または圧力)、容積(および/または圧力)変化の速度、容積(および/または圧力)変化の開始、膨張と収縮の間の遅延、デューティサイクル、膨張および/または収縮の継続時間、容積変化(および/または圧力)の終了、周期あたりの拍動(膨張/収縮動作)の圧力および/または容積伸展性および/または数のうちの、1つまたは複数が、患者ごとに最適化される。任意選択で、最適化は、例えば患者パラメータに応答して経時的に変化する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、最適化は、所望の機械的なおよび/または生理学的な効果が検出されるまで、パラメータを増加させることを含む。任意選択で、例えば機械的なおよび/もしくは生理学的な、望まれない効果、ならびに/またはその大きさが特定されると、増加を停止するおよび/または逆転させる。
本発明のいくつかの実施形態の態様は、頭蓋血流異常(の疑い)のある患者の、容積−圧力曲線の測定および/または使用に関する。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、この曲線は、既知の時間に既知の体積を注入する(例えば、頭蓋内バルーンを膨張させる)ことによって推定する。任意選択で、この既知の時間は、脳から流体が最大限に排出されている末期拡張相である。任意選択で、この時間は、ICPを測定することによって決定する。この時点で、容積の増加と圧力の増加との間の関係を特定する。任意選択で、測定はいくつかの心周期にわたって繰り返し、任意選択で、それらの周期のうちの異なる周期には異なる量を注入する。任意選択で、注入体積は、ICPが安定しているときに増加させる。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、注入は0.1cc刻みで行い、最大値の5ccまで達する。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、測定は、追加としてまたは代わりに心周期の他の時間において、例えば最大収縮期においておよび/または治療用の注入が計画されている時間を含む時間窓において、行う。
本発明のいくつかの実施形態の態様は、頭蓋からの流体除去と連携させて頭蓋内デバイスの拡張を制御することに関する。任意選択で、流体は、任意選択で単一のコントローラの制御下で、デバイスが拡張する前におよび/またはそれと同時に除去する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、流体除去は収縮期中に行い、一方、デバイスの拡張は拡張期中に行う。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、デバイスは周期全体を通して、少なくとも部分的に拡張した状態(例えば0.1から0.7ccの間、例えば約0.5cc)に維持する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、デバイスを収縮期ごとに収縮させてベースライン状態に戻し、拡張期中に拡張させる(場合にとっては拡張量を増加させる)。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、拡張の増加は、流体除去に対応する量までしか許可されない。例えば、流体除去が停止すると、最大拡張体積は増加しない。
本発明のいくつかの実施形態の態様は、少なくともいくつかの圧力周期に2回以上の拍動を含めることに関する。脳内の圧力(ICP)が、全体に全身血圧と連動する周期にわたって変動することを留意する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、収縮(体積減少)は、より多くの血液が脳に入ることができるように、収縮期の直前に行う。任意選択で、拡張期中に追加の拍動を提供する、例えば、静脈を虚脱させるおよび頭蓋内流体を低減するために、膨張を用いる。任意選択で、細動脈流の増加を可能にするために、かかる膨張に続いて収縮を行う。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、2つの拍動の振幅は異なっており、例えば、追加の拍動の振幅はより小さくなる。任意選択でまたは別法として、2つの拍動の形状は異なっている。任意選択で、周期中に、例えば拡張期中および/または収縮期中に、任意選択で1回目の拍動が提供するピーク値よりも大きくはICP(またはCCPまたは他の圧力尺度)を増加させない容積で、更なる追加の拍動(例えば、1回、2回、3回、またはそれ以上)を提供する。任意選択で、かかる拍動の回数および/またはタイミングは、本明細書に記載するように、例えば、探索手順および/もしくは最適化手順を使用して決定する、および/またはデバイス調整に起因して変更する。
いくつかの実施形態では、収縮期前の拍動を提供せずに、単一の拍動(例えば拡張期の拍動)または追加の拍動のみが提供されることを留意する。
本発明のいくつかの実施形態の態様の多くの部分は、脳内の流体体積の変化を頭蓋圧力周期に同期させることに関する。一例では、流体は、周期中の既知の、および任意選択で繰り返し可能な時間に、除去または注入される。このことを利用して、圧力−容積曲線を生成することができる。別の例では、流体の注入および/または除去は、頭蓋内の拡張可能な要素の拡張および/または収縮と一致するようなタイミングで行われ、この結果、任意選択で、ある周期にわたってまたは周期のより小さい部分(例えば500ms)にわたって、容積の変化の合計(人為的な入力〜人為的な出力)が実質的にゼロになる。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下の説明において明記されるならびに/または図面および/もしくは実施例において例示される、構成要素および/または方法の構造および配置構成の詳細に、必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が、または様々な様式での実施もしくは実行が、可能である。
高レベル化の概要
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る、脳血流に影響を及ぼす目的で脳灌流圧に能動的に影響を与えるためのシステムおよび方法において相互作用する構成要素の高レベル化の概要を示す、図1を参照する。
いくつかの実施形態では、患者の脳10内に、任意選択で脳脊髄液(CSF)空間、例えば、CSFを有する脳室、硬膜下の場所、または脊髄に関する場所内に、容積アダプタ101を導入する。いくつかの実施形態では、容積アダプタ101は、その体積を能動的に向上および/または減少させるように構成する。任意選択で、CSFなどの変形可能な周囲によって包囲されることによって、容積アダプタ101の体積変化は、変形可能な周囲がその境界に押し付けられる程度に影響を及ぼす。すなわち、アダプタ101の体積の変化は、脳室が付加する圧力に影響を及ぼし、場合によっては頭蓋内圧に全体的な影響を及ぼす。
心周期の相のタイミングに基づいて頭蓋内圧に影響を与えることは、いくつかの実施形態では、脳灌流圧(CPP)の増加につながり、任意選択でまた、規準となる脳の流れ155よりも75パーセントだけ向上し、脳血流150の変化も導く。いくつかの実施形態では、脳の流れの向上は、流入および/または流出する血液の体積がより大きいことを含む。別法としてまたは追加として、向上は、流量を増加させることを含む。
いくつかの実施形態では、心臓8の活動を検出する。任意選択で、この活動は、心電図を提供する電極によって検出する。別法としてまたは追加として、(例えば、頸動脈などの動脈内でのまたは動脈表面での)拍動測定によって、および/または血圧、任意選択で脳の血圧によって、活動を検出する。いくつかの実施形態では、心臓8の活動から心周期波形を測定する。別法としてまたは追加として、心周期波形は、頭蓋内圧変動などの他の測定値の外挿によって導出される。いくつかの実施形態では、心周期波形はその発生前に機械学習によって予測する。いくつかの実施形態では、心周期波形は、収縮相または拡張相のいずれかである、少なくとも1つのイベントを識別することを含む。いくつかの実施形態では、識別することは、相の発端を特定することを含む。別法としてまたは追加として、識別することは、発端を予測することを含む。別法としてまたは追加として、識別することは、収縮期および/または拡張期の波の山を特定および/また予測することを含む。
いくつかの実施形態では、心臓8の活動は、アダプタ101の体積変化のタイミングおよび/または方向性に影響120を与える。任意選択で、容積アダプタ101およびリザーバの体積変化のタイミングおよび/または方向は、心臓8の心臓活動と同期される。例えば、収縮期の力の波が決定されると、容積アダプタ101を縮小させることができ、これにより潜在的に、ICPを減少させ、この結果より多くの血液体積を脳10内に見られる脳の区画内に充填することができるようになる。いくつかの実施形態では、脳の区画の内側に存在する容積アダプタ101が、例えば拡張期波の少なくとも一部の間、その体積およびしたがって圧力が増加し得るように拡張されて、血液を搾り出すのを助ける。任意選択で、収縮期波と拡張期波との間の山の期間の間、アダプタ101の体積は維持される。追加の例示的なタイミング選択肢については、上記および下記されている。
アダプタ101と心臓活動との間で体積の変化のタイミングおよび振幅(すなわち体積の量)を同期することの潜在的な利点は、頭蓋内圧を過剰に増加させることおよび血液流入を排除することと、頭蓋内圧を過剰に減少させることおよび血液流出を排除することとの間のトレードオフが解決されることである。心周期と同期させることによって、血液の流れの波形を使用して、その時間の少なくとも一部において血流が向上するように、頭蓋内圧を増加および減少させることが可能になる。いくつかの実施形態では、タイミングの前後および振幅の増減の割合を変更することにより、時間の割り当ておよび流れの向上75の質が変動する。例えば、図14Aおよび図14Bは、流れの向上に対して有益な効果を及ぼさないタイミングの例を示す。
いくつかの実施形態では、流れの向上75は、脳血液体積の増加、例えば、約0.5mlから約2mlの増加、および/または約1mlから約3mlの増加、および/または約3mlから約5mlの増加を含む。別法としてまたは追加として、流れの向上75は、脳血流量の増加、例えば、動脈および/または静脈における約14〜16cm/sへの増加、および/または毛細血管における約0.02〜0.04cm/sへの増加を含む。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、生理学的パラメータ値の上記の増加または他の変化のうちの1つまたは複数に達するために、治療のパラメータが変更される。以下にいくつかの例示的な方法を記載する。
例示的且つ可能な、システムの結果および挙動
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る、心周期と同期されたときの容積アダプタの体積の変化、頭蓋内圧の変化、および脳灌流圧の変化の、あり得る結果を説明するフローチャートを示す、図2を参照する。
いくつかの実施形態では、収縮相のプレピーク(pre−peak)を識別したとき、すなわち収縮期圧力波の振幅の高い部分の接近220を予測したとき、アダプタ22の体積の縮小222が生じる。いくつかの実施形態では、222で体積が縮小するとき、ICP24の減少224が生じる。224でのICP24の減少と収縮期圧力波の接近220とのタイミングを合わせると、潜在的な結果として、流入した血液が動脈系および/または細動脈系などの脳送達系を充填することを可能にする、より小さいCPP26およびまたより大きい体積が得られる。
いくつかの実施形態では、収縮相240の少なくとも一部にわたって、および任意選択でその継続時間の全てにわたって、減少した体積222が維持される。いくつかの実施形態では、242で容積が維持されている間、ICP24およびCPP26をそれぞれ示す244および246で、圧力が維持される。いくつかの実施形態では、収縮相中の血液流入の増加に起因して、CPPが上昇する可能性がある。
いくつかの実施形態では、拡張相260の少なくとも一部の間、容積アダプタ22の拡張262が生じる。任意選択で、このことはICP24の増大264、およびその結果としてのCPP26の減少266につながり、場合によっては脳静脈系などの排出系に対する過剰な負荷の低減につながり、このことは結果的に血液流出の増加をもたらす可能性がある。任意選択で、脳静脈系は静脈同士を橋渡ししている。
脳灌流圧に影響を与えるための例示的な方法
ここで、本発明の実施形態に係る、脳灌流圧に影響を与えるための方法を説明するフローチャートを示す、図3を参照する。
いくつかの実施形態では、患者の脳室内に導入された容積アダプタによって、脳室流体体積を能動的に縮小する302。任意選択で、容積を縮小する302において規準容積未満まで縮小するが、これは、容積アダプタの挿入中に、脳の区画からある程度のCSFが排出されて、より小さい新しい規準容積となるからである。通常は、脳室流体体積の低減の結果、脳のその比較的固定された容積の区画内での流体体積の減少がもたらされ、このことは頭蓋内圧の低減304につながる。任意選択で、ICPの低減は送達系に対する負荷の低減306につながり、このことは脳灌流圧の増大308につながる。いくつかの実施形態では、308での脳灌流圧の増大により、より多くの流体、例えば血液および/またはリンパ液が、脳の区画に流入することが可能になる。任意選択で、主に大きい流入量によって特徴付けられる心周期の収縮相と同期して302〜310が行われるとき、310に対する302〜308の効果は向上する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、縮小302は、収縮期が始まる前にアダプタがそのベースライン体積となるように実施する。いくつかの実施形態では、縮小は収縮期の開始後も継続し、例えば、アダプタが完全には拡張していない状態で、収縮期の2%から20%の間またはそれ以上の重なる部分が存在する。例えば、ICPが増加するかまたは脳室が虚脱する場合に作用するいくらかの最小の体積を保証するために、アダプタはベースライン状態ではゼロよりも大きい体積を有し得ることを留意する。
いくつかの実施形態では、収縮相が終わるとき、または別法としてそれが(例えば、R−R間隔の長さおよび/もしくは脈波の形状および/もしくは前の周期に基づいて)間隔なしに(例えば、収縮相が終わる前の0.05〜0.2秒の時間範囲内で)終わると予測されるとき、脳室流体体積の能動的な充填312が生じる。通常、脳の区画の固定された容積内で体積を増大させることは、ICPの増大314につながり、この結果、静脈系などの排出系に対する負荷を増大させることができる。いくつかの実施形態では、増大した負荷は、脳脊髄液流出を助ける圧搾装置として働く。任意選択で、主に大きい流出量によって特徴付けられる心周期の拡張相と同期して312〜318が行われるとき、318に対する312〜316の効果は向上する。いくつかの実施形態では、収縮期の間のおよび/または直前の流体除去のための予備ステップとして、収縮相の始まりのより近くで充填を行う。
頭蓋内圧の調節の効果の例示的なシミュレーション
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る、規準状態のおよび脳脊髄液体積の能動的な調節による影響を受けた後の、脳内血圧および脳血流の例示的なシミュレーションを示す、図4A〜図4Gを参照する。
図4A〜図4Cは、アダプタの体積を変更するシークエンス400の例を示す。いくつかの実施形態では、シークエンス400は、心周期420の少なくとも一部と同期される。いくつかの実施形態では、シークエンス400は反復的であり、各心周期において同じパターンを繰り返す。別法として、シークエンス400は、任意選択で測定した患者からの生理的入力に基づいて、周期間で変更される。いくつかの実施形態では、生理的入力は、周期の相および/または拍動および/または血圧などの、心臓活動である。別法としてまたは追加として、生理的入力は脳測定と関連しており、ICPおよび/またはCPPおよび/またはCBVおよび/またはCBF流量を含む。
いくつかの実施形態では、患者の特定の症状に基づいて、シークエンス400の特定のプロファイルが決定される。例えば、伸展性の低い患者を、変化が比較的高速かつ少量である容積適合によって(例えば、利用可能な伸展性に基づいて選択された速度および容積で)、治療することができる。任意選択で、この特定のプロファイルは、以降の適合の周期に影響を及ぼす、容積適合中に収集された生理的入力に基づいて、リアルタイムで調節する。
任意選択で、アダプタ体積は脳血液の流入および/または流出と同期される。いくつかの実施形態では、脳血流は流量センサによって直接測定する。別法としてまたは追加として、脳血流は、脳および/または心臓に関連する他の生理的入力から推測する。
ここで図4Aを参照する。いくつかの実施形態では、容積アダプタの体積の減少を脳血液流入と同期し、このことは例えば、任意選択で、収縮相の始まりの時点aで始まる、区間a−bによって示される。いくつかの実施形態では、時点aは、収縮相の発端よりも後の時間に同期する。任意選択で、容積アダプタを縮小した状態に維持し、このことは例えば、任意選択で収縮期圧力波のピーク圧力の前の時間である時点bから開始し、時点cで終了する、平坦域b−cによって示される。いくつかの実施形態では、時点cは、区間c−dによって示されるような拡張期間につながる。任意選択で、時点cは、拡張相中のある時点にタイミングを合わせることができる。別法として、点cは、脳血液流出の圧搾を予め可能にするために、拡張期の発端よりも前に開始する。いくつかの実施形態では、拡張c−dは漸進的で、例えば、約0.5〜1.5ml/secの範囲内であり、この結果、任意選択で、拡張の合計が約0.5ml〜3.5mlの範囲内となる。別法として、拡張c−dの上昇は急峻である。いくつかの実施形態では、区間d−aにおいて示されるように、拡張c−dに続いて、拡張した状態の平坦域が維持される。
ここで、b−cの平坦域が収縮相の終わりの時点cにおいて終了し、その後に平坦域のない体積の漸進的な増加c−aが続き、収縮相の前の時点aから体積が減少して再び始まる例を示す、図4Bを参照する。
ここで、減少a−bおよび増加c−dなどの体積の変化が急峻であり、これらの変化の間で平坦域b−cおよび平坦域d−aが、任意選択で実質的に心位相の残りの部分の長さ全体にわたって維持される例を示す、図4Cを参照する。
いくつかの実施形態では、図4A〜図4Cにおいて縮小した状態から拡張した状態への移行を表している時点cは、収縮期の流入を許容することと拡張期の流出を可能にすることとの間のトレードオフが解決されるように決定する。例えば、流出を可能にするがなお収縮相の終わりの流入も可能にするのに十分な圧力が増加できるように、収縮期の終了の前のおよび/または拡張期の開始の前の時点を選択することによって、トレードオフが解消される。別法として、例えば、時点aにおいてなどの体積減少は、収縮期において特徴付けられる流入に関する圧力の減少の準備をするために、収縮相の開始および/または拡張相の終了の前に始まる。
いくつかの実施形態では、部分的に平坦域が決定されるが、これは、支配的な流れのパターン、すなわち実質的に流入のみまたは実質的に流出のみのいずれかによって特徴付けられる。平坦域中に1つまたは複数の谷および/または山を含むものなど、他の形状を提供してもよく、平坦域は任意選択で、収縮期前の拍動の50%未満の容積振幅を任意選択で有する拍動の連なりである。
図4Dは、本発明のいくつかの実施形態に係る、規準状態421のおよび容積適合の影響を受けた状態401の、頭蓋内圧の経時的なシミュレーションを示す。示されているのは、アダプタにおける体積低減に続くICPの減少、およびアダプタの体積の増加に続くICPの増加に関する例である。
図13Aおよび図13Bは、容積調節の1つの潜在的な所望の効果を、ピーク圧力が、最大振幅を低減される、および/または(2つ以上のより小さい山へ)分割される、および/または平坦になる(角度の急峻度が小さくなる)という形で、示している。
図4Eは、図4Dに示すような規準421の頭蓋内圧と変更された傾向線401との間の比をシミュレーションしている。拡張期中にICPが増加したが、任意選択で収縮期に見られるピーク値には達しないことを留意する。
図4Fは、本発明のいくつかの実施形態に係る経時的な脳血流上昇と治療を行っていない規準状態での脳血流とを対比したシミュレーションを示す。示されているのは、収縮期圧力波の山において見られる、血液流入の例示的な上昇である。
図4Gは、規準頭蓋内圧422の高い個人における経時的な頭蓋内圧調節402をシミュレーションしている。いくつかの実施形態では、示した例のように、圧力は基準値よりも低くしか低減せず、基準値を超えては上昇しない。通常は、規準頭蓋内圧が高い場合、ICPの低減の影響はより顕著である。
脳灌流圧に影響を与えるための例示的なシステム
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る、脳灌流圧に影響を与えるための任意選択のシステムのブロック図を示す、図5A〜図5Bを参照する。ここで、図5Aは一般的な容積アダプタを示し、図5Bは、バルーン状の拡張体(501)を使用する容積アダプタシステム500の特定の実施形態を示す。
いくつかの実施形態では、システムは、患者の脳室510内に存在する容積アダプタ101を含む。いくつかの実施形態では、容積アダプタ101は、脳室の内側の内容物の体積を調節することによって、患者の頭蓋内圧に影響を与える。いくつかの実施形態では、容積アダプタ101と動作可能に連絡しているコントローラ504が見られる。例えば、コントローラ504は、アダプタ101の縮小を結果的にもたらす命令を有する。別法としてまたは追加として、コントローラ504は、アダプタ101の拡張を結果的にもたらす命令を有する。任意選択で、コントローラ504は、アダプタ101内に存在するモータと連絡している。別法としてまたは追加として、コントローラ504は、図5Bに示すように、外部のモータ530と連絡している。
いくつかの実施形態では、コントローラ504は、少なくとも1つのセンサ502からの入力を受信する。例えば、センサ502は、心臓の電気および/または拍動および/または血圧などの、心臓活動を検出することができる。別法としてまたは追加として、センサ502は、頭蓋内圧、および/または脳灌流圧、および/または脳血流量、および/または脳血液体積を検出することができる(例えばセンサは、脳センサ502、例えば頭蓋内センサ、例えば頭蓋内圧力センサを用いて示される)。
いくつかの実施形態では、コントローラ504は、心臓活動において、脳血液流入のタイミング、例えば収縮相の時間の前後あたりなど、および/または、脳血液流出のタイミング、例えば拡張相の時間の前後あたりなど、を識別するための命令を含む。任意選択で、コントローラ504は、アダプタ101を、脳血液流入のタイミングと同期して縮小するように動作させる。別法としてまたは追加として、コントローラ504は、アダプタ101を、脳血液流出のタイミングと同期して拡張するように動作させる。
いくつかの実施形態では、コントローラ504は更に、流入および/または流出のタイミングを予測するための命令を含む。任意選択で、同期は、予想される流れの変化に合わせたその動作の変化に先行するようなタイミングで行う。例えば、アダプタ101は、予測される流入の発端よりも前にまたは後で、縮小してもよい。流入および/または流出および/または他の生理学的イベントから時間をずらすことを同期に含めることの、潜在的な利点は、流入および流出に対する圧力、灌流、ならびに/または調整的な様々な周期に影響を及ぼすことの、相反する影響の間のトレードオフが維持されることである。
いくつかの実施形態では、例えばCBFモニタおよび/またはPbtO2モニタなどの少なくとももう1つのセンサ、ならびに/あるいは、CPP(t)および/もしくはCPP積分値(例えば時間での積分値)ならびに/またはICP(t)および/もしくはICP積分値(ICP/CPP用量)を提供する。任意選択で、これらのセンサのうちの少なくとも1つからの測定値を、デバイスの縮小および/または拡張の振幅を特定するために使用する。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、積分は、1から600秒の間、例えば5から10秒の間の期間で行う。
いくつかの実施形態では、患者の脳血管における少なくとも2つの別個の地点において圧力を測定するために、圧力センサ(例えば520)を提供する。別法としてまたは追加として、少なくとも1つの流量センサを提供する。任意選択で、血管において、2つの別個の地点の間で、望ましくない圧力差ならびに/または流体流の不在および/もしくはそれ以外で望ましくない量が検出されたとき、上記容積アダプタの動作は中断する。
任意選択で、コントローラ504は、圧力センサが所定の閾値を超える、例えば、15mmHgを超える、または20mmHgを超える、または25mmHgを超える、または30mmHgを超える、または35mmHgを超える値を提供するときに、容積アダプタ101の拡張を止めるための命令を含む。
任意選択で、コントローラ504は、圧力センサが所定の閾値未満の、例えば、5mmHg未満の、または4mmHg未満の、または3mmHg未満の値を提供するときに、容積アダプタ101の縮小を止めるための命令を含む。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、コントローラ504は、システムパラメータの初期値および/または適合値の探索を実行するための命令を含む。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、コントローラ504は、PV曲線を計算するための命令を含む。
一般に、本明細書に記載する全ての方法、具体的には、感知すること、感知した信号を分析すること、膨張および収縮させること、ならびにシステムパラメータを決定および/または実際に変更すること(場合によっては、拡張体101を頭蓋骨内に物理的に挿入すること以外)は、コントローラ504の制御および/または通知に基づいて実施され得ることが、留意される。任意選択で、使用者は警告を定めることができるか、または特定の状況において自動的に警告を受け取ることができる。任意選択で、コントローラ504は特定の動作(例として、例えばそのデータストレージに定義された、生命に危険を及ぼすもの)を回避し、人間の承認または命令を要求する。
コントローラ504は自己完結したものであってもよいが、いくつかの実施形態では、一部のデータおよび/または命令および/または決定能力が、別々のユニットにおいて、任意選択で離れた場所で(例えば、サーバにおいてまたはクラウド上で)提供されることも、留意する。
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る、バルーン501状の容積アダプタの例示的な実施形態のブロック図を示す、図5Bを参照する。いくつかの実施形態では、バルーン501は、少なくとも1つのポンプ544によって拡張および/または縮小される。任意選択で、バルーン501は、流体、例えば気体および/または液体を含む。いくつかの実施形態では、リザーバ540と流体連通しているポンプ544が見られる。別法としてまたは追加として、ポンプ544は、患者を取り囲む周囲空気から気体を受け取る。かかる実施形態で、流体のリザーバが閉じ込められていない流体のものである場合、バルーン501の内側の流体が、弁を通して任意選択で放出される。一部の実施形態では、弁はコントローラ504によって制御される。
いくつかの実施形態では、ポンプ544がモータ530と動作可能に連絡しており、モータ530は任意選択でコントローラ504と動作可能に連絡している。いくつかの実施形態では、バルーンデバイス内にモータ530が置かれる。別法としてまたは追加として、モータ530は患者の外側に置かれる、および/または、それとも異なる別々のユニットである。
いくつかの実施形態では、リザーバ540は患者の外側に置く。別法としてまたは追加として、リザーバ540は、脳室510内に、任意選択で剛性の区画内に置く。
いくつかの実施形態では、バルーン501は伸展性のない壁を備える。伸展性のない壁を使用する潜在的な利点は、その固有の拡張の限界であり、脳室の場合には、この壁が過剰に拡張すると患者を損傷させる場合がある。いくつかの実施形態では、バルーン501は二重層を備え、任意選択で一方の層は伸展性がなく、任意選択で他方の層は弾性を有する。伸展性のない層内で弾性である層を使用する潜在的な利点は、弾性の層がその体積をより容易に変化させる可能性があり、一方で伸展性のない層がこの弾性の層の拡張の限界を決定したことである。
例示的なフィードバック
図5Cは、本発明のいくつかの実施形態に係る、フィードバックを使用する方法のフローチャートである。
542で、患者を任意選択で診断する。異なる症状は異なる手法で処置する、および/または、初期設定値を変える(例えば、システム500に保存されている表または他の演算機能を使用して)ことを留意する。
544では、まだ埋め込まれていなければ、システム500、または少なくともその容積変更部(例えば、101)またはそのCSF除去部を、患者に埋め込む。追加の例示的な詳細を、図5Dに関連して以下に示す。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、埋め込みは、1つまたは複数の生理学的センサ、例えば頭蓋内もしくは血管内の圧力センサおよび/またはドップラー式流量センサの埋め込み、ならびに/もしくはそれに接続することを含む。任意選択で、センサは、システム500の一部であってもなくてもよいセンサ処理回路に接続される。センサ処理回路は例えば、ICPプローブを含むことができかつ測定されたICPを符号化するデジタル出力を生成することができる、ICP感知および測定システムなどの、標準的な感知システムである。ICPプローブを、拡張体101の表面に、例えばその導入用カテーテルの表面もしくは中に装着してもよく、または、別々に提供してもおよび/または任意選択で別の開口部を介して頭蓋骨に埋め込んでもよいことを留意する。
546では、例えば、図5Dに示す下記方法を使用して、初期システムパラメータを任意選択で選択する。
548では、システム500を任意選択で起動するが、これには、図5Eを参照して記載するように、例えば、1つまたは複数のシステム動作パラメータを調節することが含まれ得る。任意選択で、治療は連続的に行う。任意選択で、脳の状態を評価するために、例えば、1〜30分ごとに、0.5〜12時間ごとに、または0.5〜4日ごとに、測定を中断する。中断の長さは、脳が安定状態に達することができるように選択してもよい。いくつかの実施形態では、治療は、例えば5〜400分またはそれ以上の長さで、例えば間に5〜400分またはそれ以上の長さの中断を含む、複数のセッションの形である。
550では、患者をシステム/治療から引き離してもよい。例えば、患者が安定したら、ICPが下降したら、および/または他の指標に基づいて、システムは自動的に、または使用者の入力に応答して、提供される治療の量の低減またはそれ以外の変更を開始してもよい。一例では、治療セッションの回数(例えば治療が連続的に行われていない場合)および/またはその長さ(例えば各セッションの長さ)を減らす、および/または、セッション中の継続時間を延長する。任意選択でまたは別法として、治療する周期と治療しない周期の間の比を小さくする。任意選択でまたは別法として、脳血流における干渉がより小さくなるかまたは変化するように、膨張の振幅を小さくする、および/またはタイミングを変更する。任意選択で、複数の段と異なる段に関する異なる設定値および/または目標値とを含む設定プロトコルが、メモリに提供される。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、感知することは、頸動脈における拍動を感知することを含む。このことは、脳への圧力波の到達のタイミングの予測がより簡単である、および/または、このタイミングのばらつきがより少ない、という潜在的な利点を有する。
例示的な設定
図5Dは、本発明のいくつかの実施形態に係る、容積アダプタシステムを設定する方法のフローチャートである。
552では、デバイス(例えば、容積アダプタ101)を脳に挿入する。
554では、一定体積変化のプロセスを任意選択で開始する。諒解され得るように、患者のICPは典型的には高い。アダプタ101を拡張させることにより追加の圧力スパイクが生じるが、これは通常は望ましくない。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、ICPを増加させないように、あるいは、少なくとも閾値量、例えば0.3、0.7、1、または2mmHg、もしくはこれらの間の数、またはより大きい数よりも大きくは増加させないように、アダプタ101の拡張と同期してまたはその前に、脳からCSFを除去する。任意選択で、流体は、脳室ドレナージデバイスを介して除去する。任意選択で、アダプタ101は、かかるドレナージデバイスの表面に装着し、このデバイスはシステム500によって、必要に応じて流体を除去するように、および/または、デバイスによって実際に除去された流体の量だけに基づいてアダプタ101を拡張させるように、制御される。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、拡張は、拡張期(例えば低いICP)中にのみ行う。任意選択で、流体除去は収縮期(例えば高いICP)中に行う。任意選択で、収縮期中、アダプタ101は縮小されて、ベースライン膨張へと戻される。任意選択で、導入中、アダプタ101はベースラインまで縮小されていない、または、ベースライン未満まで縮小されている。システムが一旦使用されると、拡張およびベースラインへの縮小を実施することができる。
一例では、バルーンが挿入され、例えば約0.5cc以下の初期体積へと膨張される。任意選択で、この体積まで膨張する間に、CSFが時間をかけて除去され、一方で、最初に時間をかけてバルーンを膨張させて、CSF体積の代わりに最大数ミリリットルのバルーン体積を導入するが、このプロセス中、正味の圧力上昇が生じることはない。この初期の膨張の後で、1回目の収縮ならびに更なる収縮および膨張(ならびに任意選択で、ベースライン体積の増加)を、ベースラインを超えてICPを増加させないように行ってもよい(may be prefined)。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、バルーン体積を増加させるとき、バルーンが更に膨張されていく間に、CSFは引き続き排出される。このことにより、例えば低過ぎる、高過ぎる、または急に変化するICPによって引き起こされる脳室の虚脱を防止することができる。一般に、ICPの機序では、バルーンの外側のCSF体積とバルーン内の流体体積(およびしたがってバルーン体積)を区別することができない点を留意する。この方法により、バルーンを単に漸進的に膨張させて神経系中にCSFが再び分散するのを待つよりも、大きなバルーン体積に達することが可能になり得る。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、アパーチャを有するカテーテルなどのCSF除去デバイスが、本来の脳拍動を利用して以下のように使用される。どの心周期に関しても、収縮期中、バルーンが収縮されるときに、脳の外部からの能動的な吸引を伴ってまたは伴わずに、脳によってある程度のCSF体積(dCSF)が「押され(pushed)」て、導管の役割を果たすカテーテル内に入る。拡張期中、バルーンは、収縮期中に脳によって追い出された体積dCSF(またはこれとほぼ同じ体積)を、その先立って設定された体積に加算した体積になるまで膨張される。正味では、任意選択で、バルーン内により大きい、およびCSF内により小さい容積が存在すること以外は、脳内の合計容積に変化はない。このことにより、バルーンをより大きな程度まで膨張および/または収縮させることが可能になり得る。
その後、初期パラメータを任意選択で設定する。設定中にデバイスの最大体積が変化する場合があり、この場合、かかる設定の前だけではなく、パラメータ設定中に脳から更に流体を除去する必要があり得ることを、留意する。
1つまたは複数のデフォルトのシステムパラメータを事前に設定してもよいが、本発明のいくつかの例示的な実施形態では、システム500の使用における第1の段階は、有効および/または安全なパラメータを決定することである。望ましくは、決定した一群のパラメータは、安全かつ有効なものであるか、または、そうでなければ安全性と有効性との間で所望のトレードオフを提供するものである。任意選択で、1つまたは複数のパラメータに関するデフォルト値および/または範囲の限界値は、患者の診断に基づいて選択されるかまたは事前に定められる。システム500のメモリに、そのような値を記憶することができる。
第1のパラメータは体積である。アダプタ101の最大体積により、ICPの最高レベルを決定することができる。指摘したように、高いICPは一般に回避すべきである。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、最大体積および/または最大体積のタイミングは、望まれていない時間にICPを増加させるのを回避するように選択する。多くの実施形態でICPに言及するときに、ICPを動脈圧と関連させるCCPを代わりに使用するのが有用であり得ることを留意する。
1つの方法では、最大体積を最初に選択し、次いでタイミングを最適化する。別法として、体積と1つまたは複数のタイミングパラメータの両方を、同時に探索する。
556では、第1の体積、例えば0.1ccまたは0.5ccを試す。
558では、体積の好ましい効果、例えば、CBFの増加またはdQ/dt(血液交換率)の変化が特定する。かかる特定は、例えば、1から100秒の間にわたって行ってもよい。
560では、好ましくない効果、例えば、ピークICPの増加またはdQ/dtの低減を特定する。同じように、これは、複数の周期にわたる、例えば10〜200秒の間の傾向として検出してよい。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、灌流および/または酸素化(または本明細書に記すような他の生理学的尺度)を各体積について測定する。
562では、好ましくない効果が高過ぎる場合、体積を低減してもよい。好ましい効果が低過ぎる場合には、体積を(例えば、0.1ccまたは0.05cc〜0.17ccの間の他の小さい量だけ)増加してもよい。任意選択でまたは別法として、最大体積と重なる心臓の(および/またはICPの)周期の一部を変化させるために、他のパラメータ、例えば、1つまたは複数のタイミングパラメータを変更してもよい。
設定は、パラメータ値の2つ以上の群、例えば、所望の最大体積と、第2のより大きい「許可される」体積と、を含み得ることを留意する。この第2の体積は、(例えば、手動もしくは自動での適用および/または看護者アラート生成のために)患者の特定の状態と関連付けてもよい、並びに/あるいは、(例えば、タイミングの場合と同様に、意図的にもしくは意図せずに)特定の継続時間にわたって適用を許可してもよい。
564では、他のパラメータもまた同様の手法で評価してよい。単一パラメータの探索プロセスについて記載しているが、最急降下法などの、複数のパラメータにわたって同時にまたはインターリーブ式に最適化/探索を行う探索方法および最適化方法もまた使用してよいことを留意する。
以下のシステムパラメータのうちの1つまたは複数を任意選択で変更することができる:
(a)拡張の開始、
(b)拡張の終了、
(c)最大拡張体積もしくは体積の変化、
(d)体積変化の速度、
(e)体積変化の傾きの形状、
(f)平坦域の長さ、
(g)平坦域の傾きもしくは平坦域の他の非線形の形状、
(h)収縮の開始、
(i)収縮の速度、
(j)収縮の終了、
(k)収縮の傾き、
(l)収縮平坦域ならびに/もしくは膨張平坦域および収縮平坦域のデューティサイクル、
(m)膨張と収縮の間の遅延、
(n)拡張の最小値(ベースライン)、
(o)ICP周期の任意のもしくは全ての部分での圧力もしくは系の伸展性、ならびに/または
(p)各イベントのタイミングに関して使用する生理学的パラメータ(例えば、R波検出、血液拍動波)、ならびに
(q)(以下に記載の)1周期内の拍動の回数であり、各拍動は場合によっては上記のパラメータのうちのいずれかまたは全てについて異なる値を有するもの。
豚モデルで実験を実施したが、その結果の一部は図12〜図14にも示してある。またこの実験は、上記の設定の一部もしくは全ておよび/または探索もしくは調整中に探索対象となる範囲にとって、有用であり得る開始点について、一定の示唆を与えている。
実験は豚(40〜50kg)に対して実施し、これに麻酔し、挿管し、仰臥位にして、頸動脈カテーテル処置を行った。その後、豚を腹臥位に移して頭蓋切開を行い、本明細書に記載するように、ICPモニタのインプラント、脳室開窓術の実施、およびCBFモニタおよびバルーンの設置を行った。バルーンの位置および脳室開窓術を超音波によって検証した。
安定性の確認後、5頭の豚から成る第1の群を、水中毒モデルとなるように処置した(0.18%生理食塩水を静脈内に時間をかけて注入して、重篤な低ナトリウム血症、続いて脳浮腫を起こさせ、ICPを次第に増加させた。5頭の豚から成る第2の群には、脳室内に通常の生理食塩水を極めて緩慢に注入して、漸進的に水頭症を引き起こさせた。いずれの群でも、ICPが漸進的に増加し、その後、バルーンデバイスを試験して、以下のICPの刻みにおいて概ね有効であることが示された:10〜15〜20〜25〜30〜35〜40mmHg。これらの豚は血行導体的に安定しており、結果はいずれの群の豚でも同じ一般的性質を示すものであった。本発明のいくつかの実施形態を説明するために、本明細書に一部の結果を示す。人間の脳を治療するためには豚の脳よりも大きな容積が必要となる場合があるが、ICPおよび流れの問題に関して、豚の脳は、人間の脳にとっての有用なモデルであると考えられることを留意されたい。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、バルーンの膨張および/または収縮は短期間であり、例えば、0.5から2ccの間の体積に対して約10〜20msである。任意選択で、シリンジポンプを例えば、そのピストンを2000cm/secの速度で移動させて使用する。任意選択で、最大速度は、脳の動揺を回避するために望まれるものによって制限される。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、例えば0.6cc未満では効果がない場合があることを留意されたい。任意選択で、体積は少なくとも1.2cc、または更には少なくとも1.8ccである。一般に、体積が大きいほど有益であると考えられる(これによりICPが高くなり過ぎないことが条件である)。指摘したように、治療中に、任意選択で自動的に、必要に応じて、体積を調整することができる。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、バルーン(または他の拡張可能な構造体)のベースライン体積を、ICPが増加する場合であっても作動体積が実現するように選択する。いくつかの実施形態では、バルーンの重要な機能はその収縮であり、かかる可能な機能を確実に維持するのが望ましい場合があることが留意される。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、CSFの初期の除去により、ICPに大きな影響を与えずに、バルーンを挿入することおよびかかる初期ベースライン体積まで膨張させることが可能になる。例えば、かかるベースラインは、0.5、1、1.5、2、2.5cc、もしくはより小さい、またはこれらの間の、またはより大きい体積(例えば、2ccのベースラインおよび追加の1〜2ccの膨張体積を有する)であり得る。
任意選択で、かかるベースライン膨張により、脳室の虚脱が存在する場合であっても、デバイスが空間を占めることが可能になる。任意選択で、脳室が虚脱している間(短期間または間欠的なものであり得る)、バルーンのベースラインの減少が許容され、古いベースラインと減少したベースラインとの間の差が、拡張する体積として使用されることになる。任意選択でまたは別法として、脳室が虚脱している間はシステムの動作を停止することができるが、バルーンを再導入し膨張させる必要が生じることはない。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、バルーンは、例えばバルーンの拡張体積を維持するために、ICP周期中の他の時間に、任意選択でより少ない量まで、膨張および収縮される。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、同期を、心周期のR波、または頸動脈拍動のもしくは脳動脈系に近い他の動脈の示度に対して行われるように選択する。このことは、例えば以下に示すような、全てのタイミングパラメータの基本となり得る。任意選択で、心拍数が変化するとそれに応じて時間が調整されるが、これは任意選択で自動的に行われる。あるパラメータはそれ自体HRから独立していてもよく(例えば、収縮継続時間)、またあるものはR波の特定の部分とリンクしていてもよい(例えば、収縮期前の収縮開始)。調整は例えば、かかるイベントに対して比例配分的にまたは固定されたタイミングで行うことができる。
例えば、使用者はICPに基づいてタイミングを選択することができ、システムは、ECG信号または動脈拍動とICP波におけるこの時点との間の遅延を自動的に計算することができる。任意選択で、システムはまた、拡張体101の体積変化の速度も考慮する。一例では、システムは(例えばドップラーセンサを使用して)頸動脈拍動を使用して設定され、その後、タイミングをECGに基づかせることができるように、R波などのECGの特徴と頸動脈拍動との間の時間が測定される。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、収縮を、頸動脈における動脈圧の上昇とともに開始するように設定する。豚においては、これが豚ECGからのR波検出後の約50ミリ秒と相関していることが分かった。任意選択で、かかる設定後、圧力上昇がちょうど始まったところで、有利にはその直前で、実際に収縮が起きることを確認するために、システムを(例えば、ICPまたは動脈波形に対して)チェックする。任意選択で、この試験はシステムが起動される前に適用する(例えば図5E)。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、アダプタ101の拡張が拡張期中に起こるように設定する。収縮期中の膨張が灌流の減少およびICPの増加を引き起こすことが、実験による証拠により示唆されている。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、システム起動前に行われる試験には、ピーク圧力を過ぎた後にだけ、および任意選択で収縮期が完了しているときに、膨張が起こることを確認することが含まれる。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、膨張が、次の周期の収縮の可能な限り近くで起こるように選択するが、これは一般に、心周期の拡張張期中のかなり後期である。可能な限り近いとは、膨張した状態の継続時間があらゆる場合にゼロに近似されることを意味するものではなく、例えば、(患者によっては)脳からの流体抜去を支援するような、膨張した状態の最短の継続時間が存在し得る。これは、継続時間を調節することによって、および、CBFまたは1つもしくは複数の他のパラメータをモニタリングすることによって、特定され得る。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、以下の設定およびパラメータを使用する:R波検出、次いで心周期の計算(例:心拍数75、心周期800ミリ秒)。その後、収縮に関するR波の待ち時間(例えば、動脈波形および/または収縮速度に応じて50ms)を選択する。その後、R−R区間(例えばこの例では800ms)を検出し、例えば50〜100msを減算して膨張時点を定める。この結果(800ms周期に対して)、50msで膨張が開始し、700または750msで収縮が開始することになる。膨張および/または収縮するための時間は、任意選択で10〜20msの間である。
実験結果に基づけば、これらのタイミングパラメータは、少なくとも一部の、例えば初期ICPが25〜30mmHg、初期灌流(hemdexモニタ)が組織100grあたり20〜30cc/minである患者にとっては、有用なセットであるように見える。体積は例えば、1.5から3ccの間であり得る。例えば、豚モデルでは、システム500の起動後、灌流が組織100grあたり3〜5cc/min増加し、ICPが平均で10%〜15%低減した(例えば、25〜30→20〜25)。
治療中のフィードバックの例示的な使用
図5Eは、本発明のいくつかの実施形態に係る、容積アダプタシステムの1つまたは複数のパラメータを適合させる方法のフローチャートである。
570では、システム500を、例えば図5Dに基づいて設定したパラメータを用いて使用する。諒解され得るように、患者の状態が通常は経時的に変化するだけでなく、短期の生理学的変動もまた存在し得る。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、システム500は、患者の状態の長期の変化および短期の生理学的変化の、一方または両方に適合可能である。
第1のタイプの適合性は、悪影響の回避および/または低減である。第2のタイプは、利益の増加および/または最大化である。
単純な例では、患者の心周期の変化により、パラメータ選択が無効になる可能性がある。別の例では、ベースラインICPの漸進的な増加または減少により、最大体積および/または膨張/収縮継続時間を変更する必要が生じる可能性があるか、それらを変更する機会が得られる可能性がある。
システム500が使用されている間、患者の状態の1つまたは複数の測定値および/または治療に対する反応を、任意選択でモニタリングする。
572では、システム500の好ましい効果、例えばCBFの増加を、任意選択で検出する。好ましい効果がないことおよび/または好ましい効果の減少により、パラメータの変更が提示される場合がある。
574では、システムの好ましくない効果、例えば、CBFの低減またはピークICPの増加を検出する。かかる好ましくない効果により、パラメータの変更が提示される場合がある。
576では、システム500および/または患者のパラメータのモニタリングにより、システムパラメータの変更が有益であり得ることが提示される場合がある。例えば、ベースラインICPが降下した場合、容積増加を容認できる場合がある。
578では、1つまたは複数のシステムパラメータを変更することができる。任意選択で、この変更には、事前に規定した変更点のセットを使用する(例えば、体積変化と収縮遅延との同時の変更)。別法として、1回にただ1つのパラメータを変更する。任意選択で、例えば図5Dを参照して記載するような探索方法を使用してもよい。
患者が、いくつかのシステムパラメータ群、および/または対応する、許容されるもしくは望ましい生理学的パラメータ群を有してもよいことを留意されたい。任意選択で、578において、例えば、測定したまたは所望の一群の生理学的尺度に応じて、システムパラメータの異なる群を(手動でまたは自動で)選択するように、572〜576を使用してもよい。任意選択でまたは別法として、かかる群によって特定の量の余地が提供され、例えば、ICPも同じく相対的に低くに保たれるのであれば、心周期の特定のパーセンテージについては、灌流がベースラインに対して増加しないことを許容してもよい。
適応治療の一例では、生理学的尺度として、CPP、および/またはICPの時間に対する積分値を使用する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、使用者は、限度値、所望値、警告を行うべき値、および/または治療に有効だと考えられる値などの入力を与えることができる。
かかる尺度で、ベースラインに対しておよび/または何らかの他の設定(例えば、期待される改善または懸念される悪化)に対して、(何らかのおよび/または十分な、例えば10%の)改善が示されない場合には、システムパラメータを変更してもよい。一例では、最大体積が漸進的に増加する。例えば、5分にわたって改善が見られない場合、最大膨張量の0.1ccの増加がトリガされる。変更に関する決定は、例えば、数分などのベースライン速度に、および/または、効果の深刻さ(例えば、最大体積の急激な低減を引き起こす(例えば、システム設定によって定義されるような)大きく有害な効果)に基づいてもよい。
容積の(例えば最大安全値に達するまでの)変化によって所望の改善が得られない場合、膨張および/または収縮時間を、例えばR波に対して1msの幅で変更する。任意選択で、幅のサイズは様々であり、例えば、開始時は大きく、その後は次第に小さくする、および/または、変化の効果に基づいて方向を変える。
有害な効果の検出により、拡張体積の、例えばベースライン量以下への低減が、任意選択でトリガされる。これで十分でない場合、ピークICPの特定の値および/またはパーセンテージを超えてICPと一致しないように、膨張の時間をR波に対して前進させてもよい、および/またはタイミング(例えば長さ)を変更してもよい。
ICP積分値を使用する具体的な方法として、心周期(または周期群)あたりのICP(t)曲線のROCを、前の心周期(または周期群)と比較し、許容および/または提供すべきROC用量を定める。
任意選択で、かかる比較には、整合する周期、例えば、不規則ではない周期、同様のHR周期、同様のECG周期、および/または不整脈のない周期を使用する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、システム500を代替のマーカーに対して適合させる。例えば、システム500は、上記したように、例えば、検証済みの任意の関連する灌流もしくは許容できる脳酸素化モニタリング方法(例えば、CBFモニタリング、PbtO2モニタリング、等)、および/または、システムの適時の起動もしくは不適切な起動に関するフィードバックとしての、現行のICP/CPP用量からリアルタイムに計算される積分値(CPP(t)またはICP(t))を、実時間で調整する。
任意選択で、システム起動から1〜600秒以内に選択したマーカーの値を分析し、これを以降の起動に対して使用する。任意選択で、起動前におよび/または(好ましい効果を及ぼさないが好ましくない効果も及ぼさない)軽度の起動中に、60から3000秒間のデータを収集し、これをベースラインとして使用する。
起動後にこのベースラインと比較して結果が悪くなっていれば、任意選択で同期性のチェックおよび/または最適化を行う。例えば、収縮タイミングは(任意選択で手動で)チェックされ得る。任意選択でまたは別法として、時間を遡って膨張時間をチェックおよび/または調節する(例えば小さな時間の刻みで、例えば、ピーク圧力後の30msなどの短い時間に戻す)。任意選択で、膨張時間および/または収縮時間のかかる変化の効果を特定するために、灌流(または他の)マーカーを使用する。改善が検出されると、それらを新しいパラメータとして、および/または他のパラメータの最適化プロセスを開始する時点として、使用することができる。
図12A〜図12Cは、本発明のいくつかの実施形態に係る、システム500の使用の有効性を評価する例示的な方法を示す。
図12Aは、豚モデルにおけるdQ/dtによる評価を示す。垂直の線はバルーンが膨張または収縮していたときを示す(収縮は収縮期の直前である)。見てとれるように、システムの起動後、dQ/dtは増加し、さらに−0.031ml/(min*100g*sec)から+0.156ml/(min*100g*sec)へと向きを変えた。
図12Bは、dQ/dtが正にはならなかったがそれでも増加した例を示す。
図12Cは、ICPの(例えば、連続した垂直の矢印の間の時間での)積分値が使用された例を示す。呼吸によるアーチファクトは除去してあり、垂直の線はバルーンの膨張/収縮イベントを示す。見てとれるようにICP積分値はシステムの使用中に低下する。CPPの積分値についても同様の結果が予想される。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、所望の値において閾値(または変化を検出するために値を比較する他の方法)を使用する代わりに、形態学を使用する。例えば、治療の目的が拡張期中の低ICP時間の継続を長くすること、または収縮期中のICP圧の山を平坦にするかもしくは分割することである場合、これはICP波の形態学的分析によって検出できる。図13A〜図13Bはかかる効果の例を示す。例えば、テンプレートマッチングを使用してまたは既存の形態と所望の形態との間の距離を計算することによって、形態の変化を検出してもよい。一次元の信号の形態を比較するおよび/または形態の変化を検出する様々な方法が当技術分野において知られており、それらを使用することができる。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、治療の目標となる関数は、複数の異なる生理学的尺度を含んでもよい。任意選択で、これらの尺度から複合的なスコアが構成され、この複合的なスコアに対応する(例えば、これに達する、またはこれを超える)スコアを有する生理学的状態が結果的にもたらされるように、治療を調整する。
580では、システム500を調整および使用するプロセスを繰り返す。調整が失敗するおよび/または患者が安全限界を超える場合、例えば、光、音声、および/または電子メッセージを使用して使用者(例えば医師)に警告を与えてもよいことを留意する。場合によっては、調整は手動で実施し、使用者は、調整手順の一部として、システムにアプローチして入力(例えば、頸動脈ドップラー感知)を提供するように、警告を受け取ってもよい。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、時間での積分を見る代わりに、微分、例えば、時間の関数としての流量の変化を見る。この指標の増加は、それがICPおよび/またはCBFおよび/または灌流の変化として目に見えて現れていなくても、例えば、機能の改善を示している場合がある。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、CPPが、他の生理学的パラメータに依存するICPよりも、良い指標を提供し得ることを留意する。任意選択で、本明細書に記載する方法のうちの一部または全てに対して、ICPではなくCPPを使用する。調整のために使用する本明細書に記載の尺度はまた、調整が実施されていない場合でも、患者のモニタリングに使用され得る(例えば、使用者に表示されるまたは患者もしくは病院の情報システムに送信される)ことを留意する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、脳がいくつかのフィードバックループの一部であることを留意する。一例では、CBFの変化は、頸動脈(または他の動脈)の血流の変化を含む(case)ことができる。任意選択で、システム500調整用のフィードバックとして使用するものには、脳に関する実際の測定値に加えて、またはその代わりに、好ましい効果または好ましくない効果が生じつつあるという兆候、といった尺度が含まれる。
いくつかの例示的な、タイミングに関する事項
以下は、本発明のいくつかの実施形態に係る、タイミングに関するいくつかの例示的な事項である。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、タイミングはイベントに基づく。任意選択で、イベントはECGにおけるR波検出であり、システム500の部品の作動のタイミングは、R波および/または予想される次のR波に対する、時間遅延に基づく。任意選択で、異なるイベント、例えば、頸動脈または他の動脈、任意選択で脳の近くの動脈における、圧力パルスの発生を使用する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、収縮は、頸動脈における動脈圧の上昇とともに(例えばそこから10〜20ms以内に)開始するように、特定的かつ優先的に設定する。豚モデルにおいては、これがECGからのR波検出後の約50ミリ秒であることが分かった。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、収縮時間がECGと合致すると、今度は、例えば、短い時間の間および/またはECG形態のある範囲内で、動脈圧に対してチェックする。任意選択で、チェックするのは、圧力増加の前に収縮が始まるおよび/または終わることである。任意選択で、安全機能として、このタイミングが見付からないと、システム起動はブロックされる。任意選択で、非伸展性を検出するために動脈圧を使用する代わりに、非伸展性を検出するためにICP収縮期に対するタイミングを使用する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、膨張が拡張期中および/またはICPが低いときに起きることを保証するために、安全チェック(例えば、実際の圧力に基づいた、類似のチェック)が行われる。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、膨張と収縮が可能な限り近いことで望ましい。任意選択で、頭蓋内の流体が膨張に反応できるようにするために、バルーンが膨張する期間を短くする(例えば10〜100ms、例えば5〜50ms、例えば3〜30ms)。任意選択で、収縮が起きたときに、膨張によって置き換えられた流体(例えば、CSF、静脈血)と流入する動脈血とが過剰に争うことのないように、膨張した状態の継続時間は十分に長い。例えば、バルーンの収縮に起因する流量増加の少なくとも20%、30%、40%、60%、80%、またはこれらの間のパーセンテージは、動脈血に起因するべきである。任意選択で、このことは画像化を用いて、例えば、MRIイメージングを使用して、または核医学イメージングを使用して、例えば血液中で好適なPET同位体を使用して、またはx線イメージングを使用してx線造影剤の最初の変色(blush)を検出することによって、モニタリングおよび/または評価を行う。別法として、全体的な結果、例えばCBF、をチェックすることによって、これを検出してもよい。
このことは2つの潜在的な利益を有する。第1に、この時点でICPは最低であってもよい。第2に、バルーンが膨張するのが可能な限り短い時間の間になり、したがって脳との干渉が可能な限り少なくなる。
図5Fは、本発明のいくつかの実施形態に係る、膨張と収縮の間の例示的な遅延を示す。任意選択で、収縮時間は、(例えば変動性を考慮して)収縮期開始前となるように設定し、膨張時間は、収縮期終了後となるように、ただし任意選択で、上で指摘したように収縮に可能な限り近くに、設定する。任意選択で、膨張はR波の検出後に開始してもよい。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、この結果、バルーンが膨張しているのは(例えば、心臓のまたはICPの)周期の50%、30%、20%、10%未満、またはこれらの間のパーセンテージとなり、バルーンのデューティサイクルが低くまたは非常に低くなる。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、1周期中に複数回の拍動が提供される。任意選択で、1周期中の膨張の合計継続時間は、依然としてこれらの範囲内にある。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、バルーン体積およびバルーン膨張状態継続時間の両方から成る、例えばこれら2つの積である、複合的なスコアが最適化される。使用時、体積を本明細書に記載するように設定され、初期膨張状態継続時間は、例えば50から70msの間に設定する。この継続時間は、所望の尺度(例えば、CBF、CPP積分値、等)に対する効果に基づいて、時間をかけて低減させる(および体積は任意選択で増加させる)。諒解され得るように、疾患の状態および/または圧力が異なれば、異なる膨張継続時間の必要性が示される場合がある。任意選択で、システム500は、互いと関連付けられた、一群の(例えばメモリ内の)病状ならびに提示された開始点、範囲、感知されるべき信号、所望の結果、および/または予想される結果の、(例えばメモリ内の)群を用いて、事前にプログラムされている。疾患の状態を識別、ならびに変更および/または感知されるべき1つまたは複数のパラメータを提示するために、使用者による(または様々なパラメータの値および/もしくはシステム500の操作に対する応答に基づく、電気回路による)指示を使用してもよい。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、収縮は、収縮期アップストロークの前の10〜50msの範囲内となる(またはこれ未満、場合によってはアップストロークと重なる)ようなタイミングで行われ、膨張は、心周期の最後の3分の1内(例えば、典型的には収縮期アップストロークの前の150から330msの間)となるようなタイミングで行われる。
図13Aは、豚モデルにおける、脳の状態に対する良いタイミングの効果の例を示す。見てとれるように、CBFは起動後に増加し、このときのパラメータは、1.8mlの体積変化、R波後90msで収縮、(HR=約75BPM)、R波後500msで膨張、ICP28mmHgである。拡張期の下向きスパイクの増加、ならびにピークICPの平坦化および/または分割もまた、顕著である。ICPの低減もまた顕著である。膨張状態継続時間が見掛け上約210msであることが留意される。
図13Bは、豚モデルにおける、脳の状態に対する良いタイミングの効果の別の例を示す。見てとれるように、CPPは起動後に増加し、ICPは減少し、このときのパラメータは、1.8mlの体積変化、R波後90msで収縮、R波後590msで膨張、ICP34mmHgである。拡張期の下向きスパイクの増加、ならびにピークICPの平坦化および/または分割もまた、顕著である。
諒解され得るように、治療のガイドとしてどのパラメータを使用すべきかは、多くの場合、看護者が決定することである。ただし、システム500にデフォルトをプログラムすることができる。
図14Aは、悪いタイミングの効果を示し、この場合、1.2mlの(少ない)体積変化に対して、420msで収縮、650msで膨張した。見てとれるように、ICPの山の形状は変化しているが、目立って低減はしていない。このことは、膨張が収縮期と重なることおよび/または収縮の遅い開始に起因し得る。図14Bは、悪いタイミングの効果を示す、より長時間の図である。見てとれるように、CBFが低下し、CPPの改善が止まっている。このことは、膨張が収縮期と重なることおよび/または収縮の遅い開始に起因し得る。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、ICPの増加を治療するためのパラメータは、R波に対して−400から+50msの間である膨張と、R波に対して−50から+90の間である収縮と、最大体積変化まで5から300msの間である膨張/収縮率(任意選択で5〜50ms)と、1から4ccの間である体積変化と、を含む。いくつかの実施形態では、制御されるのはバルーン体積の変化ではなくバルーン圧であり、任意選択でピークICP未満となるように選択ることを留意されたい。任意選択で、収縮中、圧力に関する事項をではなく体積に関する事項に基づいて、バルーンから流体を除去する(例えば、バルーン圧を25mmHgまで下げるのではなく、2mlの流体を除去する)。
多拍動モード
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、1周期あたり2回以上の拍動を提供する。例えば、2つ以上の拍動が提供し得る。2回の拍動のいくつかの例としては、以下が挙げられる:膨張、次いで収縮、次いで再び膨張、その後収縮;膨張、次いで1回目の収縮、次いで2回目の収縮;または、膨張、次いでもう1回の膨張、次いで収縮。
機能に関する観点から、拍動を逆にしてもよい、即ち、1回目の収縮、次いで膨張。同様に、拍動は多くの場合周期ごとに適用されるので、拍動のある部分が重なる周期は、その拍動の別の部分とは異なっていてもよい。
また、周期ごとに1回(または2回以上)の拍動が適用されてもよいが、一方で、いくつかの実施形態では、全数よりも少ない周期に対して、例えば、R波(もしくは他のタイミングイベントが適正に検出されない)周期をスキップして、フィードバック中に特定の好ましくない、または好ましい徴候(例えばCBFの減少)が見られた後の周期をスキップして、または、拍動を周期ごとには適用せず、例えば、2周期目ごと、もしくは何らかの他のシークエンスを使用すると規定する全体的なプロトコルで、適用することも留意すべきである。任意選択で、治療する周期の頻度は、治療の開始時に大きくなる、および/または治療の終わりに小さくなる。任意選択で、バルーンは、拍動の適用と次の適用との間で収縮させる。別法として、バルーンは膨張した状態であってもよい。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、収縮期の取り込みを改善するための拍動(膨張および続く収縮)を提供し、更に追加の拍動も提供する。任意選択で、この追加の拍動は、収縮期か完了または少なくともほとんど完了した後に、および任意選択で拡張期の中間と最後の3分の1との間の時間内に、提供する。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、タイミングは、血液が静脈空間内に移動し(およびしたがって灌流に寄与しない)、静脈洞に向かって排出を開始したときに生じるように選択する。これらの静脈洞は一般にICPから影響を受けないことを留意する。追加の拍動は任意選択で、静脈洞に入るように血液を付勢し収縮時に血流が(例えば細動脈を介して)脳を灌流できるようなタイミングで行う、ならびに/あるいはそのような体積および/または他のパラメータを有する。
一例では、バルーンは短い期間(例えば5〜50ms)の間は膨張させて、拡張相における急激なICPの増加を引き起こし、静脈血を頭蓋内系の外側へと推進させ、その後バルーンを収縮させる。次いで、収縮期拍動、すなわち拡張期後期の膨張およびこれに続く収縮期前の収縮を、任意選択で適用する。収縮期の拍動は、例えば、10〜30ミリ秒の膨張状態継続時間を含み得る。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、追加された拡張期の膨張/収縮周期は、ICPと静脈系との間の結合を活用することによって、脳から静脈血を排出するように設定する。この場合、僅かに上昇したICPにより静脈を圧縮することができるが、動脈系を圧縮するには十分ではない。静脈洞は剛性の圧縮不可能な空間内に閉じ込められているので、ICPが上昇しても出口地点において虚脱は起こらず、したがって静脈血は、体から流出することはできるが、一旦脳から出てしまうと脳に逆流して戻ることはできない。これは、動脈系(および脳)の抵抗力および圧力がいずれも高いからである。1つの潜在的な望ましい結果は、血流を酸素化するためのより大きい容積が利用可能となることである。任意選択で、ICPを上昇させるように任意に選択するこの拍動の決定された体積(設定中に決定可能)を、静脈床(静脈洞が剛直であるので開いている)の瞬間的な搾り出しを実現するために、例えば、15〜25mmHgまたはそれ以上とする。ある実施形態では収縮はベースライン値までであるが、またある実施形態では収縮はベースライン値までではなく、このことは、静脈逆流の防止に役立ち得る。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、例えばシステムの設定および/または使用中の、探索および調整、例えば最適化には、静脈流に対する効果を推定するための、追加のセンサを使用する。例えば、脳静脈系の可能な限り近くで静脈圧を測定するセンサ(例えば、頸静脈圧モニタ、または中心静脈圧モニタ、または直接的な静脈圧測定)を提供し、その測定値を、タイミングおよび体積など、拍動パラメータを選択するためのマーカーとして使用する。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、全ての拍動での膨張状態の合計継続時間を短く維持し、例えば100ms未満、例えば30から60msの間、またはそれ未満である。
指摘したように、拍動の回数ならびにその他の特性は、設定中におよび/または進行中に、手動でおよび/または自動で選択してもよい。
いくつかの実施形態では(例えば、特定の疾患状態を有する患者については)、収縮期の拍動を常にもしくは時々省略するが拡張期の拍動を維持すること、またはこの逆を行うことが望ましい場合があることも、留意する。
図5Gは、本発明のいくつかの実施形態に係る、2つの拍動を適用するプロセスを示す。
582では、R波などの生理学的イベントが任意選択で検出し、様々なタイミングパラメータを設定する。いくつかの実施形態では、バルーン膨張を、検出される生理学的イベントおよびそれに関連する時間によって直接制御し、将来のイベントを予測する、例えば、バルーン収縮を決定し適用するために、R波検出から時間が空くかどうかを予測する必要はない。
584では、任意選択で、収縮期前の膨張がいつ実施されるべきかが計算されるように、収縮期時間を、(例えば、検出されたR波およびR−R遅延を使用して)決定する。
586では、バルーンの1回目の膨張を実行する。
588では、1回目の遅延が有効になり、その間バルーンは、膨張状態にあって膨張したままである。
590では、バルーンは、例えば収縮期の直前に収縮する。
592では、任意選択で、2回目の拍動の安全を判定するためのセンサおよび/または単に時間計算の任意の使用によって、拡張期を決定する。
594〜598では、任意選択で1回目の拍動とは異なるパラメータを使用して、第2の拍動を適用する。
図5Hは、2回目の拍動のタイミングおよび期待される効果を点線として示し、実線は単一の拍動の期待される効果を示している。見てとれるように、ICPは増加するが、これは収縮期ICPのピーク中の最大値を超えるまで増加する必要はない。場合によっては、収縮期の増加の前の最後のICPは、2回の拍動に起因して、相対的に低い。この効果は、静脈の搾り出しに起因するより良好な灌流の効果に加えて、またはその代わりとして、有用である場合がある。場合によっては、2回の拍動の使用によって、ICP周期のほとんどの部分において、示されるようなICPの全体的な低減が引き起こされる。
脳灌流圧に影響を与えるための例示的なデバイス
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る、バルーン状の、脳灌流圧に影響を与えるための任意選択のデバイスを概略的に示す、図6を参照する。
いくつかの実施形態では、容積アダプタをバルーン601の形態で提供する。いくつかの実施形態では、バルーン601をカテーテルの遠位端に形成する。別法としてまたは追加として、バルーン601を脳室ドレナージデバイスの遠位端に形成し、この遠位端は脳内にある端部である。別法としてまたは追加として、バルーン601は少なくとも1つのチューブ、任意選択で吸引チューブ668および/または膨張チューブ666と、流体連通している。いくつかの実施形態では、チューブは少なくとも1つのポンプ、任意選択で吸引チューブ用のポンプ648および/または膨張チューブ用のポンプ646に、接続される。いくつかの実施形態では、ポンプはシリンジポンプである。別法としてまたは追加として、ポンプは、当技術分野で知られている任意の別の形態を有する。周囲空気充填バルーン601の場合、いくつかの実施形態では、膨張チューブ666およびポンプ646のみを提供し、バルーン601から出る空気を、弁を通して提供する。
任意選択で、少なくとも1つのポンプを少なくとも1つのモータに接続する。任意選択で、吸引ポンプ648および膨張ポンプ646の各々は、モータ638およびモータ636とそれぞれ動作可能に連絡している。いくつかの実施形態では、モータ638およびモータ636は、プロセッサによって制御する。
いくつかの実施形態では、圧力センサ620は頭蓋内圧を測定し、圧力が所定の範囲から逸脱する場合には、圧力センサ620の出力により、バルーン601に流体を出入りさせるポンプ動作の停止がもたらされる。いくつかの実施形態では、圧力センサ620の出力は、モータ636およびモータ638と動作可能に連絡している同じプロセッサに届く。
本発明のいくつかの実施形態では、例えば、本発明のいくつかの実施形態を実行するための、本明細書に記載するようなタイミングおよび体積の特徴を実現し提供するために、上で引用した参照文献に示されているような頭蓋内容積変更システムを、適切に修正してから使用してもよい。例えば、記載するような様々なバルーン形状を使用できる。
また、本明細書の記載はICPの高い患者に焦点を当てていることに留意されたい。ただし、本明細書に記載するシステムおよび方法を使用して、他の頭蓋に関する流れの問題、例えば、上記の参照文献に記載されているような疾患を、治療できる場合がある。
例えば、本明細書に記載するような方法およびシステムを使用して、選択的に、周期の任意の部分においてICPもしくはCPPを増加させること、ICPを平坦にすること、静脈の搾り出しを行うこと、灌流を改善すること、流出を改善すること、および/または本明細書に記載するような他の効果をもたらすことができる。
変形可能なカテーテル
図7Aは、カテーテル700を備える容積アダプタの実施形態を示し、このカテーテルは弾性のおよび/または変形可能な部分702を有する。任意選択で、変形可能な部分が開いた構成と閉じた構成を交互に繰り返す形態変化が、カテーテルを取り囲む脳の区画の容積を増加および/または減少させるための手段として働く。例えば、カテーテルの変形可能な部分は、カテーテルの内側ルーメン内へと収縮して、周囲の区画の容積を増加させること、および任意選択でICPを減少させることができる。別法としてまたは追加として、カテーテルの変形可能な部分は、膨張して周囲の区画内に侵入し、組織に押し入って、潜在的にICPを増加させることができる。
流体推進
図7Bは、例えば、流体の中を進んでいくときに流体に抵抗するように構成されたオールなどの、収集要素757を有するホイール755を能動的に回転させることによって、カテーテル750内に流体が推進される実施形態を示す。カテーテルの中に入る流体は、脳室からおよび/または脳室内に留置されたバルーンから排出されて、容積の低減およびICPの低減をもたらす。
2本のカテーテル
図7Cは、カテーテル710が、より小径である第2の内側カテーテル711の周囲に提供される実施形態を示す。いくつかの実施形態では、内側カテーテルは、流出に対する抵抗力と比例する圧力を半径方向外向きに及ぼす流体を含む。任意選択で、内側カテーテルの流体は、心周期と同期して動作するための命令を有するプロセッサによって調節される。
ここで、2本のカテーテルの構成を示す図7Dを参照すると、本発明のいくつかの実施形態によれば、2つのカテーテル(またはルーメン、720aおよび720b)が横並びに提供される。いくつかの実施形態では、任意選択で外側のポンプによって、各ルーメンの流体体積間の比が制御される。いくつかの実施形態では、ルーメンの充填と排出が同時に行われる。任意選択で、一方のルーメンが流体の充填用に指定され、他方のルーメンがルーメンの排出用に指定される。
頭蓋骨切除による膜の設置
図8は、頭蓋骨810において限局的な頭蓋骨切除が実施され、次いで脳室の少なくとも一部を覆う膜800が設置される実施形態を示す。任意選択で、膜は可撓性および/または弾性を有する。いくつかの実施形態では、膜を弛緩および/または圧縮させてそれをAまたはBの方向にそれぞれ移動させるための命令を任意選択で有するプロセッサによって、膜を制御する。いくつかの実施形態では、膜の弛緩および/または圧縮は、心周期に基づいておよび/または心周期と同期しているICPに基づいて、実行する。
静脈洞バルーン
図9は、本発明のいくつかの実施形態に係る、静脈洞バルーン(静脈洞910の内側で少なくとも部分的に膨張されるバルーン)として提供される、バルーン900を示す。いくつかの実施形態では、静脈バルーンはECGに合わせて開閉され(gated)、潜在的に流出に対する抵抗、任意選択で漸進的な抵抗につながる、静脈圧の一時的な上昇および/または低減を任意選択で引き起こす。
容積圧力曲線
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、流体体積の変化をICP周期と連動させる能力を利用する。一例では、周期の既知の時間に流体を(脳内に、または例えば脳内の封止されたバルーン内に)注入することによって、圧力−容積曲線を生成することができる。任意選択でまたは別法として、周期中の既知の時間に既知の流体量を除去する(またはバルーンを収縮させる)。特に、タイミングは周期の極値点、すなわち収縮期の山および拡張期の谷に連動可能であることを留意する。
図10は、本発明のいくつかの実施形態に係る、容積−圧力曲線を決定する方法のフローチャートである。
1002では、心周期中のある時間、任意選択で脳から血液が最大限に排出されている拡張期末期の時間を選択する。
1004では、注入すべき量(deltaV)、例えば0.1ccを選択する。
1006では、アダプタ101等を、例えば以前の起動に対してまたは非拡張ベースラインに対して試験量だけ膨張させることによって、deltaVを注入する。
1008では、例えばICPおよび/または他の生理学的パラメータに対する、注入の効果を検出する。
1010では、任意選択で、脳を新しい設定点で安定させる。
1012では、例えば0.1ccの固定された刻みでdeltaVを増加させ、このプロセスを繰り返す。
1014では、脳の反応を収集して、脳の伸展性を示すためにも使用できる、V−P関数を定義する。任意選択で、例えば、様々な血液−容積条件下で伸展性が得られるように、心周期の他の段階においてこのプロセスを繰り返すことができる。
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、伸展性を計算するために伸展性曲線を決定することが有用である場合があり、dP/dVを計算することができ、脳予備力(cerebral reserve)の状態および/または代償不全の時点を評価することができる。このことは、異なる疾患状態を区別する助けになる場合がある。例えば、圧力は正常であるが予備力の低下した患者は、圧力はより高いが予備力がより大きい患者よりもリスクが高く、より積極的な治療が必要であり得る。このことはまた、提示される治療パラメータ、探索開始パラメータ、および/または治療を評価するために使用されるマーカーにも影響を及ぼし得る。
図11は、例示的な圧力容積曲線を示す。この図では、点0(例えば、脳が最も弛緩している拡張期の谷)は、周期間に正確に確実にそして一貫して存在することが知られている。同じdeltaV(例えば、0.01ccから1ccの間、例えば、0.05から0.5ccの間)をPV曲線の正確に同じ箇所に注入すると、図中の点0〜5が生じて、操作者またはシステムは、同時に測定したICPに基づいてPV曲線(点線)を再構築することができる。
概論
本出願に基づく特許の有効期間中に、関連する多くのシリンジデバイスが開発されることが予想されるが、シリンジおよび/またはカートリッジという用語の範囲には、そのような新しい技術の全てが先験的に含まれることを意図する。
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±25%を指す。
「備える(comprises、comprising)」、「含む(includes、including)」、「有する」という用語、およびこれらの活用形は、「含んでいるが限定はされない」ことを意味する。
「から成る」という用語は、「含んでおりかつ限定される」ことを意味する。
「から本質的に成る」という用語は、組成、方法、または構造が、追加の原料、ステップ、および/または部分を含み得るが、ただしその追加の原料、ステップ、および/または部分が、特許請求される組成、方法、または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変えない場合に限られることを意味する。
本明細書で使用する場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、別段文脈によって明白に規定されていない限りは、複数の言及対象を含む。
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、およびその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1〜6といった範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6も具体的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
本明細書において数値範囲を示す場合、それは常に示す範囲内の任意の引用数(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間の分数および整数の全部を含むことを意図する。
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の各分野の従事者に既知のもの、または既知の様式、手段、技術および手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の所定の特徴はまた、1つの実施形態において、これら特徴を組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的な組み合わせ、または適当な他の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される所定の特徴は、その要素なしでは特定の実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須要件であると捉えてはならない。
本発明をその特定の実施形態との関連で説明したが、多数の代替、修正および変種が当業者には明らかであろう。したがって、そのような代替、修正および変種の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
本明細書において言及した全ての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的にかつ個々に示されていた場合と同じ程度まで、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるものではない。項目見出しが使用される限りにおいて、これらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。