JP2023112539A - ポリプロピレン系樹脂組成物及びその射出発泡成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】得られる成形体の熱伝導性に優れるプロピレン系樹脂組成物を提供すること。【解決手段】プロピレン系重合体(A)を組成物の全質量に対して10~70質量%、アスペクト比が5以上であり、かつ、平均粒径D50が10~700μmである無機フィラー(B)を組成物の全質量に対して30~90質量%、並びに、発泡剤(D)を(A)及び(B)の合計に対して、0.1質量%~10質量%含み、(A)は、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)を5~40質量%とプロピレン単独重合体(a2)を60~95質量%とを含み、(a1)は、135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が2.0~12.0dl/gであり、(A)が230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが35~500g/10分である、プロピレン系樹脂組成物及びその射出発泡成形体。【選択図】なし

Description

本発明はポリプロピレン系樹脂組成物及びその射出発泡成形体に関する。
近年電子機器の普及に伴い,家電製品をはじめ、環境(エネルギー)、輸送(自動車)等の多くの産業製品にも電子部品が使用されるようになってきた。そのような中、CPU(中央集積回路)や周辺デバイスの高集積化や高性能化による発熱量の上昇と並んで、製品の小型化、薄型化が進み、発熱密度(単位体積当たりの発熱量)が増加する傾向にあり、熱対策が大きな課題となっている。
熱対策としては、例えば、放熱材料を用いることで、発熱部品より発生した熱を放熱させる方法、発熱部品中の熱を筐体等の冷却面に伝熱させることで発熱部品やその周辺温度を下げる方法等がある。熱対策は、製品のパフォーマンスを決定する大きな因子となり得るので、絶縁性を有しかつ高い放熱性を有する材料の開発が強く求められている。
従来、放熱及び衝撃吸収性又はシール性を兼ね備えた発泡体としては、例えば、特許文献1に開示されるように、酸化アルミニウムなどの熱伝導性フィラーを配合した樹脂を発泡させて得た熱伝導性発泡体シートが知られている。また柔軟性を付与した熱伝導発泡体として特許文献2に開示されるようなオレフィン系ゴムに板状フィラーと球状フィラーを配合した発泡体が知られている。
特開2013-231166号公報 特開2019-038912号公報
従来の設計技術の多くは、高熱伝導度を有する無機粒子を有機高分子材料中に高充填化する方法論が中心であり、無機粒子の熱伝導性を十分に反映した高熱伝導化が達成できていなかった。そのため従来の発泡体に比べてより少ないフィラー量で厚み方向の熱伝導性を発現することができる材料が望まれている。
本発明に係る一実施形態が解決しようとする課題は、得られる成形体の熱伝導性に優れるプロピレン系樹脂組成物を提供することである。
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> プロピレン系重合体(A)を組成物の全質量に対して10~70質量%、
アスペクト比が5以上であり、かつ、平均粒径D50が10~700μmである無機フィラー(B)を組成物の全質量に対して30~90質量%、及び、
発泡剤(D)を前記プロピレン系重合体(A)及び前記無機フィラー(B)の合計量に対して、0.1質量%~10質量%で含み、
前記プロピレン系重合体(A)は、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)を5~40質量%、及び、プロピレン単独重合体(a2)を60~95質量%からなる重合体であり、
前記プロピレン・エチレン共重合体(a1)は、135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が2.0~12.0dl/gであり、
前記プロピレン系重合体(A)が230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが35~500g/10分である、
プロピレン系樹脂組成物。
<2> 230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分の範囲にあるエチレン系重合体(C)を組成物の全質量に対して30質量%以下含む、<1>に記載のプロピレン系樹脂組成物。
<3> 前記エチレン系重合体(C)が、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体、又は、エチレンの単独重合体であり、前記(C)の密度が0.850~0.980g/cm3である、<2>に記載のプロピレン系樹脂組成物。
<4> 前記無機フィラー(B)は、熱流計法で測定した熱伝導率が55W/mK以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のプロピレン系樹脂組成物。
<5> <1>~<4>のいずれか1つに記載のプロピレン系樹脂組成物を射出発泡成形してなる射出発泡成形体。
本発明に係る一実施形態によれば、得られる成形体の熱伝導性に優れるプロピレン系樹脂組成物を提供される。
図1は、熱伝導率試験に用いる試験片の一例を示す図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の内容の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されることはない。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後いずれか一方に記載される単位は、特に断りがない限り同じ単位を示すことを意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下、本発明に係るプロピレン系重合体組成物および当該組成物からなる射出発泡成形体(以下、単に「成形体」と略称する場合がある。)について詳細に説明する。
(プロピレン系樹脂組成物)
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)を組成物の全質量に対して10~70質量%、アスペクト比が5以上であり、かつ、平均粒径D50が10~700μmである無機フィラー(B)を組成物の全質量に対して30~90質量%、及び、発泡剤(D)を上記プロピレン系重合体(A)及び上記無機フィラー(B)の合計量に対して、0.1質量%~10質量%で含み、
上記プロピレン系重合体(A)は、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)を5~40質量%、及び、プロピレン単独重合体(a2)を60~95質量%からなる重合体であり、
上記プロピレン・エチレン共重合体(a1)は、135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が2.0~12.0dl/gであり、
上記プロピレン系重合体(A)が230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が35~500g/10分である。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物が上記構成を有することで得られる成形体の熱伝導性に優れる。この理由は明らかではないか以下のように推察される。プロピレン系樹脂組成物は、特定のプロピレン・エチレン共重合体(a1)とプロピレン単独重合体(a2)とを特定量を含むプロピレン系重合体(A)、特定のアスペクト比及び平均粒径を有する無機フィラー(B)、及び、発泡剤(D)をそれぞれ特定量含むので、発泡成形により気泡が形成される時に成形体の厚み方向へ無機フィラー(B)を配向させることが可能となり、その結果、成形体中に熱が伝わる経路(以下、「熱伝導パス」ともいう。)を効率よく形成することになるため、得られる成形体の熱伝導性に優れると推定している。
<プロピレン系重合体(A)>
プロピレン系重合体(A)は、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)5~40質量%、及び、プロピレン単独重合体(a2)60~95質量%のみからなる重合体である。
「23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)」とは、ポリプロピレン系樹脂(A)をn-デカン中150℃で2時間加熱溶解させた後、23℃まで降温した際にn-デカン溶液側に溶解している成分を意味する。
具体的には、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)及び後述する23℃におけるn-デカン不溶部(Dinsol)として特定されるプロピレン単独重合体(a2)は、下記の方法により特定することができる。
まず、ガラス製の測定容器にプロピレン系重合体(A)約3g、デカン500mL、及びデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで撹拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン系重合体(A)を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン系重合体(A)の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G-4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液に溶解している成分が、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)と特定することができる。また、グラスフィルターに残った析出物が23℃におけるn-デカン不溶部(Dinsol)として特定されるプロピレン単独重合体(a2)であると特定することができる。
<<プロピレン系重合体(A)のMFR>>
プロピレン系重合体(A)は、ASTM D-1238に準拠する温度230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が35~500g/10分である。上記MFRは、ASTM D-1238に準拠する測定方法で求めることができる。
MFRが35~50g/10分の範囲のプロピレン系重合体(A)は、発泡成形の際の発泡セルの形成されやすく、均一な発泡セルが形成されやすいため無機フィラーの厚み方向の配向度が高くなり、熱伝導率が向上する。
上記観点から、プロピレン系重合体(A)のMFRとしては、好ましくは35~300g/10分、さらに好ましくは50~300g/10分である。
<<プロピレン系重合体(A)の含有量>>
プロピレン系重合体(A)は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
プロピレン系重合体(A)の含有量は、組成物の全質量に対して、10~70質量%であり、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは30~70質量%である。
プロピレン系重合体(A)は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
<<プロピレン・エチレン共重合体(a1)>>
プロピレン・エチレン共重合体(a1)は、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)で特定されるプロピレン・エチレン共重合体であり、かつ、後述する135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が2.0~12.0dl/gであれば、その組成は特に制限されない。
プロピレン・エチレン共重合体(a1)は、エチレンから導かれる構成単位を好ましくは20~60モル%、より好ましくは30~60モル%、さらに好ましくは35~55モル%の範囲〔但し、プロピレンから導かれる構成単位とエチレンから導かれる構成単位の合計量を100モル%とする。〕で含む。
プロピレン・エチレン共重合体(a1)は、プロピレンから導かれる構成単位を好ましくは40~80モル%、より好ましくは40~70モル%、さらに好ましくは45~65モル%の範囲〔但し、プロピレンから導かれる構成単位とエチレンから導かれる構成単位の合計量を100モル%とする。〕で含む。
〔135℃のテトラリン中での極限粘度[η]〕
23℃におけるn-デカン可溶部として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)(以下、単に「プロピレン・エチレン共重合体(a1)」ともいう。)は、135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が2.0~12.0dl/gである。プロピレン・エチレン共重合体(a1)の極限粘度[η]が上記範囲であると、得られる組成物の粘度が最適な範囲となりとなるので、均一なセル径を有する成形体を得ることができる。上記観点から、プロピレン・エチレン共重合体(a1)の135℃のテトラリン中での極限粘度[η]としては、好ましくは2.0~10.0dl/g、より好ましくは2.0~9.0dl/gの範囲にある。
上記極限粘度は、プロピレン・エチレン共重合体(a1)に含まれるエチレンから導かれる構成単位及びプロピレンから導かれる構成単位の含有量や、共重合体の分子量によって適宜調整することができる。
プロピレン・エチレン共重合体(a1)の含有量は、プロピレン系重合体(A)の全質量に対して5~40質量%である。プロピレン・エチレン共重合体(a1)の含有量が上記範囲を満たすプロピレン系重合体(A)は、組成物から得られる成形体の発泡性が良好である。
プロピレン・エチレン共重合体(a1)の含有量が5質量%以上であるとプロピレン系重合体は、得られる成形体の耐衝撃性に優れ、一方、プロピレン・エチレン共重合体(a1)の含有量が40質量%以下であると、射出成形に適した組成物の粘度が得られやすい。
プロピレン・エチレン共重合体(a1)の含有量が上記範囲を満たすプロピレン系重合体(A)は、当該組成物から得られる成形体の外観が良好でかつ面衝撃性に優れる。
上記観点から、プロピレン・エチレン共重合体(a1)の含有量は、プロピレン系重合体(A)の全質量に対して、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは8~30質量%であり、さらに好ましくは10~30質量%である。
<<プロピレン単独重合体(a2)>>
プロピレン単独重合体(a2)は、23℃におけるn-デカン不溶部(Dinsol)であることが好ましい。「23℃におけるn-デカン不溶部(Dsol)」とは、ポリプロピレン系樹脂(A)において、n-デカン中150℃で2時間加熱溶解後に23℃まで降温した際にn-デカン溶液側に溶解していない成分を意味する。
プロピレン単独重合体(a2)は、プロピレン系重合体(A)のMFRが上記範囲を満たす限り、プロピレン単独重合体(a2)のMFRは特に限定はされないが、通常、ASTM D-1238に準拠する温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFRが好ましくは50~1000g/10分、より好ましくは100~800g/10分、さらに好ましくは100~700g/10分の範囲にある。
プロピレン単独重合体(a2)の含有量は、プロピレン系重合体(A)の全質量に対して60~95質量%である。プロピレン単独重合体(a2)の含有量が上記範囲を満たすプロピレン系重合体(A)は、当該組成物から得られる成形体の発泡性が良好である。上記観点から、プロピレン単独重合体(a2)の含有量は、プロピレン系重合体(A)の全質量に対して、好ましくは70~95質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。
プロピレン系重合体(A)の製造方法は特に制限はなく、種々公知の製造方法を用いることができる。プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、例えば、上記物性を満たすプロピレン単独重合体(a2)およびプロピレン・エチレン共重合体(a1)を重合した後、上記含有量の範囲で、プロピレン単独重合体(a2)とプロピレン・エチレン共重合体(a1)とを混合、あるいは溶融混練してプロピレン系重合体(A)を得る方法、あるいは、上記物性を満たすプロピレン単独重合体(a2)およびプロピレン・エチレン共重合体(a1)を一つの重合系あるいは二つ以上の重合系で重合する方法等を例示できる。
上記プロピレン系樹脂組成物において、上記プロピレン系重合体(A)および後述するエチレン系重合体(C)に含まれるエチレン、プロピレンおよびα-オレフィンのモノマーがバイオマス由来のモノマーであってもよい。バイオマス由来のモノマーは1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
例えば、重合体を構成するモノマーがバイオマス由来のモノマーのみから構成されていてもよいし、バイオマス由来のモノマーと化石燃料由来のモノマーとから構成されていてもよい。
バイオマス由来モノマーとしては、真菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来又は動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料として得られるモノマーが挙げられる。バイオマス由来モノマーは炭素として14C同位体を1×10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC:Percentage of Modern Carbon)が100(pMC)程度であることが好ましい。
バイオマス由来モノマーの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。上記プロピレン系樹脂組成物は、環境負荷低減の観点から、バイオマス由来モノマーを含むことが好ましい。プロピレン系樹脂組成物において、原料モノマーがバイオマス由来モノマーを含んでいても、重合用触媒、重合温度などの重合体の製造条件が同等であれば、プロピレン系樹脂組成物は、14C同位体を1×10-12程度の割合で含む以外は、化石燃料由来モノマーからなるポリプロピレン系樹脂組成物と同等であり、分子構造も同等であるため、得られるプロピレン系樹脂組成物の性能も変わらないとされる。
また、本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、市販品を用いてもよく公知の製造方法で製造されたブロックコポリマーの名称で市販されているポリマーを用いてもよい。
<無機フィラー(B)>
無機フィラー(B)は、アスペクト比が5以上であり、かつ、平均粒径D50が10~700μmである。
無機フィラー(B)は、上記アスペクト比及び平均粒径D50を満たすものであれば特に制限はない。無機フィラー(B)としては、例えば、黒鉛、窒化ホウ素、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、アルミコートガラス、ウィスカ(導電性チタン酸カリ:デントール等)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。
これらの中でも、熱伝導性に優れる観点から、無機フィラー(B)としては、黒鉛、窒化ホウ素であることが好ましく、黒鉛、又は、窒化ホウ素であることがより好ましく、黒鉛であることがさらに好ましい。
無機フィラー(B)の形状としては、アスペクト比が5以上であれば特に限定されず、例えば、鱗片状、板状、膜状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状などが挙げられる。これらのなかでは鱗片状が好ましい。
無機フィラー(B)のアスペクト比は5以上である。アスペクト比が5以上であると、無機フィラー(B)が互いに接触する割合が高くなり、熱伝導パスを形成しやすく熱伝導性に優れる。上記観点からは、無機フィラー(B)のアスペクト比としては、5~6であることが好ましく、5~7であることがより好ましい。
無機フィラー(B)のアスペクト比とは、無機フィラー(B)の長径を短径で除した値をいう。ここで、無機フィラー(B)の長径とは、熱伝導性フィラーにおいて最も長い部分の長さをいい、無機フィラー(B)の短径とは、上記長径に直交する方向において、熱伝導性フィラーの最も短い部分の長さをいう。
上記無機フィラー(B)の長径及び短径は、無機フィラー(B)の顕微鏡画像を用いて算出される。顕微鏡は走査電子顕微鏡による観察が好ましい。また、上記無機フィラー(B)のアスペクト比の算出は、成形体又はプロピレン系樹脂組成物から無機フィラー(B)を抽出し、無機フィラー(B)の顕微鏡画像を取得した後、当該画像内から無作為に10個の無機フィラー(B)を選択し、各フィラーにおける長径及び短径に基づいてアスペクト比を算出し、さらにその平均値を算出することによって求められるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
無機フィラー(B)の平均粒径D50としては、10~700μmであり、10~500μmであることが好ましく、10~300μmであることがより好ましい。
無機フィラー(B)の平均粒径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるメジアン径D50をいい、例えば、(株)島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2100」を用いて測定されるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
無機フィラー(B)は、熱流計法で測定した熱伝導率が55W/mK以上であることが好ましく、65W/mK~2000W/mKであることがより好ましく、65~1500W/mKであることがさらに好ましい。
熱流計法で測定した熱伝導率はASTME1530に準拠した測定方法により求められる。具体的には実施例に記載の測定条件により求められる。
無機フィラー(B)の含有量は、組成物の全質量に対して30~90質量%である。熱伝導性に優れる観点から、無機フィラー(B)の含有量は、組成物の全質量に対して好ましくは30~80質量%の範囲である。
無機フィラー(B)は、単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<エチレン系重合体(C)>
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、エチレン系重合体(C)を含んでいてもよい。
プロピレン系樹脂組成物がエチレン系重合体(C)を含む場合、無機フィラー(B)は組成物中のエチレン系重合体(C)中に存在する傾向にあり、無機フィラー(B)が偏在することで、効果的に熱伝導パスを形成することができるため熱伝導パスを形成すしやすい。そのため熱伝導率を向上させることができる。
エチレン系重合体(C)としては、特に制限はなく、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であってもよい。エチレン系重合体(C)は、一般に、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)と呼称されているエチレン系重合体、又は、非晶性、あるいは低結晶性のエチレン・α-オレフィン共重合体、エチレンを主体とする共重合体が挙げられる。
エチレンと共重合されるα-オレフィンは、好ましくは炭素数3~20のα-オレフィンであり、より好ましくは炭素数3~10のα-オレフィンである。
エチレンと共重合されるα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセンおよび12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。これらα-オレフィンの中でも、1-ブテンおよび1-オクテンが特に好ましい。これらα-オレフィンは、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いられる。
エチレン系重合体(C)のASTM D-1238に準拠して温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFRは、好ましくは1~50g/10分、より好ましくは1~40g/10分、さらに好ましくは1~30g/10分の範囲にある。
エチレン系重合体(C)の密度は、好ましくは0.850~0.980g/cm3、より好ましくは0.850~0.970g/cm3の範囲にある。
密度は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
エチレン系重合体(C)の含有量としては、組成物の全質量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは0~30質量%であり、さらに好ましくは0~25質量%の範囲である。
エチレン系重合体(C)は、1種単独であってもよいし、2種以上の異なるエチレン系重合体を組み合わせたものであってもよい。
熱伝導性に優れる観点から、プロピレン系樹脂組成物は、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分の範囲にあるエチレン系重合体(C)を組成物の全質量に対して30質量%以下含むことが好ましく、30℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分の範囲にあるエチレン系重合体(C)を組成物の全質量に対して30質量%以下含み、かつ、エチレン系重合体(C)が、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体、又は、エチレンの単独重合体であり、上記(C)の密度が0.850~0.980g/cm3であることがより好ましい。
エチレン系重合体(C)の製造方法としては、特に制限はなく、種々の公知の製造方法で製造し得る。
<発泡剤(D)>
プロピレン系樹脂組成物は、発泡剤(D)を上記プロピレン系重合体(A)及び上記無機フィラー(B)の合計量に対して、0.1質量%~10質量%含む。
発泡剤(D)を含むことで、発泡成形時に気泡(発泡セル)を形成するためのガスを供給することができる
発泡剤(D)としては特に制限はなく、発泡成形に利用できるものを選択して用いることができる。発泡剤(D)化学発泡剤であってもよいし、物理発泡剤であってもよい。化学発泡剤としては分解型発泡剤が挙げられる。
分解型発泡剤の具体例としては、次の化合物を挙げられる。
(1)無機系発泡剤:重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム。
(2)有機系発泡剤:
(a)N-ニトロソ化合物:N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン。
(b)アゾ化合物:アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート。
(c)スルフォニルヒドラジド化合物:ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン-3,3’-ジスルフォニルヒドラジド。
(d)アジド化合物:カルシウムアジド、4,4’-ジフェニルジスルフォニルアジド、p-トルエンスルフォニルアジド。
分解型発泡剤は、分解による気体の発生を誘導する、クエン酸等の有機酸やクエン酸ナトリウム等の有機酸金属塩などの発泡助剤と併用してもよい。
また、物理発泡剤としては、溶剤型発泡剤及び気体状発泡剤が挙げられる。
溶剤型発泡剤としては、各種の液化ガスが挙げられ、具体例としては、プロパン、ブタン、ネオペンタン、ヘプタン、イソヘキサン、ヘキサン、イソヘプタン、ヘプタン等の低沸点脂肪族炭化水素や、フロンガスで代表される低沸点のフッ素含有炭化水素を挙げられる。
気体状発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アスタチンなどの不活性ガスが挙げられる。気体状発泡剤は、超臨界状態で用いてもよい。
発泡剤(D)の配合割合は、上述したプロピレン系重合体(A)及び無機フィラー(B)の合計に対して、0.1質量%~10質量%の範囲にあり、0.1質量%~5.0質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%~3.0質量%の範囲にあることがより好ましい。
プロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて上記プロピレン系重合体(A)、上記無機フィラー(B)、上記エチレン系重合体(C)および発泡剤(D)に加え、下記成分を含んでいてもよい。
<<その他の成分>>
ポリプロピレン系樹脂組成物は、その目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記(A)~(D)以外の各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックスを挙げることができる。これらの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
<<プロピレン系樹脂組成物の製造方法>>
プロピレン系樹脂組成物の製造方法は、種々公知の製造方法を用いることができる。プロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、上記プロピレン系重合体(A)、無機フィラー(B)および上記エチレン系重合体(C)、発泡剤(D)などを所定の量で、ドライブレンドや押出機内での溶融混練等の通常の方法で混合して製造できる。
(射出発泡成形体)
本発明に係る射出発泡成形体は、上記プロピレン系樹脂組成物を射出発泡成形してなる。
以下、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物を用いた射出発泡成形体の製造の一実施形態について以下に説明する。
〔射出発泡成形体の製造方法〕
射出発泡成形体の製造方法としては、射出発泡成形用の金型内に上記プロピレン系樹脂組成物を充填する工程と、上記金型内のプロピレン系樹脂組成物を発泡及び固化させて射出発泡成形体を得る工程と、を有することが好ましい。
射出発泡成形用の金型、成形用の金型内へのプロピレン系樹脂組成物の充填方法、及び発泡成形条件は、目的とする発泡成形体の形状や物性に応じて選択すればよい。
成形用の金型内へのプロピレン系樹脂組成物の充填を射出によって行う射出成形法を用いることで、射出発泡成形体を得ることができる。
成形用の金型内へのプロピレン系樹脂組成物の充填方法としては特に制限はなく、上記発泡剤(D)を、プロピレン系樹脂組成物の発泡剤(D)以外の成分と混合してから成形用の金型内に導入してもよいし、成形用の型内への樹脂材料の導入路中に、例えば射出成形する際のシリンダーまたは、シリンダーからキャビティへの流路中で樹脂材料に注入混合してもよい。
厚みが1.0~5.0mm程度の薄肉状部分を有する射出発泡成形体の形成には、コアバック成形法を好適に用いることができる。
コアバック成形法に用いる成形金型の一形態は、固定型と可動型とを有する。これらの型はプロピレン系樹脂組成物の射出充填時には型締状態にあることが好ましい。また、金型内のプロピレン系樹脂組成物が射出充填されるキャビティの容積は、可動型を後退(コアバック)させてキャビティを拡開させることにより増大させることができる。射出充填完了後の可動型を作動させるタイミングは、目的とする発泡率、発泡形状、射出発泡成形体の各種の物性等に応じて決定することができる。
コアバック時の可動型の移動速度は、射出発泡成形体の厚み、プロピレン系樹脂組成物の組成、発泡剤の種類及び添加量、金型温度、樹脂温度等の条件に応じて選択することができる。
射出するプロピレン系樹脂組成物の温度及び金型温度は、成形体の厚み、プロピレン系樹脂組成物の組成、発泡剤の種類及び添加量などにより選択することができる。
例えば、射出する樹脂材料の温度は、好ましくは170~250℃、より好ましくは180~230℃の範囲とすることができる。また固定型及び可動型の金型温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは30~80℃の範囲とすることができる。
射出圧力は、好ましくは10~250MPa、より好ましくは12~200MPaの範囲から選択することができる。良好な発泡性を得る上で、金型内に射出充填されるプロピレン系樹脂組成物の温度は、金型温度よりも高いことが好ましい。
本発明に係る射出発泡成形体は、自動車内装部品、電化製品等、容器の断熱性が必要な各種用途に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例で用いたプロピレン系樹脂組成物に含まれる重合体として、以下の重合体等を用いた。
<(1)プロピレン系重合体(A)>
<<(1-1)プロピレン系重合体(A-1)>>
プロピレン系重合体(A)として、ASTM D-1238に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが60g/10分であり、かつ、下記プロピレン・エチレン共重合体(a1-1)及びプロピレン単独重合体(a2-1)を含む、プロピレン系重合体(A-1)を用いた。
プロピレン・エチレン共重合体(a1-1)及びプロピレン単独重合体(a2-1)の物性値は下記のとおりである。
・プロピレン・エチレン共重合体(a1-1)〔23℃におけるn-デカン可溶部〕:135℃のテトラリン中での極限粘度[η]=6.0dl/g、(a1-1)含有量=11.0質量%
・プロピレン単独重合体(a2-1)〔23℃におけるn-デカン不溶部〕:ASTM D-1238に準拠して温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFR=210g/10分、(a2-1)含有量=89.0質量%
<<(1-2)プロピレン系重合体(A-2)>>
プロピレン系重合体(A)として、ASTM D-1238に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが120g/10分であり、かつ、下記プロピレン・エチレン共重合体(a1-2)及びプロピレン単独重合体(a2-2)を含む、プロピレン系重合体(A-2)を用いた。
・プロピレン・エチレン共重合体(a1-2)〔23℃におけるn-デカン可溶部〕:135℃のテトラリン中での極限粘度[η]=7.9dl/g、(a1-2)含有量=11.0質量%
・プロピレン単独重合体(a2-2)〔23℃におけるn-デカン不溶部〕:ASTM D-1238に準拠して温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFR=500g/10分、(a2-2)含有量=89.0質量%
<<(1-3)プロピレン系重合体(A-3)>>
プロピレン系重合体(A)として、ASTM D-1238に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが60g/10分、かつ、下記プロピレン・エチレン共重合体(a1-2)及びプロピレン単独重合体(a2-2)を含む、プロピレン系重合体(A-3)を用いた。
・プロピレン・エチレン共重合体(a1-2)〔23℃におけるn-デカン可溶部〕:135℃のテトラリン中での極限粘度[η]=2.3dl/g、(a1-2)含有量=23.0質量%
・プロピレン単独重合体(a2-2)〔23℃におけるn-デカン不溶部〕:ASTM D-1238に準拠して温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFR=280g/10分、(a2-2)含有量=89.0質量%
<<(1-4)プロピレン系重合体(A-4)>>
プロピレン系重合体(A)として、ASTM D-1238に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが30g/10分、かつ、下記プロピレン・エチレン共重合体(a1-2)及びプロピレン単独重合体(a2-2)を含む、プロピレン系重合体(A-4)を用いた。
・プロピレン・エチレン共重合体(a1-2)〔23℃におけるn-デカン可溶部〕:135℃のテトラリン中での極限粘度[η]=6.0dl/g、(a1-2)含有量=11.0質量%
・プロピレン単独重合体(a2-2)〔23℃におけるn-デカン不溶部〕:ASTM D-1238に準拠して温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFR=70g/10分、(a2-2)含有量=89.0質量%
〔極限粘度[η]〕
上記プロピレン・エチレン共重合体(a1-1)及び(a1-2)のデカリン中135℃で測定した極限粘度[η](dl/g)は次のようにして測定した。
まず、サンプル約25mgをデカリン25mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶液を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求め、この値を試料の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η](dl/g)とした。
<(2)無機フィラー(B)>
(2-1)黒鉛
(B-1):伊藤黒鉛工業(株)製、商品名:「PC99-300M」(平均粒径D50:50μm、アスペクト比9、熱伝導率150W/mK)
(B-2):伊藤黒鉛工業(株)製、商品名:「SG-BL40」(平均粒径D50:40μm、アスペクト比1.3、熱伝導率150W/mK)
(B-3):宇部マテリアルズ(株)製、商品名:「RF-70-SC」(平均粒径D50:50μm、アスペクト比1.3、熱伝導率50W/mK)
<(3)エチレン系重合体(C)>
(3-1)エチレン系重合体
(C-1):エチレン系重合体(C)として、密度=0.864g/cm3、ASTM D-1238に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定したMFR=3.6g/10分のエチレン・ブテン共重合体〔三井化学(株)製、タフマー(登録商標)4050S〕を、エチレン系重合体(C-1)として用いた。
(C-2):密度=0.964g/cm3、230℃、荷重2.16kgでのMFR=5g/10分のエチレン系重合体を(C-2)として用いた。
実施例および比較例で用いたプロピレン系樹脂組成物に含まれる配合剤は以下の配合剤を用いた。
<(4)発泡剤(D)>
発泡剤(D-1):重炭酸ナトリウム系発泡剤(商品名 ポリスレンEE65C(永和化成工業(株)製))
〔射出発泡成形方法〕
実施例および比較例で得たプロピレン系樹脂組成物の射出発泡成形体は、以下の方法で成形した。
射出成形機:(株)日本製鋼所製 J350ADS-460H(型締め力350t)
金型:
キャビティサイズ:縦:400mm、横:200mm、厚さ:1.5mm
ゲート:ダイレクトゲート(成型品の中心に設置)
射出シリンダー設定温度:200℃
金型表面温度:40℃
射出速度:120mm/s
発泡成形条件:
発泡工程終了後の成形型クリアランス:2.3mm
コアバック時間:0.2s
組成物充填後の発泡開始遅延時間:0s
射出時金型キャビティクリアランス(L0):1.5mm
上記で得られた射出発泡成形体の物性は以下の方法で測定した。
〔発泡性〕
上記方法で得られた射出発泡成形体の発泡断面のボイドを目視で確認し、以下の評価基準に従って判断した。
-評価基準-
A:射出発泡成形体の断面において、幅1mm未満のボイドが確認されるか、又は、ボイドが確認されない。
B:射出発泡成形体の断面において、幅1mm以上のボイドが確認される。
〔熱伝導性〕
200mm×400mmの大きさになるように射出発泡成形体を切り出し、図1に示される位置から下記の試験片形状となるように試験片を切削した。この試験片を用いてASTME1530を参考に、下記の測定条件にて熱伝導率試験を実施した。
測定された試験片(t2.3mm成形体)の熱伝導率(W/mK)の値は、以下の評価基準に従って熱伝導性を評価し、熱伝導率の値が大きいほど熱伝導性に優れるといえる。
試験装置:GH-1(アルパック理工社製)
設定温度:30℃
試料保持用設定空気圧:0.3MPa
試験片形状:直径φ:約50mm×厚み2.3mm
-評価基準-
A:熱伝導率が0.28W/mK以上であった。
B:熱伝導率が0.28W/mK未満であった。
〔実施例1〕
上記プロピレン系重合体(A-1)を60質量%、および上記共重合体(B-1)を40質量%混合し、造粒しプロピレン系重合体(A)及び無機フィラー(B)の合計100質量部に対して、上記発泡剤(D-1):0.3質量部を配合(添加)してポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて上記記載の方法で射出発泡成形して射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
上記プロピレン系重合体(A-1)を70質量%、および上記共重合体(B-1)を30質量%に変更する以外は実施例1と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
実施例2で用いた発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(A-2)を70質量部に変更した以外は、実施例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
実施例2で用いたポリプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(A-3)を70質量部に変更した以外は、実施例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
上記プロピレン系重合体(A-1)を50質量%、および上記共重合体(B-1)を30質量%とし、エチレン系重合体(C-1)を20質量%に変更した以外は実施例1と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔実施例6〕
実施例5で用いたエチレン系重合体に替えて、エチレン系重合体(C-2)を20質量部に変更した以外は、実施例5と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
実施例2で用いた発泡剤(D)を除いた以外は、実施例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
実施例2で用いた無機フィラー(B-1)に替えて、無機フィラー(B-2)を30質量部に変更した以外は、実施例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
実施例2で用いた無機フィラー(B-1)に替えて、無機フィラー(B-3)を30質量部とした以外は、実施例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
実施例2で用いたプロピレン系重合体(A-1)に替えて、プロピレン系重合体(A-4)を70質量部に変更した以外は、実施例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を形成した。
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
表1中の各成分の欄の「-」とは、該当する成分を含まないことを意味している。また、発泡性の欄の「-」とは、発泡性の評価を行っていないことを意味している。
表1に示すように、実施例1~6のポリプロピレン系樹脂組成物より得られ射出発泡成形体は、熱伝導率が0.28W/mK以上であり、熱伝導率に優れていることが分かる。
これに対して、比較例1のポリプロピレン系樹脂組成物より得られる成形体は、発泡剤(D)を含まないため、発泡による無機フィラーが成形体の厚み方向への配向されることによる熱伝導率の向上効果が確認されなかった。
比較例2のポリプロピレン系樹脂組成物より得られ射出発泡成形体は、発泡剤(D)の発泡によって、無機フィラー(B)が成形体の厚み方向へ配向しても、無機フィラー(B)のアスペクト比が5未満であるため、熱伝導パスの形成の効率が悪く、実施例1~6と比べて熱伝導率が低いと推察している。
比較例3のポリプロピレン系樹脂組成物より得られ射出発泡成形体は、無機フィラー(B)のアスペクト比が5未満でありかつ熱伝導率が低いため、実施例1~6と比べて熱伝導性が低いことが分かる。
比較例4のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A-4)のMFRが35g/10分未満であるため、発泡セルを形成することができず、射出発泡成形体中に幅1mm以上の気泡が確認されており、成形体中に空気の層が形成されていることがわかる。そのため熱伝導率が低下していると推察している。
以上より、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、得られる成形体の熱伝導性に優れていることがわかる。

Claims (5)

  1. プロピレン系重合体(A)を組成物の全質量に対して10~70質量%、
    アスペクト比が5以上であり、かつ、平均粒径D50が10~700μmである無機フィラー(B)を組成物の全質量に対して30~90質量%、及び、
    発泡剤(D)を前記プロピレン系重合体(A)及び前記無機フィラー(B)の合計量に対して、0.1質量%~10質量%で含み、
    前記プロピレン系重合体(A)は、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)を5~40質量%、及び、プロピレン単独重合体(a2)を60~95質量%からなる重合体であり、
    前記プロピレン・エチレン共重合体(a1)は、135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が2.0~12.0dl/gであり、
    前記プロピレン系重合体(A)が230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが35~500g/10分である、
    プロピレン系樹脂組成物。
  2. 230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分の範囲にあるエチレン系重合体(C)を組成物の全質量に対して30質量%以下含む、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  3. 前記エチレン系重合体(C)が、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体、又は、エチレンの単独重合体であり、前記(C)の密度が0.850~0.980g/cm3である、請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  4. 前記無機フィラー(B)は、熱流計法で測定した熱伝導率が55W/mK以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を射出発泡成形してなる射出発泡成形体。
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