JP2023106957A - 熱圧着積層フィルムの巻回ロール - Google Patents

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Abstract

【課題】高配向な液晶ポリマーフィルムを複数枚用いながらも、積層体全体ではその著しい方向異方性が緩和された、熱圧着積層フィルムの新規な巻回ロール、並びに、これを用いた回路基板用絶縁材料及び金属箔張積層板等を提供する。【解決手段】第1液晶ポリマーフィルム層1と第2液晶ポリマーフィルム層2とを少なくともこの順に有する熱圧着積層フィルムLの巻回ロール100を備え、前記第1液晶ポリマーフィルム層1は配向方向Xに配向しており、前記配向方向Xへの配向度が20~60%であり、前記第2液晶ポリマーフィルム層2は配向方向Yに配向しており、前記配向方向Yへの配向度が20~60%であり、前記熱圧着積層フィルムLにおいて、前記配向方向Xと前記配向方向Yとがなす角θxyが90°±15°の範囲内にある、熱圧着積層フィルムLの巻回ロール100。【選択図】図1

Description

本発明は、複数の液晶ポリマーフィルム層を有する熱圧着積層フィルムの巻回ロール等に関する。
従来、回路基板用絶縁材料として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と無機フィラーと溶剤等を含むワニスをガラスクロスに含浸させた後、熱プレス成形した、ワニス含浸複合材が知られている。しかしながら、この製法は、例えばワニス含浸時の樹脂流れ性や熱プレス成形時の硬化性等の観点で、製造時のプロセス裕度が乏しく、生産性に劣る。また、熱硬化性樹脂は、吸湿し易く、その吸湿にともなって寸法が変化するため、得られるワニス含浸複合材の寸法精度(加熱寸法精度)に劣る。
一方、液晶ポリマー(LCP;Liquid Crystal Polymer)は、溶融状態或いは溶液状態で液晶性を示すポリマーである。とりわけ、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーは、押出成形が可能であり、高ガスバリア性、高フィルム強度、高耐熱、高絶縁、低吸水率、高周波域での低誘電特性等の優れた性質を有している。そのため、インフレーション法やTダイ法等の溶融押出成形で製造された熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、ガスバリア性フィルム材料用途、電子材料用途、電気絶縁性材料用途等において、実用化が検討されている。また、液晶ポリマーを用いた回路基板用絶縁材料は、高周波特性及び低誘電性に優れることから、今後進展する第5世代移動通信システム(5G)やミリ波レーダー等におけるフレキシブルプリント配線板(FPC)、フレキシブルプリント配線板積層体、繊維強化フレキシブル積層体等の回路基板の絶縁材料として、近年、脚光を浴びている。
しかしながら、溶融押出成形を実際に行ってみると、熱可塑性液晶ポリマーが有する高度の液晶配向性や比較的に剛直な分子鎖等に起因して、さらには溶融押出時のダイやダイスウェル等に起因して生じるせん断応力等を受けて、ポリマー鎖がフィルムの流れ方向、すなわちMD方向(Machine Direction;長手方向)に高度に分子配向する。そのため、フィルム強度、熱膨張係数、寸法精度等の諸物性において、例えばMD方向とTD方向(Transverse Direction;横手方向)とで著しい異方性が生じてしまい、工業上の利用価値が高い熱可塑性液晶ポリマーフィルムを得ることが困難であることが判明した。
MD方向とTD方向の異方性を改善するために、かつては液晶ポリマーフィルムを延伸処理することが検討されていた。しかしながら、延伸処理は、液晶ポリマーフィルム全体を1軸方向又は2軸方向に大きく引き延ばす技術であるため、配向の向きや配向度を緻密に調整することができない。そのため、液晶ポリマーフィルムの延伸処理は、主として、液晶ポリマーフィルムの表面粗さや表面精度の調整に行われているのが現状である。
例えば、特許文献1には、一対のラミネートフィルム(比重が1.3以上でかつその延伸方向の破断伸び率が400%以上であるフッ素樹脂多孔質フィルム)間に液晶ポリマーフィルムを挟持したラミネート体を予め作製し、フッ素樹脂多孔質フィルムは軟化させるが実質的に溶融せずに液晶ポリマーフィルムは軟化ないし溶融させる温度条件下で、このラミネート体を1軸方向又は2軸方向に延伸処理することが示されている。ここで、特許文献1の実施例では、MD方向に1.3倍及びTD方向に3.9倍の二軸延伸をすることにより、表面粗さが低く表面精度の高い液晶ポリマーフィルムを得ている。
また、熱可塑性高分子フィルムを単独で延伸する方法として、例えば特許文献2では、MD方向およびTD方向ともに3.25以下の誘電率を有する、光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマーを、熱変形温度(TD)から60℃低い温度(TD-60℃)~TDから5℃低い温度(TD-5℃)の範囲内で前記フィルムを加熱して、MD方向に2倍及びTD方向に2.5倍の二軸延伸をすることにより、厚み公差が3μm(厚みムラ7.5%)と小さな熱可塑性高分子フィルムを得ている。
特許第3958629号 国際公開第2013/146174号パンフレット
しかしながら、上述した特許文献1では、破断伸び率が小さなポリイミドフィルムを用いた場合には、延伸処理の際にラミネートフィルムが破断してしまい、所望する延伸処理ができないことが示されている。すなわち、特許文献1の技術は、破断伸び率が大きなフッ素樹脂多孔質フィルムという特殊なラミネートフィルムを用いた延伸処理を必須としており、汎用性に劣る。また、このような延伸処理では、配向の向きや配向度を緻密に調整することができない。しかも、このように延伸倍率(MD方向×TD方向)が1.5以上の延伸処理を行うと、延伸処理前に比べて、得られる熱可塑性高分子フィルムの柔軟性や形状追従性が大きく損なわれる傾向にある。
一方、上述した特許文献2では、熱可塑性高分子フィルムの熱変形温度を原反フィルムの熱変形温度より40~100℃上昇させるための緻密な温度制御により熱可塑性高分子フィルムを単独で延伸可能としているものの、複雑且つ長時間の熱処理が必要であり、生産性及び汎用性に劣る。また、このような延伸処理では、配向の向きや配向度を緻密に調整することができない。しかも、このように延伸倍率(MD方向×TD方向)が1.5以上の延伸処理を行うと、延伸処理前に比べて、得られる熱可塑性高分子フィルムの柔軟性や形状追従性が大きく損なわれる傾向にある。
そして、特許文献1及び特許文献2のいずれにおいても、溶融押出成形された液晶ポリマーフィルムの著しい異方性を考慮しつつ、積層体全体ではその著しい方向異方性を緩和させて比較的に等方的な物性を呈する、新規素材を実現することについて、何ら開示も示唆もしていない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、高配向な液晶ポリマーフィルムを複数枚用いながらも、積層体全体ではその著しい方向異方性が緩和された、熱圧着積層フィルムの新規な巻回ロール、並びに、これを用いた回路基板用絶縁材料及び金属箔張積層板等を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、複数枚の高配向な液晶ポリマーフィルムを所定の配列で積層することで、上記課題が解決され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)第1液晶ポリマーフィルム層と第2液晶ポリマーフィルム層とを少なくともこの順に有する熱圧着積層フィルムの巻回ロールを備え、前記第1液晶ポリマーフィルム層は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、前記熱可塑性液晶ポリマーがフィルム面内の配向方向Xに配向しており、前記配向方向Xへの配向度が20~60%であり、前記第2液晶ポリマーフィルム層は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、前記熱可塑性液晶ポリマーがフィルム面内の配向方向Yに配向しており、前記配向方向Yへの配向度が20~60%であり、前記熱圧着積層フィルムにおいて、前記配向方向Xと前記配向方向Yとがなす角θxyが90°±15°の範囲内にある、熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(2)前記第1液晶ポリマーフィルム層が、溶融押出フィルムである(1)に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(3)前記第2液晶ポリマーフィルム層が、溶融押出フィルムである(1)又は(2)に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(4)前記熱圧着積層フィルムは、前記第1液晶ポリマーフィルム層と前記第2液晶ポリマーフィルム層と第3液晶ポリマーフィルム層とを少なくともこの順に有し、前記第3液晶ポリマーフィルム層は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、前記熱可塑性液晶ポリマーがフィルム面内の配向方向Zに配向しており、前記配向方向Zへの配向度が20~60%であり、前記熱圧着積層フィルムにおいて、前記配向方向Yと前記配向方向Zとがなす角θyzが90°±15°の範囲内にある(1)~(3)のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(5)前記第3液晶ポリマーフィルム層が、溶融押出フィルムである(4)に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(6)前記熱圧着積層フィルムは、全体でフィルム面内方向に0.0%以上10.0%未満の配向度を有する(1)~(5)のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(7)前記熱圧着積層フィルムは、全体でMD方向に0~30ppm/Kの線膨張係数(JIS K7197準拠)を有し、前記熱圧着積層フィルムは、全体でTD方向に0~30ppm/Kの線膨張係数(JIS K7197準拠)を有する(1)~(6)のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(8)前記熱圧着積層フィルムは、15~500μmの総厚みを有する(1)~(7)のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(9)前記配向方向Xが、TD方向である(1)~(8)のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(10)前記配向方向Yが、TD方向である(1)~(8)のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(11)前記配向方向Xが、非MD方向且つ非TD方向である(1)~(8)のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
(12)前記配向方向Yが、非MD方向且つ非TD方向である(11)に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
本発明によれば、高配向な液晶ポリマーフィルムを複数枚用いながらも、積層構造全体ではその著しい方向異方性が緩和された、熱圧着積層フィルムの新規な巻回ロール、並びに、これを用いた回路基板用絶縁材料及び金属箔張積層板等を実現することができる。
一実施形態の熱圧着積層フィルムLの巻回ロール100を示す模式図である。 一実施形態の熱圧着積層フィルムLの模式断面図である。 熱圧着積層フィルムLの各配向方向X,Y,Zを示す説明図である。 他の実施形態の熱圧着積層フィルムLを示す模式断面図である。 他の実施形態の熱圧着積層フィルムLを示す模式断面図である。 熱圧着積層フィルムLの各配向方向X,Yを示す説明図である。 配向性ピークの面積割合に基づく配向度の算出原理を示す概念図である。 液晶ポリマーフィルムの配向制御方法の一例を示す模式図である。 圧着体準備工程S1の一例を示す模式図である ずりせん断応力印加工程S2の一例を示す模式図である。 液晶ポリマーフィルムの配向制御方法の別の一例を示す模式図である。 液晶ポリマーフィルムの配向方向の変化を示す概念図である。 液晶ポリマーフィルムの配向方向の変化を示す概念図である。 液晶ポリマーフィルムの配向制御方法の他の一例を示す模式図である。 一実施形態の回路基板用絶縁材料を示す模式断面図である。 一実施形態の金属箔張積層板を示す模式断面図である。 一実施形態の金属箔張積層板を示す模式断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
[熱圧着積層フィルムの巻回ロール]
図1は、本実施形態の熱圧着積層フィルムL(液晶ポリマーフィルム積層体)の巻回ロール100を示す模式図である。また、図2は、熱圧着積層フィルムLの模式断面図である。本実施形態の熱圧着積層フィルムLの巻回ロール100は、それぞれ熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有する第1液晶ポリマーフィルム層1と第2液晶ポリマーフィルム層2と第3液晶ポリマーフィルム層3とを少なくともこの順に有する、液晶ポリマーフィルム積層体の巻回体(ロール原反)である。各液晶ポリマーフィルム層1,2,3は、熱可塑性液晶ポリマーがフィルム面内のそれぞれ所定の配向方向X,Y、Zへ配向した高配向な液晶ポリマーフィルム(LCPフィルム;Liquid Crystal Polymer Film)である。そして、これら各液晶ポリマーフィルム層1,2,3が所定の配列で積層されていることにより、この巻回ロール100の熱圧着積層フィルムL全体では、液晶ポリマーフィルム層1,2,3が有する著しい方向異方性が緩和されている。
第1液晶ポリマーフィルム層1は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、フィルム面内の配向方向Xに熱可塑性液晶ポリマーが高配向した単層のLCPフィルムである。第1液晶ポリマーフィルム層1の配向方向Xへの配向度は、特に限定されないが、配向方向Xへの配向度が大きな液晶ポリマーフィルムを用いた場合にその著しい方向異方性の緩和効果がより顕在化するとの観点から、好ましくは20~60%であり、より好ましくは25~60%であり、さらに好ましくは30~60%である。
第2液晶ポリマーフィルム層2は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、フィルム面内の配向方向Yに熱可塑性液晶ポリマーが高配向した単層のLCPフィルムである。第2液晶ポリマーフィルム層2の配向方向Yへの配向度は、特に限定されないが、配向方向Yへの配向度が大きな液晶ポリマーフィルムを用いた場合にその著しい方向異方性の緩和効果がより顕在化するとの観点から、好ましくは20~60%であり、より好ましくは25~60%であり、さらに好ましくは30~60%である。
第3液晶ポリマーフィルム層3は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、フィルム面内の配向方向Zに熱可塑性液晶ポリマーが高配向した単層のLCPフィルムである。第3液晶ポリマーフィルム層3の配向方向Zへの配向度は、特に限定されないが、配向方向Zへの配向度が大きな液晶ポリマーフィルムを用いた場合にその著しい方向異方性の緩和効果がより顕在化するとの観点から、好ましくは20~60%であり、より好ましくは25~60%であり、さらに好ましくは30~60%である。
本実施形態の巻回ロール100の熱圧着積層フィルムLは、第1液晶ポリマーフィルム層1と第2液晶ポリマーフィルム層2と第3液晶ポリマーフィルム層3とが少なくともこの順に積層された積層構造(3層構造)を有する。本実施形態では、液晶ポリマーフィルム層1,2,3の3層が熱圧着されることにより、3層構造の熱圧着積層フィルムLが形成されている。ここで、本明細書において、「~が少なくともこの順に積層された(設けられた)」とは、本実施形態のように第1液晶ポリマーフィルム層1と第2液晶ポリマーフィルム層2と第3液晶ポリマーフィルム層3が直接載置された態様のみならず、第1液晶ポリマーフィルム層1と第2液晶ポリマーフィルム層2との間に、或いは、第2液晶ポリマーフィルム層2と第3液晶ポリマーフィルム層3との間に、図示しない任意の層(例えば離型層、プライマー層等)が介在して、第1液晶ポリマーフィルム層1と第2液晶ポリマーフィルム層2と第3液晶ポリマーフィルム層3とがそれぞれ離間して配置された態様を包含する意味である。
図3は、熱圧着積層フィルムLの各配向方向X,Y,Zを示す説明図である。ここでは、熱圧着積層フィルムLの平面視で、各配向方向X,Y,Zを実線で示し、補助線としてMD方向及びTD方向をプロットしている。また、配向方向Xと配向方向Yとがなす角度をθxyとし、配向方向Yと配向方向Zとがなす角度をθyzとしている。本実施形態において、第1液晶ポリマーフィルム層1と第2液晶ポリマーフィルム層2とは、配向方向Xと配向方向Yとがなす角θxyが90°±15°の範囲内となるように、積層されている。このように配向方向Xと配向方向Yとが略直交する配置関係とすることにより、熱圧着積層フィルムLの全体の配向度を小さくすることができる。角θxyは、好ましくは90°±10°の範囲内であり、より好ましくは90°±5°の範囲内である。
また、第2液晶ポリマーフィルム層2と第3液晶ポリマーフィルム層3とは、配向方向Yと配向方向Zとがなす角θyzが90°±15°の範囲内となるように、積層されている。このように配向方向Yと配向方向Zとが略直交する配置関係とすることにより、熱圧着積層フィルムLの全体の配向度を小さくすることができる。角θyzは、好ましくは90°±10°の範囲内であり、より好ましくは90°±5°の範囲内である。
なお、図3では、理解を容易とするために、配向方向X,Y,ZがMD方向及びTD方向と重ならないように示したが、配向方向X,Y,ZのいずれかがMD方向に一致していても或いはTD方向に一致していてもよい。上述した配向方向Xと配向方向Yと配向方向Zは、角θxyや角θyzが上述した範囲内にある限り、特に限定されない。例えば配向方向XがMD方向(Machine Direction;長手方向)である場合、配向方向Yは角θxyが90°±15°の範囲内(すなわち、前記MD方向と直交するTD方向(Transverse Direction;横手方向)±15°の範囲内)とすればよい。一方、配向方向XがTD方向である場合、配向方向Yは角θxyが90°±15°の範囲内(すなわち、前記TD方向と直交するMD方向±15°の範囲内)とすればよい。また、配向方向Xが非MD方向且つ非TD方向の斜め配向である場合(例えばMD方向から45°)、配向方向Yは角θxyが90°±15°の範囲内(すなわち、前記斜め方向と直交する方向(非MD方向且つ非TD方向)±15°の範囲内)とすればよい(例えばMD方向から135±15°)。一方、配向方向Yが非MD方向且つ非TD方向の斜め方向である場合(例えばMD方向から30°)、配向方向Xは角θxyが90°±15°の範囲内(すなわち、前記斜め方向と直交する方向(非MD方向且つ非TD方向)±15°の範囲内)とすればよい(例えばMD方向から125±15°)。これらの関係は、配向方向Z及び角θyzについても同様である。
なお、本実施形態では、3層構造の熱圧着積層フィルムLを例示したが、例えば図4に示すように第3液晶ポリマーフィルム層3を省略した2層構造の積層構造であってもよい。この場合、液晶ポリマーフィルム層1が第1液晶ポリマーフィルム層であり、液晶ポリマーフィルム層2が第2液晶ポリマーフィルム層と理解することができる。また、例えば図5に示すように第1液晶ポリマーフィルム層1を省略した2層構造の積層構造であってもよい。この場合、液晶ポリマーフィルム層2が第1液晶ポリマーフィルム層(又は第2液晶ポリマーフィルム層)であり、液晶ポリマーフィルム層3が第2液晶ポリマーフィルム層(又は第1液晶ポリマーフィルム層)と理解することができる。2層構造の積層構造の場合は、図6に示すように配向方向Xと配向方向Yの角θxyのみ(又は配向方向Yと配向方向Zの角θyzのみ)を設定すればよい。また、本実施形態の3層構造の熱圧着積層フィルムLに、いずれか1以上の液晶ポリマーフィルム層1,2,3、他の液晶ポリマーフィルム、織布WF等を熱圧着積層フィルムLにさらに積層させた4層以上の積層構造であっても、本発明は実施可能なことは言うまでもない。
本実施形態の巻回ロール100において、熱圧着積層フィルムL全体のフィルム面内方向の配向度は、特に限定されないが、各液晶ポリマーフィルム層1,2,3の著しい方向異方性を熱圧着積層フィルムL全体としては緩和させて比較的に等方的な物性を発現させる等の観点から、0.0%以上10.0%未満であることが好ましく、より好ましくは0.0%以上9.0%未満が好ましく、さらに好ましくは0.0%以上8.0%未満が好ましく、特に好ましくは0.0%以上7.0%未満である。なお、熱圧着積層フィルムL全体の配向度は、例えば、第1液晶ポリマーフィルム層1の配向方向X及びその配向度、第2液晶ポリマーフィルム層2の配向方向Y及びその配向度、第3液晶ポリマーフィルム層3の配向方向Z及びその配向度、液晶ポリマーフィルム層1,2,3の各厚み等によって調整可能である。
また、各液晶ポリマーフィルム層1,2,3の厚みは、要求性能に応じてそれぞれ適宜設定でき、特に限定されないが、押出成形時の取扱性や生産性等を考慮すると、10μm以上300μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以上250μm以下、さらに好ましくは20μm以上200μm以下である。
ここで、熱圧着積層フィルムLの総厚みは、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、押出成形時の取扱性や生産性等を考慮すると、30μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以上400μm以下、さらに好ましくは50μm以上300μm以下である。
なお、本実施形態の巻回ロール100において、熱圧着積層フィルムLを構成する第1液晶ポリマーフィルム層1、第2液晶ポリマーフィルム層2、及び第3液晶ポリマーフィルム層3は、それぞれ同一の組成であっても異なる組成であってもよく、それぞれ厚みが同一であっても異なっていてもよい。これらは、所望性能に応じて、適宜設定すればよい。例えば、本実施形態のように3層構成の熱圧着積層フィルムLの場合には、中心層となる第2液晶ポリマーフィルム層2の厚みは、両外層となる第1及び第3液晶ポリマーフィルム層1,3の厚みよりも大きいことが好ましい。具体的には、第2液晶ポリマーフィルム層2の厚みt2/第1液晶ポリマーフィルム層1の厚みt1が、1.2~4.0が好ましく、より好ましくは1.5~3.5が好ましく、さらに好ましくは1.8~3.0である。同様に、第2液晶ポリマーフィルム層2の厚みt2/第3液晶ポリマーフィルム層3の厚みt1が、1.2~4.0が好ましく、より好ましくは1.5~3.5が好ましく、さらに好ましくは1.8~3.0である。
以上のとおり、本実施形態の巻回ロール100においては、いずれも高配向な各液晶ポリマーフィルム層1,2,3を使用しているが、各液晶ポリマーフィルム層1,2,3を上述した配列で積層して熱圧着積層フィルムLを構成することにより、熱圧着積層フィルムLの全体の配向方法及び配向度を大きく低減させている。ここで、本明細書において、熱圧着積層フィルムL全体のフィルム面内方向の配向度及び配向方向は、いずれも対象試料の一方の表面側から透過法でX線回折測定を行って判別されるものであり、いずれも対象試料のフィルム面内方向の熱可塑性液晶ポリマーの配向を判別としている。
具体的には、本明細書において、各液晶ポリマーフィルム層1,2,3や熱圧着積層フィルムLの配向度は、X線回折装置を用いて透過法でX線回折測定を行い、得られた回折強度分布曲線の配向性ピークの面積割合に基づいて下記式から算出される値を意味する。一般的に、配向度(%)が小さい測定対象の場合、X線回折測定ではピーク強度が小さくブロードな回折ピークが観察されるため、配向性ピークの半値幅に基づく算出方法では、高い測定精度を担保できない。そのため、本明細書では、配向性ピークの半値幅ではなく、配向性ピークの面積割合に基づく算出方法で、配向度(%)をそれぞれ算出している。具体的には、図7及び数式1に示すとおり、配向性ピークの面積割合に基づく算出方法として、実施例に記載の条件にしたがい、2θ/θスキャンでピーク強度(配向性成分)を測定するとともに、βスキャンで方位角方向に0°から360°までの強度を測定して方位角方向の強度分布(ベース強度(等方性成分))を得て、ベースとなる等方性成分の面積を除いた配向性成分が占める面積が、全体面積(配向性成分の面積+等方性成分の面積)に占める割合を、配向度(%)として算出する。なお、本明細書では、配向度が25%未満のものを「低配向」と、配向度が25%以上のものを「高配向」称する場合がある。
また、本明細書において、各液晶ポリマーフィルム層1,2,3や熱圧着積層フィルムLの配向方向は、上記の配向性ピークのピークトップの角度に基づいて判別した。具体的には、実施例に記載の条件にしたがい、2θ/θスキャンでピーク強度(配向性成分)を測定するとともに、βスキャンで方位角方向に0°から360°までの強度を測定して方位角方向の強度分布(ベース強度(等方性成分))を得て、ベースとなる等方性成分の面積を除いた配向性成分のピークトップの位置から判別する。ここでは、当該ピークトップの位置が90°±5°及び270°±5°に認められるものを「MD配向」と、当該ピークトップの位置が180°±5°及び360°±5°に認められるものを「TD配向」と、当該ピークトップの位置が0°~360°に認められるもの(但し、90°±5°及び270°±5°にピークトップが認められるものと0°±5°、180°±5°及び360°±5°にピークトップが認められるものとを除く。)を「斜め配向」と、配向性成分がブロードでピークトップが明瞭に認められないもの及びピークトップは認められるものの配向度が10%未満のものは「無配向」と、称する場合がある。
一方、本実施形態の巻回ロール100において、熱圧着積層フィルムL全体の線膨張係数(JIS K7197準拠)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、各液晶ポリマーフィルム層1,2,3の著しい方向異方性を熱圧着積層フィルムL全体としては緩和させて比較的に等方的な物性を発現させる等の観点から、MD方向の線膨張係数は0~30ppm/Kであることが好ましく、より好ましくは0~25ppm/K、さらに好ましくは0~20ppm/Kであり、TD方向の線膨張係数は0~30ppm/Kであることが好ましく、より好ましくは0~25ppm/K、さらに好ましくは0~20ppm/Kである。
なお、本明細書において、各液晶ポリマーフィルム層1,2,3や熱圧着積層フィルムLの線膨張係数の測定は、JIS K7197に準拠したTMA法で行い、同法において測定される23~200℃の線膨張係数の平均値(CTE,23~200℃)を意味する。ここで測定する線膨張係数は、熱履歴を解消した値を見るために、各試料を5℃/分の昇温速度で加熱(1st heating)した後に測定環境温度(23℃)まで冷却(1st cooling)し、その後に5℃/分の昇温速度で2回目の加熱(2nd heating)したときの値を意味する。また、その他の詳細な測定条件は、後述する実施例に記載した条件にしたがうものとする。
(液晶ポリマーフィルム)
本実施形態の巻回ロール100において使用される各液晶ポリマーフィルム層1,2,3は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有する液晶ポリマーフィルムである限り、その種類は特に限定されず、当業界で公知のものを用いることができる。液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有する樹脂組成物を溶融押出成形した溶融押出フィルム(例えばTダイ溶融押出フィルムやインフレーション溶融押出フィルム等)であることが好ましい。なお、ここでいう溶融押出フィルムとは、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有する樹脂組成物を溶融押出成形した溶融押出フィルムのみならず、溶融押出成形後に得られる溶融押出フィルムに延伸処理や所定の配向制御処理を施したもの(1軸又は2軸延伸された溶融押出フィルム、配向制御処理後の溶融押出フィルム)を包含する概念である。
液晶ポリマーフィルムに含有される熱可塑性液晶ポリマーとしては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。液晶ポリマーは、光学的に異方性の溶融相を形成するポリマーであり、代表的にはサーモトロピック液晶化合物が挙げられる。なお、異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した偏光検査法等の公知の方法によって確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施することができる。
熱可塑性液晶ポリマーの具体例としては、芳香族又は脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族又は脂肪族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族アミノカルボン酸等を重縮合させた液晶ポリマーを含む液晶ポリマーが挙げられるが、これらに特に限定されない。
好ましい熱可塑性液晶ポリマーの具体例としては、具体的には、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン等の単量体を重縮合等させてなる芳香族ポリアミド樹脂;芳香族ジオール、芳香族カルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等の単量体を重縮合させてなる(全)芳香族ポリエステル樹脂;等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。熱可塑性液晶ポリマーは、一般的に、熱変形温度(TDUL)の観点からI型、II型、III型等に分類されている。本実施形態で用いる熱可塑性液晶ポリマーは、いずれのタイプであっても好適に用いることができ、適用用途に応じて適宜選択して用いればよい。例えば260~290℃程度の鉛フリーはんだへの適用が求められる電子回路基板用途においては、TDULが250~350℃程度の高耐熱なI型の熱可塑性液晶ポリマー、TDULが240~250℃程度の比較的に高耐熱なII型の熱可塑性液晶ポリマーが好適に用いられる。
これらの中でも、サーモトロピック型の液晶様性質を示し、融点が250℃以上、好ましくは融点が280℃~380℃の、(全)芳香族ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。このような(全)芳香族ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ジオール、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等のモノマーから合成される、溶融時に液晶性を示す(全)芳香族ポリエステル樹脂が知られている。その代表的なものとしては、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、フェノール及びフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6-ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、(全)芳香族ポリエステル樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。要求性能に応じて、比較的に高融点ないしは高熱変形温度を有し高耐熱な全芳香族ポリエステル樹脂を用いたり、比較的に低融点ないしは低熱変形温度を有し成形加工性に優れる芳香族ポリエステル樹脂を用いたりすることができる。
好ましい一態様としては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸及びその誘導体(以降において、単に「モノマー成分A」と称する場合がある。)を基本構造とし、パラヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェノール、ビスフェノールA、ヒドロキノン、4,4-ジヒドロキシビフェノール、エチレンテレフタレート及びこれらの誘導体よりなる群から選択される1種以上をモノマー成分(以降において、単に「モノマー成分B」と称する場合がある。)として少なくとも有する(全)芳香族ポリエステル樹脂が挙げられる。このような(全)芳香族ポリエステル樹脂は、溶融状態で分子の直鎖が規則正しく並んで異方性溶融相を形成し、典型的にはサーモトロピック型の液晶様性質を示し、機械的特性、電気特性、高周波特性、耐熱性、吸湿性等において優れた基本性能を有するものとなる。
また、上述した好ましい一態様の(全)芳香族ポリエステル樹脂は、必須単位としてモノマー成分A及びモノマー成分Bを有するものである限り、任意の構成を採ることができる。例えば2種以上のモノマー成分Aを有していても、3種以上のモノマー成分Aを有していてもよい。また、上述した好ましい一態様の(全)芳香族ポリエステル樹脂は、モノマー成分A及びモノマー成分B以外の、他のモノマー成分(以降において、単に「モノマー成分C」と称する場合がある。)を含有していてもよい。すなわち、上述した好ましい一態様の(全)芳香族ポリエステル樹脂は、モノマー成分A及びモノマー成分Bのみからなる2元系以上の重縮合体であっても、モノマー成分A、モノマー成分B及びモノマー成分Cからなる3元系以上のモノマー成分の重縮合体であってもよい。他のモノマー成分としては、上述したモノマー成分A及びモノマー成分B以外のもの、具体的には芳香族又は脂肪族ジヒドロキシ化合物及びその誘導体;芳香族又は脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体;芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体;芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族アミノカルボン酸及びその誘導体;等が挙げられるが、これらに特に限定されない。他のモノマー成分は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
なお、本明細書において、「誘導体」とは、上述したモノマー成分の一部に、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1~5のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等)、フェニル基等のアリール基、水酸基、炭素数1~5のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、カルボニル基、-O-、-S-、-CH2-等の修飾基が導入されているもの(以降において、「置換基を有するモノマー成分」と称する場合がある。)を意味する。ここで、「誘導体」は、上述した修飾基を有していてもよいモノマー成分A及びBのアシル化物、エステル誘導体、又は酸ハロゲン化物等のエステル形成性モノマーであってもよい。
なお、熱可塑性液晶ポリマーの合成方法は、公知の方法を適用することができ、特に限定されない。上述したモノマー成分によるエステル結合を形成させる公知の重縮合法、例えば溶融重合、溶融アシドリシス法、スラリー重合法等を適用することができる。これらの重合法を適用する際、常法にしたがい、アシル化ないしはアセチル化工程を経てもよい。
液晶ポリマーフィルム中の熱可塑性液晶ポリマーの含有割合は、他の必須成分及び任意成分との配合バランスを考慮し、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。調製時の混練性や取扱性、線膨張係数の低減効果等の観点から、液晶ポリマーフィルムの総量に対する固形分換算で、熱可塑性液晶ポリマーの含有割合は、50質量%以上100質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下、特に好ましくは80質量%以上100質量%以下、最も好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
液晶ポリマーフィルムは、無機フィラーをさらに含有していてもよい。無機フィラーを含有することで、線膨張係数が低減された液晶ポリマーフィルムを実現でき、具体的には、MD方向、TD方向、及びZD方向(Z-axis Direction;フィルム厚み方向)の線膨張係数の異方性が低減された液晶ポリマーフィルムが得られ易い。このような液晶ポリマーフィルムは、例えば多層積層が要求されるリジッド基板用途等において特に有用となる。
無機フィラーは、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えばカオリン、焼成カオリン、焼成クレー、未焼成クレー、シリカ(例えば天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ、湿式シリカ、合成シリカ、アエロジル等)、アルミニウム化合物(例えばベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、ハイドロタルサイト、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム等)、マグネシウム化合物(例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等)、カルシウム化合物(例えば炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸カルシウム等)、モリブデン化合物(例えば酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等)、タルク(例えば天然タルク、焼成タルク等)、マイカ(雲母)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸ナトリウム、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、錫酸亜鉛等の錫酸塩等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中でも、誘電特性等の観点から、シリカが好ましい。
また、ここで用いる無機フィラーは、当業界で公知の表面処理が施されたものであってもよい。表面処理により、耐湿性、接着強度、分散性等を向上させることができる。表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、スルホン酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
無機フィラーのメディアン径(d50)は、要求低減効果等の観点から、無機フィラーのd50は、0.01μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは0.03μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上50μm以下である。なお、本明細書において、無機フィラーのメディアン径(d50)は、レーザー回折/散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA-500)を用いて、レーザー回折・散乱法により体積基準で測定される値を意味する。
無機フィラーの含有量は、他の必須成分及び任意成分との配合バランスを考慮し、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。調製時の混練性や取扱性、線膨張係数の低減効果等の観点から、液晶ポリマーフィルムの総量に対する固形分換算で、無機フィラーの含有量は、合計で1質量%以上45質量%以下が好ましく、より好ましくは合計で3質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは合計で5質量%以上35質量%以下である。
液晶ポリマーフィルムは、本発明の効果を過度に損なわない範囲で、上述した熱可塑性液晶ポリマー以外の樹脂成分(以降において、単に「他の樹脂成分」と称する場合がある。)、例えば熱可塑性液晶ポリマー以外の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂や熱可塑性エラストマー等を含有していてもよい。また、液晶ポリマーフィルムは、本発明の効果を過度に損なわない範囲で、当業界で公知の添加剤、例えば炭素数10~25の高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、ポリシロキサン、フッ素樹脂等の離型改良剤;染料、顔料等の着色剤;有機充填剤;酸化防止剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;帯電防止剤;界面活性剤;防錆剤;消泡剤;蛍光剤等を含んでいてもよい。これらの添加剤は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの添加剤は、液晶ポリマーフィルムの成形時に調製する溶融樹脂組成物に含ませることができる。これらの樹脂成分や添加剤の含有量は、特に限定されないが、成形加工性や熱安定等の観点から、液晶ポリマーフィルムの総量に対して、それぞれ0.01~10質量%が好ましく、より好ましくはそれぞれ0.1~7質量%、さらに好ましくはそれぞれ0.5~5質量%である。
液晶ポリマーフィルムの融点(融解温度)は、特に限定されないが、フィルムの耐熱性や加工性等の観点から、融点(融解温度)が200~400℃であることが好ましく、250~360℃が好ましく、より好ましくは260~355℃、さらに好ましくは270~350℃、特に好ましくは275~345℃である。なお、本明細書において、液晶ポリマーフィルムの融点は、DSC8500(PerkinElmer社製)を用いて、熱履歴を解消した値を見るために、温度区間 30~400℃で液晶ポリマーフィルムを20℃/分の昇温速度で加熱(1st heating)した後に50℃/分の降温速度で冷却(1st cooling)し、その後に20℃/分の昇温速度で2回目の加熱(2nd heating)したときの示差走査熱量測定法(DSC)における融解ピーク温度を意味する。
液晶ポリマーフィルムは、当業界で公知の製法を適用して得ることができ、その製法は特に限定されない。例えば熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有する樹脂組成物を溶融押出成形することにより、液晶ポリマーフィルムとして好適な溶融押出フィルムを得ることができる。
上記の樹脂組成物の調製は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。上述した各成分を、例えば混練、溶融混錬、造粒、押出成形、プレス又は射出成形等の公知の方法によって製造及び加工することができる。なお、溶融混練を行う際には、一般に使用されている一軸式又は二軸式の押出機や各種ニーダー等の混練装置を用いることができる。これらの溶融混練装置に各成分を供給するに際し、熱可塑性液晶ポリマー、その他の樹脂成分、無機フィラー、添加剤等を予めタンブラーやヘンシェルミキサー等の混合装置を用いてドライブレンドしてもよい。溶融混練の際、混練装置のシリンダー設定温度は、適宜設定すればよく特に限定されないが、一般的に液晶ポリマーの融点以上360℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは液晶ポリマーの融点+10℃以上360℃以下である。
樹脂組成物の調製時に、本発明の効果を過度に損なわない範囲で、当業界で公知の添加剤、例えば炭素数10~25の高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、ポリシロキサン、フッ素樹脂等の離型改良剤;染料、顔料等の着色剤;有機充填剤;酸化防止剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;帯電防止剤;界面活性剤;防錆剤;消泡剤;蛍光剤等を含んでいてもよい。これらの添加剤は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。添加剤の含有量は、特に限定されないが、成型加工性や熱安定等の観点から、樹脂組成物の固形分換算の総量に対して、0.01~10質量%が好ましく、より好ましくは0.1~7質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
溶融押出フィルムの製膜方法としては、公知の各種方法を適用することができ、その種類は特に限定されない。例えばTダイ法やインフレーション法;例えばマルチマニホールド方式の共押出法やフィードブロック方式の共押出法;例えば二層共押出法や三層共押出法等の多層共押出法;を任意に組み合わせて適用することができる。好ましい一態様としては、上述した樹脂組成物を、Tダイを用いた溶融押出製膜法(以降において、単に「Tダイ溶融押出」という場合がある。)によりTダイからフィルム状に押し出して製膜し、その後に必要に応じてTダイ溶融押出フィルムを加圧加熱処理して、その後に必要に応じて冷却処理、圧着処理、加圧加熱処理等をして、所定の溶融押出フィルムを得る方法が挙げられる。また、溶融押出フィルムとしては、熱可塑性樹脂層、液晶ポリマーフィルム層、及び熱可塑性樹脂層が少なくともこの順に配列された積層構造を有する三層共押出フィルムの中間層(芯層)である液晶ポリマーフィルム層も好ましく用いられる。この場合、三層共押出フィルムの両外層の熱可塑性樹脂層を除去することで、単層の溶融押出フィルムを取り出すことができる。
溶融押出の際の設定条件は、使用する樹脂組成物の種類や組成、目的とする溶融押出フィルムの所望性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。一般的には、押出機のシリンダーの設定温度は230~360℃が好ましく、より好ましくは280~350℃である。また、例えばTダイのスリット間隙も同様に、使用する樹脂組成物の種類や組成、目的とする溶融押出フィルムの所望性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが。一般的には0.1~1.5mmが好ましく、より好ましくは0.1~0.5mmである。
溶融押出フィルムの厚みは、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。例えばTダイ溶融押出成形時の取扱性や生産性等を考慮すると、10μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以上300μm以下、さらに好ましくは30μm以上250μm以下である。
得られた溶融押出フィルムは、そのまま用いることができるが、さらに必要に応じて加圧加熱工程を行うことにより、その配向性(異方性)を低減させ或いは内部歪みを解放させることもでき、これにより、線膨張係数や寸法変化率の異方性がより低減された液晶ポリマーフィルム等を実現することもできる。
加熱加圧処理は、当業界で公知の方法、例えば接触式の熱処理、非接触性の熱処理等を用いて行えばよく、その種類は特に限定されない。例えば非接触式ヒーター、オーブン、ブロー装置、熱ロール、冷却ロール、熱プレス機、ダブルベルトプレス機等の公知の機器を用いて熱セットすることができる。このとき、必要に応じて、溶融押出フィルムの表面に、当業界で公知の剥離フィルムや多孔質フィルムを配して、熱処理を行うことができる。また、この熱処理を行う場合、配向性の制御の観点から、溶融押出フィルムの表裏に剥離フィルムや多孔質フィルムを配してダブルベルトプレス機のエンドレスベルト対の間に挟持しながら熱圧着し、その後に剥離フィルムや多孔質フィルムを除去する熱圧成形方法が好ましく用いられる。熱圧成形方法は、例えば特開2010-221694号等を参照して行えばよい。ダブルベルトプレス機のエンドレスベルト対の間で溶融押出フィルムを熱圧成形する際の処理温度としては、溶融押出フィルムの結晶状態を制御するため、熱可塑性液晶ポリマーの融点より高い温度以上、融点より70℃高い温度以下で行うことが好ましく、より好ましくは融点より+5℃高い温度以上、融点より60℃高い温度以下、さらに好ましくは融点より+10℃高い温度以上、融点より50℃高い温度以下である。このときの熱圧着条件は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、面圧0.5~10MPaで加熱温度250~430℃の条件下で行うことが好ましく、より好ましくは面圧0.6~8MPaで加熱温度260~400℃の条件下、さらに好ましくは面圧0.7~6MPaで加熱温度270~370℃の条件下である。一方、非接触式ヒーターやオーブンを用いる場合には、例えば200~320℃で1~20時間の条件下で行うことが好ましい。
上記の樹脂組成物を溶融押出成形すると、典型的には、MD方向の配向度が高い溶融押出フィルムが得られる。例えば、Tダイ溶融押出或いはインフレーション溶融押出LCPフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーが有する高度の液晶配向性や比較的に剛直な分子鎖等に起因して、さらには溶融押出時のダイやダイスウェル等に起因して生じるせん断応力等を受けて、熱可塑性液晶ポリマーのポリマー鎖がフィルムの流れ方向、すなわち熱可塑性液晶ポリマーがMD方向に高度に分子配向した、異方性が大きなLCPフィルムであることが一般的に知られている。具体的には、Tダイ法では、MD方向(Machine Direction;長手方向)の線膨張係数(CTE)が-40~40ppm/Kであり、TD方向(Transverse Direction;横手方向の線膨張係数(CTE)が50~120ppm/KであるTダイ溶融押出フィルムが得られ易い。
本実施形態では、このようにMD方向へ高配向した溶融押出フィルムを、液晶ポリマーフィルム層1,2,3の液晶ポリマーフィルムとして用いることができる。また、MD方向へ高配向した溶融押出フィルムに延伸処理や所定の配向制御処理等を施すことにより、TD方向への配向度が高い溶融押出フィルムや、斜め方向(非MD方向及び非TD方向)への配向度が高い溶融押出フィルムを得ることができる。そして、本実施形態では、TD方向或いは斜め方向へ高配向した溶融押出フィルムを、液晶ポリマーフィルム層1,2,3の液晶ポリマーフィルムとして用いることができる。なお、上述した所定の配列で液晶ポリマーフィルム層1,2,3を積層して熱圧着積層フィルムLを構成する際には、MD方向に高配向した液晶ポリマーフィルムとTD方向に高配向した液晶ポリマーフィルムとを組み合わせて、又は、斜め方向に高配向した液晶ポリマーフィルムと斜め方向に高配向した液晶ポリマーフィルムとを組み合わせて、熱圧着積層フィルムL(液晶ポリマーフィルム層1,2,3)を構成することが好ましい。
MD方向へ高配向した液晶ポリマーフィルムからTD方向或いは斜め方向に高配向した液晶ポリマーフィルムを得る方法としては、従来公知の方法を採用することができ、特に限定されない。例えば、液晶ポリマーフィルムを、1軸方向又は2軸方向に延伸処理することで、TD方向或いは斜め方向に高配向した液晶ポリマーフィルムを得ることができる。この延伸処理は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。このとき、例えば一軸延伸機、同時二軸延伸機、逐次二軸延伸機、斜め延伸機等の公知の装置を用いることができる。また、延伸倍率(MD方向×TD方向)は、特に限定されないが、1.5以上150以下が好ましく、より好ましくは2.0以上120以下、さらに好ましくは2.5以上100以下である。このとき、TD方向への引張倍率は、好ましくは1.2以上100以下が好ましく、より好ましくは1.5以上80以下、さらに好ましくは2.0以上50以下である。
例えば、従来技術の溶融押出成形を適用して得た液晶ポリマーフィルムに、所定の配向制御処理を施すことにより、MD方向、TD方向或いは斜め方向に高配向した液晶ポリマーフィルムを得ることもできる。以下、好ましい製造方法及び配向制御処理について述べる。
好ましい製造方法では、従来技術の溶融押出成形を適用して得た溶融押出フィルム(処理前溶融押出フィルム11)を得た後に、この処理前溶融押出フィルム11に所定の配向制御処理を施して、配向制御された液晶ポリマーフィルム12を得る。処理前溶融押出フィルム11としては、上述したTダイ押出フィルムやインフレーションフィルム等の溶融押出フィルムが好ましく用いられる。処理前溶融押出フィルム11は、例えば、上述した熱可塑性液晶ポリマー、並びに必要に応じて配合される無機フィラーや他の樹脂成分及び添加剤等の任意成分を含む樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を所定厚みに溶融押出成形することにより、得ることができる。
図8は、配向制御された液晶ポリマーフィルム12の好適な製造方法の要部を示す模式図である。この製造方法では、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有する樹脂組成物を溶融押出成形して得られる溶融押出フィルム(処理前溶融押出フィルム11)に配向制御を行うことで、MD方向、TD方向或いは斜め方向に高配向した配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12を得る。ここでは、理解を容易にするために、処理前溶融押出フィルム11としてMD方向に高度に配向した従来技術の溶融押出フィルムを用いた例を示すが、本発明はこの例に特に限定されない。具体的には、この好適な製造方法は、第1膜部材21、MD方向に高度に配向した処理前溶融押出フィルム11、及び第2膜部材31を備える圧着体10を準備する工程(圧着体準備工程S1)と、この圧着体10の第1膜部材21及び/又は第2膜部材31のフィルム耳部を処理前溶融押出フィルム11に対してフィルム外方に引っ張ることにより、圧着体10の処理前溶融押出フィルム11にずりせん断応力τを印加する工程(ずりせん断応力印加工程S2)と、を少なくとも備える。以下、各工程について詳述する。
(圧着体準備工程S1)
この圧着体準備工程S1では、第1膜部材21、処理前溶融押出フィルム11、及び第2膜部材31が断面視でこの順に積層された圧着体10を準備する。ここで、この圧着体10において、一方の第1膜部材21は処理前溶融押出フィルム11の表面側に設けられ、他方の第2膜部材31は処理前溶融押出フィルム11の裏面側に設けられている。これら3層は熱圧着され、これにより、3層構造の積層体である圧着体10が形成されている。なお、本明細書において、「処理前溶融押出フィルム11の表面側及び/又は裏面側に第1膜部材21や第2膜部材31が設けられた」とは、本実施形態のように処理前溶融押出フィルム11の表面に第1膜部材21や第2膜部材31が直接載置された態様のみならず、処理前溶融押出フィルム11と第1膜部材21や第2膜部材31との間に図示しない任意の層(例えば離型層、プライマー層等)が介在して、処理前溶融押出フィルム11が第1膜部材21や第2膜部材31から離間して配置された態様を包含する意味である。
この圧着体10において、第1膜部材21と第2膜部材31は、処理前溶融押出フィルム11よりも幅広な幅を有する。そのため、これら3層構造の積層体である圧着体10は、処理前溶融押出フィルム11が積層されずに処理前溶融押出フィルム11に対して断面視で幅方向の一方側(図示右方向)に突出した第1膜部材21の片側端部21a(フィルム耳部)と、処理前溶融押出フィルム11が積層されずに処理前溶融押出フィルム11に対して断面視で幅方向の他方側(図示左方向)に突出した第2膜部材31の片側端部31a(フィルム耳部)とを有している。
第1膜部材21及び第2膜部材31は、処理前溶融押出フィルム11の表面側及び裏面側にそれぞれ密着させて、処理前溶融押出フィルム11にずりせん断応力τを印加するための膜状体である。かかる観点から、第1膜部材21及び第2膜部材31を構成する素材は、処理前溶融押出フィルム11に密着可能であり、処理前溶融押出フィルム11にずりせん断応力τを印加する際に引張可能な強度を有するものである限り、特に限定されない。例えば、紙、織布、不織布、金属板、合金板、金属箔、合金箔、樹脂フィルム、ゴムシート、発泡シート、これらの任意の組み合わせからなる積層体或いは含浸体等を、第1膜部材21及び第2膜部材31として用いることができる。ここで、含浸体とは、紙、織布、不織布、発砲シート、多孔質物質等に、溶融ないしは軟化した樹脂を浸み込ませ或いは圧入させた複合材料を意味する。これらの中でも、ポリイミドフィルム等の熱硬化性樹脂フィルム;処理前溶融押出フィルム11よりも高い融点を有する熱可塑性樹脂フィルム;アルミ箔や銅箔等の金属箔等が好ましい。なお、第1膜部材21と第2膜部材31は、同一の構成素材であっても、異なる構成素材であってもよい。
圧着体10の作製方法は、特に限定されず、公知の積層形成法を適用することができる。第1膜部材21、処理前溶融押出フィルム11及び第2膜部材31をこの順に重ね合わせ、例えばプレス機、圧着ロール、非接触式ヒーター、オーブン、ブロー装置、熱ロール、冷却ロール、熱プレス機、ダブルベルトプレス等の公知の機器を用いて、圧着或いは熱圧着することで、圧着体10を得ることができる。具体例を挙げると、例えば、図9に示すように、処理前溶融押出フィルム11と、この処理前溶融押出フィルム11よりも幅広な幅を有する第1膜部材21及び第2膜部材31とを、熱圧着ロール51を有する熱ラミネーターにそれぞれ供給して、これら3層を熱圧着することで圧着体10を得ることができる。圧着体10の作製時には、上述したように、第1膜部材21の片側端部21a(フィルム耳部)と第2膜部材31の片側端部31a(フィルム耳部)とが形成されるように、処理前溶融押出フィルム11と第1膜部材21及び第2膜部材31との供給位置を調整する(図8参照)。また、圧着時の処理条件は、使用する素材に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、面圧0.3~10MPaで加熱温度が処理前溶融押出フィルム11の熱変形温度以上、融点+70℃以下の条件下で行うことができ、好ましくは面圧0.6~8MPaで処理前溶融押出フィルム11の融点以上、融点より60℃高い温度以下の条件下である。
なお、所望する剥離性を実現するために、圧着体10の処理前溶融押出フィルム11と第1膜部材21との間や処理前溶融押出フィルム11と第2膜部材31との間に、各種離型剤を配してもよい。また、所望する密着性を実現するために、離型剤に代えて各種プライマーや易接着剤等を配してもよい。
(ずりせん断応力印加工程S2)
このずりせん断応力印加工程S2では、上述した圧着体10の片側端部21a及び/又は片側端部31aを処理前溶融押出フィルム11に対してフィルム外方に引っ張ることにより、圧着体10の処理前溶融押出フィルム11にずりせん断応力τを印加する(図8参照)。片側端部21aや片側端部31aを処理前溶融押出フィルム11に対してフィルム外方に引っ張る方法としては、例えば、片側端部21aを第1把持子71aで把持するとともに片側端部31aを第2把持子72aで把持し、この状態で、第1把持子71aと第2把持子72aを相対的に離間する方向に移動すればよい(図8参照)。具体的には、図8において、第1把持子71aを幅方向の一方側である図示右側のフィルム外方に移動し、第2把持子72aを幅方向の他方側である図示左側のフィルム外方に移動することができる。このような引張操作は、図10に示すように、例えばチャックやクリップ等の把持子71a,72aを有するクランプ機構71,72を備える延伸機を用いて高効率及び高精度に行うことができる。
なお、ずりせん断応力τを印加する操作は、片側端部21aと片側端部31aの少なくとも一方を処理前溶融押出フィルム11に対してフィルム外方に引っ張ればよく、図8や図10に示す方法に限定されない。例えば、図11に示すように、片側端部21aを第1把持子71aで把持するとともに片側端部31aを固定子73aで固定し、この状態で、第1把持子71aを固定子73aから相対的に離間する方向に移動してもよい。具体的には、図11において、第1把持子71aを図示右側のフィルム外方に移動することができる。
そして、図8や図11において符号τで示すとおり、ずりせん断応力印加工程S2では、片側端部21aと片側端部31aの少なくとも一方を処理前溶融押出フィルム11に対してフィルム外方に引っ張ることにより、処理前溶融押出フィルム11の表面側(処理前溶融押出フィルム11と第1膜部材21及び第2膜部材31との圧着面側)からずりせん断応力τが処理前溶融押出フィルム11に印加される。ここで、ずりせん断応力τは、処理前溶融押出フィルム11の表面側(処理前溶融押出フィルム11と第1膜部材21との圧着面側)及び裏面側(処理前溶融押出フィルム11と第2膜部材31との圧着面側)において絶対値が大きく作用し、処理前溶融押出フィルム11の厚み方向の中心に向かうにつれて絶対値が小さく作用する。この好適な製法は、このようなフィルム厚み方向において非等方的に生じるずりせん断応力τに着目したものであり、非等方的に生じるずりせん断応力τを利用して、処理前溶融押出フィルム11の分子配向やポリマー鎖の配向の向きや配向の程度を任意に調整している。
図12は、ずりせん断応力τの印加による、処理前溶融押出フィルム11の配向の変化の例を示す模式図(分解模式図)である。MD方向に高度に配向した処理前溶融押出フィルム11を用いて上述した圧着体10を作製し、片側端部21a及び片側端部31aを処理前溶融押出フィルム11に対してフィルム外方の例えばTD方向(MD方向に対して90°方向)に引っ張る。このとき、フィルム表面側とフィルム裏面側では大きなずりせん断応力τが印加されて、MD方向への配向がTD方向への配向に変化する。その一方、フィルム厚み方向の中心に向かうに連れてずりせん断応力τが小さくなるため、MD方向からTD方向への配向変化の度合いは厚み方向の中心に向かうに連れて低減するものの、フィルム厚み方向の中心領域においても十分に大きなずりせん断応力τを印加することで、フィルム厚み方向の全域にかけて、MD方向から配向をTD方向への配向に変化する。このとき、配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12のTD方向への配向度は、典型的には、フィルム表面側≒フィルム裏面側≧フィルム厚み方向の中心となる。このようにTD方向へ配向方向を変化させるには、例えば、引張倍率を大きくする、引張速度を小さくする等を行えばよい。
図13は、ずりせん断応力τの印加による、処理前溶融押出フィルム11の配向の変化の別例を示す模式図(分解模式図)である。ここでは、図12で示した例において、配向方向を斜め方向(MD方向に対して45°方向)に変更した例を示している。例えば引張倍率を調整し引張速度を小さくすることで、配向方向を任意の方向に変更することができる。また、引張方向を変更することで、配向方向を任意の方向に変更することができる。このとき、異なる方向への引張処理を逐次行ってもよいし、異なる方向への引張処理を同時に行うこともできる。
以上のとおり、ずりせん断応力印加工程S2では、片側端部21a及び/又は片側端部31aの温度、引張方向、引張倍率、引張速度等を調整することにより、配向の向きや配向の強度を任意に調整することができる。例えば、片側端部21a及び/又は片側端部31aの引張方向θは、フィルム外方であれば特に制限されず、所望する配向方向に応じて設定すればよい。引張方向θは、MD方向を基準として0°~180°の間で任意に設定することができる。溶融押出成形では、通常はMD方向に高配向した処理前溶融押出フィルム11が得られるため、これを配向制御する観点から、引張方向θは、TD方向(MD方向を基準としてθ=90°±15°)が好ましい。
なお、図8や図11においては、幅方向の一方側(図示右方向)に第1膜部材21及び第2膜部材31が略同幅で突出し、幅方向の他方側(図示左方向)に第1膜部材21及び第2膜部材31が略同幅で突出した、圧着体10を用いた例を示したが、第1把持子71a、第2把持子72a、固定子73a等の操作時の効率性を高めるために、図14に示すように、処理前溶融押出フィルム11に対して、第1膜部材21を断面視で幅方向の一方側(図示右方向)に片寄せるとともに第2膜部材31を断面視で幅方向の他方側(図示左方向)に片寄せた構成の圧着体10としてもよい。このように第1膜部材21及び第2膜部材31を処理前溶融押出フィルム11に対してオフセット配置することで、ずりせん断応力印加工程S2における片側端部21aや片側端部31aへのアクセス性や操作性を高めることができ、その結果、生産性を高めることができる。
ずりせん断応力印加工程S2での処理前溶融押出フィルム11の引張倍率は、所望する配向方向及び配向度に応じて設定すればよく、特に限定されない。なお、従来技術の延伸方法では、延伸倍率(MD方向×TD方向)が1.5以上150以下とされているが、本製法のずりせん断応力τの印加では、引張倍率(MD方向×TD方向)は1.0005~1.1000の範囲内で調整できる。好ましくは、引張倍率(MD方向×TD方向)は1.0010~1.1000である。このとき、TD方向への引張倍率は、好ましくは1.0005~1.1000であり、より好ましくは1.0010~1.1000である。また、MD方向への引張倍率は、好ましくは1.0000~1.0100であり、より好ましくは1.0000~1.0050である。
また、ずりせん断応力印加工程S2での第1膜部材21及び/又は第2膜部材31の引張速度も、所望する配向方向及び配向度に応じて設定すればよく、特に限定されない。引張速度は、好ましくは0.1~300mm/minであり、より好ましくは1~200mm/minであり、さらに好ましくは5~100mm/minである。
一方、ずりせん断応力印加工程S2の処理温度は、処理前溶融押出フィルム11のガラス転移点以上であれば、特に限定されないが、処理前溶融押出フィルム11を溶融させて配向方向及び配向度の自由度を高める等の観点から、処理前溶融押出フィルム11の融点以上が好ましく、処理前溶融押出フィルム11の融点+10℃以上がより好ましい。なお、上限側温度は、特に限定されないが、処理前溶融押出フィルム11の融点+70℃以下が目安となる。
上記の配向制御方法を適用することで、TD方向或いは斜め方向に高配向した配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12を簡易に得ることができる。このように、上記の配向制御方法によれば、配向の向きや程度を任意に調整して、従来には存在しなかった物性値を有する液晶ポリマーフィルム(配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12)を実現することができる。
そして、処理前溶融押出フィルム11にずりせん断応力τを印加した後、必要に応じて圧着体10を冷却し、その後に圧着体10の両表面に圧着されている第1膜部材21及び第2膜部材31を剥離(除去)することにより、液晶ポリマーフィルム(配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12)を得ることができる。圧着体10の冷却は、例えば一対の冷却ロール75を用いて実施することができる。また、自然冷却により行うこともできる。そして、配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12は、例えば引取ロールで引き取り、巻取ロールにロール状に巻き取ることで、ロール原反とすることができる。
なお、上記の配向制御方法では、処理前溶融押出フィルム11の表面側や裏面側と処理前溶融押出フィルム11の厚み方向の中心付近とでは、ずりせん断応力τの印加強度が異なる。そのため、配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12は、厚みT方向において配向方向と配向度が相違することがある。
以上詳述したとおり、上記の配向制御方法によれば、従来技術の延伸処理のように処理前溶融押出フィルム11の全体に一定の引張応力を印加するのとは異なり、処理前溶融押出フィルム11と第1膜部材21及び第2膜部材31との圧着面を起点としてずりせん断応力τを印加するため、配向の向きや程度を任意に調整することができる。また、このとき、厚みT方向の全域にわたって配向方向や配向度を任意に調整することができ、或いは、厚みT方向に区分した領域毎にそれぞれ異ならしめることもできる。そのため、上記の配向制御方法によれば、配向方向や配向度を任意に調整した液晶ポリマーフィルム(配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12)を得ることができ、その配向方向や配向度の調整によって、従来には存在しなかった物性値を有する液晶ポリマーフィルム(配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12)を実現することができる。例えば、従来技術の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの単独延伸では、融点以上では溶融するために延伸時に形状保持できずに延伸することができないが、上記の配向制御方法では、融点以上でもずりせん断応力τを印加することができる。また、従来技術では1.5以上150以下の延伸倍率(MD方向×TD方向)であるのに対して、上記の配向制御方法では引張倍率(MD方向×TD方向)を極めて小さくすることができるため、柔軟性や形状追従性の過度の低下の影響を大幅に低減できる。
そして、熱可塑性液晶ポリマーがフィルム面内のそれぞれ所定の配向方向X,Y、Zへ配向した高配向な各液晶ポリマーフィルム層1,2,3を上述したように重ね合わせた配列とし、これを熱圧着することで、熱圧着積層フィルムLを得ることができる。この熱圧着積層フィルムLにおいては、これら各液晶ポリマーフィルム層1,2,3が上述した配列で積層されていることにより、全体としては、著しい方向異方性が緩和されている。かくして、従来技術では工業的な利用が実質的には制限されていた、MD方向、TD方向、或いは斜め方向(非MD方向及び非TD方向)へ高配向し著しい方向異方性を有する液晶ポリマーフィルムを用いながらも、熱圧着積層フィルムL全体としては、著しい方向異方性が緩和された低配向な素材が提供される。そして、この熱圧着積層フィルムLを、中実又は中空の芯材に巻きとる或いは無芯ロール状に巻き取ることにより、本実施形態の巻回ロール100を得ることができる。これにより、無配向の熱圧着積層フィルムLのロール原反等の各種態様を、安定して低コストで提供することができる。
以上のとおり、高周波特性及び低誘電性に優れる無配向の熱圧着積層フィルムLの巻回ロール100は、従来技術に比べて、MD方向及びTD方向の線膨張係数が小さく、また線膨張係数の異方性も小さいため、優れた寸法安定性と低反り性を有し、近年の超微細加工への適応し得るものとなる。そのため、本実施形態の熱圧着積層フィルムLの巻回ロール100は、電子回路基板、多層基板、高放熱基板、フレキシブルプリント配線板、アンテナ基板、光電子混載基板、ICバッケージ等の用途のみならず、今後進展する第5世代移動通信システム(5G)やミリ波レーダー等におけるフレキシブルプリント配線板(FPC)、フレキシブルプリント配線板積層体、繊維強化フレキシブル積層体等の回路基板の絶縁材料として、殊に有用な素材となる。
<回路基板用絶縁材料>
図15は、本実施形態の回路基板用絶縁材料200の要部を示す模式断面図である。本実施形態の回路基板用絶縁材料200は、上記の熱圧着積層フィルムL及びこの熱圧着積層フィルムLの片面及び/又は両面に設けられた織布WFを少なくとも有する積層体を備えるものである。
具体的には、回路基板用絶縁材料200は、熱圧着積層フィルムL、織布WF、及び熱圧着積層フィルムLが、少なくともこの順に配列された積層構造(3層構造)を有する積層体を備えている。この積層体において、一方の熱圧着積層フィルムLは織布WFの表面側に設けられ、他方の熱圧着積層フィルムLは、織布WFの裏面側に設けられている。これら3層は熱圧着され、これにより、3層構造の積層体が形成されている。なお、ここでは3層構造の積層体を例示するが、一方の熱圧着積層フィルムLを省略した2層構造の積層体であっても、熱圧着積層フィルムLや織布WFをさらに積層させた4層以上の積層構造の積層体であっても実施可能なことは言うまでもない。
ここで本明細書において、「熱圧着積層フィルムLの片面及び/又は両面に織布WFが設けられた」とは、本実施形態のように織布WFの表面に熱圧着積層フィルムLが直接載置された態様のみならず、熱圧着積層フィルムLと織布WFとの間に図示しない任意の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在して、熱圧着積層フィルムLが織布WFから離間して配置された態様を包含する意味である。
織布WFは、繊維を織った布である。織布WFの繊維の種類としては、特に限定されず、無機繊維、有機繊維、有機無機ハイブリッド繊維のいずれであっても用いることができる。とりわけ、無機繊維の織布WFが好ましく用いられる。無機繊維の織布WFを熱圧着積層フィルムLと熱圧着させることで、MD方向及びTD方向の線膨張係数や寸法変化率を小さく維持できる。織布WFとしては、市販品を用いることができ、また、当業界で公知の方法で製造することができる。
無機繊維としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Mガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等のガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維、シリカなどのセラミック繊維等が挙げられるが、これらに特に限定されない。無機繊維の織布WFは、開繊処理や目詰め処理を施した織布が、寸法安定性の観点から好適である。これらの中でも、機械的強度、寸法安定性、吸水性等の観点から、ガラスクロスが好ましい。熱圧着積層フィルムLとの密着性を高める観点から、開繊処理や目詰め処理が施されたガラスクロスが好ましい。また、エポキシシラン処理、アミノシラン処理等のシランカップリング剤等で表面処理されたガラスクロスも好適に用いることができる。なお、織布WFは、1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
織布WFの厚さは、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。積層性や加工性、機械的強度等の観点から、10~300μmが好ましく、より好ましくは10~200μm、さらに好ましくは15~180μmである。
回路基板用絶縁材料200の総厚みは、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。積層性や加工性、機械的強度等の観点から、30~500μmが好ましく、より好ましくは50~400μm、さらに好ましくは70~300μm、特に好ましくは90~250μmである。
本実施形態の回路基板用絶縁材料200は、上述した構成を採用することで、MD方向及びTD方向の線膨張係数が小さく、さらにはその異方性も小さく、しかも、高周波域での誘電特性に優れ、製造容易で生産性に優れるという顕著な効果を有している。
本実施形態の回路基板用絶縁材料200のMD方向の平均線膨張係数(CTE,23~200℃)は、特に限定されないが、金属箔への密着性を高める観点から、3ppm/K以上25ppm/K以下であることが好ましく、より好ましく5ppm/K以上24ppm/K以下、さらに好ましくは7ppm/K以上23ppm/K以下である。同様に、TD方向の平均線膨張係数(CTE,23~200℃)は、3ppm/K以上25ppm/K以下であることが好ましく、より好ましく5ppm/K以上24ppm/K以下、さらに好ましくは7ppm/K以上23ppm/K以下である。一方、ZD方向の平均線膨張係数(CTE,23~200℃)は、10ppm/K以上100ppm/K以下であることが好ましく、より好ましく15ppm/K以上75ppm/K以下、さらに好ましくは20ppm/K以上50ppm/K以下である。
一方、本実施形態の回路基板用絶縁材料200の誘電特性は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。より高い誘電特性を得る観点から、比誘電率εr(36GHz)は、2.5以上3.7以下が好ましく、より好ましくは2.5以上3.5以下である。同様に、誘電正接tanδ(36GHz)は0.0010以上0.0050以下が好ましく、より好ましくは0.0010以上0.0045以下である。なお、本明細書において、比誘電率εr及び誘電正接tanδは、JIS K6471に準拠した空洞共振器接動法で測定される36GHzにおける値を意味する。また、その他の詳細な測定条件は、後述する実施例に記載した条件にしたがうものとする。
上述した回路基板用絶縁材料200は、公知の製法を適宜適用して製造することができ、その製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、例えば、熱圧着積層フィルムLと織布WFとを積層し、加熱及び加圧して、熱圧着積層フィルムLと織布WFとを熱圧着することで回路基板用絶縁材料200を得ることができる。また、熱圧着積層フィルムLと織布WFと熱圧着積層フィルムLとをこの順に重ね合わせて積層体とし、プレス機やダブルベルトプレス機等を用いてこの積層体を挟持しながら加熱及び加圧して、回路基板用絶縁材料200を熱圧成形する方法も好ましい。なお、熱圧着時の加工温度は、要求性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、200~400℃が好ましく、より好ましくは250~360℃、さらに好ましくは270~350℃である。なお、熱圧着時の加工温度は、前述した積層体の熱圧着積層フィルムLの表面温度で測定した値とする。また、このときの加圧条件は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば面圧0.5~10MPaで1~240分、より好ましくは面圧0.8~8MPaで1~120分である。
<金属箔張積層板>
図16は、本実施形態の金属箔張積層板300の要部を示す模式断面図である。本実施形態の金属箔張積層板300は、上記の熱圧着積層フィルムL及び熱圧着積層フィルムLの一方の片面及び/又は両面に設けられた金属箔MFを備えるものである。
具体的には、金属箔張積層板300は、金属箔MF、熱圧着積層フィルムL、及び金属箔MFが、少なくともこの順に配列された積層構造(3層構造)を有する両面金属箔張積層板である。これら3層は熱圧着され、これにより、3層構造の積層体が形成されている。なお、本実施形態においては、両面金属箔張積層板を示したが、熱圧着積層フィルムLの一方の表面のみに金属箔MFが設けられた態様としても、本発明は実施可能である。すなわち、ここでは3層構造の積層体を例示するが、本発明は、一方の金属箔MFを省略した2層構造の積層体であっても、熱圧着積層フィルムLや織布WFをさらに積層させた4層以上の積層構造の積層体であっても実施可能なことは言うまでもない。
<金属箔張積層板>
図17は、本実施形態の金属箔張積層板400の要部を示す模式断面図である。本実施形態の金属箔張積層板400は、上記の熱圧着積層フィルムL及びこの熱圧着積層フィルムLの片面及び/又は両面に設けられた上述した織布WFを少なくとも有する積層体と、この積層体の片面及び/又は両面に設けられた金属箔MFとを備えるものである。
具体的には、金属箔張積層板400は、金属箔MF、熱圧着積層フィルムL、織布WF、熱圧着積層フィルムL、及び金属箔MFが、少なくともこの順に配列された積層構造(5層構造)を有する両面金属箔張積層板である。これら5層は熱圧着され、これにより、5層構造の積層体が形成されている。なお、本実施形態においては、両面金属箔張積層板を示したが、金属箔MFが一方の表面のみに設けられた態様としても、本発明は実施可能である。すなわち、ここでは5層構造の積層体を例示するが、本発明は、一方の金属箔MFを省略した4層構造の積層体であっても、熱圧着積層フィルムLや回路基板用絶縁材料200や織布WFをさらに積層させた6層以上の積層構造の積層体であっても実施可能なことは言うまでもない。
金属箔MFの材質としては、特に限定されないが、金、銀、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。これらの中でも、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、及び銅とアルミニウムとの合金箔が好ましく、銅箔がより好ましい。かかる銅箔としては、圧延法或いは電気分解法等によって製造されるいずれのものでも使用できるが、表面粗さが小さい圧延銅箔が好ましい。
金属箔MFの厚さは、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。通常は1.5~1000μmが好ましく、より好ましくは2~500μm、さらに好ましくは5~150μm、特に好ましくは7~100μmである。なお、本発明の作用効果が損なわれない限り、金属箔MFは、酸洗浄、防錆等の化学的表面処理等の表面処理が施されていてもよい。なお、金属箔MFの種類や厚みは、同一であっても異なっていてもよい。
熱圧着積層フィルムLや回路基板用絶縁材料200の表面に金属箔MFを設ける方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。熱圧着積層フィルムLや回路基板用絶縁材料200の上に金属箔MFを積層して両層を接着ないしは圧着させる方法、スパッタリングや蒸着等の物理法(乾式法)、無電解めっきや無電解めっき後の電解めっき等の化学法(湿式法)、金属ペーストを塗布する方法等のいずれであってもよい。また、熱圧着積層フィルムLや回路基板用絶縁材料200と1以上の金属箔MFとを積層した積層体を、例えば多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を用いて熱プレスすることにより、金属箔張積層板300,400を得ることもできる。
上述した金属箔張積層板300,400は、公知の製法を適宜適用して製造することができ、その製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、例えば、熱圧着積層フィルムLや回路基板用絶縁材料200と金属箔MFとを重ね合わせ、熱圧着積層フィルムL上に金属箔MFが載置された積層体とし、この積層体をダブルベルトプレス機のエンドレスベルト対の間に挟持しながら熱圧成形する方法が挙げられる。上述したとおり、本実施形態で用いる熱圧着積層フィルムLは、MD方向及びTD方向の線熱膨張係数が小さく、さらに好適な態様ではMD方向及びTD方向の異方性が小さいので、金属箔MFへの高いピール強度が得られる。
金属箔MFの熱圧着時の温度は、要求性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、液晶ポリマーの融点より50℃低い温度以上であり融点より50℃高い温度以下が好ましく、同融点より40℃低い温度以上であり融点より40℃高い温度以下がより好ましく、同融点より30℃低い温度以上であり融点より30℃高い温度以下がさらに好ましく、同融点より20℃低い温度以上であり融点より20℃高い温度以下が特に好ましい。なお、金属箔MFの熱圧着時の温度は、前述した熱圧着積層フィルムLの表面温度で測定した値とする。また、このときの圧着条件は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えばダブルベルトプレス機を用いる場合、面圧0.5~10MPaで加熱温度200~360℃の条件下で行うことが好ましい。
本実施形態の金属箔張積層板300,400は、熱圧着積層フィルムLと金属箔MFとの二層構造の熱圧着体を備える限り、別の積層構造ないしはさらなる積層構造を有していてもよい。例えば金属箔MF/熱圧着積層フィルムLの2層構造;金属箔MF/熱圧着積層フィルムL/金属箔MF、熱圧着積層フィルムL/金属箔MF/熱圧着積層フィルムLのような3層構造;金属箔MF/熱圧着積層フィルムL/織布WF/熱圧着積層フィルムLのような4層構造;金属箔MF/熱圧着積層フィルムL/金属箔MF/熱圧着積層フィルムL/金属箔MF、金属箔MF/熱圧着積層フィルムL/織布WF/熱圧着積層フィルムL/金属箔MFのような5層構造;等、の多層構造とすることができる。また、複数(例えば2~50個)の金属箔張積層板300,400を、積層熱圧着させることもできる。
本実施形態の金属箔張積層板300,400において、熱圧着積層フィルムLと金属箔MFとのピール強度は、特に限定されないが、より高いピール強度を具備させる観点から、0.8(N/mm)以上であることが好ましく、より好ましくは1.0(N/mm)以上、さらに好ましくは1.2(N/mm)以上である。上述したとおり、本実施形態の金属箔張積層板300,400では、高いピール強度を実現できるため、例えば基板製造の加熱工程で熱圧着積層フィルムLと金属箔MFとの剥離を抑制できる。また、従来技術と同等のピール強度を得るにあたってプロセス裕度や生産性に優れる製造条件を適用することができるため、従来と同程度のピール強度を維持したまま、液晶ポリマーが有する基本性能の劣化を抑制することができる。
そして、本実施形態の金属箔張積層板300,400は、金属箔MFの少なくとも一部をパターンエッチングする等して、電子回路基板や多層基板等の回路基板の素材として使用することができる。また、本実施形態の金属箔張積層板300,400は、高周波域での誘電特性に優れ、MD方向及びTD方向の線熱膨張係数が小さく、さらに好適な態様ではMD方向及びTD方向の異方性が小さく、寸法安定性に優れ、製造容易で生産性に優れるため、第5世代移動通信システム(5G)やミリ波レーダー等におけるフレキシブルプリント配線板(FPC)等の絶縁材料として殊に有用な素材となる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい数値範囲は前記の上限値又は下限値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[溶融粘度]
以下の条件で、各液晶ポリマーフィルムの溶融粘度[Pa・sec]をそれぞれ測定した。
測定機器:キャピログラフ1D(東洋精機製作所社製)
使用装置:シリンダー長10.00mm、シリンダー径1.00mm、バレル径9.55mm
測定条件:各液晶ポリマーフィルムの押出成形時の温度[℃]と剪断速度[sec-1]
[線膨張係数]
JIS K7197に準拠したTMA法で、各液晶ポリマーフィルムの線膨張係数を測定した。
測定機器: TMA 4000SE(NETZSCH社製)
測定方法: 引張モード
測定条件: サンプルサイズ 25mm×4mm×厚み50μm
チャック間距離 20mm
温度区間 23~200℃(2ndRUN)
昇温速度 5℃/min
雰囲気 窒素(流量50ml/min)
試験荷重 5gf
※熱履歴を解消した値をみるため、2ndRUNの値を採用
[液晶ポリマーフィルムの配向度及び配向方向]
X線回折装置Smartlab(リガク社製)を用いて透過法で各液晶ポリマーフィルムのX線回折測定を行い、配向度をそれぞれ測定した。ここでは、X線源にCu封入管を用い、平行ビーム光学系、透過法でX線回折測定(2θ/θスキャン、βスキャン)を行い、まず、2θ/θスキャンで2θ=19.5°にピークトップがあることを確認した。次に、βスキャンにて2θ=19.5の回折ピークに対し、方位角方向に0°から360°までの強度を測定することにより、方位角方向の強度分布を得た。得られたβプロファイルのベース強度(等方性成分)とピーク強度(配向性成分)から、配向性ピークの面積割合に基づいて、上記式から配向度を算出した。また、配向方向は、ベースとなる等方性成分の面積を除いた配向性成分のピークトップの位置から判別した。
(調製例1)
II型熱可塑性液晶ポリマー(モノマー組成がp-ヒドロキシ安息香酸74mol%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸26mol%の共重合体、温度300℃及び剪断速度500sec-1の溶融粘度は80Pa・sec)をTダイキャスティング法により押出機から300℃で押出して、幅250mm及び厚み50μm並びに融点280℃を有する調製例1の液晶ポリマーフィルムを得た。得られた調製例1の液晶ポリマーフィルムは、MD方向に高配向しており、その配向度は43%であった。また、液晶ポリマーフィルム(処理前溶融押出フィルム)のフィルム全体のMD方向の線熱膨張係数は-19ppm/℃、同フィルム全体のTD方向の線熱膨張係数は81ppm/℃であった。
(調製例2)
調製例1の液晶ポリマーフィルムの両面に、離型剤を塗布した厚み50μm及び幅270mmのポリイミドフィルム(第1膜部材21、第2膜部材31)をそれぞれ重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力0.8MPa及び速度1.0m/minの条件下で熱圧着させて、図14と同等構造を有する圧着体10を作製した。このとき、第1膜部材21の片側端部21a(フィルム耳部)と第2膜部材31の片側端部31a(フィルム耳部)の幅はそれぞれ10mmとした。次に、得られた圧着体10を一軸延伸機に供給し、温度316℃、引張速度15mm/min、引張距離3.0mm、及び引張倍率1.0120の条件下で、図10及び図14に示すようにクランプ機構71,72のチャック71a,72bに圧着体10の片側端部21a,31aをそれぞれ把持して、第1膜部材21及び第2膜部材31を相対的に離間する方向(TD方向)に引っ張り、調製例1の液晶ポリマーフィルムに、ずりせん断応力τの印加を行った。その後、圧着体10から両ポリイミドフィルムを剥離し、調製例2の液晶ポリマーフィルム(配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12)を得た。調製例2の液晶ポリマーフィルムは、フィルム全体でTD方向に高配向しており、その配向度は33.0%であった。また、調製例2の液晶ポリマーフィルムのMD方向への線熱膨張係数は73ppm/℃、TD方向への線熱膨張係数は-10ppm/℃であった。
(調製例3)
II型熱可塑性液晶ポリマー(モノマー組成がp-ヒドロキシ安息香酸74mol%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸26mol%の共重合体、温度300℃及び剪断速度500sec-1の溶融粘度は80Pa・sec)をTダイキャスティング法により押出機から300℃で押出して、幅250mm及び厚み25μm並びに融点280℃を有する調製例3の液晶ポリマーフィルム(処理前溶融押出フィルム)を得た。得られた調製例3の液晶ポリマーフィルムは、MD方向に高配向しており、その配向度は44%であった。また、調製例3の液晶ポリマーフィルムのフィルム全体でのMD方向の線熱膨張係数は-19ppm/℃、同フィルム全体のTD方向の線熱膨張係数は82ppm/℃であった。
(調製例4)
調製例3の液晶ポリマーフィルムの両面に、離型剤を塗布した厚み50μm及び幅270mmのポリイミドフィルム(第1膜部材21、第2膜部材31)をそれぞれ重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力0.8MPa及び速度1.2m/minの条件下で熱圧着させて、図14と同等構造を有する圧着体10を作製した。このとき、第1膜部材21の片側端部21a(フィルム耳部)と第2膜部材31の片側端部31a(フィルム耳部)の幅はそれぞれ10mmとした。次に、得られた圧着体10を一軸延伸機に供給し、温度316℃、引張速度15mm/min、引張距離3.0mm、及び引張倍率1.0120の条件下で、図10及び図14に示すようにクランプ機構71,72のチャック71a,72bに圧着体10の片側端部21a,31aをそれぞれ把持して、第1膜部材21及び第2膜部材31を相対的に離間する方向(TD方向)に引っ張り、調製例3の液晶ポリマーフィルムに、ずりせん断応力τの印加を行った。その後、圧着体10から両ポリイミドフィルムを剥離し、調製例4の液晶ポリマーフィルム(配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12)を得た。調製例4の液晶ポリマーフィルムは、フィルム全体でTD方向に高配向しており、その配向度は34.0%であった。また、調製例4の液晶ポリマーフィルムのMD方向への線熱膨張係数は75ppm/℃、TD方向への線熱膨張係数は-11ppm/℃であった。
(調製例5)
II型熱可塑性液晶ポリマー(モノマー組成がp-ヒドロキシ安息香酸74mol%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸26mol%の共重合体、温度300℃及び剪断速度500sec-1の溶融粘度は80Pa・sec)をTダイキャスティング法により押出機から300℃で押出して、幅250mm及び厚み50μm並びに融点280℃を有する調製例3の液晶ポリマーフィルム(処理前溶融押出フィルム)を得た。得られた調製例5の液晶ポリマーフィルムは、MD方向に高配向しており、その配向度は43%であった。また、調製例5の液晶ポリマーフィルムのフィルム全体でのMD方向の線熱膨張係数は-19ppm/℃、同フィルム全体のTD方向の線熱膨張係数は81ppm/℃であった。
(調製例6)
調製例5の液晶ポリマーフィルムの両面に、離型剤を塗布した厚み50μm及び幅270mmのポリイミドフィルム(第1膜部材21、第2膜部材31)をそれぞれ重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力0.8MPa及び速度1.0m/minの条件下で熱圧着させて、図14と同等構造を有する圧着体10を作製した。このとき、第1膜部材21の片側端部21a(フィルム耳部)と第2膜部材31の片側端部31a(フィルム耳部)の幅はそれぞれ10mmとした。次に、得られた圧着体10を一軸延伸機に供給し、温度316℃、引張速度15mm/min、引張距離3.0mm、及び引張倍率1.0120の条件下で、図10及び図14に示すようにクランプ機構71,72のチャック71a,72bに圧着体10の片側端部21a,31aをそれぞれ把持して、第1膜部材21及び第2膜部材31を相対的に離間する方向(TD方向)に引っ張り、調製例5の液晶ポリマーフィルムに、ずりせん断応力τの印加を行った。その後、圧着体10から両ポリイミドフィルムを剥離し、調製例6の液晶ポリマーフィルム(配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12)を得た。調製例6の液晶ポリマーフィルムは、フィルム全体でTD方向に高配向しており、その配向度は33.0%であった。また、調製例6の液晶ポリマーフィルムのMD方向への線熱膨張係数は73ppm/℃、TD方向への線熱膨張係数は-10ppm/℃であった。
(調製例7)
調製例1の液晶ポリマーフィルムの両面に、離型剤を塗布した厚み50μm及び幅270mmのポリイミドフィルム(第1膜部材21、第2膜部材31)をそれぞれ重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力0.8MPa及び速度1.0m/minの条件下で熱圧着させて、図14と同等構造を有する圧着体10を作製した。このとき、第1膜部材21の片側端部21a(フィルム耳部)と第2膜部材31の片側端部31a(フィルム耳部)の幅はそれぞれ10mmとした。次に、得られた圧着体10を一軸延伸機に供給し、温度316℃、引張速度15mm/min、引張距離1.2mm、及び引張倍率1.0048の条件下で、図10及び図14に示すようにクランプ機構71,72のチャック71a,72bに圧着体10の片側端部21a,31aをそれぞれ把持して、第1膜部材21及び第2膜部材31を相対的に離間する方向(TD方向)に引っ張り、調製例5の液晶ポリマーフィルムに、ずりせん断応力τの印加を行った。その後、圧着体10から両ポリイミドフィルムを剥離し、調製例7の液晶ポリマーフィルム(配向制御処理後の液晶ポリマーフィルム12)を得た。調製例7の液晶ポリマーフィルムは、フィルム全体で無配向であり、その配向度は5.0%であった。また、調製例7の液晶ポリマーフィルムのMD方向への線熱膨張係数は9ppm/℃、TD方向への線熱膨張係数は25ppm/℃であった。
(実施例1)
調製例1の厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(第1液晶ポリマーフィルム層)と調製例2の厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(第2液晶ポリマーフィルム層)とを、第1液晶ポリマーフィルム層の配向方向X(MD方向)と第2液晶ポリマーフィルム層の配向方向Y(TD方向)とがなす角θxyが90°となるように、重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力2.0MPa及び速度1.0m/minの条件下で熱圧着させて、2層構造を有し、総厚みが100μmの実施例1の熱圧着積層フィルムLを作製した。
(実施例2)
調製例4の厚み25μmの液晶ポリマーフィルム(第1液晶ポリマーフィルム層)と厚み50μmの調製例5の液晶ポリマーフィルム(第2液晶ポリマーフィルム層)と調製例4の厚み25μmの液晶ポリマーフィルム(第3液晶ポリマーフィルム層)とを、第1液晶ポリマーフィルム層の配向方向X(TD方向)と第2液晶ポリマーフィルム層の配向方向Y(MD方向)とがなす角θxyが90°であり、第2液晶ポリマーフィルム層の配向方向Y(MD方向)と第3液晶ポリマーフィルム層の配向方向Z(TD方向)とがなす角θyzが90°となるように、重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力2.0MPa及び速度1.0m/minの条件下で熱圧着させて、3層構造を有し、総厚みが100μmの実施例2の熱圧着積層フィルムLを作製した。
(実施例3)
調製例3の厚み25μmの液晶ポリマーフィルム(第1液晶ポリマーフィルム層)と調製例6の厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(第2液晶ポリマーフィルム層)と調製例3の厚み25μmの液晶ポリマーフィルム(第3液晶ポリマーフィルム層)とを、第1液晶ポリマーフィルム層の配向方向X(MD方向)と第2液晶ポリマーフィルム層の配向方向Y(TD方向)とがなす角θxyが90°であり、第2液晶ポリマーフィルム層の配向方向Y(TD方向)と第3液晶ポリマーフィルム層の配向方向Z(MD方向)とがなす角θyzが90°となるように、重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力2.0MPa及び速度1.0m/minの条件下で熱圧着させて、3層構造を有し、総厚みが100μmの実施例3の熱圧着積層フィルムLを作製した。
(実施例4)
実施例1の総厚み100μmの熱圧着積層フィルムLを2枚用意し、各層の配向方向がMD方向/TD方向/MD方向/TD方向の順となるように重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力2.0MPa及び速度0.6m/minの条件下で熱圧着させて、4層構造を有し、総厚みが200μmの実施例4の熱圧着積層フィルムLを作製した。
(比較例1)
調製例1の厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(第1液晶ポリマーフィルム層)と調製例7の厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(第2液晶ポリマーフィルム層)とを、それぞれ重ね合わせ、熱ラミネーターを用いて温度300℃、圧力2.0MPa及び速度1.0m/minの条件下で熱圧着させて、図4と同等構造を有する、2層構造を有し、総厚みが100μmの比較例1の熱圧着積層フィルムLを作製した。
表2に、各熱圧着積層フィルムLの測定結果を示す。
本発明によれば、高配向な液晶ポリマーフィルム複数枚を用いながらも、積層構造全体ではその著しい方向異方性が緩和された、熱圧着積層フィルムの新規な巻回ロール、並びに、これを用いた回路基板用絶縁材料及び金属箔張積層板等を提供することができ、従来では実現困難であった新たな物性を有する液晶ポリマーフィルムを実現することができるため、液晶ポリマーフィルムの新規素材分野において、広く且つ有効に利用可能である。
100 ・・・巻回ロール
L ・・・熱圧着積層フィルム
1 ・・・第1液晶ポリマーフィルム層
2 ・・・第2液晶ポリマーフィルム層
3 ・・・第3液晶ポリマーフィルム層
X ・・・配向方向
Y ・・・配向方向
Z ・・・配向方向
θxy・・・角
θyz・・・角
T ・・・厚み
S1 ・・・圧着体準備工程
S2 ・・・ずりせん断応力印加工程
τ ・・・ずりせん断応力
10 ・・・圧着体
11 ・・・処理前溶融押出フィルム
12 ・・・配向制御された液晶ポリマーフィルム
21 ・・・第1膜部材
21a・・・片側端部
31 ・・・第2膜部材
31a・・・片側端部
51 ・・・熱圧着ロール
71 ・・・クランプ機構
71a・・・第1把持子
72 ・・・クランプ機構
72a・・・第1把持子
73a・・・固定子
75 ・・・冷却ロール
200 ・・・回路基板用絶縁材料
300 ・・・金属箔張積層板
400 ・・・金属箔張積層板
WF ・・・織布
MF ・・・金属箔

Claims (12)

  1. 第1液晶ポリマーフィルム層と第2液晶ポリマーフィルム層とを少なくともこの順に有する熱圧着積層フィルムの巻回ロールを備え、
    前記第1液晶ポリマーフィルム層は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、前記熱可塑性液晶ポリマーがフィルム面内の配向方向Xに配向しており、前記配向方向Xへの配向度が20~60%であり、
    前記第2液晶ポリマーフィルム層は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、前記熱可塑性液晶ポリマーがフィルム面内の配向方向Yに配向しており、前記配向方向Yへの配向度が20~60%であり、
    前記熱圧着積層フィルムにおいて、前記配向方向Xと前記配向方向Yとがなす角θxyが90°±15°の範囲内にある、
    熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  2. 前記第1液晶ポリマーフィルム層が、溶融押出フィルムである
    請求項1に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  3. 前記第2液晶ポリマーフィルム層が、溶融押出フィルムである
    請求項1又は2に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  4. 前記熱圧着積層フィルムは、前記第1液晶ポリマーフィルム層と前記第2液晶ポリマーフィルム層と第3液晶ポリマーフィルム層とを少なくともこの順に有し、
    前記第3液晶ポリマーフィルム層は、熱可塑性液晶ポリマーを少なくとも含有し、前記熱可塑性液晶ポリマーがフィルム面内の配向方向Zに配向しており、前記配向方向Zへの配向度が20~60%であり、
    前記熱圧着積層フィルムにおいて、前記配向方向Yと前記配向方向Zとがなす角θyzが90°±15°の範囲内にある
    請求項1~3のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  5. 前記第3液晶ポリマーフィルム層が、溶融押出フィルムである
    請求項4に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  6. 前記熱圧着積層フィルムは、全体でフィルム面内方向に0.0%以上10.0%未満の配向度を有する
    請求項1~5のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  7. 前記熱圧着積層フィルムは、全体でMD方向に0~30ppm/Kの線膨張係数(JIS K7197準拠)を有し、
    前記熱圧着積層フィルムは、全体でTD方向に0~30ppm/Kの線膨張係数(JIS K7197準拠)を有する
    請求項1~6のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  8. 前記熱圧着積層フィルムは、15~500μmの総厚みを有する
    請求項1~7のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  9. 前記配向方向Xが、TD方向である
    請求項1~8のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  10. 前記配向方向Yが、TD方向である
    請求項1~8のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  11. 前記配向方向Xが、非MD方向且つ非TD方向である
    請求項1~8のいずれか一項に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
  12. 前記配向方向Yが、非MD方向且つ非TD方向である
    請求項11に記載の熱圧着積層フィルムの巻回ロール。
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