JP2023114906A - 人工血管および人工血管の製造方法 - Google Patents

人工血管および人工血管の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、人工血管をカットしたときに解れが生じにくい人工血管の提供を目的とする。【解決手段】人工血管VEは、軸方向に山部Mと谷部Vとが交互に形成され、軸方向に沿って延びる経糸1と、人工血管VEの周方向に沿って延びる緯糸2とを有し、経糸1は、軸方向で隣接する一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2において、周方向での位置が揃っており、一対の山部Mの間にある谷部Vの底部Vbでの位置が、一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2での位置に対して周方向にずれるように、人工血管VEを径方向に見たときに波状に延びている。【選択図】図4

Description

本発明は、人工血管および人工血管の製造方法に関する。
人工血管は、例えば病的な生体血管を取り替えるために用いられている。人工血管は、治療部位などに応じて、所定の大きさ、形状に切断されて、人体の血管に縫合等されて使用される。
人工血管は、人体において曲げて配置される場合があるので、柔軟性を有し、曲げたときに座屈しにくいことが好ましい。このような性能を実現するために、例えば特許文献1に示されるように、人工血管の軸方向に複数の山および谷が連続して設けられたプリーツ構造の人工血管が知られている。特許文献1では、プリーツ構造の人工血管は、プリーツ構造を有していない筒状の構造体に所定の加工をすることによって形成される。具体的には、筒状の構造体の内側に螺旋状のワイヤが巻き付けられた丸棒が挿入され、筒状の構造体の外側に螺旋状に別のワイヤが巻き付けられる。これにより、筒状の構造体は、ワイヤにより外側から力が加わって拘束された状態で焼成されることで、プリーツ構造の人工血管とされる。
特開昭63-54171号公報
特許文献1においては、筒状の構造体は、トーションレースや経メリヤスなどによって構成されているが、筒状の構造体は、経糸および緯糸の織構造によって構成される場合もある。織構造の人工血管において、例えば人工血管を斜めにカットした場合に、切断された緯糸に解れが生じにくい人工血管が求められている。
そこで、本発明は、人工血管をカットしたときに解れが生じにくい人工血管および人工血管の製造方法の提供を目的とする。
本発明の人工血管は、軸方向に山部と谷部とが交互に形成されている人工血管であって、前記人工血管は、前記軸方向に沿って延びる経糸と、前記人工血管の周方向に沿って延びる緯糸とを有し、前記経糸は、前記軸方向で隣接する一対の山部の頂部において、前記周方向での位置が揃っており、前記一対の山部の間にある谷部の底部での位置が、前記一対の山部の頂部での位置に対して前記周方向にずれるように、前記人工血管を径方向に見たときに波状に延びている。
また、本発明の人工血管の製造方法は、上記人工血管の製造方法であって、前記製造方法は、前記経糸および前記緯糸の織構造によって構成された筒状体を用意する工程と、前記筒状体を、前記山部および谷部に対応する凸部および凹部を有する成形用心材の外側に配置する工程と、前記筒状体が前記成形用心材の外側に配置された状態で、前記成形用心材の前記凹部に沿って、前記筒状体の外側に巻付部材が前記筒状体の周方向の一部に巻き付けられる工程と、前記筒状体に前記巻付部材が巻き付けられた状態で、前記筒状体のうち、前記軸方向で前記巻付部材が巻き付けられていない側を、前記巻付部材が巻き付けられている側に対して所定量相対回転させる工程と、前記巻付部材によって前記山部と谷部とが形成された前記筒状体を焼成する工程とを備えている。
本発明の人工血管および人工血管の製造方法によれば、人工血管をカットしたときに解れが生じにくい人工血管を提供することができる。
本発明の一実施形態の人工血管の側面図である。 図1の領域IIの部分拡大図である。 図1の人工血管に用いられる基材の織構造の一例を示す、織物組織図である。 図1の人工血管を径方向に見たときの概略拡大図である。 人工血管に山部および谷部を形成するために、成形用心材の外側に筒状体が配置され、筒状体の外側に巻付部材が部分的に巻き付けられた状態を示す概略図である。 成形用心材の外側に筒状体が配置された状態を軸方向に見たときの概略図である。
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の人工血管および人工血管の製造方法を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の人工血管および人工血管の製造方法は、以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
図1は、本発明の一実施形態の人工血管の側面図である。図2は、図1の人工血管の領域IIの部分拡大図である。図3は、図1の人工血管に用いられる基材の織構造の一例を示す、織物組織図である。
人工血管は、例えば、病的な生体血管と取り替えて、生体血管をバイパスするためなどに用いられる。図1および図2に示されるように、本実施形態の人工血管VEは、軸X(図1参照)方向に山部Mと谷部Vとが交互に形成されている。人工血管VEに山部Mと谷部Vとが交互に形成されることによって、柔軟性がある人工血管とすることができ、人工血管VEを曲げたときにキンクしにくい。人工血管VEの形状は、山部Mと谷部Vとが形成されていれば特に限定されないが、本実施形態では、人工血管VEは、山部Mおよび谷部Vが螺旋状に形成された円筒状に形成されている。
人工血管VEの直径は、用いられる部位等に応じて変更可能であり、特に限定されない。例えば、人工血管VEは、内径10mm以上の大口径(胸腹部大動脈用)の人工血管であってもよいし、内径6mm、8mmなど、内径6mm以上10mm未満の中口径(下肢、頸部、腋窩領域における動脈用)の人工血管であってもよいし、内径6mm未満の小口径の人工血管であってもよい。人工血管VEの厚さは、用いられる人工血管の内径や長さに応じて適宜変更され、特に限定されない。例えば、人工血管VEの厚さは、0.1~2mmとすることができる。
人工血管VEの軸X方向の長さは、用いられる部位等に応じて変更が可能であり、特に限定されない。例えば、人工血管VEの軸X方向の長さは、100~1000mmとすることができる。なお、人工血管VEは、所望の部位に移植される際に、医師等によって所定の長さにカットされて用いられる。人工血管VEは移植される部位によって、軸X方向に対して垂直にカットされる場合もあれば、軸X方向に対して所定の角度で傾斜して斜めにカットされる場合もある(例えば、図1の二点鎖線CL参照)。
人工血管VEの山部M(または谷部V)の数(プリーツの数)は、特に限定されないが、必要な耐キンク性能に応じて適宜設定することができる。例えば、人工血管VEの山部Mの数(プリーツの数)は、外径が15mmの人工血管の場合、軸X方向の長さ100mmあたり、20~70個、好ましくは25~35個とすることができる。また、人工血管VEの山部Mの頂部Mt(図2参照)と隣接する山部Mの頂部Mtとの間の軸X方向の間隔(ピッチ)は、特に限定されないが、例えば、人工血管VEの外径(山部Mの頂部Mtにおける外径)の10~30%、好ましくは15~25%とすることができる。また、山部Mの頂部Mtから谷部Vの底部Vb(図2参照)までの深さは、特に限定されないが、例えば、人工血管VEの外径の5~20%、好ましくは5~15%とすることができる。
また、本実施形態では、山部Mの頂部Mtにおける曲率が、谷部Vの底部Vbにおける曲率よりも小さい(本実施形態では、山部Mの頂部Mtにおける曲率半径は、谷部Vの底部Vbの曲率半径よりも大きい)。なお、「山部Mの頂部Mtにおける曲率が、谷部Vの底部Vbにおける曲率より小さい」とは、山部Mの頂部Mtにおける軸X方向に沿った湾曲の度合いが、谷部Vの底部Vbにおける軸X方向に沿った湾曲の度合よりも小さい(山部Mのカーブが谷部Vのカーブよりも緩やか)ということを意味し、山部Mおよび谷部Vは、完全な円弧面を形成している必要はない。山部Mの頂部Mtにおける曲率が、谷部Vの底部Vbにおける曲率よりも小さい場合、人工血管VEに外力が加わったときに、谷部Vに応力が集中するため、谷部Vを起点として人工血管VEが湾曲しやすくなる。山部Mおよび谷部Vの曲率は、特に限定されない。例えば、山部Mの頂部Mtの曲率半径は、人工血管VEの直径の5~8%(かつ谷部Vの底部Vbの曲率半径よりも大きい)とすることができる。また、谷部Vの頂部Vbの曲率半径は、人工血管VEの直径の2~3%(かつ谷部Vの底部Vbの曲率半径よりも大きい)とすることができる。人工血管VEが湾曲し易くなることで、湾曲した人工血管VEが元に戻りにくくなり、人工血管VEと血管等の接続部位への負荷を軽減することができる。
なお、山部Mの頂部Mtにおける湾曲部と、谷部Vの底部Vbにおける湾曲部とは、平面部PL(図2参照)により接続することができる。これにより、湾曲部同士を直接接続する場合と比べて、より柔軟性と耐キンク性能とを向上させることができる。なお、一方側の平面部PL1と他方側の平面部PL2とのなす角θを20°~40°、好ましくは30°となるようにすることができ、一方側の平面部PL1と他方側の平面部PL2とのなす角θは、人工血管の径、山部の高さ、谷部の高さ、ピッチ等により適宜設定することができる。
次に、人工血管VEを構成する基材の構成について説明する。
本実施形態では、人工血管VEは繊維の織構造によって形成されている。本実施形態では、図3に示されるように、人工血管VEは、軸X方向(図3では上下方向)に沿って延びる経糸1a~1l(以下、まとめて経糸1と呼ぶ)と、人工血管VEの周方向(図3では左右方向)に沿って延びる緯糸2a~2l(以下、まとめて緯糸2と呼ぶ)とを有している。より具体的には、図3に示されるように、人工血管VEは、複数の経糸1a~1lと複数の緯糸2a~2lとを有し、経糸1と緯糸2とを交錯させた織構造を有している。なお、図3において、経糸1は上下方向に延びており、経糸1の延在方向(人工血管VEの軸X方向)をD1と呼ぶ。また、図3において、緯糸2は左右方向に延びており、緯糸2の延在方向(人工血管VEの周方向)をD2と呼ぶ。図3において、黒(ドットが付された部分)で示されているのが、経糸1が人工血管VEの外面に出る部分であり、白で示されているのが、緯糸2が人工血管VEの外面に出る部分である。なお、人工血管VEを製造するための織機は、特に限定されない。
本実施形態では、人工血管VEは、図3に示されるように、経糸1と緯糸2とが平織で織られた第1領域R1を有している。また、人工血管VEは、人工血管VEの一方の面(本実施形態では、人工血管VEの外面)において、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐ第2領域側第1部分R21、および、経糸1が1本の緯糸2を跨いで延びる第2領域側第2部分R22を有する第2領域R2を有している。さらに、人工血管VEは、人工血管VEの一方の面(本実施形態では、人工血管VEの外面)において、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐ第3領域側第1部分R31、および、経糸1が1本の緯糸2を跨いで延びる第3領域側第2部分R32を有する第3領域R3を有している。第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3は、図3に示されるように、緯糸2の延在方向D2で交互に形成されている。すなわち、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3は、緯糸2の延在方向D2にこの順に繰り返し配置されている。第2領域側第1部分R21は、緯糸2の延在方向D2で第3領域側第2部分R32に隣接し、第2領域側第2部分R22は、緯糸2の延在方向D2で第3領域側第1部分R31に隣接している。また、本実施形態では、経糸1は、マルチフィラメント糸によって構成されている。本実施形態の人工血管VEが上記構成を有している場合、後述するように、第2領域側第1部分R21または第3領域側第1部分R31において拘束されずに長く延びた、マルチフィラメント糸によって構成された経糸1が、平織で織られた第1領域R1(および人工血管VEの一方の面に垂直な方向。図3における紙面手前方向)へと広がる。この経糸1の立体構造によって、平織で織られた第1領域R1において生じる繊維間隙から血液が染み出たとき、血液は漏れ出ることが抑制され、立体構造内に保持される。保持された状態で血液が凝固することで、耐漏血性を向上させることができる。以下、人工血管VEの各部の構成および織構造について説明する。
<経糸の構成>
経糸1は、人工血管VEを構成する繊維のうち、一方向に延びる繊維である。本実施形態では、経糸1は、人工血管VEの軸X方向に延びる繊維である。経糸1は、繊維の織構造によって構成される布製人工血管に適用可能な材料によって構成される。経糸1の材料は、布製人工血管に適用可能な材料であれば、特に限定されない。例えば、経糸1の材料は、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド等とすることができる。また、融点や伸縮率など異なる性質を持つ適用可能な2種類以上の材料によって構成された複合材料を用いても良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等が紡糸段階で複合されて、らせん状のクリンプを有する1本の長繊維を形成する合成繊維とすることができる。例えば、らせん状のクリンプを有する、融点や伸縮率が異なる性質を持つ2種類の材料によって構成された複合材料が経糸1の材料として用いられた場合、後述する経糸1によって構成される立体構造が緯糸2の延在方向D2で広がりやすく、より血液を保持する性能が高まり、耐漏血性を向上させることができる。
経糸1のそれぞれは、モノフィラメント糸であっても、マルチフィラメント糸であってもよいが、本実施形態では、マルチフィラメント糸によって構成されている。経糸1の繊度は特に限定されないが、例えば、経糸1がモノフィラメント糸である場合は、経糸の単糸繊度は、15~100dtex、好ましくは20~75dtexとすることができる。また、経糸1がマルチフィラメント糸である場合は、経糸1の繊度は、例えば、経糸1の単糸繊度を0.25~2.50dtex、好ましくは0.50~2.00dtexとし、経糸1の総繊度を2~2500dtex、好ましくは6~1600dtex、より好ましくは10~540dtex、さらに好ましくは30~200dtexとすることができる。経糸1の単糸繊度および経糸1の総繊度を上記範囲することにより、第2領域R2および第3領域R3の経糸1を第1領域R1に向かって良好に広げることができる。したがって、第2領域R2および第3領域R3の経糸1によって第1領域R1の間隙から血液が染み出たとき、血液は漏れ出ることが抑制され、経糸1の立体構造によって保持され、保持された状態で血液が凝固することで、耐漏血性を向上することができる。なお、「単糸繊度」は、経糸1を構成するフィラメント1本あたりの繊度であり、「総繊度」は、単糸繊度と、経糸1を構成するフィラメントの本数との積である。なお、経糸1本を構成するフィラメント糸の本数(以下、フィラメント本数という)は特に限定されないが、例えば、後述するように、経糸1の総フィラメント本数が緯糸2の1本あたりのフィラメント本数の1.5倍以上であり、第2領域R2において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1の経糸本数が1本である場合、経糸1の1本あたりのフィラメント本数は、8~1000本、好ましくは12~800本、より好ましくは20~270本、さらに好ましくは60~100本とすることができる。なお、後述するように、経糸1の1本あたりのフィラメント本数が、緯糸1の1本あたりのフィラメント本数の0.8~1.2倍であり第2領域R2において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1の経糸本数が2本以上である場合は、経糸1の1本あたりのフィラメント本数は、4~500本、好ましくは6~400本、より好ましくは10~135本、さらに好ましくは30~50本とすることができる。
緯糸2は、人工血管VEを構成する繊維のうち、経糸1と交差する方向に延びる繊維である。本実施形態では、緯糸2は人工血管VEの周方向に延びる繊維である。緯糸2は、繊維の織構造によって構成される布製人工血管に適用可能な材料によって構成される。緯糸2の材料は、布製人工血管に適用可能な材料であれば、特に限定されない。例えば、緯糸2の材料は、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド等とすることができる。
緯糸2のそれぞれは、モノフィラメント糸であっても、マルチフィラメント糸であってもよいが、本実施形態では、緯糸2は、マルチフィラメント糸によって構成されている。緯糸2の繊度は特に限定されないが、例えば、緯糸2がモノフィラメント糸である場合は、緯糸の単糸繊度は、15~100dtex、好ましくは20~75dtexとすることができる。また、緯糸2のそれぞれがマルチフィラメント糸によって構成されている場合、例えば、緯糸2の単糸繊度を0.25~2.50dtex、好ましくは0.50~2.00dtexとし、緯糸2の総繊度を1~1250dtex、好ましくは3~800dtex、より好ましくは5~270dtex、さらに好ましくは15~100dtexとすることができる。なお、「単糸繊度」は、緯糸2を構成するフィラメント(モノフィラメントまたはマルチフィラメント)1本あたりの繊度であり、「総繊度」は、単糸繊度と、緯糸2を構成するフィラメントの本数との積である。なお、緯糸2がマルチフィラメント糸によって構成される場合、緯糸1本を構成するフィラメント糸の本数は、4~500本、好ましくは6~400本、より好ましくは10~135本、さらに好ましくは30~50本とすることができる。
第1領域R1は、経糸1と緯糸2とが平織された部分である。図3において、第1領域R1は、経糸1a、1b、1e、1f、1i、1jと緯糸2(緯糸2a~2l)とが交錯する領域である。第1領域R1は、人工血管VEの強度、特に(人工血管VEの軸X方向の)引張強度を向上させる。第1領域R1は、経糸1の延在方向D1に沿って延びており、人工血管VEの軸X方向に延びている。また、第1領域R1は、緯糸2の延在方向D2において所定間隔で互いに離間して複数配置されている。緯糸2の延在方向D2で、1つの第1領域R1と、他の1つの第1領域R1との間には、第2領域R2と第3領域R3とが配置されている。
本実施形態では、第1領域R1は、図3に示されるように、2本の経糸1a、1b(経糸1e、1fまたは経糸1i、1j)と、複数の緯糸2a~2l(および図示されていない緯糸)とが平織されている。1つの第1領域R1に設けられる経糸1の経糸本数は、2~4本、好ましくは2~3本、より好ましくは2本とすることができる。なお、本明細書において、経糸1がマルチフィラメント糸である場合に、「経糸本数」という場合、マルチフィラメント糸を構成するフィラメント本数ではなく、複数のフィラメント糸によって構成されて纏まった経糸1を1本とし、そのフィラメント糸が纏まった経糸1が何本あるかをいう。経糸1の経糸本数を上述した範囲とすることにより、第2領域側第1部分R21の経糸1および第3領域側第1部分R31の経糸1によって覆われない第1領域R1の範囲を小さくすることができる。したがって、平織の第1領域R1が、第2領域側第1部分R21の経糸1および第3領域側第1部分R31の経糸1によって立体的にカバーされやすくなり、第1領域R1から血液が染み出たとき、第2領域側第1部分R21の経糸1および第3領域側第1部分R31の経糸1の立体構造によって血液が保持され、保持された状態で血液が凝固することから、人工血管VEからの漏血量を低減することができる。また、人工血管VEにおいて、第1領域R1~第3領域R3における緯糸2の延在方向D2において配列された経糸1の全経糸本数に対する、第1領域R1での経糸1の経糸本数の比率(第1領域R1での経糸本数/全経糸本数)は、特に限定されないが、例えば0.2~0.4(本実施形態では、1/3)とすることができる。第1領域R1での経糸1の経糸本数および経糸本数の比率を上記範囲とすることにより、人工血管VEの強度を高めつつ、人工血管VEからの漏血量を低減することができる。
第2領域R2は、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐ第2領域側第1部分R21と、経糸1が1本の緯糸2を跨いで延びる第2領域側第2部分R22とを有している。第2領域側第1部分R21および第2領域側第2部分R22は、図3に示されるように、経糸1の延在方向D1で交互に設けられている。第2領域R2が、第2領域側第1部分R21と第2領域側第2部分R22とを有していることにより、人工血管VEの全てが平織構造であるものと比較して、人工血管VEを柔軟にすることができる。なお、第2領域R2に設けられた経糸1cの部分は、1本の経糸によって構成されていてもよいし、複数本の経糸によって構成されていてもよい。第2領域R2に設けられる経糸1の経糸本数は、例えば1~4本、好ましくは2~3本、より好ましくは2本とすることができる。
第2領域側第1部分R21は、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐ部分を有するように織られた部分である。本実施形態では、経糸1c、1g、1k等が複数の緯糸2を跨いでいる。第2領域側第1部分R21において、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐことにより、平織構造よりも人工血管VEがその部分で柔軟になる。また、第2領域側第1部分R21の経糸1がマルチフィラメント糸によって構成されている場合、経糸1の延在方向D1で第2領域側第1部分R21の両端は、第2領域側第2部分R22の緯糸2(図3の部分P1参照)によって縛られた状態となる。その場合、両端が縛られたマルチフィラメント糸によって構成された経糸1の第2領域側第1部分R21は、経糸1の延在方向D1の中央部が緯糸2の延在方向D2に広がる立体構造を形成する(なお、この立体構造は図3において左右方向および紙面手前方向にも広がっている)。したがって、第2領域側第1部分R21に緯糸2の延在方向D2で隣接する、平織構造の第1領域R1は、広がった第2領域側第1部分R21のマルチフィラメント糸によって部分的に被覆される。この経糸1の立体構造によって、平織で織られた第1領域R1において生じる繊維間隙から血液が染み出たとき、染み出た血液はマルチフィラメントによって構成された立体構造のフィラメント間の隙間に保持される。これにより、保持された状態で血液が凝固することで、耐漏血性を向上させることができる。また、本実施形態では、第2領域側第1部分R21に緯糸2の延在方向D2で隣接する第3領域側第2部分R32も同様に、広がった第2領域側第1部分R21のマルチフィラメント糸によって部分的に被覆される。これにより、第3領域側第2部分R32において生じる隙間についても、第2領域側第1部分R21のマルチフィラメント糸によって被覆され、人工血管VE内の血液が、外部に漏出しにくくなる。
第2領域側第1部分R21において(経糸1が人工血管VEの他方の面から一方の面(図3において示されている面)に出てから他方の面に行くまでに)、経糸1が跨ぐ緯糸2の緯糸本数は、特に限定されないが、例えば、2~5本、好ましくは3~4本、より好ましくは3本(図3に示される状態)とすることができる。第2領域側第1部分R21において、経糸1が跨ぐ緯糸2の緯糸本数を上記範囲とすることによって、経糸1のマルチフィラメント糸を緯糸2の延在方向D2に広げやすいとともに、人工血管VEを所定の強度に維持することができる。
第2領域側第1部分R21は、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐ部分を有していれば、第2領域側第1部分R21を構成する経糸1の本数は特に限定されない。例えば、第2領域側第1部分R21(第2領域R2)は、複数(2本)の経糸によって構成されていてもよい(経糸1c、1g、1kのそれぞれが、複数本の経糸によって構成されている)。また、第2領域側第1部分R21(第2領域R2)は、1本(のみ)の緯糸2を跨いで延びる少なくとも1本の経糸1と、複数の緯糸2を跨ぐ少なくとも1本の経糸1とを有していてもよい。
第2領域側第2部分R22は、経糸1が1本のみの緯糸2を跨ぐ(経糸1が人工血管VEの他方の面から一方の面(図3において示されている面)に出てから他方の面に行くまでに複数の緯糸2を跨がない)ように織られた部分である。第2領域側第2部分R22は、経糸1の延在方向D1で、第2領域側第1部分R21の長さと同程度の長さとされている。すなわち、第2領域側第1部分R21における緯糸2の緯糸本数(図3では3本)は、第2領域側第2部分R22における緯糸2の緯糸本数(図3では3本)と等しい。
第3領域R3は、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐ第3領域側第1部分R31と、経糸1が1本の緯糸2を跨いで延びる第3領域側第2部分R32とを有している。第3領域側第1部分R31および第3領域側第2部分R32は、図3に示されるように、経糸1の延在方向D1で交互に設けられている。第3領域R3が、第3領域側第1部分R31と第3領域側第2部分R32とを有していることにより、人工血管VEの全てが平織構造であるものと比較して、人工血管VEを柔軟にすることができる。なお、第3領域R3に設けられた経糸1dの部分は、1本の経糸によって構成されていてもよいし、複数本の経糸によって構成されていてもよい。第3領域R3に設けられる経糸1の経糸本数は、例えば1~4本、好ましくは2~3本、より好ましくは2本とすることができる。
第3領域側第1部分R31は、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐ部分を有するように織られた部分である。本実施形態では、経糸1d、1h、1l等が複数の緯糸2を跨いでいる。第3領域側第1部分R31において、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐことにより、平織構造よりも人工血管VEがその部分で柔軟になる。また、第3領域側第1部分R31の経糸1は、マルチフィラメント糸によって構成されている場合、経糸1の延在方向D1で第3領域側第1部分R31の両端は、第3領域側第2部分R32の緯糸2(図3の部分P2参照)によって縛られた状態となる。その場合、両端が縛られたマルチフィラメント糸によって構成された経糸1の第3領域側第1部分R31は、経糸1の延在方向D1の中央部が緯糸2の延在方向D2に広がる立体構造を形成する(なお、この立体構造は図3において左右方向および紙面手前方向にも広がっている)。したがって、第3領域側第1部分R31に緯糸2の延在方向D2で隣接する、平織構造の第1領域R1は、広がった第3領域側第1部分R31のマルチフィラメント糸によって部分的に被覆される。この経糸1の立体構造によって、平織で織られた第1領域R1において生じる繊維間隙から血液が染み出たとき、染み出た血液が、マルチフィラメントによって構成された立体構造のフィラメント間の隙間に保持される。これにより、保持された状態で血液が凝固することで、耐漏血性を向上させることができる。また、本実施形態では、第3領域側第1部分R31に緯糸2の延在方向D2で隣接する第2領域側第2部分R22も同様に、広がった第3領域側第1部分R31のマルチフィラメント糸によって部分的に被覆される。これにより、第2領域側第2部分R22において生じる隙間についても、第3領域側第1部分R31のマルチフィラメント糸によって被覆され、人工血管VE内の血液が、外部に漏出しにくくなる。
第3領域側第1部分R31において(経糸1が人工血管VEの他方の面から一方の面(図3において示されている面)に出てから他方の面に行くまでに)、経糸1が跨ぐ緯糸2の緯糸本数は、特に限定されないが、例えば、2~5本、好ましくは3~4本、より好ましくは3本(図3に示される状態)とすることができる。第3領域側第1部分R31において、経糸1が跨ぐ緯糸2の緯糸本数を上記範囲とすることによって、経糸1のマルチフィラメント糸を緯糸2の延在方向D2に広げやすいとともに、人工血管VEを所定の強度に維持することができる。
第3領域側第1部分R31は、経糸1が複数の緯糸2を跨ぐ部分を有していれば、第3領域側第1部分R31を構成する経糸1の本数は特に限定されない。例えば、第3領域側第1部分R31(第3領域R3)は、複数(2本)の経糸によって構成されていてもよい(経糸1d、1h、1lのそれぞれが、複数本の経糸によって構成されている)。また、第3領域側第1部分R31(第3領域R3)は、1本(のみ)の緯糸2を跨いで延びる少なくとも1本の経糸1と、複数の緯糸2を跨ぐ少なくとも1本の経糸1とを有していてもよい。
第3領域側第2部分R32は、経糸1が1本のみの緯糸2を跨ぐ(経糸1が人工血管VEの他方の面から一方の面(図3において示されている面)に出てから他方の面に行くまでに複数の緯糸2を跨がない)ように織られた部分である。第3領域側第2部分R32は、経糸1の延在方向D1で、第3領域側第1部分R31の長さと同程度の長さとされている。すなわち、第3領域側第1部分R31における緯糸2の緯糸本数(図3では3本)は、第3領域側第2部分R32における緯糸2の緯糸本数(図3では3本)と同じになっている。
なお、人工血管VEの織構造は、上述した織構造に限定されない。人工血管VEは、全体または部分的に、平織構造、綾織り構造、朱子織構造、またはこれらの織構造の複合構造を有していてもよい。
図4は、人工血管VEを径方向に見たとき、すなわち、人工血管VEを外側から人工血管VEの軸Xに向かって見たとき(または人工血管VEを軸X方向に沿って切断して展開したとき)の、概略拡大図である。図4においてドットを付して示しているのが経糸1であり、ドットが付されていないものが緯糸2である。なお、図4においては、図1の人工血管VEの向きと同方向で示しており、図3の織物組織図を90°回転させた方向で示している。また、図4において、人工血管VEの山部Mの頂部Mt1、Mt2、谷部Vの底部Vbをそれぞれ二点鎖線で示している。なお、図4は経糸1の延び方をより良く理解できるようにデフォルメして示したものであり、図4の概略図において生じる経糸1と緯糸2との間に生じる隙間部分は、実際の人工血管VEの織構造においては、経糸1および緯糸2によって覆われている。
本実施形態では、図4に示されるように、経糸1は、軸X方向で隣接する一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2において、周方向(図4における上下方向)での位置が揃っており、一対の山部Mの間にある谷部Vの底部Vbでの位置が、一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2での位置に対して周方向にずれるように、人工血管VEを径方向に見たときに波状に延びている。ここで、「隣接する一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2において、周方向での位置が揃う」とは、隣接する一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2の周方向の位置が完全に同一である必要はなく、経糸1が波状になっていれば、隣接する一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2の周方向の位置はわずかにずれていてもよい。なお、人工血管の成形上、経糸1の長さ方向の一部において、ズレや変形が生じる場合があるので、経糸1の長さ方向全体が必ずしも周方向で揃っている必要はない。また、「人工血管VEを径方向に見たときに波状に延びている」とは、人工血管VEの軸X方向の一端から他端に延びる1本の経糸1を人工血管VEの径方向で見たときに、経糸1が人工血管VEの周方向での変位を繰り返すように蛇行して延びていることをいう。具体的には、図4に示されるように、人工血管VEのそれぞれの経糸1のうち、山部Mの頂部Mt1から谷部Vの底部Vbに向かって延びる部分(図4の領域A1参照)は、(人工血管VEの径方向の位置が軸Xに近付くように変位するとともに)周方向で一方の方向に変位して延びている。また、人工血管VEのそれぞれの経糸1のうち、谷部Vの底部Vbから山部Mの頂部Mt2に向かって延びる部分(図4の領域A2参照)は、(人工血管VEの径方向の位置が軸Xから離れるように変位するとともに)周方向で他方の方向に変位して延びている。
上述したように、経糸1の谷部Vの底部Vbでの位置が、山部Mの頂部Mt1、Mt2での位置に対して周方向にずれるように波状に延びている場合、経糸が周方向でずれることなく直線的に延びている場合と比較して、経糸1の密度(人工血管VEの単位面積当たりの経糸1の量)が高くなる。この場合、経糸1が緯糸2によく絡み、緯糸2が経糸1によって、より強く拘束された状態となる。したがって、人工血管VEがカットされた場合などに、緯糸2の解れを抑制することができる。具体的に説明すると、例えば、経糸が図4に示されるように波状に延びずに、人工血管を径方向に見たときに直線的に延びている場合(図4において経糸が左右に真っすぐ延びている場合)、経糸の単位面積当たりの密度が小さくなる。この場合、経糸と緯糸との間の絡みが緩くなり、緯糸は経糸によって強く拘束されない。そのため、人工血管VEがカットされて、人工血管のカットされた部位の近傍が医師等によって触れられた際などに、緯糸に解れが生じる可能性がある。特に、図1において参照符号CLで示される切断線に沿って人工血管VEが斜めにカットされた場合、人工血管VEの端部領域Eでは、ループ状に延びていた複数の緯糸は周方向の半分または半分以上が除去される。そのため、端部領域Eにおいて、複数の緯糸は、人工血管VEの周方向の長さの半分以下に切断され、経糸と交錯した状態で単に支持されているだけであり、解れやすい状態となっている。このように、緯糸が経糸に強く拘束されていない場合、人工血管をカットしてから生体の血管に縫合するまでの間に、端部領域Eにおいて解れが生じて、この解れは、生体に人工血管が移植された後に、血液の漏れの一因となり得る。本実施形態では、上述したように、経糸1の谷部Vの底部Vbでの位置が、山部Mの頂部Mt1、Mt2での位置に対して周方向にずれるように波状に延びていることによって、緯糸2を強く拘束することができ、人工血管VEを斜めにカットした場合であっても、緯糸2の解れを抑制することができる。
なお、経糸1の谷部Vの底部Vbでの位置と、山部Mの頂部Mt1、Mt2での位置との間の周方向での位置ズレ量L1(図4参照)は、求められる人工血管の柔軟性、耐キンク性に応じて適宜変更される。例えば、上記位置ズレ量L1は、山部Mの頂部Mt1、Mt2間の間隔L2(図4参照)の5~25%、より好ましくは8~20%とすることができる。
また、経糸1は、山部Mの頂部Mtでの位置が人工血管VEの周方向で揃っているので、経糸1は、人工血管VEの一端から他端まで、波状に延びつつ、全体としては人工血管VEの軸Xに沿って延びることとなる。経糸が、人工血管の一端から他端まで、軸Xに対して傾斜して延びている場合(図1の二点鎖線LN参照)、人工血管は、自然状態(無負荷状態)で軸Xまわりに捩れたり、軸Xに対して曲がったりしてしまう。一方、本実施形態では、経糸1が人工血管VEの一端から他端まで波状に延びつつ、全体としては人工血管VEの軸Xに沿って延びているので、人工血管VEが、自然状態で軸Xまわりに捩れたり、軸Xに対して曲がったりすることが抑制される。
また、本実施形態では、人工血管VEは、上述したように、経糸1と緯糸2とが平織で織られた第1領域R1と、第2領域側第1部分R21および第2領域側第2部分R22を有する第2領域R2と、第3領域側第1部分R31および第3領域側第2部分R32を有する第3領域R3とを、緯糸2の延在方向D2で交互に有し、第2領域側第1部分R21は、緯糸2の延在方向D2で第3領域側第2部分R32に隣接し、第2領域側第2部分R22は、緯糸2の延在方向D2で第3領域側第1部分R31に隣接し、経糸1はマルチフィラメント糸によって構成されている。この場合、マルチフィラメント糸によって構成された経糸1は、複数の緯糸2を跨ぐ部分の両端部分で緯糸2によって束ねられる(図3の部分P1、P2参照)。緯糸2には、緯糸2によって束ねられた経糸1のマルチフィラメント糸が広がろうとする反力によって強い拘束力が生じる。したがって、緯糸2が経糸1によって拘束されて、より緯糸2の解れが抑制される。
また、図3に示されるような織構造の場合、第2領域側第1部分R21の経糸1のマルチフィラメント糸が緯糸2の延在方向D2に広がって、第2領域側第1部分R21に隣接する第1領域R1を部分的に覆い、第1領域R1に形成された経糸1と緯糸2との交差部の4隅に形成された隙間(ポロシティ)を埋める。さらに、第3領域側第1部分R31の経糸1のマルチフィラメント糸が緯糸2の延在方向D2に広がって、第3領域側第1部分R31に隣接する第1領域R1を部分的に覆い、第1領域R1に形成された経糸1と緯糸2との交差部の4隅に形成された隙間(ポロシティ)が、第2領域側第1部分R21および第3領域側第1部分R31のマルチフィラメント糸によって被覆される。したがって、平織で織られた第1領域R1において生じる繊維間隙から血液が染み出たとき、経糸1の立体構造によって、染み出た血液が、マルチフィラメントにより構成された立体構造のフィラメント間の隙間に保持され、血液は流れ出ることなく凝固することが可能となる。これにより、耐漏血性を向上させることができる。また、本実施形態では、第2領域側第1部分R21の経糸1のマルチフィラメント糸によって、第2領域側第1部分R21に隣接する第3領域側第2部分R32が部分的に覆われ、第3領域側第2部分R32に形成された経糸1と緯糸2との交差部に形成された隙間(ポロシティ)が覆われる。さらに、第3領域側第1部分R31の経糸1のマルチフィラメント糸によって、第3領域側第1部分R31に隣接する第2領域側第2部分R22が部分的に覆われ、第2領域側第2部分R22に形成された経糸1と緯糸2との交差部に形成された隙間(ポロシティ)が覆われる。したがって、人工血管VE内の血液が、第3領域側第2部分R32および第2領域側第2部分R22の隙間から外部に漏出しにくくなり、人工血管VEの耐漏血性が向上する。
さらに、本実施形態では、平織構造を有する第1領域R1と、平織構造とは異なる織構造を有する第2領域R2および第3領域R3が緯糸2の延在方向D2に交互に形成されている。したがって、緯糸2の延在方向D2に所定の間隔で設けられた第1領域R1によって人工血管VEの所定の強度を確保しつつ、第2領域R2および第3領域R3によって、人工血管VEに必要な所定の柔軟性を得ることができる。したがって、図3に示される織構造を有する人工血管VEとした場合、耐漏血性の向上に加え、人工血管VEに必要な強度および柔軟性の両立も可能となる。
また、本実施形態では、図3に示されるように、第2領域側第1部分R21と、第3領域側第1部分R31とが、経糸1の延在方向D1でジグザグ状に連続して延びるように構成されている。この場合、緯糸2の延在方向D2に広がった、第2領域側第1部分R21の経糸1と、第3領域側第1部分R31の経糸1とが干渉せず、かつ、経糸1の延在方向D1で経糸1の広がりが途切れないので、立体構造による血液の吸収性をより高めることができる。
第2領域側第1部分R21および第3領域側第1部分R31における、経糸1の緯糸2の延在方向D2への最大の広がりの平均幅が、第1領域R1における経糸1の、緯糸2の延在方向D2への最大の広がりの平均幅よりも大きいことが好ましい。この場合、第1領域R1、第2領域側第2部分R22および第3領域側第2部分R32の隙間が、第2領域側第1部分R21および第3領域側第1部分R31の経糸1によって、広い領域で被覆される。したがって、第1領域R1、第2領域側第2部分R22および第3領域側第2部分R32の隙間から染み出た血液をさらに保持しやすく、耐漏血性をさらに向上させることができる。なお、第2領域側第1部分R21および第3領域側第1部分R31における、経糸1の緯糸2の延在方向D2への最大の広がりの平均幅は、特に限定されないが、例えば、第1領域R1における経糸1の、緯糸2の延在方向D2への最大の広がりの平均幅の2.0~4.0倍とすることができる。
なお、「経糸1の第2領域側第1部分R21および第3領域側第1部分R31の、緯糸2の延在方向D2への最大の広がりの平均幅」は、例えば、人工血管の所定の面積(例えば1mm×1mm)において、第2領域側第1部分R21および第3領域側第1部分R31の経糸1の広がりが最大になる部分の幅Wa(図示せず)を、所定の数m(例えば10個以上)計測し、それらの平均値((Wa1+Wa2+・・・Wam)/m)を算出すればよい。
また、人工血管VEにおいて、緯糸2がマルチフィラメント糸によって構成されており、第2領域R2および第3領域R3において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1(図3における経糸1c、1d、1g、1h、1k、1l)のフィラメントの総フィラメント本数が、緯糸2の1本あたりのフィラメント本数の1.5倍以上、好ましくは1.5倍~3.0倍であってもよい。ここで、「複数の緯糸2を跨ぐ経糸1のフィラメントの総フィラメント本数」とは、1つの第2領域R2または1つの第3領域R3において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1の経糸本数が1本である場合には、その1本のフィラメント本数であり、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1の経糸本数が複数本(例えば2本または3本)である場合には、複数本の経糸1のフィラメント糸の合計数(1本の経糸1を構成するフィラメント本数に、経糸本数である2または3を乗じた数)である。複数の緯糸2を跨ぐ経糸1の総フィラメント本数が、緯糸2の1本あたりのフィラメント本数よりも多いことによって、経糸1のマルチフィラメント糸が緯糸2のマルチフィラメント糸よりも広がりやすく、耐漏血性をさらに高めることができる。すなわち、緯糸2よりも総フィラメント本数が多い経糸1が、経糸1の延在方向D1で、第2領域側第1部分R21および第3領域側第1部分R31の両端において、経糸1よりも細い(フィラメント本数が少ない)緯糸2によって縛られる。これにより、細い緯糸2によって縛られることで経糸1に強い圧力が加わり、経糸1はより緯糸2の延在方向D2に広がりやすくなる。さらに、経糸1に強い圧力が加わることで、緯糸2にさらに大きな反力が加わり、緯糸2の解れ防止効果がさらに向上する。また、経糸1の総フィラメント本数と、緯糸2の1本あたりのフィラメント本数が上記比率で設けられている場合、緯糸2が経糸1のフィラメントの本数に対して少なくなり、人工血管を織る際に緯糸2を経糸1の延在方向D1に詰めやすくなる。したがって、緯糸2を経糸1の延在方向D1に詰めることで経糸1と緯糸2との交差部に形成された隙間(ポロシティ)を小さくすることができ、漏血量自体を低減することができる。したがって、緯糸2を詰めやすくすることによる漏血量自体の低減と、経糸1の立体構造による漏血した血液の吸収性との相乗効果により、耐漏血性を飛躍的に高めることができる。
本実施形態では、第2領域R2および第3領域R3のそれぞれにおいて、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1の経糸本数が1本であり、第2領域R2および第3領域R3における経糸1の1本あたりのフィラメント本数が、緯糸1本あたりのフィラメント本数の1.5倍以上、好ましくは1.5~3倍となるように構成されていることが好ましい。具体的には、緯糸2の1本あたりのフィラメント本数が4~500本であり、経糸1の1本あたりのフィラメント本数が8~1000本とすることができる。これにより、第2領域R2および第3領域R3において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1を構成するマルチフィラメント糸が、第2領域R2および第3領域R3のそれぞれにおいて1つに束ねられて、緯糸2のフィラメント本数よりも多くなっている。なお、第2領域R2および第3領域R3において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1のフィラメントの総フィラメント本数が、緯糸2の1本あたりのフィラメント本数の1.5倍以上となるように構成されていれば、経糸1および緯糸2の構成は特に上述した構成に限定されない。例えば、第2領域R2および第3領域R3において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1の経糸本数が2本以上であり、経糸1の1本あたりのフィラメント本数が、緯糸2の1本あたりのフィラメント本数の0.8~1.2倍(好ましくは同一のフィラメント本数)であってもよい。この場合も、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1の経糸本数が2本以上であることによって、第2領域R2および第3領域R3において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1のフィラメントの総フィラメント本数は、緯糸2の1本あたりのフィラメント本数よりも多くなる。したがって、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
また、第2領域R2および第3領域R3において、複数の緯糸2を跨ぐ経糸1(例えば1c、1d、1g、1h、1k、1l)のフィラメント本数は、緯糸2の1本あたりのフィラメント本数よりも多く(例えば1.5~3倍)、第2領域R2および第3領域R3のそれぞれに2本の経糸1が設けられていてもよい(例えば1c、1d、1g、1h、1k、1lのそれぞれが2本の経糸によって構成されている)。この緯糸2の1本あたりのフィラメント本数よりも多い2本の経糸1が、フィラメント本数が少ない1本の緯糸2で束ねられる。この場合、1本の緯糸2に経糸1から加わる反力は、1本の経糸を束ねる場合や、1本あたりのフィラメント本数が少ない経糸を束ねる場合よりも大きくなる。したがって、上述した緯糸2の解れ防止効果がさらに向上する。また、上述したように、第2領域R2および第3領域R3において、経糸1は緯糸2の延在方向D2に広がって、緯糸2の表面を覆う。これにより、緯糸2が人工血管VEの表面で露出しにくく、医師などが人工血管VEに触れた際に、緯糸2に触れる機会が減るため、人工血管VEのカットされた部分から緯糸2がほつれることが抑制される。
次に、上述した人工血管VEの製造方法の一例を説明する。なお、以下の製造方法はあくまで一例であり、人工血管VEは、他の製造方法によって製造されてもよく、以下の説明によって本発明の人工血管VEおよび人工血管VEの製造方法は限定されない。
まず、例えば上述した織構造など、経糸1および緯糸2の織構造によって構成された筒状体C(図5参照)を用意する。なお、ここでいう「筒状体C」とは、図1および図2に示される山部Mおよび谷部Vがまだ形成されていない状態(または山部Mおよび谷部Vが一部のみ形成され、他の部分にはまだ山部Mおよび谷部Vが形成されていない状態)の筒状の基材をいう。筒状体Cの形成方法は、所定の織構造を有する筒状の人工血管(プリーツを有していない人工血管)を製造する公知の方法を採用することができるので、説明は省略する。
次に、筒状体Cを、山部Mおよび谷部Vに対応する凸部31および凹部32を有する成形用心材3(図5参照)の外側に配置する。成形用心材3は、所望の大きさおよび形状の山部Mおよび谷部Vを有する人工血管VEに対応した大きさおよび形状を有している。成形用心材3は、本実施形態では、筒状体Cをその外側に被覆できるように構成されている。成形用心材3の凸部31の外径は、筒状体Cの内径と同じかまたは小さいことが好ましいが、凸部31の外径は、筒状体Cの内径よりもわずかに大きくてもよい。本実施形態では、成形用心材3は、成形用心材3を含む成形装置の支持体(図示せず)に軸Xまわりに回転可能に支持されている。
筒状体Cが成形用心材3の外側に配置されると、図5に示されるように、筒状体Cが成形用心材3の外側に配置された状態で、成形用心材3の凹部32に沿って、筒状体Cの外側に巻付部材4が筒状体Cの周方向の一部に巻き付けられる。巻付部材4は、成形用心材3の外側に配置された筒状体Cの一部を成形用心材3の凹部32に押し当てて、筒状体Cに谷部Vに相当する部位を形成するための部材である。巻付部材4は、筒状体Cに谷部Vを形成することができれば、特に限定されないが、本実施形態では、一対の山部Mに相当する一対の凸部31の間に入り込むことが可能な大きさを有するワイヤとすることができる。なお、本実施形態では、巻付部材4をテンションがかかった状態(図6参照)で張設しておき、成形用心材3を軸Xまわりに回転させることで、筒状体Cの外周に巻付部材4が螺旋状に巻き付けられていくことで、筒状体Cに谷部Vが形成される。なお、成形用心材3を回転させずに、巻付部材4を成形用心材3に螺旋状に巻き付くように動かすことで筒状体Cに谷部Vが形成されてもよい。
上述した筒状体Cの外側に巻付部材4が巻き付けられる工程において、筒状体Cは巻付部材4によって成形用心材3に向かって押圧されながら、筒状体Cに谷部Vが形成される。この際、筒状体Cは巻付部材4によって押圧されながら巻付部材4が巻き付けられることで、筒状体Cの経糸1は巻付部材4によって周方向に引っ張られる。そのため、経糸1は巻付部材4によって周方向にずれる力を受け、押圧されていない山部Mの頂部Mtに対して周方向にずれる(図4の領域A1参照)。この際、経糸1が周方向にずれる(捩れる)ことで、経糸1は、軸Xに略平行に延びているときよりも経糸1の延在方向で引っ張られる。これにより、経糸1と緯糸2との間の目(空隙)がさらに詰まり、より血液の漏出を低減させることができる。また、筒状体Cは、谷部Vを形成するために、図5の右側に示される軸X方向に沿って凹凸のない状態から成形用心材3の凹部32に向かって巻付部材4によって筒状体Cの径方向内側に押し付けられる。この際に、筒状体Cの経糸1は凹部32に沿って変形しながら、経糸1の延在方向で引っ張られる。これにより、経糸1と緯糸2との間の目(空隙)がより詰まって耐漏血性能が向上する。
次に、筒状体Cに巻付部材4が巻き付けられた状態で、筒状体Cのうち、軸X方向で巻付部材4が巻き付けられていない側(図5において右側の部分)を、巻付部材4が巻き付けられている側(図5において左端の部分)に対して所定量相対回転させる。この工程によって、上述した巻付部材4が巻き付けられる工程において、1の山部Mの頂部Mt1と当該山部Mの頂部Mt1に隣接する谷部Vの底部Vbとの間で経糸1の周方向の位置がずれるが(図4の領域A1参照)、上記1の山部Mに軸X方向で隣接する他の山部Mの頂部Mt2が、1の山部Mの頂部Mt1の周方向の位置と合うように、筒状体Cが所定量回転される。より具体的には、例えば、成形用心材3を軸Xまわりに360°以下(例えば90°)の回転角で回転させて、巻付部材4を筒状体Cに所定量巻き付けた後、筒状体Cのうち、巻付部材4が巻き付けられていない側を、山部Mの頂部Mt2が、山部Mの頂部Mt1の周方向の位置と合うように、わずかに回転させる。これにより、山部Mの頂部Mt1、Mt2と谷部Vの底部Vbとの間の周方向の位置を変えることができ、経糸1を波状にすることができる。筒状体Cの所定量の相対回転は、経糸1の軸X方向に隣接する一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2の周方向の位置が実質的に同じになるような回転角度であればよい。筒状体Cの回転量である「所定量」の設定方法は特に限定されない。例えば、同様の材料・構造を有する筒状体(サンプル)において巻付部材4を所定の長さで巻き付けたときの、経糸1の山部Mの頂部Mtと谷部Vの底部Vbとの間の周方向での位置ズレ量を算出し、当該算出された位置ズレ量を解消可能な筒状体Cの回転角度を、所定量の筒状体Cの回転量とすることができる。また、経糸1の周方向の位置を検知可能なセンサ等によって経糸1の山部Mの頂部Mtと谷部Vの底部Vbとの間の周方向での位置ズレ量を測定し、当該センサ等によって測定された位置ズレ量を解消可能な筒状体Cの回転角度を、所定量の筒状体Cの回転量としてもよい。
なお、筒状体Cを所定量相対回転させる方法は、筒状体Cのうち、軸X方向で巻付部材4が巻き付けられていない側を、巻付部材4が巻き付けられている側に対して回転させることができれば、特に限定されない。例えば、図5に示されるように、成形用心材3の外側に配置された筒状体Cのさらに外側に、筒状体Cのうち、巻付部材4が巻き付けられていない部分を保持可能な保持部5が設けられていてもよい。当該保持部5が、筒状体Cの巻付部材4が巻き付けられていない側を、巻付部材4が巻き付けられている側に対して回転させるように構成される。この相対回転によって、図4に示されるように、巻付部材4によって捩れた経糸1の部分(図4における領域A1参照)とは逆方向に経糸1が捻じられ(図4における領域A2参照)、隣接する一対の山部Mの頂部Mt1、Mt2を周方向で同じ位置とすることができる。経糸1の波状が、保持部5等によって経糸1が軸X方向に対して傾斜するようにツイストされて形成される場合、より経糸1と緯糸2との間の絡みが強くなり、より耐漏血性が向上する。
上記筒状体Cの外側に巻付部材4が巻き付けられる工程、および、筒状体Cのうち、軸X方向で巻付部材4が巻き付けられていない側を、巻付部材4が巻き付けられている側に対して所定量相対回転させる工程が、巻付部材4が筒状体Cの軸X方向のほぼ全体に亘って巻き付けられるまで繰り返される。巻付部材4が筒状体Cの軸X方向のほぼ全体に亘って巻き付けられると、巻付部材4によって山部Mと谷部Vとが形成された筒状体Cを焼成する。筒状体Cの焼成が完了して、筒状体Cが冷却され、巻付部材4および成形用心材3が取り外されることで、人工血管VEが完成する。
上記製造方法によって製造された人工血管VEは、図4に示されるように、経糸1の谷部Vの底部Vbでの位置が、山部Mの頂部Mtでの位置に対して周方向にずれるように、人工血管VEを径方向に見たときに(人工血管VEを軸方向に切断して展開したときに)経糸1が波状に延びている。この場合、経糸が周方向でずれることなく直線的に延びている場合と比較して、経糸1の密度(人工血管VEの単位面積当たりの経糸1の量)が高くなり、緯糸2が経糸1によって、より強く拘束された状態となる。したがって、人工血管VEがカットされた場合などに、緯糸2の解れを抑制することができる。また、経糸1は、山部Mの頂部Mt1、Mt2での位置が人工血管VEの周方向で揃っているので、経糸1は、人工血管VEの一端から他端まで、波状に延びつつ、全体としては人工血管VEの軸Xに沿って延びている。したがって、人工血管VEが、自然状態で軸Xまわりに捩れたり、軸Xに対して曲がったりすることが抑制される。また、本実施形態では、人工血管VEは、経糸1と緯糸2とが平織で織られた第1領域R1と、第2領域側第1部分R21および第2領域側第2部分R22を有する第2領域R2と、第3領域側第1部分R31および第3領域側第2部分R32を有する第3領域R3とを、緯糸2の延在方向D2で交互に有し、第2領域側第1部分R21は、緯糸2の延在方向D2で第3領域側第2部分R32に隣接し、第2領域側第2部分R22は、緯糸2の延在方向D2で第3領域側第1部分R31に隣接し、経糸1はマルチフィラメント糸によって構成されている。この場合、マルチフィラメント糸によって構成された経糸1は、複数の緯糸2を跨ぐ部分の両端部分で緯糸2によって束ねられ、緯糸2には、緯糸2によって束ねられた経糸1のマルチフィラメント糸が広がろうとする反力によって強い拘束力が生じる。したがって、緯糸2が経糸1によって拘束されて、より緯糸2の解れが抑制される。
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i、1j、1k、1l 経糸
2、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2l 緯糸
3 成形用心材
31 凸部
32 凹部
4 巻付部材
5 保持部
A1 経糸のうち、山部の頂部から谷部の底部に向かって延びる領域
A2 経糸のうち、谷部の底部から山部の頂部に向かって延びる領域
C 筒状体
CL 切断線
D1 経糸の延在方向
D2 緯糸の延在方向
E 人工血管の端部領域
L1 谷部の底部と山部の頂部との間の周方向での位置ズレ量
L2 山部の頂部間の間隔
LN 経糸が人工血管の一端から他端まで軸に対して傾斜して延びている場合の仮想線
M 山部
Mt、Mt1、Mt2 山部の頂部
P1 第2領域側第1部分の両端を縛る緯糸の部分
P2 第3領域側第1部分の両端を縛る緯糸の部分
PL、PL1、PL2 平面図
R1 第1領域
R2 第2領域
R21 第2領域側第1部分
R22 第2領域側第2部分
R3 第3領域
R31 第3領域側第1部分
R32 第3領域側第2部分
V 谷部
Vb 谷部の底部
VE 人工血管
X 軸
θ 一方側の平面部と他方側の平面部とのなす角
また、本実施形態では、山部Mの頂部Mtにおける曲率が、谷部Vの底部Vbにおける曲率よりも小さい(本実施形態では、山部Mの頂部Mtにおける曲率半径は、谷部Vの底部Vbの曲率半径よりも大きい)。なお、「山部Mの頂部Mtにおける曲率が、谷部Vの底部Vbにおける曲率より小さい」とは、山部Mの頂部Mtにおける軸X方向に沿った湾曲の度合いが、谷部Vの底部Vbにおける軸X方向に沿った湾曲の度合よりも小さい(山部Mのカーブが谷部Vのカーブよりも緩やか)ということを意味し、山部Mおよび谷部Vは、完全な円弧面を形成している必要はない。山部Mの頂部Mtにおける曲率が、谷部Vの底部Vbにおける曲率よりも小さい場合、人工血管VEに外力が加わったときに、谷部Vに応力が集中するため、谷部Vを起点として人工血管VEが湾曲しやすくなる。山部Mおよび谷部Vの曲率は、特に限定されない。例えば、山部Mの頂部Mtの曲率半径は、人工血管VEの直径の5~8%(かつ谷部Vの底部Vbの曲率半径よりも大きい)とすることができる。また、谷部Vの底部Vbの曲率半径は、人工血管VEの直径の2~3%(かつ山部M頂部Mtの曲率半径よりも小さい)とすることができる。人工血管VEが湾曲し易くなることで、湾曲した人工血管VEが元に戻りにくくなり、人工血管VEと血管等の接続部位への負荷を軽減することができる。
なお、山部Mの頂部Mtにおける湾曲部と、谷部Vの底部Vbにおける湾曲部とは、平面部PL(図2参照)により接続することができる。これにより、湾曲部同士を直接接続する場合と比べて、より柔軟性と耐キンク性能とを向上させることができる。なお、一方側の平面部PL1と他方側の平面部PL2とのなす角θを20°~40°、好ましくは30°となるようにすることができ、一方側の平面部PL1と他方側の平面部PL2とのなす角θは、人工血管の径、山部の高さ、谷部の高さ、ピッチ等により適宜設定することができる。

Claims (5)

  1. 軸方向に山部と谷部とが交互に形成されている人工血管であって、
    前記人工血管は、前記軸方向に沿って延びる経糸と、前記人工血管の周方向に沿って延びる緯糸とを有し、
    前記経糸は、前記軸方向で隣接する一対の山部の頂部において、前記周方向での位置が揃っており、前記一対の山部の間にある谷部の底部での位置が、前記一対の山部の頂部での位置に対して前記周方向にずれるように、前記人工血管を径方向に見たときに波状に延びている、人工血管。
  2. 前記人工血管は、
    前記経糸と前記緯糸とが平織で織られた第1領域と、
    前記人工血管の一方の面において、前記経糸が複数の緯糸を跨ぐ第2領域側第1部分、および、前記経糸が1本の緯糸を跨いで延びる第2領域側第2部分を有する第2領域と、
    前記人工血管の一方の面において、前記経糸が複数の緯糸を跨ぐ第3領域側第1部分、および、前記経糸が1本の緯糸を跨いで延びる第3領域側第2部分を有する第3領域と
    を、前記緯糸の延在方向で交互に有し、
    前記第2領域側第1部分は、前記緯糸の延在方向で前記第3領域側第2部分に隣接し、前記第2領域側第2部分は、前記緯糸の延在方向で前記第3領域側第1部分に隣接し、
    前記経糸はマルチフィラメント糸によって構成されている、請求項1に記載の人工血管。
  3. 前記第2領域側第1部分と、前記第3領域側第1部分とが、前記経糸の延在方向でジグザグ状に連続して延びるように構成されている、請求項2に記載の人工血管。
  4. 前記山部の頂部における曲率が、前記谷部の底部における曲率よりも小さい、請求項1~3のいずれか1項に記載の人工血管。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の人工血管の製造方法であって、
    前記製造方法は、
    前記経糸および前記緯糸の織構造によって構成された筒状体を用意する工程と、
    前記筒状体を、前記山部および谷部に対応する凸部および凹部を有する成形用心材の外側に配置する工程と、
    前記筒状体が前記成形用心材の外側に配置された状態で、前記成形用心材の前記凹部に沿って、前記筒状体の外側に巻付部材が前記筒状体の周方向の一部に巻き付けられる工程と、
    前記筒状体に前記巻付部材が巻き付けられた状態で、前記筒状体のうち、前記軸方向で前記巻付部材が巻き付けられていない側を、前記巻付部材が巻き付けられている側に対して所定量相対回転させる工程と、
    前記巻付部材によって前記山部と谷部とが形成された前記筒状体を焼成する工程と
    を備えている、人工血管の製造方法。
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