JP2023112046A - 粒子の形成を低減する方法及びそれにより形成される組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】粒子の形成を低減する方法及びそれにより形成される組成物を提供すること。【解決手段】本明細書に開示するバイオ医薬組成物及び医薬品は、眼に見えない粒子の形成量の低減を示す。本明細書に開示する組成物及び医薬品は、タンパク質と、高パーセンテージ量(例えば、少なくとも97%)の長鎖脂肪酸エステルを含む界面活性剤または安定剤とを含む。かかる組成物及び医薬品の調製方法ならびに保管方法もまた本明細書に開示する。【選択図】 図2

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月19日に出願された、米国仮出願第62/560,365号の優先権の利益を主張する。当該仮出願の全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
本開示は、保管時の眼に見えない粒子の形成量の低減を示すバイオ医薬製剤及び医薬品、ならびにそれらの調製方法及び保管方法に関する。具体的には、本開示は、タンパク質と、高パーセンテージ量の長鎖モノ不飽和脂肪酸エステルを含む界面活性剤または安定剤とを含む製剤及び医薬品、ならびにそれらの調製方法及び保管方法に関する。
ポリソルベートは従来、活性成分としてタンパク質を含む医薬品(「DP」とも呼ばれる)に使用されており、製造、保管、取り扱い、及び投与の過程で表面に誘起される(気/液または固/液)不安定性からタンパク質を保護する。目的のタンパク質(POI)と共精製されたリパーゼは、ポリソルベートとともに製剤に含まれる場合、ポリソルベートの脂肪酸エステルを遊離の脂肪酸に加水分解し得ることがわかった。ポリソルベートの脂肪酸エステルの非酵素的加水分解もまた、製剤中でより遅い速度で起こり得る。加水分解の結果生じる遊離脂肪酸は凝集し、かかる製剤を含む医薬品中で時間とともに微粒子を形成し得る。微粒子(眼に見えるもの及び眼に見えないものの両方)は、製品の安定性に影響を与える可能性があり、公定粒子状物質仕様(例えば、米国FDA仕様)を満たさないために医薬品の保存可能期間を短縮し、臨床的な影響、例えば、投与時に免疫原性の反応をもたらし得る。
POIの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)またはアフィニティークロマトグラフィーは、POIと共精製されるリパーゼを低減または除去し、ひいては脂肪酸エステルの加水分解を減少させ得る。しかしながら、タンパク質製剤の調製にHICまたはアフィニティークロマトグラフィーのステップを追加するには、製造方法に、例えば、機器、材料、調製、プロトコル、及びプロトコル検証を追加する必要があり、結果として時間と費用が追加される。さらに、酵素を除去するためのHICまたはアフィニティークロマトグラフィーのステップは、製剤中の脂肪酸エステルの非酵素的加水分解の防止には役立たない。タンパク質組成物において、例えば、追加のHICやアフィニティークロマトグラフィーのステップを使用することなく、眼に見えない及び眼に見える微粒子の形成を低減または防止する方法がそれ故望まれる。
ポリソルベート80の主要な脂肪酸エステルであるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートの化学構造の図である。 各種ポリソルベート80を含むタンパク質医薬品における、膜顕微鏡粒子濃度法で測定した眼に見えない微粒子(≧10μm)数を示すグラフである。 各種ポリソルベート80を含むタンパク質医薬品における、マイクロフローイメージング(MFI)で測定した眼に見えない微粒子(≧10μm)数を示すグラフである。 各種ポリソルベート80を含むタンパク質医薬品における、遊離脂肪酸の測定濃度を示すグラフである。
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、様々な例示的な実施形態を示し、その記述とともに、本開示の実施形態の原理を説明するのに役立つ。本明細書に記載の実施形態または実施例の任意の特徴(例えば、組成物、製剤、方法等)は、任意の他の実施形態または実施例と組み合わせてもよく、本開示に包含される。
本明細書で使用される、用語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」またはその任意の他の変形は、非排他的な包含を対象とすることを意図しており、要素のリストを含むプロセス、方法、項目、または装置は、それらの要素のみを含むのではなく、かかるプロセス、方法、項目、または装置に明示的に記載されていない、またはこれに固有ではない他の要素も含み得る。「例示的」という用語は、「理想的」ではなく、「例」という意味で使用される。用語「例えば(for example)」及び「例えば(such as)」ならびにその文法的均等物に関しては、特に明記しない限り、「及びこれに限定されない」という表現が続くと理解される。
本明細書で使用される、「約」という用語は、実験誤差に起因する変動を説明することを意図している。本明細書に報告されるすべての測定値は、特に明記しない限り、該用語が明示的に使用されているか否かにかかわらず、「約」という用語で修飾されると理解される。本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他を示す場合を除き、複数の指示対象を含む。
本明細書に開示するすべての数値(すべての開示する値、制限、及び範囲を含む)は、開示する数値から+/-10%の変動(異なる変動が指定されない限り)を有し得る。さらに、特許請求の範囲では、値、制限、及び/または範囲は、当該値、制限、及び/または範囲+/-10%を意味する。
本開示は、本明細書に開示する特定の組成物、製剤、材料製造業者、医薬品、方法、または実験条件に限定されず、当業者の専門内で多くの変形が可能である。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図しない。
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法及び材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、特定の方法及び材料をここに説明する。言及されるすべての出版物は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用される、「タンパク質」という用語は、アミド結合を介して共有結合した約20個を超えるアミノ酸を有する任意のアミノ酸ポリマーを指す。タンパク質は、当技術分野で一般に「ポリペプチド」として知られる1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。従って、ポリペプチドはタンパク質の場合があり、また、タンパク質は複数のポリペプチドを含んで単一のコンフォメーションの単一の機能的生体分子を形成する場合がある。ジスルフィド架橋(例えば、システイン残基間でシスチンを形成する)が一部のタンパク質に含まれる場合がある。例えば、ジスルフィド架橋は、インスリン、免疫グロブリン、プロタミン等の適切な構造及び機能に不可欠である。
ジスルフィド結合の形成に加えて、タンパク質は他の翻訳後修飾を受ける場合がある。これらの修飾としては、脂質化(例えば、ミリストイル化、パルミトイル化、ファルネソイル化、ゲラニルゲラニル化、及びグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成)、アルキル化(例えば、メチル化)、アシル化、アミド化、グリコシル化(例えば、アルギニン、アスパラギン、システイン、ヒドロキシリジン、セリン、スレオニン、チロシン、及び/またはトリプトファンでのグリコシル基の付加)、ならびにリン酸化(すなわち、セリン、スレオニン、チロシン、及び/またはヒスチジンへのリン酸基の付加)が挙げられる。
本明細書で使用される、「タンパク質」という用語には、バイオ医薬タンパク質、研究または治療に使用される組み換えタンパク質、トラップタンパク質及び他のFc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、抗体断片、抗体様分子、ナノボディ、組み換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン等が含まれる。タンパク質は、組み換え細胞系の産生系、例えば、昆虫のバキュロウイルス系、酵母系(例えば、Pichia種)、哺乳類系(例えば、CHO細胞及びCHO-K1細胞のようなCHO誘導体)を用いて産生され得る。
本明細書で使用される、「抗体」という用語には、4本のポリペプチド鎖、すなわち、2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖がジスルフィド結合によって相互に連結されて構成される免疫グロブリンが含まれる。通常、本開示の抗体は、分子量100kDa超、例えば、130kDa~200kDa、例えば、約140kDa、145kDa、150kDa、155kDa、または160kDaを有する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含む。VH領域及びVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分され得、これには、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在し得る。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRはHCDR1、HCDR2及びHCDR3と略される場合があり、軽鎖CDRはLCDR1、LCDR2及びLCDR3と略される場合がある。
例えば、免疫グロブリンG(IgG)と呼ばれるクラスの免疫グロブリンは、ヒト血清で共通して見られ、4本のペプチド鎖、すなわち、2本の軽鎖及び2本の重鎖を含む。各軽鎖は、シスチンのジスルフィド結合を介して1本の重鎖に連結され、2本の重鎖は2つのシスチンのジスルフィド結合を介して互いに結合されている。他のクラスのヒト免疫グロブリンとしては、IgA、IgM、IgD、及びIgEが挙げられる。IgGの場合、4つのサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が存在する。各サブクラスは定常領域が異なり、結果として、異なるエフェクター機能を有し得る。
本明細書で使用される、「抗体」という用語には、完全な抗体分子の抗原結合断片も含まれる。本明細書で使用される、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」等の用語には、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在する、酵素的に得られる、合成、もしくは遺伝子組み換えポリペプチドまたは糖タンパク質が含まれる。抗体の抗原結合断片は、例えば、抗体の可変ドメイン及び任意に定常ドメインをコードするDNAの操作ならびに発現を含めた、タンパク質分解または組換え遺伝子工学技術等の任意の適切な標準技術を使用して、完全な抗体分子から得る場合もある。かかるDNAは既知であり、及び/または、例えば、商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、または合成され得る。該DNAをシーケンシングし、化学的に、または分子生物学手法を用いて操作し、例えば、1つ以上の可変ドメイン及び/または定常ドメインを適切な配置にアレンジすること、コドンを導入すること、システイン残基を作り出すこと、アミノ酸を修飾、追加もしくは削除すること等が可能である。
本明細書で使用される、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図している。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR及び特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される、「ヒト抗体」という用語は、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
「Fc含有タンパク質」という語句には、抗体、二重特異性抗体、イムノアドヘシン、ならびに免疫グロブリンのCH2及びCH3領域の少なくとも機能的部分を含む他の結合タンパク質が含まれる。「機能的部分」とは、Fc受容体(例えば、FcγR、またはFcRn、すなわち、新生児Fc受容体)に結合することができる、及び/または補体の活性化に関与し得るCH2及びCH3領域を指す。CH2及びCH3領域がいかなるFc受容体とも結合することができず、補体を活性化することもできないようにする削除、置換、及び/または挿入またはその他の修飾がCH2及びCH3領域に含まれる場合、当該CH2及びCH3領域は機能的ではない。
Fc含有タンパク質は、当該修飾が当該結合タンパク質の1つ以上のエフェクター機能に影響を及ぼす場合を含む免疫グロブリンドメインの修飾(例えば、FcγR結合、FcRn結合、ひいては半減期、及び/またはCDC活性に影響を及ぼす修飾)を含むことができる。かかる修飾としては、免疫グロブリン定常領域のEUナンバリングに準拠して、以下の修飾及びその組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない:238、239、248、249、250、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、297、298、301、303、305、307、308、309、311、312、315、318、320、322、324、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、337、338、339、340、342、344、356、358、359、360、361、362、373、375、376、378、380、382、383、384、386、388、389、398、414、416、419、428、430、433、434、435、437、438、及び439。
例えば、限定する目的ではないが、該結合タンパク質は、Fc含有タンパク質でよく、血清半減期の延長(列挙された修飾(複数可)を含まない同じFc含有タンパク質と比較して)を示す場合があり、位置250(例えば、EもしくはQ)、250及び428(例えば、LもしくはF)、252(例えば、L/Y/F/WもしくはT)、254(例えば、SもしくはT)、及び256(例えば、S/R/Q/E/DもしくはT)での修飾、または428及び/または433(例えば、L/R/SI/P/QもしくはK)及び/または434(例えば、H/FもしくはY)での修飾、または250及び/または428での修飾、または307もしくは308(例えば、308F、V308F)、及び434での修飾を有し得る。別の例では、該修飾は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)の修飾、428L、259I(例えば、V259I)、ならびに308F(例えば、V308F)の修飾、433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)の修飾、252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)の修飾、250Q及び428Lの修飾(例えば、T250Q及びM428L)、または307及び/または308の修飾(例えば、308Fもしくは308P)を含むことができる。
「細胞」という用語には、組み換え核酸配列を発現するのに適切な任意の細胞が含まれる。細胞には、原核生物及び真核生物の細胞(単細胞または多細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、Bacillus種、Streptomyces種の株等)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolica等)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusiani等)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または細胞融合、例えば、ハイブリドーマまたはクアドローマが含まれる。いくつかの実施形態では、該細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウスの細胞である。いくつかの実施形態では、該細胞は真核細胞であり、以下の細胞から選択される:CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び前述の細胞に由来する細胞株。いくつかの実施形態では、該細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子を含み、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)である。
「脂肪酸エステル」という用語は、エステル結合を介して頭部基に連結した脂肪酸鎖を含む任意の有機化合物を意味する。エステル結合は、ヒドロキシル基(例えば、アルコールまたはカルボン酸)がアルコキシ基で置換された場合に生じる。本明細書で使用される、ヒドロキシル基は、カルボン酸、より具体的には脂肪酸、及び/またはアルコール、例えば、グリセロール、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド等の部分であり得る。該アルコール基は、本明細書では一般に頭部基と呼ばれる。
脂肪酸エステルの例としては、一般に、リン脂質、脂質(例えば、その頭部基はグリセロールであり、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドを含む)、ならびに、例えば、非イオン性界面活性剤であるポリソルベート20、ポリソルベート60、及びポリソルベート80のようなポリソルベートを含めた界面活性剤及び乳化剤が挙げられる。界面活性剤及び乳化剤は、共溶媒及び安定剤として有用である。それらは、親水性表面及び親油性表面の両方と会合することにより、タンパク質のような含有物の分散及び構造安定性を維持する働きをする。界面活性剤は主に、機械的応力、例えば、気/液界面に誘起される、及び固/液界面に誘起される部分アンフォールディングならびに自己会合に対するタンパク質の安定性を高めるためにタンパク質製剤に添加される。界面活性剤なしでは、タンパク質は場合によっては溶液中で構造的に不安定になり、多量体の凝集体を形成し、これが最終的に眼に見えない粒子になり得る。
「脂肪酸」または「脂肪酸鎖」という用語は、脂肪族尾部を有するカルボン酸を意味する。脂肪族尾部とは単に、炭素及び水素、場合によっては酸素、硫黄、窒素、及び/または塩素の置換を含む炭化水素鎖である。脂肪族尾部は、飽和(飽和脂肪酸等の場合)、すなわち、すべての炭素-炭素結合が単結合(すなわち、アルカン)の場合がある。脂肪族尾部は不飽和(不飽和脂肪酸等の場合)の場合があり、ここでは、1つ以上の炭素-炭素結合が二重結合(アルケン)または三重結合(アルキン)である。
脂肪酸は、一般に、脂肪族尾部に6個未満の炭素を有する短鎖脂肪酸、6~12個の炭素を有する中鎖脂肪酸、13~21個の炭素を有する長鎖脂肪酸、及び22個以上の炭素の脂肪族尾部を有する超長鎖脂肪酸として設計される。上記のように、脂肪酸は、スチフネス及び融点に相関する飽和度によっても分類される。一般的な脂肪酸としては、カプリル酸(8炭素:0二重結合、8:0)、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、ミリストレイン酸(14:1)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、サピエン酸(16:1)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、エライジン酸(18:1)、バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノエラエジン酸(linelaedic acid)(18:2)、アルファ-リノレン酸(18:3)、アラキジン酸(20:0)、アラキドン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、ベヘン酸(22:0)、エルカ酸(22:1)、ドコサヘキサエン酸(22:6)、リグノセリン酸(24:0)、及びセロチン酸(26:0)が挙げられる。
上記のように、ポリソルベートは、非イオン性界面活性剤及びタンパク質安定剤として有用な脂肪酸エステルである。ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、及びポリソルベート80は、医薬品、化粧品、及び食品業界で安定剤及び乳化剤として広く使用されている。ポリソルベート20は、主にポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノラウリン酸エステルを含む。ポリソルベート40は、主にポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノパルミチン酸エステルを含む。ポリソルベート60は、主にポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノステアリン酸エステルを含む。ポリソルベート80は、主にポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノオレイン酸エステルを含む(図1に示す)。
市販グレードのポリソルベートの品質は、供給業者によって異なる。ポリソルベートはそれ故、多くの場合様々な化学物質の混合物であり、大部分がポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノエステル(上記の通り)からなり、場合によってはイソソルビドエステル混入物質を含む。それらはまた、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、中間体構造、及び脂肪酸反応物質も含み得る。頭部基(この場合はポリオキシエチレン(20)ソルビタン)は、そのアルコール基のうちの3つが、3つのポリオキシエチレン基とエーテル結合を形成するように置換されたソルビタン(1,4-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール、及び1,4,3,6-ジアンヒドロソルビトールを含む脱水ソルビトールの混合物)を含む。4番目のアルコール基は、脂肪酸で置換され、脂肪酸エステルを形成する。
いくつかの市販のポリソルベートのバッチでは、ポリソルベートはイソソルビドのモノエステルを含む。イソソルビドは、グルコースのヘテロ環誘導体であり、ソルビトールの脱水でも調製される。それはジオールであり、すなわち、1つまたは2つのエステル結合の形成に関与することができる2つのアルコール基を有する。従って、例えば、一部のロットのポリソルベート80は、かなりの量のイソソルビドのオレイン酸モノエステル及びジエステルを含み得る。
頭部基の変動に加えて、ポリソルベートの調製物は、可変量の他の脂肪酸エステルを含む。例えば、ポリソルベート80のある特定の供給源の分析では、<5%ミリスチン酸、<16%パルミチン酸、>58%オレイン酸、<6%ステアリン酸、及び<18%リノール酸を示した。ポリソルベート80の別の供給源の分析では、約70%のオレイン酸と、残りが他の脂肪酸エステル及び不純物であることを示した。ポリソルベート80のさらに別の供給源の分析では、約86~87%のオレイン酸を示した。ポリソルベート80のさらに最近開発された供給源の分析では、≧99%オレイン酸を示した。
ポリソルベート20またはポリソルベート80のような非イオン性界面活性剤は、抗体及び他のタンパク質のような大きな分子の安定化を助け、オリゴマー複合体や他の凝集体の形成を防ぐのに役立つ。凝集体は、ナノ粒子または10~100ミクロン(10~100μm)の範囲もしくは2~100ミクロン(2~100μm)の範囲の眼に見えない粒子になる可能性があり、医薬品の安定性及び保存可能期間を妨げ、免疫原性を誘発し得る。従って、タンパク質製剤の安定性は、場合によっては、非イオン性界面活性剤の添加剤の安定性に依存する。しかしながら、本明細書でさらに論じるように、ポリソルベート20及びポリソルベート80は、場合によっては、凝集体、ナノ粒子、及び眼に見えない粒子の形成に寄与し得る。
本開示による「眼に見えない(subvisible)粒子」(SVP)及び「眼に見えない微粒子」という語句は、特に液体中で肉眼では見えない粒子を指す。換言すれば、眼に見える粒子ではなくSVPを含む溶液または他の液体は、濁っては見えない。SVPは一般に、直径100ミクロン(100μm)以下の粒子を含むが、場合によっては150ミクロン(150μm)未満の粒子を含む(Narhi et al.,“A critical review of analytical methods for subvisible and visible particles,”Curr Pharm Biotechnol 10(4):373-381(2009))。SVPは、異物の混入、タンパク質の凝集、またはDPの他の成分の凝集の結果である可能性がある。SVPは、とりわけ、シリコーン油滴(油滴)、遊離脂肪酸(非晶質粒子及び/または油滴)、凝集タンパク質(非晶質粒子)、及び/またはタンパク質/脂肪酸複合体(非晶質粒子)を含み得る。
SVPは、様々な方法のいずれか1つ以上で検出することができる。USP規格は、光遮蔽及び光学顕微鏡プロトコルを指定している。他の方法としては、マイクロフローイメージ(MFI)分析、コールターカウント、及びサブミクロン粒子追跡法が挙げられる。SVPのいくつかの測定及び特性評価法(例えば、光遮蔽、フロー顕微鏡法、電気検出ゾーン法、及びフローサイトメトリー)は、例えば、Narhi et al.,“Subvisible(2-100μm) Particle Analysis During Biotherapeutic Drug Product Development:Part 1,Considerations and Strategy,”J.Pharma.Sci.104:1899-1908(2015)に論じられている。
光遮蔽は、タンパク質凝集体及び他の非晶質構造を過小評価しているとして批判されている。フロー画像分析、例えば、マイクロフローイメージング(MFI)(Brightwell Technologies,Ottawa,Ontario)は、不規則形状の脆い透明なタンパク性SVPを検出する、ならびにこれらの種類の粒子をシリコーンの微液滴、気泡、及び他の異物と区別する感度のより高い方法である(Sharma et al.,“Micro-flow imaging:Flow microscopy applied to sub-visible particulate analysis in protein formulations,”AAPS J.12(3):455-464(2010))。一般に、光遮蔽分析によるSVP測定及び特性評価はMFIより感度が低いため、MFIによって検出される粒子数は、光遮蔽分析によって検出される粒子数より多くなる傾向がある。簡潔には、MFIは、連続した明視野像をリアルタイムで取得して分析するフロー顕微鏡法である。画像分析アルゴリズムを当該画像に適用し、気泡、シリコーン油滴、及びタンパク性凝集体を識別する。体積約250マイクロリットルから数十ミリリットルまでを分析することができる。使用するシステムに応じて、2~300ミクロン(2~300μm)、または1~70ミクロン(1~70μm)の範囲の粒子を検出することができる(同上)。
FDA及び他の政府の規制機関は、非経口製剤で許容されるSVP量に制限を設けている。主要な明確な懸案事項は、当該薬物を投与された患者における潜在的な免疫原性及び下流の悪影響を取り巻く不確実性である(Singh et al.,“An industry perspective on the monitoring of subvisible particles as a quality attribute for protein therapeutics,”J.Pharma.Sci.99(8):3302-21(2010))。少量の非経口薬剤(例えば、100mL以下)に対して、薬局方は、光遮蔽分析で測定した場合、10ミクロン(10μm)以上のSVPを容器当たり6,000SVP未満に、及び25ミクロン(25μm)以上のSVPを容器当たり600未満に制限し、膜顕微鏡粒子濃度試験で測定した場合、10ミクロン(10μm)以上のSVPを容器当たり3,000SVP未満に、及び25ミクロン(25μm)以上のSVPを容器当たり300未満に制限している(United States Pharmacopeia and National Formulary(USP 40-NF 28)、<787> Subvisible Particulate Matter in Therapeutic Protein Injections)。眼薬に対しては、SVPの制限は、10ミクロン(10μm)以上が1mL当たり50個、25ミクロン(25μm)以上が1mL当たり5個、及び50ミクロン(50μm)以上が1mL当たり2個である(同上、<789> Particulate Matter in Ophthalmic Solutions)。規制機関は、製造業者が2ミクロン(2μm)以上のSVPに対する仕様を確立することをますます期待しつつある(Singh et al.,“An industry perspective on the monitoring of subvisible particles as a quality attribute for protein therapeutics,”J.Pharm.Sci.99(8):3302-21(2010)参照)。
「エステラーゼ」という用語は、エステル結合の加水分解に触媒作用を及ぼし、酸及びアルコールを生じる酵素を意味する。エステラーゼは、アセチルエステラーゼ(例えば、アセチルコリンエステラーゼ)、ホスファターゼ、ヌクレアーゼ、チオールエステラーゼ、リパーゼ、及び他のカルボキシルエステルヒドロラーゼ(EC 3.1)を含めた酵素の多様なカテゴリーである。その名称はカルボキシルエステルヒドロラーゼ(別名カルボキシルエステラーゼ、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、及びEC 3.1.1.1)という意味を含むため、水を使用してカルボン酸エステルをアルコール及びカルボン酸に加水分解する。リパーゼは、カルボキシルエステルヒドロラーゼであり、トリグリセリド、脂肪及び油を含めた脂質の、脂肪酸及びアルコール頭部基への加水分解に触媒作用を及ぼす。例えば、トリグリセリドは、膵リパーゼのようなリパーゼによって加水分解され、モノアシルグリセロール及び2つの脂肪酸鎖を生じる。
ホスホリパーゼは、リン脂質を脂肪酸及び他の産物に加水分解するリパーゼである。ホスホリパーゼは、4つの広いカテゴリーに分類される:ホスホリパーゼA(ホスホリパーゼA1及びホスホリパーゼA2を含む)、ホスホリパーゼB、ならびにホスホジエステラーゼであるホスホジエステラーゼC及びホスホジエステラーゼD。標準的なホスホリパーゼに加え、リソソーム内腔に存在するホスホリパーゼB様酵素は脂質触媒作用に関与していると考えられている。例えば、ホスホリパーゼB様2(PLBL2)は、配列相同性と細胞内局在に基づいてエステラーゼ活性を有すると仮定されている(Jensen et al.,“Biochemical characterization and liposomal localization localization of the mannose-6-phosphate protein p76,”Biochem.J.402:449-458(2007))。
ポリソルベート(ポリソルベート20及びポリソルベート80を含む)の不安定化に関連する酵素活性が発見された。その活性は、表1のアミノ酸配列を含むポリペプチド等のエステラーゼに関連することがわかった。これらのペプチド配列のBLAST検索により、推定ホスホリパーゼB様2(PLBL2)との同一性が明らかになった。PLBL2は、ハムスター、ラット、マウス、ヒト、及びウシで高度に保存されている。本出願人らは、哺乳動物細胞株で製造された一部のクラスの目的のタンパク質(POI)と特定のプロセスで共精製するPLBL2が、ポリソルベート20及び80の加水分解に関与するエステラーゼ活性を有することを想定している。出願人らは、PLBL2がその例である他のエステラーゼ種が、特定の目的のタンパク質及び/または宿主細胞の遺伝的な/エピジェネティックな背景に応じて、ポリソルベートの不安定性に寄与し得ることを想定している。
ポリソルベート80のエステル加水分解が最近報告された(Labrenz,S.R.,“Ester hydrolysis of polysorbate 80 in mAb drug product:evidence in support of the hypothesized risk after observation of visible particulate in mAb formulations,”J.Pharma.Sci.103(8):2268-77(2014)参照)。その論文は、IgGを含む製剤中での眼に見える粒子の形成を報告した。著者は、コロイド状のIgG粒子がポリソルベート80のオレイン酸エステルの酵素的加水分解で生じると仮定した。エステラーゼは直接特定されなかったが、著者は、リパーゼまたはツイーナーゼ(tweenase)がIgGと共精製し、これがポリソルベート80の分解の原因となったと推測した(同上、7)。その論文に述べられている通り、ポリソルベート80の存在による粒子の形成は、懸念材料であり、かかる粒子は、IgG医薬品の安定性及び有効性に影響を与えかねない。
本明細書で使用される、「脂肪酸エステル加水分解パーセント」という語句は、加水分解された脂肪酸エステルのモル比を意味する。脂肪酸エステルの加水分解で遊離脂肪酸が放出されるため、脂肪酸エステルの加水分解パーセントは、サンプル中の遊離脂肪酸を測定することにより特定することができる。従って、脂肪酸エステルの加水分解パーセントは、遊離脂肪酸のモル数に脂肪酸エステルのモル数を加えた合計で除した遊離脂肪酸のモル数を計算することで特定され得る。ポリソルベート80またはポリソルベート20の加水分解パーセントの場合、その数は、遊離脂肪酸のモル数を計算し、残りのポリソルベートの合計モル数プラス遊離脂肪酸のモル数で除することで特定され得る。
「エステラーゼ阻害剤」という用語は、エステラーゼの活性を低減する、阻害する、または遮断する任意の化学物質を意味する。本出願者らは、脂肪酸エステル界面活性剤を含むタンパク質製剤にエステラーゼ阻害剤を含めることが、タンパク質の安定性を維持するのに役立ち、また、SVP形成を減少させるのに役立ち得ると想定している。当技術分野で既知の一般的なエステラーゼ阻害剤としては、オルリスタット(テトラヒドロリピスタチン(tetrahydrolipistatin)、カルボキシルエステラーゼ2及びリポタンパク質リパーゼの阻害剤)、リン酸ジエチルウンベリフェリル(コレステロールエステラーゼ[リパーゼA]阻害剤)、URB602([1-1’-ビフェニル]-3-tl-カルバミン酸シクロヘキシルエステル、モノアシルグリセロールリパーゼ阻害剤)、ならびに2-ブトキシフェニルボロン酸(ホルモン感受性リパーゼの阻害剤)が挙げられる。目的のタンパク質の精製中または最終製剤にエステラーゼ阻害剤を含めることで、ポリソルベート80のような非イオン性界面活性剤の加水分解が防止または遅延される可能性があり、これが眼に見えない粒子の形成を防止または減少すると期待される。しかしながら、エステラーゼ阻害剤を含めることはまた、最終製剤中の活性成分または他の成分の機能に悪影響を与え得る。
「バッファー」という用語は、溶液のpHを安定化させる緩衝液または緩衝剤を意味する。バッファーは一般に、弱酸とその共役塩基、または弱塩基とその共役酸を含む。タンパク質溶液を最適pHでまたは最適pH付近にバッファリングすることで、適切なタンパク質のフォールディング及び機能が得られる。最適バッファーは、例えば、加速貯蔵/インキュベーション後に様々なpHでのタンパク質(例えば、抗体)溶液の熱力学的安定性(DSC)、ならびに高分子量変異体(SEC)及び電荷変異体(CEX)を測定することで特定することができる。様々なpHでのタンパク質(例えば、抗体)溶液の円二色性を測定することもまた、バッファーの特定に役立ち得る。円二色性(CD)は、タンパク質の構造変化(アンフォールディング)を特定するために使用される1つの方法である(S.Beychok,“Circular dichroism of biological macromolecules,”Science 154(3754):1288-99(1966)、Kemmer and Keller,“Nonlinear least-squares data fitting in Excel spreadsheets,”Nat Protoc.5(2):267-81(2010))。一部のタンパク質は、バッファーとして機能する(すなわち、いわゆる「自己バッファリング」)能力を有するため、安定pHを維持するために外因性バッファーを添加する必要がない場合がある(Gokarn et al.,“Self-buffering antibody formulations,”J Pharm Sci.97(8):3051-66(2008))。一般に使用されるバッファーの例を表2に記載する。生体液のバッファーのより完全な考察に関しては、Irwin H.Segel,Biochemical Calculations(2nd ed.1976)、またはRemington,The Science and Practice of Pharmacy 244(Paul Beringer et al.eds.,21st ed.2006)を参照されたい。
「熱安定剤」という用語は、タンパク質を熱分解、変性、及び生物活性の崩壊から保護するためにバイオ医薬製剤に含まれる賦形剤または他の添加剤を意味する。一般に、熱安定剤は、タンパク質(例えば、抗体)をその天然のコンフォメーションに維持し、熱応力条件下での凝集を防ぐのに役立つ。熱応力は、凍結融解サイクル、高温曝露、または長期の保管から生じ得る。熱安定剤には、糖及び他の炭水化物、糖アルコール及びポリエチレングリコールのようなポリオール、ならびにグリシンのようなアミノ酸が含まれる。熱安定剤として有用な糖または糖アルコールの例としては、スクロース、トレハロース及びマンニトールが挙げられる。
「疎水性相互作用媒体」という用語は、支持構造と疎水性部分の組み合わせを意味し、該疎水性部分は該支持構造に固定されている。該媒体は、クロマトグラフィー媒体、例えば、充填床カラム形式で保持されるビーズまたは他の粒子の形態、膜の形態、または目的のタンパク質及び混入物質を含む液体を収容することができる任意の形式であり得る。従って、支持構造には、アガロースビーズ(例えば、セファロース)、シリカビーズ、セルロース系膜、セルロース系ビーズ、親水性ポリマービーズ等が含まれる。該疎水性部分は、疎水性分子及びタンパク質の疎水性表面に結合する。該媒体の疎水性度は、該疎水性部分を選択することで制御することができる。疎水性相互作用媒体は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)として知られるプロセスで使用され、目的のタンパク質を生成物及びプロセス関連の混入物質から分離するために使用される。目的のタンパク質が宿主細胞で製造され、及び/または宿主細胞から精製される場合、該生成物及びプロセス関連の混入物質は、宿主細胞タンパク質(HCP)と呼ばれる。一般的なバイオ医薬品製造の宿主細胞であるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞由来のHCPは、CHOP(チャイニーズハムスター卵巣タンパク質)と呼ばれ得る。場合によっては、目的のタンパク質(POI)及びHCPを含む混合物は、該POIの疎水性基の当該HIC媒体の疎水性部分への結合を促進するように設計されたバッファー中で、該HIC媒体に適用される。該POIは、当該疎水性部分に結合することでHIC媒体に固着し、一部のHCPは結合せずに洗浄バッファーに出てくる。該POIは次いで、該HICの疎水性部分からの該POIの解離を促進するバッファーを用いて溶出され、それによって該POIが不要なHCPから分離される。
場合によっては、該HICの疎水性部分は、HCP等の一部の混入物質に結合し、該POIは、該HICのフロースルーから回収される。
場合によっては、親油性特性を有する特定のタンパク質に結合するように設計されたアフィニティークロマトグラフィーが、HICの代わりに、またはHICと組み合わせて使用される。一部のエステラーゼ、例えば、一般的にはリパーゼ、または具体的にはホスホリパーゼは、トリグリセリドまたはリン脂質に結合するため、それら脂質を模倣する分子を用いてエステラーゼを捕捉してもよい。例えば、「ミリストイル化ADPリボシル化因子1」(別名「myrARF1」)を用いてリパーゼを捕捉し、POIを未結合のままにしてフロースルーにすることができる。
本明細書で使用される、「容器」という用語は、一次包装構成要素、例えば、シリンジ(プレフィルドシリンジ等の場合)、バイアル(例えば、バイオ医薬製剤の保管用の2.5mLのガラスバイアル)、または固体、液体、もしくは気体状物質を含むための任意の器もしくは手段を含むことを意味する。ここで、「容器」という用語は、とりわけ、その用語をFDA及びUSPが、眼に見えない粒子の制限に関するガイダンス中で使用しているため、バイオ医薬製剤を含む器を指すために使用される(United States Pharmacopeia and National Formulary(USP 40-NF 28),<787>Subvisible Particulate Matter in Therapeutic Protein Injections)。
本開示で使用される、「組成物」、「製剤」、及び「製剤化された製剤原料」(FDS)という用語は、医薬品に含めるための2つ以上の薬剤成分の組み合わせを指す。組成物、製剤、またはFDSは、例えば、活性薬剤成分、例えば、抗体、及び賦形剤、例えば、安定剤もしくは界面活性剤を含む液体組成物であり得る。組成物、製剤、またはFDSは、複数の賦形剤を含み得る。組成物、製剤、またはFDSはまた、他の構成要素、例えば、抗体と共精製されるタンパク質も含み得る。
本開示で使用される、「医薬品」(DP)という用語は、包装、出荷、または投与のための量のFDSを含む剤形を指す。例えば、医薬品は、患者への投与量のFDSを保持するプレフィルドシリンジであり得る。
上記の通り、一部のPOIと共精製するPLBL2等のHCPは、それらのPOIを含む製剤及び医薬品に使用されるポリソルベートの脂肪酸エステルに対してエステラーゼ様活性を示すことが仮定される。このエステラーゼ様の挙動は、その後凝集してSVPを生じ得る遊離脂肪酸の形成をもたらすと考えられる。HIC及び/またはアフィニティークロマトグラフィーは、POIを精製し、医薬品または製剤からHCPを除去し、ひいては脂肪酸エステルに対するエステラーゼ様の挙動を低減するために使用され得る一方、HICまたはアフィニティークロマトグラフィーのステップの追加は、医薬品の製造プロセスに機器(例えば、疎水性相互作用媒体)、材料、調製、プロトコル、及びプロトコル検証の追加を必要とし、時間、資源、実験、及び費用の追加を意味する。従って、POI、ポリソルベート、及び共精製HCPを含む製剤ならびに医薬品におけるSVP形成を減少させる別の方法を有することが望まれる。
POI及び高パーセンテージ(例えば、>98%)のオレイン酸エステル含量を有するポリソルベート80を含むFDSならびに医薬品は、例えば、比較的低パーセンテージ(例えば、70%または86~87%)のオレイン酸エステル含量を有するポリソルベート80を含むFDSならびに医薬品より、測定可能なSVPの経時的形成が低いことが分かっている。これは、POIが、脂肪酸エステルに対するエステラーゼ様の挙動を有するHCPを除去するためのHICまたはアフィニティークロマトグラフィーに供されない場合であっても同様である。
本開示の実施形態は、POI(例えば、抗体)及びオレイン酸エステル含量が>98%のポリソルベート80を含むFDSならびに医薬品に関し、ここでは、該POIは、エステラーゼ様の挙動を有するHCPを除去するためのHICまたはアフィニティークロマトグラフィーのステップに供されていない。本開示のいくつかの実施形態では、FDS及び医薬品は、例えば、5℃の温度で少なくとも6ヶ月間容器に保管された場合、直径10μm以上を有する粒子の3,000個未満の形成を示す。いくつかの実施形態では、FDS及び医薬品は、例えば、5℃の温度で少なくとも6ヶ月間容器に保管された場合、直径10μm以上を有する粒子の2,000、1,500、1,000、800、600、500、400、300、290、275、270、または250個未満の形成を示す。いくつかの態様では、本開示の実施形態は、かかるFDS及び医薬品の調製方法に関する。
本開示の実施形態では、該FDSまたは医薬品はPOIを含む。いくつかの実施形態では、該POIは抗体、例えば、ヒトモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、該POIは、免疫グロブリン、例えば、IgGである。いくつかの実施形態では、該タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。いくつかの実施形態では、該FDSまたは医薬品は、2つ以上のPOIを含む(例えば、該FDSまたは医薬品は、2つ以上のPOIの共製剤を含む)。
本開示の実施形態では、該POIは、当技術分野で既知の精製ステップで精製されていてもよい。例えば、該POIが免疫グロブリンの場合、プロテインAまたはプロテインGのアフィニティー精製ステップを用いて精製されていてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のHCPまたは他の不純物は、この精製ステップの過程で当該POIと共精製されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、該FDSまたは医薬品は、当該POIと共精製されたエステラーゼを含む。いくつかの実施形態では、該エステラーゼは、ホスホリパーゼB様タンパク質、例えば、PLBL2である。
本開示の実施形態では、該FDSまたは医薬品中のPOI濃度は、約40mg/mL~約250mg/mLの範囲、例えば、約50mg/mL~約160mg/mL、約80mg/mL~100mg/mL、約100mg/mL~160mg/mL、約125mg/mL~155mg/mLでよい。
実施形態では、該FDSまたは医薬品は、ある量の界面活性剤または安定剤を含む。いくつかの実施形態では、該界面活性剤または安定剤は、脂肪酸エステルの混合物を含むポリソルベート80であり、オレイン酸エステル含量が少なくとも97%、98%、または99%である。いくつかの実施形態では、該界面活性剤または安定剤は、脂肪酸エステルの混合物を含むポリソルベート80であり、オレイン酸エステル含量が>98%である。さらなる実施形態では、該界面活性剤または安定剤は、脂肪酸エステルの混合物を含むポリソルベート80であり、オレイン酸エステル含量が≧99%である。実施形態では、該FDSまたは医薬品中の該界面活性剤または安定剤の濃度は、0.005%~1.00%(w/v)、例えば、0.5%(w/v)である。
いくつかの実施形態では、該FDSまたは医薬品の体積は、約0.25mL~3mL、例えば、0.25mL、0.5mL、1mL、1.5mL、2mL、2.25mL、2.5mL、または3mLである。いくつかの実施形態では、該医薬品は、容器に包装されたある体積の該FDSを含む。
いくつかの実施形態では、該FDSまたは医薬品は、さらなる賦形剤、例えば、バッファー、熱安定剤、またはエステラーゼ阻害剤を含む。
いくつかの実施形態では、該FDSまたは医薬品は、温度約2~8℃で少なくとも6ヶ月保管される。他の実施形態では、該FDSまたは医薬品は、例えば、約5℃、15℃、22℃、24℃、または30~50℃、例えば、約35℃、40℃、45℃、もしくは50℃の温度で保管される。
いくつかの実施形態では、該FDSまたは医薬品は、最大で例えば、2~4週間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間、または36ヶ月間保管される。例えば、いくつかの実施形態では、該FDSまたは医薬品は、温度約5℃で最大24ヶ月間保管される。他の実施形態では、該FDSまたは医薬品は、温度約30~50℃で最大5ヶ月間保管される。
実施例1
共精製された宿主細胞タンパク質(HCP)リパーゼによるポリソルベートの分解に起因する遊離脂肪酸系の眼に見えない微粒子を生じやすいIgG4抗体医薬品の保存安定性を異なるDPサンプルで評価した。各DPサンプルは、体積2.136mLであり、同濃度のIgG4抗体(150mg/mL)、及びいくつかのロットのPS80のうちの1つを0.2%(w/v)含んでいた。PS80ロットの各ロットは、オレイン酸エステル含量の3つの異なる含量パーセンテージ(70%、87%、及び≧99%)のうちの1つを有した。以下の表は、各FDSサンプル中のPS80のオレイン酸エステル含量パーセンテージを要約している。
DPサンプルを2~8℃でガラス製プレフィルドシリンジに24ヶ月まで保管した。微粒子を各DPサンプルで6ヶ月ごとに合計24ヶ月間、顕微鏡粒子濃度法及びマイクロフローイメージング(MFI)の両方で測定した。
図2は、顕微鏡粒子濃度法で測定した直径≧10μmを有する容器当たりのSVP数をグラフ形式で示す。図3は、MFIで測定した直径≧10μmを有する容器当たりのSVP数をグラフ形式で示す。図2及び3に示すように、DP B及びDP C(この2つのDPサンプルは、オレイン酸エステル含量が≧99%のPS80を含む)は、顕微鏡法(図2)及びMFI(図3)の両方で測定して、24ヶ月の全期間にわたり、最も低いSVP数を示した。オレイン酸エステル含量が87%のPS80を含むDP Aは、24ヶ月の期間にわたって次に低い眼に見えない微粒子数を示した(具体的には、24ヶ月で800~1200個の粒子を示した)。DP D、E、及びFはすべて、少なくとも18ヶ月の時点で容器当たり3000個をはるかに上回る粒子(両方法で測定して)を示した。
DP A、B、及びCにおいて粒子数が少ない(DP D、E、及びFにおける、より多数の粒子と比較して)ことは、オレイン酸(または長鎖脂肪酸)エステル含量パーセンテージがより高いPS80を使用した結果であると仮定された。オレイン酸は、1つの不飽和結合を有する長鎖脂肪酸である(図1参照)。従って、それは周囲温度以下の融解温度約13℃を有する。眼に見えない及び眼に見える遊離脂肪酸(FFA)の微粒子形成に先行するものは、個々のFFA鎖の凝集体への凝集作用であり、それらがその後粒子の形態で沈殿する。オレイン酸は、その製剤の5℃での保存中に、例えば、ポリソルベート80の脂肪酸エステルの酵素的加水分解によって生じ得る。このオレイン酸はSVPを形成する場合もあるが、その低融解温度のため、かかる粒子は、分析が行われる室温(約22℃)ではタンパク質製剤中で油性液体として存在する可能性が高く、それ故、室温では眼に見えない微粒子として存在しない。対照的に、製剤中の非オレイン酸エステル含量が高いと、加水分解で対応するFFAが形成され、それらの高融解温度のため、形成された眼に見えない及び眼に見える非晶質微粒子が分析中の周囲温度で存在する。
さらに、オレイン酸エステルは、それらの(オレイン酸エステルの)高疎水性に起因して、より短鎖の脂肪酸のエステルよりも優れた可溶化/安定剤であり、この高疎水性のため、オレイン酸エステルは遊離の脂肪酸及びタンパク質の微粒子を可溶化することができ、それにより製品の安定性を維持する。従って、オレイン酸エステル含量が高い(>98%)ポリソルベート80は、オレイン酸エステル含量が低いポリソルベート80と比較して、タンパク質製剤及び医薬品の安定性の向上をもたらすことができる。
実施例2
各サンプルDP(DP A~F)における各種の遊離脂肪酸の濃度(マイクログラム/mL)を、サンプルを5℃で18ヶ月間保存した後に評価した。サンプルDP A~Fを実施例1に記載の通りに調製した。遊離脂肪酸濃度を18ヶ月でLC-MSにより測定した。図4は、結果をグラフ形式で示す。示されるように、DP B及びC(この2つのDPサンプルは、オレイン酸エステル含量が≧99%のPS80を含む)は、最も高いオレイン酸濃度及び最も低い他のFFA濃度を示した。これは、DP B及びCにおけるFFA(すなわち、オレイン酸)の均一性を示している。
実施例2
各サンプルDP(DP A~F)における各種の遊離脂肪酸の濃度(マイクログラム/mL)を、サンプルを5℃で18ヶ月間保存した後に評価した。サンプルDP A~Fを実施例1に記載の通りに調製した。遊離脂肪酸濃度を18ヶ月でLC-MSにより測定した。図4は、結果をグラフ形式で示す。示されるように、DP B及びC(この2つのDPサンプルは、オレイン酸エステル含量が≧99%のPS80を含む)は、最も高いオレイン酸濃度及び最も低い他のFFA濃度を示した。これは、DP B及びCにおけるFFA(すなわち、オレイン酸)の均一性を示している。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]医薬品において肉眼では見えない及び眼に見える粒子の形成を低減する方法であって、
前記医薬品に少なくとも100mg/mLのIgG抗体を含めることと、
前記医薬品にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの混合物を含めることと、を含み、
前記混合物中のオレイン酸エステル含量は、前記混合物中の全脂肪酸エステルの98%を超える、前記方法。
[付記2]前記医薬品を温度30℃~50℃で1~5ヶ月間保管することをさらに含み、
前記保管の後、フローイメージング顕微鏡法または膜顕微鏡法のうちの1つで検出して、直径10ミクロン以上を有する3000個未満の粒子が前記医薬品中で検出可能である、付記1に記載の方法。
[付記3]前記医薬品を温度2℃~8℃で18~36ヶ月間保管することをさらに含み、
前記保管の後、フローイメージング顕微鏡法または膜顕微鏡法のうちの1つで検出して、直径10ミクロン以上を有する3000個未満の粒子が前記医薬品中で検出可能である、付記1に記載の方法。
[付記4]粘度を低減する薬剤を前記医薬品に添加することをさらに含む、付記1に記載の方法。
[付記5]前記IgG抗体がIgG4抗体である、付記1に記載の方法。
[付記6]前記IgG抗体が、リパーゼと共精製することが可能であり、前記医薬品が前記リパーゼを含む、付記1に記載の方法。
[付記7]前記IgG抗体が、前記医薬品への包含の前にアフィニティー精製のステップを用いて精製されている、付記1に記載の方法。
[付記8]前記医薬品に少なくとも100mg/mLの前記IgG抗体を含める前記ステップが、前記医薬品に少なくとも150mg/mLの前記IgG抗体を含めることを含む、付記1に記載の方法。
[付記9]前記IgG抗体が、前記医薬品への包含の前に疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いて精製されていない、付記1に記載の方法。
[付記10]前記IgG抗体がIgG4抗体であり、前記医薬品がホスホリパーゼB様2タンパク質を含む、付記1に記載の方法。
[付記11]前記医薬品に前記IgG抗体を含める前に、プロテインA精製ステップを用いて前記IgG抗体を精製することをさらに含む、付記1に記載の方法。
[付記12]前記混合物中の前記オレイン酸エステル含量が、前記混合物中の全脂肪酸エステルの少なくとも99%である、付記1に記載の方法。
[付記13]前記医薬品が、さらにエステラーゼを含む、付記1に記載の方法。
[付記14]付記1に記載の方法に従って調製される、医薬品。
[付記15]前記混合物中の前記オレイン酸エステル含量が、ガス液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、比色分析、または蛍光分析のうちの1つによって特定される、付記1に記載の方法。
[付記16]前記医薬品が、非経口投与用に構成される、付記1に記載の方法。
[付記17]IgG抗体及びエステラーゼを含む医薬品において微粒子の形成を低減する方法であって、
前記医薬品にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの混合物を含めることであって、前記混合物中のオレイン酸エステル含量は、前記混合物中の全脂肪酸エステルの98%を超える、前記医薬品に前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの混合物を含めることを備え、
疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて前記IgG抗体を精製することを含まない、前記方法。
[付記18]前記IgG抗体がIgG4抗体であり、前記エステラーゼがホスホリパーゼB様2タンパク質である、付記17に記載の方法。
[付記19]少なくとも100mg/mLのIgG抗体と、
脂肪酸エステルの混合物と、を含む製剤であって、
前記混合物中のオレイン酸エステル含量が、前記混合物中の全脂肪酸エステルの98%を超える、前記製剤。
[付記20]少なくとも150mg/mLの前記IgG抗体を含む、付記19に記載の製剤。
[付記21]前記脂肪酸エステルの混合物がポリソルベート80である、付記19に記載の製剤。
[付記22]前記IgG抗体がIgG4抗体であり、前記製剤がホスホリパーゼB様2タンパク質を含む、付記19に記載の製剤。
[付記23]付記19に記載の製剤を含む、医薬品。
[付記24]前記医薬品が温度30℃~50℃で1~5ヶ月間保管された後、フローイメージング顕微鏡法または膜顕微鏡法のうちの1つによって、直径10ミクロン以上を有する3000個未満の粒子が前記医薬品中で検出可能である、付記23に記載の医薬品。
[付記25]前記医薬品が温度2℃~8℃で18~36ヶ月間保管された後、フローイメージング顕微鏡法または膜顕微鏡法のうちの1つによって、直径10ミクロン以上を有する3000個未満の粒子が前記医薬品中で検出可能である、付記23に記載の医薬品。

Claims (25)

  1. 医薬品において肉眼では見えない及び眼に見える粒子の形成を低減する方法であって、
    前記医薬品に少なくとも100mg/mLのIgG抗体を含めることと、
    前記医薬品にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの混合物を含めることと、を含み、
    前記混合物中のオレイン酸エステル含量は、前記混合物中の全脂肪酸エステルの98%を超える、前記方法。
  2. 前記医薬品を温度30℃~50℃で1~5ヶ月間保管することをさらに含み、
    前記保管の後、フローイメージング顕微鏡法または膜顕微鏡法のうちの1つで検出して、直径10ミクロン以上を有する3000個未満の粒子が前記医薬品中で検出可能である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記医薬品を温度2℃~8℃で18~36ヶ月間保管することをさらに含み、
    前記保管の後、フローイメージング顕微鏡法または膜顕微鏡法のうちの1つで検出して、直径10ミクロン以上を有する3000個未満の粒子が前記医薬品中で検出可能である、請求項1に記載の方法。
  4. 粘度を低減する薬剤を前記医薬品に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記IgG抗体がIgG4抗体である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記IgG抗体が、リパーゼと共精製することが可能であり、前記医薬品が前記リパーゼを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記IgG抗体が、前記医薬品への包含の前にアフィニティー精製のステップを用いて精製されている、請求項1に記載の方法。
  8. 前記医薬品に少なくとも100mg/mLの前記IgG抗体を含める前記ステップが、前記医薬品に少なくとも150mg/mLの前記IgG抗体を含めることを含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記IgG抗体が、前記医薬品への包含の前に疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いて精製されていない、請求項1に記載の方法。
  10. 前記IgG抗体がIgG4抗体であり、前記医薬品がホスホリパーゼB様2タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記医薬品に前記IgG抗体を含める前に、プロテインA精製ステップを用いて前記IgG抗体を精製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記混合物中の前記オレイン酸エステル含量が、前記混合物中の全脂肪酸エステルの少なくとも99%である、請求項1に記載の方法。
  13. 前記医薬品が、さらにエステラーゼを含む、請求項1に記載の方法。
  14. 請求項1に記載の方法に従って調製される、医薬品。
  15. 前記混合物中の前記オレイン酸エステル含量が、ガス液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、比色分析、または蛍光分析のうちの1つによって特定される、請求項1に記載の方法。
  16. 前記医薬品が、非経口投与用に構成される、請求項1に記載の方法。
  17. IgG抗体及びエステラーゼを含む医薬品において微粒子の形成を低減する方法であって、
    前記医薬品にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの混合物を含めることであって、前記混合物中のオレイン酸エステル含量は、前記混合物中の全脂肪酸エステルの98%を超える、前記医薬品に前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの混合物を含めることを備え、
    疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて前記IgG抗体を精製することを含まない、前記方法。
  18. 前記IgG抗体がIgG4抗体であり、前記エステラーゼがホスホリパーゼB様2タンパク質である、請求項17に記載の方法。
  19. 少なくとも100mg/mLのIgG抗体と、
    脂肪酸エステルの混合物と、を含む製剤であって、
    前記混合物中のオレイン酸エステル含量が、前記混合物中の全脂肪酸エステルの98%を超える、前記製剤。
  20. 少なくとも150mg/mLの前記IgG抗体を含む、請求項19に記載の製剤。
  21. 前記脂肪酸エステルの混合物がポリソルベート80である、請求項19に記載の製剤。
  22. 前記IgG抗体がIgG4抗体であり、前記製剤がホスホリパーゼB様2タンパク質を含む、請求項19に記載の製剤。
  23. 請求項19に記載の製剤を含む、医薬品。
  24. 前記医薬品が温度30℃~50℃で1~5ヶ月間保管された後、フローイメージング顕微鏡法または膜顕微鏡法のうちの1つによって、直径10ミクロン以上を有する3000個未満の粒子が前記医薬品中で検出可能である、請求項23に記載の医薬品。
  25. 前記医薬品が温度2℃~8℃で18~36ヶ月間保管された後、フローイメージング顕微鏡法または膜顕微鏡法のうちの1つによって、直径10ミクロン以上を有する3000個未満の粒子が前記医薬品中で検出可能である、請求項23に記載の医薬品。
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