JP2023103792A - シリカ含有組成物の製造方法 - Google Patents

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英明 岡本
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Abstract

【課題】高純度で大きいシラノール基密度を有するシリカ含有組成物を、低コスト且つ高い安全性で製造することが可能な製造方法を提供すること。【解決手段】ケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムの濃度が1~24質量%である水溶液とを混合し、ケイ酸塩を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーからケイ酸塩を含む抽出液と残渣とを分取する分取工程と、30~90℃の温度で、抽出液を含むケイ酸塩含有液とCO2含有ガスとを接触させてシリカ粒子を晶析する晶析工程と、シリカ粒子を含む固相を洗浄する洗浄工程と、を有し、晶析工程では、ケイ酸塩含有液1LあたりのCO2の接触量が120~400Lとなるように、ケイ酸塩含有液とCO2含有ガスとを接触させる、シリカ含有組成物の製造方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、シリカ含有組成物の製造方法に関する。
石炭灰、焼却灰、スラグ及び廃ガラス等のケイ素含有廃棄物は、年間数千万トン発生しており、リサイクルしきれないものは埋め立てにより最終処分されている。廃棄物において多量に含まれるケイ素は、産業上有用な成分であるため、これらの廃棄物からケイ素が再利用可能な形態で回収できれば、最終処分量の削減及び循環型社会の形成への貢献が期待される。
ケイ素含有廃棄物からシリカを回収する技術として、例えば特許文献1、2には、石炭灰を原料とし、70~150℃の加熱条件下、40質量%以上又は25質量%以上といった高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いてシリカ成分を抽出した後、抽出液に炭酸ガスを通気して得られるシリカ晶析液を固液分離することでシリカを回収する技術が開示されている。
特許文献1は、アルミナ分に富む残渣から人工骨材を製造することを目的としており、石炭灰からシリカ成分を抽出した後の残渣の処理方法として、加熱固化して成形するか、又はセメント及び水を添加し造粒成型する技術が開示されている。また、特許文献2は、シリカ成分とともにアルミナ成分を回収することを目的としており、シリカ成分を抽出した後の残渣からAlを生成させるとともに、さらにその残渣をフィラー材又はセメント原料として利用する技術が開示されている。
シリカ粉末の用途としては、合成ゴム等の高分子材料用のフィラー材、触媒、担体、吸着材、吸湿材、コンクリート用混和材、アンチブロッキング材等が挙げられる。これらのうち、回収したシリカ粉末を合成ゴム等の高分子材料用のフィラー材として利用する場合、シリカ粉末の純度、BET比表面積、及びシリカ粉末と高分子の結合力に大きく影響するシラノール基密度が重要となる。
特開2015-67526号公報 特表2009-519829号公報
特許文献1、2のように、従来のシリカ抽出工程ではシリカの高い収率を達成するために、高温及び高濃度の水酸化ナトリウム水溶液による処理が行われており、安全性について改善の余地がある。また、水酸化ナトリウムの濃度を高くすると、シリカ粒子を晶析する際に妨害因子となり得るNaが抽出液中に多く含まれるという問題、及び、シリカ以外のケイ素含有廃棄物由来の成分が多く抽出されるという問題がある。このように、廃棄物を原料とした場合に、抽出液中にシリカ以外の成分が含有されるため、所望の純度、BET比表面積及びシラノール基密度を有するシリカ粒子を晶析するための条件は、工業原料等からシリカ粒子を晶析する場合の条件と異なることが予想される。この点について、特許文献1、2では一切言及されていない。また、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を使用した場合に、抽出残渣にセメント忌避成分であるNaO成分が多量に残留するため、セメントの原料にすることが難しくなるという事情もある。
本発明は、高純度で大きいシラノール基密度を有するシリカ含有組成物を、低コスト且つ高い安全性で製造することが可能な製造方法を提供する。
本発明は、一つの側面において、ケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムの濃度が1~24質量%である水溶液とを混合し、ケイ酸塩を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーからケイ酸塩を含む抽出液と残渣とを分取する分取工程と、30~90℃の温度で、抽出液を含むケイ酸塩含有液とCO含有ガスとを接触させてシリカ粒子を晶析する晶析工程と、シリカ粒子を含む固相を洗浄する洗浄工程と、を有し、晶析工程では、ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が120~400Lとなるように、ケイ酸塩含有液とCO含有ガスとを接触させる、シリカ含有組成物の製造方法を提供する。
上記製造方法では、ケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムの濃度が従来よりも低い水溶液を用いて、ケイ酸塩を含むスラリーを調製し、このスラリーから得られるケイ酸塩を含む抽出液を含むケイ酸塩含有液とCO含有ガスとを特定の条件下で接触させてシリカ粒子を晶析している。このように、原料としてケイ素含有廃棄物と低濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いているため、低コスト且つ高い安全性でシリカ粒子を含むシリカ含有組成物を製造することができる。また、この製造方法によって得られるシリカ含有組成物は、抽出液に含まれるケイ酸塩以外の不純物が低減されているうえに洗浄工程を行っているため高純度であり、且つ、大きいシラノール基密度を有する。このようなシリカ含有組成物は、特に合成ゴム等の高分子材料用のフィラーとして好適に利用することができる。一方、残渣は、例えばセメント原料として有効活用することができる。ただし、シリカ含有組成物及び残渣の用途はこれらに限定されない。
上記製造方法は、晶析工程で得られるシリカ粒子を含む懸濁液を50~90℃に保持する熟成工程を有することが好ましい。これによって、より大きなシラノール基密度を有するシリカ含有組成物を製造することができる。
上記分取工程では、スラリーからNaOの含有量が0.01~5質量%である残渣を得ることが好ましい。このような残渣は、NaOの含有量が十分に低減されていることから、例えばセメント原料として好適に用いることができる。
上記スラリー調製工程では、スラリーを50~200℃に加熱してケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムとを反応させることが好ましい。これによって、ケイ素含有廃棄物からのケイ酸塩の抽出率が向上し、最終的に得られるシリカ含有組成物の収量を増やすことができる。
上記洗浄工程は、シリカ粒子を含む固相の洗浄において、酸及び水をこの順に用いることを含むことが好ましい。これによって、シリカ含有組成物の純度及びBET比表面積を一層高くすることができる。このような効果が得られる理由としては、炭酸ナトリウムが溶解除去されること、及び、未反応成分が低減されること等が推察される。
上記ケイ素含有廃棄物は石炭灰を含むことが好ましい。これによって、一層高い純度を有するシリカ含有組成物を製造することができる。また、残渣中のアルカリ量を低減できるため、残渣をセメント原料として一層好適に用いることができる。
CO含有ガスは、工場で発生する排ガスを含むことが好ましい。これによって、シリカを一層低い製造コストで製造することができる。
上記製造方法では、上記残渣をセメント原料として使用することが好ましい。スラリーを調製する際に水酸化ナトリウムの濃度が低い水溶液を用いていることから、残渣に残留するNaOを低減することができる。これによって、残渣をセメント原料として好適に使用することができる。このように残渣を有効活用することによって、シリカ含有組成物の製造コストをさらに低減することができる。
本発明によれば、高純度で大きいシラノール基密度を有するシリカ含有組成物を、低コスト且つ高い安全性で製造することが可能な製造方法を提供することができる。このようなシリカ含有組成物は、例えば、合成ゴム等の高分子材料用のフィラー材として有用である。さらに、ケイ素含有廃棄物の有効利用を一層促進することができる。
シリカの製造方法の一例を示す図である。
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
一実施形態に係るシリカ含有組成物の製造方法は、ケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムの濃度が1~24質量%である水溶液とを混合し、ケイ酸塩を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーからケイ酸塩を含む抽出液と残渣とを分取する分取工程と、抽出液とCO含有ガスとを接触させてシリカ粒子を晶析する晶析工程と、シリカ粒子を含む固相を洗浄する洗浄工程とを有する。図1は、本実施形態の製造方法の一例を示す図である。
スラリー調製工程では、原料として、ケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムの濃度が1~24質量%である水溶液を用いる。ケイ素含有廃棄物は、石炭灰、焼却灰、スラグ及び廃ガラスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。これらのうち、シリカの純度向上の観点及び残渣中のアルカリ量低減の観点から、ケイ素含有廃棄物は石炭灰を含むことが好ましい。石炭灰は、石炭の燃焼によって生成したものであれば特に限定されない。
石炭灰は、例えば、石炭火力発電所にて微粉炭を燃焼した際に生成する灰であってよい。より具体的には、電気集塵機等で回収されるフライアッシュ、及び、燃焼ボイラーから落下させて採取されるクリンカアッシュ等が挙げられる。特にフライアッシュは微細な粒子であり水酸化ナトリウム水溶液との反応性が高い。したがって、ケイ素含有廃棄物はフライアッシュを含むことが好ましい。
ケイ素含有廃棄物のケイ素含有量は、SiO換算で、好ましくは30~80質量%であり、より好ましくは40~80質量%であり、さらに好ましくは60~80質量%である。ケイ素含有量が上述の範囲であれば、シリカの製造に必要となるケイ酸塩成分を十分に確保できる。また、残渣におけるケイ素含有量も、ある程度の量を維持できるためセメント原料として好適に用いることができる。
ケイ素含有廃棄物の化学成分は、乾燥質量を基準として、Alが1~40質量%、Feが0~5質量%、CaOが0~5質量%、MgOが0~5質量%、SOが0~5質量%、NaOが0~5質量%、及び、KOが0~5質量%であることが好ましい。このような性状のケイ素含有廃棄物であれば、シリカ晶析時に析出する不純物が少なくなり、高純度のシリカ含有組成物が得られやすくなる。
ケイ素含有廃棄物の平均粒径は、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.5~50μmであり、さらに好ましくは1~10μmである。ケイ素含有廃棄物の粒径が上述の範囲であれば、ケイ酸塩成分を効率よく抽出することができる。なお、上記平均粒径は、レーザー回折/散乱法によって求められるメジアン径(D50)である。
水酸化ナトリウムの濃度が1~24質量%である水溶液(水酸化ナトリウム水溶液)は、工業的に製造される水酸化ナトリウム水溶液をそのまま用いてもよく、水酸化ナトリウム水溶液と水とを混合して所定の濃度に調製したものを用いてもよい。また、顆粒状、又は粉末状等の固形の水酸化ナトリウムを水と混合して所定濃度の水溶液に調整して用いてもよい。
水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウム濃度は1~24質量%である。この水酸化ナトリウム濃度は、ケイ酸塩成分を十分に抽出する観点から、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。一方、Ca等の不純物の抽出を抑制しシリカの純度を高くする観点、及び残渣への水酸化ナトリウム水溶液由来のNaの残留を抑制してセメント原料として好適に利用する観点から、水酸化ナトリウム濃度は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下である。
スラリー調製工程では、上述の原料を混合してケイ酸塩を含むスラリーを調製する。このスラリー調製工程では、ケイ素含有廃棄物と混合する水酸化ナトリウム水溶液の水酸化ナトリウムの濃度を上述の範囲とすることで、Ca等の不純物の抽出を抑制しつつ、ケイ酸塩を高純度で抽出することができる。この理由は明らかではないが、例えば、24質量%を超える濃度で水酸化ナトリウムを含む水溶液中でケイ素含有廃棄物を加熱すると、水溶液中のNa量が過多となり、ケイ素含有廃棄物に含まれるCa含有鉱物中のCaと水溶液中のNaの置換が生じ易くなる。これによって、Caの抽出率が高くなってしまう。一方、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が24質量%以下であると、水溶液中のNa量が適正量となり、Ca含有鉱物等と水溶液中のNaとの置換が抑制され、その結果、Caの抽出率が低くなると推測される。
スラリーを調製する際のケイ素含有廃棄物に対する水酸化ナトリウム水溶液の配合比、すなわち、液/固比は、質量基準で好ましくは1~20であり、より好ましくは2~15であり、さらに好ましくは2.5~13である。液/固比が上記範囲であれば、スラリーの流動性を確保しつつ、水酸化ナトリウムに含まれるNaとケイ素含有廃棄物に含まれるSiのモル比を1.0~2.0の範囲に調整し易くなる。これによって、抽出液中のNa量が過剰になることを抑制し、高純度のシリカが得られ易くなる。
スラリーは、ケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムとの反応を促進する観点から、加熱することが好ましい。スラリーの加熱は、スラリーを混合撹拌しながら、且つ必要に応じて加圧しながら行ってもよい。スラリーの加熱温度は、好ましくは50~200℃である。これによって、ケイ素含有廃棄物からケイ酸塩を十分に抽出することができる。ケイ酸塩の抽出を一層促進する観点から、スラリーの加熱温度は、好ましくは65℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。一方、設備を簡素化する観点から、スラリーの加熱温度は、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。
上記温度範囲におけるスラリーの加熱時間は、好ましくは0.5~4時間であり、より好ましくは1~3.5時間であり、さらに好ましくは2~3.5時間である。これによって、ケイ素含有廃棄物からケイ酸塩を効率よく十分に抽出させることができる。
分取工程では、スラリーからケイ酸塩を含む抽出液と残渣とを分取する。スラリーは、ケイ酸塩を含む抽出液と固形分である残渣とに分離してもよい。例えば、スラリーを、公知の脱水機を用いて抽出液と残渣とに分離してよい。脱水機としては、フィルタープレス、ベルトプレス、ロールプレス、遠心脱水機、ロータリーフィルター、及びセラミックフィルター等が挙げられる。ただし、分離手段はこれらに限定されるものではない。
ケイ素含有廃棄物から抽出液に抽出されるケイ酸塩の抽出率は、好ましくは5~60%であり、より好ましくは10~50%であり、さらに好ましくは15~40%である。ケイ酸塩の抽出率が上述の範囲であれば、シリカ製造に必要なケイ酸塩を十分に確保して高純度のシリカの収量を増やすことができる。また、残渣にもケイ酸塩がある程度含まれることとなるため、残渣をセメント原料として好適に利用することができる。なお、本明細書中において、ケイ酸塩の抽出率とは、ケイ酸塩が抽出された抽出液中のケイ素含有量を、石炭灰中のケイ素含有量で除して求められる値である。導出方法の詳細は後述の実施例に記載する。
ケイ素含有廃棄物に含まれていたケイ酸塩が残渣に残留する比率(残留率)は、好ましくは40~95%であり、より好ましくは50~90%であり、さらに好ましくは60~85%である。ケイ酸塩の残留率が上述の範囲であれば、シリカ含有組成物の製造に必要なケイ酸塩を十分に確保してシリカ含有組成物の収量を増やすことができる。また、残渣にもケイ酸塩がある程度含まれることとなるため、残渣をセメント原料として好適に利用することができる。なお、スラリーを抽出液と残渣の2つに分離する場合、残渣におけるケイ酸塩の残留率は、100(%)から、上述のケイ酸塩の抽出率を差し引いて求めることができる。
分取工程で分取した残渣は、そのままセメント原料として用いてもよいし、洗浄等の前処理を行った後にセメント原料として用いてもよい。洗浄方法としては、例えば貫通水洗等が挙げられる。また、洗浄水としては、上水道水、工業用精製水、工業廃水等が挙げられる。ただし、洗浄方法及び洗浄水は、これらに限定されるものではない。残渣を洗浄し、残渣に含まれるNaO含有量を適宜変更することにより、セメントのNaO含有量を調整することができる。
ケイ素含有廃棄物からスラリーの抽出液に抽出されるCaの抽出率は、好ましくは0.1~5%であり、より好ましくは0.1~2%であり、さらに好ましくは0.1~1%である。Caの抽出率が上述の範囲であれば、シリカ晶析時に晶出する炭酸カルシウムの量を低減でき、シリカの純度を高くすることができる。なお、本明細書中において、Caの抽出率とは、ケイ酸塩が抽出された抽出液中のカルシウム含有量を、石炭灰中のカルシウム含有量で除して求められる値である。導出方法の詳細は後述の実施例にて記載する。
抽出液のNa濃度は、十分に高い純度を有するシリカを得る観点から、好ましくは300g/L以下であり、より好ましくは200g/L以下であり、さらに好ましくは100g/L以下である。なお、Na濃度の下限は、例えば10g/Lであってよい。
この抽出液を、ケイ酸塩含有液として晶析工程にそのまま用いてもよいし、抽出液を水で希釈する希釈工程を行って、晶析工程に用いるケイ酸塩含有液を調製してもよい。希釈水としては、上水道水、工業用精製水、工業廃水、残渣の水洗ろ過水等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。抽出液を希釈し、ケイ酸塩の濃度を適宜変更することにより、晶析するシリカ粒子の一次粒子径を調整することができる。
晶析工程で用いるケイ酸塩含有液のSi濃度は、合成ゴム等の高分子材料用フィラーとして好適なBET比表面積(例えば、100~450m/g)を有する粉末状のシリカ含有組成物(シリカ粉末)を得る観点から、好ましくは3~30g/Lであり、より好ましくは10~25g/Lであり、さらに好ましくは15~20g/Lである。ケイ酸塩含有液のケイ酸塩の濃度が上記範囲内であれば、CO含有ガスとの接触の際にハンドリングがしやすくなり、また、所望のBET比表面積を有する粉末状のシリカ含有組成物を円滑に製造することができる。
残渣におけるNaのNaO換算の含有量(NaO含有量)は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは0.01~4質量%である。残渣におけるNaO含有量が上記範囲であれば、残渣をセメント原料として好適に利用することができる。本実施形態では、スラリー調製工程において、低濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いているため、残渣のNaO含有量を、上記範囲に円滑に調製することができる。
残渣におけるSiのSiO換算の含有量(SiO含有量)は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上である。残渣におけるSiO含有量が上記範囲であれば、残渣をセメント原料として好適に利用することができる。残渣におけるSiO含有量は、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。残渣におけるSiO含有量が上記範囲であれば、SiOの収量を十分に多くすることができる。残渣のSiO含有量は、Siの含有量をSiO換算することによって求められる。
晶析工程では、ケイ酸塩含有液とCO含有ガスとを接触させてシリカ粒子を晶析する。ケイ酸塩含有液とCO含有ガスとの接触方法は特に限定されず、例えば、ケイ酸塩含有液中にCO含有ガスをバブリングして通気してもよいし、接触塔等を用いて、下降するケイ酸塩含有液と上昇するCO含有ガスとを向流接触させてもよい。
晶析工程では、ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が120~400Lとなるように、ケイ酸塩含有液とCO含有ガスとを接触させる。COの上記接触量は、150~350Lが好ましく、200~300Lがより好ましい。ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量を上記範囲とすることで、合成ゴム等の高分子材料用フィラーとして好適なBET比表面積及びシラノール基密度を有するシリカ粒子を晶析し易くすることができる。本明細書における気体の体積は、標準状態(圧力:101.325kPa、温度:0℃(273.15K)における体積であり、液体の体積は、圧力:101.325kPa、温度:20℃における体積である。
ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量を上記範囲とすることで、大きいシラノール基密度を有するシリカが得られる理由を本発明者らは以下のように推察している。シラノール基密度は、シラノール基量÷BET比表面積の計算式で算出される。したがって、シラノール基密度を大きくするには、シラノール基量を増加させるか、またはBET比表面積を小さくする必要がある。COの接触量が過小である場合、ケイ酸塩含有液中のケイ酸塩量に対してCOの接触量が少なく、シリカ粒子の結晶成長反応が進行せずに微細なシリカ粒子となり、シラノール基密度が小さくなる。一方、COの接触量を上述の範囲とすることで、シリカ粒子の結晶成長反応が進行して粒子が粗大化することで、BET比表面積が小さくなり、シラノール基密度が大きくなる。COの接触量が過大である場合、ケイ酸塩含有液中のケイ酸塩量に対してCO量が過剰となり、シラノール基密度の向上効果は得難くなるものと推察される。このように、ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量を特定量とすることで、合成ゴム等の高分子材料用フィラーとして好適なBET比表面積及びシラノール基密度を有するシリカ含有組成物を製造することができる。
晶析工程におけるケイ酸塩含有液の温度は、30~90℃であり、40~85℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。温度が低過ぎると、シリカ粒子の核形成反応の速度が遅くなって結晶成長反応が活発化するため、BET比表面積が小さくなり過ぎる傾向にある。一方、温度が高過ぎると、シリカ粒子の核形成反応の速度が速くなって微細なシリカ粒子が多量に生成し、BET比表面積が大きくなり過ぎる傾向にある。
CO含有ガスの通気流量は、ケイ酸塩含有液1Lあたり、好ましくは1~30L/minであり、より好ましくは3~20L/minであり、さらに好ましくは5~15L/minである。通気流量が上記範囲であれば、適度なBET比表面積を有するシリカ粒子を晶析することができる。また、上記範囲内で通気流量を適宜変更することでシリカ粒子の一次粒子径を所望の値に調整することができる。
CO含有ガスの通気時間は、上述した通気流量において、ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が上述の範囲となるように適宜調節すればよい。
晶析工程で用いられるCO含有ガスは、コスト削減の観点から、工場から排出される排ガスを含むことが好ましい。工場から排出される排ガスとして、例えば、ボイラーの排ガス、セメントキルンの排ガス、塩素バイパスの排ガス及び化学工場の合成ガスの排ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。CO含有ガスは、CO純度向上の観点から、工業ガスを含んでもよい。
CO含有ガスのCO濃度は、好ましくは10~100体積%であり、より好ましくは10~98体積%であり、さらに好ましくは30~90体積%である。CO濃度が上述の範囲であるCO含有ガスを用いれば、高純度のシリカ粒子を一層円滑に製造することができる。晶析工程ではシリカ粒子が生成し、ケイ酸塩含有液が懸濁液(スラリー)となる。ケイ酸塩含有液とCO含有ガスとの接触は、懸濁液のpHが、好ましくは7~12、より好ましくは8~10になるまで行う。これによって、シリカ粒子が十分に晶析し、シリカ粒子の収量を多くすることができる。得られるシリカ含有スラリーの固液分離を行ってシリカ粒子を回収してもよい。これによって、粉末状のシリカ含有組成物が得られる。上述の固液分離でシリカ粒子が回収して得られるアルカリ溶液から炭酸ナトリウム成分を回収し、抽出工程で原料の一部として再利用してもよい。
洗浄工程では、晶析工程で得られた懸濁液に含まれるシリカ粒子を含む固相を洗浄する。洗浄は、懸濁液の溶媒置換で行ってもよい。具体的には、固液分離と洗浄液の添加とを繰り返して行ってもよい。固液分離は遠心分離で行ってもよいし、濾過で行ってもよい。
洗浄には、水を用いることが好ましく、酸及び水を用いることが好ましい。酸及び水で洗浄する場合、シリカ粒子を含む固相を酸で洗浄した後に、水で洗浄することが特に好ましい。酸で洗浄した後に水で洗浄する手順を有することで、より少ない洗浄量で固相に含まれる不純物を低減できる。また、より高純度且つ高比表面積のシリカ含有組成物を製造することができる。その要因としては、シリカ粒子と共に晶出する炭酸塩などの塩が酸によって溶解し易くなり、その後の水による洗浄で除去され易くなること、未反応のケイ酸塩が酸と反応することでシリカ粒子の晶出量が増すこと、及び、不純物が除去されたことによって塞がれていた細孔が露出すること等が挙げられる。
洗浄に用いる酸は、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでよい。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、シリカ含有組成物の純度を一層高くする観点から、洗浄には塩酸を用いることが好ましい。なお、本明細書では、希塩酸も塩酸に含まれる。また、シリカ含有組成物の純度とは、シリカ含有組成物の固形分におけるシリカの含有量である。
洗浄工程では、溶媒添加と固液分離とを行う溶媒置換を繰り返し行うことで、シリカ含有組成物の純度を向上することができる。溶媒置換の繰り返し回数は、好ましくは3回以上であり、より好ましくは4回以上であり、さらに好ましくは5回以上である。このように繰り返し回数を多くすることによって、シリカ含有組成物中の主な不純物を除去することができ、高純度のシリカ含有組成物を回収することができる。
一つの例では、図1に示すように洗浄工程の前に熟成工程を行ってもよい。この場合、洗浄工程では、熟成工程で得られた懸濁液に含まれる熟成後のシリカ粒子を含む固相(固形分)を洗浄する。洗浄工程の内容は上述したとおりである。熟成工程では、晶析工程で得られたシリカ粒子を含む懸濁液を50~90℃に保持して熟成させる。熟成工程を行うことで、晶析工程で得られた微細なシリカ粒子の溶解及び析出が生じ、シリカ粒子が結晶成長して粗大化する。これによって、一層大きなシラノール基密度を有するシリカ粒子を製造することができる。熟成工程の上記温度範囲における保持時間は、例えば30~150分間であってよい。
本実施形態のシリカ含有組成物の製造方法で製造されるシリカ含有組成物は、粉末状、スラリー状及びケーキ状のいずれであってもよい。シリカ含有組成物のSiO純度は、乾燥質量を基準として、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは97質量%以上である。このような高純度のシリカ含有組成物は、例えば、フィラー材、塗料、接着剤、研磨剤、及びファインセラミックス等の原料に好適に用いることができる。ただし、その用途は上述の例に限定されない。
本実施形態のシリカ含有組成物の製造方法で製造される粉末状のシリカ含有組成物のBET比表面積は、好ましくは50~450m/gであり、より好ましくは70~250m/gである。このようなBET比表面積のシリカは、フィラー材、吸着材、吸湿材、コンクリート用混和材、アンチブロッキング材等に好適に用いることができる。
本実施形態のシリカ含有組成物の製造方法で製造されるシリカ含有組成物のシラノール基密度は、好ましくは1.0個/nm以上であり、より好ましくは2.0個/nm以上であり、さらに好ましくは3.0個/nm以上である。このようなシリカ含有組成物は、合成ゴム等の高分子材料用フィラーとして一層好適に用いることができる。なお、本明細書におけるシラノール基密度は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
本実施形態のシリカ含有組成物の製造方法は、図1に示すように、スラリーから分取した残渣を、セメント原料の一つとして、ロータリーキルン等のセメントキルンに導入する焼成工程を有していてもよい。分取工程においてスラリーから分取される残渣は、Si及びAlを含むとともに、NaOの含有量が少ない。このようにNaOの含有量が少ないことから、セメントキルンで焼成する際に生じる揮発分を低減することができる。このため、焼成に伴って生じるダストが低減され、設備負荷を軽減することができる。したがって、セメントクリンカを安定的に製造することができる。
セメントキルンには、残渣とともに他のセメント原料(石灰石、けい石、粘土、建設発生土、高炉スラグ及び製鋼スラグ等)が導入されてよい。セメントキルンではセメント原料が焼成されセメントクリンカが得られる。セメントクリンカは、例えば粉砕機(仕上げミル)等において、石膏と混合しながら粉砕してよい。これによって、セメント(セメント組成物)が得られる。必要に応じてフライアッシュ及びスラグ粉等を配合してもよい。得られるセメント組成物はポルトランドセメントであってよく、混合セメントであってよい。
本実施形態のシリカ含有組成物の製造方法によれば、シリカ含有組成物を高い安全性で製造することができる。また、調合条件の設定が容易であり、安定した品質を有するセメントクリンカ及びセメント組成物を製造することができる。
なお、図1の例では、シリカ含有組成物の一種であるシリカ粉末とともにセメントクリンカ及びセメント組成物を製造する例を示しているが、セメントクリンカ及びセメント組成物を製造することは必須ではない。例えば、シリカ粉末のみを製造し、残渣は他の用途に用いてもよい。
セメントクリンカの製造方法の一例は、上記分取工程の後に、残渣をセメントキルンの原料として用いる焼成工程を有する。この製造方法におけるスラリー調製工程、分取工程及び焼成工程は、上述のシリカの製造方法におけるスラリー調製工程及び分取工程と同様にして行うことができる。このため、上述のシリカ含有組成物の製造方法の説明内容を、本例のセメントクリンカの製造方法にも適用することができる。
本例のセメントクリンカの製造方法では、NaOの含有量が0.01~5質量%である残渣をセメント原料として用いてよい。これによって、焼成工程においてセメントキルンでセメント原料を焼成する際に生じる揮発分を低減することができる。このため、焼成に伴って生じるダストが低減され、設備負荷を軽減することができる。したがって、セメントクリンカを安定的に製造することができる。
セメント組成物の製造方法の一例は、上述のセメントクリンカの製造方法における焼成工程の後に、セメントクリンカと石膏とを配合する配合工程を有する。配合は、通常の粉砕機(仕上げミル)を用いてセメントクリンカを粉砕しながら行ってもよい。得られるセメント組成物はポルトランドセメントであってよく、混合セメントであってよい。本例のセメント組成物の製造方法によれば、調合条件の設定が容易であり、品質面で安定したセメント組成物を製造することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。なお、本開示は、一つの側面において、ケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムの濃度が1~24質量%である水溶液とを混合し、ケイ酸塩を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーからケイ酸塩を含む抽出液と残渣とを分取し、NaOの含有量が0.01~5質量%である残渣を得る分取工程と、残渣をセメントの原料として用いるセメントクリンカの製造方法を提供することができる。上記残渣は、NaOの含有量が十分に低減されていることから、セメントキルンに導入したときにアルカリ成分の揮発分の発生が抑制される。これによって揮発分の生成及び析出が低減され、セメントキルンの負荷が軽減される。したがって、安定的にセメントクリンカを製造することができる。
実施例及び比較例を参照して、本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[1:ケイ酸塩の抽出条件の検討]
ケイ素含有廃棄物と混合する水酸化ナトリウム水溶液の濃度、スラリーを調製する際の加熱温度、及び加熱時間の少なくとも一つの条件が異なる複数の実験を行った。これによって、各条件が、ケイ素含有廃棄物からのケイ酸塩及びCaの抽出率、抽出液中のNa濃度、並びに残渣におけるNaOの含有量等に与える影響を検討した。具体的な手順と結果を以下に説明する。
ケイ素含有廃棄物として、微粉炭を燃焼する石炭火力発電所から発生する石炭灰(宇部興産株式会社製、フライアッシュ)を使用した。使用した石炭灰の強熱減量と化学成分を表1に示す。表1に示す値は下記の方法で測定した値である。
・石炭灰の強熱減量(Ig.loss):JIS R 5202「セメントの化学分析方法」に規定される強熱減量測定方法に準拠して測定した。
・石炭灰のSiO、Al、Fe、CaO、MgO、SO、NaO、KO含有量:JIS M 8853「セラミックス用アルミノケイ酸塩質原料の化学分析方法」に準拠して測定した。
・石炭灰の平均粒径:レーザー回折/散乱法によって求めたメジアン径(D50)は、27.9μmであった。
Figure 2023103792000001
(実施例1)
水酸化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬1級、顆粒状)と蒸留水とを混合し、3.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液を調製した。石炭灰50gと濃度3.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液550gとを計量した。これらを、80℃に調整した容器の中で撹拌機(新東科学株式会社製、スリーワンモータtype600G)を用いて200rpmで混合し、1時間反応させた。石炭灰に対する水酸化ナトリウム水溶液の質量比は表2の「液/固比」に示すとおりであった。このようにして得られたスラリーを、市販のろ紙(円形定量ろ紙No.5C)と、吸引ろ過装置(アドバンテック東洋株式会社製)を用いてろ過し、抽出液と残渣(固形分)とに分離した。
抽出液に含まれるSi及びCa濃度をICP発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型式:PS3520UVDDII)を用いて定量した。抽出液に含まれるNa濃度を原子吸光分光光度計(株式会社島津製作所製、型式:AA-7000)を用いて定量した。以下の計算式によって、(1)ケイ酸塩の抽出率、(2)Caの抽出率、及び(3)残渣中のNaO含有量を求めた。なお、(3)におけるNaOの質量は、Naの定量分析結果を換算して求めた。結果を表2に示す。
(1)ケイ酸塩の抽出率(%)=抽出液中のSi(g)/{石炭灰の質量(g)×石炭灰のSi含有量(質量%)}×100
(2)Caの抽出率(%)=抽出液中のCa(g)/{石炭灰の質量(g)×石炭灰のCa含有量(質量%)}×100
(3)残渣中のNaO含有量(質量%)={原料配合時のNaO(g)-抽出液に含まれるNaO(g)}/残渣の質量(g)×100
(実施例2~4、及び比較例1)
水酸化ナトリウム水溶液の濃度を表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実験を行い、抽出液と残渣を得た。実施例1と同様にして、各測定及び計算を行って、ケイ酸塩及びCaの抽出率、残渣中のNaOの含有量を求めた。結果を表2に示す。
実施例1~4及び比較例1の結果から、水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウム濃度が高いほどケイ酸塩の抽出率が高くなることが確認された。しかしながら、水酸化ナトリウム濃度が高いほど抽出液に含まれるNaの濃度が高くなることが確認された。また、水酸化ナトリウム濃度が40質量%である比較例1では、Caの抽出率も極めて高くなっていた。Ca成分は、晶析時にCaCOとして沈殿し、得られるシリカの純度低下の要因となる。このため、CaOの抽出率は低い方が好ましい。
水酸化ナトリウムの濃度が低い(24質量%以下)水酸化ナトリウム水溶液を用いた実施例1~3では、残渣中のNaO含有量が十分に低かった。
(実施例5~8)
実施例5、6は実施例4に対してスラリー調製時の加熱温度を変更し、実施例7、8は実施例4に対してスラリー調製時の加熱時間を変更したものである。その他の条件は実施例4と同様にして、スラリー調製及び分離操作を行い、実施例5~8の抽出液と残渣を得た。実施例5~8においても、実施例4と同様にして、各測定及び計算を行って、ケイ酸塩及びCaの抽出率、抽出液中のNa濃度、残渣中のNaOの含有量を求めた。結果を表2に示す。
Figure 2023103792000002
実施例4~8より、水酸化ナトリウム濃度が一定の条件下、スラリーの加熱温度及び/又は加熱時間を変更することで、抽出液中のNa濃度とCaの抽出率を抑制しつつ、ケイ酸塩の抽出率を調整できることが確認された。加熱温度を95℃とした実施例6で、ケイ酸塩の抽出率を最も高くすることができた。
[2:晶析条件の検討]
(実施例9)
<スラリー調製工程及び分取工程>
表1に示す石炭灰200gと水酸化ナトリウム濃度が16質量%である水酸化ナトリウム水溶液500gとを混合し、撹拌機(新東科学株式会社製、スリーワンモータtype600G)を用いて200rpmで、95℃で3.5時間撹拌しながら反応させた。このようにして得られたスラリーを、市販のろ紙(円形定量ろ紙No.5C)と、吸引ろ過装置(アドバンテック東洋株式会社製)を用いてろ過し、抽出液と残渣(固形分)とを分取した。分取後、ケイ酸塩成分を含む抽出液0.3Lを液量が1Lとなるように蒸留水で希釈してケイ酸塩含有液を得た。このケイ酸塩含有液におけるSi濃度は、18g/Lであった。
<晶析工程>
得られたケイ酸塩含有液(抽出液の希釈液)を晶析反応槽に移した。撹拌機を用いて450rpmで混合しながら、ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が252Lとなるように、炭酸ガス(日本エア・リキード製、CO濃度:99.5体積%以上)を8.4L/minで30分間バブリングした。このようにして、ケイ酸塩含有液と炭酸ガスとを30分間接触させた。炭酸ガスをバブリングさせている間のケイ酸塩含有液の温度は50℃であった。これによってシリカ粒子が晶析し、シリカ粒子を含む懸濁液を得た。
<洗浄工程>
反応終了後、遠心分離で懸濁液を固液分離した。シリカ粒子を含む固相(固形分)を洗浄するため、シリカ含有スラリーの液相の一部を希塩酸で置換し、液相全体がHCl濃度:9.5~10.5w/v%となるように調整して撹拌した。その後、遠心分離による蒸留水置換を、液相の電気伝導度が0.1mS/cm以下になるまで繰り返し行った後、乾燥して固形分を得た。
遊星ミル(伊藤製作所製、型式LA-PO.1)を用いて乾燥して得られた固形分を340rpmで8分間解砕し、粉末状のシリカ含有組成物(シリカ粉末)として回収した。このようにして製造したシリカ粉末の物性(純度、BET比表面積、及びシラノール基密度)を以下の方法で測定した。結果を表3に示した。
シリカ粉末のSiO純度は、シリカ粉末中の不溶Siを過塩素酸脱水重量法にて定量した。また、酸溶存SiをICP発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型式:PS3520UVDDII)を用いて定量した。それぞれの定量値を合算して、シリカ粉末のSiO純度を求めた。
シリカ粉末のBET比表面積は、以下の手順で求めた。シリカ粉末を110℃で30分間、窒素雰囲気中で加熱して水分を除去した。このようにして水分を除去した後、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、装置名:BEL-SORP-mini)を用いてシリカ粉末のBET比表面積を測定した。
シリカ粉末のシラノール基密度は、シアーズ法により以下の手順で測定・算出した。蒸留水100mLにシリカ粉末1.5gと塩化ナトリウム30gを加え、マグネットスターラーを用いて、得られたシリカスラリーを攪拌し塩化ナトリウムを完全に溶解させた。25℃の環境下、蒸留水と0.1mol/Lの希塩酸又は0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、最終的にシリカスラリーの総量が150mL、pHが4となるように調整し、これを試験液とした。試験液をマグネットスターラーで攪拌しつつ、ビュレットを用いて0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を2mL/minの速度で滴下し、試験液のpHが4.0から9.0に到達するまでに要する0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量V(L)を測定した。シリカ粉末のシラノール基密度ρ(個/nm)は、下記式を用いて算出した。
ρ=(0.1V×NA)/(W×SBET)
V:滴下した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(L)
NA:アボガドロ数(個/mol)
W:シリカ粉末の採取量(1.5g)
SBET:シリカ粉末のBET比表面積(nm/g)
上述のシリカ粉末のシラノール基密度の測定・算出方法は、「G.W.Sears,Jr.,Analytical Chemistry,Vol.28,No.12,pp.1981-1983(1956).」、「羽場真一,半導体集積回路プロセス用研磨剤の開発,高知工科大学博士論文,pp.42-45,2004年3月」を参考にした。
(実施例10)
晶析工程において、ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が168Lとなるように、炭酸ガスを4.2L/minで40分間バブリングしたこと以外は、実施例9と同じ手順でシリカ粉末を製造した。実施例9と同じ手順でシリカ粉末の物性を評価した。結果を表3に示した。
(実施例11)
実施例9で述べたスラリー調製工程と分取工程を3回繰り返し、ケイ酸塩含有液を3L得た。ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が168Lとなるように、炭酸ガスを8.4L/minで60分間バブリングしたこと以外は、実施例9と同じ手順でシリカ粉末を製造した。実施例9と同じ手順でシリカ粉末の物性を評価した。結果を表3に示した。
(実施例12)
晶析工程において、撹拌機の回転数を200rpmとしたこと、及び炭酸ガスをバブリングさせている間のケイ酸塩含有液の温度を80℃としたこと以外は、実施例9と同じ手順でシリカ粉末を製造した。実施例9と同じ手順でシリカ粉末の物性を評価した。結果を表3に示した。
(比較例2)
晶析工程において、ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が84Lとなるように、炭酸ガスを8.4L/minで10分間バブリングしたこと以外は、実施例9と同じ手順でシリカ粉末を製造した。実施例9と同じ手順でシリカ粉末の物性を評価した。結果を表3に示した。
(参考例1)
合成ゴム用シリカフィラーとして市販されている湿式シリカ(Evonic社製、Ultrasil7000GR)の物性を、実施例9と同じ手順で評価した。結果を表3に示した。
Figure 2023103792000003
表3に示すとおり、ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が多い方が、得られたシリカ粉末のシラノール基密度が大きくなる傾向にあった。ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が168Lの場合に、市販品(参考例1)の約1.5倍のシラノール基密度を有するシリカ粉末が得られた(実施例10,11)。また、炭酸ガス通気中のケイ酸塩含有液の温度を80℃とすることで、より大きいシラノール基密度を有するシリカ粉末を得ることができた(実施例12)。
[3.熟成条件の検討]
(実施例13)
実施例9と同じ手順でシリカ粒子を含む懸濁液を得た。炭酸ガスのバブリング終了後に、晶析したシリカ粒子を含む懸濁液を容器内において80℃に加温し、200rpmで攪拌しながら60分間保持した(熟成工程)。保持後の懸濁液を用いて、実施例9と同じ洗浄工程を行った。そして、実施例9と同じ手順でシリカ粉末の純度、BET比表面積、及びシラノール基密度を測定した。結果を表4に示した。
(実施例14)
実施例12と同じ手順でシリカ粒子を含む懸濁液を得た。炭酸ガスのバブリング終了後に、晶析したシリカ粒子を含む懸濁液を容器内において80℃に加温し、200rpmで攪拌しながら120分間保持した(熟成工程)。熟成後の懸濁液を用いて、実施例9と同じ洗浄工程を行った。そして、実施例9と同じ手順でシリカ粉末の純度、BET比表面積、及びシラノール基密度を測定した。結果を表4に示した。
Figure 2023103792000004
表4に示すとおり、晶析工程の後に熟成工程を行うことによって、より大きいシラノール基密度を有するシリカ粉末を得ることができた。

Claims (8)

  1. ケイ素含有廃棄物と水酸化ナトリウムの濃度が1~24質量%である水溶液とを混合し、ケイ酸塩を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、
    前記スラリーから前記ケイ酸塩を含む抽出液と残渣とを分取する分取工程と、
    30~90℃の温度で、前記抽出液を含むケイ酸塩含有液とCO含有ガスとを接触させてシリカ粒子を晶析する晶析工程と、
    前記シリカ粒子を含む固相を洗浄する洗浄工程と、を有し、
    前記晶析工程では、前記ケイ酸塩含有液1LあたりのCOの接触量が120~400Lとなるように、前記ケイ酸塩含有液とCO含有ガスとを接触させる、シリカ含有組成物の製造方法。
  2. 前記晶析工程で得られる前記シリカ粒子を含む懸濁液を50~90℃に保持する熟成工程を有する、請求項1に記載のシリカ含有組成物の製造方法。
  3. 前記分取工程では、前記スラリーからNaOの含有量が0.01~5質量%である残渣を得る、請求項1又は2に記載のシリカ含有組成物の製造方法。
  4. 前記スラリー調製工程では、前記スラリーを50~200℃に加熱して前記ケイ素含有廃棄物と前記水酸化ナトリウムとを反応させる、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリカ含有組成物の製造方法。
  5. 前記洗浄工程は、前記固相の洗浄において、酸及び水をこの順に用いることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシリカ含有組成物の製造方法。
  6. 前記ケイ素含有廃棄物が石炭灰を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシリカ含有組成物の製造方法。
  7. 前記CO含有ガスは工場で発生する排ガスを含む、請求項1~6の何れか一項に記載のシリカ含有組成物の製造方法。
  8. 前記残渣をセメント原料として使用する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシリカ含有組成物の製造方法。
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