JP2023121157A - ポリイミド樹脂、硬化性樹脂組成物、仮固定材、及び、電子部品の製造方法 - Google Patents

ポリイミド樹脂、硬化性樹脂組成物、仮固定材、及び、電子部品の製造方法 Download PDF

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Norishige Shichiri
駿夫 高橋
Toshio Takahashi
聡史 林
Satoshi Hayashi
和泉 大同
Izumi Daido
将大 伊藤
Masahiro Ito
久敏 岡山
Hisatoshi Okayama
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Abstract

【課題】被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離する硬化性樹脂組成物を形成することのできるポリイミド樹脂を提供する。また、該ポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供する。【解決手段】酸二無水物(a)に由来する構成単位と、ジアミン化合物(b)に由来する構成単位とを有し、前記酸二無水物(a)は、酸無水物に脂肪族炭化水素が直接結合した構造、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造、及び、シロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、前記ジアミン化合物(b)は、脂肪族炭化水素構造、脂環式炭化水素構造及びシロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、厚み10μmのサンプルについて測定した波長250nmの光線透過率が10%以上であるポリイミド樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミド樹脂、硬化性樹脂組成物、仮固定材、及び、電子部品の製造方法に関する。
半導体等の電子部品の加工時においては、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、粘着剤組成物を介して電子部品を支持板に固定したり、粘着テープを電子部品に貼付したりして保護することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、粘着剤組成物を介して厚膜ウエハを支持板に接着することが行われる。
このように電子部品に用いる粘着剤組成物や粘着テープには、加工工程中に電子部品を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後には電子部品を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離の実現手段として、例えば特許文献1には、ポリマーの側鎖又は主鎖に放射線重合性官能基を有する多官能性モノマー又はオリゴマーが結合された粘着剤を用いた粘着シートが開示されている。放射線重合性官能基を有することにより紫外線照射によりポリマーが硬化することを利用して、剥離時に紫外線を照射することにより粘着力が低下して、糊残りなく剥離することができる。また、特許文献2には、高い接着力を有する一方で容易に剥離でき、かつ、耐熱性にも優れる接着剤組成物、該接着剤組成物を用いた接着テープ、並びに、該接着テープを用いた半導体ウエハの処理方法、及び、TSVウエハの製造方法が開示されており、この中で挙げられるテトラゾール化合物又はその塩は、波長250~400nmの光を照射することにより気体(窒素ガス)を発生する一方、200℃程度の高温下でも分解しない高い耐熱性を有することから、これらの化合物と接着剤成分とを併用した接着剤組成物は、高い接着力を有する一方で光照射にて容易に剥離できることが示されている。
特開平5-32946号公報 特許第4846067号公報
近年の電子部品の高性能化に伴い、電子部品に種々の加工を施す工程が行われるようになってきた。例えば、電子部品の表面にスパッタリングにより金属薄膜を形成する工程では、300~350℃程度の高温で加工を行うことにより、より導電性に優れた金属薄膜を形成することができる。しかしながら、従来の粘着剤組成物や粘着テープを用いて保護した電子部品に、300℃以上の高温加工処理を行うと、接着亢進を起こして、剥離時に充分に粘着力が低下しなかったり、糊残りが発生したりすることがある。
300℃以上の高温加工処理を行った場合にも接着亢進を抑えることのできる工程材として、耐熱性に優れたポリイミド樹脂を含有し、紫外線を照射することで硬化する硬化性樹脂組成物が検討されている。
しかしながら、ポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は、紫外線を照射しても硬化が充分に進行しないことがある。また、ポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物に、光照射により気体を発生する気体発生剤を配合した場合には、光を照射しても気体が発生しなかったり、気体発生量が不充分であったりすることがある。
本発明は、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離する硬化性樹脂組成物を形成することのできるポリイミド樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、該ポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
本開示1は、酸二無水物(a)に由来する構成単位と、ジアミン化合物(b)に由来する構成単位とを有し、前記酸二無水物(a)は、酸無水物に脂肪族炭化水素が直接結合した構造、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造、及び、シロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、前記ジアミン化合物(b)は、脂肪族炭化水素構造、脂環式炭化水素構造及びシロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、厚み10μmのサンプルについて測定した波長250nmの光線透過率が10%以上であるポリイミド樹脂である。
本開示2は、前記酸二無水物(a)は、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造を有する、本開示1のポリイミド樹脂である。
本開示3は、前記ジアミン化合物(b)は、ダイマー酸ジアミン構造及びシロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する、本開示1又は2のポリイミド樹脂である。
本開示4は、芳香環構造を有する酸二無水物に由来する構成単位と、芳香環構造を有するジアミン化合物に由来する構成単位との合計含有量が10モル%以下である、本開示1、2又は3のポリイミド樹脂である。
本開示5は、更に、二重結合を含有する官能基を有する、本開示1、2、3又は4のポリイミド樹脂である。
本開示6は、本開示1、2、3、4又は5のポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物である。
本開示7は、更に、二重結合を含有する化合物を含有する、本開示6の硬化性樹脂組成物である。
本開示8は、更に、気体発生剤を含有する、本開示6又は7の硬化性樹脂組成物である。
本開示9は、本開示6、7又は8の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材である。
本開示10は、前記接着剤層は、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が0.5GPa以下である本開示9の仮固定材である。
本開示11は、本開示6又は7の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを有する電子部品の製造方法である。
本開示12は、本開示8の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、前記接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを有する電子部品の製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
ポリイミド樹脂は、一般的に芳香環構造を多く含むため、可視光領域の光は透過したとしても、より短波長側の紫外線領域の光線透過率は不充分である。このため、ポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は、紫外線を照射しても硬化が充分に進行しなかったり、気体発生剤を配合した場合に、光を照射しても気体が発生しなかったり、気体発生量が不充分であったりすることがある。これまで、ポリイミド樹脂の紫外線領域の光線透過率を上げることについて充分な検討はなされておらず、また、ポリイミド樹脂を気体発生剤と併用することについても検討されていなかった。
本発明者らは、ポリイミド樹脂を、特定の構造を有する酸二無水物(a)に由来する構成単位と、特定の構造を有するジアミン化合物(b)に由来する構成単位とを有するものとし、かつ、厚み10μmのサンプルについて測定した波長250nmの光線透過率を一定値以上に調整することを検討した。本発明者らは、このようなポリイミド樹脂であれば、硬化性樹脂組成物を形成した場合、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離することができ、更に、気体発生剤を配合した場合には、充分な気体発生量を有することでより容易に剥離することができることを見出した。これにより、本発明を完成させるに至った。
本発明のポリイミド樹脂は、酸二無水物(a)に由来する構成単位と、ジアミン化合物(b)に由来する構成単位とを有し、上記酸二無水物(a)が、酸無水物に脂肪族炭化水素が直接結合した構造、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造、及び、シロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、上記ジアミン化合物(b)が、脂肪族炭化水素構造、脂環式炭化水素構造及びシロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する。
これらの構成単位を有することで、本発明のポリイミド樹脂は、イミド骨格を有する耐熱性に優れた樹脂となり、硬化性樹脂組成物を形成した場合、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離することができる。
本発明のポリイミド樹脂は、厚み10μmのサンプルについて測定した波長250nmの光線透過率の下限が10%である。
上記波長250nmの光線透過率が10%以上であることで、本発明のポリイミド樹脂は、紫外線領域の光線透過率が上昇する。このため、硬化性樹脂組成物を形成した場合、紫外線を照射することで硬化が充分に進行し、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離することができる。特に、本発明のポリイミド樹脂は、気体発生剤から気体を発生させる際に用いられる波長250~350nm程度の領域の光線透過率が上昇することから、硬化性樹脂組成物を形成して更に気体発生剤を配合した場合には、充分な気体発生量を有することでより容易に剥離することができる。上記波長250nmの光線透過率の好ましい下限は15%、より好ましい下限は20%である。上記波長250nmの光線透過率の上限は特に限定されず、高いほど好ましいが、通常90%以下程度である。
本発明のポリイミド樹脂は、厚み10μmのサンプルについて測定した波長300nmの光線透過率は特に限定されないが、好ましい下限は20%、好ましい上限は90%である。上記波長300nmの光線透過率が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂は、紫外線領域の光線透過率がより上昇し、硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記波長300nmの光線透過率のより好ましい下限は50%、より好ましい上限は95%である。
なお、波長250nmの光線透過率、及び、波長300nmの光線透過率の測定においては、まず、石英ガラス基板にポリイミド樹脂溶液をスピンコートコーティングして130℃で10分間乾燥することによって厚み10μmのポリイミド樹脂からなるポリイミド樹脂層を有する評価基板を作製する。この評価基板を用いて、石英ガラス基板のみの場合をリファレンスとして分光光度計(例えば、分光光度計U-3900、日立ハイテクサイエンス社製等)にてポリイミド樹脂の光線透過率を測定する。
上記波長250nmの光線透過率、及び、上記波長300nmの光線透過率を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、上記酸二無水物(a)及び上記ジアミン化合物(b)を適切に選択する方法が挙げられる。また、ポリイミド樹脂における芳香環構造を有する酸二無水物に由来する構成単位と、芳香環構造を有するジアミン化合物に由来する構成単位との合計含有量を一定値以下に調整する方法も挙げられる。
上記酸二無水物(a)は特に限定されず、酸無水物に脂肪族炭化水素が直接結合した構造、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造、及び、シロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、かつ、酸無水物構造を有していればよい。なかでも、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができることから、上記酸二無水物(a)は、酸無水物に脂肪族炭化水素が直接結合した構造、及び、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましい。更に、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造を有することがより好ましい。
上記酸二無水物(a)は、更に、芳香環構造を有していてもよいし、有していなくてもよい。なかでも、芳香環構造を有さないことが好ましい。上記酸二無水物(a)が芳香環構造を有さないことで、ポリイミド樹脂は、紫外線領域の光線透過率がより上昇し、硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。
上記酸二無水物(a)の分子量は特に限定されないが、好ましい下限は150、好ましい上限は4000である。上記酸二無水物(a)の分子量が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、耐熱性が向上し、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記酸二無水物(a)の分子量のより好ましい下限は200、より好ましい上限は600である。
上記酸二無水物(a)が上記シロキサン構造を有する場合、シロキサン結合(-Si(R)(R’)-O-)の繰り返し数は特に限定されないが、好ましい下限は2、好ましい上限は60である。上記シロキサン結合の繰り返し数が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、耐熱性が向上し、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記シロキサン結合の繰り返し数のより好ましい下限は10、より好ましい上限は50である。
上記酸二無水物(a)として、具体的には例えば、下記式(1-1)~(1-11)で表される構造を有する酸二無水物が挙げられる。
Figure 2023121157000001
Figure 2023121157000002
Figure 2023121157000003
Figure 2023121157000004
Figure 2023121157000005
Figure 2023121157000006
Figure 2023121157000007
Figure 2023121157000008
Figure 2023121157000009
Figure 2023121157000010
Figure 2023121157000011
式(1-11)中、mは1以上の整数を表す。
本発明のポリイミド樹脂において、上記酸二無水物(a)に由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は40モル%、好ましい上限は60モル%である。上記酸二無水物(a)に由来する構成単位の含有量が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記酸二無水物(a)に由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は45モル%、より好ましい上限は55モル%である。
本発明のポリイミド樹脂において、ポリイミド樹脂中における上記酸二無水物(a)に由来する構成単位の含有割合は特に限定されないが、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は70重量%である。上記酸二無水物(a)に由来する構成単位の含有割合が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記酸二無水物(a)に由来する構成単位の含有割合のより好ましい下限は25重量%、より好ましい上限は65重量%である。
上記ジアミン化合物(b)は特に限定されず、脂肪族炭化水素構造、脂環式炭化水素構造及びシロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、かつ、アミン構造を有していればよい。
上記脂肪族炭化水素構造及び上記脂環式炭化水素構造は特に限定されないが、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができることから、ダイマー酸ジアミン構造が好ましい。なお、ダイマー酸ジアミンとは、不飽和脂肪酸の2量体として得られる環式及び非環式ダイマー酸を、還元しアミノ化して得られるジアミン化合物であり、例えば、直鎖型、単環型、多環型等のダイマー酸ジアミンが挙げられる。ダイマー酸ジアミンは、炭素-炭素不飽和二重結合を含んでもよく、水素が付加した水素添加物であってもよい。
なかでも、上記ジアミン化合物(b)は、ダイマー酸ジアミン構造及びシロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましく、ダイマー酸ジアミン構造を有することがより好ましい。
上記ダイマー酸ジアミン構造は特に限定されないが、下記一般式(4-1)~(4-4)で表されるダイマー酸ジアミン構造が好ましい。なかでも、下記一般式(4-2)で表されるダイマー酸ジアミン構造がより好ましい。なお、これらダイマー酸ジアミン構造において光学異性は特に限定されず、いずれの光学異性も含む。
Figure 2023121157000012
一般式(4-1)~(4-4)中、R~R及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。なお、*は結合手を表す。結合手*は、-NHと結合する。
上記一般式(4-1)~(4-4)中、R~R及びR13~R20で表される炭化水素基は特に限定されず、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。
なかでも、RとR、RとR、RとR、RとR、R13とR14、R15とR16、R17とR18、及び、R19とR20の炭素数の合計が7以上、50以下であることが好ましい。上記炭素数の合計が上記範囲内であることで、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。また、上記炭素数の合計が上記範囲内であることで、ポリイミド樹脂の溶媒や他の成分との相溶性も増す。上記炭素数の合計は、より好ましくは9以上、更に好ましくは12以上、更により好ましくは14以上である。上記炭素数の合計は、より好ましくは35以下、更に好ましくは25以下、更により好ましくは18以下である。
上記ジアミン化合物(b)は、更に、芳香環構造を有していてもよいし、有していなくてもよい。なかでも、芳香環構造を有さないことが好ましい。上記ジアミン化合物(b)が芳香環構造を有さないことで、ポリイミド樹脂は、紫外線領域の光線透過率がより上昇し、硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。
上記ジアミン化合物(b)の分子量は特に限定されないが、好ましい下限は150、好ましい上限は1000である。上記ジアミン化合物(b)の分子量が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、耐熱性が向上し、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記ジアミン化合物(b)の分子量のより好ましい下限は300、より好ましい上限は600である。
上記ジアミン化合物(b)が上記シロキサン構造を有する場合、シロキサン結合(-Si(R)(R’)-O-)の繰り返し数は特に限定されないが、好ましい下限は5、好ましい上限は60である。上記シロキサン結合の繰り返し数が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、耐熱性が向上し、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記シロキサン結合の繰り返し数のより好ましい下限は10、より好ましい上限は40である。
上記ジアミン化合物(b)として、具体的には例えば、下記式(2-1)~(2-6)で表される構造を有する酸二無水物が挙げられる。
Figure 2023121157000013
Figure 2023121157000014
Figure 2023121157000015
Figure 2023121157000016
Figure 2023121157000017
Figure 2023121157000018
式(2-6)中、nは1以上の整数を表す。
本発明のポリイミド樹脂において、上記ジアミン化合物(b)に由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は40モル%、好ましい上限は60モル%である。上記ジアミン化合物(b)に由来する構成単位の含有量が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記ジアミン化合物(b)に由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は45モル%、より好ましい上限は55モル%である。
本発明のポリイミド樹脂において、ポリイミド樹脂中における上記ジアミン化合物(b)に由来する構成単位の含有割合は特に限定されないが、好ましい下限は30重量%、好ましい上限は80重量%である。上記ジアミン化合物(b)に由来する構成単位の含有割合が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記ジアミン化合物(b)に由来する構成単位の含有割合のより好ましい下限は35重量%、より好ましい上限は75重量%である。
本発明のポリイミド樹脂は、上述したように上記酸二無水物(a)が更に芳香環構造を有していてもよいし、上記ジアミン化合物(b)が更に芳香環構造を有していてもよい。更に、本発明のポリイミド樹脂は、上記酸二無水物(a)以外の、芳香環構造を有する酸二無水物を有していてもよいし、上記ジアミン化合物(b)以外の、芳香環構造を有するジアミン化合物を有していてもよい。これらの場合、本発明のポリイミド樹脂は、芳香環構造を有する酸二無水物に由来する構成単位と、芳香環構造を有するジアミン化合物に由来する構成単位との合計含有量の好ましい上限が10モル%である。上記合計含有量が10モル%以下であれば、ポリイミド樹脂は、紫外線領域の光線透過率がより上昇し、硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記合計含有量のより好ましい上限は5モル%である。上記合計含有量の下限は特に限定されず、少ないほど好ましく、0モル%であってもよい。
また、本発明のポリイミド樹脂は、芳香環構造を有する酸二無水物に由来する構成単位と、芳香環構造を有するジアミン化合物に由来する構成単位との合計含有割合の好ましい上限が10重量%である。上記合計含有割合が10重量%以下であれば、ポリイミド樹脂は、紫外線領域の光線透過率がより上昇し、硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記合計含有割合のより好ましい上限は5重量%である。上記合計含有割合の下限は特に限定されず、少ないほど好ましく、0重量%であってもよい。
本発明のポリイミド樹脂は、更に、二重結合を含有する官能基を有することが好ましい。
上記二重結合を含有する官能基を有することで、ポリイミド樹脂は、硬化性樹脂組成物を形成した場合、紫外線を照射することで硬化が充分に進行し、粘着力が大きく低下するため、高温加工処理を経た後にも接着亢進が抑えられ、容易に剥離することができる。
なお、本発明のポリイミド樹脂が上記二重結合を含有する官能基を有さない場合、本発明のポリイミド樹脂を用いて硬化性樹脂組成物を形成する場合には、更に、二重結合を含有する化合物等の反応性官能基を有する他の成分を配合し、組成物全体として硬化性をもたせることが好ましい。
本発明のポリイミド樹脂は、上記二重結合を含有する官能基を、側鎖又は末端のいずれに有していてもよい。上記二重結合を含有する官能基を側鎖に有する場合、ポリイミド樹脂は、硬化性樹脂組成物を形成した場合、架橋間距離が短くなることによって、接着亢進がより抑えられ、より容易に剥離することができる。また、上記二重結合を含有する官能基を末端に有する場合には、上記二重結合を含有する官能基の反応性がより高くなる。
上記二重結合を含有する官能基は特に限定されず、例えば、マレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基、ナジイミド基、及び、これらを含有する基等が挙げられる。これらの二重結合を含有する官能基は、置換されていてもよい。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、マレイミド基、置換されたマレイミド基、アリル基、及び、置換されたアリル基が好適である。
本発明のポリイミド樹脂は、上記二重結合を含有する官能基を有する場合、上記二重結合を含有する官能基の官能基当量(重量平均分子量/二重結合を含有する官能基の数)は特に限定されないが、4000以下であることが好ましい。上記官能基当量が4000以下であることにより、ポリイミド樹脂は、硬化性樹脂組成物を形成した場合、高温加工処理を経た後にも接着亢進がより抑えられ、より容易に剥離することができる。これは、ポリイミド樹脂の分子中に一定以上の密度で上記二重結合を含有する官能基を有することにより、架橋間距離が短くなることによって、接着亢進がより抑えられるためと考えられる。上記官能基当量は、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましい。上記官能基当量の下限は特に限定されないが、実質的には600程度が下限である。
本発明のポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1万以上、30万以下であることが好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂が硬化性樹脂組成物を形成した場合、耐熱性が向上し、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。また、上記重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解度が低くなりすぎることを防ぐこともできる。上記重量平均分子量(Mw)のより好ましい下限は2万、より好ましい上限は10万、更に好ましい上限は5万である。
なお、ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。より具体的には、APCシステム(ウォーターズ社製、又はその同等品)を用いて、移動相THF、流量1.0mL/min、カラム温度40℃、サンプル濃度0.2重量%、RI検出器の条件で測定することができる。カラムとしては、HR-MB-M 6.0×150mm(品名、ウォーターズ社製、又はその同等品)等を用いることができる。
本発明のポリイミド樹脂を調製する方法は特に限定されず、例えば、上記酸二無水物(a)と上記ジアミン化合物(b)とを反応させてイミド化合物を調製する方法等が挙げられる。
本発明のポリイミド樹脂が上記二重結合を含有する官能基を有する場合、本発明のポリイミド樹脂に上記二重結合を含有する官能基を導入する方法は特に限定されず、例えば、上記酸二無水物(a)と上記ジアミン化合物(b)とを反応させてイミド化合物を調製した後、該イミド化合物の末端に、例えば無水マレイン酸等を反応させる方法等が挙げられる。また、上記酸二無水物(a)と上記ジアミン化合物(b)とを反応させてイミド化合物を調製する際に、該イミド化合物に官能基を導入し、該イミド化合物中の官能基に、該官能基と反応する官能基と二重結合を含有する官能基とを有する化合物(官能基含有不飽和化合物ともいう)を反応させる方法等も挙げられる。
上記イミド化合物に官能基を導入する方法は特に限定されず、例えば、上記酸二無水物(a)と上記ジアミン化合物(b)とを反応させてイミド化合物を調製する際に、更に、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基等の官能基を有するジアミン化合物を添加する方法等が挙げられる。
上記官能基含有不飽和化合物は特に限定されず、上記イミド化合物中の官能基に応じて選択して用いればよい。
本発明のポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のポリイミド樹脂を含有することで、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離することができる。特に、本発明のポリイミド樹脂においては紫外線領域の光線透過率が高いことから、本発明の硬化性樹脂組成物は、紫外線を照射することで硬化が充分に進行し、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離することができる。また、本発明のポリイミド樹脂においては気体発生剤から気体を発生させる際に用いられる波長250~350nm程度の領域の光線透過率が高いことから、本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、気体発生剤を配合した場合、充分な気体発生量を有することでより容易に剥離することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、二重結合を含有する化合物を含有することが好ましい。
上記二重結合を含有する化合物を含有することで、硬化性樹脂組成物は、紫外線を照射することで硬化がより充分に進行し、粘着力が更に大きく低下するため、高温加工処理を経た後にも接着亢進がより抑えられ、より容易に剥離することができる。
上記二重結合を含有する化合物の分子量は特に限定されないが、5000以下であることが好ましい。
上記二重結合を含有する化合物における二重結合を含有する官能基は特に限定されず、例えば、マレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基、及び、これらを含有する基等が挙げられる。これらの二重結合を含有する官能基は、置換されていてもよい。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、マレイミド基、置換されたマレイミド基、アリル基、及び、置換されたアリル基が好適である。
上記二重結合を含有する化合物は、ジアミン構造を有することが好ましい。上記ジアミン構造は、脂肪族ジアミン構造、脂環式ジアミン構造、又は、芳香族ジアミン構造のいずれであってもよいが、脂肪族又は脂環式ジアミン構造が好ましい。上記二重結合を含有する化合物が上記脂肪族又は脂環式ジアミン構造を有することで、硬化性樹脂組成物は、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。
上記脂肪族又は脂環式ジアミン構造は特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができることから、上述したような上記ジアミン化合物(b)におけるダイマー酸ジアミン構造が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物における上記二重結合を含有する化合物の含有量は特に限定されないが、本発明のポリイミド樹脂と上記二重結合を含有する化合物との合計100重量部に占める好ましい下限は5重量部、好ましい上限は100重量部である。上記二重結合を含有する化合物の含有量が上記範囲内であれば、硬化性樹脂組成物は、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記二重結合を含有する化合物の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は50重量部である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、シリコーン化合物及びフッ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記シリコーン化合物及び上記フッ素化合物は、耐熱性に優れることから、300℃以上の高温加工処理を経ても硬化性樹脂組成物の焦げ付きを防止し、剥離時には被着体界面にブリードアウトして、剥離をより容易にする。
上記シリコーン化合物は特に限定されず、例えば、シリコーンオイル、シリコーンジアクリレート、シリコーン系グラフト共重合体等が挙げられる。上記フッ素化合物は特に限定されず、例えば、フッ素原子を有する炭化水素化合物等が挙げられる。
上記シリコーン化合物及び上記フッ素化合物は、上記ポリイミド樹脂と架橋可能な官能基を有することが好ましい。
上記シリコーン化合物及び上記フッ素化合物が上記ポリイミド樹脂と架橋可能な官能基を有することにより、光の照射や架橋剤等との反応により上記シリコーン化合物及び上記フッ素化合物が上記ポリイミド樹脂と化学反応して上記ポリイミド樹脂中に取り込まれる。このため、被着体に上記シリコーン化合物又は上記フッ素化合物が付着して汚染することを抑制することができる。上記ポリイミド樹脂と架橋可能な官能基は特に限定されず、例えば、カルボキシ基、ラジカル重合性の不飽和結合(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、置換されてもよいマレイミド基)、ヒドロキシ基、アミド基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。
なかでも、環境にやさしく、廃棄が容易であるという観点から、上記ポリイミド樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物が好適である。
上記ポリイミド樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物としては、主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を含有する官能基を有するシリコーン化合物が好ましい。
上記主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を含有する官能基を有するシリコーン化合物は特に限定されないが、下記一般式(I)で表されるシリコーン化合物、下記一般式(II)で表されるシリコーン化合物、及び、下記一般式(III)で表されるシリコーン化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。これらのシリコーン化合物は、耐熱性が特に高く、極性が高いために硬化性樹脂組成物からのブリードアウトが容易である。
Figure 2023121157000019
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)中、X及びYは、それぞれ独立して、0~1200の整数を表し、Rは二重結合を含有する官能基を表す。
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)中、Rで表される二重結合を含有する官能基としては、例えば、マレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基、及び、これらを含有する基等が挙げられる。これらの二重結合を含有する官能基は、置換されていてもよい。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、マレイミド基、置換されたマレイミド基、アリル基、及び、置換されたアリル基が好適である。なお、上記一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)において、Rが複数存在する場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)で表されるシリコーン化合物のうち市販されているものは、例えば、EBECRYL350、EBECRYL1360(いずれもダイセル・サイテック社製)等が挙げられる。更に、BYK-UV3500(ビックケミー社製)、TEGO RAD2250(エボニック社製)(いずれもRがアクリル基)等が挙げられる。
上記シリコーン化合物及びフッ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含有量は特に限定されないが、本発明のポリイミド樹脂と上記二重結合を含有する化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記シリコーン化合物及びフッ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が上記範囲内であれば、硬化性樹脂組成物が被着体を汚染することなく優れた剥離性を発揮することができる。汚染を抑制しつつも剥離性を更に高める観点から、上記含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は10重量部である。
なお、本発明の硬化性樹脂組成物は耐熱性に優れることから、上記シリコーン化合物及びフッ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含有量を比較的少なくしても充分な効果を発揮することができる。そのため、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物による汚染の可能性をより一層少なくすることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、光重合開始剤を含むことが好ましい。
上記光重合開始剤としては、例えば、250~800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。なかでも、本発明のポリイミド樹脂の吸収波長と重なりにくく、硬化性樹脂組成物に光照射した際に充分に活性化されることから、上記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することが好ましい。上記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が200以上である光重合開始剤を含有することがより好ましく、405nmにおけるモル吸光係数が350以上である光重合開始剤を含有することが更に好ましい。上記405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤の405nmにおけるモル吸光係数の上限は特に限定されないが、例えば2000、1500等が上限である。
上記光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物、フォスフィンオキシド誘導体化合物等が挙げられる。更に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、本発明のポリイミド樹脂と上記二重結合を含有する化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記光重合開始剤の含有量が上記範囲内であれば、硬化性樹脂組成物は、紫外線を照射することで硬化が充分に進行し、粘着力が大きく低下するため、高温加工処理を経た後にも接着亢進が抑えられ、容易に剥離することができる。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3重量部である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、気体発生剤を含有することが好ましい。
上記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることが好ましい。上記重量減少率が5%以下であれば、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても上記気体発生剤の分解が起こりにくく、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。
なお、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定は、例えば、TG-DTA装置(STA7200RV、日立ハイテクサイエンス社製、又はその同等品)を用いて行うことができる。
上記気体発生剤としては、例えば、加熱することにより気体を発生する気体発生剤、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤等が挙げられる。これらの気体発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤が好ましく、紫外線を照射することにより気体を発生する気体発生剤がより好ましい。
上記光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を含有することにより、硬化性樹脂組成物は、光を照射することにより発生した気体が被着体との界面に放出される。本発明のポリイミド樹脂においては上記気体発生剤から気体を発生させる際に用いられる波長250~350nm程度の領域の光線透過率が高いことから、硬化性樹脂組成物は、充分な気体発生量を有することでより容易に剥離することができる。また、被着体が薄い場合であっても、被着体の破損を防止することができる。
上記光を照射することにより気体を発生する気体発生剤としては、例えば、テトラゾール化合物又はその塩、トリアゾール化合物又はその塩、アゾ化合物、アジド化合物、キサントン酢酸、炭酸塩等が挙げられる。これらの気体発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に耐熱性に優れることから、テトラゾール化合物又はその塩が好適である。
上記気体発生剤の含有量は特に限定されないが、本発明のポリイミド樹脂と上記二重結合を含有する化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記気体発生剤の含有量が上記範囲内であれば、硬化性樹脂組成物が特に優れた剥離性を発揮することができる。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は8重量部、より好ましい上限は30重量部である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、無機充填剤、光増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含んでもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、本発明のポリイミド樹脂、及び、必要に応じて配合する添加剤を、ビーズミル、超音波分散、ホモジナイザー、高出力ディスパー、ロールミル等を用いて混合する方法等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材もまた、本発明の1つである。
上記接着剤層は、硬化後の25℃における貯蔵弾性率は特に限定されないが、好ましい上限が0.5GPaである。上記硬化後の25℃における貯蔵弾性率が0.5GPa以下であれば、上記接着剤層は、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記硬化後の25℃における貯蔵弾性率のより好ましい上限は0.3GPa、更に好ましい上限は0.1GPaである。上記硬化後の25℃における貯蔵弾性率の下限は特に限定されないが、剥離時に上記接着剤層を破断しにくくする観点から、好ましい下限は0.01GPaである。
なお、硬化後の25℃における貯蔵弾性率の測定においては、例えば、接着剤層の5mm×35mm×厚み0.03mmの試験片を作製する。得られた試験片に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射することで硬化させる。硬化後のサンプルを液体窒素に浸漬して-50℃まで冷却し、その後、粘弾性スペクトロメーター(DVA-200、アイティー計測制御社製)を用いて、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で300℃まで昇温し、貯蔵弾性率を測定する。
上記接着剤層は、硬化後のゲル分率は特に限定されないが、好ましい下限が20重量%、好ましい上限が99重量%である。上記硬化後のゲル分率が上記範囲内であれば、上記接着剤層は、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記硬化後のゲル分率のより好ましい下限は40重量%、更に好ましい下限は60重量%、更により好ましい下限は80重量%、より好ましい上限は95重量%である。
なお、硬化後のゲル分率は、接着剤層に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射した後、以下の方法により測定される。
接着剤層を50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製する。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、接着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W
(W:基材の重量、W:浸漬前の試験片の重量、W:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
上記硬化後の25℃における貯蔵弾性率、及び、上記硬化後のゲル分率を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、上記酸二無水物(a)及び上記ジアミン化合物(b)を適切に選択する方法等が挙げられる。なかでも、上記酸二無水物(a)及び上記ジアミン化合物(b)として柔軟性の高い構造を有する化合物を用いる方法が好ましい。
上記柔軟性の高い構造として、例えば、上記酸二無水物(a)のなかでも酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造を有する酸二無水物、上記ジアミン化合物(b)のなかでもダイマー酸ジアミン構造を有するジアミン化合物等が挙げられる。
上記接着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は550μmである。上記厚みが5μm以上であれば、上記接着剤層が充分な初期粘着力を有することができる。上記厚みが550μm以下であれば、上記接着剤層は、硬化物の柔軟性が向上して被着体に対して高い追従性を発揮でき、高温加工処理を経た後にはより容易に剥離することができる。上記厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は400 μmであり、更に好ましい下限は20μm、更に好ましい上限は300μmであり、更により好ましい下限は30μm、更により好ましい上限は200μm、一層好ましい上限は150μmである。
本発明の仮固定材は、上記接着剤層を有するシート状であることが好ましい。この場合、本発明の仮固定材は、基材の一方又は両方の面に上記接着剤層を有していてもよく、基材を有していなくてもよい。上記基材を有さない場合、光透過性と耐熱性とをともに有する基材を選定する必要がなく、仮固定材は、より安価かつ簡易な構成とすることができる。
上記基材を有する場合、該基材としては、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)等の樹脂シートが挙げられ、光透過性の高い樹脂シートを好適に用いることができる。また、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート、ガラス等も用いることができる。
上記基材の厚みは特に限定されないが、光透過性を高める観点、及び、柔軟性を高める観点から、好ましい下限は5μm、好ましい上限は150μmであり、より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は100μmである。
本発明の硬化性樹脂組成物、及び、本発明の仮固定材は、300℃以上の高温加工処理を行う被着体の保護及び仮固定に好適に用いることができる。とりわけ、半導体等の電子部品の加工時において、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、硬化性樹脂組成物又は仮固定材を介して電子部品を支持板に固定したり、仮固定材を電子部品に貼付したりして保護するのに好適に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、上記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、上記仮固定材から上記電子部品を剥離する剥離工程とを有する電子部品の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記硬化工程は、上記剥離工程の直前に行ってもよいが、上記仮固定工程の後かつ上記熱処理工程の前に行うことが好ましい。これにより、上記仮固定材がより優れた耐熱性を発揮することができる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物が更に気体発生剤を含有する場合、本発明の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、上記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、上記接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、上記仮固定材から上記電子部品を剥離する剥離工程とを有する電子部品の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記硬化工程は、上記気体発生工程の直前に行ってもよいが、上記仮固定工程の後かつ上記熱処理工程の前に行うことが好ましい。これにより、上記仮固定材がより優れた耐熱性を発揮することができる。
本発明によれば、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離する硬化性樹脂組成物を形成することのできるポリイミド樹脂を提供することができる。また、本発明によれば、該ポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(ポリイミド樹脂1の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに171mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-1)で表されるダイマー酸ジアミン(クローダ社製、プリアミン1075)53.5g(0.1モル)と、表1中の式(1-1)で表される1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(新日本理化社製、リカシッドBT-100)19.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を5時間還流し、イミド化合物を形成した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、無色粉体状のポリイミド樹脂1を得た。
得られた樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は15000であった。
また、得られた樹脂の溶液を石英ガラス基板にスピンコートコーティングして130℃で10分間乾燥することによって厚み10μmのポリイミド樹脂からなるポリイミド樹脂層を有する評価基板を作製した。この評価基板を用いて、石英ガラス基板のみの場合をリファレンスとして分光光度計(分光光度計U-3900、日立ハイテクサイエンス社製)にてポリイミド樹脂の波長250nmの光線透過率、及び、波長300nmの光線透過率を測定した(表2に示す)。
(ポリイミド樹脂2の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに182mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-1)で表されるダイマー酸ジアミン(クローダ社製、プリアミン1075)53.5g(0.1モル)と、表1中の式(1-2)で表されるビシクロオクテンテトラカルボン酸二無水物(東京化成工業社製、試薬)24.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を5時間還流し、イミド化合物を形成した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、無色粉体状のポリイミド樹脂2を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は26000であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
(ポリイミド樹脂3の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに90mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-6)で表されるジアミン化合物(信越化学社製、KF-8010)86.0g(0.1モル)と、表1中の式(1-3)で表される酸二無水物(エネオス社製、エネハイドCpODA)38.4g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を5時間還流し、イミド化合物を形成した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、無色粉体状のポリイミド樹脂3を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は3万であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
(ポリイミド樹脂4の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに90mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-2)で表されるイソホロンジアミン(東京化成工業社製、試薬)8.5g(0.05モル)と、表1中の式(1-11)で表される酸二無水物変性シリコーン(信越化学社製、X-22-168B)168.0g(0.05モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を5時間還流し、イミド化合物を形成した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、無色フレーク状のポリイミド樹脂4を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は34000であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
(ポリイミド樹脂5の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに219mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-1)で表されるダイマー酸ジアミン(クローダ社製、プリアミン1075)53.5g(0.1モル)を加えた。更に、表1中の式(1-2)で表されるビシクロオクテンテトラカルボン酸二無水物(東京化成工業社製、試薬)22.3g(0.09モル)及び表1中の式(1-4)で表される酸二無水物(エネオス社製、エネハイドBzDA)4.1g(0.01モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を5時間還流し、イミド化合物を形成した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、無色粉体状のポリイミド樹脂5を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は25000であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
なお、表1中の式(1-4)で表される酸二無水物は、芳香環構造を有する酸二無水物であった。ポリイミド樹脂5において、芳香環構造を有する酸二無水物に由来する構成単位と、芳香環構造を有するジアミン化合物に由来する構成単位との合計含有量は5モル%であった。
(ポリイミド樹脂6の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに319mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-1)で表されるダイマー酸ジアミン(クローダ社製、プリアミン1075)107.0g(0.2モル)と、表1中の式(1-1)で表される1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(新日本理化社製、リカシッドBT-100)29.7g(0.15モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、イミド化合物を形成した。
反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸9.8g(0.1モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸3.8g(0.04モル)を加えた。混合物を、更に5時間還流した後、室温に冷却し1Lの分液漏斗に移し、純水500mLを分液漏斗に加え振とう後、静置により水層を分離し除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、淡黄色粉体状のポリイミド樹脂6を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は8000であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
(ポリイミド樹脂7の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに336mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-1)で表されるダイマー酸ジアミン(クローダ社製、プリアミン1075)107.0g(0.2モル)と、表1中の式(1-2)で表されるビシクロオクテンテトラカルボン酸二無水物(東京化成工業社製、試薬)37.2g(0.15モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、イミド化合物を形成した。
反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸9.8g(0.1モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸3.8g(0.04モル)を加えた。混合物を、更に5時間還流した後、室温に冷却し1Lの分液漏斗に移し、純水500mLを分液漏斗に加え、振とう後、静置により水層を分離し除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、淡黄色粉体状のポリイミド樹脂7を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は1万であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
(ポリイミド樹脂8の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに431mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-1)で表されるダイマー酸ジアミン(クローダ社製、プリアミン1075)107.0g(0.2モル)と、表1中の式(3)で表されるイソプロピリデンジフェノキシジフタル酸無水物(サビック社製、BISDA-1000)78.0g(0.15モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、イミド化合物を形成した。
反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸9.8g(0.1モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸3.8g(0.04モル)を加えた。混合物を、更に5時間還流した後、室温に冷却し1Lの分液漏斗に移し、純水500mLを分液漏斗に加え振とう後、静置により水層を分離し除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、黄色粉体状のポリイミド樹脂8を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は8700であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
(ポリイミド樹脂9の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに140mLのトルエンを投入した。次いで、ジアミン化合物として2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(セイカ社製、BAPP)41.0g(0.1モル)と、表1中の式(1-1)で表される1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(新日本理化社製、リカシッドBT-100)19.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を5時間還流し、イミド化合物を形成した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、黄色粉体状のポリイミド樹脂9を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は4万であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
(ポリイミド樹脂10の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに200mLのトルエンを投入した。次いで、表1中の式(2-6)で表されるジアミン化合物(信越化学社製、KF-8010)17.2g(0.02モル)と、表1中の式(1-11)で表される酸二無水物変性シリコーン(信越化学社製、X-22-168B)67.2g(0.02モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を5時間還流し、イミド化合物を形成した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、無色弾性体のポリイミド樹脂10を得た。
得られた樹脂について、ポリイミド樹脂1と同様にして測定したところ、重量平均分子量は8万であった。また、ポリイミド樹脂1と同様にして光線透過率を測定した(表2に示す)。
なお、表1中の式(3)で表されるイソプロピリデンジフェノキシジフタル酸無水物は、芳香環構造を有する酸二無水物であった。
(二重結合を有する化合物の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに200mLのトルエン及び50mLのN-メチルピロリドンを投入した。ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と無水マレイン酸19.6g(0.2モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5gを加えた。溶液を12時間還流した後、室温に冷却し、1Lの分液漏斗に移し、純水500mLを分液漏斗に加え振とう後、静置により水層を分離し除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、茶色液状の表2に示す構造を有する二重結合を有する化合物を得た。
(実施例1)
(1)仮固定材の製造
トルエン150mLに、ポリイミド樹脂1を70重量部、二重結合を有する化合物を30重量部加えた。光重合開始剤としてOmnirad819(IGM Resins社製)を2重量部加えた。更に、シリコーン化合物としてBYK-UV3500(ビックケミー社製、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を5重量部、気体発生剤としてBHT-PIPE塩(東洋紡社製、波長250~300nmの光を照射することにより気体を発生)を20重量部加え、硬化性樹脂組成物溶液を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物溶液を、片面離型処理の施された50μmのPETフィルムの離型処理面上に、乾燥皮膜の厚みが10μmとなるようにドクターナイフで塗工し、130℃、10分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。これにより接着剤層を有する仮固定材(ノンサポートタイプ)を得た。
(2)接着剤層の硬化後の25℃における貯蔵弾性率
接着剤層の5mm×35mm×厚み0.03mmの試験片を作製した。得られた試験片に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射することで硬化させた。
硬化後のサンプルを液体窒素に浸漬して-50℃まで冷却し、その後、粘弾性スペクトロメーター(DVA-200、アイティー計測制御社製)を用いて、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で300℃まで昇温し、貯蔵弾性率を測定した。接着剤層の硬化後の25℃における貯蔵弾性率を求めた。
(3)接着剤層の硬化後のゲル分率
接着剤層に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射することで硬化させた。
接着剤層を50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製した。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出した。試験片には、接着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていなかった。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W
(W:基材の重量、W:浸漬前の試験片の重量、W:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
(4)加熱残量及び加熱重量減少量(300℃)
接着剤層に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射することで硬化させた。
接着剤層10mgをアルミパンに秤量した。アルミパンを装置にセットし、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで10℃/分で昇温した。300℃に達したときの加熱残量及び加熱重量減少量を、初期の重量を100%として測定した。
(実施例2~8及び比較例1、2)
表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、仮固定材を得た。
<評価>
実施例及び比較例で得た仮固定材について、以下の方法により評価を行った。結果を表2に示した。
(1)気体発生量
仮固定材を1インチの幅にカットした後、1mm厚のガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に100℃のラミネーター(ラミ―コーポレーション社製、Leon13DX、速度メモリ5)にて加熱ラミネートした。更に、仮固定材(接着剤層)から気体が逃げないよう、仮固定材の離型PETフィルムを剥離し、露出した面に厚み60μmのアルミ箔を同じ条件にて加熱ラミネートした。ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を3000mJ/cm照射した。硬化後、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱した。
硬化後かつ300℃10分加熱後(加熱し放冷後)の仮固定材に対して、365nmの照射強度が100mW/cmの紫外線を30J/cm照射し、気体発生剤から気体を発生させた。気体発生により仮固定材の全面が剥離した場合を〇、気体発生により仮固定材の一部が剥離した場合を△、気体が発生しなかった場合を×とした。
(2)硬化後かつ300℃10分加熱後の剥離性
仮固定材を1インチの幅にカットした後、1mm厚のガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に100℃のラミネーター(ラミ―コーポレーション社製、Leon13DX、速度メモリ5)にて加熱ラミネートした。ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射することで硬化させた。硬化後、仮固定材の離型PETフィルムを剥離し、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱した。
硬化後かつ300℃10分加熱後(加熱し放冷後)の仮固定材に対して、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。剥離力が0.3N/インチ以下であった場合を〇、0.3N/インチを超えて3N/インチ未満であった場合を△、3N/インチ以上であった場合を×とした。
Figure 2023121157000020
Figure 2023121157000021
本発明によれば、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離する硬化性樹脂組成物を形成することのできるポリイミド樹脂を提供することができる。また、本発明によれば、該ポリイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することができる。

Claims (12)

  1. 酸二無水物(a)に由来する構成単位と、ジアミン化合物(b)に由来する構成単位とを有し、
    前記酸二無水物(a)は、酸無水物に脂肪族炭化水素が直接結合した構造、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造、及び、シロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、
    前記ジアミン化合物(b)は、脂肪族炭化水素構造、脂環式炭化水素構造及びシロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有し、
    厚み10μmのサンプルについて測定した波長250nmの光線透過率が10%以上である
    ことを特徴とするポリイミド樹脂。
  2. 前記酸二無水物(a)は、酸無水物に脂環式炭化水素が直接結合した構造を有することを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂。
  3. 前記ジアミン化合物(b)は、ダイマー酸ジアミン構造及びシロキサン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有することを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂。
  4. 芳香環構造を有する酸二無水物に由来する構成単位と、芳香環構造を有するジアミン化合物に由来する構成単位との合計含有量が10モル%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂。
  5. 更に、二重結合を含有する官能基を有することを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂。
  6. 請求項1、2、3、4又は5記載のポリイミド樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
  7. 更に、二重結合を含有する化合物を含有することを特徴とする請求項6記載の硬化性樹脂組成物。
  8. 更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項6記載の硬化性樹脂組成物。
  9. 請求項6記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有することを特徴とする仮固定材。
  10. 前記接着剤層は、硬化後の25℃における貯蔵弾性率が0.5GPa以下であることを特徴とする請求項9記載の仮固定材。
  11. 請求項6記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、
    前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、
    前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
    前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを有する
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。
  12. 請求項8記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、
    前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、
    前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
    前記接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、
    前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを有する
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024095573A1 (ja) * 2022-11-02 2024-05-10 Hdマイクロシステムズ株式会社 ポリイミド前駆体及び樹脂組成物

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