JP2023110885A - 加工糸、詰め物および繊維製品 - Google Patents

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Tsuyoshi Shibata
正人 増田
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宏子 田中
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Abstract

【課題】嵩高性や保温性に優れ、かつストレッチ性を有する加工糸において、鞘糸の固定が強化され、形態安定性に優れ、洗濯耐久性が改善された加工糸と、これを用いた詰め物および前記詰め物を含む繊維製品を提供する。【解決手段】マルチフィラメントである芯糸と、マルチフィラメントであり複数のループを形成する鞘糸とからなる加工糸であり、前記芯糸はz平均分子量Mzが20万以上のポリウレタン弾性繊維からなり、前記ループが前記加工糸の繊維軸方向に1.0個/mm以上、30.0個/mm以下の頻度で存在している、加工糸。【選択図】 なし

Description

本発明は、加工糸と、これを用いた詰め物および前記詰め物を含む繊維製品に関するものである。
合成繊維の新技術は、天然素材の模倣をモチベーションの一つとして技術革新がなされてきたといっても過言でなく、天然素材の複雑な構造形態に由来した機能を発現させるために、様々な技術的提案がなされている。
羽毛は、そのバランスに優れた特性から布団や枕などの寝装寝具や防寒具等の衣料品などといった幅広い製品に用いられており、高機能中綿としての確固たる地位を築いている。
一方、合成繊維ならではの機能性や安定供給が訴求点となる合繊中綿に関しても、繊維束を開繊することで得られるトウ状の綿、短繊維をニードルパンチ等で絡合させて得られる不織布綿、短繊維をボール状に加工して得られる粒状綿等、多くの技術提案がある。しかしながら、嵩高性や圧縮回復性といった力学特性と、羽毛独特の柔軟な風合いを両立することの難度は高く、羽毛と見間違う程度の模倣を達成した例は数少ない。
羽毛独特の嵩高性および圧縮回復性と、柔軟な風合いは、素材特性や構造に起因しており、これらを両立させるために、撚糸や各種の流体加工等によって、加工糸軸方向に対して垂直方向に繊維を突出させる等の嵩高い形態を有した加工糸も提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
前記の加工糸からなる合繊中綿を用いることにより、羽毛製品や短繊維を用いた合繊中綿製品の課題であった側地からの綿抜けも抑制され、製品に使用できる側地の選択肢が広がったことに加え、家庭洗濯も容易な製品の提供が可能となり、合繊中綿製品の優れた点として訴求されるようになってきた。
また、加工糸に用いる合繊によって、素材ならではの機能を付加することも可能であり、例えば、伸長回復性、すなわちストレッチ性を有した繊維を芯糸に用いた加工糸が提案されている(例えば、特許文献3~5)。
特開2012-067430号公報 国際公開第2017/014241号 特開2020-143396号公報 特許第6696288号公報 特許第6465090号公報
特許文献1で開示される加工糸は、製造方法に関して加工ノズルとして例示されているものはインターレース加工である。このようなノズルを用いた場合には、芯糸と花糸の混繊交絡を基本として、単繊維レベルで高度に混繊交絡した部分と、弛みおよびループ部分が交互に形成される。詰め物としては当該加工糸を束にして用いられるが、場所によってはループが少ないまたは存在しない部分を含むため、衣服等に配列させて充填する場合などは、繊維製品としての膨らみ感や保温性のムラがあった。
特許文献2で開示される加工糸は、ノズル外で絡合させることで、芯糸の周りに鞘糸が旋回するように存在する形態を基本として、ループが連続的に形成された形態を有したものである。このような加工糸は、芯糸による鞘糸の固定は緩く、繰り返し洗濯を行うことによって加工糸の形態が崩れ、経時的に嵩高性や保温性が低下する課題があった。
特許文献3で開示される加工糸は、ストレッチ性を有する繊維を用いた加工糸であり、各種加工方法を含むもの記載されている。ただし、製造方法に関して加工ノズルとして例示されているものはインターレース加工ノズルであり、特許文献1の技術に関連したストレッチ性を有する加工糸である。特許文献1と同様、ループが少ないまたは存在しない部分を含むため、伸長させた際には、ループが存在しない部分が顕著となる。また、芯糸と花糸の単繊維レベルで高度に混繊交絡した部分では、芯糸に花糸が複雑に絡合しているため、芯糸のストレッチ性が阻害されやすい。これらのことから、ストレッチ性にムラが生じる上、伸長時には詰め物が存在しない部分が発生しやすく、膨らみ感のムラなど外観上の課題を有するものであった。
特許文献4および5で開示される加工糸は、ノズル外で絡合させることで、芯糸の周りに鞘糸が旋回するように存在する形態を基本としたもので、特許文献2の技術に関連したストレッチ性を有する加工糸である。当該加工糸は、ループが連続的に形成された形態を有したものである。鞘糸の単繊維は芯糸の繊維束内を通って交錯し、これを起点としてループが形成され、芯糸の周りに鞘糸のループが三次元的に配置された嵩高い立体構造を有する。芯糸と交錯した点で鞘糸が挟まれることで固定されていることから、鞘糸は一定の範囲で自由に移動することができ、加工糸の断面方向に外力が加わった際、鞘糸が押し出されて変形する。このような鞘糸の動きにより、加工糸の交差点に外力を吸収するための一定の移動が発生し、外力除去後、元の状態に戻ることができる。しかしながら、芯糸による鞘糸ループの固定が緩いことに起因して、洗濯時の水流によって鞘糸が引き抜かれ易く、洗濯耐久性が不十分で、経時的に形態変化し易く、これに伴って、嵩高性や保温性などの特性低下が発生し易い課題があった。
さらに特許文献5に開示される加工糸は、芯糸が低応力で伸長することができ、ストレッチに際して抵抗感が軽減された素材とすることができるものである。芯糸として熱可塑性ポリウレタン弾性繊維が例示されているが、特許文献4と同様に、ストレッチした際に芯糸による固定は緩く、鞘糸の固定点が動きやすい特性があり、洗濯耐久性が不十分なものであった。
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、嵩高性や保温性に優れ、かつストレッチ性を有する加工糸において、鞘糸の固定が強化され、形態安定性に優れ、洗濯耐久性が改善された加工糸と、これを用いた詰め物および前記詰め物を含む繊維製品を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、下記の構成からなる。
(1) マルチフィラメントである芯糸と、マルチフィラメントであり複数のループを形成する鞘糸とからなる加工糸であり、前記芯糸はz平均分子量Mzが20万以上のポリウレタン弾性繊維からなり、前記ループが前記加工糸の繊維軸方向に1.0個/mm以上、30.0個/mm以下の頻度で存在している、加工糸。
(2) 前記芯糸のマルチフィラメントのうち少なくとも2本の単繊維が合着した部分が繊維軸方向に連続的に存在している、上記(1)に記載の加工糸。
(3) 前記芯糸の長さに対して鞘糸の長さが3倍以上、100倍以下であり、前記ループが、加工糸中心線から直行して加工糸表面方向に3mm以上突出している、上記(1)または(2)に記載の加工糸。
(4) 前記鞘糸が単成分のポリエステル繊維からなる、上記(1)~(3)のいずれかに記載の加工糸。
(5) ASTM D4522-14に準じて測定されるフィルパワーが200inch/30g以上である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の加工糸。
(6) 前記芯糸の総繊度が80dtex以上である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の加工糸。
(7) 前記鞘糸の平均単繊維繊度が3.0dtex以上50.0dtex以下である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の加工糸。
(8) 上記(1)~(7)のいずれかに記載の加工糸を含む詰め物。
(9) 上記(8)に記載の詰め物を含む繊維製品。
本発明の加工糸は、形態安定性に優れ、繰り返し圧縮等の外力を受けることや、家庭用洗濯機で繰り返し洗濯を行った後においても、加工糸の形態を保持し、嵩高性が長期的に維持可能となる。
このため、従来の課題であった繰り返し圧縮や洗濯による形態の経時的な変化を抑制し、優れた嵩高性や圧縮回復性といった特性を長期にわたって発揮することができる詰め物およびこれを用いた繊維製品に適した加工糸を提供することができる。
本発明の加工糸の一例の概略側面図である。 加工糸中心線の確認方法を説明するための模擬図である。 本発明の加工糸の製造方法の一例を模式的に示す概略工程図である。 本発明の製造方法に用いるサクションノズルを説明するための概略側面図である。 本発明の芯糸の断面形態の一例を模式的に示す概略図である。
以下、本発明を詳述する。
本発明の加工糸は、マルチフィラメントである芯糸とマルチフィラメントであり複数のループを形成する鞘糸とからなる。
前記芯糸および前記鞘糸は、合成繊維から構成されたものであり、合成繊維とは、高分子ポリマーからなる繊維であり、溶融紡糸や溶液紡糸などで製造した合成繊維を採用することができる。
前記芯糸は、ポリウレタン弾性繊維からなる。芯糸のストレッチ性が、サイドバイサイド型の複合繊維のように捲縮構造によるものではなく、ポリウレタン弾性繊維に起因したストレッチ性であることにより、芯糸と鞘糸が絡合した後に収縮し、加工糸の芯糸の状態は縮れた状態となる。このような芯糸の縮れが起こる際に、後述のように鞘糸に沿うように芯糸の断面形態が柔軟に変形する。このように、芯糸1本の断面形態の柔軟な変形と、複数の芯糸が縮れることで複雑に絡んだ状態を形成することは鞘糸の固定強化に寄与する。
加えて、ポリウレタン弾性繊維は、繊維表面の摩擦が高い特徴があり、鞘糸を固定するために優れた効果を発揮する。
前記ポリウレタン弾性繊維を形成するポリウレタンは、z平均分子量が20万以上である。前記ポリウレタンのz平均分子量が20万以上、好ましくは25万以上、より好ましくは30万以上であることにより、良好な耐熱性やストレッチバック等の力学特性が得られる。また、前記ポリウレタンのz平均分子量は好ましくは100万以下とすることで、安定的に紡糸可能なものとすることができる。
前記ポリウレタン弾性繊維は、乾式紡糸で得られるものであることが好ましい。乾式紡糸を採用することにより、溶融紡糸に比べて紡糸時の熱影響が少なく、熱分解によって分子鎖が切断されにくいポリウレタン弾性繊維とすることができる。
また、ポリウレタン弾性繊維は、溶融紡糸法よりも乾式紡糸法で得られるもののほうが、伸長時の応力の立ち上がりが小さく、すなわち、低応力で伸長させることが可能である。例えば、本発明の加工糸を詰め物として用いた場合に、ストレッチ時の抵抗感を極めて小さくすることができ、身体的負荷の少ない製品とすることができるため好適である。前述の伸長特性については、JIS L1096:2010に準じた引張試験で得られる加工糸の応力-伸度曲線から、引張応力の上昇傾きを見ることで評価することができる。
また、乾式紡糸により得られるポリウレタン弾性繊維は、マルチフィラメントにおいて仮撚りにより合着され、マルチフィラメントが集束した状態を形成する。仮撚りによってマルチフィラメントにかかる力は経時で変動するため、繊維の長さ方向において、仮撚りの掛かる力が不均一となる。その結果、乾式紡糸により得られるポリウレタン弾性繊維には、合着状態が変化し易く、繊維断面の形状や繊維の太さに不均一性が現れる。
乾式紡糸により得られるポリウレタン弾性繊維が繊維の長さ方向において繊維断面の形状や繊維の太さに不均一性を有することにより、芯糸による鞘糸の固定が強化される。すなわち、芯糸で鞘糸が交錯して固定される際に、芯糸の繊維軸方向に対して、概ね垂直方向に交差する鞘糸に沿うように、芯糸の断面形態が柔軟に変形して接触する。そのため、鞘糸との接触面積が大きくなり、鞘糸の固定が強化される。
乾式紡糸で得られるポリウレタン弾性繊維は、合着箇所の存在により特定することができる。また、一般に溶融紡糸で得られるポリウレタン弾性繊維にはウレア基は存在しないことから、FT-IRでウレア基の存在を確認することによっても特定することができる。
本発明の芯糸は、鞘糸を挟むことで交錯して固定することによってループの起点を形成するものであり、少なくとも2本以上であることが必要である。また、詰め物としての軽量性も含めて、芯糸の本数および繊度を適宜選択することが好ましい。本発明の加工糸においては、鞘糸の固定を強化し、優れた洗濯耐久性を得るために、芯糸の本数は4本以上であることがより好ましく、8本以上であることがさらに好ましい。
本発明における芯糸は、少なくとも2本の単繊維が合着した部分が繊維軸方向に連続的に存在していることが好ましい。
この状態は、図5に示すように加工糸から採取した芯糸の横断面から確認することができ、合着とは、芯糸の単繊維がくっついて一つになっている状態を言う。具体的には、図5の(a)に示すように2本以上の単繊維がくっついて実質1本になっており、界面は消失している状態である。これは、本発明の芯糸であるポリウレタン弾性繊維を乾式紡糸することにより得られる状態である。通常、乾式紡糸では、口金から吐出した後、乾式紡糸筒内を通過させ、紡糸筒下部に設けたエアー交絡装置で処理を施すことで仮撚りを付与し、乾式紡糸筒内において糸条を集束させる。前記紡糸筒内においては、繊維中に溶媒が残っているため、2本以上の単繊維間が集束時に互いに押し付けられることで繊維界面の存在しない、合着した状態が形成される。その状態を保ったまま溶媒が揮発し、固化完了するため、乾式紡糸で得られる繊維には、合着部が形成されるのである。
このような形態の芯糸を用いることにより、鞘糸との交錯点において、鞘糸に接触する面積が大きく、鞘糸を強固に固定することができる。鞘糸の固定を強化する観点では、3本以上の単繊維が合着した部分を有することがより好ましく、4本以上が合着していることがさらに好ましい。
本発明において、前記合着部の状態は、次の方法で観察して確認することができる。長さ10cm以上の芯糸1本を採取し、芯糸の繊維軸方向に沿って1cm以上の間隔を空けて、無作為に10箇所を抽出する。当該10箇所の繊維横断面を走査電子顕微鏡を用いて観察倍率1000倍で観察することにより、合着部の有無を確認する。そして、芯糸1本の長さ方向に無作為に抽出した10箇所のうち9箇所で、合着部が確認されたものについて、連続的に合着部を有するものと判定する。十分な長さの試料が採取できず判定が困難な場合には、採取した芯糸の両端の横断面を観察し、これを5箇所以上観察することでもよい。
ここで、図5の(b)および(c)には、4本の単繊維が合着した芯糸の断面を例示しており、単繊維間に空隙部17を有する場合がある。前述の通り、芯糸による鞘糸の固定が強化される点で、本発明の芯糸は、繊維断面の形状や繊維の太さに不均一性を有することが好ましく、芯糸の切断箇所によって空隙部の形状や位置も変化することがある。
前記芯糸の総繊度は、80dtex以上が好ましい。芯糸の総繊度を80dtex以上、より好ましくは180dtex以上、さらに好ましくは300dtex以上とすることで、鞘糸の把持力を高め易くすることができる。
また、前記芯糸の総繊度は、1000dtex以下とすることが好ましい。1000dtex以下とすることで、加工糸の重量を軽量化することができ、詰め物として好適な嵩高性を維持することができる。
本発明において繊度は、実施例で後述する方法で測定することができるが、十分な長さの試料が採取できず困難な場合には、繊維径、フィラメント数および密度から算出することができる。
前記芯糸は、300%に伸長する操作を繰り返すサイクル試験を行い、5サイクル目のヒステリシスカーブにおける伸長回復率が50%以上であることが好ましい。当該伸長回復率が50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であることで、加工糸としても優れたストレッチ性を有する。加工糸の伸長特性は、用いる芯糸の特性に大きく影響されるため、加工糸から取出した芯糸について評価することでも確認が可能である。
伸長サイクル試験は、引張試験機を用い、試料長(把持間隔)5cm、引張速度100%/minの条件で300%に伸長させた後、同速度で元の試料長の位置まで回復させる。この操作を5回繰り返し、5回目のサイクルの応力-伸度曲線における、その試験の最大伸長時の伸び(S0)、試料長を回復させて応力が0となった点までの伸び(S1)を求め、下記式により得られる伸長回復率(%)で見ることができる。
伸長回復率(%)=S1/S0×100 …(式)。
本発明の加工糸において、鞘糸のループが加工糸の断面方向に掛かる圧縮に耐え、他の鞘糸とも相互に反発し合って空隙を保持することで嵩高性を発現する。
本発明における鞘糸は、合成繊維である。前記鞘糸は、溶融紡糸により繊維化してなるものが好ましい。
前記鞘糸は、熱可塑性ポリマーからなることが好ましい。前記熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタンなどの溶融成形可能なポリマーが挙げられる。これ等の熱可塑性ポリマーの中でも、ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは、結晶性を有し、比較的高い融点を有しているため、後加工等における熱処理工程及び実使用(クリーニングなど)の際に比較的高い温度で加熱された場合でも嵩高糸が劣化やヘタリを起こすことなく好適な例として挙げられる。この耐熱性という観点では、特にポリマーの融点が165℃以上であると好ましい。
前記鞘糸を構成する繊維は、後述するような圧縮に耐えるための基本特性として高弾性率であることが好適である。この観点から、本発明の鞘糸は、ポリエステル繊維であることが好ましい。また、ポリエステルの中でもポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の高弾性率を示す繊維がより好ましく、断面形成性や生産性等の点も踏まえ、ポリエチレンテレフタレートであることがさらに好ましい。
前記鞘糸を形成する樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機物質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいても良い。
前記鞘糸を構成する繊維は、単成分繊維であっても繊維断面に2成分以上ポリマーが配置された複合繊維であっても良く、異なる2種以上の繊維を混用しても良い。中でも単成分繊維は、鞘糸が形成するループの剛性を高めやすく、嵩高性やループのヘタリを抑制する点で好ましい。
前記鞘糸は、丸、扁平、三角、Y、多葉、中空等のいずれの断面形状でも良いが、嵩高性を高めるためには、剛性が高く、かつ軽量化しやすい断面形状を採用することが好ましい。また、保温性を高めるためには、繊維表面積が大きい方が好ましく、中空部を有する中空断面繊維や異形断面繊維とすることがより好ましい。繊維間においても空隙を確保することと軽量化および繊維の剛性を高める観点からは、中空部を有し、かつ繊維表面に凸部を有した繊維であることがさらに好ましい。
本発明の加工糸において、主に加工糸の間、すなわち隣接する加工糸同士の鞘糸と鞘糸の絡み合いを抑制する観点から、鞘糸の繊維間静摩擦係数が0.3以下であることが好ましい。ここで言う繊維間静摩擦係数とは、レーダー式摩擦係数試験機により、JIS L1015(2010年)「化学繊維ステープル試験方法」の「摩擦係数」に記載された方法に準じて測定するものである。なお、当該JISはステープルを目的としているため、測定にあたっては開繊等の前作業を行うことを規定しているが、本発明での測定では、開繊等の処理は行わず、加工糸を円筒スライバーに平行に並べることで評価できる。
本発明の加工糸において、圧縮および回復の繰り返しによる鞘糸ループの絡み合いの発生、詰め物として用いた場合の洗濯による詰め物の偏り発生を抑制するという観点から、鞘糸の繊維間静摩擦係数は低い方が好適であり、0.2以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
前記鞘糸は、平均単繊維繊度が3.0dtex以上50.0dtex以下であることが好ましい。前記鞘糸の平均単繊維繊度が3.0dtex以上、より好ましくは6.0dtex以上であることで、本発明の加工糸においてループを形成する前記鞘糸を構成する繊維の剛性が高くなり、本発明の加工糸の圧縮回復性にも優れ、本発明の加工糸を詰め物として用いた場合には、繰り返し圧縮および回復等の変形を加えても、嵩高性をより効果的に維持することができる。また、鞘糸ループを大きくして圧縮される前の初期嵩高を高める観点では、前記鞘糸の平均単繊維繊度は、9.0dtex以上であることがさらに好ましい。
また、前記鞘糸の平均単繊維繊度を50.0dtex以下、より好ましくは30.0dtex以下とすることで、前記芯糸による前記鞘糸の把持力を効果的に発揮させることができる。また、ループにかかる圧力を分散させ、耐ヘタリ性や、加工糸をストレッチした際にも嵩高性を維持するという観点からは、ループの頻度を多くすることも好ましく、前記鞘糸の平均単繊維繊度は20.0dtex以下とすることがさらに好ましい。
本発明の鞘糸は、初期引張抵抗度、すなわち剛性の高い繊維とすることで、当該箇所で旋回する範囲が大きくなりやすい。そのため、剛性の高い鞘糸のフィラメント数は48フィラメント以下とすることが好ましい。また、鞘糸の単繊維を十分に開繊させ、かつ旋回中に鞘糸単繊維同士の不要な絡みを抑制して、鞘糸ループを芯糸軸方向にムラなく形成させるためには、24フィラメント以下であることがより好ましく、18フィラメント以下であることがさらに好ましい。
本発明の加工糸の形態効果をより顕著にさせるためには、芯糸及び鞘糸の糸長差を考慮することが好ましい。
本発明の加工糸において、鞘糸が後述するクルノーダル型ループを形成するためは、芯糸に対する鞘糸の糸長差を3倍以上とすることが好ましい。
糸長差が大きいほど、本発明の目的である嵩高性を高め、熱伝導率が低い空気を加工糸の内部に保持しやすくなり、詰め物とした場合の保温性が高まる傾向にある。安定的に本発明の加工糸を取り扱うことのできる範囲として、芯糸に対する鞘糸の糸長差は、実質的な上限は100倍である。
また、糸長差が大きくなると、嵩高性に寄与し難いループも生じやすくなることから、芯糸に対する鞘糸の糸長差は5~70倍であることがより好ましい。さらには、流体加工に引き続いて実施する後加工の工程通過性等の観点から、ループの大きさが揃っているほうが、工程ロール等への引っ掛かりを抑制できる。このため、芯糸に対する鞘糸の糸長差は、10~50倍とすることがさらに好ましい。
この糸長差は、デジタルマイクロスコープ等によって加工糸を2次元的に観察できる倍率で撮影した画像を用い、評価することができる。嵩高糸から無作為に選出した10箇所において、各々の芯糸及び鞘糸の長さをミリメートル単位で小数点第2位までを測定する。それぞれの画像において、鞘糸長さを芯糸長さで除することでそれぞれの糸長差を算出し、加工糸の10箇所の単純平均の小数点第2位以下を四捨五入した値を糸長差とする。なお、該糸長差は後述する製造方法において、芯糸及び鞘糸のサクションノズルへの供給速度比に相当し、この速度を調整することで所望の糸長差で嵩高構造を設計することが可能であり、簡易的にはこれを各糸長差と見なすこともできる。
前記鞘糸は、本発明の加工糸において複数のループを形成する。ループの形成により、本発明の加工糸は嵩高性に優れる。
鞘糸からなるループの形状は、一般的な混繊交絡により形成されるアーチ型ループよりも、クルノーダル型ループ(涙滴形状)であることが好ましい。アーチ型ループの場合には、本発明の加工糸をストレッチした場合に、ループが芯糸の伸長によって突っ張り、加工糸のストレッチ性を妨げることにつながる。一方、クルノーダル型ループの場合には、加工糸を伸長した場合にもループの形態を維持されるため、ストレッチした状態においても嵩高性を発揮するにはこの形状が好適である。
ここで、本発明の加工糸の構造を図1及び図2に示された加工糸の例示を用いて説明する。本発明の加工糸は、ループを形成している鞘糸(図1の1)と、当該鞘糸と交錯することで鞘糸を固定している芯糸(図1の2)から構成される。
前記鞘糸は、前記芯糸に巻き付く。前記芯糸に前記鞘糸が数周巻き付いた部分も存在する。前記鞘糸は、芯糸に巻き付きながら前記芯糸に挟まれて交錯することで固定される。この固定点を起点として、ループが形成される。前記鞘糸が前記芯糸と交錯することによってループが自立し、加工糸の嵩高性を担う嵩高構造部を構成する。
前記芯糸は、前記鞘糸と交錯することにより鞘糸からなるループを固定する軸となるため、加工糸の中心に存在する。具体的には、図2に示した一対の糸道ガイド4の間に定長で加工糸を糸かけしたときの糸道ガイド4を結んだ直線を加工糸中心線3としたときに、この加工糸中心線3からの距離5が1.0mmまでの範囲に存在するものである。
前記ループは、加工糸の中心から外層に向けて放射状に形成されていることが好ましい。鞘糸からなるループが自立して外層に突出しているほど加工糸の嵩高性が高まる。本発明においては、図2に示した加工糸中心線3から鞘糸からなるループの頂点までの距離、すなわちループの大きさは3mm以上であることが好ましく、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上である。
ここで言うループの大きさは、次のように測定することができる。すなわち、一対の糸道ガイドに糸掛けした加工糸を側面から観察し、加工糸に形成されている10個以上のループが観察できるように撮影し、画像中のループ10個で加工糸中心線からループ頂点までの距離を測定し、その平均値を算出する。
本発明の加工糸において、ループを形成する鞘糸は実質的に破断されていないことが好ましく、特にループの途中で実質破断していないことが好ましい。そのような形態の加工糸とすることで、ニット等の組織の粗い側地に適用しても側地からの繊維の飛び出しを抑制された製品を提供することができる。また、嵩高性を担うループが途中で破断していないことにより、不要な絡み合いを起こさないことで洗濯による嵩高性や風合いの低下を抑制するとともに、洗濯することで側地の目が開いた場合にも、側地からの繊維の飛び出しを抑制することが可能となる。そのため、側地から突出した繊維に引っかかる等の使用時の不快感を抑制するとともに、中綿の充填量を維持し、嵩高性保持に対しても有効に作用する。
鞘糸が実質的に破断していない状態としては、100個のループの平均で破断点が0.2個/mm以下であることが好ましい。係る範囲内であれば、糸端が自由になった鞘糸が加工糸内に存在しないため、本発明の効果を良好に発揮することができる。
ここで、ループの破断は、次のように判定することができる。すなわち、鞘糸および芯糸からなる1本の加工糸から無作為に抽出した10箇所において、それぞれ芯糸と鞘糸の交錯点から次の交錯点まで(すなわちひとつのループ)が加工糸の長手方向に10箇所以上確認できる倍率で撮影し、該撮影画像10枚において、各々10個のループについて加工糸1ミリメートル当たりの鞘糸の破断点をカウントし、その平均値を算出する。
また、鞘糸が巻き付いた部分の存在は、芯糸近傍を観察することや、芯糸の一方を固定して吊るし、鞘糸からなるループ1つを掴んで、芯糸に対して垂直方向に引っ張ったときに、加工糸が旋回する現象からも確認することができる。
本発明の加工糸においては、前記ループが前記加工糸の繊維軸方向に1.0個/mm以上、30.0個/mm以下の頻度で存在する。前記ループの頻度が1.0個/mm以上、好ましくは2.0個/mm以上、より好ましくは5.0個/mm以上であることで、ループにかかる圧力が分散され、耐ヘタリ性や、加工糸をストレッチした際にも嵩高性を維持するという点で優れる。
また、前記ループの頻度が30.0個/mm以下、好ましくは20.0個/mm以下、より好ましくは15.0個/mm以下であることで、ループがそれぞれ自立した構造を形成し、嵩高性に寄与することができる。
本発明の加工糸は、このような構造の加工糸であるため、タスランノズルやインターレースノズルのようなノズル内で芯糸と鞘糸の単繊維を相互に混繊交絡加工する従来の流体加工方法では実現不可能であった、安定したストレッチ性と嵩高性を両立する加工糸となる。
このような加工糸形態は、後述するように、噴射ノズルから排出された芯糸および鞘糸と気流を衝突部材に衝突させることで分離し、鞘糸が噴射気流で形成される旋回流によって芯糸の周りを旋回しながら絡合することにより、形成される。
本発明の加工糸は、鞘糸の固定を強化したものであり、芯糸自体は滑り性を向上させなくともよく、風合い向上や隣接する加工糸との絡まりを抑制するためには、鞘糸にシリコーン皮膜が形成されていることが好ましい。加工糸にシリコーンの皮膜を形成させることで、鞘糸同士の滑り性、風合いが増し、本発明の効果を更に引き立たせることができる。
ここで言うシリコーン系油剤としては、ジメチルポリシロキサン、ハイドロジエンメチルポリシロキサン、アミノポリシロキサン、エポキシポリシロキサン等が例示され、これらを単独または混合して使用できる。
また、加工糸の表面に均一に皮膜を形成するために、シリコーン付着の目的を損なわない範囲で、油剤に分散剤、粘度調整剤、架橋促進剤、酸化防止剤、防燃剤及び静電防止剤を含有させることができる。
本発明の加工糸は、詰め物として使用する際に嵩高性に優れる。
本発明の加工糸は、ASTM D4522-14に準じて測定したフィルパワーが200inch/30g以上であることが好ましい。前記フィルパワーは、嵩高性の指標として用いられる値であり、前記範囲であることにより、良好な嵩高性を有した詰め物として用いることができる。このフィルパワーの値が大きいほど嵩高性に優れるため、300inch/30g以上であることがより好ましく、400inch/30g以上であることがさらに好ましい。
本発明の加工糸は、繊維巻き取りパッケージやトウ、カットファイバー、わた、ファイバーボール、コード、パイル、織編、不織布など多様な繊維構造体とし、詰め物として用いることが可能である。
詰め物は側地に充填されることから、本発明の加工糸を数本から数十本合糸した糸束とすることや、不織布などのシート状物にすることにより、充填時のハンドリング性に優れた詰め物を提供することができる。また、カットファイバーとした場合は、吹き込み充填可能な詰め物とすることができ、他の詰め物用素材と混合して同時に吹き込み充填することも可能である。この観点では、カットファイバーの繊維長すなわち、カットファイバーにおける芯糸の長さは、10cm以下とすることが好ましく、より好ましくは5cm以下、さらに好ましくは3cm以下である。また、下限値としては、1cm以上とすることが好ましい。
本発明の加工糸を用いた詰め物は、各種繊維製品に使用することができる。
ここで言う繊維製品は、一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途やフィルター、有害物質除去製品などの環境・産業資材用途に使用することができる。
特に本発明の加工糸は、ストレッチ性に優れ、かつ嵩高性や圧縮回復性を兼ね備え、繰り返しの圧縮や洗濯耐久性にも優れているため、特に、一般衣料と同様に、圧縮収納や家庭洗濯する機会の多い製品の詰め物として使用することが好適である。
以下、本発明の加工糸の製造方法の一例を説明する。
本発明の加工糸において、鞘糸に用いる合成繊維の断面形状に関しては、いずれの形状を有するものであっても良い。紡糸口金における吐出孔の形状を変更することで、一般的な丸断面、三角断面、Y型、八葉型、偏平型、多葉型や多フィン型、中空型など不定形なものにすることもでき、単独のポリマーからなる単成分繊維や、2種類以上のポリマーからなる複合繊維であっても良い。
次に、紡糸して得られた繊維から加工糸を製造する方法の一例を説明する。
ここで例示する加工糸の製造方法は、大きく分けて2つの工程からなる。第1工程が流体により芯糸と鞘糸とを交錯させ、鞘糸からなるループを形成させる嵩高加工工程である。第2工程が嵩高加工された糸条を熱処理することにより、加工糸の構造を固定する熱処理工程である。
本発明の加工糸の製造方法の一例を、図3の概略工程図および図4のサクションノズルの概略側面図に基づいて説明する。この第1工程では、原料となる合成繊維14、15はニップローラなどを有した供給ローラ13により規定量引き出され、圧空の噴射が可能なサクションノズル6によって、芯糸及び鞘糸として吸引される。
このサクションノズルでは、ノズルから噴射する圧縮空気の流量は、供給ローラからノズルに挿入する糸条が必要最低限の張力を有し、供給ローラからノズルの間及びノズル内で糸揺れ等を起こさず安定的に走行する流量を噴射することが好適である。この流量は、使用するサクションノズルの孔径により最適量が変化するが、糸張力を付与でき、後述するループの形成が円滑にできる範囲としては、ノズル内での気流速度が100m/s以上であることが好ましい。この気流速度の上限値の目安は、700m/s以下とすることが好ましく、係る範囲であれば、過剰に噴射された圧空により、走行糸条が糸揺れ等を起こすことなく、安定的にノズル内を走行することになる。
また、このサクションノズル内での加工糸の撹乱、開繊を予防するという観点から、圧縮空気の噴射角度16は、走行糸条に対して60°未満で噴射する推進ジェット流とすることが好ましい。これは高い生産性で、鞘糸によるループ形成を均質に行うことができるからである。この推進ジェット流による加工は、垂直ジェット流の場合に形成しやすいアーチ型の小ループが短周期で形成することも抑制できる。
本発明の加工糸の繊維構成においては、垂直ジェット流で加工した場合、芯糸および鞘糸が単繊維レベルで高度に絡合した混繊交絡となり、本発明の加工糸に近い形態を形成することは不可能ではないものの、ループの糸切れや折れ曲がりを防ぐことが非常に困難である。そのため、本発明においては、推進ジェット流を用いた加工が適しており、中綿として使用した場合の製品欠陥や嵩高性不足につながる鞘糸ループの糸切れや折れ曲がりが抑制された加工糸を形成することが可能となるものである。
流体加工において、サクションノズルに供給された芯糸と鞘糸を接触させることなく気流とともにノズル外に噴射し、ノズル外で生じた旋回気流によって芯糸の周りに鞘糸を旋回させて鞘糸ループを形成させることができる。
本発明の加工糸に必要となる鞘糸ループを安定して形成するには、サクションノズル内で撹乱、開繊を施さないことが好適である。一桁本数から二桁本数の糸からなるマルチフィラメントをノズル内では開繊させずに走行させるという観点では、圧縮空気の噴射角度が、走行糸条に対して45°以下であることがより好ましい。また、ノズル外でループを形成させる点では、ノズル直後の噴射気流の安定性及び推進力が高いことが好適であり、この観点から、噴射角度が走行糸条に対して20°以下であることが特に好ましい。
本発明の加工糸の製造に用いる上記サクションノズル条件は、糸条を開繊させることなくノズル内を走行させることが可能であり、導入する糸条の本数を増やした場合にもノズル内で糸条の絡まりは抑制できる。
本発明の目的を達成する加工糸の嵩高加工工程を多錘化し、合糸まで連続して製造する場合は、多数存在するパラメータを緻密に制御する必要が生じる。嵩高加工工程を多錘化した場合には、錘毎に加工糸の嵩高性が異なるものになるという可能性があるため、後述するノズル外の気流制御を活用した手法を採用することが、品質の安定性を確保し易くなるため好適である。
次に、圧縮空気が付与された糸条をノズル外で旋回させ、鞘糸ループを形成させる工程となる。これはノズルから噴射されたある位置で供給された糸を旋回させることで、本発明の目的を達成するループを形成するというコンセプトを着想したものであり、気流速度と糸速度の比(気流速度/糸速度)が100~5000にある場合に、前記嵩高構造の形成が達成されやすくなる。
ここでの気流速度とは、サクションノズル出口から走行糸条とともに噴射された気流の速度を意味する。気流速度はノズル吐出口の断面積と圧縮空気の流量により制御可能である。また、糸速度は、サクションノズルを出た後に、糸を引き取る引取ローラ9の周回速度等により制御することが可能である。
鞘糸の旋回力は、気流速度と糸速度の速度比に依存して増減するため、芯糸との交錯点を増やし、鞘糸ループの固定を強固にしたい場合は、この速度比を5000に近づければよい。緩慢にしたい場合には逆に100に近づければよく、本発明の加工糸を用いる用途に合わせて適宜調整すればよい。この速度比は、例えば、圧縮空気の流量を間歇的に変化させ、あるいは引取ローラの速度を変動させることで、交錯点の周期に変化を持たせることも可能である。
この旋回力が発現するのは、随伴していた気流が走行糸条を離脱したところである。そこで糸道を変更する旋回点7を配置する。具体的には、バーガイド等で糸道を変更することで良く、糸条を規定の速度で引き取ることにより、芯糸に旋回した鞘糸が芯糸との交錯点を起点にループを形成する。この旋回を起こすためのスペースとノズルから噴射された気流の拡散を利用した鞘糸の振動によるほぐれを得るという観点から、走行糸条の旋回点は、ノズル吐出口から離れた位置にあることが好適である。ただし、本発明の加工糸を製造するために適したノズル-旋回点間の距離は噴出した気流速度により変化するものである。気流の拡散とのバランスで適度な周期で芯糸と鞘糸との交錯点を形成させるために、ノズル-旋回点間の距離は、噴出気流が適度な旋回力を保つことができる1.0×10-5~1.0×10-3秒間走行する間に旋回点7が存在することが好ましく、2.0×10-5~5.0×10-4秒間走行する間に旋回点7が存在することがより好ましい。
この旋回点の位置を調整することで、芯糸に対する鞘糸の旋回数や交錯点の周期を制御することもできるが、前述した通り、本発明の加工糸は、嵩高性を高めるために鞘糸は初期引張抵抗度、すなわち剛性の高い繊維とすることが好ましく、当該箇所で鞘糸が旋回する範囲が大きくなりやすい。そのため、鞘糸のフィラメント数調整も含めて、芯糸に対する鞘糸の旋回数や交錯点の周期を制御することが好ましい。
芯糸は加工ノズルに牽引されることで伸長状態となり、加工後に収縮することによって、芯糸が鞘糸に複雑に絡み、鞘糸の固定がさらに強化されるため、加工ノズル前の供給ローラ13と、加工ノズル後の引取ローラ9の速度を調整することでリラックスさせることが重要となる。
本発明の加工糸は、芯糸の走行速度がプロセス速度となるため、加工ノズルに芯糸を供給する供給ローラ13の速度に対して、ノズル後の引取ローラ9の速度を遅くすることでリラックスさせる。この際のリラックス率は、芯糸と鞘糸を同速度でノズルに供給し、ノズルを出て引取ロールに入るまでの区間における芯糸と鞘糸の絡合有無を確認することから選定することができる。リラックス率が適切であれば、芯糸が開繊して鞘糸を挟み込んで交錯し、絡合およびループの起点を形成する。リラックス率が不十分であれば、芯糸が伸長したままの状態となるため、開繊が不十分で鞘糸が絡合していない状態となる。
本発明の加工糸において、ループの大きさを変化させるためには、芯糸と鞘糸の糸長差を制御することが好ましい。前記糸長差は、芯糸および鞘糸の供給速度により設定することができる。鞘糸を供給する際に、原糸の解舒や走行時の擦過などによる糸切れを抑制する観点で、鞘糸の供給速度としては1000m/min以下とすることが好ましく、800m/min以下であることがより好ましく、600m/min以下とすることがさらに好ましい。
鞘糸からなるループが形成された加工糸8は、引取ローラ9で引き取られ、形態固定や捲縮を発現させる等の目的で、一旦巻き取った後あるいは嵩高加工に引き続いて熱処理を施すことが好ましい。図3においては、嵩高加工に引き続き熱処理を行う加工工程を例示している。この熱処理は、例えばヒータ10によって行うものである。熱処理温度は、加工糸を構成する繊維に使用するポリマーのうち、結晶化温度が最も低いポリマーの結晶化温度±30℃がその目安となる。この温度範囲での処理であれば、ポリマーの融点から処理温度が離れているため、加工糸を構成する繊維間で融着して硬化した箇所はなく、異物感がなく、良好な触感を損ねることはない。この熱処理工程に用いるヒータは一般的な接触式あるいは非接触式のヒータを採用することができ、熱処理前の嵩高性や鞘糸の劣化抑制という観点では、非接触式のヒータの使用が好ましい。ここで言う非接触式のヒータとは、スリット型ヒータやチューブ型ヒータ等の空気加熱式ヒータ、高温蒸気により加熱するスチームヒータ、輻射加熱を利用したハロゲンヒータやカーボンヒータ、マイクロ波ヒータ等が該当する。
ここで加熱効率という観点から、輻射加熱を利用したヒータが好ましい。加熱時間に関しては、例えば、結晶化が進み加工糸を構成する繊維の繊維構造の固定、加工糸の形態固定及び鞘糸の捲縮発現が完了するための時間等を考慮することになり、処理温度及び時間を求められる特性に応じて調整するのがよい。熱処理工程が完了した加工糸はデリバリーローラ11を介して速度を規制し、張力制御機能を具備したワインダ12で巻き取ればよい。この巻き形状に関しては、特に限定されるものではなく、いわゆるチーズ巻きやボビン巻きとすることが可能である。また、最終的な製品への加工を考慮して、複数本を予め合糸し、トウとすることや、そのままシート化することも可能である。
本発明の加工糸は、熱処理工程前後でシリコーン系油剤を付着させることが好ましい。
ここで付着させるシリコーンは、熱処理などによって適度にシリコーンを架橋させることで、皮膜を形成させると良い。
このシリコーン系油剤は無溶剤でも、溶液や水性エマルジョンの状態でも使用することもできる。油剤の均一付着という観点では、水性エマルジョンを使用することが好ましい。シリコーン系油剤は、油剤ガイド、オイリングローラまたはスプレーによる散布を利用して、質量比で嵩高糸に対して0.1~5.0%付着できるように処理することが好適である。
その後適切な温度及び時間で乾燥し、架橋反応させることが好ましい。このシリコーン系油剤は、複数回に分けて付着させることも可能であり、同じ種類のシリコーンあるいは種類の異なるシリコーンを分けて付着させ、強固なシリコーン皮膜を積層させることも好適である。
以下実施例を挙げて、本発明の加工糸およびその効果について具体的に説明する。
実施例および比較例では、下記の評価を行った。
A.繊度
加工糸の一端を固定して吊るし、加工糸が2倍程度に伸長するように下端に荷重を掛けた。下端側でループを掴んで加工糸に対して垂直方向に引っ張ることで、芯糸と鞘糸を分離した。加工糸から取り出した各繊維の質量と長さを測定し、10000m当たりの質量を算出した。これを10回繰り返し、その平均値の小数点第2位を四捨五入した値をその繊維の繊度(dtex)とした。
B.芯糸のz平均分子量
芯糸の分子量は、(株)島津製作所製GPCシステム「LC solution」システムを用い、昭和電工(株)製カラムShodex KD-806Mを2本直列に、ガードカラムありで接続し、ジメチルアセトアミド(DMAc)を展開溶媒として測定した。サンプル濃度を約0.1質量%とし、5mgの繊維試料を5gのDMAcに溶解して、測定試料とした。カラム温度40℃、流速0.7ml/分で測定を行い、ポリスチレン換算にて算出した値について、千の位を四捨五入して数万で表記した。
C.フィルパワー(嵩高性)
嵩高性の指標として、電子天秤上に設置した容器で加工糸30gを計量し、ASTM D4522-14に準じてフィルパワーを測定した。なお、加工糸は合成繊維で構成されているため、羽毛の評価において実施する前処理は省略した。
D.洗濯耐久性
洗濯耐久性の評価については、22dtexのナイロンタフタを側地(表地および裏地)として用い、縦70cm×横60cmの座布団を作製して実施した。試料の充填および縫製は、前記サイズの座布団に充填量35gとして、1枚の側地の上に加工糸をタテ方向に厚みが均一となるように並べた。その上にもう1枚の側地を載せて、タテ10cm間隔でヨコ方向にキルティングした後、側地の周囲を縫い合わせて座布団を作製した。
この座布団をJIS C4M法で5回、ネット無しで洗濯を行い、吊り干し乾燥した。
続いて、洗濯前の座布団を解体して取り出した加工糸のフィルパワーF0と、5回洗濯評価後の座布団を解体して取り出した加工糸のフィルパワーF5を測定した。F0に対するF5のフィルパワーの割合を算出し、小数点以下一桁目を四捨五入した値を洗濯耐久性の指標とするフィルパワー保持率(%)とした。
E.ループの大きさと個数(頻度)
試料となる加工糸にたるみが出ないように、図2に例示されるように定長で一対の糸道ガイド4に糸掛けした。糸掛けした加工糸の側面を、(株)キーエンス製マイクロスコープVHX-6000で、ループを10箇所以上観察できる倍率で撮影した。この画像から無作為に抽出したループ10箇所について、加工糸中心線3からループ頂点までの距離5を測定し、小数点以下一桁目を四捨五入した値をループの大きさとした。
また、同様の画像で、加工糸中心線3から1.5mm以上にループの頂点を形成する鞘糸が、加工糸中心線3から1.0mmに位置した直線と交差する点を交錯点とし、加工糸1ミリメートル当たりでカウントした。計10画像の交錯点(個/mm)を測定した平均値の小数点以下一桁目を四捨五入した値とした。
F.芯糸の合着状態の確認
長さ10cm以上の芯糸1本を採取し、芯糸の繊維軸方向に沿って1cm以上の間隔を空けて、無作為に10箇所を抽出した。当該10箇所の繊維横断面を走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製「SU-1510」)を用いて観察倍率1000倍で観察することにより、合着部の有無を確認した。
[実施例1]
(芯糸)
芯糸として、乾式紡糸法によるポリウレタン弾性繊維(東レ・オペロンテックス(株)製ライクラ(登録商標)ファイバーT-327C、繊度44dtex)を9本合糸して用いた。当該芯糸のz平均分子量は22万であった。当該芯糸に用いたポリウレタン弾性繊維について横断面における合着状態を観察したところ、構成単糸が合着した部分が10箇所全てで見られ、連続的に合着部を有しているものであった。
(鞘糸)
固有粘度(IV)が0.6dl/gのポリエチレンテレフタレートPET1を290℃で溶融後、計量し、紡糸パックに流入させ、3つのスリット(幅0.1mm)で構成された吐出孔が、同心円状に12孔配置された中空断面紡糸口金から中空率30%となるように吐出した。吐出された糸条に20℃の冷却風を30m/minの流れで片側から吹き付けて冷却固化後、紡糸油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで未延伸糸を巻き取った。引き続き、巻き取った未延伸糸を90℃と140℃に加熱したローラ間で延伸速度800m/minで3.0倍延伸した。得られた中空繊維(総繊度80dtex、フィラメント数12本)を鞘糸とした。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minで、サクションノズルに供給した。サクションノズルでは走行糸条に対して20°で気流速度300m/sとなるように圧空を噴射し、芯糸と鞘糸がノズル内で交錯、開繊して絡合しないように随伴気流とともにノズルから噴出させた。ノズルから噴射した糸条を気流と共に走行させ、セラミックガイドを利用して糸道を変更し、鞘糸からなるループを形成した加工糸を引取ローラ速度8.5m/minで15%のリラックス率を設定して、引き取った。連続して、ローラを介して該加工糸をチューブヒータに導き、140℃の加熱空気で10秒間熱処理し、加工糸の形態をセットした。該加工糸を、チューブヒータ後に設置された張力制御式巻取り機により、9.0m/minでドラムに巻き取った。
ドラムに巻き取った加工糸は、芯糸に鞘糸が旋回して巻き付いており、芯糸を軸として芯糸との交錯点を起点に鞘糸からなるループが形成された旋回加工糸であり、鞘糸からなるループが21mm突出した嵩高い構造を有していた。また、前記ループが11個/mmの頻度で形成されており、ループサイズ、周期の均一性に優れるものであった。
引き続き、巻き取った加工糸に、シリコーン系油剤を、最終的なシリコーンの付着量が加工糸の質量に対して1.0%となるようにスプレーで均一に散布し、温度160℃、処理時間5分の条件で熱処理を施して、加工糸を採取した。
該加工糸の洗濯前のフィルパワーF0は426inch/30gであり、優れた嵩高性を有していた。また、洗濯後のフィルパワーF5は396inch/30gであり、フィルパワー保持率は93%と高く、洗濯耐久性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例2]
(芯糸)
芯糸として、乾式紡糸法によるポリウレタン弾性繊維(東レ・オペロンテックス(株)製ライクラ(登録商標)ファイバーT-327C、繊度22dtex)を9本合糸して用いた。当該芯糸に用いたポリウレタン弾性繊維について、横断面における合着状態を観察したところ、構成単糸が合着した部分が10箇所のうち9箇所で見られ、連続的に合着部を有しているものであった。
(鞘糸)
鞘糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minで、サクションノズルに供給し、引取ローラ速度9.0m/minで10%のリラックス率を設定して、引き取った。以降、実施例1と同様にドラムに巻き取り、続いてシリコーン処理を施して加工糸を採取した。
加工糸のフィルパワー保持率は87%と、実施例1に対して低めであったが、洗濯後の加工糸同士の絡みは少なく、鞘糸の抜けなどはほとんど見られなかった。結果を表1に示す。
[実施例3]
(芯糸)
芯糸として、乾式紡糸法によるポリウレタン弾性繊維(東レ・オペロンテックス(株)製ライクラ(登録商標)ファイバーT-327C、繊度235dtex)を4本合糸して用いた。当該芯糸に用いたポリウレタン弾性繊維について横断面における合着状態を観察したところ、構成単糸が合着した部分が10箇所全てで見られ、連続的に合着部を有しているものであった。
(鞘糸)
鞘糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minで、サクションノズルに供給し、引取ローラ速度8.5m/minで15%のリラックス率を設定して、引き取った。以降、実施例1と同様にドラムに巻き取り、続いてシリコーン処理を施して加工糸を採取した。
加工糸のフィルパワー保持率は95%と良好であった。座布団に充填した状態でも芯糸を認識しやすく、詰め物としての触感は硬めであったが、洗濯後の加工糸同士の絡みは少なく、鞘糸の抜けなどはほとんど見られなかった。結果を表1に示す。
[実施例4]
(芯糸)
芯糸として、実施例2で用いたのと同様の乾式紡糸法によるポリウレタン弾性繊維(東レ・オペロンテックス(株)製ライクラ(登録商標)ファイバーT-327C、繊度22dtex)を4本合糸して用いた。
(鞘糸)
鞘糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minで、サクションノズルに供給し、引取ローラ速度9.3m/minで7%のリラックス率を設定して、引き取った。以降、実施例1と同様にドラムに巻き取り、続いてシリコーン処理を施して加工糸を採取した。
加工糸のフィルパワー保持率は80%であり、実施例2と比べて低くなったが、座布団に充填した状態で、詰め物としての触感は柔軟であった。なお、洗濯後の加工糸は、ループが移動して偏った部分が見られたものの、加工糸同士の絡みは少なく、良好な形態を維持していた。結果を表1に示す。
[実施例5]
(芯糸)
芯糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(鞘糸)
固有粘度(IV)が0.6dl/gのポリエチレンテレフタレートPET1を290℃で溶融後、吐出量が実施例1の1/2となるように計量し、紡糸パックに流入させ、実施例1で用いたのと同様の中空断面紡糸口金から中空率30%となるように吐出した。吐出された糸条に20℃の冷却風を25m/minの流れで片側から吹き付けて冷却固化後、紡糸油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで未延伸糸を巻き取った。引き続き、巻き取った未延伸糸を実施例1と同様にして3.0倍延伸した。得られた中空繊維(総繊度40dtex、フィラメント数12本)を鞘糸とした。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minで、サクションノズルに供給し、引取ローラ速度8.5m/minで15%のリラックス率を設定して、引き取った。以降、実施例1と同様にドラムに巻き取り、続いてシリコーン処理を施して加工糸を採取した。
加工糸の洗濯前のフィルパワーF0は、実施例1より低めであったが、フィルパワー保持率は96%と高く、洗濯耐久性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例6]
(芯糸)
芯糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(鞘糸)
固有粘度(IV)が0.6dl/gのポリエチレンテレフタレートPET1を290℃で溶融後、吐出量が実施例1の2倍となるように計量し、紡糸パックに流入させ、実施例1で用いたのと同様の中空断面紡糸口金から中空率30%となるように吐出した。吐出された糸条に20℃の冷却風を50m/minの流れで片側から吹き付けて冷却固化後、紡糸油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで未延伸糸を巻き取った。引き続き、巻き取った未延伸糸を実施例1と同様にして3.0倍延伸した。得られた中空繊維(総繊度160dtex、フィラメント数12本)を鞘糸とした。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minで、サクションノズルに供給し、引取ローラ速度8.7m/minで13%のリラックス率を設定して、引き取った。以降、実施例1と同様にドラムに巻き取り、続いてシリコーン処理を施して加工糸を採取した。
加工糸のループの大きさは、実施例1よりも大きく、嵩高性に優れるものであった。また、フィルパワー保持率は91%と高く、洗濯耐久性に優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例7]
(芯糸)
芯糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(鞘糸)
固有粘度(IV)が0.6dl/gのポリエチレンテレフタレートPET1を290℃で溶融後、吐出量が実施例1の1.7倍となるように計量し、紡糸パックに流入させ、3つのスリット(幅0.1mm)で構成された吐出孔が、同心円状に6孔配置された中空断面紡糸口金から中空率30%となるように吐出した。吐出された糸条に20℃の冷却風を60m/minの流れで片側から吹き付けて冷却固化後、紡糸油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで未延伸糸を巻き取った。引き続き、巻き取った未延伸糸を実施例1と同様にして3.0倍延伸した。得られた中空繊維(総繊度136dtex、フィラメント数6本)を2本合糸して、総繊度272dtex、フィラメント数12本の鞘糸とした。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minで、サクションノズルに供給し、引取ローラ速度9.0m/minで10%のリラックス率を設定して、引き取った。以降、実施例1と同様にドラムに巻き取り、続いてシリコーン処理を施して加工糸を採取した。
加工糸のループの大きさは、実施例6よりも大きく、嵩高性に優れるものであった。また、洗濯後の加工糸は、ループが移動して偏った部分や、芯糸からループが抜けた部分が見られたものの、フィルパワー保持率は83%であり、加工糸同士の絡みは少なく、良好な形態を維持していた。結果を表1に示す。
[比較例1]
(芯糸)
熱可塑性ポリウレタン樹脂として、ディーアイシーコベストロポリマー(株)製のTPU(品番:T-8180N)を用い、紡糸温度210℃で溶融させ、丸断面の吐出孔が同心円状に配置された口金から吐出して、500m/minの速度で巻取り、ポリウレタン弾性繊維(総繊度84dtex、フィラメント数12本)を得た。当該溶融紡糸ポリウレタン弾性繊維を芯糸として用いた。比較例1の芯糸については、z平均分子量は17万であった。当該芯糸に用いたポリウレタン弾性繊維については、芯糸の繊維軸方向いずれの箇所でも、構成フィラメント数12本が分離した状態であり、合着部は見られなかった。
(鞘糸)
鞘糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minとして、サクションノズルに供給し、引取ローラ速度9.5m/minで5%のリラックス率を設定して、引き取った。以降、実施例1と同様にドラムに巻き取り、続いてシリコーン処理を施して加工糸を採取した。
比較例1の加工糸は、加工した時点で鞘糸の固定が弱く、フィルパワー測定時や、座布団作製時に鞘糸の抜けが見られた。洗濯前F0は良好であり嵩高い形態を有していたが、洗濯後においては、加工糸から抜けた鞘糸が絡まって、加工糸同士が分離できない状態に集束した部分が多く見られた。そのため、洗濯後F5は低くなっており、フィルパワー保持率は68%と低く、洗濯耐久性に劣るものであった。結果を表1に示す。
[比較例2]
(芯糸)
芯糸の総繊度を変更するため、吐出量を高めて、比較例1と同様に紡糸して得た溶融紡糸ポリウレタン弾性繊維(総繊度198dtex、フィラメント数12本)を芯糸として用いた。当該芯糸に用いたポリウレタン弾性繊維についても比較例1と同様に、芯糸の繊維軸方向いずれの箇所でも、構成フィラメント数12本が分離した状態であり、合着部は見られなかった。
(鞘糸)
鞘糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(糸加工)
図3に示される糸加工工程において、芯糸を供給ローラ速度10m/min、鞘糸を供給ローラ速度200m/minとして、サクションノズルに供給し、引取ローラ速度9.3m/minで7%のリラックス率を設定して、引き取った。以降、実施例1と同様にドラムに巻き取り、続いてシリコーン処理を施して加工糸を採取した。
比較例2の加工糸は、洗濯前F0は良好であり嵩高い形態を有していたが、洗濯後の加工糸は、ループが移動して偏った部分が見られ、ここから抜けた鞘糸が絡まって、加工糸同士が分離できない状態に集束した部分が形成されていた。そのため、フィルパワー保持率は74%と低く、洗濯耐久性に劣るものであった。結果を表1に示す。
[比較例3]
(芯糸)
AポリマーとしてIVが0.8dl/gの高粘度ポリエチレンテレフタレートPET2、BポリマーとしてIVが0.5dl/gの低粘度ポリエチレンテレフタレートPET3を用い、295℃で溶融後、計量し、サイドバイサイド型複合断面口金が具備された紡糸パックに流入させ、AポリマーとBポリマーの複合重量比が50/50となるよう吐出した。吐出された糸条に20℃の冷却風を20m/minの流れで吹き付けて冷却固化後、紡糸油剤を付与した後に紡糸速度1500m/minで未延伸糸を巻き取った。巻き取った未延伸糸を90℃と140℃に加熱したローラ間で延伸速度800m/minで3.0倍延伸した複合繊維(総繊度78dtex、フィラメント数24本)を芯糸とした。
(鞘糸)
鞘糸には、実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
(糸加工)
糸加工工程においては、芯糸の供給ローラ速度に対して、引取ローラ速度は98%として、ノズル後に糸が弛み過ぎないようにリラックス率を2%として加工した以外は実施例1と同様にして、加工糸を得た。
比較例3も、洗濯前F0は良好であり嵩高い形態を有していたが、比較例1と同様に、洗濯後においては、加工糸から抜けた鞘糸が絡まって、加工糸同士が分離できない状態に集束した部分が多く見られた。そのため、洗濯後F5は低くなっており、フィルパワー保持率が低く、洗濯耐久性に劣るものであった。結果を表1に示す。
Figure 2023110885000001
1 鞘糸
2 芯糸
3 加工糸中心線
4 糸道ガイド
5 加工糸中心線からループ頂点までの距離
6 サクションノズル
7 旋回点
8 嵩高糸
9 引取ローラ
10 ヒーター
11 デリバリーローラ
12 ワインダ
13 供給ローラ
14 芯糸
15 鞘糸
16 圧空の噴射角度
17 芯糸の合着した単繊維間の空隙部

Claims (9)

  1. マルチフィラメントである芯糸と、マルチフィラメントであり複数のループを形成する鞘糸とからなる加工糸であり、前記芯糸はz平均分子量Mzが20万以上のポリウレタン弾性繊維からなり、前記ループが前記加工糸の繊維軸方向に1.0個/mm以上、30.0個/mm以下の頻度で存在している、加工糸。
  2. 前記芯糸のマルチフィラメントのうち少なくとも2本の単繊維が合着した部分が繊維軸方向に連続的に存在している、請求項1に記載の加工糸。
  3. 前記芯糸の長さに対して鞘糸の長さが3倍以上、100倍以下であり、前記ループが、加工糸中心線から直行して加工糸表面方向に3mm以上突出している、請求項1または2に記載の加工糸。
  4. 前記鞘糸が単成分のポリエステル繊維からなる、請求項1または2に記載の加工糸。
  5. ASTM D4522-14に準じて測定されるフィルパワーが200inch/30g以上である、請求項1または2に記載の加工糸。
  6. 前記芯糸の総繊度が80dtex以上である、請求項1または2に記載の加工糸。
  7. 前記鞘糸の平均単繊維繊度が3.0dtex以上50.0dtex以下である、請求項1または2に記載の加工糸。
  8. 請求項1または2に記載の加工糸を含む詰め物。
  9. 請求項8に記載の詰め物を含む繊維製品。
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