JP2023114383A - 射出成形方法 - Google Patents

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信博 小林
Nobuhiro Kobayashi
桂 辻本
Katsura Tsujimoto
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Abstract

【課題】本発明の目的は、外部からの視認性に優れる穴を有する射出成形品を効率よく製造することができる射出成形方法を提供することにある。【解決手段】本発明の射出成形方法は、金型内にスライドピンを差し込んで射出成形する、成形工程、前記成形工程後に前記スライドピンを抜き取る、抜き取り工程、前記スライドピンで形成された穴の少なくとも一部を塞ぐ、穴塞ぎ工程を含むことを特徴としている。【選択図】図1

Description

本発明は、射出成形方法に関する。
従来、穴が開いた成形品を得る方法としては、成形品を切削加工して穴をあける方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、切削加工で成形品内部に穴をあけると、加工の手間がかかり、さらに切削加工面に細かい凹凸ができて外部からの穴の視認性に劣るという問題があった。
特許第4072682号
従って、本発明の目的は、射出成形品外部からの視認性に優れる穴を有する射出成形品を効率よく製造することができる射出成形方法を提供することにある。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
金型内にスライドピンを差し込んで射出成形する、成形工程、
前記成形工程後に前記スライドピンを抜き取る、抜き取り工程、
前記スライドピンで形成された穴の少なくとも一部を塞ぐ、穴塞ぎ工程
を含むことを特徴とする、射出成形方法。
[2]
前記スライドピンがテーパー状の棒状のピンである、[1]に記載の射出成形方法。
[3]
前記スライドピンのテーパー角度が0.2~12°である、[2]に記載の射出成形方法。
[4]
前記スライドピンの前記金型内部に差し込まれる部分の長さが、前記金型内部形状の前記スライドピンを差し込む方向の長さ100%に対して、25~99%である、[1]~[3]のいずれかに記載の射出成形方法。
[5]
前記抜き取り工程において、前記スライドピンを抜き取るときの金型内部の温度が、射出成形に用いる樹脂のガラス転移点よりも3℃から75℃低い温度である、[1]~[4]のいずれかに記載の射出成形方法。
本発明の射出成形方法は、射出成形品外部からの視認性に優れる穴を有する射出成形品を効率よく製造することができる。
本実施形態の射出成形方法で製造した射出成形品の一例を示す概略図である。 図1のX-X断面図である。 本実施形態の射出成形方法において、穴塞ぎ工程の前の成形品の一例を示す概略断面図である。 本実施形態の射出成形方法で製造した射出成形品を切削加工して作製したオイルゲージの一例を示す概略図である。(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態の射出成形方法は、金型内にスライドピンを差し込んで射出成形する、成形工程、上記成形工程後に上記スライドピンを抜き取る抜き取り工程、上記スライドピンでできた穴の少なくとも一部を塞ぐ、穴塞ぎ工程を含む。
本実施形態の射出成形方法によれば、射出成形品外部からの視認性に優れる穴を有する射出成形品を効率よく製造することができる。特に、強度が高い透明樹脂(例えば、PMMA等)の成形品であっても、切削加工の時間を要さずに、外部からの視認性に優れる穴を容易に製造することができる。
[成形工程]
<樹脂>
上記成形工程では、上記樹脂を含む樹脂組成物を金型に入れることが好ましい。
上記樹脂組成物は、樹脂のみであってもよいし、樹脂に加えて、化合物(D)、その他の成分等を含んでいてもよい。
上記樹脂としては、メタクリル系樹脂、アクリル系ゴム等のゴム質重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂、AS樹脂、BAAS系樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂のアロイ、ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。中でも、透明性、耐熱性、耐候性、外観に優れている観点から、メタクリル系樹脂が好ましい。
なお、以下において、上記樹脂をなす重合体を構成する構成単位のことを、「~単量体単位」、及び/又は複数の該「~単量体単位」を含む「~構造単位」という。
また、かかる「~単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「~単量体」と記載する場合もある。
(メタクリル系樹脂)
上記メタクリル系樹脂は、その組成において特に限定されないが、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50~97質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3~30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0~20質量%とを含むものとしてよい。
-メタクリル酸エステル単量体単位(A)-
上記メタクリル系樹脂を構成するメタクリル酸エステル単量体単位(A)(以下、(A)単量体単位と記載する場合がある。)としては、下記一般式(イ)で示される単量体単位が好適に用いられる。
Figure 2023114383000002
上記一般式(イ)中、Rは、炭素数が1~6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、水酸基で置換されていてもよい。Rは、メチル基であることが好ましい。
は、炭素数が1~12の基、好ましくは炭素数が1~12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、水酸基で置換されていてもよい。Rは、炭素数が1~8の基であることが好ましい。
上記一般式(イ)に示すメタクリル酸エステル単量体単位(A)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(ロ)で示すメタクリル酸エステル単量体を用いることが好ましい。
Figure 2023114383000003
上記一般式(ロ)中、Rは、炭素数が1~6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、水酸基で置換されていてもよい。Rは、メチル基であることが好ましい。
は、炭素数が1~12の基、好ましくは炭素数が1~12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、水酸基で置換されていてもよい。Rは、炭素数が1~8の基であることが好ましい。
メタクリル酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)等が挙げられる。
上記メタクリル酸エステル単量体は、耐熱性や取扱性、光学特性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルが好ましく、入手しやすさ等の観点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記メタクリル酸エステル単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記メタクリル系樹脂のメタクリル酸エステル単量体単位(A)は、後述する主鎖に環構造を有する構造単位(B)により、上記射出成形品に対して耐熱性を十分に付与し、良好な色相を付与する観点から、メタクリル系樹脂中において、50質量%以上97質量%以下含まれることが好ましい。上記含有量は、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量以上%、さらにより好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上である。
また、メタクリル酸エステル単量体単位(A)のメタクリル系樹脂中における含有量は、特に高い耐熱性を付与する必要がある場合、96質量%以下であることが好ましく、より好ましくは95質量%以下である。
-主鎖に環構造を有する構造単位(B)-
上記メタクリル系樹脂を構成する、主鎖に環構造を有する構造単位(B)(以下、(B)構造単位と記載する場合がある。)は、耐熱性の観点から、マレイミド系構造単位(B-1)、グルタル酸無水物系構造単位(B-2)、グルタルイミド系構造単位(B-3)、ラクトン環構造単位(B-4)、及び無水酸化物(B-5)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むことが好ましい。
主鎖に環構造を有する構造単位(B)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
--マレイミド系構造単位(B-1)--
上記メタクリル系樹脂を構成するマレイミド系構造単位(B-1)としては、下記一般式(ハ)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2023114383000004
上記一般式(ハ)中、Rは、水素原子、炭素数が1~12のアルキル基、炭素数が1~12のシクロアルキル基、炭素数が1~12のアルコキシ基、及び炭素数が6~12のアリール基からなる群より選択されるいずれかを表し、当該アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基は、炭素原子上に置換基を有していてもよい。
マレイミド系構造単位(B-1)を形成するための単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マレイミド;N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-アルキル基置換マレイミド;N-フェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-エチルフェニルマレイミド、N-ブチルフェニルマレイミド、N-ジメチルフェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-(o-クロロフェニル)マレイミド、N-(m-クロロフェニル)マレイミド、N-(p-クロロフェニル)マレイミド等のN-アリール基置換マレイミドが挙げられる。
上記マレイミド系構造単位(B-1)を形成するための単量体は、耐熱性付与、耐湿熱性の観点から、好ましくは、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-(o-クロロフェニル)マレイミド、N-(m-クロロフェニル)マレイミド、N-(p-クロロフェニル)マレイミドが挙げられ、入手のしやすさ、耐熱性付与の観点から、より好ましくはN-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドが挙げられ、さらに好ましくはN-フェニルマレイミドが挙げられる。
上述したマレイミド系構造単位(B-1)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
--グルタル酸無水物系構造単位(B-2)--
上記メタクリル系樹脂を構成するグルタル酸無水物系構造単位(B-2)は、メタクリル系樹脂の重合後に形成されてもよい。
(B-2)構造単位としては、下記一般式(ニ)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2023114383000005
上記一般式(ニ)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数が1~6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、水酸基で置換されていてもよい。
上述したグルタル酸無水物系構造単位(B-2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グルタル酸無水物系構造単位(B-2)の形成方法は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(ホ)で表される構造の単量体を、上述したメタクリル酸エステル単量体単位(A)をなす単量体と共重合させた後、触媒の存在/非存在下での加熱処理により環化する方法が挙げられる。
Figure 2023114383000006
上記一般式(ホ)中、Rは、水素原子、炭素数が1~6の置換、又は非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、水酸基で置換されていてもよい。
は、水素原子、又はt-ブチル基を表す。
また、本発明の効果を発揮できる範囲であれば、一般式(ホ)で表される構造の単量体がメタクリル系樹脂中に未反応のまま残っていてもよい。
--グルタルイミド系構造単位(B-3)--
上記メタクリル系樹脂を構成するグルタルイミド系構造単位(B-3)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(B-3)構造単位としては、下記一般式(ヘ)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2023114383000007
上記一般式(ヘ)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数が1~6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、水酸基で置換されていてもよい。
また、Rは、水素原子、炭素数が1~6の置換又は非置換のアルキル基、及び炭素数が6~18の置換又は非置換のアリール基からなる群より選択されるいずれかを表す。
特に好適には、R、R、及びRは、いずれもメチル基である。
上述したグルタルイミド系構造単位(B-3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グルタルイミド系構造単位(B-3)の含有量は、特に限定されず、耐熱性や成形加工性、光学特性等を考慮して、適宜決定することができる。
グルタルイミド系構造単位(B-3)の含有量は、メタクリル系樹脂を100質量%として、1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは3~30質量%であり、さらに好ましくは3~20質量%である。
なお、グルタルイミド系構造単位(B-3)の含有量は、例えば、国際公開第2015/098096号の[0136]~[0137]に記載の方法で、算出することができる。
グルタルイミド系構造単位(B-3)を含む樹脂の酸価は、樹脂の物性、成形加工性、色調等のバランスを考慮すると、0.50mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.45mmol/g以下である。
なお、酸価は、例えば、特開2005-23272号公報に記載の滴定法等により算出することができる。
グルタルイミド系構造単位(B-3)は、メタクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸を共重合させた後、高温下で、アンモニアやアミンを、尿素又は非置換尿素反応させる方法、メタクリル酸メチル-メタクリル酸-スチレン共重合体又はメタクリル酸メチル-スチレン共重合体とアンモニア又はアミンとを反応させる方法、ポリメタクリル酸無水物とアンモニア又はアミンとを反応させる方法等の公知の方法によって得ることができる。
具体的には、アールエムコプチック(R.M.Kopchik)の米国特許第4,246,374号明細書に記載された方法等挙げられる。
また、無水マレイン酸等の酸無水物、当該酸無水物と炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のアルコールとのハーフエステル、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸をイミド化することによっても、上記グルタルイミド系構造単位(B-3)を形成することができる。
さらに、他の好ましいグルタルイミド系構造単位(B-3)の形成方法としては、(メタ)アクリル酸エステル、及び必要に応じて芳香族ビニル単量体やその他のビニル単量体を重合させた後、イミド化反応を行い、グルタルイミド系構造単位(B-3)を含む樹脂を得る方法も挙げられる。
イミド化反応の工程においては、イミド化剤を用いて行ってよく、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。
ここで、イミド化剤としては、アンモニア又は一級アミンを用いることができる。一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、シクロヘキシルアミン等を好適に用いることができる。
イミド化反応を実施する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、押出機、又は横型二軸反応装置、バッチ式反応槽を用いる方法が挙げられる。押出機としては、特に限定されず、単軸押出機、二軸押出機又は多軸押出機を好適に用いることができる。より好適には、二軸押出機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いることができる。
また、上記グルタルイミド系構造単位(B-3)を含むメタクリル系樹脂を製造するにあたっては、イミド化反応の工程に加えて、エステル化剤で処理するエステル化工程を含むことができる。
エステル化工程を含めることによって、イミド化工程中に副生した、メタクリル系樹脂中に含まれるカルボキシル基をエステル基に変換することができ、樹脂の酸価を所望の範囲に調整することができる。
ここで、エステル化剤としては、本願の効果を発揮できる範囲であれば特に制限はされないが、好適にはジメチルカーボネート、トリメチルアセテートを使用することができる。エステル化剤の使用量は、特に制限されないが、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0~12質量部であることが好ましい。
また、エステル化剤に加えて、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンを、触媒として併用することもできる。
--ラクトン環構造単位(B-4)--
上記メタクリル系樹脂を構成するラクトン環構造単位(B-4)は、メタクリル系樹脂の重合後に形成されてもよい。
(B-4)構造単位としては、下記一般式(ト)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2023114383000008
上記一般式(ト)中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~20の有機基を表す。なお、当該有機基は、酸素原子を含んでいてもよい。
上述したラクトン環構造単位(B-4)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラクトン環構造単位(B-4)を含有する重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、側鎖に水酸基を有する単量体、具体的には下記一般式(チ)で表される構造の単量体(2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル等)と、上述したメタクリル酸エステル系単量体(A)等のエステル基を有する単量体とを共重合した後に、得られた共重合体を、所定の触媒の存在/非存在下で加熱処理し、ラクトン環構造を重合体に導入することにより製造する方法が挙げられる。
Figure 2023114383000009
上記一般式(チ)中、Rは、水素原子、又は炭素数が1~6の置換又は非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、水酸基で置換されていてもよい。
は、炭素数が1~12の基、好ましくは炭素数が1~12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、水酸基で置換されていてもよい。
特に好適には、Rは、水素原子であり、Rは、メチル基である。
また、本発明の効果を発揮できる範囲であれば、一般式(チ)で表される構造の単量体がメタクリル系樹脂中に未反応のまま残っていてもよい。
--酸無水物構造単位(B-5)--
上記メタクリル系樹脂を構成する酸無水物構造単位(B-5)は、例えば、無水マレイン酸等の酸無水物、当該酸無水物と炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のアルコールとのハーフエステル、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸等を好適に用いて形成することができる。
上述したメタクリル系樹脂に含まれる主鎖に環構造を有する構造単位(B)としては、熱安定性、成形加工性から、マレイミド系構造単位(B-1)及びグルタルイミド系構造単位(B-3)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むことが好ましく、マレイミド系構造単位(B-1)を含むことがより好ましい。
マレイミド系構造単位(B-1)の中でも、入手のしやすさを考慮すると、N-シクロヘキシルマレイミド系の構造単位及び/又はN-アリール置換マレイミド系の構造単位が好ましく、成形品の色相の観点から、N-シクロヘキシルマレイミド系の構造単位がより好ましい。
メタクリル系樹脂中における上記主鎖に環構造を有する構造単位(B)の含有量は、耐熱性及び熱安定性付与の観点から、3質量%以上が好ましく、より好ましくは4質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。
また、成形品として必要な強度、流動性をバランスよく保持する観点から、メタクリル系樹脂中における上記主鎖に環構造を有する構造単位(B)の含有量は、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは14質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下である。
特に、主鎖に環構造を有する構造単位(B)としてマレイミド系構造単位(B-1)を使用する場合、マレイミド系構造単位(B-1)の含有量は、耐熱性及び熱安定性の観点から、メタクリル酸エステル単量体単位(A)と主鎖に環構造を有する構造単位(B)との合計量を100質量%とした場合に、50質量%未満が好ましく、より好ましくは40質量%未満、さらに好ましくは35質量%未満、さらにより好ましくは1~30質量%、よりさらに好ましくは2~20質量%である。
-メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)-
上記メタクリル系樹脂において、耐候性、流動性、耐薬品性及び熱安定性等において、より優れる樹脂を得ることや、他の特性を付与する観点から、その他のビニル系単量体単位を共重合させることが好ましい。
例えば、アクリル酸エステル単量体単位(C-1)、シアン化ビニル系単量体単位(C-2)等が挙げられる。
--アクリル酸エステル単量体単位(C-1)--
上記メタクリル系樹脂を構成するアクリル酸エステル単量体単位(C-1)を形成するために用いる単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(リ)で表されるアクリル酸エステル単量体が好ましい。
Figure 2023114383000010
上記一般式(リ)中、Rは、水素原子、又は炭素数が1~12のアルコキシ基を表し、Rは、炭素数が1~18のアルキル基、炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアリール基を表す。
上記アクリル酸エステル単量体単位(C-1)を形成するための単量体としては、耐候性、耐熱性、流動性、熱安定性を高める観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル等が好ましく、より好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルであり、入手しやすさの観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがさらに好ましい。
アクリル酸エステル単量体単位(C-1)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル酸エステル単量体単位(C-1)を使用する場合の含有量は、耐熱性及び熱安定性の観点から、(A)単量体単位と(B)構造単位との合計量を100質量%とした場合に、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
--シアン化ビニル系単量体単位(C-2)--
上記メタクリル系樹脂において、(C)単量体単位としては、入手が容易であり、耐薬品性に一層優れる樹脂が得られる観点から、シアン化ビニル系単量体単位(C-2)が好ましい。
上記メタクリル系樹脂を構成するシアン化ビニル系単量体単位(C-2)を形成するために用いる単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられ、中でも、入手のしやすさ、耐薬品性付与の観点から、アクリロニトリルが好ましい。
シアン化ビニル系単量体単位(C-2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シアン化ビニル系単量体単位(C-2)を使用する場合の含有量は、耐溶剤性、耐熱性保持の観点から、(A)単量体単位と(B)構造単位との合計量を100質量%とした場合に、15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
--(C-1)~(C-2)以外の単量体単位(C-3)--
上記メタクリル系樹脂を構成する(C-1)~(C-2)以外の単量体単位(C-3)を形成するために用いる単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
上述した(C)単量体単位を構成するために用いる単量体の中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種が、入手のしやすさの観点から好ましい。また、長さ100mm以上の長光路での透過率、色相を保持する観点から、(C)アクリル酸メチルが好ましい。
メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)の含有量は、(B)構造単位による耐熱性付与の効果を高める観点から、メタクリル系樹脂を100質量%として、0~20質量%が好ましく、より好ましくは0~18質量%、さらに好ましくは0~15質量%である。
特に、(C)単量体単位としてスチレン単量体単位を使用する場合は、スチレン単量体単位の含有量は、耐候性向上の観点から、メタクリル系樹脂を100質量%として、0~6質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0~5質量%、さらに好ましくは0~3質量%以下である。
特に、(C)単量体単位として反応性二重結合を複数有する架橋性の多官能(メタ)アクリレートを使用する場合は、(C)単量体単位の含有量は、流動性の観点から、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3%質量以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
(化合物(D))
上記メタクリル系樹脂組成物に含まれ得る化合物(D)は、下記一般式(1)又は(2)で表される。
Figure 2023114383000011
ここで、Rは、水素原子、炭素数が1~12の脂肪族炭化水素基又は炭素数が1~12の芳香族炭化水素基を表す。Rの脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、それぞれ炭素原子上に硫黄原子、窒素原子、酸素原子、リン原子を有していてもよい。
また、R’は、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す。R’の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、それぞれ炭素原子上に硫黄原子、窒素原子、酸素原子、リン原子を有していてもよい。
Figure 2023114383000012
ここで、R、R’、R’’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~12の脂肪族炭化水素基又は炭素数が1~12の芳香族炭化水素基を表す。R、R’、R’’の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、それぞれ炭素原子上に硫黄原子、窒素原子、酸素原子、リン原子を有していてもよい。また、R’、R’’は、互いに結合して環を形成していてもよい。
長期滞留時のYI値の変化度を抑制する観点から、(D)化合物は、上記式(1)のスクシンイミド骨格を有していることが好ましく、上記式(1)においてRが水素原子である3-ヒドロキシスクシンイミド骨格を有することがより好ましい。
高温下で繰り返し長時間さらされた場合の成形時のYI値の変化度を小さく抑える観点から、化合物(D)の含有量は、メタクリル系樹脂100質量部に対して0.001質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上、さらにより好ましくは0.015質量部以上、よりさらに好ましくは0.02質量部以上、特に好ましくは0.03質量部以上である。
また、長光路での高い透過率及び、高い白度を保持する観点から、0.2質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.12質量%以下、さらにより好ましくは0.11質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。
化合物(D)を一定量含有することで、メタクリル系樹脂を高温環境下に置いた際に熱分解が抑制され、長光路での黄変性の低減化、透過率安定性向上の効果が得られる。
上記メタクリル系樹脂組成物中における、化合物(D)と主鎖に環構造を有する構造単位(B)との質量比は、連続成形時のYIの安定性や、長光路での黄変性の低減化、透過率安定性向上の効果を得る観点、成形加工時のシルバーストリークス等の低減効果の観点から、25≦(B)/(D)≦1000の範囲であることが好ましい。
メタクリル系樹脂組成物の3mmから220mmでの厚みの黄変度依存性、すなわち、3mmから220mmの間での所定の厚さの成形片におけるYI値を測定した際の、各厚み間のYI値の変化値を低減する観点から、上記(B)/(D)は、800以下であることが好ましく、より好ましくは700以下、さらに好ましくは600以下、さらにより好ましくは500以下である。また、上記(B)/(D)は、メタクリル系樹脂組成物の耐熱性の観点から、30以上であることが好ましく、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上である。
以下、メタクリル系樹脂の特性について記載する。
-重量平均分子量、分子量分布-
上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、機械的強度、耐溶剤性、流動性に一層優れるメタクリル系樹脂が得られる観点から、6.5万~30万である。
メタクリル系樹脂の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、射出成形品は、シャルピー衝撃強さ等の機械的強度及び流動性に優れたものとなる。
上記重量平均分子量は、機械的強度保持の観点から、好ましくは6.5万以上、より好ましくは7万以上、さらに好ましくは8万以上、よりさらに好ましくは10万以上である。
また、重量平均分子量は、成形加工時の流動性確保、成形時の歪低減、長光路透過率付与の観点から、25万以下とすることが好ましく、より好ましくは20万以下、さらに好ましくは15万以下、さらにより好ましくは13万以下、よりさらに好ましくは12万以下である。
また、メタクリル系樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、流動性と機械強度、耐溶剤性のバランスの観点から、1.5~5であることが好ましい。より好ましくは1.5~4.5、さらに好ましくは1.6~4、さらにより好ましくは1.6~3、よりさらに好ましくは1.6~2.5である。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。詳細には、予め単分散の重量平均分子量、数平均分子量及びピーク分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムとを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。次に、得られた検量線から、測定対象であるメタクリル系樹脂の試料の重量平均分子量及び数平均分子量を求めることができる。
具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
-メタクリル系樹脂の製造方法-
上記メタクリル系樹脂の製造方法は、前述のメタクリル系樹脂が得られる限り、特に限定されるものではない。
上記メタクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体単位(A)、主鎖に環構造を有する構造単位(B)、及び、必要に応じて、上述したメタクリル酸エステル単量体に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)を形成するための各単量体を用い、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法により製造できる。
好ましくは塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法が用いられ、より好ましくは溶液重合法、懸濁重合法であり、さらに好ましくは懸濁重合法が用いられる。
また、メタクリル系樹脂の製造は、連続式としてもよいし、バッチ式としてもよい。
メタクリル系樹脂の製造方法では、ラジカル重合により単量体を重合することが好ましい。
メタクリル系樹脂の重合反応においては、重合開始剤を用いてもよい。
重合開始剤は、重合温度で分解し活性ラジカルを発生するものであればよいが、滞留時間の範囲内で必要な重合転化率を達成することが必要であり、重合温度における半減期が0.6~60分、好ましくは1~30分を満足するような重合開始剤が選択される。但し、重合温度における半減期が60分を超える重合開始剤に関しても、所定量を一括もしくは10分程の時間で投入することで、適した活性ラジカル量を発生する重合開始剤として使用することができる。その場合に必要な重合転化率を達成するためには、重合温度における半減期が60~1800分、好ましくは260~900分を満足するような重合開始剤が選択される。
好適に使用される重合開始剤は、重合温度、重合時間を鑑みて適宜選択することができ、例えば、日本油脂(株)「有機過酸化物」資料第13版、アトケム吉富(株)技術資料及び和光純薬工業(株)「Azo Polymerization Initiators」等に記載の開始剤を好適に使用することができ、上記半減期は、記載の諸定数等により容易に求めることができる。
上記重合開始剤としては、ラジカル重合を行う場合は、以下に限定されるものではないが、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(例えば、パーヘキサ(登録商標)C)、アセチルパーオキサイド、カプリエルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシビパレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、iso-プロピルパーオキシジカーボネート、iso-ブチルパーオキシジカーボネート、sec-ブチルパーオキシジカーボネート、n-ブチルパーオキシジカーボネート、2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシエチルヘキサノエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(例えば、パーヘキサ(登録商標)25B)、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-イソノナエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリン酸等のアゾ系化合物等の、一般的なラジカル重合開始剤を挙げることができる。
上述したラジカル重合開始剤は、適当な還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらの重合開始剤は、1種単独で用いることができ、2種以上組み合わせて用いることもできる。
重合開始剤は、重合反応器で所望の重合率を得るために必要な量を添加すればよい。
重合反応においては重合開始剤の供給量を増やすことで重合度を上げることができるが、多量の重合開始剤を使用することで全体の分子量が低下する傾向にあり、重合時の発熱量が増大するため、過熱により重合安定性が低下する場合もある。
重合開始剤は、所望の分子量を得やすくし、重合安定性を確保する観点から、使用する全単量体の総量100質量部に対して、0~1質量部の範囲で用いることが好ましく、より好ましくは0.001~0.8質量部であり、さらに好ましくは0.01~0.5質量部である。
重合開始剤の添加量は、重合を行う温度及び開始剤の半減期も考慮して、適宜選ぶことができる。
メタクリル系樹脂の重合反応においては、任意選択的に分子量調整剤としては、連鎖移動剤やイニファータ等を用いることができる。
メタクリル系樹脂の製造工程においては、本発明の目的を損なわない範囲で、製造する重合体の分子量の制御を行うことができる。
連鎖移動剤及びイニファータとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤;ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いることによって分子量の制御を行うことができ、さらには、これらの連鎖移動剤やイニファータの添加量を調整することにより、分子量を制御することができる。
これらの連鎖移動剤やイニファータを用いる場合、取扱性や安定性の点から、アルキルメルカプタン類が好適に用いられ、以下に限定されるものではないが、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
これら分子量調整剤は、要求される分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には使用する全単量体の総量100質量部に対して、0.001~3質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては、重合方法を変える方法、重合開始剤の量を調整する方法、重合温度を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、1種の方法だけを単独で用いてもよいし、2種以上の方法を併用してもよい。
上記メタクリル系樹脂においては、分子量を調整する他、ポリマーの熱安定性を向上させる目的で、連鎖移動剤(分子量調整剤)を使用してもよく、使用に供される連鎖移動剤としては、本発明の効果を発揮できるものであれば、その種類及び使用方法は限定されるものではない。
--懸濁重合法による製造方法--
メタクリル系樹脂を、有機懸濁重合法や無機懸濁重合法等の懸濁重合で製造する場合には、後述する攪拌装置を用い、重合工程、洗浄工程、脱水工程、乾燥工程を経て、粒子状のメタクリル系樹脂を製造する。
通常、水を媒体として用いる水系の懸濁重合法が好適に用いられる。
---重合工程---
重合工程においては、所定の攪拌装置を用い、当該攪拌装置中に適宜原料となる単量体、懸濁剤、必要に応じて重合開始剤、その他の添加剤を供給して重合を行い、メタクリル系樹脂のスラリーを得る。
懸濁重合法によりメタクリル系樹脂を得るための重合工程で使用する撹拌装置としては、内部に傾斜パドル翼、平パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、ファウドラー翼(後退翼)、タービン翼、ブルマージン翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、リボン翼、スーパーミックス翼、インターミグ翼、特殊翼、軸流翼等の撹拌翼を有する撹拌装置、内部にショベル羽根を有する撹拌装置、内部にチョッパー羽根を有する撹拌装置、内部に円盤型、切欠円盤型あるいはスクリュー型等の回転ディスクを有する撹拌装置等の公知の撹拌装置が挙げられる。
重合時の攪拌速度は、用いる攪拌装置の種類、攪拌翼の攪拌効率、重合槽の容量等にも依存するが、適当な粒子径を得ることができること、粒子径が0.15mm未満の成分含有量を低減することができること、重合安定性等を考慮すると、1~500回転/分程度であることが好ましい。
メタクリル系樹脂の原料混合物を添加する際の温度は、本発明の効果が発揮できる範囲であればよく、0℃以上で、使用する原料の沸点以下であることが好ましい。高温であると、添加時に原料が揮散しやすくなることから、得られるメタクリル系樹脂を構成する共重合体の組成が変わってしまい、0℃未満の低温であると原料添加後の昇温に時間がかかるため、ある程度の温度で原料混合物の添加を行うことが好ましい。具体的には、0℃以上85℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以上85℃以下、さらに好ましくは30℃以上85℃以下、さらにより好ましくは50℃以上80℃以下であり、よりさらに好ましくは60℃以上80℃以下である。
懸濁重合工程における温度は、生産性、凝集体の生成量を考慮すると、40℃以上90℃以下であることが好ましい。より好ましくは50℃以上85℃以下であり、さらに好ましくは60℃以上85℃以下、さらにより好ましくは65℃以上83℃以下である。
懸濁重合における重合時間は、重合時の発熱を効果的に抑制し、かつ、後述する凝集体発生の低減、残存モノマーの低減の観点から、好ましくは20分以上240分以下である。より好ましくは30分以上210分以下、さらに好ましくは45分以上180分以下、さらにより好ましくは60分以上180分以下、よりさらに好ましくは90分以上150分以下である。
また、残存モノマーの低減化の観点から、重合工程後に、重合温度よりも高い温度に昇温し、一定時間保持することが好ましい。
保持する際の温度は、重合度を上げることができることから、重合温度より高い温度であることが好ましく、より高い温度とする場合は、重合温度より5℃以上昇温することが好ましい。
昇温する場合は、得られる重合体の凝集を防ぐ観点から得られるメタクリル系樹脂のガラス転移温度以下であることが好ましい。
具体的には120℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以上100℃以下、さらに好ましくは85℃以上100℃以下、さらにより好ましくは88℃以上100℃以下、よりさらに好ましくは90℃以上100℃以下である。
上述した重合温度と保持時間に従い重合を行うことにより、後述する乾燥工程を経た後、安息角の小さいポリマー粒子が生成できる。
昇温後に当該温度に保持する時間は、残存モノマーの低減効果を考慮すると、15分以上360分以下であることが好ましく、より好ましくは30分以上240分以下、さらに好ましくは30分以上180分以下、さらにより好ましくは30分以上150分以下、よりさらに好ましくは30分以上120分以下である。
また、残存モノマーを低減する目的で、重合安定性に影響を与えない範囲で、重合時に有機溶媒を使用することができる。好適に使用できる有機溶媒としては、得られる樹脂が溶解しうる溶剤であればよく、好適にはキシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤を用いることができる。
使用する際の使用量は使用するモノマー総量を100質量部とした場合に、15質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下、さらにより好ましくは6質量部以下である。
---洗浄工程---
上述の重合工程を経て得られたメタクリル系樹脂のスラリーは、懸濁剤除去のために、酸洗浄や水洗、アルカリ洗浄等の操作を行うことが好ましい。
これらの洗浄操作を行う回数は、作業効率と懸濁剤の除去効率から最適な回数を選べばよく、一回でも複数回繰り返してもよい。
洗浄を行う際の温度は懸濁剤の除去効率や得られる共重合体の着色度合等を考慮して最適な温度を選べばよく、20~100℃であることが好ましい。より好ましくは30~95℃、さらに好ましくは40~95℃である。
また、洗浄時の一回あたりの洗浄時間は、洗浄効率や安息角低減効果、工程の簡便さの観点から10~180分であることが好ましく、より好ましくは20~150分である。
洗浄時に使用する洗浄液のpHは、懸濁剤除去が可能な範囲であればよいが、好ましくはpH1~12である。
酸洗浄を行う場合のpHは、懸濁剤の除去効率や、得られる共重合体の色調の観点からpH1~5であることが好ましく、より好ましくはpH1.2~4である。
その際使用する酸としては、懸濁剤除去が可能なものであればよく、特に規定はされないが、従来公知の無機酸、有機酸を使用することができる。
好適に使用される酸としては、無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、硼酸等が挙げられ、それぞれ水等で希釈された希釈溶液で使用してもよい。有機酸としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、チオール基、エノールを有するものが挙げられる。
懸濁剤の除去効果や得られる樹脂の色調を考慮すると、より好ましくは硝酸、硫酸、カルボキシル基を有する有機酸である。
上記酸洗浄後には、得られる重合体の色調、安息角低減の観点から、更に水洗やアルカリ洗浄を行うことが好ましい。
アルカリ洗浄を行う場合のアルカリ溶液のpHはpH7.1~12であることが好ましく、より好ましくはpH7.5~11、さらに好ましくは7.5~10.5である。アルカリ洗浄に使用するアルカリ性成分は、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が好適に用いられる。より好適にはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物であり、さらに好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムであり、さらにより好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムであり、よりさらに好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。これらのアルカリ性成分は、水等で希釈してpHを調整して使用することができる。
---脱水工程---
得られたメタクリル系樹脂の重合体スラリーから脱水し、重合体粒子を分離する方法としては、従来公知の方法を適用できる。
例えば、遠心力を利用して水を振り切る遠心分離機を用いる脱水方法、多孔ベルト上や濾過膜上で水を吸引除去し、重合体粒子を分離する方法等が挙げられる。
---乾燥工程---
上述した脱水工程を経て得られた含水状態のメタクリル系樹脂の重合体は、公知の方法により乾燥処理を施し、回収することができる。
例えば、熱風機やブローヒーター等から槽内に熱風を送ることにより乾燥を行う熱風乾燥、系内を減圧した上で必要に応じて加温することで乾燥を行う真空乾燥、得られた重合体を容器中で回転させることにより水分を飛ばすバレル乾燥、遠心力を利用して乾燥させるスピン乾燥等が挙げられる。
これらの方法は単独で用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
得られるメタクリル系樹脂の含有水分量は、得られるメタクリル系樹脂の取扱性、色調等を考慮すると、0.01質量%~1質量%が好ましく、より好ましくは0.05質量%~1質量%、さらに好ましくは0.1質量%~1質量%、さらにより好ましくは0.27質量%~1質量%である。
得られる樹脂の含有水分量は、カールフィッシャー法を用いて測定することができる。
上述した懸濁重合法を用いてメタクリル系樹脂を製造する場合、得られるメタクリル系樹脂は、通常、略球状であるが、一部凝集体が形成される場合がある。
凝集体とは、得られた重合体を1.68mmメッシュの篩に通した時に、篩の上に残る残渣物のことを指す。
凝集体がメタクリル系樹脂中に残っている場合、得られるメタクリル系樹脂の色調が低下する傾向にある。かかる観点から、メタクリル系樹脂中の凝集体の量は、1.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以下である。
凝集体の含有量は、1.68mmメッシュの篩に通して篩上に残ったものを80℃の乾燥オーブンで12時間乾燥させた後の重量を測定し、得られた質量を原料の合計量で除して凝集物生成量(質量%)を算出することができる。
上述した懸濁重合法を用いて得られたメタクリル系樹脂の平均粒子径は、成形や押出時の作業性等を考慮すると、0.1mm以上であることが好ましく、成形して得られる成形片の色調も考慮すると、より好ましくは0.1mm以上1mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以上0.5mm以下、さらにより好ましくは0.1mm以上0.4mm以下である。
平均粒子径は、例えば、JIS-Z8801に基づく、篩(東京スクリーン製JTS-200-45-44(目開き500μm),34(目開き425μm),35(目開き355μm),36(目開き300μm),37(目開き250μm),38(目開き150μm),61(受け皿))を用いて篩い分け試験機TSK B-1を用いて振動力MAXにて10分間篩いを行ったときの各篩に残った粒子質量を測定し、質量が50%になるときの粒子径を求めることにより測定できる。
--溶液重合法による製造方法--
以下、メタクリル系樹脂の好適な製造方法として、例えば特2017-125185号に記載の溶液重合法も挙げることができる。
(その他の成分)
-その他の樹脂-
上記メタクリル系樹脂組成物は、公知のその他の樹脂を組み合わせて含有してもよい。
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂が挙げられ、当該熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル系ゴム等のゴム質重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂、AS樹脂、BAAS系樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂のアロイ、ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性向上の観点から好ましく、アクリル系ゴム質重合体、ABS樹脂、MBS樹脂は、耐衝撃性向上の観点から好ましく、また、ポリエステル樹脂は、耐薬品性向上の観点から好ましい。
ポリカーボネート系樹脂は、耐熱性付与、耐衝撃性付与や光学特性の調整が必要な場合に好ましい。さらに、アクリル系樹脂は、前述のメタクリル系樹脂との相溶性が良好であり、透明性を保持したままで、流動性、耐衝撃性等の特性を調整する場合に好ましい。
上記各種熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いても、2種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
上記メタクリル系樹脂組成物において、上述したメタクリル系樹脂と、上記その他の樹脂とを組み合わせる場合、特に限定されないが、特性を付与する効果を考慮して、その他の樹脂の配合割合は、前述のメタクリル系樹脂とその他の樹脂との合計量100質量%に対して、その他の樹脂として汎用アクリル系樹脂を配合する場合は、95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは75質量%以下である。
また、その他の樹脂としてアクリル系樹脂以外の樹脂を配合する場合は、前述のメタクリル系樹脂とその他の樹脂との合計量100質量%に対して、50質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは45質量%であり、さらに好ましくは40質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下である。
また、その他の樹脂を配合するときの特性付与効果を考慮すると、その他の樹脂を配合する場合の配合量の下限値としては0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上、よりさらに好ましくは5質量%以上である。
その他の樹脂の種類や含有量は、その他の樹脂と組み合わせて使用する場合に期待される効果に応じて適宜選択することができる。
-添加剤-
上記メタクリル系樹脂組成物においては、任意選択的にその他の添加剤を配合してもよい。添加剤は、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されることなく、目的に応じて、適宜選択されてよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤;可塑剤(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル);難燃剤(例えば、有機リン化合物、赤リン、無機系リン酸塩等のリン系、ハロゲン系、シリカ系、シリコーン系等);難燃助剤(例えば、酸化アンチモン類、金属酸化物、金属水酸化物等);硬化剤(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、m-キシレンジアミン、m-フェヒレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド等のアミン類や、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂類、液状ポリメルカプタン、ポリサルファイド等のポリメルカプタン、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ドデシル無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水クロレンディック酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)等の酸無水物等);硬化促進剤(2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、ベンジルジメチルアミン、2-ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール、テトラメチルヘキサンジアミン等の三級アミン類、トリフェニルホスファインテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアミンテトラフェニルボレート等のボロン塩、1,4-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン等のキノイド化合物等);帯電防止剤(例えば、ポリアミドエラストマー、四級アンモニウム塩系、ピリジン誘導体、脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩共重合体、硫酸エステル塩、多価アルコール部分エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリアルキレングリコール誘導体、ベタイン系、イミダゾリン誘導体等);導電性付与剤;応力緩和剤;離型剤(アルコール、及びアルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、シリコーンオイル等);結晶化促進剤;加水分解抑制剤;潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸、及びその金属塩、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド類等);衝撃付与剤;摺動性改良剤(低分子量ポリエチレン等の炭化水素系、高級アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル、脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル又は部分エステル、脂肪酸とポリグリコールとのフルエステル又は部分エステル、シリコーン系、フッ素樹脂系等);相溶化剤;核剤;フィラー等の強化剤;流動調整剤;染料(ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料等の染料);増感剤;着色剤(酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料等の無機顔料、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタリシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等の有機系顔料、リン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属メッキやスパッタリングで被覆したもの等のメタリック顔料等);増粘剤;沈降防止剤;タレ防止剤;充填剤(ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤、さらにはガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等);消泡剤(シリコーン系消泡剤、界面活性剤やポリエーテル、高級アルコール等の有機系消泡剤等);カップリング剤;光拡散性微粒子;防錆剤;抗菌・防カビ剤;防汚剤;導電性高分子等が挙げられる。
--光安定剤--
上記メタクリル系樹脂組成物には、耐候性をより良好なものとするために光安定剤を添加してもよい。
光安定剤としては好適にはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を添加することができる。
好適に使用される光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、{1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレート、等が挙げられる。
また、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]]、ポリ[{6-(1,1,3-トリメチルペンチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジル)イミノ}オクタメチレン{(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジル)イミノ}]、ポリ[(6-モルフォリノ-S-トリアジン-2,4-ジ)[1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル]イミノ]-ヘキサメチレン[(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジル)イミノ}]、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ジブチルアミン1,3,5-トリアジンとN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。
中でも光安定剤の熱安定性の観点から、環構造を3つ以上含んでいるビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ジブチルアミン1,3,5-トリアジンとN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノール等が好適に使用される。
--熱安定剤--
上記熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(b-1)リン系酸化防止剤、(b-2)硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
上記メタクリル系樹脂組成物は、溶融押出や、射出成形、フィルム成形用途等、様々な用途で好適に使用される。加工の際に受ける熱履歴は加工方法により異なるが、押出機のように数十秒程度から、肉厚品の成形加工やシート成形のように数十分~数時間の熱履歴を受けるものまで様々である。
長時間の熱履歴を受ける場合、所望の熱安定性を得るために、熱安定剤量添加量を増やす必要がある。熱安定剤のブリードアウト抑制やフィルム製膜時のフィルムのロールへの貼りつき防止の観点から、複数種の熱安定剤を併用することが好ましく、例えば、(b-1)リン系酸化防止剤及び(b-2)硫黄系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種と(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
これらの酸化防止剤は、1種又は2種以上を併用してしてもよい。
上記熱安定剤としては、空気中における熱安定性に一層優れる観点から、(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と(b-2)硫黄系酸化防止剤とを用いた二元系、又は(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と(b-1)リン系酸化防止剤とを用いた二元系が好ましく、特に短期及び長期にわたって空気中における熱安定性に優れる観点から、(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と(b-1)リン系酸化防止剤と(b-2)硫黄系酸化防止剤との3種を用いた三元系がより好ましい。
熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル等が挙げられる。
特に、ペンタエリスリトールテラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルが好ましい。
また、上記熱安定剤としての(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、市販のフェノール系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イルガノックス1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製)、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF社製)、イルガノックス1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、BASF社製)、イルガノックス3114(Irganox3114:1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF社製)、イルガノックス3125(Irganox 3125、BASF社製)、アデカスタブAO-60(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ADEKA社製)、アデカスタブAO-80(3、9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルキシオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ADEKA社製)、スミライザーBHT(Sumilizer BHT、住友化学製)、シアノックス1790(Cyanox 1790、サイテック製)、スミライザーGA-80(Sumilizer GA-80、住友化学製)、スミライザーGS(Sumilizer GS:アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル、住友化学製)、スミライザーGM(Sumilizer GM:アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル、住友化学製)、ビタミンE(エーザイ製)等が挙げられる。
これらの市販のヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果の観点から、イルガノックス1010、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-80、イルガノックス1076、スミライザーGS等が好ましい。
これらは1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
また、上記熱安定剤としての(b-1)リン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、テトラキス(2,4-t-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ジ-t-ブチル-m-クレジル-ホスフォナイト、4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)-6-イルオキシ]プロピル]-2-メチル-6-tert-ブチルフェノール等が挙げられる。
さらに、リン系酸化防止剤として市販のリン系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のリン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イルガフォス168(Irgafos 168:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、BASF製)、イルガフォス12(Irgafos 12:トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、BASF製)、イルガフォス38(Irgafos 38:ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、BASF製)、アデカスタブ329K(ADK STAB-329K、ADEKA製)、アデカスタブPEP-36(ADK STAB PEP-36、ADEKA製)、アデカスタブPEP-36A(ADK STAB PEP-36A、ADEKA製)、アデカスタブPEP-8(ADK STAB PEP-8、ADEKA製)、アデカスタブHP-10(ADK STAB HP-10、ADEKA製)、アデカスタブ2112(ADK STAB 2112、ADEKA社製)、アデカスタブ1178(ADKA STAB 1178、ADEKA製)、アデカスタブ1500(ADK STAB 1500、ADEKA製)Sandstab P-EPQ(クラリアント製)、ウェストン618(Weston 618、GE製)、ウェストン619G(Weston 619G、GE製)、ウルトラノックス626(Ultranox 626、GE製)、スミライザーGP(Sumilizer GP:4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)-6-イルオキシ]プロピル]-2-メチル-6-tert-ブチルフェノール、住友化学製)、HCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、三光株式会社製)等が挙げられる。
これらの市販のリン系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点から、イルガフォス168、アデカスタブPEP-36、アデカスタブPEP-36A、アデカスタブHP-10、アデカスタブ1178が好ましく、アデカスタブPEP-36A、アデカスタブPEP-36が特に好ましい。
これらのリン系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、上記熱安定剤としての(b-2)硫黄系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2、4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(イルガノックス1726、BASF社製)、イルガノックス1520L、BASF社製)、2,2-ビス{〔3-(ドデシルチオ)-1-オキソポロポキシ〕メチル}プロパン-1,3-ジイルビス〔3-ドデシルチオ〕プロピオネート〕(アデカスタブAO-412S、ADEKA社製)、2,2-ビス{〔3-(ドデシルチオ)-1-オキソポロポキシ〕メチル}プロパン-1,3-ジイルビス〔3-ドデシルチオ〕プロピオネート〕(ケミノックスPLS、ケミプロ化成株式会社製)、ジ(トリデシル)3,3’-チオジプロピオネート(AO-503、ADEKA社製)等が挙げられる。
これらの市販の硫黄酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点、取り扱い性の観点から、アデカスタブAO-412S、ケミノックスPLSが好ましい。
これらの硫黄系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱安定剤の含有量は、熱安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、さらにより好ましくは0.8質量部以下であり、よりさらに好ましくは0.01~0.8質量部、特に好ましくは0.01~0.5質量部である。
また、メタクリル系樹脂の熱分解を抑制して、得られる成形品の色調悪化を抑制し、熱安定剤の揮散を抑制して成形加工時のシルバーストリークスの発生を抑制する観点から、上記メタクリル系樹脂100質量部に対して、(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01~2質量部(好ましくは0.02~1質量部)含み、かつ(b-1)リン系酸化防止剤及び(b-2)硫黄系酸化防止剤を合計で0.01~2質量部(好ましくは0.01~1質量部)を含むことが好ましい。また、同様の観点から、上記メタクリル系樹脂100質量部に対して、(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01~2質量部(好ましくは0.02~1質量部)含み、かつ(b-1)リン系酸化防止剤及び/又は(b-2)硫黄系酸化防止剤を合計で0.01~2質量部(好ましくは0.01~1質量部)を含むことが好ましい。
--潤滑剤--
上記潤滑剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、炭化水素系滑剤、アルコール系滑剤等が挙げられる。
上記潤滑剤として使用可能な脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく従来公知のものを使用することができる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等の炭素数12~32の脂肪酸と、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の1価脂肪族アルコールや、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価脂肪族アルコールとのエステル化合物、脂肪酸と多塩基性有機酸と1価脂肪族アルコール又は多価脂肪族アルコールとの複合エステル化合物等を用いることができる。このような脂肪酸エステル系滑剤としては、例えば、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、クエン酸ステアリル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジ12-ヒドロキシステアレート、グリセリントリ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ソルビタントリステアレート等を挙げることができる。
これらの脂肪酸エステル系滑剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、理研ビタミン社製リケマールシリーズ、ポエムシリーズ、リケスターシリーズ、リケマスターシリーズ、花王社製エキセルシリーズ、レオドールシリーズ、エキセパールシリーズ、ココナードシリーズが挙げられ、より具体的にはリケマールS-100、リケマールH-100、ポエムV-100、リケマールB-100、リケマールHC-100、リケマールS-200、ポエムB-200、リケスターEW-200、リケスターEW-400、エキセルS-95、レオドールMS-50等が挙げられる。
脂肪酸アミド系滑剤についても、特に制限はなく従来公知のものを使用することができる。
脂肪酸アミド系滑剤としては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド;メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸ビスアミド;m-キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド等を挙げることができる。
これらの脂肪酸アミド系潤滑剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ダイヤミッドシリーズ(日本化成社製)、アマイドシリーズ(日本化成社製)、ニッカアマイドシリーズ(日本化成社製)、メチロールアマイドシリーズ、ビスアマイドシリーズ、スリパックスシリーズ(日本化成社製)、カオーワックスシリーズ(花王社製)、脂肪酸アマイドシリーズ(花王社製)、エチレンビスステアリン酸アミド類(大日化学工業社製)等が挙げられる。
脂肪酸金属塩とは、高級脂肪酸の金属塩を指し、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、2塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム等が挙げられ、その中でも、得られるメタクリル系樹脂組成物の加工性が優れ、極めて透明性に優れたものとなることから、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
市販品としては、例えば、堺化学工業社製SZシリーズ、SCシリーズ、SMシリーズ、SAシリーズ等が挙げられる。
上記脂肪酸金属塩を使用する場合の配合量は、透明性保持の観点から、0.2質量%以下であることが好ましい。
上記潤滑剤は、1種単独で用いてもいいし、2種以上を併用して使用してもよい。
使用に供される潤滑剤としては、分解開始温度が200℃以上であるものが好ましい。分解開始温度はTGAによる1%減量温度によって測定することができる。
潤滑剤の含有量は、潤滑剤としての効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトの発生やスクリューの滑りによる押出不良等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、さらにより好ましくは0.8質量部以下であり、よりさらに好ましくは0.01~0.8質量部、特に好ましくは0.01~0.5質量部である。
上記範囲の量で添加すると、潤滑剤添加による透明性の低下を抑制されるうえ、フィルム製膜時に金属ロールへの貼りつきが抑制される傾向にあるうえ、プライマー塗布等のフィルムへの二次加工後の長期信頼性試験において剥がれ等の問題が出難いため、好ましい。
--紫外線吸収剤--
上記紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。
ベンゾトリアジン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2-モノ(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4-ビス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4,6-トリス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
これらの中でも、非晶性の熱可塑性樹脂、特にアクリル樹脂と相溶性が高く吸収特性が優れている点から、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-アルキルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン骨格(「アルキルオキシ」は、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等の長鎖アルキルオキシ基を意味する)を有する紫外線吸収剤が好ましいものとして挙げられる。
紫外線吸収剤としては、特に、樹脂との相溶性、加熱時の揮散性の観点から、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。
これら紫外線吸収剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記紫外線吸収剤の融点(Tm)は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることがさらにより好ましい。
上記紫外線吸収剤は、23℃から260℃まで20℃/分の速度で昇温した場合の質量減少割合が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることがよりさらに好ましい。
上記紫外線吸収剤の配合量は、耐熱性、耐湿熱性、熱安定性、及び成形加工性を阻害せず、本発明の効果を発揮する量であればよいが、多量に入れて過ぎた場合、加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれもあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下、さらにより好ましくは2質量部以下、よりさらに好ましくは1.8質量部以下であり、また、配合の効果を発揮する観点から0.01質量部以上であることが好ましい。
(メタクリル系樹脂組成物の特性)
以下、メタクリル系樹脂組成物の特性について記載する。
-重量平均分子量、分子量分布-
上記メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、機械的強度、耐溶剤性、流動性に一層優れるメタクリル系樹脂組成物が得られる観点から、6.5万~30万であることが好ましい。
メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、メタクリル系樹脂組成物は、シャルピー衝撃強さ等の機械的強度及び流動性に優れたものとなる。
上記重量平均分子量は、機械的強度保持の観点から、好ましくは6.5万以上、より好ましくは7万以上、さらに好ましくは8万以上、よりさらに好ましくは10万以上である。
また、重量平均分子量は、成形加工時の流動性確保、成形時の歪低減、長光路透過率付与の観点から、25万以下とすることが好ましく、より好ましくは20万以下、さらに好ましくは15万以下、さらにより好ましくは13万以下、よりさらに好ましくは12万以下である。
また、メタクリル系樹脂組成物の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、流動性と機械強度、耐溶剤性のバランスの観点から、1.5~5であることが好ましい。より好ましくは1.5~4.5、さらに好ましくは1.6~4、さらにより好ましくは1.6~3、よりさらに好ましくは1.6~2.5である。
なお、メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。詳細には、予め単分散の重量平均分子量、数平均分子量及びピーク分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムとを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。次に、得られた検量線から、測定対象であるメタクリル系樹脂組成物の試料の重量平均分子量及び数平均分子量を求めることができる。
具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
-耐熱性-
耐熱性の指標としては、ビカット(VICAT)軟化温度を用いることができる。
上記メタクリル系樹脂組成物のビカット軟化温度は、実使用時の耐熱性の観点から、113℃以上であることが好ましく、より好ましくは115℃以上である。
なお、ビカット軟化温度は、ISO306 B50に準拠して測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
-透明性-
透明性の指標としては、全光線透過率を用いることができる。
上記メタクリル系樹脂組成物における全光線透過率は、用途に応じて適宜最適化すればよいが、透明性の求められる用途で使用される場合は、視認性の観点から、2m厚みにおける全光線透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは88%以上、さらにより好ましくは90%以上である。
全光線透過率は高い方が好ましいが、実用上は94%以下でも十分に視認性を確保することができる。
なお、全光線透過率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
-滞留時のYI値の変化度-
樹脂組成物を成形加工等の熱履歴をかける処理をする際、トラブル対応等により長時間高温下で晒される場合がある。その際、熱履歴により黄変してしまう場合がある。
上記メタクリル系樹脂組成物によれば、短時間の熱履歴を受けた場合のYIと長時間保持時の熱履歴を受けた場合のYIとの間での変化度(ΔYI)を抑制することができる。
例えば、上記メタクリル系樹脂組成物を、射出成形機(EC-100SX、東芝機械株式会社製)により、成形温度280℃、金型温度60℃の条件にて、厚さ3mm×幅20mm×長さ220mmの試験片を作製する際に、射出成形のサイクル時間(射出時間+冷却時間)を通常サイクルである(c)45秒と成形機内での滞留を想定した(d)270秒とした場合に、成形が安定してから11ショット目から15ショット目までの試験片を用いて、サイクル時間(c)で得られた試験片、(d)で得られた試験片、各5個ずつの220mm長光路YI値の測定を行うことで見積もることができる。
(c)の5個の試験片のYI値の平均値、及び(d)の5個の試験片のYI値の平均値を求め、下記式よりYI値の変化度を算出し、評価の指標とすることができる。
YI値の変化度=〔(d)のYI値の平均値-(c)のYI値の平均値〕/(c)のYI値の平均値
上記YI(220mm)の変化度(ΔYI)は、20以下であることが好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは15以下、さらにより好ましくは13以下、よりさらに好ましくは10以下である。
上記変化度(ΔYI)を達成するための手段としては、スチレン単量体単位の含有量を所定量以下とすること、後述する一般式(1)又は(2)で表わされる化合物(D)を少量含有させること、上記(D)成分と上記主鎖に環構造を有する構造単位(B)の含有量との比を特定の範囲とすること、Mwを所定程度以上にすることなどが挙げられ、これらを単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
なお、YI値は、色差計(有限会社東京電色社製、TC-8600A、光源:10-C)を用いて、JIS K7105に準拠して測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
-全光線透過率及びΔYIの厚み依存性-
上記メタクリル系樹脂組成物では、下記式で表される厚み3mmから厚み220mmでの全光線透過率の減衰率が、40%以下であることが好ましく、より好ましくは33%以下、さらに好ましくは15%以下、さらにより好ましくは11%以下である。
全光線透過率の減衰率(%)=100×(Y(3mm)-Y(220mm))/Y(3mm)
また、上記メタクリル系樹脂組成物では、下記式で表される厚み3mmから厚み220mmのΔYIが、40以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、さらに好ましくは5以下、さらにより好ましくは2以下である。
ΔYI=YI(220mm)-YI(3mm)
-外観性-
上記メタクリル系樹脂組成物の外観性は、例えば、気泡の有無、筋ムラの有無、シルバーストリークスの有無等により評価することができる。
上記メタクリル系樹脂組成物は、当該メタクリル系樹脂組成物を、80℃で24時間乾燥させた後、射出成形機、測定用金型を用いて成形される50個の試験片中、試験片の表面にシルバーストリークスが見られた試験片の数が、10個以下であることが好ましく、より好ましくは5個以下、さらに好ましくは2個以下である。
なお、メタクリル系樹脂組成物のシルバーストリークスの有無は、後述の実施例に記載の方法により評価することができる。
-耐候性-
上記メタクリル系樹脂組成物の耐候性は、暴露試験前後の試料の色差(ΔE*)を測定することにより評価することができる。
例えば、上記メタクリル系樹脂組成物を、射出成形機(EC-100SX、東芝機械株式会社製)により、樹脂温度:280℃、金型温度:70℃の条件にて、厚さ3mm×幅20mm×長さ220mmの長光路試験片を作製し、かかる3mm厚の試験片を用い、JIS K7350-4の手法を用いて、総曝露時間2040時間の曝露試験を行い、かかる曝露試験前後での色差(ΔE*)を、JIS Z8730に従って、色差計を用いて測定することができる。
上記メタクリル系樹脂組成物では、上記評価において、色差(ΔE*)が3未満であることが好ましく、より好ましくは2.5以上3未満であり、さらに好ましくは2以下である。
上記変化度色差色差(ΔE*)を達成するための手段としては、スチレン単量体単位の含有量を所定量以下とすること、後述する一般式(1)又は(2)で表わされる化合物(D)を少量含有させること、上記(D)成分と上記主鎖に環構造を有する構造単位(B)の含有量の比を特定の範囲とすること、Mwを所定程度以上にすることなどが挙げられ、これらを単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
なお、色差(ΔE*)は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
特に、耐熱性、成形時のシルバー発生の抑制、色相の観点から、残存する(A)成分、すなわちメタクリル酸エステル単量体の量は、メタクリル系樹脂組成物中、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.3質量%以下、よりさらに好ましくは0.2質量%以下である。
特に、メタクリル系樹脂組成物中に残存する(B)成分由来のモノマー成分の含有量は、成形片の黄色度や透過率を良好なものとする観点から、メタクリル系樹脂組成物を100質量%としたとき、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下、さらにより好ましくは0.15質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。また、残存するモノマー量を低く保つ方が好ましいが、残存モノマーを極力減らそうとした場合、工程が煩雑になる等、生産性に影響が出てくる場合がある。色相と生産性を考慮した場合、残存する(B)成分含有量は0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.011質量%以上、さらにより好ましくは0.02質量%以上である。
なお、残存モノマーの含有量は、後述の実施例に記載の方法により評価することができる。
(メタクリル系樹脂組成物の製造方法)
上記メタクリル系樹脂組成物は、前述のメタクリル系樹脂、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物(D)、その他の樹脂、添加剤等を溶融混練することによって、製造することができる。
メタクリル系樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練する方法が挙げられる。その中でも押出機による混練が、生産性の観点から好ましい。
混練温度は、メタクリル系樹脂を構成する重合体や、混合する他の樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては140~300℃の範囲、好ましくは180~280℃の範囲である。
また、押出機には、揮発分を減じる目的で、ベント口を設けることが好ましい。
<スライドピン>
上記スライドピンは、射出成形時にスライドピン全体が金型内部に差し込まれていないことが好ましい。即ち、上記成形工程において、上記スライドピンの一部が、射出成形時に金型内に存在するように配置されることが好ましい。
上記スライドピンを構成する材料としては、射出成形時に溶融しない材質であれば特に限定されず、樹脂であってもよいし金属であってもよい。
上記スライドピンの表面は平坦であることが好ましい。
上記スライドピンの形状としては、直線状の棒状であることが好ましい。上記棒状のスライドピンは、延在方向に断面積がほぼ変わらない円柱状であってもよいが、成形後にスライドピンを抜き取りやすく、抜き取り後に形成される穴内部の表面が一層平坦となって成形品外部からの穴内部の視認性が向上する観点から、延在方向に断面積が小さくなるテーパー状の棒状が好ましい。テーパー状である場合、円錐状、多角錐状などの先端がとがった形状であってもよいし、円錐台状、多角錐台状などの先端が平面の形状(図3)であってもよい。
上記テーパー状のスライドピンにおいて、テーパー角度は、スライドピンが一層抜き取りやすく、抜き取り後に形成される穴の外部からの視認性が一層向上する観点から、0.2~12°であることが好ましく、より好ましくは0.5~10°、さらに好ましくは0.8~5°である。延在方向全体にわたってテーパー角度が一定であってもよいし変化していてもよい。
上記スライドピンは、中空であってもよいし中実であってもよい。例えば、中空のスライドピンの内部にヒーター等の温度制御手段を内在させ、スライドピン周囲の温度を制御してもよい。
上記スライドピンの表面は、スライドピンが一層抜き取りやすく、抜き取り後に形成される穴の外部からの視認性が一層向上する観点から、クロムメッキ、窒化加工等によって表面加工されていてもよい。
上記スライドピンは、1本であってもよいし複数本であってもよい。
貫通しない穴を形成する場合は、形成する1つの穴につき、スライドピンは1本であることが好ましい。
貫通した穴を形成する場合は、1本のスライドピンが金型を貫通するように配置してもよいし、少なくとも2本のスライドピンを差し込み、金型内部で異なる2本のスライドピンの先端同士が接触するように配置してもよい。少なくとも2本のスライドピンを用いる場合、スライドピンの抜き取りやすさの観点から、スライドピンの細い先端同士を接触させることが好ましい。
上記スライドピンの金型内部に差し込まれる部分の長さとしては、スライドピンが一層抜き取りやすく、抜き取り後に形成される穴の外部からの視認性が一層向上する観点から、金型内部形状のスライドピンを差し込む方向の長さ100%に対して、25~99%であることが好ましく、より好ましくは30~97%かつ50mm以上200mm以下、さらに好ましくは45~95%かつ60mm以上180mm以下である。
なお、スライドピンの金型内部に差し込まれる部分の長さとは、射出成形品に形成される穴の深さに相当する。
上記成形工程において、抜き取りやすさの観点から、スライドピンの少なくとも一端(例えば、太い先端)が、金型外部にはみ出た状態で射出成形することが好ましい。
<金型>
上記金型としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
上記金型内部の形状(金型を閉めた際に形成される内部空洞の形状)としては、特に限定されないが、例えば、直方体状、三角柱状等の多角柱状、円柱状等が挙げられる。
<成形条件>
上記成形工程において、成形条件としては、シリンダー温度は、好ましくは210℃以上300℃以下、より好ましくは220℃以上270℃以下である。210℃以上であると成形時に過大なトルクがかかることがなくなり、成形不良が起きにくくなるため好ましい。また、300℃以下であると熱による黄変、特に成形サイクルが長くなる厚み5mm以上の肉厚な成形体を製造するときの熱による黄変を抑制できるため好ましい。なお、シリンダー温度とは射出成形機のシリンダー中央部の設定温度のことをいう。
充填速度は0.5mm/秒以上100mm/秒以下が好ましく、1mm/秒以上40mm/秒以下がより好ましい。0.5mm/秒以上であることで成形サイクルを良好なものにでき、成形体外観の均一さを良好なものにすることが出来る。100mm/秒以下とすることで、特にゲート付近での成形不良を効果的に防止することができ、また、肉厚な成形体におけるヒケを低減することが出来る。充填速度は、ランナー部を除く成形体部分を充填するのに要した時間を成形体におけるゲートから最遠部の長さで割り返すことで求めることが出来る。
成形時間は、樹脂にかかる熱による変性を予防するために、成形体の厚みt(mm)に対し、1t分以下が好ましく、0.8t分以下がより好ましい。また、特に厚肉な成形体の樹脂内部まで十分に冷却し、ヒケを低減するために0.1t分以上が好ましく、0.2t分以上がより好ましい。成形時間は射出成形機であればシリンダーから射出されてから、金型から取り出すまでの時間であり、成形体の厚みtは成形体における樹脂の流動方向に対し直交方向の長さの内、最大のものを成形体の厚みtとする。
上記成形工程において、上記スライドピンは、上記樹脂を金型内に投入してから差し込んでもよいし、上記樹脂と同時に差し込んでもよいし、上記樹脂を投入する前に差し込んでもよい。中でも、スライドピンが一層抜き取りやすく、抜き取り後に形成される穴の、成形品外部からの視認性が一層向上する観点から、樹脂を投入する前にスライドピンを金型内に差し込んだ後、樹脂を投入することが好ましい。
中でも、成形中にスライドピン周辺の溶融樹脂だけが固化し、ヒケや真空ボイドが発生することを防ぐ観点から、スライドピンを温めてから(例えば、金型内に投入する溶融樹脂の[ガラス転移温度-70℃]以上の温度としてから)、金型内に差し込むことが好ましい。
スライドピンを差し込む場所としては、多角柱状、円柱状等の直交する3方向のうち1方向に長い形状である場合、最も長い方向に沿ってスライドピンを差し込むことが好ましい。例えば、金型内部形状が直方体である場合、金型内部形状の最も面積が小さい面の中心を含む箇所から、直方体の最も長い辺に沿ってスライドピンを差し込んでもよい(図1~3)。
上記成形工程において、上記金型内部は、上記樹脂組成物及び上記スライドピンのみで満たされていることが好ましい。
金型の内部において、上記スライドピンは、全表面が上記樹脂を含む樹脂組成物と接していることが好ましい。
[抜き取り工程]
本実施形態の射出成形方法では、上記成形工程後に、上記スライドピンを抜き取る。
上記抜き取り工程において、抜き取り後に形成した穴の形状を維持することと、スライドピンの抜きやすさとのバランスの観点から、上記スライドピンを抜き取るときの金型内部の温度としては、40~115℃であることが好ましく、より好ましくは50~110℃、さらに好ましくは60~100℃である。
上記スライドピンを抜き取るときの金型内部の温度としては、上記と同様の観点から、金型内部に投入する樹脂のガラス転移点よりも3~75℃低い温度であることが好ましく、より好ましくは5~70℃低い温度、さらに好ましくは10~60℃低い温度、特に好ましくは15~50℃低い温度である。
なお、金型内部に複数種の樹脂が含まれる場合、樹脂のガラス転移点とは、金型内部に含まれる各樹脂のガラス転移点を求め、各樹脂の質量比から平均をとった値を用いてよい。ガラス転移点は例えば示差走査熱量測定(DSC)によって求められる中間点ガラス転移点である。
上記スライドピンは、上記金型を閉めたまま抜き取ってもよいし、上記金型を開いてから抜き取ってもよい。
[穴塞ぎ工程]
上記抜き取り工程後、上記成形品のスライドピンで形成された穴の少なくとも一部を塞ぐ。
穴を塞ぐ手段としては、例えば、成形品と同じ素材であって、スライドピンの形状と一致する形状のキャップをあらかじめ作製し、接着剤で穴の少なくとも一部を塞ぐ方法、成形品に含まれる樹脂を形成するモノマー成分を用いた再修正重合で穴の少なくとも一部を塞ぐ方法、等が挙げられる。
上記穴塞ぎ工程において、上記穴の塞ぐ部分としては、穴の開放端を含む部分であることが好ましい。上記穴塞ぎ工程において、穴の開放端を完全に塞ぐことが好ましい(図1、2)。
上記穴の塞ぐ部分の長さとしては、穴の深さ(スライドピンの金型内部に差し込まれる部分の長さ)100%に対して、0%超30%以下の長さであることが好ましく、成形体に必要な強度を確保するために5%以上、外観をより良好なものに合うるために20%以下の長さであることがより好ましい。例えば、穴の開放端から上記長さの位置までを塞ぐことが好ましい(図1、2)。
貫通孔の一方の端側と他方の端側の塞ぐ部分や、穴を複数形成する場合の各穴を塞ぐ部分は、それぞれ異なっていてもよいし同じであってもよい。
[射出成形品]
本実施形態の射出成形方法で得られる射出成形品(本明細書において、単に射出成形品と称する場合がある)の形状としては、例えば、直方体状、三角柱状等の多角柱状、円柱状、片凸レンズ形状、両凸レンズ形状等が挙げられる。
また、上記射出成形品は、内部に空洞の穴が開いていることが好ましい(図1、2)。上記穴は、射出成形品外部に連通していなくてもよい(図1、2)。ここで、例えば、上記射出成形品をオイルゲージとして用いる場合、形成した穴にオイルを流し込むことがある。例えば、上記射出成形品を、切削加工して、上記穴と射出成形品外部と連通させる空洞を形成してもよい(図4)。オイルゲージの上記穴が鉛直方向となるようにコンプレッサー等に装着し、上記空洞から上記コンプレッサー等の中のオイルを上記穴に流入させ、上記穴中のオイル液面をオイルゲージ外部から見て、コンプレッサー等のオイル量を測定することができる。
上記射出成形品の寸法としては、例えば、直方体である場合、長さ30~250mm、幅5~50mm、厚さ5~50mmとしてもよい。また、上記穴としては、深さ24~230mm、直径2~35mmの略円を断面に有する穴であってよい。
上記射出成形品は、例えば、さらに切削加工をしてオイルゲージとすることができる。穴の表面が平らで、且つ成形品外部からの穴の内部の視認性に優れるため、穴内部の液体(例えばオイル)が存在する位置を、射出成形品外部から容易に確認することができる。また、切削加工の手間を少なくすることで、生産効率が向上する。
上記オイルゲージは、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、エアコン室外機、産業用機器等のコンプレッサー内のオイルゲージやポンプのオイルレベルゲージ、タンク、ボイラ等のレベルゲージとして用いることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(メタクリル系樹脂の重量平均分子量の測定)
後述の製造例で製造したメタクリル系樹脂及び実施例で製造したメタクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を、下記の装置及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量が遅く溶出する。
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/分、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
カラム温度:40℃
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製、PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を求めた。
<ガラス転移温度の測定>
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物について、熱分析装置(Perkin Elmer社製、Diamond DSC)を用いて、ASTM-D-3418に準拠して測定を行い、中点法によりガラス転移温度(℃)を算出した。
[製造例1]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25mの反応釜に、530.0kgのメタクリル酸メチル(MMA)、27.0kgのN-シクロヘキシルマレイミド(N-CMI)、450.0kgのメタキシレン、及びn-オクチルメルカプタン0.39kgを仕込み、溶解して原料溶液を調製した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら125℃まで昇温した。
別途、0.23kgのパーヘキサC-75と1.82kgのメタキシレンとを混合してなる開始剤フィード液を調製した。
原料溶液が127℃に到達したところで、開始剤フィード液(重合開始剤混合液)のフィード(添加)を(1)~(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0~0.5時間:フィード速度1.00kg/時
(2)0.5~1.0時間:フィード速度0.50kg/時
(3)1.0~2.0時間:フィード速度0.42kg/時
(4)2.0~3.0時間:フィード速度0.35kg/時
(5)3.0~4.0時間:フィード速度0.14kg/時
(6)4.0~7.0時間:フィード速度0.13kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応を継続し、開始剤の添加開始時から8時間後まで重合反応を行った。
上記で得られた重合液を、4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
得られた樹脂100質量部に対し、アデカスタブPEP-36(ADEKA製):0.05質量部、及びイルガノックス1076(BASF製):0.1質量部及び、チヌビンP(BASF製):0.03質量部をハンドブレンドによりブレンドし、東芝機械株式会社製のベント付(3か所)Φ26mm二軸押出機TEM-26SS(L/D=48、4穴ダイス使用、ダイス設定温度250℃、バレル設定温度250℃;出口側、ホッパー横バレル設定温度230℃)にて、吐出量10kg/時、水浴温度60℃(水接触距離約20cm)回転数150rpmにて溶融混練を行って、ペレット状のメタクリル系樹脂組成物を製造した。
得られたペレットの重量平均分子量は10万、ガラス転移温度は121℃であった。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:95質量%、N-CMI単位:5質量%であった。
(実施例1)
樹脂として、製造例で製造したメタクリル系樹脂組成物を用いて、内部形状が幅20mm、厚さ25mm、長さ167.5mmの直方体状である金型内部に、テーパー角度1.4°、底面が直径9mmの円である円錐台状の棒状の1本の金属性スライドピンを、金型の直方体状の長さ方向に沿って差し込んだ。上記スライドピンの金型内部に差し込まれる部分の長さは155mmであった。金型内部温度を100℃、シリンダー温度250℃、射出速度10mm/秒、成形時間600秒の条件で射出成形を行い、その後金型内部温度を90℃まで冷却してからスライドピンを抜き取った。形成した穴は、射出成形品を貫通しない穴であった。
その後、別に成形して作製したPMMA製のキャップ(テーパー角度1.4°、長さ13.5mm、底面が直径9mmの円である円錐台状)を、上記穴の開放端側にいれ、接着剤で固定した(図1)。上記穴の開放端は上記キャップにより完全に塞がれた。
得られた射出成形品は、穴の内部表面に凹凸がなく平坦であり、成形品外部からの穴の内部の視認性に優れていた。また、切削加工することなく容易にかつ短時間で製造することができた。
(比較例1)
スライドピンを用いなかったこと以外は実施例1と同様の方法で作製した直方体状の射出成形品に、切削加工で実施例1と同様の穴を形成し、実施例1と同様の形状の射出成形品を作製した。
得られた射出成形品は、穴の内部表面に凹凸があり、成形品外部からの穴の内部の視認性に劣っていた。また、切削加工に時間がかかり、実施例1よりも生産効率が悪かった。
1 射出成形品
2 穴
3 キャップ
4 空洞

Claims (5)

  1. 金型内にスライドピンを差し込んで射出成形する、成形工程、
    前記成形工程後に前記スライドピンを抜き取る、抜き取り工程、
    前記スライドピンで形成された穴の少なくとも一部を塞ぐ、穴塞ぎ工程
    を含むことを特徴とする、射出成形方法。
  2. 前記スライドピンがテーパー状の棒状のピンである、請求項1に記載の射出成形方法。
  3. 前記スライドピンのテーパー角度が0.2~12°である、請求項2に記載の射出成形方法。
  4. 前記スライドピンの前記金型内部に差し込まれる部分の長さが、前記金型内部形状の前記スライドピンを差し込む方向の長さ100%に対して、25~99%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の射出成形方法。
  5. 前記抜き取り工程において、前記スライドピンを抜き取るときの金型内部の温度が、射出成形に用いる樹脂のガラス転移点よりも3℃から75℃低い温度である、請求項1~4のいずれか一項に記載の射出成形方法。
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