JP2023104794A - モータ制御方法及びモータ制御装置 - Google Patents

モータ制御方法及びモータ制御装置 Download PDF

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Tetsuro Kojima
健吾 藤原
Kengo Fujiwara
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Abstract

Figure 2023104794000001
【課題】部品の損傷を防止しつつバッテリを昇温可能なモータ制御方法を提供する。
【解決手段】バッテリを有する電動車両に搭載されるモータの制御方法が提供される。このモータ制御方法では、モータに対するトルク指令値と、モータの回転状態とに基づいて目標変調率を演算し、トルク指令値と目標変調率とに基づいて電圧ノルム指令値と電圧位相指令値を決定し、決定された電圧ノルム指令値と電圧位相指令値とに基づいてインバータのPWM制御を実行する。そして、バッテリの状態に基づき、バッテリの昇温の要否を判断し、バッテリの昇温が必要な場合、モータとインバータの総合損失が増加するように目標変調率を変更する。
【選択図】図2

Description

本発明は、モータ制御方法及びモータ制御装置に関する。
ハイブリッド車両や電気自動車において、例えば寒冷地等で、バッテリの温度が低いと、所望の出力を得られない虞がある。
特許文献1には、バッテリ温度が所定値より低い場合に、モータ電流の電流振幅を増減させて銅損を変動させるモータ制御装置が開示されている。銅損の変動により、バッテリでは、銅損に相当する電力が充放電され、充放電が繰り返されることで、バッテリの内部抵抗が発熱し、バッテリ温度が上昇する。
特開2007-26700号公報
特許文献1の制御装置では、モータ電流の電流振幅を増加させることで銅損を増加させている。しかしながら、銅損の増加に伴い、巻線温度が過昇温状態になると、焼損等の部品破壊に至る虞がある。これを回避するために、電流振幅が大きい動作点でモータを運転している場合や、巻線温度が高い場合等においては、銅損を増加させることができない。従って、このような場合には、バッテリを昇温できないという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、部品の損傷を防止しつつバッテリを昇温可能なモータ制御方法及びモータ制御装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、バッテリを有する電動車両に搭載されるモータの制御方法が提供される。このモータ制御方法では、モータに対するトルク指令値と、モータの回転状態とに基づいて目標変調率を演算し、トルク指令値と目標変調率とに基づいて電圧ノルム指令値と電圧位相指令値を決定し、決定された電圧ノルム指令値と電圧位相指令値とに基づいてインバータのPWM制御を実行する。そして、バッテリの状態に基づき、バッテリの昇温の要否を判断し、バッテリの昇温が必要な場合、モータとインバータの総合損失が増加するように目標変調率を変更する。
本発明のモータ制御方法によれば、バッテリの昇温が必要な場合、モータとインバータの総合損失が増加するように目標変調率を変更している。即ち、バッテリを昇温するための損失を巻線の電力消費(銅損)のみに依存しない。従って、バッテリの昇温に必要な損失を確保しつつ、巻線の過昇温による焼損等の部品の損傷を防止することができる。
図1は、第1実施形態によるモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両の概略構成図である。 図2は、発電機コントローラによるスイッチング制御を説明する制御ブロック図である。 図3は、電圧位相制御部の制御ブロック図である。 図4は、目標変調率演算部の制御ブロック図である。 図5は、磁石損失及びスイッチ損と、変調率との相関を示す図である。 図6は、発電機のエネルギー損失を示す図である。 図7は、図6の動作点Aと動作点Bにおける発電機のエネルギー損失の内訳を示す図である。 図8は、第1実施形態によるモータ制御方法を説明するフローチャートである。 図9は、第2実施形態によるモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両における目標変調率演算部の制御ブロック図である。 図10は、変調率と電流振幅の関係を示す図である。 図11は、変調率と出力可能トルクの関係を示す図である。 図12は、目標変調率演算部における具体的な変調率の選択方法を示す図である。 図13は、変調率と銅損の相関を示す図である。 図14は、変調率と鉄損の相関を示す図である。 図15は、第2実施形態によるモータ制御方法を説明するフローチャートである。 図16は、第3実施形態によるモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両における目標変調率演算部の制御ブロック図である。
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両(以下、車両ともいう)100の概略構成図である。
ハイブリッド車両(以下、車両ともいう)100は、エンジン1(内燃機関)と、発電用モータ(以下、発電機2という)と、走行に用いる駆動力を生成する電動モータ(以下駆動モータ6という)と、を搭載したいわゆるシリーズハイブリッド車両として構成される。但しこれに限られず、各実施形態のモータ制御方法は、エンジンを発電用及び走行駆動源の双方に用いることができる車両や、バッテリのみを電源とする電気自動車等に適用することもできる。
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、エンジン1と、発電機2と、発電機インバータ3と、バッテリ4と、駆動インバータ5と、駆動モータ6と、減速機7と、を備える。また、ハイブリッド車両100は、バッテリコントローラ11と、システムコントローラ12と、発電機コントローラ13と、駆動モータコントローラ14と、エンジンコントローラ15と、から構成されるコントローラ50を備え、コントローラ50は発電機2とともにモータ制御装置10を構成する。
エンジン1は、図示しないギヤを介して発電機2と接続されており、発電機2が発電するための駆動力を発電機2へ伝達する。すなわち、ハイブリッド車両100のエンジン1は、発電機2による発電のための駆動源として用いられる。
発電機2は、エンジン1の駆動力によって回転して発電する発電モータであり、ここではIPM型の3相同期モータである。また、発電機2は、エンジン1の始動時には、発電機2の動力を用いてエンジン1をクランキングさせることや、エンジン1を発電機2の動力を用いて力行回転させることにより電力を消費するモータリングも行う。発電機2の電気角θは、回転子位置センサ20により検出され(図2参照)、検出された発電機2の電気角θは発電機コントローラ13に送信される。また、発電機2の少なくとも2層の相電流は、相電流センサ30により検出され(図2参照)、検出された相電流は発電機コントローラ13に送信される。
発電機インバータ(以下、インバータともいう)3は、発電機2、バッテリ4、及び駆動インバータ5に接続されており、発電機2が発電する交流の電力を直流の電力に変換する。また、発電機インバータ3は、バッテリ4から供給される直流の電力を交流の電力に変換して、発電機2に供給する。
バッテリ4は、発電機2と駆動モータ6それぞれの回生電力の充電、駆動電力の放電を行う。バッテリ4の直流出力電圧(DC電圧)Vdcは、電圧センサ40により検出され(図2参照)、検出されたDC電圧Vdcは、発電機コントローラ13に送信される。
駆動インバータ5は、バッテリ4または発電機インバータ3から供給される直流の電力を交流の電力に変換して、駆動モータ6に供給する。また、駆動インバータ5は、駆動モータ6で回生発電された交流の電力を直流の電力に変換して、バッテリ4に供給する。
駆動モータ6は、駆動インバータ5から供給される交流電流により駆動力を発生し、減速機7を通して駆動輪8に駆動力を伝達する。また、車両100の減速時やコースト走行中等に駆動輪8に連れ回されて回転するときに、回生駆動力を発生させることで、車両100の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
コントローラ50は、バッテリコントローラ11と、システムコントローラ12と、発電機コントローラ13と、駆動モータコントローラ14と、エンジンコントローラ15とを含む。コントローラ50は、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)から構成される。
バッテリコントローラ11は、バッテリ4へ充放電される電流や電圧に基づいて充電状態(SOC:State Of Charge)を計測し、計測した情報をシステムコントローラ12へ送信する。また、バッテリ4の温度、内部抵抗、及びSOCに応じて、バッテリ4の入力可能電力と出力可能電力を演算して、算出した値をシステムコントローラ12へ出力する。さらに、バッテリ4の温度やSOCに応じて、暖機運転の実行の要否(即ち、バッテリ4の昇温の要否)を判断し、暖機運転が必要な場合、暖機運転要求をシステムコントローラ12へ出力する。例えば、寒冷地等において、バッテリ4の温度が低いために、車両100の発進や加速等に必要な所望の出力を得られない虞がある場合等に、暖機運転要求が出力される。
システムコントローラ12は、アクセル開度、車速、及び路面勾配などの車両状態や、バッテリコントローラ11からのSOC情報、入力可能電力、出力可能電力、発電機2の発電電力などの情報に応じて、駆動モータ6へのモータトルク指令値を演算する。また、発電機2から、バッテリ4或いは駆動モータ6へ供給するための目標発電電力を演算する。
システムコントローラ12内の発電制御部121では、目標発電電力と暖機運転要求とに応じて、運転モードの切り替えを行う。具体的には、目標発電電力が0以外の場合は「発電運転モード」に設定され、目標発電電力が0且つバッテリ4(バッテリコントローラ11)からの暖機運転要求がある場合は「電力消費運転モード」に設定される。また、これらいずれにも該当しない場合は、「運転停止」となる。「発電運転モード」の場合は、目標発電電力を実現するために、エンジンコントローラ15へのエンジン回転数指令値、発電機コントローラ13への発電機トルク指令値Tを演算する。「電力消費運転モード」の場合は、エンジン回転数指令値を0とし、発電機2が所望の回転数に収束するような発電機トルク指令値Tを演算する。「運転停止」の場合は、エンジン回転数指令値、発電機トルク指令値Tをともに0とする。なお、システムコントローラ12は、「電力消費運転モード」に設定した場合、発電機コントローラ13への電力消費増加要求Pup_figを要求有りとし、それ以外のモードでは、電力消費増加要求Pup_figを要求無しとする。
発電機コントローラ13は、システムコントローラ12からの発電機トルク指令値Tを実現するために、発電機2の回転数検出値や電圧などの状態(発電機2の回転状態)に応じて、発電機インバータ3をスイッチング制御する。この際、電力消費増加要求Pup_figに応じて目標変調率Mを変更する。目標変調率Mの変更の詳細は後述する。
駆動モータコントローラ14は、駆動モータトルクがシステムコントローラ12からの駆動モータトルク指令値を達成するように、駆動モータ6の回転数や電圧などの状態に応じて、駆動インバータ5をスイッチング制御する。
エンジンコントローラ15は、エンジン回転数がシステムコントローラ12からのエンジン回転数指令値と一致するように、エンジン1のスロットルアクチュエータによる吸入空気量と、インジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期とをエンジン1の回転数や温度などの状態信号に応じて調整する。なお、エンジン回転数指令値が0の場合は、燃料の噴射を停止した所謂フューエルカット状態となる。
図2は、発電機コントローラ13が実行する発電機インバータ3に対するスイッチング制御を説明する制御ブロック図である。
図2に示すように、発電機コントローラ13は、三相二相変換器21と、回転数演算器22と、トルク演算器23と、目標変調率演算部24と、電圧位相制御部25と、二相三相変換器26と、PWM変換器27と、から構成される。
発電機コントローラ13の制御対象となる発電機(モータ)2は、IPM型の3相同期モータである。発電機インバータ3は、電圧駆動型PWMインバータであり、内部に3相毎に備えられた正負極側各々のパワー素子が、発電機コントローラ13からのスイッチング信号D により駆動される。
また、発電機コントローラ13には、電圧センサ40により検出されたバッテリ4のDC電圧Vdc、回転子位置センサ20により検出された発電機2の電気角θ、相電流センサ30により検出された発電機2の少なくとも2相の相電流i、iが入力される。
三相二相変換器21は、相電流i、iと、電気角θに基づき、以下の式(1)からdq軸電流i、iを算出する。算出されたdq軸電流i、iは、トルク演算器23に出力される。
Figure 2023104794000002
回転数演算器22は、発電機2の電気角θを微分する事で電気角速度ωを算出し、さらに極対数を加味する事で機械角回転数Nを算出する。算出された電気角速度ω及び機械角回転数Nは、目標変調率演算部24に出力される。
トルク演算器23は、発電機2のdq軸電流i、iに対して予め実験で計測したトルク値を格納したテーブルを参照することで、発電機2のトルク推定値(以下、トルク推定値ともいう)Testを演算し、トルク推定値Testを電圧位相制御部25に出力する。
目標変調率演算部24は、システムコントローラ12から指令される発電機トルク指令値(以下、トルク指令値ともいう)T、電力消費増加要求Pup_fig、検出したバッテリ4のDC電圧Vdc、発電機2の電気角速度ω(即ち、発電機2の回転状態)に基づき、目標変調率Mを演算する。算出された目標変調率Mは、電圧位相制御部25に出力される。なお、目標変調率演算部24の演算ロジックの詳細は後述する。
電圧位相制御部25は、目標変調率M、トルク指令値T、トルク推定値Test、電気角速度ω、バッテリ4のDC電圧Vdc、に基づき、dq軸電圧指令値v 、v を演算する。算出されたdq軸電圧指令値v 、v は、二相三相変換器26に出力される。なお、電圧位相制御部25の演算ロジックの詳細は後述する。
二相三相変換器26は、dq軸電圧指令値v 、v と発電機2の電気角θに基づき、以下の式(2)から相電圧指令値v 、v 、v を演算する。算出された相電圧指令値v 、v 、v は、PWM変換器27に出力される。
Figure 2023104794000003
PWM変換器27は、相電圧指令値v 、v 、v とバッテリ4のDC電圧Vdcに基づき、発電機2に印加されるキャリア周期あたりの平均相電圧v、v、vが相電圧指令値v 、v 、v と一致するようなスイッチング信号D を演算する。演算されたスイッチング信号D は、発電機インバータ3に出力され、発電機インバータ3がスイッチング信号D により駆動されることで、発電機インバータ3のPWM制御が実行される。
図3は、電圧位相制御部25の制御ブロック図である。
図3に示すように、電圧位相制御部25は、電圧ノルム演算器31と、トルク規範応答演算部32と、電圧位相目標値演算部33と、PI制御器34と、電圧位相リミッタ35と、ベクトル変換器36と、安定化フィルタ37と、から構成される。
電圧ノルム演算器31では、目標変調率M、DC電圧Vdcに基づき、以下の式(3)から電圧ノルム指令値v を演算する。算出された電圧ノルム指令値v は、電圧位相目標値演算部33及びベクトル変換器36に出力される。
Figure 2023104794000004
トルク規範応答演算部32は、以下の式(4)に示すように、トルク指令値Tに応答時定数τの1次遅れフィルタを施し、トルク規範応答Trefを演算する。
Figure 2023104794000005
電圧位相目標値演算部33は、電圧ノルム指令値v 、電気角速度ω、トルク指令値Tにより、予め実験によりまたは解析的に作成したテーブルを参照する事により、フィードフォワード電圧位相指令値αff を演算する。なお、本実施形態では電圧位相は電圧ベクトルのq軸成分が正、d軸成分が0となるベクトル位相を0°(電圧位相の基準)と定義する。
PI制御器34は、トルク規範応答Trefとトルク推定値Testとの差分から、以下の式(5)に基づきPI制御を行い、フィードバック電圧位相指令値αfb を演算する。但し、式(5)において、Kαpは比例ゲイン、Kαiは積分ゲインである。
Figure 2023104794000006
電圧位相リミッタ35は、フィードフォワード電圧位相指令値αff とフィードバック電圧位相指令値αfb を加算したリミット前電圧位相指令値α´を、電圧位相とトルクが正相関を維持可能な所定範囲に制限する事で、電圧位相指令値αを演算する。なお、電圧位相リミッタ35は、電圧位相指令値αが上限値または下限値に張り付いている間は、PI制御器34に制限中である旨の通知信号lmt_flgを送る。制限中であることを通知されている間、PI制御器34はアンチワインドアップのため、制限前の電圧位相指令値αと制限後の電圧位相指令値(リミット後電圧位相指令値)αlim の値が等しくなるよう、積分器を初期化する。
ベクトル変換器36は、バッテリ4のDC電圧Vdc、目標変調率M、リミット後電圧位相指令値αlim に基づき、以下の式(6)から安定化前dq軸電圧指令値v ´、v ´を演算し、安定化フィルタ37に出力する。
Figure 2023104794000007
安定化フィルタ37は、安定化前dq軸電圧指令値v ´、v ´に対するdq軸電流i、iの共振特性を相殺しフィードバックループを安定化する。具体的には、以下の式(7)に基づき、dq軸電圧指令値v 、v を演算し、二相三相変換器26に出力する。
Figure 2023104794000008
ここで、τはトルク規範応答演算部32と共通に設けられる応答時定数である。なお、電気角速度ωによって可変するゲインk11、k12、k21、k22は、以下の式(8)で定義される。但し、式(8)において、Lはd軸インダクタンス、Lはq軸インダクタンス、L´はd軸動的インダクタンス、L´はq軸動的インダクタンスである。
Figure 2023104794000009
次に、図4~図7を参照して、目標変調率演算部24の演算ロジックの詳細を説明する。
目標変調率演算部24では、システムコントローラ12からの電力消費増加要求Pup_figの有無、即ち、バッテリ4の昇温の要否により目標変調率Mを算出する演算ロジックが切り替えられる。
ところで、バッテリの昇温が必要な場合に、モータ電流の電流振幅を増加させてモータのエネルギー損失(銅損)を増加させることでバッテリの昇温を行うことが知られている。しかしながら、銅損の増加に伴い、巻線温度が過昇温状態になると、焼損等の部品損傷に至る虞がある。これを回避するため、電流振幅が大きい動作点でモータを運転している場合や、巻線温度が高い場合等においては、銅損を増加させることができず、バッテリを昇温できないという問題がある。
これに対し、本実施形態のモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両100では、以下で説明するように、バッテリ4の昇温が必要な場合、目標変調率演算部24により、発電機(モータ)2と発電機インバータ3の総合損失(以下、単に総合損失ともいう)が増加するように目標変調率Mが変更される。より詳細には、目標変調率Mをトルク指令値Tの実現に適した標準目標変調率M から、総合損失が増加するように補正して得られる損失増大目標変調率Mpup に切り替える。即ち、バッテリ4を昇温するための損失を巻線の電力消費(銅損)のみに依存しない。従って、バッテリ4の昇温に必要な損失を確保しつつ、巻線の過昇温による損傷等の部品の損傷を防止することができる。
図4は、目標変調率演算部24の制御ブロック図である。目標変調率演算部24は、標準変調率演算器41と、変調率切替器42とから構成される。
標準変調率演算器41には、トルク指令値T、バッテリ4のDC電圧Vdc、発電機2の電気角速度ωが入力される。目標変調率演算部24は、これらの入力値から、予め実験または解析等により最も効率よく発電機2を運転可能な変調率を定めたテーブルを参照して、標準目標変調率M を演算し、変調率切替器42に出力する。
変調率切替器42は、目標変調率Mの演算を行う。変調率切替器42は、システムコントローラ12から電力消費増加要求Pup_figがある場合、発電機2とインバータ3の総合損失が増加するように設定される損失増大目標変調率Mpup を選択し、目標変調率Mを演算する。一方、システムコントローラ12から電力消費増加要求Pup_figが無い場合、標準目標変調率M を選択し、目標変調率Mとする。
ここで、発電機2とインバータ3の総合損失(以下、単に総合損失ともいう)には、発電機2における磁石損失とインバータ3のスイッチ損が含まれている。磁石損失はPWMのスイッチングパルス波形に応じてその大きさが変化するキャリア高調波の影響を受けやすいことが知られており、また、インバータ3のスイッチ損もキャリア高調波の影響を受ける。即ち、磁石損失及びスイッチ損は、キャリア周波数に起因して生じるキャリア高調波の大きさと相関がある。そしてスイッチングパルス波形は、変調率に応じてその概形が定まるため、変調率を操作することで、キャリア高調波の大きさと相関のある損失(磁石損失とスイッチ損)を変えることができ、総合損失を操作することができる。
図5は、発電機2における磁石損失とインバータ3におけるスイッチ損の合計と、変調率との相関を示す図であり、発電機2を流れる電流の電流振幅を一定にしながら発電機2の回転数を変化させた場合の損失の一例を示している。変調率と、磁石損失及びスイッチ損との相関は、予め、実験または解析的に求めておくことができる。
ここで、磁石損失は、固定子スロットと回転子間の磁束密度分布の影響による空間高調波にくらべ、キャリア高調波の影響を受けやすいため、発電機2の回転数が異なっても、損失がある所定の変調率で山なりのピークを持った分布となる傾向がある。このため、磁石損失とスイッチ損の合計と、変調率との相関を示す図5においても、所定の変調率において損失がピークとなる。従って、目標変調率演算部24(変調率切替器42)は、損失増大目標変調率Mpup を磁石損失とスイッチ損の合計がピークとなる変調率に設定する。これにより、簡易的な処理で多様な動作点で損失が増加するよう発電機2を動作させることができる。
図6は、発電機2のエネルギー損失を示す図であり、(a)は発電機2における銅損、(b)は発電機2における磁石損失、(c)は発電機2のエネルギー損失の総和であるモータ総合損失を示している。
図6の(a)及び(b)で示すように、銅損は変調率が高くなるほど減少し、(b)で示すように磁石損失は変調率が高いほど増加する。図6の動作点Aは、(c)に示すように、モータ総合損失が最小となる動作点であり、バッテリ4を昇温する必要が無い(電力消費増加要求Pup_figが無い)場合、発電機2は、動作点Aで駆動する。即ち、動作点Aにおける変調率が標準目標変調率M である。
図6の動作点Bは、図5の磁石損失とスイッチ損の合計がピークとなる変調率(損失増大目標変調率Mpup )における発電機2の動作点であり、バッテリ4の昇温が必要であり、電力消費増加要求Pup_figがある場合、発電機2は、動作点Bで駆動する。図6の(a)に示すように、動作点Bにおいては、動作点Aよりも銅損が減少しているが、(b)に示すように、磁石損失は増大し、発電機2全体の損失であるモータ総合損失が動作点Aよりも増加している。従って、動作点Bにおいて、発電機2とインバータ3の総合損失も動作点Aより増加する。
図7は、図6の動作点Aと動作点Bにおける発電機2のエネルギー損失の内訳を示している。図7に示すように、動作点Bでは、動作点Aに比べ銅損は減少しているものの、磁石損失が増加しており、発電機2全体のエネルギー損失も増加している。
以上のとおり、本実施形態では、キャリア高調波の大きさと相関がある損失(磁石損失及びスイッチ損)が増加するように変調率を操作することで、発電機2とインバータ3の総合損失を増加させて、バッテリ4を昇温する。このため、巻線(銅損)だけではなく、各部に電力消費を分散することが可能となり、巻線の過昇温による焼損等の部品の損傷を防止することができる。従って、電流振幅が大きい動作点でモータを運転している場合や、巻線温度が高い場合等のように、銅損を増加させることができないシーンにおいても、損失を増加させて、バッテリ4を昇温することができる。
なお、本実施形態においては、磁石損失とスイッチ損の合計がピーク(最大)となる変調率を損失増大目標変調率Mpup に設定しているが、これに限られない。損失をどの程度増加させるかは、バッテリ4の状態等に基づき決定することができ、損失増大目標変調率Mpup は、必ずしも損失が最大となる変調率に設定しなくてもよい。
また、本実施形態においては、磁石損失とインバータ3におけるスイッチ損の合計と、変調率との相関から損失増大目標変調率Mpup (目標変調率M)を設定するが、これに限られず、発電機2とインバータ3の総合損失と変調率との相関を予め実験または解析的に求めておき、総合損失が大きい変調率を目標変調率Mに設定してもよい。
図8は、本実施形態によるモータ制御方法を説明するフローチャートである。なお、以下の制御は、ハイブリッド車両100の車両システムが起動している間、一定の間隔で常時実行するようにコントローラ50(発電機コントローラ13)にプログラムされている。
ステップS101において、発電機コントローラ13は、センサにより検知されたバッテリ4のDC電圧Vdc、発電機2の少なくとも2層の相電流i、i、発電機2の電気角θを取得する。
ステップS102において、発電機コントローラ13は、発電機2の電気角θに基づき、電気角速度ω及び機械角回転数Nを算出する。
ステップS103において、発電機コントローラ13は、相電流i、iと、電気角θに基づき、dq軸電流i、iを算出する。
ステップS104において、発電機コントローラ13は、システムコントローラ12からの発電機トルク指令値T及び電力消費増加要求Pup_figを取得する。前述の通り、システムコントローラ12において「電力消費運転モード」に設定された場合、電力消費増加要求Pup_figを要求有りとされ、それ以外のモードでは、電力消費増加要求Pup_figを要求は無しとされる。
ステップS105及びS106は、目標変調率Mを演算するステップである。
ステップS105において、発電機コントローラ13は、最も効率よく発電機2を運転可能な変調率である標準目標変調率M を演算する。
ステップS106において、発電機コントローラ13は、電力消費増加要求Pup_figが要求無しの場合、標準目標変調率M を目標変調率Mに設定する。ハイブリッド車両100の走行中、通常は標準目標変調率M が目標変調率Mとして設定される。一方、電力消費増加要求Pup_figがある場合、発電機コントローラ13は、発電機2とインバータ3の総合損失が増加する損失増大目標変調率Mpup を演算し、損失増大目標変調率Mpup を目標変調率Mとして設定するように切り替える。
ステップS107~S115は、電圧位相制御を実行するステップである。
ステップS107において、発電機コントローラ13は、目標変調率M、DC電圧Vdcに基づき、電圧ノルム指令値v を演算する。
ステップS108において、発電機コントローラ13は、発電機トルク指令値Tに応答時定数τの1次遅れフィルタを施し、トルク規範応答Trefを演算する。
ステップS109において、発電機コントローラ13は、電圧ノルム指令値v 、電気角速度ω、トルク指令値Tに基づき、フィードフォワード電圧位相指令値αff を演算する。
ステップS110において、発電機コントローラ13は、トルク規範応答Trefとトルク推定値Testに基づき、PI制御を行い、フィードバック電圧位相指令値αfb を演算する。
ステップS111において、発電機コントローラ13は、フィードフォワード電圧位相指令値αff とフィードバック電圧位相指令値αfb に基づき、電圧位相とトルクが正相関を維持可能な所定範囲に入るような電圧位相指令値αの範囲を演算する。
ステップS112において、発電機コントローラ13は、電圧位相指令値αが電圧位相とトルクが正相関を維持可能な所定範囲に入るように電圧位相指令値αをリミットする。電圧位相指令値αがリミットされている(上限値または下限値である)場合、ステップS113において、発電機コントローラ13は、アンチワインドアップのため、制限前の電圧位相指令値αと制限後の電圧位相指令値(リミット後電圧位相指令値)αlim の値が等しくなるよう、積分器を初期化する。
ステップS112において電圧位相指令値αがリミットされていない場合、または、ステップS113の処理によって電圧位相指令値αが上限値または下限値に制限されなくなった場合、発電機コントローラ13は、ステップS114の処理を実行する。
ステップS114において、発電機コントローラ13は、バッテリ4のDC電圧Vdc、目標変調率M、電圧位相指令値α(リミット後電圧位相指令値αlim )に基づき、安定化前dq軸電圧指令値v ´、v ´を演算する(ベクトル変換)。
ステップS115において、発電機コントローラ13は、安定化前dq軸電圧指令値v ´、v ´に対するdq軸電流i、iの共振特性を相殺してフィードバックループを安定化し、dq軸電圧指令値v 、v を演算する。
ステップS116において、発電機コントローラ13は、dq軸電圧指令値v 、v と発電機2の電気角θに基づき、相電圧指令値v 、v 、v を演算(二相三相変換)する。
ステップS117において、発電機コントローラ13は、相電圧指令値v 、v 、v とバッテリ4のDC電圧Vdcに基づき、発電機2に印加されるキャリア周期あたりの平均相電圧v、v、vが相電圧指令値v 、v 、v と一致するようなスイッチング信号D を演算(PWM変換)する。発電機インバータ3がスイッチング信号D により駆動されることで、発電機インバータ3のPWM制御が実行される。
上記した第1実施形態のモータ制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態のモータ制御方法は、バッテリ4の状態に基づき、バッテリ4の昇温の要否を判断し、バッテリ4の昇温が必要な場合、発電機(モータ)2とインバータ3の総合損失が増加するように目標変調率Mを変更する。即ち、バッテリ4を昇温するための損失を巻線の電力消費(銅損)のみに依存しない。このため、バッテリ4の昇温に必要な損失を確保しつつ、巻線の過昇温による損傷等の部品の損傷を防止することができる。
本実施形態のモータ制御方法は、バッテリ4の昇温が必要な場合、キャリア高調波の大きさと相関のある損失が増加するように目標変調率Mを変更する。これにより、巻線(銅損)だけではなく、各部に電力消費を分散させて発電機2とインバータ3の総合損失を増加させることができる。従って、巻線の過昇温による焼損等の部品の損傷を防止できるため、電流振幅が大きい動作点でモータを運転している場合や、巻線温度が高い場合等のように、銅損を増加させることができないシーンにおいても、損失を増加させて、バッテリ4を昇温することができる。
(第2実施形態)
図9~図14を参照して、第2実施形態のモータ制御方法を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2実施形態のモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両100は、目標変調率演算部24が第1実施形態と異なる。なお、その他の構成は、第1実施形態のモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両100と同様である。
図9は、第2実施形態によるモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両100における目標変調率演算部24の制御ブロック図である。
第2実施形態における目標変調率演算部24は、標準変調率演算器41及び変調率切替器42に加え、最小変調率演算器43及び最大変調率演算器44を備える。標準変調率演算器41、最小変調率演算器43及び最大変調率演算器44には、トルク指令値T、バッテリ4のDC電圧Vdc、発電機2の電気角速度ωが入力される。
第1実施形態と同様に、標準変調率演算器41は、トルク指令値T、バッテリ4のDC電圧Vdc、発電機2の電気角速度ωから、予め実験または解析等により最も効率よく発電機2を運転可能な変調率を定めたテーブルを参照して、標準目標変調率M を演算し、変調率切替器42に出力する。
最小変調率演算器43は、トルク指令値T、DC電圧Vdc、電気角速度ωで定義される運転点に対し、許容可能な目標変調率の最小値を定めたテーブルを参照することにより、最小目標変調率Mmin を演算し、変調率切替器42に出力する。
ここで、許容可能な目標変調率の最小値を定めたテーブルは、インバータ3やバッテリ4等のハードウェアにとって許容可能な電流振幅の最大値を超えないよう考慮して設定される。例えば、トルクT、DC電圧Vdc、電気角速度ωを一定とした場合の変調率と電流振幅の関係を示す図10では、電流振幅が下に凸な特性となるため、許容可能な電流振幅の最大値を超えないためには、変調率は図10におけるMmin1 からMmax1 の範囲内になければならない。即ち、許容可能な目標変調率の最小値は、少なくもMmin1 以上となるように定められる。このように、許容可能な目標変調率の最小値を定めたテーブルは、ハードウェアの限界を考慮して設定される。
また、許容可能な目標変調率の最小値を定めたテーブルは、発電機2の電圧位相が所定範囲内に収まるよう考慮して設定される。例えば、DC電圧Vdc、電気角速度ωを一定とした場合の変調率と出力可能トルクを示す図11では、変調率が小さい領域では、出力可能トルクの絶対値も小さくなる。なお、出力可能トルクは、電圧位相制御の電圧位相指令値αのリミット値相当の電圧位相を印加した際のトルクである。ここで、発電機2に対するトルク指令値TがT であったとすると、図11におけるMmin2 未満の変調率を目標変調率Mとした場合、電圧位相をトルクTと正相関を持つ範囲に収めるため、電圧位相制御の電圧位相指令値αがリミットされ、トルク指令値T に準じたトルクTを出力することができなくなる。これを回避するため、許容可能な目標変調率の最小値は、少なくもMmin2 以上となるように定められる。このように、許容可能な目標変調率の最小値を定めたテーブルは、トルク指令値T を満たすトルクTを出力できるような電圧位相の範囲に納まるように考慮して設定される。
最大変調率演算器44は、トルク指令値T、DC電圧Vdc、電気角速度ωで定義される運転点に対し、許容可能な目標変調率の最大値を定めたテーブルを参照することにより、最大目標変調率Mmax を演算し、変調率切替器42に出力する。
許容可能な目標変調率の最大値を定めたテーブルは、インバータ3やバッテリ4等のハードウェアにとって許容可能な電流振幅の最大値を超えないよう考慮して設定される。例えば、前述の図10では、許容可能な電流振幅の最大値を超えないためには、変調率はMmin1 からMmax1 の範囲内になければならない。従って、許容可能な目標変調率の最大値は、少なくもMmax1 以下となるように定められる。
変調率切替器42は、電力消費増加要求Pup_figに応じて、標準目標変調率M 、最小目標変調率Mmin 、最大目標変調率Mmax 、損失増大目標変調率Mpup の何れかを選択して、目標変調率Mの演算を行う。
図12は、目標変調率演算部24(変調率切替器42)における具体的な変調率の選択方法を示す図である。
図12に示すように、システムコントローラ12から電力消費増加要求Pup_figが無い場合、変調率切替器42は、標準目標変調率M を選択し、目標変調率Mとして出力する(優先度1)。
一方、システムコントローラ12から電力消費増加要求Pup_figがある場合、キャリア高調波の大きさと相関のある損失(磁石損失とスイッチ損)が増加するように設定される損失増大目標変調率Mpup が最小目標変調率Mmin 及び最大目標変調率Mmax の範囲を超えているときは、変調率切替器42は、目標変調率Mをリミットする(優先度2、3)。即ち、損失増大目標変調率Mpup が最小目標変調率Mmin 以下の場合、変調率切替器42は、最小目標変調率Mmin を選択し、目標変調率Mとして出力する。また、損失増大目標変調率Mpup が最大目標変調率Mmax 以上の場合、変調率切替器42は、最大目標変調率Mmax を選択し、目標変調率Mとして出力する。これにより、電流振幅がハードウェアで許容可能な電流振幅の範囲を超えないようにしつつ、トルク指令値Tに準じたトルクTを出力できる。また、目標変調率Mをリミットすることで、電圧位相指令値αがリミットされない範囲に入るため、電圧位相に対する出力トルクTが正相関を持つ範囲で安定して発電機2の制御を行うことが可能となる。
次に、システムコントローラ12から電力消費増加要求Pup_figがあり、且つ損失増大目標変調率Mpup が最小目標変調率Mmin 及び最大目標変調率Mmax の範囲内にある場合、損失増大目標変調率Mpup と標準目標変調率M との差が所定の値ΔM以上のときは、変調率切替器42は、損失増大目標変調率Mpup を選択し、目標変調率Mとして出力する(優先度4)。ここで、ΔMは、キャリア高調波の大きさと相関のある損失(磁石損失とスイッチ損)を増加させることによる総合損失の増加量が、バッテリ4を所望の値だけ昇温するためにシステムとして要求される損失増加分を満足できるような幅に定めることができる。従って、損失増大目標変調率Mpup と標準目標変調率M との差が所定の値ΔM以上の場合、キャリア高調波の大きさと相関のある損失(磁石損失とスイッチ損)を増加させることで、所望の値だけバッテリ4を昇温することができる。
これに対し、損失増大目標変調率Mpup と標準目標変調率M との差が所定の値ΔM未満の場合、キャリア高調波の大きさと相関のある損失(磁石損失とスイッチ損)の増加が発電機2とインバータ3の総合損失に与える影響は、比較的小さい。即ち、キャリア高調波の大きさと相関のある損失(磁石損失とスイッチ損)を増加させても、バッテリ4を所望の値だけ昇温することができない虞がある。この場合、変調率切替器42は、銅損のように電流振幅または電流の実効値に相関のある損失を増加させるか、鉄損のように誘起電圧の大きさに相関のある損失を増加させることで、総合損失を増加させる。ここで、一般に、モータの高回転側では、交番磁界が高周波となるため鉄損が増加する傾向があり、低回転側では、トルク(電流)の増加により銅損が増加する傾向がある。従って、変調率切替器42は、発電機2の高回転側と低回転側で、処理を二分する。
図13は、DC電圧Vdc、電気角速度ω、トルクTを一定とした場合における変調率と銅損の相関を示す図であり、図14は、DC電圧Vdc、電気角速度ω、トルクTを一定とした場合における変調率と鉄損の相関を示す図である。
発電機2の高回転時、即ち、電気角速度ωが基準電気角速度ωe_th以上の場合、ステータコア等の鉄損をさらに増加させると、鉄損の影響で発熱しやすい部品が過昇温となる虞がある。従って、目標変調率演算部24(変調率切替器42)は、主として銅損により電力消費を増加させる。即ち、目標変調率演算部24(変調率切替器42)は、標準目標変調率M より小さい最小目標変調率Mmin を選択し、目標変調率Mとして出力する。これにより、電流振幅を許容可能な電流振幅の最大値まで増加させることができ(図10を参照)、変調率が標準目標変調率M より小さくなるので、図13に示すように、銅損が増加する。また、変調率が標準目標変調率M より小さくなるので、図14に示すように鉄損は減少するが、銅損の増加量が鉄損の減少量を上回るため、総合損失は増加する。
発電機2の低回転時、即ち、電気角速度ωが基準電気角速度ωe_th未満の場合、電気子巻線等の銅損の影響で発熱しやすい部品が過昇温となるリスクを低減するため、目標変調率演算部24(変調率切替器42)は、主として鉄損により電力消費を増加させる。即ち、目標変調率演算部24(変調率切替器42)は、標準目標変調率M より大きい最大目標変調率Mmax を選択し、目標変調率Mとして出力する。これにより、変調率が標準目標変調率M より大きくなり、図14に示すように、鉄損が増加する。また、図13に示すように、変調率が標準目標変調率M より小さくなっても、銅損はほとんど減少しないので、総合損失は増加する。
なお、基準電気角速度ωe_thは、例えば、鉄損による部品の温度上昇が許容される最大の電気角速度から定めることができる。
以上のように、電流振幅の制約や総合損失への寄与度から、磁石損失のようなキャリア高調波の大きさと相関のある損失を増加させることでは総合損失を十分に増加させることが困難な場合であっても、目標変調率Mを操作することで、総合損失を増加させることができる。即ち、動作点に応じて、変調率を小さくすることで銅損を増加させることができ、変調率を大きくすることで、主に鉄損を増加させることができる。また、電圧位相指令値αがリミットされないように、目標変調率Mの範囲を所定範囲に制限するため、常にトルク指令値Tを満たすトルクTを出力することができる。
図15は、第2実施形態によるモータ制御方法を説明するフローチャートである。なお、第1実施形態と同様に、以下の制御は、ハイブリッド車両100の車両システムが起動している間、一定の間隔で常時実行するようにコントローラ50(発電機コントローラ13)にプログラムされている。
ステップS101~S105の処理は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
ステップS206において、発電機コントローラ13は、トルク指令値T、DC電圧Vdc、電気角速度ωに基づき、最小目標変調率Mmin を演算する。
ステップS207において、発電機コントローラ13は、トルク指令値T、DC電圧Vdc、電気角速度ωに基づき、最大目標変調率Mmax を演算する。
ステップS207において、発電機コントローラ13は、電力消費増加要求Pup_figに応じて、標準目標変調率M 、最小目標変調率Mmin 、最大目標変調率Mmax 、損失増大目標変調率Mpup の何れかを選択して、目標変調率Mの演算を行う。
ステップS107~S117の処理は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
上記した第2実施形態のモータ制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態のモータ制御方法は、バッテリ4の昇温が必要な場合、発電機(モータ)2の電流実効値と相関のある損失が増加するように、目標変調率Mを小さくする。これにより、キャリア高調波の大きさと相関のある損失(磁石損失やスイッチ損等)を増加させても総合損失を十分に増加させることができない場合でも、銅損等の電流の実効値に相関のある損失を増加させて必要な損失を確保することができる。
本実施形態のモータ制御方法は、バッテリ4の昇温が必要な場合、発電機(モータ)2の誘起電圧の大きさと相関のある損失が増加するように、目標変調率Mを大きくする。これにより、キャリア高調波の大きさと相関のある損失(磁石損失やスイッチ損等)を増加させても総合損失を十分に増加させることができない場合でも、鉄損等の誘起電圧の大きさに相関のある損失を増加させて必要な損失を確保することができる。
本実施形態のモータ制御方法は、発電機(モータ)2の電圧位相指令値αが制限されない所定範囲内に入るように、目標変調率Mを設定する。これにより、電圧位相に対する出力トルクTが正相関を持つ範囲で安定して発電機(モータ)2の制御を行うことが可能となるとともに、要求トルク(トルク指令値)Tを損なわない範囲で損失を増加させることができる。
(第3実施形態)
図16を参照して、第3実施形態のモータ制御方法を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3実施形態のモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両100は、目標変調率演算部24が他の実施形態と異なる。なお、その他の構成は、第1及び第2実施形態のモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両100と同様である。
図16は、第3実施形態によるモータ制御方法が適用されるハイブリッド車両100における目標変調率演算部24の制御ブロック図である。
他の実施形態と同様に、目標変調率演算部24は、標準変調率演算器41及び変調率切替器42を備える。
標準変調率演算器41は、入力されたトルク指令値T、バッテリ4のDC電圧Vdc、発電機2の電気角速度ωから、予め実験または解析等により最も効率よく発電機2を運転可能な変調率を定めたテーブルを参照して、標準目標変調率M を演算し、変調率切替器42に出力する。
変調率切替器42は、標準目標変調率M または損失増大目標変調率Mpup の何れかを選択して、目標変調率Mの演算を行う。但し、他の実施形態と異なり、変調率切替器42には、発電機2の磁石温度Tmagが入力される。
ここで、発電機2の磁石は、キャリア高調波の大きさとの温度相関が大きい。従って、発電機2の磁石温度Tmagが所定の温度よりも大きい場合に磁石損失等のようなキャリア高調波の大きさと相関のある損失を増加させると、磁石が過昇温となる虞がある。そこで、本実施形態においては、変調率切替器42は、電力消費増加要求Pup_figに加え、磁石温度Tmagを考慮して標準目標変調率M または損失増大目標変調率Mpup の選択を実行する。
具体的には、システムコントローラ12から電力消費増加要求Pup_figが無い場合、または、磁石温度Tmagが磁石温度閾値Tmag_th以上の場合は、変調率切替器42は、標準目標変調率M を選択し、目標変調率Mとして出力する。一方、システムコントローラ12から電力消費増加要求Pup_figがあり、かつ、磁石温度Tmagが磁石温度閾値Tmag_th未満の場合は、変調率切替器42は、損失増大目標変調率Mpup を選択し、目標変調率Mとして出力する。
なお、発電機2の磁石温度Tmagは、サーミスタ等の温度センサにより検出することができる。また、磁石温度閾値Tmag_thは、例えば損失増大目標変調率Mpup で連続運転した場合の飽和温度が発電機2における磁石の耐熱を超えない最大の磁石温度から定めることができる。
このように、本実施形態では、磁石温度Tmagが磁石温度閾値Tmag_th以上の場合は、電力消費増加要求Pup_figの有無によらず、最も効率よく発電機2を運転可能な動作点(標準目標変調率M )で運転する。これにより、磁石損失を増加させることによる磁石の過昇温を回避することができ、永久磁石の不可逆減磁といった部品の過熱による劣化や故障を防ぐことができる。
なお、本実施形態では、磁石温度Tmagが磁石の耐熱温度を超えないように目標変調率Mを設定するがこれに限られず、キャリア高調波の大きさとの温度相関が大きい磁石以外の部品について、部品の耐熱温度を超えないように目標変調率Mを設定するようにしてもよい。
上記した第3実施形態のモータ制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態のモータ制御方法は、キャリア高調波の大きさと温度相関がある部品の温度が所定値を超えないように、目標変調率Mを設定する。これにより、永久磁石の不可逆減磁といった部品の過熱による劣化や故障を防ぐことができる。
なお、いずれの実施形態も、発電機コントローラ13による発電機(モータ)2に対するモータ制御方法として説明したが、これに限られず、同様の制御を駆動モータコントローラ14が駆動モータ6に対して実行してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
1、エンジン,2、発電機(モータ),3、発電機インバータ,4、バッテリ,11、バッテリコントローラ,12、システムコントローラ,13、発電機コントローラ,14、駆動モータコントローラ,15、エンジンコントローラ,100、ハイブリッド車両(車両)

Claims (8)

  1. バッテリを有する電動車両に搭載されるモータの制御方法であって、
    前記モータに対するトルク指令値と、前記モータの回転状態とに基づいて目標変調率を演算し、
    前記トルク指令値と前記目標変調率とに基づいて電圧ノルム指令値と電圧位相指令値を決定し、
    決定された前記電圧ノルム指令値と前記電圧位相指令値とに基づいてインバータのPWM制御を実行し、
    前記バッテリの状態に基づき、前記バッテリの昇温の要否を判断し、前記バッテリの昇温が必要な場合、前記モータと前記インバータの総合損失が増加するように前記目標変調率を変更する、
    モータ制御方法。
  2. 請求項1に記載のモータ制御方法であって、
    前記バッテリの昇温が必要な場合、前記目標変調率を予め実験または解析的に求めた前記総合損失が大きい所定値に設定する、
    モータ制御方法。
  3. 請求項1または2に記載のモータ制御方法であって、
    前記総合損失は、前記インバータのキャリア周波数に起因して生じるキャリア高調波の大きさと相関のある損失を含み、
    前記バッテリの昇温が必要な場合、前記キャリア高調波の大きさと相関のある損失が増加するように前記目標変調率を変更する、
    モータ制御方法。
  4. 請求項1から3のいずれか一つに記載のモータ制御方法であって、
    前記総合損失は、前記モータの電流実効値と相関のある損失を含み、
    前記バッテリの昇温が必要な場合、前記モータの電流実効値と相関のある損失が増加するように、前記目標変調率を小さくする、
    モータ制御方法。
  5. 請求項1から4のいずれか一つに記載のモータ制御方法であって、
    前記総合損失は、前記モータの誘起電圧の大きさと相関のある損失を含み、
    前記バッテリの昇温が必要な場合、前記モータの誘起電圧の大きさと相関のある損失が増加するように、前記目標変調率を大きくする、
    モータ制御方法。
  6. 請求項1から5のいずれか一つに記載のモータ制御方法であって、
    前記バッテリの昇温が必要な場合、前記インバータのキャリア周波数に起因して生じるキャリア高調波の大きさと温度相関がある部品の温度が所定値を超えないように、前記目標変調率を設定する、
    モータ制御方法。
  7. 請求項1から6のいずれか一つに記載のモータ制御方法であって、
    前記電圧位相指令値が制限されない所定範囲内に入るように、前記目標変調率を設定する、
    モータ制御方法。
  8. バッテリを有する電動車両に搭載されるモータと、
    前記モータを制御するコントローラと、を備えるモータ制御装置であって、
    前記コントローラは、
    前記モータに対するトルク指令値と、前記モータの回転状態とに基づいて目標変調率を演算し、
    前記トルク指令値と前記目標変調率とに基づいて電圧ノルム指令値と電圧位相指令値を決定し、
    決定された前記電圧ノルム指令値と前記電圧位相指令値とに基づいてインバータのPWM制御を実行し、
    前記バッテリの状態に基づき、前記バッテリの昇温の要否を判断し、前記バッテリの昇温が必要な場合、前記モータと前記インバータの総合損失が増加するように前記目標変調率を変更する、
    モータ制御装置。
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