JP2023113593A - ポリプロピレン系フィルム及び積層フィルム - Google Patents

ポリプロピレン系フィルム及び積層フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】包装分野において多用されるポリプロピレン系フィルム及びその積層フィルムにおいて、フィルムの物性を低下させることなく、環境負荷の低減を図ることができるポリプロピレン系フィルム及び積層フィルムを提供する。【解決手段】ポリプロピレンを主体とする樹脂原料からなるポリプロピレン系フィルムであって、樹脂原料が、バイオナフサが加熱分解され分留されて生成されたプロピレン又はバイオプロパンが脱水素されて生成されたプロピレンが重合されたプロピレン重合体、又はこれら前記プロピレンの少なくとも一方とα-オレフィンとが重合されたポリプロピレン共重合体のいずれか一方又は両方を含むバイオマスポリプロピレンを含有し、前記バイオマスポリプロピレンのバイオマス度は5%以上であって、かつ、メルトフローレートが0.1~50g/10minであり、密度が0.850~0.910g/cm3である。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリプロピレン系フィルム及び積層フィルムに関する。
近年では、持続可能な開発目標(SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(SDGs))と呼ばれる持続可能な開発のために国連が定める国際目標が掲げられ、再生可能資源の利用度を高めて環境負荷を軽減した循環型社会への取り組みが積極的に求められている。再生可能資源は、主に植物や植物由来の原料を加工した資源であり、バイオマス資源とも称される。バイオマス資源の場合、植物体の生育に伴い大気中の二酸化炭素は吸収される。そして、バイオマス資源として燃料等に利用されると再び水と二酸化炭素に分解される。従って、二酸化炭素の量は増えない。つまり、バイオマス資源はカーボンニュートラルの点から今後大きく取り入れる必要のある資源である。
プラスチックの分野においては、バイオマス由来のプラスチックとしてポリ乳酸や生分解性ポリマー等のバイオマス由来プラスチックが製造されているものの、生産量が限られており、広く普及しているということはできない。一方、汎用プラスチックのうち、最も多く使用される材料であるポリエチレンに関して、植物由来の糖分からエタノールを経てポリエチレンを得る手法が商業化され、普及している。
このバイオマス由来のポリエチレンを使用した樹脂フィルムとして、エチレン系樹脂のみを使用したフィルムが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。しかしながら、このフィルムにおいては、エチレン系樹脂のみで構成されているため、耐熱性に劣る。また、ポリプロピレン系樹脂に植物由来のポリエチレンが添加されたフィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、ポリプロピレンにポリエチレンを添加することにより、ポリプロピレンフィルムが本来備える透明性や耐熱性、強度を低下させることとなり、望まれるフィルムの物性とバイオマス由来のポリエチレンの添加量とはトレードオフの関係にあり、その添加量には制限がある。
さらに、現在普及しているバイオマス由来のポリエチレンは、サトウキビ由来のポリエチレンであって、従来の石油由来のポリエチレンと比較して分子量分布が広く、オリゴマーが多いために、フィルムとした時の耐ブロッキング性が低下してしまう等の問題があった。
特開2012-251006号公報 特開2014-046674号公報 特開2018-065267号公報
そこで、本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、包装分野において多用されるポリプロピレン系フィルム及びその積層フィルムにおいて、従来の石油由来のポリプロピレンと同じ製法により製造されたバイオマス由来のポリプロピレンをフィルムの原料として用いることによって、フィルムの物性を低下させることなく、環境負荷の低減を図ることができるポリプロピレン系フィルム及び積層フィルムを提供する。
すなわち、第1の発明は、ポリプロピレンを主体とする樹脂原料からなるポリプロピレン系フィルムであって、前記樹脂原料が、バイオナフサが加熱分解され分留されて生成されたプロピレン又はバイオプロパンが脱水素されて生成されたプロピレンが重合されたプロピレン重合体、又はこれら前記プロピレンの少なくとも一方とα-オレフィンとが重合されたポリプロピレン共重合体のいずれか一方又は両方を含むバイオマスポリプロピレンを含有し、前記バイオマスポリプロピレンの放射性炭素測定により測定したバイオマス度は5%以上であって、かつ、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~50g/10minであり、密度が0.850~0.910g/cmであることを特徴とするポリプロピレン系フィルムに係る。
第2の発明は、第1の発明のポリプロピレン系フィルムを含む複数の樹脂層からなる積層フィルムに係る。
第3の発明は、第1の発明のポリプロピレン系フィルム又は第2の発明の積層フィルムのバイオマス度が5%以上であるポリプロピレン系フィルム又は積層フィルムに係る。
第1の発明に係るポリプロピレン系フィルムによると、ポリプロピレンを主体とする樹脂原料からなるポリプロピレン系フィルムであって、前記樹脂原料が、バイオナフサが加熱分解され分留されて生成されたプロピレン又はバイオプロパンが脱水素されて生成されたプロピレンが重合されたプロピレン重合体、又はこれら前記プロピレンの少なくとも一方とα-オレフィンとが重合されたポリプロピレン共重合体のいずれか一方又は両方を含むバイオマスポリプロピレンを含有し、前記バイオマスポリプロピレンの放射性炭素測定により測定したバイオマス度は5%以上であって、かつ、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~50g/10minであり、密度が0.850~0.910g/cmであるから、従来の石油由来のポリプロピレンと同じ製法により製造されたバイオマス由来のポリプロピレンをフィルムの原料として用いることによって、フィルムの物性を低下させることなく、環境負荷の低減を図ることができる。
第2の発明に係る積層フィルムによると、第1の発明のポリプロピレン系フィルムを含む複数の樹脂層からなるため、用途に応じた物性を備えたフィルムを積層することにより、従来のフィルムと遜色ない性能を備えながら、環境負荷低減により貢献することができる。
第3の発明に係るポリプロピレン系フィルム又は積層フィルムによると、第1又は2の発明において、フィルムのバイオマス度が5%以上であるから、環境負荷低減により貢献することができる。
本発明の一実施例に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムの概略断面図である。
本発明は、ポリプロピレンを主体とする樹脂原料からなり、該樹脂原料による単独の層からなる単層フィルムであるポリプロピレン系フィルム又は該ポリプロピレン系フィルムが他のフィルムないし樹脂層と積層されて複数の樹脂層により形成される積層フィルムである。積層フィルムとされる際には、積層フィルムの各層を構成する樹脂とともにポリプロピレン系フィルムを構成する樹脂を共押出して成形されたり、各層を構成するフィルムが貼着されたりして任意の層構成を備える積層フィルムとされることができる。ここで、例えば、図1に示されるような3層構造の場合に、第1表層11及び第2表層12をポリプロピレン系フィルムとし、中間層13をポリエチレン系樹脂からなる構成としても良く、他の層の樹脂構成は適宜である。中間層13は、植物(バイオマス)由来の樹脂を含んでいても良いし、含んでいなくてもよい。
本発明を構成する樹脂原料には、植物由来のいわゆるバイオマス原料を用いたバイオマスポリプロピレンが含有される。バイオマスポリプロピレンは、植物を原料とする油である植物由来油が蒸留分離されて得られたバイオナフサや植物由来油を触媒等で分解して得られるバイオディーゼル燃料の副産物であるバイオプロパンから得られる。植物由来油は、例えば、大豆油、ごま油、こめ油、ヒマワリ油、綿実油、コーン油、菜種油、オリーブ油、荏胡麻油、アーモンド油や、これらの廃油、クラフトパルプ製造時の副産物である粗トール油、木くず等の木材より抽出した油等が挙げられる。
そして、バイオナフサが加熱分解されて分留されて生成されたプロピレンが重合されてバイオマスポリプロピレンとなる。該プロピレンには、バイオナフサが加熱分解された際に生成されたエチレンとC4留分をメタセシス反応により生成されたプロピレンも含む。バイオナフサが加熱分解された際にプロピレン留分のみならず、エチレン及びC4留分も用いられることができるため、歩留まりが良くなる。あるいは、バイオプロパンを脱水素して生成されたプロピレンが重合されてバイオマスポリプロピレンとなる。ここでバイオマスポリプロピレンの素となるプロピレンは、バイオナフサのみではなく、適宜石油由来のナフサも混合されて生成されることもある。バイオナフサの原料である植物由来油の総量は化石由来油に比して少ないため、確保が石油に比して困難であったり高価であるため、石油由来のナフサを混合することにより(バイオ)ナフサの総量を確保して製造コストを低減するためである。
また、バイオナフサの総量が既存プラントに対して必要十分でない場合は、石油由来ナフサと混合して製造されることもある。バイオマスポリプロピレンの原料がバイオプロパンの場合も、同様に天然ガスや石油由来プロパンが混合され、脱水素、重合の工程を経てバイオマスポリプロピレンとされることも考えられる。
バイオナフサ(及び混合されたナフサ)が加熱分解され分留されて生成されたプロピレン又はバイオプロパン(及び天然ガスないし石油由来プロパン)を脱水素して生成されたプロピレンは、プロピレン同士で重合されてプロピレン重合体となり、また、α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-ペンテン-1等が挙げられ、α-オレフィンと重合したポリプロピレン共重合体としては、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。本発明に用いられるバイオマスポリプロピレンは、所望するフィルムの物性によりプロピレン重合体とポリプロピレン共重合体のどちらか一方又は両方が適宜配合されて使用されることができる。例えば、ヒートシール性能をフィルムに付与する場合には、ランダム共重合体が用いられ、レトルトパウチ用の耐衝撃性や耐熱性が付与される場合には、ブロック共重合体が用いられる。
本発明に用いられるバイオマスポリプロピレンを製造するに際し使用される触媒として、マグネシウム、ハロゲン、チタン、電子供与体を触媒成分とするマグネシウム担持型触媒、三塩化チタンを触媒とする固体触媒成分と有機アルミニウムからなる触媒、またはメタロセン触媒が挙げられる。具体的な触媒の製造法は特に限定されず、一例として特開2007-254671号公報に開示のチーグラー触媒が例示される。
植物由来油からバイオナフサを蒸留分離する方法及びバイオナフサからプロピレンを分留する方法は、従来の石油からプロピレンを生成する方法と同じである。このため、植物由来油から生成されたプロピレンは、石油由来のプロピレンと変わらない物性を備えるはずであるから、フィルムの樹脂原料として用いられるポリプロピレンの一部ないし全部にバイオマスポリプロピレンを用いることで、フィルムの物性を損なうことなく、環境負荷の低減を図ることができると考えられる。このことから、環境負荷低減の観点よりバイオマスポリプロピレンのバイオマス度は5%以上と規定される。
植物由来油から得たバイオプロパンを脱水素しプロピレンを生成する方法は、天然ガスや石油由来プロパンからプロピレンを生成する方法と同じである。このため、植物由来油から生成されたプロピレンは、天然ガスや石油由来のプロピレンと変わらない物性を備えるはずであるから、フィルムの樹脂原料として用いられるポリプロピレンの一部ないし全部にバイオマスポリプロピレンを用いることで、環境負荷の低減を図ることができると考えられる。このことから、環境負荷低減の観点よりバイオマスポリプロピレンのバイオマス度は5%以上と規定される。
なお、バイオマス度は、植物(バイオマス)由来の炭素の含有量を放射性炭素(C14)測定により算出して求めることができる。本発明のバイオマスポリプロピレンにおいては、放射性炭素測定により測定した値を使用した。測定原理は以下の通りである。自然界の炭素には重さの違うものが存在し、炭素12(C12)、炭素13(C13)、炭素14(C14)の3種類がある。その中で炭素14には、大気中に常に一定の割合で存在し、決まった周期で減少して5730年で元の量の半分になる性質(半減期)がある。植物は成長のため、大気中の二酸化炭素を取り込むため、植物に含まれる炭素14は大気中と同じ割合となる。一方石油等の化石資源には炭素14が含まれないことから、炭素14はバイオマス度と相関することとなる。加速器質量分析装置(AMS)は、試料に含まれる炭素の種類と、それぞれの割合を測定することができるため、試料に含まれるバイオマス度を算出することができる。
本発明に用いられるバイオマスポリプロピレンは、メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.1~50g/10minの範囲を満たすものとすることにより、従来の石油100%由来のポリプロピレンと同様に使用された場合であってもフィルムの性能低下を抑制しつつ、環境負荷の低減という本発明の趣旨を達することができる。なお、メルトフローレート(MFR)はJIS K 7210(2014)に準拠し、230℃で測定される。一般に、フィルム用主原料としては、MFRが1~10g/10minのポリプロピレンが適している。しかしながら、範囲外の原料を添加することによって、フィルムの成形性を向上させたり、フィルムに特徴的な物性を備えさせることもある。
また、本発明に用いられるバイオマスポリプロピレンの密度も同様に規定され、0.850~0.910g/cmの範囲とされるのが良い。該範囲の密度のバイオマスポリプロピレンであれば、従来のポリプロピレン同様に使用された場合であっても、フィルムの性能低下を抑制しつつ、環境負荷の低減を図ることができる。一般に、フィルム用主原料としては、密度が0.890~0.910g/cmのポリプロピレンが適している。しかしながら、範囲外の原料を添加することによって、フィルムの成形性を向上させたり、フィルムに特徴的な物性を備えさせることもある。
そして、バイオマスポリプロピレンが含有されたポリプロピレン系フィルムないし積層フィルムは、フィルムとしてのバイオマス度を5%以上とすることが望ましい。フィルムとしてのバイオマス度を5%以上とすることにより、バイオマス原料を有効利用して石油の使用量を低減することができることから、より環境負荷の低減が実現可能となる。フィルムのバイオマス度は放射性炭素濃度測定の結果より導かれる。
本発明のフィルムの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造される。例えば、無延伸フィルムは、Tダイや円形ダイ等から所定の厚さとなるよう吐出され押出しされた溶融樹脂を冷却ロールや空気を利用して冷却固化して製造される。さらに、延伸フィルムは、公知のテンター法、チューブラー法、ロール延伸等の方法により一軸又は二軸延伸されて製造される。
該フィルムの厚さは、用途に応じて適宜決定され、例えば1~150μm程度がよい。特に10~60μmとすると包装用フィルムに適した厚さとなる。図1に示されるような3層の共押出フィルムである積層フィルム10の場合は、表層11:中間層13:表層12の層比は、例えば、1:30:1~1:2:1程度とされるのがよい。
本発明のフィルムに再生可能資源が使用されたバイオマスインキや軟包装用ラミネート接着剤による印刷ラミネート加工とすると、さらに環境負荷の低減を図ることができる。また、異なる素材とラミネートされることも考えられる。バイオマスポリエチレンフィルムや、バイオマスポリアミドフィルム、バイオマスポリエステルフィルム等とラミネートされたフィルムとされることにより環境負荷の低減にさらに貢献することができる。
該フィルムの各層においては、必要に応じて滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。これら添加剤につき、再生可能資源が使用された添加剤を用いることも考えられる。
例えば、主に無延伸フィルムに添加される滑剤にあっては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド化合物、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンオレート、ジグリセリンステアレート等の多価アルコール等が挙げられる。なお、使用される原料としては、動物油脂や植物油脂が挙げられるが、大豆、パーム、ヤシ等の植物油脂を原料とした添加剤が使用されることでさらに環境負荷の低減に貢献できる。
主に二軸延伸フィルムに添加される帯電防止剤にあっては、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等の脂肪族アミン化合物、及びこれらのエステル化合物である脂肪族アミンエステル化合物、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド等の脂肪族アミド化合物、及びこれらのエステル化合物である脂肪族アミドエステル化合物、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート等の多価アルコール等が挙げられる。使用される原料としては、動物油脂や植物油脂が挙げられるが、大豆、パーム、ヤシ等の植物油脂を原料とした添加剤を使用することでさらに環境負荷の低減に貢献できる。
アンチブロッキング剤にあっては、シリカ粒子、ゼオライト粒子、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、シリコーン粒子、タルク粒子等の粒状物が挙げられる。
結晶核剤にあっては、カルボン酸金属塩系結晶核剤、ソルビトール系結晶核剤、リン酸エステル金属塩系結晶核剤、β晶造核剤等が挙げられる。
該フィルムの各層においては、必要に応じて強度向上、ガスバリア性付与等を目的とした添加剤を適宜添加することができる。例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、アラミド繊維、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、セルロースファイバー、セルロースナノファイバー、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー、合成マイカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シラスバルーン、石油樹脂、テルペン樹脂、等があげられる。これら添加剤につき、セルロース、テルペン樹脂等の再生可能資源が使用された添加剤を用いることでさらに環境負荷の低減に貢献できる。
上述したように、従来の石油由来のポリプロピレンと同一の方法により生成されたバイオマスポリプロピレンは、石油由来のポリプロピレンと物性が異ならないはずである。そうであるならば、バイオマスポリプロピレンがポリプロピレン系フィルムに含有されることとすると、フィルムの特性ないし物性を損なうことはないはずである。つまり、従来の石油由来のポリプロピレン100%で形成されたフィルムの代替として本発明のポリプロピレン系フィルムを用いることで、環境負荷の低減を図ることができることとなる。
例えば、野菜等の青果物の包装材に用いられる防曇フィルムにおいては、中間層を構成するポリプロピレンのうち、10%の配合割合でバイオマスポリプロピレンが含有されること等が考えられる。防曇フィルムにおける中間層のポリプロピレンには、内容物が新鮮に見えるように、高い透明性が要求される。バイオマスポリプロピレンの物性は、石油由来のポリプロピレンと同様に調整可能であることから、防曇フィルムにバイオマスポリプロピレンが含有されても防曇性や透明性等のフィルムの特性ないし物性は維持され、かつ、環境負荷の低減を図ることができる。
ヒートシールフィルムにおいては、積層フィルムにおける表層に配されるヒートシール層に、10%の配合割合でバイオマスポリプロピレンが含有されたり、中間層では5%の配合割合で含有されること等が考えられる。また、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなるヒートシールフィルムは、単体使用が主に想定されることから、高い透明性が要求される。ヒートシール層におけるポリプロピレンには、高いシール強度が要求される。ラミネート用シーラントフィルムの場合には、中間層に10%の配合割合でバイオマスポリプロピレンを含有する等が考えられる。ヒートシールフィルムやラミネート用シーラントフィルムにあっても、従来の石油由来のポリプロピレンと同等の物性を備えたバイオマスポリプロピレンが含有されることにより、ヒートシール性等のフィルムの特性を確保しつつ、環境負荷の低減を図ることができる。
バリアフィルムにおいては、積層フィルムにおける中間層において、10%の配合割合でバイオマスポリプロピレンが含有されたり、第一表層及び第二表層において、50%の配合割合でバイオマスポリプロピレンを含有したりすることも考えられる。バリアフィルムにおいて、フィルムに水蒸気バリア性が付与される場合には、中間層ではポリプロピレンに高結晶性が要求される。また、ガスバリア性が付与される場合には、コーティング用基材として使用されることもあるため、中間層又は表層では低分子量物が少ないことや耐熱性が要求される。バイオマスポリプロピレンであっても、同物性は調整可能であるため、バリアフィルムのバリア性等を維持しつつ、環境負荷の低減を図ることができる。
イージーピールフィルムにおいては、中間層では30%の配合割合でバイオマスポリプロピレンが含有されたり、第一表層では50%の配合割合でバイオマスポリプロピレンが含有されること等が考えられる。バイオマスポリプロピレンが樹脂原料に含まれた時にも、ヒートシール強度は従来のポリプロピレンが使用された場合と同様にコントロール可能であることから、イージーピール性を確保しつつ、再生可能原料の効率的な使用を図ることができる。
ラミネート用基材フィルムにおいては、中間層に10%の配合割合でバイオマスポリプロピレンが含有されたり、第一表層及び第二表層を100%の配合割合でバイオマスポリプロピレンが含有されることも考えられる。上述した各種フィルムと同様に、石油由来のポリプロピレンを100%の配合で用いた従来のフィルムと遜色ないフィルムとすることができるため、使用感を損なうことなく環境負荷の低減に貢献が可能となる。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、上記した用途や使用方法に限定されることなく、食品包装用途や産業用途等、広く一般の用途に使用されることができる。例えば、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの場合には、ラミネート用表基材、コーティング用基材、蒸着用基材、野菜包装用等に用いられる防曇フィルム、フィルム単体で製袋可能なヒートシールフィルムや溶断シールフィルム、テープ、キャパシタ用途等にも用いることができる。無延伸ポリプロピレン系フィルムの場合には、一般的なラミネート用シーラントフィルムやレトルトや易開封適性を備えた特殊ラミネート用シーラントフィルムの他、食パンや生めん等をフィルム単体で包装する包装用フィルム、テープや保護フィルム等の基材フィルム、二次電池用シーラントフィルム等にも用いることができる。
[二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの作製]
後述のポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を用いて試作例1~11の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを作成した。試作例1~3の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、汎用のラミネート用基材フィルムとして、試作例4~6の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは主に単体で使用されるヒートシール用フィルムとして、試作例7~9は主に単体で使用される溶断シール用フィルムとして、試作例10,11はラミネート用マット調フィルムとして使用されることが想定される。
試作例1~3の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、下記の各材料を混練、溶融し、第一表層、中間層、第二表層の順に積層されるように設定し、240℃に設定した三層共押出Tダイフィルム成形機から共押出し、50℃の冷却ロールで冷却、固化して原反となるシート状物を得た。次いで、該シート状物を設定温度100~120℃で予熱し、縦(MD)方向に5.0倍に延伸した後、設定温度135℃でアニールした。テンターにて設定温度180℃で予熱し、設定温度160℃で横(TD)方向に8.0倍に延伸した後、設定温度165℃でアニールした。テンターを出たのちに第一表層にコロナ処理放電を施し、巻取機で巻き取って試作例1~3の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。
試作例4~6については、下記の各材料を混練、溶融し、第一表層、中間層、第二表層の順に積層されるように設定し、240℃に設定した三層共押出Tダイフィルム成形機から共押出し、50℃の冷却ロールで冷却、固化して原反となるシート状物を得た。次いで、該シート状物を設定温度100~115℃で予熱し、縦(MD)方向に4.8倍延伸した後、設定温度135℃でアニールした。テンターにて設定温度180℃で予熱し、設定温度155℃で横(TD)方向に8.0倍に延伸した後、設定温度160℃でアニールした。テンターを出たのちに第一表層上にコロナ処理放電を施し、巻取機で巻き取って試作例4~6の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
試作例7~9については、下記の各材料を混練、溶融し、第一表層、中間層、第二表層の順に積層されるように設定し、240℃に設定した三層共押出Tダイフィルム成形機から共押出し、50℃の冷却ロールで冷却、固化して原反となるシート状物を得た。次いで、該シート状物を設定温度100~110℃で予熱し、縦(MD)方向に4.8倍延伸した後、設定温度130℃でアニールした。テンターにて設定温度180℃で予熱し、設定温度155℃で横(TD)方向に8.0倍に延伸した後、設定温度160℃でアニールした。テンターを出たのちに第一表層及び第二表層上にコロナ処理放電を施し、巻取機で巻き取って試作例7~9の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
試作例10,11については、下記の各材料を混練、溶融し、第一表層、中間層、第二表層の順に積層されるように設定し、240℃に設定した三層共押出Tダイフィルム成形機から共押出し、50℃の冷却ロールで冷却、固化して原反となるシート状物を得た。次いで、該シート状物を設定温度100~120℃で予熱し、縦(MD)方向に5.0倍延伸した後、設定温度135℃でアニールした。テンターにて設定温度180℃で予熱し、設定温度160℃で横(TD)方向に8.0倍に延伸した後、設定温度165℃でアニールした。テンターを出たのちに第二表層上にコロナ処理放電を施し、巻取機で巻き取って試作例10,11の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの厚みは、試作例4~9は30μm、それ以外の試作例は20μmとなるように製膜した。
[使用材料]
・ポリプロピレン樹脂(PP-1):バイオマスポリプロピレン(Lyondell Basell社製、『C14 HP456J』)、バイオマス度46%、MFR(230℃/2.16kg)3.4g/10min、密度0.900g/cm、融点165℃
・ポリプロピレン樹脂(PP-2):石油由来ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、『FL203D』)、バイオマス度0%、MFR(230℃/2.16kg)3.0g/10min、密度0.900g/cm、融点164℃
・ポリプロピレン樹脂(PP-3):石油由来ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、『FW4BT』)、バイオマス度0%、MFR(230℃/2.16kg)6.5g/10min、密度0.900g/cm、融点135℃
・ポリプロピレン樹脂(PP-4):石油由来ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、『FX4G』)、バイオマス度0%、MFR(230℃/2.16kg)5.0g/10min、密度0.900g/cm、融点129℃
・ポリプロピレン樹脂(PP-5):石油由来ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、『BC4FC』)、バイオマス度0%、MFR(230℃/2.16kg)8.0g/10min、密度0.900g/cm、融点162℃
・ポリエチレン樹脂(PE-1):バイオマスポリエチレン(ブラスケム社製、『SLH118』)、バイオマス度92%、MFR(190℃/2.16kg)1.0g/10min、密度0.916g/cm、融点126℃
・ポリエチレン樹脂(PE-2):石油由来ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、『R300』)、バイオマス度0%、MFR(190℃/2.16kg)0.3g/10min、密度0.921g/cm、融点109℃
第一表層及び第二表層には、アンチブロッキング剤として粉末合成シリカ(富士シリシア株式会社製、『サイリシア730』)を適宜添加した。中間層には、ポリプロピレンフィルム用帯電防止剤を適宜添加した。
なお、使用材料のバイオマス度は、加速器質量分析装置(AMS)による放射性炭素(C14)測定により算出して求めた。また、メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(2014)に準拠し、ポリプロピレン樹脂は230℃、ポリエチレン樹脂は190℃で測定した。
[試作例1]
第一表層に樹脂(PP-2)を100重量%、中間層に樹脂(PP-1)24重量%と樹脂(PP-2)76重量%、第二表層に樹脂(PP-2)を100重量%とし、第一表層:中間層:第二表層が1:18:1の比率となるよう原料の吐出量を調整し、試作例1の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例1の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は9.9%である。
[試作例2]
中間層を樹脂(PP-2)100重量%とした以外は試作例1と同様とし、試作例2の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例2の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は0%である。
[試作例3]
中間層を樹脂(PP-2)88重量%と樹脂(PE-1)12重量%とした以外は試作例1と同様とし、試作例3の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例3の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は9.9%である。なお、試作例3のバイオマス度はポリエチレン樹脂に由来する。
[試作例4]
第一表層に樹脂(PP-2)を100重量%、中間層に樹脂(PP-1)30重量%と樹脂(PP-2)70重量%、第二表層に樹脂(PP-4)を100重量%とし、第一表層:中間層:第二表層が1:28:1の比率となるよう原料の吐出量を調整し、試作例4の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例4の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は12.9%である。
[試作例5]
中間層を樹脂(PP-2)100重量%とした以外は試作例4と同様とし、試作例5の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例5の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は0%である。
[試作例6]
中間層を樹脂(PP-2)85重量%と樹脂(PE-1)15重量%とした以外は試作例4と同様とし、試作例6の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例6の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度12.9%である。なお、試作例6のバイオマス度はポリエチレン樹脂に由来する。
[試作例7]
第一表層に樹脂(PP-4)を100重量%、中間層に樹脂(PP-1)24重量%と樹脂(PP-2)76重量%、第二表層に樹脂(PP-4)を100重量%とし、第一表層:中間層:第二表層が1:28:1の比率となるよう原料の吐出量を調整し、試作例7の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例7の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は10.3%である。
[試作例8]
中間層を樹脂(PP-2)100重量%とした以外は試作例7と同様とし、試作例8の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例8の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は0%である。
[試作例9]
中間層を樹脂(PP-2)88重量%と樹脂(PE-1)12重量%とした以外は試作例7と同様とし、試作例9の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例9の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度10.3%である。なお、試作例9のバイオマス度はポリエチレン樹脂に由来する。
[試作例10]
第一表層に樹脂(PP-3)30重量%と樹脂(PP-5)35重量%と樹脂(PE-2)35重量%、中間層に樹脂(PP-1)24重量%と樹脂(PP-2)76重量%、第二表層に樹脂(PP-4)を100重量%とし、第一表層:中間層:第二表層が2:17:1の比率となるよう原料の吐出量を調整し、試作例10の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例10の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は9.4%である。
[試作例11]
中間層を樹脂(PP-2)100重量%とした以外は試作例10と同様とし、試作例11の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例11の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は0%である。
試作例1~11につき、ヘーズ(%)、引張破壊強度(MPa)、引張破壊伸度(%)、引張弾性率(GPa)を測定した。試作例1~9は、表面光沢度(%)、狭角拡散透過率(LSI)(%)についても測定した。試作例1~3はラミネート用基材フィルムであることから、水蒸気透過度(g/m・day)、加熱収縮率(%)を測定した。試作例4~6は、ヒートシール用フィルムであることから、ヒートシール強度(N/15mm)を測定した。試作例7~9は溶断シール用フィルムであることから、溶断シール強度(N/15mm)を測定した。各試作例の層ごとの樹脂の比率、バイオマス度及び各測定結果を表1~4に示す。
[ヘーズの測定]
ヘーズ(%)は、透明性の指標であって、JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、『NDH-8000』)を使用して測定を行った。
[引張特性]
フィルムの縦(MD)方向及び横(TD)方向の引張破壊強度(MPa)、引張破壊伸度(%)、引張弾性率(GPa)は、JIS K 7127(1999)に準拠して、引張試験機(株式会社オリエンテック製、『RTF-1310』)を使用して測定した。
[加熱収縮率]
フィルムの縦(MD)方向及び横(TD)方向の120℃における加熱収縮率を、JIS Z 1712(1999)に準拠して、測定した。
[表面光沢度の測定]
表面光沢度(%)は、フィルム表面の光沢感を示す指標であって、JIS Z 8741(1997)に準拠し、デジタル光沢計(日本電飾工業株式会社製、『VG-7000』)を使用して測定した。
[狭角拡散透過率の測定]
狭角拡散透過率(LSI)(%)は、透視感の指標であって、LSIは全光線透過光量に対する散乱角0.4°以上1.2°以下の散乱光量の比率を示すものである。LSIは、肉眼の透視感の目安であり、数値が低いほど透視感に優れる。LSIは、視覚透明度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して測定を行った。
[水蒸気透過度の測定]
水蒸気透過度(g/m・day)は、JIS K 7129(2008)に準拠し、水蒸気透過率測定装置(モコン社製、『PERMATRAN-W(登録商標) 3/33』)を使用して温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。
[ヒートシール強度の測定]
ヒートシール強度(N/15mm)は、下記の通り測定した。フィルムを横(TD)方向50mm×縦(MD)方向250mmの長方形の試験片(ヒートシール用)に裁断した。2枚の試験片のシーラント層(第二表層)同士を重ね、ヒートシール試験機(株式会社東洋精機製作所製、『熱傾斜試験機』)を使用し、ヒートシール圧力を0.4MPa、ヒートシール時間を1秒、設定温度160℃の条件にてヒートシールした。このとき、ヒートシーラーの熱板と試験片フィルムの間に融着防止用のセロファンフィルムを挟んだ。ヒートシールにより融着した試験片のシール部分の中央部を15mm幅にカットし、それを180°に開き、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、『EZ-SX』)により未シール部分をチャックに挟み、引張速度200m/minでシール部分をT字剥離して測定を行った。得られた結果のうち、シール温度160℃における最大強度をヒートシール強度とした。
[溶断シール強度の測定]
溶断シール強度(N/15mm)は、下記の通り測定した。溶断シールにより、第二表層が袋の内側となるよう製袋した。
シール温度:400℃
熱刃先端角度:120℃
溶断間隔:200mm
ショット数:72枚/分
そして、得られた袋状物の中から無作為に20枚ずつ抽出して測定に供した。1つの袋状物における2辺の溶断シール部それぞれが中央に配置されるように、幅15mm、長さ100mmの試験片を1辺から3か所ずつの計6か所切り出して試験片とした。該試験片を小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、『EZ-SX』)のチャックで固定し、試験片のチャック距離が50mmとなるよう調製した。200mm/minで引張し、溶断シール部が破断する強度を測定した。測定値を平均した値を溶断シール強度(N/15mm)とした。
Figure 2023113593000002
Figure 2023113593000003
Figure 2023113593000004
Figure 2023113593000005
[結果と考察]
試作例1~3は、ラミネート用基材フィルムとしての用途が想定される。特に、ラミネート面に印刷されて使用されることが多いため、フィルムの透明性が要求される。すなわち、透明性の指標となるヘーズ及び狭角拡散透過率(LSI)の値が低い方が優れたフィルムということができる。表1及び3に示されるように、バイオマスポリプロピレンが樹脂原料に含有されてバイオマス度が9.9%である試作例1と石油由来ポリプロピレンのみからなる試作例2とでは、各種物性値にほとんど差がみられなかった。つまり、従来の石油由来のラミネート用基材フィルムとしての試作例2のヘーズ及び狭角拡散透過率(LSI)と同等の数値を示した試作例1においても、ラミネート用基材フィルムとして良好であることが示された。よって、バイオマスポリプロピレンを樹脂原料として用いたフィルムは、従来の石油由来のポリプロピレン樹脂からなるフィルムと何ら遜色ない機能性を備えるということができるから、従来のフィルムと同様の使用感を維持しつつ、環境負荷の低減を図ることができるといえる。
バイオマスポリエチレンが樹脂原料に含有された試作例3においては、試作例1と同じバイオマス度であっても、各種物性値に劣り、従来のフィルムと置き換わった際に同様の使用感が得られず、バイオマス資源の利用の促進には寄与しづらい。特に、狭角拡散透過率(LSI)の値が20%以上を示し、フィルムの外観が白っぽくなり、ラミネート面に印刷された際の意匠性に劣るきらいがある。光沢度も劣ることから、包装体としたときの見栄えの悪化が想定される。さらに、水蒸気透過度が高いことから乾物の包装に適さない。その他に、フィルムの機械強度が低く、特には引張弾性率が低い値であるため、包装体として要求される剛性を満たすことができず包装適性に劣るおそれがある。フィルムの物性が低下した要因として、ポリプロピレンとポリエチレンとが完全に相溶することができず、ポリプロピレンの海の中にポリエチレンの島が微分散していることが考えられる。また、異なる種類の樹脂が混合されてなるフィルムであるため、フィルムのリサイクル(モノマテリアル)の観点からも試作例1に劣ることが理解される。
試作例4~6は単体使用の片面ヒートシール用フィルムとしての用途が想定される。試作例7~9は単体使用の溶断シール用フィルムとしての用途が想定される。両者とも良好な透明性及び剛性が要求されるフィルムである。表1~4に示されるように、バイオマスポリプロピレンが樹脂原料に含有されてバイオマス度が12.9%である試作例4と石油由来ポリプロピレンのみからなる試作例5とでは、各種物性値にほとんど差がみられなかった。同様に、バイオマス度が10.3%である試作例7と石油由来のポリプロピレンのみからなる試作例8とでは、各種物性値にほとんど差がみられなかった。透明性の指標であるヘーズ及び狭角拡散透過率(LSI)の値が試作例4,7はそれぞれ試作例5,8と同等に低い数値であり、かつ剛性の指標である引張弾性率は同等の数値を示した。よって、バイオマスポリプロピレンを樹脂原料として用いたフィルムは、従来の石油由来のポリプロピレン樹脂からなるフィルムと何ら遜色ない機能性を備えるということができるから、従来のフィルムと同様の使用感を維持しつつ、環境負荷の低減を図ることができるといえる。
バイオマスポリエチレンが樹脂原料に含有された試作例6及び9においては、試作例4及び7とそれぞれ同じバイオマス度であっても、各種物性値に劣り、従来のフィルムと置き換わった際に同様の使用感が得られず、バイオマス資源の利用の促進には寄与しづらい。特に、試作例6及び9は狭角拡散透過率(LSI)の値が20%以上を示し、フィルムの外観が白っぽくなり、フィルムの単体使用の際に意匠性が劣るきらいがある。光沢度も劣ることから、包装体としたときの見栄えの悪化が想定される。その他に、フィルムの機械強度が低く、特には引張弾性率が低い値であるため、包装体として要求される剛性を満たすことができず包装適性に劣るおそれがある。フィルムの物性が低下した要因として、ポリプロピレンとポリエチレンとが完全に相溶することができず、ポリプロピレンの海の中にポリエチレンの島が微分散していることが考えられる。また、異なる種類の樹脂が混合されてなるフィルムであるため、フィルムのリサイクル(モノマテリアル)の観点からも試作例4及び7に劣ることが理解される。
試作例10,11はマット調のラミネート用基材フィルムとしての用途が想定される。一般に、マット調の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、特有の風合いから高価な菓子等の包装用途のような高い意匠性が要求される場合が多く、外観のみならず高級感のある質感が求められることが多い。表2及び4に示されるように、バイオマスポリプロピレンが樹脂原料に含有されてバイオマス度が9.4%である試作例10と石油由来ポリプロピレンのみからなる試作例11とでは、各種物性値にほとんど差がみられなかった。よって、バイオマスポリプロピレンを樹脂原料として用いたフィルムは、従来の石油由来のポリプロピレン樹脂からなるフィルムと何ら遜色ない機能性を備えるということができるから、従来のフィルムと同様に高い質感や使用感を維持しつつ、環境負荷の低減を図ることができるといえる。
[無延伸フィルムの作製]
後述のポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を用いて試作例12~18の無延伸ポリプロピレン系フィルムと試作例19~22の無延伸ポリエチレン系フィルムを作成した。試作例19~22は、ポリプロピレン系フィルムを樹脂層の一ないし二として備える積層フィルムである。試作例12~15の無延伸ポリプロピレン系フィルムは、汎用のラミネート用シーラントフィルムとして、試作例16~18の無延伸ポリプロピレン系フィルムは、イージーピールフィルムとしてのラミネート用シーラントフィルムとして使用されることが想定される。また、試作例19,20の無延伸ポリエチレン系フィルムは溶断シールされて用いられるような単体で使用されることが想定される。試作例21,22の無延伸ポリエチレン系フィルムはマット調表基材として使用されることが想定される。なお、試作例19~22は、第一表層ないし第二表層にポリプロピレン系フィルムを樹脂層として備える積層フィルムである。下記各材料を溶融、混練してTダイフィルム成形機により共押出し、冷却ロールで冷却して無延伸フィルムを製膜した。各試作例の無延伸フィルムは共通の設定により製膜した。
[使用材料]
・ポリプロピレン樹脂(PP-1)
・ポリプロピレン樹脂(PP-3)
・ポリプロピレン樹脂(PP-4)
・ポリプロピレン樹脂(PP-5)
・ポリプロピレン樹脂(PP-6):石油由来ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、『FB3B』)、バイオマス度0%、MFR(230℃/2.16kg)7.5g/10min、密度0.900g/cm、融点163℃
・ポリエチレン樹脂(PE-2)
・ポリエチレン樹脂(PE-3):バイオマスポリエチレン(ブラスケム社製、『SLH218』)、バイオマス度92%、MFR(190℃/2.16kg)2.3g/10min、密度0.916g/cm、融点125℃
・ポリエチレン樹脂(PE-4):石油由来ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、『SP2040』)、バイオマス度0%、MFR(190℃/2.16kg)3.8g/10min、密度0.918g/cm、融点116℃
・ポリエチレン樹脂(PE-5):石油由来ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、『F222NH』)、バイオマス度0%、MFR(190℃/2.16kg)2.0g/10min、密度0.922g/cm、融点110℃
第一表層及び第二表層には、アンチブロッキング剤として粉末合成シリカ(富士シリシア株式会社製、『サイリシア430』)を適宜添加した。中間層には、ポリプロピレンフィルム用スリップ剤を適宜添加した。
[試作例12]
第一表層に樹脂(PP-3)を100重量%、中間層に樹脂(PP-3)75重量%と樹脂(PP-6)25重量%、第二表層に樹脂(PP-4)を100重量%とし、第一表層:中間層:第二表層が1:4:1の比率となるよう原料の吐出量を調整し、フィルムの厚さは30μmとして試作例12の無延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例12の無延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は0%である。
[試作例13]
中間層を樹脂(PP-1)60重量%と樹脂(PP-3)40重量%とした以外は試作例12と同様とし、試作例13の無延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例13の無延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は18.4%である。
[試作例14]
第一表層を樹脂(PP-1)25重量%と樹脂(PP-3)75重量%とした以外は試作例12と同様とし、試作例14の無延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例14の無延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は1.9%である。
[試作例15]
第一表層を樹脂(PP-3)87.5重量%と樹脂(PE-3)12.5重量%とした以外は試作例12と同様とし、試作例15の無延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例15の無延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は1.9%である。なお、試作例15のバイオマス度はポリエチレン樹脂に由来する。
[試作例16]
第一表層を樹脂(PE-4)80重量%と樹脂(PE-5)20重量%とし、中間層を樹脂(PP-6)100重量%とし、第一表層:中間層:第二表層を1:2:1の比率となるよう原料の吐出量を調整し、フィルムの厚さを20μmとした以外は試作例12と同様とし、試作例16の無延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例16の無延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は0%である。
[試作例17]
第一表層を樹脂(PE-4)100重量%とし、中間層を樹脂(PP-1)50重量%と樹脂(PP-6)50重量%とした以外は試作例16と同様とし、試作例17の無延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例17の無延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は11.5%である。
[試作例18]
中間層を樹脂(PP-1)50重量%と樹脂(PP-3)50重量%とした以外は試作例16と同様とし、試作例18の無延伸ポリプロピレン系フィルムを得た。試作例18の無延伸ポリプロピレン系フィルムのバイオマス度は11.5%である。
[試作例19]
中間層を樹脂(PE-4)100重量%とし、第二表層を樹脂(PP-3)100重量%とした以外は試作例12と同様とし、試作例19の無延伸ポリエチレン系フィルムを得た。試作例19の無延伸ポリエチレン系フィルムのバイオマス度は0%である。
[試作例20]
第一表層及び第二表層を樹脂(PP-1)25重量%と(PP-3)75重量%とした以外は試作例19と同様とし、試作例20の無延伸ポリエチレン系フィルムを得た。試作例20の無延伸ポリエチレン系フィルムのバイオマス度は3.8%である。
[試作例21]
第一表層を樹脂(PP-3)30重量%と樹脂(PP-5)35重量%と樹脂(PE-2)35重量%とし、中間層を樹脂(PE-4)100重量%とし、第二表層を樹脂(PE-4)100重量%とした以外は試作例12と同様とし、試作例21の無延伸ポリエチレン系フィルムを得た。試作例21の無延伸ポリエチレン系フィルムのバイオマス度は0%である。
[試作例22]
第一表層を樹脂(PP-1)30重量%と樹脂(PP-5)35重量%と樹脂(PE-2)35重量%とした以外は試作例21と同様とし、試作例22の無延伸ポリエチレン系フィルムを得た。試作例22の無延伸ポリエチレン系フィルムのバイオマス度は2.3%である。
試作例12~22につき、ヘーズ(%)、引張降伏強度(MPa)、引張破壊強度(MPa)、引張破壊伸度(%)、引張弾性率(GPa)、ヒートシール開始温度(℃)を測定した。試作例12~15はラミネート用シーラントフィルムとしての使用が想定されることから、透明性が要求されるため、狭角拡散透過率(LSI)(%)を測定した。試作例16~18は、ラミネート用イージーピールフィルムとしての使用が想定されることから、イージーピール適性の評価を行った。試作例19,20は溶断シール用フィルムであることから、溶断シール強度(N/15mm)を測定した。各試作例の層ごとの樹脂の比率、バイオマス度及び各測定結果を表5~10に示す。なお、試作例19~22につき、ポリエチレン系フィルムには降伏点が存在しないため、引張降伏強度(MPa)の測定は行わず、表中「-」と表記した。さらに試作例21,22は表基材用途が想定されるマット調フィルムであるため、ヒートシール開始温度は未測定である。
[ヘーズの測定]
ヘーズ(%)は、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムにおける測定と同様とした。
[引張特性]
フィルムの縦(MD)方向及び横(TD)方向の引張降伏強度(MPa)、引張破壊強度(MPa)、引張破壊伸度(%)、引張弾性率(GPa)は、上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムにおける測定と同様に、JIS K 7127(1999)に準拠して、引張試験機(株式会社オリエンテック製、『RTF-1310』)を使用して測定した。
[ヒートシール開始温度の測定]
ヒートシール開始温度(℃)は、加工適性の指標の1つであって、JIS Z 1713(2009)に準拠して測定した。フィルムを50mm×250mm(フィルムの横(TD)方向×縦(MD)方向)の長方形の試験片(ヒートシール用)に裁断した。2枚の試験片のシーラント層(第二表層)同士を重ね、ヒートシール試験機(株式会社東洋精機製作所製,『熱傾斜試験機』)を使用し、ヒートシール圧力を0.4MPa、ヒートシール時間を1秒とした。そして、5℃ずつ温度を傾斜(昇温)する条件にてヒートシールした。このとき、ヒートシーラーの熱板と試験片フィルムの間に融着防止用のセロファンフィルムを挟んだ。ヒートシールにより融着した試験片を180°に開き、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製,『EZ-SX』)により未シール部分をチャックに挟み、シール部分をT字剥離した。そして、ヒートシール強度が3(N/15mm)に到達する温度を内挿して求めた。
[狭角拡散透過率の測定]
狭角拡散透過率(LSI)(%)は、上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムにおける測定と同様に、視覚透明度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して測定を行った。
[イージーピール適性]
イージーピール適性は、袋や容器の蓋として用いられた際の開封性を示す指標として、以下の方法により評価した。試作例16~18の試作例の第一表層の表面にコロナ放電処理を行い、ポリエステル系ドライラミネート用接着剤を塗布して、15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを貼り合わせて積層フィルムとした。その後、該積層フィルムを50mm×250mm(フィルムの横(TD)方向×縦(MD)方向)の長方形の試験片(ヒートシール用)に裁断した。裁断した試験片の第二表層(ヒートシール層)同士を重ね、ヒートシール試験機(株式会社東洋精機製作所製,『熱傾斜試験機』)を使用し、ヒートシール圧力を0.4MPa、ヒートシール時間を1秒、設定温度150℃の条件にてヒートシールした。ヒートシールにより融着した試験片のシール部分の中央部を15mm幅にカットし、それを180°に開き、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製,『EZ-SX』)により未シール部分をチャックに挟み、引張速度200m/minでシール部分をT字剥離しシール強度測定を行った。さらに測定したサンプルの剥離面を観察して、試作例のフィルム内部で剥離が進行していることを確認した。シール強度が1~15N/15mmであって、かつフィルム内部での剥離が進行しているものを「〇」、それ以外を「×」とした。「×」となるフィルムは、破袋の可能性があったり開封しづらいものとなり、イージーピール適性を備えないフィルムである。
[溶断シール強度の測定]
溶断シール強度(N/15mm)は、溶断シール条件を350℃に変更した以外は、上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムにおける測定と同様に測定した。
Figure 2023113593000006
Figure 2023113593000007
Figure 2023113593000008
Figure 2023113593000009
Figure 2023113593000010
Figure 2023113593000011
[結果と考察]
試作例12~15は、ラミネート用シーラントフィルムとしての用途が想定される。表5及び8に示されるように、バイオマスポリプロピレンが樹脂原料に含有されてバイオマス度が18.4%である試作例13、バイオマス度が1.9%である試作例14と石油由来ポリプロピレンのみからなる試作例12とでは、各種物性値にほとんど差がなかった。特に、ラミネート面への印刷が想定されることから、フィルムの透明性が要求される。すなわち、透明性の指標となるヘーズ及び狭角拡散透過率(LSI)の値が低い方が優れたフィルムということができる。表8に示されるように、試作例13及び14は試作例12と同等の数値を示したことから、いずれもラミネート用シーラントフィルムとして良好であることが示された。つまり、バイオマスポリプロピレンを樹脂原料として用いていずれの層に配合したとしても、石油由来のポリプロピレンを用いた場合とフィルムの特性はさほど変化がなく、使い勝手や使用感、取り回し等は変わらないといえる。このため、従来の石油由来のフィルムからの代替として有望であることが示された。
第一表層にバイオマスポリエチレンが含有された試作例15にあっては、中間層の原料配合を同一とする試作例14と比較して狭角拡散透過率(LSI)が高く、透明性に劣ることが示された。該物性が低下した要因として、ポリプロピレンとポリエチレンとが完全に相溶することができず、ポリプロピレンの海の中にポリエチレンの島が微分散していることが考えられる。また、サトウキビ由来のバイオマスポリエチレンが樹脂原料として配合されることでフィルムの物性に劣るきらいがあり、所望される物性のためには添加量に制限があると考えられる。これに対しバイオマスポリプロピレンは、添加量に起因するフィルムの物性の低下がみられないため、その添加量に制限はなく、環境負荷の低減への貢献は大きいと考えられる。
試作例16~18は、ラミネート用イージーピールフィルムとしての用途が想定される。表6及び9に示されるように、試作例17及び18にあっては、中間層の50%をバイオマスポリプロピレンに置き換えても試作例16と遜色ないイージーピール性を示した。つまり、バイオマスポリプロピレンを樹脂原料として用いていずれの層に配合したとしても、石油由来のポリプロピレンを用いた場合とフィルムの特性はさほど変化がなく、使い勝手や使用感、取り回し等は変わらないといえる。このため、従来の石油由来のフィルムからの代替として有望であることが示された。
試作例19,20は、単体使用の溶断シール用フィルムとしての用途が想定される。中間層にポリエチレンの層が積層されることで、重量物の包装を可能とする。表7,10に示されるように、試作例20にあっては、第一表層及び第二表層の25%をバイオマスポリプロピレンに置き換えても試作例19と遜色ない溶断シール強度を示した。つまり、バイオマスポリプロピレンを樹脂原料として用いていずれの層に配合したとしても、石油由来のポリプロピレンを用いた場合とフィルムの特性はさほど変化がなく、使い勝手や使用感、取り回し等は変わらないといえる。このため、従来の石油由来のフィルムからの代替として有望であることが示された。
試作例21,22は、表基材用マット調フィルムとしての用途が想定される。表7,10に示されるように、試作例22にあっては、第一表層の30%をバイオマスポリプロピレンに置き換えても試作例21と遜色ないマット調の外観を示した。つまり、バイオマスポリプロピレンを樹脂原料として用いていずれの層に配合したとしても、石油由来のポリプロピレンを用いた場合とフィルムの特性はさほど変化がなく、使い勝手や使用感、取り回し等は変わらないといえる。このため、従来の石油由来のフィルムからの代替として有望であることが示された。
本発明のポリプロピレン系フィルム及び積層フィルムは、植物由来油から得られたバイオナフサやバイオプロパンから作られたプロピレンから生成されたバイオマスポリプロピレンを含有する樹脂原料からなることにより、環境負荷の低減を図りつつ、フィルムの性能の低下を抑制できることから、従来のフィルムの代替として有望である。
10 積層フィルム
11 第一表層
12 第二表層
13 中間層

Claims (3)

  1. ポリプロピレンを主体とする樹脂原料からなるポリプロピレン系フィルムであって、
    前記樹脂原料が、バイオナフサが加熱分解され分留されて生成されたプロピレン又はバイオプロパンが脱水素されて生成されたプロピレンが重合されたプロピレン重合体、又はこれら前記プロピレンの少なくとも一方とα-オレフィンとが重合されたポリプロピレン共重合体のいずれか一方又は両方を含むバイオマスポリプロピレンを含有し、
    前記バイオマスポリプロピレンの放射性炭素測定により測定したバイオマス度は5%以上であって、かつ、
    メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~50g/10minであり、
    密度が0.850~0.910g/cmである
    ことを特徴とするポリプロピレン系フィルム。
  2. 請求項1に記載のポリプロピレン系フィルムを含む複数の樹脂層からなる積層フィルム。
  3. フィルムのバイオマス度が5%以上である請求項1に記載のポリプロピレン系フィルム又は請求項2に記載の積層フィルム。
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