JP2023105901A - プライマー皮膜、そのプライマー皮膜を製造するための前駆溶液、シリコーンゲル層形成用基体、シリコーンゲル複合体及びその製造方法 - Google Patents

プライマー皮膜、そのプライマー皮膜を製造するための前駆溶液、シリコーンゲル層形成用基体、シリコーンゲル複合体及びその製造方法 Download PDF

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篤 穂積
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Abstract

【課題】シリコーンゲル層と基材との密着性を改善するプライマー皮膜を提供し、密着性に優れたシリコーンゲル複合体を提供する。【解決手段】シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層を基材表面に形成するためのプライマー皮膜であって、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、前記有機シランが下記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、前記金属アルコキシドが下記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、プライマー皮膜。CH2=CH-R1-Si-(OR2)3・・・(1)(式中、R1は、炭素数1~10のアルキレン基を表し、R2は、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)Si(OR3)4・・・(2)(式中、R3は、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)【選択図】図1

Description

本発明は、シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層を密着性よく基材表面に固定することが可能なプライマー皮膜、及び前記プライマー皮膜を製造するための前駆溶液に関する。また、基材上にプライマー皮膜を有するシリコーンゲル層形成用基体、基材上にプライマー皮膜を介して前記基材上にシリコーンゲル層が形成されたシリコーンゲル複合体、及び前記シリコーンゲル複合体の製造方法に関する。
基材の表面に液滴が付着することを抑制する表面処理剤としてオルガノゲルが注目されている。
オルガノゲルとは、高分子が架橋してネットワークを作った網目構造に有機溶媒を含んだ状態のゲルであり、代表的なものとして、ビニル基末端を有する変性シリコーン、ヒドロシリル基を有する変性シリコーン、触媒、及びこれらの液体に相溶可能な有機溶媒を原料として前駆溶液を調製し、任意の基材表面に滴下し、加熱硬化することで製造されるシリコーンゲルが知られている。なお、上記の製造方法において、架橋反応は、変性シリコーンのビニル基末端とヒドロシリル基の触媒反応により行われる。
非特許文献1には、市販のシリコーンオイルの存在下でポリジメチルシロキサンを架橋して製造したシリコーンゲルは、オイルなしで架橋したシリコーン樹脂よりも氷に対する難付着性に優れることが記載されている。
特許文献1には、水や油に対する難付着性に優れ、温度や化学反応によって自発的に離漿可能なシリコーンゲルとして(段落[0006]、[0007])、シリコーン樹脂組成物が硬化した架橋シリコーン樹脂と、該シリコーン樹脂組成物を溶解させることが可能なシリコーンオイルであってよい第一の液体と、該第一の液体と混和することが可能な第二の液体を含み、第一の液体は、第二の液体を兼ねていてもよい湿潤ゲルが開示されている(請求項1、2、4)。
ところで、基材上にシリコーン樹脂層を形成する場合、基材との密着性を高めるために、基材表面に変性シリコーン中のヒドロシリル基と化学的な反応性を有する官能基を固定することが有効であることが知られている。
例えば、特許文献2には、ビニル基を有するシラン化合物を単独で加水分解・縮重合させたビニルシロキサンオリゴマーをプライマーとして利用することで、シリコーン樹脂と基材の密着性の向上を試みている。
一方、基材との密着性に優れた皮膜の一つとして、本発明者らは、既に、有機シランと金属アルコキシドとを有機溶媒、水、触媒を含む溶液中で共加水分解・縮重合させた前駆液を、基材表面に塗布後、所定時間、室温、大気圧下で静置することにより得られる有機-無機透明ハイブリッド皮膜が、金属、金属酸化膜、合金、半導体、ポリマー、セラミックス、ガラス、樹脂等の各種基材と密着する密着性を示すことを見いだしている(特許文献3 請求項1、段落[0001]、特許文献4 請求項1、段落[0001]参照)。
国際公開2015/198985 特開2010-261014号公報 特開2013-213181号公報 特開2013-249389号公報
ACS Appl. Mater. Interfaces 2021, 13, 24, 28925-28937
一般に、表面処理剤の機能を十分に発揮するためには、基材との密着性が必要である。
非特許文献1及び特許文献1に開示のシリコーンゲルは、基材表面との化学的な結合が存在しないため、高い密着性を得ることが困難であった。
特許文献2に開示された手法によって、シリコーン樹脂と基材との密着性は改善される。しかし、プライマー自身の架橋点であるSiに対する有機物の割合が多くならざるを得ないので、プライマーの硬度が高くならない、プライマーが有機溶媒に膨潤しやすくなる、という欠点があり、該プライマーでは表面処理剤が有機溶媒成分を含むシリコーンゲルの接着には不向きであった。
特許文献3、4は、基材との密着性に優れた有機-無機ハイブリッド皮膜について開示しているが、シリコーンゲルと基材との密着性については示唆するところがない。
そこで、本発明らは、シリコーンゲル層と基材との密着性を改善するプライマー皮膜を提供し、密着性に優れたシリコーンゲル複合体を提供することを課題とし、さらに検討を重ねた。
本発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下を提案するものである。
[1] シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層を基材表面に形成するためのプライマー皮膜であって、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、前記有機シランが下記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、前記金属アルコキシドが下記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、プライマー皮膜。
CH=CH-R-Si-(OR・・・(1)
(式中、Rは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
Si(OR・・・・・・・・・・(2)
(式中、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
[2] 前記(1)のプライマー皮膜を製造するための前駆溶液であって、有機溶媒、水、ゾル-ゲル触媒、有機シラン、及び金属アルコキシドを含み、前記有機シランが上記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、
前記金属アルコキシドが上記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、前駆溶液。
[3] シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層を形成するための基体であって、基材と、該基材の表面に形成されたプライマー皮膜とを備え、前記プライマー皮膜は、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、前記有機シランが上記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、前記金属アルコキシドが上記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、シリコーンゲル層形成用基体。
[4] 基材と、該基材の表面に形成されたプライマー皮膜と、該プライマー皮膜を介して形成された、シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層とからなる、シリコーンゲル複合体であって、前記プライマー皮膜は、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、前記有機シランが上記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、前記金属アルコキシドが上記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、シリコーンゲル複合体。
[5] 前記[4]のシリコーンゲル複合体の製造方法であって、基材の上に、有機溶媒、水、ゾル-ゲル触媒、上記の式(1)で表される不飽和基を有する有機シラン、上記の式(2)で表される金属アルコキシドを含む前駆溶液を塗布し、ゾル-ゲル法によりプライマー皮膜を形成する工程、前記プライマー皮膜上に、シリコーン樹脂原料にシリコーンオイルを混合したシリコーンゲル原料を滴下し、硬化させる工程、を含む、シリコーンゲル複合体の製造方法。
本発明により、シリコーンゲル層と基材との密着性を改善するプライマー皮膜を提供し、密着性に優れたシリコーンゲル複合体を提供することができる。
本実施形態に係るプライマー皮膜の製造方法と作用・機序を模式的に示す図 本実施形態に係るシリコーンゲルの難付着性を模式的に示す図 本発明の実施例の工程を説明する写真
本発明の第一の側面は、シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層を基材表面に形成するためのプライマー皮膜であって、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、前記有機シランが下記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、前記金属アルコキシドが下記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、プライマー皮膜である。
CH=CH-R-Si-(OR・・・(1)
(式中、Rは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
Si(OR・・・・・・・・・・(2)
(式中、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
本発明の第二の側面は、前記プライマー皮膜を製造するための前駆溶液であって、有機溶媒、水、ゾル-ゲル触媒、有機シラン、及び金属アルコキシドを含み、前記有機シランが上記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、前記金属アルコキシドが上記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、前駆溶液である。
本発明の第三の側面は、シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層を形成するための基体であって、基材と、該基材の表面に形成されたプライマー皮膜とを備え、前記プライマー皮膜は、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、前記有機シランが上記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、前記金属アルコキシドが上記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、シリコーンゲル層形成用基体である。
本発明の第四の側面は、基材と、該基材の表面に形成されたプライマー皮膜と、該プライマー皮膜を介して形成された、シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層とからなる、シリコーンゲル複合体であって、前記プライマー皮膜は、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、前記有機シランが上記の式(I)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、前記金属アルコキシドが上記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、シリコーンゲル複合体である。
本発明の第五の側面は、基材と、該基材の表面に形成されたプライマー層と、該プライマー層を介して形成されたシリコーン樹脂とシリコーンオイルとからなるシリコーンゲル層とからなる複合体の製造方法であって、基材の上に、有機溶媒、水、ゾル-ゲル触媒、上記の式(1)で表される不飽和基を有する有機シラン、上記の式(2)で表される属アルコキシドを含む前駆溶液を塗布し、ゾル-ゲル法により硬化させてプライマー層を形成する工程、前記プライマー層上に、シリコーン樹脂原料にシリコーンオイルを混合したシリコーンゲル原料を滴下して硬化させる工程を含む、複合体の製造方法である。
なお、ゾル-ゲル法とは、金属アルコキシドのアルコキシ基を溶液中で加水分解し、生成した中間体の自発的な縮重合反応によって固体を形成する反応であり、ゾル-ゲル触媒とは、上記の反応を促進するための触媒である。
本発明は、以上の側面により、基材との密着性に優れたプライマー皮膜、前記プライマー皮膜を製造するための前駆溶液、基材上にプライマー皮膜を有するシリコーンゲル層形成用基体、基材上にプライマー皮膜とシリコーンゲル層を有するシリコーンゲル複合体、及び前記シリコーンゲル複合体の製造方法を提供するものである。
なお、本明細書において、数値範囲等を「~」を用いて表す場合、その両端の数値等を含む。
以下、本発明の各側面について、その最良の形態を含めて、さらに具体的な実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。
[プライマー皮膜]
本実施形態に係るプライマー皮膜は、原料組成物として、下記の式(1)で表される有機シランと、下記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランを含む。
CH=CH-R-Si-(OR・・・(1)
(式中、Rは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
Si(OR・・・・・・・・・・(2)
(式中、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
上記の原料組成物は、後述する共加水分解・縮重合反応を経て、ポリシロキサン骨格を有し、一部のケイ素原子に不飽和基が結合されたプライマー皮膜を生成する。以下、さらに詳述する。
(有機シラン)
式(1)における有機シランのRを炭素数1~10のアルキレン基としたのは、Siと末端のビニル基(不飽和基)との間のアルキレン鎖に含まれる炭素数が大きい方が、シリコーンゲルとの密着性に優れたプライマー皮膜が得られるからである。
図1を用いて説明すると、図1では、模式的に、円を一部切り欠いた形状でビニル基を示し、ビニル基と相補的に結合して円となる形状でヒドロシリル基を示している。
のアルキレン鎖が炭素数1以上であることにより、ビニル基がプライマー皮膜のポリシロキサン骨格から露出する確率が高くなるので、シリコーンゲルの骨格成分に含まれるヒドロシリル基と結合する割合が高くなると推察される。なお有機シランの製造コストの点で、Rの炭素数は10以下とした。
また、式(1)における有機シランのRを炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基としたのは、アルコキシ基(OR)が前記ポリシロキサン骨格を形成する際の共加水分解・縮重合反応に寄与する基であって、短い方が加水分解速度が速いとともに、成膜時に脱離基が揮発しやすく、膜内に残存しにくいからである。
有機シランとして、具体的にはアリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキメトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、7-オクテニルトリエトキシシラン、7-オクテニルジエトキメトキシシラン等を用いることができる。
(テトラアルコキシシラン)
式(2)で表されるテトラアルコキシシランのアルコキシ基であるORも、ポリシロキサン骨格を形成する際の共加水分解・縮重合反応に寄与する基であり、Rを炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基としたのは、短い方が加水分解速度が速いとともに、成膜時に脱離基が揮発しやすく、脱離基が膜内に残存しにくいからである。
テトラアルコキシシランは、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エトキシシトリメトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン等が挙げられる。
[プライマー皮膜の製造方法]
本実施形態に係るプライマー皮膜は、有機シランとテトラアルコキシシランを含む後述する前駆溶液を基材に塗布し、共加水分解・縮重合することにより、ポリシロキサン骨格を有し、有機シラン由来の不飽和基が基材表面に露出する有機-無機ハイブリッド皮膜として形成することができる。
このプライマー皮膜は、有機-無機ハイブリッド膜であるから、基材が有機材料であるか無機材料であるかに関わりなく基材との密着性を改良することができるとともに、不飽和基が上層に形成されるシリコーンゲルのシリコーン樹脂骨格との結合を高めることで、基材とシリコーンゲルの接着性を高めることができる。
[前駆溶液]
本実施形態に係る前駆溶液は、第1図の左部に示すように、プライマー皮膜の原料である有機シランとテトラアルコキシシランに、有機溶媒、水、及びゾル-ゲル触媒を加えたものである。
有機溶媒としては、透明で均一な皮膜を形成するために、少量の水と混和し、かつ、有機シランと金属アルコキシドの縮重合物質を溶解させることができるものであって、基材上に前駆溶液を塗布した際、速やかに揮発するものであることが好ましい。すなわち、蒸気圧が水より高い、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン等が好ましい。
添加する水の量は、前駆溶液に含まれる全ての反応性官能基が加水分解し、Si-OH基を生成するために、前記の官能基のモル数以上の水が含まれていることが好ましい。水の量が上記のモル数より少なくても、皮膜の形成は可能である。しかし、有機シランおよび金属アルコキシドを処理中に揮発させることなく、十分な加水分解を行うことによって歩留まりを向上させるためには、前記の官能基のモル数以上の水を含むことが好ましい。
本実施形態に係る前駆溶液では、有機シラン及び金属アルコキシドの反応性官能基(アルコキシ基)の加水分解を促進させる(Si-OH基の生成)ために、アルコキシ基の加水分解を促進する効果を有するゾル-ゲル触媒が使用される。
例えば、有機シランと金属アルコキシドの縮重合物質がpH1~3で安定化する場合には、塩酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸を使用することが好ましい。
前記前駆溶液のゾルーゲル法による反応は、加熱によって行うことができる。加熱条件は、例えば、25~80℃、1~24時間である。なお、熱以外のエネルギーを加えて反応を誘起することもできる。
[シリコーンゲル]
図2に、本実施形態に係るシリコーンゲルの構造を模式的に示す。
難付着性を発現するオルガノゲルは、撥液したい物質に対して、当該物質と混合しない骨格成分である架橋樹脂と、当該物質と混合せず、骨格成分とは混合し、揮発しにくい液体成分とを含む。このような構造により、ゲル内外において液体成分の移動を制御し、液体成分の離漿を可能とする。
本実施形態に係るシリコーンゲルの場合、骨格成分は架橋シリコーン樹脂であり、液体成分はシリコーンオイルであり、水系、油系のいずれの物質に対しても難付着性とすることができる。
前記シリコーンゲルは、ビニル基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物を含むシリコーン樹脂原料と、シリコーンオイルとを混合し、シリコーン樹脂原料のヒドロシリル化反応を誘起することにより、図2に示すように、骨格成分である架橋シリコーン樹脂にシリコーンオイルが含侵された構造とすることができる。以下、詳述する。
(シリコーン樹脂原料)
ビニル基を有する化合物としては、特に限定されないが、ビニル基を有するシリコーン樹脂、ビニル基を有する金属アルコキシド等が挙げられる。
ビニル基を有するシリコーン樹脂としては、両末端にビニル基が導入されている変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン等が挙げられる。
ビニル基を有する金属アルコキシドとしては、ビニルトリエトキシシランやアリルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ヒドロシリル基を有する化合物としては、特に限定されないが、ヒドロシリル基を有するシリコーン樹脂、ヒドロシリル基を有する金属アルコキシド等が挙げられる。
ヒドロシリル基を有するシリコーン樹脂としては、ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
ヒドロシリル基を有する金属アルコキシドとしては、トリエトキシシランやトリメトキシシラン等が挙げられる。
なお、市販されているシリコーン樹脂原料としては、ダウコーニング製Sylgard 184を挙げることができる。
(シリコーンオイル)
シリコーンオイルとしては、シリコーン樹脂と混合できるものであれば特に限定されない。ポリメチルフェニルシロキサン、フェニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体等が例示される。
(ヒドロシリル化反応)
シリコーン樹脂原料をヒドロシリル化反応により硬化させる際には、白金系触媒を用いてもよい。
白金系触媒としては、特に限定されないが、Karsted’s catalyst(Pt[(MeSiCH=CH2)O])、HPtCl等が挙げられる。
シリコーン樹脂原料を硬化させる際には、加熱してもよい。
シリコーン樹脂原料を硬化させる際の温度は、触媒の添加量に応じて、適宜調整することができるが、通常、20~150℃である。
[基材]
本実施形態で使用し得る基材としては、例えば、金属、金属酸化膜、合金、半導体、ポリマー、セラミックス、ガラス、樹脂、木材、紙、繊維等の適宜の材料を任意に使用することができる。基材の具体例としては、例えば、銅、真鍮、シリコン、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂、ガラス、木材等が好適なものとして例示され、特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂等の樹脂を用いることができる。
これらの基材の形状は、板状、凹凸状、粉末状、チューブ状、ポーラス状、繊維状等、任意な形状の基材を使用することができる。
また、本発明においては、特に、基材の前処理は必要としないが、プラズマやUV等で基材表面を洗浄/活性化した後に使用することも可能である。
さらに、基材上に、任意の易接着層を形成した後、プライマー皮膜を形成してもよい。
次に、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。図3にその工程の概要を示す。なお、以下の実施例は、本発明の好適な例を示すものであり、本発明は、該実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
エタノール40.0mL、テトラエトキシシラン14.0mL、アリルトリエトキシシラン1.4mLを混合し、0.01M塩酸を10.0ml添加し、24時間撹拌しプライマー前駆溶液を調製した。該プライマー前駆溶液をガラス板に滴下し、80℃で3時間加熱して、プライマー皮膜を形成した。得られたプライマー皮膜の膜厚は500nmであった。その後、該プライマー皮膜の表面にシリコーン樹脂原料(ダウコーニング製Sylgard 184)にシリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製TSF431)を混合したシリコーンゲル原料を滴下し、80℃で3時間硬化させ、プライマー皮膜を介してガラス板とシリコーンゲル層が密着した複合体を作製した。該複合体をヘキサン中に24時間浸漬して密着性を評価したところ、剥離はなく、密着状態が維持されていた。
(実施例2~4)
アリルトリエトキシシランを2.8mL(実施例2)、5.6mL(実施例3)、11.2mL(実施例4)混合した以外は実施例1と同様にしてプライマー皮膜を作製し、以下、実施例1と同様にして該プライマー皮膜を介してガラス板とシリコーンゲル層が密着した複合体を作製した。
該複合体の密着性を評価したところ、実施例2~4のいずれも、実施例1と同じく良好であった。
(参考例)
プライマー皮膜の表面にシリコーン樹脂原料(ダウコーニング製Sylgard 184)を滴下した以外は実施例1と同様にしてプライマー皮膜とシリコーン樹脂が密着した複合体を作製し、該複合体の密着性及び難付着性を評価した。シリコーン樹脂とプライマー皮膜との密着性は、実施例1と同様に良好であったが、非特許文献1に記載されたように、マヨネーズやケチャップを汚染物質としてシリコーン樹脂表面に滴下し傾斜させたところ、シリコーン樹脂表面にはこれらの汚染物質が残存し、該シリコーン樹脂の難付着性は、実施例1のシリコーンゲルに及ばなかった。
(比較例1)
プライマー皮膜を形成しないこと以外は実施例1と同様にして、ガラス板とシリコーンゲル層からなる複合体を作製した。
該複合体をヘキサン中に24時間浸漬したところ、シリコーンゲル層は剥離した。
本発明によると、難付着性に優れたシリコーンゲル層を基材に密着して設けることができるので、撥水、撥油、防汚性に優れた表面を有する物品、例えば、食品包装体や建築構造体等を提供することができる。

Claims (7)

  1. シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層を基材表面に形成するためのプライマー皮膜であって、
    有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、
    前記有機シランが下記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、
    前記金属アルコキシドが下記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、プライマー皮膜。
    CH=CH-R-Si-(OR・・・(1)
    (式中、Rは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
    Si(OR・・・・・・・・・・(2)
    (式中、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
  2. 請求項1に記載のプライマー皮膜を製造するための前駆溶液であって、
    有機溶媒、水、ゾル-ゲル触媒、有機シラン、及び金属アルコキシドを含み、
    前記有機シランが下記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、
    前記金属アルコキシドが下記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、前駆溶液。
    CH=CH-R-Si-(OR・・・(1)
    (式中、Rは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1~4の互互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
    Si(OR・・・・・・・・・・(2)
    (式中、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
  3. シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層を形成するための基体であって、
    基材と、該基材の表面に形成されたプライマー皮膜とを備え、
    前記プライマー皮膜は、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、
    前記有機シランが下記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、
    前記金属アルコキシドが下記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、シリコーンゲル層形成用基体。
    CH=CH-R-Si-(OR・・・(1)
    (式中、Rは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
    Si(OR・・・・・・・・・・(2)
    (式中、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
  4. 前記プライマー皮膜の厚みが10~10000nmであることを特徴とする請求項3に記載のシリコーンゲル層形成用基体。
  5. 前記基材が、ガラス、金属、樹脂からなる群から選ばれる、請求項3又は4に記載のシリコーンゲル層形成用基体。
  6. 基材と、該基材の表面に形成されたプライマー皮膜と、該プライマー皮膜を介して形成された、シリコーン樹脂とシリコーンオイルを含有するシリコーンゲル層とからなる、シリコーンゲル複合体であって、
    前記プライマー皮膜は、有機シランと金属アルコシキドの共加水分解・縮重合物を含有し、
    前記有機シランが下記の式(1)で表される、不飽和基を含む有機シランであり、
    前記金属アルコキシドが下記の式(2)で表されるテトラアルコキシシランである、シリコーンゲル複合体。
    CH=CH-R-Si-(OR・・・(1)
    (式中、Rは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
    Si(OR・・・・・・・・・・(2)
    (式中、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
  7. 請求項6に記載のシリコーンゲル複合体の製造方法であって、
    基材の上に、有機溶媒、水、ゾル-ゲル触媒、下記の式(1)で表される不飽和基を有する有機シラン、下記の式(2)で表される金属アルコキシドを含む前駆溶液を塗布し、ゾル-ゲル法によりプライマー皮膜を形成する工程、
    前記プライマー皮膜上に、シリコーン樹脂原料にシリコーンオイルを混合したシリコーンゲル原料を滴下し、硬化させる工程
    を含む、シリコーンゲル複合体の製造方法。
    CH=CH-R-Si-(OR・・・(1)
    (式中、Rは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
    Si(OR・・・・・・・・・・(2)
    (式中、Rは、炭素数1~4の互いに同一でも異なっていてもよいアルキル基を表す。)
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